皮膚領域検出撮像装置
【課題】皮膚領域検出撮像装置において、被写体が環境光の日なたになっているか日陰になっているかに係らず、正確な皮膚領域の検出を行う。
【解決手段】皮膚領域検出撮像装置1は、異なった2種類の波長の照射光を、環境光におけるこれらの波長の光の強度比と同じ強度比で照射する(S1)LEDストロボを有する。これにより、撮像エリア内の全ての部分における上記2種類の波長の照射光の強度比を一定にすることができるので、撮像エリア内の全ての部分における上記2種類の波長の反射光の強度比を、被写体が有する、上記2種類の波長の照射光に対する反射率の比に応じたものとすることができる。従って、被写体が環境光の日なたになっているか日陰になっているかに係らず、被写体からの2種類の波長の反射光の強度比に基づいて、撮像エリア内の皮膚領域を正確に検出することができる(S5)。
【解決手段】皮膚領域検出撮像装置1は、異なった2種類の波長の照射光を、環境光におけるこれらの波長の光の強度比と同じ強度比で照射する(S1)LEDストロボを有する。これにより、撮像エリア内の全ての部分における上記2種類の波長の照射光の強度比を一定にすることができるので、撮像エリア内の全ての部分における上記2種類の波長の反射光の強度比を、被写体が有する、上記2種類の波長の照射光に対する反射率の比に応じたものとすることができる。従って、被写体が環境光の日なたになっているか日陰になっているかに係らず、被写体からの2種類の波長の反射光の強度比に基づいて、撮像エリア内の皮膚領域を正確に検出することができる(S5)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚領域検出撮像装置に関し、詳しくは、近赤外線領域の光によって照明された被写体の撮像画像から人体の皮膚領域を検出する皮膚領域検出撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の皮膚領域は、近赤外線領域における異なった波長の照射光に対して異なった反射率を有している(例えば、850nmの照射光に対する皮膚の反射率と950nmの照射光に対する皮膚の反射率との比は、1.2:1.0程度である)。従来より、この性質を利用して監視カメラ等における人体検出を行うことが提案されている。例えば、本出願人は、被写体からの光を集光し固体撮像素子上に2つの個眼像A、Bを形成する2つの光学レンズと、2つの個眼像を順に読み出すローリングシャッタ装置と、近赤外線領域における異なった波長(850nm、940nm)の光を発する2つのLEDとを備え、個眼像Aが読み出されるときに850nmの波長の光を照射するLEDを点灯させ、個眼像Bが読み出されるときに940nmの波長の光を照射するLEDを点灯させる皮膚領域検出撮像装置を出願した(特願2007−012921)。この皮膚領域検出撮像装置によれば、近赤外線領域の2種類の波長の光に対する皮膚領域の反射率の相違を利用して、個眼像A、Bを比較して明るさの差が所定値以上である領域を皮膚領域として検出する。
【0003】
しかしながら、太陽光等の環境光は、LEDからの照射光に比べて強力である場合が多いため、撮像エリアの全てをLED照射光のスペクトル特性に合致した光で照明できない場合がある。
【0004】
例えば、環境光における850nmの波長の光と950nmの波長の光との強度比が2:1である場合に、850nmの波長の光と950nmの波長の光との強度比が1:1の光を照射するLEDストロボを時分割発光させて撮像を行うとする。ここで、太陽光等の環境光は、LEDストロボからの照射光に比べて非常に強力である。また、撮像エリア内には、環境光が殆ど当たらず、陰となっている場所もある。
【0005】
画像が撮像される時に撮像エリア内の被写体に当たっている光(照射光)のスペクトル特性を考えると、環境光の陰(日陰)になっている部分については、殆どLEDストロボのみで照明されていると考えてよいので、この部分への照射光における、850nmの波長の光と950nmの波長の光との強度比は、概ね1:1となる。これに対して、撮像エリア内の被写体のうち、環境光が強く当たっている部分については、LEDストロボからの照射光は殆ど影響を与えることができないため、この部分への照射光における、850nmの波長の光と950nmの波長の光との強度比は、環境光における強度比と殆ど同じ値(2:1に近い値)になると考えられる。
【0006】
次に、被写体からの反射光のスペクトル特性を考える。850nmの波長の光に対する人間の皮膚の反射率と950nmの波長の光に対する人間の皮膚の反射率との比は、1.2:1.0程度である。これに対して、人間の皮膚以外の物質については、850nmの波長の光と950nmの波長の光に対する反射率の比は、概ね1.0:1.0程度となる。反射光のスペクトル特性は入射光のスペクトル特性と反射率のスペクトル特性を乗算することで得られる(反射光のスペクトル比(強度比)は入射光のスペクトル比(強度比)と反射率の比を乗算することで得られる)ので、撮像エリア内の被写体について、環境光の日なた/日陰、人間の皮膚/皮膚以外 の2×2の4種の場合で、850nmと950nmの波長の照射光に対する反射光のスペクトル比(強度比)を概算すると、図16に示されるようになる。すなわち、(1)環境光日なた・人間の皮膚・・・2.4:1.0(=2.4/1.0=2.4)、(2)環境光日なた・皮膚以外・・・2.0:1.0(=2.0/1.0=2.0)、(3)環境光日陰・人間の皮膚・・・1.2:1.0(=1.2/1.0=1.2)、(4)環境光日陰・皮膚以外・・・1.0:1.0(=1.0/1.0=1.0)となる。
【0007】
特願2007−012921で提案した皮膚領域検出撮像装置は、850nmと950nmの波長の照射光に対する反射光のスペクトル比(強度比)が、人間の皮膚からの反射光については大きくなり、それ以外の物質からの反射光については小さくなることを期待して皮膚領域の検出を行うが、上の(1)〜(4)では皮膚以外の領域である(2)の強度比(2.0)の方が、皮膚領域である(3)の強度比(1.2)よりも大きくなっている。従って、特願2007−012921で提案した皮膚領域検出撮像装置では、正確な皮膚領域の検出を行えない場合が発生する。
【0008】
なお、撮像装置の分野において、複数の光学系を備えた複眼撮像装置が知られている(例えば、特許文献1乃至5参照)。けれども、特許文献1乃至5に記載の発明では、上記の問題を解決することができない。
【特許文献1】特開2007−295141号公報
【特許文献2】特開2005−303694号公報
【特許文献3】特開2007−65335号公報
【特許文献4】特開2005−341301号公報
【特許文献5】特開2007−174566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、被写体が環境光の日なたになっているか日陰になっているかに係らず、正確な皮膚領域の検出を行うことが可能な皮膚領域検出撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、被写体からの光を集光する複数の光学レンズと、前記複数の光学レンズにより集光された被写体からの光を用いて、近赤外線領域における異なった2種類の波長の照射光に対応した2種類の被写体像を形成する異種類像形成手段と、前記異種類像形成手段によって形成された2種類の被写体像を撮像する固体撮像素子と、前記固体撮像素子上の各画素に蓄積された電荷に応じた電圧(以下、蓄積電荷電圧と略す)を読取ライン毎に読み出すことにより、前記固体撮像素子上に形成された2種類の被写体像を順に読み出すためのローリングシャッタ装置と、前記ローリングシャッタ装置の1回のシャッタ動作内に読み出された前記2種類の被写体像を画像として記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された2種類の画像に基づいて、前記2種類の波長の照射光に対応した、被写体からの2種類の波長の反射光の強度を判定して、これらの2種類の波長の反射光の強度比が所定値以上である領域を皮膚領域として検出する皮膚領域検出手段とを備えた皮膚領域検出撮像装置において、前記異種類像形成手段は、前記異なった2種類の波長の照射光を、環境光におけるこれらの波長の光の強度比と同じ強度比で照射するフラッシュ光源を含むものである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の皮膚領域検出撮像装置において、前記異種類像形成手段は、前記フラッシュ光源による2種類の波長の照射光の発光切替えタイミングを、前記ローリングシャッタ装置により読み出す像を切替えるタイミングに合わせて制御する切替え制御手段をさらに含むものである。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1に記載の皮膚領域検出撮像装置において、前記異種類像形成手段は、前記複数の光学レンズによる集光路に配置され、前記各集光路ごとに近赤外線領域における異なった2種類の波長の光を選択的に透過するための2種類のバンドパスフィルタをさらに含むものである。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1に記載の皮膚領域検出撮像装置において、前記固体撮像素子上の一部の撮像エリア(以下、「部分撮像エリア」という)に環境光を取り込むための拡散板と、前記拡散板を通して取り込んだ環境光の前記部分撮像エリアへの通過路に配置され、前記各通過路ごとに前記2種類の波長の照射光を選択的に透過するための2種類のバンドパスフィルタと、前記拡散板と前記2種類のバンドパスフィルタとを介して取り込んだ2種類の波長の環境光を前記部分撮像エリアで受光して、前記ローリングシャッタ装置で読み取った前記部分撮像エリア内の画素の蓄積電荷に基づいて、環境光における前記2種類の波長の光の強度比を判定する環境光強度比検出手段とをさらに備え、前記異種類像形成手段は、前記環境光強度比検出手段により検出した、環境光における前記2種類の波長の光の強度比で、前記フラッシュ光源が前記2種類の波長の光を発光するように制御する発光強度制御手段と、前記フラッシュ光源による2種類の波長の照射光の発光切替えタイミングを、前記ローリングシャッタ装置により読み出す像を切替えるタイミングに合わせて制御する切替え制御手段とをさらに含むものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、フラッシュ光源が、近赤外線領域における異なった2種類の波長の照射光を、環境光におけるこれらの波長の光の強度比と同じ強度比で照射するので、撮像エリア内の全ての部分における上記2種類の波長の照射光の強度比を一定にすることが可能になる。ここで、2種類の波長の反射光の強度比は、2種類の波長の照射光の強度比と、被写体が有する、上記2種類の波長の照射光に対する反射率の比とを乗算することで得ることができるので、上記のように撮像エリア内の全ての部分において2種類の波長の照射光の強度比を一定にすることができるようにしたことにより、撮像エリア内の全ての部分における上記2種類の波長の反射光の強度比を、被写体が有する、上記2種類の波長の照射光に対する反射率の比に応じたものとすることができる。従って、被写体が環境光の日なたになっているか日陰になっているかに係らず、被写体からの2種類の波長の反射光の強度比に基づいて、撮像エリア内の皮膚領域を正確に検出することができる。
【0015】
また、ローリングシャッタ装置の1回のシャッタ動作内に読み出された2種類の被写体像を画像として記憶し、これらの2種類の画像を用いて皮膚領域を検出するようにしたことにより、短時間のうちに皮膚領域を検出することができる。
【0016】
請求項2及び3の発明によれば、上記請求項1に記載の発明の効果を的確に得ることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、撮像エリア内の環境光における上記2種類の波長の光の強度比を実際に計測して、フラッシュ光源が、実際の環境光における上記2種類の波長の光の強度比と同じ強度比で被写体を照射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の第1の実施形態に係る皮膚領域検出撮像装置について、図1乃至図7を参照して説明する。第1の実施形態は、請求項1及び請求項2に対応する。本実施形態の皮膚領域検出撮像装置1は、図1乃至図3に示されるように、被写体からの光を集光して焦点位置にある固体撮像素子2上に上下2個の像(以下、個眼像という)A、Bを形成する2つの光学レンズを含むレンズ光学系3と、これら2個の個眼像A、Bを撮像する固体撮像素子2と、固体撮像素子2上に形成された2個の個眼像A、Bを電子的に処理して皮膚領域の検出を行う電子回路4と、電子回路4からのタイミング信号SG2,SG3に応じて近赤外線領域における異なった2種類の波長を中心波長として持つ2つのLED5a、5bを交代的に(時間的に切替えて)発光するLEDストロボ5(フラッシュ光源)と、電子回路4が検出した皮膚領域の画像等を表示する液晶パネル等から構成される表示装置6と、制御データの入力や画像データの取込み等を行うパソコン等の外部装置7とを備えている。また、電子回路4は、装置全体の制御を行うマイクロプロセッサ(切替え制御手段、皮膚領域検出手段)24を有している。
【0019】
LEDストロボ5における2つのLED5a、5bは、一方が850nmの中心波長の近赤外線を発光するLED5aであり、他方が940nmの中心波長の近赤外線を発光するLED5bである。マイクロプロセッサ24は、LEDストロボ5が、異なった2種類の波長(850nm及び940nm)の照射光を、環境光におけるこれらの波長の光の強度比と同じ強度比で照射するように電圧調整回路10を制御する。また、マイクロプロセッサ24は、LED5aによる850nmの中心波長の近赤外線の発光と、LED5bによる850nmの中心波長の近赤外線の発光との切替えタイミングを、後述するローリングシャッタ装置19により読み出す像を切替えるタイミングに合わせる。本実施形態では、マイクロプロセッサ24とLEDストロボ5とが、請求項における異種類像形成手段に相当する。また、固体撮像素子2は、これらの異種類像形成手段によって形成された2種類の被写体像(個眼像A、B)を撮像する。
【0020】
レンズ光学系3は、図1及び図2に示されるように、光軸Lが互いに平行になるように上下に配置された2個の光学レンズ8と、光学レンズ8の支持フレーム9に形成された絞り開口11と、光学レンズ8と固体撮像素子2の間に、各光学レンズ8から固体撮像素子2へ向けてそれぞれ出射される光同士が干渉しないように配置された隔壁12と、固体撮像素子2の前方に配置された光学フィルタ13とを備えている。光学フィルタ13は、近赤外線領域の光を透過するフィルタである。
【0021】
固体撮像素子2は、基板14上に形成されたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサから構成され、行列方向(図3及び図4のX、Y方向)に多数の単位画素15を有している。
【0022】
各光学レンズ8によって固体撮像素子2上に集光されて形成される個眼像A、Bが、図3において、それぞれ円形で表わされる。各個眼像A、Bは、固体撮像素子2によってアナログの画像情報(画素に蓄積される電荷に応じた電圧(蓄積電荷電圧))に変換され後述するローリングシャッタ装置19によって個眼像A、個眼像Bの順に読み出される。
【0023】
固体撮像素子2と同一の基板14上には、固体撮像素子2の垂直走査回路16と水平走査回路17にタイミング信号SG4を出力するタイミングジェネレータ(TG)18が備えられ、該タイミング信号SG4に基づいて固体撮像素子2の単位画素15(の蓄積電荷電圧)が後に詳述する所定の順序で読み出され、個眼像A、個眼像Bが、この順に読み出される。タイミングジェネレータ18と垂直走査回路16と水平走査回路17によってローリングシャッタ装置19が構成されている。
【0024】
次に、電子回路4について、図1を参照して説明する。電子回路4は、固体撮像素子2から出力されるアナログの画像情報をADコンバータ21を介してディジタル信号として取込む画像処理プロセッサ22と、画像処理プロセッサ22に取込まれた画像情報を一時的に記憶するRAM(記憶手段)23と、画像処理プロセッサ22に取込まれた画像情報を後述の処理手順に従って処理して皮膚領域を検出する、上記のマイクロプロセッサ24と、検出した皮膚領域の画像情報を一時的に記憶するRAM25とを備える。
【0025】
画像処理プロセッサ22は、固体撮像素子2へ制御信号を出力して露光調整やゲイン調整等の制御を行い、取込んだ画像情報にガンマ補正やホワイトバランス補正等の画像処理も行う。
【0026】
マイクロプロセッサ24は、タイミングジェネレータ18に接続され、タイミングジェネレータ18が出力する水平同期信号SG5に基づいて所定のタイミングで、電圧調整回路10を介してLEDストロボ5を発光させるためのタイミング信号SG1を出力するように構成されている。また、タイミング信号SG1には、環境光における850nmの波長の光と940nmの波長の光の強度比(例えば、2:1)と同じ強度比でLED5aとLED5bとを発光させるように制御するための制御情報が含まれている。
【0027】
RAM23は、上記の異種類像形成手段(マイクロプロセッサ24とLEDストロボ5)によって固体撮像素子2上に形成され、ローリングシャッタ装置19の1回のシャッタ動作内に読み出された2種類の個眼像A、Bを画像として記憶する。マイクロプロセッサ24は、RAM23に記憶された2種類の個眼像A、Bに基づいて、異なった2種類の波長(850nmと940nm)の照射光に対応した、被写体からの2種類の波長(850nm及び940nm)の反射光の強度を判定して、これらの2種類の波長の反射光の強度比が所定値以上である領域を皮膚領域として検出する。
【0028】
以下、ローリングシャッタ装置19による固体撮像素子2上の個眼像A、Bの読み出し手順と、LEDストロボ5の2つのLED5a、5bの発光の切替わりタイミングについて、図4を参照して説明する。
【0029】
まず、固体撮像素子2上の個眼像A、Bの読み出し手順について説明する。ローリングシャッタ装置19は、単位画素15の配列された行列方向の原点Sを起点にして行方向(X方向)に沿って1行目の単位画素15(の蓄積電荷電圧)を読み出した後、列方向(Y方向)において原点Sから遠ざかった次の行(読取ライン)の単位画素15を順次繰り返して読み出すことによって、最終的に全ての単位画素15を読み出し、個眼像A、Bをこの順で読み出す。図4において、単位画素15が読み出される順序は、矢印Ra、Rb、Rc、・・の順である。なお、矢印Ra、Rb、Rc、・・は、請求項における読取ラインを模式的に間引いて表したものであり、実際の読取ラインは、図3における固体撮像素子2上のX方向に沿った各単位画素15で構成されるラインである。
【0030】
タイミングジェネレータ18は、各行の読み出しが終了する度にマイクロプロセッサ24へ水平同期信号SG5を出力し、マイクロプロセッサ24は、水平同期信号SG5をカウントすることによって個眼像Aの読み出しの開始と終了、及び個眼像Bの読み出しの開始と終了のタイミングを認識し、個眼像Aの読み出しの開始と終了に合わせてLED5aへ点灯指令信号と消灯指令信号を出力し、個眼像Bの読み出しの開始と終了に合わせてLED5bへ点灯指令信号と消灯指令信号を出力する。なお、LED5a、5bへの点灯指令信号及び消灯指令信号は、上述したタイミング信号SG1の一種であり、LED5a、5bへの点灯指令信号には、LED5aとLED5bの発光強度についての(環境光における850nmの波長の光と940nmの波長の光の強度比と同じ強度比でLED5aとLED5bとを発光させるように制御するための)制御情報が含まれる。
【0031】
図4において、LED5aの点灯・消灯のタイミングとLED5bの点灯・消灯のタイミングが、それぞれ上方から下方へ向かうパルス波形Pa、Pbとして示される。このパルス波形Pa、Pbにおいて、単位画素15の原点Sから読み出しが開始された時点をt=0とし、最後の単位画素15が読み出された時点をt=Tとすると、個眼像Aの読み出しが開始された時点(t1)でLED5aが点灯され、個眼像Aの読み出しが終了された時点(t2)でLED5aが消灯され、個眼像Bの読み出しが開始された時点(t3)でLED5bが点灯され、個眼像Bの読み出しが終了された時点(t4)でLED5bが消灯される。LED5aの発光強度とLED5bの発光強度との比は、環境光における850nmの波長の光と940nmの波長の光の強度比と同じ比である。例えば、環境光における850nmの波長の光と940nmの波長の光との強度比が、2:1である場合は、LED5aからの照射光の強度とLED5bからの照射光の強度との比も、2:1である。
【0032】
背景技術で説明したように、特願2007−012921で提案した皮膚領域検出撮像装置では、LEDストロボからの照射光における850nmの波長の光と950nmの波長の光との強度比が、環境光におけるこれらの波長の光の強度比と異なるため、図16に示されるように、被写体における同一部分からの反射光であっても、環境光が日なたであるか日陰であるかによって、反射光に含まれる850nmの波長の光と950nmの波長の光との強度比が異なる。従って、反射光に含まれる850nmの波長の光と950nmの波長の光との強度比に基づいて、正確な皮膚領域の検出を行えない場合がある。
【0033】
本発明では、LEDストロボ5からの照射光における850nmの波長の光と950nmの波長の光との強度比を、環境光におけるこれらの波長の光の強度比と同じになるようにすることで、上記の問題を解消する。例えば、環境光における850nmの波長の光と940nmの波長の光との強度比が、2:1である場合は、LED5aからの照射光の強度とLED5bからの照射光の強度との比も、2:1にする。
【0034】
これにより、環境光が日なたの部分も日陰の部分も、いずれも850nmの波長の光と950nmの波長の光との強度比が2:1の照射光で照明することができる。ここで、一般に、異なる波長の照射光に対する物体からの反射光の強度比は、照射光中におけるこれらの波長の照射光の強度比に、これらの波長の照射光に対する物体固有の反射率の比を乗算することで得られる。従って、上記のように、環境光が日なたの部分についても日陰の部分についても同じ強度比で、850nmの波長の光と950nmの波長の光とを照射することで、反射光中におけるこれらの波長の光の強度比を、これらの波長の照射光に対する物体固有の反射率の比と実質的に同じにすることができる。
【0035】
例えば、環境光における850nmの波長の光と940nmの波長の光との強度比が、2:1である場合には、LEDストロボ5からの照射光における850nmの波長の光と950nmの波長の光との強度比を2:1にすることで、環境光が日なたの部分についても日陰の部分についても2:1の強度比で、850nmの波長の光と950nmの波長の光とを照射することができる。これにより、反射光中における850nmの波長の光と950nmの波長の光の強度比は、図5に示されるように、環境光が日なたの部分であるか日陰の部分であるかに係らず、人間の皮膚の領域では、2.4:1.0となり、人間の皮膚以外の領域では、2.0:1.0となる。従って、例えば反射光における850nmの波長の光と950nmの波長の光との強度比が2.2:1.0よりも大きい領域を皮膚領域と判定することにより、皮膚領域と皮膚以外の領域とを判別することができる。
【0036】
なお、一般に、環境光の日陰になっている部分については、照り返しなどによって環境光と異なるスペクトル比(周波数成分毎の光の強度比)で照明される場合が多い。従って、この照り返しの影響を除くためにLEDストロボ5を用いる必要がある。照り返しは、直射する環境光に比べて非常に弱いため、LEDストロボ5を照射することで照り返しの影響を除去することが可能になる。
【0037】
次に、本実施形態の皮膚領域検出撮像装置1における皮膚領域の検出手順について、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0038】
撮像開始前に、マイクロプロセッサ24は、LED5aとLED5bの発光強度比が、環境光における上記2種類の波長(850nm及び940nm)の光の強度比と同じになるように、電圧調整回路10にLED5aとLED5bの発光強度の設定を行う(S1)。撮像が開始されると、マイクロプロセッサ24は、LED5aによる850nmの中心波長の近赤外線の発光と、LED5bによる940nmの中心波長の近赤外線の発光との切替えタイミングを、ローリングシャッタ装置19により読み出す像を切替えるタイミングに合わせながら、LEDストロボ5が、上記2種類の波長の照射光を、環境光におけるこれらの波長の光の強度比と同じ強度比で照射するように制御する。これにより、850nm中心波長と940nm中心波長の照射光に対応した2種類の被写体像(個眼像A、B)が、固体撮像素子2上に形成される。個眼像Aは、LED5aが発光することにより850nmを中心波長とする近赤外光によって照明された被写体の像であり、個眼像Bは、LED5bが発光することにより940nmを中心波長とする近赤外光によって照明された被写体の像である。ローリングシャッタ装置19は、固体撮像素子2上の各単位画素15の蓄積電荷電圧を読取ライン毎に読み出すことにより、固体撮像素子2上に形成された2種類の個眼像A、Bを順に読み出す。マイクロプロセッサ24は、画像処理プロセッサ22が個眼像A、Bの画像情報を取得して(S2)、各画像情報を所定の長方形状に切出す(S3)ように制御する。ローリングシャッタ装置の1回のシャッタ動作内に読み出されて画像処理プロセッサ22により切り出された個眼像A、Bは、画像としてRAM23に記憶される。
【0039】
個眼像Aと個眼像Bの具体的な例が図7(a)、図7(b)に示される。被写体中の人物Jの顔等の皮膚領域Jaについては、LED5aで照明された個眼像A(図7(a))の方がLED5bで照明された個眼像B(図7(b))よりも明るく表示されるが、人物Jの髪や衣服等の皮膚以外の領域Jbについては、近赤外線に対する反射率がほぼ同等であるのでLED5aで照明された個眼像A(図7(a))とLED5bで照明された個眼像B(図7(b))との間に大きな差が生じない。
【0040】
図8に近赤外線領域の各波長の光に対する皮膚領域の反射率特性を示す。波長が850nmの近赤外光に対する反射率と、波長が940nmの近赤外光に対する反射率との比は、1.2:1.0程度である。なお、波長が850nmよりも短い領域は可視光の赤色の領域であり、また、波長が940nmよりも長い領域では固体撮像素子2の感度が急激に低下する。
【0041】
次に、マイクロプロセッサ24は、RAM23に記憶された個眼像Aと個眼像Bに基づいて、850nmと940nmの2種類の波長の照射光に対応した、被写体からの2種類の波長の反射光の強度を判定して(図6のS4)、これらの2種類の波長の反射光の強度比が所定値以上である領域を皮膚領域として検出する(S5)。
【0042】
上記の例であれば、人物Jの顔と衣服から露出している手部分とが皮膚領域Jaとして検出される。マイクロプロセッサ24は、検出した皮膚領域Jaの画像を表示装置6に表示する(S6)。表示装置6に表示される画像の例が図7(c)に示される。
【0043】
以上のように、本実施形態の皮膚領域検出撮像装置1によれば、LEDストロボ5が、近赤外線領域における異なった2種類の波長の照射光を、環境光におけるこれらの波長の光の強度比と同じ強度比で照射するので、撮像エリア内に環境光の日なたになっている部分と日陰になっている部分とがある場合でも、撮像エリア内の全ての部分における上記2種類の波長の照射光の強度比を一定にすることが可能になる。ここで、2種類の波長の反射光の強度比は、2種類の波長の照射光の強度比と、被写体が有する、上記2種類の波長の照射光に対する反射率の比とを乗算することで得ることができるので、上記のように撮像エリア内の全ての部分において2種類の波長の照射光の強度比を一定にすることができるようにしたことにより、撮像エリア内の全ての部分における上記2種類の波長の反射光の強度比を、被写体が有する、上記2種類の波長の照射光に対する反射率の比に応じたものとすることができる。従って、被写体が環境光の日なたになっているか日陰になっているかに係らず、被写体からの2種類の波長の反射光の強度比に基づいて、撮像エリア内の皮膚領域を正確に検出することができる。
【0044】
また、ローリングシャッタ装置19の1回のシャッタ動作内に読み出された2種類の被写体像を画像として記憶し、これらの2種類の画像(個眼像A、B)を用いて皮膚領域を検出するようにしたことにより、短時間のうちに皮膚領域を検出することができる。
【0045】
次に、第2の実施形態について、図9乃至図11を参照して説明する。第2の実施形態は、請求項1及び請求項3に対応する。第2の実施形態の皮膚領域検出撮像装置1は、第1の実施形態の皮膚領域検出撮像装置1と類似した構造であり、相違するところは、第1の実施形態の光学フィルタ13に代えて、2つの光学レンズ8による集光路30a、30bごとに、近赤外線領域における異なった2種類の波長の光を選択的に透過するバンドパスフィルタ31a、31bを設けた点と、LED5aによる発光とLED5bによる発光の切替えを行わず、LED5aによる発光とLED5bによる発光を同時に行なうという点である。以下、各相違点について詳細に説明する。
【0046】
第2の実施形態では、LEDストロボ5におけるLED5aとLED5bの点灯・消灯を所定のタイミングで切替えず、被写体の撮像が行われている間中、LED5aとLED5bの両方を継続して発光させる。
【0047】
バンドパスフィルタ31a、31bは、それぞれ2つの光学レンズ8に固有の集光路30a、30bに配置され、バンドパスフィルタ31aは、中心波長が850nm付近の近赤外光を透過するフィルタであり、バンドパスフィルタ31bは、中心波長が940nm付近の近赤外光を透過するフィルタである。図10にバンドパスフィルタ31aの透過率特性が示され、図11にバンドパスフィルタ31bの透過率特性が示される。
【0048】
バンドパスフィルタ31aによって選択的に透過される近赤外光によって形成される個眼像Aは、皮膚領域Jaが比較的明るく表された画像(図7(a))になり、バンドパスフィルタ31bによって選択的に透過される近赤外光によって形成される個眼像Bは、皮膚領域Jaが比較的暗く表された画像(図7(b))になる。
【0049】
第2の実施形態における皮膚領域の検出手順では、マイクロプロセッサ24は、電圧調整回路10を用いて、LEDストロボ5が、環境光における2種類の波長(850nm及び940nm)の光の強度比と同じ強度比で、これら2種類の波長の光を同時に照射するように制御する。この後、マイクロプロセッサ24は、第1の実施形態と同様に、画像情報の取得、所定形状の画像への切り出し、2種類の波長の反射光の強度判定、皮膚領域の検出、画像の表示を実行し、皮膚領域Jaの検出及び画像表示を行う。
【0050】
第2の実施形態の皮膚領域検出撮像装置1においても、上記請求項1と同様な効果を得ることができる。
【0051】
この第2の実施形態におけるバンドパスフィルタ31a、31bは、光透過領域として可視光領域を含むものに代えられてもよい。この場合には、各バンドパスフィルタ31a、31bが可視光領域の光も透過するので、個眼像A、B自体を色彩等が正常な通常の被写体画像として得ることができる。また、ユーザは、得られる画像を表示装置6に表示して見ることができ、本皮膚領域検出撮像装置1を監視カメラ装置として利用することができる。
【0052】
次に、第3の実施形態について、図12乃至図15を参照して説明する。第3の実施形態は、請求項1及び請求項4に対応する。図12は、第3の実施形態に係る皮膚領域検出撮像装置1の概略構成を示し、図13は、皮膚領域検出撮像装置1の前面を示す。また、図14は、固体撮像素子2上の各部分撮像エリアの読み出し順序と、2つのLED5a、5bの発光タイミングを示す。第3の実施形態の皮膚領域検出撮像装置1は、第1の実施形態の皮膚領域検出撮像装置1に類似した構造であり、主な相違点は、環境光における異なった2種類の波長(850nm及び940nm)の光の強度比を実際に検出する手段を設けた点と、マイクロプロセッサ24が、検出した強度比でLEDストロボ5が2種類の波長の光を発光するように制御する点である。
【0053】
図12乃至図14に示されるように、第3の実施形態の皮膚領域検出撮像装置1は、固体撮像素子2上の部分撮像エリア2c,2dに環境光を取り込むための拡散板41a,41bと、拡散板41a,41bを通して取り込んだ環境光の部分撮像エリア2c,2dへの通過路40a,40bに配置され、各通過路40a,40bごとに異なった2種類の波長の照射光を選択的に透過するための2種類のバンドパスフィルタ42a,42bとを備える。バンドパスフィルタ42aは、中心波長が850nm付近の近赤外光を透過するフィルタであり、バンドパスフィルタ42bは、中心波長が940nm付近の近赤外光を透過するフィルタである。
【0054】
本実施形態の皮膚領域検出撮像装置1は、拡散板41a,41bと2種類のバンドパスフィルタ42a,42bとを介して取り込んだ2種類(850nm付近と940nm付近)の波長の環境光を部分撮像エリア2c,2dで受光して、ローリングシャッタ装置19で読み取った部分撮像エリア2c,2d内の単位画素15の蓄積電荷電圧に基づいて、環境光における850nm付近と940nm付近の波長の光の強度比を判定する。なお、図14に示されるように、部分撮像エリア2c,2dを撮像するタイミングでは、LEDストロボ5がオフとなる(消灯する)ように、タイミングジェネレータ18が予め設定されている。マイクロプロセッサ24は、上記のようにして検出した、環境光における2種類の波長の光の強度比で、LEDストロボ5が850nmと940nmの波長の光を発光するように制御する。マイクロプロセッサ24が請求項4における環境光強度比検出手段、発光強度制御手段及び切替え制御手段に相当する。なお、図12及び図14に示される部分撮像エリア2a,2bは、それぞれ個眼像A、Bを撮像するための撮像エリアである。
【0055】
図15は、第3の実施形態における皮膚領域の検出手順を示す。まず、マイクロプロセッサ24は、2種類のバンドパスフィルタ42a,42bに対応した部分撮像エリア2c,2d内の単位画素15の蓄積電荷電圧に基づいて、環境光における850nm付近と940nm付近の波長の光の強度比を判定し、この強度比に基づいて、850nmの中心波長の光を照射するLED5aと、940nmの中心波長の光を照射するLED5bとの発光強度(比)を決定する(S11)。そして、マイクロプロセッサ24は、決定した強度(比)に基づき、電圧調整回路10にLED5aとLED5bの発光強度の設定を行う(S12)。そして、撮像が開始されると、マイクロプロセッサ24は、図14に示されるように、LED5aとLED5bとを時分割発光させて、第1の実施形態と同様に、画像情報の取得(S13)、所定形状の画像への切り出し(S14)、2種類の波長の反射光の強度判定(S15)、皮膚領域の検出(S16)、画像の表示(S17)を実行し、皮膚領域Jaの検出及び画像表示を行う。
【0056】
以上のように、第3の実施形態の皮膚領域検出撮像装置1によれば、撮像エリア内の環境光における上記2種類の波長の光の強度比を実際に計測して、LEDストロボ5が、実際の環境光における上記2種類の波長の光の強度比と同じ強度比で被写体を照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る皮膚領域検出撮像装置の概略構成を示す図。
【図2】同皮膚領域検出撮像装置の正面図。
【図3】同皮膚領域検出撮像装置における固体撮像素子の正面図。
【図4】同皮膚領域検出撮像装置における個眼像が読み出される順序と2つのLEDの発光タイミングを示す説明図。
【図5】同皮膚領域検出撮像装置における環境光の日なた/日陰、人間の皮膚/皮膚以外の4種類の場合の、850nmと950nmの波長の照射光に対する反射光の強度比を示す図。
【図6】同皮膚領域検出撮像装置における皮膚領域の検出手順を示すフローチャート。
【図7】(a)は同皮膚領域検出撮像装置において中心波長が850nmの近赤外光によって照明された被写体の個眼像の例を示す図、(b)は中心波長が940nmの近赤外光によって照明された被写体の個眼像の例を示す図、(c)は皮膚領域の検出画像の例を示す図。
【図8】近赤外線領域の各波長の光に対する皮膚領域の反射率を示す図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る皮膚領域検出撮像装置の概略構成を示す図。
【図10】同皮膚領域検出撮像装置における中心波長が850nm付近の近赤外光を透過するバンドパスフィルタの透過率特性を示す図。
【図11】同皮膚領域検出撮像装置における中心波長が940nm付近の近赤外光を透過するバンドパスフィルタの透過率特性を示す図。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る皮膚領域検出撮像装置の概略構成を示す図。
【図13】同皮膚領域検出撮像装置の正面図。
【図14】同皮膚領域検出撮像装置における各部分撮像エリアの読み出し順序と2つのLEDの発光タイミングを示す説明図。
【図15】同皮膚領域検出撮像装置における皮膚領域の検出手順を示すフローチャート。
【図16】従来例の皮膚領域検出撮像装置における環境光の日なた/日陰、人間の皮膚/皮膚以外の4種類の場合の、850nmと950nmの波長の照射光に対する反射光の強度比を示す図。
【符号の説明】
【0058】
1 皮膚領域検出撮像装置
2 固体撮像素子
2c,2d 部分撮像エリア
5 LEDストロボ(異種類像形成手段、フラッシュ光源)
5a、5b LED
8 光学レンズ
19 ローリングシャッタ装置
23 RAM(記憶手段)
24 マイクロプロセッサ(切替え制御手段、皮膚領域検出手段、環境光強度比検出手段、発光強度制御手段)
30a、30b 集光路
31a、31b バンドパスフィルタ(異種類像形成手段)
40a,40b 通過路
41a,41b 拡散板
42a,42b バンドパスフィルタ
A、B 個眼像(2種類の画像)
Ja 皮膚領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚領域検出撮像装置に関し、詳しくは、近赤外線領域の光によって照明された被写体の撮像画像から人体の皮膚領域を検出する皮膚領域検出撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の皮膚領域は、近赤外線領域における異なった波長の照射光に対して異なった反射率を有している(例えば、850nmの照射光に対する皮膚の反射率と950nmの照射光に対する皮膚の反射率との比は、1.2:1.0程度である)。従来より、この性質を利用して監視カメラ等における人体検出を行うことが提案されている。例えば、本出願人は、被写体からの光を集光し固体撮像素子上に2つの個眼像A、Bを形成する2つの光学レンズと、2つの個眼像を順に読み出すローリングシャッタ装置と、近赤外線領域における異なった波長(850nm、940nm)の光を発する2つのLEDとを備え、個眼像Aが読み出されるときに850nmの波長の光を照射するLEDを点灯させ、個眼像Bが読み出されるときに940nmの波長の光を照射するLEDを点灯させる皮膚領域検出撮像装置を出願した(特願2007−012921)。この皮膚領域検出撮像装置によれば、近赤外線領域の2種類の波長の光に対する皮膚領域の反射率の相違を利用して、個眼像A、Bを比較して明るさの差が所定値以上である領域を皮膚領域として検出する。
【0003】
しかしながら、太陽光等の環境光は、LEDからの照射光に比べて強力である場合が多いため、撮像エリアの全てをLED照射光のスペクトル特性に合致した光で照明できない場合がある。
【0004】
例えば、環境光における850nmの波長の光と950nmの波長の光との強度比が2:1である場合に、850nmの波長の光と950nmの波長の光との強度比が1:1の光を照射するLEDストロボを時分割発光させて撮像を行うとする。ここで、太陽光等の環境光は、LEDストロボからの照射光に比べて非常に強力である。また、撮像エリア内には、環境光が殆ど当たらず、陰となっている場所もある。
【0005】
画像が撮像される時に撮像エリア内の被写体に当たっている光(照射光)のスペクトル特性を考えると、環境光の陰(日陰)になっている部分については、殆どLEDストロボのみで照明されていると考えてよいので、この部分への照射光における、850nmの波長の光と950nmの波長の光との強度比は、概ね1:1となる。これに対して、撮像エリア内の被写体のうち、環境光が強く当たっている部分については、LEDストロボからの照射光は殆ど影響を与えることができないため、この部分への照射光における、850nmの波長の光と950nmの波長の光との強度比は、環境光における強度比と殆ど同じ値(2:1に近い値)になると考えられる。
【0006】
次に、被写体からの反射光のスペクトル特性を考える。850nmの波長の光に対する人間の皮膚の反射率と950nmの波長の光に対する人間の皮膚の反射率との比は、1.2:1.0程度である。これに対して、人間の皮膚以外の物質については、850nmの波長の光と950nmの波長の光に対する反射率の比は、概ね1.0:1.0程度となる。反射光のスペクトル特性は入射光のスペクトル特性と反射率のスペクトル特性を乗算することで得られる(反射光のスペクトル比(強度比)は入射光のスペクトル比(強度比)と反射率の比を乗算することで得られる)ので、撮像エリア内の被写体について、環境光の日なた/日陰、人間の皮膚/皮膚以外 の2×2の4種の場合で、850nmと950nmの波長の照射光に対する反射光のスペクトル比(強度比)を概算すると、図16に示されるようになる。すなわち、(1)環境光日なた・人間の皮膚・・・2.4:1.0(=2.4/1.0=2.4)、(2)環境光日なた・皮膚以外・・・2.0:1.0(=2.0/1.0=2.0)、(3)環境光日陰・人間の皮膚・・・1.2:1.0(=1.2/1.0=1.2)、(4)環境光日陰・皮膚以外・・・1.0:1.0(=1.0/1.0=1.0)となる。
【0007】
特願2007−012921で提案した皮膚領域検出撮像装置は、850nmと950nmの波長の照射光に対する反射光のスペクトル比(強度比)が、人間の皮膚からの反射光については大きくなり、それ以外の物質からの反射光については小さくなることを期待して皮膚領域の検出を行うが、上の(1)〜(4)では皮膚以外の領域である(2)の強度比(2.0)の方が、皮膚領域である(3)の強度比(1.2)よりも大きくなっている。従って、特願2007−012921で提案した皮膚領域検出撮像装置では、正確な皮膚領域の検出を行えない場合が発生する。
【0008】
なお、撮像装置の分野において、複数の光学系を備えた複眼撮像装置が知られている(例えば、特許文献1乃至5参照)。けれども、特許文献1乃至5に記載の発明では、上記の問題を解決することができない。
【特許文献1】特開2007−295141号公報
【特許文献2】特開2005−303694号公報
【特許文献3】特開2007−65335号公報
【特許文献4】特開2005−341301号公報
【特許文献5】特開2007−174566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、被写体が環境光の日なたになっているか日陰になっているかに係らず、正確な皮膚領域の検出を行うことが可能な皮膚領域検出撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、被写体からの光を集光する複数の光学レンズと、前記複数の光学レンズにより集光された被写体からの光を用いて、近赤外線領域における異なった2種類の波長の照射光に対応した2種類の被写体像を形成する異種類像形成手段と、前記異種類像形成手段によって形成された2種類の被写体像を撮像する固体撮像素子と、前記固体撮像素子上の各画素に蓄積された電荷に応じた電圧(以下、蓄積電荷電圧と略す)を読取ライン毎に読み出すことにより、前記固体撮像素子上に形成された2種類の被写体像を順に読み出すためのローリングシャッタ装置と、前記ローリングシャッタ装置の1回のシャッタ動作内に読み出された前記2種類の被写体像を画像として記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された2種類の画像に基づいて、前記2種類の波長の照射光に対応した、被写体からの2種類の波長の反射光の強度を判定して、これらの2種類の波長の反射光の強度比が所定値以上である領域を皮膚領域として検出する皮膚領域検出手段とを備えた皮膚領域検出撮像装置において、前記異種類像形成手段は、前記異なった2種類の波長の照射光を、環境光におけるこれらの波長の光の強度比と同じ強度比で照射するフラッシュ光源を含むものである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の皮膚領域検出撮像装置において、前記異種類像形成手段は、前記フラッシュ光源による2種類の波長の照射光の発光切替えタイミングを、前記ローリングシャッタ装置により読み出す像を切替えるタイミングに合わせて制御する切替え制御手段をさらに含むものである。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1に記載の皮膚領域検出撮像装置において、前記異種類像形成手段は、前記複数の光学レンズによる集光路に配置され、前記各集光路ごとに近赤外線領域における異なった2種類の波長の光を選択的に透過するための2種類のバンドパスフィルタをさらに含むものである。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1に記載の皮膚領域検出撮像装置において、前記固体撮像素子上の一部の撮像エリア(以下、「部分撮像エリア」という)に環境光を取り込むための拡散板と、前記拡散板を通して取り込んだ環境光の前記部分撮像エリアへの通過路に配置され、前記各通過路ごとに前記2種類の波長の照射光を選択的に透過するための2種類のバンドパスフィルタと、前記拡散板と前記2種類のバンドパスフィルタとを介して取り込んだ2種類の波長の環境光を前記部分撮像エリアで受光して、前記ローリングシャッタ装置で読み取った前記部分撮像エリア内の画素の蓄積電荷に基づいて、環境光における前記2種類の波長の光の強度比を判定する環境光強度比検出手段とをさらに備え、前記異種類像形成手段は、前記環境光強度比検出手段により検出した、環境光における前記2種類の波長の光の強度比で、前記フラッシュ光源が前記2種類の波長の光を発光するように制御する発光強度制御手段と、前記フラッシュ光源による2種類の波長の照射光の発光切替えタイミングを、前記ローリングシャッタ装置により読み出す像を切替えるタイミングに合わせて制御する切替え制御手段とをさらに含むものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、フラッシュ光源が、近赤外線領域における異なった2種類の波長の照射光を、環境光におけるこれらの波長の光の強度比と同じ強度比で照射するので、撮像エリア内の全ての部分における上記2種類の波長の照射光の強度比を一定にすることが可能になる。ここで、2種類の波長の反射光の強度比は、2種類の波長の照射光の強度比と、被写体が有する、上記2種類の波長の照射光に対する反射率の比とを乗算することで得ることができるので、上記のように撮像エリア内の全ての部分において2種類の波長の照射光の強度比を一定にすることができるようにしたことにより、撮像エリア内の全ての部分における上記2種類の波長の反射光の強度比を、被写体が有する、上記2種類の波長の照射光に対する反射率の比に応じたものとすることができる。従って、被写体が環境光の日なたになっているか日陰になっているかに係らず、被写体からの2種類の波長の反射光の強度比に基づいて、撮像エリア内の皮膚領域を正確に検出することができる。
【0015】
また、ローリングシャッタ装置の1回のシャッタ動作内に読み出された2種類の被写体像を画像として記憶し、これらの2種類の画像を用いて皮膚領域を検出するようにしたことにより、短時間のうちに皮膚領域を検出することができる。
【0016】
請求項2及び3の発明によれば、上記請求項1に記載の発明の効果を的確に得ることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、撮像エリア内の環境光における上記2種類の波長の光の強度比を実際に計測して、フラッシュ光源が、実際の環境光における上記2種類の波長の光の強度比と同じ強度比で被写体を照射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の第1の実施形態に係る皮膚領域検出撮像装置について、図1乃至図7を参照して説明する。第1の実施形態は、請求項1及び請求項2に対応する。本実施形態の皮膚領域検出撮像装置1は、図1乃至図3に示されるように、被写体からの光を集光して焦点位置にある固体撮像素子2上に上下2個の像(以下、個眼像という)A、Bを形成する2つの光学レンズを含むレンズ光学系3と、これら2個の個眼像A、Bを撮像する固体撮像素子2と、固体撮像素子2上に形成された2個の個眼像A、Bを電子的に処理して皮膚領域の検出を行う電子回路4と、電子回路4からのタイミング信号SG2,SG3に応じて近赤外線領域における異なった2種類の波長を中心波長として持つ2つのLED5a、5bを交代的に(時間的に切替えて)発光するLEDストロボ5(フラッシュ光源)と、電子回路4が検出した皮膚領域の画像等を表示する液晶パネル等から構成される表示装置6と、制御データの入力や画像データの取込み等を行うパソコン等の外部装置7とを備えている。また、電子回路4は、装置全体の制御を行うマイクロプロセッサ(切替え制御手段、皮膚領域検出手段)24を有している。
【0019】
LEDストロボ5における2つのLED5a、5bは、一方が850nmの中心波長の近赤外線を発光するLED5aであり、他方が940nmの中心波長の近赤外線を発光するLED5bである。マイクロプロセッサ24は、LEDストロボ5が、異なった2種類の波長(850nm及び940nm)の照射光を、環境光におけるこれらの波長の光の強度比と同じ強度比で照射するように電圧調整回路10を制御する。また、マイクロプロセッサ24は、LED5aによる850nmの中心波長の近赤外線の発光と、LED5bによる850nmの中心波長の近赤外線の発光との切替えタイミングを、後述するローリングシャッタ装置19により読み出す像を切替えるタイミングに合わせる。本実施形態では、マイクロプロセッサ24とLEDストロボ5とが、請求項における異種類像形成手段に相当する。また、固体撮像素子2は、これらの異種類像形成手段によって形成された2種類の被写体像(個眼像A、B)を撮像する。
【0020】
レンズ光学系3は、図1及び図2に示されるように、光軸Lが互いに平行になるように上下に配置された2個の光学レンズ8と、光学レンズ8の支持フレーム9に形成された絞り開口11と、光学レンズ8と固体撮像素子2の間に、各光学レンズ8から固体撮像素子2へ向けてそれぞれ出射される光同士が干渉しないように配置された隔壁12と、固体撮像素子2の前方に配置された光学フィルタ13とを備えている。光学フィルタ13は、近赤外線領域の光を透過するフィルタである。
【0021】
固体撮像素子2は、基板14上に形成されたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサから構成され、行列方向(図3及び図4のX、Y方向)に多数の単位画素15を有している。
【0022】
各光学レンズ8によって固体撮像素子2上に集光されて形成される個眼像A、Bが、図3において、それぞれ円形で表わされる。各個眼像A、Bは、固体撮像素子2によってアナログの画像情報(画素に蓄積される電荷に応じた電圧(蓄積電荷電圧))に変換され後述するローリングシャッタ装置19によって個眼像A、個眼像Bの順に読み出される。
【0023】
固体撮像素子2と同一の基板14上には、固体撮像素子2の垂直走査回路16と水平走査回路17にタイミング信号SG4を出力するタイミングジェネレータ(TG)18が備えられ、該タイミング信号SG4に基づいて固体撮像素子2の単位画素15(の蓄積電荷電圧)が後に詳述する所定の順序で読み出され、個眼像A、個眼像Bが、この順に読み出される。タイミングジェネレータ18と垂直走査回路16と水平走査回路17によってローリングシャッタ装置19が構成されている。
【0024】
次に、電子回路4について、図1を参照して説明する。電子回路4は、固体撮像素子2から出力されるアナログの画像情報をADコンバータ21を介してディジタル信号として取込む画像処理プロセッサ22と、画像処理プロセッサ22に取込まれた画像情報を一時的に記憶するRAM(記憶手段)23と、画像処理プロセッサ22に取込まれた画像情報を後述の処理手順に従って処理して皮膚領域を検出する、上記のマイクロプロセッサ24と、検出した皮膚領域の画像情報を一時的に記憶するRAM25とを備える。
【0025】
画像処理プロセッサ22は、固体撮像素子2へ制御信号を出力して露光調整やゲイン調整等の制御を行い、取込んだ画像情報にガンマ補正やホワイトバランス補正等の画像処理も行う。
【0026】
マイクロプロセッサ24は、タイミングジェネレータ18に接続され、タイミングジェネレータ18が出力する水平同期信号SG5に基づいて所定のタイミングで、電圧調整回路10を介してLEDストロボ5を発光させるためのタイミング信号SG1を出力するように構成されている。また、タイミング信号SG1には、環境光における850nmの波長の光と940nmの波長の光の強度比(例えば、2:1)と同じ強度比でLED5aとLED5bとを発光させるように制御するための制御情報が含まれている。
【0027】
RAM23は、上記の異種類像形成手段(マイクロプロセッサ24とLEDストロボ5)によって固体撮像素子2上に形成され、ローリングシャッタ装置19の1回のシャッタ動作内に読み出された2種類の個眼像A、Bを画像として記憶する。マイクロプロセッサ24は、RAM23に記憶された2種類の個眼像A、Bに基づいて、異なった2種類の波長(850nmと940nm)の照射光に対応した、被写体からの2種類の波長(850nm及び940nm)の反射光の強度を判定して、これらの2種類の波長の反射光の強度比が所定値以上である領域を皮膚領域として検出する。
【0028】
以下、ローリングシャッタ装置19による固体撮像素子2上の個眼像A、Bの読み出し手順と、LEDストロボ5の2つのLED5a、5bの発光の切替わりタイミングについて、図4を参照して説明する。
【0029】
まず、固体撮像素子2上の個眼像A、Bの読み出し手順について説明する。ローリングシャッタ装置19は、単位画素15の配列された行列方向の原点Sを起点にして行方向(X方向)に沿って1行目の単位画素15(の蓄積電荷電圧)を読み出した後、列方向(Y方向)において原点Sから遠ざかった次の行(読取ライン)の単位画素15を順次繰り返して読み出すことによって、最終的に全ての単位画素15を読み出し、個眼像A、Bをこの順で読み出す。図4において、単位画素15が読み出される順序は、矢印Ra、Rb、Rc、・・の順である。なお、矢印Ra、Rb、Rc、・・は、請求項における読取ラインを模式的に間引いて表したものであり、実際の読取ラインは、図3における固体撮像素子2上のX方向に沿った各単位画素15で構成されるラインである。
【0030】
タイミングジェネレータ18は、各行の読み出しが終了する度にマイクロプロセッサ24へ水平同期信号SG5を出力し、マイクロプロセッサ24は、水平同期信号SG5をカウントすることによって個眼像Aの読み出しの開始と終了、及び個眼像Bの読み出しの開始と終了のタイミングを認識し、個眼像Aの読み出しの開始と終了に合わせてLED5aへ点灯指令信号と消灯指令信号を出力し、個眼像Bの読み出しの開始と終了に合わせてLED5bへ点灯指令信号と消灯指令信号を出力する。なお、LED5a、5bへの点灯指令信号及び消灯指令信号は、上述したタイミング信号SG1の一種であり、LED5a、5bへの点灯指令信号には、LED5aとLED5bの発光強度についての(環境光における850nmの波長の光と940nmの波長の光の強度比と同じ強度比でLED5aとLED5bとを発光させるように制御するための)制御情報が含まれる。
【0031】
図4において、LED5aの点灯・消灯のタイミングとLED5bの点灯・消灯のタイミングが、それぞれ上方から下方へ向かうパルス波形Pa、Pbとして示される。このパルス波形Pa、Pbにおいて、単位画素15の原点Sから読み出しが開始された時点をt=0とし、最後の単位画素15が読み出された時点をt=Tとすると、個眼像Aの読み出しが開始された時点(t1)でLED5aが点灯され、個眼像Aの読み出しが終了された時点(t2)でLED5aが消灯され、個眼像Bの読み出しが開始された時点(t3)でLED5bが点灯され、個眼像Bの読み出しが終了された時点(t4)でLED5bが消灯される。LED5aの発光強度とLED5bの発光強度との比は、環境光における850nmの波長の光と940nmの波長の光の強度比と同じ比である。例えば、環境光における850nmの波長の光と940nmの波長の光との強度比が、2:1である場合は、LED5aからの照射光の強度とLED5bからの照射光の強度との比も、2:1である。
【0032】
背景技術で説明したように、特願2007−012921で提案した皮膚領域検出撮像装置では、LEDストロボからの照射光における850nmの波長の光と950nmの波長の光との強度比が、環境光におけるこれらの波長の光の強度比と異なるため、図16に示されるように、被写体における同一部分からの反射光であっても、環境光が日なたであるか日陰であるかによって、反射光に含まれる850nmの波長の光と950nmの波長の光との強度比が異なる。従って、反射光に含まれる850nmの波長の光と950nmの波長の光との強度比に基づいて、正確な皮膚領域の検出を行えない場合がある。
【0033】
本発明では、LEDストロボ5からの照射光における850nmの波長の光と950nmの波長の光との強度比を、環境光におけるこれらの波長の光の強度比と同じになるようにすることで、上記の問題を解消する。例えば、環境光における850nmの波長の光と940nmの波長の光との強度比が、2:1である場合は、LED5aからの照射光の強度とLED5bからの照射光の強度との比も、2:1にする。
【0034】
これにより、環境光が日なたの部分も日陰の部分も、いずれも850nmの波長の光と950nmの波長の光との強度比が2:1の照射光で照明することができる。ここで、一般に、異なる波長の照射光に対する物体からの反射光の強度比は、照射光中におけるこれらの波長の照射光の強度比に、これらの波長の照射光に対する物体固有の反射率の比を乗算することで得られる。従って、上記のように、環境光が日なたの部分についても日陰の部分についても同じ強度比で、850nmの波長の光と950nmの波長の光とを照射することで、反射光中におけるこれらの波長の光の強度比を、これらの波長の照射光に対する物体固有の反射率の比と実質的に同じにすることができる。
【0035】
例えば、環境光における850nmの波長の光と940nmの波長の光との強度比が、2:1である場合には、LEDストロボ5からの照射光における850nmの波長の光と950nmの波長の光との強度比を2:1にすることで、環境光が日なたの部分についても日陰の部分についても2:1の強度比で、850nmの波長の光と950nmの波長の光とを照射することができる。これにより、反射光中における850nmの波長の光と950nmの波長の光の強度比は、図5に示されるように、環境光が日なたの部分であるか日陰の部分であるかに係らず、人間の皮膚の領域では、2.4:1.0となり、人間の皮膚以外の領域では、2.0:1.0となる。従って、例えば反射光における850nmの波長の光と950nmの波長の光との強度比が2.2:1.0よりも大きい領域を皮膚領域と判定することにより、皮膚領域と皮膚以外の領域とを判別することができる。
【0036】
なお、一般に、環境光の日陰になっている部分については、照り返しなどによって環境光と異なるスペクトル比(周波数成分毎の光の強度比)で照明される場合が多い。従って、この照り返しの影響を除くためにLEDストロボ5を用いる必要がある。照り返しは、直射する環境光に比べて非常に弱いため、LEDストロボ5を照射することで照り返しの影響を除去することが可能になる。
【0037】
次に、本実施形態の皮膚領域検出撮像装置1における皮膚領域の検出手順について、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0038】
撮像開始前に、マイクロプロセッサ24は、LED5aとLED5bの発光強度比が、環境光における上記2種類の波長(850nm及び940nm)の光の強度比と同じになるように、電圧調整回路10にLED5aとLED5bの発光強度の設定を行う(S1)。撮像が開始されると、マイクロプロセッサ24は、LED5aによる850nmの中心波長の近赤外線の発光と、LED5bによる940nmの中心波長の近赤外線の発光との切替えタイミングを、ローリングシャッタ装置19により読み出す像を切替えるタイミングに合わせながら、LEDストロボ5が、上記2種類の波長の照射光を、環境光におけるこれらの波長の光の強度比と同じ強度比で照射するように制御する。これにより、850nm中心波長と940nm中心波長の照射光に対応した2種類の被写体像(個眼像A、B)が、固体撮像素子2上に形成される。個眼像Aは、LED5aが発光することにより850nmを中心波長とする近赤外光によって照明された被写体の像であり、個眼像Bは、LED5bが発光することにより940nmを中心波長とする近赤外光によって照明された被写体の像である。ローリングシャッタ装置19は、固体撮像素子2上の各単位画素15の蓄積電荷電圧を読取ライン毎に読み出すことにより、固体撮像素子2上に形成された2種類の個眼像A、Bを順に読み出す。マイクロプロセッサ24は、画像処理プロセッサ22が個眼像A、Bの画像情報を取得して(S2)、各画像情報を所定の長方形状に切出す(S3)ように制御する。ローリングシャッタ装置の1回のシャッタ動作内に読み出されて画像処理プロセッサ22により切り出された個眼像A、Bは、画像としてRAM23に記憶される。
【0039】
個眼像Aと個眼像Bの具体的な例が図7(a)、図7(b)に示される。被写体中の人物Jの顔等の皮膚領域Jaについては、LED5aで照明された個眼像A(図7(a))の方がLED5bで照明された個眼像B(図7(b))よりも明るく表示されるが、人物Jの髪や衣服等の皮膚以外の領域Jbについては、近赤外線に対する反射率がほぼ同等であるのでLED5aで照明された個眼像A(図7(a))とLED5bで照明された個眼像B(図7(b))との間に大きな差が生じない。
【0040】
図8に近赤外線領域の各波長の光に対する皮膚領域の反射率特性を示す。波長が850nmの近赤外光に対する反射率と、波長が940nmの近赤外光に対する反射率との比は、1.2:1.0程度である。なお、波長が850nmよりも短い領域は可視光の赤色の領域であり、また、波長が940nmよりも長い領域では固体撮像素子2の感度が急激に低下する。
【0041】
次に、マイクロプロセッサ24は、RAM23に記憶された個眼像Aと個眼像Bに基づいて、850nmと940nmの2種類の波長の照射光に対応した、被写体からの2種類の波長の反射光の強度を判定して(図6のS4)、これらの2種類の波長の反射光の強度比が所定値以上である領域を皮膚領域として検出する(S5)。
【0042】
上記の例であれば、人物Jの顔と衣服から露出している手部分とが皮膚領域Jaとして検出される。マイクロプロセッサ24は、検出した皮膚領域Jaの画像を表示装置6に表示する(S6)。表示装置6に表示される画像の例が図7(c)に示される。
【0043】
以上のように、本実施形態の皮膚領域検出撮像装置1によれば、LEDストロボ5が、近赤外線領域における異なった2種類の波長の照射光を、環境光におけるこれらの波長の光の強度比と同じ強度比で照射するので、撮像エリア内に環境光の日なたになっている部分と日陰になっている部分とがある場合でも、撮像エリア内の全ての部分における上記2種類の波長の照射光の強度比を一定にすることが可能になる。ここで、2種類の波長の反射光の強度比は、2種類の波長の照射光の強度比と、被写体が有する、上記2種類の波長の照射光に対する反射率の比とを乗算することで得ることができるので、上記のように撮像エリア内の全ての部分において2種類の波長の照射光の強度比を一定にすることができるようにしたことにより、撮像エリア内の全ての部分における上記2種類の波長の反射光の強度比を、被写体が有する、上記2種類の波長の照射光に対する反射率の比に応じたものとすることができる。従って、被写体が環境光の日なたになっているか日陰になっているかに係らず、被写体からの2種類の波長の反射光の強度比に基づいて、撮像エリア内の皮膚領域を正確に検出することができる。
【0044】
また、ローリングシャッタ装置19の1回のシャッタ動作内に読み出された2種類の被写体像を画像として記憶し、これらの2種類の画像(個眼像A、B)を用いて皮膚領域を検出するようにしたことにより、短時間のうちに皮膚領域を検出することができる。
【0045】
次に、第2の実施形態について、図9乃至図11を参照して説明する。第2の実施形態は、請求項1及び請求項3に対応する。第2の実施形態の皮膚領域検出撮像装置1は、第1の実施形態の皮膚領域検出撮像装置1と類似した構造であり、相違するところは、第1の実施形態の光学フィルタ13に代えて、2つの光学レンズ8による集光路30a、30bごとに、近赤外線領域における異なった2種類の波長の光を選択的に透過するバンドパスフィルタ31a、31bを設けた点と、LED5aによる発光とLED5bによる発光の切替えを行わず、LED5aによる発光とLED5bによる発光を同時に行なうという点である。以下、各相違点について詳細に説明する。
【0046】
第2の実施形態では、LEDストロボ5におけるLED5aとLED5bの点灯・消灯を所定のタイミングで切替えず、被写体の撮像が行われている間中、LED5aとLED5bの両方を継続して発光させる。
【0047】
バンドパスフィルタ31a、31bは、それぞれ2つの光学レンズ8に固有の集光路30a、30bに配置され、バンドパスフィルタ31aは、中心波長が850nm付近の近赤外光を透過するフィルタであり、バンドパスフィルタ31bは、中心波長が940nm付近の近赤外光を透過するフィルタである。図10にバンドパスフィルタ31aの透過率特性が示され、図11にバンドパスフィルタ31bの透過率特性が示される。
【0048】
バンドパスフィルタ31aによって選択的に透過される近赤外光によって形成される個眼像Aは、皮膚領域Jaが比較的明るく表された画像(図7(a))になり、バンドパスフィルタ31bによって選択的に透過される近赤外光によって形成される個眼像Bは、皮膚領域Jaが比較的暗く表された画像(図7(b))になる。
【0049】
第2の実施形態における皮膚領域の検出手順では、マイクロプロセッサ24は、電圧調整回路10を用いて、LEDストロボ5が、環境光における2種類の波長(850nm及び940nm)の光の強度比と同じ強度比で、これら2種類の波長の光を同時に照射するように制御する。この後、マイクロプロセッサ24は、第1の実施形態と同様に、画像情報の取得、所定形状の画像への切り出し、2種類の波長の反射光の強度判定、皮膚領域の検出、画像の表示を実行し、皮膚領域Jaの検出及び画像表示を行う。
【0050】
第2の実施形態の皮膚領域検出撮像装置1においても、上記請求項1と同様な効果を得ることができる。
【0051】
この第2の実施形態におけるバンドパスフィルタ31a、31bは、光透過領域として可視光領域を含むものに代えられてもよい。この場合には、各バンドパスフィルタ31a、31bが可視光領域の光も透過するので、個眼像A、B自体を色彩等が正常な通常の被写体画像として得ることができる。また、ユーザは、得られる画像を表示装置6に表示して見ることができ、本皮膚領域検出撮像装置1を監視カメラ装置として利用することができる。
【0052】
次に、第3の実施形態について、図12乃至図15を参照して説明する。第3の実施形態は、請求項1及び請求項4に対応する。図12は、第3の実施形態に係る皮膚領域検出撮像装置1の概略構成を示し、図13は、皮膚領域検出撮像装置1の前面を示す。また、図14は、固体撮像素子2上の各部分撮像エリアの読み出し順序と、2つのLED5a、5bの発光タイミングを示す。第3の実施形態の皮膚領域検出撮像装置1は、第1の実施形態の皮膚領域検出撮像装置1に類似した構造であり、主な相違点は、環境光における異なった2種類の波長(850nm及び940nm)の光の強度比を実際に検出する手段を設けた点と、マイクロプロセッサ24が、検出した強度比でLEDストロボ5が2種類の波長の光を発光するように制御する点である。
【0053】
図12乃至図14に示されるように、第3の実施形態の皮膚領域検出撮像装置1は、固体撮像素子2上の部分撮像エリア2c,2dに環境光を取り込むための拡散板41a,41bと、拡散板41a,41bを通して取り込んだ環境光の部分撮像エリア2c,2dへの通過路40a,40bに配置され、各通過路40a,40bごとに異なった2種類の波長の照射光を選択的に透過するための2種類のバンドパスフィルタ42a,42bとを備える。バンドパスフィルタ42aは、中心波長が850nm付近の近赤外光を透過するフィルタであり、バンドパスフィルタ42bは、中心波長が940nm付近の近赤外光を透過するフィルタである。
【0054】
本実施形態の皮膚領域検出撮像装置1は、拡散板41a,41bと2種類のバンドパスフィルタ42a,42bとを介して取り込んだ2種類(850nm付近と940nm付近)の波長の環境光を部分撮像エリア2c,2dで受光して、ローリングシャッタ装置19で読み取った部分撮像エリア2c,2d内の単位画素15の蓄積電荷電圧に基づいて、環境光における850nm付近と940nm付近の波長の光の強度比を判定する。なお、図14に示されるように、部分撮像エリア2c,2dを撮像するタイミングでは、LEDストロボ5がオフとなる(消灯する)ように、タイミングジェネレータ18が予め設定されている。マイクロプロセッサ24は、上記のようにして検出した、環境光における2種類の波長の光の強度比で、LEDストロボ5が850nmと940nmの波長の光を発光するように制御する。マイクロプロセッサ24が請求項4における環境光強度比検出手段、発光強度制御手段及び切替え制御手段に相当する。なお、図12及び図14に示される部分撮像エリア2a,2bは、それぞれ個眼像A、Bを撮像するための撮像エリアである。
【0055】
図15は、第3の実施形態における皮膚領域の検出手順を示す。まず、マイクロプロセッサ24は、2種類のバンドパスフィルタ42a,42bに対応した部分撮像エリア2c,2d内の単位画素15の蓄積電荷電圧に基づいて、環境光における850nm付近と940nm付近の波長の光の強度比を判定し、この強度比に基づいて、850nmの中心波長の光を照射するLED5aと、940nmの中心波長の光を照射するLED5bとの発光強度(比)を決定する(S11)。そして、マイクロプロセッサ24は、決定した強度(比)に基づき、電圧調整回路10にLED5aとLED5bの発光強度の設定を行う(S12)。そして、撮像が開始されると、マイクロプロセッサ24は、図14に示されるように、LED5aとLED5bとを時分割発光させて、第1の実施形態と同様に、画像情報の取得(S13)、所定形状の画像への切り出し(S14)、2種類の波長の反射光の強度判定(S15)、皮膚領域の検出(S16)、画像の表示(S17)を実行し、皮膚領域Jaの検出及び画像表示を行う。
【0056】
以上のように、第3の実施形態の皮膚領域検出撮像装置1によれば、撮像エリア内の環境光における上記2種類の波長の光の強度比を実際に計測して、LEDストロボ5が、実際の環境光における上記2種類の波長の光の強度比と同じ強度比で被写体を照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る皮膚領域検出撮像装置の概略構成を示す図。
【図2】同皮膚領域検出撮像装置の正面図。
【図3】同皮膚領域検出撮像装置における固体撮像素子の正面図。
【図4】同皮膚領域検出撮像装置における個眼像が読み出される順序と2つのLEDの発光タイミングを示す説明図。
【図5】同皮膚領域検出撮像装置における環境光の日なた/日陰、人間の皮膚/皮膚以外の4種類の場合の、850nmと950nmの波長の照射光に対する反射光の強度比を示す図。
【図6】同皮膚領域検出撮像装置における皮膚領域の検出手順を示すフローチャート。
【図7】(a)は同皮膚領域検出撮像装置において中心波長が850nmの近赤外光によって照明された被写体の個眼像の例を示す図、(b)は中心波長が940nmの近赤外光によって照明された被写体の個眼像の例を示す図、(c)は皮膚領域の検出画像の例を示す図。
【図8】近赤外線領域の各波長の光に対する皮膚領域の反射率を示す図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る皮膚領域検出撮像装置の概略構成を示す図。
【図10】同皮膚領域検出撮像装置における中心波長が850nm付近の近赤外光を透過するバンドパスフィルタの透過率特性を示す図。
【図11】同皮膚領域検出撮像装置における中心波長が940nm付近の近赤外光を透過するバンドパスフィルタの透過率特性を示す図。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る皮膚領域検出撮像装置の概略構成を示す図。
【図13】同皮膚領域検出撮像装置の正面図。
【図14】同皮膚領域検出撮像装置における各部分撮像エリアの読み出し順序と2つのLEDの発光タイミングを示す説明図。
【図15】同皮膚領域検出撮像装置における皮膚領域の検出手順を示すフローチャート。
【図16】従来例の皮膚領域検出撮像装置における環境光の日なた/日陰、人間の皮膚/皮膚以外の4種類の場合の、850nmと950nmの波長の照射光に対する反射光の強度比を示す図。
【符号の説明】
【0058】
1 皮膚領域検出撮像装置
2 固体撮像素子
2c,2d 部分撮像エリア
5 LEDストロボ(異種類像形成手段、フラッシュ光源)
5a、5b LED
8 光学レンズ
19 ローリングシャッタ装置
23 RAM(記憶手段)
24 マイクロプロセッサ(切替え制御手段、皮膚領域検出手段、環境光強度比検出手段、発光強度制御手段)
30a、30b 集光路
31a、31b バンドパスフィルタ(異種類像形成手段)
40a,40b 通過路
41a,41b 拡散板
42a,42b バンドパスフィルタ
A、B 個眼像(2種類の画像)
Ja 皮膚領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの光を集光する複数の光学レンズと、
前記複数の光学レンズにより集光された被写体からの光を用いて、近赤外線領域における異なった2種類の波長の照射光に対応した2種類の被写体像を形成する異種類像形成手段と、
前記異種類像形成手段によって形成された2種類の被写体像を撮像する固体撮像素子と、
前記固体撮像素子上の各画素に蓄積された電荷に応じた電圧(以下、蓄積電荷電圧と略す)を読取ライン毎に読み出すことにより、前記固体撮像素子上に形成された2種類の被写体像を順に読み出すためのローリングシャッタ装置と、
前記ローリングシャッタ装置の1回のシャッタ動作内に読み出された前記2種類の被写体像を画像として記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された2種類の画像に基づいて、前記2種類の波長の照射光に対応した、被写体からの2種類の波長の反射光の強度を判定して、これらの2種類の波長の反射光の強度比が所定値以上である領域を皮膚領域として検出する皮膚領域検出手段とを備えた皮膚領域検出撮像装置において、
前記異種類像形成手段は、前記異なった2種類の波長の照射光を、環境光におけるこれらの波長の光の強度比と同じ強度比で照射するフラッシュ光源を含むことを特徴とする皮膚領域検出撮像装置。
【請求項2】
前記異種類像形成手段は、前記フラッシュ光源による2種類の波長の照射光の発光切替えタイミングを、前記ローリングシャッタ装置により読み出す像を切替えるタイミングに合わせて制御する切替え制御手段をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の皮膚領域検出撮像装置。
【請求項3】
前記異種類像形成手段は、
前記複数の光学レンズによる集光路に配置され、前記各集光路ごとに近赤外線領域における異なった2種類の波長の光を選択的に透過するための2種類のバンドパスフィルタをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の皮膚領域検出撮像装置。
【請求項4】
前記固体撮像素子上の一部の撮像エリア(以下、「部分撮像エリア」という)に環境光を取り込むための拡散板と、
前記拡散板を通して取り込んだ環境光の前記部分撮像エリアへの通過路に配置され、前記各通過路ごとに前記2種類の波長の照射光を選択的に透過するための2種類のバンドパスフィルタと、
前記拡散板と前記2種類のバンドパスフィルタとを介して取り込んだ2種類の波長の環境光を前記部分撮像エリアで受光して、前記ローリングシャッタ装置で読み取った前記部分撮像エリア内の画素の蓄積電荷に基づいて、環境光における前記2種類の波長の光の強度比を判定する環境光強度比検出手段とをさらに備え、
前記異種類像形成手段は、
前記環境光強度比検出手段により検出した、環境光における前記2種類の波長の光の強度比で、前記フラッシュ光源が前記2種類の波長の光を発光するように制御する発光強度制御手段と、
前記フラッシュ光源による2種類の波長の照射光の発光切替えタイミングを、前記ローリングシャッタ装置により読み出す像を切替えるタイミングに合わせて制御する切替え制御手段とをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の皮膚領域検出撮像装置。
【請求項1】
被写体からの光を集光する複数の光学レンズと、
前記複数の光学レンズにより集光された被写体からの光を用いて、近赤外線領域における異なった2種類の波長の照射光に対応した2種類の被写体像を形成する異種類像形成手段と、
前記異種類像形成手段によって形成された2種類の被写体像を撮像する固体撮像素子と、
前記固体撮像素子上の各画素に蓄積された電荷に応じた電圧(以下、蓄積電荷電圧と略す)を読取ライン毎に読み出すことにより、前記固体撮像素子上に形成された2種類の被写体像を順に読み出すためのローリングシャッタ装置と、
前記ローリングシャッタ装置の1回のシャッタ動作内に読み出された前記2種類の被写体像を画像として記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された2種類の画像に基づいて、前記2種類の波長の照射光に対応した、被写体からの2種類の波長の反射光の強度を判定して、これらの2種類の波長の反射光の強度比が所定値以上である領域を皮膚領域として検出する皮膚領域検出手段とを備えた皮膚領域検出撮像装置において、
前記異種類像形成手段は、前記異なった2種類の波長の照射光を、環境光におけるこれらの波長の光の強度比と同じ強度比で照射するフラッシュ光源を含むことを特徴とする皮膚領域検出撮像装置。
【請求項2】
前記異種類像形成手段は、前記フラッシュ光源による2種類の波長の照射光の発光切替えタイミングを、前記ローリングシャッタ装置により読み出す像を切替えるタイミングに合わせて制御する切替え制御手段をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の皮膚領域検出撮像装置。
【請求項3】
前記異種類像形成手段は、
前記複数の光学レンズによる集光路に配置され、前記各集光路ごとに近赤外線領域における異なった2種類の波長の光を選択的に透過するための2種類のバンドパスフィルタをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の皮膚領域検出撮像装置。
【請求項4】
前記固体撮像素子上の一部の撮像エリア(以下、「部分撮像エリア」という)に環境光を取り込むための拡散板と、
前記拡散板を通して取り込んだ環境光の前記部分撮像エリアへの通過路に配置され、前記各通過路ごとに前記2種類の波長の照射光を選択的に透過するための2種類のバンドパスフィルタと、
前記拡散板と前記2種類のバンドパスフィルタとを介して取り込んだ2種類の波長の環境光を前記部分撮像エリアで受光して、前記ローリングシャッタ装置で読み取った前記部分撮像エリア内の画素の蓄積電荷に基づいて、環境光における前記2種類の波長の光の強度比を判定する環境光強度比検出手段とをさらに備え、
前記異種類像形成手段は、
前記環境光強度比検出手段により検出した、環境光における前記2種類の波長の光の強度比で、前記フラッシュ光源が前記2種類の波長の光を発光するように制御する発光強度制御手段と、
前記フラッシュ光源による2種類の波長の照射光の発光切替えタイミングを、前記ローリングシャッタ装置により読み出す像を切替えるタイミングに合わせて制御する切替え制御手段とをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の皮膚領域検出撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−212824(P2009−212824A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53764(P2008−53764)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】
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