説明

研削装置

【課題】中心から外周に向けて徐々に厚くなるように保護膜を被覆する保護膜被覆機構を備えるとともに、被加工物を均一な厚みに研削することができる研削装置を提供する。
【解決手段】被加工物10を保持する円錐状の保持面を備えたチャックテーブル532と、研削手段と、研削送り手段と、支持面に液状樹脂を滴下し被加工物を回転させて支持面に保護膜210を被覆する保護膜形成手段とを具備する研削装置であって、保護膜210の厚みを計測する厚み計測手段と、対面態を調整する対面状態調整手段と、保護膜210の厚み情報を記憶するメモリを備え、厚み情報に基づいて対面状態調整手段を制御する制御手段とを具備し、制御手段は、保護膜210の厚み情報に基づいて保護膜210の外周から中心に至る勾配を求め、外周から中心に至る勾配とチャックテーブル532の円錐状の保持面における外周から中心に至る勾配に基づいて対面状態調整手段を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の板状の被加工物の被研削面と反対側の支持面に保護膜を形成した後に被研削面を研削する研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体デバイスを製造している。また、サファイヤ基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体等が積層された光デバイスウエーハもストリートに沿って切断することにより個々の発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。このようにして分割されるウエーハは、ストリートに沿って切断する前に研削装置によって裏面が研削され、所定の厚みに加工される。
【0003】
研削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブル上に保持された被加工物を研削する研削手段とを具備している。この研削手段は、回転スピンドルと、該回転スピンドルの下端に設けられたホイールマウントと、該ホイールマウントの下面に着脱可能に装着される研削ホイールとを具備している。このような研削装置によってウエーハの裏面である被研削面を研削する場合には、被研削面と反対側の支持面に保護テープを貼着し、この保護テープ側をチャックテーブルに保持して被研削面を研削する。
【0004】
しかるに、保護テープは厚みが均一ではなく、従って被加工物の支持面に貼着された保護テープ側をチャックテーブルに保持して被研削面を研削すると、被加工物を均一な厚みに研削することができないという問題がある。また、被加工物の被研削面と反対側の支持面に保護テープを貼着し、この保護テープ側をチャックテーブルに保持して被研削面を研削した後、保護テープを被研削面と反対側の支持面から剥離する際に研削されて薄くなったウエーハが損傷する場合がある。
【0005】
上述した問題を解消するために、被加工物の被研削面と反対側の支持面に液状樹脂を被覆して固化させることにより保護膜を形成し、この保護膜側をチャックテーブルに保持して被研削面を研削する研削方法が下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−3611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、被加工物の被研削面と反対側の支持面に液状樹脂を被覆する方法としては、回転する被加工物の中心部に液状樹脂を滴下し、この滴下された液状樹脂を遠心力によって外周に向けて移動させるスピンコート法であるため、保護膜の厚みが被加工物の中心から外周に向けて徐々に厚くなっている。このように中心から外周に向けて徐々に厚くなっている保護膜が被覆された被加工物の被研削面を研削すると、中央部が凹状になるという問題がある。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、被加工物の被研削面と反対側の支持面に中心から外周に向けて徐々に厚くなるように保護膜を被覆する保護膜被覆機構を備えるとともに、保護膜が被覆された被加工物を均一な厚みに研削することができる研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持する円錐状の保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削面を有する研削ホイールを備えた研削手段と、該研削手段を該チャックテーブルに保持された被加工物に対して研削送りする研削送り手段と、を具備する研削装置において、
被加工物の被研削面と反対側の支持面に液状樹脂を滴下し被加工物を回転させることによる遠心力によって支持面に保護膜を被覆する保護膜形成手段と、
該被加工物の被研削面と反対側の支持面に被覆された該保護膜の厚みを計測する厚み計測手段と、
該チャックテーブルの保持面と該研削ホイールの研削面との対面状態を調整する対面状態調整手段と、
該厚み計測手段によって計測された該保護膜の厚み情報を記憶するメモリを備え、該メモリに記憶された厚み情報に基づいて該対面状態調整手段を制御する制御手段と、を具備し、
該制御手段は、該厚み計測手段によって計測された該保護膜の厚み情報に基づいて該保護膜の表面における外周から中心に至る勾配を求め、該保護膜の表面における外周から中心に至る勾配と該チャックテーブルの円錐状の保持面における外周から中心に至る勾配に基づいて該対面状態調整手段を制御する、
ことを特徴とする研削装置が提供される。
【0010】
上記制御手段は、メモリに記憶された厚み情報に基づいて該保護膜の厚みが厚くなるに従って被加工物の外周縁が中心より先に研削ホイールの研削面に当接するように補正することが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明による研削装置においては、被加工物の被研削面と反対側の支持面に液状樹脂を滴下し被加工物を回転させることによる遠心力によって支持面に保護膜を被覆する保護膜形成手段と、被加工物の被研削面と反対側の支持面に被覆された保護膜の厚みを計測する厚み計測手段と、チャックテーブルの円錐状の保持面と研削ホイールの研削面との対面状態を調整する対面状態調整手段と、厚み計測手段によって計測された保護膜の厚み情報を記憶するメモリを備え、該メモリに記憶された厚み情報に基づいて対面状態調整手段を制御する制御手段とを具備し、制御手段は厚み計測手段によって計測された保護膜の厚み情報に基づいて保護膜の上面における外周から中心に至る勾配を求め、保護膜の上面における外周から中心に至る勾配とチャックテーブルの円錐状の保持面における外周から中心に至る勾配に基づいて対面状態調整手段を制御するので、保護膜形成手段によって被加工物の被研削面と反対側の支持面に被覆された保護膜が中心から外周に向けて徐々に厚くなるように形成されても被加工物の厚みを均一に研削加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に従って構成された研削装置の斜視図。
【図2】図1に示す研削装置に装備されるチャックテーブル機構の斜視図。
【図3】図2に示すチャックテーブル機構を構成するチャックテーブル支持機構の平面図。
【図4】図2に示すチャックテーブル機構を構成するチャックテーブルの断面図。
【図5】図1に示す研削装置に装備される制御手段のブロック構成図。
【図6】被加工物としてのウエーハの斜視図。
【図7】図1に示す研削装置に装備される保護膜形成手段によって実施される保護膜形成工程の説明図。
【図8】図1に示す研削装置に装備される厚み計測手段によって実施される厚み計測工程の説明図。
【図9】図8に示す厚み計測工程によって計測されたウエーハの支持面に形成された保護膜の厚みを示す説明図。
【図10】保護膜が被覆されたウエーハをチャックテーブルの保持面に保持した状態を示す断面図。
【図11】図1に示す研削装置において実施する対面状態調整工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従って構成された研削装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1には本発明に従って構成された研削装置の斜視図が示されている。
図1に示す研削装置は、全体を番号2で示す装置ハウジングを具備している。装置ハウジング2は、細長く延在する直方体形状の主部21と、該主部21の後端部(図1において右上端)に設けられ上方に延びる直立壁22とを有している。直立壁22の前面には、上下方向に延びる一対の案内レール221、221が設けられている。この一対の案内レール221、221に研削手段としての研削ユニット3が上下方向に移動可能に装着されている。
【0015】
研削ユニット3は、移動基台31と該移動基台31に装着されたスピンドルユニット32を具備している。移動基台31は、後面両側に上下方向に延びる一対の脚部311、311が設けられており、この一対の脚部311、311に上記一対の案内レール221、221と摺動可能に係合する被案内溝312、312が形成されている。このように直立壁22に設けられた一対の案内レール221、221に摺動可能に装着された移動基台31の前面には前方に突出した支持部313が設けられている。この支持部313にスピンドルユニット32が取り付けられる。
【0016】
スピンドルユニット32は、支持部313に装着されたスピンドルハウジング321と、該スピンドルハウジング321に回転自在に配設された回転スピンドル322と、該回転スピンドル322を回転駆動するための回転駆動手段としてのサーボモータ323とを具備している。回転スピンドル322の下端部はスピンドルハウジング321の下端を越えて下方に突出せしめられており、その下端にはマウンター324が設けられている。このマウンター324の下面に研削ホイール325が装着される。研削ホイール325は、環状の基台326と該基台326の下面に環状に装着された研削砥石327とからなっており、環状の基台326がマウンター324に締結ボルト328によって取付けられる。
【0017】
図1に示す研削装置は、上記研削ユニット3を上記一対の案内レール221、221に沿って上下方向に移動せしめる研削送り手段4を備えている。この研削送り手段4は、直立壁22の前側に配設され上下方向に延びる雄ねじロッド41を具備している。この雄ねじロッド41は、その上端部および下端部が直立壁22に取り付けられた軸受部材42および43によって回転自在に支持されている。上側の軸受部材42には雄ねじロッド41を回転駆動するための駆動源としてのパルスモータ44が配設されており、このパルスモータ44の出力軸が雄ねじロッド41に伝動連結されている。移動基台31の後面にはその幅方向中央部から後方に突出する連結部(図示していない)も形成されており、この連結部には上下方向に延びる貫通雌ねじ穴が形成されており、この雌ねじ穴に上記雄ねじロッド41が螺合せしめられている。従って、パルスモータ44が正転すると移動基台31即ち研削ユニット3が下降即ち前進せしめられ、パルスモータ44が逆転すると移動基台31即ち研削ユニット3が上昇即ち後退せしめられる。
【0018】
図1および図2を参照して説明を続けると、ハウジング2の主部21の後半部にはチャックテーブル機構5が配設されている。チャックテーブル機構5は、移動基台51と、該移動基台51上にチャックテーブル支持機構52によって支持されたチャックテーブル53を含んでいる。移動基台51は、主部21の後半部に前後方向(直立壁22の前面に垂直な方向)である矢印23aおよび23bで示す方向に延在する一対の案内レール23、23上に摺動自在に配設されており、後述するチャックテーブル機構移動手段56によって図1に示す被加工物搬入・搬出域24と上記スピンドルユニット32を構成する研削ホイール325の研削砥石327と対向する研削域25との間で移動せしめられる。
【0019】
チャックテーブル支持機構52は、チャックテーブル支持板521と、該チャックテーブル支持板521上に配設されチャックテーブル53を回転可能に支持する円筒部材522と、チャックテーブル支持板521を移動基台51上に支持する支持手段523と具備している。支持手段523は、図3に示すように3つの支持部524a、524b、524cによって支持する3点支持機構からなっている。第1の支持部524aは支点部となっており、第2の支持部524bと第3の支持部524cは可動部となっている。可動部である第2の支持部524bおよび第3の支持部524cは、図2に示すように上下位置調節手段525および526によって支持されている。上下位置調節手段525および526は、例えばパルスモータと該パルスモータによって作動せしめられるスクリュー機構からなっている。従って、上下位置調節手段525および526をそれぞれ作動し第2の支持部524bおよび第3の支持部524cの高さ位置を調節することにより、チャックテーブル53の姿勢、即ち後述するチャックテーブル53の保持面と上記研削ホイール325を構成する研削砥石327の下面である研削面との対面状態を調整することができる。従って、上下位置調節手段525および526を含む支持手段523は、チャックテーブル53の保持面と研削ホイール325の研削面との対面状態を調整する対面状態調整手段として機能する。
【0020】
次に、チャックテーブル53について、図4を参照して説明する。
図4に示すチャックテーブル53は、円柱状のチャックテーブル本体531と、該チャックテーブル本体531の上面に配設された円形状の吸着保持チャック532とからなっている。チャックテーブル本体531は、ステンレス鋼等の金属材によって形成されており、上面に円形の嵌合凹部531aが形成されており、この嵌合凹部531aの底面外周部に環状の載置棚531bが設けられている。そして、嵌合凹部531aに無数の吸引孔を備えたポーラスなセラミックス等からなる多孔性部材によって形成された吸着保持チャック532が嵌合される。このようにチャックテーブル本体531の嵌合凹部531aに嵌合された吸着保持チャック532は、上面である保持面532aが図4において誇張して示すように回転中心P1を頂点として円錐形に形成されている。この円錐形に形成された保持面532aは、その半径をRとし、頂点の高さをHとすると、外周から中心に至る勾配(H/R)が図示の実施形態においては0.0002に設定されている。なお、図示の実施形態においては、吸着保持チャック532の直径が200mm(半径R:100mm)、高さHが20μmに設定されている。このように設定されたチャックテーブル53の保持面532aにおける外周から中心に至る勾配(H/R)は、後述する制御手段のランダムアクセスメモリ(RAM)に記憶される。また、チャックテーブル本体531には、嵌合凹部531aに連通する連通路531cが形成されており、この連通路531cが図示しない吸引手段に連通されている。従って、吸着保持チャック532の上面である保持面532a上に被加工物を載置し、図示しない吸引手段を作動することにより被加工物は保持面532a上に吸引保持される。このように構成されたチャックテーブル53は、図2に示す円筒部材522内に配設されたサーボモータ54によって回転せしめられる。
【0021】
図2を参照して説明を続けると、図示の研削装置は、上記チャックテーブル機構5を一対の案内レール23に沿ってチャックテーブル53の上面である保持面と平行に矢印23aおよび23bで示す方向に移動せしめるチャックテーブル機構移動手段56を具備している。チャックテーブル機構移動手段56は、一対の案内レール23間に配設され案内レール23と平行に延びる雄ねじロッド561と、該雄ねじロッド561を回転駆動するサーボモータ562を具備している。雄ねじロッド561は、上記移動基台51に設けられたねじ穴511と螺合して、その先端部が一対の案内レール23、23を連結して取り付けられた軸受部材563によって回転自在に支持されている。サーボモータ562は、その駆動軸が雄ねじロッド561の基端と伝動連結されている。従って、サーボモータ562が正転すると移動基台51即ちチャックテーブル機構5が矢印23aで示す方向に移動し、サーボモータ562が逆転すると移動基台51即ちチャックテーブル機構5が矢印23bで示す方向に移動せしめられる。矢印23aおよび23bで示す方向に移動せしめられるチャックテーブル機構5は、図1における被加工物搬入・搬出域24と研削域25に選択的に位置付けられる。
【0022】
図1に基づいて説明を続けると、図示の実施形態における研削装置は、上記被加工物搬入・搬出域24に対して一方の側に配設され研削加工前の被加工物および研削加工後の被加工物を収容するカセット11と、該カセット11と被加工物搬入・搬出域24との間に配設され被加工物の中心合わせを行う中心合わせ手段12と、被加工物搬入・搬出域24に対して他方の側に配設され研削加工後の被加工物を洗浄するためのスピンナー洗浄手段13と、カセット11内に収納された被加工物を中心合わせ手段12に搬送するとともにスピンナー洗浄手段13で洗浄された被加工物をカセット11に搬送する被加工物搬送手段14と、中心合わせ手段12上に載置され中心合わせされた被加工物を被加工物搬入・搬出域24に位置付けられたチャックテーブル53上に搬送する被加工物搬入手段15と、被加工物搬入・搬出域24に位置付けられたチャックテーブル53上に載置されている研削加工後の被加工物をスピンナー洗浄手段13に搬送する被加工物搬出手段16を具備している。
【0023】
図示の実施形態における研削装置は、図1において装置ハウジング2の主部21の左下部に配設され被加工物の被研削面と反対側の支持面に保護膜を形成する保護膜形成手段7を具備している。この保護膜形成手段7は、被加工物を保持するスピンナーテーブル71と、該スピンナーテーブル71を回転駆動する電動モータ72と、スピンナーテーブル71に保持された被加工物の支持面に液状樹脂を供給する液状樹脂供給手段73と、被加工物の支持面に被覆された樹脂保護膜を固化させるための保護膜固化手段74とからなっている。スピンナーテーブル71は、円盤状の基台711とポーラスセラミック材によって円盤状に形成され吸着保持チャック712とからなっており、吸着保持チャック712の上面(保持面)に載置された被加工物を図示しない吸引手段を作動することにより吸引保持する。
【0024】
液状樹脂供給手段73は、液状樹脂を収容する液状樹脂収容容器731と、該液状樹脂収容容器731の下端に接続されたノズル732と、液状樹脂収容容器731を支持する容器支持部材733を具備している。容器支持部材733は、電動モータ734によって回動せしめられ、液状樹脂収容容器731およびノズル732をスピンナーテーブル71に中心軸上の液状樹脂供給位置と、スピンナーテーブル71から退避する待機位置に位置付ける。
【0025】
保護膜固化手段74は、図示の実施形態においては紫外線照射器741と、該紫外線照射器741を支持する支持ロッド742とからなっている。なお、支持ロッド742は図示しない回動機構によって矢印で示すように適宜回動せしめられ、紫外線照射器741をスピンナーテーブル71の上方位置である照射位置と、スピンナーテーブル71から退避する待機位置に位置付けるように構成されている。
【0026】
図1を参照して説明を続けると、図示の実施形態における研削装置は、上記保護膜形成手段7を構成するスピンナーテーブル71上において、被加工物の被研削面と反対側の支持面に被覆された保護膜の厚みを計測する厚み計測手段8を具備している。厚み計測手段8は、図示の実施形態においては上記保護膜固化手段74の支持ロッド742に紫外線照射器741と反対側に突出して装着されている。この厚み計測手段8は、非接触式の厚み計測器からなり、例えば浜松ホトニクス株式会社によって製造販売されている「Optical NanoGauge:形式C11627」を用いることができる。
【0027】
図示の実施形態における研削装置は、図5に示す制御手段9を具備している。制御手段9はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)91と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)92と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)93と、入力インターフェース94および出力インターフェース95とを備えている。このように構成された制御手段9の入力インターフェース94には、厚み計測手段8等から検出信号が入力されるとともに、ハウジング2の前部に配設された入力手段96から上記液状樹脂供給手段73の液状樹脂収容容器731に収容される液状樹脂の種類等が入力される。また、出力インターフェース95からは上記回転スピンドル322を回転駆動するための電動モータ323、研磨送り手段4のパルスモータ44、チャックテーブル53を回転駆動するためのサーボモータ54、チャックテーブル機構移動手段56のサーボモータ562、保護膜形成手段7を構成するスピンナーテーブル71を回転駆動する電動モータ72、液状樹脂供給手段73の電動モータ734、厚み計測手段8、中心合わせ手段12、スピンナー洗浄手段13、被加工物搬送手段14、被加工物搬入手段15、被加工物搬出手段16等に制御信号を出力する。
【0028】
図示の実施形態における研削装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
上述した研削装置によって被加工物としてのウエーハを研削するには、図6に示す研削加工前のウエーハ10が収容されたカセット11を所定のカセット載置部に載置する。なお、図6に示す研削加工前のウエーハ10は、例えば厚みが700μmのシリコンウエーハからなり、表面10aに複数のストリート101が格子状に配列されているとともに、該複数のストリート101によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイス102が形成されている。このように形成されたウエーハ10は、裏面10bを研削して所定の厚み(例えば、100μm)に形成される。従って、被加工物としてのウエーハ10は、裏面10bが被研削面となり、該被研削面と反対側の表面10aが支持面となる。なお、ウエーハ10は、表面10aを上側にしてカセット11に収容される。
【0029】
上述したように研削加工前のウエーハ10が収容されたカセット11を所定のカセット載置部に載置し、研削開始スイッチ(図示せず)が投入されると、制御手段9は被加工物搬送手段14を作動してカセット11に収容されている研削前のウエーハ10の裏面10bをハンド141によって吸引保持し、カセット11から搬出して保護膜形成手段7のスピンナーテーブル71にウエーハ10の裏面10b側(被研削面側)を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、スピンナーテーブル71上にウエーハ10を吸引保持する。従って、スピンナーテーブル71上に保持されたウエーハ10は、図7の(a)に示すように被研削面と反対側の支持面である表面10aが上側となる。このようにしてスピンナーテーブル71上にウエーハ10を吸引保持したならば、制御手段9は液状樹脂供給手段73の電動モータ734を作動して図7の(a)に示すように液状樹脂収容容器731およびノズル732をスピンナーテーブル71上に保持されたウエーハ10の中心部に位置付け、液状樹脂供給手段73を作動してノズル732から例えば硫酸と過酸化水素水からなる洗浄液によって溶解するレジスト膜等の液状樹脂200を所定量滴下する。この液状樹脂200は、加熱または紫外線を照射すると固化する樹脂が用いられる。なお、液状樹脂200の滴下量は、図示の実施形態においてはウエーハ10の支持面である表面10aに形成される保護膜の厚みが10μm程度になるように設定されている。このようにして液状樹脂200を滴下したならば、制御手段9は液状樹脂供給手段73の電動モータ734を作動して液状樹脂収容容器731およびノズル732を図1に示す待機位置に位置付ける。次に、制御手段9はスピンナーテーブル71を図7の(a)において矢印で示す方向に300〜1000rpmの回転速度で所定時間(例えば1分間)回転する。この結果、図7の(b)に示すようにウエーハ10の表面10aの中央領域に滴下された液状樹脂200は、遠心力によって外周部まで流動しウエーハ10の支持面である表面10aを被覆し、保護膜210を形成する。このようにしてウエーハ10の支持面である表面10aに保護膜210を形成したならば、制御手段9は保護膜固化手段74を作動して紫外線照射器741を図7の(b)に示すようにスピンナーテーブル71上に保持されたウエーハ10の上方に位置付け、紫外線照射器741から紫外線を照射することによりウエーハ10の支持面である表面10aに形成された保護膜210を固化せしめる(保護膜形成工程)。このようにしてウエーハ10の支持面である表面10aに形成された保護膜210は、上述したように中央領域に滴下された液状樹脂200を遠心力によって外周部まで流動するために、図7の(c)に誇張して示すように表面210aが凹状に窪み、厚みが中心から外周に向けて徐々に厚くなっている。
【0030】
上述したように保護膜形成工程を実施したならば、ウエーハ10の支持面である表面10aに形成された保護膜210の外周部と中心の厚みを計測する厚み計測工程を実施する。即ち、制御手段9は液状樹脂供給手段73の電動モータ734を作動して厚み計測手段8を図8において実線で示すようにウエーハ10の支持面である表面10aに形成された保護膜210の外周縁部に位置付ける。このようにして保護膜210の外周縁部に位置付けられた厚み計測手段8は、保護膜210の外周縁部の厚み(t1)を検出し、厚み信号を制御手段9に送る。また、制御手段9は液状樹脂供給手段73の電動モータ734を作動して厚み計測手段8を図8において2点鎖線で示すようにウエーハ10の支持面である表面10aに形成された保護膜210の中心に位置付ける。このようにして保護膜210の中心に位置付けられた厚み計測手段8は、保護膜210の中心の厚み(t2)を検出し、厚み信号を制御手段9に送る。制御手段9は、厚み計測手段8から送られた保護膜210の外周縁部の厚み(t1)と中心の厚み(t2)情報をランダムアクセスメモリ(RAM)93に記憶する。そして、制御手段9は、保護膜210の外周縁部の厚み(t1)から中心の厚み(t2)を減算して保護膜210の表面210aにおける凹状の窪みの深さ(D)を求める(D=t1−t2)。このようにして保護膜210の表面210aにおける凹状の窪みの深さ(D)を求めたならば、制御手段9は保護膜210が被覆されたウエーハ10の半径(R)と深さ(D)から勾配(D/R)を求め、この勾配(D/R)をランダムアクセスメモリ(RAM)93に記憶する。なお、図9にはウエーハ10の支持面である表面10aに形成された保護膜210に形成された保護膜210の外周縁部および中心部の厚みおよび保護膜210の表面210aの外周から中心に至る勾配(D/R)が示されている。図9示す実施形態においては、外周縁の厚み(t1)が10μm、保護膜210は中心の厚み(t2)が7μmで、深さDが3μmとなる。従って、ウエーハ10の半径(R)を100mmとすると、勾配(D/R=0.003/100)は0.00003となる。
【0031】
上述したように厚み計測工程を実施したならば、制御手段9はスピンナーテーブル71によるウエーハ10の吸引保持を解除する。次に、制御手段9は被加工物搬送手段14を作動してスピンナーテーブル71上に載置されている保護膜形成工程が実施されたウエーハ10の裏面10bをハンド141によって吸引保持し、更にハンド141を180度反転することによりウエーハ10の上下を反転して裏面10bを上側にした状態で中心合わせ手段12に搬送する。従って、中心合わせ手段12に搬送されたウエーハ10は、被研削面である裏面10bが上側となる。そして、制御手段9は中心合わせ手段12を作動して、搬送された研削前のウエーハ10の中心合わせを行う。次に、制御手段9は被加工物搬送手段14を作動して、中心合わせ手段12によって中心合わせされた研削加工前のウエーハ10の裏面10bを吸引保持し、上記搬入・搬出領域24に位置付けられたチャックテーブル53上に搬送する。このとき、ウエーハ10は、支持面である表面10aに形成された保護膜210側がチャックテーブル53上に載置され、被研削面である裏面10bが上側となる。このようにして、搬入・搬出領域24に位置付けられたチャックテーブル53上に載置された研削前のウエーハ10は、図示しない吸引手段が作動することによって図10に示すようにチャックテーブル53上に保護膜210を介して吸引保持される。このようにしてチャックテーブル53上に保護膜210を介して吸引保持された研削加工前のウエーハ10は、図示の実施形態においては円錐形状をなしている。即ち、チャックテーブル53の保持面532aの勾配(H/R)が0.0002で、保護膜210の凹状の表面210aにおける勾配(D/R)が0.00003であるため、チャックテーブル53の保持面532a上に保護膜210を介して吸引保持された研削前のウエーハ10の上面である被加工面(裏面10b)は、図10に示すように円錐形状をなしている。
【0032】
チャックテーブル53上に研削加工前のウエーハ10を吸引保持したならば、制御手段9はチャックテーブル機構移動手段56を作動してチャックテーブル機構5を矢印23aで示す方向に移動し、研削域25に位置付ける。次に、制御手段9はチャックテーブル53の保持面532aに保持されたウエーハ10の被加工面(裏面10b)と研削ホイール325の研削面との対面状態を調整する対面状態調整工程を実施する。この対面状態調整工程は、上記チャックテーブル53の保持面532aの上記勾配(H/R)とウエーハ10の支持面である表面10aに被覆された保護膜210の上記勾配(D/R)および保護膜210の厚みに基づいて、上記チャックテーブル53の保持面と研削ホイール325の研削面との対面状態を調整する対面状態調整手段として機能する上下位置調節手段525および526を含む支持手段523を作動することによって実施する。チャックテーブル53の保持面532aと研削ホイール325を構成する研削砥石327の下面である研削面とは基本的に平行になるように位置付けられているので、チャックテーブル53の保持面532aの勾配(H/R)とウエーハ10の支持面である表面10aに被覆された保護膜210の勾配(D/R)との差分を補正するように対面状態調整手段として機能する上下位置調節手段525および526を調整することにより、ウエーハ10の上面(裏面10b)と研削砥石327の下面である研削面とを平行に位置付ることができる。しかるに、保護膜210は研削ホイール325の研削面である研削砥石327の下面が押圧すると圧縮するため、保護膜210の厚みが厚い程圧縮量が増大する。従って、図11に示すように保護膜210の厚みに対応して保護膜210の厚みが厚くなるに従ってウエーハ10の被研削面である上面(裏面10b)の外周縁が中心より先に研削ホイール325の研削面である研削砥石327の下面に当接するように上下位置調節手段525および526を調整して補正する。なお、保護膜210の厚みに対応した補正値は、保護膜210を形成する樹脂の種類によって圧縮量が異なるため、樹脂の種類と厚みに対応した値を実験的に求め、この実験的に求めた樹脂の種類と厚みに対応した補正値をランダムアクセスメモリ(RAM)93に記憶しておく。そして、制御手段9は、上記保護膜形成工程において用いた樹脂の種類と、上記厚み計測工程において計測した保護膜210の厚みに基づいて上記対面状態調整工程を実施する。
【0033】
上述したように対面状態調整工程を実施したならば、制御手段9はウエーハ10を保持したチャックテーブル53を矢印53aで示す方向に例えば300rpm程度で回転し、上記サーボモータ323を駆動し回転スピンドル322を回転して研削ホイール325を矢印325aで示す方向に例えば6000rpmの回転速度で回転するとともに、上記研削送り手段4のパルスモータ44を正転駆動して研削ユニット3を下降即ち前進せしめる。このとき、チャックテーブル53の中心即ちウエーハの中心を研削ホイール325の複数の研削砥石327が通過する位置に位置付ける。そして、研削送り手段4のパルスモータ44を正転駆動して研削ユニット3を下降即ち前進せしめ、研削ホイール325の複数の研削砥石327をウエーハ10の裏面(上面)に所定の荷重で押圧する。この結果、ウエーハ10の裏面(上面)が均一に研削され、ウエーハ10は均一な厚みに研削される(研削工程)。
【0034】
上記のようにして研削工程を実施したならば、制御手段9は研削送り手段4のパルスモータ44を逆転駆動してスピンドルユニット32を所定位置まで上昇させるとともにサーボモータ323の回転を停止して研削ホイール325の回転を停止し、更に、チャックテーブル53の回転を停止する。
【0035】
次に、制御手段9は図2に示すチャックテーブル機構移動手段56を作動してチャックテーブル53を矢印23bで示す方向に移動して被加工物搬入・搬出域24(図1参照)に位置付ける。このようにしてチャックテーブル53を被加工物搬入・搬出域24に位置付けたならば、制御手段9はチャックテーブル53によるウエーハ10の吸引保持を解除し、ウエーハ搬出手段17を作動して研削加工が実施されたウエーハ10をチャックテーブル53から搬出してスピンナー洗浄手段13に搬送する。
【0036】
上述したように被加工物搬入・搬出域24に位置付けられたチャックテーブル53上から搬出されスピンナー洗浄手段13に搬送されたウエーハ10は、ここで洗浄された後に被加工物搬送手段14よってカセット11の所定位置に収納される。
【0037】
上述したようにカセット11の所定位置に収納されウエーハ10は保護膜除去工程に搬送され、表面10aに被覆された保護膜210が例えば硫酸と過酸化水素水からなる洗浄液によって除去される。なお、保護膜除去手段を上述した研削装置の例えば被加工物搬入・搬出域24とスピンナー洗浄手段13の間に配設してもよい。
【符号の説明】
【0038】
2:装置ハウジング
3:研削ユニット
32:スピンドルユニット
322:回転スピンドル
325:研削ホイール
327:研削砥石
4:研削送り手段
5:チャックテーブル機構
52:チャックテーブル支持機構
525、526:上下位置調節手段
53: チャックテーブル
531:チャックテーブル本体
532:吸着保持チャック
532a:保持面
56:チャックテーブル機構移動手段
11:カセット
12:中心合わせ手段
13:スピンナー洗浄手段
14:被加工物搬送手段
15:被加工物搬入手段
16:被加工物搬出手段
7:保護膜形成手段
71:スピンナーテーブル
73:液状樹脂供給手段
731:液状樹脂収容容器
732:ノズル
74:保護膜固化手段
741:紫外線照射器
8:厚み計測手段
9:制御手段
10:ウエーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する円錐状の保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削面を有する研削ホイールを備えた研削手段と、該研削手段を該チャックテーブルに保持された被加工物に対して研削送りする研削送り手段と、被加工物の被研削面と反対側の支持面に液状樹脂を滴下し被加工物を回転させることによる遠心力によって支持面に保護膜を被覆する保護膜形成手段と、を具備する研削装置において、
該被加工物の被研削面と反対側の支持面に被覆された該保護膜の厚みを計測する厚み計測手段と、
該チャックテーブルの保持面と該研削ホイールの研削面との対面状態を調整する対面状態調整手段と、
該厚み計測手段によって計測された該保護膜の厚み情報を記憶するメモリを備え、該メモリに記憶された厚み情報に基づいて該対面状態調整手段を制御する制御手段と、を具備し、
該制御手段は、該厚み計測手段によって計測された該保護膜の厚み情報に基づいて該保護膜の表面における外周から中心に至る勾配を求め、該保護膜の表面における外周から中心に至る勾配と該チャックテーブルの円錐状の保持面における外周から中心に至る勾配に基づいて該対面状態調整手段を制御する、
ことを特徴とする研削装置。
【請求項2】
該制御手段は、該メモリに記憶された厚み情報に基づいて該保護膜の厚みが厚くなるに従って被加工物の外周縁が中心より先に研削ホイールの研削面に当接するように補正する、請求項1記載の研削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−161848(P2012−161848A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21752(P2011−21752)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】