説明

発振制御回路

【課題】発振開始時からデューティが50%に安定する発振制御回路を提供する。
【解決手段】作動制御回路3が、発振信号の発振電位がCMOSインバータIV1の反転電位よりも低い第1基準電位よりも低くなるまでMOSトランジスタT11及びT12をオフ状態、MOSトランジスタT2をオン状態に保持する。作動制御回路3が、発振信号の発振電位が第1基準電位よりも低くなったとき出力が反転するCMOSインバータIV31と、CMOSインバータ31の後段に設けた抵抗R31とコンデンサC31とからなるローパスフィルタ31と、ローパスフィルタ31の出力が閾値を越えると出力が反転するCMOSインバータ33と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振制御回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CMOSインバータを用いた水晶発振回路の発振出力を後段回路に伝える場合、発振回路を構成する発振用CMOSインバータの出力に出力用CMOSインバータを接続し、この出力CMOSインバータの出力に後段回路を接続している。
【0003】
この種の回路において、従来は、両CMOSインバータの反転電位は同一であった。このため、従来の回路では、発振開始時における微少振幅の発振出力が出力用CMOSインバータで反転され、その反転出力により後段回路が動作状態になる。そのため、後段回路で生じるノイズの影響で発振動作が不安定となり、微少振幅の発振動作から通常振幅の発振動作への移行が妨げられるという問題点があった。
【0004】
そこで、上記問題点を解決するために出力用CMOSインバータの反転電位と発振用CMOSインバータの反転電位とを異ならせることが考えられている。このようにすることにより、発振回路からの発振信号の発振電位が小さい間は出力用CMOSインバータが動作せず、後段回路が動作されることがない。しかしながら、出力用CMOSインバータの反転電位と発振用CMOSインバータの反転電位とが異なると、出力用CMOSインバータから出力されるパルスのデューティを50%にできない、という問題点が生じた。
【0005】
そこで、出力用CMOSインバータから出力されるパルスのデューティを50%に維持しつつ微少振幅時に後段回路を動作しないようにするために例えば、図7に示すような発振制御回路が提案されている(特許文献1)。同図に示すように、従来の発振制御回路1は、水晶発振回路2と、出力用CMOSインバータとしてのCMOSインバータIV2と、第1半導体スイッチ素子としてのMOSトランジスタT11及びT12と、作動制御回路3と、を備えている。
【0006】
上記水晶発振回路2は、発振用CMOSインバータとしてのCMOSインバータIV1と、このCMOSインバータIV1の出力端子−入力端子間に接続された水晶振動子QZと、から構成されている。水晶発振回路2は、図8(A)に示すような発振信号を出力する。即ち、発振信号は、発振開始時は微少振幅となり、その後、振幅が徐々に大きくなり通常振幅に安定する。
【0007】
上記CMOSインバータIV2は、互いに直列接続されたNチャンネルのMOSトランジスタT21及びPチャンネルのMOSトランジスタT22から構成されている。CMOSインバータIV2には、上述した水晶発振回路2からの発振信号が入力されている。上記MOSトランジスタT11は、CMOSインバータIV2を構成するMOSトランジスタT21のソースとグランドとの間に設けられた第1半導体スイッチ素子である。上記MOSトランジスタT12は、CMOSインバータIV2を構成するMOSトランジスタT22のソースと電源との間に設けられた第1半導体スイッチ素子である。よって、MOSトランジスタT11及びT12がオフ状態の間は、CMOSインバータIV2は動作せず、後段回路LAも動作しない。
【0008】
上記作動制御回路3は、発振信号の振幅が小さい間、上記MOSトランジスタT11及びT12をオフ状態にする回路である。作動制御回路3は、CMOSインバータIV301と、CMOSインバータIV302と、CMOSインバータIV303と、ナンドゲートND1と、コンデンサC33と、CMOSインバータIV304と、から構成されている。上記CMOSインバータIV301及びCMOSインバータIV302は、発振信号が供給されている。CMOSインバータIV301は、発振信号の発振電位がCMOSインバータIV1の反転電位(2.5V)よりも高い第2基準電位(3.0V)よりも高くなったとき5Vから0Vに反転する。CMOSインバータ302は、発振信号の発振電位がCMOSインバータIV1の反転電位(2.5V)よりも低い第1基準電位(2.0V)よりも低くなったとき出力が0Vから5Vに反転する。
【0009】
CMOSインバータIV303は、CMOSインバータIV301の出力が入力されている。そして、CMOSインバータIV301及びCMOSインバータIV303の出力はナンドゲートND1に供給されている。このナンドゲートND1の出力は、コンデンサC33を介して電源に接続されている。
【0010】
よって、発振開始時で発振信号の振幅が小さい間、即ち、発振信号の振幅が第1基準電位(2.0V)以上、かつ、第2基準電位(3.0V)以下の間、ナンドゲートND1の出力は、図8(B)に示すように、0Vとなる。その後、発振信号の振幅が大きくなって、発振信号の振幅が第1基準電位(2.0V)よりも低く、第2基準電位(3.0V)よりも高くなると、ナンドゲートND1の出力は、増減を繰り返しながら徐々に大きくなり5.0Vに近づく。
【0011】
上記CMOSインバータIV304は、上述したナンドゲートND1の出力が入力されている。よって、図8(C)に示すように、発振信号の振幅が大きくなり、ナンドゲートND1の出力がCMOSインバータIV304の反転電位(2.5V)を越えると、CMOSインバータIV304の出力が5Vから0Vに反転する。このCMOSインバータIV304の出力はMOSトランジスタT12のゲートに供給されている。また、CMOSインバータIV304の出力は、CMOSインバータIV5によって反転された後に、MOSトランジスタT11のゲートに供給される。
【0012】
よって、発振信号の振幅が小さいうちは、CMOSインバータIV304の出力はHレベル、CMOSインバータIV5の出力はLレベルであるため、MOSトランジスタT11及びT12はオフ状態に保持されてCMOSインバータIV2は動作しない。結果、図8(D)に示すように後段回路LAにパルスが供給されないため後段回路LAは動作しない。その後、水晶発振回路2の動作が安定して発振信号の振幅が大きくなると、CMOSインバータIV304及びIV5の出力が反転して、MOSトランジスタT11及びT12がオン状態になり、CMOSインバータIV2が動作して後段回路LAに図8(D)に示すようにデューティ50%のパルスを出力し、後段回路LAが動作する。
【0013】
また、上記作動制御回路3の変形例として、図9に示すような発振制御回路1が提案されている(特許文献1)。同図に示すように、作動制御回路3は、CMOSインバータIV305と、MOSトランジスタT31と、抵抗R32と、コンデンサC32と、CMOSインバータT306と、から構成されている。上記CMOSインバータIV305は、発振信号が供給されている。CMOSインバータIV305は、図10(B)に示すように、発振信号の発振電位がCMOSインバータIV1の反転電位(2.5V)よりも低い第1基準電位(2.0V)よりも低くなったとき出力が0Vから5Vに反転する。
【0014】
上記MOSトランジスタT31は、ゲートにCMOSインバータIV305の出力が供給されている。上記MOSトランジスタT31及び抵抗R32は、電源とグランドとの間に互いに直列接続されている。上記コンデンサC32は、抵抗R32に並列に接続されている。そして、上記抵抗R32及びコンデンサC32の接続点が、CMOSインバータIV306に供給されている。よって、発振開始時点で発振信号の振幅が小さい間、即ち、発振信号の振幅が第1基準電位(2.0V)以上の間、CMOSインバータIV306の入力は、図10(C)に示すように、電源電圧5.0Vとなる。その後、発振信号の振幅が大きくなって、発振信号の振幅が第1基準電位(2.0V)よりも低くなると、CMOSインバータIV306の入力は、増減を繰り返しながら徐々に小さくなり0Vに近づく。
【0015】
そして、図10(D)に示すように、発振信号の振幅が大きくなり、CMOSインバータIV306の入力がCMOSインバータIV306の反転電位(2.5V)を下回ると、CMOSインバータIV306の出力がLレベルからHレベルに反転する。このCMOSインバータIV306の出力はMOSトランジスタT11のゲートに供給されている。また、CMOSインバータIV306の出力は、CMOSインバータIV6によって反転された後に、MOSトランジスタT12のゲートに供給される。
【0016】
よって、図7の発振制御回路1と同様に、発振信号の振幅が小さいうちは、CMOSインバータIV306の出力はLレベル、CMOSインバータIV6の出力はHレベルであるため、MOSトランジスタT11及びT12はオフ状態に保持されてCMOSインバータIV2は動作しない。結果、図10(E)に示すように後段回路LAにパルスが供給されないため後段回路LAが動作しない。その後、水晶発振回路2の動作が安定して発振信号の振幅が大きくなると、CMOSインバータIV306及びIV6の出力が反転して、MOSトランジスタT11及びT12がオン状態となり、CMOSインバータIV2が動作して後段回路LAに図10(E)に示すようにデューティ50%のパルスを出力し、後段回路LAが動作する。
【0017】
しかしながら、図7に示す発振制御回路1は、作動制御回路3内において図8(B)に示すように、発振信号の振幅が大きくなると増減しながら増加する信号がCMOSインバータIV304に入力され、その入力がCMOSインバータIV304の反転電位を超えると、MOSトランジスタT11及びT12がオフ状態からオン状態になる。このため、図11(A)に示すように、CMOSインバータIV304の入力が反転電位(2.5V)近くで増減すると、図11(B)に示すように、CMOSインバータIV304の出力が5V、0Vを繰り返した後に5Vに安定する。このため、発振開始時にデューティが安定しない、という問題があった。
【0018】
図9に示す発振制御回路1も同様に、作動制御回路3内において図10(C)に示すように、発振信号の振幅が大きくなると増減しながら減少する信号がCMOSインバータIV306に入力され、その入力がCMOSインバータIV306の反転電位を下回ると、MOSトランジスタT11及びT12がオフ状態からオン状態になる。このため、図12(A)に示すように、CMOSインバータIV306の入力が反転電位(2.5V)近くで増減すると、図12(B)に示すように、CMOSインバータIV306の出力がLレベル、Hレベルを繰り返した後にLレベルに安定する。このため、発振開始時にデューティが安定しない、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平4−291808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
そこで、本発明は、発振開始時からデューティが50%に安定する発振制御回路を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述した課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、発振用CMOSインバータと該発振用CMOSインバータの出力端子−入力端子間に接続された水晶振動子とを有する水晶発振回路と、前記水晶発振回路から出力される発振信号を入力する出力用CMOSインバータと、前記出力用CMOSインバータに対する電源供給をオンオフする第1半導体スイッチ素子、または、前記出力用CMOSインバータの出力を短絡する第2半導体スイッチ素子と、前記発振信号の発振電位が前記発振用CMOSインバータの反転電位よりも低い第1基準電位よりも低くなるまで、または、前記発振信号の発振電位が前記発振用CMOSインバータの反転電位よりも高い第2基準電位よりも高くなるまで、前記第1半導体スイッチ素子をオフ状態、または、前記第2半導体スイッチ素子をオン状態に保持する作動制御回路と、を備えた発振制御回路において、前記作動制御回路は、前記発振信号が前記第1基準電位よりも低くなったとき、または、前記発振信号が前記第2基準電位よりも高くなったとき、出力が反転する第1比較器と、前記第1比較器の後段に設けた抵抗とコンデンサとからなるフィルタと、前記フィルタの出力が閾値を越える、又は、下回ったとき、出力が反転する第2比較器と、を有することを特徴とする発振制御回路に存する。
【0022】
請求項2記載の発明は、前記作動制御回路は、電源とグランドとの間に互いに直列接続されて設けられた第3半導体スイッチ手段及び抵抗をさらに有し、前記フィルタの出力が、前記第3半導体スイッチ手段のゲートに供給されていることを特徴とする請求項1に記載の発振制御回路に存する。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、フィルタを設けることにより、単調増加、単調減少する信号が第2比較器に入力されるため、発振開始時からデューティが50%に安定する発振制御回路を提供することができる。
【0024】
請求項2記載の発明によれば、第3半導体スイッチ手段の前にフィルタを設けることにより、第3半導体スイッチ手段のゲート電圧が徐々に上昇又は減少するため、MOSトランジスタT31のオン時のノイズを減少することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態における本発明の発振制御回路を示す回路図である。
【図2】第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態におけるCMOSインバータの入出力特性を示すグラフである。
【図3】図1に示す発振制御回路のa点〜g点のタイムチャートである。
【図4】第2実施形態における作動制御回路を示す回路図である。
【図5】図4に示す作動制御回路を組み込んだ発振制御回路のa点〜e点、図1に示す発振制御回路のg点のタイムチャートである。
【図6】第3実施形態における作動制御回路を示す回路図である。
【図7】従来の発振制御回路の一例を示す回路図である。
【図8】図7に示す発振制御回路のa点〜f点のタイムチャートである。
【図9】従来の発振制御回路の一例を示す回路図である。
【図10】図9に示す発振制御回路のa点〜d点のタイムチャートである。
【図11】従来の問題点を説明するための図である。
【図12】従来の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。同図に示すように、発振制御回路1は、水晶発振回路2と、出力用CMOSインバータとしてのCMOSインバータIV2と、第1半導体スイッチ素子としてのMOSトランジスタT11及びT12と、第2半導体スイッチ素子としてのMOSトランジスタT2と、作動制御回路3と、CMOSインバータIV4と、を備えている。
【0027】
上記水晶発振回路2は、発振用CMOSインバータとしてのCMOSインバータIV1と、水晶振動子QZと、帰還抵抗Rfと、コンデンサC11及びC12と、から構成されている。上記CMOSインバータIV1は、図2(A)に示すような入出力特性(伝達特性)を有しており、その反転電位(論理しきい値)は2.5Vである。ここでいう反転電位とは、入出力特性における立ち下り開始入力電圧と立ち下がり終了入力電圧との中点の入力電圧であり、通常は出力電圧が電源電圧(5V)の半分(2.5V)のときの入力電圧である。
【0028】
上記水晶振動子QZは、CMOSインバータIV1の出力端子−入力端子間に接続されている。上記帰還抵抗Rfは、水晶振動子QZに対して並列にCMOSインバータIV1の出力端子−入力端子間に接続されている。コンデンサC11は、CMOSインバータIV1の入力端子−グランド間に接続されている。コンデンサC12は、CMOSインバータIV1の出力端子−グランド間に接続されている。上述した構成の水晶発振回路2は、CMOSインバータIV1の出力端子から図3(A)に示すような発振信号を出力する。即ち、発振信号は、発振開始時は微少振幅となり、その後、振幅が徐々に大きくなり通常振幅に安定する。
【0029】
上記CMOSインバータIV2は、図1に示すように、互いに直列接続されたNチャンネルのMOSトランジスタT21及びPチャンネルのMOSトランジスタT22から構成されている。このCMOSインバータIV2には、上述した水晶発振回路2からの図3(A)に示す発振信号が供給される。CMOSインバータIV2は、上述したCMOSインバータIV1と同様に図2(A)に示すような入出力特性を有している。即ち、CMOSインバータIV1とCMOSインバータIV2との反転電位は同一の2.5Vである。よって、水晶発振回路2から発振信号が入力されると、CMOSインバータIV2はデューティ50%のパルスを後段回路LAに対して出力する。
【0030】
上述したMOSトランジスタT11は、CMOSインバータIV2を構成するMOSトランジスタT21のソースとグランドとの間に設けられた半導体スイッチ素子である。上記MOSトランジスタT12は、CMOSインバータIV2を構成するMOSトランジスタT22のソースと電源との間に設けられた半導体スイッチ素子である。MOSトランジスタT11及びT12は、CMOSインバータIV2に対する電源供給をオンオフするスイッチである。
【0031】
詳しくは、MOSトランジスタT11及びT12をオフ状態にすると、CMOSインバータIV2に対する電源供給が遮断されて、水晶発振回路2からの発振信号がCMOSインバータIV2に供給されてもCMOSインバータIV2が動作せずに、後段回路LAにパルスが出力されることがなく、後段回路LAが動作しない。一方、MOSトランジスタT11及びT12をオン状態にすると、CMOSインバータIV2に対して電源が供給され、水晶発振回路2からの発振信号がCMOSインバータIV2に供給されるとCMOSインバータIV2から後段回路LAに対してパルスが出力されて、後段回路LAが動作する。
【0032】
上述したMOSトランジスタT2は、CMOSインバータIV2の出力とグランドとの間に設けられた半導体スイッチ素子である。上記MOSトランジスタT2は、CMOSインバータIV2の出力を短絡するスイッチである。即ち、MOSトランジスタT2をオン状態にすると、CMOSインバータIV2の出力が短絡され、水晶発振回路2からの発振信号がCMOSインバータIV2に供給されてもCMOSインバータIV2から後段回路LAにパルスが出力されることがなく、後段回路LAが動作しない。一方、MOSトランジスタT2をオフ状態にすると、水晶発振回路2からの発振信号がCMOSインバータIV2に供給されるとCMOSインバータIV2から後段回路LAに対してパルスが出力されて、後段回路LAが動作する。
【0033】
作動制御回路3は、発振信号の振幅が小さい間、上記MOSトランジスタT11及びT12をオフ状態にする回路である。作動制御回路3は、第1比較器としてのCMOSインバータIV31と、CMOSインバータIV32と、ローパスフィルタ31と、第3半導体スイッチ素子としてのPチャンネルのMOSトランジスタT31と、抵抗R32と、第2比較器としてのCMOSインバータIV33と、を備えている。
【0034】
上記CMOSインバータIV31は、図2(B)に示すような入出力特性(伝達特性)を有しており、その反転電位は2.0Vである。即ち、CMOSインバータIV31は、図3(B)に示すように、発振信号がCMOSインバータIV1の反転電位(2.5V)よりも低い第1基準電位(2.0V)よりも低くなったとき、出力が0Vから5Vに反転する第1比較器として働く。上記CMOSインバータIV32は、図3(C)に示すように、CMOSインバータIV31の出力を反転する。
【0035】
上記ローパスフィルタ31は、抵抗R31と、コンデンサC31と、から構成されている。ローパスフィルタ31は、CMOSインバータIV32からのパルスを平滑化して、図3(D)に示すように単調減少する出力となる。即ち、水晶発振回路2からの発振信号の振幅が大きくなり発振電位が2.0Vよりも低くなり、CMOSインバータIV32からLレベルのパルスが出力されると、ローパスフィルタ31からは単調減少する信号が出力される。
【0036】
このローパスフィルタ31の後段には、上記MOSトランジスタT31及び抵抗R32からなる直列回路と、CMOSインバータIV33と、が設けられている。上記MOSトランジスタT31のゲートには、ローパスフィルタ31からの出力が入力される。MOSトランジスタT31及び抵抗R32の接続点は、CMOSインバータIV33の入力に接続されている。このCMOSインバータIV33は、図2(A)に示すような入出力特性を有している。
【0037】
よって、水晶発振回路2からの発振信号が小さく、ローパスフィルタ31からの出力が5Vの間はMOSトランジスタT31はオフ状態となり、図3(E)に示すように、MOSトランジスタT31と抵抗R32との接続点電圧が0Vとなる。このため、図3(F)に示すように、水晶発振回路2からの発振信号が小さい間はCMOSインバータIV33の出力は5Vとなる。
【0038】
一方、水晶発振回路2からの発振信号が大きくなりローパスフィルタ31から単調減少する信号が出力され、ローパスフィルタ31の出力がMOSトランジスタT31のカットオフ電圧を超えるとMOSトランジスタT31が導通して、MOSトランジスタT31と抵抗R32との接続点電圧は、図3(E)に示すように、単調増加して電源電圧5Vに飽和する。このとき、MOSトランジスタT31と抵抗R32との接続点電圧がCMOSインバータIV33の反転電位(2.5V)を超えると、図3(F)に示すように、CMOSインバータIV33の出力は5Vから0Vに反転する。
【0039】
このCMOSインバータIV33の出力は、図1に示すように、MOSトランジスタT12のゲート及びMOSトランジスタT2に供給されている。また、CMOSインバータIV33の出力は、CMOSインバータIV4によって反転された後にMOSトランジスタT11のゲートに供給される。よって、発振信号の振幅が小さいうちはCMOSインバータIV33の出力は5V、CMOSインバータIV4の出力はLレベルであるため、MOSトランジスタT11及びT12はオフ状態に保持されてCMOSインバータIV2は動作しない。また、MOSトランジスタT2はオン状態に保持されてCMOSインバータIV2の出力が短絡される。
【0040】
結果、図3(G)に示すように後段回路LAにパルスが供給されないため後段回路LAは動作しない。その後、水晶発振回路2の動作が安定して発振信号の振幅が大きくなると、CMOSインバータIV33及びIV4の出力が反転して、MOSトランジスタT11及びT12がオン状態になると共にMOSトランジスタT2がオフ状態になり、CMOSインバータIV2が動作して後段回路LAに図3(G)に示すようにデューティ50%のパルスを出力し、後段回路LAが動作する。
【0041】
上述した発振制御回路1によれば、ローパスフィルタ31を設けることにより、単調増加する信号がCMOSインバータIV33に入力されるため、発振開始時からデューティを50%に安定することができる。
【0042】
また、上述した発振制御回路1によれば、MOSトランジスタT31の前にローパスフィルタ31を設けることにより、MOSトランジスタT31のゲート電圧が徐々に減少するため、MOSトランジスタT31のオン時のノイズを低減することができる。
【0043】
なお、上述した第1実施形態では、第1比較器としてのCMOSインバータIV31は発振信号の発振電位が第1基準電位(2.5V)よりも低くなったとき出力が0Vから5Vに反転するものであったが、本発明はこれに限ったものではない。第1比較器としては、発振信号の発振電位が第1基準電位よりも低くなったとき出力が反転するものであればよく、例えば5Vから0Vに反転するものであってもよい。
【0044】
第2実施形態
次に本発明の第2実施形態を図4及び図5に基づいて説明する。第1実施形態と第2実施形態とで異なる点は、作動制御回路3の構成である。図4に示すように、作動制御回路3は、第1比較器として働くCMOSインバータIV34と、MOSトランジスタT31と、抵抗R32と、コンデンサC32と、ローパスフィルタ31と、CMOSインバータIV35と、を備えている。上記CMOSインバータIV34は、水晶発振回路2からの発振信号が供給されている。CMOSインバータIV34は、図5(B)に示すように、発振信号の発振電位がCMOSインバータIV1の反転電位(2.5V)よりも高い第2基準電位(3.0V)よりも高くなったとき出力が5Vから0Vに反転する。
【0045】
第1実施形態では、ローパスフィルタ31の後段にMOSトランジスタT31及び抵抗R32が設けられていたが、第2実施形態ではローパスフィルタ31の前段にMOSトランジスタT31及び抵抗R32が設けられている。また、上記抵抗R32に並列にコンデンサC32が設けられている。上記MOSトランジスタT31のゲートには、上述したCMOSインバータIV34の出力が入力されている。よって、発振信号の振幅が小さくCMOSインバータIV34の出力がHレベルの間、MOSトランジスタT31はオフ状態となり、ローパスフィルタ31には0Vが入力される。
【0046】
一方、発振信号の振幅が大きくなり第2基準電位(2.5V)を上回るようになると、図5(B)に示すように、CMOSインバータIV34の出力は5V、0Vを繰り返すパルス状になる。よって、MOSトランジスタT31はオンオフを繰り返す。上記コンデンサC32は、MOSトランジスタT31がオフ状態のときは抵抗R32で放電され、MOSトランジスタT31がオン状態のときは充電される。よって、ローパスフィルタ31の入力は、図5(C)に示すように、増減を繰り返しながら徐々に増加する。
【0047】
ローパスフィルタ31は、図5(C)に示すような入力を平滑化して、図5(D)に示すように単調増加する出力となる。CMOSインバータIV35は、第2比較器として働き、図5(E)に示すように、ローパスフィルタ31の出力が閾値としての反転電位(2.5V)を下回ると5Vから0Vに反転する。MOSインバータIV35の出力は第1実施形態と同様にMOSトランジスタT12及びMOSトランジスタT2のゲートに供給されている。また、CMOSインバータIV35の出力は、CMOSインバータIV4によって反転された後に、MOSトランジスタT11のゲートに供給される。作動制御回路3を図4に示すような構成にしてもCMOSインバータIV2の出力は第1実施形態と同様に図5(G)に示すように、発振信号が小さい間は後段回路LAに対してパルスを出力せずに、発振信号の振幅が大きくなってから後段回路LAに対してパルスが出力されるようになる。
【0048】
第3実施形態
次に本発明の第3実施形態を図6に基づいて説明する。第2実施形態では抵抗R32と並列にコンデンサC32を設けていたが、第3実施形態ではMOSトランジスタT31と抵抗R32との接続点電圧を直接、ローパスフィルタ31に対して供給している。これにより、ローパスフィルタ31には、図5(B)に示すようなパルスが供給される。ローパスフィルタ31は、図5(B)に示すようなパルスを平滑化して、図5(D)に示すようにパルスのデューティに応じた値まで単調増加する出力となる。よって、作動制御回路3を図6に示すような構成にしてもCMOSインバータIV2の出力は第1及び第2実施形態と同様に、発振信号が小さい間は後段回路LAに対してパルスを出力せずに、発振信号の振幅が大きくなってから後段回路LAに対してパルスが出力されるようになる。
【0049】
なお、上述した第1実施形態では、第1比較器としてCMOSインバータIV1の反転電位(2.5V)よりも低い第1基準電位(2.0V)よりも低くなったとき、出力が反転するCMOSインバータIV31を設けていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、CMOSインバータIV31の代わりに、CMOSインバータIV1の反転電位(2.5V)よりも高い第2基準電位(3.0V)よりも高くなったときに、出力が反転するCMOSインバータを設けてもよい。
【0050】
また、CMOSインバータIV31に加えてCMOSインバータIV1の反転電位(2.5V)よりも高い第2基準電位(3.0V)よりも高くなったときに出力が反転するCMOSインバータを設けて、発振信号が第1基準電位(2.0V)よりも低くなったときと第2基準電位(3.0V)よりも高くなったときとに0Vから5Vまたは5Vから0Vに反転する信号をローパスフィルタ31に出力するようにしてもよい。
【0051】
また、上述した第2及び第3実施形態では、第1比較器としてCMOSインバータIV1の反転電位(2.5V)よりも高い第2基準電位(3.0)よりも高くなったとき、出力が反転するCMOSインバータIV34を設けていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、CMOSインバータIV34の代わりに、CMOSインバータIV1の反転電位(2.5V)よりも低い第1基準電位(2.5V)よりも低くなったときに、出力が反転するCOMSインバータを設けても良い。
【0052】
また、CMOSインバータIV34に加えてCMOSインバータIV1の反転電位(2.5V)よりも低い第1基準電位(2.0V)よりも低くなったときに出力が反転するCOMSインバータを設けて、発振信号が第1基準電位第1基準電位(2.0V)よりも低くなったときと第2基準電位(3.0V)よりも高くなったときとに0Vから5Vまたは5Vから0Vに反転する信号をローパスフィルタ31に出力するようにしてもよい。
【0053】
また、上述した第1〜第3実施形態では、第1比較器、第2比較器としてCMOSインバータを用いていたが、本発明はこれに限ったものではない。第1比較器及び第2比較器として、例えばオペアンプから構成されるコンパレータを用いてもよい。
【0054】
また、上述した第1〜第3実施形態では、MOSトランジスタT31としてPチャンネルを用いていたが本発明はこれに限ったものではない。Pチャンネルの代わりにNチャンネルを用いても良い。
【0055】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 発振制御回路
2 水晶発振回路
3 作動制御回路
31 ローパスフィルタ
IV1 CMOSインバータ(発振用CMOSインバータ)
IV2 CMOSインバータ(出力用CMOSインバータ)
IV31 CMOSインバータ(第1比較器)
IV33 CMOSインバータ(第2比較器)
T11 MOSトランジスタ(第1半導体スイッチ素子)
T12 MOSトランジスタ(第1半導体スイッチ素子)
T2 MOSトランジスタ(第2半導体スイッチ素子)
T31 MOSトランジスタ(第3半導体スイッチ素子)
QZ 水晶振動子
R32 抵抗
C31 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振用CMOSインバータと該発振用CMOSインバータの出力端子−入力端子間に接続された水晶振動子とを有する水晶発振回路と、前記水晶発振回路から出力される発振信号を入力する出力用CMOSインバータと、前記出力用CMOSインバータに対する電源供給をオンオフする第1半導体スイッチ素子、または、前記出力用CMOSインバータの出力を短絡する第2半導体スイッチ素子と、前記発振信号の発振電位が前記発振用CMOSインバータの反転電位よりも低い第1基準電位よりも低くなるまで、または、前記発振信号の発振電位が前記発振用CMOSインバータの反転電位よりも高い第2基準電位よりも高くなるまで、前記第1半導体スイッチ素子をオフ状態、または、前記第2半導体スイッチ素子をオン状態に保持する作動制御回路と、を備えた発振制御回路において、
前記作動制御回路は、
前記発振信号が前記第1基準電位よりも低くなったとき、または、前記発振信号が前記第2基準電位よりも高くなったとき、出力が反転する第1比較器と、
前記第1比較器の後段に設けた抵抗とコンデンサとからなるフィルタと、
前記フィルタの出力が閾値を越える、又は、下回ったとき、出力が反転する第2比較器と、を有する
ことを特徴とする発振制御回路。
【請求項2】
前記作動制御回路は、電源とグランドとの間に互いに直列接続されて設けられた第3半導体スイッチ手段及び抵抗をさらに有し、
前記フィルタの出力が、前記第3半導体スイッチ手段のゲートに供給されている
ことを特徴とする請求項1に記載の発振制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−245715(P2010−245715A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90648(P2009−90648)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(509096968)佳帆電子株式会社 (5)
【Fターム(参考)】