説明

発光モジュール及び発光モジュール製造方法

【課題】発光部5の昇温による発光性能の低下を従来よりも抑えることができるVCSELモジュールを提供する。
【解決手段】発光基板10の表面上に形成された発光する発光部5と、発光部5に駆動電圧を供給するために発光部5の光出射箇所の周辺に設けられた導電性材料からなる駆動電極5gと、駆動電極5gに駆動電圧を導くための導電性材料からなる配線パターンと、発光部5の光出射箇所から出射された光を透過させるように発光基板10に対して空間を介して対向配設されたガラス板20とを有するVCSELモジュールにおいて、前記配線パターンを、ガラス板20の両面のうち、発光部5と対向する側の面、における発光部5の光出射箇所との非対向領域に形成し、配線パターンのリング電極26と駆動電極5gとを導電性材料からなる接合材29で接合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の表面上に形成された発光部と、発光部から出射された光を透過させるように発光部に対向配設されたガラス板とを有する発光モジュールに関するものである。また、かかる発光モジュールを製造する発光モジュール製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発光モジュールとして、例えば特許文献1に記載のようなVCSEL(Vertical-Cavity Surface-Emitting Laser)モジュールが知られている。VCSELモジュールは、半導体積層構造を具備する複数の発光部から、それぞれレーザー光をモジュールのベース面に垂直な方向に放出するものである。大量生産に適した製造工程で製造することが可能であるため低コスト化に有利な光電変換電子部品として知られている。
【0003】
図7は、従来のVCSELモジュールの要部を示す拡大断面図である。同図では、VCSELモジュールが有する複数の発光部のうち、1つの発光部5とその周囲構成とを拡大して示している。発光部5は、半導体基板2のおもて面上に形成されている。半導体基板2のおもて面には、半導体材料からなるバッファ層3と、複数の半導体層の積層構造からなる下部分布ブラッグ反射層(下部DBR層)4とが全面に渡って順次積層されている。そして、発光部5は、半導体基板2の全面に渡って形成された下部DBR層4の表面から円柱状に突出するように形成されている。発光部5の円柱構造の内部においては、下部スペーサ層5a、活性層5b、上部スペーサ層5c、電流狭窄層5d、複数の半導体層の積層構造からなる上部分布ブラッグ反射層(上部DBR層)5e、コンタクト層5fが下部DBR層4の上に順次積層されている。これらの層は何れも、半導体材料から構成されている。発光部5の頂部には、中心に開口を有するドーナッツ状の駆動電極5gが上部コンタクト層5fの上に形成されている。この駆動電極5gにおける中心の開口が、発光部5の光出射箇所となっている。
【0004】
発光部5の円柱周面や、下部DBR層4の表面における発光部非形成領域には、ポリイミド等の絶縁性材料からなる絶縁膜6が被覆されている。また、ドーナッツ状の駆動電極5gには、外部からの電気信号を導くためのリード7が接続されている。このリードは、発光部5の頂部から下部に向けて円柱周面上を立ち下がった後、複数の発光部の間を通り抜けて基板の外縁部まで延びるように形成されている。また、半導体基板2の裏面には、複数の発光部5をそれぞれアースに接続するためのアース電極8が形成されている。
【0005】
VCSELモジュールの外部に設けられた図示しないドライバICから出力された電圧が、リード7を介して発光部5のドーナッツ状の駆動電極5gに印加されると、発光部5内において、活性化した活性層5bから光が発生する。この光は、下部DBR層4と上部DBR層5eとの間で多重反射しながら、ドーナッツ状の駆動電極5gの開口からレーザー光として出射される。そして、その開口に対向するように配設されたガラス板20を透過してVCSELモジュールの外部に放たれる。
【0006】
なお、半導体基板2の図示しない外縁部とガラス板20との間には封止材が固定されており、これによって下部DRB層4とガラス板20との間に形成される空間が密閉空間70になっている。この密閉空間70には、モジュール内での結露を抑えるなどの目的から窒素ガス等が封入されている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−188471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような構成のVCSELモジュールにおいては、発光部内で光の多重反射に伴って発生した熱が、熱伝導率の高い材料である金属からなる駆動電極5g及びリード7とに伝わる。複数の発光部5を避けるようにして這い回されているリード7の下に存在する絶縁膜6は、ポリイミド等の耐熱性樹脂から構成されている。この耐熱性樹脂は、リード7と下部DRB層4との絶縁状態を確保し、昇温したリード7の熱に耐えることができ、且つ半導体からなる下部DRB層4に対して良好に固着することが可能である。一般に、このような耐熱性樹脂は熱導電性が悪いため、絶縁膜6はリード7の熱を吸収し難い。このため、リード7は発光部5からの熱伝導によって徐々に高温になっていく。すると、発光部5が徐々に冷やされ難くなっていき、やがて発光性能に支障をきたすまで昇温してしまうことがあった。このような問題は、VCSELモジュールのような発光部を複数有する発光モジュールに限らず、発光部を1つだけ有する発光モジュールにおいても同様に起こり得る。
【0009】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、発光部の昇温による発光性能の低下を従来よりも抑えることができる発光モジュールを提供することである。また、かかる発光モジュールを製造することができる発光モジュール製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、電気信号に基づいて光を発する光電変換素子を備える基板の表面上に形成された発光する発光部と、該発光部に駆動電圧を供給するために該発光部の光出射箇所の周辺に設けられた導電性材料からなる駆動電極と、該駆動電極に駆動電圧を導くための導電性材料からなる配線パターンと、該光出射箇所から出射された光を透過させるように該基板に対して空間を介して対向配設されたガラス板とを有する発光モジュールにおいて、上記配線パターンを、上記ガラス板の両面のうち、上記電気信号に基づいて光を発する光電変換素子と対向する側の面、における上記光出射箇所との非対向領域に形成し、該配線パターンと該駆動電極とを導電性材料からなる接合材で接合したことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の発光モジュールにおいて、上記駆動電極、上記配線パターン、上記接合材として、それぞれ金属材料を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の発光モジュールにおいて、上記駆動電極の金属材料、上記配線パターンの金属材料として、それぞれ、銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル、ベリリウム又はこれら金属の組合せを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、電気信号に基づいて光を発する光電変換素子を備える基板の表面上に形成された発光する発光部と、該発光部に駆動電圧を供給するために該発光部の光出射箇所の周辺に設けられた導電性材料からなる駆動電極と、該駆動電極に駆動電圧を導くための導電性材料からなる配線パターンと、該光出射箇所から出射された光を透過させるように該基板に対して空間を介して対向配設されたガラス板とを有する発光モジュールを製造する発光モジュール製造方法において、上記配線パターンを、上記ガラス板の両面のうち、上記電気信号に基づいて光を発する光電変換素子と対向する側の面、における上記光出射箇所との非対向領域に形成するパターン形成工程と、該配線パターンと該駆動電極とを導電性材料からなる接合材で接合する接合工程とを実施して、請求項1乃至3の何れかの発光モジュールを製造することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4の発光モジュール製造方法において、上記接合工程にて、レーザー光を上記ガラス板に向けて上記発光部の反対側から照射し、該ガラス板を透過した後のレーザー光によって上記配線パターン上の上記接合材を溶融させて、該配線パターンと上記駆動電極とを接合することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
これらの発明においては、発光部が形成された基板の表面上ではなく、基板に対して空間を介して対向している光透過性部材における基板と対向する側の面に、配線パターンを形成している。そして、この配線パターンと、発光部の光出射箇所の周囲に設けられた駆動電極とを導電性材料からなる接合材で接合している。発光部で発生した熱は、駆動電極と接合材とを介して配線パターンに伝わった後、配線パターンを保持しているガラス板に吸収される。このガラス板を構成するガラス材料は、従来の発光モジュールにおいて半導体基板の表面において配線パターンを保持していた絶縁膜の耐熱性樹脂材料よりも熱伝導性に優れているため、絶縁膜よりも良好に配線パターンの熱を吸収する。そして、その熱を板の厚み方向に伝えた後、反対側の面から外気に放出する。これにより、配線パターンを良好に冷却することで、発光部の昇温を従来よりも抑える。よって、発光部の昇温による発光性能の低下を従来よりも抑えることができる。
【0012】
特に、請求項2の発明においては、金属材料からなる駆動電極、配設パターン、これら両者間に存在する接合材が、何れも熱伝導率の高い金属材料からなることで、発光部で発生した熱を速やかに吸収することができる。
【0013】
また特に、請求項3の発明においては、発光モジュールの発光部内で発生した熱を、銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル、ベリリウム又はこれら金属の組合せからなる駆動電極や配線パターンに速やかに伝えることができる。
【0014】
また特に、請求項4の発明においては、パターン形成工程と接合工程とを実施することで、請求項1乃至3の発光モジュールを製造することができる。
【0015】
また特に、請求項5の発明においては、ガラス板を透過させたレーザー光によって接合材を溶融させることで、発光モジュール全体を炉内で加熱することなく配線パターンと駆動電極とを接合することが可能となる。よって、炉内で加熱することによる発光モジュールの劣化を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を適用した発光モジュールであるVCSELモジュールの一実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係るVCSELモジュールに用いられる発光基板10を示す平面図である。また、図2は、発光基板10を示す断面図である。これらの図において、発光基板10は、GaAs等からなる半導体基板2のおもて面上に40個の発光部5を有している。
【0017】
図3は、発光基板10の要部を示す拡大断面図である。同図では、発光基板10が有する複数の発光部のうち、1つの発光部5とその周囲構成とを拡大して示している。
【0018】
発光基板10の発光部5は、半導体基板2のおもて面上に形成されている。半導体基板2のおもて面には、GaAs等の半導体材料からなるバッファ層3と、AlGaAs等からなる複数の半導体層の積層構造を具備する下部DBR層4とが全面に渡って順次積層されている。そして、発光部5は、半導体基板2の全面に渡って形成された下部DBR層4の表面から円柱状に突出するように形成されている。発光部5の円柱構造の内部においては、AlGaInP等の半導体材料からなる下部スペーサ層5a、GaInAsP−GaInP等の半導体材料からなる活性層5b、AlGaInP等の半導体材料からなる上部スペーサ層5c、AlAs等の半導体材料からなる電流狭窄層5d、AlGaAs等からなる複数の半導体層の積層構造を具備する上部DBR層5e、GaAs等の半導体材料からなるコンタクト層5fが下部DBR層4の上に順次積層されている。そして、発光部5の頂部には、中心に開口を有するドーナッツ状の駆動電極5gが上部コンタクト層5fの上に形成されている。外部の電源から供給される駆動電圧を駆動電極5gに導くために、従来構成において駆動電極5gから外部に向けて延びるようにして設けられていたワイヤーボンディングによるワイヤーは、実施形態に係る発光基板10には設けられていない。発光部5の上部にリング状の駆動電極5gが孤立して存在した状態になっている。
【0019】
発光部5の円柱周面や、下部DBR層4の表面における発光部非形成領域には、ポリイミド等の絶縁性材料からなる絶縁膜6が被覆されている。また、半導体基板2の裏面には、複数の発光部5をそれぞれアースに接続するためのアース電極8が形成されている。
【0020】
図4は、本実施形態に係るVCSELモジュールに用いられるガラス板20を示す平面図である。また、図5は、ガラス板20と発光基板10との要部を示す拡大断面図である。ガラス板20は、ガラス板部23と、配線パターン25とを有している。そして、ガラス板部23は、BK7、D263、CG−1、合成石英、あるいはソーダライムガラス等からなるガラス基層21と、これの両面にそれぞれ被覆された反射防止膜22とを有している。反射防止膜22は、ガラス基層21の表面に形成されたSiOからなる厚さ100[nm]のSiO膜と、これの表面に被覆されたSiOからなる厚さ100[nm]のSiO膜とを有する2層構造のものであり、何れの膜も蒸着によって形成されている。
【0021】
配線パターン25は、ガラス板20のガラス板部23における一方の面に形成されている。そして、発光基板10の40個の発光部5との対向位置にそれぞれ設けられたリング電極部26と、それぞれのリング電極部26からガラス板20の外縁部に向けて延びるリード部(配線部)27と、それぞれのリード部27の端部に設けられた矩形状のパッド部28とを有している。なお、図4は、ガラス板20を配線パターン非形成面側から示しているが、ガラス板部23が透明であるため、裏面側の配線パターン25が透けて見えている。
【0022】
ガラス板20の配線パターン25における40個のリング電極部26の直下には、それぞれ発光基板10の40個の発光部5がそれぞれ位置する。リング電極部26の表面には、はんだ、モリブデン、亜鉛、コバルト、タングステン、スズ、カドニウム等の金属材料からなる接合材29がリング状に設けられており、これによってリング電極部26と駆動電極5gとが接合されている。
【0023】
図示しないドライバICからリード7などを介して駆動電極5gに駆動電圧が印加されると、発光部5内において、活性化した活性層5bから光が発生する。この光は、下部DBR層4と上部DBR層5eとの間で多重反射しながら、ドーナッツ状の駆動電極5gの開口から波長780[nm]のレーザー光として出射される。発光部5の光出射箇所である駆動電極5g開口から出射されたレーザー光は、配線パターン25に遮られることなく、配線パターン25におけるリング電極部26の中央開口を通った後、ガラス板20のガラス板部23を透過する。このように、配線パターン25は、ガラス板20の両面のうち、発光基板10の発光部(5)と対向する側の面、における駆動電極5g開口(光出射箇所)との非対向領域に形成されている。
【0024】
発光部5で発生した熱は、駆動電極5gと、接合材29とを介して配線パターンたるリード27に伝わった後、リード27を保持しているガラス板20に吸収される。このガラス板を構成するガラス材料は、従来の発光モジュールにおいて半導体基板の表面において配線パターンを保持していた絶縁膜の耐熱性樹脂材料よりも熱伝導性に優れているため、絶縁膜よりも良好にリード27の熱を吸収する。そして、その熱を板の厚み方向に伝えた後、反対側の面から外気に放出する。これにより、リード27を良好に冷却することで、発光部5の昇温を従来よりも抑える。よって、発光部5の昇温による発光性能の低下を従来よりも抑えることができる。
【0025】
駆動電極5gやリード27の金属材料としては、それぞれ熱伝導率が14[W/m・K]以上であるものを用いることが望ましい。かかる金属材料としては、銅(420W/m・K)、銀(390W/m・K)、金(320W/m・K)、アルミニウム(236W/m・K)、ニッケル(88W/m・K)、ベリリウム(201W/m・K)などが挙げられる。但し、これらの金属材料に限られるものではない。また、本発明における駆動電極や配線パターンを構成する導電性材料としては、金属材料の他、樹脂等の絶縁性材料にカーボン粉末等の導電性材料を含有せしめた非金属材料を用いることも可能である。
【0026】
図6は、VCSELモジュールを、配線基板90に実装した電子回路基板を示す断面図である。配線基板90の図示しない領域には、VCSELモジュールの図示しない40個の発光部5をそれぞれ個別に駆動するための図示しないドライバICが実装されている。また、配線基板90には、VCSELモジュールの発光基板10を受け入れるための開口90aが形成されている。VCSELモジュールは、発光基板10を配線基板90の開口90a内に挿入しつつ、自らの外縁部を配線基板90における開口90aの周囲箇所に引っ掛けるような姿勢で、配線基板90に実装されている。
【0027】
配線基板90において、開口90aの周囲箇所には、40個のモジュール接合用電極パッドを有する配線パターン91が形成されている。VCSELモジュールは、上述したように、ガラス板20の配線パターン(25)の一部であり、且つガラス板20の外縁部に形成された40個のパッド部(図4の28)を有している。それら40個のパッド部が、それぞれ接合材92を介して、配線基板90の開口90aの周囲にある40個のモジュール接合用電極パッドに接合されている。配線基板90において、40個のモジュール接合用電極パッドは、それぞれ上述したドライバICの出力端子にそれぞれ個別に接続されている。これにより、ドライバICの40個の出力端子からそれぞれ個別に出力される駆動電圧が、配線基板90のモジュール接合用電極バッドと、VCSELモジュールの配線パターン(25)とを介して、発光基板10の40個の発光部5にそれぞれ個別に印加される。なお、発光基板10の裏面に設けられたアース電極8は、導電性接着剤94を介して、配線基板90のグランド電極93に接続されている。
【0028】
本実施形態に係るVCSELモジュールを製造する発光モジュール製造方法においては、発光基板10を製造する発光基板製造工程と、ガラス板20を製造するガラス板製造工程と、発光基板10をガラス板20に接合する接合工程とを実施する。発光基板10を製造する発光基板製造工程については、周知の従来工程と変わりないので、説明を省略する。
【0029】
ガラス板製造工程においては、ガラス基層21の両面に反射防止膜22をそれぞれ形成する反射防止膜形成工程と、一方の反射防止膜22の表面上に配線パターン25を形成するパターン形成工程と、接合材からなる接合層を形成する接合層形成工程と、洗浄工程とを実施する。
【0030】
反射防止膜形成工程では、まず、ガラス基層21の無垢の表面にSiOからなるSiO膜を蒸着によって100[nm]の厚みで形成した後、そのSiO層の上にSiO膜からなるSiO膜を蒸着によって100[nm]の厚みで形成する。これにより、ガラス基層21の両面にそれぞれ厚さ200[nm]の反射防止膜22が形成される。
【0031】
パターン形成工程では、配線パターン25として、反射防止膜22の表面から所定の厚みをもって突出するものを形成する。この配線パターン25は、反射防止膜22の無垢の表面に固着したアルミニウムからなるアルミニウム層と、これの表面に積層されたニッケルメッキ層と、これの表面に積層された金メッキ層との3層構造からなる。かかる3層構造の配線パターン25を形成するための具体的な工程は次の通りである。即ち、まず、一方の反射防止膜22の全面に、アルミニウム層をスパッタ法によって形成した後、フォトリソグラフィー法を採用したエッチング処理により、そのアルミニウム層を図4に示した配線パターン25の形状にパターン加工する。次いで、パターン化されたアルミニウム層の表面や側面に、ニッケルメッキ層と金メッキ層とを順次積層する。スパッタ法によるアルミニウム層の形成条件は次の通りである。
(1)スパッタリング装置:
・メーカ名 :神港精機株式会社
・型 式 :SRV4311
・性 能 :3源マグネトロンスパッタ源(500W以上)、
基板冷却加熱回転機構(300°C常用以上)
(2)諸条件
・真空度:3.7×10−5Pa
・ターゲット:純アルミ
・スパッタ条件(表1参照)
・成膜厚み:経験からのアルミ成膜条件が0.66μm/hであり、90分の成膜処理で0.99μm≒1μmのアルミ層を形成する。
【0032】
【表1】

【0033】
アルミ層は、はんだと接合し難い性質であるため、接合不良を引き起こすおそれがある。そこで、アルミ層の上に所定の厚さのニッケルメッキ層(例えば、厚さ:3μm)を形成し、更にその上に金メッキ層(例えば、厚さ:450nm)を形成する。この金メッキ層は、溶融はんだと良好に接合することができる。金メッキ層と、アルミ層との間に、両者に良好に固着することができるニッケルメッキ層を介在させることで、剥がれ難い金メッキ層をアルミ層上に形成することができる。
【0034】
ニッケルメッキ層については、次の(1)〜(8)の工程で形成することができる。これらの工程において亜鉛置換を2回行うのは、亜鉛の被膜を均一にして密着性を高めるためである。
(1)脱脂:メッキ対象の表面に付着した加工油や汚れなどを除去する。
(2)エッチング:表面を薄く溶かし自然酸化被膜などを除去する。
(3)デスマット:エッチングで表面に生じた不純物を除去する。
(4)第一亜鉛置換:アルミの表面に薄い亜鉛被膜を生成する。
(5)置換層剥離:亜鉛被膜を除去する。
(6)第二亜鉛置換:再度、アルミの表面に薄い亜鉛被膜を生成する。
(7)無電解Niメッキ:次亜リン酸による還元反応でニッケルをメッキする。
(8)乾燥:水分を除去する。
【0035】
パターン形成工程を実施した後には、接合層形成工程を実施する。この接合層形成工程では、少なくとも、印刷工程と溶融工程と固化工程とを実施する。そして、印刷工程では、周知の印刷マスクを用いた印刷法により、配線パターン25の40個のリング電極部26の表面上や、40個のパッド部26の表面上にそれぞれクリームはんだを印刷する。また、溶融工程では、クリームはんだ印刷済みのガラス板20をリフロー炉内で加熱して、クリームはんだ中のはんだを溶融させる。このとき、リング電極部26やパッド部26の表面上で溶融した溶融はんだは、それらの表面上に伝わりながら濡れ広がり、やがて電極側面やパッド側面まで至る。このようにして溶融はんだを濡れ広がらせた後、ガラス板20をリフロー炉から取り出して冷却することで、溶融はんだを固化させる固化工程を実施すると、リング電極部26やパッド部26の表面上において、リングやパッドの外縁よりも外側に突出する接合層を得ることができる。
【0036】
このような接合層形成工程を実施したら、次に、洗浄工程を実施する。この洗浄工程では、フラックスを溶解することが可能なイソプロピルアルコール、エタノールなどの有機溶媒にて、配線基板の配線パターン形成面を洗浄する。この洗浄により、接合層の表面に残留したフラックスを除去することで、残留フラックスによる発光基板10や配線基板90の電極劣化の発生を回避することができる。
【0037】
以上のような工程により、ガラス板20を製造する。そして、得られたガラス板20に発光基板10を接合する接合工程を実施して、VCSELモジュールを得る。この接合工程では、配線パターン形成面を重力方向下方に向けた発光基板10における配線パターン25のリング電極部26上に形成された接合層と、発光基板10の発光部5の駆動電極5gとを接触させるように、ガラス板20を発光基板10の上に載置する。そして、ガラス板20の上側からレーザー光を照射し、ガラス板20のガラス板部23を透過した後のレーザー光をリング電極部26の裏面に当てる。このとき、レーザー光は、リング電極部26の裏面だけでなく、リング電極部26の上に形成された接合層における、リング電極26の外縁よりも外側に突出している箇所に直接当たる。これにより、接合層を良好に溶融させることができる。
【0038】
以上のようにしてガラス板20と発光基板10とを接合したら、次に、窒素ガスの存在する容器内において、図6に示したように、発光基板10の外縁と、ガラス板20との間に樹脂50を固着させて、密閉空間70内に窒素ガスを封止して、VCSELモジュールを得る。
【0039】
このようにして製造したVCSELモジュールを、配線基板90に実装するときには、VCSELモジュールの発光基板10を配線基板90の開口90a内に挿入しつつ、発光基板10の外縁部を配線基板90の開口90aの周囲に引っ掛けるようにして、VCSELモジュールを配線基板90上に載置する。そして、ガラス板20のパッド部28上の接合層と、配線基板90の配線パターン91のモジュール接合用電極パッドとを接触させた状態で、ガラス板20の配線パターン非形成面に向けてレーザー光を照射する。そして、ガラス板20のガラス板部23を透過した後のレーザー光をパッド部28の裏面に当てる。このとき、レーザー光は、パッド部28の裏面だけでなく、パッド部26上に形成された接合層における、パッド外縁よりも外側に突出している箇所に直接当たる。これにより、接合層を良好に溶融させることができる。
【0040】
VCSELモジュールと配線基板とをレーザー照射によって接合したら、発光基板10のアース電極8と、配線基板90のグランド電極93とを導電性接着剤94によって接続する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施形態に係るVCSELモジュールに用いられる発光基板を示す平面図。
【図2】同発光基板を示す断面図。
【図3】同発光基板の要部を示す拡大構成図。
【図4】同VCSELモジュールに用いられるガラス板を示す平面図。
【図5】同ガラス板と同発光基板との要部を示す拡大断面図。
【図6】同VCSELモジュールを配線基板に実装した電子回路基板を示す断面図。
【図7】従来のVCSELモジュールの要部を示す拡大断面図。
【符号の説明】
【0042】
2:半導体基板
3:バッファ層
4:下部DBR層
5:発光部
5a:下部スペーサ層
5b:活性層
5c:上部スペーサ層
5d:電流狭窄層
5e:上部DBR層
5g:駆動電極(リング中央開口が光出射箇所)
20:ガラス板
25:配線パターン
26:リング電極部
27:リード部
28:パッド部
29:接合材
70:密閉空間(空間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号に基づいて光を発する光電変換素子を備える基板の表面上に形成された発光する発光部と、該発光部に駆動電圧を供給するために該発光部の光出射箇所の周辺に設けられた導電性材料からなる駆動電極と、該駆動電極に駆動電圧を導くための導電性材料からなる配線パターンと、該光出射箇所から出射された光を透過させるように該基板に対して空間を介して対向配設されたガラス板とを有する発光モジュールにおいて、
上記配線パターンを、上記ガラス板の両面のうち、上記電気信号に基づいて光を発する光電変換素子と対向する側の面、における上記光出射箇所との非対向領域に形成し、該配線パターンと該駆動電極とを導電性材料からなる接合材で接合したことを特徴とする発光モジュール。
【請求項2】
請求項1の発光モジュールにおいて、
上記駆動電極、上記配線パターン、上記接合材として、それぞれ金属材料を用いたことを特徴とする発光モジュール。
【請求項3】
請求項2の発光モジュールにおいて、
上記駆動電極の金属材料、上記配線パターンの金属材料として、それぞれ、銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル、ベリリウム又はこれら金属の組合せを用いたことを特徴とする発光モジュール。
【請求項4】
電気信号に基づいて光を発する光電変換素子を備える基板の表面上に形成された発光する発光部と、該発光部に駆動電圧を供給するために該発光部の光出射箇所の周辺に設けられた導電性材料からなる駆動電極と、該駆動電極に駆動電圧を導くための導電性材料からなる配線パターンと、該光出射箇所から出射された光を透過させるように該基板に対して空間を介して対向配設されたガラス板とを有する発光モジュールを製造する発光モジュール製造方法において、
上記配線パターンを、上記ガラス板の両面のうち、上記電気信号に基づいて光を発する光電変換素子と対向する側の面、における上記光出射箇所との非対向領域に形成するパターン形成工程と、該配線パターンと該駆動電極とを導電性材料からなる接合材で接合する接合工程とを実施して、請求項1乃至3の何れかの発光モジュールを製造することを特徴とする発光モジュール製造方法。
【請求項5】
請求項4の発光モジュール製造方法において、
上記接合工程にて、レーザー光を上記ガラス板に向けて上記発光部の反対側から照射し、該ガラス板を透過した後のレーザー光によって上記配線パターン上の上記接合材を溶融させて、該配線パターンと上記駆動電極とを接合することを特徴とする発光モジュール製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−194151(P2009−194151A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33207(P2008−33207)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(593128172)リコーマイクロエレクトロニクス株式会社 (52)
【Fターム(参考)】