説明

発光装置及びその作製方法

【課題】有機発光層と有機化合物からなるキャリア輸送層を用いた高効率で、特性劣化の少ない発光装置を提供することを目的とする。
【解決手段】基板上に、陽極と、前記陽極と対向する陰極と、前記陽極と陰極の間に設けられた有機化合物からなる発光層と、有機化合物からなるキャリア輸送層を有し、前記発光層と前記キャリア輸送層とが交互に積層されており、前記キャリア輸送層の膜厚は前記発光層の膜厚よりも薄く、前記キャリア輸送層が正孔輸送層の場合には前記発光層は電子輸送性発光層であり、前記キャリア輸送層が電子輸送層の場合には前記発光層は正孔輸送性発光層である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ等に用いられる発光装置及びその作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化社会の進歩に伴い、従来のCRTよりも低消費電力でかつ薄型のディスプレイへのニーズが高まっている。このようなディスプレイとしては、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイがあり、すでに実用化されている。
【0003】
最近これらのディスプレイよりもさらに低消費電力化、鮮明なフルカラー化を目指して、有機化合物を利用した発光装置の開発が進んでいる。これは固体状態で強い蛍光や燐光を発する有機化合物の固体薄膜の両面に電極(陽極、陰極)を取り付けたものである。そして陽極からは正孔を注入し、陰極からは電子を注入して有機化合物中でその正孔と電子とを再結合させることにより有機化合物の励起状態を作り出し、その励起状態が基底状態に戻る時にその有機化合物の蛍光や燐光と同じ波長の光を放出する。
【0004】
発光装置の構造は、正孔の移動、電子の移動、正孔と電子の再結合という3つの役割を単一の有機化合物層に担当させる単層構造のものや、3つの役割を分散させて2層構造あるいは3層構造としたもの等が報告されている。例えば正孔輸送層、発光層、電子輸送層を形成したものが挙げられる。
【0005】
しかしながら報告されている発光装置は発光効率が低く実用化に耐えられないという問題がある。この問題を解決するために特許文献1では、有機発光層と無機化合物とを交互に積層した超格子構造の発光装置を提供している。
【特許文献1】特開平8−102360号公報
【0006】
特許文献1に記載のものは有機発光層と無機化合物とを交互に積層したものであるため、応力のために特性が劣化するおそれがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は有機発光層と有機化合物からなるキャリア輸送層を用いた多重積層構造により高効率で、特性劣化の少ない発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は有機化合物からなる発光層と有機化合物からなるキャリア輸送層を交互に多重積層した構造を有する発光装置である。電極、・・・、発光層、キャリア輸送層、発光層、キャリア輸送層、発光層、キャリア輸送層、・・・、電極という構成を有する。またキャリア輸送層と発光層とは交互に2〜n(nは正の整数)層積層することができる。例えば以下のものを挙げることができる。
(1)陽極、正孔輸送層、発光層、正孔輸送層、発光層、正孔輸送層、発光層、正孔輸送層、・・・、発光層、電子輸送層、陰極
(2)陽極、第1の正孔輸送層、発光層、第2の正孔輸送層、発光層、第2の正孔輸送層、発光層、第2の正孔輸送層、・・・、発光層、電子輸送層、陰極
(3)陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、発光層、電子輸送層、発光層、電子輸送層、・・・、発光層、電子輸送層、陰極
(4)陽極、正孔輸送層、発光層、第2の電子輸送層、発光層、第2の電子輸送層、発光層、第2の電子輸送層、・・・、発光層、第1の電子輸送層、陰極
ここで陽極近傍の構成としては、(ア)陽極、正孔注入層、正孔輸送層、(イ)陽極、正孔注入層、第1の正孔輸送層を用いることができる。また陰極近傍は、(ウ)電子輸送層、電子注入層、陰極、(エ)第1の電子輸送層、電子注入層、陰極、という構成にしてもよい。上記(2)において、第1の正孔輸送層と第2の正孔輸送層とが同じ材料である場合には、(1)の構成となる。また(4)において、第1の電子輸送層と第2の電子輸送層とが同じ材料である場合には、(3)の構成になる。
【0009】
また本発明では、キャリア輸送層は正孔輸送層、電子輸送層のいずれでもよい。しかし発光層が電子輸送性の場合にはキャリア輸送層は正孔輸送層となる。逆に発光層が正孔輸送性の場合にはキャリア輸送層は電子輸送層となる。
【0010】
また本発明はキャリア輸送層の膜厚が発光層の膜厚よりも薄い発光装置である。キャリア輸送層の膜厚は1nm以上、5nm以下、発光層の膜厚は5nm以上、20nm以下が好ましい。これによりトンネル効果に基づくキャリア移動が可能となる。
【0011】
また本発明はキャリア輸送層が正孔輸送層の場合(すなわち上記(1)の構成)、発光層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、正孔輸送層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも大きく(発光層のLUMO準位は正孔輸送層のLUMO準位よりも低く)、発光層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は正孔輸送層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも大きい(発光層のHOMO準位は正孔輸送層のHOMO準位よりも低い)ことが好ましい。なおLUMOとは、Lowest Unoccupied Molecular Orbiatal、最低非占有分子軌道のことであり、HOMOとは、Highest Occupied Molecular Orbiatal、最高占有分子軌道のことである。
【0012】
一方、キャリア輸送層が電子輸送層の場合(すなわち上記(3)の構成)、発光層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、電子輸送層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも小さく(発光層のLUMO準位は電子輸送層のLUMO準位よりも高く)、発光層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は電子輸送層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも小さい(発光層のHOMO準位は電子輸送層のHOMO準位よりも高い)ことが好ましい。
【0013】
上記(2)の構成の場合、発光層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、第2の正孔輸送層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも大きく(発光層のLUMO準位は第2の正孔輸送層のLUMO準位よりも低く)、発光層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、第2の正孔輸送層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも大きい(発光層のHOMO準位は第2の正孔輸送層のHOMO準位よりも低い)ことが好ましい。
【0014】
また第1の正孔輸送層のHOMO準位と発光層のHOMO準位とのエネルギー差の絶対値は、第2の正孔輸送層のHOMO準位と発光層のHOMO準位とのエネルギー差の絶対値よりも小さいことが好ましい。
【0015】
また陽極の仕事関数と第1の正孔輸送層のHOMO準位とのエネルギー差の絶対値は、第2の正孔輸送層のHOMO準位と発光層のHOMO準位とのエネルギー差の絶対値よりも小さいことが好ましい。
【0016】
上記(4)の構成の場合、発光層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、第2の電子輸送層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも小さく(発光層のLUMO準位は第2の電子輸送層のLUMO準位よりも高く)、発光層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、第2の電子輸送層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも小さい(発光層のHOMO準位は第2の電子輸送層のHOMO準位よりも高い)ことが好ましい。
【0017】
また第1の電子輸送層のLUMO準位と発光層のLUMO準位とのエネルギー差の絶対値は、第2の電子輸送層のLUMO準位と発光層のLUMO準位とのエネルギー差の絶対値よりも小さいことが好ましい。
【0018】
また陰極の仕事関数と前記第1の電子輸送層のLUMO準位とのエネルギー差の絶対値は、第2の電子輸送層のLUMO準位と発光層のLUMO準位とのエネルギー差の絶対値よりも小さいことが好ましい。
【0019】
本発明では有機化合物からなる発光材料と、有機化合物からなるキャリア輸送材料とを共蒸着して作製することができる。そして上記の多重積層構造を作製するに際し、シャッターやマスクを設け、シャッターやマスクの開閉によって発光層とキャリア輸送層の膜厚を制御することができる。
【0020】
例えば発光材料の蒸発源と被蒸着物である基板との間、キャリア輸送材料の蒸発源と被蒸着物である基板との間にシャッターやマスクを設け、シャッターやマスクの開閉によって膜厚を制御する。シャッターが開いているときやマスクがされていないときには基板に蒸着され、シャッターが閉じているときやマスクされているときは基板に蒸着されない。
【0021】
発光材料の蒸発源の方のシャッターやマスクが開いて基板に発光材料を蒸着しているときには、キャリア輸送材料の蒸発源の方のシャッターやマスクを閉じて基板に蒸着されないようにする。次に発光材料の蒸発源の方のシャッターやマスクを閉じて基板に蒸着されないようにし、キャリア輸送材料の蒸発源の方のシャッターやマスクを開いて基板にキャリア輸送材料を蒸着する。これにより発光層とキャリア輸送層を交互に積層することができる。
ただし本発明ではキャリア輸送層の膜厚は発光層の膜厚よりも薄くする必要があるのでシャッターやマスクの開閉時間を制御する必要がある。
【0022】
マスクは回転によって開閉するものであってもよい。またマスクの一部に孔やスリットが設けられていてもよい。
【0023】
またシャッターやマスクの開閉とともに蒸発源からの蒸着速度を変化させることにより、膜厚を変化させることができる。蒸着速度が低いときに、シャッターやマスクが開状態の時間が短ければ膜厚は薄くなる。逆に蒸着速度を高くして、シャッターやマスクが開状態になる時間が長ければ膜厚は厚くなる。
【0024】
被蒸着物である基板は回転(いわゆる自転)していてもよい。基板を回転させることにより膜厚の面内分布の均一性を向上できる。
【0025】
また発光材料が入った蒸発源とキャリア輸送材料が入った蒸発源とを距離を離して固定し、基板を移動させながら回転(いわゆる公転)させることにより、蒸着量を変化させることが可能である。また自転と公転とを組み合わせて基板を回転させてもよい。
【0026】
例えば第1の回転板に基板を設け、発光材料の蒸発源及びキャリア輸送材料の蒸発源の上に第1の回転板を設け、第1の回転板が回転して、発光材料の蒸発源と基板との距離と、キャリア輸送材料の蒸発源と基板との距離が変化することによって、発光層とキャリア輸送層を交互に積層する。
【0027】
第1の回転板が回転すると、発光材料の蒸発源と基板との距離と、キャリア輸送材料の蒸発源と基板との距離が変化する。発光材料の蒸発源と基板の距離が短い場合には、より多くの発光材料が基板に蒸着されて発光層が形成される。一方、キャリア輸送材料の蒸発源と基板の距離が短い場合には、より多くのキャリア輸送材料が基板に蒸着されてキャリア輸送層が形成される。このように第1の回転板を回転させて蒸発源に対する基板の位置を変えることによっても発光層とキャリア輸送層を交互に積層でき、多重積層構造を実現できる。
またここでは基板を移動させているが、基板を固定して発光材料の蒸発源、キャリア輸送材料の蒸発源の方を移動させてもよい。
【0028】
ただし本発明ではキャリア輸送層の膜厚は発光層の膜厚よりも薄くする必要がある。そこで蒸発源からの蒸着速度を制御したり、キャリア輸送材料と基板との間にシャッターやマスクを設けて開閉時間を制御してもよい。
【0029】
第1の回転板とは異なる中心軸を有し、独立に回転する第2の回転板を第1の回転板上に設け、第2の回転板に基板を設けてもよい。第2の回転板を回転(いわゆる基板の自転)させて基板面内における膜厚の均一性を向上させてもよい。
【0030】
また本発明は電極とキャリア輸送層との間に有機化合物と金属化合物からなるバッファ層を設けてもよい。これにより平坦性を向上させることができる。すなわち(オ)陽極、バッファ層、正孔輸送層、(カ)陽極、バッファ層、第1の正孔輸送層、(キ)電子輸送層、バッファ層、陰極、(ク)第1の電子輸送層、バッファ層、陰極、という構成にしてもよい。この場合にも上述のように正孔注入層、電子注入層を設けてもよい。
【0031】
本発明は基板上に、陽極と、前記陽極と対向する陰極と、前記陽極と陰極の間に設けられた有機化合物からなる発光層と、有機化合物からなる正孔輸送層を有し、前記発光層と前記正孔輸送層とが交互に積層されており、前記正孔輸送層の膜厚は前記発光層の膜厚よりも薄く、前記発光層は電子輸送性発光層である。
【0032】
前記発光層と前記正孔輸送層とが交互に2〜n(nは正の整数)積層されている。
【0033】
前記正孔輸送層の膜厚は1nm以上、5nm以下であり、前記発光層の膜厚は5nm以上、20nm以下である。
【0034】
前記発光層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、前記正孔輸送層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも大きく、前記発光層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、前記正孔輸送層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも大きい。
【0035】
前記発光層のLUMO準位は前記正孔輸送層のLUMO準位よりも低く、前記発光層のHOMO準位は前記正孔輸送層のHOMO準位よりも低い。
【0036】
本発明は、基板上に、陽極と、前記陽極と対向する陰極と、前記陽極と陰極の間に設けられた有機化合物からなる発光層と、有機化合物からなる電子輸送層を有し、前記発光層と前記電子輸送層とが交互に積層されており、前記電子輸送層の膜厚は前記発光層の膜厚よりも薄く、前記発光層は正孔輸送性発光層である。
【0037】
前記発光層と前記電子輸送層とが交互に2〜n(nは正の整数)積層されている。
【0038】
前記電子輸送層の膜厚は1nm以上、5nm以下であり、前記発光層の膜厚は5nm以上、20nm以下である。
【0039】
前記発光層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、前記電子輸送層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも小さく、前記発光層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、前記電子輸送層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも小さい。
【0040】
前記発光層のLUMO準位は前記電子輸送層のLUMO準位よりも高く、前記発光層のHOMO準位は前記電子輸送層のHOMO準位よりも高い。
【0041】
陽極に接して有機化合物と金属化合物からなるバッファ層が設けられていてもよい。
【0042】
本発明は、基板上に、陽極と、前記陽極と対向する陰極と、前記陽極と陰極の間に設けられた有機化合物からなる発光層と、有機化合物からなる第1の正孔輸送層、有機化合物からなる第2の正孔輸送層を有し、前記発光層は電子輸送性発光層であり、前記陽極上に有機化合物からなる第1の正孔輸送層を有し、前記第1の正孔輸送層上に、有機化合物からなる発光層及び有機化合物からなる第2の正孔輸送層とが交互に積層され、前記第2の正孔輸送層の膜厚は前記発光層の膜厚よりも薄い。
【0043】
前記発光層と前記第2の正孔輸送層とが交互に2〜n(nは正の整数)積層されている。
【0044】
前記第2の正孔輸送層の膜厚は1nm以上、5nm以下であり、前記発光層の膜厚は5nm以上、20nm以下である。
【0045】
前記発光層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、前記第2の正孔輸送層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも大きく、前記発光層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、前記第2の正孔輸送層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも大きい。
【0046】
前記発光層のLUMO準位は前記第2の正孔輸送層のLUMO準位よりも低く、前記発光層のHOMO準位は前記第2の正孔輸送層のHOMO準位よりも低い。
【0047】
前記第1の正孔輸送層のHOMO準位と、前記発光層のHOMO準位とのエネルギー差の絶対値は、前記第2の正孔輸送層のHOMO準位と、前記発光層のHOMO準位とのエネルギー差の絶対値よりも小さくてもよい。
【0048】
前記陽極の仕事関数と、前記第1の正孔輸送層のHOMO準位とのエネルギー差の絶対値は、前記第2の正孔輸送層のHOMO準位と前記発光層のHOMO準位とのエネルギー差の絶対値よりも小さくてもよい。
【0049】
前記第1の正孔輸送層と前記陽極との間に有機化合物と金属化合物からなるバッファ層が設けられていてもよい。
【0050】
本発明は、基板上に、陽極と、前記陽極と対向する陰極と、前記陽極と陰極の間に設けられた有機化合物からなる発光層と、有機化合物からなる第1の電子輸送層、有機化合物からなる第2の電子輸送層を有し、有機化合物からなる発光層及び有機化合物からなる第2の電子輸送層とが交互に積層された層を有し、前記積層された層上に有機化合物からなる第1の電子輸送層を有し、前記第1の電子輸送層上に陰極を有し、前記第2の電子輸送層の膜厚は前記発光層の膜厚よりも薄い。
【0051】
前記発光層と前記第2の電子輸送層とが交互に2〜n(nは正の整数)積層されている。
【0052】
前記第2の電子輸送層の膜厚は1nm以上、5nm以下であり、前記発光層の膜厚は5nm以上、20nm以下である。
【0053】
前記発光層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、前記第2の電子輸送層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも小さく、前記発光層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、前記第2の正孔輸送層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも小さい。
【0054】
前記発光層のLUMO準位は前記第2の電子輸送層のLUMO準位よりも高く、前記発光層のHOMO準位は前記第2の正孔輸送層のHOMO準位よりも高い。
【0055】
前記第1の電子輸送層のHOMO準位と、前記発光層のHOMO準位とのエネルギー差の絶対値は、前記第2の電子輸送層のHOMO準位と、前記発光層のHOMO準位とのエネルギー差の絶対値よりも小さくてもよい。
【0056】
前記陰極の仕事関数と、前記第1の電子輸送層のHOMO準位とのエネルギー差の絶対値は、前記第2の電子輸送層のHOMO準位と前記発光層のHOMO準位とのエネルギー差の絶対値よりも小さくてもよい。
【0057】
前記第1の電子輸送層と前記陰極との間に有機化合物と金属化合物からなるバッファ層が設けられていてもよい。
【0058】
本発明は、基板上に、陽極と、前記陽極と対向する陰極と、前記陽極と陰極の間に設けられた有機化合物からなる発光層と、有機化合物からなるキャリア輸送層を有し、前記発光層と前記キャリア輸送層とが交互に積層されており、前記キャリア輸送層の膜厚は前記発光層の膜厚よりも薄い発光装置の作製方法であって、キャリア輸送材料の蒸発源及び発光材料の蒸発源の上には前記基板が設けられ、前記キャリア輸送材料の蒸発源と前記基板との間に開閉可能な第1のシャッターが設けられ、前記発光材料の蒸発源と前記基板との間に開閉可能な第2のシャッターが設けられ、前記第1及び第2のシャッターの開閉によって前記発光層と前記キャリア輸送層を交互に積層することを特徴とする発光装置の作製方法。
【0059】
前記第1のシャッターが開いているときに前記第2のシャッターを閉じて前記キャリア輸送材料を前記基板に蒸着し、前記第2のシャッターが開いているときに前記第1のシャッターを閉じて前記発光材料を前記基板に蒸着して前記発光層と前記キャリア輸送層を交互に積層する。
【0060】
前記第1及び第2のシャッターの開閉、前記発光材料の蒸着速度及び前記キャリア輸送材料の蒸着速度を制御して前記発光層と前記キャリア輸送層を交互に積層してもよい。
【0061】
本発明は、基板上に、陽極と、前記陽極と対向する陰極と、前記陽極と陰極の間に設けられた有機化合物からなる発光層と、有機化合物からなるキャリア輸送層を有し、前記発光層と前記キャリア輸送層とが交互に積層されており、前記キャリア輸送層の膜厚は前記発光層の膜厚よりも薄い発光装置の作製方法であって、第1の回転板上に前記基板が設けられ、発光材料の蒸発源及びキャリア輸送材料の蒸発源の上には前記第1の回転板が設けられ、前記第1の回転板が回転して、前記発光材料の蒸発源と前記基板との距離と、前記キャリア輸送材料の蒸発源と前記基板との距離が変化することによって、前記発光層と前記キャリア輸送層を交互に積層する。
【0062】
前記第1の回転板が回転して、前記発光材料の蒸発源と前記基板との距離が、前記キャリア輸送材料の蒸発源と前記基板との距離よりも短いときは前記発光材料が前記キャリア輸送材料よりも多く蒸着されて前記発光層が形成され、前記キャリア輸送材料の蒸発源と前記基板との距離が、前記発光材料の蒸発源と前記基板との距離よりも短いときは前記キャリア輸送材料が前記発光材料よりも多く蒸着されて前記キャリア輸送層が形成される。
【0063】
前記発光材料の蒸着速度及び前記キャリア輸送材料の蒸着速度を制御して前記発光層と前記キャリア輸送層を交互に積層してもよい。
【0064】
前記キャリア輸送層と前記基板との間には開閉可能なシャッターが設けられ、前記第1の回転板の回転を制御するとともに前記シャッターの開閉を制御して前記発光層と前記キャリア輸送層を交互に積層してもよい。
【0065】
前記第1の回転板上には第2の回転板が設けられ、前記第2の回転板上に前記基板が設けられ、前記第1の回転板と前記第2の回転板とは異なる中心軸を有し、それぞれ独立に回転させてもよい。
【0066】
本発明は、基板上に、陽極と、前記陽極と対向する陰極と、前記陽極と陰極の間に設けられた有機化合物からなる発光層と、有機化合物からなるキャリア輸送層を有し、前記発光層と前記キャリア輸送層とが交互に積層されており、前記キャリア輸送層の膜厚は前記発光層の膜厚よりも薄い発光装置の作製方法であって、キャリア輸送材料の蒸発源及び発光材料の蒸発源の上には前記基板が設けられ、前記発光材料の蒸発源と前記基板との間に回転可能な第1のマスクが設けられ、前記キャリア輸送材料の蒸発源と基板との間に回転可能な第2のマスクが設けられ、前記第1及び第2のマスクの回転を制御して前記発光層と前記キャリア輸送層を交互に積層する。
【0067】
前記第1及び第2のマスクにはスリット又は孔が設けられていてもよい。
【0068】
前記第1のマスクの前記孔又はスリットが前記発光材料の蒸発源と前記基板との間にあるときに、前記第2のマスクの前記孔又はスリットを前記キャリア輸送材料と前記基板の間に存在させないで前記発光材料を前記基板に蒸着し、前記第2のマスクの前記孔又はスリットが前記キャリア輸送材料の蒸発源と前記基板との間にあるときに、前記第1のマスクの前記孔又はスリットを前記発光材料と前記基板の間に存在させないで前記キャリア輸送材料を前記基板に蒸着して前記発光層と前記キャリア輸送層を交互に積層してもよい。
【0069】
前記発光材料の蒸着速度及び前記キャリア輸送材料の蒸着速度を制御して前記発光層と前記キャリア輸送層を交互に積層してもよい。
【発明の効果】
【0070】
本発明は有機化合物からなる発光層と有機化合物からなるキャリア輸送層を交互に多重積層した構造であり、無機化合物からなる層との多重積層構造ではないから応力が生じることはなく特性劣化の少ない、発光効率の高い発光装置を得ることができる。
【0071】
本発明は発光層とキャリア輸送層との極性が異なり、キャリア輸送層の膜厚が発光層の膜厚よりも薄く、上記したようなLUMO準位、HOMO準位を有する発光層、キャリア輸送層を有する。これによりキャリア輸送層と同じ極性のキャリアは閉じこめられ易くなり、異なる極性のキャリアはトンネル効果によって移動する。すなわち一方のキャリアを閉じこめることができ、発光効率を高めることができる。
【0072】
また電極とキャリア輸送層との間に有機化合物と金属化合物からなるバッファ層を設けることにより基板に凹凸があっても平坦性を向上させることができる。バッファ層の厚さとしては60nm以上でよい。本発明の場合にはバッファ層の厚さを厚くしても駆動電圧の上昇を招くことはない。
【0073】
上記の作製方法を実施することで多重積層構造を作製できる。また膜厚制御が容易であり、特性劣化が少なく、発光効率の高い発光装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
(実施の形態1)
本発明の一態様について図1〜図4を用いて説明する。ここではキャリア輸送層が正孔輸送層の場合について説明する。
【0075】
図1の発光装置は基板1の上に陽極2、第1の正孔輸送層3、発光層4、第2の正孔輸送層5、発光層4、第2の正孔輸送層5、・・・、第2の正孔輸送層5、発光層4、電子輸送層6、陰極7が形成されている。陽極2と第1の正孔輸送層3の間に正孔注入層を設けてもよい。また陰極7と電子輸送層6の間に電子注入層を設けてもよい。第1の正孔輸送層と第2の正孔輸送層とは同じ材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよい。
第2の正孔輸送層5、発光層4は多重に積層されている。第2の正孔輸送層5の膜厚は発光層4よりも薄く、第2の正孔輸送層の膜厚は1nm以上、5nm以下、発光層の膜厚は5nm以上、20nm以下が好ましい。また発光層4は電子輸送性である。
また第2の正孔輸送層5、発光層4は交互に2〜n(nは正の整数)層積層することができる。
【0076】
ここで本発明のエネルギー準位、キャリア移動等について図3、4を用いて説明する。図3、4は図1の構成のバンド図を示している。図4は多重に積層された部分、発光層4と正孔輸送層5のバンド図を示している。
符号は図1と同じである。50は真空準位、51は第1の正孔輸送層3のLUMO準位の真空準位50からのエネルギー差の絶対値を示す。52は第1の正孔輸送層3のHOMO準位の真空準位50からのエネルギー差の絶対値を示す。
53は第2の正孔輸送層5のLUMO準位の真空準位50からのエネルギー差の絶対値を示し、54は第2の正孔輸送層5のHOMO準位の真空準位50からのエネルギー差の絶対値を示す。55は発光層4のLUMO準位の真空準位50からのエネルギー差の絶対値を示し、56は発光層4のHOMO準位の真空準位50からのエネルギー差の絶対値を示す。
【0077】
本発明では発光層4のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値55は、第2の正孔輸送層5のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値53よりも大きい(発光層4のLUMO準位は第2の正孔輸送層5のLUMO準位よりも低い)。また発光層4のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値56は、第2の正孔輸送層5のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値54よりも大きい(発光層4のHOMO準位は、第2の正孔輸送層5のHOMO準位よりも低い)。
【0078】
陽極2に正電位、陰極7に負電位が印加されると、陽極2からは正孔(h)が正孔輸送層3に注入され、一方陰極7からは電子(e)が電子輸送層6に注入される。
正孔は第1の正孔輸送層から発光層4に輸送され、陰極から輸送された電子と発光層4において再結合し、発光する。発光層4は電子輸送性を有しているから、正孔が電子と再結合する確率は高い。なお図面では発光する場合にはhνと記載してある。
【0079】
発光層4にて電子と再結合しなかった正孔は電位差によって陰極方向へと移動する。次に第2の正孔輸送層5へ注入され、第2の正孔輸送層5内を移動する。しかし第2の正孔輸送層から発光層4への障壁(エネルギー差58:発光層4のHOMO準位と、第2の正孔輸送層5のHOMO準位とのエネルギー差)のため、正孔が発光層4に注入される確率は少なくなり、閉じ込められてしまう。仮に正孔の蓄積等により障壁を越えて発光層4へ注入されたとしても発光層4内にて電子と再結合して発光する。また当該発光層4内にて再結合されずに第2の正孔輸送層5へ注入されても、上述のように発光層4への障壁のために閉じこめられる確率が高い。したがって電子輸送層6への突き抜けを少なくして発光効率を高くすることができる。電子輸送層6が発光性であった場合、電子輸送層6に正孔が注入されると、電子と再結合し発光してしまう。電子輸送層6と発光層4との発光波長が異なっていると、色ずれを起こしてしまう。
【0080】
一方、発光層4にて正孔と再結合しなかった電子は電位差によって陽極方向へと移動する。ここで第2の正孔輸送層5の厚さは1nm以上、5nm以下と薄いため、障壁(エネルギー差60:発光層4のLUMO準位と、第2の正孔輸送層5のLUMO準位とのエネルギー差)が存在するにも関わらず突き抜けていき、次の発光層4へ注入される。そして当該発光層4において正孔と再結合して発光する。また当該発光層4内にて再結合されなくても第2の正孔輸送層5から次の発光層4へと注入される。
【0081】
第1の正孔輸送層3と第2の正孔輸送層5とが異なる材料である場合、正孔の閉じこめ効果を高めるために第1の正孔輸送層3のHOMO準位と発光層4のHOMO準位とのエネルギー差57の絶対値をエネルギー差58の絶対値よりも小さくするとよい。これにより陽極2から注入された正孔はエネルギー差58を超えることができない確率を高めることができる。
【0082】
さらに陽極2の仕事関数と第1の正孔輸送層3のHOMO準位とのエネルギー差59や、陽極と陰極とに印加する電位を制御すると、正孔がエネルギー差58を超えることができない確率をより高めることができる。
エネルギー差59をエネルギー差58よりも小さくし、エネルギー差59を超えるだけの電圧を印加する。すると正孔はエネルギー差59を超えることはできるが、エネルギー差58を超える確率が低くなる。したがって上記の関係を有する陽極2、第1の正孔輸送層、発光層4、第2の正孔輸送層を用い、さらに陽極及び陰極に印加する電圧を制御することが好ましい。
【0083】
以下、各層に用いることができる材料等について説明する。
基板1は発光素子の支持体として用いられる。基板1の材料としては、例えば石英、ガラス、またはプラスチックなどを用いることができる。なお、発光素子を作製工程において支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。
【0084】
陽極2としては、インジウム錫酸化物(ITO、Indium Tin Oxide)などを用いることができる。酸化インジウム酸化亜鉛(IZO、Indium Zinc Oxide)、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)なども用いることができる、その他、仕事関数の大きいもので形成されていることが好ましい。
【0085】
第1の正孔輸送層3には4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:NPBやαNPDともいう)、4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)などを使用できる。HOMO準位が−5.3eV〜−5.6eVのものが好ましい。
【0086】
第1の正孔輸送層3と第2の正孔輸送層5とは同じ材料でもよい。しかし正孔の閉じこめ効果を高めるために、第1の正孔輸送層3のHOMO準位と発光層4のHOMO準位とのエネルギー差を、第2の正孔輸送層5のHOMO準位と発光層4のHOMO準位のエネルギー差とのエネルギー差よりも小さいものにしてもよい。HOMO準位が−4.9eV〜−5.3eVのものが好ましく、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス(N−(4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、4,4’,4’’−トリス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(略称:1−TNATA)などを用いることができる。
例えば発光層4を後述するトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)にし、第1の正孔輸送層3にαNPDを用いた場合には、第2の正孔輸送層は上記の関係を有するMTDATAを用いることができる。
【0087】
次に発光層4であるが、発光層4のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、第2の正孔輸送層5のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも大きくすることが必要である。また発光層4のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は第2の正孔輸送層5のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも大きいことが必要である。これにより上述したように正孔を閉じこめることができ、発光効率を高めることができる。また正孔の電子輸送層6への突きぬけを防止することができる。
一方、第2の正孔輸送層5の膜厚は発光層4よりも薄く、第2の正孔輸送層の膜厚は1nm以上、5nm以下、発光層の膜厚は5nm以上、20nm以下であるから、上述のエネルギー関係を有していても電子は第2の正孔輸送層5を突き抜けて発光層4へ注入される。
発光層4は4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)等のカルバゾール誘導体の他、Alqなどの電子輸送性のものを用いることができる。HOMO準位が−5.5eV〜−5.9eVのものが好ましい。
【0088】
発光層4は発光中心となる発光物質(ドーパント材料)の有するエネルギーギャップよりも大きいエネルギーギャップを有する材料(ホスト材料)からなる層に発光材料を分散するホストーゲスト型の層としてもよい。これは濃度消光が起こりにくく、好ましい構成である。発光中心となる発光物質としては、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン(略称:DCJT)、4−ジシアノメチレン−2−t−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン、ペリフランテン、2,5−ジシアノ−1,4−ビス(10−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)ベンゼン、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、クマリン6、クマリン545T、Alq、9,9’−ビアントリル、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)や9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(略称:TBP)等が挙げられる。以上のように、蛍光を発光する物質の他、ビス[2−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CFppy)2(pic))、ビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIr(acac))、ビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(FIr(pic))、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(略称:Ir(ppy))等の燐光を発光する物質もドーパント材料として用いることができる。
【0089】
また、発光性の物質を分散状態にするために用いる物質について特に限定はなく、CBP等のカルバゾール誘導体の他、金属錯体、Alqなどの電子輸送性のものを用いることができる。
【0090】
例えば上記のエネルギー差の関係を有するものとしては、陽極2にITO、第1の正孔輸送層3にαNPD、発光層4にAlq、第2の正孔輸送層5にMTDATAなどが挙げられる。もちろんこの組合せに限られるものではない。
【0091】
電子輸送層6はAlq、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)、バソキュプロイン(略称:BCP)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)などを用いることができる。HOMO準位が−5.5eV〜−6.0eVのものが好ましい。
【0092】
陰極7を形成する物質としては、仕事関数の小さい(仕事関数−3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の1族または2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(Mg:Ag、Al:Li)が挙げられる。しかしながら、陰極7と発光層との間に、電子を注入する機能に優れた層を、当該陰極と積層して設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、ケイ素を含むITO等、陽極2の材料として挙げた材料も含め、様々な導電性材料を陰極7として用いることができる。
【0093】
なお、陰極7と電子輸送層6との間に電子注入層を設ける場合は、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属の化合物を用いることができる。また、この他、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有させたもの、例えばAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いることができる。
【0094】
また図2に示すように陽極2と第1の正孔輸送層との間にバッファ層8を設けてもよい。バッファ層8は有機化合物と金属化合物とを混合したものを用いることができる。
【0095】
有機化合物と金属化合物の組み合わせとしては、有機化合物として4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:NPBやαNPDともいう)や4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:TPD)や4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(略称:MTDATA)や4,4’−ビス(N−(4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、N,N’−ビス(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(略称:BSPB)、4,4’,4’’―トリス[3−メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(略称:m−MTDATA)、1,3,5−トリス[N,N−ビス(3−メチルフェニル)−アミノ]−ベンゼン(略称:m−MTDAB)、N,N’−ジ(p−トリル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)などの芳香族アミン系(即ち、ベンゼン環−窒素の結合を有する)の化合物やフタロシアニン(略称:HPc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)等のフタロシアニン化合物を用いることができる。
【0096】
金属化合物としては、遷移金属酸化物が好ましく、具体的には、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムなどが挙げられる。特に、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、扱いやすく好ましい。
なお、金属化合物は有機化合物に対して5wt%以上、80wt%以下、より好ましくは10wt%以上、50wt%以下の範囲で含まれていることが望ましい。バッファ層の厚さとしては60nm以上でよい。本発明の場合にはバッファ層の厚さを厚くしても駆動電圧の上昇を招くことはない。
【0097】
第1の正孔輸送層3、発光層4、第2の正孔輸送層5、電子輸送層6は蒸着法で形成することができる。バッファ層8は有機化合物と金属化合物とを共蒸着して形成することができる。陽極、陰極は、公知のスパッタ法や蒸着法により形成できる。正孔注入層や電子注入層を形成する場合も公知の蒸着法等により形成できる。また発光層4と第2の正孔輸送層5は後述する方法により作製することができる。
【0098】
ここでHOMO準位、LUMO準位の測定方法について説明する。HOMO準位は、ガラス基板等の上に被測定物の薄膜を形成し、その後大気中の光電子分光法(理研計器社製、AC−2)で測定することによって求めることができる。
【0099】
次にLUMO準位について説明する。被測定物の吸収スペクトルを測定し、そのデータを用い、Taucプロットから吸収端を求める。そしてその吸収端を光学的エネルギーギャップとして見積もって、HOMO準位とLUMO準位との間のエネルギーギャップを計算する。その後、大気中の光電子分光法によって求めたHOMO準位及びエネルギーギャップを用いてLUMO準位を計算する。
【0100】
例えば、大気中の光電子分光法によって求めた薄膜状態におけるHOMO準位が−5.28eVであり、薄膜の吸収スペクトルから見積もったエネルギーギャップは2.98eVの場合にはLUMO準位は−2.30eVとなる。なおこの方法は本実施の形態だけでなく、他の実施の形態にも適用可能であることは言うまでもない。
【0101】
(実施の形態2)
本発明の一態様について図1、2、5、6等を用いて説明する。ここではキャリア輸送層が電子輸送層の場合について説明する。
【0102】
図1の発光装置は基板1の上に陽極2、正孔輸送層3、発光層4、第2の電子輸送層5、発光層4、第2の電子輸送層5、・・・、第2の電子輸送層5、発光層4、第1の電子輸送層6、陰極7が形成されている。陽極2と正孔輸送層3の間に正孔注入層を設けてもよい。また陰極7と第1の電子輸送層6の間に電子注入層を設けてもよい。第1の電子輸送層と第2の電子輸送層とは同じ材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよい。
第2の電子輸送層5、発光層4は多重に積層されている。第2の電子輸送層5の膜厚は発光層4よりも薄く、第2の電子輸送層の膜厚は1nm以上、5nm以下、発光層の膜厚は5nm以上、20nm以下が好ましい。また発光層4は正孔輸送性である。
また第2の電子輸送層5、発光層4は交互に2〜n(nは正の整数)層積層することができる。
【0103】
ここで本発明のキャリア移動等について図5、6を用いて説明する。図5、6は図1のバンド図を示している。図6は多重に積層された部分の発光層4と第2の電子輸送層5のバンド図を示している。符号は図1と同じである。50は真空準位、77は第1の電子輸送層6のLUMO準位の真空準位50からエネルギー差の絶対値を示す。78は第1の電子輸送層6のHOMO準位の真空準位50からエネルギー差の絶対値を示す。
また70は第2の電子輸送層5のLUMO準位の真空準位50からのエネルギー差の絶対値を示し、71は第2の電子輸送層5のHOMO準位の真空準位50からのエネルギー差の絶対値を示す。72は発光層4のLUMO準位の真空準位50からのエネルギー差の絶対値を示し、73は発光層4のHOMO準位の真空準位50からのエネルギー差の絶対値を示す。
【0104】
本発明では上述のとおり発光層4のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差72の絶対値は、第2の電子輸送層5のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差70の絶対値よりも小さく(発光層のLUMO準位は第2の電子輸送層のLUMO準位よりも高く)、発光層4のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差73の絶対値は第2の電子輸送層5のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差71の絶対値よりも小さい(発光層のHOMO準位は第2の電子輸送層のHOMO準位よりも高い)。
【0105】
陽極2に正電位、陰極7に負電位が印加されると、陽極2からは正孔(h)が正孔輸送層3に注入され、一方陰極7からは電子(e)が電子輸送層6に注入される。
電子は第1の電子輸送層6から発光層4に輸送され、陽極から輸送された正孔と発光層4において再結合し、発光する。発光層4は正孔輸送性を有しているから、電子が正孔と再結合する確率は高い。なお図面では発光する場合にはhνと記載してある。
【0106】
発光層4にて正孔と再結合しなかった電子は電位差によって陽極方向へと移動する。次に第2の電子輸送層5へ注入され、第2の電子輸送層5内を移動する。しかし第2の電子輸送層から発光層4への障壁(エネルギー差75:発光層4のLUMO準位と、第2の電子輸送層5のLUMO準位とのエネルギー差)のため、電子は発光層4に注入される確率は少なくなり、閉じ込められてしまう。仮に電子の蓄積等により障壁を越えて発光層4へ注入されたとしても発光層4内にて正孔と再結合して発光する。また当該発光層4内にて再結合されずに第2の電子輸送層5へ注入されても、上述のように発光層4への障壁が高く、閉じこめられる確率が高い。したがって正孔輸送層3への突き抜けを少なくして発光効率を高くすることができる。正孔輸送層3が発光性であった場合、正孔輸送層3に電子が注入されると、正孔と再結合し発光してしまう。正孔輸送層3と発光層4との発光波長が異なっていると、色ずれを起こしてしまう。
【0107】
一方、発光層4にて電子と再結合しなかった正孔は電位差によって陰極方向へと移動する。ここで第2の電子輸送層5は1nm以上、5nm以下と薄いため、障壁(エネルギー差79:発光層4のHOMO準位と、第2の電子輸送層5のHOMO準位とのエネルギー差)が存在するにも関わらず突き抜けていき、次の発光層4へ注入される。そして当該発光層4において電子と再結合して発光する。また当該発光層4内にて再結合されなくても第2の電子輸送層5から次の発光層4へと注入される。
【0108】
第1の電子輸送層6と第2の電子輸送層5とが異なる材料である場合、電子の閉じこめ効果を高めるために第1の電子輸送層6のLUMO準位と発光層4のLUMO準位とのエネルギー差74の絶対値をエネルギー差75の絶対値よりも小さくしてもよい。これにより陰極7から注入された電子がエネルギー差75を超えることができない確率を高めることができる。
【0109】
さらに陰極7の仕事関数と第1の電子輸送層6のLUMO準位とのエネルギー差76や、陽極と陰極とに印加する電位を制御すると、電子がエネルギー差75を超えることができない確率をより高めることができる。
エネルギー差76をエネルギー差75よりも小さくし、エネルギー差76を超えるだけの電圧を印加すると、電子はエネルギー差76を超えることはできるが、エネルギー差75を超える確率が低くなる。したがって上記の関係を有する陽極2、第1の電子輸送層、発光層4、第2の電子輸送層を用い、さらに陽極及び陰極に印加する電圧を制御することが好ましい。
【0110】
以下、各層に用いることができる材料等について説明する。
基板1、陽極2は実施形態1に記載したものを用いることができる。
【0111】
陰極7を形成する物質としてはCa、MgAg、Al、Mgなど、仕事関数が2.8〜3.0eVのものを用いることができる。
第1の電子輸送層6はAlq、BAlq、BCP、CBPなどを用いることができる。第2の電子輸送層とのエネルギー差を考慮するとLUMO準位が−2.7eV〜−2.4eVのものが好ましい。
第2の電子輸送層5は第1の電子輸送層6と同じ材料でもよい。しかし電子の閉じこめ効果を高めるために第1の電子輸送層6のLUMO準位と発光層4のLUMO準位とのエネルギー差を、第2の電子輸送層5のLUMO準位と発光層4のLUMO準位とのエネルギー差よりも小さくものにしてもよい。LUMO準位が−2.7eVよりも低いものが好ましく、Alq、BAlq、ジフェニルキノキサリンなどを用いることができる。
【0112】
次に発光層4であるが、発光層4のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、第2の電子輸送層5のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも小さくすることが必要である。また発光層4のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、第2の電子輸送層5のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも小さいことが必要である。これにより上述したように電子を閉じこめることができ、発光効率を高めることができる。また電子の正孔輸送層3への突きぬけを防止することができる。
【0113】
一方、第2の電子輸送層5の膜厚は発光層4よりも薄く、第2の電子輸送層の膜厚は1nm以上、5nm以下、発光層の膜厚は5nm以上、20nm以下であるから、上述のエネルギー関係を有していても正孔は第2の電子輸送層5を突き抜けて発光層4へ注入される。
【0114】
発光層4はNPB、TCTA、TPDなどを用いることができる。LUMO準位が−2.5eVより高いものが好ましい。
【0115】
実施の形態1に示したように発光層4は発光中心となる発光物質(ドーパント材料)の有するエネルギーギャップよりも大きいエネルギーギャップを有する材料(ホスト材料)からなる層に発光材料を分散するホストーゲスト型の層としてもよい。
【0116】
正孔輸送層3は例えばTDATA、MTDATA、DNTPD、αNPDなどの芳香族アミン(即ち、ベンゼン環−窒素の結合を有する)の化合物などを用いることができる。
【0117】
例えば上記のエネルギー差の関係を有するものとしては、陰極7にMg、第1の電子輸送層6にCBP、発光層4にTPD、第2の電子輸送層5にAlqなどが挙げられる。もちろんこの組合せに限られるものではない。さらに正孔輸送層3としてαNPD、陽極にITOを用いた場合のバンド図を図22に示す。
【0118】
図22では、発光層4のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、第2の電子輸送層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも小さく、発光層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、第2の電子輸送層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも小さい。
【0119】
また第1の電子輸送層のLUMO準位と発光層のLUMO準位とのエネルギー差74は、第2の電子輸送層のLUMO準位と発光層のLUMO準位とのエネルギー差75よりも小さい。
【0120】
また陰極の仕事関数と第1の電子輸送層のLUMO準位とのエネルギー差76は、第2の電子輸送層のLUMO準位と発光層のLUMO準位とのエネルギー差よりも小さい。したがって電子を閉じこめることができ、発光効率を高めることができる。
【0121】
また図2に示すように陽極2と第1の正孔輸送層との間にバッファ層8を設けてもよい。バッファ層8は有機化合物と金属化合物とを混合したものを用いることができる。バッファ層の厚さとしては60nm以上でよい。本発明の場合にはバッファ層の厚さを厚くしても駆動電圧の上昇を招くことはない。
【0122】
第1の電子輸送層6、発光層4、第2の電子輸送層5、正孔輸送層6は蒸着法で形成することができる。バッファ層8は有機化合物と金属化合物とを共蒸着して形成することができる。陽極、陰極は、公知のスパッタ法や蒸着法により形成できる。正孔注入層や電子注入層を形成する場合も公知の蒸着法等により形成できる。また発光層4と第2の電子輸送層5は後述する方法により作製することができる。
【0123】
HOMO準位、LUMO準位の測定方法については実施の形態1において説明したとおりである。
【0124】
(実施の形態3)
本発明の実施に用いる蒸着装置及び、その蒸着装置を用いて実施の形態1、2に記載した多重積層構造部分を作製する方法について図7〜図13を用いて説明する。
【0125】
本発明の実施に用いる蒸着装置には、被処理物に対し蒸着する処理を行う処理室1001の他、搬送室1002が設けられている。被処理物は搬送室1002を経て処理室1001へ搬送される。搬送室1002には、被処理物を移載する為のアーム1003が備え付けられている(図7)。
【0126】
処理室1001内には、図8に示すように、被蒸着物である基板101を保持するための保持部100と、発光材料が保持された蒸発源102と、キャリア輸送材料が保持された蒸発源103とが設けられている。蒸発源102と103とは仕切104によって仕切られている。また発光材料が保持された蒸発源102の上にはシャッター105bが設けられ、キャリア輸送材料が保持された蒸発源103の上にはシャッター105aが設けられている。
【0127】
発光材料にドーパント材料を添加する場合には、ホスト材料の蒸発源102とともにドーパント材料の蒸発源を設けてホスト材料とともにドーパント材料を共蒸着する。
【0128】
図8(A)のようにシャッター105bが開き、シャッター105aが閉じている状態では、発光材料は基板101に蒸着されるが、キャリア輸送材料は蒸着されない。次に図8(B)のようにシャッター105bが閉じてシャッター105aが開くと、キャリア輸送材料は基板に101に蒸着されるが、発光材料は蒸着されない。この方法によりキャリア輸送材料と発光材料とを交互に蒸着することができ、多重積層構造を作製できる。
【0129】
本発明は第2のキャリア輸送層5の厚さが発光層4の厚さよりも薄いから、シャッター105bが開状態になる時間を長くし、シャッター105aが開状態になる時間を短くすればよい。これによりキャリア輸送材料の蒸着量が減り、膜厚を薄くすることができる。このようにシャッター105a、105bの開状態の時間を制御して上記実施の形態の構成を作製することができる。
【0130】
このとき蒸着速度を変化させることによっても膜厚を制御することができる。蒸着速度を低くすると単位時間当たりの蒸着量が減り、膜厚を薄くすることができ、逆に蒸着速度を高くすると蒸着量が増えて膜厚を厚くすることができる。シャッター105aが開状態におけるキャリア輸送材料の蒸着速度を低くし、シャッター105bが開状態における発光材料の蒸着速度を高くすると、キャリア輸送層の厚さを発光層の厚さよりも薄くすることができる。
【0131】
また、基板の温度を変化させることにより、吸着速度を変化させてもよい。
【0132】
基板101は矢印のように回転させてもよい。回転させることにより基板面内におけるキャリア輸送層及び発光層の膜厚を均一化することができる。
【0133】
処理室1001内の構成は図8に表されるものには限定されず、例えば図9〜図13に表されるような構成であってもよい。
【0134】
図9、10では、被蒸着物である基板を保持する為の保持部と、発光材料が保持された蒸発源102と、キャリア輸送材料が保持された蒸発源103が設けられている。また蒸発源102と103とは仕切104によって仕切られている。またキャリア輸送材料が保持された蒸発源103の上にはシャッター105aが設けられている。
【0135】
図9のようにシャッター105aが閉じている状態では、発光材料は基板1015a〜dに蒸着されるが、キャリア輸送材料は蒸着されない。逆に図10のようにシャッター105aが開くと、キャリア輸送材料が基板1015a〜dに蒸着される。
【0136】
シャッター105aが開状態になる時間を短くするとキャリア輸送材料の蒸着量が減り、逆に開状態になる時間を長くするとキャリア輸送材料の蒸着量を増やすことができる。このようにシャッター105aの開閉によってキャリア輸送材料の蒸着量を制御してキャリア輸送層、発光層の膜厚を制御することができる。ここまでは図8と同じである。
【0137】
ここでは基板を保持する為の保持部は、軸1013を中心として回転する第1の回転板1012と、第1の回転板1012上に設けられた複数の第2の回転板1014a〜1014dとで構成されている。第2の回転板1014a〜1014dは、軸1013とは別に、第2の回転板1014a〜1014dのそれぞれに対して設けられた軸を中心として、それぞれ独立に回転する。基板1015a〜1015dは、第2の回転板1014a〜1014dのそれぞれの上に保持される。
【0138】
第2の回転板1014aには基板1015aが保持され、第2の回転板1014bには基板1015bが保持され、第2の回転板1014cには基板1015cが保持され、第2の回転板1014dには基板1015dが保持されている。
【0139】
また第1の回転板1012、及び基板が保持された第2の回転板1014a〜1014dは回転している。第2の回転体の回転により基板はいわゆる自転をすることになる。これは図8における基板の回転と同じであり、回転させることにより基板面内における発光層、キャリア輸送層の膜厚を均一化することができる。
【0140】
一方、第1の回転板1012の回転により基板はいわゆる公転をすることになる。シャッター105aが開状態になっている図10に表されているように、基板1015aと発光材料蒸発源102との距離が、基板1015aとキャリア輸送材料蒸発源103との距離よりも近いとき、基板1015a上には、キャリア輸送材料よりも発光材料の方が多く蒸着され発光層が形成される。これに対し、基板1015cのように、基板1015cとキャリア輸送材料蒸発源103との距離が、基板1015cと発光材料蒸発源102との距離よりも近いとき、基板1015c上には、発光材料よりもキャリア輸送材料の方が多く蒸着されキャリア輸送層が形成される。
【0141】
次に、第1の回転板1012の回転により処理室1001内における第2の回転板1014aの位置が変わって、図9における第2の回転板1014cの位置において基板1015aが保持され、基板1015aとキャリア輸送材料蒸発源103との距離が、基板1015aと発光材料蒸発源102との距離よりも近くなると、基板1015a上には、発光材料よりもキャリア輸送層材料が多く蒸着されキャリア輸送層が形成される。これにより発光層とキャリア輸送層を交互に積層でき、多重積層構造を作製できる。
【0142】
本発明ではキャリア輸送層の膜厚は発光材料の膜厚よりも薄いからシャッター105aを用い、キャリア輸送層の膜厚を制御したり、発光材料とキャリア輸送材料の蒸着速度を変化させて蒸着量を制御して膜厚を制御してもよい。また基板の温度を変化させることにより、吸着速度を変化させて膜厚を変化させてもよい。
【0143】
このように、蒸発源102、103に対する基板1015a〜1015dの位置を変えることによっても発光層とキャリア輸送層を交互に積層でき、多重積層構造を実現できる。
【0144】
なお、第1の回転板1012及び第2の回転板1014a〜1014dの形状について特に限定はなく、図9〜11に表されるような円形の他、四角形等の多角形であってもよい。また、第2の回転板1014a〜1014dは、必ずしも設けなくてもよいが、第2の回転板1014a〜1014dを設けることによって、被処理物に形成される層の厚さ等の面内バラツキを低減することができる。
【0145】
また図9、10のような構成の場合、バッチ式となり複数の基板を一度に処理することができるという利点もある。
【0146】
図11では軸109a、109bを中心に回転するマスク108a、108bがキャリア輸送材料、発光材料の蒸発源の上に設けられ、そのマスク108a、bには孔106、110が設けられている。
【0147】
マスク108bに設けられた孔106が蒸発源102の上にある場合には発光材料が蒸着される。このときマスク108aに設けられた孔110が蒸発源103の上にない場合にはキャリア輸送材料は蒸着されない(図11(A))。
【0148】
次にマスク108が回転し、マスク108bに設けられた孔106が蒸発源102の上にない場合には発光材料が蒸着されない。このときマスク108aに設けられた孔110が蒸発源103の上にある場合にはキャリア輸送材料が蒸着される(図11(B))。したがってこのようなマスクを用い、その回転速度を制御することによって発光層とキャリア輸送層を交互に積層して多重積層構造を作製することができる。
【0149】
また発光材料、キャリア輸送材料の蒸着速度を変化させて蒸着量を制御してもよい。
【0150】
また、基板の温度を変化させることにより、吸着速度を変化させてもよい。
【0151】
マスクの孔の形状は必要に応じて種々の形に変えることができる。スリット111を設けてもよい(図12)。マスク108aの孔を112のような形状にしてもよい(図13)。またマスク108bの孔を110のように円形にしたり、111のようにスリットにしてもよい。
【0152】
また図11〜図13の構成において、図9、10のように、軸1013を中心として回転する第1の回転板1012と、第1の回転板1012上に設けられた複数の第2の回転板1014a〜1014dとを有し、基板を第2の回転板1014a〜dに保持させて、第1の回転板、第2の回転板を回転させて発光層とキャリア輸送層を交互に積層して多重積層構造を形成してもよい。なお本実施の形態は上記のいずれの構成とも組合せ可能である。
【0153】
(実施の形態4)
本発明の発光装置の構成例、作製方法について図1等を用いて説明する。ここではキャリア輸送層が正孔輸送層の場合について説明する。図中、1が基板、2が陽極、3が第1の正孔輸送層、4が発光層、5が第2の正孔輸送層、6が電子輸送層、7が陰極を示している。
【0154】
ガラス基板1上にITOからなる陽極2をスパッタ法により成膜する。
【0155】
陽極2の上に第1の正孔輸送層3としてαNPDを蒸着法により成膜する。
【0156】
第1の正孔輸送層3上に、発光層4と第2の正孔輸送層5とを多重積層構造にして形成する。発光層4にはAlqを用い、第2の正孔輸送層5にはMTDATAを用いる。
【0157】
発光層4と第2の正孔輸送層5の形成には図8に示した装置を用いる。発光材料を蒸発源102に、第2の正孔輸送材料を蒸発源103に入れ、真空中にて加熱して蒸発させる。発光材料、第2の正孔輸送材料の蒸着レートは0.01〜0.4nm/sとする。
【0158】
シャッター105aが開状態になる時間とシャッター105bが開状態になる時間の割合は10:1〜4:1とする。シャッター105bが開状態のときは、シャッター105aは閉状態になるようにする。逆にシャッター105aが開状態のときは、シャッター105bは閉状態になるようにする。
【0159】
これにより発光層4が5nm以上、20nm以下、第2の正孔輸送層5が1nm以上、5nm以下で、発光層4と第2の正孔輸送層5が2〜10層にわたって形成された構造を得る(例えば2層の場合、基板1、陽極2、第1の正孔輸送層3、発光層4、第2の正孔輸送層5、発光層4、第2の正孔輸送層5、発光層4、電子輸送層6、陰極7となる。発光層4、第2の正孔輸送層5が2回積層されることになる)。なお多重積層構造における最後の層は発光層4とする。
【0160】
次に発光層4の上に電子輸送層6としてAlmqを蒸着法により成膜する。その後MgAg陰極7を蒸着法により成膜する。
【0161】
この実施形態のエネルギーバンド図を図21に示す。図21では発光層4のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、第2の正孔輸送層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも大きく(発光層のLUMO準位は正孔輸送層のLUMO準位よりも低く)、発光層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、第2の正孔輸送層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも大きい(発光層のHOMO準位は正孔輸送層のHOMO準位よりも低い)。
【0162】
また第1の正孔輸送層のHOMO準位と発光層のHOMO準位とのエネルギー差59は、第2の正孔輸送層のHOMO準位と発光層のHOMO準位とのエネルギー差58よりも小さい。
【0163】
また陽極の仕事関数と第1の正孔輸送層のHOMO準位とのエネルギー差57は、第2の正孔輸送層のHOMO準位と発光層のHOMO準位とのエネルギー差58よりも小さい。したがって正孔を閉じこめることができ、発光効率を高めることができる。
【0164】
なお陽極2と第1の正孔輸送層3の間にバッファ層を設けてもよい。また正孔注入層や電子注入層を設けてもよい。またホスト材料にドーパント材料を添加したものを発光層4としてもよい。例えばホスト材料Alqに上記実施の形態にて示したものやルブレンなどのドーパント材料を添加することができる。
【0165】
ここでは図8に示した方法を説明したがこれに限られることはない。もちろん図9〜13に示した方法により作製することができる。それぞれの場合について作製方法は上記実施の形態に示したとおりである。
【0166】
以上のことから、本構成を適用することで、有機化合物からなる発光層と有機化合物からなるキャリア輸送層を交互に積層した多重積層構造を形成できる。無機化合物からなる層との積層構造ではないから応力が生じることはなく特性劣化の少ない発光装置を得ることができ、発光効率の高い発光装置を得ることができる。
【0167】
また本発光装置は発光層とキャリア輸送層との極性が異なり、キャリア輸送層の膜厚が発光層の膜厚よりも薄く、上記LUMO準位、HOMO準位である発光層、キャリア輸送層を有する。これによりキャリア輸送層と同じ極性のキャリアは閉じこめられ易くなり、異なる極性のキャリアはトンネル効果によって移動する。すなわち一方のキャリアを閉じこめることができ、発光効率を高めることができる。
【0168】
また電極とキャリア輸送層との間に有機化合物と金属化合物からなるバッファ層を設けることにより平坦性を向上させることができる。さらに本実施形態の作製方法を実施することで多重積層構造を容易に作製できる。
【0169】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の発光装置について図14、図15を参照し、作製方法を示しながら説明する。この本実施の形態ではアクティブマトリクス型の発光装置を作成する例を示す。ただし本発明はアクティブマトリクス型に限られず、パッシブマトリクス型の発光装置にも用いることができることはいうまでもない。
【0170】
まず、基板250上に第1の下地絶縁層251a、第2の下地絶縁層251bを形成した後、さらに半導体層を第2の下地絶縁層251b上に形成する。(図14(A))
【0171】
基板250の材料としてはガラス、石英やプラスチック(ポリイミド、アクリル、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエーテルスルホンなど)等を用いることができる。これら基板は必要に応じてCMP等により研磨してから使用しても良い。本実施の形態においてはガラス基板を用いる。
【0172】
第1の下地絶縁層251a、第2の下地絶縁層251bは基板250中のアルカリ金属やアルカリ土類金属など、半導体膜の特性に悪影響を及ぼすような元素が半導体層中に拡散するのを防ぐ為に設ける。材料としては酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒素を含む酸化ケイ素、酸素を含む窒化ケイ素などを用いることができる。本実施の形態では第1の下地絶縁層251aを窒化ケイ素で、第2の下地絶縁層251bを酸化ケイ素で形成する。本実施の形態では、下地絶縁層を第1の下地絶縁層251a、第2の下地絶縁層251bの2層で形成したが、単層で形成してもかまわないし、2層以上の多層であってもかまわない。また、基板からの不純物の拡散が気にならないようであれば下地絶縁層は設ける必要がない。
【0173】
続いて形成される半導体層は本実施の形態では非晶質ケイ素膜をレーザー結晶化して得る。第2の下地絶縁層251b上に非晶質ケイ素膜を25〜100nm(好ましくは30〜60nm)の膜厚で形成する。作製方法としては公知の方法、例えばスパッタ法、減圧CVD法またはプラズマCVD法などが使用できる。その後、400〜500℃で熱処理(例えば500℃、1時間)を行い、水素出しをする。
【0174】
続いてレーザー照射装置を用いて非晶質ケイ素膜を結晶化して結晶質ケイ素膜を形成する。本実施の形態のレーザー結晶化ではエキシマレーザを使用し、発振されたレーザビームを、光学系を用いて線状のビームスポットに加工し非晶質ケイ素膜に照射することで結晶質ケイ素膜とし、半導体層として用いる。
【0175】
非晶質ケイ素膜の他の結晶化の方法としては、他に、熱処理のみにより結晶化を行う方法や結晶化を促進する触媒元素を用い加熱処理を行う事によって行う方法もある。結晶化を促進する元素としてはニッケル、鉄、パラジウム、スズ、鉛、コバルト、白金、銅、金などが挙げられ、このような元素を用いることによって熱処理のみで結晶化を行った場合に比べ、低温、短時間で結晶化が行われるため、ガラス基板などへのダメージが少ない。熱処理のみにより結晶化をする場合は、基板250を熱に強い石英基板などにすればよい。
また加熱処理により結晶化とレーザー光を照射して結晶化することを組み合わせてもよい。すなわち結晶化を促進する触媒元素を用い加熱処理して結晶化した後にレーザー光を照射して結晶化してもよい。
【0176】
続いて、必要に応じて半導体層にしきい値をコントロールする為に微量の不純物添加、いわゆるチャネルドーピングを行う。要求されるしきい値を得る為にN型もしくはP型を呈する不純物(リン、ボロンなど)をイオンドーピング法などにより添加する。
【0177】
その後、図14(A)に示すように半導体層を所定の形状にパターニングし、島状の半導体層252を得る。パターニングは半導体層にフォトレジストを形成し、所定のマスク形状を露光し、焼成して、半導体層上にレジストマスクを形成し、このマスクを用いてエッチングをすることにより行われる。
【0178】
続いて半導体層252を覆うようにゲート絶縁層253を形成する。ゲート絶縁層253はプラズマCVD法またはスパッタ法を用いて膜厚を40〜150nmとしてケイ素を含む絶縁層で形成する。本実施の形態では酸化ケイ素を用いて形成する。
【0179】
次いで、ゲート絶縁層253上にゲート電極254を形成する。ゲート電極254はタンタル、タングステン、チタン、モリブデン、アルミニウム、銅、クロム、ニオブから選ばれた元素、またはこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で形成してもよい。また、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶ケイ素膜に代表される半導体膜を用いてもよい。また、AgPdCu合金を用いてもよい。
【0180】
また、本実施の形態ではゲート電極254は単層で形成されているが、下層にタングステン、上層にモリブデンなどの2層以上の積層構造でもかまわない。積層構造としてゲート電極を形成する場合であっても前段で述べた材料を使用するとよい。また、その組み合わせも適宜選択すればよい。ゲート電極254の加工はフォトレジストを用いたマスクを利用し、エッチングをして行う。
【0181】
続いて、ゲート電極254をマスクとして半導体層252に高濃度の不純物を添加する。これによって半導体層252、ゲート絶縁層253、及びゲート電極254を含む薄膜トランジスタ270が形成される。ここで低速イオンドープ、高速イオンドープを用いてソース領域255、ドレイン領域256の他にLDD領域257を設けてもよい。
【0182】
なお、薄膜トランジスタの作製工程については特に限定されず、所望の構造のトランジスタを作製できるように適宜変更すればよい。
【0183】
本実施の形態では、レーザー結晶化を使用して結晶化した結晶性シリコン膜を用いたトップゲートの薄膜トランジスタを用いたが、非晶質半導体膜を用いたボトムゲート型の薄膜トランジスタを画素部に用いることも可能である。非晶質半導体はケイ素だけではなくシリコンゲルマニウムも用いることができ、シリコンゲルマニウムを用いる場合、ゲルマニウムの濃度は0.01〜4.5atomic%程度であることが好ましい。
【0184】
また非晶質半導体中に0.5nm〜20nmの結晶粒を観察することができる微結晶半導体膜(セミアモルファス半導体)を用いてもよい。また0.5nm〜20nmの結晶粒を観察することができる微結晶はいわゆるマイクロクリスタル(μc)とも呼ばれている。
【0185】
セミアモルファス半導体であるセミアモルファスシリコン(SASとも表記する)は、シラン系気体をグロー放電分解することにより得ることができる。代表的なシラン系気体としては、SiHであり、その他にもSi、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiFなどを用いることができる。このシラン系気体を水素、水素とヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈して用いることでSASの形成を容易なものとすることができる。希釈率は10倍〜1000倍の範囲でシラン系気体を希釈することが好ましい。グロー放電分解による被膜の反応生成は0.1Pa〜133Paの範囲の圧力で行えば良い。グロー放電を形成するための電力は1MHz〜120MHz、好ましくは13MHz〜60MHzの高周波電力を供給すれば良い。基板加熱温度は300℃以下が好ましく、100〜250℃の基板加熱温度が好適である。
【0186】
このようにして形成されたSASはラマンスペクトルが520cm−1よりも低波数側にシフトしており、X線回折ではSi結晶格子に由来するとされる(111)、(220)の回折ピークが観測される。未結合手(ダングリングボンド)終端のため水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。膜中の不純物元素として、酸素、窒素、炭素などの大気成分の不純物は1×1020cm−3以下とすることが望ましく、特に、酸素濃度は5×1019cm−3以下、好ましくは1×1019cm−3以下とする。なおSASを用いるとTFTにしたときの移動度はμ=1〜10cm/Vsecとなる。
【0187】
また、このSASにレーザー光を照射してさらに結晶化して用いても良い。
【0188】
続いて、ゲート電極254、ゲート絶縁層253を覆って絶縁膜(水素化膜)259を窒化ケイ素により形成する。絶縁膜(水素化膜)259を形成したら400〜500℃(例えば480℃で1時間程度)加熱を行って、不純物元素の活性化及び半導体層252の水素化を行う。
【0189】
続いて、絶縁膜(水素化膜)259を覆う第1の層間絶縁層260を形成する。第1の層間絶縁層260を形成する材料としては酸化ケイ素、アクリル、ポリイミドやシロキサン、低誘電率材料等をもちいるとよい。本実施の形態では酸化ケイ素膜を第1の層間絶縁層として形成した。(図14(B))
【0190】
次に、半導体層252に至るコンタクトホールを開口する。コンタクトホールはレジストマスクを用いて、半導体層252が露出するまでエッチングを行うことで形成することができ、ウエットエッチング、ドライエッチングどちらでも形成することができる。なお、条件によって一回でエッチングを行ってしまっても良いし、複数回に分けてエッチングを行っても良い。また、複数回でエッチングする際は、ウエットエッチングとドライエッチングの両方を用いても良い。(図14(C))
【0191】
そして、当該コンタクトホールや第1の層間絶縁層260を覆う導電層を形成する。当該導電層を所望の形状に加工し、接続部261a、配線261bなどが形成される。この配線はアルミニウム、銅、アルミニウムと炭素とニッケルの合金、アルミニウムと炭素とモリブデンの合金等の単層でも良いが、基板側からモリブデン、アルミニウム、モリブデンの積層構造やチタン、アルミニウム。チタンやチタン、窒化チタン、アルミニウム、チタンといった構造でも良い。(図14(D))
【0192】
その後、接続部261a、配線261b、第1の層間絶縁層260を覆って第2の層間絶縁層263を形成する。第2の層間絶縁層263の材料としては自己平坦性を有するアクリル、ポリイミド、シロキサンなどの膜が好適に利用できる。本実施の形態ではシロキサンを第2の層間絶縁層263として用いる。(図14(E))
【0193】
続いて第2の層間絶縁層263上に窒化ケイ素などで絶縁層を形成してもよい(図示しない)。これは後の画素電極のエッチングにおいて、第2の層間絶縁層263が必要以上にエッチングされてしまうのを防ぐ為に形成する。そのため、画素電極と第2の層間絶縁層のエッチングレートの比が大きい場合には特に設けなくとも良い。続いて、第2の層間絶縁層263を貫通して接続部261aに至るコンタクトホールを形成する。
【0194】
そして当該コンタクトホールと第2の層間絶縁層263(もしくは絶縁層)を覆って、透光性を有する導電層を形成したのち、当該透光性を有する導電層を加工して発光素子の第1の電極264を形成する。ここで第1の電極264は接続部261aと電気的に接触している(図15(A))。
【0195】
第1の電極264は陽極として機能する。ここでは上記実施の形態に示したものを用いることができる。
【0196】
次に第2の層間絶縁層263(もしくは絶縁層)及び第1の電極264を覆って有機材料もしくは無機材料からなる絶縁層を形成する。続いて当該絶縁層を第1の電極264の一部が露出するように加工し、隔壁265を形成する。隔壁265の材料としては、感光性を有する有機材料(アクリル、ポリイミドなど)が好適に用いられるが、感光性を有さない有機材料や無機材料で形成してもかまわない。また隔壁265の材料にチタンブラックやカーボンナイトライドなどの黒色顔料や染料を、分散材などを用いて分散し、隔壁265を黒くすることでブラックマトリクス様に用いても良い。隔壁265の第1の電極に向かう端面は曲率を有し、当該曲率が連続的に変化するテーパー形状をしていることが望ましい(図15(B))。
【0197】
次に、隔壁265から露出した第1の電極264を覆って、有機化合物と金属化合物との混合層からなるバッファ層を形成する。上記実施形態に示したものを用いることができる。続いて第1の正孔輸送層を形成する。その後発光層、第2の正孔輸送層を交互にn回積層し、最後に発光層を形成する。そして発光層上に電子輸送層を積層する。
【0198】
続いて陰極として機能する第2の電極267を形成する。これによって第1の電極264と第2の電極267との間に有機発光層と有機化合物からなるキャリア輸送層を用いた多重積層構造を有する発光装置293を作製することができ、第1の電極に第2の電極より高い電圧をかけることによって発光を得ることができる。
【0199】
その後、プラズマCVD法により窒素を含む酸化ケイ素膜をパッシベーション膜として形成する。窒素を含む酸化ケイ素膜を用いる場合には、プラズマCVD法でSiH、NO、NHから作製される酸化窒化ケイ素膜、またはSiH、NOから作製される酸化窒化ケイ素膜、あるいはSiH、NOをArで希釈したガスから形成される酸化窒化ケイ素膜を形成すれば良い。
【0200】
また、パッシベーション膜としてSiH、NO、Hから作製される酸化窒化水素化ケイ素膜を適用しても良い。もちろん、パッシベーション膜は単層構造に限定されるものではなく、他のケイ素を含む絶縁層を単層構造、もしくは積層構造として用いても良い。また、窒化炭素膜と窒化ケイ素膜の多層膜やスチレンポリマーの多層膜、窒化ケイ素膜やダイヤモンドライクカーボン膜を窒素を含む酸化ケイ素膜の代わりに形成してもよい。
【0201】
続いて発光素子を水などの劣化を促進する物質から保護するために、表示部の封止を行う。対向基板を封止に用いる場合は、絶縁性のシール材により、外部接続部が露出するように貼り合わせる。対向基板と素子基板との間の空間には乾燥した窒素などの不活性気体を充填しても良いし、シール材を画素部全面に形成し、それにより対向基板を貼り合わせても良い。シール材には紫外線硬化樹脂などを用いると好適である。シール材には乾燥剤や基板間のギャップを一定に保つための粒子を混入しておいても良い。続いて外部接続部にフレキシブル配線基板を貼り付ける。
【0202】
以上のように作製した発光装置の構成の1例について図16を参照しながら説明する。なお、形が異なっていても同様の機能を示す部分には同じ符号を付し、その説明を省略する部分もある。本実施の形態では、LDD構造を有する薄膜トランジスタ270が接続部261aを介して発光装置293に接続している。
【0203】
図16(A)は第1の電極264が透光性を有する導電膜により形成されており、基板250側に発光積層体266より発せられた光が取り出される構造である。なお294は対向基板であり、発光装置293が形成された後、シール材などを用い、基板250に固着される。対向基板294と素子との間に透光性を有する樹脂288等を充填し、封止することによって発光装置293が水分により劣化することを防ぐ事ができる。また、樹脂288が吸湿性を有していることが望ましい。さらに樹脂288中に透光性の高い乾燥剤289を分散させるとさらに水分の影響を抑えることが可能になるためさらに望ましい形態である。
【0204】
図16(B)は第1の電極264と第2の電極267両方が透光性を有する導電膜により形成されており、基板250及び対向基板294の両方に光を取り出すことが可能な構成となっている。また、この構成では基板250と対向基板294の外側に偏光板290を設けることによって画面が透けてしまうことを防ぐことができ、視認性が向上する。偏光板290の外側には保護フィルム291を設けると良い。
【0205】
また画素部におけるトランジスタや発光装置等の配置について特に限定はないが、例えば図17の上面図に表すように配置することができる。図17において、第1のトランジスタ2001の第1電極はソース信号線2004に接続し、第2の電極は第2のトランジスタ2002のゲート電極に接続している。また第2トランジスタの第1電極は電流供給線2005に接続し、第2電極は発光素子の電極2006に接続している。ゲート信号線2003の一部は第1のトランジスタ2001のゲート電極として機能する。
【0206】
なお、表示機能を有する本発明の発光装置には、アナログのビデオ信号、デジタルのビデオ信号のどちらを用いてもよい。デジタルのビデオ信号を用いる場合はそのビデオ信号が電圧を用いているものと、電流を用いているものとに分けられる。発光装置の発光時において、画素に入力されるビデオ信号は、定電圧のものと、定電流のものがあり、ビデオ信号が定電圧のものには、発光装置に印加される電圧が一定のものと、発光装置に流れる電流が一定のものとがある。またビデオ信号が定電流のものには、発光装置に印加される電圧が一定のものと、発光装置に流れる電流が一定のものとがある。この発光装置に印加される電圧が一定のものは定電圧駆動であり、発光装置に流れる電流が一定のものは定電流駆動である。定電流駆動は、発光装置の抵抗変化によらず、一定の電流が流れる。本発明の発光装置及びその駆動方法には、電圧で駆動する方法、電流で駆動する方法のどちらを用いてもよく、また定電圧駆動、定電流駆動のどちらを用いてもよい。
【0207】
本実施の形態は上記の実施の形態の適当な構成と組み合わせて用いることが可能である。
【0208】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の発光装置であるパネルの外観について図18を用いて説明する。図18は基板上に形成されたトランジスタおよび発光装置を対向基板4006との間に形成したシール材によって封止したパネルの上面図であり、図18(B)は図18(A)の断面図に相応する。また、このパネルに搭載されている発光装置構造は、実施の形態5に示したような構成である。
【0209】
基板4001上に設けられた画素部4002と信号線駆動回路4003と走査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また、画素部4002と信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004の上に対向基板4006が設けられている。よって画素部4002と信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004とは基板4001とシール材4005と対向基板4006とによって充填材4007と共に密封されている。
【0210】
また、基板4001上に設けられた画素部4002と信号線駆動回路4003と走査線駆動回路4004とは薄膜トランジスタを複数有しており、図18(B)では信号線駆動回路4003に含まれる薄膜トランジスタ4008と、画素部4002に含まれる薄膜トランジスタ4010とを示す。
【0211】
また、発光装置4011は、薄膜トランジスタ4010と電気的に接続されている。
発光装置4011は陽極、正孔輸送層、発光層、第2の電子輸送層、発光層、第2の電子輸送層、発光層、第2の電子輸送層、・・・、発光層、第1の電子輸送層、陰極の構成になっている。
【0212】
また、引き回し配線4014は画素部4002と信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004とに、信号、または電源電圧を層供給する為の配線に相当する。引き回し配線4014は、引き回し配線4015を介して接続端子4016と接続されている。接続端子4016はフレキシブルプリントサーキット(FPC)4018が有する端子と異方性導電膜4019を介して電気的に接続されている。
【0213】
なお、充填材4007としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ、ポリビニルクロライド、アクリル、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルブチラル、またはエチレンビニレンアセテートを用いる事ができる。
【0214】
なお、本発明は発光装置を有する画素部が形成されたパネルと、該パネルにICが実装されたモジュールとをその範疇に含む。
【0215】
本実施の形態は上記実施の形態の適当な構成と組み合わせて用いることが可能である。
【0216】
(実施の形態7)
上記実施の形態にその一例を示したようなモジュールを搭載した本発明の発光装置を有する電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigitAl Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げられる。それらの電子機器の具体例を図19、図20に示す。
【0217】
図19(A)はテレビ受像器やパーソナルコンピュータのモニターなどである。筐体3001、表示部3003、スピーカー部3004等を含む。表示部3003にはアクティブマトリクス表示装置が設けられている。表示部3003は画素ごとに本発明の多重積層構造の発光装置及びTFTを有している。本発明の発光装置を有していることにより特性劣化が少なく、発光効率の高いテレビを得ることができる。
【0218】
図19(B)は携帯電話であり、本体3101、筐体3102、表示部3103、音声入力部3104、音声出力部3105、操作キー3106、アンテナ3108等を含む。表示部3103にはアクティブマトリクス表示装置が設けられている。表示部3103は画素ごとに本発明の多重積層構造の発光装置及びTFTを有している。本発明の発光装置を有していることにより特性劣化が少なく、発光効率の高い携帯電話を得ることができる。
【0219】
図19(C)はコンピュータであり、本体3201、筐体3202、表示部3203、キーボード3204、外部接続ポート3205、ポインティングマウス3206等を含む。表示部3203にはアクティブマトリクス表示装置が設けられている。表示部3203は画素ごとに本発明の多重積層構造の発光装置及びTFTを有している。本発明の発光装置を有していることにより特性劣化が少なく、発光効率の高いコンピュータを得ることができる。
【0220】
図19(D)はモバイルコンピュータであり、本体3301、表示部3302、スイッチ3303、操作キー3304、赤外線ポート3305等を含む。表示部3302にはアクティブマトリクス表示装置が設けられている。表示部3302は画素ごとに本発明の多重積層構造の発光装置及びTFTを有している。本発明の発光装置を有していることにより特性劣化が少なく、発光効率の高いモバイルコンピュータを得ることができる。
【0221】
図19(E)は携帯型のゲーム機であり、筐体3401、表示部3402、スピーカー部3403、操作キー3404、記録媒体挿入部3405等を含む。表示部3402にはアクティブマトリクス表示装置が設けられている。表示部3402は画素ごとに本発明の多重積層構造の発光装置及びTFTを有している。本発明の発光装置を有していることにより特性劣化が少なく、発光効率の高い携帯型ゲーム機を得ることができる。
【0222】
図20(A)はフレキシブルディスプレイであり、本体3110、画素部3111、ドライバIC3112、受信装置3113、フィルムバッテリー3114等を含む。受信装置では上記携帯電話の赤外線通信ポート3107からの信号を受信することができる。画素部3111にはアクティブマトリクス表示装置が設けられている。画素部3111は画素ごとに本発明の多重積層構造の発光装置及びTFTを有している。本発明の発光装置を有していることにより特性劣化が少なく、発光効率の高いフレキシブルディスプレイを得ることができる。
【0223】
図20(B)は、本発明を適用して作製したIDカードであり、支持体5541、表示部5542、支持体5541内に組み込まれた集積回路チップ5543等によって構成されている。
【0224】
表示部5542にはアクティブマトリクス表示装置が設けられている。表示部5542にはアクティブマトリクス表示装置が設けられている。表示部5542は画素ごとに本発明の多重積層構造の発光装置及びTFTを有している。本発明の発光装置を有していることにより特性劣化が少なく、発光効率の高いIDカードを得ることができる。
【0225】
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1】本発明の発光装置を説明する図。
【図2】本発明の発光装置を説明する図。
【図3】本発明の発光装置を説明する図。
【図4】本発明の発光装置を説明する図。
【図5】本発明の発光装置を説明する図。
【図6】本発明の発光装置を説明する図。
【図7】本発明の発光装置を作製する方法を説明する図。
【図8】本発明の発光装置を作製する方法を説明する図。
【図9】本発明の発光装置を作製する方法を説明する図。
【図10】本発明の発光装置を作製する方法を説明する図。
【図11】本発明の発光装置を作製する方法を説明する図。
【図12】本発明の発光装置を作製する方法を説明する図。
【図13】本発明の発光装置を作製する方法を説明する図。
【図14】TFTを作製する方法を説明する図。
【図15】本発明の発光装置を作製する方法を説明する図。
【図16】本発明の発光装置の断面を説明する図。
【図17】本発明の発光装置の外観を説明する図。
【図18】本発明の発光装置の画素部の上面を説明する図。
【図19】本発明の発光装置を用いた電子機器を説明する図。
【図20】本発明の発光装置を用いた電子機器を説明する図。
【図21】本発明の発光装置を説明する図。
【図22】本発明の発光装置を説明する図。
【符号の説明】
【0227】
1 基板
2 陽極
3 キャリア輸送層
4 発光層
5 キャリア輸送層
6 キャリア輸送層
7 陰極
8 バッファ層
50 真空準位
51 エネルギー差
52 エネルギー差
53 エネルギー差
54 エネルギー差
55 エネルギー差
56 エネルギー差
57 エネルギー差
58 エネルギー差
59 エネルギー差
60 エネルギー差
70 エネルギー差
71 エネルギー差
72 エネルギー差
73 エネルギー差
74 エネルギー差
75 エネルギー差
76 エネルギー差
77 エネルギー差
78 エネルギー差
79 エネルギー差
100 保持部
101 基板
102 蒸発源
103 蒸発源
104 仕切
105a シャッター
105b シャッター
106 孔
108a マスク
108b マスク
109a 軸
109b 軸
110 孔
111 スリット
112 孔
250 基板
251a 絶縁層
251b 絶縁層
252 半導体層
253 ゲート絶縁層
254 ゲート電極
255 ソース領域
256 ドレイン領域
257 LDD領域
259 絶縁膜
260 絶縁層
261a 接続部
261b 配線
263 絶縁層
264 第1の電極
265 隔壁
266 発光積層体
267 第2の電極
270 薄膜トランジスタ
288 樹脂
289 乾燥剤
290 偏光板
293 発光素子
294 対向基板
1001 処理室
1002 搬送室
1003 アーム
1012 第1の回転板
1013 軸
1014a 第2の回転板
1014b 第2の回転板
1014c 第2の回転板
1014d 第2の回転板
1015a 基板
1015b 基板
1015c 基板
1015d 基板
2001 トランジスタ
2002 トランジスタ
2003 ゲート信号線
2004 ソース信号線
2005 電流供給線
2006 電極
3001 筐体
3003 表示部
3004 スピーカー部
3101 本体
3102 筐体
3103 表示部
3104 音声入力部
3105 音声出力部
3106 操作キー
3107 赤外線通信ポート
3108 アンテナ
3110 本体
3111 画素部
3112 ドライバIC
3113 受信装置
3114 フィルムバッテリー
3201 本体
3202 筐体
3203 表示部
3204 キーボード
3205 外部接続ポート
3206 ポインティングマウス
3301 本体
3302 表示部
3303 スイッチ
3304 操作キー
3305 赤外線ポート
3401 筐体
3402 表示部
3403 スピーカー部
3404 操作キー
3405 記録媒体挿入部
4001 基板
4002 画素部
4003 信号線駆動回路
4004 走査線駆動回路
4005 シール材
4006 対向基板
4007 充填材
4008 薄膜トランジスタ
4010 薄膜トランジスタ
4011 発光素子
4014 配線
4015 配線
4016 接続端子
4018 FPC
4019 異方性導電膜
5541 支持体
5542 表示部
5543 集積回路チップ
5544 集積回路
5545 集積回路
5551 表示部
5552 本体
5553 アンテナ
5554 音声出力部
5555 音声入力部
5556 操作スイッチ
5557 操作スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、陽極と、前記陽極と対向する陰極と、前記陽極と陰極の間に設けられた有機化合物からなる発光層と、有機化合物からなる正孔輸送層を有し、
前記発光層と前記正孔輸送層とが交互に積層されており、
前記正孔輸送層の膜厚は前記発光層の膜厚よりも薄く、
前記発光層は電子輸送性発光層であることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1において、前記発光層と前記正孔輸送層とが交互に2〜n(nは正の整数)積層されていることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1において、前記正孔輸送層の膜厚は1nm以上、5nm以下であり、前記発光層の膜厚は5nm以上、20nm以下であることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一において、前記発光層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、前記正孔輸送層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも大きく、
前記発光層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、前記正孔輸送層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも大きいことを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一において、前記発光層のLUMO準位は前記正孔輸送層のLUMO準位よりも低く、
前記発光層のHOMO準位は前記正孔輸送層のHOMO準位よりも低いことを特徴とする発光装置。
【請求項6】
基板上に、陽極と、前記陽極と対向する陰極と、前記陽極と陰極の間に設けられた有機化合物からなる発光層と、有機化合物からなる電子輸送層を有し、
前記発光層と前記電子輸送層とが交互に積層されており、
前記電子輸送層の膜厚は前記発光層の膜厚よりも薄く、
前記発光層は正孔輸送性発光層であることを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項6において、前記発光層と前記電子輸送層とが交互に2〜n(nは正の整数)積層されていることを特徴とする発光装置。
【請求項8】
請求項6において、前記電子輸送層の膜厚は1nm以上、5nm以下であり、前記発光層の膜厚は5nm以上、20nm以下であることを特徴とする発光装置。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか一において、前記発光層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、前記電子輸送層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも小さく、
前記発光層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、前記電子輸送層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも小さいことを特徴とする発光装置。
【請求項10】
請求項6乃至8のいずれか一において、前記発光層のLUMO準位は前記電子輸送層のLUMO準位よりも高く、
前記発光層のHOMO準位は前記電子輸送層のHOMO準位よりも高いことを特徴とする発光装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一において、陽極に接して有機化合物と金属化合物からなるバッファ層が設けられていることを特徴とする発光装置。
【請求項12】
基板上に、陽極と、前記陽極と対向する陰極と、前記陽極と陰極の間に設けられた有機化合物からなる発光層と、有機化合物からなる第1の正孔輸送層、有機化合物からなる第2の正孔輸送層を有し、
前記発光層は電子輸送性発光層であり、
前記陽極上に有機化合物からなる第1の正孔輸送層を有し、
前記第1の正孔輸送層上に、有機化合物からなる発光層及び有機化合物からなる第2の正孔輸送層とが交互に積層され、
前記第2の正孔輸送層の膜厚は前記発光層の膜厚よりも薄いことを特徴とする発光装置。
【請求項13】
請求項12において、前記発光層と前記第2の正孔輸送層とが交互に2〜n(nは正の整数)積層されていることを特徴とする発光装置。
【請求項14】
請求項12において、前記第2の正孔輸送層の膜厚は1nm以上、5nm以下であり、前記発光層の膜厚は5nm以上、20nm以下であることを特徴とする発光装置。
【請求項15】
請求項12乃至14のいずれか一において、前記発光層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、前記第2の正孔輸送層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも大きく、
前記発光層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、前記第2の正孔輸送層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも大きいことを特徴とする発光装置。
【請求項16】
請求項12乃至14のいずれか一において、前記発光層のLUMO準位は前記第2の正孔輸送層のLUMO準位よりも低く、
前記発光層のHOMO準位は前記第2の正孔輸送層のHOMO準位よりも低いことを特徴とする発光装置。
【請求項17】
請求項12乃至14のいずれか一において、前記第1の正孔輸送層のHOMO準位と、前記発光層のHOMO準位とのエネルギー差の絶対値は、前記第2の正孔輸送層のHOMO準位と、前記発光層のHOMO準位とのエネルギー差の絶対値よりも小さいことを特徴とする発光装置。
【請求項18】
請求項12乃至14のいずれか一において、前記陽極の仕事関数と、前記第1の正孔輸送層のHOMO準位とのエネルギー差の絶対値は、前記第2の正孔輸送層のHOMO準位と前記発光層のHOMO準位とのエネルギー差の絶対値よりも小さいことを特徴とする発光装置。
【請求項19】
請求項12乃至18のいずれか一において、前記第1の正孔輸送層と前記陽極との間に有機化合物と金属化合物からなるバッファ層が設けられていることを特徴とする発光装置。
【請求項20】
基板上に、陽極と、前記陽極と対向する陰極と、前記陽極と陰極の間に設けられた有機化合物からなる発光層と、有機化合物からなる第1の電子輸送層、有機化合物からなる第2の電子輸送層を有し、
有機化合物からなる発光層及び有機化合物からなる第2の電子輸送層とが交互に積層された層を有し、
前記積層された層上に有機化合物からなる第1の電子輸送層を有し、
前記第1の電子輸送層上に陰極を有し、
前記第2の電子輸送層の膜厚は前記発光層の膜厚よりも薄いことを特徴とする発光装置。
【請求項21】
請求項20において、前記発光層と前記第2の電子輸送層とが交互に2〜n(nは正の整数)積層されていることを特徴とする発光装置。
【請求項22】
請求項20において、前記第2の電子輸送層の膜厚は1nm以上、5nm以下であり、前記発光層の膜厚は5nm以上、20nm以下であることを特徴とする発光装置。
【請求項23】
請求項20乃至22のいずれか一において、前記発光層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、前記第2の電子輸送層のLUMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも小さく、
前記発光層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値は、前記第2の正孔輸送層のHOMO準位の真空準位からのエネルギー差の絶対値よりも小さいことを特徴とする発光装置。
【請求項24】
請求項20乃至22のいずれか一において、前記発光層のLUMO準位は前記第2の電子輸送層のLUMO準位よりも高く、
前記発光層のHOMO準位は前記第2の正孔輸送層のHOMO準位よりも高いことを特徴とする発光装置。
【請求項25】
請求項20乃至22のいずれか一において、前記第1の電子輸送層のHOMO準位と、前記発光層のHOMO準位とのエネルギー差の絶対値は、前記第2の電子輸送層のHOMO準位と、前記発光層のHOMO準位とのエネルギー差の絶対値よりも小さいことを特徴とする発光装置。
【請求項26】
請求項20乃至22のいずれか一において、前記陰極の仕事関数と、前記第1の電子輸送層のHOMO準位とのエネルギー差の絶対値は、前記第2の電子輸送層のHOMO準位と前記発光層のHOMO準位とのエネルギー差の絶対値よりも小さいことを特徴とする発光装置。
【請求項27】
請求項20乃至26のいずれか一において、前記第1の電子輸送層と前記陰極との間に有機化合物と金属化合物からなるバッファ層が設けられていることを特徴とする発光装置。
【請求項28】
基板上に、陽極と、前記陽極と対向する陰極と、前記陽極と陰極の間に設けられた有機化合物からなる発光層と、有機化合物からなるキャリア輸送層を有し、
前記発光層と前記キャリア輸送層とが交互に積層されており、
前記キャリア輸送層の膜厚は前記発光層の膜厚よりも薄い発光装置の作製方法であって、
キャリア輸送材料の蒸発源及び発光材料の蒸発源の上には前記基板が設けられ、
前記キャリア輸送材料の蒸発源と前記基板との間に開閉可能な第1のシャッターが設けられ、
前記発光材料の蒸発源と前記基板との間に開閉可能な第2のシャッターが設けられ、
前記第1及び第2のシャッターの開閉によって前記発光層と前記キャリア輸送層を交互に積層することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項29】
請求項28において、前記第1のシャッターが開いているときに前記第2のシャッターを閉じて前記キャリア輸送材料を前記基板に蒸着し、
前記第2のシャッターが開いているときに前記第1のシャッターを閉じて前記発光材料を前記基板に蒸着して前記発光層と前記キャリア輸送層を交互に積層することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項30】
請求項28において、前記第1及び第2のシャッターの開閉、前記発光材料の蒸着速度及び前記キャリア輸送材料の蒸着速度を制御して前記発光層と前記キャリア輸送層を交互に積層することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項31】
基板上に、陽極と、前記陽極と対向する陰極と、前記陽極と陰極の間に設けられた有機化合物からなる発光層と、有機化合物からなるキャリア輸送層を有し、
前記発光層と前記キャリア輸送層とが交互に積層されており、
前記キャリア輸送層の膜厚は前記発光層の膜厚よりも薄い発光装置の作製方法であって、
第1の回転板上に前記基板が設けられ、
発光材料の蒸発源及びキャリア輸送材料の蒸発源の上には前記第1の回転板が設けられ、
前記第1の回転板が回転して、前記発光材料の蒸発源と前記基板との距離と、前記キャリア輸送材料の蒸発源と前記基板との距離が変化することによって、前記発光層と前記キャリア輸送層を交互に積層することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項32】
請求項31において、前記第1の回転板が回転して、前記発光材料の蒸発源と前記基板との距離が、前記キャリア輸送材料の蒸発源と前記基板との距離よりも短いときは前記発光材料が前記キャリア輸送材料よりも多く蒸着されて前記発光層が形成され、
前記キャリア輸送材料の蒸発源と前記基板との距離が、前記発光材料の蒸発源と前記基板との距離よりも短いときは前記キャリア輸送材料が前記発光材料よりも多く蒸着されて前記キャリア輸送層が形成されることを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項33】
請求項31において、前記発光材料の蒸着速度及び前記キャリア輸送材料の蒸着速度を制御して前記発光層と前記キャリア輸送層を交互に積層することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項34】
請求項31において、前記キャリア輸送層と前記基板との間には開閉可能なシャッターが設けられ、前記第1の回転板の回転を制御するとともに前記シャッターの開閉を制御して前記発光層と前記キャリア輸送層を交互に積層することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項35】
請求項31において、前記第1の回転板上には第2の回転板が設けられ、前記第2の回転板上に前記基板が設けられ、
前記第1の回転板と前記第2の回転板とは異なる中心軸を有し、それぞれ独立に回転することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項36】
基板上に、陽極と、前記陽極と対向する陰極と、前記陽極と陰極の間に設けられた有機化合物からなる発光層と、有機化合物からなるキャリア輸送層を有し、
前記発光層と前記キャリア輸送層とが交互に積層されており、
前記キャリア輸送層の膜厚は前記発光層の膜厚よりも薄い発光装置の作製方法であって、
キャリア輸送材料の蒸発源及び発光材料の蒸発源の上には前記基板が設けられ、
前記発光材料の蒸発源と前記基板との間に回転可能な第1のマスクが設けられ、
前記キャリア輸送材料の蒸発源と基板との間に回転可能な第2のマスクが設けられ、
前記第1及び第2のマスクの回転を制御して前記発光層と前記キャリア輸送層を交互に積層することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項37】
請求項36において、前記第1及び第2のマスクにはスリット又は孔が設けられていることを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項38】
請求項37において、前記第1のマスクの前記孔又はスリットが前記発光材料の蒸発源と前記基板との間にあるときに、前記第2のマスクの前記孔又はスリットを前記キャリア輸送材料と前記基板の間に存在させないで前記発光材料を前記基板に蒸着し、
前記第2のマスクの前記孔又はスリットが前記キャリア輸送材料の蒸発源と前記基板との間にあるときに、前記第1のマスクの前記孔又はスリットを前記発光材料と前記基板の間に存在させないで前記キャリア輸送材料を前記基板に蒸着して前記発光層と前記キャリア輸送層を交互に積層することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項39】
請求項36において、前記発光材料の蒸着速度及び前記キャリア輸送材料の蒸着速度を制御して前記発光層と前記キャリア輸送層を交互に積層することを特徴とする発光装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−332031(P2006−332031A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111678(P2006−111678)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】