説明

異なる第1および第2の活性半導体領域を形成するための方法およびC−MOS構造を製造するためのその方法の使用

【課題】ハイブリッド基板の製造、特にC−MOS構造の製造を簡略化することを可能にする。
【解決手段】本発明の方法によれば、第1および第2の活性領域(1a,1b,1cおよび14a,14b)を支持体の前面上に形成することができ、前記活性領域はそれぞれ、互いに異なり且つ好ましくは同一の結晶構造を有する第1および第2の単結晶半導体材料によって形成されている。また、第1および第2の活性領域(1a,1b,1cおよび14a,14b)の前面は、同じ平面内にあるという利点を与える。そのような方法は、特に、多結晶および/またはアモルファス形態の第2の半導体材料から成るパターンおよび前記パターンと予め選択された第1の活性領域(1a,1b)との間の界面領域から単結晶形態で第2の半導体材料を結晶化させるステップにより第2の活性領域(14a,14b)を形成することから成る。また、支持体は、基板(4)と電気絶縁薄層(3)との積層によって形成され、電気絶縁薄層(3)の前面が支持体の前面を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体の前面上に、それぞれが、互いに異なる第1および第2の単結晶半導体材料によって形成されるとともに、同一平面上にある前面を備えている第1および第2の活性領域を形成する方法に関する。
【0002】
本発明は、また、C−MOS構造を製造するための方法の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
C−MOS集積回路の性能を高めるために、ハイブリッド基板と呼ばれる基板が使用されている。そのような基板は、2つのタイプの半導体活性領域を支持している。すなわち、一方のタイプの活性領域はn−MOSトランジスタの製造のために形成され、これに対し、他方のタイプはp−MOSトランジスタの製造のために形成される。そのようなハイブリッド基板を製造する現在の方法は比較的複雑であり、したがって高価である。
【0004】
また、特許文献1は、電荷結合素子(CCD)、集積デジタルメモリ、マイクロプロセッサ、集積アナログ回路等の回路を製造する際に使用されるようになっているハイブリッド基板の製造方法を提案している。この方法は、バルクシリコン基板をエッチングすることにより得られる単結晶シリコンの活性領域に隣接して結晶GaAsの活性領域を形成することから成る。バルク単結晶シリコン基板の表面がこのようにしてパターニングされ、特にエッチングされることにより、バルク単結晶シリコン基板に突出領域が形成される。前記突出領域は、活性なGaAs単結晶領域を形成するための成長ウインドウを構成するべく形成されている。その後、熱SiOまたはSiO−Alから成る薄層が基板の表面上に堆積され、その後、この薄層がエッチングされて、前記突出領域の上壁の一部が露出される。その後、熱SiOまたはSiO−Alから成る層により部分的に覆われた基板の表面上に多結晶またはアモルファスGaAsから成る層が堆積される。その後、多結晶またはアモルファスGaAs層上に誘電保護層が堆積された後、多結晶またはアモルファスGaAs層を融解させるために空間的に均一な光インパルスが印加され、これにより、GaAsが単結晶形態で突出領域から再結晶化される。その後、平坦化ステップにより、同一平面上にある単結晶GaAsの活性領域および単結晶シリコンの活性領域を得ることができる。活性単結晶GaAs領域は、熱SiOまたはSiO−Alから成る層により、単結晶シリコン基板から、特に活性単結晶シリコン領域から分離される。
【特許文献1】米国特許第5,514,885号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ハイブリッド基板の製造、特にC−MOS構造の製造を簡略化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は添付の請求項によって達成される。
【0007】
特に、この目的は、支持体が基板と電気絶縁薄層との積層によって形成され、電気絶縁薄層の前面が支持体の前面を構成し、方法が、少なくとも以下の一連のステップ、すなわち、
− 前記電気絶縁薄層の前面上に、少なくともその側壁が薄い保護層によって覆われる前記第1の活性領域を形成するステップと、
− 前記薄い保護層をパターニングして、予め選択された前記第1の活性領域の側壁における界面領域を解放させるステップと、
− 前記電気絶縁薄層の前面上にある前記第1の活性領域間に、多結晶および/またはアモルファス形態の第2の半導体材料から成り、それぞれが、隣接する予め選択された前記第1の活性領域の界面領域と直接に接触する側壁の少なくとも一部と、前記第1の活性領域の前面と同じ平面内に配置される前面とを備えているパターンを挿入するステップと、
− 前記第1の活性領域上および前記パターン上にパッシベーション層を堆積させるステップと、
− 前記第2の半導体材料を単結晶形態で結晶化させて、前記第2の活性領域を形成するステップと、
を含むという事実により達成される。
【0008】
特に、第1および第2の活性材料がそれぞれシリコンおよびゲルマニウムにより形成されるC−MOS構造を製造するためにそのような方法が使用される場合には、n−MOSトランジスタが第1の活性領域に形成され、p−MOSトランジスタが第2の活性領域に形成される。
【0009】
他の利点および特徴は、単なる非限定的な実施例として与えられ且つ添付図面に示される本発明の特定の実施形態の以下の説明から更に明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る方法によれば、異なる第1および第2の単結晶半導体材料によりそれぞれ形成される第1および第1の活性領域を支持体の前面上で簡単且つ安価に得ることができる。また、この方法によれば、第1および第2の活性領域の前面を互いに同じ面内に位置させることができ、また、第1および第2の半導体材料は同じ結晶構造を有していることが好ましい。
【0011】
そのような方法は、特に、多結晶および/またはアモルファス形態の第2の半導体材料から成るパターンおよび前記パターンと予め選択された第1の活性領域との間の界面領域から単結晶形態で第2の半導体材料を結晶化させるステップにより第2の活性領域を形成することから成る。
【0012】
特定の実施形態において、結晶化ステップは局所凝固ステップにより行なわれることが好ましい。この場合、第2の半導体材料は、第1の半導体材料の融解温度よりも低い融解温度を有する。局所凝固方法は液相エピタキシ(LPE)とも呼ばれる。
【0013】
局所凝固方法を使用してバルクシリコン基板の前面上に形成された単結晶シリコンのシード領域から単結晶ゲルマニウムを形成することは既に提案されている。すなわち、Yaocheng Liu等は、論文「High−quality single−crystal Ge on insulator by liquid−phase epitaxy on Si Substrates」(Applied Physics Leteers, Vol 84, No 14, 2563−2565頁)で、局所凝固方法を用いて、ゲルマニウムオンインシュレータ(GeOI)基板、すなわち、単結晶ゲルマニウムから成る薄膜と電気絶縁薄層とバルクシリコン基板とを連続的に備える積層体を形成することを提案している。単結晶ゲルマニウムから成る薄膜は、実際には、その前面に電気絶縁薄層を備えるバルクシリコン基板上で得られる。バルクシリコン基板の前面の一部は、シード領域と呼ばれる解放領域を形成するために予め解放される。その後、スパッタリングによりゲルマニウムが堆積され、ゲルマニウムを液状にするために急速熱処理が行なわれる。その後、ゲルマニウムが冷却されて、ゲルマニウムが単結晶形態で固体状態にされる。バルク単結晶シリコン基板中に形成されたシード領域から凝固が行なわれ、その後、凝固は、それが単結晶ゲルマニウムの薄膜を形成するまで液状ゲルマニウム中を横方向に伝搬する。
【0014】
しかしながら、本発明の特定の実施形態で使用される局所凝固方法は、ハイブリッド基板を形成するため、すなわち、支持体の前面上に異なる第1および第2の半導体活性領域を形成するために使用される。第2の活性領域は、既に形成された第1の活性領域から予め選択された第1の活性領域の側壁のシード領域と呼ばれる界面領域から局所凝固によって得られる。これにより、とりわけ、第1および第2の活性領域の前面を互いに同じ面内に位置させることができ、したがって、面一にすることができる。
【0015】
したがって、図1〜図10は、単結晶シリコンから成る第1の活性領域および単結晶ゲルマニウムから成る第2の活性領域を支持体の前面上に形成することにある本発明の特定の実施形態を示している。また、第1の活性領域は、例えば図1に示されるようなシリコンオンインシュレータ(SOI)基板1から形成されている。SOI基板1は、単結晶シリコンから成る薄膜2と電気絶縁薄層3と基板4とによって形成された積層体を備えている。
【0016】
薄膜2は、数ナノメートル〜数ミクロンの厚さを有していることが好ましく、特に10nm〜100nmの厚さを有している。基板4は例えばシリコンから成る。基板は、SOI基板1を形成するために従来から使用されている任意の他のタイプの材料によって形成することもできる。また、基板4は、電気絶縁薄層3よりも短い熱安定化特性時間(thermal stabilization characteristic time)を有していることが好ましい。
【0017】
また、電気絶縁薄層3は埋め込み層とも呼ばれる。図1に示されるように、電気絶縁薄層は薄膜2と基板4との間に配置されている。したがって、電気絶縁薄層は、薄膜2と接触する前面5aと、基板4と接触する後面5bとを備えている。前面5aは、平坦であることが好ましく、後に、その上に第1および第2の活性領域が形成される支持体の前面を構成する。薄層3の厚さは、数ナノメートル〜数ミクロンであることが好ましい。
【0018】
特に、薄層3は、方法のその後のステップが行なわれる際に薄層3の前面5aからゲルマニウムの厄介な成長が生じるのを防止するためにアモルファス材料によって形成されている。薄層3は、例えば、アモルファスシリコン窒化物またはアモルファス二酸化シリコンによって形成することができる。ゲルマニウムと接触されるようになっている材料がその後にゲルマニウムの成長を引き起こさない場合、薄層は、他の材料を備えることもでき、あるいは、多層積層体によって形成することもできる。したがって、薄層3の前面5aは、ゲルマニウムに対して化学的に安定していることが好ましい。また、薄層3を形成する材料は、薄層3の熱安定化特性時間がゲルマニウムを特徴付けるそれよりも長くなるように選択されることが好ましい。最初の近似として、前記特性時間は一般式:τ=l/(k/(ρ×C))に対応している。ここで、iは考慮される層の参照符号に対応しており(例えば誘電的絶縁薄層3の場合、i=3)、lは層iの特性長さに対応しており、k,ρ,Cはそれぞれ、層iを形成する材料の熱伝導率、密度、熱容量に対応している。したがって、薄層3の場合、lは薄層3の厚さに対応しており、また、多結晶および/またはアモルファスゲルマニウムにより形成されるパターンiの場合、lは前記パターンの幅に対応している。
【0019】
図1および図2に示されるように、第1の活性領域は、SOI基板1の薄膜2中に形成される。これらの活性領域は、特に、フォトレジストマスク(図示せず)を介した薄膜2のフォトリソグラフィによって形成される。フォトレジストマスクは後に除去される。したがって、図2には、3つの第1の活性領域1a,1b,1cが表わされている。これらの領域は、薄層3の前面5aの一部を解放する2つの空間6a,6bによって互いに分離されている。第1の領域1a,1b,1cはそれぞれ前面と側壁とを備えている。したがって、第1の領域1aは前面7aと側壁8aとを備え、第1の領域1bは前面7bと側壁8bとを備え、第1の領域1cは前面7cと側壁8cとを備えている。
【0020】
図3においては、第1の活性領域1a,1b,1cの前面7a,7b,7cおよび側壁8a,8b,8cを覆うように保護層9が均一に堆積される。保護層9の均一な堆積は、当業者には一般にコンフォーマル堆積と呼ばれている。コンフォーマル堆積は、前記堆積がその上で行なわれる表面の幾何学的形状とは無関係に保護層が一定の厚さを与える堆積に対応している。また、保護層9は、薄層3の前面5aの解放部分も覆っている。保護層9は、例えば二酸化ケイ素層であり、任意のタイプの真空蒸着法により堆積させることができる。例えば、蒸着方法は、プラズマ物理的気相成長法(PEPVD)等の物理的気相成長法(PVD)または化学蒸着(CVD)であっても良い。変形例において、保護層9は、シリコンの熱酸化によって得ることもできる。また、ゲルマニウムと接触されるようになっている薄層が後にゲルマニウムの成長を引き起こさない場合、保護層9は、幾つかの薄層から成る積層体によって形成することもできる。
【0021】
保護層9は、その後、シード領域と呼ばれる領域に対応する予め選択された第1の活性領域の側壁における界面領域と呼ばれる領域を解放するためにパターニングされる。パターニングは、例えば、フォトリソグラフィステップおよびその後のエッチングステップによって行なわれる。パターニングは、特に、保護層9上に堆積されるフォトレジスト層によって行なわれる。フォトレジスト層は、その後、露光されて現像され、それにより、保護層9の一部を覆うマスクが形成される。マスクによって覆われない保護層9の部分は、その後、保護層9の解放された部分に対応する。保護層9の解放部分はその後にエッチングにより除去され、これに対し、マスクによって覆われる保護層9の部分は保護されたままとなる。マスクはその後に除去される。エッチングは例えば化学エッチングである。例えば、Siから成る保護層はリン酸(HPO)の溶液を用いてエッチングすることができ、また、SiOから成る保護層の場合、フッ酸溶液を用いてエッチングを行なうことができる。また、保護層9がSiOおよびSiからそれぞれ成る2つの層を積層することにより形成される場合、また、SiO層が第1の活性領域1a,1b,1cと接触される場合、前記SiO層は、HPOを豊富に含む溶液により達成されるSi層のバリア停止エッチングとしての機能を果たすことができる。
【0022】
図4において、保護層9のパターニングは、第1の領域1a,1cのそれぞれの側壁8a,8cの界面領域を解放するように行なわれた。第1の領域1bの側壁8bは、その一部に関して、保護層9により保護されたままである。また、2つの解放された界面領域はそれぞれ、空間6aまたは6cの輪郭を描く対応する予め選択された第1の領域1aまたは1cの側壁8aまたは8cの部分に対応している。
【0023】
図4に示される実施形態において、第1の活性領域1a,1b,1cの前面7a,7b,7cは保護層9によって部分的に覆われたままである。一方、保護層9のパターニングにより、空間6a,6bの輪郭を描く薄層3の前面5aの部分を少なくとも部分的に解放することができる。これにより、予め選択されていない第1の活性領域の側壁を保護するようになっているバリア要素9a,9bが形成される。
【0024】
薄層3の前面5aの前記部分の少なくとも部分的な解放は、保護層9および薄層3をそれぞれ形成する材料が異なり且つ保護層9のエッチングが薄層3を形成する材料に関して選択的である場合にのみ可能である。これは、例えば、薄層3がSiから成り、保護層9がSiOから成り、保護層9のエッチングがフッ酸溶液を用いて行なわれるような場合である。他の場合には、保護層9と薄層3との間の界面に達する前に保護層9のパターニングが停止することができ或いは停止され得る。また、薄層3中でパターニングを継続することもできる。費やされる薄層3の材料の厚さは、後に、保護層9と薄層3との間の界面での停止エッチングに対応する、理想的なエッチングに対するオーバーエッチングの厚さに対応する。
【0025】
図6に示されるように、その後、多結晶および/またはアモルファスゲルマニウムから成るパターン10a,10bが、薄層3の前面5aの解放部分で、前記第1の活性領域1a,1b,1c間に挿入される。各パターン10a,10bは、第1の活性領域1a,1b,1cの前面7a,7b,7cと同じ面内に前面11a,11bを与えるとともに、隣接する予め選択された第1の活性領域と直接接触する少なくとも側壁の部分を備えている。したがって、図6では、パターン10aの側壁の一部が第1の活性領域1aの界面領域と直接に接触しており、一方、パターン10bに関しては、その側壁の一部が第1の活性領域1cの界面領域と直接に接触している。パターン10a,10bの側壁の他の部分は、それらとしては、保護層9の残りの部分により形成されるバリア要素9a,9bによって第1の活性領域の側壁から分離されている。
【0026】
図5に示されるように、挿入は、例えば、図4に示される構造体の解放面全体上に多結晶および/またはアモルファス形態でゲルマニウムから成る層10を堆積(コンフォーマル堆積)させることにより達成される。コンフォーマル堆積は、例えば、物理的気相成長法または化学蒸着法によって行なわれる。
【0027】
特定の実施形態において、コンフォーマル堆積は、2つの異なる堆積ステップで行なうことができる。第1のステップ、例えばPECVDステップにより、ゲルマニウムの堆積を均一に開始することができる。一方、第2のステップは、より標準的で且つ安価な堆積ステップであり、例えばCVDまたはPVDステップであっても良い。この第2のステップにより、層10において必要な厚さに至るまで堆積を完了させることができる。この特定の実施形態において、層10は、その後、2つの重ね合わされた副層によって形成される。この場合、第1の副層はアモルファスであり、第2の副層は多結晶である。この特定の実施形態を用いると、第1のアモルファス副層は、図4に示される構造体の解放面に、濡れ層と呼ばれる層を形成し、この層は、それが堆積される表面を構成する材料が何であっても均一になるという利点を与える。第2の副層の堆積は、その後、問題なく行なうことができる。これは、任意の材料を異なる性質の表面上に堆積させるときに生じやすい核生成バリアの問題を第1の副層が防止するからである。
【0028】
このコンフォーマル堆積ステップの後に、化学機械研磨(CMP)等の平坦化ステップが行なわれる。この平坦化ステップにより、図6に示されるようなパターン10a,10bを得ることができる。特に、この平坦化ステップにより、パターン10a,10bの前面11a,11bを前面7a,7b,7cと同じ面内におくことができる。したがって、層10の厚さが第1の活性領域1a,1b,1cの厚さに等しい図5に示される実施形態では、化学機械研磨は、前面7a,7b,7c上に堆積された層10の部分を除去するためだけに行なわれる。そのため、研磨は、保護層9に達すると直ぐに停止する。好ましくは、研磨は、保護層9と第1の活性領域1a,1b,1cとの間の界面でのみ停止し、これにより、前面7a,7b,7cが解放される(図6)。エッチングが停止されるべき瞬間を決定するための手段は当業者に良く知られている。例えば、当業者は、材料の性質に応じて、エッチング終端検出システムまたは研磨機械モータに作用するトルクの変化を測定するための方法を使用することができる。
【0029】
その後、図6に示される構造体の平坦な解放面上に、すなわち、第1の活性領域の前面7a,7b,7c上およびパターン10a,10bの前面11a,11b上に、比較的厚い硬質なパッシベーション層12が堆積される(図7)。また、ゲルマニウムパターン10a,10bの前面11a,11bと接触するようになっているパッシベーション層12の材料は、アモルファスであることが好ましい。特に、パッシベーション層12は、特に高温で行なわれるステップ中に、外部環境に対する第1の活性領域1a,1b,1cおよびパターン10a,10bの保護を行なう。
【0030】
好ましくは、図8において、基板4とパッシベーション層12の前面12aとの間に横断通路が形成される。この横断通路は、界面領域の近傍で薄層3および第1の活性領域1a,1cを貫通するように形成される。その後、この通路は、ヒートシンク13a,13bを形成するために熱伝導材料で満たされる。変形例では、パッシベーション層12が堆積される前にヒートシンク13a,13bを形成することができる。この場合、横断通路は、界面領域を備える第1の活性領域、すなわち、図5における第1の活性領域1a,1cと基板4との間に形成される。
【0031】
横断通路を充填する熱伝導材料は単結晶シリコンであっても良い。この場合、横断通路の充填は、真空蒸着により、例えばPVD、CVDまたはLPCVDにより、あるいは、エピタキシにより行なわれることが好ましい。また、熱伝導材料は、第1の活性領域を形成する材料以外のであっても良い。この場合、熱伝導材料は、高い熱伝導、好ましくは第1の活性領域の熱伝導以上の熱伝導を有するように選択される。また、熱伝導材料は非汚染物質でもある。すなわち、熱伝導材料は、第1の活性領域の半導体特性を改質してはならず、あるいは、薄層3のその電気絶縁性を失わせてはならない。また、横断通路を充填する材料は、第1の活性領域1a,1b,1c中に結晶対の傷(結晶欠陥)を形成しないように選択することができる。好ましくは、熱伝導材料は、第1の活性領域1a,1b,1cを形成する材料の熱特性および熱弾性特性に最も近い熱特性および熱弾性特性を有するように選択される。
【0032】
パターン10a,10bは、その後、局所的な凝固により結晶化される。したがって、図8に示される構造体は、パターン10a,10bをゲルマニウムの融解温度とシリコンの融解温度との間の温度まで加熱するようになっている熱処理を受ける。ゲルマニウムの融解温度937℃であり、一方、シリコンの融解温度は約1414℃であり、熱処理は、非常に短い時間にわたって例えば約950℃の温度で行なわれる。これにより、第1の活性領域を固体の状態に維持しつつ且つ粘性的な動きをする材料に不可逆変形させる時間を持たせないようにしつつ、ゲルマニウムパターン10a,10bを融解させることができる。
【0033】
パッシベーション層12は、ゲルマニウムの融解が行なわれるときに機械的保護および断熱の役割を果たす。また、パッシベーション層は十分に厚く硬質である。これにより、ゲルマニウムが融解するときに生じやすい圧力増大および対流および/または放射によりその解放面を介して除去される熱流束の影響下でパッシベーション層が燃え上がることが防止され、また、基板4を通じて行なわれる冷却よりも速い冷却をパッシベーション層が引き起こすことが防止される。パッシベーション層12は、例えば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素および/またはハフニウム二酸化物によって形成される。
【0034】
また、熱処理を行なうために使用される加熱方法は、基板4を熱的に冷たい塊(cold thermal mass)のままに確保しつつ多結晶および/またはアモルファスゲルマニウムをその融解温度よりも高い温度まで加熱するように選択されることが好ましい。したがって、図8に示される構造体は、パッシベーション層12の前面12aにより加熱されることが好ましい。加熱は放射により行なうことができる。この場合、入射する放射線の波長は、パッシベーション層12を構成する材料または材料のうちの1つによって吸収されるように選択されることが好ましい。その後、パッシベーション層12は、それが図8に示される構造体中に熱領域を構成するように、下側にあるゲルマニウムを熱伝導によって加熱することができる。また、入射する放射線の露光時間は、熱線の透過が基板4の極僅かな厚さに対してしか影響を与えないように十分短い。
【0035】
熱処理が完了すると、構造体が冷却され、これにより、ゲルマニウムの凝固が単結晶形態で引き起こされ、そのため、図9に示されるように第2の活性領域14a,14bが形成される。冷却は、例えば、ヒートシンク13a,13bによる基板4の熱除去により得られる。その後、基板4は、熱処理が行なわれたときに入力された熱出力を凝固ステップ中に除去できるヒートシンクを形成する。しかしながら、このヒートシンクを有効にするには、熱処理ステップ中に使用される加熱方法が前記基板のみを表面的に加熱しなければならず、および/または、冷却ステップ中に、主に基板4の後面に向けて熱除去がヒートシンク13a,13bを介して行なわれなければならない。
【0036】
この実施形態において、単結晶形態のゲルマニウムの結晶化は、局所的な凝固により行なわれる。実際には、ゲルマニウムの凝固は、第1の活性領域1a,1cのシード領域と呼ばれる界面領域での成長により始まる。その後、凝固領域は、シード領域からバリア要素9a,9bにより保護される反対の側壁へとほぼ水平にゲルマニウム中で液状に伝搬し、これにより、単結晶ゲルマニウムから成る第2の活性領域14a,14bが得られる。
【0037】
第2の活性領域14a,14bが形成されると、例えばエッチングまたはフォトリソグラフィによりパッシベーション層12を除去することができ、また、例えば第1の活性領域と隣接する第2の活性領域との間の接触領域を除去することにより第1の活性領域と第2の活性領域とを互いに物理的に分離させることができる(図9)。また、これにより、第1の活性領域と第2の活性領域との間で電気的絶縁を得ることもできる。
【0038】
前述した代わりの実施形態においては、図3に示されるように保護層9が必ずしも均一に堆積されるとは限らない。例えば、保護層は、第1の活性領域1a,1b,1cの側壁8a,8b,8c上にだけ堆積させることができ、これにより例えばスペーサが形成される。この場合、第1の活性領域の前面7a,7b,7cは、第2の半導体材料のコンフォーマル堆積まで解放されたままである。その後、例えば化学機械研磨(CMP)および/または選択エッチングによる平坦化ステップが行なわれ、これにより、第1の活性領域の前面上に堆積された第2の半導体材料が除去される。この場合、第1の活性領域1a,1b,1cの前面7a,7b,7cの高さでエッチングおよび/またはCMPの停止がなされることが好ましい。
【0039】
他の変形例においては、図3に示されるように保護層9を均一に堆積させることができるが、保護層9のパターニングは、第1の活性領域1a,1b,1cの前面7a,7b,7cを解放させ且つ空間6a,6bの輪郭を描く薄層3の前面の部分を少なくとも部分的に解放させるように行なうことができる。この場合、保護層9のパターニングは、図6に示され且つ予め選択されていない第1の活性領域の側壁を保護するようになっているバリア要素9a,9bの形成を各空間6a,6b内で直接に引き起こす。
【0040】
また、保護層9のパターニングステップと第1の活性領域間にパターン10a,10bを挿入するステップとの間に中間平坦化ステップを行なうことができる。この中間ステップは、保護層9と第1の活性領域との間の界面で停止するエッチングによって行なうことができ、あるいは、第1の活性領域中へと継続することができる。この場合、第1の活性領域の厚さが減少され、また、パターン10a,10bの前面11a,11bが第1の活性領域の前面と同じ面内に保たれるようにパターン10a,10bの形成後に平坦化ステップが必要となる場合がある。
【0041】
他の実施形態において、保護層9のパターニングは、空間6a,6bの輪郭を描く薄層3の前面5aの部分を解放させるために行なわれる。これは、保護層9と薄層3との間の界面でパターニングを停止させることにより、あるいは、薄層3中へとパターニングを継続させることによって達成される。この場合、単結晶および/またはアモルファスの第2の半導体材料から成るパターンを第1の活性領域間に挿入するステップは、第2の半導体材料を空間6a,6b内にのみ選択的に堆積させることにより行なわれることが好ましい。例えば、図4に示される構造において、薄層3はSiにより形成され、保護層9はSiOから成り、第1の活性領域1a,1b,1cはシリコンとゲルマニウムとの合金によって形成される。第2の半導体材料から成るパターン10a,10bを空間6a,6b内に直接に形成するため、化学蒸着が選択的に行なわれる。第2の半導体材料は、シリコン・ゲルマニウム合金の融解温度よりも低い融解温度を与える。必要に応じて、図6に示されるような構造を得るため、パターン10a,10bの形成後に平坦化ステップを実施することができる。
【0042】
本発明は、前述した実施形態に限定されない。
【0043】
特に、第1および第2の活性領域は任意の形状を有することができる。第1および第2の活性領域の形状は、例えば、ゲルマニウム結晶化ステップ中に形成されやすい結晶欠陥を捕捉するように選択することができる。
【0044】
また、単結晶シリコンは、第1の活性領域の側壁に配置される界面領域の高さで局所結晶化ステップによりゲルマニウムまたは他の単結晶半導体材料を形成できる結晶構造を有する任意のタイプの単結晶半導体材料と置き換えることができる。例えば、単結晶シリコンはシリコン・ゲルマニウム合金(SiGe)に取って代えることができ、あるいは、第1の半導体材料が単結晶シリコンである場合、ゲルマニウムをシリコン・ゲルマニム合金に取って代えることができる。
【0045】
第2の半導体材料の結晶化を達成するため、局所凝固方法または液相エピタキシ(LPE)を固相エピタキシ(SPE)に置き換えることができる。この場合、パターン10a,10bが全体的に単結晶へ変わって第2の活性領域14a,14bを形成するまで幾つかの結晶化サイクルを繰り返すことにより成長する単結晶を界面領域の高さに形成するために、パッシベーション層12の堆積後に固相結晶化ステップが行なわれる。このとき、第2の半導体材料は、第1の半導体材料の融解温度よりも低い融解温度を有している必要はない。
【0046】
基板4を形成する材料は、薄膜2を構成する材料と同一もしくは異なることができる。
【0047】
本発明における方法は、特にC−MOS構造を製造するために使用されるハイブリッド構造の製造を簡略化するという利点を与える。前述した製造のための方法は実際にはC−MOS構造を製造するために使用することができる。この場合、n−MOSトランジスタは、単結晶シリコンから成る第1の活性領域内に形成され、p−MOSトランジスタは、単結晶ゲルマニウムから成る第2の活性領域内に形成される。したがって、それにより、n−MOSおよびp−MOSトランジスタの製造を1つの同じ支持体上で集合的に扱うことができ、それにより、製造コストが低減される。しかしながら、実際には、MOSトランジスタの性能を向上させることで知られるゲルマニウムは非常に高価である。また、それをシリコンから成る活性領域を備える支持体上に組み込むと、最初の支持体のコストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の特定の実施形態のステップを断面で概略的に示している。
【図2】本発明の特定の実施形態のステップを断面で概略的に示している。
【図3】本発明の特定の実施形態のステップを断面で概略的に示している。
【図4】本発明の特定の実施形態のステップを断面で概略的に示している。
【図5】本発明の特定の実施形態のステップを断面で概略的に示している。
【図6】本発明の特定の実施形態のステップを断面で概略的に示している。
【図7】本発明の特定の実施形態のステップを断面で概略的に示している。
【図8】本発明の特定の実施形態のステップを断面で概略的に示している。
【図9】本発明の特定の実施形態のステップを断面で概略的に示している。
【図10】本発明の特定の実施形態のステップを断面で概略的に示している。
【符号の説明】
【0049】
1 SOI基板
1a,1b,1c 第1の活性領域
2 薄膜
3 電気絶縁薄膜
4 基板
5a 前面
5b 後面
6a 空間
6b 空間
7a,7b,7c 前面
8a,8b,8c 側壁
9 保護膜
10a,10b,10c パターン
11a,11b 前面
14a,14b,14c 第2の活性領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の前面上に、それぞれが互いに異なる第1および第2の単結晶半導体材料によって形成されるとともに同一平面上にある前面を備えている第1および第2の活性領域(1a,1b,1cおよび14a,14b)を形成する方法であって、前記支持体が基板(4)と電気絶縁薄層(3)との積層によって形成され、前記電気絶縁薄層(3)の前面(5a)が前記支持体の前面を構成し、少なくとも以下の一連のステップ、すなわち、
− 前記電気絶縁薄層(3)の前面(5a)上に、少なくともその側壁(8a,8b,8c)が薄い保護層(9)によって覆われる前記第1の活性領域(1a,1b,1c)を形成するステップと、
− 前記薄い保護層(9)をパターニングして、予め選択された前記第1の活性領域(1a,1c)の側壁(8a,8c)における界面領域を解放させるステップと、
− 前記電気絶縁薄層(3)の前面(5a)上にある前記第1の活性領域(1a,1b,1c)間に、多結晶および/またはアモルファス形態の第2の半導体材料から成り、それぞれが、隣接する予め選択された前記第1の活性領域(1a,1c)の界面領域と直接に接触する側壁の少なくとも一部と、前記第1の活性領域(1a,1b,1c)の前面(7a,7b,7c)と同じ平面内に配置される前面(11a,11b)とを備えているパターン(10a,10b)を挿入するステップと、
− 前記第1の活性領域(1a,1b,1c)上および前記パターン(10a,10b)上にパッシベーション層(12)を堆積させるステップと、
− 前記第2の半導体材料を単結晶形態で結晶化させて、前記第2の活性領域(14a,14b)を形成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記結晶化が局所凝固ステップにより行なわれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記局所凝固ステップは、
− 前記第1の半導体材料の融解温度と前記第2の半導体材料の融解温度との間にある予め設定された温度での熱処理であって、前記第2の半導体材料が前記第1の半導体材料の融解温度よりも低い融解温度を有している熱処理と、
− 前記第2の活性領域(14a,14b)を形成するための第2の半導体材料の単結晶形態での凝固と、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記結晶化が固相エピタキシにより行なわれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基板(4)が第1の単結晶半導体材料により形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記結晶化が局所凝固ステップにより行なわれ、前記基板(4)は、前記電気絶縁薄層(3)の熱安定化特性時間よりも短い熱安定化特性時間を有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記局所凝固ステップの前に、
− 前記予め選択された第1の活性領域(1a,1c)の前記界面領域の近傍で、前記基板(4)と前記予め選択された第1の活性領域(1a,1c)との間に横断通路を形成するステップと、
− 前記横断通路を熱伝導材料で満たすステップと、
を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記横断通路を満たす前記熱伝導材料が第1の単結晶半導体材料であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
単結晶形態での第2の半導体材料の前記結晶化の後に、前記パッシベーション層(12)を除去するステップと、前記第1および第2の活性領域(1a,1b,1cおよび14a,14b)間を絶縁するステップとが行なわれることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1および第2の半導体材料が同一の結晶構造を有していることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の半導体材料がシリコンおよびシリコン・ゲルマニウム合金から選択されることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の半導体材料がゲルマニウムおよびシリコン・ゲルマニウム合金から選択されることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記支持体の前面が第2の半導体材料に対して化学的に安定していることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
C−MOS構造を製造するための請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法の使用であって、前記第1および第2の活性領域(1a,1b,1cおよび14a,14b)がそれぞれシリコンおよびゲルマニウムにより形成され、n−MOSトランジスタが前記第1の活性領域(1a,1b,1c)に形成され、p−MOSトランジスタが前記第2の活性領域(14a,14b)に形成されることを特徴とする方法の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−134719(P2007−134719A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−304413(P2006−304413)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(502142323)コミサリア、ア、レネルジ、アトミク (195)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【出願人】(591035139)エステーミクロエレクトロニクス ソシエテ アノニム (31)
【Fターム(参考)】