説明

目標充電電力設定装置、方法およびプログラム

【課題】回生ブレーキによって車両を減速させる場合に運転者の意志に応じた回生ブレーキを発生させることは不可能であった。
【解決手段】車両の運転者の減速操作によって目標位置において目標車速となるように前記車両を減速させた場合の車速の推移を示す操作減速車速情報を取得し、バッテリに対して目標充電電力を充電する回生ブレーキによって前記目標位置において前記目標車速となるように前記車両を減速させる場合の車速の推移を示す回生減速車速情報を取得し、前記目標位置において前記目標車速となるように前記車両を減速させる場合の車速が、前記操作減速車速情報が示す車速と前記回生減速車速情報が示す車速との間で推移するように前記車両を減速させるために前記バッテリに対して充電すべき電力を新たな目標充電電力として設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生ブレーキによって車両を減速させる際にバッテリに充電すべき目標充電電力を設定する目標充電電力設定装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、最適な変速比を設定して車両を減速させる技術が知られている。例えば、特許文献1においては、カーブ曲率半径等の道路状況に適合するように最適変速比を設定し、さらに、運転者の意志を反映して最適変速比を補正する技術が開示されている。すなわち、特許文献1に開示された技術においては、車両においてアクセルオフが所定時間連続している状態である場合、運転者に大きく減速させる意志がない状態であるとみなして最適変速比よりも小さく減速させるように最適変速比を補正する。また、ブレーキが作動している状態である場合、運転者に大きく減速させる意志がある状態であるとみなして最適変速比よりも大きく減速させるように最適変速比を補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−39062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術においては、変速機における変速比を調整することによって運転者の意志に応じて減速の程度を調整することが可能である。しかし、従来の技術において、バッテリに対して電力を充電する回生ブレーキを発生させて車両を減速させる構成は開示されておらず、回生ブレーキによって減速させる際に運転者の意志に応じて減速の程度を調整することは不可能であった。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、回生ブレーキによって車両を減速させる場合に運転者の意志に応じた回生ブレーキを発生させる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明においては、運転者の減速操作によって車両を減速させた場合の車速と、バッテリに対して目標充電電力を充電する回生ブレーキによって目標位置において目標車速となるように車両を減速させる場合の車速とを取得する。そして、取得した各車速の間で車速が推移するような減速を行うためにバッテリに対して充電すべき電力を特定し、当該電力を新たな目標充電電力として設定する。すなわち、実際に運転者が減速操作を行って、当該減速操作によって目標位置において目標車速となるように車両を減速させた場合、その車速の推移は運転者の意志に応じた車速の推移である。一方、バッテリに対して目標充電電力を充電する回生ブレーキを発生させる車両において、バッテリに対して充電すべき最適な電力はバッテリの仕様等から特定されるため、通常は当該最適な電力が目標充電電力に設定される。
【0006】
そこで、本発明は、運転者の減速操作によって目標車速まで車両を減速させた場合の車速の推移と、回生ブレーキを発生させて車両を減速させる場合の車速の推移との間で車速が推移するように新たな目標充電電力を設定する。この結果、運転者の意志に応じた減速と、新たな目標充電電力を設定する前に設定されていた目標充電電力を充電する回生ブレーキによる減速との双方に近い減速を行うように新たな目標充電電力が設定される。従って、新たな目標充電電力を設定する前の目標充電電力と異なる新たな目標充電電力を設定する際に過度に電力を変動させることを防止することができる。例えば、上述のような最適な電力が目標充電電力に設定されている場合に、当該最適な電力から過度に電力を変動させることなく新たな目標充電電力を設定することができる。さらに、当該新たな目標充電電力をバッテリに充電する回生ブレーキを発生させると、運転者の意志に応じた減速に近い減速を行うことができる。従って、運転者の意志に応じた減速に近い減速を行うための新たな目標充電電力を、新たな目標充電電力を設定する前の目標充電電力から過度に電力を変動させることなく設定することが可能である。
【0007】
ここで、操作減速車速情報取得手段は、運転者の減速操作によって目標車速まで車両を減速させた場合の車速の推移を示す操作減速車速情報を取得することができればよい。すなわち、運転者の減速操作に応じた実際の車速の推移を特定可能に構成されていればよい。例えば、車速センサおよび位置センサによって位置毎の車速を特定して操作減速車速情報を定義する構成を採用可能である。なお、操作減速車速情報は、運転者によって減速操作が行われたことに応じて発生させられるブレーキによって車両を減速させた場合の車速の推移を示していればよい。従って、運転者の減速操作によって回生ブレーキ以外のブレーキのみを発生させた場合の車速の推移であってもよいし、運転者の減速操作によって回生ブレーキと回生ブレーキ以外のブレーキとを発生させた場合の車速の推移であってもよい。
【0008】
回生減速車速情報取得手段は、目標充電電力を充電する回生ブレーキによって車両を減速させる場合の車速の推移を示す回生減速車速情報を取得することができればよい。すなわち、回生ブレーキを利用して減速させる場合に想定される車速の推移を、任意の目標充電電力について特定可能に構成されていればよい。例えば、回生ブレーキを発生させて減速させる場合の車速および制動力と充電電力との関係に基づいて目標充電電力をバッテリに充電する回生ブレーキを発生させる場合の車速の推移を特定する構成を採用可能である。なお、回生減速車速情報は、運転者によって減速操作が行われていない状態において発生させられる回生ブレーキによって車両を減速させる場合の車速の推移を示していればよい。従って、運転者によって減速操作が行われていない状態において回生ブレーキのみを発生させる場合の車速の推移であってもよいし、運転者によって減速操作が行われていない状態において回生ブレーキと回生ブレーキ以外のブレーキとを発生させる場合の車速の推移であってもよい。
【0009】
また、回生ブレーキは車両に搭載された発電機を制御することによって実現することができればよい。すなわち、回生ブレーキは車輪の回転を発電機に伝達して当該発電機に接続されたバッテリを充電しながら車両に制動力を作用させる制御であればよい。この限りにおいて発電機とエンジンとの関係や車両の駆動手法は種々の手法を採用可能であり、エンジンと、モーターとしての発電機とのいずれかまたは双方によって駆動されるハイブリッド車両に本発明を適用しても良いし、エンジンを備えない電気自動車に本発明を適用しても良い。
【0010】
目標充電電力は、目標充電電力設定装置による目標充電電力設定処理が行われることによって更新されればよい。従って、各種の電力値を目標充電電力とすることが可能であり、例えば、バッテリの発熱や性能の劣化を防止しながら当該バッテリに効果的に充電するための一定電力を目標充電電力として設定する構成等を採用可能である。また、目標位置は、当該目標位置に到達する前に車両を減速させ、当該目標位置において目標車速(あるいは目標車速以下)とすべき道路上の位置であり、目標車速と対応付けて特定可能であればよい。目標位置は、目標車速が0km/hである停止線の位置や特定の車速以下で走行すべき徐行区間の開始位置のように、道路上の地物に対応付けられていても良いし、信号機が示す信号に応じて目標車速を特定するとともに停止すべき場合に信号機に対応する停止線を目標位置とする構成としても良い。また、目標位置は、具体的な座標で特定される構成に限定されず、目標位置とすべき地物の種類によって特定される構成であってもよい。例えば、地物が停止線であることを示すデータが対応づけられた地物データによって目標位置を規定する構成を採用すれば、道路上に存在する各停止線の位置が目標位置として特定される構成となる。
【0011】
目標充電電力設定手段は、操作減速車速情報が示す車速と回生減速車速情報が示す車速との間で車速が推移するように車両を減速させるためにバッテリに対して充電すべき電力を新たな目標充電電力とすることができればよい。すなわち、2種類の車速の推移の間で車速を推移させるためにバッテリに対して充電すべき電力を特定し、新たな目標充電電力として設定可能であればよい。例えば、各種の充電電力をバッテリに充電する回生ブレーキを発生させる場合の車速の推移と当該各種の充電電力とを対応づけるマップを予め作成しておけば、当該マップを参照することによって操作減速車速情報が示す車速と回生減速車速情報が示す車速との間で車速を推移させるためにバッテリに充電すべき充電電力を特定することが可能である。
【0012】
さらに、運転者が加速操作および減速操作を行っていない場合に自動制御が行われ、運転者が加速操作あるいは減速操作を行った場合に自動制御が中止される車両に本発明を適用してもよい。例えば、目標充電電力を充電する回生ブレーキによって目標位置において目標車速となるように車両を減速させる自動減速制御を行っている状態で運転者による加速操作あるいは減速操作が行われた場合に、自動減速制御を中止する車両を想定する。この車両において、自動減速制御が中止された後に、運転者が減速操作によって目標位置において目標車速となるように車両を減速させた場合に、当該減速の過程における車速の推移を示す情報を操作減速車速情報として取得する構成とする。
【0013】
この構成においては、目標充電電力を充電する回生ブレーキを発生させている状態で運転者の加速操作あるいは減速操作が行われ、かつ、その後に運転者の減速操作によって目標位置において目標車速となるように車両が減速されたことを条件として操作減速車速情報を取得することになる。ここで、当該条件を満たす状況は、目標充電電力を充電する回生ブレーキを発生させて走行している車両において運転者が車両をより加速させたい場合あるいは車両をより減速させたい場合に発生し得る。従って、当該条件を満たす状況において操作減速車速情報を取得し、当該操作減速車速情報に基づいて新たな目標充電電力を設定する構成となる。この結果、目標充電電力を充電する回生ブレーキを発生させて走行している車両の減速の程度が運転者の意志に応じた減速の程度と異なる場合に目標充電電力を修正する構成を実現することが可能になる。
【0014】
なお、加速操作は、車両を加速させる運転操作であればよく、例えば、加速量調整ペダルの操作によってスロットルの開度を調整する操作等が当該加速操作に該当する。減速操作は、車両を減速させる運転操作であればよく、例えば、減速量調整ペダルの操作によって摩擦ブレーキ等による制動力を調整する操作や変速機における変速比を調整してエンジンブレーキによる制動力を大きくする操作等が当該減速操作に該当する。
【0015】
さらに、バッテリの性能に関連した目標充電電力を設定してもよい。例えば、目標充電電力の初期値を、バッテリの性能を低下させることなく連続して充電可能な連続充電電力とする構成を採用可能である。すなわち、連続充電電力をバッテリに対して充電する状態としている限り、バッテリの性能を低下させずに維持することが可能である。また、上述のように、新たな目標充電電力は、運転者の意志に応じた減速と、新たな目標充電電力を設定する前に設定されていた目標充電電力を充電する回生ブレーキによる減速との双方に近い減速を行うように設定される。従って、新たな目標充電電力は、新たな目標充電電力を設定する前に設定されていた目標充電電力から大きく乖離することがない。
【0016】
このため、目標充電電力の初期値を連続充電電力に設定しておけば、新たな目標充電電力の設定が繰り返された場合であっても当該連続充電電力から乖離する程度を抑制することができ、バッテリの性能を過度に劣化させることはない。従って、バッテリの性能の過度の劣化を抑制しながら、運転者の意志に応じた回生ブレーキを発生させることが可能である。
【0017】
さらに、目標充電電力を目標位置毎に規定してもよい。例えば、運転者の減速操作によって車両を減速させた場合の車速の推移を目標位置毎に特定して目標位置毎の操作減速車速情報を定義する。また、目標位置において目標車速となるように車両を減速させる場合の車速が、目標位置毎の操作減速車速情報が示す車速と回生減速車速情報が示す車速との間で推移するように車両を減速させるためにバッテリに対して充電すべき電力を目標位置毎の新たな目標充電電力として設定する。この構成によれば、目標位置毎に新たな目標充電電力が設定されるため、各目標位置に適した目標充電電力を設定することが可能になる。なお、目標充電電力は目標位置に対応づけられていればよく、目標位置の座標に対応づけられていてもよいし、上述のように目標位置が地物の種類によって特定される場合には当該地物の種類に対応づけられていてもよい。
【0018】
さらに、本発明のように運転者の減速操作によって車両を減速させた場合の車速の推移と回生ブレーキによって車両を減速させる場合の車速の推移との間で車速が推移するように新たな目標充電電力を決定する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような装置、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような装置を備えたナビゲーション装置や方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】目標充電電力設定装置を含むナビゲーション装置のブロック図である。
【図2】自動減速制御処理を示すフローチャートである。
【図3】目標充電電力を充電する回生ブレーキを発生させた場合の車速の推移を模式的に示す図である。
【図4】(4A)は車速の推移を模式的に示す図であり、(4B)は車速マップに規定された情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ナビゲーション装置の構成:
(2)自動減速制御処理:
(3)他の実施形態:
【0021】
(1)ナビゲーション装置の構成:
図1は、本発明にかかる目標充電電力設定装置を含むナビゲーション装置10の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20、記録媒体30を備えており、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することが可能である。本実施形態においては、このプログラムとして目標充電電力設定プログラム21を実行可能である。目標充電電力設定プログラム21は、制御部20がナビゲーション処理を実行している状態において実行される。
【0022】
本実施形態における車両は、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43とスロットル制御部44と摩擦制動部45と発電機46とバッテリ47とを備えており、各部を必要に応じて利用して制御部20が目標充電電力設定プログラム21による機能を実現する。
【0023】
GPS受信部41は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在位置を算出するための情報を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の現在位置を取得する。車速センサ42は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両の現在車速を取得する。ジャイロセンサ43は、車両に作用する角速度に対応した信号を出力する。制御部20は図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両の走行方向を取得する。車速センサ42およびジャイロセンサ43は、GPS受信部41の出力信号から特定される車両の現在位置を補正するなどのために利用される。また、車両の現在位置は、当該車両の走行軌跡に基づいて適宜補正される。
【0024】
スロットル制御部44は、車両に搭載されたエンジンに供給する空気の量を調整するためのスロットルバルブおよびスロットルバルブの開度を調整するための加速量調整ペダルを含む装置である。すなわち、運転者は加速量調整ペダルを操作して吸気量を増加させて車両を加速させることができる。制御部20は、図示しないインタフェースを介してスロットル制御部44に対して制御信号を出力し、加速量調整ペダルの操作量を示す情報を取得することができる。
【0025】
摩擦制動部45は、車輪に搭載された摩擦ブレーキによる制動力を調整するホイールシリンダおよびホイールシリンダの圧力を調整するための減速量調整ペダルを含む装置である。すなわち、運転者は減速量調整ペダルを操作してホイールシリンダの圧力を調整して車両に作用する制動力を調整し、車両を減速させることができる。制御部20は、図示しないインタフェースを介して摩擦制動部45に対して制御信号を出力して減速量調整ペダルの操作量を示す情報を取得し、減速量調整ペダルが操作されている場合に運転者によって減速操作が行われていると判定することができる。
【0026】
発電機46は、回転子を備えるとともに当該回転子が図示しないギアを介して車輪を駆動する車軸に接続されており、車輪の回転に応じて発電機46の回転子が回転することによって発電し、発電した電力によってバッテリ47を充電する装置である。発電機46は図示しないインタフェースを介して制御部20と接続されており、制御部20は発電機46に対して制御信号を出力することによってその発電の状態を制御することで回生ブレーキを発生させ、その制動力を調整することが可能である。
【0027】
バッテリ47は、発電機46に接続されており、発電機46が発電した電力によって充電され、蓄電した電力を発電機46に対して供給して当該発電機46をモーターとして機能させる。すなわち、本実施形態における発電機46は、車両を駆動するモーターとしての機能も有しており、発電機46がバッテリ47から電力の供給を受けて回転すると、当該回転は図示しないギアを介して車輪に伝達されて車両が前進あるいは後進する。なお、本実施形態にかかる車両は図示しないエンジンを備えており、エンジンと、モーターとしての発電機46とのいずれかまたは双方によって駆動されるハイブリッド車両であるが、むろん、エンジンを備えない電気自動車に対して本発明を適用しても良い。
【0028】
記録媒体30には地図情報30aが記録されている。地図情報30aは、車両が走行する道路上に設定されたノードを示すノードデータ,ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点データ,ノード同士の連結を示すリンクデータ,道路やその周辺に存在する地物(道路上の停止線や白線、横断歩道など)の位置(座標)を示すデータ等を含んでいる。本実施形態においては、地物の直前で車両を停止させる必要がある場合に、車両を停止させる位置を目標位置として定義しており、地物を示すデータに目標位置を示すデータが対応付けられている。また、本実施形態において、目標位置は車両を停止させる必要がある位置であるため、目標車速は0km/hである。さらに、本実施形態においては、各目標位置に目標充電電力の値を示すデータが対応づけられている。当該目標充電電力は回生ブレーキを利用した自動減速制御を行う際にバッテリ47に対して充電される電力であり、初期値はバッテリ47の性能を低下させることなく連続して充電可能な電力であり、自動減速制御時の運転者の操作に応じて逐次更新され得る。
【0029】
制御部20は、地図情報30aを参照し、車両の前方の目標位置と車両との距離が所定距離以下になった場合に上述の回生ブレーキを利用した自動減速制御を行う。すなわち、制御部20は、GPS受信部41,車速センサ42,ジャイロセンサ43の出力信号に基づいて車両の現在位置を特定するとともに、地図情報30aを参照して車両の前方の所定距離以内に目標位置が存在するか否かを判定する。車両の前方の所定距離以内に目標位置が存在すると判定された場合、制御部20は、発電機46に対して制御信号を出力し、所定の減速開始位置から目標位置までの過程においてバッテリ47に対して目標充電電力を充電する回生ブレーキを発生させて、目標位置にて目標車速となるように車両を減速させる自動減速制御を行う。
【0030】
本実施形態においては、このような自動減速制御を実行している過程において目標充電電力設定プログラム21が実行される。目標充電電力設定プログラム21は、回生ブレーキを利用した自動減速制御を行う際にバッテリ47に対して充電する目標充電電力を新たに設定する機能を実現する。このために、目標充電電力設定プログラム21は、操作減速車速情報取得部21aと回生減速車速情報取得部21bと目標充電電力設定部21cとを備えている。
【0031】
操作減速車速情報取得部21aは、車両の運転者の減速操作によって目標位置において目標車速となるように車両を減速させた場合の車速の推移を示す操作減速車速情報を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、ある目標位置において目標車速となるように上述の自動減速制御が実行されている過程において運転者が摩擦制動部45の減速量調整ペダルを操作すると、当該自動減速制御が中止され、制御部20は、操作減速車速情報取得部21aの処理により、操作減速車速情報を取得する。具体的には、制御部20は、GPS受信部41,車速センサ42,ジャイロセンサ43などの出力信号に基づいて車両の位置を特定するとともに各位置における車速を特定する処理を目標位置まで実行する。そして、目標位置において目標車速となった場合、制御部20は、各位置と車速とを対応づけた情報を操作減速車速情報として取得する。
【0032】
回生減速車速情報取得部21bは、バッテリに対して目標充電電力を充電する回生ブレーキによって目標位置において目標車速となるように車両を減速させる場合の車速の推移を示す回生減速車速情報を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。本実施形態において、制御部20は、回生減速車速情報取得部21bの処理により、回生ブレーキを発生させて減速させる場合の車速および制動力と目標充電電力との関係に基づいて車速の推移を特定する。すなわち、制御部20は、地図情報30aを参照し、上述の自動減速制御における目標位置に対応づけられている目標充電電力を取得する。また、一般に、バッテリの充電電力は車両に作用する制動力の大きさと車速との積に等しい(あるいは比例する)とみなすことができる。そこで、制御部20は、目標充電電力が制動力と車速との積に等しいとみなすことにより、目標充電電力をバッテリ47に充電する回生ブレーキを発生させて車両を減速させる場合の位置毎の車速を特定し、回生減速車速情報として取得する。
【0033】
目標充電電力設定部21cは、目標位置において目標車速となるように車両を減速させる場合の車速が、操作減速車速情報が示す車速と回生減速車速情報が示す車速との間で推移するように車両を減速させるためにバッテリに対して充電すべき一定の電力を新たな目標充電電力として設定する機能を制御部20に実現させるモジュールである。本実施形態においては、複数の一定の充電電力のそれぞれをバッテリ47に対して充電する回生ブレーキを発生させて減速を行う場合の位置毎の車速の推移を示す車速マップ30bが予め規定され、記録媒体30に記録されている。制御部20は、操作減速車速情報が示す車速と回生減速車速情報が示す車速との平均値を位置毎に特定し、車速マップ30bを参照し、車速マップ30bが示す各位置の車速と各位置における上述の平均値との差が最も小さくなるような一定の充電電力を最小二乗法等によって選択する。そして、選択された一定の充電電力を新たな目標充電電力として地図情報30aを更新する。
【0034】
以上のようにして新たな目標充電電力が設定されると、再度目標位置に対して車両が接近して自動減速制御が行われる際に、新たな目標充電電力を充電する回生ブレーキによって減速が行われることになる。上述のように、自動減速制御を行っている過程において実際に運転者が減速操作を行って、当該減速操作によって目標位置において目標車速となるように減速させた場合、自動減速制御による車速推移は運転者の意志に合致しておらず、運転者の減速操作に応じた車速推移は運転者の意志に合致している。さらに、バッテリに対して一定の目標充電電力を充電する回生ブレーキを発生させて減速させる場合、バッテリに対して効果的に充電することが可能である。従って、運転者の減速操作に応じた車速推移により近くなるように新たな目標充電電力が設定されることにより、より運転者の意志に近い減速を行い、かつ効果的に充電を行うことができるように目標充電電力を設定することが可能である。
【0035】
さらに、以上のように、新たな目標充電電力を設定する処理は、目標充電電力を充電する回生ブレーキを発生させる自動減速制御が運転者の意志に対応した減速操作によって中止された場合に実行される。従って、本実施形態においては、自動減速制御における減速の程度が運転者の意志に応じた減速の程度と異なる場合に目標充電電力を修正することが可能である。
【0036】
さらに、目標充電電力の初期値は連続充電電力であるため、初期値の目標充電電力を充電する回生ブレーキを発生させた場合にバッテリ47の性能を低下させずに維持することが可能である。また、新たな目標充電電力は、運転者の意志に応じた減速と、新たな目標充電電力を設定する前に設定されていた目標充電電力を充電する回生ブレーキによる減速との双方に近い減速を行うように設定される。従って、新たな目標充電電力は、新たな目標充電電力を設定する前に設定されていた目標充電電力から大きく乖離することがない。このため、新たな目標充電電力の設定が繰り返された場合であっても新たな目標充電電力が初期値の連続充電電力から乖離する程度を抑制することができ、バッテリの性能を過度に劣化させることはない。従って、バッテリの性能の過度の劣化を抑制しながら、運転者の意志に応じた回生ブレーキを発生させることが可能である。
【0037】
(2)自動減速制御処理:
次に、本実施形態にかかる目標充電電力設定処理を詳細に説明する。図2は、目標充電電力設定処理を含む自動減速制御処理示すフローチャートであり、当該自動減速制御処理は車両が走行している過程において実行される。
【0038】
自動減速制御処理において、まず制御部20は、地図情報30aを参照して車両前方の所定範囲内の目標位置を取得し(ステップS100)、減速が必要であるか否かを判定する(ステップS105)。すなわち、制御部20は、車両と目標位置との距離が所定距離以内である場合に減速が必要であるとみなす。なお、ステップS105にて減速が必要であると判定されるまで、制御部20は、ステップS100以降の処理を繰り返す。
【0039】
ステップS105にて減速が必要であると判定された場合、制御部20は図示しないユーザーI/F部(表示部や音声出力部)に対して制御信号を出力し、運転者に対してスロットルオフを促す案内を行う(ステップS110)。すなわち、本実施形態においては、スロットル制御部44の加速量調整ペダルが運転者によって操作されていない状態において自動減速制御を実行する構成となっており、制御部20は、加速量調整ペダルが運転者によって操作されていない状態を実現するために、スロットルをオフさせるための画像表示と音声出力とを行う。そして、制御部20は、スロットル制御部44から加速量調整ペダルの操作量を示す情報を取得してスロットルがオフ(操作されていない状態)になったと判定されるまで待機する(ステップS115)。なお、スロットルがオフになったと判定されないままの状態で、車両と目標位置との距離が目標充電電力を充電する回生ブレーキによって目標位置において目標車速まで減速させるために必要な距離より小さくなった場合、自動減速制御を中止して再度ステップS100以降の処理の実行を開始する。
【0040】
一方、ステップS115にて、スロットルがオフになったと判定された場合、制御部20は、目標充電電力を充電する回生ブレーキによる減速制御を実行する(ステップS120)。すなわち、制御部20は、目標充電電力に基づいて、目標充電電力を充電する回生ブレーキによって目標位置において目標車速とするために減速を開始すべき減速開始位置を特定し、車両の現在位置が減速開始位置となった時点以後、車両の現在位置が目標位置となるまでの過程において、発電機46に対して制御信号を出力し、バッテリ47に対して目標充電電力を充電する回生ブレーキを発生させる自動減速制御を行う。
【0041】
図3は、減速開始位置を特定する処理の例を示す図である。同図3においては、横軸に位置、縦軸に車速および制動力の大きさを示しており、目標充電電力を充電する回生ブレーキを発生させた場合の車速を実線、制動力の大きさを一点鎖線によって示している。また、本例においては原点Oが車両の現在位置であり、点Z0が目標位置である。本実施形態において、図3に示すような車速および制動力の大きさは、目標充電電力をバッテリ47に充電する状態に対応した単位時間毎の車速および加速度の推移を特定する処理を繰り返すことによって決定される。まず、制御部20は、目標充電電力に基づいて目標位置における制動力を特定する。本実施形態においては、バッテリに対する充電電力である目標充電電力が車両に作用する制動力の大きさと車速との積に等しいとみなすが、目標車速である0km/hを直接的に扱うことを避けるため、目標位置における車速を0にほぼ等しい所定の車速V0(例えば、1km/h)とする。そして、目標充電電力を当該所定の車速V0で除することによって目標位置Z0における制動力F0を特定する。この結果、目標位置Z0における制動力がF0,車速が所定の車速V0に設定される。なお、ここで制動力は車両の前方を正の方向として定義され、制動力F0は負の数である。
【0042】
次に、制御部20は、目標位置Z0においてこれらの車速および制動力となっているために必要な単位時間だけ過去の時点での車速を特定する。すなわち、目標位置における制動力F0を車両の重量で除した値が車両に作用する加速度(車両の前方を正の方向とした場合の負の加速度)であるため、当該加速度と過去に遡ることを示す負数の単位時間との積を目標車速に相当する所定の車速であるV0に加えれば、単位時間だけ過去の時点での車速が特定される。また、当該車速と単位時間とを乗じて得られる距離だけ進行方向後方の位置を単位時間だけ過去の時点での車両の位置とする。
【0043】
そして、上述のように、車両に作用する制動力の大きさと車速との積が目標充電電力に等しいとみなすと、目標充電電力を、車速で除した値によって車両に作用する制動力の大きさを定義することが可能である。そこで、上述のように、単位時間だけ過去の時点での車速を算出した後に、当該車速で目標充電電力を除することによって単位時間だけ過去の時点での制動力の大きさを特定することが可能である。この処理を繰り返すことにより、各位置における車速と制動力の大きさとを特定することが可能である。
【0044】
例えば、発電機46によってバッテリ47に対して目標充電電力を充電している状態で目標位置Z0の目標車速がV0、制動力がF0である状態を実現するために、制御部20は、単位時間だけ過去の時点での車速V1をV0+(−T)×(F0/M)(km/h)として算出する。ここで、Tは単位時間の長さである。また、制御部20は、単位時間だけ過去の時点での車両の位置を目標位置Z0より距離V1×T(m)だけ進行方向後方の位置Z1とする(図示せず)。この結果、位置Z1における車速がV1となり、制御部20は、当該位置Z1における制動力F1を(−P/V1)(N)として特定する。ここで、Pは目標充電電力(W)である。
【0045】
さらに、制御部20は、位置Z1において車両に作用する加速度a1が(−P/(V1・M))(m/s2)であるとし、位置Z1における状態よりも単位時間だけ過去の時点での車両の車速V2をV1+(−T)×(−P/(V1・M))として特定する。さらに、単位時間だけ過去の時点での車両の位置を位置Z1より距離V2×Tだけ進行方向後方の位置Z2とする。制御部20は、以上の処理を車速が現在車速V0(km/h)と一致する(あるいは現在車速V0より大きくなる)まで繰り返し、車速が当該現在車速V0となる位置を減速開始位置Zsとする。以上のようにして、減速開始位置Zsが特定されると、制御部20は、GPS受信部41,車速センサ42,ジャイロセンサ43の出力信号に基づいて車両の現在位置を特定するとともに、当該現在位置が減速開始位置Zsと一致した(あるいは減速開始位置Zsより前方となった)時点から発電機46に対して制御信号を出力し、バッテリ47に対して目標充電電力を充電する回生ブレーキを発生させる自動減速制御を開始する。
【0046】
次に、制御部20は、GPS受信部41,車速センサ42,ジャイロセンサ43の出力信号に基づいて車両が目標位置に到達し、かつ、車速が目標車速となったか否かを判定する(ステップS125)。ステップS125において、車両が目標位置に到達し、かつ、車速が目標車速になったと判定された場合には、ステップS100以後に戻り、新たな目標位置に関する自動減速制御処理を開始する。
【0047】
一方、ステップS125において、車両が目標位置に到達し、かつ、車速が目標車速になったと判定されない場合、新たな目標充電電力を設定するための処理を実行する。まず、制御部20は、スロットル制御部44から加速量調整ペダルの操作量を示す情報を取得し、スロットルがオンになった後、再度オフになったか否かを判定する(ステップS130)。そして、ステップS130にて、スロットルがオンになった後、再度オフになったと判定されない場合、ステップS125以降の処理を繰り返す。なお、スロットルがオンになった場合、制御部20は自動減速制御を中止する。
【0048】
一方、ステップS130にて、スロットルがオンになった後、再度オフになったと判定された場合、制御部20は、GPS受信部41,車速センサ42,ジャイロセンサ43の出力信号に基づいて特定される車両の位置と車速とを対応づけてRAMに記録する処理を行う(ステップS133)。そして、制御部20は、GPS受信部41,車速センサ42,ジャイロセンサ43の出力信号に基づいて車両が目標位置に到達し、かつ、車速が目標車速となったか否かを判定し(ステップS135)、当該ステップS135にて車両が目標位置に到達し、かつ、車速が目標車速となったと判定されるまでステップS133の処理を繰り返す。なお、ステップS135において、車両が目標位置に到達し、かつ、車速が目標車速となったと判定されない状態で目標位置に到達した場合には、一旦処理を中止し、再度ステップS100以降の処理の実行を開始する。
【0049】
ステップS135で、車両が目標位置に到達し、かつ、車速が目標車速となったと判定された場合、自動減速制御が中止された後、運転者が一旦加速を行い、その後に再度車両を減速させて目標位置において車速を目標車速としたことになる。そこで、本実施形態において制御部20は、この場合に新たな目標充電電力を設定するため、ステップS140〜S150を実行する。
【0050】
すなわち、まず、制御部20は、操作減速車速情報取得部21aの処理により、操作減速車速情報を取得する(ステップS140)。すなわち、ステップS133の処理によってRAMに記録されていた車両の位置と車速との対応関係を示す情報を操作減速車速情報として取得する。
【0051】
図4Aは、現在位置Oにおいて現在車速V0で走行している車両において自動減速制御や運転者の操作による減速を行った場合の車速の推移を示す図である。同図4Aにおいては、横軸に位置、縦軸に車速を示しており、目標充電電力を充電する回生ブレーキを発生させた場合の車速を実線、運転者が一旦加速を行い、その後に再度車両を減速させた場合の車速を一点鎖線によって示している。同図4Aに示す例の場合、ステップS140においては、位置Zrより前方において一点鎖線で示される車速と位置との対応関係を示す情報を操作減速車速情報として取得する。
【0052】
次に、制御部20は、回生減速車速情報取得部21bの処理により、回生減速車速情報取得部21bを取得する(ステップS145)。すなわち、制御部20は、上述のステップS120において特定された減速開始位置Zsと目標位置Z0との間における位置毎の車速を示す情報を回生減速車速情報として取得する。
【0053】
次に、制御部20は、操作減速車速情報と回生減速車速情報とに基づいて、新たな目標充電電力を設定する(ステップS150)。具体的には、制御部20は、操作減速車速情報と回生減速車速情報とに基づいて位置毎に操作減速車速情報が示す車速と回生減速車速情報が示す車速を特定し、位置毎に各車速の平均値を特定する。すなわち、運転者が一旦加速を行い、その後に再度車両を減速させた位置から目標位置までの区間においては、操作減速車速情報と回生減速車速情報との双方が規定されているため、この区間において位置毎の車速の平均値を特定する。
【0054】
例えば、図4Aに示す例においては、位置Zrと目標位置Z0との間において操作減速車速情報が示す車速と回生減速車速情報が示す車速の平均値が特定される。すなわち、図4Aに示す一点鎖線で示す車速と実線で示す車速との中間の車速に相当する平均値が位置Zrと目標位置Z0との間における複数の位置において特定される。図4Aにおいては、位置Zr1,Zr2について、操作減速車速情報が示す車速と回生減速車速情報が示す車速の平均値Vr1,Vr2を例示している。
【0055】
さらに、制御部20は、車速マップ30bを参照し、車速マップ30bが示す各位置の車速と各位置における上述の平均値との差が最も小さくなるような一定の充電電力を最小二乗法等によって選択する。図4Bは、車速マップ30bの例を示す図である。同図4Bに示すように、車速マップ30bにおいては、回生ブレーキを発生させて減速を行う場合の位置毎の車速の推移を、複数の一定の充電電力毎に示している。すなわち、図4Bに示す実線の曲線のそれぞれは異なる充電電力に対応した車速の推移である。制御部20は、当該車速マップ30bが示す図4Bのような曲線のうち、上述の平均値に最も近い曲線を選択する。なお、図4Aにおいては、車速マップ30bが示す各位置の車速と各位置における上述の平均値との差が最も小さくなるように選択された曲線を二点鎖線で示している。制御部20は、当該二点鎖線で示された曲線に対応する一定の充電電力を新たな目標充電電力として設定する。すなわち、制御部20は、目標位置に目標充電電力の値を示すデータを対応づけて地図情報30aを更新する。
【0056】
以上のようにして新たな目標充電電力を設定すると、制御部20は、ステップS100に戻って新たな目標位置に関する自動減速制御を実行するための処理を開始する。従って、これ以後、新たな目標充電電力が対応づけられた目標位置に関する自動減速制御が実行される場合には、新たな目標充電電力をバッテリ47に充電する回生ブレーキを発生させる自動減速制御が実行される。
【0057】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、運転者の減速操作によって車両を減速させた場合の車速の推移と回生ブレーキによって車両を減速させる場合の車速の推移との間で車速が推移するように新たな目標充電電力を決定する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。
【0058】
例えば、操作減速車速情報は、運転者によって減速操作が行われたことに応じて発生させられるブレーキによって車両を減速させた場合の車速の推移を示していればよい。従って、運転者の減速操作によって回生ブレーキ以外のブレーキのみを発生させた場合の車速の推移であってもよいし、運転者の減速操作によって回生ブレーキと回生ブレーキ以外のブレーキとを発生させた場合の車速の推移であってもよい。また、回生ブレーキ以外のブレーキは、上述の実施形態のように摩擦ブレーキであってもよいし、変速比の制御によるエンジンブレーキであってもよく種々のブレーキを想定可能である。
【0059】
さらに、回生減速車速情報は、運転者によって減速操作が行われていない状態において発生させられる回生ブレーキによって車両を減速させる場合の車速の推移を示していればよい。従って、上述の実施形態のように運転者によって減速操作が行われていない状態において回生ブレーキのみを発生させる場合の車速の推移であってもよいし、運転者によって減速操作が行われていない状態において回生ブレーキと回生ブレーキ以外のブレーキとを発生させる場合の車速の推移であってもよい。
【0060】
また、操作減速車速情報や回生減速車速情報は、上述のように位置毎の車速によって車速の推移を表現した情報の他、時刻毎の車速によって車速の推移を表現した情報で構成してもよく、種々の構成を採用可能である。
【0061】
目標車速は0km/hに限定されず、0km/hよりも大きい車速であっても良い。また、目標位置は、目標車速あるいは目標車速以下とすべき道路上の位置であればよく、特定の車速以下で走行すべき徐行区間の開始位置等であってもよく種々の構成を採用可能である。さらに、目標位置が動的に変動する構成であっても良い。例えば、信号機が示す信号に応じて目標車速を特定するとともに停止すべき場合に信号機に対応する停止線を目標位置とする構成等を採用可能である。また、目標位置は、具体的な座標で特定される構成に限定されず、条件によって特定される構成であってもよい。例えば、停止線という条件によって、道路上に存在する停止線のそれぞれが目標位置として特定される構成であってもよい。
【0062】
目標充電電力を設定する際には、2種類の車速の推移の間で車速を推移させるためにバッテリに対して充電すべき電力を特定し、新たな目標充電電力として設定可能であればよい。従って、上述の実施形態のように、操作減速車速情報が示す車速と回生減速車速情報が示す車速との平均値に近い車速推移となるように目標充電電力を設定する構成であってもよいし、平均値よりも回生減速車速情報が示す車速により近い車速の推移となるように新たな目標充電電力を設定して目標充電電力の変動を抑制する構成であってもよい。また、平均値よりも操作減速車速情報が示す車速により近い車速の推移となるように新たな目標充電電力を設定して運転者の意志により近くなるように構成してもよい。
【0063】
さらに、上述の実施形態においては、自動減速制御の際に加速量調整ペダルの操作によってスロットルの開度を調整する加速操作が行われ、さらにその後に減速操作が行われた場合の車速の推移を示す情報を操作減速車速情報として取得する構成としていたが、自動減速制御の際に減速操作が行われた場合の車速の推移を示す情報を操作減速車速情報として取得する構成としてもよい。なお、減速操作は、車両を減速させる運転操作であればよく、例えば、減速量調整ペダルの操作によって摩擦ブレーキ等による制動力を調整する操作や変速機における変速比を調整してエンジンブレーキによる制動力を大きくする操作等が当該減速操作に該当する。
【0064】
さらに、上述の実施形態においては、座標によって特定される各目標位置について目標充電電力を規定していたが、目標位置とすべき地物の種類によって目標位置が特定されるとともに地物の種類に目標充電電力が対応づけられる構成であってもよい。地物の種類は地物自体の属性、例えば、地物が停止線であることを示す情報等によって規定してもよいし、車両を停止させるべき特定の形状を有する道路と停止させるべき特定の形状を有さない道路とによって地物の種類を分類してもよい。また、歩行者が横断し得る横断歩道など、可動地物が存在することによって目標位置とされるべき種類の地物を目標位置を規定する種類の地物としてもよい。
【0065】
さらに、車両の周辺に先行車や対向車、歩行者等の可動地物が存在する場合に当該可動地物に到達する前の所定位置を目標位置とする構成等を採用可能である。なお、可動地物の存在は車両に搭載されたカメラや車両に搭載された通信部を利用した車車間,路車間通信等によって特定することが可能である。
【0066】
さらに、上述の実施形態においては、目標充電電力が一定の電力である場合について説明したが、当該目標充電電力は変動する値であってもよい。例えば、バッテリに対して充電すべき最適な電力が時間や距離、または、回生ブレーキ中の車両の状態、バッテリの状態等に応じて変動し得る場合、当該最適な電力を目標充電電力の初期値とする構成を採用可能である。この構成においては、変動し得る初期値の目標充電電力をバッテリに対して充電する回生ブレーキによって車両を減速させる場合の回生減速車速情報を取得し、当該回生減速車速情報が示す車速と操作減速車速情報が示す車速との間で車速が推移するように新たな目標充電電力を設定すればよい。むろん、この場合、新たな目標充電電力も時間や距離、または、回生ブレーキ中の車両の状態、バッテリの状態等に応じて変動し得る。この構成によれば、目標充電電力が時間や距離、または、回生ブレーキ中の車両の状態、バッテリの状態等に応じて変動し得る場合であっても、新たな目標充電電力を設定する前の目標充電電力から過度に変動させることなく新たな目標充電電力を設定することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
10…ナビゲーション装置、20…制御部、21…目標充電電力設定プログラム、21a…操作減速車速情報取得部、21b…回生減速車速情報取得部、21c…目標充電電力設定部、30…記録媒体、30a…地図情報、30b…車速マップ、41…GPS受信部、42…車速センサ、43…ジャイロセンサ、44…スロットル制御部、45…摩擦制動部、46…発電機、47…バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者の減速操作によって目標位置において目標車速となるように前記車両を減速させた場合の車速の推移を示す操作減速車速情報を取得する操作減速車速情報取得手段と、
バッテリに対して目標充電電力を充電する回生ブレーキによって前記目標位置において前記目標車速となるように前記車両を減速させる場合の車速の推移を示す回生減速車速情報を取得する回生減速車速情報取得手段と、
前記目標位置において前記目標車速となるように前記車両を減速させる場合の車速が、前記操作減速車速情報が示す車速と前記回生減速車速情報が示す車速との間で推移するように前記車両を減速させるために前記バッテリに対して充電すべき電力を新たな目標充電電力として設定する目標充電電力設定手段と、
を備える目標充電電力設定装置。
【請求項2】
前記操作減速車速情報取得手段は、
前記目標充電電力を充電する回生ブレーキによって前記目標位置において前記目標車速となるように前記車両を減速させる自動減速制御を行っている状態で前記運転者による加速操作あるいは減速操作が行われた場合に前記自動減速制御を中止する前記車両において、
前記自動減速制御が中止された後に、前記運転者が前記減速操作によって前記目標位置において前記目標車速となるように前記車両を減速させた場合の車速の推移を示す情報を前記操作減速車速情報として取得する、
請求項1に記載の目標充電電力設定装置。
【請求項3】
前記目標充電電力の初期値は、前記バッテリの性能を低下させることなく連続して充電可能な連続充電電力である、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の目標充電電力設定装置。
【請求項4】
前記操作減速車速情報取得手段は、前記運転者の減速操作によって前記車両を減速させた場合の車速の推移を前記目標位置毎に特定して前記目標位置毎の前記操作減速車速情報を取得し、
前記目標充電電力設定手段は、前記目標位置において前記目標車速となるように前記車両を減速させる場合の車速が、前記目標位置毎の前記操作減速車速情報が示す車速と前記回生減速車速情報が示す車速との間で推移するように前記車両を減速させるために前記バッテリに対して充電すべき電力を前記目標位置毎の前記新たな目標充電電力として設定する、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の目標充電電力設定装置。
【請求項5】
車両の運転者の減速操作によって目標位置において目標車速となるように前記車両を減速させた場合の車速の推移を示す操作減速車速情報を取得する操作減速車速情報取得工程と、
バッテリに対して目標充電電力を充電する回生ブレーキによって前記目標位置において前記目標車速となるように前記車両を減速させる場合の車速の推移を示す回生減速車速情報を取得する回生減速車速情報取得工程と、
前記目標位置において前記目標車速となるように前記車両を減速させる場合の車速が、前記操作減速車速情報が示す車速と前記回生減速車速情報が示す車速との間で推移するように前記車両を減速させるために前記バッテリに対して充電すべき電力を新たな目標充電電力として設定する目標充電電力設定工程と、
を含む目標充電電力設定方法。
【請求項6】
車両の運転者の減速操作によって目標位置において目標車速となるように前記車両を減速させた場合の車速の推移を示す操作減速車速情報を取得する操作減速車速情報取得機能と、
バッテリに対して目標充電電力を充電する回生ブレーキによって前記目標位置において前記目標車速となるように前記車両を減速させる場合の車速の推移を示す回生減速車速情報を取得する回生減速車速情報取得機能と、
前記目標位置において前記目標車速となるように前記車両を減速させる場合の車速が、前記操作減速車速情報が示す車速と前記回生減速車速情報が示す車速との間で推移するように前記車両を減速させるために前記バッテリに対して充電すべき電力を新たな目標充電電力として設定する目標充電電力設定機能と、
をコンピュータに実現させる目標充電電力設定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−135716(P2011−135716A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293947(P2009−293947)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】