説明

画像記録装置

【課題】印刷前に行うウォームアップの最適タイミングを入力データから予測することにより、データの種類やユーザの運用方法によらず、常に最適なタイミングでウォームアップを開始しファーストプリントの向上を図ると共に、無駄なアイドリングを減らしドラム寿命を延ばすと共に消費電力を減らすことを目的とする。
【解決手段】入力データを中間データに変換する第1の変換手段と、中間データをイメージデータに変換する第2の変換手段と、入力データの印刷を開始するまでの時間を予測する手段と印刷開始前に印刷準備を行うプレウォームアップ手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置に関し、特にファーストプリントを向上させるためのプレコマンド機能を有する画像記録装置及び画像処理方法及びプログラム記憶媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまでの電子写真技術を用いたプリンタ、コピー機、複合機などの画像記録装置においては、スタンバイ状態から印刷を開始すると、スキャナモータの駆動、定着器の昇温等に時間がかかりファーストプリント(1枚目の印刷)が遅くなるために、スキャナモータの駆動、定着温度調節等を印刷開始前に実行するプレコマンドが用意されて、印刷開始前に予め準備をすることによってファーストプリントの向上を図ることが可能な場合がある。
【0003】
コピー機においては、ユーザがオペレーションパネルを操作したり、スキャナユニットを開いたり、オートフィーダーに用紙を装着するなど、実際に機器操作を始めたことをトリガとして、プレコマンドを発行し印刷準備に入るようになっている。
【0004】
また、プリンタにおいては、印刷データを受信してから印刷開始前までの間の所定のタイミングで、プレコマンドを発行し印刷準備を行っている。
【0005】
いずれの場合でも、プレコマンドを発行して、スキャナモータの駆動や、定着器を昇温させたまま印刷しない状態を維持させると消耗品の寿命到達が早くなってしまうので、通常はプレコマンド発行後一定時間印刷を開始しないと、スタンバイ状態に戻るようタイムアウトが設定されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
プリンタの場合の従来の一例を、図12を使用して説明する。
【0007】
図12はビデオコントローラ及びエンジン制御のシーケンスを時系列で表したもので、ビデオコントローラの処理として、トランスレータが外部装置から入力したPDLデータを中間データに変換するPDL解釈、中間データをイメージデータに変換するイメージ生成、高速シーケンスを実現するために複数ページの中間データやイメージデータを蓄えるイメージ蓄積、給紙口、印字モード、色、用紙サイズ等の設定を行うエンジン設定を経てプリント開始する場合について説明する。T0、T1、T2、T3はそれぞれ、トランスレート開始、中間データ完了、イメージ完了、シーケンス確定タイミングを表す。また、Ta、Tbは、Tcがプリント開始をプリンタエンジンに対して指示できるタイミングとした場合に、エンジン性能上プレコマンドによるウォーミングアップ効果を最大限発揮できる期間の最初と最後のタイミングを表す。すなわちTa〜Tbの間にプレコマンドを発行できれば、タイムアウトも発生せず最大効果を発揮することができる。
【0008】
これまでプレコマンド発行は、データ入力、中間データ完了、イメージ完了、シーケンス確定などの特定のタイミングで発行しており、上記T1、T2は入力データの種類によって異なるため、特定のデータではプレコマンドの効果を得られるが、処理に時間がかかるデータや転送速度の遅いホストコンピュータからのデータ送信の場合はタイムアウトが発生してしまい、また、処理の軽いデータの場合は十分なウォームアップを行えないといった問題があった。また、Ta、Tbはエンジン特性によって異なり、ウォームアップ効果を上げるためのチューニングが完全に行えない場合もあった。
【特許文献1】特開平08−314661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来例での問題をまとめると以下のようになる。
【0010】
コピー機の場合では、ユーザのオペレーションパネル操作、スキャナユニットの開閉、オートフィーダーへの用紙の装着をトリガとしてプレコマンドを発行する場合、実際に印刷を開始しなくても、ユーザが装置に触れたことでスキャナモータの駆動、定着器の温度調節等の印刷準備をしてしまうために、スキャナモータ、定着器、感光ドラムといったユニットの寿命到達が早くなり、ユーザの運用方法によっては実際の印刷枚数に比べて消耗品の寿命が短くなると共に無駄な電力を消費してしまうという問題があった。
【0011】
また、プリンタの場合では、受信データをイメージ画像に展開するまでの時間が印刷データによって差があるため、重いデータの場合はプレコマンドの発行から印刷開始までに時間がかかりタイムアウトが発生し寿命到達を早めてしまうことがあった。さらに一旦タイムアウトが発生してしまうとスタンバイ状態に移行して再度プリント準備に入るため、復帰に時間がかかりプリント開始が通常より遅くなってしまう場合もあった(図12(a))。このタイムアウトを回避するために、プレコマンドの発行タイミングを遅くした設定でチューニングを行うと、印刷開始直前でプレコマンドを発行することになり、プリント開始までに十分なウォーミングアップができず、軽いデータにおいてもプレコマンドの効果を最大限発揮することができないという問題があった(図12(b))。
【0012】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、印刷開始可能な時間を予測してタイムアウトが発生しない、且つ十分なウォーミングアップができるタイミングでプレコマンドを発行することにより、無駄なアイドリングを減らし、スキャナモータ、感光ドラム、定着器等の寿命を伸ばすと共に、消費電力の抑制を実現する。
【0013】
更に、コピー機における操作方法の違い、プリンタにおける受信データの種類によらずウォームアップ効果ができるだけ大きくなるようプレコマンドを発行し、ファーストプリントを向上させることを目的とする。
【0014】
また、上記ウォームアップ効果によって得られるアドバンテージをファーストプリント向上だけではなく、複数の印字モードを持つエンジンに対して、最も高速なスケジューリングが組めるようページの溜め込みのために使用することにより、各種連続印刷のスループットを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る第1の発明は、データ処理装置より供給される印刷データに基づいて画像を記録する画像記録装置であって、入力データを中間データに変換する第1の変換手段と、中間データをイメージデータに変換する第2の変換手段と、入力データの印刷を開始するまでの時間を予測する予測手段と、印刷開始前に印刷準備を行うプレウォームアップ手段とを有することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る第2の発明は、画像入力装置より供給される印刷データに基づいて画像を記録する画像記録装置であって、入力データを加工する加工手段と、入力データの印刷を開始するまでの時間を予測する予測手段と、印刷開始前に印刷準備を行うプレウォームアップ手段とを有することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る第3の発明は、ウォームアップに要する時間を予測するウォームアップ予測手段と、入力データ及びコントローラ処理方法から、コントローラ処理に要する時間を予測するコントローラ処理予測手段とを有し、印刷開始可能になるタイミング及びプレコマンドが最大効果を発揮するタイミングを予測することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る第4の発明は、エンジンの現在の状態から印刷を開始できる状態までの、ウォームアップに要する時間を予測することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、印刷開始可能な時間を予測してタイムアウトが発生しない、且つ十分なウォーミングアップができるタイミングでプレコマンドを発行することにより、無駄なアイドリングを減らし、スキャナモータ、感光ドラム、定着器等の寿命の延命、消費電力の抑制を実現すると共に、コピー機における操作方法の違い、プリンタにおける受信データの種類によらずウォームアップ効果ができるだけ大きくなるようプレコマンドを発行し、ファーストプリントを向上させることが可能となる。
【0020】
また、上記ウォームアップ効果によって得られるアドバンテージをファーストプリント向上ではなく、複数の印字モードを持つエンジンに対して、最も高速なスケジューリングが組めるようページの溜め込みのために使用することにより、連続印刷のスループットを向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例】
【0022】
[第1実施形態]
本発明に係る第1実施形態に係る画像記録装置について、図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明の1つの実施形態に係る画像記録装置のシステム構成の概略を示す図である。
【0024】
図において、データ処理装置101は、例えば、コンピュータであり、画像情報の供給源、あるいはプリンタの制御装置として機能する。この実施の形態においては、画像記録装置102として、レーザビームプリンタ(プリンタ)を用いている。本実施形態において適用される画像記録装置は、レーザビームプリンタに限られるものではなく、コピー、FAX、あるいはこれらの複合機でもよいことは言うまでもない。
【0025】
ビデオコントローラ(ビデオコントローラ)103は、データ処理装置101から供給される画像情報(例えば、ESCコード、ページ記述言語等)に基づいて、ページ毎にラスタデータを生成し、プリンタエンジン105に送出する。
【0026】
プリンタエンジン105は、ビデオコントローラ103から供給されるラスタデータに基づいて、感光ドラム上に潜像を形成し、その潜像を記録媒体上に転写・定着(電子写真方式)することにより画像を記録する。
【0027】
パネル部104は、ユーザインタフェースとして使用される。ユーザは、パネル部104を操作することにより、所望の動作を指示することができる。また、パネル部104には、プリンタ102の処理内容や、ユーザへの警告内容が表示される。
【0028】
図2は、タンデム方式のカラープリンタ102の構成を説明する断面図である。
【0029】
図において、201は、プリンタ筐体である。202は、ユーザが各種指示を与えるためのスイッチ、メッセージやプリンタの設定内容等を表示するためのLED表示器やLCD表示器等が配された操作パネルであり、図1に示すパネル部104の一態様である。203は、ボード収容部であり、ビデオコントローラ103及びプリンタエンジン105の電子回路部分を構成するボードを収容する。
【0030】
220は、用紙(記録媒体)Sを保持する用紙カセットであり、不図示の仕切り板によって電気的に用紙サイズを検知する機構を有する。221は、カセットクラッチであり、用紙カセット220上に載置された用紙Sの最上位の一枚を取り出して、取り出した用紙Sを不図示の駆動手段から伝達される駆動力によって給紙ローラ222まで搬送するカムを有する。このカムは、給紙の度に間欠的に回転し、1回転に対応して1枚の用紙Sを給紙する。223は用紙検知センサで、それぞれ用紙カセット220に保持されている用紙Sの量を検知する。
【0031】
給紙ローラ222は、用紙Sの先端部をレジストシャッタ224まで搬送するローラである。224は、レジストシャッタであり、用紙Sを押圧することにより給紙を停止することができる。
【0032】
230は、手差しトレイであり、231は、手差し給紙クラッチである。手差し給紙クラッチ231は、用紙Sの先端を手差し給紙ローラ232まで搬送するために使用され、手差し給紙ローラ232は、用紙Sの先端をレジストシャッタ224まで搬送するために使用される。画像記録に供する用紙Sは、用紙カセット220及び手差しトレイ230のいずれかの給紙手段を選択して給紙される。
【0033】
プリンタエンジン105は、ビデオコントローラ103と所定の通信プロトコルにしたがって通信を行い、ビデオコントローラ部103からの指示にしたがって用紙カセット220手差しトレイ230の中からいずれかの給紙手段を選択し、印刷の開始指示に応じて該当する給紙手段よりレジストシャッタ224まで用紙Sを搬送する。なお、プリンタエンジン105は、給紙手段、潜像の形成、転写、定着等の電子写真プロセスに関する機構、排紙手段及びそれらの制御手段を含む。
【0034】
204a、204b、204c、204dは、感光ドラム205a、205b、205c、205dやトナー保持部等を有する画像記録部であり、電子写真プロセスにより、用紙S上にトナー像を形成する。一方、206a、206b、206c、206dは、レーザスキャナ部であり、画像記録部にレーザビームによる画像情報を供給する。
【0035】
画像記録部204a、204b、204c、204dには、用紙Sを搬送する用紙搬送ベルト250が複数の回転ローラ251〜254によって用紙搬送方向(図の下から上方向)に扁平に張設され、その最上流部においては、バイアスを印加した吸着ローラ225によって、用紙を用紙搬送ベルト250に静電吸着させる。またこのベルト搬送面に対向して4個の感光ドラム205a、205b、205c、205dが直線状に配設されており、画像形成手段を構成している。画像記録部204a、204b、204c、204dのそれぞれには、感光ドラムの周辺近傍を順次取り囲んで、帯電器、現像器が配置されている。
【0036】
レーザスキャナ部206a、206b、206c、206dにおいて、207a、207b、207c、207dは、レーザユニットであり、ビデオコントローラ103から送出される画像信号(/VIDEO信号)に応じて、内蔵の半導体レーザを駆動し、レーザビームを発射する。レーザユニット207a、207b、207c、207dから発せられたレーザビームは、ポリゴンミラー(回転多面鏡)208a、208b、208c、208dにより走査され、感光ドラム205a、205b、205c、205d上に潜像を形成する。
【0037】
260は、定着器で、画像記録部204a、204b、204c、204dにより用紙Sに形成されたトナー画像を記録紙Sに熱定着させる。261は、搬送ローラで、用紙Sを排紙搬送する。262は、排紙センサで、用紙Sの排紙状態を検知する。263は、排紙ローラ兼両面印刷用搬送路切替えローラで、用紙Sを排紙方向へ搬送し、用紙Sの搬送指示が排紙の場合はそのまま排紙トレイ264に排紙し、搬送指示が両面搬送の場合は、用紙Sの後端が排紙センサ262を通過した直後に回転方向を逆向きに変え、スイッチバックすることにより用紙Sを両面印刷用搬送路270へ搬送する。265は排紙積載量検知センサで、排紙トレイ264上に積載された用紙Sの積載量を検知する。
【0038】
270は、両面印刷用搬送路であり、排紙ローラ兼両面印刷用搬送路切替えローラ263により両面印刷用に搬送された用紙Sは、両面搬送ローラ271〜274によって再びレジストシャッタ224まで搬送されて画像記録部204a、204b、204c、204dへの搬送指示を待つ。
【0039】
なお、プリンタ102には、さらにオプションカセットや封筒フィーダ等のオプションユニットを装備することができる。
【0040】
図3は、ビデオコントローラ103とプリンタエンジン105とを接続するビデオインタフェース及びプリンタ105の構成例を示す図である。
【0041】
図において、ビデオコントローラ103は、複数のデータ処理装置101との通信(画像情報の受信を含む)、受信した画像情報に基づくラスタデータの生成(展開)、プリンタエンジン105の制御を司る。
【0042】
エンジン制御部150は、ビデオコントローラ103から供給される制御信号に基づいて、プリンタエンジン105内のユニット151〜158を制御する。
【0043】
ユニット151〜158の概要を説明すると、151は、用紙カセット220及びその他オプションカセット(不図示)内に載置された用紙のサイズを検出してエンジン制御部150に通知する用紙サイズ検出部で、152は、用紙カセット220及び手差し用トレイ231、オプションカセット(不図示)、封筒フィーダ(不図示)のそれぞれの給紙口の有無を検出してエンジン制御部150に通知する給紙口検出部で、153は、オプションカセット、封筒フィーダ等のオプションの接続状況を確認するためのオプション調査部で、154は、用紙の搬送を制御する搬送制御部で、155は、ポリゴンミラー208a、208b、208c、208dの駆動モータ、レーザユニット207a、207b、207c、207d等の光学系を制御する光学系制御部で、156は、定着器260の温度制御の他、定着器260における異常検出等をも行う定着温度制御部で、157は、オプションカセットや封筒フィーダ等のオプションを制御するオプション制御部で、158は、レジスト、排紙、両面、反転など搬送路内の用紙の有無、外気温、印刷ページ数、トナー残量等の環境の変化(状況変化)を検出するためのセンサ部である。
【0044】
次に、ビデオコントローラ103とエンジン制御部150とを接続するビデオインタフェースを構成する信号の概要を説明する。
【0045】
170は、ビデオコントローラ103がエンジン制御部150と通信可能な状態にあることを示す/CPRDY信号、171は、エンジン制御部150がビデオコントローラ部103と通信可能な状態にあることを示す/PPRDY信号、172は、エンジン制御部150がプリント可能な状態にあることを示す/RDY信号、173は、ビデオコントローラ103がエンジン制御部150に印刷要求を発行するための/PRNT信号、174は、エンジン制御部150がビデオコントローラ103に対して出力する垂直同期信号としての/TOP信号、176は、エンジン制御部150がビデオコントローラ部103に出力する水平同期信号としての/BD信号、178は、シリアル通信のための同期クロック信号としての/SCLK信号、179は、ビデオコントローラ103がエンジン制御部150に対してコマンドを送信するためのコマンド信号としての/CMD信号、180は、コマンドを送信するためのストローブ信号としての/CBSY信号、181は、ビデオコントローラ103から送信されたコマンドに対して応答(プリンタエンジン105内部のステータスを含む)を返すための/STS信号、182は、ステータス等の応答を返すためのストローブ信号としての/SBSY信号、183は、ラスタデータとしての/VIDEO信号である。
【0046】
177は、プリンタエンジン105のステータスのうち、/RDY信号に直接関与しない状態、すなわち印刷の可否に直接関与しない状態変化が発生した場合(例えば、気温、印刷ページ数、トナー残量等が基準値を超えた場合)に“TRUE”となる/CCRT信号である。
【0047】
図4は、ビデオコントローラ103の構成例を示すブロック図である。
【0048】
図において、301は、パネル部104とのデータ通信を行うパネルインタフェース部である。CPU309は、パネルインタフェース部301を介して、ユーザがパネル部104において設定・指示した内容を確認することができる。302は、ネットワークを介してホストコンピュータ等のデータ処理装置101と双方向に通信接続するためのホストインタフェース部である。306は、プリンタエンジン105と通信接続するためのエンジンインタフェース部である。CPU 309は、エンジンインタフェース部306を介して、信号170,173,175,178,179,180を制御し、信号171,172,174,176,177,181,182の状態、すなわち、プリンタエンジン105の状態を認識することができる。
【0049】
303は、データ処理装置101より供給された画像情報に基づいて、プリンタエンジン105に供給するラスタデータを生成(ラスタライズ)する画像データ発生部である。305は、生成したラスタデータを一時的に保持するための画像メモリである。309は、ROM304に保持された制御プログラムコードに基づいて、CPUバス320に接続されたデバイスを制御するCPUである。307は、CPU309が使用する一時記憶用メモリとしてのRAMであり、図示しない増設ポートに接続されるオプションRAMによりメモリ容量を拡張できるように構成されている。RAM307は、描画オブジェクトを格納する描画オブジェクト格納部402、ROM304に保持された制御プログラムによって一時的に使用されるワークメモリ等に用いられる。310は、例えば、濃度補正テーブル等の制御情報を保持するための不揮発性メモリで構成される。308は、DMA制御部であり、CPU309からの指示により画像メモリ305内のラスタデータをエンジンインタフェース部306に転送する。
【0050】
320は、アドレス、データ、コントロールバスを含むCPUバスである。パネルインタフェース部301、ホストインタフェース部302、画像データ発生部303、ROM304、画像メモリ305、エンジンインタフェース部306、RAM307、DMA制御部308、CPU309及びEEPROM310は、それぞれCPUバス320に接続されたすべてのデバイスにアクセス可能である。
【0051】
図5は、ビデオコントローラの処理及びエンジン制御タイミングを示すシーケンス図であり、ビデオコントローラの処理とプリンタエンジンの処理を時系列で表している。コントローラの構成として、トランスレータが外部装置から入力したPDLデータを中間データに変換するPDL解釈、中間データをイメージデータに変換するイメージ生成、高速シーケンスを実現するために複数ページの中間データやイメージデータを蓄えるイメージ蓄積、給紙口、印字モード、色、用紙サイズ等の設定を行うエンジン設定を経てプリント開始する場合について説明する。T0、T1、T2、T3はそれぞれ、トランスレート開始、中間データ完了、イメージ完了、シーケンス確定タイミングを表す。また、Ta、Tbは、Tcがプリント開始をプリンタエンジンに対して指示できるタイミングとした場合に、エンジン性能上プレコマンドによるウォーミングアップ効果を最大限発揮できる期間の最初と最後のタイミングを表す。すなわちTa〜Tbの間にプレコマンドを発行できれば、タイムアウトも発生せず最大効果を発揮することができる。
【0052】
ここでのポイントは、これまでのようにT0、T1、T2、T3といった特定のタイミングでプレコマンドをプリンタエンジンに発行するのではなく、T1の中間データ完了したタイミングで、印刷データの特性を知り、プリント開始タイミングを予測し、必ずTa〜Tbの間でプレコマンド発行を行うところである。
【0053】
図6は、上記ビデオコントローラの全体処理を説明するフローチャートである。
【0054】
ホストコンピュータからデータを入力すると、S601でトランスレータを起動し、外部装置から入力したPDLデータを中間データに変換する。不図示であるが、この段階で印刷データの解像度、データサイズ、カラーモード等のジョブ制御情報が解析されて判明しているので、S602において、先頭ページと判断した場合、印刷開始タイミングおよびプレコマンド実行タイミングを計算し予測処理を行う(S603)。先頭ページでない場合は、すでに印刷処理実行している状態なのでウォーミングアップの必要はなく、プレコマンドの発行は行わない。不図示であるが、S603以降のイメージ生成(S604),エンジン設定(S605)の各処理の中で、プレコマンド発行タイミングになったかどうかを監視し、プレコマンドの最大効果を出せるタイミングでプレコマンド実行を行う。上記監視はプレコマンド発行まで行なわれる。
【0055】
次にS604で中間データをプリンタエンジンに転送するためのイメージデータに変換し、給紙口、印字モード、色、用紙サイズ等の各種エンジン設定情報の確定および片面/両面、印字順番等のエンジン制御方法を含めたシーケンスを確定する。
【0056】
シーケンスが確定したところで、S605にて確定した給紙口、印字モード、色、用紙サイズ等の設定をプリンタエンジンに対して行い、S606でプリント開始指示をプリンタエンジンに対して実行する。プリンタエンジンに対してプリント開始指示を出すと、プリンタエンジンは、指示された内容に基づいて給紙口から用紙をピックアップし、画像のビデオ転送開始のタイミングをビデオコントローラに知らせて、それに同期して画像のビデオ転送を行う(S607)。
【0057】
これらの処理を印刷ページがなくなるまで繰り返し、S608で印刷すべきページがあるかどうかを判断し、印刷ページがなくなったら処理を終了する。
【0058】
図7は、プリント開始及びプレコマンド発行タイミングの予測方法を説明するフローチャートである。
【0059】
データ受信した時に、プリンタエンジンがアイドル状態である場合、エンジン始動に時間がかかるのでプリント開始時間およびプレコマンドの最適な発行タイミングの予測を行う。まず、S701において、現在時刻T1を取得し、現在時刻から何秒後にプリント開始できるか、または、何秒後までにプレコマンドを発行しなければならないかを計算する。通常、中間データをイメージデータに変換する処理はハードウェアにて行い、データサイズに応じて処理時間は推測できる。予測の段階では、すでにPDLデータを解釈して中間データを生成しているので、解像度、階調、中間データのサイズ等の情報は判明しており、これらの情報から、イメージ生成に要する時間Aを計算する(S702)。次にエンジン設定に要する時間Cについては、ビデオコントローラとプリンタエンジンの間の通信時間×設定項目数で求めることができる(S703)。これらの情報からプリント開始時刻TcはTc=T1+A+Cとなる(S704)。さらに、アイドル状態からウォーミングアップ完了までの時間をDとすると、時刻Tb=Tc−Dまでにプレコマンドを発行すれば、最大効果を得られることになる。また、プレコマンドのタイムアウト時間をEとすると、時刻Ta=Tc−E以降にプレコマンドを発行すればタイムアウトを防ぐことができる。このようにしてプレコマンドが最大効果を発揮する期間を計算する(S705)。
【0060】
図8は、プレコマンドの発行方法を説明するフローチャートである。
【0061】
先に述べたように、プレコマンドは図7で説明した予測処理の後行うが、プレコマンドを発行する専用処理タスクで行っても、他の処理の随所に処理を入れ込んで実行してもどちらでもよい。まず、S801において、プレコマンドをすでに発行したかどうかを確認し、発行済みであれば処理を終了する。まだ発行していない状態なら、現在時刻と図7の説明で求めたTa、Tbとを比較して、Ta<現在時刻<Tbなら、プレコマンドを発行して(S803)、プレコマンド発行澄みフラグを立てるなどしてプレコマンド発行状態へ移行し、以降印刷が途切れるまでプレコマンドを発行しないようにし、無駄な処理が発生しないようにする。プレコマンドの最大効果を発揮できる期間はTa<現在時刻<Tbであるが、少しでもプレコマンドの効果を得られるよう、現在時刻>Tbであってもプレコマンドを発行するようにしてもよい。
【0062】
以上のように、印刷開始可能な時刻、及び最適なプレコマンド発行時刻を予測しプレコマンドを発行することにより、無駄なアイドリングを減らし、スキャナモータ、感光ドラム、定着器等の寿命の延命、消費電力の抑制を実現すると共に、ファーストプリントを向上させることができる。
【0063】
[第2実施形態]
第1実施形態においては、ファーストプリントを向上させる場合について述べたが、プレコマンドによるウォームアップ効果を連続印刷の高速モードシーケンスのためのページスプーリングに使用してもよい。エンジンの構成によっては、1ページずつプリント処理するのではなく、高速化のために複数ページを同時に処理できるエンジンが存在する。このモードを使用すると1ページ毎処理をするよりも連続印刷が高速になるため、後続ページのイメージ生成を待ってから複数ページ同時に印刷する方が、スループットの向上を図れることになる。簡略化のため、以下では第1の実施形態と異なる部分のみを図9、図10を用いて説明する。
【0064】
図9は、コントローラ処理を説明するフローチャートである。
【0065】
ホストコンピュータからデータを入力すると、S901でトランスレータを起動し、入力したPDLデータを中間データに変換する。この段階で印刷データの解像度、データサイズ、カラーモード等の情報が解析されて判明するので、S902において、先頭ページと判断した場合、印刷開始タイミングおよびプレコマンド実行タイミングを計算し予測処理を行う(S903)。先頭ページでない場合は、すでに印刷処理実行している状態なのでウォーミングアップの必要はなく、プレコマンドの発行は行わない。以後、不図示であるが、イメージ生成(S904),イメージ蓄積(S905),エンジン設定(S906)の各処理の中で、プレコマンド発行タイミングになったかどうかを監視し、プレコマンドの最大効果を出せるタイミングでプレコマンド実行を行う。
【0066】
次にS904で中間データをプリンタエンジンに転送するためのイメージデータに変換し、S905で高速シーケンスを実現するために後続ページの生成を待ちながらイメージ蓄積を行って、給紙口、印字モード、色、用紙サイズ等の各種エンジン設定情報の確定および片面/両面、印字順番等のエンジン制御方法を含めたシーケンスを確定する。
【0067】
シーケンスが確定したところで、S906にて確定した給紙口、印字モード、色、用紙サイズ等の設定をプリンタエンジンに対して行い、S907でプリント開始指示をプリンタエンジンに対して実行する。プリンタエンジンに対してプリント開始指示を出すと、プリンタエンジンは、指示された内容に基づいて給紙口から用紙をピックアップし、画像のビデオ転送開始のタイミングをビデオコントローラに知らせて、それに同期して画像のビデオ転送を行う(S908)。
【0068】
これらの処理を印刷ページがなくなるまで繰り返し、S909で印刷すべきページがあるかどうかを判断し、印刷ページがなくなったら処理を終了する。
【0069】
図10は、プリント開始及びプレコマンド発行タイミングの予測方法を説明するフローチャートである。
【0070】
データ受信した時に、プリンタエンジンがアイドル状態である場合、エンジン始動に時間がかかるのでプリント開始時間およびプレコマンドの最適な発行タイミングの予測を行う。まず、S1001において、現在時刻T1を取得し、現在時刻から何秒後にプリント開始できるか、または、プレコマンドを発行すればよいかを計算する。通常、中間データをイメージデータに変換する処理はハードウェアにて行い、データサイズに応じて処理時間は推測できる。予測の段階では、すでにPDLデータを解釈して中間データを生成しているので、解像度、階調、中間データのサイズ等の情報は判明しており、これらの情報から、イメージ生成に要する時間Aを計算する(S1002)。また、イメージ蓄積にする時間Bは、通常NVRAM等の不揮発性メモリに設定されておりその値を待ち時間とする(S1003)。
【0071】
次にエンジン設定に要する時間Cについては、ビデオコントローラとプリンタエンジンの間の通信時間×設定項目数で求めることができる(S1004)。これらの情報からプリント開始時刻TcはTc=T1+A+B+Cとなる(S1005)。さらに、アイドル状態からウォーミングアップ完了までの時間をDとすると、時刻Tb=Tc−Dまでにプレコマンドを発行すれば、最大効果を得られることになる。また、プレコマンドのタイムアウト時間をEとすると、時刻Ta=Tc−E以降にプレコマンドを発行すればタイムアウトを防ぐことができる。このようにしてプレコマンドが最大効果を発揮する期間を計算する(S1006)。
【0072】
実施形態1の場合と同様に、プレコマンドの最大効果を発揮できる期間はTa<現在時刻<Tbであるが、少しでもプレコマンドの効果を得られるよう、現在時刻>Tbであってもプレコマンドを発行するようにしてもよい。
【0073】
このように、複数の印字モードを有するエンジンに対して、ウォームアップ効果を高速モード指定のためのページスプールに使用することで、連続印刷の高速化を実現することができる。
【0074】
[第3実施形態]
第1実施形態においては、プレコマンド発行タイミングの予測をPDL解釈後に行う場合について説明したが、図11に示すように、イメージ生成後に行うようにしても良い。
【0075】
このように、イメージデータ生成後に予測処理を行うことにより、ハードウェア構成やビデオコントローラの処理に依存せず予測を行えると共に、コピー機のように画像入力装置からの入力においても予測を行うことが可能となる。
【0076】
[第4実施形態]
第2実施形態においては、プレコマンドによるウォームアップ効果を連続印刷の高速モードシーケンスのためのページスプーリングに使用する場合について述べたが、カラー/モノクロ混在ジョブにおける擬似カラー印刷による高速化のためのページスプーリングに使用してもよい。
【0077】
このように、カラー/モノクロ切り替えに時間がかかるエンジンに対して、ウォームアップ効果を最適な色モード指定のためのページスプールに使用することで、カラー/モノクロ混在データの連続印刷の高速化を実現することができる。
【0078】
[第5実施形態]
第2実施形態においては、プレコマンドによるウォームアップ効果を連続印刷の高速モードシーケンスのためのページスプーリングに使用する場合について述べたが、両面連続印刷の高速シーケンス実現のためのページスプーリングに使用してもよい。
【0079】
このように、機内に複数枚の用紙を溜め込んで両面印刷可能なエンジンに対して、ウォームアップ効果を両面連続印刷の高速シーケンス指定のためのページスプールに使用することで、両面連続印刷の高速化を実現することができる。
【0080】
[第6実施形態]
第1〜5の実施形態においては、ファーストプリント向上か、連続印刷の高速化のどちらか一方の効果を上げる場合について述べたが、プレコマンドによるウォームアップ効果を両方に分配して両方の効果を実現するようにしてもよい。また、これらの配分を操作パネル及びプリンタドライバ、ホストアプリケーション等で設定できるようにしてもよい。
【0081】
こうすることで、ウォームアップ効果をファーストプリント向上と、高速モード実現のためのページスプールの両方に配分でき、ユーザのニーズに合わせた設定にカスタマイズすることが可能となる。
【0082】
[第7実施形態]
第1の実施形態においては、1ページ分のイメージデータ生成についての予測を行う例を示したが、イメージ生成とビデオ転送を、ページを分割したバンド(帯)単位で行うバンディング処理で印字を実現する場合は、最初の2バンド分のイメージ生成で印刷開始できるので、プリント開始タイミング予測を2バンド分のイメージ生成で計算するようにしてもよい。
【0083】
このように、バンディング処理可能なビデオコントローラにおいて、2バンド分の予測を行うことで、バンディング処理する場合のファーストプリント向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】第1実施形態において、プリンタの一構成例を示す断面図である。
【図2】第1実施形態において、画像記録装置のシステム構成の概略を示す図である。
【図3】第1実施形態において、ビデオコントローラとプリンタエンジンとを接続するビデオインタフェース及びプリンタエンジンの構成例を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態において、ビデオコントローラの構成例を示すブロック図である。
【図5】第1実施形態において、ウォームアップ指示の最適タイミングを示すシーケンス図である。
【図6】第1実施形態において、ビデオコントローラの全体処理を説明するフローチャートである。
【図7】第1実施形態において、プリント開始タイミングとプレコマンド発行タイミングの予測処理を説明するフローチャートである。
【図8】第1実施形態において、予測結果に基づいてプレコマンドの発行処理を説明するフローチャートである。
【図9】第2実施形態において、ビデオコントローラの全体処理を説明するフローチャートである。
【図10】第2実施形態において、プリント開始タイミングとプレコマンド発行タイミングの予測処理を説明するフローチャートである。
【図11】第3実施形態において、ビデオコントローラの全体処理を説明するフローチャートである。
【図12】(a),(b) 従来例のプレコマンド発行方法を説明するシーケンス図である。
【符号の説明】
【0085】
101 データ処理装置
102 画像記録装置
103 ビデオコントローラ
104 パネル部
105 プリンタエンジン
150 エンジン制御部
151 用紙サイズ検出部
152 給紙口検出部
153 オプション調査部
154 搬送制御部
155 光学系制御部
156 定着器温度制御部
157 オプション制御部
158 センサ部
201 プリンタ筐体
202 操作パネル
203 ボード収納部
204a,204b,204c,204d 画像記録部
205a,205b,205c,205d 感光ドラム
206a,206b,206c,206d レーザスキャナ部
207a,207b,207c,207d レーザユニット
208a,208b,208c,208d ポリゴンミラー(回転多面鏡)
220 用紙カセット
221 カセットクラッチ
222 給紙ローラ
223 用紙検知センサ
224 レジストシャッタ
225 吸着ローラ
230 手差しトレイ
231 手差し給紙クラッチ
322 手差し給紙ローラ
250 用紙搬送ベルト
251〜254 回転ローラ
260 定着器
261 搬送ローラ
262 排紙センサ
263 排紙ローラ兼両面印刷用搬送路切替えローラ
264 排紙トレイ
265 排紙積載量検知センサ
270 両面印刷用搬送路
271〜274 両面搬送ローラ
301 パネルI/F部
302 ホストI/F部
303 画像データ発生部
304 ROM
305 画像メモリ
306 エンジンI/F部
307 RAM
308 DMA制御部
309 CPU
310 EEPROM
320 CPUバス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ処理装置より供給される印刷データに基づいて画像を記録する画像記録装置であって、入力データを中間データに変換する第1の変換手段と、中間データをイメージデータに変換する第2の変換手段と、入力データの印刷を開始するまでの時間を予測する予測手段と、印刷開始前に印刷準備を行うプレウォームアップ手段とを有することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
画像入力装置より供給される印刷データに基づいて画像を記録する画像記録装置であって、前記画像入力装置から入力したデータを加工する加工手段と、入力データの印刷を開始するまでの時間を予測する予測手段と、印刷開始前に印刷準備を行うプレウォームアップ手段とを有することを特徴とする画像記録装置。
【請求項3】
前記予測手段は、ウォームアップに要する時間を予測するウォームアップ予測手段と、入力データ及びコントローラ処理方法から、コントローラ処理に要する時間を予測するコントローラ処理予測手段とを有し、印刷開始可能になるタイミング及びプレコマンドが最大効果を発揮するタイミングを予測することを特徴とする請求項1又は2記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記ウォームアップ予測手段は、エンジンの現在の状態から印刷を開始できる状態までの、ウォームアップに要する時間を予測することを特徴とする請求項3記載の画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−260185(P2006−260185A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−76912(P2005−76912)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】