説明

異なるクラスの治療活性剤用のキャリア分子としてのヒアルロン酸の使用

本発明は、ヒアルロン酸と治療活性剤とからなる薬物送達システムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の薬物送達システム:異なるクラスの治療活性剤用のキャリア分子としてのヒアルロン酸の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
疎水性の特徴を有し、従って水に対して低い溶解度を示す多くの薬物は、水への溶解性を増加させ生物学的利用能を向上させるため、親水性のポリマーにコンジュゲートされてきた。この目的のため、生体適合性及び生物分解性の特性を示す多くのポリマー材料が使用され、そのいくつかは、生物学的に活性であり、十分な薬物の負荷能を有し、且つ薬物標的化の能力を有する。その例としては、ポリグルタミン酸、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルデキストラン及びヒアルロン酸がある。しかしながら、PLG、PEG及びCMDは、生物活性及び標的化能を欠落する一方で、HAは、生物活性を有し且つ薬物を病変部位へと標的化する能力を有することから、他のものに対して利点を有する。多くの腫瘍は、CD44受容体を過剰発現しており;HAは、薬物を病変部位へと送達する標的化のため、抗癌剤をコンジュゲートするのに用い得る。CD44HA受容体を発現する細胞株では、誘導体化したHAのエンドサイトーシスが見られる。蛍光標識したHA−タキソールコンジュゲートは、HA受容体を過剰発現すると知られているヒトガン細胞株に対して選択的な毒性を示してきた。HAに対する肝臓の受容体(HARLEC)の存在が示唆するのは、薬物を肝組織に標的化するのにキャリア分子として使用され得ることである。HAは、マウスにおいて、結腸腺癌からの肝転移を示す。
【特許文献1】国際公開第01/68105号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/18133号パンフレット
【非特許文献1】Carb.Res.、2005年、340巻、p.2229−2235
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
HAのC−6の第一水酸基をジヒドロ葉酸還元酵素阻害剤(DHFR)で置換したHAの調製は、特許文献1に述べられている。このコンジュゲートは、HAの選択的ハロゲン化反応により、HA−6−ハロゲンを調製した後、ハロゲンをDHFRで置換することで得られる。このコンジュゲートは、抗増殖活性を未だ有しているが、ハロゲン基が残存するという問題を未だ示す。
【0004】
多糖への離脱基の選択的な導入は、非特許文献1に述べられており、ここでは、アセトアミド及び塩化リチウムの混合物中でのセルロースのトシル化について報告されている;選択された条件により、この位置でのブロッキングとフリーな位置でのその他の化学基の導入を目的として、全ての第一水酸基を完全にスルフォニル化することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様では、ヒアルロン酸(HA)及び治療活性剤とからなる薬物送達システム(DDS)が提供され、この活性剤は、式(I)の活性剤を除いて、ヒアルロン酸のN−アセチル−D−グルコサミンのC−6位に共有結合される。
【0006】
【化3】

【0007】
ここで:
及びRは、互いに独立に、−NH、−OH、−OCH、C−Cのアルキル、=Oを示し;X及びYは、−C(R)=、−CH(R)−、−NH−、−N=を示し、ここで、Rは、−H、C−Cのアルキルを示し、Zは、−CH(R10)−、−N(R10)−、−O−を示し、R10は、−H、C−Cのアルキル、C−Cのアルケニル、C−Cのアルキニル、窒素、硫黄及び酸素からなる群から選択された1〜3個のヘテロ原子を有する5員又は6員の複素環を示し、Arは、1,4−フェニル基、1つ以上の5員又は6員の芳香族環と縮合した1,4−フェニル基、1つ以上の5員又は6員の複素環と縮合した1,4−フェニル基を示し、このArは、Rで可能に置換され、環A及びbは、互いに独立に、芳香族環又は非芳香族環であってもよい。
【0008】
式(I)の化合物は、特許文献1に記載のジヒドロ葉酸還元酵素阻害剤である。
【0009】
ヒアルロン酸(HAとも称する。)は、二糖の繰り返し単位からなり、D−グルクロン酸と、2−アセタミド−2−デオキシ−3−D−グルコース(N−アセチル−D−グルコサミン)とからなり、β(1→3)のグリコシド結合で結合されたものである;このD−グルクロン酸残基は、酸型であってもよく、また塩型であってもよい。各繰り返し単位は、β(1→4)のグリコシド結合により次の残基に結合し、直鎖のポリマーを形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において使用する用語ヒアルロン酸は、酸型も塩型も両方包含する。
【0011】
用語ヒアルロン酸は、種々の分子量を有するHAの分子画分、又はこの化合物の加水分解画分の一般的な群を言及するのに一般的に用いられる。本発明の目的のため、ヒアルロン酸は、10000〜100万の平均分子量を好ましく有し、さらに好ましくは、20000〜500000である。
【0012】
治療活性剤は、種々の異なる治療分野に属する薬物から選択され、鎮痛剤、降圧剤、麻酔剤、利尿剤、気管支拡張剤、カルシウムチャネルブロッカー、コリン作動剤、CNS剤、エストロゲン、免疫刺激剤、免疫抑制剤、脂肪親和剤、抗不安剤、抗潰瘍剤、抗不整脈剤、抗狭心剤、抗生物質、抗炎症剤、抗ウィルス剤、抗塞栓剤、血管拡張剤、解熱剤、抗うつ剤、抗精神病剤、抗腫瘍剤、粘液溶解剤、麻薬拮抗剤、ホルモン、鎮痙剤、抗ヒスタミン剤、抗真菌剤、乾癬治療薬が挙げられる。
【0013】
これらの治療活性剤は、求核基を有する。求核基は、電子対供与基であって、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、水酸基、チオール、アミド基が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。
【0014】
このDDSにおいて、ヒアルロン酸と治療活性剤との結合は、エステル、アミノ、エーテル、チオエーテル、アミドである。エステル結合が好ましい。
【0015】
このDDSsは、酸型又は塩型のいずれであってもよい。塩型である場合、アルカリ金属(好ましくは、Na又はK)、アルカリ土類金属(好ましくは、Ca又はMg)、遷移金属(好ましくは、Cu、Zn、Ag、Au、Co、Ag)で塩化(salification)されてもよい。塩化は、当業者公知の方法で達成される。
【0016】
任意で、DDSsの第二水酸基(secondary hydroxyl group)を誘導体化して、−OR、−OCOR、−SOH、−OPO、−O−CO−(CH−COOH、−O−(CH−OCORから選択される基を形成してもよく、ここで、nは、1〜4であり、Rは、C〜C10のアルキル、−NH、−NHCOCHである。これらの置換は、当業者公知の方法により簡単に達成可能であり、DDSの親水特性を調節するように選択されてもよい。
【0017】
DDSsにおける治療活性剤の全量は、置換の度合い(C6−DS)で決定される;後者は、DDSの全量に対する治療活性剤の重量%(C6−DSw)で示されるか、改変されたHAの繰り返し単位のモルに対する治療活性剤のモル%(C6−DSmol)で示されてもよい。
【0018】
本発明のDDSにおいて、C6−DSwは、好ましくは0.1〜60%であり、さらに好ましくは1〜50%であり、よりさらに好ましくは5〜40%である。
【0019】
実験部で示すように、本発明のDDSsは、ヒアルロン酸のN−アセチル−D−グルコサミンの繰り返し単位の第一水酸基に直接結合された治療活性剤の存在を特徴とする。HAの他の水酸基は、薬物の化学結合に関与しない。さらに、DDSsは、安定であり、実用的な医薬用途に有害であり得る所望しない反応の副産物及び不純物を含まない。
【0020】
これらは、治療剤の医薬効果を保持する。従って、DDSにおいて特定の治療活性剤に適切な全ての病態の処置に首尾よく使用され得る。
【0021】
従って、本発明のさらなる態様は、各治療剤に適切な病態の処置用の医薬の製造への、上記DDSsの使用である。この病態は、腫瘍、皮膚疾患、乾癬、炎症病態、関節リューマチ及び感染病態からなる群から選択される。
【0022】
また、本発明の態様は、医薬的に許容し得る賦形剤及び/又は希釈剤と組み合わせたDDSsを含有する医薬組成物である。この医薬組成物は、液体又は固形のいずれであってもよい;この組成物は、経口、非経口、局所のいずれを介して投与されてもよい。特に興味のあるのは、本発明によるDDSsを含有する注入可能な医薬組成物である。
【0023】
本発明のさらなる態様は、上記の特徴を有する式(I)の化合物を除く、HAと治療活性剤との薬物送達システムを調製する技術である。驚くべきことに見出されたように、この反応は、2つのカルボキシル基及び複素環を有する式(I)の構造を有する化合物で起こるのみならず、異なる治療分野に属する多くの数の異なる活性剤に広く適用可能である。
【0024】
この技術は、下記の反応ステップを有する:
(a)フリーの形態又は塩の形態のヒアルロン酸のN−アセチル−D−グルコサミンの単位のC−6位に離脱基を導入して、HA−6−活性体(HA−6−activated)を得るステップと;
(b)(HAのC6位の)離脱基を、治療活性剤に存在する求核基と置き換えることにより、HA−6−活性体のC6位と、治療活性剤との間の化学結合を形成して、HA−6−活性剤(HA−6−active agent)を得るステップと;
(c)ステップ(b)で得たHA−6−活性剤から、種々の未置換の離脱基を可能に置き換えるステップと;
(d)HA−6−活性剤を回収するステップ。
【0025】
この目的を考慮して、好ましくは、0.1〜60%、より好ましくは、1〜50%、さらにより好ましくは5〜40%のC6−DSwを有するDDSsを得ることが可能である。
【0026】
本発明の目的を実行するのに2つの異なる方法がある。第一の方法は、ステップ(a)から得られるHA−6−活性体を、反応混合物から単離し、その後、ステップ(b)に従って、治療活性剤と反応させ、最終産物であるHA−6−活性剤を得て、その後任意でステップ(c)を行う方法である。
【0027】
第二の方法は、HA−6−活性体を含有するステップ(a)で得た反応混合物に対して、直接ステップ(b)を行う方法である。上記の反応を実行するこの第二の方法の利点は、HA−6−活性体を単離するステップを回避するという事実からなる。
【0028】
出発物質であるHAは、フリーの形態であっても、塩の形態であってもよく、その対イオンは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であることが好ましく、又は窒素を含有する対イオンであることが好ましい。後者の場合、この対イオンは、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール及びテトラゾール並びに1以上のC1〜C6のアルキル基で可能に置換されたものからなる群から選択される複素環を有してもよい。窒素を含有する対イオンの好適な例は、アンモニウム、テトラブチルアンモニウム(TBA)、ピリジニウム又はsym−コリジニウムイオンである。
【0029】
ステップ(a)は、適当な試薬を、非プロトン性有機溶媒中で完全に攪拌したHA(フリーの形態又は塩の形態)の懸濁液又は溶液に添加することで行われる選択的反応である。
【0030】
HAのグルコサミン単位のC−6位に導入される離脱基は、求核基による置換の間に離脱する種々の電子対受容基である。これは、スルフォネート基、ホスホネート基(トリフェニルホスホネート基)、シアン化物(CN)、窒化物(NO)、ハロゲン(好ましくは、塩素)、サルフェート基、ハロゲンサルフェート基、硝酸塩、ハロゲンサルファイト(クロロサルファイト)からなる群から選択されてもよい。
【0031】
離脱基がハロゲンである場合、特許文献1及び2に記載の通り、ハロゲン化が行われる。ハロゲン基のうち、塩素基は、好適なものであって、ハロゲン化を行う好適な試薬は、メタンスルフォニルクロライドを有するN,N−ジメチルホルムアミドである。
【0032】
このステップにより、HA−6−活性体の形成が可能となる。
【0033】
ステップ(b)は、HA−6−活性体、又はステップ(a)から得た塩の形態のものを、治療活性剤と反応することにより、行われる。これは、治療活性剤に含まれる求核基により、離脱基を置換することからなり、HAのC−6位と治療活性剤との間に共有結合を形成させる。この結合の化学的性質は、求核基の化学的性質に依存する。これは、求核基がカルボキシル基である場合に形成されるエステル結合であってもよい。HAと治療活性剤との間に形成されるその他の結合としては、アミノ、エーテル、チオエーテル、アミドである。
【0034】
ステップ(c)は、可能なステップであって、種々の可能な未置換の離脱基の置き換えを可能とする種々の適当な反応であってもよい。斯かる置き換えは、例えば、還元による光分解により行われてもよい。いくつかの場合、種々の未置換の離脱基が反応条件又は試験(work−up)のためステップ(b)において破壊される可能性があるので、ステップ(c)は、必要ではない。ステップ(d)において、得られるHA−6−活性剤(DDS)は、標準的な技術により、回収される。
【0035】
本発明の方法の好適な実施例において、離脱基は、スルフォニル基であり、従って、得られる活性化されたHAは、HA−6−硫化物(HA−6−sulfonated)である。この好適な反応は、下記の反応ステップを有する。
【0036】
(a)塩の形態のヒアルロン酸のN−アセチル−D−グルコサミンの単位のC−6位にスルフォネート基を導入して、HA−6−硫化物(HA−6−sulfonated)を得るステップと;
(b)(HAのC6位の)スルホン酸基を、治療活性剤に存在する求核基と置き換えることにより、HA−6−硫化物のC6位と、治療活性剤との間の化学結合を形成して、HA−6−活性剤を得るステップと;
(d)HA−6−活性剤を回収するステップ。
【0037】
この実施例において、ステップ(a)の選択的なスルホン化は、スルホン化試薬としてアルキル又はアリールスルフォニルハライド、好ましくは塩化物を用いて、有機塩基又は無機塩基、好ましくは有機塩基の存在下で行われる。このアルキル又はアリールスルフォニルハライドは、メチルスルフォニル(メシル)、トルエン−p−スルフォニル(トシル)、トリフィル、トリムシル(trimsyl)、トリプシル(tripsyl)、1,1−スルフォニル−イミダゾールから選択されてもよく、好ましくは、メチルスルフォニル(メシル)である。
【0038】
上記の有機塩基は、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミンなどの異なる有機アミンから好ましく選択される。
【0039】
上記の溶媒は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド、ホルムアミドからなる群から選択される。
【0040】
一般的なスルホン化の手法は、下記の通りである。上記の塩基、好ましくは有機塩基を、窒素還流下で攪拌しながら、塩の形態、好ましくは有機塩基の形態のHAの懸濁液又は溶液に添加する。その後、適当な溶媒、好ましくは上記と同じ溶媒中のアルキル又はアリールスルフォニルクロライドを、滴下で添加する。2〜90分(好ましくは、45〜75分)の所定の時間の後、NaHCOを添加して反応を停止し、HAの第二水酸基との反応中に形成されたギ酸エステルを除去する。その後、約10〜20時間、好ましくは18時間、この反応を継続する。反応生成物(HA−6−硫化物)は、沈殿や乾燥などの公知の方法により溶液から直接回収され、又は回収後、適当な塩の形態のHA−6−硫化物、例えば、HA−6−硫化物:TBAの形態で得られるような方法で、溶液を処理する。
【0041】
この反応の条件は、穏やかであって、事実、反応は、室温又はより低い温度で首尾よく実行可能であり、冷却加熱サイクルは必要なく、pHの条件も穏やかである。
【0042】
上記の試薬は、限定的な量で使用され、適当な量は、スルフォニルハライド(例えば、メシルクロライド)のHAの繰り返し単位(好ましくは、2〜6モル当量)に対して、1〜10モル当量を、有機アミン(例えば、DIEA)のHAの繰り返し単位(好ましくは4〜12モル当量)に対して2〜20モル当量の存在下に有するものである。
【0043】
上記の反応条件において、得られるヒアルロン酸−6−硫化物は、10〜91%(モル/モル)、好ましくは、20〜90%、さらに好ましくは40〜80%の範囲の置換度(DSmol)を有する。N−アセチル−D−グルコサミン残基の第一位置(C−6)のメシル化反応の選択性は、50〜100%(C6−DSmol)である。いくつかのメシル化反応が、N−アセチル−D−グルコサミンのC−4位、D−グルクロン酸残基のC−2、C−3位などの第二位置(secondary position)でも起きる。このポリマーにおける構造及びメシル基の置換の度合いは、NMR分光法で確認される。
【0044】
スルフォニル化反応の好適実施例において、ステップ(b)により、HAと、治療活性剤に存在するカルボキシル基との間のエステル結合が形成される。
【0045】
この実施例において、ステップ(a)は、上述の通り実行され、ステップ(b)は、下記の方法に従って通常実行される。
【0046】
カルボキシル基を有する活性剤の溶液を、炭酸セシウムなどのアルカリ又はアルカリ土類金属の存在下、TBA又はナトリウム塩、好ましくはTBA中のHA−6−硫酸物の溶液に添加する。この反応は、40〜90℃、好ましくは80℃で、一定の攪拌下、好ましくは窒素還流しながら、5〜42時間、好ましくは8〜20時間(18時間)、行われる。この反応混合物は、公知の方法により用意される。
【0047】
本発明のさらなる態様は、ヒアルロン酸と、式(I)とからなる薬物送達システムであって、式(I)の化合物のカルボキシル基が、エステル結合によりヒアルロン酸のN−アセチル−D−グルコサミン単位のC−6位に共有結合され、このDDSは、上記の特別の方法により得られる。これらの新規のDDSsは、HAのC−6位に直接結合された式(I)の化合物を含有し、HAの繰り返し単位のその他の水酸基は、薬物又はその他の化学基のいずれとも化学結合に関与していないことを特徴とする。特に、これらのDDSsは、HA単位の第一及び第二の両方とも、離脱基(例えば、スルフォネート基)を有さない。用語「有さない(devoid)」は、残る離脱基が、NMRにより同定された量で0.5%w/w未満存在することを意味する。これらの特徴により、元のHAの化学構造の規則性及び炭素原子の配置を保持することが可能であり、これらの特性/態様は、有効性及び特定の受容体との相互作用を確実にする点で非常に重要である。
【0048】
異なって、特許文献1に記載のHAとメトトレキサートとのコンジュゲートは、ハロゲン化のステップで多糖に導入された残りの塩素原子を含有する。
【0049】
式(I)の異なる化合物のうち、好適なものは、メトトレキサートである。メトトレキサート(MTX)は、式(I)で示され、R及びRは、−NHであり;環Aは、芳香族であり;環Bは、芳香族であり;X及びYは、−N=であり;Zは、−N(CH)−であり;Arは、1,4−フェニル基である。DDSsのC6−DSは、好ましくは0.1〜60%であり、より好ましくは1〜50%であり、さらに好ましくは、5〜40%である。MWは、10,000〜500,000である。
【0050】
このDDSの調製技術は、下記の反応ステップを有する。
【0051】
(a)フリーの形態又は塩の形態のヒアルロン酸のN−アセチル−D−グルコサミンの単位のC−6位に、スルフォネート基、ホスホネート基(トリフェニルホスホネート)、シアン化物(CN)、窒化物(NO)、サルフェート基、ハロゲンサルフェート基、硝酸塩、ハロゲンサルファイト(クロロサルファイト)からなる群から選択された離脱基を導入して、HA−6−活性体を得るステップと;
(b)(HAのC6位の)離脱基を、式(I)の化合物に存在するカルボキシル基と置き換えることにより、HA−6−活性体のC6位と、式(I)の化合物との間のエステル結合を形成して、HA−6−式(I)の化合物を得るステップと;
(d)HA−6−式(I)の化合物を回収するステップ。
【0052】
好適実施例において、ステップ(a)は、スルフォニル化反応であり、スルホン基を導入するのに用いられる試薬は、有機塩基又は無機塩基の存在下の、アルキル又はアリールスルホネートハライド、好ましくはクロライドである。好適な試薬は、メチルスルフォニルクロライド、又はトルエン−p−スルフォニルクロライドであり、有機塩基は、ジイソプロピルエチルアミン又はトリエチルアミンである。
【0053】
DDSは、2つの異なる方法に従って上記の方法で取得され得る。第一の方法において、ステップ(a)から得たHA−6−硫化物は、反応混合物から単離され、その後、ステップ(b)に従って、式(I)の化合物と反応して、最終産物であるHA−6−式(I)の化合物を得る。
【0054】
上記の方法を実行する第二の方法において、ステップ(b)は、HA−6−硫化物を含有するステップ(a)から得た反応混合物に直接行われる。上記の反応を実行するこの第二の方法の利点は、HA−6−硫化物を単離するステップを回避するという事実である。
【0055】
実験部
例1:構造の同定
HA−6−メシレート(HA−Ms)中のメシル酸の含量のNMRによる同定は、1.95ppm(HA鎖の3H)におけるピークに対する3.10÷3.32ppm(HA鎖の1H及びメシル酸の3H)の領域のピークの積分により、行った。
【0056】
例2:構造の同定
HA−6−トシレート(HA−Ts)中のトシル酸の含量のNMRによる同定は、1.95ppm(HA鎖の3H)におけるピークに対する7.8ppm(2H)、7.5ppm(2H)及び2.45ppm(3H)の領域のトシル酸のピークの積分により、行った。
【0057】
例3:構造の同定
HA−6−MTX中のメトトレキサートの含量のNMRによる同定は、1.85÷2.58ppm(HA鎖の3H及びMTXの4H)の領域におけるピークに対する6.0÷8.6ppm(MTXの5H)の領域のピークの積分により、行った。
【0058】
例4:構造の同定
HA−6−イブプロフェン中のイブプロフェンの含量のNMRによる同定は、1.95ppmにおけるHA鎖におけるピーク(3H)に対する7.02÷7.24ppm(4H)、2.38ppm(2H)、1.40ppm(3H)及び0.78ppm(6H)の領域のイブプロフェンのピークの積分により、行った。
【0059】
例5:構造の同定
HA−6−ペニシリンG中のペニシリンGの含量のNMRによる同定は、1.95ppmにおけるHA鎖におけるピーク(3H)に対する7.05÷7.20ppm(5H)、5.55ppm(1H)、5.40ppm(1H)の領域のペニシリンGのピークの積分により、行った。
【0060】
例6
HPLCによるメトトレキサートの含量は、メトトレキサートの公定モノグラフ(USP 23−p 984)に従って、アルカリ加水分解の前後のサンプルを分析することにより、同定した。分析条件は、以下の通り:クロマトグラフ:Dionex社製DX−600;カラム:Phenomenex Synergi社製4μ Hydro−RP80、カラムサイズ:150×460mm;カラム粒子径:4μm;温度:40℃;溶出液:90%の0.2M第二リン酸ナトリウム/0.1Mクエン酸(630:270)、10%CHCN;等張条件(isocratic condition):0.5mL/分;検出器:ダイオードアレイ(範囲200〜780nm);定量用選択波長:302nm;注入量:25μL;実施時間:30分。フリーのメトトレキサートの同定用の溶液は、HA−MTXを適当な濃度で直接ミリQ水に溶解することにより、調製した。メトトレキサートの全含量は、0.1MのNaOH中、2時間室温で実行するアルカリ加水分解の後に同定した。1Mの塩酸で中和した後、HPLCシステムに注入する前に、その溶液を、0.45μmのフィルター(Sartorius Minisart社製RC25 17795Q)で濾過した。較正曲線は、既知の濃度のメトトレキサートの標準溶液を用いて、同定した。この方法により、サンプル濃度で標準化された、サンプル溶液中のMTXの濃度DSweight%w/wを与える。
【0061】
例7:重量平均分子量(Mw)の同定
HADDSの分子量は、HP−SEC(高速サイズ排除クロマトグラフィー;High performance size exclusion chromatography)により測定した。分析条件は、下記の通り:クロマトグラフ:Rheodyne社製9125injectorを有するHPLCポンプ980−PU(Jasco社製番号B3901325);カラム:TSK PW×l(TosoBioscience)G6000+G5000+G3000;粒子径:6、10、13μm;温度:40℃;移動相:0.15M NaCl+0.01%NaN;流速:0.8mL/分;検出器:MALS(WYATT社製DAWN EOS、米国);λ=690nm、(dn/dc=0.167mL/g);UV分光光度検出器:870−UV(Jasco社製番号D3693916)、λ=305nm、干渉反射インデックスOPTILAB REX(WYATT社製、米国);λ=690nm;感度:128倍;温度:35℃;注入量:100μL;実施時間:60分。
【0062】
異なる薬物にコンジュゲートした分析対象であるサンプルHA−Cl、HA−OMs、HA−MTXを、約1.0mg/mLの濃度で0.9%NaClに溶解し、12時間、攪拌下で保持した。その後、この溶液を、0.45μmの多孔性フィルター(Sartorius Minisart社製RC25 17795Q)で濾過し、最終的にカラムクロマトグラフに注入した。この分析により、Mw(重量平均分子量)、Mn(数平均分子量)、PI(多分散性;polydipersity)の測定が可能となる。Mw及びMnの値は、g/モルとして表現する。ポリマーサンプル溶液の濃度は、屈折率の積分により、調節した。
【0063】
例8:6−O−メタンスルフォニルヒアルロン酸(HA−6−Ms又はHA−Ms)の調製
500mg(0.806ミリモル)のHAのTBA塩(Mw20,000)を有する20mLのジメチルスルフォキシド(DMSO)の溶液に、1.11mL(6.48ミリモル)のジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を窒素下で攪拌しながら添加した。その後、メタンスルフォニルクロライド(MsCl)(314μL;4.03ミリモル)を室温で滴下で添加したところ、橙色の溶液が形成された。室温で1時間攪拌した後、反応混合物の1/3を、飽和NaHCOの溶液(50mL)に添加してpH9で一昼夜攪拌することで、急冷した。得た溶液を限外濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、凍結乾燥して、40mgの灰色がかった白色(off−white)の固形物を得た(全DS83%モル/モル(NMRによる))。
【0064】
残りの反応混合物を一昼夜攪拌し、その後、上述と同様に行い、90mgの灰色がかった白色(off−white)の固形物を得た(全DS86%モル/モル(NMRによる))。
【0065】
全収量:130mgのHA−Msナトリウム塩(40%)
【0066】
H NMR(DO)ppm:1.95(s,3H,NHCOCH),3.23(s,2.58H,MsO),3.2÷4.2(m,7.42H,HA鎖),4.3÷4.7(m,2H,アノマー炭素+1.72H,CH−OMs);13C NMR(DO)ppm:23(NHCO),37(MsO),55,61(CHOH),68,69.5(CHOMs),72,74,75,76,80,83,101,103,174,175
【0067】
例9:6−O−メタンスルフォニルヒアルロン酸(HA−Ms)の調製
5.00g(8.06ミリモル)のHAのTBA塩(Mw20,000)を有する200mLのDMSOの溶液に、13.9mL(81ミリモル)のDIEAを窒素下で攪拌しながら添加した。その後、MsCl(3.2mL;41ミリモル)を室温で滴下で添加したところ、橙色の溶液が形成された。室温で1時間攪拌した後、反応混合物を、飽和NaHCOの溶液(400mL)に添加し、水で全量を1Lとし(pH9.5)、一昼夜攪拌下で保持して、急冷した。得た溶液をドラフト中で限外濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。少量を、NMRの分析用に、ロータリーエバポレーターで蒸留して乾燥した(100mg):全メシル酸DS91%モル/モル(プロトンNMRによる)、第一メシル酸(primary mesylate)58%モル/モル(炭素NMRによる)、C6位に対する選択性64%。
【0068】
残りの溶液を、TBAを負荷したアンバーライトIRA−120で処理し、凍結乾燥して、4.62gの灰色がかった白色(off−white)の固形物を得た(HA−Ms:TBA塩)。
【0069】
例10:6−O−メタンスルフォニルヒアルロン酸(HA−Ms)の調製
2.50g(4.03ミリモル)のHAのTBA塩(Mw20,000)を有する100mLのDMSOの溶液に、5.6mL(32.7ミリモル)のDIEAを窒素下で攪拌しながら添加した。その後、MsCl(1.3mL;16.7ミリモル)を室温で滴下で添加したところ、橙色の溶液が形成された。室温で1時間攪拌した後、反応混合物を、飽和NaHCOの溶液(200mL)に添加し、水で全量を600mLとし(pH9.2)、一昼夜攪拌下で保持して、急冷した。得た溶液をドラフト中で限外濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。少量を、NMRの分析用に凍結乾燥した(136mg):全メシル酸DS79%モル/モル(プロトンNMRによる)、第一メシル酸64%モル/モル(炭素NMRによる)、C6位に対する選択性81%。
【0070】
残りの溶液を、TBAを負荷したアンバーライトIRA−120で処理し、凍結乾燥して、2.10gの灰色がかった白色(off−white)の固形物を得た(HA−Ms:TBA塩)。
【0071】
例11:6−O−メタンスルフォニルヒアルロン酸(HA−Ms)の調製
3.00g(4.84ミリモル)のHAのTBA塩(Mw20,000)を有する100mLのDMSOの溶液に、8.4mL(48.4ミリモル)のDIEAを窒素下で攪拌しながら添加した。その後、MsCl(1.92mL;24.2ミリモル)を室温で滴下で添加したところ、橙色の溶液が形成された。室温で15分間攪拌した後、反応混合物を、飽和NaHCOの溶液(200mL)に添加し、水で全量を600mLとし(pH9.5)、一昼夜攪拌下で保持して、急冷した。得た溶液をドラフト中で限外濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。少量を、NMRの分析用に凍結乾燥した(187mg):全メシル酸DS76%モル/モル(プロトンNMRによる)、第一メシル酸58%モル/モル(炭素NMRによる)、C6位に対する選択性76%。
【0072】
残りの溶液を、TBAを負荷したアンバーライトIRA−120で処理し、凍結乾燥して、2.561gの灰色がかった白色(off−white)の固形物を得た(HA−Ms:TBA塩)。
【0073】
例12:6−O−メタンスルフォニルヒアルロン酸(HA−Ms)の調製
3.00g(4.84ミリモル)のHAのTBA塩(Mw20,000)を有する100mLのDMSOの溶液に、4.96mL(29.0ミリモル)のDIEAを窒素下で攪拌しながら添加した。その後、MsCl(1.13mL;14.5ミリモル)を室温で滴下で添加したところ、橙色の溶液が形成された。室温で15分間攪拌した後、反応混合物を、飽和NaHCOの溶液(200mL)に添加し、水で全量を600mLとし(pH9.5)、一昼夜攪拌下で保持して、急冷した。得た溶液をドラフト中で限外濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。少量を、NMRの分析用に凍結乾燥した(248mg):全メシル酸DS55%モル/モル(プロトンNMRによる)、第一メシル酸41%モル/モル(炭素NMRによる)、C6位に対する選択性75%。
【0074】
残りの溶液を、TBAを負荷したアンバーライトIRA−120で処理し、凍結乾燥して、2.41gの灰色がかった白色(off−white)の固形物を得た(HA−Ms:TBA塩)。
【0075】
例13:6−O−メタンスルフォニルヒアルロン酸(HA−Ms)の調製
3.00g(4.84ミリモル)のHAのTBA塩(Mw20,000)を有する100mLのDMSOの溶液に、DIEA(4.96mL;29.0ミリモル)を窒素下で攪拌しながら添加した。その後、MsCl(1.13mL;14.5ミリモル)を有するジクロロメタン(20mL)を室温で20分かけて滴下で添加したところ、橙色の溶液が形成された。その後、この反応混合物を、飽和NaHCOの溶液(200mL)に添加し、水で全量を600mLとし(pH9.5)、一昼夜攪拌下で保持して、急冷した。得た溶液をドラフト中で限外濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。少量を、NMRの分析用に凍結乾燥した(172mg):全メシル酸DS85%モル/モル(プロトンNMRによる)、第一メシル酸50%モル/モル(炭素NMRによる)、C6位に対する選択性59%。
【0076】
残りの溶液を、TBAを負荷したアンバーライトIRA−120で処理し、凍結乾燥して、2.78gの灰色がかった白色(off−white)の固形物を得た(HA−Ms:TBA塩)。
【0077】
例14:6−O−メタンスルフォニルヒアルロン酸(HA−Ms)の調製
3.00g(7.48ミリモル)のHAのナトリウム塩(Mw20,000)を有する100mLのDMSOの懸濁液に、DIEA(12.8mL;74.8ミリモル)及びMsCl(2.90mL;37.4ミリモル)を添加して、1分以内に濃橙色が形成されるのを観察した。1時間15分の間室温で攪拌した後、反応混合物を、飽和NaHCOの溶液(200mL)に添加し、水で全量を800mLとし(pH9.5)、一昼夜攪拌下で保持して、急冷した。得た溶液をドラフト中で限外濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。少量を、NMRの分析用に凍結乾燥した(0.15g):全メシル酸DS5%モル/モル(プロトンNMRによる)。
【0078】
例15:6−O−p−トルエンスルフォニルヒアルロン酸の調製
HAのTBA塩(1.018g;1.64ミリモル)(Mw20,000)を有する30mLの乾燥DMFの溶液を、EtN(3.2mL;23.0ミリモル)及びTsCl(2.24g;11.7ミリモル)を用いて室温で処理した;この反応混合物は、橙赤色となり、溶液は粘張となった。1時間後、6mLの反応混合物をロータリーエバポレーターで半分の容量にまで濃縮し、アセトンを用いてサンプルを沈殿させた。若干量の固形物をDMSO−dに溶解し、H NMR及びDOSY NMRスペクトルを得た。その結果、DSのトシル基は、16%モル/モルであった;ホルミル化されたサンプル95mgが回収された。
【0079】
H NMR(d−DMSO)ppm:1.95(s,3H,NHCOCH),2.45(s,0.49H,トシル酸のCH),3.0÷5.4(m,12.3H,HA鎖及びアノマー炭素),7.5(d,0.34H,トシル酸芳香族),7.85(d,0.30H,トシル酸芳香族),8.0÷8.5(m,2.14H,O−CHOホルミルエステル基)
【0080】
残りの溶液を、さらに1時間50℃に加熱し、pH9の飽和NaHCOの溶液中で急冷し、24時間攪拌し、中和し、濾過して、固形物を除去した。その後、得た溶液を限外濾過し、凍結乾燥した。DMSO−d中でのH NMR及びDOSY NMRスペクトルを得た。その結果、DSのトシル基は、12%モル/モルであった。55mgのサンプルを回収した。
【0081】
例16:6−O−p−トルエンスルフォニルヒアルロン酸の調製
HAのTBA塩(1.053g;1.70ミリモル)(Mw20,000)を有する30mLの乾燥DMFの溶液を、EtN(3.2mL;23.0ミリモル)及びTsCl(2.24g;11.7ミリモル)を用いて0℃で処理した;この反応混合物は、橙赤色となり、溶液は粘張となった。30分後、室温とし、さらに1時間後、反応混合物をロータリーエバポレーターで半分の容量にまで濃縮し、アセトンを用いてサンプルを沈殿させた。若干量の固形物をDMSO−dに溶解し、H NMR及びDOSY NMRスペクトルを得た。その結果、DSのトシル基は、45%モル/モルであった;ホルミル化されたサンプル700mgを回収した。
【0082】
H NMR(d−DMSO)ppm:1.95(s,3H,NHCOCH),2.45(s,1.36H,トシル酸のCH),3.0÷5.4(m,13.0H,HA鎖及びアノマー炭素),7.5(d,0.97H,トシル酸芳香族),7.85(d,0.90H,トシル酸芳香族),8.0÷8.5(m,2.33H,O−CHOホルミルエステル基)
【0083】
例17:6−O−メタンスルフォニルヒアルロン酸(HA−Ms)の調製
500mg(0.806ミリモル)のHAのTBA塩(Mw20,000)を有する20mLのDMSOの溶液に、829μL(4.84ミリモル)のDIEAを窒素下で攪拌しながら添加した。その後、MsCl(188μL;2.42ミリモル)を室温で滴下で添加したところ、橙色の溶液が形成された。室温で1時間攪拌した後、反応混合物を、飽和NaHCOの溶液(40mL)に添加し、水で全量を100mLとし(pH9.5)、一昼夜攪拌下で保持して、急冷した。得た溶液をドラフト中で限外濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。溶液を凍結乾燥して、329mgの白色の固体を得た。全メシル酸DS77%モル/モル(プロトンNMRによる)、第一メシル酸(primary mesylate)59%モル/モル(炭素NMRによる)、C6位に対する選択性77%。
【0084】
例18:6−O−メタンスルフォニルヒアルロン酸(HA−Ms)の調製
500mg(0.806ミリモル)のHAのTBA塩(Mw20,000)を有する20mLのDMSOの溶液に、414μL(2.42ミリモル)のDIEAを窒素下で攪拌しながら添加した。その後、MsCl(94μL;1.21ミリモル)を室温で滴下で添加したところ、橙色の溶液が形成された。室温で1時間攪拌した後、反応混合物を、飽和NaHCOの溶液(40mL)に添加し、水で全量を100mLとし(pH9.5)、一昼夜攪拌下で保持して、急冷した。得た溶液をドラフト中で限外濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。溶液を凍結乾燥して、310mgの白色の固体を得た。全メシル酸DS34%モル/モル(プロトンNMRによる)、第一メシル酸(primary mesylate)22%モル/モル(炭素NMRによる)、C6位に対する選択性65%。
【0085】
例19:6−O−メタンスルフォニルヒアルロン酸(HA−Ms)の調製
500mg(0.806ミリモル)のHAのTBA塩(Mw20,000)を有する20mLのDMFの溶液に、829μL(4.84ミリモル)のDIEAを窒素下で攪拌しながら添加した。その後、MsCl(188μL;2.42ミリモル)を室温で滴下で添加したところ、黄色の溶液が形成された。室温で1時間攪拌した後、反応混合物を、飽和NaHCOの溶液(40mL)に添加し、水で全量を100mLとし(pH9.5)、一昼夜攪拌下で保持して、急冷した。pHを10に上昇させ、その懸濁液を3日間攪拌したところ、固形物のほとんどが溶解した。その後、これを濾過し、得た溶液を限外濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。溶液を凍結乾燥して、277mgの白色の固体を得た。全メシル酸DS42%モル/モル(プロトンNMRによる)、第一メシル酸(primary mesylate)40%モル/モル(炭素NMRによる)、C6位に対する選択性95%。
【0086】
例20:6−O−メタンスルフォニルヒアルロン酸(HA−Ms)の調製
500mg(0.806ミリモル)のHAのTBA塩(Mw20,000)を有する20mLのDMFの溶液に、829μL(4.84ミリモル)のDIEAを−10℃の窒素下で攪拌しながら添加した。その後、MsCl(188μL;2.42ミリモル)を滴下で添加し、得た混合物を、−10℃で1時間攪拌した。この反応混合物を、飽和NaHCOの溶液(40mL)に添加し、水で全量を100mLとして(pH9.5)、急冷した;一昼夜攪拌した。得た溶液を限外濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。溶液を凍結乾燥して、207mgの白色の固体を得た。全メシル酸DS37%モル/モル(プロトンNMRによる)、第一メシル酸(primary mesylate)37%モル/モル(炭素NMRによる)、C6位に対する選択性100%。
【0087】
例21:6−O−メタンスルフォニルヒアルロン酸(HA−Ms)の調製
500mg(0.806ミリモル)のHAのTBA塩(Mw20,000)を有する20mLのN−メチル−2−ピロリドンの溶液に、829μL(4.84ミリモル)のDIEAを窒素下で攪拌しながら添加した。その後、MsCl(188μL;2.42ミリモル)を室温で滴下で添加したところ、黄色の溶液が形成された。室温で1時間攪拌した後、この反応混合物を、飽和NaHCOの溶液(40mL)に添加し、水で全量を100mLとして(pH9.5)、急冷した;一昼夜攪拌した。得た溶液を限外濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。溶液を凍結乾燥して、310mgの白色の固体を得た。全メシル酸DS50%モル/モル(プロトンNMRによる)、第一メシル酸(primary mesylate)31%モル/モル(炭素NMRによる)、C6位に対する選択性62%。
【0088】
例22:6−O−メタンスルフォニルヒアルロン酸(HA−Ms)の調製
500mg(0.806ミリモル)のHAのTBA塩(Mw20,000)を有する20mLのN−メチル−2−ピロリドンの溶液に、829μL(4.84ミリモル)のDIEAを−10℃の窒素下で攪拌しながら添加した。その後、MsCl(188μL;2.42ミリモル)を室温で滴下で添加し、得た混合物を−10℃で1時間攪拌した。この反応混合物を、飽和NaHCOの溶液(40mL)に添加し、水で全量を100mLとして(pH9.5)、急冷した;一昼夜攪拌した。得た溶液を限外濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。溶液を凍結乾燥して、250mgの白色の固体を得た。全メシル酸DS41%モル/モル(プロトンNMRによる)、第一メシル酸(primary mesylate)39%モル/モル(炭素NMRによる)、C6位に対する選択性95%。HSQC NMRスペクトルで選択性を確認した。
【0089】
例23:6−O−メタンスルフォニルヒアルロン酸(HA−Ms)の調製
500mg(0.806ミリモル)のHAのTBA塩(Mw20,000)を有する20mLのN−メチル−2−ピロリドンの溶液に、829μL(4.84ミリモル)のDIEAを0℃の窒素下で攪拌しながら添加した。その後、MsCl(188μL;2.42ミリモル)を滴下で添加し、得た混合物を0℃で1時間攪拌した。この反応混合物を、飽和NaHCOの溶液(40mL)に添加し、水で全量を100mLとして(pH9.5)、急冷した;一昼夜攪拌した。得た溶液を限外濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。溶液を凍結乾燥して、275mgの白色の固体を得た。全メシル酸DS44%モル/モル(プロトンNMRによる)、第一メシル酸(primary mesylate)40%モル/モル(炭素NMRによる)、C6位に対する選択性90%。
【0090】
例24:6−O−メトトレキシルヒアルロン酸の調製
例10のHA−OMs:TBA塩(500mg;0.73ミリモル)を有するDMSO(15mL)の溶液を、固形の炭酸セシウム(596mg;1.83ミリモル)の存在下、メトトレキサート(833mg;1.83ミリモル)を有するDMSO(10mL)の溶液で処理した。この混合物を、窒素下、80℃で18時間攪拌したところ、固形物を形成しながら暗色を呈した。その後、周囲温度に冷却し、100mLの水に投入し(pH6.5)、15mLの飽和NaCl溶液で処理し、1.5時間攪拌した。その後、固形物を濾取し、溶液を限外濾過し、濃縮し、凍結乾燥して、131mgの黄色がかった茶色の固形物を得た。NMRによるMTXのDS:40%モル/モル;13C NMRは、C6の40%が改変されていたことを示した。HPLC分析により、32%w/wが得られ、これは、40%モル/モルに相当する。また、NMR分析により、残存する第二のメシル酸基がないことが明らかとなり、且つHAの塩基構造が、MTXによる置換に由来する種々のC−6位を除き、変更されていないことが明らかとなった。このことが示すように、メシル化反応で第二の位置(C−4、C−2’、C−3’)に導入された種々の可能な離脱基(メシル酸)は、塩基条件下での置換反応中で加水分解されるか、これらの位置での配置を保持した加水分解の後に2’,3’−無水物の形成を経由して加水分解される。NMRスペクトルは、室温で3ヶ月保存した後に同様のサンプルで繰り返したところ、新規に調製した製品で得られるものと同様のピーク及び強度を提供し、従って、置換度は保持され、副産物は形成されない。
【0091】
例25:HA−Cl:TBA塩の調製
50gのヒアルロナンナトリウム塩を、窒素下、20℃で攪拌しながら、900mLの乾燥ジメチルホルムアミドに懸濁した。その後、この懸濁液を、−10℃に冷却し、97mLのメタンスルフォニルクロライドを、30分間かけて添加した。さらに−10℃で30分後、温度を20℃に昇温した。1時間後、温度を1時間かけて60℃に徐々に上昇させ、18時間攪拌を続けた。その後、この反応混合物を、氷及び炭酸ナトリウム溶液(4L、初期のpH11)の混合物に、激しく攪拌しながら投入し、必要な場合、1.5MのNaOHを添加してpHを約9に保持した。得た茶色の懸濁液(最終容量6L)を、室温で、pH9.5で約48時間攪拌したところ、澄明な溶液を形成した。これを濾過して、固形物を除去し、その後、限外濾過した(10kDaのカットオフメンブレン)。得た溶液を、ロータリーエバポレーターで最終容量が約1Lとなるまで濃縮し、TBAを負荷したアンバーライトIRA−120で処理した。その後、凍結乾燥して、灰色がかった白色(off−white)の固形物として46.7gのHA−6−Clを得た(DS64%モル/モル、13C NMRで同定)。
【0092】
例26:HA−イブプロフェンの調製
例12で調製したHA−Ms:TBA塩(400mg;0.64ミリモル)及びイブプロフェン(333mg;1.61ミリモル)を、窒素下、室温で攪拌しながら、DMSO(16mL)に溶解した。固形の炭酸セシウム(264mg;0.81ミリモル)を添加し、その懸濁液を、攪拌しながら、70℃で20時間加熱した。得た黄色がかった橙色の溶液を、150mLの水に投入し(pHは6.5であった)、10mLの飽和NaCl溶液を添加した。30分間攪拌した後、その溶液を限外濾過し、濃縮し、凍結乾燥して、0.15gの白色の固形物を得た。プロトンNMRによるDS:27%モル/モル。
【0093】
例27:HA−イブプロフェンの調製
例25で調製したHA−Cl:TBA塩(1g;1.6ミリモル)及びイブプロフェン(670mg;3.2ミリモル)を、窒素下、室温で攪拌しながら、DMSO(50mL)に溶解した。固形の炭酸セシウム(264mg;0.81ミリモル)を添加し、その懸濁液を、攪拌しながら、80℃で40時間加熱した。得た暗黄色の溶液を、100mLの水に投入し(pHは8であった)、その後、限外濾過し、濃縮し、凍結乾燥して、淡褐色の固形物を得た。プロトンNMRによるDS:20%モル/モル。
【0094】
例28:HA−ペニシリンGの調製
例12で調製したHA−Ms:TBA塩(400mg;0.64ミリモル)、18−クラウン−6(338mg;1.28ミリモル)及びペニシリンGナトリウム塩(574mg;1.61ミリモル)を有するDMSO(16mL)の溶液を、攪拌しながら、70℃で20時間加熱した。
【0095】
得た黄色の溶液を、150mLの水に投入し(pHは、6.5であった)、10mLの飽和NaCl溶液を添加した。30分間攪拌した後、溶液を、限外濾過し、濃縮し、凍結乾燥して、0.29gの白色の固形物を得た。プロトンNMRによるDS:26%モル/モル。
【0096】
例29:HA−ペニシリンGの調製
例25で調製したHA−Cl:TBA塩(1g;1.6ミリモル)、18−クラウン−6(840mg;3.2ミリモル)及びペニシリンGナトリウム塩(1.13g;3.2ミリモル)を、室温で攪拌しながら、DMSO(50mL)に溶解した。この溶液を、攪拌しながら、80℃で40時間加熱し、その後、これを、100mLの水に投入し(pHは、7.4であった)、限外濾過し、濃縮し、凍結乾燥して、1g(収率64%)の薄黄色の固形物を得た。プロトンNMRによるDS:6%モル/モル。
【0097】
例30:HA−アルブミンの調製
例25で調製したHA−Cl:TBA塩(1g;1.6ミリモル)及びヒト血清アルブミン(300mg)を、窒素下、室温で攪拌しながら、DMSO(50mL)に溶解した。固形の炭酸セシウム(264mg;0.81ミリモル)を添加し、その懸濁液を、攪拌しながら、80℃で40時間加熱した。得た溶液を、100mLの水に投入し(pHは、9.5であった)、その後、限外濾過し、濃縮し、凍結乾燥して、0.9gの薄茶色の固形物を得た。HPLCによるDS:5%モル/モル。
【0098】
例31:6−O−メトトレキシルヒアルロン酸の調製
HA:TBA塩(250mg;0.403ミリモル;Mw20,000)を、攪拌しながら、DMSO(10mL)に溶解し、窒素下で緩徐に加熱した;その後、トリエチルアミン(452μL;3.22ミリモル)を室温で添加し、MsCl(157μL;2.02ミリモル)を滴下で添加したところ、黄色の溶液を形成した。室温で1時間攪拌した後、さらに0.50mLのトリエチルアミンを添加し、反応フラスコに、真空装置を接続して、ガスの発生がおさまるまで、50℃(浴の温度)まで緩徐に加熱した。その後、1.10g(2.43ミリモル)のメトトレキサート及び792mg(2.43ミリモル)の炭酸セシウムを添加し、その混合物を、一昼夜80℃で攪拌した。反応混合物の半分を、水(20mL)に投入した;pH6.3。飽和NaHCOを用いてpHを6.8に調節し、その後、10mLの飽和NaCl溶液を添加した。10分間攪拌した後、溶液を限外濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、凍結乾燥して、60mgの黄色の固形物を得た。MTXのDSは、HPLCにより、11.6%w/wであると分かり、NMRの分析により、確認した(12%モル/モル)。また、低い割合でポリマーにメシル酸が残存していることも示された。
【0099】
残りの反応混合物を、さらに24時間(全体で40時間)、80℃で上記の通り作用させて、103mgの黄色の固形物を得た。MTX中のDS14.4%w/w(HPLCにより)。NMR分析により確認した(15%モル/モル)。ポリマーに残存するメシル酸はなかった。Mw269,610、PI10.5。架橋エステル結合を、10mLの炭酸緩衝液(pH10)中で凍結乾燥品を8時間加水分解することにより、分解した。中和し透析した後、凍結乾燥して、96mgの黄色の固形物を得た。この産物におけるMTXのDSは、HPLCにより12.6%w/wであり、NMR分析により確認した(13%モル/モル);Mw27,120、PI1.9。
【0100】
例32:6−O−メトトレキシルヒアルロン酸の調製
HA:TBA塩(50g;Mw70,000)を有する1000mLの乾燥DMFの溶液に、攪拌しながら、塩化メシル(10当量)を、窒素流入下、−10℃で1時間かけて滴下で添加した。その混合物を、室温で1時間保持し、その後、60℃で16時間加熱した。これにより、4.2%w/w(13C−NMR)の塩素含量を有する46.9gのHA−CLを得た。
【0101】
HA−ClのTBA塩(20g)を有するDMSO(1.25L)の溶液を、MTX(29.3g)及び炭酸セシウム(21g)を用いて、80℃で40時間処理して、5.6gの黄色の固形物を得た。
【0102】
13C−NMRスペクトルにより、N−アセチル−D−グルコサミンの6位に結合が生じていることを確認した:64ppmにおけるピークは、O−MTXであると指定し、その強度は、親の塩素誘導体と比較して、44ppmにおけるピーク(Cl)の低下と対応した。MTXの含量は、18.8%w/w(HPLC)であった;フリーのMTXは、0.1%w/wであった;水の含量:8.2%w/w;Mw:11,000;PI:1.4。また、NMRにより、1.76%w/wの塩素が残存することが分かった。
【0103】
例33:6−O−メタンスルフォニルヒアルロン酸TBA塩(HA−Ms:TBA)の調製
5.0g(8.1ミリモル)のHA:TBA(Mw5,000)を有する100mLの乾燥DMFの溶液に、3.1mL(5.62mL、33.9ミリモル)のDIEAを窒素流入下、−10℃で攪拌しながら添加した。その後、MsCl(1.25mL;16.1ミリモル)を滴下で添加し、得た混合物を、−10℃で1時間攪拌した。この反応混合物を、飽和NaCOの溶液(200mL)を添加し、水で全量を1Lとして、急冷した;pHを、希HCl溶液で10.5に調節し、一昼夜攪拌した。得た溶液を限外濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。少量を、NMRの分析用に凍結乾燥した(100mg):第一メシル酸30%モル/モル(NMRによる);C6位に対する選択性100%。(3.2g;Mw:6,925;P.I.1.87)
【0104】
例34:6−O−メタンスルフォニルヒアルロン酸TBA塩(HA−Ms:TBA)の調製
10.0g(16.1ミリモル)のHAのTBA塩(Mw20,000)を有する250mLのDMFの溶液に、7.58mL(44.3ミリモル)のDIEAを窒素下、−10℃で攪拌しながら添加した。その後、MsCl(1.56mL;20.1ミリモル)を滴下で添加し、得た混合物を、−10℃で1時間攪拌した。この反応混合物を、飽和NaCOの溶液(400mL)を添加し、水で全量を2Lとして、急冷した;pHを、希HCl溶液で10.5に調節し、一昼夜攪拌した。得た溶液を限外濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。少量を、NMRの分析用に凍結乾燥した(100mg):第一メシル酸24%モル/モル(NMRによる);C6位に対する選択性100%。
【0105】
残りの反応混合物を、TBAを負荷したアンバーライトIRA−120で処理し、凍結乾燥して、9.92gの白色の固形物を得た(HA−Ms:TBA塩)。
【0106】
例35:HA−Cl:ナトリウム塩の調製
5gのヒアルロナンナトリウム塩(Mw200,000)を、窒素下、20℃で攪拌しながら、90mLの乾燥ジメチルホルムアミドに懸濁した。その後、この懸濁液を、−10℃に冷却し、9.7mLのメタンスルフォニルクロライドを、30分間かけて添加した。さらに−10℃で30分後、温度を20℃に昇温した。1時間後、温度を1時間かけて60℃に徐々に上昇させ、18時間攪拌を続けた。その後、この反応混合物を、氷及び炭酸ナトリウム溶液(400mL、初期のpH11)の混合物に、激しく攪拌しながら投入し、必要な場合、1.5MのNaOHを添加してpHを約9に保持した。得た茶色の懸濁液(最終容量500mL)を、室温で、pH9.5で約48時間攪拌したところ、澄明な溶液を形成した。これを濾過して、固形物を除去し、その後、限外濾過した(10kDaのカットオフメンブレン)。得た溶液を、濃縮し、凍結乾燥して、灰色がかった白色(off−white)の固形物として4.05gのHA−6−Clを得た(DS17%モル/モル、13C NMRで同定)。Mw79,560、P.I.3.5。
【0107】
例36:HA−Cl:ナトリウム塩の調製
5gのヒアルロナンナトリウム塩(Mw500,000)を、窒素下、20℃で攪拌しながら、90mLの乾燥ジメチルホルムアミドに懸濁した。その後、この懸濁液を、−10℃に冷却し、9.7mLのメタンスルフォニルクロライドを、30分間かけて添加した。さらに−10℃で30分後、温度を20℃に昇温した。1時間後、温度を1時間かけて70℃に徐々に上昇させ、21時間攪拌を続けた。その後、この反応混合物を、氷及び炭酸ナトリウム溶液(400mL、初期のpH11)の混合物に、激しく攪拌しながら投入し、必要な場合、1.5MのNaOHを添加してpHを約9に保持した。得た茶色の懸濁液(最終容量500mL)を、室温で、pH9.5で約48時間攪拌したところ、澄明な溶液を形成した。これを濾過して、固形物を除去し、その後、限外濾過した(10kDaのカットオフメンブレン)。得た溶液を、濃縮し、凍結乾燥して、灰色がかった白色(off−white)の固形物として3.56gのHA−6−Clを得た(DS10%モル/モル、13C NMRで同定)。Mw53,830、P.I.4.02。
【0108】
例37:6−O−メタンスルフォニルヒアルロン酸TBA塩(HA−Ms:TBA)の調製
10.0g(16.1ミリモル)のHAのTBA塩(Mw180,000)を有する500mLのDMSOの溶液に、9.16mL(53.4ミリモル)のDIEAを−10℃の窒素下で攪拌しながら添加した。その後、MsCl(1.87mL;24.2ミリモル)を滴下で添加し、得た混合物を、−10℃で1時間攪拌した。この反応混合物を、飽和NaCOの溶液(400mL)に添加し、水で全量を2Lとして、急冷した。pHを、希HClを用いて10.5に調節し、一昼夜攪拌した。得た溶液を限外濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。少量を、NMRの分析用に凍結乾燥した(150mg):第一メシル酸30%モル/モル(NMRによる)、C6位に対する選択性100%。
【0109】
残りの溶液を、TBAを負荷したアンバーライトIRA−120で処理し、凍結乾燥して、9.80gの白色の固形物を得た(HA−Ms:TBA塩)。
【0110】
例38:6−O−メタンスルフォニルヒアルロン酸TBA塩(HA−Ms:TBA)の調製
20.0g(32.2ミリモル)のHAのTBA塩(Mw180,000)を有する1000mLのDMSOの溶液に、36.7mL(214ミリモル)のDIEAを−10℃の窒素下で攪拌しながら添加した。その後、MsCl(7.48mL;97ミリモル)を滴下で添加し、得た混合物を、−10℃で1時間攪拌した。この反応混合物を、飽和NaCOの溶液(800mL)に添加し、水で全量を4Lとして、急冷した。pHを、希HClを用いて10.5に調節し、一昼夜攪拌した。得た溶液を限外濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。少量を、NMRの分析用に凍結乾燥した(120mg):第一メシル酸55%モル/モル(NMRによる)、C6位に対する選択性100%。
【0111】
残りの溶液を、TBAを負荷したアンバーライトIRA−120で処理し、凍結乾燥して、19.95gの白色の固形物を得た(HA−Ms:TBA塩)。
【0112】
例39:6−O−メタンスルフォニルヒアルロン酸TBA塩(HA−Ms:TBA)の調製
2.00g(3.22ミリモル)のHAのTBA塩(Mw500,000)を有する150mLのDMFの溶液に、3.67mL(21.4ミリモル)のDIEAを−10℃の窒素下で攪拌しながら添加した。その後、MsCl(750μL;9.7ミリモル)を滴下で添加し、得た混合物を、−10℃で1時間攪拌した。この反応混合物を、飽和NaCOの溶液(80mL)に添加し、水で全量を1Lとして、急冷した;pHを、希HClを用いて10.5に調節し、一昼夜攪拌した。得た溶液を限外濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。少量を、NMRの分析用に凍結乾燥した(90mg):第一メシル酸70%モル/モル(NMRによる)、C6位に対する選択性100%。
【0113】
残りの溶液を、TBAを負荷したアンバーライトIRA−120で処理し、凍結乾燥して、1.94gの白色の固形物を得た(HA−Ms:TBA塩)。
【0114】
例40:6−O−メトトレキシルヒアルロン酸の調製
例34のHA−OMs:TBA塩(8.0g;12.9ミリモル)を有するDMSO(250mL)の溶液を、固形の炭酸セシウム(10.5g;32.2ミリモル)の存在下、メトトレキサート(14.66g;32.3ミリモル)を有するDMSO(150mL)の溶液で処理した。この混合物を、窒素下、80℃で20時間攪拌した。その後、周囲温度に冷却し、炭酸緩衝液に投入し、pHを9.7に調節し、容量を2Lとした。18時間攪拌した後、溶液を中和し、濾過し、限外濾過し、濃縮し、凍結乾燥して、4.70gの黄色の固形物を得た。NMRによるMTXのDS:7.5%モル/モル;Mw27,960、P.I.1.92。
【0115】
例41:6−O−メトトレキシルヒアルロン酸の調製
例37のHA−OMs:TBA塩(7.0g;11.3ミリモル)を有するDMSO(670mL)の溶液を、固形の炭酸セシウム(9.15g;28.1ミリモル)の存在下、メトトレキサート(12.79g;28.1ミリモル)を有するDMSO(120mL)の溶液で処理した。この混合物を、窒素下、75℃で18時間攪拌した。その後、周囲温度に冷却し、炭酸緩衝液に投入し、pHを8.8に調節し、容量を2.5Lとした。24時間攪拌した後、溶液を中和し、濾過し、限外濾過し、濃縮し、凍結乾燥して、4.30gの黄色の固形物を得た。NMRによるMTXのDS:13%モル/モル;Mw208,400、P.I.2.18。
【0116】
例42:6−O−メトトレキシルヒアルロン酸の調製
例38のHA−OMs:TBA塩(13.2g;21.3ミリモル)を有するDMSO(1270mL)の溶液を、固形の炭酸セシウム(17.26g;53.1ミリモル)の存在下、メトトレキサート(24.13g;53.1ミリモル)を有するDMSO(120mL)の溶液で処理した。この混合物を、窒素下、75℃で18時間攪拌した。その後、周囲温度に冷却し、炭酸緩衝液に投入し、pHを10.0に調節し、容量を5Lとした。18時間攪拌した後、溶液を中和し、濾過し、限外濾過し、濃縮し、凍結乾燥して、6.52gの黄色の固形物を得た。NMRによるMTXのDS:20%モル/モル;Mw217,300、P.I.2.02。
【0117】
例43:6−O−メトトレキシルヒアルロン酸の調製
例39のHA−OMs:TBA塩(500mg;0.74ミリモル)を有するDMSO(80mL)の溶液を、固形の炭酸セシウム(726mg;2.23ミリモル)の存在下、メトトレキサート(1.01g;2.23ミリモル)を有するDMSO(10mL)の溶液で処理した。この混合物を、窒素下、80℃で22時間攪拌した。その後、周囲温度に冷却し、炭酸緩衝液に投入し、pHを10.0に調節し、容量を400mLとした。18時間攪拌した後、溶液を中和し、濾過し、限外濾過し、濃縮し、凍結乾燥して、260mgの黄色の固形物を得た。NMRによるMTXのDS:11%モル/モル;Mw460,100、P.I.2.21。
【0118】
例44:6−O−メトトレキシルヒアルロン酸の調製
例33のHA−OMsナトリウム塩(1.0g;2.0ミリモル)を有するDMSO(40mL)の溶液を、固形の炭酸セシウム(1.30g;2ミリモル)の存在下、メトトレキサート(1.83g;4ミリモル)を有するDMSO(40mL)の溶液で処理した。この混合物を、窒素下、80℃で20時間攪拌した。この溶液を、NaCO飽和溶液を用いて中和して、最終容量500mLとし、濾過し、限外濾過し、濃縮し、凍結乾燥して、500mgの黄色の固形物を得た。HPLCによるMTXのDS:7.8%モル/モル;Mw16,000、P.I.2.4。
【0119】
例45:HA−イブプロフェンの調製
例20で調製したHA−Ms:TBA塩(500mg;0.80ミリモル)及びイブプロフェン(416mg;2.01ミリモル)を、窒素下、室温で攪拌しながら、DMSO(20mL)に溶解した。固形の炭酸セシウム(330mg;1.01ミリモル)を添加し、その懸濁液を、攪拌しながら、70℃で20時間加熱した。得た溶液を、200mLの水に投入し(pHは6.5であった)、10mLの飽和NaCl溶液を添加した。30分間攪拌した後、その溶液を限外濾過し、濃縮し、凍結乾燥して、0.22gの白色の固形物を得た。プロトンNMRによるDS:30%モル/モル。
【0120】
例46:HA−ナプロキセン(Naproxen)の調製
例20で調製したHA−Ms:TBA塩(500mg;0.80ミリモル)及びナプロキセン(463mg;2.01ミリモル)を、窒素下、室温で攪拌しながら、DMSO(20mL)に溶解した。固形の炭酸セシウム(330mg;1.01ミリモル)を添加し、その懸濁液を、攪拌しながら、70℃で20時間加熱した。得た溶液を、200mLの水に投入し(pHは6.6であった)、10mLの飽和NaCl溶液を添加した。30分間攪拌した後、その溶液を限外濾過し、濃縮し、凍結乾燥して、0.27gの白色の固形物を得た。プロトンNMRによるDS:28%モル/モル。
【0121】
例47:HA−リシノプリル(Lisinopril)の調製
例20で調製したHA−Ms:TBA塩(500mg;0.80ミリモル)及びリシノプリル(887mg;2.01ミリモル)を、窒素下、室温で攪拌しながら、DMSO(25mL)に溶解した。固形の炭酸セシウム(655mg;2.01ミリモル)を添加し、その懸濁液を、攪拌しながら、70℃で20時間加熱した。得た溶液を、200mLの水に投入し(pHは6.5であった)、10mLの飽和NaCl溶液を添加した。30分間攪拌した後、その混合物を濾過し、限外濾過し、濃縮し、凍結乾燥して、0.20gの白色の固形物を得た。プロトンNMRによるDS:26%モル/モル。
【0122】
例48:HA−ナリジキセート(Nalidixate)の調製
例20で調製したHA−Ms:TBA塩(500mg;0.80ミリモル)及びナリジクス酸(467mg;2.01ミリモル)を、窒素下、室温で攪拌しながら、DMSO(20mL)に溶解した。固形の炭酸セシウム(330mg;1.01ミリモル)を添加し、その懸濁液を、攪拌しながら、70℃で20時間加熱した。得た溶液を、200mLの水に投入し(pHは6.6であった)、10mLの飽和NaCl溶液を添加した。30分間攪拌した後、溶液を限外濾過し、濃縮し、凍結乾燥して、0.26gの白色の固形物を得た。プロトンNMRによるDS:30%モル/モル。
【0123】
例49:HA−ペニシリンGの調製
例20で調製したHA−Ms:TBA塩(400mg;0.64ミリモル)、18−クラウン−6(338mg;1.28ミリモル)及びペニシリンGナトリウム塩(574mg;1.61ミリモル)を有するDMSO(16mL)の溶液を、攪拌しながら、70℃で20時間加熱した。
【0124】
得た黄色の溶液を、150mLの水に投入し(pHは6.5であった)、10mLの飽和NaCl溶液を添加した。30分間攪拌した後、溶液を限外濾過し、濃縮し、凍結乾燥して、0.27gの白色の固形物を得た。プロトンNMRによるDS:31%モル/モル。
【0125】
例50:HA−セファゾリンの調製
例20で調製したHA−Ms:TBA塩(400mg;0.64ミリモル)、18−クラウン−6(338mg;1.28ミリモル)及びセファゾリンナトリウム塩(767mg;1.61ミリモル)を有するDMSO(18mL)の溶液を、攪拌しながら、70℃で20時間加熱した。
【0126】
得た黄色の溶液を、180mLの水に投入し(pHは6.7であった)、10mLの飽和NaCl溶液を添加した。30分間攪拌した後、溶液を限外濾過し、濃縮し、凍結乾燥して、0.25gの白色の固形物を得た。プロトンNMRによるDS:29%モル/モル。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1a】DDSsの式を示し:HA−6−メトトレキサート、HA−6−イブプロフェン、又はHA−6−PenGを示す。
【図1b】DDSsの式を示し:HA−6−メトトレキサート、HA−6−イブプロフェン、又はHA−6−PenGを示す。
【図1c】DDSsの式を示し:HA−6−メトトレキサート、HA−6−イブプロフェン、又はHA−6−PenGを示す。
【図2】例9で得たHA−6−OMsのDOSY NMRのスペクトルを示し、DOSYにおいて、加算した単次元のNMRスペクトルでは、剛体巨大分子(rigid macromolecules)のみが存在しており、このことは、ポリマーの化学修飾が行われたことを示す事実である)。
【図3】HA−6−OMsの13C NMRを示し、そのピークは、塩化したDIEAが存在する。
【図4】例24で得たHA−6−MTXのDOSY NMRスペクトルを示す。
【図5】例24で得たHA−6−MTXの13C NMRスペクトルを示す。
【図6】例26で得たHA−イブプロフェンのDOSY NMRスペクトルを示す。
【図7】例26で得たHA−イブプロフェンの13C NMRスペクトルを示す。
【図8】例29で得たHA−ペニシリンGのDOSY NMRスペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸と、治療活性剤とからなる薬物送達システムであって、
該活性剤は、ヒアルロン酸のN−アセチル−D−グルコサミン残基のC−6位において、共有結合されており、該活性剤は、下記式(I)の化合物を除き、
【化1】


ここで:
及びRは、互いに独立に、−NH、−OH、−OCH、C−Cのアルキル、=Oを示し;X及びYは、−C(R)=、−CH(R)−、−NH−、−N=を示し、ここで、Rは、−H、C−Cのアルキルを示し、Zは、−CH(R10)−、−N(R10)−、−O−を示し、R10は、−H、C−Cのアルキル、C−Cのアルケニル、C−Cのアルキニル、窒素、硫黄及び酸素からなる群から選択された1〜3個のヘテロ原子を有する5員又は6員の複素環を示し、Arは、1,4−フェニル基、1つ以上の5員又は6員の芳香族環と縮合した1,4−フェニル基、1つ以上の5員又は6員の複素環と縮合した1,4−フェニル基を示し、このArは、Rで可能に置換され、環A及びbは、互いに独立に、芳香族環又は非芳香族環であってもよいことを特徴とする薬物送達システム。
【請求項2】
前記ヒアルロン酸と前記の活性剤との間の結合は、エステル、アミノ、エーテル、チオエーテル、アミド、好ましくはエステルであることを特徴とする請求項1に記載のDDS。
【請求項3】
前記治療活性剤は、鎮痛剤、降圧剤、麻酔剤、利尿剤、気管支拡張剤、カルシウムチャネルブロッカー、コリン作動剤、CNS剤、エストロゲン、免疫刺激剤、免疫抑制剤、脂肪親和剤、抗不安剤、抗潰瘍剤、抗不整脈剤、抗狭心剤、抗生物質、抗炎症剤、抗ウィルス剤、抗塞栓剤、血管拡張剤、解熱剤、抗うつ剤、抗精神病剤、抗腫瘍剤、粘液溶解剤、麻薬拮抗剤、ホルモン、鎮痙剤、抗ヒスタミン剤、抗真菌剤、乾癬治療薬(好ましくは、抗炎症剤、抗生物質、抗腫瘍剤)の複数の異なる治療分野に属する薬物から選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載のDDS。
【請求項4】
前記の活性剤は、DDSの全重量に対して、0.1〜60%w/w(好ましくは1〜50%)の量を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のDDS。
【請求項5】
前記ヒアルロン酸の第二水酸基は、−OR、−OCOR、−SOH、−OPO、−O−CO−(CH−COOH、−O−(CH−OCORからなる基であって、nが1〜4であり、RがC〜C10のアルキル、−NH、−NHCOCHである基を形成するように誘導体化されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のDDS。
【請求項6】
酸の形態、又はアルカリ金属、アルカリ土類金属若しくは遷移金属で塩化されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のDDS。
【請求項7】
医薬の調製のための請求項1乃至6のいずれか一項に記載の薬物送達システムの使用。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の薬物送達システムを含有し、医薬的に許容し得る賦形剤及び/又は希釈剤の混合物であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項9】
注入可能な形態であることを特徴とする請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の薬物送達システムの調製方法であって:
(a)フリーの形態又は塩の形態のヒアルロン酸のN−アセチル−D−グルコサミンの単位のC−6位に離脱基を導入して、HA−6−活性体を得るステップと;
(b)(HAのC6位の)離脱基を、治療活性剤に存在する求核基と置き換えることにより、HA−6−活性体のC6位と、治療活性剤との間の化学結合を形成して、HA−6−活性剤を得るステップと;
(c)ステップ(b)で得たHA−6−活性剤から、種々の未置換の離脱基を可能に置き換えるステップと;
(d)HA−6−活性剤を回収するステップと;
を有することを特徴とする方法。
【請求項11】
ステップ(a)から得たHA−6−活性体は、反応混合物から単離され、その後、ステップ(b)に従って、治療活性剤と反応されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(b)は、HA−6−活性体を含有するステップ(a)の反応混合物に対して直接実行されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ヒアルロン酸のN−アセチル−D−グルコサミンのC−6位に導入された離脱基は、スルフォネート基、ホスホネート基(トリフェニルホスホネート基)、シアン化物(CN)、窒化物(NO)、ハロゲン(好ましくは、塩素)、サルフェート基、ハロゲンサルフェート基、硝酸塩、ハロゲンサルファイト(クロロサルファイト)からなる群から選択されることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の薬物送達システムの調製方法であって:
(a)塩の形態のヒアルロン酸のN−アセチル−D−グルコサミンの単位のC−6位にスルフォネート基を導入して、HA−6−硫化物を得るステップと;
(b)HAのC6位のスルホン酸基を、治療活性剤に存在する求核基と置き換えることにより、HA−6−硫化物のC6位と、治療活性剤との間の化学結合を形成して、HA−6−活性剤を得るステップと;
(c)HA−6−活性剤を回収するステップと;
を有することを特徴とする方法。
【請求項15】
前記ヒアルロン酸と前記の活性剤との間の結合は、エステル、アミノ、エーテル、チオエーテル、アミドであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ヒアルロン酸と前記の活性剤との間の結合は、エステルであることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
スルフォネート基を導入するのに用いる試薬は、有機塩基又は無機塩基、好ましくは有機塩基の存在下でのアルキル又はアリールスルフォニルハライド、好ましくは塩化物であることを特徴とする請求項14乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記試薬は、メチルスルフォニルクロライド又はトルエン−p−スルフォニルクロライドであり、
前記有機塩基は、ジイソプロピルエチルアミン又はトリエチルアミンであることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ヒアルロン酸と式(I)の化合物とからなる薬物送達システムであって、
【化2】


式(I)の化合物のカルボキシル基は、エステル結合により、ヒアルロン酸のN−アセチル−D−グルコサミンのC−6位に共有結合され、
当該DDSは:
(a)フリーの形態又は塩の形態のヒアルロン酸のN−アセチル−D−グルコサミンの単位のC−6位に、スルフォネート基、ホスホネート基(トリフェニルホスホネート基)、シアン化物(CN)、窒化物(NO)、サルフェート基、ハロゲンサルフェート基(好ましくはクロロサルフェート基)、硝酸塩、ハロゲンサルファイト(クロロサルファイト)からなる群から選択される離脱基を導入して、HA−6−活性体を得るステップと;
(b)(HAのC6位の)離脱基を、式(I)の化合物に存在するカルボキシル基と置き換えることにより、HA−6−活性体のC6位と、式(I)の化合物との間のエステル結合を形成して、HA−6−式(I)の化合物を得るステップと;
(c)HA−6−式(I)の化合物を回収するステップと;
を有する方法により得られることを特徴とする薬物送達システム。
【請求項20】
1〜50%、好ましくは5〜40%のC6−DSwを有することを特徴とする請求項19に記載のDDS。
【請求項21】
式(I)の化合物は、メトトレキサートであることを特徴とする請求項19又は20に記載のDDS。
【請求項22】
ステップ(a)から得たHA−6−活性体は、反応混合物から単離され、その後、ステップ(b)に従って、治療活性剤と反応されることを特徴とする請求項19乃至21のいずれか一項に記載のDDS。
【請求項23】
前記ステップ(b)は、HA−6−活性体を含有するステップ(a)の反応混合物に対して直接実行されることを特徴とする請求項19乃至22のいずれか一項に記載のDDS。
【請求項24】
スルフォネート基を導入するのに用いる試薬は、有機塩基又は無機塩基、好ましくは有機塩基の存在下でのアルキル又はアリールスルフォニルハライド、好ましくは塩化物であることを特徴とする請求項19乃至23のいずれか一項に記載のDDS。
【請求項25】
前記試薬は、メチルスルフォニルクロライド又はトルエン−p−スルフォニルクロライドであり、
前記有機塩基は、ジイソプロピルエチルアミン又はトリエチルアミンであることを特徴とする請求項24に記載のDDS。
【請求項26】
医薬の製造への、請求項19乃至25のいずれか一項に記載のDDSの使用。
【請求項27】
請求項19乃至25のいずれか一項に記載の薬物送達システムを含有し、医薬的に許容し得る賦形剤及び/又は希釈剤の混合物であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項28】
注入可能な形態であることを特徴とする請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
フリーの形態又は塩の形態のヒアルロン酸のN−アセチル−D−グルコサミンの単位のC−6位に、スルフォネート基、ホスホネート基(トリフェニルホスホネート基)、シアン化物(CN)、窒化物(NO)、サルフェート基、ハロゲンサルフェート基(好ましくはクロロサルフェート基)、硝酸塩、ハロゲンサルファイト(クロロサルファイト)からなる群から選択される離脱基を導入して得られることを特徴とするHA−6−活性体。
【請求項30】
前記離脱基は、スルフォネート基であることを特徴とする請求項29に記載のHA−6−活性体。
【請求項31】
10〜91%のC6−DSmolを有することを特徴とする請求項29又は30に記載のHA−6−活性体。
【請求項32】
20〜90%のC6−DSmolを有することを特徴とする請求項29又は30に記載のHA−6−活性体。
【請求項33】
40〜80%のC6−DSmolを有することを特徴とする請求項29又は30に記載のHA−6−活性体。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−524624(P2009−524624A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551786(P2008−551786)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050726
【国際公開番号】WO2007/085629
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(507381396)エウランド ファルマチェウティカルズ リミテッド (4)
【Fターム(参考)】