説明

画像形成装置

【課題】同じ光学式センサを用いても測定用トナー像のトナー載り量の違いを精密に判別して画像形成時のトナー像のトナー載り量を精度高く設定可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成を中断して、同一の画像形成条件で感光ドラム1にパッチ画像とラインパッチ画像を形成して中間転写ベルト62に一次転写し、中間転写ベルト62に対向配置した光学式センサ9により検出する。検出結果に応じて現像スリーブ41A、41Bの周速を調整して、パッチ画像とラインパッチ画像のトナー載り量の比率を1に近付ける。ポスト帯電装置5の出力を通常の画像形成時よりも大幅に高めることで、ラインパッチ画像の一次転写時にトナーが面状に散って、光学式センサ9による検出精度が高まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線画像の測定用トナー像を光学式センサで検出して現像装置の運転条件を調整する画像形成装置、詳しくは光学式センサによる線画像の測定用トナー像のトナー載り量の検出精度を高める制御に関する。
【背景技術】
【0002】
感光体からパッチ画像を転写可能な転写媒体(中間転写体又は記録材搬送体)を用いてモノクロ又はフルカラーの画像形成を行う画像形成装置が広く用いられている。転写媒体を用いる画像形成装置では、非画像形成時の感光体に測定用トナー像(パッチ画像)を形成して転写媒体に転写させ、転写媒体に対向配置した光学式センサで測定用トナー像からの反射光を検出している。そして、光学式センサの検出結果に基いて測定用トナー像のトナー載り量が所定値に収束するように、画像形成時に用いる画像形成条件を調整している(特許文献1)。測定用トナー像(パッチ画像)としては、100%の露光デューティで形成されたベタ画像やスクリーンパターンで二値的に中間階調を表現したハーフトーン画像が用いられている。
【0003】
しかし、特許文献1に示されるように、ベタ画像やハーフトーン画像の測定用トナー像(パッチ画像)を用いて現像装置の運転条件を設定した場合、線画像のトナー載り量が過剰になる場合がある。
【0004】
特許文献2には、転写媒体として中間転写ベルトを用いた画像形成装置と転写媒体として記録材搬送ベルトを用いた画像形成装置とのいずれにおいても、線画像のトナー載り量が面画像に比較して過剰になることが記載されている。図1を参照して説明すると、特許文献2では、感光体(1)の回転方向に間隔を置いて複数の線画像を配列した線画像の測定用トナー像を形成させて転写媒体(62)に転写させ、転写媒体(62)に対向配置した検出手段(9)により検出する。そして、線画像の測定用トナー像の検出結果に基づいて現像条件を調整することにより、面画像の場合と等しいトナー載り量で線画像が形成されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−113568号公報
【特許文献2】特開2001−154425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に示されるように、回転方向に間隔を置いて配列した線画像で構成される測定用トナー像を光学式センサで検出した場合、トナー載り量を精度高く判別することが困難である。トナー粒子が複数層重なると中間転写ベルト62からの反射光が光学式センサに入射しなくなって出力が飽和してしまう。そのため、図9の(b)に示すように現像コントラストを高めてトナー載り量を増加させても、図9の(a)に示すトナー載り量が少ない場合と比べて光学式センサの出力値が図9の(c)に示すようにあまり変化しない。その結果、線画像のトナー載り量を正確に判別することができず、線画像のトナー載り量の設定誤差が大きくなる。
【0007】
本発明は、同じ光学式センサを用いても測定用トナー像のトナー載り量の違いを精密に判別して画像形成時のトナー像のトナー載り量を精度高く設定可能な画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像形成装置は、感光体と、前記感光体に静電像を形成する静電像形成手段と、前記静電像をトナー像に現像する現像装置と、トナー像を担持して搬送可能な転写媒体へ前記感光体からトナー像を転写させる転写手段と、前記転写媒体に担持されたトナー像を光学的に検出する検出手段と、非画像形成時に、前記感光体の回転方向に間隔を置いて複数の線画像を配列した線画像の測定用トナー像を形成させ、前記線画像の測定用トナー像を前記検出手段により検出させた検出結果に基づいて、前記現像装置の運転条件を制御する制御手段と、前記現像装置にて現像された所定幅の線画像を前記検出手段へ搬送させる間に、前記現像された所定幅の線画像の幅を通常画像形成時よりも拡大させる線幅拡大手段とを備え、前記制御手段は、前記線幅拡大手段にて拡大された前記線画像の測定用トナー像から反射された反射光に基いて前記現像装置の運転条件を制御するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の画像形成装置では、現像装置と検出手段との間で線画像の測定用トナー像における線画像の線幅を拡大させるので、線幅が拡大した分、トナー像の厚みが少なくなって転写媒体からの厚みに応じた反射光が検出手段に検出され易くなる。また、図8の(c)に示すように、トナー像を担持した部分との間の反射光量差が大きい転写媒体面の割合が少なくなるため、転写媒体面からの反射光ノイズが少なくなって測定SN比が高まる。
【0010】
従って、同じ光学式センサを用いても測定用トナー像のトナー載り量の違いを精密に判別して画像形成時のトナー像のトナー載り量を精度高く設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態の画像形成装置の構成の説明図である。
【図2】現像スリーブの回転速度と一成分現像剤の劣化速度の関係の説明図である。
【図3】光学式センサの構成の説明図である。
【図4】最大濃度制御のフローチャートである。
【図5】最大濃度制御に用いるパッチ画像の説明図である。
【図6】パッチ画像のトナー載り量の測定結果の説明図である。
【図7】ベタライン比がピークとなるライン幅の説明図である。
【図8】ラインパッチ画像の説明図である。
【図9】実施例1の制御の説明図である。
【図10】実施例1の制御の効果の説明図である。
【図11】現像スリーブの周速とベタライン比の関係の説明図である。
【図12】実施例1の制御のフローチャートである。
【図13】実施例2の制御のフローチャートである。
【図14】実施例3の制御で用いる転写前露光装置の配置の説明図である。
【図15】実施例3の制御のフローチャートである。
【図16】実施例4の制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明は、現像された直後よりもトナー付着面積を広げた状態で測定用トナー像を光学式センサにより検出する限りにおいて、実施形態の構成の一部又は全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
【0013】
本実施形態では、中間転写ベルトを用いたモノクロ画像形成装置を説明するが、本発明はフルカラーでも実施でき、中間転写ドラム、記録材搬送ベルト等の転写媒体を用いる画像形成装置でも実施できる。
【0014】
本実施形態では、一成分現像剤を用いた所定幅のライン画像のトナー載り量を調整する制御を説明するが、二成分現像剤を用いてパッチ画像を形成してトナーの帯電量を調製する制御でも本発明を実施できる。
【0015】
本実施形態では、トナー像の形成/転写に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。記載されている構成要素の寸法、材質、形状、相対配置、数値等は、理解を容易にするための一例であり、発明の範囲を限定しない。
【0016】
なお、特許文献1、2に示される画像形成装置の構成及び制御に関する一般的な事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。
【0017】
<画像形成装置>
図1は実施形態の画像形成装置の構成の説明図である。図2は現像スリーブの回転速度と一成分現像剤の劣化速度の関係の説明図である。
【0018】
図1に示すように、画像形成装置100は、中間転写方式で高速化を実現したデジタル・モノクロ・複写機であって、外部情報を画像信号に変えるリーダー部200と接続されているか、一体化されている。リーダー部200は、原稿の画像を読み取る画像読取装置、あるいは画像形成ジョブを送信するパソコン等であって、画像読取装置に読み取られた原稿画像の輝度信号、あるいはパソコン等から転送された画像信号を画像形成装置100に送信する。
【0019】
画像形成装置100は、感光体(1)及び中間転写体(62)を用いて、帯電工程、露光工程、現像工程、転写前帯電工程、転写工程、定着工程を基本的に含む画像形成工程を実施する。
(1)帯電工程では、帯電手段(2)が帯電バイアスを印加して感光体(1)の表面を所定電位に一様に帯電する。
(2)露光工程では、静電像形成手段(3)がリーダー部200から受信した画像情報に基づいてレーザー光Lを照射して感光ドラム1を露光する。所定電位に帯電された感光ドラム1の表面電位は、レーザー光Lを照射することによって、照射部分の感光ドラム1の表面電位が低下して静電像が形成される。
(3)現像工程では、現像手段(4)が一成分現像剤(磁性トナー)を現像剤担持体(41A、41B)に担持させて静電像の非露光部分にトナーを転移させて、感光ドラム1にトナー像を形成する。
(4)転写前帯電工程では、線幅拡大手段(5)を兼ねた転写前帯電手段(5)によって、感光ドラム1上のトナー像の帯電を強化して、中間転写体(62)へ効率の良い転写を行わせる。
(5)転写工程では、転写手段(61)によって感光ドラム1上のトナー像を転写媒体(62)に一次転写した後、転写手段(63)によって転写媒体(62)から記録材Pへ二次転写する。
(6)定着工程では、定着手段(7)によって、トナー像を担持した記録材Pを加熱加圧してトナー像を記録材Pに熱定着させる。
(7)清掃工程では、感光ドラム1上に残留した転写残トナーがクリーナー81によって清掃され、中間転写ベルト62上に残留した転写残トナーがクリーナー82によって清掃される。
【0020】
リーダー部200は、フラットベッドスキャナ等の画像読取装置で原稿の画像を読み取る。リーダー部200に設置された画像処理部は、読み取った画像に所定の画像処理を施して画像情報を生成する。露光に用いる画像情報は、画像読取装置の読み取り動作に同期して、露光装置3に転送されるようになっているが、パソコン等から転送されてくる場合もある。
【0021】
感光ドラム1は、アルミニウム円筒材料で形成された直径108mmの導電性ドラム基体の外周面にアモルファスシリコン感光層(光導電層)を形成したa−Si感光体である。感光ドラム1は、帯電極性が正極性の感光体(ポジ感光体)であり、矢印の方向に600mm/secのプロセススピード(周速)で回転駆動される。帯電極性が正極性の感光ドラム1に形成された静電像を、帯電極性が負極性のネガトナーを用いて現像する場合、正規現像方式で現像が行われて、感光ドラム1の露光を受けた部分が画像の白地部となる。
【0022】
帯電装置2は、2本の放電ワイヤー2aとグリッド線2bから構成されるコロナ帯電器である。不図示の電源が放電ワイヤー2aに所定の電圧を印加すると、コロナ放電が発生して荷電粒子が感光ドラム1に照射される。グリッド線2bに印加する電圧を調整することで、感光ドラム1の外周面が+200〜+600Vの範囲で均一に帯電される。ここでは、感光ドラム1の帯電電位(暗部電位VD)は+500Vとしている。
【0023】
露光装置3は、画像情報に応じてON−OFF変調(二値のPWM変調)されたレーザー光Lを感光ドラム1の表面に走査して静電像の書き込みを行うレーザー書き込みユニットである。露光装置3は、レーザー光Lの露光によって、感光ドラム1の暗部電位VDを導電性ドラム基体を通じて接地電位へ放電させる。これにより、感光ドラム1の表面電位を暗部電位VD=+500Vから明部電位VL=+50〜+500Vまで低下させる。
【0024】
現像装置4は、現像容器40に内包する一成分現像剤が、帯電極性が負極性の磁性トナーである。現像装置4は、マグネット45A、45Bを内包した現像スリーブ41A、41Bを2つ有しており、現像スリーブ41A、41Bと感光ドラム1とのギャップは、それぞれ180〜320μmに程度に設定されている。現像スリーブ41A、41Bは、矢印の方向に回転しながら磁性トナーを担持して感光ドラム1との対向部へ搬送する。
【0025】
現像スリーブ41Aの直径は30mm、現像スリーブ41Bの直径は20mmである。現像スリーブ41A、41Bは、軸端の一方が不図示のギア列で連結されて一定の速度比を保って回転するが、後述するライン画像のトナー載り量制御のため、その回転速度(周速)は可変である。
【0026】
現像スリーブ41Aに近接して現像容器40に層厚規制部材(磁性ブレード42)が設けられ、磁性ブレード42は、現像スリーブ41Aの表面に連れ回るトナー層の厚みを規制する。現像スリーブ41Bの表面に連れ回るトナー層は、現像スリーブ41Aに内包されたマグネット45Aによって規制される。これにより、現像スリーブ41A、41Bには、0.5〜1.5mg/cm程度の薄層トナーが形成される。
【0027】
電源D4は、直流電圧Vdcに交流電圧を重畳した振動電圧の現像バイアスを現像スリーブ41A、41Bに印加する。これにより、感光ドラム1との対向部において、感光ドラム1上に磁性トナーが移動して所望のトナー載り量のトナー像形成が行われる。交流電圧は、振幅Vppが1〜2kV、周波数fが1000〜4000Hzである。
【0028】
一般的に、現像スリーブは、周速が速い方が現像性は高く、現像コントラストに対するトナーの充填効率が良いため、感光ドラム1上の静電像に対してより忠実に現像できる。その反面、周速が速い方が磁性ブレード/現像スリーブ・ギャップや現像スリーブ/現像スリーブ・ギャップにおけるトナーの衝突や摩擦が増えて、トナー粒子への外添剤の埋め込みなどの現像剤劣化が進んでしまう。
【0029】
トナー粒子への外添剤の埋め込み度合いを表す指標として、BET比表面積が知られている。BET比表面積は、1個のトナー粒子の表面に占める帯電に関与できる表面積の割合に対応しており、一成分現像剤の攪拌累積が進み、外添剤が表面に埋め込まれていくに連れて、BET比表面積が低下していく。
【0030】
図2に示すように、現像スリーブの累積回転時間が増すと、磁性トナーのBET変化率が低下する。BET変化率は、新品の初期現像剤に対する耐久剤のBET比表面積の割合を表した比率であって、外添剤が埋め込まれていくほど数値が低下する。現像スリーブ41A、41Bの周速が速くて感光ドラム1に対する周速比が高いほど、一成分現像剤の劣化には厳しい。そのため、画質を向上させるには、できるだけ現像スリーブ41A、41Bの周速を高めたいが、現像剤の劣化とトレードオフの関係にあるため、現像スリーブ41A、41Bの周速には上限があって最適化する必要がある。ここでは、現像スリーブ41A、41Bの周速の上限は、感光ドラム1と等速の600mm/sec(周速比100%)とした。
【0031】
ポスト帯電装置5は、画像形成時、放電ワイヤー5aに帯電バイアスを印加してコロナ放電を発生させ、コロナ放電に伴う荷電粒子をトナー像を担持した感光ドラム1に照射してトナー像の帯電状態を強化する。これにより、画像形成時には、感光ドラム1上に形成されたトナー像の帯電量を高めて、中間転写ベルト62への一次転写を容易にしてアシストする。
【0032】
中間転写ベルト62は、不図示の駆動機構により駆動される駆動ローラ64Aと、所定のテンションを付与するためのテンションローラ64Cと、対向ローラ64Bとに掛け渡して支持される。中間転写ベルト62は、画像形成時には、感光ドラム1の回転速度(周速)と同一の周速度で矢印R2方向に回転してトナー像を搬送可能である。
【0033】
一次転写ローラ61は、中間転写ベルト62の内側面を押圧して、感光ドラム1上に当接させ、感光ドラム1と中間転写ベルト62との間にトナー像の一次転写部T1を形成する。一次転写ローラ61は、中心の直径8mmの金属製支持軸の外周に厚さ4mmのスポンジゴム弾性層を形成した直径16mmの中抵抗の導電性ゴムローラであって、抵抗が1×10Ωである。
【0034】
電源D1は、トナー像の帯電極性と逆極性(プラス)の所定の一次転写バイアスを一次転写ローラ61の金属製支持軸に印加して、感光ドラム1に担持されたトナー像を中間転写ベルト62へ一次転写させる。
【0035】
二次転写ローラ63は、接地電位に接続された対向ローラ64Bに内側面を支持された中間転写ベルト62に当接して二次転写部T2を形成する。二次転写ローラ63は、直径12mmの金属製支持軸の外周にスポンジゴム弾性層を形成した直径24mmの中抵抗の導電性ゴムローラであって、抵抗が1×10Ωである。
【0036】
電源D2は、トナー像の帯電極性と逆極性(プラス)の所定の二次転写バイアスを二次転写ローラ63の金属製支持軸に印加して、中間転写ベルト62に担持されたトナー像を記録材Pに二次転写させる。
【0037】
定着装置7は、トナー像を転写された記録材を、一対の加熱されたローラのニップで加熱・加圧しつつ搬送してトナー像を記録剤Pの表面に定着させる。
【0038】
<最大濃度制御>
図3は光学式センサの構成の説明図である。図4は最大濃度制御のフローチャートである。図5は最大濃度制御に用いるパッチ画像の説明図である。図6はパッチ画像のトナー載り量の測定結果の説明図である。
【0039】
電子写真方式の画像形成を行う画像形成装置100は、周囲の環境、使用状況等によって、各部の特性が変化し易く、固定の画像形成条件では、高品質の画像を安定して出力し続けることが難しい。そこで、画像形成装置100では、非画像形成時の感光ドラム1に所定の運転条件で面画像の制御用トナー像(パッチ画像)を形成して中間転写ベルト62に転写させる。そして、転写媒体(62)上のパッチ画像を検出手段(9)により検出して、パッチ画像のトナー載り量が適正になるように、画像形成装置100の各部の運転条件、すなわち帯電量、露光量、現像バイアス等を調整する。
【0040】
図3に示すように、光学式センサ9は、中間転写ベルト62の表面から6mmの間隙を置いて中間転写ベルト62に対向配置される。光学式センサ9は、中間転写ベルト62の表面に対して45度の傾き角度で発光ダイオード91から波長880nmの近赤外光を斜めに照射して直径2mmの照明スポットを形成する(図8の(b)参照)。光学式センサは、直径2mmほどの検出スポット内から受光した反射光を検出して、検出スポット内のトナー載り量を光学的に検出する。
【0041】
光学式センサ9は、照明スポットからの正反射光を検出するように45度の傾き角度でフォトダイオード92の光軸を配置している。中間転写ベルト62上にトナーが付着していると散乱光が増えて正反射光が減じるため、中間転写ベルト62上のトナー載り量が多いほどフォトダイオード92の受光量が減少する。光学式センサ9は、フォトダイオード92の入射光の強度(電圧値)に応じて、中間転写ベルト62上のトナー像のトナー載り量に応じた出力を出力する。
【0042】
図1を参照して図4に示すように、制御部51は、画像形成装置100の電源投入時、前回の制御から所定時間(又は所定画像形成枚数)の経過時、或は所定幅を超えて環境の温度湿度が変動した際に、画像形成を停止して最大濃度制御を実行する。これにより、濃度変動が抑制された出力画像を提供できる。
【0043】
まず、制御部51は、現像装置4に取り付けられた電位センサ10によって、感光ドラム1の表面電位を計測しながら、帯電装置2のグリッドバイアスVgridを、帯電電位(暗部電位VD)が500Vになるように設定する(S11)。
【0044】
次に、制御部51は、図5に示すように、露光装置3のレーザーパワーを5段階(LPW1〜LPW5)に変化させ、電位センサ10によって感光ドラム1上の露光電位(明部電位VL1〜VL5)を計測する。そして、現像バイアスのDC成分Vdcと明部電位VLとの差(いわゆるかぶり除去コントラストVback)が150Vで一定となるようにVdcを決定(Vdc1〜Vdc5)する(S12)。
【0045】
次に、制御部51は、露光装置3のレーザーパワー(LPW1〜LPW5)及び現像バイアスのDC成分(Vdc1〜Vdc5)を5段階に変化させた5つの面画像の測定用トナー像(パッチ画像PG1〜PG5)を形成する。5つのパッチ画像PG1〜PG5は、中間転写ベルト62に一次転写されて光学式センサ9により検出される。
【0046】
そして、制御部51は、光学式センサ9の出力に基づいて、5つのパッチ画像PG1〜PG5のトナー載り量をそれぞれ演算し、定着画像の反射濃度が1.6となるような所定のトナー載り量が得られる画像形成条件を補間演算により決定する(S13)。
【0047】
図6は、露光装置3のレーザーパワー(LPW1〜LPW5)を5段階に変化させて形成したパッチ画像PG1〜PG5の現像コントラストVcontとトナー載り量の関係を示している。現像コントラストVcontは、トナーの静電吸着容量のパラメータであって、Vcont=VD−Vdc で定義される。
【0048】
ここでは、定着画像の反射濃度が1.6となるトナー載り量として、0.65mg/cmをターゲットとしている。ターゲットのトナー載り量0.65mg/cmを挟む2点(225V、250V)を直線(線形)補完で結んで、現像コントラストVcontとトナー載り量との関係を表す一次式を導く。そして、導いた一次式にトナー載り量=0.65mg/cmを代入して、現像コントラストVcontを求めている。
【0049】
図6の測定結果によれば、パッチ画像PGのトナー載り量が0.65mg/cmとなる現像コントラストVcontとして230Vが導き出される。そのときの現像バイアスの直流成分Vdcは500V−230V=270Vである。適正なレーザーパワーLPWは、図5に示すLPW2とLPW3との間となり、補間演算によって標準状態から+9%Upさせて設定される。
【0050】
<線画像濃度>
図7はベタライン比がピークとなるライン幅の説明図である。図8はラインパッチ画像の説明図である。
【0051】
画像形成装置100により形成される画像を大別すると、ベタ画像、ハーフトーン画像(例えば写真画像)、ライン画像(文字画像を含む)がある。光学式センサ9によりベタ画像のパッチ画像を検出する方法やハーフトーン画像のパッチ画像を検出する方法では、面画像の最大濃度や階調特性を安定させることが可能である。しかし、線画像(文字画像を含む)に対しては、面画像の制御用トナー像(パッチ画像)を用いることが、必ずしも適切な画像濃度制御とは言えない。
【0052】
特許文献2に示されるように、文字などの線画像において過剰のトナーが感光ドラム1上に現像されてしまうため、一般的に、線画像の濃度は、面画像の最大濃度(ベタ濃度)よりも高くなる傾向がある。この原因は、同一の画像形成条件により形成されたベタ画像のトナー載り量に対して、線画像のトナー載り量のほうが多くなる傾向があるためである。そして、同一の画像形成条件でベタ画像と線画像とを形成した際に、線画像のトナー載り量がベタ画像のトナー載り量に対してどれくらい多いかを示す比率をベタライン比と呼んでいる。ベタライン比は、ベタ画像のトナー載り量に対する線画像のトナー載り量の比率である。
【0053】
ベタライン比が大きくなる要因は、所定幅以内の線画像の領域における現像電界のエッジ効果であって、数ドットのライン(画像形成装置100では、600dpiで8ドットライン)でそれが顕著となる。そして、ベタライン比が大きくて、画像中のベタ画像部分に比較して線画像部分のトナー載り量が過剰な状態では、中間転写ベルト62や記録材Pへトナー像を転写する際に、線画像部分の中抜けや飛び散りが発生し易くなる。また、記録材Pにトナー像を定着する際に、線画像部分の定着不良が発生し易くなる。
【0054】
このため、線画像の飛び散りや中抜け、定着不良に関しては、面画像の制御用トナー像(パッチ画像PG1〜PG5)を用いた最大濃度制御では防止できない。線画像ではトナー載り量が面画像よりも多くなってしまうためである。
【0055】
そこで、画像形成装置100では、面画像の制御用トナー像(PG1〜PG5)を用いた最大濃度制御に続けて、線画像の制御用トナー像(ラインパッチPL1〜PL5:図8)を用いた線画像の最大濃度制御を行っている。
【0056】
図7は、画像形成装置100において、ベタ画像のトナー載り量が0.65mg/cmとなる一定の画像形成条件下で線幅を異ならせて出力した様々なライン幅の線画像で測定したベタライン比を示している。図7に示すように、ベタライン比は、線画像のライン幅が太くなるに従って大きくなるが、所定幅を越えて面画像に近づいていくと小さくなるため、あるドット幅付近でピークを示す。
【0057】
画像形成装置100では、ライン幅によってトナー載り量が異なり、8ドットライン(0.34mm)付近でベタライン比が最大値を示す。このため、画像形成装置100では、8ドットラインで構成されるラインパッチ画像を測定することで、ベタライン比の最も厳しい条件、すなわち、最大ベタライン比を与える条件下でのトナー載り量の測定が可能になる。
【0058】
ここで、面画像の制御用トナー像(パッチ画像)を用いて最大濃度制御を行った後に線画像の制御用トナー像を用いて線画像のための最大濃度制御を行うこと自体は、特許文献2に記載されている。
【0059】
しかし、特許文献2では、ベタライン比の調整を現像バイアスの直流成分Vdcで行っている。このため、ベタライン比が悪化して線画像のトナー載り量を最適化するように現像バイアスの直流成分Vdcが設定されると、現像バイアスの直流成分Vdcは、面画像のトナー載り量を満足できる値よりも低くなっている。ベタライン比が悪化してライン画像のトナー載り量を最適化する現像バイアスが選択された場合、現像バイアスは、ベタ画像の最大濃度を満足するバイアスよりも低くなるため、ベタ画像の最大濃度を満足したまま、ライン載り量を最適化することができない。つまり、特許文献2の制御では、1枚の画像の中の面画像部分の濃度を満足したまま、線画像部分の濃度を最適化することができない。
【0060】
そこで、以下の実施例では、現像スリーブ41A、41Bの回転速度によってベタライン比が変化することを利用して、ベタライン比が最も厳しい太さの線画像でベタライン比が所定範囲内に収まるように、現像スリーブ41A、41Bの回転速度を設定している。なお、現像バイアスの振動電圧の交流電圧の振幅を変更しても同様の効果、現像バイアスの直流成分Vdcを変化させることなくベタライン比を調整可能な効果がある。
【0061】
また、特許文献2に示されるように、線画像のトナー像をそのまま中間転写ベルト62に転写して検出する方法では、光学式センサ9による線画像のトナー載り量の検出精度が低過ぎてベタライン比を正確に求めることができない。図8の(b)に示すように、ベタライン比が最も大きい8ドット(0.34mm)線画像で測定を行う場合、線画像をそのまま光学式センサ9で検知するのではセンシング分解能が十分とは言えない。現像されたままの線幅状態でラインパターンを検出する方法では、光学式センサ9による線画像のトナー載り量すなわちベタライン比の検知感度に問題がある。
【0062】
画像形成装置100でベタライン比が大きくなる要因の1つは、所定幅以内の線画領域における現像電界のエッジ効果であって、600dpiの8ドットラインでそれが顕著となる。そのため、ベタライン比の最も厳しい(大きい)条件で測定を行うに当って、ラインパッチをそのまま光学式センサで検知する従来の方法では、8ドットのラインパターンに対するセンシング分解能が十分とは言えない。
【0063】
そこで、以下の実施例では、図8の(c)に示すように、現像された線画像の線幅を光学式センサ9に到達するまでに拡大し、線画像のトナーを面状に分散させた状態で光学式センサ9による検出を行っている。
【0064】
これにより、光学式センサ9を用いて線画像のトナー載り量を精度良く検知して制御することでベタライン比を改善し、ベタ画像の最大濃度を維持しながら線画像の中抜けや飛び散り、定着不良を解消できる。
【0065】
<実施例1>
図9は実施例1の制御の説明図である。図10は実施例1の制御の効果の説明図である。図11は現像スリーブの周速とベタライン比の関係の説明図である。図12は実施例1の制御のフローチャートである。
【0066】
実施例1では、図8の(a)に示すように、8ドット336μmの線画像を12ドット504μmの間隔ごとに複数を配列して20mm×20mmに形成したラインパッチ画像PL1〜PL5を光学式センサ9により検出する。すなわち、線画像を配列した測定用トナー像は、検出手段(9)が同時に反射光を検出する検出スポット内に線画像が複数含まれるような等間隔のピッチで線画像のトナー像を配置して構成される。そして、光学式センサ9の出力値から8ドットラインのトナー載り量を割り出してベタライン比を求める。
【0067】
しかし、図8の(b)に示すように、ラインパッチ画像PLを現像したままの状態で光学式センサ9により検出すると、図9の(c)に示すように、線画像のトナー載り量がセンサ出力値(平均値)に反映されにくい。図9の(a)に示すトナー載り量が少ない(層厚が低い)状態と図9の(b)に示すトナー載り量が多い(層厚が高い)状態とで、図9の(c)に示すように平均値があまり違わない。
【0068】
そこで、実施例1では、図8の(c)に示すように、現像直後のトナー載り量は一定のまま、中間転写ベルト62の表面におけるラインパッチ画像PLの再現面積を意図的に増やす。これにより、下地(中間転写ベルト62)部がトナーで覆われトナーの分布状態が平坦化される。その結果、図9の(d)に示すトナー載り量が少ない(層厚が低い)状態と図9の(e)に示すトナー載り量が多い(層厚が高い)状態とで、図9の(e)に示すように平均値の差が大きくなる。線画像のトナー載り量が多い場合でもセンサ出力値(平均値)に反映されるようになるので、ベタライン比の検知精度を向上させることが可能である。
【0069】
実施例1では、ポスト帯電装置5の出力値(電流値或はAC成分のVpp)を画像形成時よりも大幅に高めることで、ラインパッチ画像PL1〜PL5の再現面積を意図的に増やした。
【0070】
ポスト帯電装置5の放電ワイヤー5aに印加する帯電バイアスは、コロナ放電電流が規定値となるように定電流制御されている。画像形成時、帯電バイアスは、DC成分にAC成分(Vpp1〜5kV)を重畳させ、−100〜−200μA程度の定電流制御を行っている。
【0071】
これに対して、ラインパッチ画像PL1〜PL5を現像して中間転写ベルト62へ一次転写させる際には、定電流制御の電流値を−600μAに高め、AC成分の振幅Vppを8kVとする。トナー像の帯電量を画像形成時よりも大幅に増やすことで、一次転写部T1にニップされる手前で感光ドラム1からトナー粒子が離脱して中間転写ベルト62へ転写されるようになる。このとき、中間転写ベルト62の表面に面状に散って転写されるため、図9の(c)、(d)に示すように、中間転写ベルト62上の線画像の線幅が拡大してトナー像の厚みは薄くなる。言い換えれば、線幅拡大手段(5)は、現像された所定幅の線画像の幅を通常画像形成時よりも拡大させる。
【0072】
これにより、図9の(e)に示すように、線画像のトナー載り量が増加するほど、すなわちベタライン比が大きいほど、下地を覆う部分が増えて、中間転写ベルト62からの反射光が少なくなるという関係が顕著になる。
【0073】
これにより、図10の(a)に示す線幅を拡大しない場合に比較して、図10の(b)に示すように、線画像のトナー載り量の違いが、より大きく光学式センサ9の出力差に反映されるようになる。従って、ベタライン比の正確な検出が可能となり、それに基づく線画像のトナー載り量制御を精度良く行うことが可能となる。
【0074】
図11に示すように、実施例1では、ベタライン比の検出結果に基づいてモータ46を制御して、現像スリーブ41A、41Bの周速を変更することで、ベタライン比を1に近付ける。現像スリーブ41A、41Bの周速を速くすると、現像効率が上がり、特にベタ画像の現像性が高まるため、面画像の所望のトナー載り量に対する線画像のトナー載り量の比率であるベタライン比は低下して1に近付く。しかし、現像スリーブ41A、41Bの周速を常時高めた状態とすると、上述したように一成分現像剤の劣化が進行して現像性能が早く低下する。現像スリーブ41A、41Bの周速と現像剤劣化とはトレードオフの関係にあるので、ベタライン比を満足できる範囲でなるべく低い周速を最適値として選ぶ必要がある。
【0075】
なお、環境条件や使用時間の累積等によっては、現像スリーブ41A、41Bの周速に対するベタライン比と現像効率の関係が図11とは異なってくる。しかし、絶対値は変わるが、これらの条件が異なっていても傾向は図11と変わらないものである。
【0076】
<実施例1の制御>
図1を参照して図12に示すように、実施例1の制御は、画像形成装置100の電源投入時や前回の制御から所定時間後(又は所定枚数の画像形成後)、或は不図示の環境センサによって、所定幅以上温度湿度が変動した際に実行する。
【0077】
制御部51は、面画像の測定用トナー像(PG1〜PG5)を用いてグリッドバイアスを決定した後(S11)、露光量、現像バイアスを決定する(S12、S13)。この手順は、図4を参照して説明したとおりである。
【0078】
その後、制御部51は、ポスト帯電装置5の設定を変更した(S14)後、現像スリーブ41A、41Bの周速を複数段階に異ならせて、図8の(a)に示すように、ラインパッチ画像PL1〜PL5を形成する。そして、一次転写時に飛び散らして中間転写ベルト62上の再現面積を増やした状態で、ラインパッチ画像PL1〜PL5を光学式センサ9により検出させる(S15)。
【0079】
制御部51は、光学式センサ9により検出されたトナー載り量Xを基準値Rに比較する(S16)。図11に示すように、実施例1においては、現像スリーブ41A、41Bの周速は、モータ46を制御することで、対感光ドラム周速比100%を上限とし、対感光ドラム周速比60%を下限として、周速比10%刻みで可変させる。
(1)ラインパッチ画像PL1〜PL5の中にセンサ出力値Xが基準値Rより大きいラインパッチ画像PLnがある場合(S16のYES)、ラインパッチ画像PLnの周速以上であればベタライン比は許容範囲内である。そのため、X≧Rを満たすような最小の周速を現像スリーブ41A、41Bに設定する(S17)。
(2)ラインパッチ画像PL1〜PL5の中にセンサ出力値Xが基準値Rより大きいラインパッチ画像PLnが無い場合(S16のNO)、最大の周速を設定してもベタライン比は規定値より悪い。しかし、現像スリーブ41A、41Bの周速には上限があるため、ラインパッチ画像PL1〜PL5の中の最大のスリーブ周速に設定する(S18)。
【0080】
制御部51は、現像スリーブ41A、41Bの周速決定後、再度、図5に示す5つのパッチ画像PG1〜PG5を出力して、所望の最大濃度が得られる露光量と現像バイアスを決定する(S19)。現像スリーブ41A、41Bの周速が変わったことで、ベタ画像の最大濃度が変化しているからである。
【0081】
実施例1の制御によれば、現像スリーブ41A、41Bの周速を最適化することで、一成分現像剤の劣化を抑制しながらベタライン比を精度高く許容範囲に維持できる。線画像のトナー載り量を精度良く検知して制御することで、ベタライン比を狭い許容範囲で制御して、面画像と線画像の両方の最大濃度を許容範囲に維持できる。線画像の中抜けや飛び散りや定着不良といった問題を解消して、最大濃度を満たしながら線画像の中抜けや飛び散り、定着不良のない画像形成装置を提供できる。
【0082】
<実施例2>
図13は実施例2の制御のフローチャートである。実施例2は、実施例1と同様に、ラインパッチの再現面積を意図的に増やすことで線画像のトナー載り量、すなわちベタライン比の検知精度を向上させる。しかし、ラインパッチの再現面積を意図的に増やす手段として、感光体と中間転写体の周速差を用いる点が実施例1とは異なる。それ以外の装置構成及び最大濃度制御の手順等については、実施例1で説明したとおりであるため、図13中、図12と共通するステップには共通の符号を付して重複する説明を省略する。
【0083】
図1を参照して図13に示すように、画像形成時、中間転写体である中間転写ベルト62は、感光ドラム1の周速と等速で回転している。しかし、ラインパッチ画像PL1〜PL5を形成して中間転写ベルト62へ一次転写する際(S14A〜S15)には、中間転写ベルト62の周速だけを画像形成時よりも3%、すなわち18mm/sec速く(或は遅く)設定する。言い換えれば、線幅拡大手段(62)は、現像された所定幅の線画像の幅を通常画像形成時よりも拡大させる。これにより、線画像のトナー像は回転方向に伸びた形で中間転写ベルト62上に一次転写され、中間転写ベルト62の下地部を覆って再現面積が増加する。
【0084】
実施例1では、ポスト帯電装置5の出力変更によりトナー像の電荷量が変化して、転写効率が変化してトナー載り量の測定値に誤差を生じる可能性がある。しかし、実施例2では、バイアス条件の影響が無いため、転写効率一定のままラインパッチ画像PL1〜PL5を中間転写ベルト62に一次転写して光学式センサ9によって検出できるというメリットがある。
【0085】
制御部51は、グリッドバイアス、露光量、現像バイアス決定(S11、S12、S13)後、中間転写ベルト62の周速を変更して(S14)、ラインパッチ画像の検出を実行する(S15)。そして、検出結果に基いて現像スリーブ41A、41Bの最適な周速を決定する(S16、S17、S18)。
【0086】
<実施例3>
図14は実施例3の制御で用いる転写前露光装置の配置の説明図である。図15は実施例3の制御のフローチャートである。
【0087】
実施例3は、実施例1と同様に、ラインパッチの再現面積を意図的に増やすことで線画像のトナー載り量、すなわちベタライン比の検知精度を向上させる。しかし、ラインパッチの再現面積を意図的に増やす手段として、転写前露光手段の一例である転写前露光装置を用いる点が実施例1とは異なる。それ以外の装置構成及び最大濃度制御の手順等については、実施例1で説明したとおりであるため、図14中、図1と共通する構成には共通の符号を付して重複する説明を省略する。また、図15中、図12と共通するステップには共通の符号を付して重複する説明を省略する。
【0088】
図14に示すように、実施例3に係る画像形成装置100Aでは、ポスト帯電装置5と一次転写部T1との間で感光ドラム1に対向させて転写前露光装置11を配置している。転写前露光装置11によって、感光ドラム1上に担持されたトナー像に光を照射すると、感光ドラム1表面の線画像部間に電荷が発生し、その影響で図8の(a)に示すラインパッチ画像PL1〜PL5が乱されて再現面積が増加する。言い換えれば、線幅拡大手段(11)は、現像された所定幅の線画像の幅を通常画像形成時よりも拡大させる。
【0089】
図14を参照して図15に示すように、実施例3では、実施例1と同様の手順でベタライン比を検出して現像スリーブ41A、41Bの周速を設定する。制御部51は、グリッドバイアス、露光量、現像バイアス決定(S11、S12、S13)後、転写前露光装置11を作動させて(S14B)、ラインパッチ画像の検出を実行する(S15)。そして、検出結果に基いて現像スリーブ41A、41Bの最適な周速を決定する(S16、S17、S18)。
【0090】
<実施例4>
図16は実施例4の制御のフローチャートである。実施例4は、図14に示す実施例3と共通の構成を用いて、実施例3とはベタライン比制御の開始タイミングを異ならせている。
【0091】
図14を参照して図16に示すように、制御部51は、画像形成装置100Aにおいて、実施例3とは異なる手順でラインパッチ画像の検出を行う。実施例1のポスト帯電装置5や実施例2の周速差とは異なり、転写前露光装置11の場合は、感光ドラム1のごく限られた位相角範囲で線画像の線幅を拡大できる。他の作像条件に依存しないため、感光ドラム1上に連続的に形成されるトナー像の間隔(いわゆる紙間)にラインパッチ画像を形成した場合でも、前後の画像の線幅を拡大することなく、ラインパッチ画像の線幅を拡大させることができる。
【0092】
制御部51は、通常画像出力中の紙間で基準値Rを狙って形成したラインパッチ画像の検出を実行する。紙間でラインパッチを形成、検知して、ベタライン比が悪化していなければ画像形成を現像装置4のそのままの運転条件で継続する。しかし、ベタライン比が悪化していれば、ジョブ終了後の後回転時に図15に示す実施例3の手順でベタライン比制御を行う。
【0093】
このような方法で必要最低限のベタライン比制御が可能であり、画像形成装置100Aの調整で画像出力が制限されることも少なくなる。
【0094】
<実施例5>
実施例1〜4では、一成分現像剤を用いた現像装置において、ベタライン比を許容範囲に維持する制御を説明した。しかし、本発明は、二成分現像剤を用いた現像装置でも実施できる。
【0095】
磁性トナーを主成分とする一成分現像剤は、振動電圧のAC成分に駆動されて現像スリーブと感光ドラムの対向間隔を高速で飛翔・往復してトナー粒子が運動エネルギーを持った状態で静電像を現像する。これに対して、磁性キャリアと非磁性トナーを主成分とする二成分現像剤は、磁性キャリアの磁気穂が感光ドラムに接触して、磁気穂に付着したトナー粒子が運動エネルギーを持たない状態で静電像を現像する。このため、一成分現像剤では、二成分現像剤に比較して静電像の電気容量に対する付着したトナーの総電気量の割合で定義される現像効率が低くなる。このため、一成分現像剤のほうが面画像のトナー載り量が低下し易くなって、その分ベタライン比が高くなり易い。
【0096】
しかし、二成分現像剤でも、プロセススピードを高めていくと、現像スリーブからのトナー供給が間に合わなくなって、現像効率が低下し、ベタライン比が1を超えて高まってしまう。
【0097】
また、特開2006−220988号公報に示されるように、二成分現像剤を用いる現像装置では、面画像の制御用トナー像(パッチ画像)を感光体に形成して中間転写体に一次転写している。中間転写体に対向配置した光学式センサでパッチ画像のトナー載り量を検出し、検出結果に基いて、トナー載り量が所定範囲に維持されるように現像装置へのトナー補給量を調整している。いわゆるATR(Auto Toner Replenish)制御を実行することで、トナーの帯電量を一定に保って画像濃度の再現性を高めている。
【0098】
このような面画像の制御用トナー像として、二値のハーフトーンで構成したパッチ画像を使用する場合、二値のドット間に現れる中間転写ベルトの素地部分が無いほうが光学センサによるトナー載り量の検出感度は高まる。このため、実施例5では、二値のハーフトーンで構成したパッチ画像を使用するATR制御において、実施例1〜3のように、トナーを散らして中間転写ベルト62の素地が見える割合を減らした状態で反射光を検出する。実施例5では、実施例1〜3と同様に、次のような工程を備えた現像条件の調整方法を実施する。
(1)非画像形成時の感光体に二値変調による所定階調の測定用トナー像を形成する第1の工程。
(2)現像装置と検出手段との間で線幅拡大手段を作動させて、測定用トナー像を構成するドットのトナー像の面積を拡大させる第2の工程。
(3)第2の工程によって現像時よりもドットのトナー像の面積が拡大された測定用トナー像からの反射光を検出手段により検出する第3の工程。
【符号の説明】
【0099】
1 感光ドラム、2 帯電装置、3 露光装置、4 現像装置、
5 ポスト帯電装置、7 定着装置 9 光学式センサ、
41A、41B 現像装置、42 電位センサ、46 モータ、51 制御部、
61 転写ローラ、62 中間転写ベルト、63 二次転写ローラ、
D1、D2、D4 電源
T1、一次転写部、T2 二次転写部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、
前記感光体に静電像を形成する静電像形成手段と、
前記静電像をトナー像に現像する現像装置と、
トナー像を担持して搬送可能な転写媒体へ前記感光体からトナー像を転写させる転写手段と、
前記転写媒体に担持されたトナー像を光学的に検出する検出手段と、
非画像形成時に、前記感光体の回転方向に間隔を置いて複数の線画像を配列した線画像の測定用トナー像を形成させ、前記線画像の測定用トナー像を前記検出手段により検出させた検出結果に基づいて、前記現像装置の運転条件を制御する制御手段と、
前記現像装置にて現像された所定幅の線画像を前記検出手段へ搬送させる間に、前記現像された所定幅の線画像の幅を通常画像形成時よりも拡大させる線幅拡大手段とを備え、
前記制御手段は、前記線幅拡大手段にて拡大された前記線画像の測定用トナー像から反射された反射光に基いて前記現像装置の運転条件を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、面画像の測定用トナー像を前記感光体に形成させて前記転写媒体に転写させて共通の前記検出手段により検出させ、
同一の現像コントラストで形成された前記線画像の測定用トナー像と前記面画像の測定用トナー像の検出結果に基づいて、前記線画像と前記面画像のトナー載り量の差が小さくなるように前記現像装置の運転条件を変化させることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記面画像の測定用トナー像を検出して設定した現像コントラストを用いて、前記現像装置の運転条件を複数段階に異ならせた前記線画像の測定用トナー像を形成することを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記現像装置の運転条件は、現像剤を表面に担持して前記感光体との対向部へ搬送する現像剤担持体の回転速度であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記線幅拡大手段は、前記線画像のトナー像を担持した前記感光体に荷電粒子を照射して転写前の前記線画像の測定用トナー像の帯電状態を通常の画像形成時よりもさらに高めるコロナ帯電器であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記線幅拡大手段は、前記感光体の表面を露光して線画像の線幅を拡大させるように前記感光体の表面に光を照射する転写前露光手段であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記線幅拡大手段は、転写を通じて線画像の線幅が拡大するように、画像形成時とは回転速度が切り替わる前記転写媒体であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記線画像の測定用トナー像は、前記検出手段が同時に反射光を検出する検出スポット内に線画像が複数含まれるような等間隔のピッチで線画像のトナー像を配置して構成されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記現像装置は、磁性トナーの一成分現像剤を用いて前記静電像を現像することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項10】
感光体と、前記感光体に静電像を形成する静電像形成手段と、前記静電像をトナー像に現像する現像装置と、トナー像を担持して搬送可能な転写媒体へ前記感光体からトナー像を転写させる転写手段と、前記転写媒体に担持されたトナー像を光学的に検出する検出手段とを備えた画像形成装置における現像条件の調整方法において、
非画像形成時の前記感光体に二値変調による所定階調の測定用トナー像を形成する第1の工程と、
前記現像装置と前記検出手段との間で前記測定用トナー像を構成するドットのトナー像の面積を拡大させる第2の工程と、
前記第2の工程によって現像時よりもドットのトナー像の面積が拡大された前記測定用トナー像からの反射光を前記検出手段により検出する第3の工程とを備えたことを特徴とする現像条件の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−99933(P2011−99933A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253355(P2009−253355)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】