説明

真空プラズマ発生器

真空チャンバ(2)内でのパルスプラズマ処理による加工物(5)の加工のために、プラズマ放電(10)に給電する真空プラズマ発生器であって、交流電源接続(6a)を有する発生器出力(9,9’)と、交流電源電圧をきれいな直流電圧に変換するための電源整流器装置(6)と、平滑コンデンサ(6b)と、中間回路電圧(Uz)を形成する直流出力電圧を調整するための手段を有するクロック動作させたDC−DC電圧コンバータ(7)としての第1段とが含まれ、変圧器(14)の一次巻線に給電する制御された遮断器(7a)が含まれ、該変圧器の二次巻線は整流器(15)および下流の中間回路コンデンサ(12)と接続されておりかつ非接地の変圧器二次回路(23)を形成し、その際、この非接地の変圧器二次回路が下流の第2段と接続されており、この第2段がパルス出力段(8)を形成し、このパルス出力段が発生器出力(9,9’)に接続している真空プラズマ発生器において、該DC−DC電圧コンバータ(7)が少なくとも2つの非接地の変圧器二次回路(23)を有し、かつ該非接地の変圧器二次回路(23)の選択的な並列または直列の接続のためのスイッチ制御装置(22)を備えた切換スイッチ装置(20)を含む真空プラズマ発生器が実現された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1の上位概念に従った、真空チャンバ内での加工物の処理のためにプラズマ放電に給電する真空プラズマ発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
真空法のためのガス放電ないしはプラズマ放電の動作のための電源装置はさまざまな様式で既に知られている。このような電源装置は当業者の間で発生器とも呼ばれる。この場合には、プラズマ放電およびこれに伴うプラズマ処理の品質が特に要求されるため、動作条件を良好かつ確実に制御できることが重要である。この種の真空プラズマ処理を用いて今日では多くの種々の適用、例えば加工物もしくは基板等のコーティング、洗浄、熱処理が見いだされている。
【0003】
この種の真空プラズマ処理は、例えば陰極噴霧、アーク蒸着とも呼ばれる火花蒸着(Funkenverdampfen)、電子衝撃もしくはイオン衝撃による表面処理およびプラズマCVD蒸着法である。この種の真空プラズマ処理で特別な結果を達成できるようにするために、放電プロセスが相応にコントロールされなければならず、かつ適当な電源を用いて適切に制御されなければならない。この場合には、この種のプラズマ放電の種々の動作モードの可能なパラメタフィールドは著しく広く、例えばコーティングされた加工物の薄膜性質におけるように、新規で予想外の結果が再三達成されることができる。したがって、新たな可能性を実現できるようにするために、パルス化されながら給電されるプラズマ放電を用いてパラメタフィールドをさらに拡大することがしばらく前から試みられている。
【0004】
この場合には、しばしばkHz範囲からl00kHz範囲を超えるに至るまでの種々の周波数でおよびまた種々のパルス幅および/またはパルス波形を用いて、単極性パルスまたはバイポーラパルスが使用される。このパルス技術を用いて例えば不良導体材料またはそれどころか絶縁膜の場合に、望ましくない火花放電が発生することなく動作が行われうる。殊に基板バイアスの重要な使用ケースの場合にはこのパルス技術によって有利な結果が得られ、この場合には通常、高い電流も実現させうる電圧安定なパルス電源を用いて動作させた。このパルス技術を用いてコーティングの生成のためにもコーティングソース、例えば陰極噴霧ソースないしはスパッタソース、あるいは火花蒸着ソースに給電することができる。
【0005】
このパルス技術は、不良導体もしくは不導体材料を用いたプロセス、例えば反応プロセス、のコントロールに特に好適である。しかしまたこの技術の使用は、良好な電気導体材料がプロセスに、例えば膜の化学量論、膜材料の密度の調整のために、かつしかしまたその構造に影響を及ぼすために使用される場合に非常に大きな利点をもたらす。
【0006】
可能性の多様性ゆえに今日ではあらゆる種類の既知のプラズマ放電種類ないしはプラズマ動作モードで操作される。
【0007】
PVDおよびCVD適用への、いわゆるグロー放電の範囲内のパルスプラズマ適用を広範囲に記載した米国特許第05303139号明細書ではバイポーラ電源が使用されている。このグロー放電は通常1000ボルト未満の電圧で、つまり数百ボルト以下の電流値で動作する。しばしばこのようなグロー放電は付加的に特別な磁場を用いて促進される。この種のソースはマグネトロンソースとして知られている。このソースは数百ボルトで動作しかつ、磁場による促進のないグロー放電より高い放電電流を実現させることを可能に
する。
【0008】
例えば米国特許第5015493号明細書に記載されている異常グロー放電は、グロー放電もしくはマグネトロン放電の電圧および電流値に比して数キロボルトのより高い電圧およびより高い電流値で動作するが、火花放電に比べより小さな電流値で動作する。
【0009】
火花蒸着装置、あるいはアーク蒸着装置とも呼ばれるそれは数十ボルトの範囲で、だがしかし通常数百アンペアの著しく高い電流で動作する。
【0010】
別の特殊な放電形態、いわゆる「ハイパワーパルススパッタリング(High Power Pulsed Sputtering)」、が米国特許第6296742号明細書から公知となっている。
【0011】
この動作モードはしばしば「拡散放電(diffused discharge)」とも呼ばれる、というのもターゲット領域内でプラズマが際立って拡散状に明るくなるからである。その放電はこの場合にはパルス電圧0.35〜5kVを用いてパルス電力10kW〜1MWで動作する。そのパルス長は50マイクロ秒〜1ミリ秒の範囲内であり、パルス間の間隔は10ミリ秒〜1000秒の範囲内である。
【0012】
著しく広いインピーダンス範囲をカバーしかつしたがってkHz〜数百kHzのパルス周波数で数ボルトの範囲からkV範囲の供給電圧および数アンペアから数百アンペアのパルス電流を必要とする上述のプラズマプロセスないしはプラズマ処理法は電源にとって負荷となる。これまで各使用分野に別々の電源、したがって上記負荷ないしは相応のプラズマ動作モードのために設計された電源が使用されなければならなかった。従来の発生器を用いて更なる電圧範囲をカバーしようとする場合には、発生器の構造的性能(Bauleistung)が最大出力電圧と最大出力電流の積に相応しなければならず、その際、小さな電圧を必要とする方法は、高い電圧を用いる方法より高い電流を必要とすることが多く、その結果、構造的性能が不必要に大きくなるという欠点が生じる。
【0013】
広い出力電圧範囲にわたって使用される従来の発生器のもう1つの欠点は、小さな出力電圧を用いた動作の場合の品質の相対的な低下である。例えばこのことによってリプルが高まった際に分解能(Auflosung)が減少する。もう1つの特に大きな欠点は、パルス波形がしばしば不安定でありかつ負荷挙動に依存して動作中に変化しかつその際に殊にパルスの立上がりしゅん度が変化するかまたはまったく平らであり、かつ不十分な険しさのパルスの立上がりが生じうることである。加工物の表面を加工するための、例えば殊に膜を析出するための、今日普及しているプラズマプロセスの場合に前述の種々のプラズマ動作モードが同じ真空処理装置における製造方法の範囲内で動作することができなければならない。これは、動作モードの制御による個々のプラズマソース装置および/または、特別に種々の動作モードのために設計されている複数の種々のソース装置、例えばかつ特にアーク蒸着装置、スパッタソースおよびバイアス−プラズマギャップ(Bias−Plasmastrecken)の組み合わせ、を求める。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、従来技術の上記欠点を取り除くことである。殊に課題は、上記種類の少なくとも2つの異なるプラズマ動作モードの給電のために高い負荷インピーダンス範囲をカバーする真空プラズマ発生器を実現させることである。その発生器はとりわけ高いパルス電力を全ての動作モードで可能にすべきであり、かつ、所望の膜性質を実現できるようにするために特定のパルス挙動をプラズマに与えるべきでありかつこれは高い経済性においてである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は本発明によれば請求項1記載の真空プラズマ発生器によって解決される。従属請求項によりさらなる有利な実施形態が定義される。
【0016】
上記課題は本発明によれば、真空チャンバ内での加工物の処理のためにプラズマ放電に給電するための発生器出力を有する真空プラズマ発生器であって、交流電源接続と、交流電源電圧を直流電圧に変換するための電源整流器装置と、平滑コンデンサと、中間回路電圧を形成する直流出力電圧を調整する手段を有するクロック動作させたDC−DC電圧コンバータとしての第1段とを含み、変圧器の一次巻線に給電する制御された遮断器が含まれ、該変圧器の二次巻線が整流器および下流の中間回路コンデンサと接続されておりかつ非接地の変圧器二次回路を形成し、その際、この非接地の変圧器二次回路が下流の第2段と接続されており、この第2段がパルス出力段を形成し、このパルス出力段が発生器出力に接続している、真空プラズマ発生器において、該DC−DC電圧コンバータが少なくとも2つの非接地の変圧器二次回路を有し、かつ該非接地の変圧器二次回路の選択的な並列または直列の接続のためのスイッチ制御装置を備えた切換スイッチ装置を含む真空プラズマ発生器が形成されていることによって解決される。
【0017】
上流接続されたDC−DC電圧コンバータを介して、第2段に供給される電圧は広い範囲にわたって調整されることができる。このDC−DCコンバータはクロック動作されており、かつスイッチングレギュレータとして、例えばブックブーストコンバータとして、形成されている。調整された出力電圧はその場合には入力電圧より小さくともよいし、大きくともよい。切換スイッチ装置を用いて非接地の変圧器二次回路を直列に接続することもできるし、並列に接続することもできる。これによりパルス出力段の給電のための動作範囲を本質的に拡大することが可能であり、かつ広い範囲で種々のプラズマインピーダンス範囲に適合させることが可能である。切換スイッチ装置が付属する第1段における変圧器二次回路の数を増やすことによって電圧範囲を所望の使用範囲に相応して拡大することができる。したがって、パルス波形が高い負荷の場合にもプリセットに応じて維持されかつ変形することもなく、それどころか制御されずにつぶれることもないように、プラズマギャップに給電するパルス出力段を制御することができかつ常に最適な動作範囲で動作させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に本発明を、概略図の付した実施例につき詳説する。
本発明の発生器は、例えば図1に概略的に示されている2段のトポロジを有する。交流電源接続6aに例えば3×400Veff50/60Hzの3相の電圧が適用され、この電圧は電源整流器装置6で直流電圧に変換されかつ平滑コンデンサ6bを用いて平滑化される。このようにして得られた直流電圧は、中間回路電圧Uを生成させるためのDC−DC電圧コンバータ7として形成された第1段に送られ、この中間回路電圧は中間回路コンデンサ12または複数の中間回路コンデンサ12’〜12’’’を用いて平滑化される。このDC−DC電圧コンバータ7は、できるだけ大きな直流電圧範囲を給電時に提供するという下流接続された第2段、パルス出力段8の役割を担っている。このパルス出力段8はこれによりこの場合にも、電極3間でのプラズマ電圧UPlをプラズマギャップ10に供給するための発生器1の出力端子9,9’に大きなパルス電圧範囲およびしたがって大きな負荷インピーダンス範囲を提供することができる。電極3は真空チャンバ2もしくは処理チャンバ2内に配置されており、そのことにより加工物5もしくは基板5をこの処理チャンバ内で処理することができる。この真空チャンバ2は常法で真空ポンプシステム4により排気され、かつプロセスガス、例えばアルゴンおよび殊にさらに所望の反応ガスが、プラズマ放電が5×l0−4mbar〜10mbarの圧力範囲で動作しうるように真空チャンバ内に導入される。電極3は電線11,11’で、発生器1による動作のため
にその出力9,9’に接続されている。プラズマギャップ10を非接地で動作することができるが、しかし所望される場合には、導線11,11’の一方を接地接続させる接地開閉器Sで象徴的に示されているように設備アース(Anlagemasse)に対して固定することもできる。
【0019】
発生器1の大きな動作範囲を達成できるようにするために、パルス幅制御されたDC−DC電圧コンバータ7のほかに切換スイッチ装置20a,b,cが備えられている。DC−DCコンバータ7はそのために、切換スイッチ装置20と、かかっている負荷に応じて選択的に並列または直列で接続することができる少なくとも2つの変圧器二次回路23を有する回路装置7bを含む。このことによって、変圧器二次回路23の数に応じて電圧を2倍もしくは4倍にすることが可能であり、かつ並列接続によって電圧範囲整合ないしは出力整合を行うことが可能である。この制御された動作基点整合によって発生器1はいつでも最適な負荷範囲内で動作することができ、これにより種々のソースモードおよびプラズマモード、例えばグロー放電、異常グロー放電、火花蒸着装置または「拡散放電」、の動作のために最適かつ経済的な出力整合が可能である。そのうえそのことによって、図2に例示されているようにパルス出力段8は出力9,9’にて所望のパルス波形を適正に提供することができる。望ましいフレキシブルなプロセスの実施のためにパルス出力段(8)を、プリセットされたパルス高さ、パルス幅およびパルス周波数を有するパルスを生成するための付加的に調整可能なパルス幅制御を伴った電圧コンバータとして形成することができる。これらの値は、制御されながら変調されてもよい。
【0020】
本発明による2段のトポロジによって、図2aに示されているように制御に応じて出力9,9’にて純粋な直流電圧も利用可能となりうる。しかし、このトポロジは単極性パルスとして図2bに示されかつバイポーラパルスとして図2cに示されたパルス動作に特に有利に使用することができる。この場合にはパルス幅およびパルス間隔を広い範囲で調整することができかつまた非対称でなければならない。図2cには例えば、著しく長い間隔を有する細長い正のパルスとより短い間隔を有する多くの非対称である負のパルスを伴った非対称のバイポーラ動作が示されている。電源が種々のインピーダンスのプラズマソースもしくは電極、例えば基板、の間の動作も可能にするので、パルス高さに付加的な非対称が生じる。このことはパルス幅の調整により影響を受けうる。
【0021】
構成された発生器は、例えば図3に示されているように3つの変圧器14a〜14cを有し、その際、1より大きな他のいずれの数も有利に考えられうる。複数の互いに絶縁された二次巻線を有する変圧器を使用することもできる。変圧器の二次側に、平滑インダクタンスを有する分離されたブリッジ整流器15’〜15’’’が中間回路コンデンサ12として下流接続されている。整流器と中間回路コンデンサ12の直列接続との間に切換スイッチ装置20が存在する。最大電圧範囲で整流器15はコンデンサ12に給電する。切換スイッチ装置20のスイッチは閉じており、該切換スイッチ装置のダイオードD〜Dは、直列に接続されたコンデンサ12における電位に基づいて逆方向に分極されているので通電されていない。最小電圧範囲では切換スイッチ装置20を介して全ての整流器15は並列に接続される。切換スイッチ装置のスイッチは開かれており、かつダイオードDを介して通電されている。
【0022】
図3には、発生器1の第1段として形成されたDC−DC電圧コンバータ7の有利な実施形態が示されている。このDC−DCコンバータ7は、インバータとして動作するコンバータ遮断器7aを有し、このコンバータ遮断器には複数の並列に接続された変圧器14a〜14cが接続されている。コンバータ遮断器7aは例えばブリッジ回路ないしはフルブリッジとして形成されておりかつ電子スイッチング素子として有利にIGBTトランジスタを含む。変圧器14a〜14cの二次巻線は整流器15,15’〜15’’’と接続されており、かつ相互に絶縁された非接地の変圧器二次回路23を形成する。例えば図3
に示されているDC−DC電圧コンバータ7はここでは3つの非接地の変圧器二次回路23を有する。所望の電圧範囲に応じて2つだけの非接地の回路を使用してもよいが、さらに多くの非接地の回路を使用してもよい。変圧器二次回路23は切換スイッチ装置20aと、非接地の変圧器二次回路23が選択的に並列または直列で接続することができるように接続されており、このことにより出力領域内で直列に接続された中間回路コンデンサ12’〜12’’’にて相応に幾倍にもなった中間回路電圧Uが生じる。切換スイッチ装置20aの有利な形態は、それぞれ変圧器二次回路23の一方の直流電圧端子がダイオードD1〜D4と接続されかつもう一方の直流電圧端子がスイッチング素子はアクティブなスイッチング素子21と接続されることである。アクティブなスイッチング素子は機械的なスイッチとして形成されていてもよいし、きわめて素早く接続されなければならない場合には、スイッチ制御装置22によって適当なプロセス状態における要求に相応して制御されながら接続される電子スイッチとして形成されていてもよい。したがって変換装置用変圧器14、整流器15および電圧切換スイッチ(Spannungsumschalter)20を備えた装置7bによって、中間回路電圧Uの調整範囲の本質的な拡大が可能になる。
【0023】
このような真空プラズマ発生器1の場合には容易に100kW迄かつさらにそれ以上の定格出力が実現されうる。例えば図5に示された複数のフルブリッジコンバータを備えた装置によってこの定格出力を例えば400kWに高めることができる。図5aには、作動電圧範囲を拡大するための切換スイッチ装置20cが付属する2つの非接地の変圧器二次回路23を形成する2つの独立したフルブリッジ回路を備えたDC−DCコンバータ7が示されている。中間回路コンデンサ12’,12’’の電流負荷を減少させるために変圧器14a,14bを備えたインバータを位相をずらしてクロック動作させることもでき、そのことにより、例えば図5bに相応の電流および電圧で示されているように、中間回路電圧のリプルも比較的少なく維持される。US1およびUS2はこの場合には時間tにわたって測定された変圧器14の二次巻線における電圧値を意味する。IL1およびIL2は両方の中間回路コンデンサ12’,12’’のための充電電流であり、この場合、Iは全充電電流を表す。
【0024】
もう1つの実施方法が図4に示されている。切換スイッチ装置20bはこの場合には整流器15’〜15’’’と中間回路コンデンサ12’〜12’’’の間で切り換えられているのではなく、コンデンサ12の配置を高い電圧範囲における直列接続から低い電圧範囲における並列接続へ切り換える。コンデンサ12の電流負荷にとってこの変形形態は有利である、というのもこの変形形態が両方の電圧範囲に対して不変のままであるからである。図3に示された解決と異なり、スイッチ21がコンデンサ12の回路内に挿入されており、したがって伴いインダクタンス(Induktiviat)を高めるという欠点が生じ、このことは殊にパルス化された出力電圧の場合にあまり有利ではない。
【0025】
上記原理を例えば整流器15との二次側の4つの接点の使用により拡大することができ、その結果、3つの電圧範囲を維持される。最大電圧範囲では全ての整流器がほぼ直列に接続されており、中電圧範囲では各2つの並列に接続された整流器が直列に接続されており、かつ最小電圧範囲では全ての整流器の並列接続が定められている。
【0026】
示したダイオードD1〜D4の代わりに電気機械式スイッチを使用してもよいし、スイッチング速度が大きく求められる場合には制御された半導体スイッチング素子を使用してもよい。
【0027】
半導体スイッチング素子の開閉時の遅延時間が原因となって、該半導体スイッチが閉じている最小パルス持続時間tpminが限定されている。つまり任意の短さのパルスを発生させることができるわけではない。このことは比較的高い出力範囲で使用されるIGB
T遮断器に殊に該当する。このことは、図6aによる略図と図6bによる電圧および電流の経過とにより示されているように、DC−DCコンバータの出力のコンデンサ12が1クロック周期の間に再充電されるのに用いられる最小電荷が値に従って下向きで限定されているという結果を生じさせる。小さな出力電圧の場合にはしたがってDC−DCコンバータはいわゆる反復使用で動作しなければならない。すなわち、図7に示されているようにコンバータはいくつかの周期ではアクティブではなく、したがって出力コンデンサ12はこの周期の間は再充電されない。Uは変圧器14aの一次側におけるバイポーラパルス電圧の経過を、Iは中間回路コンデンサ12の充電電流を、そしてUはコンデンサ12における中間回路電圧を示す。tPminは最小で可能なパルス幅を示す。
【0028】
本発明による真空プラズマ発生器1はこの場合にはパルス動作における種々のプラズマモード、例えばグロー放電、異常グロー放電、火花蒸着すなわちアーク蒸着または「拡散放電」、の給電を可能にする。この場合には異なる種類の負荷についての大きな電圧範囲およびインピーダンス範囲をカバーすることができる。有利な範囲は、0.05Ω〜1.0Ωのインピーダンス範囲を有する火花蒸着のモードそして0.2Ω〜3Ωのインピーダンス範囲での「拡散放電」のモードをカバーすることを可能にするパルス電圧0V〜800Vである。必要に応じて動作範囲をなおさらに、例えば、グロー放電およびスパッタ適用を含む10Ω〜100Ωのインピーダンス範囲に、拡大することも可能である。高電圧における異常グロー放電を含むさらに50Ωから500Ωまでのインピーダンス範囲を含むことも可能であるし、あるいはしかしまたプラズマ放電のためになお高い電圧値を伴う50Ωから5000Ωまでのインピーダンス範囲を拡大することも可能である。すべてのこれらインピーダンス範囲は、必要に応じてかつ切換スイッチ装置20を備えた発生器1の設計に応じて、互いに個別に含まれてもよいし、組み合わされて含まれてもよい。
【0029】
このような発生器が用いられることによって、発生器出力における切換スイッチ装置を用いて選択的に2つのプラズマソース、しかも異なるインピーダンスを有するプラズマソースを選択的に同一の装置内で動作することも今や可能である。この処理装置の効率をさらに高めるために、有利に適当な切換スイッチ装置を用いて異なるインピーダンスを有しかつそれどころかさらに多くのプラズマソースを動作させることができ、これらプラズマソースはその際有利に逐次的に、再度プリセット可能な、自動化可能でもある経過が同一の電源と接続される。個々のソースの動作基点調整または接続されたソースの種類に応じて発生器には種々の負荷インピーダンスが存在し、この負荷インピーダンスは本発生器で広い範囲で制御されうる。例えばバイポーラパルス長が種々でありかつこれに相応して電圧パルス高さがたった今の負荷インピーダンスに合わせて調整される場合には、この挙動を発生器の出力(Leitungsabgabe)の能力に依存して補償できるようにするために、パルス幅が変化させることができる場合が有利である。衝撃係数の変化はバイポーラ動作の場合に正のパルス分枝(Pulsast)でさえ、ならびに負のパルス分枝でもさまざまに生じうる。全体として今や本発明による発生器によって、広い範囲にわたるインピーダンスが制御された動作が、それもプリセット目標値に従って制御されて可能となる。
【0030】
このようなプラズマ処理の場合には、直流で動作するプラズマ放電にパルス電圧を重ねることがしばしば望ましい。これを可能にするために、装置の電気的な接続解除が必要である。これは発生器出力(9,9’)が、両方の電源を電気的に接続解除するダイオードを好ましくは有するフィルタに接続されている。
【0031】
発生器装置1によって、安定したパルス波形および殊に高い立上がりしゅん度を有するパルスを提供することが可能になる。上記プラズマ処理にとって、発生器が0.1V/nsより険しい、特に1.0V/nsより険しい、立上がりしゅん度を提供する場合が特に有利である。特に重要な動作モードは火花蒸着か、および/またはいわゆるバイアス動作
における加工物5でのプラズマギャップ10の動作かの選択的な使用である。特に絶縁膜の析出の場合には、不均一なパルス長を有するバイポーラパルスを使用することができる場合が有利である。イオンに比べて高い電子の移動度ゆえに、膜成長中にイオンによってもたらされる陽電荷を放電させるのに小さな正のパルス長ですでに十分である。放電に必要な時間はそのつどのプラズマの電子密度に依存する。ほとんどの場合に負のパルス長に比して10%もしくはそれより少ない正のパルス長で十分である。負のパルス持続時間の5%未満、特にそれどころか2%未満、の正のパルス長を使用することが有利である。パルス長が動作周波数の周期時間の半分より少ない長さである動作モードは、間隙のある(luckender)動作とも呼ばれる。
【0032】
このような発生器を用いて、プラズマへの最適に配量されたエネルギー入力を実現させるためにパルスパケットをそれも制御しながら生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による真空プラズマ発生器の構成図が示されている。
【図2】図1の発生器の出力電圧の形状の例が示されている
【図3】発生器の第1段のための切換スイッチ装置の略図(Prinzipschema)が示されている。
【図4】切換スイッチ装置の変形形態が示されている。
【図5a】2つの非接地で動作され、別々にクロック動作されるコンバータ段を備えた切換スイッチ装置のもう1つの変形形態が示されている。
【図5b】図5aによるコンバータ装置の位相をずらしたクロック動作の場合の電流と電圧が示されている。
【図6a】DC−DCコンバータ段が示されている。
【図6b】図6aによるコンバータにおける最小パルス持続時間の場合の電圧と電流の経過が示されている。
【図7】反復使用の場合の電圧と電流の経過が示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ(2)内での加工物(5)の処理のためにプラズマ放電(10)に給電するための発生器出力(9,9’)を有する真空プラズマ発生器であって、交流電源接続(6a)と、交流電源電圧を直流電圧に変換するための電源整流器装置(6)と、平滑コンデンサ(6b)と、中間回路電圧(Uz)を形成する直流出力電圧を調整する手段を有するクロック動作させたDC−DC電圧コンバータ(7)としての第1段とが備えられ、変圧器(14)の一次巻線に給電する制御された遮断器(7a)が含まれ、該変圧器の二次巻線が整流器(15)および下流の中間回路コンデンサ(12)と接続されておりかつ非接地の変圧器二次回路(23)を形成し、その際、この非接地の変圧器二次回路が下流の第2段と接続されており、この第2段がパルス出力段(8)を形成し、このパルス出力段が発生器出力(9,9’)に接続している、真空プラズマ発生器において、該DC−DC電圧コンバータ(7)が少なくとも2つの非接地の変圧器二次回路(23)を有し、かつ該非接地の変圧器二次回路(23)の選択的な並列または直列の接続のためのスイッチ制御装置(22)を備えた切換スイッチ装置(20)を含むことを特徴とする真空プラズマ発生器。
【請求項2】
中間回路電圧(Uz)を調整する手段として遮断器(7)がパルス幅制御されており、かつ、DC−DCコンバータの電圧調整範囲を拡大するために切換可能な変圧器二次回路(23)を用いて中間回路電圧が付加的に数ステップで必要に応じて2倍もしくは幾倍にもなることを特徴とする請求項1記載の発生器。
【請求項3】
切換スイッチ装置(20)がスイッチングダイオード(D)および制御されたスイッチ(21)を含むことを特徴とする請求項1または2記載の発生器。
【請求項4】
切換スイッチ装置(20)が制御された電子スイッチ(21)、特に機械式スイッチ(21)を含むことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の発生器。
【請求項5】
3つの変圧器二次回路(23)に切換スイッチ装置(20)が備えられていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の発生器。
【請求項6】
パルス出力段(8)が、プリセットされたパルス高さ、パルス幅およびパルス周波数を有するパルスを生成するための付加的に調整可能なパルス幅制御を伴った電圧コンバータとして生成されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の発生器。
【請求項7】
電圧コンバータ(7)および/またはパルス出力段(8)が間隙のあるパルスで動作することができることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の発生器。
【請求項8】
種々のプラズマモード、例えばグロー放電、異常グロー放電、火花蒸着または「拡散放電」、の給電のために前記装置が出力端子(9)にて複数のプラズマインピーダンス範囲をカバーすることを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の発生器。
【請求項9】
プラズマインピーダンス範囲が0.05Ω〜1.0Ωおよび0.2Ω〜3.0Ωであることを特徴とする請求項8記載の発生器。
【請求項10】
プラズマインピーダンス範囲がさらに10Ω〜100Ωであることを特徴とする請求項9記載の発生器。
【請求項11】
プラズマインピーダンス範囲がさらに50Ω〜500Ωであることを特徴とする請求項
8から10までのいずれか1項に記載の発生器。
【請求項12】
プラズマインピーダンス範囲がさらに50Ω〜5000Ωであることを特徴とする請求項8から11までのいずれか1項に記載の発生器。
【請求項13】
前記装置が出力端子(9)にて1ナノ秒あたり0.1Vより険しい、特に1.0V/nsより険しい、パルスの立上がりしゅん度を保持することを特徴とする請求項1から12までのいずれか1項に記載の発生器。
【請求項14】
前記発生器が出力端子(9,9’)にて単極性パルスおよび/またはバイポーラパルスを提供することを特徴とする請求項1から13までのいずれか1項に記載の発生器。
【請求項15】
バイポーラパルスが不均一なパルス長を有すること、殊にバイアス動作のための加工物(5)への接続の際に負のパルスが正のパルスより長いこと、特に正のパルスのパルス長が負のパルスの5%未満、特に2%未満、であること、を特徴とする請求項14記載の発生器。
【請求項16】
発生器出力(9,9’)が切換スイッチ装置に接続されており、この切換スイッチ装置が少なくとも2つ、特にさらに多くの、プラズマソース(10)を選択的に結合する、特に逐次結合する、ことを特徴とする請求項1から15までのいずれか1項に記載の発生器。
【請求項17】
前記発生器が切換スイッチ装置によって種々のプラズマインピーダンスを有する、特に前記請求項8から12に記載のインピーダンス範囲を有する、プラズマソース(10)を結合することを特徴とする請求項16記載の発生器。
【請求項18】
発生器出力(9,9’)が、接続され重ねられた直流給電からの発生器(1)の電気的な接続解除のための、好ましくはダイオードを含む、フィルタに接続されていることを特徴とする請求項1から17までのいずれか1項に記載の発生器。
【請求項19】
バイポーラパルス長が種々であり、それに相応して電圧パルス高さがその生じた負荷インピーダンスに合わせて調整され、かつパルス幅を変化させることができることを特徴とする請求項14記載の発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−533687(P2008−533687A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502214(P2008−502214)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000124
【国際公開番号】WO2006/099759
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(598051691)エリコン・トレーディング・アクチェンゲゼルシャフト,トリュープバッハ (44)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Trading AG,Truebbach
【Fターム(参考)】