説明

病理診断支援装置、病理診断支援プログラム、病理診断支援方法、及び病理診断支援システム

【課題】 病理画像から診断する病理組織を抽出・診断する病理診断支援装置、病理診断支援プログラム、病理診断支援方法、及び病理診断支援システムを提供する。
【解決手段】 病理学検査において採取した組織には染色(ヘマトキシレン、エオジン等による染色)が施されるため、細胞核、その周辺組織等がそれぞれ特有の色に染色されていることを考慮して、病理画像から細胞核、空孔、細胞質、間質等を中心とするサブイメージを抽出すると同時に、細胞核の色情報を抽出し、両者を特徴候補として記憶することにより、より高い精度で腫瘍の有無、及び腫瘍の良性・悪性を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病理診断支援装置に関し、特に、病理画像から診断する病理組織を抽出・診断する病理診断支援装置、病理診断支援プログラム、病理診断支援方法、及び病理診断支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床医療現場では、X線・CT・MRIなどの画像診断機器が進歩し、微小な異変を探知することができるようになっている。しかし、X線・CT・MRIなどの画像診断機器は、異物の位置情報をもたらすのみで、その異物の性質を特定することはできない。したがって、結果的には病理医が画像診断機器で探知した異物を顕微鏡で観察し、その病理医の経験から異物の性質が良性なのか悪性なのかを判定している。したがって、微妙な境界領域の例においては、病理医によって診断結果が異なってしまうこともある。
【0003】
具体的には、病理学検査では、まず採取した組織を固定するために脱水し、パラフィンによるブロック化といった処理を行った後5〜8ミクロンの厚さの薄片に切り、パラフィンを取り除き、染色して顕微鏡観察を行います。病理医は、この顕微鏡画像の中で、細胞の核の大きさや形の変化、組織としてのパターンの変化などの形態学的な情報をもとに診断を行っている。
【0004】
特許文献1では、生体組織の組織画像から画像の特徴を特徴量として定量的に表し、病理組織学的特徴に基づいてあらかじめ設定された診断カテゴリーを適合度算出カテゴリーとして上記組織画像の特徴量が上記適合度算出カテゴリーに適合する程度を算出し、適合度の高い適合度算出カテゴリー名を表示する病理組織診断支援装置が提案されている。
【0005】
特許文献2では、識別対象である学習パターンを部分空間群に射影し、各部分空間への射影長の二乗を特徴ベクトルとして算出し、該特徴ベクトルの各成分のクラス間変動とクラス内変動との比を増加させるように、該部分空間群を構成する各部分空間の基底ベクトルを更新することによりパターン変動に対して強く、パターン識別に適した特徴抽出装置が提案されている。
【0006】
特許文献3では、高性能のパターン識別を、膨大な学習を要することなく実現するためのパターンの特徴選択方法、分類方法、判定方法、プログラム、及び装置が提案されている。
【0007】
非特許文献1では、病理画像のなかから組織の腺組織あるいはその結合組織である間質など組織の構成要素をパターン学習し、検出することにより、より高い精度で癌の悪性度を判定できる病理画像からのガン細胞の自動抽出技術が提案されている。
【特許文献1】特開平10−197522号公報
【特許文献2】特開2001−101418号公報
【特許文献3】特開2003−256839号公報
【非特許文献1】NEC技法Vol.56 No.10(2003年11月25日発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記の発明は、以下の問題を有している。
【0009】
特許文献1記載の病理組織診断支援装置によれば、適合度の算出にニューラルネットワークを用いることにより、学習データを用意するだけで、学習によって自動的に適合度を高精度に算出でき、かつ使用した標本が増えるほど学習データが増えるため精度を向上させることができるが、膨大な学習データを要するため、短時間に信頼性の高い適合度を出力することができない。
【0010】
特許文献2、特許文献3、及び非特許文献1記載のパターンを抽出する方法によれば、生体組織の組織画像から画像の特徴(例えば腫瘍)を発見することもできるが、病理画像から画像の特徴を抽出するためには、病理画像に特有の事情が考慮されていないため、高精度に画像の特徴部分を発見することができない。
【0011】
そこで、本発明は、腫瘍の性質の識別において、細胞核、その周辺組織等の変化が重要であることを考慮し、病理画像から細胞核、空孔、細胞質、間質等を中心とするサブイメージを抽出し、サブイメージを学習パターン及び入力パターンとして入力することにより、サブイメージに基づいて高精度に腫瘍の有無、及び腫瘍の良性・悪性を判定することができる病理診断支援装置、病理診断支援プログラム、病理診断支援方法、及び病理診断支援システムを提案することを目的としている。
【0012】
また、本発明は、病理学検査において採取した組織には染色(ヘマトキシレン、エオジン等による染色)が施されるため、細胞核、その周辺組織等がそれぞれ特有の色に染色されていることを考慮して、病理画像から細胞核、空孔、細胞質、間質等を中心とするサブイメージを抽出すると同時に、細胞核の色情報を抽出し、両者を特徴候補として記憶することにより、より高い精度で腫瘍の有無、及び腫瘍の良性・悪性を判定することができる病理診断支援装置、病理診断支援プログラム、病理診断支援方法、及び病理診断支援システムを提案することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発明は、学習に用いる病理画像から腫瘍を中心としたイメージを切り出し、学習パターンとして入力する学習パターン入力手段と、クラス情報が付された前記学習パターンを記憶保持する学習パターン記憶手段と、複数の特徴候補を生成する特徴候補生成手段と、前記特徴候補生成手段によって生成される特徴候補の中から診断に適した特徴のセットを決定する特徴決定手段と、前記特徴決定手段により決定されている特徴のセットを記憶保持する特徴記憶手段と、分類テーブルを作成する分類テーブル作成手段と、診断する病理画像から腫瘍候補を中心としたイメージを切り出し、入力パターンとして入力するパターン入力手段と、前記入力パターンから特徴を抽出する特徴抽出手段と、前記特徴に基いて診断する診断手段とを有する病理診断支援装置において、前記特徴決定手段は、前記各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴を計算して、前記学習パターン集合のクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの最初の特徴として決定し、決定した特徴が既知であるとの条件の下で、各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴と、前記各学習パターンのクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの次なる特徴として、順次、決定し、前記分類テーブル作成手段が、前記特徴のセットを用いて、前記各学習パターンの各特徴を計算し、前記各学習パターンの各特徴と、クラス情報と、を配置してなる前記分類テーブルにより前記パターンを分類し、前記特徴抽出手段は、前記特徴のセットを用いて、前記入力パターンの各特徴を算出し、前記診断手段は、前記算出結果及び前記分類テーブルに基いて、前記入力パターンを診断することを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、学習に用いる病理画像から腫瘍を中心としたイメージを切り出し、学習パターンとして入力する学習パターン入力手段と、クラス情報が付された前記学習パターンを記憶保持する学習パターン記憶手段と、複数の特徴候補を生成する特徴候補生成手段と、前記特徴候補生成手段によって生成される特徴候補の中から診断に適した特徴のセットを決定する特徴決定手段と、前記特徴決定手段により決定されている特徴のセットを記憶保持する特徴記憶手段と、分類テーブルを作成する分類テーブル作成手段と、診断する病理画像から腫瘍候補を中心としたイメージを切り出し、入力パターンとして入力するパターン入力手段と、前記入力パターンから特徴を抽出する特徴抽出手段と、前記特徴に基いて診断する診断手段とを有する病理診断支援装置において、前記特徴決定手段は、前記学習パターンを特徴の値に応じて遷移させるべき、予め定めた個数の集合を用意し、前記各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴を計算して、前記学習パターン集合のクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの最初の特徴として決定し、前記各学習パターンを、決定した特徴に応じた重みを付けて、分配するとともに、決定した特徴に対応する集合に、順次、遷移させ、前記各学習パターンが含まれる集合についての情報と、決定されている特徴とが既知であるとの条件の下で、各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴と、前記各学習パターンのクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの次なる特徴として、順次、決定し、前記分類テーブル作成手段が、前記特徴のセットを用いて、前記各学習パターンの各特徴を計算し、前記各学習パターンの各特徴と、クラス情報と、を配置してなる前記分類テーブルにより前記学習パターンを分類し、前記特徴抽出手段は、前記特徴のセットを用いて、前記入力パターンの各特徴を算出し、前記診断手段は、前記入力パターンの各特徴と、前記特徴のセットの各特徴の決定の際に前記学習パターンが属する集合を逐次記録してなる遷移テーブルと、に基いて前記入力パターンの遷移を行って、前記遷移の結果、前記入力パターンが属する集合に基いて前記入力パターンを診断することを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、学習に用いる病理画像から腫瘍を中心としたイメージを切り出し、学習パターンとして入力する学習パターン入力手段と、クラス情報が付された前記学習パターンを記憶保持する学習パターン記憶手段と、複数の特徴候補を生成する特徴候補生成手段と、前記特徴候補生成手段によって生成される特徴候補の中から診断に適した特徴のセットを決定する特徴決定手段と、前記特徴決定手段により決定されている特徴のセットを記憶保持する特徴記憶手段と、分類テーブルを作成する分類テーブル作成手段と、診断する病理画像から腫瘍候補を中心としたイメージを切り出し、入力パターンとして入力するパターン入力手段と、前記入力パターンから特徴を抽出する特徴抽出手段と、前記特徴に基いて診断する診断手段とを有する病理診断支援装置において、前記特徴決定手段は、前記学習パターンを特徴の値に応じて遷移させるべき、予め定めた個数の集合を用意し、前記各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴を計算して、前記学習パターン集合のクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの最初の特徴として決定し、前記各学習パターンを、決定した特徴に応じた重みを付けて、分配するとともに、決定した特徴に対応する集合に、順次、遷移させ、前記各学習パターンが含まれる集合についての情報と、決定されている特徴とが既知であるとの条件の下で、各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴と、前記各学習パターンのクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの次なる特徴として、順次、決定し、前記分類テーブル作成手段が、前記特徴のセットを用いて、前記各学習パターンの各特徴を計算し、前記各学習パターンの各特徴と、クラス情報と、を配置してなる前記分類テーブルにより前記学習パターンを分類し、前記特徴抽出手段は、前記特徴のセットを用いて、該順位の特徴が予め定めた値となる確率を示している、前記入力パターンの各特徴を算出し、前記診断手段は、前記入力パターンの各特徴と、前記特徴のセットの各特徴の決定の際に前記学習パターンが属する集合を逐次記録してなる遷移テーブルと、に基いて前記入力パターンが予め定められたクラス情報を有する確率を算出し、診断することを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項記載の病理診断支援装置において、前記学習パターン入力手段及び前記パターン入力手段は、染色された前記病理画像中の各画素のRGB値から、予め設定された腫瘍細胞核が属する色領域に属する画素を選択し、前記色領域の分布の中心と前記色領域に属する各画素との距離を算出し、前記距離に応じて前記各画素に信号を付与し、前記病理画像中における前記信号の分布からピークを検出し、前記ピークを中心としたイメージを前記学習パターンとして入力することを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項記載の病理診断支援装置において、前記特徴候補生成手段が生成する特徴候補には、複素ガボール関数を特徴抽出関数から得られる特徴候補が含まれることを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項記載の病理診断支援装置において、前記特徴候補生成手段が生成する特徴候補には、複素ガボール関数を規格化した特徴抽出関数から得られる特徴候補が含まれることを特徴とする。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項1から6のいずれか1項記載の病理診断支援装置において、前記特徴候補生成手段が生成する特徴候補には、腫瘍の色を識別する特徴候補が含まれることを特徴とする。
【0020】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の病理診断支援装置において、前記特徴決定手段は、前記学習パターン入力手段によって算出された前記学習パターンに含まれる前記各画素の信号と、予め設定された閾値とを比較することを特徴とする。
【0021】
請求項9記載の発明は、請求項7記載の病理診断支援装置において、前記特徴決定手段は、前記学習パターン入力手段によって算出された前記学習パターンに含まれる前記各画素の信号と、前記各画素近傍に位置する画素の信号の平均値とを比較することを特徴とする。
【0022】
請求項10記載の発明は、請求項5、6、又は9記載の病理診断支援装置において、前記特徴決定手段は、前記各学習パターンに対して、前記特徴候補毎に予め定められたノイズパラメータによる操作を加えることを特徴とする。
【0023】
請求項11記載の発明は、請求項5、6、又は9記載の病理診断支援装置において、前記特徴決定手段は、前記各特徴候補に対応する前記各学習パターンの特徴として、前記各学習パターンの特徴が、予め定めた値をとる確率を計算することを特徴とする。
【0024】
請求項12記載の発明は、請求項1から11のいずれか1項記載の病理診断支援装置において、前記特徴の値に関らず、前記学習パターンを分類できるとき、前記分類テーブル作成手段は、前記分類テーブルの対応する位置に、前記特徴の値に代えて冗長項を置くことを特徴とする。
【0025】
請求項13記載の発明は、請求項1から12のいずれか1項記載の病理診断支援装置において、前記入力パターンの各特徴は、該順位の特徴が予め定めた値となる確率の値であって、前記診断手段は、前記各特徴を用いて、前記分類テーブルに含まれる各特徴パターンが予め定めたクラス情報の値となる確率を計算して判定を行うことを特徴とする。
【0026】
請求項14記載の発明は、学習に用いる病理画像から腫瘍を中心としたイメージを切り出し、学習パターンとして入力する学習パターン入力手段と、クラス情報が付された前記学習パターンを記憶保持する学習パターン記憶手段と、複数の特徴候補を生成する特徴候補生成手段と、前記特徴候補生成手段によって生成される特徴候補の中から診断に適した特徴のセットを決定する特徴決定手段と、前記特徴決定手段により決定されている特徴のセットを記憶保持する特徴記憶手段と、分類テーブルを作成する分類テーブル作成手段と、診断する病理画像から腫瘍候補を中心としたイメージを切り出し、入力パターンとして入力するパターン入力手段と、前記入力パターンから特徴を抽出する特徴抽出手段と、前記特徴に基いて診断する診断手段とを有する病理診断支援装置の病理診断支援プログラムであって、前記特徴決定手段が、前記各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴を計算して、前記学習パターン集合のクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの最初の特徴として決定し、決定した特徴が既知であるとの条件の下で、各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴と、前記各学習パターンのクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの次なる特徴として、順次、決定する処理と、前記分類テーブル作成手段が、前記特徴のセットを用いて、前記各学習パターンの各特徴を計算し、前記各学習パターンの各特徴と、クラス情報と、を配置してなる前記分類テーブルにより前記パターンを分類する処理と、前記特徴抽出手段が、前記特徴のセットを用いて、前記入力パターンの各特徴を算出する処理と、前記診断手段が、前記算出結果及び前記分類テーブルに基いて、前記入力パターンを診断する処理とを有することを特徴とする。
【0027】
請求項15記載の発明は、学習に用いる病理画像から腫瘍を中心としたイメージを切り出し、学習パターンとして入力する学習パターン入力手段と、クラス情報が付された前記学習パターンを記憶保持する学習パターン記憶手段と、複数の特徴候補を生成する特徴候補生成手段と、前記特徴候補生成手段によって生成される特徴候補の中から診断に適した特徴のセットを決定する特徴決定手段と、前記特徴決定手段により決定されている特徴のセットを記憶保持する特徴記憶手段と、分類テーブルを作成する分類テーブル作成手段と、診断する病理画像から腫瘍候補を中心としたイメージを切り出し、入力パターンとして入力するパターン入力手段と、前記入力パターンから特徴を抽出する特徴抽出手段と、前記特徴に基いて診断する診断手段とを有する病理診断支援装置の病理診断支援プログラムであって、前記特徴決定手段が、前記学習パターンを特徴の値に応じて遷移させるべき、予め定めた個数の集合を用意し、前記各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴を計算して、前記学習パターン集合のクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの最初の特徴として決定し、前記各学習パターンを、決定した特徴に応じた重みを付けて、分配するとともに、決定した特徴に対応する集合に、順次、遷移させ、前記各学習パターンが含まれる集合についての情報と、決定されている特徴とが既知であるとの条件の下で、各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴と、前記各学習パターンのクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの次なる特徴として、順次、決定する処理と、前記分類テーブル作成手段が、前記特徴のセットを用いて、前記各学習パターンの各特徴を計算し、前記各学習パターンの各特徴と、クラス情報と、を配置してなる前記分類テーブルにより前記学習パターンを分類する処理と、前記特徴抽出手段が、前記特徴のセットを用いて、前記入力パターンの各特徴を算出する処理と、前記診断手段が、前記入力パターンの各特徴と、前記特徴のセットの各特徴の決定の際に前記学習パターンが属する集合を逐次記録してなる遷移テーブルと、に基いて前記入力パターンの遷移を行って、前記遷移の結果、前記入力パターンが属する集合に基いて前記入力パターンを診断する処理とを有することを特徴とする。
【0028】
請求項16記載の発明は、学習に用いる病理画像から腫瘍を中心としたイメージを切り出し、学習パターンとして入力する学習パターン入力手段と、クラス情報が付された前記学習パターンを記憶保持する学習パターン記憶手段と、複数の特徴候補を生成する特徴候補生成手段と、前記特徴候補生成手段によって生成される特徴候補の中から診断に適した特徴のセットを決定する特徴決定手段と、前記特徴決定手段により決定されている特徴のセットを記憶保持する特徴記憶手段と、分類テーブルを作成する分類テーブル作成手段と、診断する病理画像から腫瘍候補を中心としたイメージを切り出し、入力パターンとして入力するパターン入力手段と、前記入力パターンから特徴を抽出する特徴抽出手段と、前記特徴に基いて診断する診断手段とを有する病理診断支援装置の病理診断支援プログラムであって、前記特徴決定手段は、前記学習パターンを特徴の値に応じて遷移させるべき、予め定めた個数の集合を用意し、前記各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴を計算して、前記学習パターン集合のクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの最初の特徴として決定し、前記各学習パターンを、決定した特徴に応じた重みを付けて、分配するとともに、決定した特徴に対応する集合に、順次、遷移させ、前記各学習パターンが含まれる集合についての情報と、決定されている特徴とが既知であるとの条件の下で、各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴と、前記各学習パターンのクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの次なる特徴として、順次、決定する処理と、前記分類テーブル作成手段が、前記特徴のセットを用いて、前記各学習パターンの各特徴を計算し、前記各学習パターンの各特徴と、クラス情報と、を配置してなる前記分類テーブルにより前記学習パターンを分類する処理と、前記特徴抽出手段は、前記特徴のセットを用いて、該順位の特徴が予め定めた値となる確率を示している、前記入力パターンの各特徴を算出する処理と、前記診断手段は、前記入力パターンの各特徴と、前記特徴のセットの各特徴の決定の際に前記学習パターンが属する集合を逐次記録してなる遷移テーブルと、に基いて前記入力パターンが予め定められたクラス情報を有する確率を算出し、診断する処理とを有することを特徴とする。
【0029】
請求項17記載の発明は、請求項14から16のいずれか1項記載の病理診断支援プログラムにおいて、前記学習パターン入力手段及び前記パターン入力手段は、染色された前記病理画像中の各画素のRGB値から、予め設定された腫瘍細胞核が属する色領域に属する画素を選択する処理と、前記色領域の分布の中心と前記色領域に属する各画素との距離を算出する処理と、前記距離に応じて前記各画素に信号を付与する処理と、前記病理画像中における前記信号の分布からピークを検出する処理と、前記ピークを中心としたイメージを前記学習パターンとして入力する処理とを有することを特徴とする。
【0030】
請求項18記載の発明は、請求項14から17のいずれか1項記載の病理診断支援プログラムにおいて、前記特徴候補生成手段が生成する特徴候補には、複素ガボール関数を特徴抽出関数から得られる特徴候補が含まれることを特徴とする。
【0031】
請求項19記載の発明は、請求項14から17のいずれか1項記載の病理診断支援プログラムにおいて、前記特徴候補生成手段が生成する特徴候補には、複素ガボール関数を規格化した特徴抽出関数から得られる特徴候補が含まれることを特徴とする。
【0032】
請求項20記載の発明は、請求項14から19のいずれか1項記載の病理診断支援プログラムにおいて、前記特徴候補生成手段が生成する特徴候補には、腫瘍の色を識別する特徴候補が含まれることを特徴とする。
【0033】
請求項21記載の発明は、請求項20記載の病理診断支援プログラムにおいて、前記特徴決定手段は、前記学習パターン入力手段によって算出された前記学習パターンに含まれる前記各画素の信号と、予め設定された閾値とを比較する処理を有することを特徴とする。
【0034】
請求項22記載の発明は、請求項20記載の病理診断支援プログラムにおいて、前記特徴決定手段は、前記学習パターン入力手段によって算出された前記学習パターンに含まれる前記各画素の信号と、前記各画素近傍に位置する画素の信号の平均値とを比較する処理を有することを特徴とする。
【0035】
請求項23記載の発明は、請求項18、19、又は22記載の病理診断支援プログラムにおいて、前記特徴決定手段は、前記各学習パターンに対して、前記特徴候補毎に予め定められたノイズパラメータによる操作を加える処理を有することを特徴とする。
【0036】
請求項24記載の発明は、請求項18、19、又は22記載の病理診断支援プログラムにおいて、前記特徴決定手段は、前記各特徴候補に対応する前記各学習パターンの特徴として、前記各学習パターンの特徴が、予め定めた値をとる確率を計算する処理を有することを特徴とする。
【0037】
請求項25記載の発明は、請求項14から24のいずれか1項記載の病理診断支援プログラムにおいて、前記特徴の値に関らず、前記学習パターンを分類できるとき、前記分類テーブル作成手段は、前記分類テーブルの対応する位置に、前記特徴の値に代えて冗長項を置く処理を有することを特徴とする。
【0038】
請求項26記載の発明は、請求項14又は25のいずれか1項記載の病理診断支援プログラムにおいて、前記入力パターンの各特徴は、該順位の特徴が予め定めた値となる確率の値であって、前記診断手段は、前記各特徴を用いて、前記分類テーブルに含まれる各特徴パターンが予め定めたクラス情報の値となる確率を計算して判定を行う処理を有することを特徴とする。
【0039】
請求項27記載の発明は、学習に用いる病理画像から腫瘍を中心としたイメージを切り出し、学習パターンとして入力する学習パターン入力手段と、クラス情報が付された前記学習パターンを記憶保持する学習パターン記憶手段と、複数の特徴候補を生成する特徴候補生成手段と、前記特徴候補生成手段によって生成される特徴候補の中から診断に適した特徴のセットを決定する特徴決定手段と、前記特徴決定手段により決定されている特徴のセットを記憶保持する特徴記憶手段と、分類テーブルを作成する分類テーブル作成手段と、診断する病理画像から腫瘍候補を中心としたイメージを切り出し、入力パターンとして入力するパターン入力手段と、前記入力パターンから特徴を抽出する特徴抽出手段と、前記特徴に基いて診断する診断手段とを有する病理診断支援装置の病理診断支援方法であって、前記特徴決定手段が、前記各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴を計算して、前記学習パターン集合のクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの最初の特徴として決定し、決定した特徴が既知であるとの条件の下で、各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴と、前記各学習パターンのクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの次なる特徴として、順次、決定する工程と、前記分類テーブル作成手段が、前記特徴のセットを用いて、前記各学習パターンの各特徴を計算し、前記各学習パターンの各特徴と、クラス情報と、を配置してなる前記分類テーブルにより前記パターンを分類する工程と、前記特徴抽出手段が、前記特徴のセットを用いて、前記入力パターンの各特徴を算出する工程と、前記診断手段が、前記算出結果及び前記分類テーブルに基いて、前記入力パターンを診断する工程とを有することを特徴とする。
【0040】
請求項28記載の発明は、学習に用いる病理画像から腫瘍を中心としたイメージを切り出し、学習パターンとして入力する学習パターン入力手段と、クラス情報が付された前記学習パターンを記憶保持する学習パターン記憶手段と、複数の特徴候補を生成する特徴候補生成手段と、前記特徴候補生成手段によって生成される特徴候補の中から診断に適した特徴のセットを決定する特徴決定手段と、前記特徴決定手段により決定されている特徴のセットを記憶保持する特徴記憶手段と、分類テーブルを作成する分類テーブル作成手段と、診断する病理画像から腫瘍候補を中心としたイメージを切り出し、入力パターンとして入力するパターン入力手段と、前記入力パターンから特徴を抽出する特徴抽出手段と、前記特徴に基いて診断する診断手段とを有する病理診断支援装置の病理診断支援方法であって、前記特徴決定手段が、前記学習パターンを特徴の値に応じて遷移させるべき、予め定めた個数の集合を用意し、前記各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴を計算して、前記学習パターン集合のクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの最初の特徴として決定し、前記各学習パターンを、決定した特徴に応じた重みを付けて、分配するとともに、決定した特徴に対応する集合に、順次、遷移させ、前記各学習パターンが含まれる集合についての情報と、決定されている特徴とが既知であるとの条件の下で、各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴と、前記各学習パターンのクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの次なる特徴として、順次、決定する工程と、前記分類テーブル作成手段が、前記特徴のセットを用いて、前記各学習パターンの各特徴を計算し、前記各学習パターンの各特徴と、クラス情報と、を配置してなる前記分類テーブルにより前記学習パターンを分類する工程と、前記特徴抽出手段が、前記特徴のセットを用いて、前記入力パターンの各特徴を算出する工程と、前記診断手段が、前記入力パターンの各特徴と、前記特徴のセットの各特徴の決定の際に前記学習パターンが属する集合を逐次記録してなる遷移テーブルと、に基いて前記入力パターンの遷移を行って、前記遷移の結果、前記入力パターンが属する集合に基いて前記入力パターンを診断する工程とを有することを特徴とする。
【0041】
請求項29記載の発明は、学習に用いる病理画像から腫瘍を中心としたイメージを切り出し、学習パターンとして入力する学習パターン入力手段と、クラス情報が付された前記学習パターンを記憶保持する学習パターン記憶手段と、複数の特徴候補を生成する特徴候補生成手段と、前記特徴候補生成手段によって生成される特徴候補の中から診断に適した特徴のセットを決定する特徴決定手段と、前記特徴決定手段により決定されている特徴のセットを記憶保持する特徴記憶手段と、分類テーブルを作成する分類テーブル作成手段と、診断する病理画像から腫瘍候補を中心としたイメージを切り出し、入力パターンとして入力するパターン入力手段と、前記入力パターンから特徴を抽出する特徴抽出手段と、前記特徴に基いて診断する診断手段とを有する病理診断支援装置の病理診断支援方法であって、前記特徴決定手段は、前記学習パターンを特徴の値に応じて遷移させるべき、予め定めた個数の集合を用意し、前記各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴を計算して、前記学習パターン集合のクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの最初の特徴として決定し、前記各学習パターンを、決定した特徴に応じた重みを付けて、分配するとともに、決定した特徴に対応する集合に、順次、遷移させ、前記各学習パターンが含まれる集合についての情報と、決定されている特徴とが既知であるとの条件の下で、各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴と、前記各学習パターンのクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの次なる特徴として、順次、決定する工程と、前記分類テーブル作成手段が、前記特徴のセットを用いて、前記各学習パターンの各特徴を計算し、前記各学習パターンの各特徴と、クラス情報と、を配置してなる前記分類テーブルにより前記学習パターンを分類する工程と、前記特徴抽出手段は、前記特徴のセットを用いて、該順位の特徴が予め定めた値となる確率を示している、前記入力パターンの各特徴を算出する工程と、前記診断手段は、前記入力パターンの各特徴と、前記特徴のセットの各特徴の決定の際に前記学習パターンが属する集合を逐次記録してなる遷移テーブルと、に基いて前記入力パターンが予め定められたクラス情報を有する確率を算出し、診断する工程とを有することを特徴とする。
【0042】
請求項30記載の発明は、請求項27から29のいずれか1項記載の病理診断支援方法において、前記学習パターン入力手段及び前記パターン入力手段は、染色された前記病理画像中の各画素のRGB値から、予め設定された腫瘍細胞核が属する色領域に属する画素を選択する工程と、前記色領域の分布の中心と前記色領域に属する各画素との距離を算出する工程と、前記距離に応じて前記各画素に信号を付与する工程と、前記病理画像中における前記信号の分布からピークを検出する工程と、前記ピークを中心としたイメージを前記学習パターンとして入力する工程とを有することを特徴とする。
【0043】
請求項31記載の発明は、請求項27から30のいずれか1項記載の病理診断支援方法において、前記特徴候補生成手段が生成する特徴候補には、複素ガボール関数を特徴抽出関数から得られる特徴候補が含まれることを特徴とする。
【0044】
請求項32記載の発明は、請求項27から30のいずれか1項記載の病理診断支援方法において、前記特徴候補生成手段が生成する特徴候補には、複素ガボール関数を規格化した特徴抽出関数から得られる特徴候補が含まれることを特徴とする。
【0045】
請求項33記載の発明は、請求項27から32のいずれか1項記載の病理診断支援方法において、前記特徴候補生成手段が生成する特徴候補には、腫瘍の色を識別する特徴候補が含まれることを特徴とする。
【0046】
請求項34記載の発明は、請求項33記載の病理診断支援方法において、前記特徴決定手段は、前記学習パターン入力手段によって算出された前記学習パターンに含まれる前記各画素の信号と、予め設定された閾値とを比較する工程を有することを特徴とする。
【0047】
請求項35記載の発明は、請求項33記載の病理診断支援方法において、前記特徴決定手段は、前記学習パターン入力手段によって算出された前記学習パターンに含まれる前記各画素の信号と、前記各画素近傍に位置する画素の信号の平均値とを比較する工程を有することを特徴とする。
【0048】
請求項36記載の発明は、請求項31、32、又は35記載の病理診断支援方法において、前記特徴決定手段は、前記各学習パターンに対して、前記特徴候補毎に予め定められたノイズパラメータによる操作を加える工程を有することを特徴とする。
【0049】
請求項37記載の発明は、請求項31、32、又は35記載の病理診断支援方法において、前記特徴決定手段は、前記各特徴候補に対応する前記各学習パターンの特徴として、前記各学習パターンの特徴が、予め定めた値をとる確率を計算する工程を有することを特徴とする。
【0050】
請求項38記載の発明は、請求項27から37のいずれか1項記載の病理診断支援方法において、前記特徴の値に関らず、前記学習パターンを分類できるとき、前記分類テーブル作成手段は、前記分類テーブルの対応する位置に、前記特徴の値に代えて冗長項を置く工程を有することを特徴とする。
【0051】
請求項39記載の発明は、請求項27から38のいずれか1項記載の病理診断支援方法において、前記入力パターンの各特徴は、該順位の特徴が予め定めた値となる確率の値であって、前記診断手段は、前記各特徴を用いて、前記分類テーブルに含まれる各特徴パターンが予め定めたクラス情報の値となる確率を計算して判定を行う工程を有することを特徴とする。
【0052】
請求項40記載の発明は、病理画像に患者固有の情報が付加された病理画像データを保持する情報処理端末と、前記病理画像データを診断する病理診断サーバとを有する病理診断支援システムにおいて、前記病理診断サーバは、前記病理画像データが有する前記病理画像を診断する請求項1から13のいずれか1項記載の病理診断支援装置と、前記病理診断支援装置による診断結果を前記患者固有の情報とともに記憶する診断結果記憶手段とを有し、前記情報処理端末は、前記患者固有の情報を伴って前記診断結果の送信を要求し、前記病理診断サーバは、前記情報処理端末から受信した前記患者固有の情報と前記診断結果とともに記憶された前記患者固有の情報とを比較し、前記情報処理端末から受信した前記患者固有の情報と前記診断結果とともに記憶された前記患者固有の情報とが一致したとき、前記診断結果を前記情報処理端末に送信することを特徴とする。
【0053】
請求項41記載の発明は、請求項40記載の病理診断支援システムにおいて、前記病理診断支援装置及び前記情報処置端末の使用料金を保持する課金サーバを有することを特徴とする。
【0054】
請求項42記載の発明は、請求項41記載の病理診断支援システムにおいて、前記課金サーバは、前記診断結果記憶手段に前記診断結果が記憶されたとき、前記病理診断支援装置の使用料金を加算することを特徴とする。
【0055】
請求項43記載の発明は、請求項41又は42記載の病理診断支援システムにおいて、前記課金サーバは、前記情報処理端末が前記診断結果を受信したとき、前記情報処理端末の使用料金を加算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0056】
本発明は、腫瘍の性質が良性なのか悪性なのかの識別に細胞核、その周辺組織等の変化が重要であることを考慮し、病理画像から細胞核、空孔、細胞質、間質等を中心とするサブイメージを抽出し、サブイメージを学習パターン及び入力パターンとして記憶することにより、サブイメージに基づいて高精度かつ短時間で腫瘍の有無、及び腫瘍の良性・悪性を判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下に、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0058】
図1は、本実施形態に係る病理診断支援装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように本実施形態に係る病理診断支援装置は、学習パターン入力手段100、学習パターン記憶手段101、特徴候補生成手段102、特徴決定手段103、特徴記憶手段104、分類テーブル作成手段105、及び分類テーブル106を有している。
【0059】
学習パターン入力手段100は、診断を行う病理画像から細胞核、空孔、細胞質、間質等を中心とするサブイメージを抽出し、該サブイメージを学習パターン記憶手段101に格納する。
【0060】
学習パターン記憶手段101は、所望の個数の学習に用いるサブイメージを記憶保持する手段である。
【0061】
特徴候補生成手段102は、予め定めた個数の特徴パラメータセットから特徴候補を順次生成する手段である。
【0062】
特徴決定手段103は、特徴候補生成手段102によって生成された特徴候補の中からパターン識別に最適な特徴のセットを決定する手段である。
【0063】
特徴記憶手段104は、特徴決定手段103により決定される特徴のセットを記憶保持する手段である。
【0064】
分類テーブル作成手段105は、特徴決定手段103により決定される特徴のセットを用いて診断を行うための分類テーブル106を作成する手段である。
【0065】
次に、図2を参照して特徴選択処理の手順について説明する。図2は、本実施形態に係る病理診断支援装置の特徴選択処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【0066】
特徴候補生成手段102が予め設定しておく大量の(N個とする)特徴パラメータセットに基づいて特徴候補を順次生成する(S001)。本実施形態においては、上記N個の特徴パラメータセットのうち、1〜N_1のパラメータセットをテクスチャに関連する特徴候補とし、N_1+1〜N_1+N_2のパラメータセットを色に関連する特徴候補とし、N_1+N_2+1〜Nのパラメータセットを周辺の画素で平均化した色に関連する特徴候補とした。なお、ここでは、テクスチャに関連する特徴候補、色に関連する特徴候補、及び周辺の画素で平均化された色に関連する特徴候補を特徴候補として採用したが、これに限られるものではなく、病理画像に含まれる画素の特徴を決定するために必要な要素を特徴候補として生成することができる。
【0067】
次に、特徴候補生成手段102において生成された特徴候補に基づいて、サブイメージが有する特徴を決定する方法について説明する。この特徴は、以下に示す手順1から3のいずれかにより決定される。
【0068】
手順1
特徴候補生成手段102は、まず、s番目(s=1〜N、s=1からスタートする)の特徴パラメータセットを読み出し、s≦N_1であった場合には、s番目の特徴パラメータセット(k_s、r0_s、σ_s、th_s)を(k、r0、σ、th)に代入し、パラメータk、r0、σで規定される次式に例示する複素ガボール関数Gab、及びガウス関数Gを生成する。なお、s≦N_1の場合、学習パターンとして学習パターン記憶手段101に記憶されているカラーのサブイメージをグレースケール変換したグレースケール画像を用いて特徴cを算出する。
【0069】
【数1】

【0070】
ここで、r=(x、y)は位置ベクトルを表し、i2=−1である。そして、特徴候補生成手段102は、(1)式の複素ガボール関数Gabとガウス関数Gとを、しきい値パラメータth、及び特徴候補の識別番号sとともに特徴決定手段103に送る(ステップS002)。
【0071】
学習パターン記憶手段101は、予め定めたM通りのサブイメージI_t(r,i_rgb)(t=1〜M)と、各サブイメージが属するクラスqt(t=1〜M)との組を特徴決定手段103に対して送る(ステップS003)。なお、本実施形態においては、説明を簡単にするためクラスは、2クラス(q=0又は1)であるものとして説明する。もちろん、3クラス以上の場合にも本発明の方法は適用できる。
【0072】
特徴決定手段103は、学習イメージ記憶手段101から順次受け取ったサブイメージに対して、特徴候補((1)式に示した複素ガボール関数及びガウス関数並びにその他のパラメータ)を用いて特徴cを(2)式に従って計算する(ステップS004)。ここでt番目の学習パターンをI_t(r,i_rgb)とし、すべての学習パターン(M個)について上記計算が繰り返される。
【0073】
【数2】

【0074】
(2)式の上段の式の分母はパターンの大きさ(画像の輝度)によるaの値の変動を抑えるための規格化(標準化)因子である。該分母の式は、別の形式の規格化因子に置き換えることも可能である。また、取り扱うパターンによっては、このような規格化因子を省いてもよい。
【0075】
手順2
特徴候補生成手段102は、まず、s番目(s=1〜N、s=1からスタートする)の特徴パラメータセットを読み出し、N_1+1≦s≦N_1+N_2であった場合には、s番目の特徴パラメータセット(x_s、y_s、color_index)及び特徴候補の識別番号sを特徴決定手段103に送る(ステップS002)。
【0076】
ここで、(x_s、y_s)は、サブイメージ中の特徴cを決定する画素の位置を表し、color_index(=1〜4)は、特徴cに対応する色を表している。
【0077】
なお、color_index(=1〜4)は、以下のように色と対応付けられている。
【0078】
HE染色(ヘマトキシレン−エオジン染色)された細胞核の色(青)、細胞質の色(ピンク)、間質の色(薄いピンク)、空孔の色(白)は、病理画像を特徴づける上で重要な要素である。そこで、細胞核の色、細胞質の色、間質の色、空孔の色、それぞれにcolor_index=1、2、3、4とインデックスを割りふる。
【0079】
学習パターン記憶手段101は、予め定めたM通りの学習パターン(カラーサブイメージ)I_t(r、irgb)(rは画素の座標、i_rgb=1〜3は画像のr信号、g信号、b信号を指定するパラメータ)(t=1〜M)と、各学習パターンが属するクラスqt(t=1〜M)との組を特徴決定手段103に対して送る(ステップS003)。なお、本実施形態においては、説明を簡単にするためクラスは、2クラス(q=0又は1)であるものとして説明する。もちろん、3クラス以上の場合にも本発明の方法は適用可能である。
【0080】
特徴決定手段103は、学習パターン記憶手段101から受け取った学習パターンについて(ステップS003)、以下の方法により学習パターン中の位置(x_s、y_s)に位置する画素の色を判定し、それがパラメータcolor_indexで指定される色と一致する場合には特徴cの値を1とし、それ以外の場合には特徴cの値を0とする(ステップS004)。ここで、t番目の学習パターンをI_t(r、i_rgb)とし、全ての学習パターン(M個)に対して特徴cの決定が繰り返される。
【0081】
細胞核の色(color_index=1)は、サブイメージの検出において算出した各画素のヘマトキシレン信号を予め定めた閾値(例えば、0.25)と比較し、閾値よりも大きい場合は、その画素の色は細胞核の色であると判断する。ここで、閾値を適応的に決定するために、注目する画素の近傍でヘマトキシレン信号の値が、例えば0.25以上である画素に関してのみヘマトキシレン信号の値を加算し、その平均値を求める。そして、その平均値の例えば0.9倍を注目する画素の閾値とし、この閾値よりも注目する画素のヘマトキシレン信号値が大きい場合には、その画素の色は細胞核の色である判断する構成であってもよい。
【0082】
細胞核の以外の空孔、細胞質、間質の色は予め定めた色領域に従って分類する。例えば、各画素のRGB値にHSV変換を施し、RGB値を色相(H:0〜1)、彩度(S:0〜1)、明度(V:0〜1)の値に変換する。そして、注目する画素が細胞核の色に分類されておらず、明度がV>0.92、かつ彩度がS<0.2の場合にはその画素の色は空孔の色(color_index=2)と判断する。また、その画素の色が細胞核の色及び空孔の色のいずれにも該当せず、色相がH<0.9、かつ明度がV<0.85の場合には細胞質の色(color_index=3)であると判断する。そして、上記いずれにも該当しなかった場合は、その画素の色を間質の色(color_index=4)と判断する。
【0083】
手順3
特徴候補生成手段102は、まず、s番目(s=1〜N、s=1からスタートする)の特徴パラメータセットを読み出し、N_1+N_2+1≦s≦Nであった場合には、s番目の特徴パラメータセット(x_s、y_s、color_index、th_s)及び特徴候補の識別番号sを特徴決定手段103に送る(ステップS002)。なお、ここで、(x_s、y_s)は、サブイメージ中の特徴cを決定する画素の位置を表し、color_index(=1〜4)は、特徴cに対する色を表し、thは閾値パラメータを表している。
【0084】
特徴決定手段103は、学習パターン記憶手段101から受け取った学習パターンについて(ステップS003)、以下の方法により特徴cを決定する(ステップS004)。ここで、t番目の学習パターンをI_t(r、i_rgb)とし、全ての学習パターン(M個)に対して特徴cの決定が繰り返される。
【0085】
なお、以下では、注目する画素の色がcolor_index(=1〜4)に該当する色であると判断する処理は、手順2と同様であるため説明を省略する。
【0086】
まず、特徴決定手段103は、サブイメージの位置(x_s、y_s)の近傍の画素(例えば、注目する画素(x_s、y_s)からx座標、y座標へ2画素以内にある画素(x'、y')、つまり|x−x'|≦2かつ|y−y'|≦2の色がcolor_indexで指定されている色と一致しているか否かを調べる。そして、color_indexで指定される色と一致している色を持つ近傍の画素数を加算し、それを近傍の画素の総数で割り、平均値を求める。そして、その平均値が閾値パラメータ(th_s)を越えていれば、特徴cは1をとり、それ以外は0をとる。
【0087】
特徴決定手段103は、上述の3つの手順に加え、以下の方法によって注目する画素の特徴cを決定することもできる。
【0088】
まず、注目する画素が含まれるサブイメージの各画素のRGB値にHSV変換を施し、RGB値を色相(H:0〜1)、彩度(S:0〜1)、明度(V:0〜1)の値に変換する。次に、H、S、Vの値を、例えば5段階に粗視化する。例えば注目する画素のH、S、Vの値がすべて0.2=1/5以下であればその画素の色を(1、1、1)とする。または、H、Sの値が0.2以下でVの値が0.2<V≦0.4であれば注目する画素の色は(1、1、2)とする。ここで、特徴パラメータセットとして特徴候補生成手段102から受け取った(x、y、H'、S'、V')で指定されるサブイメージ中の位置(x、y)の画素の色が(H'、S'、V')である場合に特徴cは1をとり、それ以外の場合には0をとる。
【0089】
以上のように、s番目の特徴候補(特徴パラメータセット)を用いて、各サブイメージに対して特徴cが計算されると、特徴決定手段103は、s番目の特徴候補から得られる相互情報量MIを(3)式に従って算出し、これを特徴候補の識別番号sとともに記憶する(ステップS005)。
【0090】
【数3】

【0091】
なお、ここで、Qはクラスの集合{q=0、q=1}であり、Mはサブイメージの総数である。また、M(q)はクラスqに属するサブイメージの総数、M(c)は特徴がcであるサブイメージの総数、M(q、c)は特徴がcでありかつクラスqに属するサブイメージの総数である。
【0092】
また、(3)式中の<>cはcに関する平均化操作であり、(4)式によって算出される
【0093】
【数4】

【0094】
以上の処理に従って、次の(s+1)番目の特徴候補が特徴候補生成手段102から送られ同様の処理が繰り返される(ステップS002〜S005)。こうして全ての(N個)の特徴候補に対応する相互情報量MIの計算が完了した時点で、特徴決定手段103は各特徴候補から得られる相互情報量MIを比較し、最大の相互情報量Max MI[Q;C]が得られる特徴候補を決定すべき特徴のセットの第1番目の特徴として決定する(ステップS006)。
【0095】
こうして第1番目の特徴が決定されると、特徴決定手段103は、第2番目の特徴を決定する。上記と全く同様に、特徴決定手段103は特徴候補を特徴候補生成手段102から順次受け取り(ステップS002)、各サブイメージに対して特徴cを算出する(ステップS003、S004)。なお、使用可能な記憶容量に応じて、上記した第1の特徴を決定する際のステップS004における特徴cの算出結果を記憶保持しておき、特徴決定手段103が該記憶保持内容を読み出す操作に代えても良い。s番目の特徴パラメータセットを用いて、各サブイメージに対して特徴cが計算された時点で、特徴決定手段103は、既に決定されている第1番目の特徴c1が既知であるという条件下で、s番目の特徴候補から得られる相互情報量MI2を(5)式に従って算出し、これを特徴候補の識別番号sとともに記憶しておく(ステップ005)。
【0096】
【数5】

【0097】
なお、ここで、M(c1)は、1番目の特徴がc1であるサブイメージの総数であり、M(q、c1)は、1番目の特徴がc1で、かつクラスqに属するサブイメージの総数である。また、M(c、c1)は、特徴がcで、かつ1番目の特徴がc1であるサブイメージの総数であり、M(q、c、c1)は、特徴がcで、1番目の特徴がc1で、かつクラスqに属するサブイメージの総数である。
【0098】
以上の操作に従って、次の(s+1)番目の特徴候補が特徴候補生成手段102から送られ、同様の操作が繰り返される(ステップS002〜S005)。こうして、全て(N個)の特徴候補に対応する相互情報量MIの算出が済んだ時点で、特徴決定手段103は各特徴候補から得られる条件付きの相互情報量MI2を比較し、最大の情報量が得られる特徴候補を、決定すべき特徴のセットの第2番目の特徴として決定する(ステップS006)。
【0099】
以下同様に、第m番目の特徴までが決定されたら、第(m+1)番目の特徴cは、(6)式の評価関数MIm+1を最大にする特徴候補を採用する。
【0100】
【数6】

【0101】
上記のMIm+1は、第m番目までの特徴(c1、c2、...cm)が既知であるという条件下で、特徴cから得られる情報量を表している。以上の処理は、新しい特徴を選んでも、得られる情報量(追加の情報量)が、予め設定しておく閾値MI_thよりも小さくなるまで続けられる。例えば、閾値MI_thとしてゼロが設定されている場合には、得られる情報量(追加の情報量)がゼロになるまで、即ち、終了条件が満たされるまで、次なる特徴を決定すべく、上記した手順が繰り返される。
【0102】
一方、この終了条件が満たされた時点で特徴決定手順は終了する。そして、決定された特徴のセットの各パラメータは特徴記憶手段104に格納される(ステップS007)。
【0103】
また、上記の特徴選択方法の変形例として、特徴候補生成手段102が生成する特徴候補の数を減らす工夫を加えた、以下の構成が考えられる。例えば、各複素ガボール関数について、(2)式で算出されるaの値のクラス内平均値を、q=0のクラス、q=1のクラスそれぞれに対して予め調べておき、閾値MI_thの値をこれら2つのクラス内平均値の中間値に固定する構成が考えられる。また、例えば、第1番目の特徴の決定する際に(3)式で各複素ガボール関数に対して相互情報量MIを計算するが、この時、各特徴候補に対してそれぞれ最大のMIを与える閾値MI_thを記録しておき、第2番目以降の特徴を決定する場合には閾値MI_thの値をそのまま固定するという構成が挙げられる。
【0104】
また、上記の実施形態では、特徴候補を構成する特徴抽出関数として複素ガボール関数を用いているが、他の特徴抽出関数を加えても、場合によっては他の特徴抽出関数だけで特徴候補を構成してもよい。
【0105】
また、例えば、クラスごとに部分空間を構成し、その部分空間への距離を表す指標を特徴候補に加える変形も好ましい。また、ガウス関数を用いて計算されるある点の近傍の重み付き平均輝度、或はガウス関数を用いて計算されるある点の近傍の重み付き平均輝度を、より広がりの大きいガウス関数を用いて計算される平均輝度で規格化したもの(即ち、ある点の近傍がその周辺よりも明るいか、暗いかを示す指標)を特徴候補に加えることも考えられる。その他、診断で用いられる標準的な特徴を特徴候補に加えることが可能である。
【0106】
特徴の決定処理が完了し、決定されている特徴のセットが特徴記憶手段104に記憶された時点で、パターン識別に用いるための分類テーブル106(図4に示す)の作成が可能となる。以下、所望の手段により起動された分類テーブル作成手段105が、分類テーブル106を作成する処理について説明する。
【0107】
まず、分類テーブル作成手段105は、学習パターン記憶手段101から各サブイメージを、特徴記憶手段104からは、特徴のセットの各パラメータを(以下、全部でn個の特徴が決定されているものとする)受け取り、各サブイメージに対しそれぞれ各特徴の値(c1、c2、...cn)とともに分類テーブル106に記憶する。
【0108】
上記の手順により、各サブイメージを一意に分類する分類テーブルの作成が可能であるが、より好ましくは、冗長項(don't care項)を用いることが好ましい。例えば、先頭からi番目までの特徴の値(c1、c2、...ci)だけで、あるサブイメージの分類が可能である場合には、i+1番目以降の特徴ベクトルの値はdon't careを表す記号に置き換えて記憶する。
【0109】
上記の冗長項(dont't care)を用いて、分類テーブル106を作成する手順について図3を用いて説明する。図3は、本実施形態に係る分類テーブル106の作成処理の手順を示すフローチャートである。
【0110】
まず、分類テーブル作成手段105は、入力されたサブイメージに対して、特徴記憶手段104に記憶されている特徴のセットの各パラメータを用いて、特徴ベクトル(c1、c2、...cn)の値を計算する(ステップS101、S102)。
【0111】
上記特徴ベクトルと一致する特徴ベクトルを有するサブイメージが分類テーブル106中に存在するか否かを判断する(ステップS103)。但し、分類テーブル106にdon't careを表す記号が記されている場合には、それに対応する特徴の値はいかなるものであっても一致するものと見なして判定を行う。
【0112】
前記判断の結果、計算した特徴ベクトルと一致する特徴ベクトルを有するサブイメージが、分類テーブル中に、既に存在する場合は、該サブイメージを記録することなく、ステップS300に戻り、次のサブイメージの入力を行う。
【0113】
一方、一致するサブイメージが無い場合には、インクリメント変数i=1を設定して(ステップS104)、以下の処理を行う。まず、このサブイメージが属するクラス(例:q=0)以外のクラス(例:q=1)に属するサブイメージの中に、1番目からi番目までの特徴(c1、c2、...ci)の全てが、このサブイメージと一致するサブイメージがあるか否かを調べる(ステップS105)。
【0114】
その結果、一致するサブイメージが無い場合には、1番目からi番目までの特徴の値(c1、c2、...ci)をこのサブイメージが属するクラスの標識(例:q=0)とともに分類テーブルに記録し、i+1番目以後の特徴ベクトルの値にはdon't careを表す記号を記録する(ステップS106)。そして、ステップS300に戻り、次のサブイメージの入力を行う。
【0115】
逆に、このサブイメージと一致するサブイメージが1つでもある場合には、インクリメント変数iを1増加してステップS304に戻る。即ち、入力したサブイメージのi番目までの特徴の値により自他識別可能になるまで、iを増加する処理を継続することとなる。
【0116】
以上の処理は、全てのサブイメージを入力するまで繰り返される。なお、以上の手続のみでは、サブイメージの全てが分類できない場合が生じうる。例えば、異なるクラスに属するサブイメージが同じ特徴ベクトルを持つことがある。この場合、それぞれのクラスに属するサブイメージの数を数えて、多いほうのクラスをこの特徴ベクトルが表すクラスと定める等すればよい。
【0117】
もちろん、iを増加させつつ、特徴c1〜ciが一致するパターンをグループ化(細分化)してゆき、1つのグループに1のサブイメージしか存在しない場合に、そのサブイメージのi+1以降の特徴をdon't care項とする方法等も採用し得る。
【0118】
図4は、本発明により採用された分類テーブル106の例である。図4を参照すると、各サブイメージのクラスの識別標識(q)と、特徴ベクトル(c1、c2、...cn)とを格納するテーブルが示されている。なお、図4において記号「*」はdon't careを表す記号である。
【0119】
続いて、図面を参照して、上記の分類テーブルを用いて行う病理画像の診断方法について説明する。
【0120】
図5は、本発明の診断方法の処理の流れを示すブロック図である。図5を参照すると、パターン入力手段201と、特徴抽出手段202と、診断手段203とが示されている。また、特徴抽出手段202の特徴抽出のために用いる、決定済みの特徴のセットを記憶保持する特徴記憶手段104と、診断手段203が診断に用いる、作成済みの分類テーブル106とが示されている。
【0121】
パターン入力手段201は、所望の媒体からサブイメージを入力するための手段である。本実施形態においては、病理組織を構成する細胞の細胞核を中心とした画像(サブイメージ)を入力するための手段である。なお、本実施形態においては、細胞核を中心とした画像を入力したが、これに限定されるものではなく、細胞核、空孔、細胞質、間質等、病理組織の診断において病理医が判断材料として用いる画像をサブイメージとして入力することができる。
【0122】
特徴抽出手段202は、決定された特徴のセットを用いて、パターン入力手段201から送られたサブイメージから、その特徴を抽出する手段である。
【0123】
診断手段203は、特徴抽出手段202により得られた特徴に基づいて、サブイメージの表す情報を診断する手段である。
【0124】
その処理は、まず、パターン入力手段201により得られた特徴に基づいて、サブイメージを取り込んで、特徴抽出手段202に対して送る。
【0125】
続いて、特徴抽出手段202が入力されたサブイメージに対して、特徴記憶手段104に記憶されている手順1、2、及び3によって決定した特徴のセット(上記の特徴決定手法によって決定されているもの)を用いてサブイメージの特徴ベクトルを算出し、更に、前記算出結果を診断手段203に対して送る。
【0126】
診断手段203は、分類テーブル106を参照し、この特徴ベクトルと一致するものを検索し、そこに記録されているクラスの標識を読み出し、それを診断結果として出力する。このとき、分類テーブル106上にdon't careを表す記号が記録されている場合には、診断手段503は、それに対応する特徴の値がいかなるものであっても、当該部分については一致するものとして判定する。
【0127】
ここで、上記の各手順によりサブイメージの特徴の決定並びにイメージの判定を行う本発明の利点を一層明確にすべく、本発明と決定木を用いる従来手法(ID3、C4.5)との相違点について述べる。
【0128】
ID3等も、決定木の各ノードにおける分類ルールを情報量最大化の基準に従って決定していく点においては、本発明と共通する。しかしながら、ID3やC4.5では、分類ルール(本発明の対応する言葉で換言すれば「特徴」)を、ノード毎に決定する。例えば、1番目の特徴c1を決定した後で2番目の特徴を決定する場合、1番目の特徴c1が1である場合、0である場合、それぞれの場合で異なる分類ルール(特徴)が決定されることになる。これに対して、本発明では、ノード深さが同じ場合には、即ち、任意のn番目の特徴には、同一の特徴が決定される。この点が両者の大きな相違点である。
【0129】
いずれの方法を採用する場合でも、学習パターンは完全に分類される。しかしながら、汎化性能、すなわち、学習していないサブイメージに対する識別性能に大きな違いが現れる。簡単のために両者の木の深さが同じ場合(nとする)、ID3又はC4.5では2n個の特徴が決定されるのに対して、本発明ではn個の特徴だけが決定される。従って、本発明の方がより単純な構造を持つことになる。該決定される特徴の個数の差は、問題がより困難になり、より深い木が必要になるに従い、指数関数的に拡大する。
【0130】
ところで、学習パターンに対する性能が同一の場合、より単純な構造の分類器の方が汎化性能に優れていることが知られている(「オッカムの剃刀」)。この点が、本発明による特徴選択方法及びそれを用いた診断方法が、従来手法に比べて性能、とりわけ、汎化性能を大幅に向上できる理由である。
【0131】
ここで、学習パターン入力手段100及びパターン入力手段201において、病理画像からサブイメージを抽出する処理について説明する。なお、本実施形態においては、細胞核を中心としたサブイメージの抽出について説明するが、これに限定されるものではない。よって、空孔、細胞質、間質等、病理医が病理画像を観察する際に着目する形態的な特徴部分をサブイメージとして抽出することもできる。
【0132】
細胞核を中心としてサブイメージを抽出する処理は、病理画像中の各画素のRGB値からヘマトキシレン信号を算出するステップと、病理画像中における各画素のヘマトキシレン信号の分布から細胞核の中心位置を検出するステップとに大別される。なお、実際は、ヘマトキシレン信号の平滑化などの処理も含まれる。なお、細胞核の抽出に用いられる病理画像には、染色剤(ヘマトキシレン)によって細胞核が青色に染色されたものを用いた。
【0133】
以下、図6を用い学習パターン入力手段100及びパターン入力手段201において、サブイメージを抽出する処理について説明する。
【0134】
学習パターン入力手段100及びパターン入力手段201は、病理画像が入力されると(ステップS601)、まず、細胞核が青く染色された病理画像の各画素にヘマトキシレン信号を付与する。
【0135】
各画素のRGB値(24ビットの場合、R=0〜255、G=0〜255、B=0〜255)から、青く染まった細胞核の部分で値1.0をとり、他の領域(エオジンでピンクに染まった領域、又は白色の領域など)では0となるヘマトキシレン信号を算出する。この処理は、RGB空間内における細胞核の色分布を調べ、その分布の中心から各画素のRGB値までの距離を計算することによって行われる。つまり、各画素のRGB値を調べ、その値がRGB空間内における細胞核の色分布の中心付近に位置すれば1に近い大きいヘマトキシレン信号を、中心から遠く離れていれば0に近いヘマトキシレン信号を付与する。ただし、染色処理の違い等によってサンプルごとに核の染まり方に変動が起こりうるため、ここでは適応的な方法によって細胞核の色分布を算出する。
【0136】
即ち、予め定めた細胞核の色領域を参照して、病理画像中から、RGB値がこの細胞核の色領域内に入る画素のみを選択し、これを細胞核の色を表す画素とする。
【0137】
なお、細胞核の色領域は、以下の方法で予め定められる。まず、染色処理の違い等によって染まり方に変動がある細胞核の画像を集める。次に、各画像中で細胞核領域の各画素のRGB値を調べる。同時にこれらの各画像中でエオジンに染まっている領域の画素、および白色領域中の画素のRGB値も調べる。そして、エオジンに染まった領域および白色領域の画素が全く、又は殆ど含まれず、かつ細胞核領域の画素からなる細胞核の色領域を決める。
【0138】
学習パターン入力手段100及びパターン入力手段501は、具体的には以下の方法に基づいてヘマトキシレン信号を各画素に付与する。
【0139】
まず、予め定められた細胞核の色領域を参照して、学習パターン入力手段100及びパターン入力手段501に入力された病理画像中から、RGB値が細胞核の色領域に入る画素をN個選択する(ステップS602)。そして、選択されたN個の各画素のRGB値をRi、Gi、Bi(i=1〜N)とする。次に、各画素のRi、Gi、Bi(i=1〜N)から(7)式に従って、平均値(R0、G0、B0)及び共分散行列Σを算出する(ステップS603)。
【0140】
【数7】

【0141】
(7)式において、Tはベクトルの転置操作を表す記号である。この共分散行列Σを用いて各画素(R、G、B)と平均値(R0、G0、B0)との距離L、及びヘマトキシレン信号(Hema)を(8)式に従って算出する(ステップS604)。
【0142】
【数8】

【0143】
次に、各画素について算出したヘマトキシレン信号の分布から細胞核の中心位置を検出する処理について説明する。
【0144】
(8)式によって各画素について算出されたヘマトキシレン信号をHema(−r)とする。ここで、−r=(x、y)は、病理画像中の画素の位置を表す位置ベクトルである。Hema(−r)に対して平滑化マスクMlowを用いて(9)式により平滑化処理を施し(ステップS605)、そのピークを細胞核の中心位置とする(ステップS606)。
【0145】
【数9】

【0146】
ここで、平滑化マスクMlowとしては、例えば、(10)式に示す関数を用いる。
【0147】
【数10】

【0148】
ここで規格化因子1/lは、(11)式によって定める。
【0149】
【数11】

【0150】
また、Sex、Sinはパラメータであり、それぞれ予め定めておく。通常はSexの値は細胞核の典型的なサイズ(半径)程度に、またSinの値はSexの1.2倍程度の値に設定する。
【0151】
各画素についてヘマトキシレン信号(Hema')が算出されると、注目している点におけるHema'の値が予め定められた閾値(例えば0.25)よりも大きく、かつその点の近傍(例えばx座標、y座標の違いがいずれも3画素以内である画素)のいずれの点におけるHema'の値よりも大きい場合にその点をピークとして検出し、これを細胞核の中心とする(ステップS607)。
【0152】
なお、細胞核の大きさに変動があり得ることを考慮して上記の処理の内、ヘマトキシレン信号の平滑化処理及びピーク検出処理は、異なるサイズ(パラメータSex、Sin)をもつ複数の(例えば3種類)平滑化マスクを用いて平滑化処理及びピーク検出処理を行い、いずれかの処理で検出されたピーク位置を細胞核の中心とする構成としても良い。
【0153】
学習パターン入力手段100及びパターン入力手段501は、入力された病理画像に対して、まず上記の処理により細胞核中心を検出する。そして、検出された細胞核中心を中心に予め定めておいたサイズのイメージ(サブイメージ)を病理画像中から多数(検出された細胞核中心の数だけ)切り出し、これらの各サブイメージを学習パターン又は入力パターンとして抽出する(ステップS608)。
【0154】
[第2の実施形態]
続いて、学習パターンに実効的ノイズを加える本発明の第2の実施形態について説明する。
【0155】
第2の実施形態のシステム構成は、上記した第1の実施形態の構成(図1参照)と略同様であり、その処理の流れも、上記した第1の実施形態(図2〜図6参照)と略同様である。以下、第2の実施形態が、上記した第1の実施形態と相違する点についてのみ説明する。
【0156】
本実施形態の手順1では、特徴候補生成手段102は、特徴候補生成手段102が用いるs≦N_1の特徴パラメータセットとして(k_s、r0_s、σ_s、th_s)に加え、ノイズパラメータσn_sが、予め設定されている(s≦N_1)。そして、第1の実施形態のステップS001と同様に、特徴候補生成手段102は、s番目(s=1からスタートする)の特徴パラメータセット(k_s、r0_s、σ_s、th_s、σn_s)を(k、r0、σ、th)に代入し、上記(1)式に従って複素ガボール関数、ガウス関数を生成する。そして、特徴候補生成手段102は、これらの複素ガボール関数、ガウス関数、しきい値パラメータth、ノイズパラメータσn及び特徴候補の識別番号sを特徴決定手段103に送る(図2のステップS002)。
【0157】
特徴決定手段103は、学習パターン記憶手段101から学習パターンを順次受け取り(図2のステップS003)、上記の複素ガボール関数及びガウス関数を用いて、次式に従って、特徴bを各学習パターンに対して計算する(図2のステップS004)。ここで、t番目の学習パターンをI_t(r,i_rgb)とする(t=1〜M)。
【0158】
【数12】

【0159】
(12)式のErf(x)は誤差関数である。なお、これは0以上1以下の値をとる別の非線形関数、例えば、シグモイド関数に置き換えることも可能である。
【0160】
以上のようにs番目の特徴パラメータセットを用いて、各学習パターンに対して特徴bが計算されると、特徴bの値がb(0≦b≦1)であった場合、この学習パターンに対して特徴cは、確率bで1、確率(1−b)で0をとるものと定める。
【0161】
本実施形態の手順2における特徴cの算出方法は、第1の実施形態における手順2の特徴cの算出方法と同様であるため、説明を省略する。
【0162】
本実施形態の手順3では、特徴候補生成手段102が用いる、N_1+N_2≦s≦Nの特徴パラメータセットとして(x_s、y_s、color_index、th_s)に加え、ノイズパラメータσn_sが予め設定されている(N_1+N_2≦s≦N)。特徴候補生成手段102は、特徴パラメータセット(x_s、y_s、color_index、th_s)、ノイズパラメータσn_s、及び特徴候補の識別番号sを特徴決定手段103に送る。なお、ここで、(x_s、y_s)は、サブイメージ中の特徴cを決定する画素の位置を表し、color_index(=1〜4)は、特徴cに対応する色を表し、th_sは閾値パラメータを表している。
【0163】
特徴パラメータセット(x_s、y_s、color_index、th_s)が特徴決定手段103に送られた場合、特徴決定手段103は、以下の方法によりサブイメージの位置(x_s、y_s)に位置する画素の特徴を決定する。
【0164】
なお、注目する画素の色がcolor_indexに該当する色であると判断する処理は、第1の実施形態の手順2と同様であるため説明を省略する。
【0165】
まず、特徴決定手段103は、サブイメージの位置(x_s、y_s)の近傍の画素(例えば、注目する画素(x_s、y_s)からx座標、y座標へ2画素以内にある画素(x'_s、y'_s)、つまり|x−x'|≦2かつ|y−y'|≦2の各画素)の色がcolor_indexで指定されている色と一致しているか否かを調べる。そして、color_indexで指定される色と一致している色を持つ近傍の画素数を加算し、それを近傍の画素の総数で割り平均値aを算出する。そして、平均値a、閾値パラメータth_s、及びノイズパラメータσn_sを(6)式に代入し、特徴bを各学習パターンに対して計算する。
【0166】
以上のようにs番目の特徴パラメータセットを用いて、各学習パターンに対して特徴bが計算されると、手順1と同様に、特徴bの値がb(0≦b≦1)であった場合、この学習パターンに対して特徴cは、確率bで1、確率(1−b)で0をとるものと定める。
【0167】
以上のようにs番目の特徴パラメータセットを用いて、各学習パターンに対して特徴bが計算されたら、次に特徴決定手段103はs番目の特徴候補から得られる相互情報量MIを、上記(3)式に準じて、以下の要領で算出する(図2のステップS005)。
【0168】
(3)式中のM(c)は、特徴がcである学習パターンの総数の期待値、同様にM(q,c)は特徴がcでありかつクラスqに属する学習パターンの総数の期待値、にそれぞれ置き換えて相互情報量MIを算出する。
【0169】
すべての特徴候補に対して相互情報量の計算が済んだ時点で、第1の実施形態と全く同様に、特徴決定手段103は各特徴候補から得られる相互情報量を比較し、最大の情報量が得られる特徴候補を決定すべき特徴のセットの第1番目の特徴として決定する(図2のステップS006)。
【0170】
以下同様に、第m番目の特徴までが決定されたら、第(m+1)番目の特徴cm+1は、第m番目までの特徴(c1、c2、...cm)が既知であるという条件下で、特徴cから得られる情報量MIm+1を最大にするように決定していく。但し、上記した第1の特徴の決定の際と同様に、相互情報量を計算する際には、学習パターンの各種総数はすべて対応する学習パターンの各種総数の期待値に置き換えて計算を行うものとする。例えば、MI2を計算する場合、(4)式においては、M(c、c1)は、「特徴がcで、かつ1番目の特徴がc1である学習パターンの総数の期待値」に、M(q、c、c1)は、「特徴がcで、1番目の特徴がc1で、かつクラスqに属する学習パターンの総数の期待値」にそれぞれ置き換えて計算する。
【0171】
第1の実施形態と同様に、以上の手続きは、新しい特徴を選んでも、得られる情報量(追加の情報量)が、予め設定しておく閾値よりも小さくなるまで、続けられる。そして、前記終了条件が満たされると、決定されている特徴のセットの各パラメータは特徴記憶手段104に記録される(図2のステップS007)。
【0172】
続いて、手順1及び3によって特徴cを算出した場合における別の分類テーブル作成の手順について、図面を参照して説明する。図7は、本実施形態に係る分類テーブルの作成処理の一例を示したフローチャートである。なお、n個の特徴が特徴決定手段によって決定され、分類テーブルは、初期化(クリア)されているものとする。
【0173】
図7を参照すると、まず、分類テーブル作成手段105は、各学習パターンに対して、決定されている特徴のセットの各パラメータを用いて、各特徴bs(b1、b2、...bn)を(12)式に従って計算する(ステップS201、S202)。全学習パターンについての各特徴bsの計算が完了すると、分類テーブル作成手段105は、s番目の特徴csが1となる確率をbs、0となる確率を(1−bs)定め、更に、j=1と初期化して、分類テーブル106に記録すべきパターンの選定処理を開始する(ステップS203)。
【0174】
まず、分類テーブル作成手段105は、1番目からj番目までの特徴(c1、c2、...cj)のすべての組み合わせを生成する(ステップS204)。続いて、前記1番目からj番目までの特徴の全組み合わせと分類テーブル106に既に登録されている特徴ベクトルとを順次照合し(ステップS205)、前記1番目からj番目までの特徴の全組み合わせの中で、分類テーブル106に既に記録されている特徴ベクトルと一致している組み合わせを消去する(ステップS205−1)。この場合において、分類テーブル106にdon't careを表す記号が記録されている特徴は、その値に関わらず一致しているものとして、取り扱う。
【0175】
そして、残った特徴パターン(c1、c2、...cj)について、ステップS202において各学習パターン毎に計算した特徴bsを用いて期待値の計算を行い、分類テーブル106に記録すべき条件に合致する特徴パターンの検索を行う(ステップS206)。より具体的には、残った特徴パターンの中から、順次、適当な特徴パターン(c1、c2、...cj)を選択し、(1)前記特徴パターンであって、あるクラスqに属する学習パターンの総数の期待値が予め定めたしきい値以上で、(2)前記特徴パターンであって、それ以外のクラスに属する学習パターンの総数の期待値が、すべて予め定めた別のしきい値以下となる場合に、該特徴パターンをクラスqを表すパターンとし、標識qとともに分類テーブル106に記録する。その際、j+1番目からn番目までの特徴の欄にはdon't careを表す記号を記録する(ステップS207)。
【0176】
上記検索の結果、条件に合致する特徴パターンが得られない場合は、j=j+1として、ステップS204に戻って、改めて、1番目からj番目までの特徴(c1、c2、...cj)のすべての組み合わせを生成する。一方、n番目までの特徴における全組み合わせまで検索が完了した場合(j=n)であれば、終了する。
【0177】
続いて、特徴cを手順1及び3によって算出した場合の本実施形態における別の診断の手順について、再度、図5を参照して説明する。
【0178】
まず、パターン入力手段201から入力された入力パターンに対して、特徴抽出手段202が、特徴記憶手段104に記憶されている手順1、又は3の特徴のセットを用いて特徴ベクトル(b1、b2、...bn)を(6)式に従って算出し、これを診断手段203に送る。この時、s番目の特徴cs(s=1〜n)が1となる確率をbs、0となる確率を(1−bs)と定める。
【0179】
診断手段203は分類テーブル106を参照しながら、入力パターンが各クラスに属する確率を算出する。より具体的には、以下のような手順で行われる。
【0180】
例えば、入力パターンがクラスq=0に属する確率を算出する場合を説明すると、まず、診断手段203は、分類テーブル106の中からq=0の標識が記されている特徴パターン(c1、c2、...cn)をすべて読み出す。ここで、その中の最初の特徴パターンが、例えば、(c1、c2、...cn)=(1、0、*、*、...、*)であった場合を考える(記号「*」はdon't careを表すものとする。)。入力パターンに対して特徴c1、c2がc1=1、c2=0となる確率は、b1・(1−b2)であるから、入力パターンの特徴ベクトルがこの特徴パターンと一致する確率もやはりb1・(1−b2)と算出される。なお、この特徴パターンの3番目以降の特徴はdon't careとなっているため、3番目以降の特徴の値は、全体としての確率に影響を与えない。
【0181】
以上の要領で、診断手段203は、入力パターンから計算した確率bs、(1−bs)を用いて、入力パターンの特徴ベクトルが、q=0に対応する各特徴パターンと一致する確率を算出し、その総計を求める。前記各確率の総計は、入力パターンがクラスq=0に属する確率と示すものとなる。診断手段203はこうして算出された、入力パターンが各クラスに属する確率を比較し、最大の確率を与えるクラスを判定結果として出力する。
【0182】
場合によっては、更に、予め定めておくしきい値と比較し、該しきい値との比較によって棄却判定(判定不能)を出力するという構成も当然可能である。
【0183】
また、更に、処理時間を短縮するためには、分類テーブルだけを本実施の形態で説明した方法で作成し、診断処理は第1の実施の形態で説明した方法で行うことでもよい。この場合には、入力パターンに対する特徴ベクトルは(2)式に従って算出すればよい。
【0184】
以上説明した本発明の第2の実施の形態によれば、学習パターンに実効的にノイズを加えた効果があるので、よりマージンの大きな特徴のセットが選択される。このため、第1の実施形態の場合よりも、更に汎化性能(学習パターン以外のパターンに対する識別性能)が向上するという特徴を持つことになる。
【0185】
[第3の実施形態]
続いて、本発明の第3の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態においても、上記した第1、第2の実施形態と同様に、3クラス以上の場合に拡張することは容易であるが、説明の便宜のため、2クラスの場合(q=0 or 1)について説明する。
【0186】
図8は、本発明による特徴選択方法の第3の実施形態のシステム構成を示すブロック図である。図8を参照すると、学習パターン入力手段300と、学習パターン記憶手段301と、特徴候補生成手段302と、特徴決定手段303と、特徴記憶手段304と、遷移テーブル305とが示されている。以下、上記した各実施形態と同一の部分は、省略して、説明する。
【0187】
特徴決定手段303は、特徴候補生成手段によって生成された特徴候補の中からパターン識別に最適な特徴のセットを決定する手段である。また、本実施形態における特徴決定手段303は、本実施形態の特徴決定手順の過程で得られるパラメータを記録してなる、遷移テーブル305を作成する。
【0188】
遷移テーブル305は、後述する診断処理に用いるパラメータを記録してなるテーブルである。
【0189】
続いて、手順の説明の前に、各パラメータ等の説明をする。
【0190】
学習パターンは、M個用意されているものとする。また、L個の集合群Di(i=1〜L)と、これと対になる集合群D'i(i=1〜L)を用意する。ここで、Lは、予め定めておく自然数であり、本実施形態では、L=64を採用するものとして説明する。
【0191】
続いて、図面を参照して、本実施の形態による特徴選択方法の手順について説明する。本実施形態における、第1の特徴を決定するまでの手順は、上記した第2の実施形態の場合と全く同一である。なお、手順2によって特徴cを算出する場合は、以下の説明中の数値bは特徴cの値に置き換えて処理するものとする。
【0192】
図9、図10、図11は、本発明の特徴選択方法の処理の流れを説明するためのフローチャートである。図9を参照すると、第1の特徴が決定されると(ステップS301)、特徴決定手段303は、集合Di、及びD'i(各i=1〜L)をそれぞれ初期化する(ステップS302)。ここでは、L=64としているため、D1〜D64及びD'1〜D'64の集合について、初期化する(クリアし空集合にする)処理がなされる。
【0193】
特徴順位パラメータmは、m=2とする。これは、第2の特徴から本手順を開始するためである。
【0194】
続いて、特徴決定手段303は、既に決定されている第1の特徴パラメータを用いて、各学習パターンに対して特徴bを(12)式に従って算出する(ステップS303〜S305)。
【0195】
続いて、特徴決定手段303は、各学習パターンをそれぞれ重みbで集合E1に、重み(1−b)で集合E0に分配する(ステップS306)。
【0196】
全ての学習パターンに対して上記の処理が終了すると、特徴決定手段303は、次式に従ってP(q=1|E1)、及びP(q=1|E0)を、計算する。
【0197】
【数13】

【0198】
なお、M(E0)、M(E1)は、それぞれ集合E0、E1に属する学習パターンの重みの総計であり、M(q=1|E0)、M(q=1|E1)は、クラスq=1に属し、かつそれぞれ集合E0、E1に属する学習パターンの重みの総計である。
【0199】
続いて、特徴決定手段303は、上記の通り分配がなされた集合E0、E1の内容を、前記予め用意した集合群(Di)から次式により決定される集合Dj、Dj'にそれぞれコピーする(ステップS307)。
【0200】
【数14】

【0201】
但し、ここで、d_jは、次式のとおり予め定める定数である(j=1〜L−1)。次式によれば、定数d_jは、0以上1以下の間の値をとり、jの値に応じて略S字状に増加するものとなっている。例えば、P(q=1|E0)=0.15であれば、d_29=0.111・・・、d_30=0.2より、(14)式上段の式を満たすj=30が決定され、D30にE0が、コピーされる。同様に、P(q=1|E1)=0.7であれば、d_33=0.666・・・、d_34=0.8より、(14)式下段の式を満たすj'=34が決定され、D34にE1がコピーされる。
【0202】
【数15】

【0203】
もちろん、上式は、集合Di、及びD'iの個数に応じ、かつ、本実施の形態において取扱いが容易になるよう定めたものであって、特に限定するものではない。
【0204】
ここで、特徴決定手段303は、遷移テーブル305に(1、j、j')を記録する(ステップS307)。例えば、j=30、j=34であれば、(1、30、34)が遷移テーブルに記録される。(図12参照)。これは後の診断処理の際に使用されるもので、1番目の特徴がc1=1であったら集合Djに、c1=0であったら集合Dj'にそれぞれ遷移すべきことを意味している。
【0205】
続いて、図10を参照すると、まず、特徴決定手段303は、s番目(s=1〜N、s=1からスタートする)の特徴候補を用いて、各学習パターンに対して、第2の実施形態と同様に特徴b及び特徴cを算出する(ステップS309〜S312)。この時、上記した第2の実施形態の場合と同様に、手順1又は3によって特徴bを算出した場合、各学習パターンに対して特徴cは、確率bで1、確率(1−b)で0をとるものと定める。
【0206】
続いて、特徴決定手段303は、s番目の特徴候補から得られる情報量MI'を次式に従って計算する(ステップS313)。
【0207】
【数16】

【0208】
なお、ここで、M(Di)は、集合Diに入る学習パターンの重みの総計であり、M(q、Di)は、集合Diに入り、かつクラスqに属する学習パターンの重みの総計である。但し、iについての和は、M(Di)がゼロでない場合についてのみとるものとする。また、M(c、Di)は、特徴がcで、かつ集合Diに入る学習パターンの重みの総計の期待値であり、M(q、c、Di)は、特徴がcで、集合Diに入り、かつクラスqに属する学習パターンの重みの総計の期待値である。
【0209】
こうして、s=Nとなるまで、各学習パターン毎に特徴bの計算処理が行われ、すべての特徴候補に対して情報量MI'の計算が済んだ時点で、特徴決定手段303は、これらを比較し、最大の情報量が得られる特徴候補を決定すべき特徴のセットの第m番目の特徴として決定する(ステップS314)。
【0210】
上記の通り最大の情報量が得られる第m番目の特徴が決定すると、特徴決定手段303は、すべての集合Di(D1〜D64)に対して次の操作を行う。
【0211】
図11を参照すると、特徴決定手段303は、上記決定された第m番目の特徴パラメータを用いて、各学習パターンに対して特徴bを(12)式に従って算出しDiに属する各学習パターンを、重みb:(1−b)の割合で集合E1及び、集合E0に分配する(ステップS315〜S318、図13参照)。
【0212】
続いて、特徴決定手段303は、(13)式に従ってP(q=1|E1)、及びP(q=1|E0)を、計算する。
【0213】
続いて、特徴決定手段303は、上記の通り分配がなされた集合E0,E1の内容を、前記予め用意した集合群(D'i)から(14)式により決定されるD'j、D'j'にそれぞれ加える(ステップS319)。例えば、図14に示されたとおり、P(q=1|E0)=0.05であれば、(14)式の上段の式を満たすj=28が決定され、D'28にE0が加えられる。同様に、P(q=1|E1)=0.3であれば、(14)式の下段の式を満たすj'=31が決定され、D'31にE1が加えられる(図14参照)。
【0214】
ここで、特徴決定手段303は、遷移テーブル305に(m、i、j、j')を記録する(ステップS320)。例えば、m=2、i=30、j=28、j'=31であれば、図12の遷移テーブルに示されたとおり、対応する位置(m=2、i=30)に(j=28、j'=31)が記録される。前記記録内容は、m番目の特徴がcm=1であったら集合Djに、cm=0であったら集合Dj'にそれぞれ遷移すべきことを意味しており、後述する診断処理の際に使用される。
【0215】
すべての集合Di(i=1〜L)に対して以上の操作が終了した場合には、特徴決定手段303は、集合D'i(i=1〜L)を集合Di(i=1〜L)にコピーし、後続する第m+1番目の特徴を決定すべく、集合D'i(i=1〜L)を初期化(クリア)する(ステップS321、図14参照)。
【0216】
以上の手続きは、新しい特徴を選んでも、ステップS314で得られる情報量(追加の情報量)が、予め設定しておくしきい値MI_thよりも小さくなるまで、続けられる。従って、前記終了条件を満たしていない限り、特徴決定手段303は、次なる第m+1番目の特徴を決定すべく、m=m+1としてステップS309の手順に戻ることとなる(ステップS322)。
【0217】
一方、前記終了条件が満たされると、決定されている特徴のセットの各パラメータは特徴記憶手段304に記録される(ステップS323)。
【0218】
ここで、上記した本発明の第3の実施形態において、生成される判定処理に用いることのできる遷移テーブルについて説明する。図12は、こうした遷移テーブルの一例である。図12を参照すると、第1の特徴に対する遷移先の集合を示した第1の部分と、第2の特徴以降の各特徴に対する遷移先の集合を、特徴順位パラメータmと、集合番号パラメータiと、各特徴の値Cmと、により示した第2の部分とからなっている。
【0219】
更に、図12の遷移テーブルの第1の部分を参照すると、c1=1に対応する欄に「30」が記載され、c1=0に対応する欄に「34」が記載されている。これは、「1番目の特徴がc1=1であったら集合D30に、c1=0であったら集合D34にそれぞれ遷移させる」べきことを示している。また、図12の遷移テーブルの第2の部分のm=2、i=30の欄を参照すると、c1=1に対応する欄に「28」が記載され、c1=0に対応する欄に「31」が記載されている。これは、「集合D30に属しているパターンは、第2番目の特徴がc2=1であったら集合D28に、c2=0であったら集合D31にそれぞれ遷移させる」べきことを示している。
【0220】
なお、図12の第2の部分の各欄中の記号「−」は空欄であることを示している。例えば、第2番目の特徴c2の値に基づく遷移先を記した行(m=2)においては、集合D30及びD34に対応する列(i=30、34)以外の欄は空欄「−」になっている。これは、前記1番目の特徴に対応する遷移先の集合が「30」又は「34」となっていることに対応したものである。即ち、図12の遷移テーブルによれば、入力パターンは、前記第1の特徴によって、必ずD30或いはD34の集合に遷移され、他の欄を参照する必要がないためである。
【0221】
なお、図12の遷移テーブルによれば、第1の特徴と、第2番目以降の特徴に対する遷移先の集合を記載した部分を分けて記載しているが、特徴順位パラメータmと、集合番号パラメータiと、各特徴の値Cmと、により、遷移先の集合をあらわし得るものであれば、特に限定するものではないことはもちろんである。例えば、図13に示すように、図12の第1の部分と第2の部分を統合させたものであってもよい。
【0222】
続いて、本実施形態における診断の手順について、図面を参照して説明する。図15は、こうして決定されている特徴のセットを用いて診断を行う診断方法を示すブロック図である。図15を参照すると、パターン入力手段401と、特徴抽出手段402と、診断手段403とが示されている。また特徴抽出手段402が特徴抽出のために用いる特徴記憶手段304、診断手段403が診断のために用いる遷移テーブル305が示されている。
【0223】
その作用は、まず、パターン入力手段401が、所望の媒体から入力パターンを取り込んで、特徴抽出手段402に対して送る。
【0224】
続いて、特徴抽出手段402が、該入力パターンに対して、特徴記憶手段304に記憶されている手順1〜3に基づいて決定した特徴のセット(上記の特徴決定手法によって決定されているもの)を用いて特徴ベクトル(b1、b2、...bn)を(12)式に従って算出し、更に、前記算出結果を診断手段403に送る。なお、例えば、i番目の特徴ciが手順2によって算出される場合には、前記特徴ベクトルにおいて数値biはciに置き換えて処理するものとする。
【0225】
この時、特徴cs(s≦N_1、又はN_1+N_2≦s≦N)が1となる確率をbs、0となる確率を(1−bs)と定める。診断手段403は、順次遷移テーブル305を参照し、入力パターンが各クラスに属する確率を算出する。この手続きは以下のように進める。
【0226】
まず、診断手段403は、第1の特徴に基づく遷移規則(1、j、j')を読み出し、状態jに確率b1で、状態j'に確率(1−b1)で遷移させる。次に、診断手段403は、第2の特徴c2が1となる確率をb2、c2が0となる確率を(1−b2)として、第2の特徴に基づく遷移規則を読み出し、状態を更に遷移させる。例えば、第2の特徴に基づく遷移規則に(2、j、k、k')、(2、j'、k''、k''')と記されていたら、状態jからは確率b2で状態kに、確率(1−b2)で状態k'に、状態j'からは確率b2で状態k''に、確率(1−b2)で状態k'''に、それぞれ遷移することとなる。従って、この場合、状態kにいる確率はb1・b2、状態k'にいる確率はb1・(1−b2)、状態k''にいる確率は(1−b1)・b2、状態k'''にいる確率は(1−b1)・(1−b2)で、それぞれ与えられることになる。以下同様に、診断手段403は、第nの特徴までを用いて、遷移テーブルを参照しながら状態を遷移させていく。
【0227】
このようにして、第nの特徴までを用いて状態を遷移させた結果、各状態jにいる確率がP(j)(j=1〜L)と算出されたものとする。この時、入力パターンがクラスq=1に属する確率P(q=1)を次式により求めることが可能となる。
【0228】
【数17】

【0229】
診断手段403は、この確率P(q=1)が、予め定めておくしきい値よりも大であれば「入力はクラスq=1に属する」ものと判定し、その結果を出力する。また、この確率P(q=1)が、前記しきい値よりも小であれば、棄却ないし判定不能と判定し、その結果を出力する。もちろん、前記しきい値として、採択臨界値と棄却臨界値との2つを設けること、境界領域にある場合は、判定不能とすること等、種々の変形実施が可能である。
【0230】
なお、本実施形態においては、(17)式によってP(q=1|j)の値を決定することとしているが、学習パターンを用いて、次のように決定することとしてもよい。即ち、各学習パターンI_i(r,i_rgb)(i=1〜M)を遷移テーブルに従って遷移させるとともに、各学習パターンの特徴ベクトル(b1、b2、...bn)に基づいて、それぞれが最終的に状態jにいる確率P(i、j)、を算出する。次にクラスq=1に属する学習パターンについてのみこのP(i、j)の値を総計したものをP1(j)、すべての学習パターンについてP(i、j)を総計したものをPtotal(j)とし、P(q=1|j)=P1(j)/Ptotal(j)によってP(q=1|j)の値を決定する。
【0231】
本実施形態における診断のための処理時間を短縮するための変形として、遷移テーブル305だけを本実施の形態の方法で作成し、入力パターンに対する特徴ベクトルは(2)式に従って算出する方法を採ることができる。この場合には、判定処理では確率的な動作を行わず、(2)式で得られる特徴ベクトルに従って、状態を確定的に遷移させて診断を行う構成が実現される。また、この場合、遷移テーブルに従って状態を遷移させる際には、各段階において状態を確定的に遷移させることができるため、第nの特徴までを用いて状態を遷移させると、最終的には状態は1〜Lの中のある特定の状態jに確定する。そして、この状態jに対応する(17)式のP(q=1|j)の値を調べて、これが予め定めておくしきい値よりも大であれば「入力はクラスq=1に属する」ものと判定し、その結果を出力するものとすればよい。
【0232】
以上説明した、本発明の第3の実施形態では、第2の実施形態と同様に、学習パターンに実効的にノイズを加えた効果があるため、よりマージンの大きな特徴のセットが選択されるという特徴が、具現される。
【0233】
更に、本発明の第3の実施形態では、特徴選択のための計算が、上記した第2の実施形態の場合と比較して大幅に削減できる、という特徴が、具現される。その理由は、選択される特徴の数nが大きくなっても、特徴選択に必要な計算は、高々L個の集合を特徴に応じて分割した際に得られる情報量の計算((16)式)によって実現できる点にある。
【0234】
また、更に、本発明の第3の実施形態では、一旦分類された学習パターンを集合Diに適時マージしながら情報量の計算が行われるため、各集合Diに属する学習パターンの数が極度に少なくなることが避けられる。この結果、学習パターンに依存して特徴が選択されてしまうような現象が少なくなり、汎化性能を更に高めることができる、という特徴が、具現されている。
【0235】
[第4の実施形態]
次に、第1〜3の実施形態に係る病理診断支援装置を利用した病理診断支援システムの構成及び動作について説明する。
【0236】
まず、図16を用い、本実施形態に係る病理診断支援システムの構成について説明する。
【0237】
本実施形態に係る病理診断支援システムは、顕微鏡1601、病理画像処理端末1602、病理診断支援サーバ1603、及び課金サーバ1604を有している。病理画像処理端末1602、病理診断支援サーバ1603、及び課金サーバ1604はネットワークにより接続されている。なお、病理診断支援サーバ1603は、第1〜3の実施形態に係る病理診断支援装置1603a及び診断結果記憶手段1603bを有している。
【0238】
顕微鏡1601及び病理画像処理端末1602は、病院等の医療機関に設置される。顕微鏡1601は、患者の病巣の病理画像を撮影する手段である。顕微鏡1601で撮影した病理画像は、病理画像処理端末1602に保持される。病理画像処理端末1602は、顕微鏡1601で撮影した病理画像を患者固有の情報を付加して病理画像データとして保持する。さらに、病理画像処理端末1602は、保持する病理画像データを病理診断サーバ1603に送信し、診断結果を受信する。
【0239】
病理診断サーバ1603は、研究機関や診断サービス会社等に設置される。病理診断支援装置1603aは、病理画像処理端末1602から受信した病理画像データからサブイメージを抽出し、該サブイメージを利用して腫瘍の有無、及び腫瘍の良性・悪性を診断する。なお、具体的な動作については、第1〜3の実施形態において説明した内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0240】
診断結果記憶手段1603bは、病理診断支援装置1603aにおける診断結果を患者固有の情報とともに記憶する。なお、必要に応じて、診断結果に病理医の診断結果を付加して記憶することもできる。そして、病理画像処理端末1602から診断結果記憶手段1603bに診断結果の要求されると、診断結果記憶手段1603bは、病理診断処理端末1602に対して患者固有の情報の送信を要求し、送信されてきた患者固有の情報と診断結果に付加された患者固有の情報とが一致した場合にのみ、診断結果を病理診断処理端末1602に送信する。
【0241】
課金サーバ1604は、病理診断サーバ1603において診断結果が診断結果記憶手段1603bに保持される毎にシステム使用料金を加算し、システムレンタル料金及び病理診断支援装置1603aに保持されるデータの更新料金とともに保持する。また、課金サーバ1604は、病理画像処理端末1602が診断結果を受け取る毎に病院等に設置された顕微鏡1601及び病理画像処理端末1602の使用料金として保持する。
【0242】
次に、図17を用い、本実施形態に係る病理診断支援システムの具体的な動作について説明する。
【0243】
まず、顕微鏡1601によって患者の病巣の病理画像を撮影する(ステップS1701)。撮影された病理画像は、患者固有の情報が付加されて病理画像処理端末1602に転送され、病理画像データとして格納される(ステップS1702)。病理画像処理端末1602は、病理画像データを病理診断サーバ1603に送信する(ステップS1703)。病理診断サーバ1603は、病理診断支援装置1603aによって病理画像データに含まれる病理画像からサブイメージを抽出して、病理画像の診断を行う(ステップS1704)。病理診断支援装置1603aにおける診断結果は、病理画像データに含まれる患者固有の情報とともに診断結果記憶手段1603bに記憶される(ステップS1705)。ここで、病理診断サーバ1603に課金サーバ1604が接続されている場合には、診断結果が診断結果記憶手段1603bに記憶される度にシステム使用料金に加算する(ステップS1706)。
【0244】
病理画像処理端末1602から診断結果の送信が病理診断サーバ1603に要求されると(ステップS1707)、病理診断サーバ1603は患者固有の情報の入力を病理画像処理端末1602に要求する。そして、病理画像処理端末1602から入力された患者固有の情報と各診断結果に付加されている患者固有の情報が一致しているか否かを判断する(ステップS1708)。
【0245】
病理画像処理端末1602から入力された患者固有の情報と各診断結果に付加されている患者固有の情報とが一致した場合(ステップS1708/YES)、病理診断サーバ1603は、診断結果記憶手段1603bに記憶されている診断結果が病理画像処理端末1602に送信する(ステップS1709)。ここで、課金サーバ1604が病理画像処理端末1602に接続されている場合は、病理画像処理端末1602が診断結果を受信するたびに、病理画像処理端末1602の使用料金を加算する(ステップS1710)。なお、病理画像処理端末1602から入力された患者固有の情報と各診断結果に付加されている患者固有の情報とが一致しなかった場合は(ステップS1708/NO)、診断結果の送信は行なわれず処理は終了する。
【0246】
本実施形態によれば、患者が遠隔地の病院に通院している場合であっても該病院に病理画像処理端末1602が設置されていれば、ネットワークを通じて病理診断サーバ1603にアクセスし、迅速に診断結果を受け取ることができる。また、患者から採取した病理画像の全てを病理医が診断しなくてもよいため、病理医の診断の負担を軽減することができる。さらに、診断結果を病理画像処理端末1602に配信する際、患者固有の情報の入力を要求することにより、病理診断サーバ1603からの診断結果の漏洩を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0247】
【図1】本発明の第1の実施形態の特徴選択方法を行うシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の特徴選択方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明による分類テーブルの作成処理の一例を示したフローチャートである。
【図4】本発明により作成された分類テーブルの一例である。
【図5】本発明の第1の実施形態の診断を行うシステムの構成を示すブロック図である。
【図6】本発明のサブイメージを抽出する処理の一例を示したフローチャートである。
【図7】本発明による分類テーブルの作成処理の別の一例を示したフローチャートである。
【図8】本発明の第3の実施形態の特徴選択方法を行うシステムの構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第3の実施形態の特徴選択方法を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の第3の実施形態の特徴選択方法を説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明の第3の実施形態の特徴選択方法を説明するためのフローチャートである。
【図12】本発明により作成された遷移テーブルの一例である。
【図13】本発明により作成された遷移テーブルの別の一例である。
【図14】本発明の第3の実施形態で行われる集合間の遷移を簡便に表した図である。
【図15】本発明の第3の実施形態の診断を行うシステムの構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の第4の実施形態に係る病理診断支援システムの構成を示すブロック図である。
【図17】本発明の第4の実施形態に係る病理診断支援システムの処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0248】
100、300 学習パターン入力手段
101、301 学習パターン記憶手段
102、302 特徴候補生成手段
103、303 特徴決定手段
104、304 特徴記憶手段
105 分類テーブル作成手段
106 分類テーブル
201、202、403 診断手段
202、402 特徴抽出手段
305 遷移テーブル
401 パターン入力手段
1601 顕微鏡
1602 病理画像処理端末
1603 病理診断サーバ
1604 課金サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習に用いる病理画像から腫瘍を中心としたイメージを切り出し、学習パターンとして入力する学習パターン入力手段と、クラス情報が付された前記学習パターンを記憶保持する学習パターン記憶手段と、複数の特徴候補を生成する特徴候補生成手段と、前記特徴候補生成手段によって生成される特徴候補の中から診断に適した特徴のセットを決定する特徴決定手段と、前記特徴決定手段により決定されている特徴のセットを記憶保持する特徴記憶手段と、分類テーブルを作成する分類テーブル作成手段と、診断する病理画像から腫瘍候補を中心としたイメージを切り出し、入力パターンとして入力するパターン入力手段と、前記入力パターンから特徴を抽出する特徴抽出手段と、前記特徴に基いて診断する診断手段とを有する病理診断支援装置において、
前記特徴決定手段は、前記各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴を計算して、前記学習パターン集合のクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの最初の特徴として決定し、決定した特徴が既知であるとの条件の下で、各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴と、前記各学習パターンのクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの次なる特徴として、順次、決定し、
前記分類テーブル作成手段が、前記特徴のセットを用いて、前記各学習パターンの各特徴を計算し、前記各学習パターンの各特徴と、クラス情報と、を配置してなる前記分類テーブルにより前記パターンを分類し、
前記特徴抽出手段は、前記特徴のセットを用いて、前記入力パターンの各特徴を算出し、
前記診断手段は、前記算出結果及び前記分類テーブルに基いて、前記入力パターンを診断することを特徴とする病理診断支援装置。
【請求項2】
学習に用いる病理画像から腫瘍を中心としたイメージを切り出し、学習パターンとして入力する学習パターン入力手段と、クラス情報が付された前記学習パターンを記憶保持する学習パターン記憶手段と、複数の特徴候補を生成する特徴候補生成手段と、前記特徴候補生成手段によって生成される特徴候補の中から診断に適した特徴のセットを決定する特徴決定手段と、前記特徴決定手段により決定されている特徴のセットを記憶保持する特徴記憶手段と、分類テーブルを作成する分類テーブル作成手段と、診断する病理画像から腫瘍候補を中心としたイメージを切り出し、入力パターンとして入力するパターン入力手段と、前記入力パターンから特徴を抽出する特徴抽出手段と、前記特徴に基いて診断する診断手段とを有する病理診断支援装置において、
前記特徴決定手段は、前記学習パターンを特徴の値に応じて遷移させるべき、予め定めた個数の集合を用意し、前記各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴を計算して、前記学習パターン集合のクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの最初の特徴として決定し、前記各学習パターンを、決定した特徴に応じた重みを付けて、分配するとともに、決定した特徴に対応する集合に、順次、遷移させ、前記各学習パターンが含まれる集合についての情報と、決定されている特徴とが既知であるとの条件の下で、各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴と、前記各学習パターンのクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの次なる特徴として、順次、決定し、
前記分類テーブル作成手段が、前記特徴のセットを用いて、前記各学習パターンの各特徴を計算し、前記各学習パターンの各特徴と、クラス情報と、を配置してなる前記分類テーブルにより前記学習パターンを分類し、
前記特徴抽出手段は、前記特徴のセットを用いて、前記入力パターンの各特徴を算出し、
前記診断手段は、前記入力パターンの各特徴と、前記特徴のセットの各特徴の決定の際に前記学習パターンが属する集合を逐次記録してなる遷移テーブルと、に基いて前記入力パターンの遷移を行って、前記遷移の結果、前記入力パターンが属する集合に基いて前記入力パターンを診断することを特徴とする病理診断支援装置。
【請求項3】
学習に用いる病理画像から腫瘍を中心としたイメージを切り出し、学習パターンとして入力する学習パターン入力手段と、クラス情報が付された前記学習パターンを記憶保持する学習パターン記憶手段と、複数の特徴候補を生成する特徴候補生成手段と、前記特徴候補生成手段によって生成される特徴候補の中から診断に適した特徴のセットを決定する特徴決定手段と、前記特徴決定手段により決定されている特徴のセットを記憶保持する特徴記憶手段と、分類テーブルを作成する分類テーブル作成手段と、診断する病理画像から腫瘍候補を中心としたイメージを切り出し、入力パターンとして入力するパターン入力手段と、前記入力パターンから特徴を抽出する特徴抽出手段と、前記特徴に基いて診断する診断手段とを有する病理診断支援装置において、
前記特徴決定手段は、前記学習パターンを特徴の値に応じて遷移させるべき、予め定めた個数の集合を用意し、前記各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴を計算して、前記学習パターン集合のクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの最初の特徴として決定し、前記各学習パターンを、決定した特徴に応じた重みを付けて、分配するとともに、決定した特徴に対応する集合に、順次、遷移させ、前記各学習パターンが含まれる集合についての情報と、決定されている特徴とが既知であるとの条件の下で、各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴と、前記各学習パターンのクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの次なる特徴として、順次、決定し、
前記分類テーブル作成手段が、前記特徴のセットを用いて、前記各学習パターンの各特徴を計算し、前記各学習パターンの各特徴と、クラス情報と、を配置してなる前記分類テーブルにより前記学習パターンを分類し、
前記特徴抽出手段は、前記特徴のセットを用いて、該順位の特徴が予め定めた値となる確率を示している、前記入力パターンの各特徴を算出し、
前記診断手段は、前記入力パターンの各特徴と、前記特徴のセットの各特徴の決定の際に前記学習パターンが属する集合を逐次記録してなる遷移テーブルと、に基いて前記入力パターンが予め定められたクラス情報を有する確率を算出し、診断することを特徴とする病理診断支援装置。
【請求項4】
前記学習パターン入力手段及び前記パターン入力手段は、
染色された前記病理画像中の各画素のRGB値から、予め設定された腫瘍細胞核が属する色領域に属する画素を選択し、前記色領域の分布の中心と前記色領域に属する各画素との距離を算出し、前記距離に応じて前記各画素に信号を付与し、前記病理画像中における前記信号の分布からピークを検出し、前記ピークを中心としたイメージを前記学習パターンとして入力することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の病理診断支援装置。
【請求項5】
前記特徴候補生成手段が生成する特徴候補には、複素ガボール関数を特徴抽出関数から得られる特徴候補が含まれることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の病理診断支援装置。
【請求項6】
前記特徴候補生成手段が生成する特徴候補には、複素ガボール関数を規格化した特徴抽出関数から得られる特徴候補が含まれることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の病理診断支援装置。
【請求項7】
前記特徴候補生成手段が生成する特徴候補には、腫瘍の色を識別する特徴候補が含まれることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の病理診断支援装置。
【請求項8】
前記特徴決定手段は、前記学習パターン入力手段によって算出された前記学習パターンに含まれる前記各画素の信号と、予め設定された閾値とを比較することを特徴とする請求項7記載の病理診断支援装置。
【請求項9】
前記特徴決定手段は、前記学習パターン入力手段によって算出された前記学習パターンに含まれる前記各画素の信号と、前記各画素近傍に位置する画素の信号の平均値とを比較することを特徴とする請求項7記載の病理診断支援装置。
【請求項10】
前記特徴決定手段は、前記各学習パターンに対して、前記特徴候補毎に予め定められたノイズパラメータによる操作を加えることを特徴とする請求項5、6、又は9記載の病理診断支援装置。
【請求項11】
前記特徴決定手段は、前記各特徴候補に対応する前記各学習パターンの特徴として、前記各学習パターンの特徴が、予め定めた値をとる確率を計算することを特徴とする請求項5、6、又は9記載の病理診断支援装置。
【請求項12】
前記特徴の値に関らず、前記学習パターンを分類できるとき、前記分類テーブル作成手段は、前記分類テーブルの対応する位置に、前記特徴の値に代えて冗長項を置くことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項記載の病理診断支援装置。
【請求項13】
前記入力パターンの各特徴は、該順位の特徴が予め定めた値となる確率の値であって、
前記診断手段は、前記各特徴を用いて、前記分類テーブルに含まれる各特徴パターンが予め定めたクラス情報の値となる確率を計算して判定を行うことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項記載の病理診断支援装置。
【請求項14】
学習に用いる病理画像から腫瘍を中心としたイメージを切り出し、学習パターンとして入力する学習パターン入力手段と、クラス情報が付された前記学習パターンを記憶保持する学習パターン記憶手段と、複数の特徴候補を生成する特徴候補生成手段と、前記特徴候補生成手段によって生成される特徴候補の中から診断に適した特徴のセットを決定する特徴決定手段と、前記特徴決定手段により決定されている特徴のセットを記憶保持する特徴記憶手段と、分類テーブルを作成する分類テーブル作成手段と、診断する病理画像から腫瘍候補を中心としたイメージを切り出し、入力パターンとして入力するパターン入力手段と、前記入力パターンから特徴を抽出する特徴抽出手段と、前記特徴に基いて診断する診断手段とを有する病理診断支援装置の病理診断支援プログラムであって、
前記特徴決定手段が、前記各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴を計算して、前記学習パターン集合のクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの最初の特徴として決定し、決定した特徴が既知であるとの条件の下で、各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴と、前記各学習パターンのクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの次なる特徴として、順次、決定する処理と、
前記分類テーブル作成手段が、前記特徴のセットを用いて、前記各学習パターンの各特徴を計算し、前記各学習パターンの各特徴と、クラス情報と、を配置してなる前記分類テーブルにより前記パターンを分類する処理と、
前記特徴抽出手段が、前記特徴のセットを用いて、前記入力パターンの各特徴を算出する処理と、
前記診断手段が、前記算出結果及び前記分類テーブルに基いて、前記入力パターンを診断する処理とを有することを特徴とする病理診断支援プログラム。
【請求項15】
学習に用いる病理画像から腫瘍を中心としたイメージを切り出し、学習パターンとして入力する学習パターン入力手段と、クラス情報が付された前記学習パターンを記憶保持する学習パターン記憶手段と、複数の特徴候補を生成する特徴候補生成手段と、前記特徴候補生成手段によって生成される特徴候補の中から診断に適した特徴のセットを決定する特徴決定手段と、前記特徴決定手段により決定されている特徴のセットを記憶保持する特徴記憶手段と、分類テーブルを作成する分類テーブル作成手段と、診断する病理画像から腫瘍候補を中心としたイメージを切り出し、入力パターンとして入力するパターン入力手段と、前記入力パターンから特徴を抽出する特徴抽出手段と、前記特徴に基いて診断する診断手段とを有する病理診断支援装置の病理診断支援プログラムであって、
前記特徴決定手段が、前記学習パターンを特徴の値に応じて遷移させるべき、予め定めた個数の集合を用意し、前記各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴を計算して、前記学習パターン集合のクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの最初の特徴として決定し、前記各学習パターンを、決定した特徴に応じた重みを付けて、分配するとともに、決定した特徴に対応する集合に、順次、遷移させ、前記各学習パターンが含まれる集合についての情報と、決定されている特徴とが既知であるとの条件の下で、各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴と、前記各学習パターンのクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの次なる特徴として、順次、決定する処理と、
前記分類テーブル作成手段が、前記特徴のセットを用いて、前記各学習パターンの各特徴を計算し、前記各学習パターンの各特徴と、クラス情報と、を配置してなる前記分類テーブルにより前記学習パターンを分類する処理と、
前記特徴抽出手段が、前記特徴のセットを用いて、前記入力パターンの各特徴を算出する処理と、
前記診断手段が、前記入力パターンの各特徴と、前記特徴のセットの各特徴の決定の際に前記学習パターンが属する集合を逐次記録してなる遷移テーブルと、に基いて前記入力パターンの遷移を行って、前記遷移の結果、前記入力パターンが属する集合に基いて前記入力パターンを診断する処理とを有することを特徴とする病理診断支援プログラム。
【請求項16】
学習に用いる病理画像から腫瘍を中心としたイメージを切り出し、学習パターンとして入力する学習パターン入力手段と、クラス情報が付された前記学習パターンを記憶保持する学習パターン記憶手段と、複数の特徴候補を生成する特徴候補生成手段と、前記特徴候補生成手段によって生成される特徴候補の中から診断に適した特徴のセットを決定する特徴決定手段と、前記特徴決定手段により決定されている特徴のセットを記憶保持する特徴記憶手段と、分類テーブルを作成する分類テーブル作成手段と、診断する病理画像から腫瘍候補を中心としたイメージを切り出し、入力パターンとして入力するパターン入力手段と、前記入力パターンから特徴を抽出する特徴抽出手段と、前記特徴に基いて診断する診断手段とを有する病理診断支援装置の病理診断支援プログラムであって、
前記特徴決定手段は、前記学習パターンを特徴の値に応じて遷移させるべき、予め定めた個数の集合を用意し、前記各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴を計算して、前記学習パターン集合のクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの最初の特徴として決定し、前記各学習パターンを、決定した特徴に応じた重みを付けて、分配するとともに、決定した特徴に対応する集合に、順次、遷移させ、前記各学習パターンが含まれる集合についての情報と、決定されている特徴とが既知であるとの条件の下で、各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴と、前記各学習パターンのクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの次なる特徴として、順次、決定する処理と、
前記分類テーブル作成手段が、前記特徴のセットを用いて、前記各学習パターンの各特徴を計算し、前記各学習パターンの各特徴と、クラス情報と、を配置してなる前記分類テーブルにより前記学習パターンを分類する処理と、
前記特徴抽出手段は、前記特徴のセットを用いて、該順位の特徴が予め定めた値となる確率を示している、前記入力パターンの各特徴を算出する処理と、
前記診断手段は、前記入力パターンの各特徴と、前記特徴のセットの各特徴の決定の際に前記学習パターンが属する集合を逐次記録してなる遷移テーブルと、に基いて前記入力パターンが予め定められたクラス情報を有する確率を算出し、診断する処理とを有することを特徴とする病理診断支援プログラム。
【請求項17】
前記学習パターン入力手段及び前記パターン入力手段は、
染色された前記病理画像中の各画素のRGB値から、予め設定された腫瘍細胞核が属する色領域に属する画素を選択する処理と、
前記色領域の分布の中心と前記色領域に属する各画素との距離を算出する処理と、
前記距離に応じて前記各画素に信号を付与する処理と、
前記病理画像中における前記信号の分布からピークを検出する処理と、
前記ピークを中心としたイメージを前記学習パターンとして入力する処理とを有することを特徴とする請求項14から16のいずれか1項記載の病理診断支援プログラム。
【請求項18】
前記特徴候補生成手段が生成する特徴候補には、複素ガボール関数を特徴抽出関数から得られる特徴候補が含まれることを特徴とする請求項14から17のいずれか1項記載の病理診断支援プログラム。
【請求項19】
前記特徴候補生成手段が生成する特徴候補には、複素ガボール関数を規格化した特徴抽出関数から得られる特徴候補が含まれることを特徴とする請求項14から17のいずれか1項記載の病理診断支援プログラム。
【請求項20】
前記特徴候補生成手段が生成する特徴候補には、腫瘍の色を識別する特徴候補が含まれることを特徴とする請求項14から19のいずれか1項記載の病理診断支援プログラム。
【請求項21】
前記特徴決定手段は、前記学習パターン入力手段によって算出された前記学習パターンに含まれる前記各画素の信号と、予め設定された閾値とを比較する処理を有することを特徴とする請求項20記載の病理診断支援プログラム。
【請求項22】
前記特徴決定手段は、前記学習パターン入力手段によって算出された前記学習パターンに含まれる前記各画素の信号と、前記各画素近傍に位置する画素の信号の平均値とを比較する処理を有することを特徴とする請求項20記載の病理診断支援プログラム。
【請求項23】
前記特徴決定手段は、前記各学習パターンに対して、前記特徴候補毎に予め定められたノイズパラメータによる操作を加える処理を有することを特徴とする請求項18、19、又は22記載の病理診断支援プログラム。
【請求項24】
前記特徴決定手段は、前記各特徴候補に対応する前記各学習パターンの特徴として、前記各学習パターンの特徴が、予め定めた値をとる確率を計算する処理を有することを特徴とする請求項18、19、又は22記載の病理診断支援プログラム。
【請求項25】
前記特徴の値に関らず、前記学習パターンを分類できるとき、前記分類テーブル作成手段は、前記分類テーブルの対応する位置に、前記特徴の値に代えて冗長項を置く処理を有することを特徴とする請求項14から24のいずれか1項記載の病理診断支援プログラム。
【請求項26】
前記入力パターンの各特徴は、該順位の特徴が予め定めた値となる確率の値であって、
前記診断手段は、前記各特徴を用いて、前記分類テーブルに含まれる各特徴パターンが予め定めたクラス情報の値となる確率を計算して判定を行う処理を有することを特徴とする請求項14から25のいずれか1項記載の病理診断支援プログラム。
【請求項27】
学習に用いる病理画像から腫瘍を中心としたイメージを切り出し、学習パターンとして入力する学習パターン入力手段と、クラス情報が付された前記学習パターンを記憶保持する学習パターン記憶手段と、複数の特徴候補を生成する特徴候補生成手段と、前記特徴候補生成手段によって生成される特徴候補の中から診断に適した特徴のセットを決定する特徴決定手段と、前記特徴決定手段により決定されている特徴のセットを記憶保持する特徴記憶手段と、分類テーブルを作成する分類テーブル作成手段と、診断する病理画像から腫瘍候補を中心としたイメージを切り出し、入力パターンとして入力するパターン入力手段と、前記入力パターンから特徴を抽出する特徴抽出手段と、前記特徴に基いて診断する診断手段とを有する病理診断支援装置の病理診断支援方法であって、
前記特徴決定手段が、前記各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴を計算して、前記学習パターン集合のクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの最初の特徴として決定し、決定した特徴が既知であるとの条件の下で、各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴と、前記各学習パターンのクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの次なる特徴として、順次、決定する工程と、
前記分類テーブル作成手段が、前記特徴のセットを用いて、前記各学習パターンの各特徴を計算し、前記各学習パターンの各特徴と、クラス情報と、を配置してなる前記分類テーブルにより前記パターンを分類する工程と、
前記特徴抽出手段が、前記特徴のセットを用いて、前記入力パターンの各特徴を算出する工程と、
前記診断手段が、前記算出結果及び前記分類テーブルに基いて、前記入力パターンを診断する工程とを有することを特徴とする病理診断支援方法。
【請求項28】
学習に用いる病理画像から腫瘍を中心としたイメージを切り出し、学習パターンとして入力する学習パターン入力手段と、クラス情報が付された前記学習パターンを記憶保持する学習パターン記憶手段と、複数の特徴候補を生成する特徴候補生成手段と、前記特徴候補生成手段によって生成される特徴候補の中から診断に適した特徴のセットを決定する特徴決定手段と、前記特徴決定手段により決定されている特徴のセットを記憶保持する特徴記憶手段と、分類テーブルを作成する分類テーブル作成手段と、診断する病理画像から腫瘍候補を中心としたイメージを切り出し、入力パターンとして入力するパターン入力手段と、前記入力パターンから特徴を抽出する特徴抽出手段と、前記特徴に基いて診断する診断手段とを有する病理診断支援装置の病理診断支援方法であって、
前記特徴決定手段が、前記学習パターンを特徴の値に応じて遷移させるべき、予め定めた個数の集合を用意し、前記各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴を計算して、前記学習パターン集合のクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの最初の特徴として決定し、前記各学習パターンを、決定した特徴に応じた重みを付けて、分配するとともに、決定した特徴に対応する集合に、順次、遷移させ、前記各学習パターンが含まれる集合についての情報と、決定されている特徴とが既知であるとの条件の下で、各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴と、前記各学習パターンのクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの次なる特徴として、順次、決定する工程と、
前記分類テーブル作成手段が、前記特徴のセットを用いて、前記各学習パターンの各特徴を計算し、前記各学習パターンの各特徴と、クラス情報と、を配置してなる前記分類テーブルにより前記学習パターンを分類する工程と、
前記特徴抽出手段が、前記特徴のセットを用いて、前記入力パターンの各特徴を算出する工程と、
前記診断手段が、前記入力パターンの各特徴と、前記特徴のセットの各特徴の決定の際に前記学習パターンが属する集合を逐次記録してなる遷移テーブルと、に基いて前記入力パターンの遷移を行って、前記遷移の結果、前記入力パターンが属する集合に基いて前記入力パターンを診断する工程とを有することを特徴とする病理診断支援方法。
【請求項29】
学習に用いる病理画像から腫瘍を中心としたイメージを切り出し、学習パターンとして入力する学習パターン入力手段と、クラス情報が付された前記学習パターンを記憶保持する学習パターン記憶手段と、複数の特徴候補を生成する特徴候補生成手段と、前記特徴候補生成手段によって生成される特徴候補の中から診断に適した特徴のセットを決定する特徴決定手段と、前記特徴決定手段により決定されている特徴のセットを記憶保持する特徴記憶手段と、分類テーブルを作成する分類テーブル作成手段と、診断する病理画像から腫瘍候補を中心としたイメージを切り出し、入力パターンとして入力するパターン入力手段と、前記入力パターンから特徴を抽出する特徴抽出手段と、前記特徴に基いて診断する診断手段とを有する病理診断支援装置の病理診断支援方法であって、
前記特徴決定手段は、前記学習パターンを特徴の値に応じて遷移させるべき、予め定めた個数の集合を用意し、前記各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴を計算して、前記学習パターン集合のクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの最初の特徴として決定し、前記各学習パターンを、決定した特徴に応じた重みを付けて、分配するとともに、決定した特徴に対応する集合に、順次、遷移させ、前記各学習パターンが含まれる集合についての情報と、決定されている特徴とが既知であるとの条件の下で、各特徴候補に対応する各学習パターンの特徴と、前記各学習パターンのクラス情報との相互情報量が最大となる特徴候補を、特徴のセットの次なる特徴として、順次、決定する工程と、
前記分類テーブル作成手段が、前記特徴のセットを用いて、前記各学習パターンの各特徴を計算し、前記各学習パターンの各特徴と、クラス情報と、を配置してなる前記分類テーブルにより前記学習パターンを分類する工程と、
前記特徴抽出手段は、前記特徴のセットを用いて、該順位の特徴が予め定めた値となる確率を示している、前記入力パターンの各特徴を算出する工程と、
前記診断手段は、前記入力パターンの各特徴と、前記特徴のセットの各特徴の決定の際に前記学習パターンが属する集合を逐次記録してなる遷移テーブルと、に基いて前記入力パターンが予め定められたクラス情報を有する確率を算出し、診断する工程とを有することを特徴とする病理診断支援方法。
【請求項30】
前記学習パターン入力手段及び前記パターン入力手段は、
染色された前記病理画像中の各画素のRGB値から、予め設定された腫瘍細胞核が属する色領域に属する画素を選択する工程と、
前記色領域の分布の中心と前記色領域に属する各画素との距離を算出する工程と、
前記距離に応じて前記各画素に信号を付与する工程と、
前記病理画像中における前記信号の分布からピークを検出する工程と、
前記ピークを中心としたイメージを前記学習パターンとして入力する工程とを有することを特徴とする請求項27から29のいずれか1項記載の病理診断支援方法。
【請求項31】
前記特徴候補生成手段が生成する特徴候補には、複素ガボール関数を特徴抽出関数から得られる特徴候補が含まれることを特徴とする請求項27から30のいずれか1項記載の病理診断支援方法。
【請求項32】
前記特徴候補生成手段が生成する特徴候補には、複素ガボール関数を規格化した特徴抽出関数から得られる特徴候補が含まれることを特徴とする請求項27から30のいずれか1項記載の病理診断支援方法。
【請求項33】
前記特徴候補生成手段が生成する特徴候補には、腫瘍の色を識別する特徴候補が含まれることを特徴とする請求項27から32のいずれか1項記載の病理診断支援方法。
【請求項34】
前記特徴決定手段は、前記学習パターン入力手段によって算出された前記学習パターンに含まれる前記各画素の信号と、予め設定された閾値とを比較する工程を有することを特徴とする請求項33記載の病理診断支援方法。
【請求項35】
前記特徴決定手段は、前記学習パターン入力手段によって算出された前記学習パターンに含まれる前記各画素の信号と、前記各画素近傍に位置する画素の信号の平均値とを比較する工程を有することを特徴とする請求項33記載の病理診断支援方法。
【請求項36】
前記特徴決定手段は、前記各学習パターンに対して、前記特徴候補毎に予め定められたノイズパラメータによる操作を加える工程を有することを特徴とする請求項31、32、又は35記載の病理診断支援方法。
【請求項37】
前記特徴決定手段は、前記各特徴候補に対応する前記各学習パターンの特徴として、前記各学習パターンの特徴が、予め定めた値をとる確率を計算する工程を有することを特徴とする請求項31、32、又は35記載の病理診断支援方法。
【請求項38】
前記特徴の値に関らず、前記学習パターンを分類できるとき、前記分類テーブル作成手段は、前記分類テーブルの対応する位置に、前記特徴の値に代えて冗長項を置く工程を有することを特徴とする請求項27から37のいずれか1項記載の病理診断支援方法。
【請求項39】
前記入力パターンの各特徴は、該順位の特徴が予め定めた値となる確率の値であって、
前記診断手段は、前記各特徴を用いて、前記分類テーブルに含まれる各特徴パターンが予め定めたクラス情報の値となる確率を計算して判定を行う工程を有することを特徴とする請求項27から38のいずれか1項記載の病理診断支援方法。
【請求項40】
病理画像に患者固有の情報が付加された病理画像データを保持する情報処理端末と、前記病理画像データを診断する病理診断サーバとを有する病理診断支援システムにおいて、
前記病理診断サーバは、
前記病理画像データが有する前記病理画像を診断する請求項1から13のいずれか1項記載の病理診断支援装置と、
前記病理診断支援装置による診断結果を前記患者固有の情報とともに記憶する診断結果記憶手段とを有し、
前記情報処理端末は、前記患者固有の情報を伴って前記診断結果の送信を要求し、
前記病理診断サーバは、前記情報処理端末から受信した前記患者固有の情報と前記診断結果とともに記憶された前記患者固有の情報とを比較し、前記情報処理端末から受信した前記患者固有の情報と前記診断結果とともに記憶された前記患者固有の情報とが一致したとき、前記診断結果を前記情報処理端末に送信することを特徴とする病理診断支援システム。
【請求項41】
前記病理診断支援装置及び前記情報処置端末の使用料金を保持する課金サーバを有することを特徴とする請求項40記載の病理診断支援システム。
【請求項42】
前記課金サーバは、前記診断結果記憶手段に前記診断結果が記憶されたとき、前記病理診断支援装置の使用料金を加算することを特徴とする請求項41記載の病理診断支援システム。
【請求項43】
前記課金サーバは、前記情報処理端末が前記診断結果を受信したとき、前記情報処理端末の使用料金を加算することを特徴とする請求項41又は42記載の病理診断支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−153742(P2006−153742A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346911(P2004−346911)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】