説明

発泡成形型及び発泡成形方法

【課題】 本発明は、作業を煩雑にすることなく、構造を簡素化するようにした発泡成形型を提供する。
【解決手段】 本発明に係る発泡成形型1は、一体発泡品Sで表皮10の凹部14を予定している凹部予定部17内に収容されるインサートブロック16を備え、このインサートブロック16は、凹部予定部17の底部19の周縁に沿って延在する底ハギ部20に食い込み可能な鋭角な食い込み部21が設けられ、この食い込み部21は、底ハギ部20に沿って延在し、鋭角な食い込み部21の先端21aの周長さは、底ハギ部20の周長さより大きくなっている。このようなインサートブロック16は、表皮10の伸び分を利用して、凹部予定部17内に押し込むように装着されるので、インサートブロック16によって凹部予定部17の底部19を発泡成形型1内で常に張った状態にしておくことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹部を有する表皮一体発泡品(例えば、自動車用シートのヘッドレストやアームレストなど)を成形するための発泡成形型及び発泡成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2003−25348号公報がある。この公報には、ヘッドレストの製造方法が記載されている。ヘッドレストにおけるヘッドレスト本体の両側部にはアンダー形状としての凹部が形成され、ヘッドレスト本体の表皮は縫製により形成され、表皮の凹部の縫製部には、合成樹脂からなるクリップの一端が固定され、このクリップの他端は、凹部予定部内に装填されるインサートブロックに係止される。ヘッドレストを製造するにあたって、先ず、表皮の側部の凹部予定部内にインサートブロックを取り付ける。このインサートブロックの内側の形状は、ヘッドレスト本体の両側部のアンダー形状としての凹部と対応する形状になっている。このインサートブロックの外側にはフランジ部が形成され、このフランジ部に形成されたスリット内にクリップの中間部を嵌合させ、クリップ部の他端をフランジ部に係止させる。
この状態で、発泡成形型に表皮をセットし、表皮内に発泡液を注入して、パッド材を表皮内に一体発泡成形する。発泡液硬化後、発泡成形型から表皮一体発泡品を取り出す。そして、表皮の側部の凹部内に入っているインサートブロックを外すために、インサートブロックに対してクリップの端部の係止を解除し、その後、凹部内にクリップが残らないように、クリップの中間部をカットする。このようにして、ヘッドレストの凹部を成形している。
【0003】
【特許文献1】特開2003−25348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来のヘッドレストの製造方法では、凹部内にインサートブロックを固定するための合成樹脂製のクリップを利用しなければならないので、作業が繁雑になると同時に、発泡成形型の構造を複雑にするといった問題点がある。また、カット後のクリップが表皮側の凹部内に飛び出すように残ってしまう虞もある。
【0005】
本発明は、作業を煩雑にすることなく、構造を簡素化するようにした発泡成形型を提供することを目的とする。また、作業を繁雑にすることなく、発泡成形型の構造の簡素化を可能にする発泡成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するための本発明は、
袋状に縫製した表皮内に発泡液を注入して表皮一体発泡品を成形するための発泡成形型において、
表皮には、表皮一体発泡品で凹部を予定している凹部予定部が設けられると共に、この凹部予定部の底部の周縁に沿って接ぎ合わせて延在する底ハギ部が設けられ、
凹部予定部内に収容されるインサートブロックを有し、インサートブロックには、底ハギ部に沿って延在して底ハギ部に食い込み可能な鋭角な食い込み部が設けられ、食い込み部の先端の周長さは、底ハギ部の周長さより大きくなっていることを特徴とする。
【0007】
この発泡成形型は、表皮一体発泡品で表皮の凹部を予定している凹部予定部内に収容されるインサートブロックを備え、このインサートブロックは、凹部予定部の底部の周縁に沿って延在する底ハギ部に食い込み可能な鋭角な食い込み部が設けられ、この食い込み部は、底ハギ部に沿って延在し、鋭角な食い込み部の先端の周長さは、底ハギ部の周長さより大きくなっている。このようなインサートブロックは、表皮の伸び分を利用して、凹部予定部内に押し込むように装着されるので、インサートブロックによって、凹部予定部の底部を発泡成形型内で常に張った状態にしておくことができ、発泡成形型内で注入される発泡液の注入圧力によって表皮が戻ろうとする力よりも、底部が張られている力を強くすることができる。従って、表皮一体発泡品の凹部の底部にシワが発生することがない。インサートブロックの鋭角な食い込み部を凹部予定部の底ハギ部に食い込ませるように、表皮の伸び分を利用して、インサートブロックを凹部予定部内に押し込むだけでよいので、作業が煩雑になることがなく、発泡成形型の構造を複雑にすることもない。
【0008】
また、食い込み部の先端で囲まれている内側面は、凹状に湾曲していると好適である。このようにすることで、インサートブロックの内側面を表皮の凹部予定部の底部から離間させることができるので、成形中に、凹部予定部の底部を弛み無く確実に張っておくことができる。
【0009】
また、インサートブロックの周面は、食い込み部の先端から内側に入り込んでいる傾斜面として形成されていると好適である。インサートブロックの周面を凹部予定部の周面から確実に離間させることができるので、成形中に、インサートブロックの周面の影響を受けることなく凹部の周面をシワ無く成形することができる。
【0010】
本発明は、表皮内に発泡液を注入して表皮一体発泡品を成形するための発泡成形方法において、
表皮に設けられた凹部予定部内にインサートブロックを収容し、このとき、インサートブロックに設けられた鋭角な食い込み部を、凹部予定部の底部の周縁に沿って延在する底ハギ部に食い込ませて底部を張った状態に維持し、
その後、表皮及びインサートブロックを発泡成形型のキャビティ内にセットし、表皮内に発泡液を注入して表皮一体発泡品を成形することを特徴とする。
【0011】
この発泡成形方法においては、インサートブロックの鋭角な食い込み部を、凹部予定部の底部の周縁に沿って延在する底ハギ部に食い込ませて、底部を張った状態に維持する。その後、表皮及びインサートブロックを発泡成形型のキャビティ内にセットし、表皮内に発泡液を注入して表皮一体発泡品を成形する。このような発泡成形方法では、発泡成形型内で注入される発泡液の注入圧力によって表皮が戻ろうとする力よりも、底部が張られている力を強くできるので、表皮一体発泡品の凹部の底部にシワが発生することがない。しかも、表皮の伸び分を利用して、インサートブロックの鋭角な食い込み部を、凹部予定部の底ハギ部に食い込ませるだけでよいので、作業が煩雑になることがなく、発泡成形型の構造を複雑にすることもない。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る発泡成形型は、作業を煩雑にすることなく、構造を簡素化することができる。また、本発明に係る発泡成形方法は、作業を繁雑にすることなく、発泡成形型の構造の簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る発泡成形型及び発泡成形方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、発泡成形型1は、開閉自在な上金型2と下金型3と有している。キャビティ2aを有する上金型2には、注入ノズル26を保持するためのノズルクランプ半部2bが設けられ、キャビティ3aを有する下金型3には、注入ノズル26を保持するためのノズルクランプ半部3bが設けられている。
【0015】
そして、キャビティ2a,3aの協働によって、発泡成形型1のキャビティ1aが形成され、ノズルクランプ半部2a,3aの協働によって、成形中において注入ノズル2が発泡成形型1にしっかりと固定される。
【0016】
図示する表皮一体発泡品Sは、自動車用シートのヘッドレストであり、袋状の表皮10と、ヘッドレストフレームに固定されたヘッドレストステー11と、表皮10内に注入された発泡液R(図2参照)が硬化したパッド体12とからなる。さらに、このヘッドレストSには、表皮10とパット体12からなるヘッドレスト本体13の両側面に凹部14が設けられている。
【0017】
ヘッドレスト本体13の両側面に凹部14が設けられたデザインのヘッドレストSを成形するにあたって、発泡成形型1は、凹部14を成形するためのインサートブロック16を備えている。
【0018】
図2及び図3に示すように、インサートブロック16は、凹部14の形状に略合致している。成形前の表皮10には、表皮一体発泡品Sで凹部14を予定している凹部予定部17が設けられる。この凹部予定部17は、周部18と底部19とによって画成され、周部18と底部19は、底部18の周縁に沿って延在する底ハギ部(縫製部)20によって接
ぎ合されている。
【0019】
凹部予定部17内に収容されるインサートブロック16には、底ハギ部20に沿って延在して底ハギ部20に食い込み可能な鋭角な食い込み部21が設けられ、食い込み部21の先端21aの周長さは、底ハギ部20の周長さより大きくなっている。
【0020】
このような構成のインサートブロック16は表皮10の伸び分を利用して、凹部予定部内17に押し込むように装着される。その結果、インサートブロック16によって凹部予定部17の底部19を、発泡成形型1内で弛み無く常に張った状態にしておくことができ、発泡成形型1内で注入される発泡液Rの注入圧力によって表皮が戻ろうとする力よりも、底部19が張られている力を強くすることができる。従って、表皮一体発泡品Sの凹部14の底部19にシワが発生することがない。
【0021】
そして、インサートブロック16の鋭角な食い込み部21を凹部予定部17の底ハギ部20に食い込ませるように、表皮10の伸び分を利用して、インサートブロック16を凹部予定部17内に押し込むだけでよいので、作業が煩雑になることがなく、発泡成形型1の構造を複雑にすることもない。
【0022】
さらに、食い込み部21の先端21aで囲まれている内側面22は、凹状に湾曲している。従って、インサートブロック16の内側面22を、表皮10の凹部予定部17の底部19の底面19aから離間させることができるので、成形中に、凹部予定部17の底部19を弛み無く確実に張っておくことができる。
【0023】
さらに、インサートブロック16の周面は、食い込み部21の先端21aから内側に入り込んでいる傾斜面23として形成されている。従って、インサートブロック16の周面(傾斜面)23を凹部予定部17の周面18aから確実に離間させることができるので、成形中に、インサートブロック16の周面23の影響を受けることなく、凹部14の周面14a(図1参照)をシワ無く成形することができる。
【0024】
次に、表皮一体発泡品Sを成形するための発泡成形方法について説明する。
【0025】
ヘッドレストステー11を突出させた袋状の表皮10を準備する。この表皮10は、縫製によって形成され、表皮10のヘッドレストステー11間には、注入ノズル挿入孔25が設けられている。
【0026】
そして、表皮10の伸び分を利用して、凹部予定部17内に押し込むようにインサートブロック16を装着する。このとき、インサートブロック16に設けられた鋭角な食い込み部21を、凹部予定部17の底部19の周縁に沿って延在する底ハギ部20に食い込ませて、底部19を弛み無く張った状態に維持する。このような状態にあっては、インサートブロック16は凹部予定部17から脱落し難くなっている。また、注入ノズル挿入孔25から注入ノズル26の先端を差し込む。
【0027】
その後、インサートブロック16及び注入ノズル26が装着された状態で、表皮10を下金型3のキャビティ3a内にセットする。このとき、ヘッドレストステー11は下金型3から突出させた状態にする。そして、インサートブロック16は、下金型3のキャビティ3aの壁面に突き当てるようにして固定させておき、注入ノズル26は、ノズルクランプ半部3a内に載置される。
【0028】
この状態で上金型2を閉める。このとき、キャビティ1aは密封状態になっており、真空吸引によって、表皮10は、キャビティ1aの壁面に密着させるように保持される。
【0029】
その後、発泡成形型1は、発泡体成形装置の載置台上に載置され、スライド可能な注入ガンを発泡成形型1へ向けて移動させ、注入ガンの先端を注入ノズル26に差し込む。この状態で、注入ガンから発泡液Rを発泡成形型1内に注入することにより、表皮10内で発泡液Rは流動しながら表皮10内に満たされる。そして、発泡液Rの注入完了後、注入ガンを後退させる。
【0030】
発泡液Rの硬化完了後、上金型2を開いて、表皮一体発泡品Sを下金型3から取り出し、凹部14からインサートブロック16を外し、注入ノズル26をヘッドレスト本体13から外す。
【0031】
このような発泡成形方法では、発泡成形型1内で注入される発泡液Rの注入圧力によって表皮10が戻ろうとする力よりも、底部19が張られている力を強くできるので、表皮一体発泡品Sの凹部14の底部19にシワが発生することがない。しかも、表皮10の伸び分を利用して、インサートブロック16の鋭角な食い込み部21を、凹部予定部17の底ハギ部20に食い込ませるだけでよいので、作業が煩雑になることがなく、発泡成形型1の構造を複雑にすることもない。
【0032】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、本発明は、車両のシートに設けられるアームレースなどの成形にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る発泡成形型の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】成形中の発泡成形型を示す要部拡大断面図である。
【図3】インサートブロックの要部を断面にして示す斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1…発泡成形型、1a…キャビティ、10…表皮、14…凹部、16…インサートブロック、17…凹部予定部、19…底部、20…底ハギ部、21…食い込み部、21a…食い込み部の先端、22…インサートブロックの内側面、23…傾斜面、R…発泡液、S…表皮一体発泡品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状に縫製した表皮内に発泡液を注入して表皮一体発泡品を成形するための発泡成形型において、
前記表皮には、前記一体発泡品で凹部を予定している凹部予定部が設けられると共に、この凹部予定部の底部の周縁に沿って接ぎ合わせて延在する底ハギ部が設けられ、
前記凹部予定部内に収容されるインサートブロックを有し、前記インサートブロックには、前記底ハギ部に沿って延在して前記底ハギ部に食い込み可能な鋭角な食い込み部が設けられ、前記食い込み部の先端の周長さは、前記底ハギ部の周長さより大きくなっていることを特徴とする発泡成形型。
【請求項2】
前記食い込み部の前記先端で囲まれている内側面は、凹状に湾曲していることを特徴とする請求項1記載の発泡成形型。
【請求項3】
前記インサートブロックの周面は、前記食い込み部の前記先端から内側に入り込んでいる傾斜面として形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の発泡成形型。
【請求項4】
袋状に縫製した表皮内に発泡液を注入して表皮一体発泡品を成形するための発泡成形方法において、
前記表皮に設けられた凹部予定部内にインサートブロックを収容し、このとき、前記インサートブロックに設けられた鋭角な食い込み部を、前記凹部予定部の底部の周縁に沿って延在する底ハギ部に食い込ませて前記底部を張った状態に維持し、
その後、前記表皮及び前記インサートブロックを発泡成形型のキャビティ内にセットし、前記表皮内に発泡液を注入して前記表皮一体発泡品を成形することを特徴とする発泡成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−30085(P2010−30085A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193060(P2008−193060)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】