説明

画像記録装置

【課題】1組の光学センサによって、シート載置部におけるシート残量の検出及びシート幅を検出可能な手段を提供する。
【解決手段】給紙トレイ20に載置されたシートの厚みに応じて、第1方向121へ移動する給紙手段に発光素子67が設けられ、この発光素子67から遮光ライン間を通じてキャリッジ38側へ透過する光が、キャリッジ38に搭載された受光素子68に受光され、その第2位置P2が位置検出手段によって検出される。この第2位置P2に基づいて、給紙トレイ20におけるシート残量が検出される。加えて、発光素子67から照射されて透光部52を透過する光が、キャリッジ38に搭載された受光素子68に受光され、その第4位置P4が位置検出手段によって検出される。この第4位置P4と第3位置P3とに基づいて、シートの端部の位置が判定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1組の光学センサを使用して、シート載置部におけるシートの有無とプラテン上のシートの幅とが検出可能な画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像記録装置において、記録媒体の残量の検出や、記録媒体の端部位置が検出可能なものが知られている。
【0003】
記録媒体の残量の検出方法として、画像記録装置の記録媒体の供給部に設けられたアームの角度が検出される方法が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。例えば、特許文献2においては、以下の手順で記録媒体の残量が検出される。まず、記録媒体を搬送するピックアップローラの初期位置が、遮光フラグが初期位置センサを遮ることによって検出される。次に、ピックアップローラを支持するアームとともに回転する軸の回転角度の変化量が、ロータリーエンコーダによって検出される。検出されたアームの回転角度の変化量と、搬送された記録媒体の枚数とに基づいて、記録媒体一枚あたりのアームの回転角度の単位変化量が演算され、その単位変化量に基づいて、記録媒体の残量が演算される。
【0004】
特許文献3には、光学センサが用いられる記録媒体の残量検出方法が開示されている。特許文献3に開示された画像記録装置は、赤外光及び紫外光を照射する発光部と、記録媒体の種類の検出及び記録媒体の有無の検出を行うための検出器とが設けられている。この検出器は、記録媒体積載部に対向する位置に設けられている。記録媒体積載部の底面には、反射基準部材が設けられている。発光部から照射されて記録媒体によって反射される反射光は、記録媒体の種類によって反射特性が異なるので、この反射光に基づいて記録媒体の種類が特定される。また、記録媒体積載部に記録媒体が存在しない場合には、反射基準部材からの反射光が受光されるので、この部材の反射特性によって載置部に記録媒体が存在しないと判定される。
【0005】
特許文献4には、光学センサが用いられる記録媒体の端部位置の検出方法が開示されている。特許文献4に開示されたラインプリンタは、反射光によるサイズ検出が困難な記録媒体に対しても、確実にそのサイズを検出し得る。このラインプリンタでは、記録ヘッドが搭載されているキャリッジユニットに透過型光学センサが設けられ、ホームポジションとされる位置に検出プレートが設けられる。また、記録部に搬送された記録媒体を押さえるための記録媒体押さえに、サイズ検出プレートが設けられる。キャリッジユニットが検出プレート上に移動したとき、光学センサから射出される光がプレートによって遮断されることで、ホームポジションが認識される。また、記録媒体押さえに設けられたサイズ検出プレートが、同様にして、キャリッジユニットの設けられた光学センサにより認識される。そして、2つの検出プレート間の距離が、記録媒体のサイズとして算出される。
【0006】
特許文献5には、光センサが用いられて記録媒体の幅及び厚みを検出する方法が開示されている。特許文献5に開示された画像記録装置は、多目的センサを有する。この多目的センサは、記録ヘッドとともにキャリッジに搭載されており、1つの赤外フォトダイオード(以下、「赤外LED」と称される。)及び2つのフォトトランジスタを有する。赤外LEDは、測定面(プラテンの表面又は記録用紙の表面)に対して45°の角度で光を照射するように配置された発光素子である。2つのフォトトランジスタは、受光軸が赤外LEDの反射光の中心軸と平行になるように配置された受光素子である。2つのフォトトランジスタは、赤外LEDに対して光軸がずらされて配置されている。このため、多目的センサから測定面までの距離に応じて、2つのフォトトランジスタから出力されている出力電圧が大きく変化する。この記録装置では、フォトトランジスタの出力電圧が得られると、これら2つの出力電圧に基づいて、距離係数が求められる。記録装置には、演算によって得られた距離係数と、多目的センサから測定面までの距離とを対応付けたテーブルが設けられている。このため、前述のように求められた距離係数と上記テーブルとに基づいて、多目的センサから記録用紙までの距離、及び多目的センサからプラテンまでの距離が求められ、これらから記録用紙の厚さが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−197540号公報
【特許文献2】特開2000−281242号公報
【特許文献3】特開2006−225058号公報
【特許文献4】特開平11−138924号公報
【特許文献5】特開2007−91467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述されたように、画像記録装置においては、シート載置部に載置されたシートの残量やプラテン上のシートの端部位置が検出されることが望まれている。例えば、特許文献1〜4に開示されているように、シートの残量検出のための光学センサと、シートの端部検出のための光学センサとが、画像記録装置にそれぞれ設けられることによって、両者の検出が実現される。しかし、光学センサの数が増えると、部品コスト点数の増加による組み立て、検査等の煩雑性が増大するという問題が生じる。
【0009】
特許文献5では、1つの赤外LEDと2つのフォトトランジスタとによって記録媒体の幅と厚みが計算される。しかし、この2種類の検出は、プラテン上にあるシートに対して実現されるものであって、シート載置部上のシートとプラテン上のシートのように、異なる位置に配置された部材上の各シートが検出されるものではない。
【0010】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、1組の光学センサによって、シート載置部におけるシートの有無と、プラテン上のシートの幅とが検出可能な手段を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、簡易な構成によって、ユーザにより指定されたサイズと異なるサイズのシートに画像記録がなされることを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1) 本発明に係る画像記録装置は、複数枚のシートが積層されて載置される載置面を有するシート載置部と、上記シート載置部の載置面に対して接離する第1方向へ移動可能であり、当該シート載置部に載置されたシートのうち最上位置のシートに接触して当該シートを搬送路へ給送する給送手段と、上記載置部から上記搬送路へ給送されたシートを支持する支持面を有するプラテンと、上記プラテンへシートを搬送する搬送手段と、第1方向に対して上記プラテンを介在させて上記給送手段と反対側に配置されており、上記プラテンにおいてシートが搬送される第2方向と交差する方向であって上記プラテンの支持面に沿った第3方向へ移動するキャリッジと、上記キャリッジに搭載されて上記プラテン上のシートに画像記録を行う記録ヘッドと、上記キャリッジの第3方向に対する位置を検出して当該位置を示す位置情報を出力する位置検出手段と、上記給送手段の移動に連動して第1方向へ移動され、上記プラテンへ向かって光を照射する発光部と、上記キャリッジに搭載されており、上記発光部が照射する光の受光量に応じた信号を出力する受光部と、上記プラテンにおいて、上記受光部が第3方向へ移動する領域に沿って設けられて、上記発光部から照射される光を透過する透光部と、上記発光部を含む第1方向に沿った仮想直線と上記透光部とが交差する第1位置以外に第2方向へ離間されて配置されて第3方向と交差する方向へそれぞれ延出されており、上記第1方向に対して上記透光部より低い透光率を有する一対の遮光部と、上記シート載置部からシートを給送するに先立って、上記発光部を発光させた状態において上記キャリッジを移動させ、上記遮光部により当該発光部の光が減衰したときにおける上記キャリッジの第3方向の第2位置に基づいて、当該発光部の第1方向における第3位置を演算し、当該第3位置に基づいて上記シート載置部におけるシートの有無を判定する第1演算を実施して、上記シート載置部にシートが有ると判定したことを条件として、上記給送手段を駆動させ、上記シート載置部から上記プラテンの支持面にシートが支持されて上記透光部上に当該シートがあるときであって、かつ、当該シートに画像記録が行われる前に、上記発光部を発光させた状態において上記キャリッジを移動させ、上記透光部を透過した当該発光部の光を上記受光部が受光したときにおける上記キャリッジの第3方向の第4位置及び上記第3位置に基づいて、当該シートの第3方向に沿った幅を判定する第2演算を実施する制御手段と、を具備する。
【0013】
給送手段は、シート載置部に載置された複数枚のシートの厚みに応じて第1方向へ移動する。この給送手段の移動に伴って、発光部も第1方向へ移動する。発光部が第1方向へ移動すると、発光部から照射された光が遮光部によってキャリッジ側において一度減衰されて、一対の遮光部間において再びキャリッジ側へ透過する第3方向の位置(第2位置)が変化する。キャリッジが第3方向へ移動されつつ、受光部が遮光部によって光が減衰されてから再び透過する位置を検出することによって、第2位置が検出される。この第2位置に基づいて、発光部の第1方向に対する第3位置が演算される。制御手段は、シート載置部からシートを給送するに先立って第3位置を演算し、その第3位置に基づいてシート載置部におけるシートの有無を判定する第1演算を実施する。そして、シート載置部にシートが有ると判定したことを条件として、給送手段を駆動させる。したがって、シート載置部にシートが無いにも拘わらず、給送手段が駆動されることがない。
【0014】
シートはプラテンに支持されつつ第2方向へ搬送される。このシートの端は、透光部上を通過する。発光部から照射されて透光部を透過する光は、シートによって遮光される。したがって、シートの端部の位置が変化すると、発光部から透光部を通じてキャリッジ側へと透過する光を受けるキャリッジの位置の第3方向の位置(第4位置)が変化する。キャリッジが第3方向へ移動されつつ、受光部が透光部を透過する光を受光した位置が検出されることによって、第4位置が検出される。この第4位置と前述された第3位置とに基づいて、シートの端の位置が判定される。検出されたシートの端の位置に基づいて、シートの幅が算出される。
【0015】
なお、本明細書において、別段の定めがない限り、「方向」とは、例えば+、−のように相対する向きを有する直線で表されるものであり、「向き」とは、方向のうち例えば+または−のように一個のアローヘッドを有する矢印で表されるものである。
【0016】
(2) 上記制御手段は、記録すべき画像を示す画像情報と、当該画像データを記録すべきシートのサイズを示すサイズ情報とを含む画像記録データに基づいて、画像記録動作を実施するものであり、上記第2演算により得られたシートの幅と、上記サイズ情報から得られたシートの幅とが異なることを条件として、画像記録を行わずに、上記プラテンに搬送されたシートを上記搬送路から排出させるものであってもよい。
【0017】
これにより、ユーザにより指定されたサイズと異なるサイズのシートは、画像記録が行われることなく搬送路から排出される。
【0018】
(3) 上記制御手段は、複数枚のシートに対して連続して画像記録を行うときに、各シート毎に上記第1演算及び上記第2演算を実施するものであってもよい。
【0019】
例えば、シート載置部にサイズが異なるシートが混載されている場合に、ユーザにより指定されたサイズと異なるサイズのシートが、画像記録が行われることなく搬送路から排出される。
【0020】
(4) 上記制御手段は、上記第1演算において上記シート載置部にシートが無いと判定したことを条件として、エラーの報知を行うものであってもよい。
【0021】
これにより、ユーザはシート載置部にシートを補充するタイミングを知り得る。
【0022】
(5) 上記制御手段は、上記第2演算により得られたシートの幅と、上記サイズ情報から得られたシートの幅とが異なることを条件として、エラーの報知を行うものであってもよい。
【0023】
これにより、ユーザはシート載置部のシートを交換する必要性を知り得る。
【0024】
(6) 上記制御手段は、上記第1演算において、上記第3位置に基づいて上記シート載置部に載置されたシートの量を算出するものであってもよい。
【0025】
(7) 上記制御手段として、上記第1演算において、上記仮想直線と上記第2位置との上記第3方向に沿った第1距離、上記第1位置と上記一対の遮光部の間との上記第3方向に沿った第2距離、上記シート載置部の載置面と上記プラテンの支持面との上記第1方向に沿った第3距離及び上記プラテンの支持面と上記キャリッジの受光部との上記第1方向に沿った第4距離に基づいて、上記第3位置を演算するものが挙げられる。
【0026】
(8) 上記制御手段として、上記第2演算において、上記仮想直線と上記第4位置との上記第3方向に沿った第5距離、上記第3位置と上記プラテンの支持面との上記第1方向に沿った第6距離、及び上記第4距離と、上記第1位置と、に基づいて、シートの第3方向に沿った端の位置を演算し、当該端の位置に基づいてシートの幅を算出するものが挙げられる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、制御手段が、シート載置部からシートを給送するに先立って、第3位置に基づいてシート載置部におけるシートの有無を判定する第1演算を実施して、シート載置部にシートが有ると判定したことを条件として、給送手段を駆動させるので、シート載置部にシートが無いにも拘わらず、給送手段が駆動されることがない。また、制御手段は、第3位置と第4位置とに基づいて第2演算を実施して、シートの幅を算出するので、1組の光学センサによって、シート載置部におけるシートの有無と、プラテン上のシートの幅とが検出される。
【0028】
また、本発明によれば、第2演算により算出されたシートの幅が、ユーザにより指定されたサイズの幅と異なると、画像記録が行われることなくシートが搬送路から排出されるので、ユーザにより指定されたサイズと異なるサイズのシートに画像記録がなされることが防止され、インクによるプラテンの汚れや、シートの裏面の汚れを防止することがことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る画像記録装置の一実施形態に係る複合機10の外観斜視図である。
【図2】プリンタ部11の内部構造を示す模式図である。
【図3】プリンタ部11の主要構成を示す平面図である。
【図4】記録部24の平面図である。
【図5】制御部100の構成例を示すブロック図である。
【図6】図2のVI−VI切断線の断面構造を模式的に表す模式図である。
【図7】図2のVI−VI切断線の断面構造を模式的に表す模式図である。
【図8】図6における点O、A、B、C、Dの関係を示す図である。
【図9】図2のVI−VI切断線の断面構造を模式的に表す模式図である。
【図10】図9における点O、A、B、E、Fの関係を示す図である。
【図11】キャリッジ38の移動に伴う受光量の変化量を図示したものである。
【図12】プリンタ部11の印刷動作を示すフローチャートである。
【図13】シート残量Nの判定動作を示すフローチャートである。
【図14】シート残量Nの判定動作を示すフローチャートである。
【図15】シート端部の判定動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されながら説明される。なお、本実施の形態は、本発明に係る画像記録装置の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0031】
[複合機10の概略構成]
図1に示されるように、複合機10は、高さ方向121(第1方向)よりも幅方向(第3方向)122及び奥行き方向(第2方向)123に長い幅広薄型の概ね直方体形状に構成されている。複合機10は、プリンタ部11とスキャナ部12とを一体的に備え、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能等を有する。プリンタ部11が本発明に係る画像記録装置に相当する。なお、複合機10は、必ずしもスキャナ部12を有している必要はなく、スキャン機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタとして本発明に係る画像記録装置が実施されてもよい。
【0032】
複合機10の下部にプリンタ部11が設けられている。プリンタ部11は、パーソナルコンピュータなどの外部情報機器(不図示)と通信可能に接続され得る。プリンタ部11は、外部情報機器から受信した印刷データやスキャナ部12で読み取られた原稿の画像データに基づいて、記録用紙110(本発明のシートの一例、図2参照)に画像を記録する。
【0033】
複合機10の上部にスキャナ部12が設けられている。スキャナ部12は、いわゆるフラットベッドスキャナとして機能するものである。本発明には、スキャナ部12は直接に関係しないので、ここでは詳細な説明が省略される。
【0034】
複合機10の正面上部に操作パネル14が設けられている。操作パネル14には、各種情報を表示するディスプレイや情報の入力を受け付けるボタンが設けられている。複合機10は、操作パネル14から入力された指示情報に基づいて動作する。なお、複合機10が外部情報機器と接続されている場合には、複合機10は、外部情報機器からプリンタドライバやスキャナドライバなどを通じて送信される指示情報に基づいても動作する。
【0035】
[プリンタ部11]
以下プリンタ部11の構成が詳細に説明される。
【0036】
図1に示されるように、プリンタ部11の正面側に開口13が形成されている。プリンタ部11には、この開口13を通じて給紙カセット33が装着される。給紙カセット33は、給紙トレイ20及び排紙トレイ21を備えている。給紙トレイ20及び排紙トレイ21は、排紙トレイ21を給紙トレイ20の上側として上下二段に配置されている。
【0037】
給紙トレイ20は、記録用紙110を積載状態で収容可能な容器形状のものである。給紙トレイ20には、定形サイズの記録用紙110が収容される。記録用紙110の種類としては、普通紙、光沢紙、インクジェット紙などが挙げられる。また、記録用紙110の定形サイズとしては、例えばA4サイズ、B5サイズ、はがきサイズなどが挙げられる。給紙トレイ20が、本発明におけるシート載置部に相当する。
【0038】
給紙トレイ20の奥側(図2における右側)に傾斜板22が設けられている。傾斜板22は、装置背面側(図2における右側)へ倒れるように傾斜している。給紙カセット33がプリンタ部11に装着されると、傾斜板22が搬送路23の下方に配置される。搬送路23は、傾斜板22から上方へ向かった後、複合機10の正面側(図2における左側)へ曲がって、排紙トレイ21まで直線的にまっすぐ延びている。
【0039】
給紙トレイ20は、容器形状をなしており、その底面27に、ローラポケット65が設けられている。このローラポケット65は、後述される給紙ローラ25に対応して配置されており、給紙ローラ25の下方部分を収容可能な凹嵌形状である。給紙トレイ20の底面27に記録用紙110が載置されると、その記録用紙110によってローラポケット65が覆われる。給紙トレイ20から記録用紙110が無くなると、底面27にローラポケット65が開口して、ローラポケット65に給紙ローラ25の下方部分が収容される。なお、底面27が、本発明における載置面に相当する。
【0040】
給紙トレイ20の上側には、供給部32が配置されている。供給部32は、給紙ローラ25、アーム26及び軸28を備えている。軸28は、幅方向122(図2の紙面に垂直な方向、図1参照)を軸方向としてプリンタ部11のフレーム(不図示)に支持されている。アーム26は、軸28に回動可能に設けられている。給紙ローラ25は、このアーム26の先端側に回転可能に支持されている。アーム26は、自重によって或いはバネ等による弾性力を受けて給紙トレイ20側へ回動付勢されている。このため、給紙ローラ25が給紙トレイ20における最上位置の記録用紙110に適切な圧力で当接する。給紙ローラ25には、軸28及びアーム26に設けられた動力伝達機構(不図示)を介してLFモータ85(図5参照)から駆動伝達される。給紙ローラ25が回転すると、給紙トレイ20上の最上位置の記録用紙110は、給紙ローラ25の回転力を受けて傾斜板22に沿って搬送路23へ送り出される。これにより、給紙トレイ20から搬送路23へ記録用紙110が供給される。この供給部32が、本発明における給送手段に相当する。
【0041】
搬送路23において、後述されるプラテン42より上流側に搬送ローラ対59が設けられている。搬送ローラ対59は、搬送ローラ60及びピンチローラ61からなる。搬送ローラ60は、LFモータ85(図5参照)から駆動伝達されて回転する。ピンチローラ61は、搬送路23を挟んで搬送ローラ60の下側に回転自在に配置されており、搬送ローラ60へ向けてバネによって付勢されている。給紙トレイ20から搬送路23へ供給された記録用紙110は、搬送ローラ60及びピンチローラ61に挟持された状態で、搬送ローラ60の回転力を受けて搬送向き17へ搬送される。搬送向き17に沿った方向は、奥行き方向123に合致する。この搬送ローラ対59が、本発明における搬送手段に相当する。
【0042】
搬送路23における搬送ローラ対59よりも搬送向き17の下流側に、排出ローラ対64が設けられている。排出ローラ対64は、排紙ローラ62及び拍車63からなる。排紙ローラ62は、LFモータ85(図5参照)から駆動伝達されて搬送ローラ60と同期して回転する。拍車63は、搬送路23を挟んで排紙ローラ62の上側に回転自在に配置されており、排紙ローラ62へ向けてバネによって付勢されている。記録用紙110は、排紙ローラ62と拍車63とに挟持された状態で、排紙ローラ62の回転力を受けて搬送路23に沿って搬送され、排紙トレイ21(図1参照)に排出される。
【0043】
搬送路23おける搬送ローラ対59よりも搬送向き17の上流側に、レジストセンサ71が設けられている。レジストセンサ71は、搬送路23に沿って搬送される記録用紙110の有無を検出するものである。レジストセンサ71は、記録用紙110を検出可能であれば特に限定されるものではないが、本実施形態ではメカニカルセンサとして構成されている。レジストセンサ71は、フォトインタラプタ及び検出子を備える。フォトインタラプタは、光を出射する発光部、及び光を受光する受光部を有する。検出子は、記録用紙110との当接によって回動可能に軸支されている。記録用紙110が検出子に当接していない状態では、発光部と受光部との間の光の光路が開放されている。記録用紙が検出子に当接すると、検出子によって上記光路が遮られる。このため、受光部で生成される電気信号の信号レベルが変化する。後述される制御部100(図5参照)は、この電気信号の変化に基づいて、第5位置P5における記録用紙110の有無を判断する。
【0044】
図3に示されるように、搬送ローラ60には、ロータリーエンコーダ86が設けられている。詳細には、ロータリーエンコーダ86は、搬送ローラ60の軸に設けられたエンコーダディスク87と、このエンコーダディスク87のパターンを検出するフォトインタラプタ88とを有する。エンコーダディスク86は、透明な樹脂からなる円盤形状のものである。エンコーダディスク86には、放射線状に延びる遮光部と透光部とが等ピッチで交互に並んだパターンが記されている。フォトインタラプタ88は、エンコーダディスク86のパターンを検出して、パルス信号を出力する。
【0045】
[プラテン42]
搬送ローラ対59と排出ローラ対64との間に、プラテン42が設けられている。プラテン42は、搬送路23の下側に設けられている。搬送路23に沿って搬送される記録用紙110は、記録部24の下方を通過する際にプラテン42によって下から支持される。プラテン42には、透光部52が設けられている(図4参照)。透光部52の上面は、プラテン42におけるシート支持面56とほぼ同一面をなしている。透光部52は、記録ヘッド39より搬送向き17の上流側に配置されており、後述される受光素子68の直下に位置されている。したがって、記録ヘッド39から透光部52へ向けてインク滴55が噴出されることはない。
【0046】
図4に示されるように、透光部52は、プラテン42を高さ方向121に貫く貫通孔に透明な部材が嵌め込まれた窓である。この透明な部材は必須ではないが、プラテン42の上側におけるインクミストが給紙カセット33側へ流れ込むことを防止するために有用である。透光部52には、後述される光束54(図6、図7、図9参照)が透過し得る。図4に示される平面視において、透光部52の幅方向122に沿った幅は、プリンタ部11において画像記録を行い得る最大サイズの記録用紙110の幅よりも広い。プラテン42上へ搬送される記録用紙110は、その幅方向122の中心位置が仮想中心線58に合致されて、搬送向き17へ搬送される。このような搬送手法は、センターレジとも称される。プリンタ部11において画像記録を行い得るすべてのサイズの記録用紙110は、その幅方向122の一端が透光部52上を通過する。換言すれば、プラテン42上に搬送された記録用紙110によって、透光部52が完全に覆われることはない。
【0047】
透光部52には、後述される光束54を遮光する一対の遮光ライン50A,50Bが設けられている。遮光ライン50A,50Bによって、透光部52を高さ方向121へ透過し得る光束54の強度が減衰される。遮光ライン50A,50Bは、それぞれが搬送向き17に沿った方向(奥行き方向123)へ延びる直線であり、その太さは受光素子68へ向かう光束54の光強度を減衰して、受光素子68から出力される電気信号を変化させるに十分な程度の太さであり、記録用紙110や透光部52の幅方向122に沿った幅より十分に細い。なお、遮光ライン50A,50Bは、光束54を完全に遮断する必要はなく、受光素子68から出力される電気信号の変化として検出できる程度に、光束54の強度を減衰する程度で足りる。
【0048】
遮光ライン50A,50Bは、いずれも、プラテン42における幅方向122の仮想中心線58に対して、図4における左側に配置されている。なお、この一対の遮光ライン50A,50Bの配置は、仮想中心線58に対して左右が入れ替わってもよい。遮光ライン50A,50Bは、センターレジで搬送される所定サイズの記録用紙110の端と重複しない幅方向122の位置に設けられている。記録用紙110の所定サイズとは、例えば日本工業規格で定められるA4サイズやA5サイズなどである。
【0049】
一対の遮光ライン50A,50Bは、相互に幅方向122において離間されている。遮光ライン50A,50Bの間隔は、遮光ライン50A,50Bの間を透過して受光素子68へ向かう光束54が、受光素子68から出力される電気信号の変化として検出するに十分な程度であり、記録用紙110や透光部52の幅方向122に沿った幅より十分に細い。一対の遮光ライン50A,50Bの配置は相対的なものであり、幅方向122において相互に入れ替わってもよい。
【0050】
[キャリッジ38]
図2に示されるように、プラテン42の上側に記録部24が配置されている。記録部24は、幅方向122(図2における紙面に垂直な方向)へ移動するキャリッジ38を備えている。キャリッジ38には、インクジェット方式の記録ヘッド39及び受光素子68(本発明の受光部の一例)が搭載されている。ここで、幅方向122は、記録用紙110の搬送向き17と直交する水平な方向である。
【0051】
図3に示されるように、搬送路23の上側において、搬送向き17に所定の間隔が隔てられて、一対のガイドフレーム43,44が設けられている。ガイドフレーム43,44は、幅方向122へ延設されている。ガイドフレーム43は、ガイドフレーム44よりも搬送向き17の上流側に設けられている。キャリッジ38は、ガイドフレーム43,44を跨ぐようにしてガイドフレーム43,44に載置されている。これにより、キャリッジ38は、搬送路23を挟んでプラテン42と対向して配置されている(図2参照)。なお、図2では、ガイドフレーム43,44は省略されている。
【0052】
キャリッジ38の搬送向き17の上流側の端部は、ガイドフレーム43の上面に摺動自在に支持されている。キャリッジ38の搬送向き17の下流側の端部は、ガイドレーム44の上面に摺動自在に支持されている。ガイドフレーム44の端部45は、ガイドフレーム44が上方へ向かって略直角に曲折されたものであり、幅方向122へ延出されている。キャリッジ38は、この端部45を不図示のローラ等によって挟持している。これにより、キャリッジ38は、端部45を基準として幅方向122への移動が可能である。
【0053】
ガイドフレーム44の上面には、ベルト駆動機構46が設けられている。ベルト駆動機構46は、駆動プーリ47、従動プーリ48及び駆動ベルト49を有している。駆動プーリ47及び従動プーリ48は、幅方向122の両端付近にそれぞれ設けられている。駆動ベルト49は、内側に歯が設けられた無端環状のものであり、駆動プーリ47と従動プーリ48との間に架け渡されている。
【0054】
駆動プーリ47の軸にCRモータ84(図5参照)が接続されている。駆動プーリ47は、CRモータ84の駆動力を受けて回転する。この駆動プーリ47の回転力によって駆動ベルト49が周運動する。キャリッジ38は、この駆動ベルト49に固定されているので、駆動ベルト49が周運動することによって幅方向122へ移動する。
【0055】
ガイドレール44には、エンコーダストリップ51が設けられている。エンコーダストリップ51は、端部45に沿ってガイドレール44の両端に渡って架設されている。エンコーダストリップ51は、透明な樹脂からなる帯状のものである。エンコーダストリップ51には、遮光部と透光部とが等ピッチで交互に並んだパターンが記されている。キャリッジ38には、このエンコーダストリップ51のパターンを検出するためのフォトインタラプタ69が搭載されている。フォトインタラプタ69は、エンコーダストリップ51のパターンに応じたパルス信号を出力する。
【0056】
[記録ヘッド39]
記録ヘッド39は、インクジェット方式の記録ヘッドである。プリンタ部11の内部には、インクカートリッジ40(図3参照)が配置されている。インクカートリッジ40は、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの各インク色に応じて4種のインクカートリッジ40が設けられている。各インクカートリッジ40から記録ヘッド39へ4本のインクチューブ41を通して各色インクがそれぞれ供給される。記録ヘッド39は、そのノズルがキャリッジ38の底面から下方へ露出されるようにして、キャリッジ38に搭載されている(図2参照)。キャリッジ38が幅方向122へ移動される間に、記録ヘッド39のノズルから微小なインク滴55がプラテン42上の記録用紙110へ向けて選択的に噴出される。これにより、プラテン42上の記録用紙110に画像が記録される。
【0057】
[光学センサ70]
図6に示されるように、光学センサ70は、発光素子67と受光素子68とによって構成されている。発光素子67は、供給部32に設けられている。具体的には、発光素子67は、給紙ローラ25を支持しているアーム26の基端部における上側に設けられている。この発光素子67は、フォトダイオード(以下、「LED」と称される。)である。発光素子67からは、一定強度の光束54が射出される。発光素子67から射出された光束54は、プラテン42に設けられた透光部52を通過する。また、光束54は、遮光ライン50A,50Bにより減衰される。給紙トレイ20に積載された記録用紙110の量が変わると、最上位置の記録用紙110の高さ方向121の位置が変わり、その最上位置の記録用紙110に圧接する給紙ローラ25及びアーム26の高さ位置も変わる。したがって、発光素子67は、給紙トレイ20に積載された記録用紙110の残量に応じて、高さ方向121の位置が変位する。この発光素子67が、本発明における発光部に相当する。
【0058】
受光素子68は、キャリッジ38に搭載されて、透光部52に対向されている。受光素子68はフォトトランジスタである。受光素子68は発光素子67から照射されて透光部52を通過した光束54を受光して、その受光量に応じた電気信号を出力する。この受光素子68が、本発明における受光部に相当する。
【0059】
[制御部100]
制御部100は、プリンタ部11のみならず、複合機10の全体動作を統括的に制御するものである。図5に示されるように、制御部100は、CPU101、ROM102、RAM103、EEPROM104及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)109を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。制御部100が、本発明における位置検出手段、第1演算手段、第2演算手段として機能する。
【0060】
ROM102には、CPU101が、CRモータ84やLFモータ85をはじめ、複合機10全体を制御するためのプログラムが記憶されている。また、ROM102には、給紙トレイ20に載置されている記録用紙110の残量を検出し、かつ、プラテン42上に搬送された記録用紙110の端部を検出するためのプログラムやテーブルが格納されている。このテーブルは、記録用紙110の残量や記録用紙110のプラテン上での端部位置と、キャリッジ38の位置(後述する第1距離〜第6距離)とを対応付けたものである。制御部100は、ROM102に格納されているテーブルなどに基づいて、記録用紙110の残量やプラテン42上における記録用紙110の端部位置を判定する。
【0061】
RAM103は、CPU101が前述された各種プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記憶する記憶領域又はデータ処理などの作業領域として使用される。EEPROM104には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0062】
ASIC109には、光学センサ70、レジストセンサ71、駆動回路80,81、リニアエンコーダ82、ロータリーエンコーダ83などが接続されている。なお、図5には示されていないが、ASIC109には、記録ヘッド39を制御するヘッド制御回路、スキャナ部12、操作パネル14、各種インタフェースなども接続されている。
【0063】
駆動回路81は、LFモータ85を駆動させるものである。駆動回路81は、ASIC109からの出力信号を受けてLFモータ85を駆動させる。LFモータ85の駆動力は、ギヤや駆動軸等からなる周知の駆動伝達機構を介して、給紙ローラ25、搬送ローラ60及び排紙ローラ62へ伝達される。
【0064】
駆動回路80は、ASIC109から入力される相励磁信号等に基づいて、CRモータ84に駆動信号を通電する。この駆動信号を受けたCRモータ84が回転することにより、ベルト駆動機構46を介して、キャリッジ38が幅方向122へ移動される。
【0065】
リニアエンコーダ82は、エンコーダストリップ51をフォトインタラプタ69により検出するものである(図3参照)。制御部100は、このリニアエンコーダ82の検出信号に基づいて、キャリッジ38の位置や速度、向きを判定して、CRモータ84の駆動を制御する。リニアエンコーダ82と相まって、制御部100が本発明における位置検出手段を構成する。
【0066】
ロータリーエンコーダ83は、エンコーダディスク87をフォトインタラプタ88により検出するものである(図3参照)。制御部100は、このロータリーエンコーダ83の検出信号に基づいて、搬送ローラ60の回転量を判定して、LFモータ85の駆動を制御する。
【0067】
制御部100は、レジストセンサ71から出力される電気信号の変化に基づいて、搬送路23の第5位置P5における記録用紙110の有無を判断する(図2参照)。また、制御部100は、記録用紙110の先端又は後端が第5位置P5を通過した後の搬送ローラ60の回転量から、プラテン42上における記録用紙110の先端又は後端の位置を判定する。
【0068】
[複合機10の動作]
以下複合機10の動作が説明される(図12参照)。
【0069】
操作パネル14において入力された印刷開始のコマンド、或いはコンピュータ等からプリンタドライバを通じて印刷開始のコマンドを制御部100が受信すると、制御部100は、記録用紙110の残量Nを判定する(S1)。この残量Nの判定については後述される。この判定結果をもとに、制御部100は、記録用紙110を搬送路23へ搬送するか否かを決定する(S2)。給紙トレイ20に記録用紙110が無かった場合(S2:YES)、つまり残量N=0である場合は、制御部100は、印刷を行うことなく動作を終了する。給紙トレイ20に記録用紙110がある場合は(S2:NO)、制御部100は、LFモータ85を駆動させて、給紙トレイ20から記録用紙110を搬送路23へ給送する(S3)。
【0070】
搬送路23へ給送された記録用紙110は、その先端がレジストセンサ71によって検出される。制御部100は、レジストセンサ71の検出信号及びロータリーエンコーダ83の検出信号に基づいて、記録用紙110の先端位置を監視する。制御部100は、記録用紙110の先端が透光部52に対応する第1位置P1(図4参照)を若干通過したときに、記録用紙110の搬送を停止して、記録用紙110の幅方向122に対する端の位置を判定する(S4)。この記録用紙110の端の位置の判定は後述される。なお、第1位置P1は、透光部52における搬送向き17の中央と、搬送向き17に対して同じ位置となる仮想中心線58との交差位置である。
【0071】
制御部100は、記録用紙110の端の位置が判定不可能であった場合、印刷を中止する(S5:NO)。制御部100は、記録用紙110の端の位置が判定されると(S5:YES)、その端の位置に基づいて記録用紙110の幅を算出して、印刷データに含まれるサイズ情報による用紙幅と対比する(S6)。制御部100は、記録用紙110の端の位置が判定されないときは、操作パネル14のディスプレイや外部情報機器の画面上にその旨を表示して印刷を終了する。また、制御部100は、記録用紙110の端の位置に基づく記録用紙110の幅と、印刷データに含まれるサイズ情報による用紙幅とが異なるときは(S6:NO)、操作パネル14のディスプレイや外部情報機器の画面上にその旨を表示して印刷を終了する。印刷が終了されると、プラテン42上まで搬送された記録用紙110は、排紙トレイ21へ排出される。
【0072】
制御部100は、記録用紙110の端の位置に基づく記録用紙110の幅と、印刷データに含まれるサイズ情報による用紙幅とが合致すると(S6:YES)、記録用紙110に印刷行う(S7)。そして、次のページの画像情報が存在する場合には(S8:YES)、制御部100は、前述と同様にして次のページの印刷を行う。次のページの画像情報が存在しない場合は(S8:NO)、制御部100は印刷を終了する。
【0073】
[記録用紙110の残量Nの判定]
以下、記録用紙110の残量Nの判定方法が詳細に説明される(図13参照)。
【0074】
制御部100は、発光素子67を発光させる(S11)。また、制御部100は、キャリッジ38をホームポジション(以下、「HP」と称される。)へと移動させる(S12)。なお、HPは、キャリッジ38が往復移動される方向のうちの一端側であり、図3における右側である。また、エンドポジション(以下、「EP」と称される。)は、HPと反対側の端であり、図3における左側である。
【0075】
続いて、制御部100は、HPへ移動されたキャリッジ38をEPへ向かって移動させながら、キャリッジ38に搭載された受光素子68の出力信号を監視する。図6に示されるように、キャリッジ38が仮想中心線58からEPへ移動される過程において、受光素子68が、プラテン42の透光部52において一対の遮光ライン50A,50B間を通過した光束54を受光する。受光素子68が光束54を受光すると、その受光量に応じた電圧を信号Cとして出力する。
【0076】
図11(A)に示されるように、透光部52を通過する光束54を受光した受光素子68は、あらかじめ設定された閾値Cより大きな電圧の信号C(C≧C)を出力する。そして、1本目の遮光ライン50Aによって光束54が減衰されると、受光素子68は、閾値Cより小さな電圧の信号C(C<C)を出力する(S14:YES)。キャリッジ38がさらに移動されると(S15)、受光素子68は、一対の遮光ライン50A,50B間を通過した光束54を受光して、閾値Cより大きな電圧の信号C(C≧C)を出力する(S16:YES)。制御部100は、そのときのキャリッジ38の位置情報を記憶する。
【0077】
キャリッジ38がさらに移動されて(S17)、2本目の遮光ライン50Bによって光束54が減衰されると、受光素子68は、閾値Cより小さな電圧の信号C(C<C)を出力する(S18:YES)。
【0078】
キャリッジ38がさらに移動されて(S19)、キャリッジ38がEPへ到達すると(S20:YES)、制御部100は、発光素子67を消灯し(S21)、記憶された位置情報に基づいて、記録用紙110の残量Nを演算する(図14:S22)。
【0079】
以下、記録用紙110の残量Nの演算方法が詳細に説明される。図6に示されるように、高さ方向121及び幅方向122に沿った断面において、プラテン42の第1位置P1を含む高さ方向121に沿った仮想直線53上に、発光素子67が配置されている。発光素子67から射出された光束54が、一対の遮光ライン50A,50B間を透過して受光素子68によって検知されたときのキャリッジ38の幅方向122の位置を第2位置P2とする。また、発光素子67の高さ方向121の位置を第3位置P3とする。また、発光素子67の位置を点Oとする。また、仮想直線53とプラテン42のシート支持面56との交点を点Aとする。仮想直線53と受光素子68の走査面57との交点を点Bとする。遮光ライン50A,50B間の幅方向122の中心位置を点Cとする。第2位置P2を点Dとする。
【0080】
図8に示されるように、高さ方向121及び幅方向122に沿った面において、3点OAC及び3点OBDによって、∠OAC=∠OBD=90°であり、かつ、互いに相似関係にある2つの直角三角形がそれぞれ形成される。
【0081】
第2位置P2(点D)と点Bとの距離を第1距離L1とする。点Cと第1位置P1(点A)との距離を第2距離L2とする。給紙ローラ25がローラポケット65に一部収容されたときの発光素子67とプラテン42のシート支持面56との距離を第3距離L3とする(図7参照)。プラテン42のシート支持面56と受光素子68の走査面57との距離を第4距離L4とする。
【0082】
図8に示されるように、第1距離L1は三角形OBDにおける辺BDで表される。第2距離L2は三角形OACにおける辺ACで表される。第4距離L4は、三角形OACと三角形OBDにおける辺OAと辺OBとの差に相当する辺ABによって表される。辺AC(第2距離L2)、辺AB(第4距離L4)及び第3距離L3の値は、給紙トレイ20の積載された記録用紙110の残量Nに拘わらず一定であり、プリンタ部11の構成からあらかじめ把握される。そして、辺BD(第1距離L1)が、記録用紙110の残量Nに応じて変化する。記録用紙110の残量Nが多いと、第1距離L1は大きくなり、残量Nが少ないと、第1距離L1は小さくなる。
【0083】
三角形OACと三角形OBDとは、互いに相似関係にあることから、式(1)の関係が成立する。
【0084】
OA:AC=OB:BD…式(1)
【0085】
また、第4距離L4は辺ABによって表されることから式(2)の関係が成立する。
【0086】
OB=OA+AB…式(2)
【0087】
式(1)のOBに式(2)を代入すると、以下の式(3)のように変形することができる。
【0088】
OA×BD=AC×(OA+AB)…式(3)
【0089】
式(3)をOAで表すと、以下の式(4)のように変形することができる。
【0090】
OA=AB×AC/(BD−AC)…式(4)
【0091】
記録用紙110の残量Nは、第3距離L3から三角形OACにおける辺OAを除くことで算出される。したがって、以下の式(5)が成立する。なお、残量Nは、給紙トレイ20に載置された複数枚の記録用紙110における高さ方向121に沿った厚みとして把握され、また、ローラポケット65の深さまでが残量Nに含まれることになる。
【0092】
N=L3−OA…式(5)
【0093】
この式(5)のOAに式(4)のOAを代入することにより、式(6)が導出される。
【0094】
N=L3−{AB×AC/(BD−AC)}…式(6)
【0095】
これにより、第1距離L1が検出されると、記録用紙110の残量Nが演算される。
【0096】
図14に示されるように、制御部100は、検出される記録用紙110の残量NがX以上であるかを判定する(S24)。ここで、Xは、給紙トレイ20における記録用紙110の最大載置量に対して30%となる残量Nに相当する値である。つまり、記録用紙110の残量Nが最大積載量の30%以上であるかどうかを制御部100が判断する。
【0097】
制御部100は、記録用紙110の残量NがX≦Nのとき(S23:YES)、記録用紙110の残量が十分である旨を残量情報としてRAM103に記憶する(S24)。
【0098】
制御部100は、記録用紙110の残量NがX未満であれば(S23:NO)、その残量NがXを超えているかを判定する(S25)。ここで、Xは、給紙トレイ20において記録用紙110が無いときの残量Nに相当する値であり、具体的にはローラポケット65の深さ未満の値として設定されている。記録用紙110の残量NがX<N<Xであれば(S25:YES)、制御部100は記録用紙110の残量Nが最大積載量の30%未満であると判断し、その結果を警告として表示する(S26)。この警告は、操作パネル14のディスプレイや外部情報機器の画面上で行われ、給紙トレイ20に積載された記録用紙110の残量が少なくなっていることを示すものである。
【0099】
制御部100は、記録用紙110の残量NがX以下であれば(S25:NO)、給紙トレイ20に記録用紙110が存在しないと判断して、その結果を警告として表示する(S27)。
【0100】
[記録用紙110の端部の判定]
以下、記録用紙110の端の位置の判定方法が詳細に説明される(図15参照)。
【0101】
前述されたように、給紙トレイ20に記録用紙110があると、記録用紙110が搬送路23へ給送されて、その記録用紙110がプラテン42へ到達する。制御部100は、レジストセンサ71及びロータリーエンコーダ83の各出力に基づいて、プラテン42の透光部52を覆う位置まで記録用紙110の先端が到達したことを判断する(S31)。
【0102】
制御部100は、透光部52に記録用紙110が到達すると(S31:YES)、記録用紙110の搬送を停止する。次いで、制御部100は、発光素子67を発光させる(S32)。また、制御部100は、キャリッジ38をHPへと移動させた後(S33)、キャリッジ38をEPへ移動させる。制御部100は、キャリッジ38が仮想中心線58よりEP側へ移動すると、受光素子68の出力信号を監視する。キャリッジ38が仮想中心線58からEPへ到達する過程において、受光素子68が透光部52を通過する光束54を検知する(S34)。前述と同様に、受光素子68が出力する信号Cに対して閾値Cが設定されている(図11(B)参照)。この閾値Cは、透光部52にかかる記録用紙110を透過する光束54を考慮しているため、閾値Cよりも高く設定される。受光素子68の信号Cが閾値Cを超えると(S35:YES)、制御部100はキャリッジ38の位置情報を取得して、RAM103に記憶する。制御部100は、キャリッジ38がEPへ到達すると、発光素子67を消灯して(S36)、記憶された位置情報に基づいて記録用紙110の端の位置を演算する(S37)。
【0103】
以下、記録用紙110の端の位置の演算方法が詳細に説明される。
【0104】
図9に示されるように、高さ方向121及び幅方向122に沿った断面において、発光素子67から射出された光束54が、透光部52を透過して受光素子68によって検知されたときのキャリッジ38の位置を第4位置P4とする。透光部52にかかる記録用紙110の幅方向122の端と光束54との交点を点Eとする。第4位置P4を点Fとする。
【0105】
図10に示されるように、高さ方向121及び幅方向122に沿った面において、3点OAE及び3点OBFによって、∠OAE=∠OBF=90°であり、かつ、互いに相似関係にある2つの直角三角形がそれぞれ形成されている。
【0106】
第4位置P4(点F)と点Bとの距離を第5距離L5とする。第3位置P3(点O)とプラテンのシート支持面56(点A)との距離を第6距離L6とする。プラテン42のシート支持面56(点A)と受光素子68の走査面57(点B)との距離を第4距離をL4とする。
【0107】
図10に示されるように、第5距離L5は三角形OBFにおける辺BFで表される。第6距離L6は三角形OAEにおける辺OAで表される。第4距離L4は、三角形OAEと三角形OBFにおける辺OAと辺OBとの差に相当する辺ABによって表される。ここで、辺AB(第4距離L4)は一定であり、プリンタ部11の構成からあらかじめ把握される。そして、辺BF(第5距離L5)が記録用紙110の端の位置に応じて変化する。記録用紙110の幅が広いと第5距離L5は大きくなり、幅が狭いと第5距離は小さくなる。
【0108】
三角形OAE及び三角形OBFは、互いに相似関係にあることから、式(7)の関係が成立する。
【0109】
OA:AE=OB:BF…式(7)
【0110】
第4距離L4は辺ABによって表される。したがって式(2)の関係が成立する。
【0111】
OB=OA+AB…式(2)
【0112】
式(7)のOBに式(2)を代入すると、以下の式(8)のように変形することができる。
【0113】
OA×BF=AE×(OA+AB)…式(8)
【0114】
記録用紙110の端の位置を検出するために必要な距離はAEであることから、式(9)を変形してAEで表すと、式(9)のように表される。
【0115】
AE=OA×BF/(OA+AB)…式(9)
【0116】
辺OAは、式(4)によって表されているので、式(9)に式(4)のOAを代入すると、式(10)のように表される。
【0117】
AE=AC×BF/BD…式(10)
【0118】
前述されたように、記録用紙110はセンターレジで搬送されるので、記録用紙110の幅に相当する距離Lは、式(11)によって表される。
【0119】
=2×AE…式(11)
【0120】
この式(11)のAEに、式(10)のAEを代入することにより、記録用紙110の端の位置を演算するために使用される式(12)が導出される。
【0121】
=2×AC×BF/BD…式(12)
【0122】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、発光素子67から一対の遮光ライン50A,50B間を通じてキャリッジ38側へ透過する光束54が、キャリッジ38に搭載された受光素子68に受光され、その第2位置P2がリニアエンコーダ82によって検出される。そして、この第2位置P2に基づいて、発光素子67の高さ方向121に対する第3位置P3が演算されるので、1組の光学センサ70によって、給紙トレイ20における記録用紙110の残量Nが検出される。
【0123】
また、発光素子67から照射されて透光部52を透過する光束54が、キャリッジ38に搭載された受光素子68に受光され、その第4位置P4がリニアエンコーダ82によって検出される。そして、この第4位置P4と前述された第3位置P3とに基づいて、記録用紙110の端の位置が判定されるので、1組の光学センサ70によって、プラテン42上の記録用紙110の端部の位置が検出される。記録用紙110の端部位置が制御部100によって検出されることによって、搬送路23に搬送可能な記録用紙110に対して、記録部24が正確な縁なし印刷を実行可能である。
【0124】
[変形例]
なお、前述された実施形態において、制御部100が、記録用紙110がプラテン42に搬送された後に、記録用紙110の搬送が間欠されるタイミングにおいて、発光素子67から光束54を照射するとともにキャリッジ38をHPからEPへ移動させ、記録用紙110の幅内において受光素子68が閾値C以上の信号Cを出力するか否かを監視してもよい。
【0125】
制御部110は、記録用紙110の幅内において受光素子68が閾値C以上の信号Cを出力したときには、記録用紙110に穴があると判断して、その結果を警告として表示する。また、制御部110は、前述された記録用紙110の端の位置の特定と同様にして、穴の位置及び大きさを特定してRAM103に記憶させ、その穴又はその周辺に対してインク滴を吐出しないように記録ヘッド39の動作を制御してもよい。
【符号の説明】
【0126】
11・・・プリンタ部(画像記録装置)
20・・・給紙トレイ(シート載置部)
23・・・搬送路
27・・・底面(載置面)
32・・・供給部(給送手段)
38・・・キャリッジ
39・・・記録ヘッド
42・・・プラテン
50A,50B・・・遮光ライン(遮光部)
52・・・透光部
53・・・仮想直線
56・・・シート支持面(支持面)
59・・・搬送ローラ対(搬送手段)
67・・・発光素子(発光部)
68・・・受光素子(受光部)
82・・・リニアエンコーダ(位置検出手段)
100・・・制御部(位置検出手段、制御手段)
110・・・記録用紙(シート)
121・・・高さ方向(第1方向)
122・・・幅方向(第3方向)
123・・・奥行き方向(第2方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のシートが積層されて載置される載置面を有するシート載置部と、
上記シート載置部の載置面に対して接離する第1方向へ移動可能であり、当該シート載置部に載置されたシートのうち最上位置のシートに接触して当該シートを搬送路へ給送する給送手段と、
上記載置部から上記搬送路へ給送されたシートを支持する支持面を有するプラテンと、
上記プラテンへシートを搬送する搬送手段と、
第1方向に対して上記プラテンを介在させて上記給送手段と反対側に配置されており、上記プラテンにおいてシートが搬送される第2方向と交差する方向であって上記プラテンの支持面に沿った第3方向へ移動するキャリッジと、
上記キャリッジに搭載されて上記プラテン上のシートに画像記録を行う記録ヘッドと、
上記キャリッジの第3方向に対する位置を検出して当該位置を示す位置情報を出力する位置検出手段と、
上記給送手段の移動に連動して第1方向へ移動され、上記プラテンへ向かって光を照射する発光部と、
上記キャリッジに搭載されており、上記発光部が照射する光の受光量に応じた信号を出力する受光部と、
上記プラテンにおいて、上記受光部が第3方向へ移動する領域に沿って設けられて、上記発光部から照射される光を透過する透光部と、
上記発光部を含む第1方向に沿った仮想直線と上記透光部とが交差する第1位置以外に第2方向へ離間されて配置されて第3方向と交差する方向へそれぞれ延出されており、上記第1方向に対して上記透光部より低い透光率を有する一対の遮光部と、
上記シート載置部からシートを給送するに先立って、上記発光部を発光させた状態において上記キャリッジを移動させ、上記遮光部により当該発光部の光が減衰したときにおける上記キャリッジの第3方向の第2位置に基づいて、当該発光部の第1方向における第3位置を演算し、当該第3位置に基づいて上記シート載置部におけるシートの有無を判定する第1演算を実施して、上記シート載置部にシートが有ると判定したことを条件として、上記給送手段を駆動させ、
上記シート載置部から上記プラテンの支持面にシートが支持されて上記透光部上に当該シートがあるときであって、かつ、当該シートに画像記録が行われる前に、上記発光部を発光させた状態において上記キャリッジを移動させ、上記透光部を透過した当該発光部の光を上記受光部が受光したときにおける上記キャリッジの第3方向の第4位置及び上記第3位置に基づいて、当該シートの第3方向に沿った幅を判定する第2演算を実施する制御手段と、を具備する画像記録装置。
【請求項2】
上記制御手段は、
記録すべき画像を示す画像情報と、当該画像データを記録すべきシートのサイズを示すサイズ情報とを含む画像記録データに基づいて、画像記録動作を実施するものであり、
上記第2演算により得られたシートの幅と、上記サイズ情報から得られたシートの幅とが異なることを条件として、画像記録を行わずに、上記プラテンに搬送されたシートを上記搬送路から排出させるものである請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
上記制御手段は、複数枚のシートに対して連続して画像記録を行うときに、各シート毎に上記第1演算及び上記第2演算を実施するものである請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
上記制御手段は、上記第1演算において上記シート載置部にシートが無いと判定したことを条件として、エラーの報知を行うものである請求項1から3のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項5】
上記制御手段は、上記第2演算により得られたシートの幅と、上記サイズ情報から得られたシートの幅とが異なることを条件として、エラーの報知を行うものである請求項1から4のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項6】
上記制御手段は、上記第1演算において、上記第3位置に基づいて上記シート載置部に載置されたシートの量を算出するものである請求項1から5のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項7】
上記制御手段は、上記第1演算において、上記仮想直線と上記第2位置との上記第3方向に沿った第1距離、上記第1位置と上記一対の遮光部の間との上記第3方向に沿った第2距離、上記シート載置部の載置面と上記プラテンの支持面との上記第1方向に沿った第3距離及び上記プラテンの支持面と上記キャリッジの受光部との上記第1方向に沿った第4距離に基づいて、上記第3位置を演算するものである請求項1から6のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項8】
上記制御手段は、上記第2演算において、上記仮想直線と上記第4位置との上記第3方向に沿った第5距離、上記第3位置と上記プラテンの支持面との上記第1方向に沿った第6距離、及び上記第4距離と、上記第1位置と、に基づいて、シートの第3方向に沿った端の位置を演算し、当該端の位置に基づいてシートの幅を算出するものである請求項1から7のいずれかに記載の画像記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−25546(P2011−25546A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174147(P2009−174147)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】