説明

画像形成装置

【課題】簡易な構成、制御でヘッドの負圧を適正範囲に維持でき、高粘度の液体でも、吐出不良を生じることなく、高速で吐出することができる画像形成装置の提供。
【解決手段】流路抵抗可変ユニット83と、流路抵抗可変ユニット83にインクを送るポンプ78を有し、流路抵抗可変ユニット83は、第1の流路71を流れるインク流量に応じて内部の流路抵抗が変化し、液滴を吐出するときには、流路抵抗可変ユニット83を介して記録ヘッド10とインクカートリッジ76が連通している状態で、ポンプ78によりインクをインクカートリッジ76から記録ヘッド10に送液し、流路抵抗可変ユニット83と分岐部63の間に流量調整弁300を設けて、気泡などの異物を排出する維持回復動作を行うときには流路抵抗可変ユニット83から分岐部63側への流量を制限することで第1の流路71へ流速の高いインクを送液する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体にインクを着弾させて画像形成を行う装置(単なる液体吐出装置を含む)を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与する(単に液滴を媒体に着弾させる、即ち液滴吐出装置ないし液体吐出装置と称されるものを含む)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体、DNA試料、パターニング材料などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。また、「用紙」とは、材質を紙に限定するものではなく、上述したOHPシート、布なども含み、インク滴が付着されるものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含むものの総称として用いる。
【0004】
記録ヘッドとして用いる液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)としては、圧電アクチュエータ等により振動板を変位させ液室内の体積を変化させて圧力を高め液滴を吐出させる圧電型ヘッドや、液室内に通電によって発熱する発熱体を設けて、発熱体の発熱により生じる気泡によって液室内の圧力を高め、液滴を吐出させるサーマル型ヘッドが知られている。
【0005】
このような液体吐出方式の画像形成装置においては、特に画像形成スループットの向上、すなわち画像形成速度の高速化が望まれており、本体据え置きの大容量のインクカートリッジ(メインタンク)からチューブを介して記録ヘッド上部のサブタンク(ヘッドタンク、バッファタンクと称されるものを含む。)にインクを供給する方式が行なわれている。このようなチューブを用いてインクを供給する方式(チューブ供給方式)とすることで、キャリッジ部を軽量小型化でき、構造系、駆動系も含めて装置を大幅に小型化できる。
【0006】
ところで、チューブ供給方式では、画像形成で記録ヘッドから消費されるインクがインクカートリッジからチューブを通って記録ヘッドに供給されることになるが、例えば、柔軟性に富む細いチューブを使うと、チューブをインクが流れる際の流体抵抗が大きいため、インク供給がインク吐出に間に合わず吐出不良となる。特に、広幅の記録媒体に印字する大型マシンでは必然的にチューブが長くなりチューブの流体抵抗が大きくなる。また、高速印字する場合や高粘度のインクを吐出する場合も流体抵抗が増大し、記録ヘッドに対するインク供給不足が課題となる。
【0007】
そこで、従来、特許文献1に開示されているように、インクカートリッジのインクを加圧状態に保持すると共に、ヘッドのインク供給上流側に差圧弁を設けて、サブタンク内の負圧が所定の圧力より大きい時にインクを供給するようにすることが知られている。
【0008】
また、特許文献2に開示されているように、ヘッドの上流にばねによって負圧を得る負圧室にポンプでインクを送液して積極的にインク供給圧を制御するもの、特許文献3に開示されているように、負圧室を有していないが、同様にポンプによって積極的に圧力を制御する方式のものも知られている。
【0009】
一方、簡単な構成で負圧を得る方式としては、大気に連通したインクカートリッジと記録ヘッドをチューブで接続し、単にインクカートリッジを記録ヘッドよりも下方に配置することで、水頭差で負圧を得る方式がある。
【0010】
この方式では、負圧連動弁を用いて常時加圧する方式や負圧室を設けてポンプで送液する方式よりも圧倒的に簡易な構成でありながらもより安定な負圧を得ることができるものの、この水頭方式では前述したチューブ抵抗による圧力損失の問題がある。
【0011】
この水頭差によって負圧を得るインク供給システムでこの圧力損失を解決する技術としては、例えば、特許文献4に開示されているように、ヘッドとインクカートリッジを繋ぐチューブにポンプを設け、さらにポンプの上流側と下流側を繋ぐバイパス経路を設けて、このバイパス経路に弁を設けた構成とし、バイパス経路に設けた弁の開度を印字によって適宜制御して所望の圧力を保つものが知られている。
【0012】
また、このような画像形成装置においては、インクを吐出する記録ヘッドの性能を維持、回復する装置(維持回復機構)が不可欠であり、その機能の1つとしてヘッド内部の気泡、異物及び増粘インクなどをノズルから排出して吐出不良を低減することが求められる。
【0013】
従来、ノズルからインクを吸引排出する方法としては、キャップでノズル面をキャッピングして吸引手段によって吸引を行うもの(特許文献5)、ヘッドに対してインクを加圧供給してノズルからインクを排出するもの(特許文献6、7、8)、加圧と吸引を組み合わせて行うもの(特許文献9)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第3606282号公報
【特許文献2】特開2005−342960号公報
【特許文献3】特表平5−504308号公報
【特許文献4】特開2004−351845号公報
【特許文献5】特開2004−284084号公報
【特許文献6】特開2007−185905号公報
【特許文献7】特開2006−150745号公報
【特許文献8】特開平3−184872号公報
【特許文献9】特開2002−178537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
まず、記録ヘッドに対するインクの供給不足に関して、特許文献1に開示の技術では、前述したリフィル不足の問題は解決されるが、負圧を制御するための機構が複雑であり、しかも負圧連動弁のシール性能を高度に要求されるという課題がある。また、常時加圧する方式であるため、インク供給経路中にある全ての接続部の気密も高度に要求され、万一故障した際には、インクが噴出する不具合が生じるおそれがある。
【0016】
また、特許文献2、3に開示の技術では、ポンプによって積極的に圧力を制御することから、インクの消費量等に応じて正確にポンプの送液量を制御する必要があるため、負圧室の圧力を用いたフィードバック制御等が必要となる。また、例えば色の異なる複数種のインクを用いる画像形成装置に適用する場合には、色種ごとにポンプを制御することが求められ、制御が複雑で、装置が大型化するという課題がある。
【0017】
また、特許文献4に開示の技術でも、色の異なる複数種のインクを用いる画像形成装置に適用する場合には、色種ごとにポンプを制御することが求められ、装置が大型化する課題がある。
【0018】
一方、記録ヘッドの維持回復に関して、特許文献5に開示の技術のように、ノズルからインクを吸引排出する構成にあっては、ノズル近傍の流速を大きくでき、異物の排出には有効であるが、さらなる排出性を向上させようとした場合、高負圧に耐えうるキャップ構成としなければならず、排出性向上は困難となる。また、キャップ内を大気圧に開放する時にノズル周辺のインク及び気泡がノズル内に逆流しやすく、それによる吐出不良を防止する対応が必要となるという課題がある。
【0019】
また、特許文献6に開示の技術のように、加圧手段の加圧力によりヘッド内のインクを急激に加圧してインクを加圧排出する構成にあっては、加圧室の構成の複雑化、及び更なる排出性の向上のためにはインク供給路全体の密封性(耐圧)が必要となり、装置全体のコスト高になるという課題がある。また、特許文献7に開示の技術のように、予圧手段によって予めバッファタンクの内圧を所定圧力まで予圧しておき、しかる後にインクを供給する構成にあっては、予圧手段を含めて構成の複雑化、耐圧の確保という同様の課題がある。また、特許文献8に開示の技術のように記録ヘッドとインクタンクとの間でインクを循環させる構成ではヘッドとの連結部が2ポート必要なってヘッド周り及び供給系が複雑になるという課題がある。
【0020】
また、特許文献9に開示の技術のように、吸引と加圧を組み合わせた構成にあっては、加圧と吸引の差圧によって高い排出性を得られるが、インク消費量に対する排出効率を大幅に改善することが困難である。
【0021】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成、制御でヘッドの負圧を適正範囲に維持でき、高粘度の液体でも、吐出不良を生じることなく、高速で吐出することができるようにするとともに、更にヘッド内の気泡や異物などの排出性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに供給する液体を貯留する液体タンクと、
前記記録ヘッドに前記液体を供給する第1の流路と、
途中に分岐部を有し、前記液体タンクに連通する第2の流路と、
前記第1の流路と前記第2の流路を連通させる圧力調整弁と、
前記圧力調整弁に前記液体を送る送液手段と、
前記圧力調整弁と前記送液手段を連通する第3の流路と、
前記分岐部と前記送液手段を連通する第4の流路と、を有し、
前記圧力調整弁は、前記第1の流路を流れる液体の流量に応じて内部の流路抵抗が変化し、
前記ノズルから液滴を吐出するときには、前記圧力調整弁を介して前記記録ヘッドと前記液体タンクが連通している状態で、前記送液手段により前記液体を前記液体タンクから前記記録ヘッドに送液する画像形成装置であって、
前記圧力調整弁と前記分岐部の間に流量を調整する流量調整手段と、
前記記録ヘッドの維持回復を行うときに、前記流量調整弁で前記圧力調整弁から前記分岐部への流量を制限した状態で前記送液手段から送液を行わせる手段と、を備えている
構成とした。
【0023】
ここで、前記流量調整手段が開閉弁である構成とできる。
【0024】
また、前記流量調整手段が流量に応じて流体抵抗が大きくなる弁である構成とできる。
【0025】
また、前記記録ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップと、前記キャップに接続された吸引手段とを備え、前記維持回復を行うとき、前記キャップで前記記録ヘッドのノズル面をキャッピングした状態で前記吸引手段を駆動させて前記キャップとノズル面との間のキャップ内空間を負圧にして前記記録ヘッドのノズルから液体を吸引する動作を行う構成とできる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る画像形成装置によれば、記録ヘッドのノズルから液滴を吐出するときには、流れる液体の流量に応じて内部の流路抵抗が変化する圧力調整弁を介して記録ヘッドと液体タンクが連通している状態で、送液手段により液体を液体タンクから記録ヘッドに送液する構成としたので、記録ヘッドの吐出量に応じて適正なアシスト圧を自動的に調節しながら記録ヘッドに印加して、チューブ部材の長尺化、吐出流量の増大化、吐出液体の高粘度化等に伴うリフィル不足を回避し、簡易な構成、制御でヘッドの負圧を適正範囲に維持でき、高粘度の液体でも、吐出不良を生じることなく、高速で吐出することができるようになるとともに、記録ヘッドの維持回復を行うときに、流量調整弁で圧力調整弁から分岐部への流量を制限した状態で送液手段から送液を行わせる構成としたので、ヘッド内部の流速を高めてノズルから液体を排出させることができて、気泡などの異物を効率的に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置を示す概略正面説明図である。
【図2】同じく概略平面説明図である。
【図3】同じく概略側面説明図である。
【図4】同装置の記録ヘッドの説明に供する要部拡大説明図である。
【図5】同装置のインク供給系(インク供給システム)のサブタンクの模式的断面説明図である。
【図6】同じくカートリッジホルダ部分の説明図である。
【図7】同じくポンプユニットの説明図である。
【図8】同じく圧力制御ユニットの説明図である。
【図9】本発明の第1実施形態におけるインク供給システムの説明図である。
【図10】同実施形態における流路抵抗可変ユニットを示す説明図である。
【図11】同装置の制御部の概要を示すブロック説明図である。
【図12】初期充填動作の説明に供するフロー図である。
【図13】印字動作の説明に供するフロー図である。
【図14】同じくヘッド吐出流量とヘッド圧力損失とアシスト流量の関係の一例を示す説明図である。
【図15】維持回復動作の一例の説明に供するフロー図である。
【図16】同維持回復動作時の第1の流路の流量変化の説明に供する説明図である。
【図17】維持回復動作の他の例の説明に供するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置について図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は同記録装置の概略正面説明図、図2は同じく概略平面説明図、図3は同じく概略側面説明図である。
このインクジェット記録装置は、本体フレーム1に立設された左右の側板1L、1Rに横架したガイド部材であるガイドロッド2と、本体フレーム1に横架される後フレーム1Bに取付けられたガイドレール3とで、キャリッジ4を主走査方向(ガイドロッド長手方向)に摺動自在に保持し、キャリッジ4を図示しない主走査モータとタイミングベルトによってガイドロッド2の長手方向(主走査方向)に移動走査する。
【0029】
このキャリッジ4には、例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインク滴を吐出する1又は複数の記録ヘッド10が搭載され、記録ヘッド10は複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0030】
ここで、記録ヘッド10は、図4に示すように発熱体基板12と液室形成部材13から構成され、共通流路17及び液室(個別流路)16に順次供給されるインクを液滴として吐出する。この記録ヘッド10は、発熱体14の駆動によるインクの膜沸騰により吐出圧を得るサーマル方式のものであり、液室16内の吐出エネルギー作用部(発熱体部)へのインクの流れ方向とノズル15の開口中心軸とを直角となしたサイドシュータ方式の構成のものである。
【0031】
なお、記録ヘッドとしては、圧電素子を用いて振動板を変形させ、また、静電力で振動板を変形させて吐出圧を得るものなど様々な方式があり、いずれの方式のものも本発明に係る画像形成装置に適用することができる。
【0032】
また、サーマル方式のヘッドの中には、他にも吐出方向が異なるエッジシュータ方式があるが、このエッジシュータ方式においては気泡が消滅する際の衝撃により発熱体14を徐々に破壊する、いわゆるキャビテーション現象の問題がある。これに対し、上述したサイドシュータ方式においては気泡が成長し、その気泡がノズル15に達すれば気泡が大気に通じることになり温度低下による気泡の収縮が起こらない。そのため、記録ヘッドの寿命が長いという長所を有する。また、発熱体14からのエネルギーをより効率良くインク滴の形成とその飛行の運動エネルギーへと変換でき、またインクの供給によるメニスカスの復帰も速いという構造上の利点を有する。したがって、本インクジェット記録装置においてはサイドシュータ方式の記録ヘッドを採用している。
【0033】
一方、キャリッジ4の下方には、記録ヘッド10によって画像が形成される用紙20が主走査方向と垂直方向(副走査方向)に搬送される。図3に示すように、用紙20は、搬送ローラ21と押えコロ22で挟持されて、記録ヘッド10による画像形成領域(印字部)に搬送され、印写ガイド部材23上に送られ、排紙ローラ対24で排紙方向に送られる。
【0034】
このとき、主走査方向へのキャリッジ4の走査と記録ヘッド10からのインク吐出を画像データに基づいて適切なタイミングで同調させ、用紙20に1バンド分の画像を形成する。1バンド分の画像形成が完了した後、副走査方向に用紙20を所定量送り、前述と同様の記録動作を行う。これらの動作を繰り返し行い、1ページ分の画像形成を行なう。
【0035】
一方、記録ヘッド10の上部には吐出するインクを一時的に貯留するためのインク室が形成されたサブタンク(バッファタンク、ヘッドタンク)30が一体的に接続される。ここでいう「一体的」とは、記録ヘッド10とサブタンク30がチューブ、管等で接続されることも含んでおり、どちらも一緒にキャリッジ4に搭載されているという意味である。
【0036】
このサブタンク30には、装置本体側の主走査方向の一端部側に設けられたカートリッジホルダ77に着脱自在に装着される各色のインクを収容した本発明における液体タンクであるインクカートリッジ(メインタンク)76からインク供給経路の一部を形成するチューブ部材であって第1の流路を形成する液体供給チューブ71を介して、各色のインクが供給される。
【0037】
また、装置本体の主走査方向の他端部側には記録ヘッド10の維持回復を行う維持回復機構51が配置されている。この維持回復機構51は、記録ヘッド10のノズル面をキャッピングする吸引及び保湿用のキャップ52a及び保湿用のキャップ52bと、キャップ52b内を吸引する吸引手段である吸引ポンプ53と、吸引ポンプ53で吸引されたインクの廃液(廃インク)を排出する排出経路54などを含み、排出経路54から排出される廃液は本体フレーム1側に配置された廃液タンク56に排出される。また、後述する図9に示すように、維持回復機構51には、記録ヘッド10のノズル面をワイピングするワイパ部材57をワイピングユニット58にて保持してノズル面に対して進退可能に配設している。
【0038】
次に、このインクジェット記録装置に適用した本発明の第1実施形態におけるインク供給系(インク供給システム)について図5ないし図10をも参照して説明する。なお、図5は同インク供給システムのサブタンクの模式的断面説明図、図6は同じくカートリッジホルダ部分の説明図、図7は同じくポンプユニットの説明図、図8は同じく圧力制御ユニットの説明図、図9は流路抵抗可変ユニットの一例を示す説明図である。
【0039】
まず、サブタンク30は、インク室103を形成するタンクケース101の一部の開口に外側に向かって凸状に形成された可撓性を有するゴム部材102が設けられ、インク室103の内部には記録ヘッド10との接続部の近傍にフィルタ109が設けられ、インクをろ過して異物などを除去したインクを記録ヘッド10に供給する構成となっている。
【0040】
このサブタンク30には、インク供給チューブ71の一端部が接続される。インク供給チューブ71の他端部は、図1及び図2に示すように本体据え置きのカートリッジホルダ77に接続される。
【0041】
カートリッジホルダ77には、インクカートリッジ76と、送液手段であるポンプユニット80と、圧力制御ユニット81が接続されている。
【0042】
カートリッジホルダ77の内部には、図6に示すように、各色のインクに対応して内部流路70,74、79が形成され、ポンプユニット80に連通するポンプ接続ポート73a、73bと、圧力制御ユニット81に連通する圧力制御ポート72a、72b、72cを備えている。また、ポンプ接続ポート73aと圧力制御ポート72cとは内部流路70で連通している。
【0043】
ポンプユニット80は、図7に示すように、カートリッジホルダ77のポンプ接続ポート73a、73bとそれぞれ連通するポート85a、85bと、これらのポート85a、85bに連通するポンプ78を備えている。ポンプ78としては、チュービングポンプやダイヤフラムポンプ、ギアーポンプなど様々なポンプを適用することができる。図7のポンプユニット80においては、4色のインクに対応して4つのポンプ78K、78C、78M、78Yを備えているが、これらの4つのポンプは1つのモータ82で連動して駆動する構成としている。
【0044】
圧力制御ユニット81は、図8に示すように、カートリッジホルダ77の圧力制御ポート72a、72b、72cとそれぞれ連通するポート86a、86b、86cと、これらのポート86a、86b、86cに連通する圧力調整弁である流路抵抗可変ユニット83を備えている。
【0045】
次に、インク供給システムの全体構成及び動作について図9に示す概略構成図を参照して説明する。なお、図9ではインク供給システムの動作、作用の理解をしやすいように1つの液体吐出ヘッド(記録ヘッド)10に接続する主要構成要素のみを表している。
このインク供給システムは、記録ヘッド10に供給するインクを貯留するインクカートリッジ76と、記録ヘッド10にインクを供給する第1の流路である液体供給チューブ(以下「第1の流路」ともいう。)71と、途中に分岐部63を有し、インクカートリッジ76に連通する第2の流路60と、第1の流路71と第2の流路60を連通させる圧力調整弁である流路抵抗可変ユニット83を含む圧力制御ユニット81と、圧力調整弁(流路抵抗可変ユニット83)にインクを送る送液手段であるポンプ78を含むポンプユニット80と、圧力調整弁(流路抵抗可変ユニット83)とポンプ78を連通する第3の流路61と、分岐部63とポンプ78を連通する第4の流路62と、分岐部63と流路抵抗可変ユニット83との間に設けた流量調整手段である流量調整弁300とを有している。
【0046】
ここで、流路抵抗可変ユニット83は、内部を流れる液体の流れ方向や流量によって流路抵抗が変化する特性を有するものである。この流路抵抗可変ユニット83は、例えば図10に示すように、流路形成部材である管部材87と、管部材87内に自由状態で移動可能に収容された可動部材である弁体88とを有している。
【0047】
管部材87は、第1の流路(液体供給チューブ)71を接続するポート86aと、第2の流路60の分岐部63で分岐した流路60aを接続するポート86bと、第3の流路61を接続するポート86cとを有している。弁体88は、液体の流れの方向において径の異なる段部を有する段付き軸形状部材であり、上部88t、中央部88m、下部88bの少なくとも3つの段部要素を有し、中央部88mの径が下部88bよりも小径に形成されている。この弁体88は、管部材87の内部で移動可能とされ、内部の流れの状態等に応じて、図10(a)の位置、図10(b)の位置、あるいはその中間の位置をとる。
【0048】
ここで、この弁体88の上部88tと管部材87の流路部分87aとの間で第1の流路側の第1の絞り部181が形成され、弁体88の下部88bと管部材87の流路部分87bとの間で第2の絞り部182が形成され、弁体88が上述したように内部の流れの状態等に応じて移動することにより、第2の絞り部182の絞り量が変化する。
【0049】
そして、管部材87には、弁体88の中央部88mの位置、すなわち、第1の絞り部181と第2の絞り部182との間に第3の流路43の一部となる横穴(ポート)86cが形成されている。
【0050】
図9に戻って、インクカートリッジ76には大気連通部90が設けられており、インクカートリッジ76内の液面が記録ヘッド10のノズル面よりも低い位置になるように配置されている。これにより、インクがインク供給全経路に満たされている状態では、記録ヘッド10とインクカートリッジ76の液面の水頭差hにより、記録ヘッド10は負圧に保持されるので、安定して記録ヘッド10からインク滴吐出を行うことができる。
【0051】
一方、インク排出システムを構成する維持回復機構51は、前述したように、記録ヘッド10のノズル面10a(図4参照)をキャッピングするキャップ52aと、キャップ52aに接続された吸引手段としての吸引ポンプ53とを備え、記録ヘッド10のノズル面10aをキャッピングした状態で吸引ポンプ53を駆動してキャップ52a内空間を負圧にし、ノズル15からキャップ52a内にインクを排出させることができる。キャップ52a内に排出された廃インクは廃液タンク56に排出される。
また、後述する図9に示すように、維持回復機構51には、記録ヘッド10のノズル面をワイピングするワイパ部材57をワイピングユニット58にて保持してノズル面に対して進退可能に配設している。
【0052】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図11を参照して説明する。なお、図11は同制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部500は、この装置全体の制御を司るアシスト動作及び維持回復動作に関する制御を行う手段を兼ねるCPU501と、CPU501が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
【0053】
また、記録ヘッド34を印字データに応じて駆動制御するための印刷制御部508と、キャリッジ4側に設けた記録ヘッド10を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、キャリッジ4を移動走査する主走査モータ551、用紙20を搬送する搬送21を回転駆動させる副走査モータ552、維持回復機構51のキャップ52a、52bやワイパ部材57などを昇降させるキャップ昇降機構513を作動する維持回復モータ512を駆動するためのモータ駆動部512と、維持回復機構51の吸引ポンプ53及びアシスト用ポンプ73並びに流量調整弁300を駆動するポンプ/弁駆動部511などを備えている。
【0054】
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
【0055】
この制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
【0056】
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行っている。
【0057】
印刷制御部508は、上述した印字データをシリアルデータで転送するとともに、この印字データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する。ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド10の1行分に相当する印字データに基づいて発熱素子14を駆動する。
【0058】
I/O部515は、装置に装着されている各種のセンサ群516からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ駆動部510の制御に使用する。センサ群515は、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の温度を監視するためのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがあり、I/O部515は様々のセンサ情報を処理することができる。また、環境条件(温度及び湿度)を検知する温湿度センサからの検知信号、廃液タンク56の満タンを検知する満タン検知センサの検知信号も入力される。
【0059】
次に、上記インク供給システムを使用したインク初期充填動作について図12のフロー図を参照して説明する、
インクカートリッジ76が装着済であることが確認された後、記録ヘッド10のノズル面を維持ユニット51のキャップ52でキャッピングする。このキャッピング状態で吸引ポンプ53を駆動し、記録ヘッド10のノズルを介してインク供給系路内の空気を吸引する(ノズル吸引開始)。そして、このノズル吸引は、ノズル吸引の開始から所定時間が経過した時まで行う。所定時間吸引を行うことにより、インクカートリッジ76内のインクが第1の流路(液体供給チューブ)71に達する。
【0060】
その後、ノズル吸引開始から所定時間が経過した時((タイマがカウントアップした時))、モータ82を駆動してポンプ(アシストポンプ)78を駆動する。このとき、図9に示すようにインク供給経路が形成されているので、ポンプ78の駆動によって流路抵抗可変ユニット83に矢印Qa側に送液されて、ポンプ78が接続されているバイパス経路である第3の流路61内の空気が流路抵抗可変ユニット83側に押し出され、インクで置換される。
【0061】
その後、所定時間が経過した時(タイマがカウントアップした時)に、吸引ポンプ53とポンプ78を両方とも停止させる。この段階で、インク供給経路内を全てインクで充填することができる。
【0062】
その後、維持ユニット51のキャップ52によるキャッピングを解除し、維持ユニット51に備えられる図示しないワイパー部材で記録ヘッド10のノズル面をワイピングし、記録ヘッド10を駆動して画像形成に寄与しない所定の滴数のインク滴をノズルから吐出させる(ヘッド空吐出)ことで、ノズルに所望のメニスカスを形成できる。
【0063】
このようにして、インクの初期充填が完了する。なお、図12に示すフロー図ではアシストポンプ(ポンプ78)をノズル吸引停止まで継続して駆動しているが、前述したバイパス経路(分岐部63から第4の流路62、第3の流路61及び横穴86cを経路)のインク置換が完了しだい停止しても初期充填を行うことができる。ただし、図12に示す例では、液体供給チューブ71と記録ヘッド10への充填時にもポンプ78を駆動するので、より短時間に初期充填を完了することができる。
【0064】
次に、印字動作について図13に示すフロー図を参照して説明する。
印字ジョブ信号を受信した後、まず温度センサ27で機内(装置内)の温度を検知し、インクの温度を推定する。なお、温度センサ27はキャリッジ4に搭載されている(図2参照)が、インクカートリッジ部や記録ヘッド部等別の場所に設けられていてもよい。また、インク供給経路内に設けてインクの温度を直接検知しても良い。
【0065】
そして、インクの温度に基づいてアシストポンプ78で送液する流量を決定し、ポンプ78を駆動する。その後、記録ヘッド10のノズル面を覆っているキャップ52をノズル面から離間させて(キャッピング解除)、所定の滴数の空吐出を実施した後、印字を開始する。
【0066】
このとき、アシストポンプ78が駆動されているので液体供給チューブ71が長いシステムで高粘度のインクを用いる場合でもインク供給に伴う圧力損失を適切に低減することができ、インクの供給不足を生じさせることなく良好な印字を行うことができる。
【0067】
印字終了後、キャリッジ4を装置の所定の位置(ホームポジション)に停止させ、記録ヘッド10のノズル面をキャップ52でキャッピングする。その後、アシストポンプ78を停止させる。
【0068】
ここで、アシストポンプ78は印字終了後直ちに停止させても良い。また、温度に基づいてアシストポンプ78の送液量を制御しているが、インク供給仕様等の条件によっては、最も低温環境でのインク供給で供給不足を起こさない送液量で、全ての温度条件で送液することも可能である。
【0069】
このような印字動作を行うとき、吐出するインクの粘度が大きい場合や液体供給チューブ71の流体抵抗が大きい場合、例えばチューブが細かったり長かったりする場合、あるいは、インク吐出流量が大きい場合には、インク供給経路の流体抵抗によりインク供給が追いつかなくなる事態が生じる。具体的には、本インク供給システムでインク供給抵抗となる主要な要素としては、液体供給チューブ71、フィルタ109、ジョイント89がある(図9参照)。
【0070】
例えば、液体供給チューブ71の直径が2.8mm、長さが2500mmのロングチューブを備える広幅の画像形成装置において、16cPの高粘度インクを吐出した場合には、液体供給チューブ71の流体抵抗は2.7e10[Pa・s/m]となる。また、フィルタ109及びジョイント89の流体抵抗は、この実施形態では、それぞれ1e10[Pa・s/m]、2e9[Pa・s/m]のものとしている。
【0071】
ここで、記録ヘッド10から安定した吐出ができる圧力損失の限界値を2.5kPaとし、全ノズルから連続してインクを吐出した場合には0.1cc/sの吐出流量となる。その時の圧力損失は、6.9kPaである。圧力制御ユニット81がない場合でも3.94kPaとなるので、単純な水頭差インク供給システムでは自然供給することはできない。
【0072】
このようにインク供給系の抵抗により圧力損失が増大しリフィルが不足するときに、ポンプ78を駆動して第3の流路43からインクを矢印Qa(Qaはアシスト流量、あるいはアシスト用液体の流れであるが、便宜上矢印の符号としても使用する。)の方向に送り出す。このポンプ78の送液によってインクの供給不足量を補う(リフィルアシスト)ことができる。
【0073】
記録ヘッド10の吐出流量とポンプ78の送液量(アシスト流量)と記録ヘッド10の圧力の関係の一例を図14に示している。図14は、アシスト流量を0〜0.2cc/sとしたときのヘッド吐出流量に対するインク供給系の圧力損失の変化を示している。前述したように、アシスト流量が「0」のときは、ヘッドの圧力損失は約7kPaとなり、インクを連続吐出できず、噴射不良となってしまうが、ポンプ78によりアシストすることにより圧力損失が1kPa以下程度となり、連続吐出することができる。
【0074】
ここで、前述した図10を参照して本インク供給システムのアシスト原理について説明する。
図10(a)は記録ヘッド10から滴吐出を行っていない状態、あるいは、吐出流量が少ない条件での流路抵抗可変ユニット83の状態を示している。この状態では、弁体88はポート86b側にある。図10(a)に示すように、管部材87と弁体88の下部88bの間のギャップGbが管部材87と弁体88の上部88tのギャップGtよりも大きいこと、更に、ポート86aの先には図9に示すように流体抵抗の大きい液体供給チューブ71やフィルタ109があるため、矢印Qaで示すポンプ78によって送液されたインクは、流れやすいポート86b側に流れる(矢印C)。したがって、ポンプ78によって発生するインクの流れは、図9におけるポンプユニット80と流路抵抗可変ユニット83で形成されるループ経路内を循環するだけであり、記録ヘッド10の圧力にはほとんど影響を与えない。
【0075】
一方、図10(b)は記録ヘッド10の吐出流量が多い条件での流路抵抗可変ユニット83の状態を示している。管部材87と弁体88の上部88tのギャップGtを狭く設定することで、矢印Qhで示す記録ヘッド10からの滴吐出によるインクの流れによって、弁体88がポート86a側に引かれ弁体88が移動する(図で上方向に移動する。)。これにより、弁体88の下部88bが管部材87の小径部(流路部分87b:第2の絞り部182)に移動し、管部材87と弁体88の下部88bの間のギャップは小さいギャップGb1となる。矢印Qaで示すようにポンプ78によって送液されるインクは、この狭いギャップGb1を流れようとする(矢印D)ので、圧力が発生する。この圧力が、記録ヘッド10にインクが流れる際に発生する圧力損失を低減させ、大流量のインク供給を実現することができる。
【0076】
この流路抵抗可変ユニット83では、記録ヘッド10の吐出流量が増して圧力損失が大きくなる条件ほど、弁体88の下部88bの周面と管部材87の流路部分87bとのインクの流れ方向の対向長さ(第2の絞り部182の長さ)が長くなって、弁体88の下部88bと管部材87の狭ギャップGb1の長さが長くなり、よりポンプ(アシストポンプ)78による増圧効果を大きくする。これにより、従来のように流量調整弁を他のアクチュエータ等で制御する煩雑さがなく、簡易な構成で自動的に安定したインク供給を実現することができる。
【0077】
次に、維持回復動作における気泡や増粘インクなどの異物を排出する動作の一例について図15のフロー図を参照して説明する。
インクカートリッジ76が装着済であるか否かを確認し、インクカートリッジ76の装着が確認されたときには、アシストポンプ78の駆動を開始し、流体抵抗可変ユニット83に対するインクの送液を開始する。このとき、前述したように、流体抵抗可変ユニット83送液されたインクは第1の流路71側と第2の流路60側に分かれて流れることになる(図16の送液中の期間)。
【0078】
その後、流量調整弁300を制御し、第2の流路60へのインク流量を制限すると、第1の流路71に流れ込む液量が瞬間的に大きくなり、記録ヘッド10内部におけるインク流速が高まる。
【0079】
このようにして第1の流路71への流量が大きくなると、流路抵抗可変ユニット83内の弁体88が上部に上昇して停止する(図16の時点t1)。つまり、弁体88が急激な流速変化により上昇可能な移動範囲まで上昇して停止すると、第1の流路71へのインクの流量が低下する(図16の流量低下の期間)。
【0080】
そして、流量調整弁300による流量制限開始から所定時間が経過した後(カウントアップした後)、流量調整弁300による流量制限を解除して流量の回復を行い、アシストポンプ78の駆動を停止する(図16の時点t2)。
【0081】
その後、ワイパ部材57よって記録ヘッド10のノズル面10aをワイピングして清浄化し、記録ヘッド10から空吐出を行なった後、キャップ52によって記録ヘッド10をキャッピングして回復動作を終了する。
【0082】
このように、瞬間的に第1の流路へインクを送液することで、ヘッド内部の流速を高めた排出動作(回復動作)を行うことができ、ヘッド内の気泡などの異物を効率的に除去することができる。
【0083】
この場合、流量調整弁300としては開閉弁で構成することができ、開閉弁を閉じて流量制限を行なう。
【0084】
また、アシストポンプ78といて送液量を変更することができるものを使用して、単位時間当たりの流量Qが流量Q1の動作と流量Q2(Q1<Q2)で送液できるようにして、異物排出動作において、液体の消費量が少ない第1の排出動作(流量Q1で送液)と、消費量の多い排出性を高めた第2の排出動作(流量Q2で送液)という2種類の排出動作を選択的或いは重畳的に行なうことができるようにすることもできる。
【0085】
また、流量調整弁300としては流量に応じて流体抵抗が変化し、流量が大きくなると流体抵抗が大きくなる弁で構成することもできる。これにより、上述したように流量Q1の排出動作と流量Q2の排出動作を行うことができるようにした場合、流量Q2による排出動作を行うときには、自動的に流体抵抗が大きくなるので、流量調整弁300の動作を外部から制御することなく、第1の流路71への液体流量を一時的に高めることができ、排出性を効率的に実施することができる。
【0086】
次に、維持回復動作の他の例について図17のフロー図をも参照して説明する。
前記図15の例と同様に、インクカートリッジ76が装着済であるか否かを確認し、インクカートリッジ76の装着が確認されたときには、アシストポンプ78の駆動を開始し、流体抵抗可変ユニット83に対するインクの送液を開始する。このとき、前述したように、流体抵抗可変ユニット83送液されたインクは第1の流路71側と第2の流路60側に分かれて流れることになる。
【0087】
その後、流量調整弁300を制御し、第2の流路60へのインク流量を制限すると、第1の流路71に流れ込む液量が瞬間的に大きくなり、記録ヘッド10内部におけるインク流速が高まる。
【0088】
この流量が最大に高まった状態(弁体88が上部に上昇して停止するまでの間)で、維持回復機構51のキャップ82aを上昇させて記録ヘッド10のノズル面10aをキャッピングし、吸引ポンプ53を駆動して、キャップ82a内を負圧にすることで、ノズル15からのインクの吸引動作を開始する。これによりアシストポンプ78による加圧と、吸引ポンプ53の吸引圧により、記録ヘッド10内部におけるインク流速を高めることができ、より記録ヘッド10内の気泡を効率良く排出することができる。
【0089】
そして、所定時間経過した後(カウントアップした後)、吸引動作を停止し、流量調整弁300による流量制限を解除して流量の回復を行い、アシストポンプ78の駆動を停止する。
【0090】
そして、キャッピングを解除した後、ワイパ部材57よって記録ヘッド10のノズル面10aをワイピングして清浄化し、記録ヘッド10から空吐出を行なった後、キャップ52によって記録ヘッド10をキャッピングして回復動作を終了する。
【0091】
このように、記録ヘッド10からの吸引動作を併せて行うことによってヘッド内に残存する気泡及び増粘インクなどの異物をより効果的に排出することができる。
【0092】
なお、以上の説明においては大気開放部90を有するインクカートリッジ76を用いて動作等の説明を行ったが、本発明はインクを収容した袋を用いたインクカートリッジなどを用いた場合にも同様に適用できる。
【0093】
また、以上の説明においては、異なる色のインクが供給される例で本願発明の動作、効果を説明したが、同一色のインクを複数のヘッドに供給する場合や、色ではなく処方の異なるインクを複数のヘッドに供給する場合にも同様に適用することができる。また、狭義のインクを吐出する画像形成装置に限定されるものではなく、様々な液体を吐出する液体吐出装置(本発明でいう「画像形成装置」に含まれる。)にも適用することができる。
【符号の説明】
【0094】
4 キャリッジ
10 記録ヘッド
30 サブタンク
60 第2の流路
61 第3の流路
62 第4の流路
63 分岐部
64 第5の流路
71 液体供給チューブ(第1の流路)
76 インクカートリッジ(メインタンク:液体タンク)
77 カートリッジホルダ
78 ポンプ(アシストポンプ)
80 ポンプユニット
81 圧力制御ユニット
83 流体抵抗可変ユニット
87 管部材(流路形成部材)
88 弁体
151 絞り可変弁
165 バイパス流路
300 流量調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに供給する液体を貯留する液体タンクと、
前記記録ヘッドに前記液体を供給する第1の流路と、
途中に分岐部を有し、前記液体タンクに連通する第2の流路と、
前記第1の流路と前記第2の流路を連通させる圧力調整弁と、
前記圧力調整弁に前記液体を送る送液手段と、
前記圧力調整弁と前記送液手段を連通する第3の流路と、
前記分岐部と前記送液手段を連通する第4の流路と、を有し、
前記圧力調整弁は、前記第1の流路を流れる液体の流量に応じて内部の流路抵抗が変化し、
前記ノズルから液滴を吐出するときには、前記圧力調整弁を介して前記記録ヘッドと前記液体タンクが連通している状態で、前記送液手段により前記液体を前記液体タンクから前記記録ヘッドに送液する画像形成装置であって、
前記圧力調整弁と前記分岐部の間に流量を調整する流量調整手段と、
前記記録ヘッドの維持回復を行うときに、前記流量調整弁で前記圧力調整弁から前記分岐部への流量を制限した状態で前記送液手段から送液を行わせる手段と、を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項2】
前記流量調整手段が開閉弁であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記流量調整手段が流量に応じて流体抵抗が大きくなる弁であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップと、前記キャップに接続された吸引手段とを備え、前記維持回復を行うとき、前記キャップで前記記録ヘッドのノズル面をキャッピングした状態で前記吸引手段を駆動させて前記キャップとノズル面との間のキャップ内空間を負圧にして前記記録ヘッドのノズルから液体を吸引する動作を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−831(P2011−831A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147033(P2009−147033)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】