説明

研磨終了時点の予測・検出方法とその装置並びにリアルタイム膜厚モニタ方法とその装置

【課題】渦電流によるジュール熱損を極小に抑えるとともに、研磨終了時点を精度よく予測・検出し、また除去すべき残膜量及び研磨レート等をその場で精度よく算出して、所定の導電性膜が適正に除去されているかを正確に評価しうる研磨終了時点の予測・検出方法とその装置並びにリアルタイム膜厚モニタ方法とその装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は上記目的を達成するために、所定の導電性膜28に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタ36を近接させ、該インダクタ36で形成される磁束により所定の導電性膜28に誘起される磁束変化をモニタし、研磨中の膜厚が所定の導電性膜28の材質を一因子として決まる表皮深さに対応する膜厚になった場合の磁束変化を基に研磨終了時点を予測するための磁束変化部分を検出し、該磁束変化部分から研磨終了時点を予測し、またその場で研磨レート及び除去すべき残りの膜厚量を算出する方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨終了時点の予測・検出方法とその装置並びにリアルタイム膜厚モニタ方法とその装置に関するものであり、特に、化学機械研磨加工(CMP:Chemical
Mechanical Polishing)等において渦電流によるジュール熱損を極小に抑えた上で、研磨終了時点を精度よく予測・検出し、また所定の導電性膜が適正に除去されているかをリアルタイムで正確に評価することが可能な研磨終了時点の予測・検出方法とその装置並びにリアルタイム膜厚モニタ方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハの表面に例えば酸化膜を形成し、該酸化膜にリソグラィ及びエッチングを施して配線パターンに対応した溝パターンを形成し、この上に前記溝パターンを充填するためのCu等からなる導電性膜を成膜し、該導電性膜のうち前記溝パターンやスルーホール部分等の埋め込み部以外の不要部分を化学機械研磨により除去して配線パターンを形成するプロセスが知られている。この配線パターンの形成では、不要部分の導電性膜が適正な厚さ除去されたときの研磨終点を確実に検出してプロセスを停止することが極めて重要である。導電性膜の研磨が過剰であると配線の抵抗が増加し、研磨が過少であると配線の絶縁障害につながる。
【0003】
これに関連する従来技術として、例えば次のようなフィルム厚の変化のその場での監視方法が知られている。この従来技術は、下地本体(半導体ウェーハ)上から化学機械研磨によって導電性フィルムを除去する方法において該導電性フィルムの厚さ変化をその場で監視するための方法であって、電磁界に指向性をもたらすように整形するためのフェライト・ポット型コアに巻回されたコイルからなるインダクタとコンデンサとの直列又は並列共振回路を含むセンサを前記導電性フィルムに近接して配置し、励振信号源からの20Hz〜40.1MHzの周波数からなる掃引出力を動作点設定用インピーダンス手段を介して前記センサへ印加する。これにより、センサが励起されると、発振電流がコイルに流れ、交番電磁界を発生する。この交番電磁界は、次いで導電性フィルム中に渦電流を誘導する。渦電流が導電性フィルムに誘導されると、二つの効果が生じることになる。まず第1に、導電性フィルムが損失抵抗として作用し、その効果はセンサ回路に対する抵抗負荷であり、これは共振信号の振幅を下げ、共振周波数を下げる。第2に、導電性フィルムの厚さが減少すると、金属ロッドがインダクタのコイルから引き抜かれるかのような効果が生じ、これによってインダクタンスの変化並びに周波数シフトを引き起こす。このようにして前記導電性フィルムの厚さ変化に起因するセンサ共振ピークに関連した周波数シフトの変化を監視することにより、該導電性フィルムの厚さ変化を連続的に検出するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、他の従来技術として、例えば次のような渦電流センサが知られている。この従来技術は、導電性膜又は導電性膜が形成される基体の近傍に配置されるセンサコイル(渦電流センサ)と、該センサコイルに8〜32MHz程度で一定周波数の交流信号を供給して前記導電性膜に渦電流を形成する交流信号源と、前記導電性膜を含めたリアクタンス成分及び抵抗成分を計測する検出回路とを備え、前記センサコイルは、前記信号源に接続する発振コイルと、該コイルの前記導電性膜側に配置する検出コイルと、前記発振コイルの前記導電性膜側の反対側に配置するバランスコイルとを具備し、前記検出コイルとバランスコイルとは互いに逆相となるように接続されている。そして、前記検出回路で検出した抵抗成分及びリアクタンス成分から合成インピーダンスを出力し、該インピーダンスの変化から前記導電性膜の膜厚の変化を広いレンジでほぼ直線的な関係として検出するようにし
ている。(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、他の従来技術として、例えば次のような渦電流センサが知られている。この従来技術も先に示した従来技術と同様に、[0008]には、センサコイルが形成する磁束がそのセンサコイル全面に配置された基板上の導電性膜を貫通し、交番的に変化することで該導電性膜中に渦電流を生じさせ、その渦電流が導電性膜中に流れることで渦電流損失が生じ、等価回路的にみるとセンサコイルのインピーダンスのリアクタンス成分を低下させることになるとしている。また、[0009]には、発振回路の発振周波数の変化を観察することで、研磨の進行に伴い、導電性膜が徐々に薄くなると、これにより発振周波数が低下し、導電性膜が研磨により完全になくなるタンク回路の自己発振周波数となり、それ以降は発振周波数が略一定となる。それ故、この点を検出することにより、導電性膜の化学機械的研磨による終点を検出することができるとある。また、[0025]には、図2に示すように、導電性膜の研磨が進行するとこれに伴い渦電流損が変化し、センサコイルの等価的な抵抗値が変化する。したがって、発振回路の発振周波数が変化するので、この発振信号を分周回路により分周し、又は減算器により減算することにより、検出幅の周波数の大きさに対応した信号をモニタに表示する。これにより、上述した図2に示すような周波数軌跡の推移が得られる(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特許第2878178号公報(第2〜7頁、図1〜15)。
【特許文献2】特許第3587822号公報(第3頁、図1〜11)。
【特許文献3】特開2003−21501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の従来技術においては、センサに電磁界に指向性をもたらすためのフェライト・ポット型コアに巻回されたコイルからなるインダクタとコンデンサとの直列又は並列共振回路が備えられている。そして、研磨初期において20Hz〜40.1MHzの周波数からなる掃引出力をセンサへ印加し、前記コイルから発生した指向性を持つ交番電磁界により、導電性フィルムを貫通する漏洩磁束を生じさせて該導電性フィルムの膜厚に対応した大きな渦電流を研磨初期から誘導させている。導電性フィルムの膜厚に対応した大きな渦電流を誘導するためには大きな交番電磁界、即ち導電性フィルムを貫通する程度の大きな磁束を形成することが必要であり、導電性フィルムの厚さ変化の監視は研磨初期から研磨終期まで導電性フィルム内に誘起された渦電流を利用して行われている。このため、膜厚変化の監視の間、導電性フィルムの厚さ方向に向かって磁束を貫通させることが必要である。特許文献1にかかる公報の図面中には、全ての導電性フィルムの部分に該導電性フィルムを貫通する磁束線が記載されていることからも、このことは明らかである。
【0007】
研磨初期におけるウェーハの表面には、無垢なCu膜(導電性フィルム)が最上層にあるのが一般的である。これら無垢なCu膜の全てに渦電流を誘起させるためには非常に大きな漏洩磁束が必要である。しかし、その漏洩磁束は、渦電流を誘起するが、それらはいずれ渦電流損という形でジュール熱になって消費される。このジュール熱損は、最表層の無垢なCu膜に対しては、体積抵抗が小さいため、発熱は比較的小さいが、内部のすでに配線されている部分では、配線断面積が小さく体積抵抗が小さいため、貫通する磁束により大きな渦電流が誘起され、その結果局部的に大きなジュール熱損を生むことになる。これは、時として一部配線が溶融、断線してしまう問題に発展する。いわゆる誘導加熱の状態になり、特に内部に熱がこもってしまう現象になる。特に、Cu配線などでは、Cuが加熱されるとTaなどのバリア膜にCuが拡散する場合や、場合によっては、バリア膜を突き破ってCuが拡散してしまう懸念がある。
【0008】
また、ウェーハの表面部に幾層にも配線が施されている場合では、表層のCu膜の心配
だけではなく、すでに処理が完了している内部の配線部分が局部的に暖められて周囲に拡散したり、半導体基板内のp型、n型を形成しているドーパントがさらに拡散して、基板内素子の特性を変えてしまうこともある。また、熱が発生しない場合でも、過剰な渦電流が微細配線に流れる場合は、エレクトロマイグレーションを引き起こして断線することがある。
【0009】
さらに、例えば、研磨終了時点付近のある所定の残膜量になった時点で、研磨条件を変えて処理を行う場合に、所定の残膜量であるか否かを見極めることは困難である。初期膜厚からの変化分で推測することは可能であるが、初期膜厚がばらつく場合は所定の残膜量の見積もりがばらつくことになるからである。この研磨終了時点付近の判断に関し、センサと導電性フィルム間のギャップが研磨の振動によって微小に変化すると、センサ回路系全体の浮遊容量が変化して共振周波数全体がシフトする。このため仮に、ある設定の共振周波数になったときに閾値を設定して、研磨終点を判別する設定をしていても、全体的に共振周波数がシフトすれば、その閾値の設定による研磨終了時点の判断は難しくなる。このように、従来方法において、単調かつ連続的に増加もしくは減少変化する共振周波数において、ある値に閾値を設定していたとしても、センサと導電性フィルム間のギャップが微小に変化したり、その間に何等かの誘電体が介在したりすることで、その波形自体が全体的に上下に平行移動することは度々存在し、その結果、予め設定した閾値が意味をなさないことが度々存在した。
【0010】
渦電流センサを用いた特許文献2に記載の従来技術においても、導電性膜の膜厚変化の監視を、研磨初期から研磨終期まで渦電流の変化でみていることは、上記特許文献1に記載の従来技術とほぼ同様である。
【0011】
また、研磨初期から研磨終期まで渦電流を利用して導電性膜の膜厚を監視する上記の従来技術では、膜内で渦電流を引き起こすのに膜内に浸透する程度の十分強い磁束を作る必要があり、インダクタの形状は磁束に指向性を持たせるために三次元となっている。このため、センサを研磨装置等に組み込む上で、一般的に次のような問題がある。コイルに流す電流が大きくなって消費電力が多くなり、電源装置も大型になる。磁束が周辺に漏れてノイズが発生し易い。導線をコイル状に巻く工程等が必要になってコスト高になる。
【0012】
特許文献3に記載の渦電流センサからなる従来技術においては、まず、この従来技術で使用しているセンサ部のハードウェアについて、まず、センサコイルは導電性膜を貫通することを前提とした構成である。したがって、導電性膜を貫通しない程度の磁場しか発生しないハードウェアでは、渦電流が形成できず目的を達成できない。また、導電性膜が研磨により減少することで、渦電流が形成される領域が単調に減少し、そのため、発振周波数が単調に減少する挙動が記載されており、その発振周波数が略一定になったときを終点とみなしてこの部分を検出するとしている。即ち、この従来技術で使用するソフトウェアのアルゴリズムでは、発振周波数の変化とは、減少から略一定になる変化を、発振周波数の変化としているのであって、例えば、この発振周波数が変曲点を有するような変化をした場合には、到底検出できるアルゴリズムではない。また、図2に示すように研磨の初期から磁束が導電性膜を貫通し、常時渦電流が発生する状態である。ここで、渦電流センサは、終始渦電流を積極的に発生させ、その渦電流変化から膜厚変化に算出し直す方法を概して、渦電流センサとしている。
【0013】
そこで、膜内に形成されている微細な配線まで強い磁束を及ぼすことなく、その結果電磁誘導によって誘起される渦電流の発生を抑制して、渦電流によるジュール熱損を極小に抑えるとともに、センサと導電性膜のギャップの変化やスラリー等の誘電物質の介在常態によって、誘起される渦電流量が全体的にシフトして、閾値の設定が大幅に変化して検出しにくくなるといった事態をなくし、デバイスウェーハを貫通しない程度の微細な磁場で
あっても、十分に精度よく検出することが可能とするものであり、研磨終了時点を精度よく予測・検出し、また除去すべき残膜量及び研磨レート等をその場で精度よく算出して、所定の導電性膜が適正に除去されているかを正確に評価するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出方法であって、
前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束により前記所定の導電性膜に誘起される磁束変化をモニタし、研磨中の膜厚が前記所定の導電性膜の材質を一因子として決まる表皮効果によって顕著に表われる磁束変化を利用し、該磁束変化課程中において研磨終了時点を予測するための磁束変化部分を検出し、該磁束変化部分から研磨終了時点を予測することを特徴とする研磨終了時点の予測・検出方法を提供する。
【0015】
この構成によれば、インダクタが高周波で駆動され、該インダクタからその高周波の周期に対応して変化する磁束が発生する。研磨により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚に至るまでは、所定の導電性膜に誘起される磁束は、前記表皮深さの領域を膜面に沿ってほぼ平行に通過する。研磨が進行して所定の導電性膜が前記表皮深さと同等もしくはその付近の膜厚になると、該所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束が生じ始める。この磁束の変化により所定の導電性膜中に電磁誘導によって誘起される渦電流量が変化する。該渦電流は膜厚が減少していくにつれて、膜を貫通する漏洩磁束が増大していくため、徐々に誘起される渦電流が増大する。この広い領域に発生した渦電流により、該所定の導電性膜内に大きな相互インダクタンスが発生する。この相互インダクタンスは、高周波インダクタ型センサにおけるセンサ回路系の自己インダクタンスを減少させるように作用する。このように、初期は、導電膜厚が減少しても、導電膜厚に投入した磁束がウェーハを貫通しない程度である場合は、一定の渦電流が形成される。その後、膜厚がさらに減少して表皮深さに対応した膜厚以下になった場合、一部の磁束がウェーハ上の導電性膜を貫通してウェーハの裏面にまで漏洩する磁束が生じる。このとき漏洩磁束の増加とともに膜内に誘起される渦電流が大きくなる。次に、ある一定の膜厚までウェーハ表面に形成される渦電流は増大するが、その後、さらに導電性膜が除去されるにしたがって、渦電流を発生する導電性膜自身が減少するため、渦電流は減少する。結果的に、単調な膜厚減少課程であるにも関わらず、一度貫通磁束増大とともに渦電流は増大し、その後さらなる膜厚の減少に伴って、渦電流を生じる体積自体が減少することに伴って急速に減少するため、誘起される渦電流に対応した相互インダクタンスには極大点が現れる。この渦電流の急速な減少により前記相互インダクタンスも急速に減少してセンサ回路系のインダクタンスは増加に転じる。このように、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さと同等もしくはその付近の膜厚になった以降において、渦電流が発生しその後の急速な減少によりセンサ回路系のインダクタンスが一旦減少してその後増加に転じる。この挙動により高周波インダクタ型センサから発振される共振周波数の波形が前記表皮効果によって該波形変化が顕著に表われる。そして、この波形変化課程中において研磨終了時点を予測するための波形変化部分を検出し、該波形変化部分から研磨終了時点が予測される。
【0016】
このピークは、表皮深さに対応した膜厚で現れるため、先に述べたような誘起された渦電流量が全体的にシフトすることによる閾値の設定が変動するといった問題はなく、絶えず、残りの膜厚に対応した位置にピークが出現する。特に、導電性膜が、例えば、Cuの場合、Cuの残り膜が710Åの付近にピークが出現する。また、W膜の場合は、Wの残り膜がもう少し厚い部分2500Åにピークが出現する。この膜厚は、実際の表皮深さとは異なるが、表皮深さに対応した数値になっている。表皮深さδは、電磁波の強度が1/
eの大きさになる深さを便宜的に示した指標であるが、このピーク位置は、材料の導電率、透磁率、印加する周波数等によって決定されることからも、表皮効果によってもたらされている。本発明は、この材料の表皮効果によって現れる特異な現象を巧みに利用して、達成した技術である。特に、配線材料のCMPにおいて配線材料は高導電率を有するため、ピーク位置は比較的終点付近(710Å)で鋭いピーク(極大点)となって現れる。そのため、様々な外乱に対しても揺らぐことなく、ロバストな終点検出・終点予測が可能になる。
【0017】
また、インダクタ型センサは、膜内に故意に積極的に渦電流を生じさせて、膜厚をモニタするものではない。従来の公知のセンサでは、導電性膜を貫通させるような磁場を与えるように指向性を持たせるようにセンサコイルを形成しているが、本発明におけるインダクタ型センサでは、平面インダクタを使用している。これにより、磁場に指向性を与えるのではなく、導電性膜に対して、導電性膜に深く浸透しないように適度に磁場を発散させることを目的としたインダクタである。これは、磁場が深く浸透した場合、又は磁場を深く浸透させるために強力な磁場を与えた場合、内部の配線が渦電流によって、局部的に過熱される場合や、エレクトロマイグレーション等によって、配線自体が断線してしまうからである。よって、導電性膜に極力磁場を浸透させず、言い換えれば素子にダメージを与えるような渦電流を発生させない程度の、適度の磁束分布を形成する平面インダクタの構成としている。また、導電性膜が除去される間際で導電性膜が薄くなると、適度に発散させる磁場を与えたとしても、一部は導電性膜を貫通する磁束が現れる。この終点付近の薄い導電性膜状態になったときに現れる急激な変化をモニタする。よって、周波数、インダクタ及びその信号を検出するアルゴリズムは、終点付近の変曲点を最大化する構成としている。
【0018】
請求項2記載の発明は、前記表皮効果による磁束変化部分を検出する方法は、ピークの頂点、変曲点、変化の上昇率、上昇変化量、上昇開始点の表皮効果特有の変化を検出する研磨終了時点の予測・検出方法を提供する。
【0019】
この構成によれば、前記表皮効果による磁束変化部分は、磁束変化のピークの頂点、変曲点、変化の上昇率、上昇変化量、上昇開始点の表皮効果特有の変化を検出することによって実行される。
【0020】
請求項3記載の発明は、前記表皮効果による磁束変化部分を検出する方法は、波形ピーク点、変曲点、所定上昇率点などの表皮効果特有の特徴的な変化を検出する研磨終了時点の予測・検出方法を提供する。
【0021】
この構成によれば、前記表皮効果による磁束変化部分は、波形ピーク点、変曲点、所定上昇率などの表皮効果特有の変化を検出することによって実行される。
【0022】
請求項4記載の発明は、上記導電性膜に近接する高周波インダクタ型センサは、二次元平面インダクタである研磨終了時点の予測・検出方法を提供する。
【0023】
この構成によれば、従来の三次元的に形成されたインダクタでは、磁束が導電性膜に対して垂直方向に侵入するための指向性が向上し、デバイスウェーハの内部にまで磁束が入り込み、デバイス内部の配線がエレクトロマイグレーションによって、断線したりした場合があった。これに対し、この二次元平面インダクタによる方法によれば、導電性膜に対する磁束が適度に発散して指向性を持たないために導電性膜内部に磁束が積極的に侵入しない。また、与える周波数が30MHzより大きい周波数とした場合、表皮効果によって、さらに磁束を導電性膜内部にまで侵入できなくなるため、デバイスウェーハ内部での渦電流発生によるジュール熱による断線や過度な電流によるエレクトロマイグレーションを
防ぐことが可能となる。また、表面の導電性膜がまさに除去されつつある状態の膜厚になったときに磁束の一部が導電性膜を貫通し、渦電流を形成することになるため、終点付近の膜厚になったときに極めて顕著な相互インダクタンスに対応する波形の変化を発生させることから、研磨の終了点を検出することが可能になる。
【0024】
請求項5記載の発明は、上記導電性膜に近接する高周波インダクタ型センサは、絶縁体で形成された基板の表面に導電性膜を付けた構成とする研磨終了時点の予測・検出方法を提供する。
【0025】
この構成によれば、プリント基板などのガラス・エポキシや紙・フェノールなど絶縁体基板の上にCuなどの導電性物質を蒸着することや塗布することにより、容易かつ安価にセンサを製作することが可能になる。また、巻線を使用する方法と比較しても、導電性膜を塗布後、エッチングして製作することで、線幅を非常に微細化して製作することが可能となり、センサ自体を非常に小型化することが可能になる。センサの小型化により、さらに微小な磁場を効率よく発生させることができ、磁場を導電性物質の内部に深く浸透させることなく、膜が除去される終点付近の変化挙動を精度よく検出することが可能になる。また、センサの小型化は、ウェーハ面内の位置に対応して多数のセンサを配置することが可能になることから、ウェーハ面内における研磨の均一性を精度よく検出することが可能になる。
【0026】
請求項6記載の発明は、上記所定の導電性膜の表皮効果に基づいて誘起される磁束変化のモニタは、該所定の導電性膜中の渦電流の計測、該所定の導電性膜が渦電流を生じることにより発生する相互インダクタンスの測定、該所定の導電性膜の相互インダクタンスによる上記高周波インダクタ型センサにおけるセンサ回路系のインダクタンス変化の測定、又は該センサ回路系のインダクタンス変化を前記高周波インダクタ型センサが発振する共振周波数の変化での測定の少なくともいずれかである研磨終了時点の予測・検出方法を提供する。
【0027】
この構成によれば、所定の導電性膜の表皮効果に基づいて誘起される磁束変化のモニタは、具体的には、それぞれ該磁束変化に伴う渦電流、相互インダクタンス、センサ回路系のインダクタンス、又は高周波インダクタ型センサが発振する共振周波数の少なくともいずれかの変化を測定することで、研磨の進行により所定の導電性膜に対して貫通する磁束が増大していく研磨終了点手前の波形変化部分が明確に検出される。
【0028】
請求項7記載の発明は、上記高周波インダクタ型センサを発振させる発振器とその発振(共振)周波数の変化をモニタするための周波数カウンタが、前記高周波インダクタ型センサに近接して配置されている研磨終了時点の予測・検出方法を提供する。
【0029】
この構成によれば、従来のような配線・結線部分で分布定数回路を形成して回路のインダクタンスやキャパシタンスが不要に大きくなることを防ぎ、例えば静電容量による変化を支配的に検出するのではなく、インダクタ型センサ付近にもたらす磁束の変化を精度よく検出することが可能になる。好ましくは、発振器及び周波数カウンタはインダクタ型センサと、同一パッケージ内にあったほうがよい。また、通常数十MHz帯では、分布定数回路を形成してしまい、磁束の変化よりも、途中経路と試料の間で静電結合が生じ、静電結合センサとしての機能が支配的になる。しかし、この構成によれば、数十MHz帯であったとしても、周波数モニタを近傍に配置しているため、静電結合する領域が限定される。そのため、数十MHz帯であっても、分布定数回路というよりは、比較的キャパシタンスとインダクタンスが一定の集中回路として機能し、インダクタが導電性材料に及ぼす磁束により、その反作用として働く導電性材料がインダクタに与える相互インダクタンスの変化を精度よく検出することが可能となる。
【0030】
請求項8記載の発明は、上記所定の導電性膜の表皮効果に基づいて誘起される磁束変化、渦電流の変化、相互インダクタンスの変化及び共振周波数の変化は、膜厚減少に伴って貫通磁束が増加することによる変化と、その後の膜厚減少に伴って渦電流形成領域が実質的に減少することによる変化の二つを含む研磨終了時点の予測・検出方法を提供する。
【0031】
この構成によれば、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚以下になると、貫通磁束の増大とともに渦電流及び相互インダクタンスはそれぞれ増大し、この相互インダクタンスの増大に伴ってセンサ回路系のインダクタンスが減少し共振周波数が増大する。その後さらなる研磨の進行による膜厚の減少に伴って渦電流形成領域が実質的に減少し、渦電流及び相互インダクタンスはそれぞれ急速に減少し、またセンサ回路系のインダクタンスは急速に増大し共振周波数が急速に減少する。これらの挙動により、所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降において、渦電流、相互インダクタンス及び共振周波数の波形に顕著な変化部分が表われる。かかる波形の変化を利用し、波形変化課程中において研磨終了時点を予測するための波形変化部分を検出する。
【0032】
請求項9記載の発明は、導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出方法であって、前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨課程による膜厚減少に伴って、研磨対象の導電性膜を貫通する磁束が増加することにより導電性膜に誘起される相互インダクタンスが上昇するような、インダクタ形状と周波数帯域を選択し、前記インダクタで形成される磁束により前記所定の導電性膜に誘起される磁束変化をモニタし、研磨中の膜厚が表皮効果によって顕著に表われる磁束変化を利用し、該磁束変化課程中において研磨終了時点を予測するための磁束変化部分を検出し、該磁束変化部分から研磨終了時点を予測する研磨終了時点の予測・検出方法を提供する。
【0033】
この構成によれば、所定の導電性膜における表皮深さは、該所定の導電性膜の材質と高周波インダクタ型センサの発振周波数とに依存して決まる。そして、該表皮深さが、所定の導電性膜の初期膜厚よりも小さく研磨終期において該所定の導電性膜の膜厚より大になるように前記発振周波数を選択し、また膜厚減少に伴って貫通磁束が増加するようなインダクタ形状とすることで、研磨初期において所定の導電性膜に誘起される磁束は前記表皮深さの領域を膜面に沿ってほぼ平行に通過し、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚以下になると、研磨対象の導電性膜を貫通する貫通磁束が発生し、該貫通磁束の増大とともに渦電流及び相互インダクタンスが増大する。その後さらなる研磨の進行による膜厚の減少に伴って渦電流形成領域が実質的に減少し、渦電流及び相互インダクタンスは急速に減少する。これらの挙動から所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降において、研磨終了時点を予測するための磁束変化部分が検出される。
【0034】
請求項10記載の発明は、選択される上記周波数帯は、上記所定の導電性膜の材質がCuの場合において20MHz以上である研磨終了時点の予測・検出方法を提供する。
【0035】
この構成によれば、高周波インダクタ型センサから発振される周波数帯は、具体的には、Cuの場合において20MHz以上とすることで、表皮深さが、所定の導電性膜の初期膜厚と同等のオーダーで且つ、該所定の導電性膜の初期膜厚よりも小さく研磨終期において所定の導電性膜の膜厚より大になるように設定される。
【0036】
請求項11記載の発明は、導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出方法であって、前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜
の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しないような周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記導電性膜を貫通する少なくとも一部の磁束が増大する課程を少なくとも一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化をモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果によって顕著に表われる漏洩磁束の変化を利用し、該漏洩磁束変化課程中において研磨終了時点を予測するための漏洩磁束変化部分を検出し、該漏洩磁束変化部分から研磨終了時点を予測する研磨終了時点の予測・検出方法を提供する。
【0037】
この構成によれば、インダクタで形成される磁束が研磨初期には所定の導電性膜を殆ど貫通せず研磨の進行にしたがって該所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束が生じ始めるような表皮効果が発生するように高周波インダクタ型センサから発振される周波数が設定されている。そして、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降において、前記表皮効果によって顕著に表われる漏洩磁束変化を利用し、該漏洩磁束変化課程中において研磨終了時点を予測するための漏洩磁束変化部分が検出され、該漏洩磁束変化部分から研磨終了時点が予測される。
【0038】
請求項12記載の発明は、導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出方法であって、
前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束により前記所定の導電性膜に誘起される磁束変化をモニタし、研磨中の膜厚が前記所定の導電性膜の材質を一因子として決まる表皮効果によって顕著に表われる磁束変化を利用し、該磁束変化課程中において研磨終了時点を予測するための磁束変化部分を検出し、該磁束変化部分から研磨終了時点を予測することを特徴とする研磨終了時点の予測・検出方法を提供する。
【0039】
この構成によれば、高周波インダクタ型センサから発振される周波数が上記請求項9記載の発明の作用と同様に設定され、また、インダクタからは、その形状により、研磨初期には所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の指向性のない磁場が発生する。そして、研磨の進行に伴って生じる漏洩磁束の変化が渦電流の変化としてモニタされ、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮効果によって顕著に表われる渦電流の変化課程中において研磨終了時点を予測するための渦電流変化部分を検出し、該渦電流変化部分から研磨終了時点が予測される。
【0040】
請求項13記載の発明は、上記表皮効果による波形変化部分から研磨終了時点を予測する方法に関して、上記波形変化部分から予め設定した研磨時間分研磨した後に研磨終了とする研磨終了時点の予測・検出方法を提供する。
【0041】
この構成によれば、表皮効果によって顕著に表われる波形変化課程中において研磨終了時点を予測するための波形変化部分が検出され、該検出後に実行すべき研磨レートから、該波形変化部分検出後の所要研磨時間を予め設定することが可能となる。したがって、該波形変化部分が検出された後は、前記予め設定した研磨時間分だけ研磨することで研磨が終了する。
【0042】
請求項14記載の発明は、上記波形変化部分は、ピークの頂点、変曲点、変化の上昇率、上昇変化量、上昇開始点の表皮効果特有の変化であることを特徴とする研磨終了時点の予測・検出方法を提供する。
【0043】
この構成によれば、上記波形変化部分は、波形変化のピークの頂点、変曲点、変化の上昇率、上昇変化量、上昇開始から検出され、そして、該波形変化部分から研磨終了時点が予測される。
【0044】
請求項15記載の発明は、上記表皮効果による波形変化部分から研磨終了時点までの予測検出方法に関して、研磨初期から前記波形変化部分へ到達した時間と、該波形変化部分までの研磨量から、その分の研磨レートを算出し、前記波形変化部分の膜厚を前記研磨レートで除することによって、前記波形変化部分から研磨終了時点までに要する残りの研磨時間を算出し、前記波形変化部分からその算出した時間研磨した後に、研磨の終点とする研磨終了時点の予測・検出方法を提供する。
【0045】
この構成によれば、研磨初期から波形変化部分が検出されるまでの時間と、該波形変化部分に達するまでの研磨量から、その間における研磨レートが算出される。そして、波形変化部分に対応した膜厚を前記研磨レートで除することで波形変化部分検出後の所要研磨時間が算出される。したがって、波形変化部分の検出後に、前記算出された研磨時間分だけ研磨することで研磨が終了する。
【0046】
請求項16記載の発明は、導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出方法であって、前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の指向性のない磁場を発生させるインダクタ形状と、表皮効果により導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記少なくとも一部の導電性膜を貫通する磁束が増加する課程を少なくとも一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化で生じる渦電流の変化を該渦電流により前記インダクタに発生する相互インダクタンスの変化としてモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に伴う表皮深さと同等もしくはその付近になった場合の前記相互インダクタンスの変化を基に研磨終了時点を予測するための相互インダクタンスの変化部分を検出し、該変化部分から研磨終了時点を予測する研磨終了時点の予測・検出方法を提供する。
【0047】
この構成によれば、高周波インダクタ型センサから発振される周波数が上記請求項9記載の発明の作用と同様に設定され、また、インダクタからは、その形状により、研磨初期には所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の指向性のない磁場が発生する。そして、研磨の進行に伴って生じる漏洩磁束の変化がインダクタに発生する相互インダクタンスの変化としてモニタされ、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降における前記相互インダクタンスの変化を基に研磨終了時点を予測するための相互インダクタンスの変化部分が検出され、該相互インダクタンスの変化部分から研磨終了時点が予測される。
【0048】
請求項17記載の発明は、導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出方法であって、前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の指向性のない磁場を発生させるインダクタ形状と、表皮効果により導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記少なくとも一部の導電性膜を貫通する磁束が増加する課程を少なくとも一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化に基づく前記高周波インダクタ型センサにおけるセンサ回路系のインダクタンスの変化を該インダクタンスと前記センサ回路系の固有容量とで決まる共振周波数の変化としてモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に対応する膜厚になった場合の前記共振周波数の変化を基に研磨終了時点を
予測するための共振周波数の変化部分を検出し、該共振周波数の変化部分から研磨終了時点を予測する研磨終了時点の予測・検出方法を提供する。
【0049】
この構成によれば、高周波インダクタ型センサから発振される周波数が上記請求項10記載の発明の作用と同様に設定されている。また、インダクタからは、その形状により、研磨初期には所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の指向性のない磁場が発生し、研磨の進行に伴って前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束が生じる。そして、該漏洩磁束の変化に伴う高周波インダクタ型センサにおけるセンサ回路系のインダクタンスの変化が該インダクタンスと前記センサ回路系の固有容量とで決まる共振周波数の変化としてモニタされ、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降における前記共振周波数の変化を基に共振周波数の変化部分が検出され、該共振周波数の変化部分から研磨終了時点が予測される。
【0050】
請求項18記載の発明は、導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出方法であって、前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の指向性のない磁場を発生させるインダクタ形状と、表皮効果により導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記少なくとも一部の導電性膜を貫通する磁束が増加する課程を少なくとも一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化で生じる渦電流の変化、該渦電流の変化により前記インダクタに発生する相互インダクタンスの変化、又は該相互インダクタンスの変化に基づく前記高周波インダクタ型センサにおけるセンサ回路系のインダクタンスの変化による該高周波インダクタ型センサから発振される共振周波数の変化のうちの少なくともいずれかの変化をモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に対応する膜厚になった場合の前記各変化のうちの少なくともいずれかの変化を基に研磨終了時点を予測するための共振周波数の変化部分を検出し、該共振周波数の変化部分から研磨終了時点を予測する研磨終了時点の予測・検出方法を提供する。
【0051】
この構成によれば、高周波インダクタ型センサから発振される周波数が上記請求項10記載の発明の作用と同様に設定されている。また、インダクタからは、その形状により、研磨初期には所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の指向性のない磁場が発生し、研磨の進行に伴って前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束が生じる。そして、該漏洩磁束の変化で生じる渦電流の変化、該渦電流の変化に伴う相互インダクタンスの変化、又は該相互インダクタンスの変化に基づく高周波インダクタ型センサから発振される共振周波数の変化のうちの少なくともいずれかの変化がモニタされ、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降における前記渦電流の変化、相互インダクタンスの変化、又は共振周波数の変化のうちの少なくともいずれかの変化を基に共振周波数の変化部分が検出され、該共振周波数の変化部分から研磨終了時点が予測される。
【0052】
請求項19記載の発明は、研磨中の上記所定の導電性膜の膜厚が表皮深さに対応する膜厚になった場合の上記渦電流、上記相互インダクタンス又は上記共振周波数の各変化中には、前記表皮深さに対応する膜厚で生じる上記漏洩磁束の増加による渦電流の増加と研磨による膜厚体積の減少に伴う渦電流形成領域の減少との二つの現象が作用することにより極大点(ピーク)が生じ、該極大点(ピーク)を基に上記変化部分が検出される研磨終了時点の予測・検出方法を提供する。
【0053】
この構成によれば、上記請求項17記載の発明の作用に加え、研磨の進行により所定の
導電性膜が表皮深さに対応する膜厚になった以降における渦電流、相互インダクタンス、又は共振周波数の各変化中には極大点(ピーク)が生じる。この極大点(ピーク)を基に研磨終了時点を予測する波形の変化部分を検出し、該変化部分から研磨終了時点を予測する。
【0054】
請求項20記載の発明は、導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されているかを評価するための研磨進行中の膜厚変化をモニタするリアルタイム膜厚モニタ方法であって、前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記少なくとも一部の導電性膜を貫通する磁束が増加する課程を少なくとも研磨中一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化をモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に対応する膜厚になった場合の前記漏洩磁束の変化から研磨終了時点を予測するための漏洩磁束の変化部分を検出し、該変化部分を基にその場で研磨レート及び除去すべき残りの膜厚量を算出するリアルタイム膜厚モニタ方法を提供する。
【0055】
この構成によれば、インダクタで形成される磁束が研磨初期には所定の導電性膜を殆ど貫通せず研磨の進行にしたがって該所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束が生じ始めるような表皮効果が発生するように高周波インダクタ型センサから発振される周波数が設定されている。そして、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降における前記漏洩磁束の変化から研磨終了時点を予測するための変化部分を検出し、該変化部分を基に表皮深さとほぼ同等である除去すべき残膜量、並びに既に研磨除去された膜厚量及びその所要時間から研磨レート等の各研磨データがその場で算出され、所定の導電性膜が適正に除去されているかが評価される。
【0056】
請求項21記載の発明は、導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されているかを評価するための研磨進行中の膜厚変化をモニタするリアルタイム膜厚モニタ方法であって、前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記少なくとも一部の導電性膜を貫通する磁束が増加する課程を少なくとも研磨中一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化を該漏洩磁束が作る渦電流の変化としてモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に対応する膜厚になった場合の前記渦電流の変化から研磨終了時点を予測するための漏洩磁束の変化部分を検出し、該変化部分を基にその場で研磨レート及び除去すべき残りの膜厚量を算出するリアルタイム膜厚モニタ方法を提供する。
【0057】
この構成によれば、高周波インダクタ型センサから発振される周波数が上記請求項17記載の発明の作用と同様に設定されている。そして、漏洩磁束の変化が渦電流の変化としてモニタされ、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降における前記渦電流の変化から変化部分が検出され、該変化部分を基に表皮深さとほぼ同等である除去すべき残膜量、並びに既に研磨除去された膜厚量及びその所要時間から研磨レート等の各研磨データがその場で算出され、所定の導電性膜が適正に除去されているかが評価される。
【0058】
請求項22記載の発明は、導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されているかを評価するための研磨進行中の膜厚変化をモニタするリアルタイム膜厚モニタ方法で
あって、前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記少なくとも一部の導電性膜を貫通する磁束が増加する課程を少なくとも研磨中一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化で生じる渦電流の変化を該渦電流により前記インダクタに発生する相互インダクタンスの変化としてモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に対応する膜厚になった場合の前記相互インダクタンスの変化から研磨終了時点を予測するための相互インダクタンスの変化部分を検出し、該変化部分を基にその場で研磨レート及び除去すべき残りの膜厚量を算出するリアルタイム膜厚モニタ方法を提供する。
【0059】
この構成によれば、高周波インダクタ型センサから発振される周波数が上記請求項17記載の発明の作用と同様に設定されている。そして、漏洩磁束の変化がインダクタに発生する相互インダクタンスの変化としてモニタされ、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降における前記相互インダクタンスの変化から研磨終了時点を予測するための相互インダクタンスの変化部分が検出され、該変化部分を基に表皮深さとほぼ同等である除去すべき残膜量、並びに既に研磨除去された膜厚量及びその所要時間から研磨レート等の各研磨データがその場で算出され、所定の導電性膜が適正に除去されているかが評価される。
【0060】
請求項23記載の発明は、導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されているかを評価するための研磨進行中の膜厚変化をモニタするリアルタイム膜厚モニタ方法であって、前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記少なくとも一部の導電性膜を貫通する磁束が増加する課程を少なくとも研磨中一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化に基づく前記高周波インダクタ型センサにおけるセンサ回路系のインダクタンスの変化を該インダクタンスと前記センサ回路系の固有容量とで決まる共振周波数の変化としてモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に対応する膜厚になった場合の前記共振周波数の変化から研磨終了時点を予測するための共振周波数の変化部分を検出し、該変化部分を基にその場で研磨レート及び除去すべき残りの膜厚量を算出するリアルタイム膜厚モニタ方法を提供する。
【0061】
この構成によれば、高周波インダクタ型センサから発振される周波数が上記請求項17記載の発明の作用と同様に設定されている。そして、漏洩磁束の変化に伴う高周波インダクタ型センサにおけるセンサ回路系のインダクタンスの変化が該インダクタンスと前記センサ回路系の固有容量とで決まる共振周波数の変化としてモニタされ、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降における前記共振周波数の変化から研磨終了時点を予測するための共振周波数の変化部分が検出され、該変化部分を基に表皮深さとほぼ同等である除去すべき残膜量、並びに既に研磨除去された膜厚量及びその所要時間から研磨レート等の各研磨データがその場で算出され、所定の導電性膜が適正に除去されているかが評価される。
【0062】
請求項24記載の発明は、研磨中の上記所定の導電性膜の膜厚が上記表皮深さと同等もしくはその付近になった場合の上記渦電流、上記相互インダクタンス又は上記共振周波数の各変化中には、前記表皮効果によって上記漏洩磁束の増加による渦電流の増加と研磨による膜厚体積の減少に伴う渦電流の減少との二つの現象が作用することによりピークが生
じ、該ピークを基に研磨終了時点を予測するための変化部分が検出されるリアルタイム膜厚モニタ方法を提供する。
【0063】
この構成によれば、上記請求項20,21又は22記載の発明の作用に加え、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降における渦電流、相互インダクタンス、又は共振周波数の各変化中にはピークが生じる。このピークを基に研磨終了時点を予測するための変化部分が検出される。
【0064】
請求項25記載の発明は、平面インダクタとキャパシタからなるセンサ回路系を構成する発振回路を備えた高周波インダクタ型センサを有し、導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出装置であって、請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17又は18記載の研磨終了時点の予測・検出方法を実行する研磨終了時点の予測・検出装置を提供する。
【0065】
この構成によれば、平面インダクタとキャパシタからなるセンサ回路系を構成する発振回路を備えた高周波インダクタ型センサを有する研磨終了時点の予測・検出装置は、所定の導電性膜における表皮深さが、該所定の導電性膜の初期膜厚よりも小さく研磨終期において該所定の導電性膜の膜厚より大になるように前記高周波インダクタ型センサの発振周波数を設定する。これにより、研磨初期において前記平面インダクタで形成される磁束により前記所定の導電性膜に誘起される磁束は前記表皮深さの領域を膜面に沿ってほぼ平行に通過し、研磨の進行にしたがって少なくとも一部の磁束が前記所定の導電性膜を貫通して漏洩磁束が生じ始める。そして、研磨の進行中に該漏洩磁束の変化、漏洩磁束の変化で生じる渦電流の変化、該渦電流の変化により前記平面インダクタに発生する相互インダクタンスの変化、又は該相互インダクタンスの変化に基づく前記センサ回路系のインダクタンスの変化による高周波インダクタ型センサから発振される共振周波数の変化のうちの少なくともいずれかの変化をモニタし、研磨の進行により所定の導電性膜が前記表皮深さに対応した膜厚になった以降における前記各変化のうちの少なくともいずれかの変化を基に研磨終了点手前の変化部分を検出し、該変化部分から研磨終了時点を予測する。
【0066】
請求項26記載の発明は、平面インダクタとキャパシタからなるセンサ回路系を構成する発振回路を備えた高周波インダクタ型センサを有し、導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されているかを評価するための研磨進行中の膜厚変化をモニタするリアルタイム膜厚モニタ装置であって、請求項19,20,21,22又は23記載のリアルタイム膜厚モニタ方法を実行するリアルタイム膜厚モニタ装置を提供する。
【0067】
この構成によれば、平面インダクタとキャパシタからなるセンサ回路系を構成する発振回路を備えた高周波インダクタ型センサを有するリアルタイム膜厚モニタ装置は、所定の導電性膜における表皮深さが、該所定の導電性膜の初期膜厚よりも小さく研磨終期において該所定の導電性膜の膜厚より大になるように前記高周波インダクタ型センサの発振周波数を設定する。これにより、研磨初期において前記平面インダクタで形成される磁束により前記所定の導電性膜に誘起される磁束は前記表皮深さの領域を膜面に沿ってほぼ平行に通過し、研磨の進行にしたがって少なくとも一部の磁束が前記所定の導電性膜を貫通して漏洩磁束が生じ始める。そして、研磨の進行中に該漏洩磁束の変化、漏洩磁束の変化で生じる渦電流の変化、該渦電流の変化により前記平面インダクタに発生する相互インダクタンスの変化、又は該相互インダクタンスの変化に基づく前記センサ回路系のインダクタンスの変化による高周波インダクタ型センサから発振される共振周波数の変化のうちの少なくともいずれかの変化をモニタし、研磨の進行により所定の導電性膜が前記表皮深さに対応した膜厚になった以降における前記各変化のうちの少なくともいずれかの変化から研磨終了点手前の変化部分を検出し、該変化部分を基に表皮深さとほぼ同等である除去すべき
残膜量、並びに既に研磨除去された膜厚量及びその所要時間から研磨レート等の各研磨データをその場で算出し、所定の導電性膜が適正に除去されているかを評価する。
【発明の効果】
【0068】
請求項1記載の発明は、所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束により前記所定の導電性膜に誘起される磁束変化をモニタし、研磨中の膜厚が前記所定の導電性膜の材質を一因子として決まる表皮効果による前記磁束変化を基に研磨終了時点を予測するための磁束変化部分を検出し、該変化部分から研磨終了時点を予測するようにしたので、研磨初期には、所定の導電性膜に誘起される磁束は、前記表皮深さの領域を膜面に沿ってほぼ平行に通過する。これにより、膜内に形成されている微細な配線等まで強い磁束を及ぼすことがなく、また渦電流の発生が抑制されて該渦電流によるジュール熱損を極小に抑えることができる。研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降において、所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束が生じ、この漏洩磁束により所定の導電性膜中に渦電流が誘起される。この渦電流は、膜厚の減少に伴う漏洩磁束の増加により徐々に増大し、さらなる膜厚の減少により渦電流を発生する導電性膜自身が減少するため急速に減少する。この渦電流の増大とその後の急速な減少により、センサ回路系のインダクタンスが一旦減少してその後増加に転じる。この挙動により高周波インダクタ型センサから発振される共振周波数の波形にピーク(変曲点)が発生する。そして該ピーク(変曲点)は、様々な外乱に対しても揺らぐことなく、絶えず、残りの膜厚に対応した位置に出現する。このため、前記ピーク(変曲点)を基に検出され、前記磁束変化部分から研磨終了時点を精度よく予測・検出することができるという利点がある。
【0069】
上記請求項2記載の発明は、上記表皮効果による磁束変化部分を検出する方法は、ピークの頂点、変曲点、変化の上昇率、上昇変化量、上昇開始点の表皮効果特有の変化を検出することにより、研磨終了時点の予測・検出が極めて適正に行われる。
【0070】
請求項3記載の発明は、上記表皮効果による磁束変化部分を検出する方法は、波形ピーク点、変曲点、所定上昇率点などの表皮効果特有の変化を検出することにより、研磨終了時点の予測・検出が極めて適正に行われる。
【0071】
請求項4記載の発明は、上記導電性膜に近接する高周波インダクタ型センサは、二次元平面インダクタとしたので、該二次元平面インダクタで形成される磁束は、所定の導電性膜に対し適度に発散して指向性を持たないため、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になるまでは、該所定の導電性膜内部に積極的に侵入することがない。これに加えて表皮効果により、磁束が導電性膜内部に侵入できなくなるため、デバイスウェーハ内部での渦電流発生によるジュール熱による断線や過度な電流によるエレクトロマイグレーションを効果的に防ぐことができるという利点がある。
【0072】
請求項5記載の発明は、上記導電性膜に近接する高周波インダクタ型センサは、絶縁体で形成された基板の表面に導電性膜を付けた構成としたので、ガラス・エポキシや紙・フェノール等の絶縁体の基板上に導電性物質を蒸着することや塗布することにより、容易かつ安価にセンサを製作することができる。また、絶縁体の基板上に導電性膜を成膜後、エッチング等で製作することで、線幅を非常に微細化して製作することが可能となり、センサ自体を非常に小型化することができる。そして、センサの小型化により微小な磁場を効率よく発生させることができ、磁場を導電性膜の内部に深く浸透させることなく、該導電性膜が除去される終点付近の変化挙動を精度よく検出することができるという利点がある。
【0073】
請求項6記載の発明は、上記所定の導電性膜の表皮効果に基づいて誘起される磁束変化
のモニタは、該所定の導電性膜中の渦電流の計測、該所定の導電性膜が渦電流を生じることにより発生する相互インダクタンスの測定、該所定の導電性膜の相互インダクタンスによる上記高周波インダクタ型センサにおけるセンサ回路系のインダクタンス変化の測定、又は該センサ回路系のインダクタンス変化を前記高周波インダクタ型センサが発振する共振周波数の変化での測定の少なくともいずれかとしたので、上記請求項1記載の発明における所定の導電性膜に誘起される磁束変化のモニタには、具体的には、該磁束変化に伴う渦電流、相互インダクタンス、センサ回路系のインダクタンス、又は高周波インダクタ型センサが発振する共振周波数のうちの少なくともいずれかの変化を用いることで、研磨終了点手前の研磨終了時点を予測するための共振周波数の変化部分を一層容易明確に検出することができるという利点がある。
【0074】
請求項7記載の発明は、上記高周波インダクタ型センサを発振させる発振器とその発振(共振)周波数の変化をモニタするための周波数カウンタが、前記高周波インダクタ型センサに近接して配置されているので、高周波インダクタ型センサを発振させる発振器と周波数カウンタ等間の配線・結線部分で分布定数回路を形成してインダクタンスやキャパシタンスが不要に大きくなるのが防止されて、高周波インダクタ型センサ付近にもたらされる導電性膜の研磨の進行に伴う磁束の変化を精度よく検出することができるという利点がある。
【0075】
請求項8記載の発明は、上記所定の導電性膜の表皮効果に基づいて誘起される磁束変化、渦電流の変化、相互インダクタンスの変化及び共振周波数の変化は、膜厚減少に伴って貫通磁束が増加することによる変化と、その後の膜厚減少に伴って渦電流形成領域が実質的に減少することによる変化の二つを含むようにしたので、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚以下になると、貫通磁束の増大とともに渦電流、相互インダクタンス及び共振周波数が増大する。その後さらなる研磨の進行による膜厚の減少に伴って渦電流形成領域が実質的に減少し、渦電流、相互インダクタンス及び共振周波数は急速に減少する。これらの挙動により、所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降において、渦電流、相互インダクタンス及び共振周波数の波形にピーク(変曲点)が発生し、このピーク(変曲点)を基に波形の変化部分を明確に検出することができるという利点がある。
【0076】
請求項9記載の発明は、所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨課程による膜厚減少に伴って、研磨対象の導電性膜を貫通する磁束が増加することにより導電性膜に誘起される相互インダクタンスが上昇するような、インダクタ形状と周波数帯域を選択し、前記インダクタで形成される磁束により前記所定の導電性膜に誘起される磁束変化をモニタし、研磨中の膜厚が表皮効果によって生じる前記磁束変化を基に研磨終了時点を予測するための磁束変化部分を検出し、該磁束変化部分から研磨終了時点を予測するようにしたので、研磨初期において所定の導電性膜に誘起される磁束は表皮深さの領域を膜面に沿ってほぼ平行に通過し、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降において、導電性膜を貫通する貫通磁束が発生し、該貫通磁束の増大とともに渦電流及び相互インダクタンスが増大する。その後さらなる研磨の進行による膜厚の減少に伴って渦電流形成領域が実質的に減少し、渦電流及び相互インダクタンスは急速に減少する。これらの挙動から前記磁束変化部分が検出され、該変化部分から研磨終了時点を精度よく予測・検出することができるという利点がある。
【0077】
請求項10記載の発明は、選択される上記周波数帯は、上記所定の導電性膜の材質がCuの場合において20MHz以上としたので、所定の導電性膜の材質がCuの場合において、表皮深さが研磨初期においては該所定の導電性膜の初期膜厚よりも小さく、研磨の進行により研磨終了点手前になってから該導電性膜は表皮深さに対応した膜厚になって該所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束を生じさせることができるという利点がある。
【0078】
請求項11記載の発明は、所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しないような周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記導電性膜を貫通する少なくとも一部の磁束が増大する課程を少なくとも一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化をモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に伴う漏洩磁束の変化を基に研磨終了時点を予測するための漏洩磁束の変化部分を検出し、該変化部分から研磨終了時点を予測するようにしたので、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降において該所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束を生じさせ、該漏洩磁束の変化を基に研磨終了点手前の膜厚基準点が検出される。したがって、該漏洩磁束の変化部分から研磨終了時点を精度よく予測・検出することができるという利点がある。
【0079】
請求項12記載の発明は、所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の指向性のない磁場を発生させるインダクタ形状と、表皮効果により導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記所定の導電性膜を貫通する磁束が増加する課程を少なくとも一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化を該漏洩磁束が作る渦電流の変化としてモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に伴う表皮深さと同等もしくはその付近になった場合の前記渦電流の変化を基に研磨終了時点を予測するための漏洩磁束の変化部分を検出し、該変化部分から研磨終了時点を予測するようにしたので、インダクタからは、その形状により、研磨初期には所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の指向性のない磁場が発生することで、膜内に形成されている微細な配線等まで強い磁束を及ぼすことがなく、また渦電流の発生が抑制されて該渦電流によるジュール熱損を極小に抑えることができる。そして、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降において該所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束が生じ、該漏洩磁束の変化に伴う渦電流の変化を基に研磨終了点手前の前記渦電流の変化部分が検出される。したがって、該変化部分から研磨終了時点を精度よく予測・検出することができるという利点がある。
【0080】
請求項13記載の発明は、上記表皮効果による波形変化部分から研磨終了時点を予測する方法に関して、前記波形変化部分から予め設定した研磨時間分研磨した後に研磨終了とするようにしたので、前記波形変化部分は残膜量が表皮深さに対応した膜厚となった時点で検出される。このため、この残膜量と前記波形変化部分検出後に実行すべき研磨レートとから、前記波形変化部分検出後の所要研磨時間を予め設定することができる。したがって、検出された前記波形変化部分から予め設定した研磨時間分研磨した後に研磨終了とすることで、所定の導電性膜を適正に研磨除去することができるという利点がある。
【0081】
請求項14記載の発明は、上記波形変化部分は、ピークの頂点、変曲点、変化の上昇率、上昇変化量、上昇開始点の表皮効果特有の変化部分を検出するので、研磨終了時点を精度よく予測することができる。
【0082】
請求項15記載の発明は、上記表皮効果による波形変化部分から研磨終了時点までの予測検出方法に関して、研磨初期から前記波形変化部分へ到達した時間と、該波形変化部分までの研磨量から、その分の研磨レートを算出し、前記波形変化部分の膜厚を前記研磨レートで除することによって、前記波形変化部分から研磨終了時点までに要する残りの研磨時間を算出し、前記波形変化部分からその算出した時間研磨した後に、研磨の終点とする
ようにしたので、該波形変化部分を検出することで、該検出までの所要時間と研磨量とから、その間の研磨レートを算出することができる。該波形変化部分検出後の研磨レートを該波形変化部分検出前の前記研磨レートと同一として波形変化部分検出後の研磨を実行場合は、該波形変化部分における残膜量である表皮深さに対応した膜厚を前記研磨レートで除することで波形変化部分検出後の所要研磨時間が算出される。したがって、該波形変化部分の検出後に、前記算出された研磨時間分だけ研磨することで、所定の導電性膜を適正に研磨除去することができるという利点がある。
【0083】
請求項16記載の発明は、所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の指向性のない磁場を発生させるインダクタ形状と、表皮効果により導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記少なくとも一部の導電性膜を貫通する磁束が増加する課程を少なくとも一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化で生じる渦電流の変化を該渦電流により前記インダクタに発生する相互インダクタンスの変化としてモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に伴う表皮深さと同等もしくはその付近になった場合の前記相互インダクタンスの変化を基に研磨終了時点を予測するための相互インダクタンスの変化部分を検出し、該変化部分から研磨終了時点を予測するようにしたので、インダクタからは、その形状により、研磨初期には所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の指向性のない磁場が発生することで、膜内に形成されている微細な配線等まで強い磁束を及ぼすことがなく、また渦電流の発生が抑制されて該渦電流によるジュール熱損を極小に抑えることができる。そして、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降において該所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束を生じさせ、該漏洩磁束の変化に伴う渦電流の変化によりインダクタに発生する相互インダクタンスの変化を基に研磨終了点手前の研磨終了時点を予測するための相互インダクタンスが検出される。したがって、該変化部分から研磨終了時点を精度よく予測・検出することができるという利点がある。
【0084】
請求項17記載の発明は、所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の指向性のない磁場を発生させるインダクタ形状と、表皮効果により導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記少なくとも一部の導電性膜を貫通する磁束が増加する課程を少なくとも一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化に基づく前記高周波インダクタ型センサにおけるセンサ回路系のインダクタンスの変化を該インダクタンスと前記センサ回路系の固有容量とで決まる共振周波数の変化としてモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に対応する膜厚になった場合の前記共振周波数の変化を基に研磨終了時点を予測するための共振周波数の変化部分を検出し、該変化部分から研磨終了時点を予測するようにしたので、インダクタからは、その形状により、研磨初期には所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の指向性のない磁場が発生することで、膜内に形成されている微細な配線等まで強い磁束を及ぼすことがなく、また渦電流の発生が抑制されて該渦電流によるジュール熱損を極小に抑えることができる。そして、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降において該所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束を生じさせ、該漏洩磁束の変化に伴うセンサ回路系のインダクタンスの変化による高周波インダクタ型センサから発振される共振周波数の変化を基に研磨終了時点手前の研磨終了時点を予測するための共振周波数の変化部分が検出される。したがって、該変化部分から研磨終了時点を精度よく予測・検出することができるという利点がある。
【0085】
請求項18記載の発明は、所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の指向性のない磁場を発生させるインダクタ形状と、表皮効果により導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記少なくとも一部の導電性膜を貫通する磁束が増加する課程を少なくとも一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化で生じる渦電流の変化、該渦電流の変化により前記インダクタに発生する相互インダクタンスの変化、又は該相互インダクタンスの変化に基づく前記高周波インダクタ型センサにおけるセンサ回路系のインダクタンスの変化による該高周波インダクタ型センサから発振される共振周波数の変化のうちの少なくともいずれかの変化をモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に対応する膜厚になった場合の前記各変化のうちの少なくともいずれかの変化を基に研磨終了時点を予測するための変化部分を検出し、該変化部分から研磨終了時点を予測するようにしたので、インダクタからは、その形状により、研磨初期には所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の指向性のない磁場が発生することで、膜内に形成されている微細な配線等まで強い磁束を及ぼすことがなく、また渦電流の発生が抑制されて該渦電流によるジュール熱損を極小に抑えることができる。そして、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降において該所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束を生じさせ、該漏洩磁束の変化に伴う渦電流の変化、相互インダクタンスの変化、又は高周波インダクタ型センサから発振される共振周波数の変化のうちの少なくともいずれかの変化を基に研磨終了点手前の前記変化部分が検出される。したがって、該変化部分から研磨終了時点を精度よく予測・検出することができるという利点がある。
【0086】
請求項19記載の発明は、研磨中の上記所定の導電性膜の膜厚が表皮深さに対応する膜厚になった場合の上記渦電流、上記相互インダクタンス又は上記共振周波数の各変化中には、前記表皮深さに対応する膜厚で生じる上記漏洩磁束の増加による渦電流の増加と研磨による膜厚体積の減少に伴う渦電流形成領域の減少との二つの現象が作用することにより極大点(ピーク)が生じ、該極大点(ピーク)を基に上記研磨終了時点を予測するための変化部分を検出するようにしたので、上記請求項17記載の発明の効果に加えてさらに、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応する膜厚になった以降における渦電流、相互インダクタンス、又は共振周波数の各変化中には顕著な極大点(ピーク)が生じることから、この顕著な極大点(ピーク)を基に研磨終了時点を予測するための変化部分を的確に検出することができる。したがって、該変化部分から研磨終了時点を一層精度よく予測・検出することができるという利点がある。
【0087】
請求項20記載の発明は、所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記少なくとも一部の導電性膜を貫通する磁束が増加する課程を少なくとも研磨中一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化をモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に対応する膜厚になった場合の前記漏洩磁束の変化から研磨終了時点を予測するための漏洩磁束の変化部分を検出し、該変化部分を基にその場で研磨レート及び除去すべき残りの膜厚量を算出するようにしたので、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降において該所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束を生じさせ、該漏洩磁束の変化から研磨終了点手前の該変化部分が検出される。したがって、該変化部分を基に除去すべき残膜量及び研磨レート等の各研磨データをその場で精度よく算出することができて、所定の導電性膜が適正に除去
されているかを正確に評価することができるとともに漏洩磁束で発生する渦電流によるジュール熱損を極小に抑えることができるという利点がある。
【0088】
請求項21記載の発明は、所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記少なくとも一部の導電性膜を貫通する磁束が増加する課程を少なくとも研磨中一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化を該漏洩磁束が作る渦電流の変化としてモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に対応する膜厚になった場合の前記渦電流の変化から研磨終了時点を予測するための渦電流の変化部分を検出し、該変化部分を基にその場で研磨レート及び除去すべき残りの膜厚量を算出するようにしたので、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降において該所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束を生じさせ、該漏洩磁束の変化に伴う渦電流の変化から研磨終了点手前の前記変化部分が検出される。したがって、該変化部分を基に除去すべき残膜量及び研磨レート等の各研磨データをその場で精度よく算出することができて、所定の導電性膜が適正に除去されているかを正確に評価することができるという利点がある。
【0089】
請求項22記載の発明は、所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記少なくとも一部の導電性膜を貫通する磁束が増加する課程を少なくとも研磨中一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化で生じる渦電流の変化を該渦電流により前記インダクタに発生する相互インダクタンスの変化としてモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に対応する膜厚になった場合の前記相互インダクタンスの変化から研磨終了時点を予測するための相互インダクタンスの変化部分を検出し、該変化部分を基にその場で研磨レート及び除去すべき残りの膜厚量を算出するようにしたので、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降において該所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束を生じさせ、該漏洩磁束の変化に伴う渦電流の変化によりインダクタに発生する相互インダクタンスの変化から研磨終了点手前の前記変化部分が検出される。したがって、該変化部分を基に除去すべき残膜量及び研磨レート等の各研磨データをその場で精度よく算出することができて、所定の導電性膜が適正に除去されているかを正確に評価することができるという利点がある。
【0090】
請求項23記載の発明は、所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記少なくとも一部の導電性膜を貫通する磁束が増加する課程を少なくとも研磨中一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化に基づく前記高周波インダクタ型センサにおけるセンサ回路系のインダクタンスの変化を該インダクタンスと前記センサ回路系の固有容量とで決まる共振周波数の変化としてモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に対応する膜厚になった場合の前記共振周波数の変化から研磨終了時点を予測するための共振周波数の変化部分を検出し、該変化部分を基にその場で研磨レート及び除去すべき残りの膜厚量を算出するようにしたので、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降において該所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束を生じさせ、該漏洩磁束の変化に伴うセンサ回路系のインダクタンスの変化による高周波インダクタ型センサから発振される共振周波数の変化を基に
研磨終了点手前の前記変化部分が検出される。したがって、該変化部分から除去すべき残膜量及び研磨レート等の各研磨データをその場で精度よく算出することができて、所定の導電性膜が適正に除去されているかを正確に評価することができるという利点がある。
【0091】
請求項24記載の発明は、研磨中の上記所定の導電性膜の膜厚が上記表皮深さと同等もしくはその付近になった場合の上記渦電流、上記相互インダクタンス又は上記共振周波数の各変化中には、前記表皮効果によって上記漏洩磁束の増加による渦電流の増加と研磨による膜厚体積の減少に伴う渦電流の減少との二つの現象が作用することによりピークが生じ、該ピークを基に上記膜厚基準点が検出されるようにしたので、上記請求項20,21又は22記載の発明の効果に加えてさらに、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降における渦電流、相互インダクタンス、又は共振周波数の各変化中には顕著なピークが生じることから、この顕著なピークを基に研磨終了時点を予測するための変化部分を的確に検出することができる。したがって、該変化部分を基に除去すべき残膜量及び研磨レート等の各研磨データをその場で一層精度よく算出することができて、所定の導電性膜が適正に除去されているかを正確に評価することができるという利点がある。
【0092】
請求項25記載の発明は、平面インダクタとキャパシタからなるセンサ回路系を構成する発振回路を備えた高周波インダクタ型センサを有し、導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出装置であって、請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17又は18記載の研磨終了時点の予測・検出方法を実行するようにしたので、平面インダクタとキャパシタからなるセンサ回路系を構成する発振回路を備えた高周波インダクタ型センサを有する研磨終了時点の予測・検出装置は、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降において該所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束を生じさせ、該漏洩磁束の変化、漏洩磁束の変化で生じる渦電流の変化、該渦電流の変化により平面インダクタに発生する相互インダクタンスの変化、又はセンサ回路系のインダクタンスの変化による高周波インダクタ型センサから発振される共振周波数の変化のうちの少なくともいずれかの変化を基に研磨終了点手前の研磨終了時点を予測するための波形変化部分を検出する。したがって、該波形変化部分から研磨終了時点を精度よく予測・検出することができるとともに漏洩磁束で発生する渦電流によるジュール熱損を極小に抑えることができるという利点がある。
【0093】
請求項26記載の発明は、平面インダクタとキャパシタからなるセンサ回路系を構成する発振回路を備えた高周波インダクタ型センサを有し、導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されているかを評価するための研磨進行中の膜厚変化をモニタするリアルタイム膜厚モニタ装置であって、請求項19,20,21,22又は23記載のリアルタイム膜厚モニタ方法を実行するようにしたので、平面インダクタとキャパシタからなるセンサ回路系を構成する発振回路を備えた高周波インダクタ型センサを有するリアルタイム膜厚モニタ装置は、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚になった以降において該所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束を生じさせ、該漏洩磁束の変化、漏洩磁束の変化で生じる渦電流の変化、該渦電流の変化により平面インダクタに発生する相互インダクタンスの変化、又はセンサ回路系のインダクタンスの変化による高周波インダクタ型センサから発振される共振周波数の変化のうちの少なくともいずれかの変化から研磨終了点手前の研磨終了時点を予測するための波形変化部分を検出する。したがって、該波形変化部分を基に除去すべき残膜量及び研磨レート等の各研磨データをその場で精度よく算出することができて、所定の導電性膜が適正に除去されているかを正確に評価することができるとともに漏洩磁束で発生する渦電流によるジュール熱損を極小に抑えることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0094】
渦電流によるジュール熱損を極小に抑えるとともに、研磨終了時点を精度よく予測・検出し、また除去すべき残膜量及び研磨レート等をその場で精度よく算出して、所定の導電性膜が適正に除去されているかを正確に評価するという目的を達成するために、導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出方法であって、前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束により前記所定の導電性膜に誘起される磁束変化をモニタし、研磨中の膜厚が前記所定の導電性膜の材質を一因子として決まる表皮効果による前記磁束変化を基に研磨終了時点を予測するための磁束変化部分を検出し、該変化部分から研磨終了時点を予測することにより実現した。
【実施例1】
【0095】
以下、本発明の実施例1に係る研磨終了時点の予測・検出方法とその装置を図面に従って詳述する。図1は研磨終了時点の予測・検出装置が組み込まれた化学機械研磨装置の斜視図、図2は研磨ヘッドの拡大縦断面図、図3は研磨終了時点の予測・検出装置がプラテンに組み込まれた状態を説明するための一部破断して示す概略側面図、図4は研磨終了時点の予測・検出装置が研磨ヘッドに組み込まれた状態を説明するための一部破断して示す概略側面図である。
【0096】
まず、本実施例に係る研磨終了時点の予測・検出方法とその装置の構成を、これに適用される化学機械研磨装置の構成から説明する。図1において化学機械研磨装置1は、主としてプラテン2と、研磨ヘッド3とから構成されている。前記プラテン2は、円盤状に形成され、その下面中央には回転軸4が連結されており、モータ5の駆動によって矢印A方向へ回転する。前記プラテン2の上面には研磨パッド6が貼着されており、該研磨パッド6上に図示しないノズルから研磨剤と化学薬品との混合物であるスラリーが供給される。
【0097】
前記研磨ヘッド3は、図2に示すように、主としてヘッド本体7、キャリア8、リテーナリング9、リテーナリング押圧手段10、弾性シート11、キャリア押圧手段16及びエアー等の制御手段で構成されている。
【0098】
前記ヘッド本体7は前記プラテン2よりも小形の円盤状に形成され、その上面中央に回転軸12(図1参照)が連結されている。該ヘッド本体7は前記回転軸12に軸着されて図示しないモータで駆動され図1の矢印B方向に回転する。
【0099】
前記キャリア8は円盤状に形成され、前記ヘッド本体7の中央に配設されている。該キャリア8の上面中央部とヘッド本体7の中央下部との間にはドライプレート13が設けられており、ピン14,14を介してヘッド本体7から回転が伝達される。
【0100】
前記ドライプレート13の中央下部と前記キャリア8の中央上部との間には作動トランス本体15aが固定されており、さらに前記キャリア8の中央上部には作動トランス15のコア15bが固定され、図示しない制御部に連結されてウェーハW上(図2の下方側)に形成されたCu等からなる導電性膜の研磨状態信号を該制御部に出力している。
【0101】
前記キャリア8の上面周縁部にはキャリア押圧部材16aが設けられており、該キャリア8は該キャリア押圧部材16aを介してキャリア押圧手段16から押圧力が伝達される。
【0102】
前記キャリア8の下面にはエアーフロートライン17から弾性シート11にエアーを噴射するためのエアー吹出し口19が設けられている。該エアーフロートライン17にはエアーフィルタ20及び自動開閉バルブV1を介してエアー供給源である給気ポンプ21に
接続されている。前記エアー吹出し口19からのエアーの吹出しは前記自動開閉バルブV1の切替えによって実行される。
【0103】
前記キャリア8の下面にはバキューム及び必要によりDIW(純水)又はエアーを吹き出すための孔22が形成されている。該エアーの吸引は真空ポンプ23の駆動によって実行され、そして、自動開閉バルブV2をバキュームライン24に設け、該自動開閉バルブV2の切替えによって該バキュームライン24を介し、バキューム及びDIWの送給が実行される。
【0104】
前記エアーフロートライン17からのエアー送給及びバキュームライン24からのバキューム作用及びDIWの送給等は制御部からの指令信号によって実行される。
【0105】
なお、前記キャリア押圧手段16は、ヘッド本体7下面の中央部周縁に配置され、キャリア押圧部材16aに押圧力を与えることにより、これに結合されたキャリア8に押圧力を伝達する。このキャリア押圧手段16は、好ましくはエアーの吸排気により膨脹収縮するゴムシート製のエアバック25で構成される。該エアバック25にはエアーを供給するための図示しない空気供給機構が連結されている。
【0106】
前記リテーナリング9はリング状に形成され、キャリア8の外周に配置されている。このリテーナリング9は研磨ヘッド3に設けられたリテーナリングホルダ27に取り付けられ、その内周部に前記弾性シート11が張設されている。
【0107】
前記弾性シート11は円形状に形成され、複数の孔22が開穿されている。該弾性シート11は、周縁部がリテーナリング9とリテーナリングホルダ27との間で挟持されることにより、リテーナリング9の内側に張設される。
【0108】
前記弾性シート11が張設されたキャリア8の下部には、キャリア8と弾性シート11との間にエアー室29が形成されている。導電性膜が形成されたウェーハWは該エアー室29を介してキャリア8に押圧される。前記リテーナリングホルダ27はリング状に形成された取付部材30にスナップリング31を介して取り付けられている。該取付部材30にはリテーナリング押圧部材10aが連結されている。リテーナリング9は、このリテーナリング押圧部材10aを介してリテーナリング押圧手段10からの押圧力が伝達される。
【0109】
リテーナリング押圧手段10はヘッド本体7の下面の外周部に配置され、リテーナリング押圧部材10aに押圧力を与えることにより、これに結合しているリテーナリング9を研磨パッド6に押し付ける。このリテーナリング押圧手段10も好ましくは、キャリア押圧手段16と同様に、ゴムシート製のエアバック16bで構成される。該エアバック16bにはエアーを供給するための図示しない空気供給機構が連結されている。
【0110】
そして、図3又は図4に示すように、化学機械研磨装置1におけるプラテン2の上部の部分又は研磨ヘッド3のキャリア8の部分に、研磨終了時点の予測・検出装置33がそれぞれ一つずつ組み込まれている。研磨終了時点の予測・検出装置33がプラテン2側に組み込まれたとき、該研磨終了時点の予測・検出装置33からの研磨終了時点を予測する波形変化部分等の検出信号は、スリップリング32を介して外部に出力される。
【0111】
なお、研磨終了時点の予測・検出装置33は、プラテン2の上部の部分又は研磨ヘッド3のキャリア8の部分に、それぞれ二つ以上を組み込んでもよい。研磨終了時点の予測・検出装置33を二つ以上を組み込んで、回転方向前方側の研磨終了時点の予測・検出装置33から、時系列的に膜厚情報を採取することで、ウェーハW面内における導電性膜28
の膜厚変化の分布情報等が得られる。
【0112】
図5は研磨終了時点の予測・検出装置33の構成例を示す図であり、(a)はブロック図、(b)は平面状インダクタの他の構成例を示す図、(c)は図(b)の平面状インダクタの断面図である。該研磨終了時点の予測・検出装置33における高周波インダクタ型センサ34の主体を構成している発振回路35は、インダクタンスLとなる二次元の平面状インダクタ36に、キャパシタンスCとなる集中定数キャパシタ37が直列に接続されて、LC回路が構成されている。前記平面状インダクタ36は、絶縁物からなる方形状等の基板36a上に、Cu等の導電物質を用いてメアンダ形に構成されている。
【0113】
該平面状インダクタ36は、図5(a)に示すスパイラル形の他に、図5(b)に示す平面状インダクタ41のように、方形状の基板41a上に、メアンダ形ので構成してもよい。また、図示しない丸形のスパイラルとしてもよい。二次元の平面状インダクタ36,41は、ガラス・エポキシや紙・フェノール等の絶縁物からなる基板36a,41a上にCu等の導電膜を成膜後、エッチング等で製作することで、線幅を非常に微細化して製作することができ、全体形状も図5(c)に示すように、一辺が23mm程度の方形状等に小型化することができる。そして、平面状インダクタ36,41の小形化により微小な磁場を効率よく発生させることができ、磁場を導電性膜28の内部に深く浸透させることなく、該導電性膜28が除去される終点付近の変化挙動を精度よく検出することが可能となる。
【0114】
前記LC回路からの出力信号はオペアンプ等で構成された増幅器38に入力され、該増幅器38の出力は抵抗等で構成されたフィードバック・ネットワーク39に入力されている。フィードバック・ネットワーク39の出力信号が、平面状インダクタ36にポジティブ・フィードバックされることにより、該平面状インダクタ36を含めて発振回路35が構成されている。
【0115】
該発振回路35は、基本的には、図6の構成例に示すように、その発振周波数帯fが、次式(1)に示すように、平面インダクタ36のインダクタンスLと集中定数キャパシタ37のキャパシタンスCで決まるコルピッツ型等の発振回路となっている。
【数1】

【0116】
前記増幅器38の出力端子には、周波数カウンタ40が接続されている。該周波数カウンタ40から後述する研磨終了時点を予測するための波形変化部分を示す検出信号等がデジタルで外部に出力される。検出信号出力をデジタルで伝送することで、ノイズの影響及び出力の減衰が防止される。また、膜厚データの管理容易性が得られる。
【0117】
前記平面状インダクタ36を含む高周波インダクタ型センサ34と該周波数カウンタ40とを含めて研磨終了時点の予測・検出装置33が構成されている。高周波インダクタ型センサ34おける発振回路35と、その発振(共振)周波数の変化をモニタするための周波数カウンタ40とを近接して配置することで、該発振回路35と周波数カウンタ40間の配線・結線部分で分布定数回路を形成してインダクタンスやキャパシタンスが不要に大きくなるのが防止されて、高周波インダクタ型センサ34付近にもたらされる導電性膜28の研磨の進行に伴う磁束の変化を精度よく検出することが可能となる。
【0118】
該研磨終了時点の予測・検出装置33は、平面状インダクタ36を除いた他の構成部品ないしは回路がIC(集積回路)化されてパッケージ33aに内装されている。前記平面
状インダクタ36は、薄い絶縁膜で被覆されてパッケージ33aの表面に固定されている。パッケージ化された研磨終了時点の予測・検出装置33が前記化学機械研磨装置1に組み込まれるとき、前記図3、図4に示したように、平面状インダクタ36がウェーハW表面部の導電性膜28と対峙するように組み込まれる。
【0119】
また、発振回路35を構成している前記集中定数キャパシタ37はキャパシタンスが可変となっており、高周波インダクタ型センサ34は前記発振周波数帯の範囲内で、発振周波数を選択できるようになっている。
【0120】
本実施例では研磨中の所定の導電性膜28が該所定の導電性膜28の表皮深さδに対応する膜厚になった場合の磁束変化を基に後述する研磨終了時点を予測するための波形変化部分の検出を行っている。所定の導電性膜28における表皮深さδは、該所定の導電性膜28の材質と高周波インダクタ型センサ34の発振周波数fとに依存して式(2)のように決まる。
【数2】

【0121】
ω:2πf、μ:透磁率、σ:導電率である。
【0122】
そして、該表皮深さδが、所定の導電性膜28の初期膜厚よりも小さく研磨終期において埋め込み部を除いた部分の所定の導電性膜28の膜厚より大になるように高周波インダクタ型センサ34の発振周波数fが選択されている。研磨除去対象の導電性膜28の材質がCuの場合において、前記発振周波数帯は、20MHz以上が選択される。
【0123】
また、たとえ、周波数を高周波帯を選択して、インダクタを平面インダクタとした場合であっても、インダクタと導電性膜との距離および、インダクタ形状によっても、表皮効果による波形の特徴が出る場合と出ない場合とがある。例えば、40MHzの周波数を使用し
、同じ平面インダクタを使用し、そして、一方のインダクタは、実物大のインダクタに対して、サイズを1/1000、インダクタと導電性膜との距離も1/1000とし、且つ、同じ40MHzの周波数、および平面インダクタを使用した場合でも、膜厚に対する共振周
波数の変化波形が異なる。一つは、0.1μm以下でピークを有するが、1/1000サイズ、距離のインダクタではピークを持たず、膜厚に対して、単調に増加する。
また、実寸大のインダクタでは、ほとんどの磁束は導電性膜表面に対して平行で磁束は膜を貫かない。即ち、表皮効果の影響で、磁束が導体膜内に入り込まない。それに対して、1/1000の大きさと距離のインダクタでは、導電性膜内を磁束が貫通する。このインダクタサイズでは、表皮効果の影響が働いていない。よって、膜厚が増加するに従って、単調に渦電流も増大し、それに伴って、相互インダクタンス、(インピーダンス)も増大するだけである。よって、たとえ周波数が同じで、同じ平面インダクタを使用したとしても、そのサイズや距離によって、表皮効果の影響が現れる場合とそうでない場合がある。ここでは、こうした表皮効果の影響が現れる状態を、研磨による膜厚減少課程に有する状態を作り出し、その状態で、終了点を予測、検出するものである。
尚、この場合の表皮効果が影響する膜厚範囲とは、単純に周波数と、導電性膜の材質(導
電率と透磁率)によって決まる前記式(2)で示される表皮深さδと一致しない。
【0124】
なぜならば、先にも示しように、表皮効果は、インダクタのサイズや距離によっても変わるからで、端的には磁場の向き(指向性)による影響もあるからである。しかし、上記の式に示されるように、周波数や導電率、透磁率が大きくなると、磁場が侵入できる距離は
小さくなるという関係そのものは、上の式の関係を満足し、対応している。よって、表皮効果が現れる膜厚範囲自体は、上の式の表皮深さδに対応した値となる。
よって、ここで表皮効果に基づく特徴的な波形とは、周波数、導電率、透磁率、のみならず、磁場の指向性などにもよって、ある条件では磁束が導電性膜にほとんど侵入せず、別条件では、磁束が導電性膜に侵入するといった状態の顕著な変化を利用したことによって得られる特徴的な波形変化のことである。
【0125】
ここで、前記「表皮深さに対応する膜厚」及び「表皮効果によって生じる磁束変化」について、図7の(a)〜(d)を用いて説明する。図7はコイルから発生した磁場が導体膜上でどのような向き((a)〜(d)各図中下方の矢印→)に配列しているかを電磁シミュレーションした結果を示す図であり、同図(a)はセンサからの発振周波数が1MHzで導体膜の膜厚が0.2μmの場合、同図(b)はセンサからの発振周波数が1MHzで導体膜の膜厚が1μmの場合、同図(c)はセンサからの発振周波数が40MHzで導体膜の膜厚が0.2μmの場合、同図(d)はセンサからの発振周波数が40MHzで導体膜の膜厚が1μmの場合である。
【0126】
電磁シミュレーションの設定は、磁場を形成するインダクタは指向性を持たない平面状インダクタとした。前記「表皮深さに対応する膜厚」とは、「表皮効果によって磁束変化が生じる膜厚」のことである。センサの発振周波数が1MHzではコイルの下側に存在する導体膜上の磁束は縦方向を向いている。この周波数では、膜厚が1μm及び0.2μmであっても、導体膜内を磁束が貫通している(図7(a)、(b))。こうした導体膜内を磁束が貫通する場合は、従来例に示されているように、導体膜内部に発生する渦電流は、膜厚減少に伴って減少する。よって、1MHzの場合、1μm以下の膜厚では、単調な挙動であるため、表皮効果は現れず、「表皮深さに対応する膜厚」も少なくとも1μmよりも厚い膜厚と考えられる。
【0127】
これに対し、センサの発振周波数が40MHzでは、明らかに導体表面での磁束向きが水平であり、膜厚が1μmでは、殆ど導体内部に入り込んでいない(図7(d))。明らかに、先の発振周波数が1MHzで膜厚が1μmの場合(図7(b))と比較すると、導体膜に入り込む磁束の向きが異なることが分かる。
【0128】
しかし、発振周波数が40MHzで導体膜が0.2μmまで薄くなると(図7(c))、一部の磁束のみが導体膜内部方向へ向いている。これは導体膜がCuでも、ある薄さになると一部の磁束が導体膜内を貫通することを示している。
【0129】
この40MHzの交番変化する磁束の場合、表皮効果に対応して、導体膜内の磁束の貫通状態が変化する。貫通磁束が徐々に増加する影響で、周波数は約700Å前後まで急激に上昇する。なお、膜厚が1μm以上では磁束は殆ど貫通していない。よって、この場合、「表皮深さに対応した膜厚」は、磁束が貫通するか・しないかの境界の膜厚とすると、約1μm程度ということができる。このことからも、発振周波数を40MHzと高くし、平面状インダクタを使用すると、1μm厚みのCu導体膜内に磁束は殆ど入り込まず、これは表皮効果によるものである。
【0130】
また、Cu導体膜で発振周波数が40MHzの場合、Cuの導電率を58×10S/mとすると、表皮深さδは9.34μmになる。計算上は、膜厚が1μmだと磁束は導体膜内に十分入り込む計算になるが、平面状インダクタを使用しており、磁束に指向性がないことから、実際は発振周波数が40MHzの場合、膜厚が1μmでも表皮効果によって磁場は導体膜内に侵入しない。導体膜が薄くなるにつれて一部の磁束が導体膜内に入り込み、わずかに渦電流が発生する。このことより、渦電流を積極的に利用して膜厚測定するのではなく、終点付近の薄い膜厚になったときに、表皮効果により、わずかに漏洩・貫通
する磁束を利用して、導体膜内に誘起される相互インダクタンスの変曲点(極大点)を利用して該導体膜の終点付近の膜厚状態をモニタすることが可能となる。
【0131】
次に、上述のように構成された研磨終了時点の予測・検出装置が組み込まれた化学機械研磨装置の研磨作用及び研磨終了時点の予測・検出方法を、図8、図9(a)〜(e)及び該図9の比較例としての図10(a)〜(e)を用いて説明する。図8は高周波インダクタ型センサにおける電磁結合で発生する磁場によるインダクタンスの変化作用を説明するための図、図9は導電性膜の研磨削除に伴う磁束及び渦電流の変化例及び研磨終了時点を予測するための波形変化部分の検出作用を説明するための組図であり、(a)〜(d)は導電性膜の研磨削除に伴う磁束及び渦電流の変化例を示す図、(e)は導電性膜の膜厚変化に対する共振周波数の変化例を示す特性図である。図9(a)〜(d)では、平面状インダクタ36が、図を見やすくするため、スパイラル形に表示されている。
【0132】
まず、化学機械研磨装置1における研磨ヘッド3を図示しない移動機構により所定箇所に待機中の導電性膜28が非研磨のウェーハW上に載置する。そして、該研磨ヘッド3のバキュームライン24を作動させ、バキューム口19a及び孔22(バキューム孔)を介して弾性シート11下面のエアー室29を真空にし、これにより前記導電性膜28が非研磨のウェーハWを吸着保持し、そして、前記移動機構により、該導電性膜28が非研磨のウェーハWを吸着保持した研磨ヘッド3をプラテン2上に運び、該ウェーハWを、導電性膜28が研磨パッド6に対接するようにプラテン2上に載置する。
【0133】
前記バキュームライン24はウェーハW上部の導電性膜28の研磨作業が終了したとき、再び、該バキュームライン24の作動により前記ウェーハWを該研磨ヘッド3によって吸着保持し、図示しない洗浄装置へ搬送するときにも用いられる。
【0134】
次いで、前記バキュームライン24の作動を解除し、図示しないポンプからエアバック25にエアーを供給して該エアバック25を膨らませる。これと同時にキャリア8に設けたエアー吹出し口19からエアー室29にエアーを供給する。これにより、エアー室29の内圧が高くなる。
【0135】
前記エアバック25の膨らみによって、前記ウェーハW上部の導電性膜28とリテーナリング9が所定の圧力で研磨パッド6に押し付けられる。この状態でプラテン2を図1の矢印A方向に回転させるとともに研磨ヘッド3を図1の矢印B方向に回転させ、回転する研磨パッド6上に図示しないノズルからスラリーを供給してウェーハW上部の所定の導電性膜28を研磨する。
【0136】
そして、次のように、高周波インダクタ型センサ34における平面インダクタ36で形成される磁束により研磨に伴う所定の導電性膜28の膜厚変化がモニタされて研磨終了時点を予測するための波形変化部分が検出される。
【0137】
平面インダクタ36が発振回路35から発振される高周波で駆動され、該平面インダクタ36からその高周波の周期に対応して時間的に変化する磁束φが発生する。研磨初期において所定の導電性膜28に誘起される磁束φは、前記表皮深さδに対応する膜厚の領域のみを膜面に沿ってほぼ平行に通過し、所定の導電性膜28における表皮深さδに対応する膜厚を超えた領域への磁束φの侵入は回避される(図9(a))。また、高周波インダクタ型センサ34から発振される共振周波数も所定の導電性膜28の膜厚変化に関係なく一定に保持される(図9(e)のa領域)。
【0138】
研磨が進行して所定の導電性膜28が前記表皮深さδに対応する膜厚と同等もしくはその付近の膜厚になると、一部の磁束φが所定の導電性膜28を貫通して漏洩磁束φが生
じ始める。所定の導電性膜28を貫通しない磁束φは、そのまま膜面に沿ってほぼ平行に通過する。そして、所定の導電性膜28中に貫通した漏洩磁束φ数に比例して渦電流Ieが発生する(図9(b))。
【0139】
さらに研磨が進行すると、漏洩磁束φが増えて渦電流Ieが導電性膜28の膜面に沿った広い領域に発生する(図9(c))。この広い領域に発生した渦電流Ieが、図8に示すように、さらに磁場Mを作り、その磁場Mが元の平面状インダクタ36から発生した磁束φを打ち消すように作用する。結果的に導電性膜28が形成した磁場Mによって、相互インダクタンスLmが上昇し、元の平面状インダクタ36の見かけ上のインダクタンスLが低下する。その結果、高周波インダクタ型センサ34から発振される発振周波数fは、式(3)のように増大する。
【数3】

【0140】
したがって、相互インダクタンスの発生により、センサ回路系のインダクタンスが等価的に減少して高周波インダクタ型センサ34から発振される共振周波数が上昇する(図9(e)のb、cの領域)。
【0141】
さらに研磨の進行により漏洩磁束φは増えて飽和する。しかし渦電流Ieは、所定の導電性膜28の膜厚体積の減少に伴い急速に減少する(図9(d))。この渦電流Ieの急速な減少により前記相互インダクタンスも急速に減少する。この相互インダクタンスの急速な減少は、前記式(3)におけるインダクタンスの減少分Lmの低下につながり、結果としてセンサ回路系のインダクタンスが等価的に増加し、高周波インダクタ型センサ34から発振される共振周波数が急速に低下する(図9(e)のd領域)。
【0142】
このように、研磨の進行により所定の導電性膜28が表皮深さδに対応する膜厚と同等もしくはその付近の膜厚になった以降において、渦電流Ieが発生しその後の急速な減少によりセンサ回路系のインダクタンスが一旦減少してその後増加に転じる。この挙動により高周波インダクタ型センサ34から発振される共振周波数の波形にピーク(変曲点)が発生する。このピークを基に研磨終了時点手前の研磨終了時点を予測するための波形変化部分Pが検出され、該変化部分Pから研磨終了時点が予測される。所定の導電性膜28がCuの場合、該変化部分Pが検出された時点の残膜量は、ほぼ1000Å程度であり、該残膜量に対し仕上げ研磨等が行われて研磨を終了する。
【0143】
該仕上げ研磨としては、例えば前記波形変化部分Pから、該波形変化部分Pにおける残膜量である表皮深さに対応した膜厚を所要の研磨レートで予め設定した研磨時間分研磨した後に研磨終了とする。又は、研磨初期から前記波形変化部分Pが検出されるまでの時間と、該波形変化部分Pに達するまでの研磨量から、その間における研磨レートを算出し、前記波形変化部分Pにおける残膜量である表皮深さに対応した膜厚を前記研磨レートで除することで前記波形変化部分P検出後の所要研磨時間を算出する。そして、該変化部分Pの検出後に、前記算出された研磨時間分だけ研磨することで研磨を終了する。
【0144】
次いで、図10(a)〜(e)の比較例を説明する。該比較例では、表皮深さδに対応する膜厚が、導電性膜28の初期膜厚よりも大になるような周波数が適用されている。このような周波数が適用されることで、研磨初期から研磨終期までの膜厚変化のモニタの間、導電性膜28に誘起される磁束φは全て該導電性膜28を貫通して絶えず漏洩磁束φが発生している。したがって、膜厚変化のモニタの間、該漏洩磁束φ数に比例した渦電流Ieが発生する(図10の(a)〜(d))。このため、この渦電流Ieにより導電性
膜28と前記平面インダクタとの間に大きな相互インダクタンスが発生し、この相互インダクタンスによるインダクタンスの減少分Lmにより、センサから発振される発振周波数fは、研磨初期から前記式(3)のようになる。
【0145】
そして、研磨の進行による膜厚の減少にしたがって渦電流Ieは急激に減少し(図10の(b)から(d))、これに伴って相互インダクタンスが減少して前記式(3)中のインダクタンスの減少分Lmも減少する。この結果、センサ回路系のインダクタンスが等価的に増加してセンサから発振される共振周波数が単調減少する(図10の(e))。
【0146】
このように、比較例では、共振周波数は単調減少カーブを描くため、研磨初期からの膜厚減少量を見積もることは可能だが、研磨終了時点もしくは研磨終了点手前の状態を厳密に判別することはできない。例えば、微妙な設定により浮遊容量Cが変化したとき、全体的な図10(e)の共振周波数は、波形全体にわたって上下にシフトする。このため、仮にある設定の周波数になったときに研磨終了点とする設定をしていても、全体的に共振周波数がシフトすれば、閾値は設定できない。また、初期膜厚からの除去量の状態を渦電流変化でリアルタイムにモニタしたとしても、初期膜厚がばらついている場合、研磨終了点となる状態の膜厚もばらつくことになる。波形の特徴がないため、この場合も上記と同様に閾値は設定できない。
【0147】
図11の(a)〜(d)は、研磨対象となる導電性膜が材質及び導電率の点で異なっている2種のウェーハWa、Wbについて、前記波形変化部分Pとなるピークを評価した結果を示している。同図(a)はCu膜付きウェーハWa、(b)はCu膜の膜厚に対する共振周波数の変化特性、(c)はタングステン(W)膜付きウェーハWb、(d)はタングステン(W)膜の膜厚に対する共振周波数の変化特性をそれぞれ示す図である。図11の(b)、(d)における各縦軸のセンサ出力は共振周波数に対応する。
【0148】
Cu膜及びタングステン(W)膜のいずれも研磨の進行とともに一旦は共振周波数は増大し、その後、急激に減少してピーク(変曲点)が発生する。このピーク(変曲点)を基にそれぞれ前記波形変化部分Pが検出される。この挙動は、図11(d)に示すタングステン(W)膜の場合に比べて、明らかに図11(b)に示す導電率の大きいCu膜の方が顕著である。
【0149】
図12の(a)、(b)は、研磨対象の導電性膜がCu膜の場合について膜厚と共振周波数との関係を示す図であり、(a)は研磨の進行に伴う膜厚と共振周波数との関係を示す図、(b)は静止状態における膜厚と共振周波数との関係を示す図である。図12の(a)、(b)における各縦軸のカウント値は共振周波数に対応する。
【0150】
図12(a)において、Cu膜の初期膜厚は、ほぼ1.5μm(15000Å)である。Cu膜は、研磨の進行に伴って共振周波数は膜厚が約1μm(10000Å)付近から徐々に上昇し、700Å付近で最大値を取って前記波形変化部分Pが検出される。共振周波数は最大値を取った後、急激に低下する。このように、Cu膜は、前記波形変化部分Pが検出されたときの残り膜厚が精度よく検知される。
【0151】
図12(b)において、静止状態のCu膜の各膜厚に対して測定した共振周波数は、膜厚が710Åで最大値を示している。したがって、静止状態で共振周波数が最大になるCu膜の膜厚と、上記の研磨の進行中において共振周波数が最大となるCu膜の膜厚とは、ほぼ一致している。
【0152】
次に、磁束変化過程中における共振周波数のピークを膜厚基準点として研磨終了時点を予測する方法について更に説明する。
【0153】
まず、図13に膜厚と共振周波数との関係について、膜厚と対応させて記した図を示す。もっとも標準的な研磨終了時点の予測検出方法としては、図13の共振周波数波形において、その波形のピークに相当する部分を、膜厚基準値と規定し、その膜厚基準値を元に、研磨終了時点を計算する場合である。研磨終了時点はCuの膜を除去した時点、すなわちCu膜が0Aになったときを終了時点と定める。
【0154】
図13に示すように、波形のピークに相当する膜厚基準値は、710Aに対応する。同図で共振周波数の波形をモニタし、ピークの時点に到達した時点を検出する。ピークの検出方法としては、波形は必ず膜厚減少に伴って一旦上昇した後に、急激に低下する挙動をたどる事から、共振周波数がその前より低下した時点でピーク点を判別すればよい。また、その他の方法としては、随時微分係数を求めながら、微分係数が0以下もしくは負に転じた部分をピーク位置とすればよい。
【0155】
図13の場合において、初期膜として、ここでは16000AのCu膜を有するブランケット膜を準備し、そのCu膜が除去される時点の研磨事件を予測し、終了点を検出する。図13では、研磨開始後89s時点で残り780Aの膜厚基準点に到達する。すなわち、初期から除去した量は16000A−780A=15220Aほど除去したことになる。この89s経過して15290A除去されたとすると、残り780Aほど除去するのに要する時間は、約4.43sということになる。すなわち、膜厚基準点検出後約4.5s後に研磨を停止すれば、Cu膜厚はほぼ0Aであり、研磨終了点で研磨を精度く停止することが可能となる。ここでは、当然、研磨中は一定の研磨レートで除去されていることが前提とされる。
【0156】
また、別の方法として、共振周波数のピーク位置によらずとも、その前であっても検出することは可能である。例えば、本発明においては、共振周波数の波形は、共振周波数のピーク点に到る前までに急激に上昇する過程を経る。この上昇率を事前に設定しておき、その上昇率になった時点で、研磨終了時点を予測しても良い。もしくは、その上昇率が最大になる時点をあらかじめモニタしておき、最大上昇率になった時点を膜厚基準点として定義し、その点から設定しても良い。このように上昇率で終了点を検出する場合は、図14に示すように、共振周波数の波形を随時微分した波形を示すのが効果的である。所定の上昇率になった時点で予測する場合は、微分したグラフに対して閾値を設定し、その閾値に到達した研磨時間を元に、先と同様に終了時点までに必要な研磨時間を逆算することができる。
【0157】
ここで、一例として、最大上昇率になった時点を膜厚基準点として定義し、その時点から研磨終了時点を予測する方法を示す。図14では、81s時点で最大の上昇率を得ることを示している。このとき、残り膜厚は2149Aに相当する。よって、81s経過して13851A研磨されたとすると、残り2149Aほど研磨するのに要する時間は、12.56sということになる。よって12.5秒後に研磨を終了すると、Cu膜厚はほぼ0Aとなり、研磨終了時点で精度よく研磨を停止することができる。
【0158】
以上のような形式で様々な部分で研磨の終了時点を予測することが可能となり、例えば、図15に示したような2回微分したグラフを示した場合は、共振周波数の変曲点、すなわち図15で2回微分したグラフにおいて0になる点を膜厚基準点として定義して、研磨終了時点を予測しても良い。また、共振周波数の上昇率の変化度合いが所定の値になる部分を基準として、その点を膜厚基準点として、研磨終了までの研磨時間を見積もっても良い。
【0159】
以上に示すように、研磨による膜厚減少に伴って、共振周波数が一度上昇し、その後急
激に低下する挙動をとる表皮効果特有の波形を得る場合においては、研磨終了する前の時点で様々な特徴のある変化をモニタすることができ、その変化を基に、研磨終了時点までの研磨時間を精度よく見積もることが可能となる。これは実質的には、研磨終了点を予測していることであるが、研磨終了直前を予測する場合においては、それはほぼ研磨終了点を検出していることと同じ意味となる。
【0160】
なお、本実施例は、前記共振周波数の他に相互インダクタンス、渦電流Ie、漏洩磁束φの変化のうちの少なくともいずれかの変化を基に前記波形変化部分Pを検出することができる。相互インダクタンスの変化は前記式(3)を利用して高周波インダクタ型センサ34の発振周波数の変化から求めることができ、渦電流Ieは前記相互インダクタンスと比例関係にあることから該渦電流Ieの変化は前記相互インダクタンスの変化を用いて求めることができ、また漏洩磁束φは渦電流Ieと比例関係にあることから該漏洩磁束φの変化は前記渦電流Ieの変化を用いて求めることができる。
【0161】
上述したように、本実施例に係る研磨終了時点の予測・検出方法とその装置においては、研磨の進行により所定の導電性膜28が表皮深さと同等もしくはその付近の研磨終了点手前の膜厚になってから前記波形変化部分P検出の基になる漏洩磁束φが生じることで、該漏洩磁束φで発生する渦電流Ieによるジュール熱損を極小に抑えることができる。
【0162】
研磨の進行により所定の導電性膜28が表皮深さδに対応する膜厚と同等もしくはその付近の膜厚になった以降における渦電流Ie、相互インダクタンス、又は共振周波数の各変化中には顕著なピークが生じることから、この顕著なピークを基に研磨終了点手前の前記波形変化部分Pを的確に検出することができる。したがって、該波形変化部分Pから研磨終了時点を精度よく予測・検出することができる。
【0163】
高周波インダクタ型センサ34からの共振周波数の伝送方法を周波数カウンタ40を用いたデジタル出力としたことで、ノイズの影響及び共振周波数出力の減衰が防止されて、前記波形変化部分Pを確実に検出することができる。
【0164】
高周波インダクタ型センサ34を構成している集中定数キャパシタ37をキャパシタンス可変としたことで、異なる膜種の導電性膜28に対し、表皮深さδに対応する膜厚が適切な値になるように発振周波数を容易に選択することができる。
【0165】
高周波インダクタ型センサ34の主構成要素である平面インダクタ36は、ノイズの発生及び電力消費は殆どなく、さらには比較的安価で済むことからコスト低減を図ることができる。
【実施例2】
【0166】
以下、本発明の実施例2に係るリアルタイム膜厚モニタ方法とその装置を説明する。本実施例では、前記図5の(a)、(b)、(c)に示した研磨終了時点の予測・検出装置33がリアルタイム膜厚モニタ装置として機能する。そして該リアルタイム膜厚モニタ装置33が前記図3及び図4に示したように、プラテン2もしくは研磨ヘッド3に組み込まれている。
【0167】
該リアルタイム膜厚モニタ装置33によるリアルタイム膜厚モニタ方法を説明する。前記実施例1と同様の方法により、図9(e)に示す研磨終了時点手前の前記波形変化部分Pが検出される。周波数カウンタ40からの該波形変化部分P出力が図示しないCPU等に入力され、該変化部分Pを基に表皮深さδに対応する膜厚とほぼ同等である除去すべき残膜量、並びに既に研磨除去された膜厚量及びその所要時間から研磨レート等の各研磨デ
ータがその場で算出され、所定の導電性膜28が適正に除去されているかがリアルタイムで評価される。
【0168】
上述したように、本実施例に係るリアルタイム膜厚モニタ方法とその装置においては、研磨終了時点手前の研磨終了時点を予測するための前記波形変化部分Pの検出後、該波形変化部分Pを基に除去すべき残膜量及び研磨レート等の各研磨データをその場で精度よく算出することができて、所定の導電性膜28が適正に除去されているかを正確に評価することができる。またこれとともに漏洩磁束φで発生する渦電流Ieによるジュール熱損を極小に抑えることができる。
【0169】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】本発明の実施例に係る研磨終了時点の予測・検出装置が組み込まれた化学機械研磨装置の斜視図。
【図2】図1の化学機械研磨装置における研磨ヘッドの拡大縦断面図。
【図3】本発明の実施例に係る研磨終了時点の予測・検出装置がプラテンに組み込まれた状態を説明するための一部破断して示す概略側面図。
【図4】本発明の実施例に係る研磨終了時点の予測・検出装置が研磨ヘッドに組み込まれた状態を説明するための一部破断して示す概略側面図。
【図5】本発明の実施例に係る研磨終了時点の予測・検出装置の構成例を示す示す図であり、(a)はブロック図、(b)は平面状インダクタの他の構成例を示す図、(c)は図(b)の平面状インダクタの断面図。
【図6】図5の研磨終了時点の予測・検出装置における発振回路の基本的な構成例を示す図であり、(a)は構成図、(b)は図(a)の等価回路。
【図7】本発明の実施例において、コイルから発生した磁場が導体膜上でどのような向きに配列しているかを電磁シミュレーションした結果を示す図であり、(a)はセンサからの発振周波数が1MHzで導体膜の膜厚が0.2μmの場合、(b)はセンサからの発振周波数が1MHzで導体膜の膜厚が1μmの場合、 (c)はセンサからの発振周波数が40MHzで導体膜の膜厚が0.2μmの場合、(d)はセンサからの発振周波数が40MHzで導体膜の膜厚が1μmの場合。
【図8】本発明の実施例に係る高周波インダクタ型センサにおける電磁結合で発生する磁場によるインダクタンスの変化作用を説明するための構成図。
【図9】図1の化学機械研磨装置による導電性膜の研磨削除に伴う磁束等の変化例及び研磨終了時点を予測するための波形変化部分の検出作用を説明するための組図であり、(a)〜(d)は導電性膜の研磨削除に伴う磁束等の変化例を示す図、(e)は導電性膜の膜厚変化に対する共振周波数の変化例を示す特性図。
【図10】図9の比較例としての組図であり、(a)〜(d)は導電性膜の研磨削除に伴う磁束及び渦電流の変化例を示す図、(e)は導電性膜の膜厚変化に対する共振周波数の変化例を示す特性図。
【図11】本発明の実施例において、研磨対象となる導電性膜が材質及び導電率の点で異なっているCu膜とタングステン(W)膜について研磨終了時点を予測するための波形変化部分となるピークを評価した結果を示す図であり、(a)はCu膜付きウェーハを示す図、(b)はCu膜の膜厚に対する共振周波数の変化特性例を示す図、(c)はタングステン(W)膜付きウェーハを示す図、(d)はタングステン(W)膜の膜厚に対する共振周波数の変化特性例を示す図。
【図12】本発明の実施例において、研磨対象の導電性膜がCu膜の場合について膜厚と共振周波数との関係を示す図であり、(a)は研磨の進行に伴う膜厚と共振周波数との関係例を示す図、(b)は静止状態における膜厚と共振周波数との関係例を示す図。
【図13】本発明の実施例において、膜厚と共振周波数との関係を示す図。
【図14】本発明の実施例において、膜厚変化と共振周波数の一次微分値との対応を示す図。
【図15】本発明の実施例において、膜厚変化と共振周波数の二次微分値との対応を示す図。
【符号の説明】
【0171】
1 化学機械研磨装置
2 プラテン
3 研磨ヘッド
4 回転軸
5 モータ
6 研磨パッド
7 ヘッド本体
8 キャリア
9 リテーナリング
10 リテーナリング押圧手段
11 弾性シート
12 回転軸
13 ドライプレート
14 ピン
15 作動トランス
16 キャリア押圧手段
17 エアーフロートライン
19 エアー吹出し口
20 エアーフィルタ
21 給気ポンプ
22 孔
23 真空ポンプ
24 バキュームライン
25 エアバック
27 リテーナリングホルダ
28 導電性膜
29 エアー室
30 取付部材
31 スナップリング
32 スリップリング
33 研磨終了時点の予測・検出装置(リアルタイム膜厚モニタ装置)
34 高周波インダクタ型センサ
35 発振回路
36 平面状インダクタ
36a 絶縁性の基板
37 集中定数キャパシタ
38 増幅器
39 フィードバック・ネットワーク
40 周波数カウンタ
41 平面状インダクタ
41a 絶縁性の基板
P 膜厚基準点
W ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出方法であって、
前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、該インダクタで形成される磁束により前記所定の導電性膜に誘起される磁束変化をモニタし、研磨中の膜厚が前記所定の導電性膜の材質を一因子として決まる表皮効果によって顕著に表われる磁束変化を利用し、該磁束変化過程中において研磨終了時点を予測するための磁束変化部分を検出し、該磁束変化部分から研磨終了時点を予測することを特徴とする研磨終了時点の予測・検出方法。
【請求項2】
前記表皮効果による磁束変化部分を検出する方法は、ピークの頂点、変曲点、変化の上昇率、上昇変化量、上昇開始点などの表皮効果特有の特徴的な変化を検出することを特徴とする請求項1記載の研磨終了時点の予測・検出方法。
【請求項3】
前記表皮効果による磁束変化部分を検出する方法は、波形ピーク点、変曲点、所定上昇率点などの表皮効果特有の特徴的な変化を検出することを特徴とする研磨終了時点の予測・検出方法。
【請求項4】
上記導電性膜に近接する高周波インダクタ型センサは、二次元平面インダクタであることを特徴とする請求項1又は2記載の研磨終了時点の予測・検出方法。
【請求項5】
上記導電性膜に近接する高周波インダクタ型センサは、絶縁体で形成された基板の表面に導電性膜を付けた構成とすることを特徴とする請求項1,2又は3記載の研磨終了時点の予測・検出方法。
【請求項6】
上記所定の導電性膜の表皮効果に基づいて誘起される磁束変化のモニタは、該所定の導電性膜中の渦電流の計測、該所定の導電性膜が渦電流を生じることにより発生する相互インダクタンスの測定、該所定の導電性膜の相互インダクタンスによる上記高周波インダクタ型センサにおけるセンサ回路系のインダクタンス変化の測定、又は該センサ回路系のインダクタンス変化を前記高周波インダクタ型センサが発振する共振周波数の変化での測定の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の研磨終了時点の予測・検出方法。
【請求項7】
上記高周波インダクタ型センサを発振させる発振器とその発振(共振)周波数の変化をモニタするための周波数カウンタが、前記高周波インダクタ型センサに近接して配置されていることを特徴とする請求項5記載の研磨終了時点の予測・検出方法。
【請求項8】
上記所定の導電性膜の表皮効果に基づいて誘起される磁束変化、渦電流の変化、相互インダクタンスの変化及び共振周波数の変化は、膜厚減少に伴って貫通磁束が増加することによって渦電流が増大する変化と、その後の膜厚減少に伴って渦電流形成領域が実質的に減少することによる変化の二つを含むことを特徴とする請求項5又は6記載の研磨終了時点の予測・検出方法。
【請求項9】
導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出方法であって、
前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨過程による膜厚減少に伴って、研磨対象の導電性膜を貫通する磁束が増加することにより導電性膜に誘起される相互インダクタンスが上昇するような、インダクタ形状と周波数帯域を選択し、前記インダクタで形成される磁束により前記所定の導電性膜に誘起される磁
束変化をモニタし、研磨中の膜厚が表皮効果によって顕著に表われる磁束変化を利用し、該磁束変化課程中において研磨終了時点を予測するための磁束変化部分を検出し、該磁束変化部分から研磨終了時点を予測することを特徴とする研磨終了時点の予測・検出方法。
【請求項10】
選択される上記周波数帯は、上記所定の導電性膜の材質がCuの場合において20MHz以上であることを特徴とする請求項8記載の研磨終了時点の予測・検出方法。
【請求項11】
導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出方法であって、前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しないような周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記導電性膜を貫通する少なくとも一部の磁束が増大する過程を少なくとも一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化をモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果によって顕著に表われる漏洩磁束の変化を利用し、該漏洩磁束変化課程中において研磨終了時点を予測するための漏洩磁束変化部分を検出し、該漏洩磁束変化部分から研磨終了時点を予測することを特徴とする研磨終了時点の予測・検出方法。
【請求項12】
導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出方法であって、
前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の指向性のない磁場を発生させるインダクタ形状と、表皮効果により導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記所定の導電性膜を貫通する磁束が増加する過程を少なくとも一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化を該漏洩磁束が作る渦電流の変化としてモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果によって顕著に表われる渦電流の変化課程中において研磨終了時点を予測するための渦電流変化部分を検出し、該渦電流変化部分から研磨終了時点を予測することを特徴とする研磨終了時点の予測・検出方法。
【請求項13】
上記表皮効果による波形変化部分から研磨終了時点を予測する方法に関して、上記波形変化部分から、予め、設定した研磨時間分研磨した後に研磨終了とすることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10又は11記載の研磨終了時点の予測・検出方法。
【請求項14】
上記波形変化部分は、ピークの頂点、変曲点、変化の上昇率、上昇変化量、上昇開始点の表皮効果特有の変化であることを特徴とする請求項12記載の研磨終了時点の予測・検出方法。
【請求項15】
上記表皮効果による波形変化部分から研磨終了時点までの予測検出方法に関して、研磨初期から前記波形変化部分へ到達した時間と、該波形変化部分までの研磨量から、その分の研磨レートを算出し、前記特徴となる波形の変化から算出した膜厚を前記研磨レートで除することによって、波形変化部分から研磨終了時点までに残りの研磨時間を算出し、前記波形変化点から算出した時間研磨した後に、研磨の終点とすることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12又は13記載の研磨終了時点の予測・検出方法。
【請求項16】
導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測し
て検出する研磨終了時点の予測・検出方法であって、
前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の指向性のない磁場を発生させるインダクタ形状と、表皮効果により導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記少なくとも一部の導電性膜を貫通する磁束が増加する過程を少なくとも一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化で生じる渦電流の変化を該渦電流により前記インダクタに発生する相互インダクタンスの変化としてモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に伴う表皮深さと同等もしくはその付近になった場合の前記相互インダクタンスの変化を基に研磨終了時点を予測するための相互インダクタンスの変化部分を検出し、該変化部分から研磨終了時点を予測することを特徴とする研磨終了時点の予測・検出方法。
【請求項17】
導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出方法であって、
前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の指向性のない磁場を発生させるインダクタ形状と、表皮効果により導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記少なくとも一部の導電性膜を貫通する磁束が増加する過程を少なくとも一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化に基づく前記高周波インダクタ型センサにおけるセンサ回路系のインダクタンスの変化を該インダクタンスと前記センサ回路系の固有容量とで決まる共振周波数の変化としてモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に対応する膜厚になった場合の共振周波数の変化を基に研磨終了時点を予測するための共振周波数の変化部分を検出し、該変化部分から研磨終了時点を予測することを特徴とする研磨終了時点の予測・検出方法。
【請求項18】
導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出方法であって、
前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の指向性のない磁場を発生させるインダクタ形状と、表皮効果により導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記少なくとも一部の導電性膜を貫通する磁束が増加する過程を少なくとも一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化で生じる渦電流の変化、該渦電流の変化により前記インダクタに発生する相互インダクタンスの変化、又は該相互インダクタンスの変化に基づく前記高周波インダクタ型センサにおけるセンサ回路系のインダクタンスの変化による該高周波インダクタ型センサから発振される共振周波数の変化のうちの少なくともいずれかの変化をモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に対応する膜厚になった場合の前記各変化のうちの少なくともいずれかの変化を基に研磨終了時点を予測するための共振周波数の変化部分を検出し、該変化部分から研磨終了時点を予測することを特徴とする研磨終了時点の予測・検出方法。
【請求項19】
研磨中の上記所定の導電性膜の膜厚が表皮深さに対応する膜厚になった場合の上記渦電流、上記相互インダクタンス又は上記共振周波数の各変化中には、前記表皮深さに対応する膜厚で生じる上記漏洩磁束の増加による渦電流の増加と研磨による膜厚体積の減少に伴う渦電流形成領域の減少との二つの現象が作用することにより極大点(ピーク)が生じ、
該極大点(ピーク)を基に上記変化部分が検出されることを特徴とする請求項17記載の研磨終了時点の予測・検出方法。
【請求項20】
導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されているかを評価するための研磨進行中の膜厚変化をモニタするリアルタイム膜厚モニタ方法であって、
前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記少なくとも一部の導電性膜を貫通する磁束が増加する過程を少なくとも研磨中一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化をモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に対応する膜厚になった場合の前記漏洩磁束の変化から研磨終了時点を予測するための漏洩磁束の変化部分を検出し、該変化部分を基にその場で研磨レート及び除去すべき残りの膜厚量を算出することを特徴とするリアルタイム膜厚モニタ方法。
【請求項21】
導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されているかを評価するための研磨進行中の膜厚変化をモニタするリアルタイム膜厚モニタ方法であって、
前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記少なくとも一部の導電性膜を貫通する磁束が増加する過程を少なくとも研磨中一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化を該漏洩磁束が作る渦電流の変化としてモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に対応する膜厚になった場合の前記渦電流の変化から研磨終了時点を予測するための漏洩磁束の変化部分を検出し、該変化部分を基にその場で研磨レート及び除去すべき残りの膜厚量を算出することを特徴とするリアルタイム膜厚モニタ方法。
【請求項22】
導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されているかを評価するための研磨進行中の膜厚変化をモニタするリアルタイム膜厚モニタ方法であって、
前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記少なくとも一部の導電性膜を貫通する磁束が増加する過程を少なくとも研磨中一度は有し、前記インダクタで形成される磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化で生じる渦電流の変化を該渦電流により前記インダクタに発生する相互インダクタンスの変化としてモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に対応する膜厚になった場合の前記相互インダクタンスの変化から研磨終了時点を予測するための相互インダクタンスの変化部分を検出し、該変化部分を基にその場で研磨レート及び除去すべき残りの膜厚量を算出することを特徴とするリアルタイム膜厚モニタ方法。
【請求項23】
導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されているかを評価するための研磨進行中の膜厚変化をモニタするリアルタイム膜厚モニタ方法であって、
前記所定の導電性膜に高周波インダクタ型センサにおけるインダクタを近接させ、研磨初期において前記インダクタで形成された磁束のうちの少なくとも一部の磁束は前記所定の導電性膜の表皮効果により該所定の導電性膜を貫通しない程度の周波数を前記高周波インダクタ型センサから発振させ、研磨の進行にしたがって前記少なくとも一部の導電性膜を貫通する磁束が増加する過程を少なくとも研磨中一度は有し、前記インダクタで形成さ
れる磁束のうち研磨の進行中に前記所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束の変化に基づく前記高周波インダクタ型センサにおけるセンサ回路系のインダクタンスの変化を該インダクタンスと前記センサ回路系の固有容量とで決まる共振周波数の変化としてモニタし、研磨中の膜厚が前記表皮効果に対応する膜厚になった場合の前記共振周波数の変化から研磨終了時点を予測するための共振周波数の変化部分を検出し、該変化部分を基にその場で研磨レート及び除去すべき残りの膜厚量を算出することを特徴とするリアルタイム膜厚モニタ方法。
【請求項24】
研磨中の上記所定の導電性膜の膜厚が上記表皮深さと同等もしくはその付近になった場合の上記渦電流、上記相互インダクタンス又は上記共振周波数の各変化中には、前記表皮効果によって上記漏洩磁束の増加による渦電流の増加と研磨による膜厚体積の減少に伴う渦電流の減少との二つの現象が作用することによりピークが生じ、該ピークを基に研磨終了時点を予測するための変化部分が検出されることを特徴とする請求項20,21又は22記載のリアルタイム膜厚モニタ方法。
【請求項25】
平面インダクタとキャパシタからなるセンサ回路系を構成する発振回路を備えた高周波インダクタ型センサを有し、導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されたときの研磨終了時点を予測して検出する研磨終了時点の予測・検出装置であって、
請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17又は18記載の研磨終了時点の予測・検出方法を実行することを特徴とする研磨終了時点の予測・検出装置。
【請求項26】
平面インダクタとキャパシタからなるセンサ回路系を構成する発振回路を備えた高周波インダクタ型センサを有し、導電性膜を研磨して、所定の導電性膜が適正に除去されているかを評価するための研磨進行中の膜厚変化をモニタするリアルタイム膜厚モニタ装置であって、
請求項19,20,21,22又は23記載のリアルタイム膜厚モニタ方法を実行することを特徴とするリアルタイム膜厚モニタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−81410(P2009−81410A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112165(P2008−112165)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】