説明

着色樹脂組成物、カラーフィルタ、液晶表示装置及び有機ELディスプレイ

【課題】高度に微粒化された顔料を少量の添加量で効率よく分散する事が可能、かつ所定の現像時間で現像可能で、色特性の非常に優れたカラーフィルタを形成しうる。
【解決手段】(A)顔料、(B)分散剤、(C)バインダ樹脂、(D)多官能モノマー、(E)光重合開始系を含有するカラーフィルタ用着色樹脂組成物であって、(B)分散剤の固形分におけるアミン価が80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であり、かつ、(B)分散剤が、側鎖にアミノ基を有するB−ブロックと、アミノ基を有さないA−ブロックからなるブロック共重合体である、カラーフィルタ用着色樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色樹脂組成物(以下、任意に「レジスト」と称することがある。)、カラーフィルタ、液晶表示装置及び有機ELディスプレイに関する。詳しくは、高度に微粒化された顔料を少量の添加量で効率よく分散することが可能で、色特性が非常に優れ、製版プロセスに適した現像性を有する着色樹脂組成物、この着色樹脂組成物を用いて画素を形成したカラーフィルタ、及びこのカラーフィルタを備えた液晶表示装置並びに有機ELディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置等に用いられるカラーフィルタを製造する方法としては、顔料分散法、染色法、電着法、印刷法が知られている。中でも、分光特性、耐久性、パターン形状及び精度等の観点から、平均的に優れた特性を有する顔料分散法が最も広範に採用されている。
近年、技術革新の流れは急速であり、カラーフィルタに対しては、より高透過率、且つ高コントラストが要求されてきた。高コントラストのカラーフィルタを形成するには、高度に微粒化し、かつ粒度分布を狭く制御した顔料を分散する必要があり、顔料粒径の制御の技術も急速に発展している。必然的に顔料の表面積は増大する方向であり、分散剤等の添加量は増加する傾向にある。
一方で、一定の色濃度を有し、かつ膜厚の薄い画素を形成するには、着色樹脂組成物に含まれる、顔料以外の成分を制限する必要もある。しかし、感光性、溶解性、硬化性などの画像形成性に寄与する成分が相対的に減少することにより、本来必要な画像形成性能が失われるという問題が生じやすい。即ち、例えば顔料の高濃度化による画素厚さの低減(低膜厚化)を試みると、組成物の硬化性が低下することにより画素の表面平滑性が低下し、液晶の配向不良を引き起こす。また、分散剤の増量により現像液に対する溶解性が低下することや、分散剤により現像液に対する溶解性が低下することで、所定の時間内に現像が出来ない場合や、現像可能であっても現像後の非画像部への着色樹脂組成物の未溶解物が残存し易くなる場合がある。更に基板上の非画素部に着色樹脂組成物の未溶解物が残存すると、得られるカラーフィルタは、透過率やコントラストの低下などを引き起こすほか、パターンエッジ部に残存した場合には、ITO膜の剥離や、液晶セル化工程でのシール性劣化を起こすなど、後工程にまで影響を及ぼすような事態となる。
また近年、電気的信頼性も非常に重視されている。液晶表示素子の電極間に充電された電荷が、種々の要因により時間にとともに減衰し、液晶層に所定の電荷が印加されなくなるという問題が起こることがある(電圧保持率の低下)。公知の分散剤にはこの要因となり、電気的信頼性が低いものが多い。
【0003】
こうした問題を解決するために、アクリル系ブロック共重合体の構造や酸価等を改良し、少量の添加で顔料分散性を改良する試みがなされている(特許文献1、2、3、4参照)。
【特許文献1】特開2004−287298号
【特許文献2】特開2004−287366号
【特許文献3】特開2006−265528号
【特許文献4】特開2006−321979号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、公知の分散剤では、近年の高度に微粒化された顔料を少量の添加量で効率よく分散するためには分散性が不十分であった。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたもので、その目的は下記の通りである。
(1)近年の高度に微粒化された顔料を、少量の添加量で効率よく分散でき、その結果、高透過率、高コントラスト、低膜厚のカラーフィルタを製造し得る着色樹脂組成物を提供すること。
(2)現像液に対する溶解性が良好で、現像工程において所定の時間内で現像が可能で、また、基板上の非画素部に着色樹脂組成物の未溶解物が残存することがなく、基板との密着性にも優れ、硬化性等の画像形成能を低下させることがなく、高透過率、高コントラスト、低膜厚のカラーフィルタを製造し得る着色樹脂組成物を提供すること。
(3)高透過率、高コントラスト、かつ低膜厚の画素を有するカラーフィルタを提供し、また、該カラーフィルタを用いて形成された高品質の液晶表示装置並びに有機ELディスプレイを提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、比較的アミン価の高い、特定の構造を有するブロック共重合体である分散剤を用いることで、近年の高度に微粒化された顔料に対する分散剤の添加量の少ない安定な着色樹脂組成物を得ることができ、硬化性等の画像形成能を低下させることなく、所定の現像時間で現像可能で、基板上の非画素部への未溶解物が残存することなく、基板との密着性に優れ、高濃度の色画素を均一に形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、複数の関連する発明から成り、各発明の要旨は次の通りである。
即ち、本発明は、(A)顔料、(B)分散剤、(C)バインダ樹脂、(D)多官能モノマー、(E)光重合開始系を含有するカラーフィルタ用着色樹脂組成物であって、(B)分散剤の固形分におけるアミン価が80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であり、かつ、(B)分散剤が側鎖にアミノ基を有するB−ブロックと、アミノ基を有さないA−ブロックからなるブロック共重合体である、カラーフィルタ用着色樹脂組成物である。
また、本発明は、(B)分散剤のA−ブロックが、A−ブロック中で下記一般式(I)で表される部分構造を5乃至40モル%含有する、上記のカラーフィルタ用着色樹脂組成物である。
【0007】
【化2】


(上記一般式(I)において、nは1〜5のいずれかの整数を示す。Rは、水素原子またはメチル基を表す。)
また、本発明は、さらに(F−1)窒素原子を含有するグラフト共重合体、(F−2)その他のアクリル系ブロック共重合体、(F−3)ウレタン樹脂分散剤から選ばれた少なくとも一つを含有してなる、上記のカラーフィルタ用着色樹脂組成物である。
また、本発明は、(A)顔料が平均一次粒径10乃至30nmである有機顔料を含む、上記のカラーフィルタ用着色樹脂組成物である。
また、本発明は、上記の着色樹脂組成物を用いて形成された画素を有する、カラーフィルタである。
また、本発明は、上記のカラーフィルタを用いて形成したことを特徴とする液晶表示装置である。
また、本発明は、上記のカラーフィルタを用いて形成したことを特徴とする、有機ELディスプレイである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、(1)近年の高度に微粒化された顔料を、少量の分散剤で効率よく分散でき、その結果、高透過率、高コントラスト、低膜厚のカラーフィルタを製造し得る着色樹脂組成物を提供できる。また、(2)現像液に対する溶解性が良好で、現像工程において所定の時間内で現像が可能で、また、基板上の非画素部に着色樹脂組成物の未溶解物が残存することがなく、基板との密着性にも優れ、硬化性等の画像形成能を低下させることがなく、高透過率、高コントラスト、低膜厚のカラーフィルタを製造し得る着色樹脂組成物を提供できる。さらに、高透過率、高コントラスト、かつ低膜厚の画素を有するカラーフィルタを提供し、また該カラーフィルタを用いて形成された高品質の液晶表示装置並びに有機ELディスプレイを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、これらは本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
尚、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」等は、「アクリル及び/又はメタクリル」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」等を意味するものとし、例えば「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味するものとする。また「全固形分」とは、後記する溶剤成分以外の本発明の硬化性組成物の全成分を意味するものとする。
【0010】
[1−1](A)顔料
本発明の着色樹脂組成物は、(A)顔料を必須成分とし、例えばカラーフィルタの画素等を形成する場合には、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料、黄色顔料、紫色顔料、オレンジ顔料、ブラウン顔料等各種の色の顔料を使用することができる。又、その化学構造としては、例えばアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンツイミダゾロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、インダンスレン系、ペリレン系等の有機顔料が挙げられる。この他に種々の無機顔料等も利用可能である。以下、使用できる顔料の具体例をピグメントナンバーで示す。以下に挙げる「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
【0011】
赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、57、57:1、57:2、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、1 01、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276などを挙げることができる。これらの中で、好ましくはC.I.ピグメントレッド48:1、122、168、177、202、206、207、209、224、242、または254であり、更に好ましくはC.I.ピグメントレッド177、209、224、または254である。
【0012】
青色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79などを挙げることができる。これらの中で、好ましくはC.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、または15:6であり、更に好ましくはC.I.ピグメントブルー15:6である。
【0013】
緑色顔料としては、例えばC.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55または58を挙げることができる。これらの中で、好ましくはC.I.ピグメントグリーン7、36または58である。
【0014】
黄色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75,81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208などを挙げることができる。これらの中で、好ましくはC.I.ピグメントイエロー83、117、129、138、139、150、154、155、180、または185であり、更に好ましくはC.I.ピグメントイエロー83、138、139、150、または180である。
【0015】
紫色顔料としては、例えばC.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49、50などを挙げることができる。これらの中で、好ましくはC.I.ピグメントバイオレット19、または23であり、更に好ましくはC.I.ピグメントバイオレット23である。
【0016】
オレンジ顔料としては、例えばC.I.ピグメントオレンジ1、2、5、13、16、17、19、20、21、22、23、24、34、36、38、39、43、46、48、49、61、62、64、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、77、78、79などを挙げることができる。これらの中で、好ましくはC.I.ピグメントオレンジ38、または71である。
【0017】
又、無機顔料として、例えば、硫酸バリウム、硫酸鉛、酸化チタン、黄色鉛、ベンガラ、酸化クロム等が挙げられる。
上記の各種の顔料は、複数種を併用することもできる。例えば、色度の調整のために、顔料として、緑色顔料と黄色顔料とを併用したり、青色顔料と紫色顔料とを併用したりすることができる。
尚、これらの顔料は、平均粒径が通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm以下となるよう分散処理して使用することが好ましい。
【0018】
また、これら顔料の平均一次粒径は、通常100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは40nm以下、特に好ましくは10nm以上30nm以下である。本発明は、高度に微粒化された顔料を含む組成物の場合に特に有効であるため、平均一次粒径10nm以上30nm以下である顔料を含む場合が特に好ましい。
【0019】
本発明の着色樹脂組成物を使用してカラーフィルタの樹脂ブラックマトリックスを形成する場合には、黒色顔料を使用することができる。黒色顔料は単独で使用してもよく、また、上述の赤色、緑色、青色等の顔料を混合して使用してもよい。単独使用可能な黒色顔料としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、チタンブラック等が挙げられる。これらの中では、遮光率、画像特性の観点からカーボンブラック、チタンブラックが好ましい。
カーボンブラックの例としては、例えば、三菱化学社製の商品として、MA7、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA220、MA230、MA600、#5、#10、#20、#25、#30、#32、#33、#40、#44、#45、#47、#50、#52、#55、#650、#750、#850、#950、#960、#970、#980、#990、#1000、#2200、#2300、#2350、#2400、#2600、#3050、#3150、#3250、#3600、#3750、#3950、#4000、#4010、OIL7B、OIL9B、OIL11B、OIL30B、OIL31B等が、デグサ社製の商品として、Printex3、Printex3OP、Printex30、Printex30OP、Printex40、Printex45、Printex55、Printex60、Printex75、Printex80、Printex85、Printex90、Printex A、Print ex L、Printex G、Printex P、Printex U、Printex V、PrintexG、SpecialBlack550、SpecialBlack 350、SpecialBlack250、SpecialBlack100、SpecialBlack6、SpecialBlack5、SpecialBlack4、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW18、Color Black FW200、Color Black S160、Color Black S170等が、キャボット社製の商品として、Monarch120、Monarch280、Monarch460、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400、Monarch4630、REGAL99、REGAL99R、REGAL415、REGAL415R、REGAL250、REGAL250R、REGAL330、REGAL400R、REGAL55R0、REGAL660R、BLACK PEARLS480、PEARLS130、VULCAN XC72R、ELFTEX−8等が、コロンビヤンカーボン社製の商品として、RAVEN11、RAVEN14、RAVEN15、RAVEN16、RAVEN22RAVEN30、RAVEN35、RAVEN40、RAVEN410、RAVEN420、RAVEN450、RAVEN500、RAVEN780、RAVEN850、RAVEN890H、RAVEN1000、RAVEN1020、RAVEN1040、RAVEN1060U、RAVEN1080U、RAVEN1170、RAVEN1190U、RAVEN1250、RAVEN1500、RAVEN2000、RAVEN2500U、RAVEN3500、RAVEN5000、RAVEN5250、RAVEN5750、RAVEN7000等が、それぞれ挙げられる。
尚、高い光学濃度及び高い表面抵抗率を有する樹脂ブラックマトリックスの製造には、樹脂被覆されたカーボンブラックを用いるのが特に好ましい。なお、樹脂被覆されたカーボンブラックは、例えば特開平9−26571号公報、同9−71733号公報、同9−95625号公報、同9−238863号公報、又は同11−60989号公報に記載の方法で、公知のカーボンブラックを処理することにより、得ることができる。
【0020】
又、チタンブラックの作製方法としては、二酸化チタンと金属チタンの混合体を還元雰囲気下で加熱し還元させる方法(特開昭49−5432号公報)、四塩化チタンの高温加水分解で得られた超微細二酸化チタンを、水素を含む還元雰囲気中で還元する方法(特開昭57−205322号公報)、二酸化チタン又は水酸化チタンをアンモニア存在下で高温還元する方法(特開昭60−65069号公報、特開昭61−201610号公報)、二酸化チタン又は水酸化チタンにバナジウム化合物を付着させ、アンモニア存在下で高温還元する方法(特開昭61−201610号公報)、等があるがこれらに限定されるものではない。チタンブラックの市販品の例としては、三菱マテリアル社製のチタンブラック10S、12S、13R、13M、13M−C等が挙げられる。
【0021】
他の黒色顔料の例としては、赤色、緑色、青色の三色の顔料を混合して黒色顔料として用いることができる。黒色顔料を調製するために混合使用可能な色材としては、ビクトリアピュアブルー(42595)、オーラミンO(41000)、カチロンブリリアントフラビン(ベーシック13)、ローダミン6GCP(45160)、ローダミンB(45170)、サフラニンOK70:100(50240)、エリオグラウシンX(42080)、No.120/リオノールイエロー(21090)、リオノールイエローGRO(21090)、シムラーファーストイエロー8GF(21105)、ベンジジンイエロー4T−564D(21095)、シムラーファーストレッド4015(12355)、リオノールレッド7B4401(15850)、ファーストゲンブルーTGR−L(74160)、リオノールブルーSM(26150)、リオノールブルーES(ピグメントブルー15:6)、リオノーゲンレッドGD(ピグメントレッド168)、リオノールグリーン2YS(ピグメントグリーン36)等が挙げられる。なお、上記の括弧内の数字は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
又、更に、他の混合使用可能な顔料について、C.I.ナンバーにて示すと、例えば、C.I.黄色顔料20、24、86、93、109、110、117、125、137、138、147、148、153、154、166、C.I.オレンジ顔料36、43、51、55、59、61、C.I.赤色顔料9、97、122、123、149、168、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、C.I.バイオレット顔料19、23、29、30、37、40、50、C.I.青色顔料15、15:1、15:4、22、60、64、C.I.緑色顔料7、C.I.ブラウン顔料23、25、26等を挙げることができる。
これら黒色顔料の粒径についても、黒色以外の顔料につき前述したものと同様の範囲が好ましい。なお、顔料の平均一次粒径は、次の方法で求めることができる。まず顔料をクロロホルム中に超音波分散し、コロジオン膜貼り付けメッシュ上に滴下して、乾燥させ、透過電子顕微鏡(TEM)観察により、顔料の一次粒子像を得る。有機顔料及びチタンブラック顔料の場合は、個々の顔料粒子の粒径を、同じ面積となる円の直径に換算した面積円相当径として、複数個(通常200〜300個程度)の顔料粒子についてそれぞれ粒径を求める。
得られた一次粒径の値を用い、下式の計算式の通り個数平均値を計算し平均粒径を求める。

個々の顔料粒子の粒径:X1,X2,X3,X4,・・・・,Xi,・・・・Xm
平均粒径 = ΣXi/m

一方、黒色顔料としてカーボンブラックを使用する(以下「カーボンブラック顔料」と称することがある)場合、平均一次粒径は0.01〜0.08μmが好ましく、現像性の点から更に好ましくは0.02〜0.05μmである。DBP吸収量は40〜100cc/100gが好ましく、分散性・現像性の点から更に好ましくは50〜80cc/100gである。窒素吸着比表面積は50〜120m/gが好ましく、分散安定性の点から更に好ましくは60〜95m/gである。
カーボンブラック顔料の場合は、粒子形状が有機顔料などと違い、1次粒子が串団子の様に融着したストラクチャーと呼ばれる状態で存在し、また後処理により粒子表面に微細な細孔を形成させる場合がある。従ってカーボンブラック顔料の粒子形状を表すため、一般的には、前記有機顔料と同じ方法で求められる1次粒子の平均粒径の他に、DBP吸収量(JIS K6221)と窒素吸着比表面積(JIS K6217)を測定しストラクチャーや細孔量の指標とする。
【0022】
本発明の着色樹脂組成物において、これら(A)顔料の含有割合は、全固形分中、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、又、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下である。
(A)顔料の割合が少な過ぎると、色濃度に対する膜厚が大きくなり過ぎて、液晶セル化の際のギャップ制御等に悪影響を及ぼすおそれがある。一方で、逆に(A)顔料の割合が多過ぎると、十分な画像形成性が得られなくなることがある。
なお、後述するカラーフィルタの各色の画素毎に、これを形成する着色樹脂組成物中の色材量を最適な範囲に調製することも好ましい。例えば、一般にカラーフィルタに設けられる赤色、緑色および青色画素を形成する場合、好ましくは全固形分中5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%の(A)顔料を含むものが挙げられる。
また、樹脂ブラックマトリックスの場合、黒色着色樹脂組成物としては、好ましくは全固形分中20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%の(A)顔料を含むものが挙げられる。
【0023】
[1−2](B)分散剤
本発明は、固形分におけるアミン価が80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であり、かつ側鎖にアミノ基を有するB−ブロックと、アミノ基を有さないA−ブロックからなるブロック共重合体である(B)分散剤を使用する点を特徴とする。
中でも、アクリル系ブロック共重合体が好ましく、以下、アクリル系ブロック共重合体である場合を例に(B)分散剤について説明する。
【0024】
B−ブロックは、アミノ基を有する。アミノ基は、好ましくは−NR4142(但し、R41及びR42は、各々独立に、置換基を有していてもよい環状又は鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。)で表わされ、これを含む部分構造として好ましいものは、例えば下記式で表される。
【0025】
【化3】

【0026】
(但し、R41及びR42は、上記のR41及びR42と同義であり、R43は炭素数1以上のアルキレン基であり、R44は水素原子又はメチル基を表す。)
中でも、R41及びR42はメチル基が好ましく、R43はメチレン基、またはエチレン基が好ましく、R44はメチル基であるのが好ましい。このような化合物として下記式で表される部分構造が挙げられる。
【0027】
【化4】

【0028】
上記の如きアミノ基を含有する部分構造は、1つのB−ブロック中に2種以上含有されていてもよい。その場合、2種以上のアミノ基含有部分構造は、該B−ブロック中においてランダム共重合又はブロック共重合の何れの態様で含有されていてもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、アミノ基を含有しない部分構造が、B−ブロック中に一部含まれていてもよく、そのような部分構造の例としては、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の部分構造等が挙げられる。かかるアミノ基を含まない部分構造の、B−ブロック中の含有量は、好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0〜20重量%であるが、かかるアミノ基非含有部分構造はB−ブロック中に含まれないことが最も好ましい。
【0029】
一方、(B)分散剤のブロック共重合体を構成するA−ブロックは、上述のB−ブロックを構成するモノマーと共重合しうるものであり、かつアミノ基を有さないモノマーからなるものであれば特に制限は無い。
例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチルアクリル酸グリシジル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;(メタ)アクリル酸クロライドなどの(メタ)アクリル酸塩系モノマー;酢酸ビニル系モノマー;アリルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル系モノマーなどのコモノマーを共重合させたポリマー構造が挙げられる。
中でも、A−ブロックとしては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを共重合成分として含む(すなわち、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート由来の部分構造を含む)ものが好ましく、特に下記一般式(I)で表される部分構造を有するA−ブロックが好ましい。
【0030】
【化5】

【0031】
(上記一般式(I)において、nは1〜5の整数を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
上記一般式(I)で表される部分構造は、A−ブロック中に5〜40モル%含まれていることが、特に好ましい。
ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート由来の部分構造、特に前記一般式(I)にて表される部分構造を有することにより、適度な顔料凝集防止効果が認められ、分散系の安定化に寄与するため、好ましい。本発明におけるアクリル系ブロック共重合体は、このようなA−ブロックとB−ブロックとからなる、A−Bブロック又はA−B−Aブロック共重合型高分子化合物であるが、このようなブロック共重合体は、例えば以下に示すリビング重合法にて調製される。
リビング重合法にはアニオンリビング重合法、カチオンリビング重合法、ラジカルリビング重合法がある。アニオンリビング重合法は、重合活性種がアニオンであり、例えば下記スキームで示される。
【0032】
【化6】

【0033】
ラジカルリビング重合法は重合活性種がラジカルであり、例えば下記スキームで示される。
【0034】
【化7】

【0035】
【化8】

【0036】
このようなアクリル系ブロック共重合体を合成するに際しては、特開昭60−89452号公報、特開平9−62002号公報、P. Lutz, P. Masson et al, Polym. Bull. 12, 79 (1984)、B. C. Anderson, G. D. Andrews et al, Macromolecules, 14, 1601 (1981)、K. Hatada, K. Ute, et al, Polym. J. 17, 977 (1985)、K. Hatada, K. Ute, et al, Polym. J.18, 1037 (1986)、右手浩一、畑田耕一、高分子加工、36、366(1987)、東村敏延、沢本光男、高分子論文集、46、189(1989)、M. Kuroki, T. Aida, J. Am. Chem. Sic, 109, 4737 (1987)、相田卓三、井上祥平、有機合成化学、43,300(1985)、D. Y. Sogoh, W. R. Hertler et al, Macromolecules, 20, 1473 (1987)、K. Matyaszewski et al, Chem. Rev.2001,101,2921-2990などに記載の公知の方法を採用することができる。
【0037】
本発明に係るA−Bブロック共重合体およびA−B−Aブロック共重合体の、1g中のアミン価は80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であり、好ましくは90mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上である。
なお、本発明における(B)分散剤のアミン価は、分散剤試料中の溶剤を除いた固形分1gあたりの塩基量と当量のKOHの重量で表し、次の方法により測定する。
100mLのビーカーに分散剤の0.5〜1.5gを精秤し、50mLの酢酸で溶解する。pH電極を備えた自動滴定装置を使って、この溶液を0.1mol/LのHCLO酢酸溶液にて中和滴定する。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点とし次式によりアミン価を求める。
アミン価 [mgKOH/g]=(561×V)/(W×S)
(但し、W:分散剤試料秤取量[g]、V:滴定終点での滴定量[mL]、S:分散剤試料の固形分濃度[wt%]である。)
【0038】
また、(B)分散剤の酸価は、該酸価の元となる酸性基の有無及び種類にもよるが、一般に低い方が好ましく、通常10mgKOH/g以下であり、その分子量は、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で通常1000以上、100,000以下の範囲である。ブロック共重合体の分子量が小さすぎると分散安定性が低下し、大きすぎると現像性や解像性が低下する傾向にある。
本発明においては、上述のものと同様の構造を有する市販のアクリル系ブロック共重合体を適用することもできる。
【0039】
本発明の着色樹脂組成物において、(B)分散剤の含有割合は、(A)顔料に対して、通常95重量%以下、好ましくは65重量%以下、更に好ましくは50重量%以下であり、また、通常5重量%以上、好ましくは7重量%以上、特に好ましくは10重量%以上である。分散剤の含有割合が少なすぎると、(A)顔料への吸着が不足し、凝集を防ぐことができず、高粘度化ないしゲル化してしまうことがあるため、分散安定性が悪化し、再凝集や増粘等の問題が発生する可能性がある。逆に多すぎると、相対的に(A)顔料の割合が減るため、着色力が低くなり、色濃度に対して膜厚が厚くなりすぎて、カラーフィルタに用いた場合、液晶セル化工程でのセルギャップ制御不良が出ることがある。
【0040】
[1−3](C)バインダ樹脂
本発明の着色樹脂組成物は(C)バインダ樹脂を必須成分とする。(C)バインダ樹脂としては、例えば、特開平7−207211号、特開平8−259876号、特開平10−300922号、特開平11−140144号、特開平11−174224号、特開2000−56118号、特開2003−233179号などの各号公報等に記載された公知の高分子化合物を使用することができるが、(C)バインダ樹脂として特に好ましいものにつき、以下に説明する。
(C−1):「エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性モノマーとの共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは、更に該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ可溶性樹脂」
本発明における(C)バインダ樹脂として特に好ましいものの1つとして、「エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性モノマーとの共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは、更に該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ可溶性樹脂」(以下(C−1)樹脂と称することがある)が挙げられる。より具体的には、「エポキシ基含有(メタ)アクリレート5〜90モル%と、他のラジカル重合性モノマー10〜95モル%との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の10〜100モル%に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは、更に該付加反応により生じた水酸基の10〜100モル%に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ可溶性樹脂」が挙げられる。
(C−1)樹脂を構成するエポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が例示できる。中でもグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。これらのエポキシ基含有(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
上記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと共重合させる他のラジカル重合性モノマーとしては、下記一般式(2)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0042】
【化9】

【0043】
上記一般式(2)において、R1〜Rは各々独立して、水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基を示すが、R7及びR8は互いに連結して環を形成していてもよい。
一般式(2)において、R7とR8が連結して形成される環は、脂肪族環であるのが好ましく、飽和又は不飽和の何れでもよく、又、炭素数が5〜6であるのが好ましい。
中でも、一般式(2)で表される構造としては、下記式(2a)、(2b)、又は(2c)で表される構造が好ましい。
バインダ樹脂にこれらの構造を導入することによって、本発明の着色樹脂組成物をカラーフィルタや液晶表示素子に使用する場合に、該着色樹脂組成物の耐熱性を向上させたり、該着色樹脂組成物を用いて形成された画素の強度を増すことが可能である。
尚、一般式(2)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
【化10】

【0045】
前記一般式(2)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートとしては、当該構造を有する限り公知の各種のものが使用できるが、特に下記一般式(3)で表されるものが好ましい。
【0046】
【化11】

【0047】
上記一般式(3)において、R9は水素原子又はメチル基を示し、R10は前記一般式(2)で表される構造を示す。
前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性モノマーとの共重合体において、前記一般式(2) で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位は、「他のラジカル重合性モノマー」に由来する繰返し単位中、5〜90モル%含有するものが好ましく、10〜70モル%含有するものが更に好ましく、15〜50モル%含有するものが特に好ましい。
【0048】
尚、前記一般式(2)で表される構造を有するモノ(メタ)アクリレート以外の、「他のラジカル重合性モノマー」としては、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、スチレン、スチレンのα−、o−、m−、p−アルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステル誘導体等のビニル芳香族類;ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−iso−プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸プロパギル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラセニル、(メタ)アクリル酸アントラニノニル、(メタ)アクリル酸ピペロニル、(メタ)アクリル酸サリチル、(メタ)アクリル酸フリル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸ピラニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸クレジル、(メタ)アクリル酸−1,1,1−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ−iso−プロピル、(メタ)アクリル酸トリフェニルメチル、(メタ)アクリル酸クミル、(メタ)アクリル酸3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジプロピルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−iso−プロピルアミド、(メタ)アクリル酸アントラセニルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド;(メタ)アクリル酸アニリド、(メタ)アクリロイルニトリル、アクロレイン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、酢酸ビニル等のビニル化合物類;シトラコン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等の不飽和ジカルボン酸ジエステル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド等のモノマレイミド類;N−(メタ)アクリロイルフタルイミド等が挙げられる。
【0049】
これら「他のラジカル重合性モノマー」の中で、着色樹脂組成物に優れた耐熱性及び強度を付与させるためには、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、及びモノマレイミドから選択された少なくとも一種を使用することが有効である。特に「他のラジカル重合性モノマー」に由来する繰返し単位中、これらスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、及びモノマレイミドから選択された少なくとも一種に由来する繰返し単位の含有割合が、1〜70モル%であるものが好ましく、3〜50モル%であるものが更に好ましい。
尚、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、前記他のラジカル重合性モノマーとの共重合反応には、公知の溶液重合法が適用される。使用する溶剤はラジカル重合に不活性なものであれば特に限定されるものではなく、通常用いられている有機溶剤を使用することができる。
その溶剤の具体例としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類等の酢酸エステル類;エチレングリコールジアルキルエーテル類;メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;トリエチレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールジアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、オクタン、デカン等の炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等の乳酸エステル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの溶剤の使用量は得られる共重合体100重量部に対し、通常30〜1000重量部、好ましくは50〜800重量部である。溶剤の使用量がこの範囲外では、共重合体の分子量の制御が困難となる。
【0050】
又、共重合反応に使用されるラジカル重合開始剤は、ラジカル重合を開始できるものであれば特に限定されるものではなく、通常用いられている有機過酸化物触媒やアゾ化合物触媒を使用することができる。その有機過酸化物触媒としては、公知のケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートに分類されるものが挙げられる。その具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシル−3、3−イソプロピルヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジクミルヒドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。又、アゾ化合物触媒としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスカルボンアミド等が挙げられる。これらの中から、重合温度に応じて、適当な半減期のラジカル重合開始剤が1種又は2種以上使用される。ラジカル重合開始剤の使用量は、共重合反応に使用されるモノマーの合計100重量部に対して、0.5〜20重量部、好ましくは1〜10重量部である。
共重合反応は、共重合反応に使用されるモノマー及びラジカル重合開始剤を溶剤に溶解し、攪拌しながら昇温して行ってもよいし、ラジカル重合開始剤を添加したモノマーを、昇温、攪拌した溶剤中に滴下して行ってもよい。又、溶剤中にラジカル重合開始剤を添加し昇温した中にモノマーを滴下してもよい。反応条件は、目標とする分子量に応じて自由に変えることができる。
【0051】
本発明において、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートと前記他のラジカル重合性モノマーとの共重合体としては、エポキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する繰返し単位5〜90モル%と、他のラジカル重合性モノマーに由来する繰返し単位10〜95モル%と、からなるものが好ましく、前者20〜80モル%と、後者80〜20モル%とからなるものが更に好ましく、前者30〜70モル%と、後者70〜30モル%とからなるものが特に好ましい。
エポキシ基含有(メタ)アクリレートが少なすぎると、後述する重合性成分及びアルカリ可溶性成分の付加量が不十分となる場合があり、一方、エポキシ基含有(メタ)アクリレートが多すぎて、他のラジカル重合性モノマーが少なすぎると、耐熱性や強度が不十分となる可能性がある。
【0052】
続いて、エポキシ樹脂含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性モノマーとの共重合体のエポキシ基部分に、不飽和一塩基酸(重合性成分)と、多塩基酸無水物(アルカリ可溶性成分)とを反応させる。
エポキシ基に付加させる不飽和一塩基酸としては、公知のものを使用することができ、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有する不飽和カルボン酸が挙げられる。
具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、o−、m−、p−ビニル安息香酸、α−位がハロアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基などで置換された(メタ)アクリル酸等のモノカルボン酸等が挙げられる。中でも好ましくは(メタ)アクリル酸である。これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
このような成分を付加させることにより、本発明で用いるバインダ樹脂に重合性を付与することができる。
【0053】
これらの不飽和一塩基酸は、通常、前記共重合体が有するエポキシ基の10〜100モル%に付加させるが、好ましくは30〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%に付加させる。不飽和一塩基酸の付加割合が少なすぎると、着色樹脂組成物の経時安定性等に関して、残存エポキシ基による悪影響が懸念される。尚、共重合体のエポキシ基に不飽和一塩基酸を付加させる方法としては、公知の方法を採用することができる。
【0054】
更に、共重合体のエポキシ基に不飽和一塩基酸を付加させたときに生じる水酸基に付加させる多塩基酸無水物としては、公知のものが使用できる。
例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水クロレンド酸等の二塩基酸無水物;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の三塩基以上の酸の無水物が挙げられる。中でも、テトラヒドロ無水フタル酸、及び/又は無水コハク酸が好ましい。これらの多塩基酸無水物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
このような成分を付加させることにより、本発明で用いるバインダ樹脂にアルカリ可溶性を付与することができる。
【0055】
これらの多塩基酸無水物は、通常、前記共重合体が有するエポキシ基に、不飽和一塩基酸を付加させることにより生じる水酸基の10〜100モル%に付加させるが、好ましくは20〜90モル%、より好ましくは30〜80モル%に付加させる。この付加割合が多すぎると、現像時の残膜率が低下する場合があり、少なすぎると溶解性が不十分となる可能性がある。尚、当該水酸基に多塩基酸無水物を付加させる方法としては、公知の方法を採用することができる。
【0056】
更に、光感度を向上させるために、前述の多塩基酸無水物を付加させた後、生成したカルボキシル基の一部にグリシジル(メタ)アクリレートや重合性不飽和基を有するグリシジルエーテル化合物を付加させてもよい。
また、現像性を向上させるために、生成したカルボキシル基の一部に、重合性不飽和基を有さないグリシジルエーテル化合物を付加させてもよい。
又、この両方を付加させてもよい。
重合性不飽和基を有さないグリシジルエーテル化合物の具体例としては、フェニル基やアルキル基を有するグリシジルエーテル化合物等が挙げられる。市販品として、例えば、ナガセ化成工業社製の商品名「デナコールEX−111」、「デナコールEX−121」、「デナコールEX−141」、「デナコールEX−145」、「デナコールEX−146」、「デナコールEX−171」、「デナコールEX−192」等がある。
尚、このような樹脂の構造に関しては、例えば特開平8−297366号公報や特開2001−89533号公報に記載されている。
【0057】
上述のバインダ樹脂の、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、3000〜100000が好ましく、5000〜50000が特に好ましい。分子量が3000未満であると、耐熱性や膜強度に劣る可能性があり、100000を超えると現像液に対する溶解性が不足する傾向がある。又、分子量分布の目安として、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比は、2.0〜5.0が好ましい。
【0058】
(C−2):カルボキシル基含有直鎖状アルカリ可溶性樹脂
カルボキシル基含有直鎖状アルカリ可溶性樹脂(以下「(C−2)樹脂」と称することがある)としては、カルボキシル基を有していれば特に限定されず、通常、カルボキシル基を含有する重合性モノマーを重合して得られる。
カルボキシル基含有重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルアジピン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルフタル酸等のビニル系モノマー;アクリル酸にε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類を付加させたものであるモノマー;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにコハク酸、マレイン酸、フタル酸、或いはそれらの無水物等の酸或いは無水物を付加させたモノマー等が挙げられる。これらは複数種使用してもよい。
中でも好ましいのは、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸であり、更に好ましいのは、(メタ)アクリル酸である。
【0059】
又、(C−2)樹脂は、上記のカルボキシル基含有重合性モノマーに、カルボキシル基を有さない他の重合性モノマーを共重合させてもよい。
他の重合性モノマーとしては、特に限定されないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン及びその誘導体等のビニル芳香族類;N−ビニルピロリドン等のビニル化合物類;N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド等のN−置換マレイミド類;ポリメチル(メタ)アクリレートマクロモノマー、ポリスチレンマクロモノマー、ポリ2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートマクロモノマー、ポリエチレングリコールマクロモノマー、ポリプロピレングリコールマクロモノマー、ポリカプロラクトンマクロモノマー等のマクロモノマー類等が挙げられる。これらは複数種併用してもよい。
特に好ましいのは、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミドである。
【0060】
(C−2)樹脂が、さらに水酸基を有していてもよい。水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらを上述の各種モノマーと共重合させることにより、カルボキシル基および水酸基を有する樹脂を得ることができる。
【0061】
(C−2)樹脂として、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸と、メチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルマレイミド等の水酸基を含まない重合性モノマーと、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマーとの共重合体;(メタ)アクリル酸と、メチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体;(メタ)アクリル酸とスチレンとの共重合体;(メタ)アクリル酸とスチレンとα−メチルスチレンとの共重合体;(メタ)アクリル酸とシクロヘキシルマレイミドとの共重合体等が挙げられる。
顔料分散性に優れる点からは、特にベンジル(メタ)アクリレートを含む共重合体樹脂が好ましい。
【0062】
本発明における(C−2)カルボキシル基含有直鎖状アルカリ可溶性樹脂の酸価は、通常30〜500mgKOH/g、好ましくは40〜350mgKOH/g、さらに好ましくは50〜300mgKOH/gである。
また、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常2000〜80000、好ましくは3000〜50000、さらに好ましくは4000〜30000である。重量平均分子量が小さすぎると、着色樹脂組成物の安定性に劣る傾向があり、大きすぎると、後述するカラーフィルタや液晶表示装置に使用する場合に、現像液に対する溶解性が悪化する傾向がある。
【0063】
(C−3):(C−2)樹脂のカルボキシル基部分に、エポキシ基含有不飽和化合物を付加させた樹脂
前記(C−2)カルボキシル基含有樹脂の、カルボキシル基部分にエポキシ基含有不飽和化合物を付加させた樹脂(以下「(C−3)樹脂」と称することがある)も特に好ましい。
エポキシ基含有不飽和化合物としては、分子内にエチレン性不飽和基及びエポキシ基を有するものであれば特に限定されるものではない。
例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジル−α−エチルアクリレート、クロトニルグリシジルエーテル、(イソ)クロトン酸グリシジルエーテル、N−(3,5−ジメチル−4−グリシジル)ベンジルアクリルアミド、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等の非環式エポキシ基含有不飽和化合物も挙げることができるが、耐熱性や、前述の(A)顔料の分散性の観点から、脂環式エポキシ基含有不飽和化合物が好ましい。
【0064】
ここで、脂環式エポキシ基含有不飽和化合物としては、その脂環式エポキシ基として、例えば、2,3−エポキシシクロペンチル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、7,8−エポキシ〔トリシクロ[5.2.1.0]デシ−2−イル〕基等が挙げられる。又、エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基に由来するものであるのが好ましく、好適な脂環式エポキシ基含有不飽和化合物としては、下記一般式(4a)〜(4m)で表される化合物が挙げられる。
【0065】
【化12】

【0066】
式(4a)〜(4m)中、R11は水素原子又はメチル基を、R12はアルキレン基を、R13は2価の炭化水素基をそれぞれ示し、nは1〜10の整数である。
一般式(4a)〜(4m)における、R12のアルキレン基は、炭素数1〜10であるものが好ましい。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が例示できるが、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基である。又、R13の炭化水素基としては、炭素数が1〜10であるものが好ましく、アルキレン基、フェニレン基等が挙げられる。
【0067】
これらの脂環式エポキシ基含有不飽和化合物は、1種類を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、一般式(4c)で表される化合物が好ましく、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
前記(C−2)カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基部分に、前記エポキシ基含有不飽和化合物を付加させるには、公知の手法を用いることができる。例えば、カルボキシル基含有樹脂とエポキシ基含有不飽和化合物とを、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン等の3級アミン;ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩;ピリジン、トリフェニルホスフィン等の触媒の存在下、有機溶剤中、反応温度50〜150℃で数時間〜数十時間反応させることにより、樹脂のカルボキシル基にエポキシ基含有不飽和化合物を導入することができる。
【0068】
エポキシ基含有不飽和化合物を導入したカルボキシル基含有樹脂の酸価は、通常10〜200KOHmg/g、好ましくは20〜150KOHmg/g、より好ましくは30〜150KOHmg/gである。
又、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常2000〜100000、好ましくは4000〜50000、更に好ましくは5000〜30000である。
【0069】
(C−4):(メタ)アクリル系樹脂
(C−4)(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルをモノマー成分とし、これらを重合してなるポリマーをいう。好ましい(C−4)(メタ)アクリル系樹脂(以下「(C−4)樹脂」と称することがある)としては、例えば、(C−4−1):下記一般式(1)及び/又は(5)で示される化合物を必須とするモノマー成分を重合してなるポリマー、を挙げることができる。
【0070】
【化13】

【0071】
上記一般式(1)において、R1aおよびR2aは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。
【0072】
【化14】

【0073】
上記一般式(5)において、R1bは水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Lは2価の連結基又は直接結合を表し、Xは下記式(6)で示される基又は置換されていてもよいアダマンチル基を示す。
【0074】
【化15】

【0075】
上記一般式(6)において、R2b、R3b、及びR4bはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、又は有機基を表し、L及びLはそれぞれ独立に2価の連結基を表すか、或いは前記一般式(5)におけるLと結合して環を形成する。
【0076】
(C−4−1):一般式(1)及び/又は(5)で示される化合物を必須とするモノマー成分を重合してなるポリマー(以下「(C−4−1)樹脂」と称することがある)
まず、一般式(1)の化合物について説明する。
一般式(1)で表されるエーテルダイマーにおいて、R1aおよびR2aで表される置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基としては、特に制限はないが、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、t−アミル、ステアリル、ラウリル、2−エチルヘキシル等の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル等のアリール基;シクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、ジシクロペンタジエニル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル等の脂環式基;1−メトキシエチル、1−エトキシエチル等のアルコキシで置換されたアルキル基;ベンジル等のアリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。これらの中でも特に、メチル、エチル、シクロヘキシル、ベンジル等のような酸や熱で脱離しにくい1級または2級炭素の置換基が耐熱性の点で好ましい。なお、R1aおよびR2aは、同種の置換基であってもよいし、異なる置換基であってもよい。
【0077】
前記エーテルダイマーの具体例としては、例えば、ジメチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−プロピル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソプロピル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−ブチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソブチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−アミル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ステアリル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ラウリル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−エチルヘキシル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−メトキシエチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−エトキシエチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジフェニル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチルシクロヘキシル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ジシクロペンタジエニル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(トリシクロデカニル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソボルニル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジアダマンチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−メチル−2−アダマンチル)−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート等が挙げられる。これらの中でも特に、ジメチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートが好ましい。これらエーテルダイマーは、1種のみ単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0078】
前記(C−4−1)樹脂を得る際の、モノマー成分中における前記エーテルダイマーの割合は、特に制限されないが、全モノマー成分中、通常2〜60重量%、好ましくは5〜55重量%、さらに好ましくは5〜50重量%である。エーテルダイマーの量が多すぎると、重合の際、低分子量のものを得ることが困難になったり、あるいはゲル化し易くなったりするおそれがあり、一方、少なすぎると、透明性や耐熱性などの塗膜性能が不充分となるおそれがある。
【0079】
続いて、一般式(5)の化合物について説明する。
一般式(5)中、R1bは、好ましくは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基を表し、さらに好ましくは水素原子、メチル基である。
また、一般式(6)中、R2b、R3b、R4bの有機基とは、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシル基、カルボキシル基、又はアシルオキシ基であり、好ましくは、例えば炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18のシクロアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数3〜18のシクロアルケニル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜15のアルキルチオ基、炭素数1〜15のアシル基、炭素数1のカルボキシル基、又は炭素数1〜15のアシルオキシ基などが挙げられ、更に好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数3〜15のシクロアルキル基が挙げられる。
2b、R3b、R4bの中で好ましい置換基としては、水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基である。
1及びL2はそれぞれ独立に、2価の連結基を表すか、或いは前記一般式(5)におけるL3と結合して環を形成するが、少なくともL1又はL2のどちらかは炭素数1以上の連結基であるのが好ましい。また、L3は2価の連結基又は直接結合であれば特に限定を受けない。L1、L2、及びL3はそれぞれ独立に、直接結合、炭素数1〜15のアルキレン、−O−、−S−、−C(=O)−、炭素数1〜15のアルケニレン基、フェニレン基、あるいはそれらの組み合わせが好ましい。
1、L2及びL3の好ましい組合せとしては、例えばL3は直接結合、または炭素数1〜5のアルキレン基であるか、或いは一般式(6)におけるR3bあるいはR4bと結合して環を形成し、L1及びL2はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基である場合が挙げられる。
また、一般式(6)の好ましいものとしては、下記一般式(7)で示される構造を挙げることができる。
【0080】
【化16】

【0081】
上記一般式(7)において、、R2b、R3b、R4b、L1及びL2は、いずれも前記一般式(6)におけると同義であり、R5b及びR6bはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、又は有機基を表わす。
一般式(7)中、R5b及びR6bの有機基とは、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシル基、カルボキシル基、又はアシルオキシ基であり、好ましくは、例えば炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18のシクロアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数3〜18のシクロアルケニル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜15のアルキルチオ基、炭素数1〜15のアシル基、炭素数1のカルボキシル基、又は炭素数1〜15のアシルオキシ基などが挙げられ、更に好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数3〜15のシクロアルキル基が挙げられる。
5b及びR6bとして好ましい置換基としては、それぞれ独立に水素原子、水酸基、または炭素数1〜10のアルキル基である。
また、R1bのアルキル基、R2b、R3b、R4b、の各有機基、L1、L2、L3の2価の連結基、Xのアダマンチル基は、それぞれ独立して置換基を有していてよく、具体的には以下の置換基を挙げることができる。
【0082】
ハロゲン原子;水酸基;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、t−アミル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、t−オクチル基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の炭素数3〜18のシクロアルキル基;ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニル基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数3〜18のシクロアルケニル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、アミルオキシ基、t−アミルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、t−オクチルオキシ基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、アミルチオ基、t−アミルチオ基、n−ヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、t−オクチルチオ基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキルチオ基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等の炭素数6〜18のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜18のアラルキル基;ビニルオキシ基、プロペニルオキシ基、ヘキセニルオキシ基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニルオキシ基;ビニルチオ基、プロペニルチオ基、ヘキセニルチオ基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニルチオ基;−COR17で表されるアシル基;カルボキシル基;−OCOR18で表されるアシルオキシ基;−NR1920で表されるアミノ基;−NHCOR21で表されるアシルアミノ基;−NHCOOR22で表されるカーバメート基;−CONR2324で表されるカルバモイル基;−COOR25で表されるカルボン酸エステル基;−SO3NR2627で表されるスルファモイル基;−SO328で表されるスルホン酸エステル基;2−チエニル基、2−ピリジル基、フリル基、オキサゾリル基、ベンゾキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、モルホリノ基、ピロリジニル基、テトラヒドロチオフェンジオキサイド基等の飽和もしくは不飽和の複素環基;トリメチルシリル基などのトリアルキルシリル基等。
なお、R17〜R28は、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、または置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。
また、上記置換基の位置関係は特に限定されず、複数の置換基を有する場合、同種でも異なっていてもよい。
一般式(5)で表される化合物の具体例としては例えば下記化合物が挙げられる。
【0083】
【化17】

【0084】
【化18】

【0085】
本発明に係る(C−4−1)樹脂を構成するモノマー成分中、一般式(5)で表される化合物の割合は、特に制限されないが、通常は全モノマー成分中0.5〜60重量%、好ましくは1〜55重量%、さらに好ましくは5〜50重量%である。多すぎると、分散剤として使用する場合、分散体の分散安定性が低下する可能性があり、一方、少なすぎると、地汚れ適性が低下する場合がある。
【0086】
本発明における(C−4)樹脂は、(C−4−1)樹脂を含め、いずれも酸基を有することが好ましい。酸基を有することにより、得られる着色樹脂組成物が、酸基とエポキシ基が反応してエステル結合を形成する架橋反応(以下、酸−エポキシ硬化と略する)により硬化が可能な着色樹脂組成物、あるいは未硬化部をアルカリ現像液で顕像可能な組成物、とすることができる。前記酸基としては、特に制限されないが、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、カルボン酸無水物基等が挙げられる。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0087】
(C−4)樹脂に酸基を導入するには、例えば、酸基を有するモノマーおよび/または「重合後に酸基を付与しうるモノマー」(以下「酸基を導入するためのモノマー」と称することもある。)を、モノマー成分として使用すればよい。なお「重合後に酸基を付与しうるモノマー」をモノマー成分として使用する場合には、重合後に、後述するような酸基を付与するための処理が必要となる。
【0088】
前記酸基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸やイタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマー;N−ヒドロキシフェニルマレイミド等のフェノール性水酸基を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸無水物基を有するモノマー等が挙げられるが、これらの中でも特に、(メタ)アクリル酸が好ましい。
前記重合後に酸基を付与しうるモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマー;2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有するモノマー等が挙げられる。
これら酸基を導入するためのモノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0089】
(C−4)樹脂を得る際のモノマー成分が、前記酸基を導入するためのモノマーをも含む場合、その含有割合は特に制限されないが、通常は全モノマー成分中5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%である。
また(C−4)樹脂は、ラジカル重合性二重結合を有するものであってもよい。
【0090】
前記(C−4)樹脂にラジカル重合性二重結合を導入するには、例えば「重合後にラジカル重合性二重結合を付与しうるモノマー」(以下「ラジカル重合性二重結合を導入するためのモノマー」と称することもある。)を、モノマー成分として重合した後に、後述するようなラジカル重合性二重結合を付与するための処理を行えばよい。
重合後にラジカル重合性二重結合を付与しうるモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸無水物基を有するモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−、またはp−)ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有するモノマー等が挙げられる。これらラジカル重合性二重結合を導入するためのモノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0091】
(C−4)樹脂を得る際のモノマー成分が、前記ラジカル重合性二重結合を導入するためのモノマーをも含む場合、その含有割合は特に制限されないが、通常は全モノマー成分中5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%である。
本発明の(C−4)樹脂が、(C−4−1)樹脂のうち、前記一般式(1)で表される化合物を必須のモノマー成分とするポリマーである場合、エポキシ基を有することが好ましい。
エポキシ基を導入するには、例えば、エポキシ基を有するモノマー(以下「エポキシ基を導入するためのモノマー」と称することもある。)を、モノマー成分として重合すればよい。
【0092】
前記エポキシ基を有するモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−、またはp−)ビニルベンジルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらエポキシ基を導入するためのモノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
(C−4)樹脂を得る際のモノマー成分が、前記エポキシ基を導入するためのモノマーをも含む場合、その含有割合は特に制限されないが、通常は全モノマー成分中5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%であるのがよい。
【0093】
(C−4)樹脂を得る際のモノマー成分は、上記必須のモノマー成分のほかに、必要に応じて、他の共重合可能なモノマーを含んでいてもよい。
他の共重合可能なモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸メチル2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類;ブタジエン、イソプレン等のブタジエンまたは置換ブタジエン化合物;エチレン、プロピレン、塩化ビニル、アクリロニトリル等のエチレンまたは置換エチレン化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル類等が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレンが、透明性が良好で、耐熱性を損ないにくい点で好ましい。これら共重合可能な他のモノマーは、1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
また、特に(C−4)樹脂の一部または全部を、後述するように分散剤として用いる場合は、(メタ)アクリル酸ベンジルを用いることが好ましく、その含有量は、通常全モノマー成分中1〜70重量%、好ましくは5〜60重量%であるのがよい。
【0094】
前記(C−4)樹脂を得る際のモノマー成分が、前記共重合可能な他のモノマーをも含む場合、その含有割合は特に制限されないが、95重量%以下が好ましく、85重量%以下がより好ましい。
【0095】
次に、(C−4)樹脂の製造方法(重合方法)について説明する。
前記モノマー成分の重合方法に特に制限はなく、従来公知の各種方法を採用することができるが、特に、溶液重合法によることが好ましい。なお、重合温度や重合濃度(重合濃度=[モノマー成分の全重量/(モノマー成分の全重量+溶媒重量)]×100とする)は、使用するモノマー成分の種類や比率、目標とするポリマーの分子量によって異なる。重合温度に関しては、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは重合温度60〜130℃である。また重合濃度に関しては、好ましくは重合濃度5〜50%、さらに好ましくは10〜40%である。
【0096】
また、重合時に溶媒を用いる場合には、通常のラジカル重合反応で使用される溶媒を用いればよい。具体的には、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これら溶媒は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0097】
前記モノマー成分を重合する際には、必要に応じて、重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤に特に制限は無いが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1′−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物が挙げられる。これら重合開始剤は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
なお、開始剤の使用量は、用いるモノマーの組み合わせや、反応条件、目標とするポリマーの分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、ゲル化することなく重量平均分子量が数千〜数万のポリマーを得ることができる点で、通常は全モノマー成分に対して0.1〜15重量%、より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0098】
また分子量調整のために、連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸メチル等のメルカプタン系連鎖移動剤、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられるが、好ましくは、連鎖移動効果が高く、残存モノマーを低減でき、入手も容易な、n−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸がよい。連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、用いるモノマーの組み合わせや、反応条件、目標とするポリマーの分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、ゲル化することなく重量平均分子量が数千〜数万のポリマーを得ることができる点で、通常は全モノマー成分に対して0.1〜15重量%、より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0099】
なお、一般式(5)の化合物を必須のモノマー成分として使用する場合、前記重合反応においては、エーテルダイマーの環化反応が同時に進行するものと考えられるが、このときのエーテルダイマーの環化率は必ずしも100モル%である必要はない。
前記(C−4)樹脂を得る際に、モノマー成分として、前述した酸基を付与しうるモノマーを用いることにより酸基を導入する場合、重合後に酸基を付与するための処理を行う必要がある。該処理は、用いるモノマーの種類によって異なるが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような水酸基を有するモノマーを用いた場合には、コハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物等の酸無水物を付加させればよい。グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマーを用いた場合には、N−メチルアミノ安息香酸、N−メチルアミノフェノール等のアミノ基と酸基を有する化合物を付加させるか、もしくは、まず(メタ)アクリル酸のような酸を付加させ、結果生じた水酸基に、コハク酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物等の酸無水物を付加させればよい。2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有するモノマーを用いた場合には、例えば、2−ヒドロキシ酪酸等の水酸基と酸基を有する化合物を付加させればよい。
【0100】
前記(C−4)樹脂を得る際に、モノマー成分として、前述したラジカル重合性二重結合を付与しうるモノマーを用いることによりラジカル重合性二重結合を導入する場合、重合後にラジカル重合性二重結合を付与するための処理を行う必要がある。
該処理は、用いるモノマーの種類によって異なるが、例えば、(メタ)アクリル酸やイタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマーを用いた場合には、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−、またはp−)ビニルベンジルグリシジルエーテル等の、エポキシ基とラジカル重合性二重結合とを有する化合物を付加させればよい。無水マレイン酸や無水イタコン酸等のカルボン酸無水物基を有するモノマーを用いた場合には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の、水酸基とラジカル重合性二重結合とを有する化合物を付加させればよい。グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o−(またはm−、またはp−)ビニルベンジルグリシジルエーテル等の、エポキシ基を有するモノマーを用いた場合には、(メタ)アクリル酸等の酸基とラジカル重合性二重結合とを有する化合物を付加させればよい。
【0101】
本発明の(C−4)樹脂の重量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくはGPCにて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000〜200,000、より好ましくは2,000〜50,000、特に好ましくは2,000〜30,000である。重量平均分子量が200,000を超える場合、高粘度となりすぎ塗膜を形成しにくくなる場合があり、一方2,000未満であると、十分な耐熱性を発現しにくくなる傾向がある。
前記(C−4)樹脂が酸基を有する場合、好ましい酸価は、固形分において30〜500mgKOH/g、より好ましくは50〜200mgKOH/gである。酸価が30mgKOH/g未満の場合、アルカリ現像に適用することが難しくなる場合があり、500mgKOH/gを超える場合、高粘度となりすぎ合成が困難になる傾向がある。
【0102】
尚、前記(C−4)樹脂成分のうち、前記一般式(1)で表される化合物を必須のモノマー成分とするポリマーとしては、例えば、特開2004−300203号公報及び特開2004−300204号公報に記載の化合物を挙げることが出来る。
【0103】
(C−5):カルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂
カルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂(以下、「(C−5)樹脂」と称することがある)は、エポキシ樹脂にα,β−不飽和モノカルボン酸又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多塩基酸無水物を反応させることにより合成される。かかる反応生成物は化学構造上、実質的にエポキシ基を有さず、かつ「アクリレート」に限定されるものではないが、エポキシ樹脂が原料であり、かつ「アクリレート」が代表例であるので、慣用に従いこのように命名したものである。
【0104】
原料となるエポキシ樹脂として、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、油化シェルエポキシ社製の「エピコート828」、「エピコート1001」、「エピコート1002」、「エピコート1004」等)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のアルコール性水酸基とエピクロルヒドリンの反応により得られるエポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「NER−1302」(エポキシ当量323,軟化点76℃))、ビスフェノールF型樹脂(例えば、油化シェルエポキシ社製の「エピコート807」、「EP−4001」、「EP−4002」、「EP−4004等」)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂のアルコール性水酸基とエピクロルヒドリンの反応により得られるエポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「NER−7406」(エポキシ当量350,軟化点66℃))、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニルグリシジルエーテル(例えば、油化シェルエポキシ社製の「YX−4000」)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「EPPN−201」、油化シェルエポキシ社製の「EP−152」、「EP−154」、ダウケミカル社製の「DEN−438」)、(o,m,p−)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「EOCN−102S」、「EOCN−1020」、「EOCN−104S」)、トリグリシジルイソシアヌレート(例えば、日産化学社製の「TEPIC」)、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「EPPN−501」、「EPN−502」、「EPPN−503」)、フルオレンエポキシ樹脂(例えば、新日鐵化学社製のカルドエポキシ樹脂「ESF−300」)、脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製の「セロキサイド2021P」、「セロキサイドEHPE」)、ジシクロペンタジエンとフェノールの反応によるフェノール樹脂をグリシジル化したジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(例えば、日本化薬社製の「XD−1000」、大日本インキ社製の「EXA−7200」、日本化薬社製の「NC−3000」、「NC−7300」)、および下記構造式で示されるエポキシ樹脂(特開平4−355450号公報参照)、等を好適に用いることができる。
【化19】


これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0105】
エポキシ樹脂の他の例としては共重合型エポキシ樹脂が挙げられる。共重合型エポキシ樹脂としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルメチルシクロヘキセンオキサイド、ビニルシクロヘキセンオキサイドなど(以下「共重合型エポキシ樹脂の第1成分」と称す。)とこれら以外の1官能エチレン性不飽和基含有化合物(以下、「共重合型エポキシ樹脂の第2成分」と称す。)、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、スチレン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、α−メチルスチレン、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、及び下記一般式(8)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上、とを反応させて得られた共重合体が挙げられる。
【0106】
【化20】


上記一般式(8)において、R61は水素原子又はエチル基を示し、R62は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、rは2〜10の整数を示す。
【0107】
一般式(8)で表される化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート;メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、等のアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0108】
上記共重合型エポキシ樹脂の分子量は約1000〜200000が好ましい。また、上記共重合型エポキシ樹脂の第1成分の使用量は、上記共重合型エポキシ樹脂の第2成分に対して好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、特に好ましくは50重量%以下である。
【0109】
このような共重合型エポキシ樹脂としては、具体的には日本油脂社製の「CP−15」、「CP−30」、「CP−50」、「CP−20SA」、「CP−510SA」、「CP−50S」、「CP−50M」、「CP−20MA」等が例示される。
【0110】
原料エポキシ樹脂の分子量は、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量として、通常200〜200,000、好ましくは300〜100,000の範囲である。重量平均分子量が上記範囲未満であると被膜形成性に問題を生じる場合が多く、逆に、上記範囲を越えた樹脂ではα,β−不飽和モノカルボン酸の付加反応時にゲル化が起こりやすく製造が困難となる可能性がある。
【0111】
α,β−不飽和モノカルボン酸としては、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられ、好ましくは、アクリル酸及びメタクリル酸であり、特にアクリル酸が反応性に富むため好ましい。
エステル部分にカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルとしては、アクリル酸−2−サクシノイルオキシエチル、アクリル酸−2−マレイノイルオキシエチル、アクリル酸−2−フタロイルオキシエチル、アクリル酸−2−ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル、メタクリル酸−2−サクシノイルオキシエチル、メタクリル酸−2−マレイノイルオキシエチル、メタクリル酸−2−フタロイルオキシエチル、メタクリル酸−2−ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル、クロトン酸−2−サクシノイルオキシエチル等が挙げられ、好ましくは、アクリル酸−2−マレイノイルオキシエチル及びアクリル酸−2−フタロイルオキシエチルであり、特にアクリル酸−2−マレイノイルオキシエチルが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0112】
α,β−不飽和モノカルボン酸又はそのエステルとエポキシ樹脂との付加反応は、公知の手法を用いることができ、例えば、エステル化触媒存在下、50〜150℃の温度で反応させることにより実施することができる。エステル化触媒としてはトリエチルアミン、トリメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン等の3級アミン;テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩等を用いることができる。
【0113】
α,β−不飽和モノカルボン酸又はそのエステルの使用量は、原料エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対し0.5〜1.2当量の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.1当量の範囲である。α,β−不飽和モノカルボン酸又はそのエステルの使用量が少ないと不飽和基の導入量が不足し、引き続く多塩基酸無水物との反応も不十分となる。また、多量のエポキシ基が残存することも有利ではない。一方、該使用量が多いとα,β−不飽和モノカルボン酸又はそのエステルが未反応物として残存する。いずれの場合も硬化特性が悪化する傾向が認められる。
【0114】
α,β−不飽和カルボン酸又はそのエステルが付加したエポキシ樹脂に、更に付加させる多塩基酸無水物としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、好ましくは、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、特に好ましい化合物は、無水テトラヒドロフタル酸及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0115】
多塩基酸無水物の付加反応に関しても公知の手法を用いることができ、α,β−不飽和カルボン酸又はそのエステルの付加反応と同様な条件下で継続反応させることにより実施することができる。
多塩基酸無水物の付加量は、生成するエポキシアクリレート樹脂の酸価が10〜150mgKOH/gの範囲となるような量が好ましく、更に20〜140mgKOH/gの範囲が特に好ましい。樹脂の酸価が小さすぎるとアルカリ現像性に乏しくなり、また、樹脂の酸価が大きすぎると硬化性能に劣る傾向が認められる。
【0116】
その他、カルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂としては、例えば特開平6−49174号公報記載のナフタレン含有樹脂;特開2003−89716号公報、特開2003−165830号公報、特開2005−325331号公報、特開2001−354735号公報記載のフルオレン含有樹脂;特開2005−126674号公報、特開2005−55814号公報、特開2004−295084号公報等に記載の樹脂を挙げることができる。
また、市販のカルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂を用いることもでき、市販品としては例えばダイセル社製の「ACA−200M」等を挙げることが出来る。
【0117】
バインダ樹脂としては、また、例えば特開2005−154708号公報などに記載のアクリル系のバインダも用いることができる。
【0118】
本発明における(C)バインダ樹脂としては、前述の各種バインダ樹脂のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前述の各種バインダ樹脂は、特に前述の(B)分散剤および後述の(F)さらなる分散剤等との併用で、基板上の非画素部に未溶解物が残存することなく、基板との密着性に優れた、高濃度の色画素を形成し得るといった効果を奏し、好ましい。
具体的には、(C)バインダ樹脂の一部を前述の(B)分散剤や、後述する(F)さらなる分散剤とともに、後述する分散処理工程に使用する。この時、(C)バインダ樹脂は(A)顔料に対して5〜200重量%程度使用することが好ましく、10〜100重量%程度使用することがより好ましい。
このように、分散処理工程に使用する(C)バインダ樹脂としては、(C)バインダ樹脂の項で記載した各種樹脂を使用することができるが、特に(C−4)アクリル系樹脂が好ましく、その中でも前記一般式(1)で表される化合物を必須とするモノマー成分を重合してなるポリマーが最も好ましい。
本発明の着色樹脂組成物において、(C)バインダ樹脂の含有割合は、全固形分中、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上であり、又、通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下である。バインダ樹脂の含有量がこの範囲よりも少ないと、膜が脆くなり、基板への密着性が低下することがある。逆に、この範囲よりも多いと、露光部への現像液の浸透性が高くなり、画素の表面平滑性や感度が悪化する場合がある。
【0119】
[1−4](D)多官能モノマー
本発明の着色樹脂組成物は、(D)多官能モノマーを必須成分とする。(D)多官能モノマーは、重合可能な低分子化合物であれば特に制限はないが、エチレン性二重結合を少なくとも1つ有する付加重合可能な化合物(以下、「エチレン性化合物」と言う場合がある。)が好ましい。
エチレン性化合物は、本発明の着色樹脂組成物が活性光線の照射を受けた場合、後述する光重合開始系の作用により付加重合し、硬化するようなエチレン性二重結合を有する化合物である。尚、本発明におけるモノマーは、いわゆる高分子物質に相対する概念を意味し、狭義のモノマー以外に二量体、三量体、オリゴマーも含有する。
【0120】
エチレン性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸、モノヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、不飽和カルボン酸と多価カルボン酸及び前述の脂肪族ポリヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステル、ポリイソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有するエチレン性化合物等が挙げられる。
【0121】
脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。又、これらアクリレートの(メタ)アクリル酸部分を、イタコン酸部分に代えたイタコン酸エステル、クロトン酸部分に代えたクロトン酸エステル、或いは、マレイン酸部分に代えたマレイン酸エステル等が挙げられる。
又、芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、ハイドロキノンジ(メタ)アクリレート、レゾルシンジ(メタ)アクリレート、ピロガロールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。又、不飽和カルボン酸と多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステルは、必ずしも単一物ではなく、混合物であってもよい。代表例としては、(メタ)アクリル酸、フタル酸、及びエチレングリコールの縮合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、及びジエチレングリコールの縮合物;(メタ)アクリル酸、テレフタル酸、及びペンタエリスリトールの縮合物;(メタ)アクリル酸、アジピン酸、ブタンジオール、及びグリセリンの縮合物等が挙げられる。
【0122】
ポリイソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有するエチレン性化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートと、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ〔1,1,1−トリ(メタ)アクリロイルオキシメチル〕プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物との反応物が挙げられる。
【0123】
その他、本発明に用いられるエチレン性化合物の例としては、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;フタル酸ジアリル等のアリルエステル類;ジビニルフタレート等のビニル基含有化合物等が挙げられる。
又、エチレン性化合物は酸価を有するモノマーであってもよい。酸価を有するモノマーとしては、例えば、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであり、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシル基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた多官能モノマーが好ましく、特に好ましくは、このエステルにおいて、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール及び/又はジペンタエリスリトールであるものである。これらのモノマーは1種を単独で用いてもよいが、製造上、単一の化合物を得ることは難しいことから、2種以上を混合して用いてもよい。又、必要に応じてモノマーとして酸基を有しない多官能モノマーと酸基を有する多官能モノマーを併用してもよい。
【0124】
酸基を有する多官能モノマーの好ましい酸価としては、0.1〜40mgKOH/gであり、特に好ましくは5〜30mgKOH/gである。多官能モノマーの酸価が低すぎると現像溶解特性が低下する傾向があり、高すぎると製造や取扱いが困難になる場合があり、また光重合性能が落ちたり、画素の表面平滑性等の硬化性が劣る場合がある。従って、異なる酸基の多官能モノマーを2種以上併用する場合、或いは酸基を有しない多官能モノマーを併用する場合、全体の多官能モノマーとしての酸基が上記範囲に入るように調整することが好ましい。
本発明において、より好ましい酸基を有する多官能モノマーは、東亞合成社製の「TO1382」として市販されているジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートのコハク酸エステルを主成分とする混合物である。この多官能モノマーと他の多官能モノマーを組み合わせて使用することもできる。
【0125】
本発明の着色樹脂組成物において、これらのモノマーの含有割合は、全固形分中、通常0重量%以上、好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上であり、又、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下、更に好ましくは50重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。又、後述する色材に対する比率は、通常0重量%以上、好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であり、又、通常200重量%以下、好ましくは100重量%以下、更に好ましくは80重量%以下である。
【0126】
[1−5](E)光重合開始剤系
本発明の着色樹脂組成物は、(E)光重合開始剤系を必須成分とする。(E)光重合開始剤系は、通常、光重合開始剤、及び必要に応じて添加される重合加速剤との混合物として用いられ、光を直接吸収し、或いは光増感されて分解反応又は水素引き抜き反応を起こし、重合活性ラジカルを発生する機能を有する成分である。
【0127】
(E)光重合開始剤系を構成する光重合開始剤としては、例えば、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号各公報等に記載のチタノセン誘導体類;特開平10−300922号、特開平11−174224号、特開2000−56118号各公報等に記載されるヘキサアリールビイミダゾール誘導体類;特開平10−39503号公報等に記載のハロメチル化オキサジアゾール誘導体類、ハロメチル−s−トリアジン誘導体類、N−フェニルグリシン等のN−アリール−α−アミノ酸類、N−アリール−α−アミノ酸塩類、N−アリール−α−アミノ酸エステル類等のラジカル活性剤、α- アミノアルキルフェノン誘導体類;特開2000−80068号公報等に記載のオキシムエステル系誘導体類等が挙げられる。
【0128】
具体的には、例えば、チタノセン誘導体類としては、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライド、ジシクロペンタジエニルチタニウムビスフェニル、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1一イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムジ(2,6−ジフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムジ(2,4−ジフルオロフェニ−1−イル)、ジ(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル)、ジ(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムビス(2,6−ジフルオロフェニ−1−イル)、ジシクロペンタジエニルチタニウム〔2,6−ジ−フルオロ−3−(ピロ−1−イル)−フェニ−1−イル〕等が挙げられる。
又、ビイミダゾール誘導体類としては、2−(2’−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダソール2量体、2−(2’−クロロフェニル)−4,5−ビス(3’−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(2’−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(2’−メトキシフエニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、(4’−メトキシフエニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体等が挙げられる。
又、ハロメチル化オキサジアゾール誘導体類としては、2−トリクロロメチル−5−(2’−ベンゾフリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−〔β−(2’−ベンゾフリル)ビニル〕−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−〔β−(2’−(6''−ベンゾフリル)ビニル)〕−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5一フリル−1,3,4−オキサジアゾール等が挙げられる。
又、ハロメチル化トリアジン誘導体類としては、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシカルボニルナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
又、α−アミノアルキルフェノン誘導体類としては、2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、4−ジメチルアミノエチルベンゾエ−ト、4−ジメチルアミノイソアミルベンゾエ−ト、4−ジエチルアミノアセトフェノン、4−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−エチルヘキシル−1,4−ジメチルアミノベンゾエート、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノベンゾイル)クマリン、4−(ジエチルアミノ)カルコン等が挙げられる。
又、オキシムエステル系誘導体類としては、1,2−オクタンジオン、1−〔4−(フェニルチオ)フェニル〕、2−(o−ベンゾイルオキシム)、エタノン、1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕、1−(o−アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0129】
その他に、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン誘導体類;ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体類;2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、α−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−(4’−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p一ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体類;チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体類;p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体類;9−フェニルアクリジン、9−(pメトキシフェニル)アクリジン等のアクリジン誘導体類;9,10−ジメチルベンズフェナジン等のフェナジン誘導体類;ベンズアンスロン等のアンスロン誘導体類等も挙げられる。
【0130】
必要に応じて用いられる重合加速剤としては、例えば、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等のN,N−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル類;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等の複素環を有するメルカプト化合物;又は脂肪族多官能メルカプト化合物等のメルカプト化合物類等が挙げられる。
これらの光重合開始剤及び重合加速剤は、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の着色樹脂組成物において、これらの(E)光重合開始剤系の含有割合は、全固形分中、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、又、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下である。この含有割合が著しく低いと露光光線に対する感度が低下する原因となることがあり、反対に著しく高いと未露光部分の現像液に対する溶解性が低下し、現像不良を誘起させることがある。
【0131】
又、必要に応じて感応感度を高める目的で、増感色素が併用される。増感色素は、露光光源の波長に応じて、適切なものが用いられるが、例えば特開平4−221958号、特開平4−219756号各公報等に記載のキサンテン系色素;特開平3−239703号、特開平5−289335号各公報等に記載の複素環を有するクマリン系色素;特開平3−239703号、特開平5−289335号各公報等に記載の3−ケトクマリン系色素;特開平6−19240号公報等に記載のピロメテン系色素;特開昭47−2528号、特開昭54−155292号、特公昭45−37377号、特開昭48−84183号、特開昭52−112681号、特開昭58−15503号、特開昭60−88005号、特開昭59−56403号、特開平2−69号、特開昭57−168088号、特開平5−107761号、特開平5−210240号、特開平4−288818号各公報等に記載のジアルキルアミノベンゼン骨格を有する色素等を挙げることができる。
【0132】
これらの増感色素のうち好ましいものは、アミノ基含有増感色素であり、更に好ましいものは、アミノ基及びフェニル基を同一分子内に有する化合物である。特に、好ましいのは、例えば、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾ〔4,5〕ベンゾオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾ〔6,7〕ベンゾオキサゾール、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾチアゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンズイミダゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンズイミダゾール、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−チアジアゾール、(p−ジメチルアミノフェニル)ピリジン、(p−ジエチルアミノフェニル)ピリジン、(p−ジメチルアミノフェニル)キノリン、(p−ジエチルアミノフェニル)キノリン、(p−ジメチルアミノフェニル)ピリミジン、(p−ジエチルアミノフェニル)ピリミジン等のp−ジアルキルアミノフェニル基含有化合物等である。このうち最も好ましいものは、4,4’−ジアルキルアミノベンゾフェノンである。増感色素もまた1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0133】
本発明の着色樹脂組成物において、これらの増感色素の含有割合は、全固形分中、通常0重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上、又、通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下、更に好ましくは10重量%以下の範囲である。
【0134】
[1−6](F)さらなる分散剤
本発明の着色樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で(B)分散剤と併用して、(F)さらなる分散剤を含有することができる。(F)さらなる分散剤の種類は、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、(F−1):窒素原子を含有するグラフト共重合体、(F−2):その他のアクリル系ブロック共重合体、(F−3):ウレタン樹脂分散剤から選ばれた1以上の分散剤を含有することが好ましい。これらの中でも(F−1)または(F−2)がより好ましく、(F−2)が特に好ましい。
【0135】
(F−1):窒素原子を含有するグラフト共重合体、および(F−2):その他のアクリル系ブロック共重合体は、これに含まれる窒素原子が顔料表面に対して親和性をもち、窒素原子以外の部分が媒質に対する親和性を高めることにより、全体として分散安定性の向上に寄与するものと推定される。
分散剤の性能は、その固体表面に対する吸着挙動により大きく左右される。分子のアーキテクチャーと吸着挙動の関係については、同じユニットを用いた場合は、ランダム共重合<グラフト共重合体<ブロック共重合体、の順で吸着挙動が優れていることが知られている。(例えば、Jones and Richards,”Polymers at Surfaces and Interfaces”、1999、 p281)。
詳しいメカニズムは不明だが、以下のことが推察される。
即ち、通常のランダム共重合体の場合、共重合体を構成するモノマーは、重合体形成時に、立体的に及び/又は電気的に、共重合体中に安定的に配置される確率が高くなる。モノマーが安定的に配置された部分(分子)は、立体的に及び/又は電気的に安定しているため、顔料に吸着するとき、かえって障害となる場合がある。これに対し、グラフト共重合体あるいはブロック共重合体のように分子配列が制御された樹脂は、分散剤の吸着を妨げる部分を、顔料と分散剤との吸着部から離れた位置に配置することができる。つまり、顔料と分散剤との吸着部には吸着に最適な部分を、溶媒親和性が必要な部分にはそれに適した部分を配置することができる。特に結晶子サイズの小さい顔料を含有する色材の分散には、この分子配置が良好な分散性に影響するものと推察される。
【0136】
(F−1):窒素原子を含有するグラフト共重合体
窒素原子を含有するグラフト共重合体は、(A)顔料を極めて効率よく分散しうる点で好ましい。その理由は明らかではないが、顔料と分散剤との吸着の障害となる部分(分子)が、顔料への吸着部周辺に配置することを、積極的に排斥し得る構造を有しているためと推察される。窒素原子を含有するグラフト共重合体としては、主鎖に窒素原子を含有する繰り返し単位を有するものが好ましい。中でも、下記一般式(II)で表される繰り返し単位及び/又は一般式(III)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0137】
【化21】

【0138】
上記一般式(II)において、R51は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、Aは水素原子または下記一般式(IV)〜(VI)で表される構造のいずれかを表す。
一般式(II)における、R51は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の直鎖状または分岐状の炭素数1〜5のアルキレン基を表し、好ましくは炭素数2〜3であり、更に好ましくはエチレン基である。Aは水素原子または下記一般式(IV)〜(VI)で表される構造のいずれかを表すが、好ましくは一般式(IV)で表される構造ある。
【0139】
【化22】

【0140】
上記一般式(III)において、R51及びAは、それぞれ前記一般式(II)におけるR51及びAと同義である。
【0141】
【化23】

【0142】
上記一般式(IV)において、W1は炭素数2〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、中でもブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等の炭素数4〜7のアルキレン基が好ましい。pは1〜20の整数を表し、好ましくは5〜10の整数である。
【0143】
【化24】

【0144】
上記一般式(V)において、Y1は2価の連結基を表し、中でもエチレン基、プロピレン基等の炭素数1〜4のアルキレン基、又はエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等の炭素数1〜4のアルキレンオキシ基が好ましい。W2はエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の直鎖状または分岐状の炭素数2〜10のアルキレン基を表し、中でもエチレン基、プロピレン基等の炭素数2〜3のアルキレン基が好ましい。Y2は水素原子または−CO−R52(R52はエチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜10のアルキル基を表し、中でもエチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の炭素数2〜5のアルキル基が好ましい。)を表す。qは、1〜20の整数を表し、好ましくは5〜10の整数である。
【0145】
【化25】

【0146】
上記一般式(VI)において、W3は炭素数1〜50のアルキル基または水酸基を1〜5有する炭素数1〜50のヒドロキシアルキル基を表し、中でもステアリル等の炭素数10〜20のアルキル基、モノヒドロキシステアリル等の水酸基を1〜2個有する炭素数10〜20のヒドロキシアルキル基が好ましい。
本発明のグラフト共重合体における式(II)または(III)で表される繰り返し単位の含有率は、高い方が好ましく、通常50モル%以上であり、好ましくは70モル%以上である。式(II)で表される繰り返し単位と、式(III)で表される繰り返し単位の、両方を併有してもよく、その含有比率に特に制限は無いが、式(II)の繰り返し単位を多く含有していた方が好ましい。式(II)または式(III)で表される繰り返し単位の合計数は、1分子中に通常1〜100、好ましくは10〜70、更に好ましくは20〜50である。
また、式(II)及び式(III)以外の繰り返し単位を含んでいてもよく、他の繰り返し単位としては、例えばアルキレン基、アルキレンオキシ基などが例示できる。本発明のグラフト共重合体は、その末端が−NH2及び−R51−NH2(R51は、前記R51と同義)のものが好ましい。
【0147】
尚、本発明のグラフト共重合体であれば、主鎖が直鎖状であっても分岐していてもよい。
本発明のグラフト共重合体のアミン価は、通常5〜100mgKOH/gであり、好ましくは10〜70mgKOH/gであり、更に好ましくは15〜40mgKOH/g以下である。アミン価が低すぎると分散安定性が低下し、粘度が不安定になることがあり、逆に高すぎると残渣が増加したり、液晶パネルを形成した後の電気特性が低下することがある。
【0148】
上記分散剤のGPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は、3000〜100000が好ましく、5000〜50000が特に好ましい。重量平均分子量が3000未満であると、色材の凝集を防ぐことができず、高粘度化ないしはゲル化してしまうことがあり、100000を超えるとそれ自体が高粘度となり、また有機溶媒への溶解性が不足する場合がある。
【0149】
上記分散剤の合成方法は、公知の方法が採用でき、例えば特公昭63−30057号公報に記載の方法を用いることができる。
本発明においては、上述のものと同様の構造を有する市販のグラフト共重合体を適用することもできる。
【0150】
(F−2):その他のアクリル系ブロック共重合体
その他のアクリル系ブロック共重合体は、(A)顔料を効率よく分散しうる点で好ましい。その理由は明らかではないが、分子配列が制御されていることにより、分散剤が顔料に吸着する際に障害となる構造が少ないためと推察される。
その他のアクリル系ブロック共重合体としては、側鎖に4級アンモニウム塩基を有するB’−ブロックと、4級アンモニウム塩基を有さないA’−ブロックとからなる、A’−B’ブロック共重合体及び/又はA’−B’−A’ブロック共重合体が好ましい。
【0151】
その他のアクリル系ブロック共重合体のブロック共重合体を構成するB’−ブロックは、4級アンモニウム塩基を有する。
4級アンモニウム塩基は、好ましくは−N+313233・Z(但し、R31、R32及びR33は、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表す。或いは、R31、R32及びR33のうち2つ以上が互いに結合して、環状構造を形成していてもよい。Zは、対アニオンを表す。)で表わされる4級アンモニウム塩基を有する。この4級アンモニウム塩基は、直接主鎖に結合していてもよいが、2価の連結基を介して主鎖に結合していてもよい。
【0152】
−N+313233・Zにおいて、R31、R32及びR33のうち2つ以上が互いに結合して形成する環状構造としては、例えば5〜7員環の含窒素複素環単環又はこれらが2個縮合してなる縮合環が挙げられる。該含窒素複素環は芳香性を有さないものが好ましく、飽和環であればより好ましい。具体的には、例えば下記のものが挙げられる。
【0153】
【化26】

【0154】
上記式中、RはR31、R32、及びR33のうち何れかの基を表す。
これらの環状構造は、更に置換基を有していてもよい。
−N+313233におけるR31、R32、R33としては、それぞれ独立に、より好ましいのは、置換基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいベンジル基である。
【0155】
4級アンモニウム塩基を有するB’−ブロックとしては、下記一般式(VII)で表わされる部分構造を含有するものが好ましい。
【0156】
【化27】

【0157】
上記一般式(VII)中、R31、R32及びR33は各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表す。或いは、R31、R32、及びR33のうち2つ以上が互いに結合して、環状構造を形成していてもよい。R34は、水素原子又はメチル基を表す。Xは、2価の連結基を表し、Zは、対アニオンを表す。
一般式(VII)において、R31、R32、及びR33の炭化水素基は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20の芳香族基を有する置換基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ベンジル基、フェニル基等を挙げることができる。中でもメチル基、エチル基、プロピル基、ベンジル基が好ましい。
一般式(VII)において、2価の連結基Xとしては、例えば、炭素数1〜10のアルキレン基、アリーレン基、−CONH−R35−、−COO−R36−(但し、R35及びR36は、それぞれ独立に、直接結合、炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数1〜10のエーテル基(−R37−O−R38−:R37及びR38は、各々独立にアルキレン基)を表わす。)等が挙げられ、好ましくは−COO−R36−である。
【0158】
また、対アニオンのZとしては、例えばCl-、Br-、I-、ClO4-、BF4-、CH3COO-、PF6-等が挙げられる。
【0159】
なお、これら「その他のアクリル系ブロック共重合体」は、B’−ブロック中に、本発明の特徴である前記(B)分散剤と同様の3級アミノ基を若干有していてもよい。これは、3級アミノ基の4級化反応が完全に完了していない場合に残るものであり、そのアミン価は、通常10mgKOH/g以下程度である。
【0160】
上記の如き特定の4級アンモニウム塩基を含有する部分構造は、1つのB’−ブロック中に2種以上含有されていてもよい。その場合、2種以上の4級アンモニウム塩基含有部分構造は、該B’−ブロック中においてランダム共重合又はブロック共重合の何れの態様で含有されていてもよい。また、該4級アンモニウム塩基を含有しない部分構造が、B’−ブロック中に含まれていてもよく、該部分構造の例としては、後述の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の部分構造等が挙げられる。かかる4級アンモニウム塩基を含まない部分構造の、B’−ブロック中の含有量は、好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0〜20重量%であるが、かかる4級アンモニウム塩基非含有部分構造はB’−ブロック中に含まれないことが最も好ましい。
【0161】
一方、分散剤のブロック共重合体を構成するA’−ブロックとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチルアクリル酸グリシジルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;(メタ)アクリル酸クロライドなどの(メタ)アクリル酸塩系モノマー;酢酸ビニル系モノマー;アリルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル系モノマーなどのコモノマーを共重合させたポリマー構造が挙げられる。
【0162】
A’−ブロックは、特に下記一般式(VIII)で表される、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の部分構造であることが好ましい。
【0163】
【化28】

【0164】
(上記一般式(VIII)中、R39は、水素原子又はメチル基を表す。R40は、置換基を有していてもよい環状又は鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアリル基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。)
上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の部分構造は、1つのA’−ブロック中に2種以上含有されていてもよい。もちろん該A’−ブロックは、更にこれら以外の部分構造を含有していてもよい。2種以上のモノマー由来の部分構造が、4級アンモニウム塩基を含有しないA’−ブロック中に存在する場合、各部分構造は該A’−ブロック中においてランダム共重合又はブロック共重合の何れの態様で含有されていてもよい。A’−ブロック中に上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマー由来の部分構造以外の部分構成を含有する場合、当該(メタ)アクリル酸エステル系モノマー以外の部分構造の、A’−ブロック中の含有量は、好ましくは0〜99重量%、より好ましくは0〜85重量%である。
【0165】
これら「その他のアクリル系ブロック共重合体」は、本発明の特徴である(B)分散剤と同様の方法にて重合することができる。
【0166】
また、このブロック共重合体の酸価は、該酸価の元となる酸性基の有無及び種類にもよるが、一般に低い方が好ましく、通常100mgKOH/g以下であり、その分子量は、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で通常1000以上、100,000以下の範囲である。ブロック共重合体の分子量が小さすぎると分散安定性が低下し、大きすぎると現像性、解像性が低下する傾向にある。
本発明においては、上述のものと同様の構造を有する市販のアクリル系ブロック共重合体を適用することもできる。
【0167】
(F−3):ウレタン樹脂分散剤
(F−3)ウレタン樹脂分散剤としては、ポリイソシアネート化合物と、同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物と、同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物とを反応させることによって得られるウレタン樹脂が特に好ましい。
【0168】
上記ポリイソシアネート化合物の例としては、パラフェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ω,ω′−ジイソシネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニルメタン)、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート等のトリイソシアネート;及び、これらの3量体、水付加物、並びにこれらのポリオール付加物等が挙げられる。ポリイソシアネートとして好ましいのは有機ジイソシアネートの三量体で、最も好ましいのはトリレンジイソシアネートの三量体とイソホロンジイソシアネートの三量体であり、これらを単独で用いても、複数種併用してもよい。
【0169】
イソシアネートの三量体の製造方法としては、前記ポリイソシアネート類を適当な三量化触媒、例えば第3級アミン類、ホスフィン類、アルコキシド類、金属酸化物、カルボン酸塩類等を用いてイソシアネート基の部分的な三量化を行い、触媒毒の添加により三量化を停止させた後、未反応のポリイソシアネートを溶剤抽出、薄膜蒸留により除去して目的のイソシアヌレート基含有ポリイソシアネートを得る方法が挙げられる。
【0170】
上記同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物としては、ポリエーテルグリコール、ポリエステルグリコール、ポリカーボネートグリコール、ポリオレフィングリコール等、又はこれらの化合物の片末端水酸基が炭素数1〜25のアルキル基でアルコキシ化さ
れたもの、若しくはこれら2種類以上の混合物が挙げられる。
ポリエーテルグリコールとしては、ポリエーテルジオール、ポリエーテルエステルジオール、又はこれら2種類以上の混合物が挙げられる。ポリエーテルジオールとしては、アルキレンオキシドを単独又は共重合させて得られるもの、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン−プロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシヘキサメチレングリコール、ポリオキシオクタメチレングリコール、又はそれらの2種以上の混合物が挙げられる。ポリエーテルエステルジオールとしては、エーテル基含有ジオール若しくは他のグリコールとの混合物をジカルボン酸又はそれらの無水物と反応させるか、ポリエステルグリコールにアルキレンオキシドを反応させることによって得られるもの、例えば、ポリ(ポリオキシテトラメチレン)アジペート等が挙げられる。ポリエーテルグリコールとして最も好ましいのは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、又はこれらの化合物の片末端水酸基が炭素数1〜25のアルキル基でアルコキシ化された化合物である。
【0171】
ポリエステルグリコールとしては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸等のジカルボン酸類又はそれらの無水物と、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジーオル、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレングリコール、2−メチル−1,8−オクタメチレングリコール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族グリコール;ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン等の脂環族グリコール;キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール;N−メチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミン等のジオール類と、を重縮合させて得られたもの、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリエチレン/プロピレンアジペート等、又は前記ジオール類若しくは炭素数1〜25の1価アルコールを開始剤として用いて得られるポリラクトンジオールあるいはポリラクトンモノオール、例えば、ポリカプロラクトングリコール、ポリメチルバレロラクトン、又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。ポリエステルグリコールとして最も好ましいのは、ポリカプロラクトングリコール又は炭素数1〜25のアルコールを開始剤としたポリカプロラクトン、より具体的には、モノオールにε−カプロラクトンを開環付加重合して得られる化合物である。
【0172】
ポリカーボネートグリコールとしては、ポリ(1,6−ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
又、ポリオレフィングリコールとしては、ポリブタジエングリコール、水素添加型ポリブタジエングリコール、水素添加型ポリイソプレングリコール等が挙げられる。
これらの同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物のうち、特にポリエーテルグリコールとポリエステルグリコールが好ましい。尚、同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物の数平均分子量は、通常300〜10,000、好ましくは500〜6,000、更に好ましくは1,000〜4,000である。
【0173】
上記同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物において、活性水素、即ち、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子に直接結合している水素原子としては、水酸基、アミノ基、チオール基等の官能基中の水素原子が挙げられ、中でもアミノ基、特に1級のアミノ基の水素原子が好ましい。又、3級アミノ基としては、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル等の炭素数1〜4のアルキル基を有するジアルキルアミノ基や、該ジアルキルアミノ基が連結してヘテロ環構造を形成している基、より具体的には、イミダゾール環、又はトリアゾール環が挙げられるが、中でもジメチルアミノ基及びイミダゾール環が分散安定性に優れるため好ましい。
【0174】
このような同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物を例示するならば、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジプロピル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジプロピルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジエチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジプロピル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン等か挙げられる。
【0175】
又、3級アミノ基が窒素含有ヘテロ環であるものとして、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、インドール環、カルバゾール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチアジアゾール環等の窒素原子含有ヘテロ5員環;ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、アクリジン環、イソキノリン環等の窒素原子含有ヘテロ6員環が挙げられる。これらのイミダゾール環と1級アミノ基を有する化合物を具体的に例示するならば、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、ヒスチジン、2−アミノイミダゾール、1−(2−アミノエチル)イミダゾール等が挙げられる。又、トリアゾール環と1級アミノ基を有する化合物を具体的に例示するならば、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、5−(2−アミノ−5−クロロフェニル)−3−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−4H−1,2,4−トリアゾール−3,5−ジオール、3−アミノ−5−フェニル−1H−1,3,4−トリアゾール、5−アミノ−1,4−ジフェニル−1,2,3−トリアゾール、3−アミノ−1−ベンジル−1H−2,4−トリアゾール等が挙げられる。これらの中でも、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール等が好ましい。
【0176】
これらの(F−3)ウレタン樹脂分散剤原料の好ましい使用比率は、ポリイソシアネート化合物100重量部に対し、同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物が、通常10〜200重量部、好ましくは20〜190重量部、更に好ましくは30〜180重量部、同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物が、通常0.2〜25重量部、好ましくは0.3〜24重量部である。
【0177】
又、(F−3)ウレタン樹脂分散剤の製造は、ウレタン樹脂製造の公知の方法に従って行われる。製造する際の溶媒としては、通常、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素類;ダイアセトンアルコール、イソプロパノール、第二ブタノール、第三ブタノール等の一部のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキサイド等の非プロトン性極性溶媒等が用いられる。又、製造する際の触媒としては、通常のウレタン化反応触媒が用いられる。例えば、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の錫系;鉄アセチルアセトナート、塩化第二鉄等の鉄系;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン系等が挙げられる。
又、同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物の導入量は、反応後の分散剤分子のアミン価で1〜100mgKOH/gの範囲に制御するのが好ましく、より好ましくは5〜80mgKOH/gの範囲であり、更に好ましくは10〜60mgKOH/gの範囲である。アミン価が上記範囲以下であると分散能力が低下する傾向があり、又、上記範囲を超えると現像性が低下しやすくなる。尚、以上の反応で分散剤分子中にイソシアネート基が残存する場合には、更にアルコールやアミノ化合物でイソシアネート基を潰すと該分散剤の経時安定性が高くなるので好ましい。
【0178】
尚、これらウレタン樹脂分散剤のGPCで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常1,000〜200,000、好ましくは2,000〜100,000、より好ましくは3,000〜50,000の範囲である。分子量1,000以下では分散性及び分散安定性が劣り、200,000以上では溶解性が低下し分散性が劣ると同時に反応の制御が困難となる。
【0179】
(F−4):その他の分散剤
本発明の着色樹脂組成物に用いられる分散剤は上記の各種分散剤以外に、その他の分散剤を含有していてもよい。
その他の分散剤としては、例えば、ポリアリルアミン系分散剤、アミノ基を持つモノマーとマクロモノマーからなる分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレンジエステル系分散剤、ポリエーテルリン酸系分散剤、ポリエステルリン酸系分散剤、ソルビタン脂肪族エステル系分散剤、脂肪族変性ポリエステル系分散剤等を挙げることができる。
このような分散剤の具体例としては、EFKA(エフカーケミカルズビーブイ(EFKA)社製)、Disperbyk(ビックケミー社製)、ディスパロン(楠本化成社製)、SOLSPERSE(ルーブリゾール社製)、KP(信越化学工業社製)、ポリフロー(共栄社化学社製)、アジスパー(味の素社製)等のシリーズ名で市販のものを挙げることができる。これらの高分子分散剤は1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0180】
本発明の着色樹脂組成物において、(F)さらなる分散剤の含有割合は、前述の(B)分散剤と併せた合計量として、(A)顔料に対して、通常95重量%以下、好ましくは65重量%以下、更に好ましくは50重量%以下であり、また、通常1重量%以上、好ましくは3重量%以上、特に好ましくは5重量%以上である。分散剤の含有割合が少なすぎると、(A)顔料への吸着量が不足し、(A)顔料の凝集を防ぐことができず、高粘度化ないしゲル化してしまうことがあるため、分散安定性が悪化し、再凝集や増粘等の問題が発生する可能性がある。逆に多すぎると、相対的に顔料の割合が減るため、着色力が低くなり、色濃度に対して膜厚が厚くなりすぎて、カラーフィルタに用いた場合、液晶セル化工程でのセルギャップ制御不良が出ることがある。
【0181】
[1−7]溶剤
本発明の着色樹脂組成物は、溶剤を含むことが好ましい。溶剤は、前記各成分を溶解又は分散させ、粘度を調節する機能を有する。
かかる溶剤としては、着色樹脂組成物を構成する各成分を溶解または分散させることができるものであればよく、沸点が100〜300℃の範囲のものを選択するのが好ましい。より好ましくは120〜250℃の沸点をもつものである。
このような溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルペンタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、トリプロピレングリコールメチルエーテルのようなグリコールモノアルキルエーテル類;
【0182】
エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルのようなグリコールジアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートのようなグリコールアルキルエーテルアセテート類;
アミルエーテル、プロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ジアミルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジヘキシルエーテルのようなエーテル類;
【0183】
アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、メチルブチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトンのようなケトン類;
エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンのような1価又は多価アルコール類;
n−ペンタン、n−オクタン、ジイソブチレン、n−ヘキサン、ヘキセン、イソプレン、ジペンテン、ドデカンのような脂肪族炭化水素類;
シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、ビシクロヘキシルのような脂環式炭化水素類;
【0184】
ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンのような芳香族炭化水素類;
アミルホルメート、エチルホルメート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、メチルイソブチレート、エチレングリコールアセテート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、イソ酪酸メチル、エチルカプリレート、ブチルステアレート、エチルベンゾエート、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトンのような鎖状又は環状エステル類;
3−メトキシプロピオン酸、3−エトキシプロピオン酸のようなアルコキシカルボン酸類;
【0185】
ブチルクロライド、アミルクロライドのようなハロゲン化炭化水素類;
メトキシメチルペンタノンのようなエーテルケトン類;
アセトニトリル、ベンゾニトリルのようなニトリル類である。
上記に該当する市販の溶剤としては、ミネラルスピリット、バルソル#2、アプコ#18ソルベント、アプコシンナー、ソーカルソルベントNo.1及びNo.2、ソルベッソ#150、シェルTS28 ソルベント、カルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ジグライム(いずれも商品名)などが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0186】
上記溶剤中、塗布性、表面張力などのバランスが良く、組成物中の構成成分の溶解度が比較的高い点からは、グリコールアルキルエーテルアセテート類が好ましい。
また、グリコールアルキルエーテルアセテート類は、単独で使用してもよいが、他の溶剤を併用してもよい。併用する溶剤として、特に好ましいのはグリコールモノアルキルエーテル類である。中でも、特に組成物中の構成成分の溶解性からプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。なお、グリコールモノアルキルエーテル類は極性が高く、添加量が多すぎるとレジスト顔料が凝集しやすく、着色樹脂組成物の粘度が上がっていくなどの保存安定性が低下する傾向があるので、溶剤中のグリコールモノアルキルエーテル類の割合は5重量%〜30重量%が好ましく、5重量%〜20重量%がより好ましい。
また、150℃以上の沸点をもつ溶剤を併用することも好ましい。このような溶剤を併用することにより、着色樹脂組成物は乾きにくくなるが、急激に乾燥することによる顔料分散体の相互関係(後述する)の破壊を起こし難くする効果がある。高沸点溶剤の含有量は、溶剤に対して3重量%〜50重量%が好ましく、5重量%〜40重量%がより好ましく、5重量%〜30重量%が特に好ましい。
なお沸点150℃以上の溶剤が、グリコールアルキルエーテルアセテート類であっても、またグリコールアルキルエーテル類であってもよく、この場合は、沸点150℃以上の溶剤を別途含有させなくてもかまわない。
本発明の着色樹脂組成物において、溶剤の含有割合に特に制限はないが、その上限は通常99重量%とする。溶剤が99重量%を超える場合は、溶剤を除く各成分の濃度が小さくなり過ぎて、塗布膜を形成するには不適当となるおそれがある。一方、溶剤含有割合の下限値は、塗布に適した粘性等を考慮して、通常75重量%、好ましくは80重量%、更に好ましくは82重量%である。
【0187】
[1−8]界面活性剤
本発明の着色樹脂組成物は、さらに界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性界面活性剤等、各種のものを用いることができるが、電圧保持率や有機溶媒に対する相溶性等の諸特性に悪影響を及ぼす可能性が低い点で、非イオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、花王社製の「エマール10」等のアルキル硫酸エステル塩系界面活性剤、花王社製の「ペレックスNB−L」等のアルキルナフタレンスルフォン酸塩系界面活性剤、花王社製の「ホモゲノールL−18」、「ホモゲノールL−100」等の特殊高分子系界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、特殊高分子系界面活性剤が好ましく、特殊ポリカルボン酸型高分子系界面活性剤が更に好ましい。
【0188】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、花王社製の「アセタミン24」等のアルキルアミン塩系界面活性剤、花王社製の「コータミン24P」、「コータミン86W」等の第4級アンモニウム塩系界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、第4級アンモニウム塩系界面活性剤が好ましく、ステアリルトリメチルアンモニウム塩系界面活性剤が更に好ましい。
非イオン系性面活性剤としては、例えば、トーレシリコーン社製の「SH8400」;シリコーン社製の「KP341」等のシリコーン系界面活性剤;住友3M社製の「FC430」;大日本インキ化学工業社製の「F470」;ネオス社製の「DFX−18」等の弗素系界面活性剤;花王社製の「エマルゲン104P」、「エマルゲンA60」等のポリオキシエチレン系界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、シリコーン系界面活性剤が好ましく、ポリジメチルシロキサンにポリエーテル基又はアラルキル基の側鎖が付加された構造を有する、いわゆるポリエーテル変性又はアラルキル変性シリコーン系界面活性剤が更に好ましい。
【0189】
界面活性剤は2種類以上を併用してもよく、例えばシリコーン系界面活性剤/弗素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤/特殊高分子系界面活性剤、弗素系界面活性剤/特殊高分子系界面活性剤の組み合わせ等が挙げられる。中でも、シリコーン系界面活性剤/弗素系界面活性剤の組み合わせが好ましい。
このシリコーン系界面活性剤/弗素系界面活性剤の組み合わせとしては、例えばポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤/オリゴマー型弗素系界面活性剤の組み合わせ等が挙げられる。具体的には、例えば、ジーイー東芝シリコーン社製「TSF4460」/ネオス社製「DFX−18」、ビックケミー社製「BYK−300」/セイミケミカル社製「S−393」、信越シリコーン社製「KP340」/大日本インキ化学工業社製「F−478」、トーレシリコーン社製「SH7PA」/ダイキン社製「DS−401」、日本ユニカー社製「L−77」/住友3M社製「FC4430」等の組み合わせが挙げられる。
【0190】
本発明の着色樹脂組成物において、これら界面活性剤の含有割合は、全固形分中、通常0.001重量%以上、好ましくは0.005重量%以上、更に好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.02重量%以上である。又、通常10重量%以下、好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下、特に好ましくは0.05重量%以下の範囲で用いられる。
【0191】
[1−9]その他成分
本発明の着色樹脂組成物は、前記各成分の外に、分散助剤、有機カルボン酸又は/及び有機カルボン酸無水物、可塑剤、染料、熱重合防止剤、保存安定剤、表面保護剤、密着向上剤、現像改良剤等を含有していてもよい。
分散助剤は、前記(A)顔料の分散性の向上、分散安定性の向上等のために用いられ、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンツイミダゾロン系、キノフタロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、アントラキノン系、インダンスレン系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、ジオキサジン系顔料等の誘導体が挙げられる。
これらの顔料誘導体の置換基としては、スルホン酸基、スルホンアミド基及びその4級塩、フタルイミドメチル基、ジアルキルアミノアルキル基、水酸基、カルボキシル基、アミド基等が挙げられる。これらの置換基は顔料骨格に直接結合していてもよく、又はアルキル基、アリール基、複素環基等を介して結合していてもよい。前記置換基のうち、スルホンアミド基及びその4級塩、スルホン酸基が好ましく、スルホン酸基がより好ましい。
これら置換基は、一つの顔料骨格に複数置換していてもよいし、置換数の異なる化合物の混合物でもよい。
顔料誘導体の具体例としては、例えばアゾ系顔料のスルホン酸誘導体、フタロシアニン系顔料のスルホン酸誘導体、キノフタロン系顔料のスルホン酸誘導体、アントラキノン系顔料のスルホン酸誘導体、キナクリドン系顔料のスルホン酸誘導体、ジケトピロロピロール系顔料のスルホン酸誘導体、ジオキサジン系顔料のスルホン酸誘導体等が挙げられる。中でも好ましくは、ピグメントイエロー138のスルホン酸誘導体、ピグメントイエロー139のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド254のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド255のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド264のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド272のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド209のスルホン酸誘導体、ピグメントオレンジ71のスルホン酸誘導体、ピグメントバイオレット23のスルホン酸誘導体であり、より好ましくはピグメントイエロー138のスルホン酸誘導体、ピグメントレッド254のスルホン酸誘導体である。
また、分散助剤は、上述のような顔料自体の誘導体でなくとも、これに類似した化学構造を有する化合物であってもよい。
【0192】
本発明の着色樹脂組成物において、これらの分散助剤の含有割合は、前記(A)顔料に対して、通常0.1重量%以上であり、又、通常30重量%以下、好ましくは200重量%以下、更に好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。添加量が少ないとその効果が発揮されない傾向があり、逆に添加量が多過ぎると分散性、分散安定性がかえって悪くなる場合があるためである。
【0193】
本発明の着色樹脂組成物は、後述するようにカラーフィルタに使用した場合、高いパターン密着性を保ちながら、樹脂組成物の未溶解物の残存をより一層低減するために、分子量1000以下の有機カルボン酸又は/及び有機カルボン酸無水物を含有していてもよい。これらは前述の(F)さらなる分散剤として、(F−3)ウレタン樹脂分散剤を含む場合に含有されていることが好ましい。
その有機カルボン酸として、具体的には、例えば脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、グリコール酸、(メタ)アクリル酸、等のモノカルボン酸;蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸;トリカルバリル酸、アコニット酸等のトリカルボン酸等が挙げられる。又、芳香族カルボン酸としては、例えば安息香酸、フタル酸等のフェニル基に直接カルボキシル基が結合したカルボン酸、フェニル基から炭素結合を介してカルボキシル基が結合したカルボン酸等が挙げられる。
これらの中では、分子量600以下のものが好ましく、とりわけ分子量50〜500のものが好ましい。具体的には、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、イタコン酸が好ましい。
有機カルボン酸無水物としては、脂肪族カルボン酸無水物、芳香族カルボン酸無水物が挙げられ、具体的には無水酢酸、無水トリクロロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水グルタル酸、無水1,2−シクロヘキセンジカルボン酸、無水n−オクタデシルコハク酸、無水5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸等の脂肪族カルボン酸無水物が挙げられる。芳香族カルボン酸無水物としては、無水フタル酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、無水ナフタル酸等が挙げられる。
これらの中では、分子量600以下のものが好ましく、とりわけ分子量50〜500のものが好ましい。具体的には無水マレイン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、または無水イタコン酸が好ましい。
【0194】
本発明の着色樹脂組成物において、これらの有機カルボン酸又は/及び有機カルボン酸無水物の含有割合は、全固形分中、通常0.01重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、更に好ましくは0.05重量%以上であり、又、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下である。
【0195】
本発明の着色樹脂組成物は、染料を含有していてもよく、例えばアゾ系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、キノンイミン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、カルボニル系染料、メチン系染料等が挙げられる。
アゾ系染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー11、C.I.アシッドオレンジ7、C.I.アシッドレッド37、C.I.アシッドレッド180、C.I.アシッドブルー29、C.I.ダイレクトレッド28、C.I.ダイレクトレッド83、C.I.ダイレクトイエロー12、C.I.ダイレクトオレンジ26、C.I.ダイレクトグリーン28、C.I.ダイレクトグリーン59、C.I.リアクティブイエロー2、C.I.リアクティブレッド17、C.I.リアクティブレッド120、C.I.リアクティブブラック5、C.I.ディスパースオレンジ5、C.I.ディスパースレッド58、C.I.ディスパースブルー165、C.I.ベーシックブルー41、C.I.ベーシックレッド18、C.I.モルダントレッド7、C.I.モルダントイエロー5、C.I.モルダントブラック7等が挙げられる。
【0196】
アントラキノン系染料としては、例えば、C.I.バットブルー4、C.I.アシッドブルー40、C.I.アシッドグリーン25、C.I.リアクティブブルー19、C.I.リアクティブブルー49、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー56、C.I.ディスパースブルー60等が挙げられる。
フタロシアニン系染料として、例えば、C.I.パッドブルー5等が、キノンイミン系染料として、例えば、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー9等が、キノリン系染料として、例えば、C.I.ソルベントイエロー33、C.I.アシッドイエロー3、C.I.ディスパースイエロー64等が、ニトロ系染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー1、C.I.アシッドオレンジ3、C.I.ディスパースイエロー42等が挙げられる。
本発明の着色樹脂組成物は、可塑剤を含有していてもよく、その可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等が挙げられる。これら可塑剤の含有割合は、全固形分中、10重量%以下の範囲であるのが好ましい。
【0197】
又、本発明の着色樹脂組成物は、熱重合防止剤を含有していてもよく、その熱重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ピロガロール、カテコール、2,6−t−ブチル−p−クレゾール、β−ナフトール等が挙げられる。これら熱重合防止剤の含有割合は、全固形分中、3重量%以下の範囲であるのが好ましい。
【0198】
[2]着色樹脂組成物の調製方法
次に、本発明の着色樹脂組成物を調製する方法を説明する。
先ず(A)顔料、(B)分散剤、および任意成分である溶剤や(F)さらなる分散剤を各所定量秤量し、分散処理工程において、(A)顔料を分散させてインキ状液体(顔料分散液)とする。この分散処理工程では、ペイントコンディショナー、サンドグラインダー、ボールミル、ロールミル、ストーンミル、ジェットミル、ホモジナイザー等を使用することができる。この分散処理を行なうことによって(A)顔料が微粒子化されるため、着色樹脂組成物の塗布特性が向上し、製品のカラーフィルタ基板等の透過率が向上する。
また、前述したように、(A)顔料を分散処理する際には、(C)バインダ樹脂の一部及び分散助剤等を適宜併用するのが好ましい。又、サンドグラインダーを用いて分散処理を行なう場合は、0.1〜数mm径のガラスビーズ、又はジルコニアビーズを用いるのが好ましい。分散処理する際の温度は、通常0℃以上、好ましくは室温以上、又、通常100℃以下、好ましくは80℃以下の範囲に設定する。尚、分散時間は、インキ状液体の組成、及びサンドグラインダーの装置の大きさ等により適正時間が異なるため、適宜調整する必要がある。
【0199】
上記分散処理によって得られたインキ状液体に、更に必須成分である(C)バインダ樹脂、(D)多官能モノマー、(E)光重合開始剤系、及び任意成分である溶剤、界面活性剤、並びにそれら以外の成分を混合し、均一な分散溶液とすることにより、着色樹脂組成物を得る。尚、分散処理工程及び混合の各工程において、微細なゴミが混入することがあるため、得られたインキ状液体をフィルター等によって濾過処理することが好ましい。
【0200】
[3]着色樹脂組成物の応用
本発明の着色樹脂組成物は、通常、すべての構成成分が溶剤中に溶解或いは分散された状態である。これが基板上へ供給され、カラーフィルタや液晶表示装置の構成部材が形成される。
【0201】
以下、本発明の着色樹脂組成物の応用例として、カラーフィルタのブラックマトリックスや画素としての応用、及びそれらを用いた液晶表示装置(パネル)や有機ELディスプレイについて、説明する。
【0202】
[3−1]カラーフィルタの画素及びブラックマトリックス
カラーフィルタの透明基板としては、透明で適度の強度があれば、その材質は特に限定されるものではない。材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリスルホン系樹脂等の熱可塑性樹脂製シート;エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂シート;又は各種ガラス等が挙げられる。この中でも、耐熱性の観点からガラス、耐熱性樹脂が好ましい。これらの透明基板には、接着性等の表面物性の改良のため、必要に応じ、コロナ放電処理やオゾン処理等の表面処理、シランカップリング剤やウレタン系樹脂等の各種樹脂等による薄膜形成処理等を行なってもよい。透明基板の厚さは、通常0.05mm以上、好ましくは0.1mm以上、又、通常10mm以下、好ましくは7mm以下の範囲とされる。又、各種樹脂による薄膜形成処理を行なう場合、その膜厚は、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、又、通常10μm以下、好ましくは5μm以下の範囲である。
上述の透明基板上にブラックマトリックスを設け、更に通常は赤色、緑色、青色の画素を形成することにより、カラーフィルタを作製することができる。
ブラックマトリックスは、遮光金属薄膜、又は本発明の着色樹脂組成物を利用して、透明基板上に形成される。
【0203】
その遮光金属材料としては、金属クロム、酸化クロム、窒化クロム等のクロム化合物、ニッケルとタングステン合金等が用いられ、これらを複数層状に積層させたものであってもよい。これらの遮光金属薄膜は、一般にスパッタリング法によって形成され、ポジ型フォトレジストにより、膜状に所望のパターンを形成する。
クロムに対しては硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸及び/又は硝酸とを混合したエッチング液を用い、その他の材料に対しては、材料に応じたエッチング液を用いて蝕刻され、最後にポジ型フォトレジストを専用の剥離剤で剥離することによって、ブラックマトリックスを形成することができる。この場合、先ず、蒸着又はスパッタリング法等により、透明基板上にこれら金属又は金属・金属酸化物の薄膜を形成する。次いで、この薄膜上にポジ型フォトレジスト用樹脂組成物の塗布膜を形成する。次いで、ストライプ、モザイク、トライアングル等の繰り返しパターンを有するフォトマスクを用いて、塗布膜を露光・現像し、画像を形成する。その後、この塗布膜にエッチング処理を施してブラックマトリックスを形成することができる。
【0204】
本発明の着色樹脂組成物を利用する場合は、黒色の(A)顔料を含有する着色樹脂組成物を使用して、ブラックマトリックスを形成する。例えば、カーボンブラック、黒鉛、鉄黒、チタンブラック等の黒色顔料を単独又は複数、もしくは、無機又は有機の顔料の中から適宜選択される赤色、緑色、青色等の顔料を混合して得られる黒色顔料を含有する着色樹脂組成物を使用し、後述する赤色、緑色、青色の画素を形成する方法と同様にして、ブラックマトリックスを形成することができる。
上記着色樹脂組成物は、これら黒色、赤色、緑色、青色のうち少なくとも一種の画素形成用塗布液として使用される。黒色の着色樹脂組成物に関しては、透明基板上に、赤色、緑色、青色の着色樹脂組成物に関しては、透明基板上に形成された樹脂ブラックマトリックス形成面上、又は、クロム化合物その他の遮光金属材料を用いて形成された金属ブラックマトリックス形成面上に、塗布、加熱乾燥、露光、現像及び熱硬化の各処理を経て、各色の画素が形成される。
この操作を、赤色、緑色、青色の三色の着色樹脂組成物について各々行うことによって、カラーフィルタ画像を形成することができる。
【0205】
着色樹脂組成物の基板への供給方法としては、従来公知の方法、例えば、スピナー法、ワイヤーバー法、フローコート法、スリット・アンド・スピン法、ダイコート法、ロールコート法、スプレーコート法等が挙げられる。中でも、スリット・アンド・スピン法、及びダイコート法が好ましい。
スリット・アンド・スピン法、及びダイコート法による塗布条件は、着色樹脂組成物の組成や、作製するカラーフィルタの種類等によって適宜選択すればよい。例えば、両方法のいずれにおいても、ノズル先端のリップ幅は50〜500μmとし、ノズル先端と基板面との間隔は30〜300μmとするのが好ましい。
ダイコート法によれば、塗布膜の厚さを調節するためには、リップの走行速度、及びリップからの液状の樹脂組成物の吐出量を調整すればよく、スリット・アンド・スピン法によれば、主にスリット塗布後のスピン回転数および回転時間によって調整すればよい。
塗布膜の厚さは、厚過ぎるとパターン現像が困難となるとともに、液晶セル化工程でのギャップ調整が困難となることがある一方で、薄過ぎると顔料濃度を高めることが困難となり、所望の色発現が不可能となることがある。塗布膜の厚さは、乾燥後の膜厚として、通常0.2μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.8μm以上、又、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下の範囲である。
本発明の着色樹脂組成物は、ダイコート法に用いた時に、その有効性が顕著である。
【0206】
基板に着色樹脂組成物を塗布した後の塗布膜の乾燥は、ホットプレート、IRオーブン、コンベクションオーブンを使用した乾燥法によるのが好ましい。通常は、予備乾燥の後、再度加熱させて乾燥させる。予備乾燥の条件は、前記溶剤成分の種類、使用する乾燥機の性能等に応じて適宜選択することができる。乾燥温度及び乾燥時間は、溶剤成分の種類、使用する乾燥機の性能等に応じて選択されるが、具体的には、乾燥温度は通常40℃以上、好ましくは50℃以上、又、通常80℃以下、好ましくは70℃以下の範囲であり、乾燥時間は通常15秒以上、好ましくは30秒以上、又、通常5分間以下、好ましくは3分間以下の範囲である。又、再加熱乾燥の温度条件は、予備乾燥温度より高い温度が好ましく、具体的には、通常50℃以上、好ましくは70℃以上、又、通常200℃以下、好ましくは160℃以下、特に好ましくは130℃以下の範囲である。又、乾燥時間は、加熱温度にもよるが、通常10秒以上、好ましくは15秒以上、又、通常10分以下、好ましくは5分以下の範囲とするのが好ましい。乾燥温度は、高いほど透明基板に対する接着性が向上するが、高過ぎるとバインダ樹脂が分解し、熱重合を誘発して現像不良を生ずる場合がある。尚、この塗布膜の乾燥工程としては、温度を高めず減圧チャンバー内で乾燥を行なう減圧乾燥法を用いてもよい。
【0207】
露光は、着色樹脂組成物の塗布膜上に、ネガのマトリックスパターンを重ね、このマスクパターンを介し、紫外線又は可視光線の光源を照射して行う。この際、必要に応じ、酸素による光重合性層の感度の低下を防ぐため、光重合性層上にポリビニルアルコール層等の酸素遮断層を形成した後に露光を行ってもよい。上記の露光に使用される光源は、特に限定されるものではない。光源としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、蛍光ランプ等のランプ光源;アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、窒素レーザー、ヘリウムカドミニウムレーザー、半導体レーザー等のレーザー光源等が挙げられる。特定の波長の光を照射して使用する場合には、光学フィルターを利用することもできる。
【0208】
カラーフィルタは、着色樹脂組成物の塗布膜に対し、上記の光源によって露光を行なった後、有機溶剤、又は、界面活性剤とアルカリ性化合物とを含む水溶液を用いて現像を行うことによって、基板上に画像を形成して作製することができる。この水溶液には、更に有機溶剤、緩衝剤、錯化剤、染料又は顔料を含ませることができる。
ここで、アルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、燐酸水素ナトリウム、燐酸水素カリウム、燐酸二水素ナトリウム、燐酸二水素カリウム、水酸化アンモニウム等の無機アルカリ性化合物;モノ−・ジ−・又はトリ−エタノールアミン、モノ−・ジ−・又はトリ−メチルアミン、モノ−・ジ−・又はトリ−エチルアミン、モノ−・又はジ−イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノ−・ジ−・又はトリ−イソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン等の有機アルカリ性化合物が挙げられる。これらのアルカリ性化合物は、2種以上の混合物であってもよい。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、モノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン系界面活性剤;アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、アルキルスルホン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類等のアニオン性界面活性剤;アルキルベタイン類、アミノ酸類等の両性界面活性剤が挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。有機溶剤は、単独でも水溶液と併用して使用できる。
【0209】
現像処理の条件には特に制限はないが、現像温度は通常10℃以上、中でも15℃以上、更には20℃以上、又、通常50℃以下、中でも45℃以下、更には40℃以下の範囲が好ましい。
現像方法は、例えば浸漬現像法、スプレー現像法、ブラシ現像法、超音波現像法等の何れかの方法により行うことができる。
尚、本発明におけるカラーフィルタは、上記した作製方法の他に、(1)本発明の(B)分散剤、溶剤、顔料及びバインダ樹脂としてのポリイミド系樹脂を含む着色樹脂組成物を、基板に塗布し、エッチング法により画素を形成する方法によっても作製することができる。又、(2)本発明の(B)分散剤、及び顔料を含む着色樹脂組成物を着色インキとして用い、印刷機によって、透明基板上に直接画素を形成する方法、(3)本発明の(B)分散剤、及び顔料を含む着色樹脂組成物を電着液として用い、基板をこの電着液に浸漬させ所定パターンにされたITO電極上に、着色膜を析出させる方法、更に、(4)本発明の(B)分散剤、及び顔料を含む着色樹脂組成物を塗布したフィルムを、透明基板に貼りつけて剥離し、露光、現像し画素を形成する方法、(5)本発明の(B)分散剤、及び顔料を含む着色樹脂組成物を着色インキとして用い、インクジェットプリンターにより画素を形成する方法、等によっても作製することができる。カラーフィルタの作製方法は、本発明の着色樹脂組成物の組成に応じ、これに適した方法が採用される。
【0210】
現像の後のカラーフィルタには、熱硬化処理を施すことが好ましい。この際の熱硬化処理条件は、温度は通常100℃以上、好ましくは150℃以上、又、通常280℃以下、好ましくは250℃以下の範囲で選ばれ、時間は5分間以上、60分間以下の範囲で選ばれる。これら一連の工程を経て、一色のパターニングは終了する。この工程を順次繰り返し、ブラック、赤色、緑色、青色をパターニングし、カラーフィルタを形成する。尚、4色のパターニングの順番は、上記した順番に限定されるものではない。
【0211】
更に、カラーフィルタは、このままの状態で画素上にITO等の透明電極を形成して、カラーディスプレー、液晶表示装置等の部品の一部として使用されるが、表面平滑性や耐久性を高めるため、必要に応じ、画素上にポリアミド、ポリイミド等のトップコート層を設けることもできる。又、一部、平面配向型駆動方式(IPSモード)等の用途においては、透明電極を形成しないこともある。
又、垂直配向型駆動方式(MVAモード)では、リブを形成することもある。又、ビーズ散布型スペーサに代わり、フォトリソによる柱構造(フォトスペーサー)を形成することもある。
【0212】
[3−2]液晶表示装置(パネル)
本発明に係る液晶表示装置は、例えば、前記[3−1]カラーフィルタ(以降、「カラーフィルタ基板」と称することがある)と、薄膜トランジスタ(TFT)による駆動基板とを、液晶層を介して対向した構造により構成することができる。より具体的には、配向膜材料を塗布し配向処理を施したカラーフィルタ基板と、同じくTFT駆動基板とを、周辺シール材を介して貼り合わせ、その空隙に液晶材料を注入することで、液晶表示装置とすることができる。
【0213】
本発明に係る液晶表示装置は、通常、上記本発明に係るカラーフィルタ上に配向膜を形成し、この配向膜上にスペーサを散布した後、対向基板と貼り合わせて液晶セルを形成し、形成した液晶セルに液晶を注入し、対向電極に結線して作製される。
配向膜は、ポリイミド等の樹脂膜が好適である。配向膜の形成には、通常、グラビア印刷法及び/又はフレキソ印刷法が採用され、配向膜の厚さは数10nmとされる。熱焼成によって配向膜の硬化処理を行った後、紫外線の照射やラビング布による処理によって表面処理し、液晶の傾きを調整しうる表面状態に加工される。
【0214】
スペーサは、対向基板とのギャップ(隙間)に応じた大きさのものが用いられ、通常2〜8μmのものが好適である。カラーフィルタ基板上に、フォトリソグラフィ法によって透明樹脂膜のフォトスペーサー(PS)を形成し、これをスペーサの代わりに活用することもできる。
対向基板としては、通常、アレイ基板が用いられ、特にTFT(薄膜トランジスタ)基板が好適である。又、対向基板との貼り合わせのギャップは、液晶パネルの用途によって異なるが、通常2μm以上、8μm以下の範囲で選ばれる。対向基板と貼り合わせた後、液晶注入口以外の部分は、エポキシ樹脂等のシール材によって封止する。シール材は、UV照射及び/又は加熱することによって硬化させ、液晶セル周辺がシールされる。
【0215】
周辺をシールされた液晶セルは、パネル単位に切断した後、真空チャンバー内で減圧とし、上記液晶注入口を液晶に浸漬した後、チャンバー内をリークすることによって、液晶を液晶セル内に注入する。液晶セル内の減圧度は、通常1×10-2Pa以上、好ましくは1×10-3以上、又、通常1×10-7Pa以下、好ましくは1×10-6Pa以下の範囲である。又、減圧時に液晶セルを加温するのが好ましく、加温温度は通常30℃以上、好ましくは50℃以上、又、通常100℃以下、好ましくは90℃以下の範囲である。減圧時の加温保持は、通常10分間以上、60分間以下の範囲とされ、その後、液晶中に浸漬される。
液晶を注入した液晶セルは、液晶注入口をUV硬化樹脂を硬化させて封止することによって、液晶表示装置が完成する。尚、液晶の種類には特に制限がなく、芳香族系、脂肪族系、多環状化合物等、従来から知られている液晶であって、リオトロピック液晶、サーモトロピック液晶等の何れでもよい。サーモトロピック液晶には、ネマティック液晶、スメスティック液晶及びコレステリック液晶等が知られているが、何れであってもよい。
[3−3]有機ELディスプレイ
本発明のカラーフィルタを用いて有機ELディスプレイを作成する場合、例えば図4に示すように、まず透明支持基板10上に、着色樹脂組成物により形成されたパターン(すなわち、画素20、及び隣接する画素20の間に設けられた樹脂ブラックマトリックス(図示せず))が形成されてなるカラーフィルタを作製し、該カラーフィルタ上に有機保護層30及び無機酸化膜40を介して有機発光体500を積層することによって、有機EL素子100を作製することができる。なお、画素20及び樹脂ブラックマトリックスの内、少なくとも一つは本発明の着色樹脂組成物を用いて作製されたものである。有機発光体500の積層方法としては、カラーフィルタ上面へ透明陽極50、正孔注入層51、正孔輸送層52、発光層53、電子注入層54、及び陰極55を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体500を無機酸化膜40上に貼り合わせる方法などが挙げられる。このようにして作製された有機EL素子100を用い、例えば「有機ELディスプレイ」(オーム社,2004年8月20日発光,時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載された方法等にて、有機ELディスプレイを作製することができる。
なお、本発明のカラーフィルタは、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。
【実施例】
【0216】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。尚、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0217】
[1](C)バインダ樹脂の合成
合成例1:バインダ樹脂D((C−4)一般式(1)で示される化合物を必須とするモノマー成分を重合してなるポリマー)の合成
反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート400重量部を仕込み、窒素置換したあと、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90℃まで昇温した。
一方、モノマー槽中にジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート30重量部、メタクリル酸60重量部、メタクリル酸シクロヘキシル110重量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート5.2重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40重量部を仕込み、連鎖移動剤槽にn−ドデシルメルカプタン5.2重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート27重量部を仕込み、反応槽の温度が90℃に安定してからモノマー槽および連鎖移動剤槽から滴下を開始し、重合を開始させた。温度を90℃に保ちながら滴下をそれぞれ135分かけて行い、滴下が終了して60分後に昇温を開始して反応槽を110℃にした。3時間、110℃を維持した後、セパラブルフラスコにガス導入管を付け、酸素/窒素=5/95(v/v)混合ガスのバブリングを開始した。次いで、反応槽に、メタクリル酸グリシジル39.6部、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)0.4部、トリエチルアミン0.8部を仕込み、そのまま110℃で9時間反応させた。
室温まで冷却し、重量平均分子量8000,酸化101mgKOH/gの重合体溶液を得た。
【0218】
合成例2:バインダ樹脂E((C−4)一般式(1)で示される化合物を必須とするモノマー成分を重合してなるポリマー)の合成
反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート400重量部を仕込み、窒素置換したあと、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90℃まで昇温した。
一方、モノマー槽中にジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート30重量部、メタクリル酸60重量部、メタクリル酸ベンジル110重量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート5.2重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40重量部を仕込み、連鎖移動剤槽にn−ドデシルメルカプタン5.2重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート27重量部を仕込み、反応槽の温度が90℃に安定してからモノマー槽および連鎖移動剤槽から滴下を開始し、重合を開始させた。温度を90℃に保ちながら滴下をそれぞれ135分かけて行い、滴下が終了して60分後に昇温を開始して反応槽を110℃にした。3時間、110℃を維持した後、セパラブルフラスコにガス導入管を付け、酸素/窒素=5/95(v/v)混合ガスのバブリングを開始した。次いで、反応槽に、メタクリル酸グリシジル56.1部、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)0.4部、トリエチルアミン0.8部を仕込み、そのまま110℃で9時間反応させた。
室温まで冷却し、重量平均分子量8700,酸化68mgKOH/gの重合体溶液を得た。
【0219】
合成例3:バインダ樹脂Fの合成
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145重量部を、窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。ここにスチレン10重量部、グリシジルメタクリレート85.2重量部およびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成社製FA−513M)66重量部を滴下し、さらに2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル8.47重量部を3時間かけて滴下し、90℃で2時間攪拌し続けた。
次に反応容器内を空気置換し、アクリル酸43.2重量部に、トリスジメチルアミノメチルフェノール0.7重量部およびハイドロキノン0.12重量部を投入し、100℃で12時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)28.5重量部、トリエチルアミン0.7重量部を加え、100℃で3.5時間反応させた。
こうして得られたバインダー樹脂の、GPCにより測定した重量平均分子量Mwは約8400、酸価は33mgKOH/gであった。
【0220】
合成例4:バインダ樹脂Gの合成
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート35部、1−メトキシ−2−プロパノール8.8部、V−59(和光純薬(株)製 アゾ系重合開始剤)1.5部を反応容器に仕込み、窒素雰囲気下に、80℃に昇温し、ベンジルメタクリレート9.5部、メチルメタクリレート6.5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート3.5部、メタクリル酸10.7部を2時間かけて滴下、さらに4時間撹拌を行い、重合反応液を得た。さらにこの重合反応液に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート25.5部を加え、p−メトキシフェノール0.05部、トリフェニルホスフィン0.3部を添加、溶解させた後、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアクリレート17.5部を滴下し、85℃、24時間反応させ、側鎖にエチレン性不飽和基を有する樹脂溶液を得た。このようにして得られたバインダ樹脂のGPCによる重合平均分子量はポリスチレン換算で18000、またKOHによる中和滴定を行ったところ、酸価は50であった。(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアクリレートによるカルボン酸への導入率は、反応前後の酸価から66%であった。
<実施例1〜4及び比較例1、2>
【0221】
[2]着色樹脂組成物の調製
(A)顔料として、平均一次粒径15nmのC.I.ピグメントグリーン36を6.85重量部、平均一次粒径25nmのC.I.ピグメントイエロー150を2.93重量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート60.00重量部、(B)分散剤として表−1に記載の各種を固形分換算で1.96重量部、および表−1に記載の(C)バインダ樹脂を固形分換算で3.26重量部、径0.5mmのジルコニアビーズ225重量部をステンレス容器に充填し、ペイントシェーカーにて6時間分散させて緑色顔料分散液を調製した。
続いて、前記の緑色顔料分散液に、表−2記載の各成分を混合して、着色樹脂組成物を調製した。
【表1】

分散剤A:以下の方法にて合成した(B)分散剤。
共重合体中のアミノ基(ジメチルアミノ基)を4級化しなかった以外は、特開平1−229014号公報の実施例1に準じて、3級アミノ基を有するメタクリル系A−Bブロック共重合体を合成した。得られた共重合体の重量平均分子量Mwは9000、アミン価は121mgKOH/g、酸価は0mgKOH/gであった。またB−ブロックにおける「側鎖にアミノ基を有する繰り返し単位」が下記式(i)で表される構造であり、また下記式(ii)で表される繰り返し単位の、A−ブロックにおける割合は11モル%であった。
【化29】

なおアミン価は、以下の方法で測定した。
<アミン価の測定>
100mLのビーカーに分散剤の0.5〜1.5gを精秤し、50mLの酢酸で溶解する。pH電極を備えた自動滴定装置を使って、この溶液を0.1mol/LのHCLO酢酸溶液にて中和滴定する。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点とし次式によりアミン価を求める。
アミン価 [mgKOH/g]=(561×V)/(W×S)
(但し、W:分散剤試料秤取量[g]、V:滴定終点での滴定量[mL]、S:分散剤試料の固形分濃度[wt%]である。)

分散剤B:ルーブリゾール社製「Solsperse 24000GR」
(F−1)窒素原子を含有するグラフト共重合体に相当。吸着基が下記構造であり、アミン価が39mgKOH/g、酸価が33mgKOH/gであるポリエステル酸アミドアミン塩である高分子分散剤。
【化30】

分散剤C:ビックケミー社製「Disperbyk2000」
(F−2)その他のアクリル系ブロック共重合体に相当。吸着基が主に下記構造
【化31】

であり、アミン価が10mgKOH/g程度である、主鎖がメタクリル酸由来の繰り返し単位からなるポリマーであるブロック共重合体。
【表2】

得られた着色樹脂組成物につき、粘度変化、着色樹脂膜の溶解時間、コントラスト比を測定した。測定方法は、各々以下に記し、測定結果は表−1に示す。
【0222】
[3]着色樹脂組成物の粘度変化
[2]で得られた着色樹脂組成物について、製造(調製)直後、及び、23℃の恒温槽に2週間静置した後の粘度(20rpm)を東機産業社製E型粘度計「RE-80L」を用いて測定した。各実施例及び比較例の着色樹脂組成物についての粘度と2週間(14日間)での粘度変化率を比較し、4%未満であったものを○、4%以上10%未満であったものを△、10%以上であったものを×とした。その結果を表−1に示す。
【0223】
[4]着色樹脂膜の製造
クロムが蒸着されたガラス基板に、[2]で得られた着色樹脂組成物をそれぞれスピンコート塗布し、80℃のホットプレートにて3分間プリベークを行った。塗布に際しては乾燥後、色座標y=0.6となる膜厚となるように回転数を調整した。
【0224】
[5]着色樹脂膜の現像溶解時間の評価
[4]で得られた着色樹脂膜に対し、高圧水銀灯によりマスクパターンを通して60mJ/cm2で露光した後、0.04重量%水酸化カリウム水溶液(現像液温度23℃)を使用して圧力0.25MPaのスプレー現像を行い、着色樹脂膜が溶解し、基板面が露出するまでの時間(現像溶解時間)を測定した。各実施例及び比較例の着色樹脂組成物についての現像溶解時間を測定し、100秒未満であったものを○、100秒以上120未満であったものを△、120以上であったものを×とした。その結果を表−1に示す。
【0225】
[6]カラーフィルタの製造
透明ガラス基板上に、上記[4]と同様にして形成された着色樹脂膜に対し、上記[5]と同様に現像を行い、十分な水でリンスした後、クリーンエアで乾燥した。その後、230℃のオーブンにて30分間ポストベークを行った。乾燥後の着色樹脂膜の膜厚は2.1μm程度であった。
【0226】
[7][カラーフィルタのコントラスト比の測定]
図2(a),(b)は、いずれも、着色板の平行透過光および直交透過光の色度を測定する方法を説明するための模式的な図である。まず、図2(a)に示すように、上記[6]で得られたカラーフィルタ(以下「着色板34」と称す)の両側に偏光板33,35を重ねて、偏光板33,35の偏光軸を互いに平行にした状態で、一方の偏光板35の側からバックライト37の光36を当てて、他方の偏光板33を透過した光の輝度Lp(平行透過光の輝度)を色彩輝度計トプコンテクノハウス製「BM−5A」32を使用して、2゜視野の条件で測定した。
次に、図2(b)に示すように、偏光板33,35の偏光軸を互いに直交させた状態で、一方の偏光板35側からバックライト37の光36を当て、他方の偏光板33を透過した光の輝度Lc(直交透過光の輝度)を、色彩輝度計32にて上記Lpと同様に測定した。
【0227】
なお、バックライト37は、図1に示すような発光スペクトルを有するものを用いた。このスペクトルの測定は、コニカミノルタ製分光放射輝度計CS−1000Aと、光量を制御し、測定を容易にするため、ケンコー社製のフィルター「NDフィルターND4」を用いて測定し、算出した。
また、偏光板33,35は、図3のスペクトル特性を持つものを用いた。
[6]で得られた各実施例および比較例のカラーフィルタのコントラスト比は、平行透過光の輝度Lpと直交透過光の輝度Lcから式Lp/Lcを用いて算出した。結果を表−1に示す。
【産業上の利用可能性】
【0228】
本発明によれば、(1)近年の高度に微粒化された顔料を、少量の添加量で効率よく分散でき、その結果、高透過率、高コントラスト、低膜厚のカラーフィルタを製造し得る着色樹脂組成物を提供できる。また、(2)現像液に対する溶解性が良好で、現像行程において所定の時間内で現像が可能で、また、基板上の非画像部に着色樹脂組成物の未溶解物が残存することがなく、基板との密着性にも優れ、硬化性等の画像形成能を低下させることながなく、高透過率、高コントラスト、低膜厚のカラーフィルタを製造し得る着色樹脂組成物を提供できる。さらに、(3)前記に記載のカラーフィルタ基板を使用した、高品質の液晶表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0229】
【図1】図1は、バックライト37の発光スペクトルを表す図である。
【図2】図2は、着色板の平行透過光および直交透過光の色度を測定する方法を説明するための模式的な図である。
【図3】図3は、偏光板33、35のスペクトル特性を示す図である。
【図4】図4は、本発明のカラーフィルタを備えた有機EL素子の一例を示す断面概略図である。
【符号の説明】
【0230】
10 透明支持基板
20 画素
30 有機保護層
32 色彩輝度計
33,35 偏光板
34 着色板
36 光
37 バックライト
40 無機酸化膜
50 透明陽極
51 正孔注入層
52 正孔輸送層
53 発光層
54 電子注入層
55 陰極
100 有機EL素子
500 有機発光体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)顔料、(B)分散剤、(C)バインダ樹脂、(D)多官能モノマー、(E)光重合開始剤系を含有するカラーフィルタ用着色樹脂組成物であって、(B)分散剤の固形分におけるアミン価が80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であり、かつ、(B)分散剤が、側鎖にアミノ基を有するB−ブロックと、アミノ基を有さないA−ブロックからなるブロック共重合体である、カラーフィルタ用着色樹脂組成物。
【請求項2】
(B)分散剤のA−ブロックが、A−ブロック中で下記式(I)で表される部分構造を5乃至40モル%含有する、請求項1に記載のカラーフィルタ用着色樹脂組成物。
【化1】


(上記式(I)において、nは1〜5のいずれかの整数を示す。Rは、水素原子またはメチル基を表す。)
【請求項3】
さらに(F−1)窒素原子を含有するグラフト共重合体、(F−2)その他のアクリル系ブロック共重合体、(F−3)ウレタン樹脂分散剤から選ばれた少なくとも一つを含有してなる、請求項1または2に記載のカラーフィルタ用着色樹脂組成物。
【請求項4】
(A)顔料が平均一次粒径10乃至30nmである有機顔料を含む、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用着色樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の着色樹脂組成物を用いて形成された画素を有する、カラーフィルタ。
【請求項6】
請求項5に記載のカラーフィルタを用いて形成したことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項7】
請求項5に記載のカラーフィルタを用いて形成したことを特徴とする、有機ELディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−25813(P2009−25813A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160497(P2008−160497)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】