説明

発泡射出成形品

【課題】ゲート部からの破断の拡大を抑えた発泡射出成形品を提供する。
【解決手段】本発明の発泡射出成形品1は、発泡層5が外部に露出している、少なくとも1つのゲート部2を有している。そして、発泡射出成形品の表面から突出して、ゲート部2の周囲を囲んでいる、ゲート部2からの破断を止めるためのリブ3が、ゲート部2の少なくとも1つに対応して設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の内装品などにも使用される発泡射出成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のドアの内側には、内装品の1つとしてドアトリムが取り付けられている。自動車の重量を軽量化するために、ドアトリムには軽量化が求められている。そのため、ドアトリムを特許文献1などに記載されている発泡射出成形で成形する場合がある。発泡射出成形によって成形されたドアトリムは、内部が軽量な発泡層で形成されているため、非発泡の射出成形品に比べて軽量であり、耐熱性にも優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−346898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発泡射出成形によるドアトリムを成形する方法について、図4を用いて説明する。発泡射出成形は、射出成形装置を利用して行うことができる。まず、発泡剤が混入された溶融している樹脂を、2つの金型23で形成されるキャビティ24内に、一方の金型23に接続されているランナー22を介して注入して表面層であるスキン層26を形成する(図4(a)参照)。そして、スキン層26を形成した後に、他方の金型23を一方の金型23に対して離れる方向にずらすことで、発泡剤が発泡して、発泡層25が形成される(図4(b)参照)。そして、金型23を開放する。このとき、キャビティ24内に樹脂が注入される部分であるゲート部27において、ゲート部27から突出する部分28が形成されている(図4(b)、(c)参照)。この突出する部分28をゲート部27で切り落としてドアトリム21が完成する(図4(d)参照)。
【0005】
このようにして成形されたドアトリム21は、図4(d)に示すように、ゲート部27を除いて、表面にスキン層26が形成され、内部には発泡層25が形成されている。しかし、ゲート部27では、スキン層26が存在せず、発泡層25が外部に露出する。発泡層25は、スキン層26に比べて強度が落ちる。そのため、衝撃などにより破損しやすい。ゲート部27において外部に露出している発泡層25が破損すると、ゲート部27における、発泡層25の周囲に位置するスキン層26の端部からドアトリム21が破断してしまう。つまり、図5のゲート部27の上面を観察した写真に示すように、衝撃などにより、ゲート部27で露出した発泡層25を起点として、放射状にドアトリム21のスキン層26の破断(図5の放射状に延びる白い線)が生じてしまう場合がある。また、この破断がドアトリム21全体に拡がると、ドアトリム21が完全に破損してしまう可能性がある。さらには、破損したドアトリム21によって、乗員が負傷してしまう可能性もある。
【0006】
そこで本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ゲート部からの破断の拡大を抑えた発泡射出成形品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発泡射出成形品は、発泡層が外部に露出している、少なくとも1つのゲート部を有している。また、発泡射出成形品の表面から突出して、ゲート部の周囲を囲んでいる、ゲート部からの破断を止めるためのリブが、ゲート部の少なくとも1つに対応して設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ゲート部を起点とする破断がドアトリム全体に拡がらないため、ドアトリムの完全な破損が生じにくくなり、ドアトリムの破損による乗員の負傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るドアトリムの一実施形態における、ゲート部付近の拡大概略図である。
【図2】図1のAA断面の概略図である。
【図3】本発明に係るドアトリムの成形方法の一例を示す図であり、(a)は金型に樹脂を注入する様子、(b)は表面層を形成する様子、(c)は発泡層を形成する様子、(d)は金型を開いたときのドアトリムの様子、(e)は完成したドアトリムの様子である。
【図4】発泡射出成形によるドアトリムの成形方法を示す図であって、(a)は表面層を形成する様子、(b)は発泡層を形成する様子、(c)は、金型を開放したときのドアトリムの様子、(d)は完成したドアトリムの様子である。
【図5】ゲート部から破断が生じた様子を示す、ゲート部付近の上面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態を説明する。なお、同一の機能を有する構成には添付図面中、同一の番号を付与し、その説明を省略することがある。
【0011】
図1に、本発明に係るドアトリムの一実施形態における、ゲート部付近の拡大概略図を示す。図2に、図1のAA断面の概略図を示す。
【0012】
本発明のドアトリム1は、発泡射出成形によって成形されるため、成形跡ともいえるゲート部2が形成されている。また、本発明のドアトリム1には、このゲート部2の周囲を囲むように、ドアトリム1の表面から突出するリブ3が設けられている。
【0013】
発泡射出成形品であるドアトリム1は、発泡射出成形で成形されているため、図2に示すように、ドアトリム1の断面は、表面層であり、ほとんど発泡剤が発泡していない層であるスキン層6と、スキン層6に挟まれるように存在する、発泡剤が発泡して形成される発泡層5と、で構成されている。
【0014】
ゲート部2においては、従来技術と同様に、発泡層5が露出している。そして、ゲート部2を囲むように設けられたリブ3は、ドアトリム1の成形時に一緒に成形されるために、表面層であるスキン層6と発泡層5とで形成されている。
【0015】
上述したように、発泡層5は、スキン層6に比べて強度が落ちる。そのため、衝撃などにより破損しやすい。従来は、ゲート部2において発泡層5が破損すると、ゲート部2における、発泡層5の周囲に位置するスキン層6の端部から破断が拡がってしまう可能性があった。しかしながら、本実施形態のドアトリム1においては、ゲート部2から破断が生じたとしても、その破断が、厚みがあり、強度を有するリブ3で止まるために、破断がドアトリム1全体に拡がらない。そのため、ドアトリム1が完全に壊れてしまうことを防ぐことができる。
【0016】
次に、図3を用いて、本発明のドアトリム1の成形方法について説明する。発泡射出成形では、射出成形装置を利用することができる。キャビティ11を形成する2つの金型12の一方には、リブ3用の溝13が設けられている。初めに、ランナー14からキャビティ11内に、発泡剤が混入された溶融している樹脂10を注入する(図3(a))。そして、キャビティ11内を樹脂10で満たし、一定時間冷却してスキン層6を形成する(図3(b))。スキン層6の形成後、他方の金型を一方の金型に対して離れる方向にずらすことで発泡剤を発泡させて、発泡層5を形成する。そして、金型12を開放すると、ドアトリム1にはゲート部2から突出した部分15が形成されているため(図3(d))、その突出した部分15をゲート部2の位置で切り落として、図1および図2に示すようなドアトリム1が完成する(図3(e))。
【0017】
なお、一般的に、ドアトリム1を成形する金型には、樹脂を注入するランナー14が複数接続されている。そのため、ドアトリム1には、複数のゲート部2が存在する。本実施形態のドアトリム1では、全てのゲート部2の周りにリブ3を形成してもよく、全てではなく、一部のゲート部2の周りにだけリブ3を形成してもよい。
【0018】
また、リブ3は、図1および図2に示すように上方からみて円形であっても、正方形や六角形など、多角形であっても構わない。ただし、リブ3が上方からみて円形である場合には、成形用の金型に樹脂の流れが滞るような、リブ3の角に対応する部分が存在せず、また、ゲート部2からリブ3までの距離が等しくなるため、金型全体の樹脂の流れが変化せず好ましい。
【0019】
なお、上述の実施形態の説明では、ドアトリムについて説明したが、本発明を利用できるならば、ドアトリムに限定されない。
【符号の説明】
【0020】
1 ドアトリム(発泡射出成形品)
2 ゲート部
3 リブ
5 発泡層
6 スキン層
10 樹脂
11 キャビティ
12 金型
13 溝
14 ランナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡層が外部に露出している、少なくとも1つのゲート部を有する発泡射出成形品であって、
前記発泡射出成形品の表面から突出して、前記ゲート部の周囲を囲んでいる、前記ゲート部からの破断を止めるためのリブが、前記ゲート部の少なくとも1つに対応して設けられている、発泡射出成形品。
【請求項2】
前記リブは、角が形成されないように前記ゲート部を囲んでいる、請求項1に記載の発泡射出成形品。
【請求項3】
前記発泡射出成形品は、ドアトリムである、請求項1または2に記載の発泡射出成形品。
【請求項4】
発泡層が外部に露出している、少なくとも1つのゲート部を有する発泡射出成形品の成形方法であって、
キャビティを形成する2つの金型のうちの、前記ゲート部を形成する部分が位置する金型に、前記ゲート部を形成する部分を囲むようにリブを形成するための溝を形成し、
2つの前記金型を閉じて前記キャビティに、発泡剤が混入された溶融している樹脂を流し込み、冷却してスキン層を形成し、
他方の金型を、前記一方の金型に対して離れる方向にずらして、前記発泡剤を発泡させて発泡層を形成して、前記金型を開放し、
前記リブに囲まれている前記ゲート部から突出する部分を切り落とす、発泡射出成形品の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−196947(P2012−196947A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64202(P2011−64202)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(390031451)株式会社林技術研究所 (83)
【Fターム(参考)】