説明

硫化検出センサ、硫化検出回路及び硫化検出センサの製造方法

【課題】チップ抵抗器等の電子部品の累積的な硫化量を検出して、電子部品が硫化断線する等して故障する前に危険性を検出することができる硫化センサを提供する。
【解決手段】硫化検出センサA1は、絶縁基板10と、硫化検出体20と、下面電極22と、側面電極24と、メッキ26と、保護膜40とを有している。硫化検出体20は、硫化されやすい銀を主体とした導電体であり、保護膜40は、硫化ガス透過性を有するとともに、透明に形成されている。硫化検出体20の色の変化を保護膜40を目視したり、硫化検出体20の抵抗値の変化を検出したり、硫化検出センサA1の上面に光を照射することにより硫化検出体20からの反射光を検出することにより硫化の度合いを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫化センサに関するものであり、特に、チップ抵抗器等の電子部品の累積的な硫化量を検出するためのセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器にはチップ抵抗器やチップコンデンサなど銀電極を使用した電子部品が多く使用されている。これらの電子部品は硫黄を含む硫化ガスにさらされると銀が硫化銀となって導通路が狭くなり、やがて断線に至り、部品例えばチップ抵抗器の故障により電子機器が故障してしまうことがある。従来から温泉地帯やゴム製造工場などでは硫化断線の問題はあった。近年自動車内に使用する電子部品が増え、ガソリンなどに含まれる微量な硫黄成分が部品の銀電極部分を硫化断線させる故障が多くなった。
【0003】
例えば、図14に示すチップ抵抗器は、絶縁基板110と、上面電極120と、下面電極122と、側面電極124と、メッキ126(ニッケルメッキ128と、錫メッキ132)と抵抗体140と、カバーコート142と、保護膜144とを有するが、保護膜144とメッキ126の境界位置から硫化水素等の硫化ガスが侵入し、その濃度と時間に応じて上面電極120に深く浸透し、上面電極120を構成する銀が硫化銀となって消失することにより(例えば、図14における120aの部分が消失する)、抵抗値が変化したり断線状態となってしまい、使用環境が良くない場合には1〜3年の寿命で上面電極の銀が消失し断線することがある。特に、ゴム等の硫黄を扱う工場、温泉地帯、自動車や発電所などで使用される石油に含まれる硫化水素や二酸化硫黄等の硫黄成分などにおける影響が大きい。
【0004】
また、従来より、硫化ガスセンサとして、酸化錫系の酸化物半導体の抵抗値の変化を利用して硫化水素等の硫化ガスを検出するガスセンサは存在していた(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−257767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示すようなガスセンサは、その時点でのガスの濃度を検出することはできるが、長時間にわたって硫化ガスに暴露された硫化の累積量を検出することはできない。つまり、特許文献1に示すような従来のガスセンサでは、チップ抵抗器等の電子部品の累積的な硫化量を検出して、電子部品が硫化断線する等して故障する前に危険性を検出することはできなかった。
【0006】
また、硫化断線しにくい抵抗器等の電子部品も種々考案されているが、その電子部品がどの程度の硫化ガスに曝されたのかは判断できなかった。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする問題点は、チップ抵抗器等の電子部品の累積的な硫化の度合いを検出して、電子部品が硫化断線する等して故障する前に危険性を検出することができる硫化センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記問題点を解決するために創作されたものであって、第1には、絶縁基板と、絶縁基板の上面に形成され、硫化ガスにより硫化される金属を主材として含有する硫化検出体と、絶縁基板の両側の端部に形成され、該硫化検出体と接続して形成された電極部と、硫化検出体における電極部に被覆されていない領域である非被覆領域を被覆する保護膜で、硫化検出体の上面を目視可能に透明又は半透明に形成されるとともに、硫化ガス透過性を有する材質により形成され、硫化検出体における電極部に被覆されていない領域の一部を被覆する硫化ガス透過性保護膜と、硫化検出体の上面を目視可能に透明又は半透明に形成されるとともに、硫化ガス非透過性を有する材質により形成され、硫化検出体における電極部に被覆されていない領域の一部を被覆する硫化ガス非透過性保護膜とから構成され、硫化ガス透過性保護膜と硫化ガス非透過性保護膜とが電極間方向に並んで配設され、該硫化ガス透過性保護膜と該硫化ガス非透過性保護膜とで硫化検出体における電極部に被覆されていない領域を被覆する保護膜と、を有することを特徴とする。
【0009】
第1の構成においては、チップ抵抗器等の他の電子部品(硫化の度合いを検出する対象である電子部品)が実装されているプリント基板に硫化検出回路(硫化検出体の抵抗値や硫化検出体に光を照射することによる反射光の光量を検出する硫化検出回路)を設け、硫化検出回路に硫化検出センサを接続しておくことにより、硫化検出体の抵抗値や硫化検出体に光を照射することによる反射光の光量を検出することにより累積的な硫化の度合いを検出することができる。
【0010】
また、硫化ガス透過性保護膜と硫化ガス非透過性保護膜とが、硫化検出体の上面を目視可能に透明又は半透明に形成されているので、硫化ガス透過性保護膜により被覆された領域(硫化されている部分)と硫化ガス非透過性保護膜により被覆された領域(硫化されていない領域)とを相対比較して、色を比較観察することにより、硫化の度合いを正確に判断することができる。
【0011】
また、硫化ガス透過性保護膜により被覆された領域と硫化ガス非透過性保護膜により被覆された領域の境界領域に注目すると、硫化ガス非透過性保護膜により被覆された領域は硫化ガスが透過しないので硫化されないが、硫化ガス透過性保護膜により被覆された領域との境界から横方向に進入して徐々に硫化するので、硫化検出体における変色した領域の幅を観察することにより長期間に渡る硫化の度合いを観察することができ、硫化検出体が硫化されて断線状態になっていても横方向の進行は続行されるので、その機器がどれくらい硫化ガスに暴露されたかの程度を知ることができる。
【0012】
また、硫化検出体における電極部に被覆されていない領域が保護膜により被覆されているので、誤って硫化検出体の上にハンダが乗ったり、ハンダフラックスが乗ったりすることがなく、硫化検出に支障をきたすことがなく、また、硫化検出体が硫化されると表面がボロボロになり剥がれるが、周囲に散乱することはなく周囲の電子部品に悪影響を及ぼすことはない。
【0013】
また、第2には、絶縁基板と、絶縁基板の上面に形成され、硫化ガスにより硫化される金属を主材として含有する硫化検出体と、絶縁基板の両側の端部に形成され、該硫化検出体と接続して形成された電極部と、硫化検出体における電極部に被覆されていない領域を被覆し、少なくとも一部が、硫化検出体の上面を目視可能に透明又は半透明に形成されるとともに、硫化ガスが硫化検出体に接触可能となるように硫化ガス透過性を有する材質により形成された保護膜と、を有することを特徴とする。
【0014】
第2の構成の硫化検出センサにおいては、チップ抵抗器等の他の電子部品(硫化の度合いを検出する対象である電子部品)が実装されているプリント基板に硫化検出回路(硫化検出体の抵抗値や硫化検出体に光を照射することによる反射光の光量を検出する硫化検出回路)を設け、硫化検出回路に硫化検出センサを接続しておくことにより、硫化検出体の抵抗値や硫化検出体に光を照射することによる反射光の光量を検出することにより硫化の累積的な度合いを検出することができる。
【0015】
また、保護膜の少なくとも一部が、硫化検出体の上面を目視可能に透明又は半透明に形成されているので、硫化検出体を目視することにより、硫化検出体の色を判別することにより硫化の度合いを検出することができる。また、硫化検出体における電極部から露出した領域が保護膜により被覆されているので、誤って硫化検出体の上にハンダが乗ったり、ハンダフラックスが乗ったりすることがなく、硫化検出に支障をきたすことがなく、また、硫化検出体が硫化されると表面がボロボロになり剥がれるが、周囲に散乱することはなく周囲の電子部品に悪影響を及ぼすことはない。
【0016】
また、第3には、絶縁基板と、絶縁基板の上面に形成され、硫化ガスにより硫化される金属を含有する硫化検出体と、絶縁基板の両側の端部に形成され、該硫化検出体と接続して形成された電極部と、を有し、硫化検出体における電極部に被覆されていない領域が外部に露出していることを特徴とする。
【0017】
第3の構成においては、チップ抵抗器等の他の電子部品(硫化の度合いを検出する対象である電子部品)が実装されているプリント基板に硫化検出回路(硫化検出体の抵抗値や硫化検出体に光を照射することによる反射光の光量を検出する硫化検出回路)を設け、硫化検出回路に硫化検出センサを接続しておくことにより、硫化検出体の抵抗値や硫化検出体に光を照射することによる反射光の光量を検出することにより硫化の累積的な度合いを検出することができる。また、硫化検出体における電極部から露出した領域が外部に露出しているので、硫化検出体を目視することにより、硫化検出体の色を判別することにより硫化の度合いを検出することができる。
【0018】
また、第4には、上記第3の構成において、硫化検出体における電極部から露出した領域の電極間方向の両側の端部領域には、硫化ガス非透過性を有する材質により形成された硫化ガス非透過性保護膜が形成され、硫化検出体における硫化ガス非透過性保護膜に被覆されていない該一対の硫化ガス非透過性保護膜の間の領域が外部に露出していることを特徴とする。
【0019】
よって、硫化検出センサをプリント基板にハンダ付けして実装する際に、ハンダが両側の電極部を乗り越えて硫化検出体に接触するのを防止することができる。
【0020】
また、第5には、上記第4の構成において、硫化ガス非透過性保護膜が、硫化検出体の上面を目視可能に透明又は半透明に形成されていることを特徴とする。よって、硫化検出体における外部に露出した領域と保護膜により被覆された領域とを比較して、色を比較観察することにより、硫化の度合いを正確に判断することができる。
【0021】
また、第6には、絶縁基板と、絶縁基板の上面に形成され、硫化ガスにより硫化される金属を主材として含有する硫化検出体と、絶縁基板の両側の端部に形成され、該硫化検出体と接続して形成された電極部と、硫化検出体における電極部に被覆されていない領域である非被覆領域を被覆する保護膜で、硫化ガス透過性を有する材質により形成され、硫化検出体における電極部に被覆されていない領域の一部を被覆する硫化ガス透過性保護膜と、硫化ガス非透過性を有する材質により形成され、硫化検出体における電極部に被覆されていない領域の一部を被覆する硫化ガス非透過性保護膜とから構成され、硫化ガス透過性保護膜と硫化ガス非透過性保護膜とが電極間方向と直角の方向に並んで配設され、該硫化ガス透過性保護膜と該硫化ガス非透過性保護膜とで硫化検出体における電極部に被覆されていない領域を被覆する保護膜と、を有することを特徴とする。
【0022】
第6の構成においては、チップ抵抗器等の他の電子部品(硫化の度合いを検出する対象である電子部品)が実装されているプリント基板に硫化検出回路(硫化検出体の抵抗値や硫化検出体に光を照射することによる反射光の光量を検出する硫化検出回路)を設け、硫化検出回路に硫化検出センサを接続しておくことにより、硫化検出体の抵抗値や硫化検出体に光を照射することによる反射光の光量を検出することにより累積的な硫化の度合いを検出することができる。
【0023】
また、硫化検出体における電極部に被覆されていない領域が保護膜により被覆されているので、誤って硫化検出体の上にハンダが乗ったり、ハンダフラックスが乗ったりすることがなく、硫化検出に支障をきたすことがなく、また、硫化検出体が硫化されると表面がボロボロになり剥がれるが、周囲に散乱することはなく周囲の電子部品に悪影響を及ぼすことはない。
【0024】
また、硫化ガス透過性保護膜と透過ガス非透過性保護膜とが電極間方向とは直角の方向に並んで配設されているので、硫化検出体の電極間方向とは直角方向の幅を硫化ガス透過性保護膜に被覆された領域が厚さ方向に硫化して断線しても、硫化ガス非透過性保護膜に被覆された領域は断線しない幅に形成しておくことにより、硫化ガス透過性保護膜に被覆された領域が硫化により断線した場合でも、硫化ガス非透過性保護膜により被覆された領域により導通状態は確保され、硫化ガス透過性保護膜に被覆された領域が硫化により断線した場合でも、導通状態が確保されている状態では徐々に抵抗値が上昇していくので、その抵抗値を検出することによりプリント基板に実装された他の電子部品の寿命を予測することができ、長期間にわたる硫化の検出に適している。
【0025】
なお、上記第6の構成において、硫化ガス透過性保護膜と透過ガス非透過性保護膜とが、両側の電極部に接して形成するのが好ましい。
【0026】
また、第7には、上記第6の構成において、上記保護膜を構成する硫化ガス透過性保護膜及び硫化ガス非透過性保護膜が、硫化検出体の上面を目視可能に透明又は半透明に形成されていることを特徴とする。
【0027】
よって、硫化検出体における外部に露出した領域と保護膜により被覆された領域とを比較して、色を比較観察することにより、硫化の度合いを正確に判断することができる。
【0028】
また、硫化ガス透過性保護膜により被覆された領域と硫化ガス非透過性保護膜により被覆された領域の境界領域に注目すると、硫化ガス非透過性保護膜により被覆された領域は硫化ガスが透過しないので硫化されないが、硫化ガス透過性保護膜により被覆された領域との境界から横方向に進入して徐々に硫化するので、硫化検出体における変色した領域の幅を観察することにより長期間に渡る硫化の度合いを観察することができ、硫化検出体が硫化されて断線状態になっていても横方向の進行は続行されるので、その機器がどれくらい硫化ガスに暴露されたかの程度を知ることができる。
【0029】
また、第8には、上記第1から第7までのいずれかの構成において、上記硫化検出体における硫化ガスにより硫化される金属が、銀又は銅であることを特徴とする。
【0030】
また、第9には、上記第1から第8までのいずれかの構成において、上記硫化ガス透過性保護膜が、シリコン樹脂やフッ素樹脂であることを特徴とする。
【0031】
また、第10には、上記第1から第9までのいずれかの構成において、上記硫化ガス非透過性保護膜が、ガラス、ポリイミド、ポリエステル、ナイロン、エポキシ、アクリルにおけるいずれかにより形成されていることを特徴とする。
【0032】
また、上記第9の構成において、上記硫化ガス非透過性保護膜には、硫化ガスにより硫化される金属粉が含有されているものとするのが好ましい。
【0033】
また、第11には、硫化検出回路であって、上記第1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8又は9又は10の構成の硫化検出センサと、硫化検出センサと抵抗とが直列接続された回路手段と、該回路手段の両端に電圧を印加して一対の電極部間に電流を流す電圧印加手段と、一対の電極部間の電圧が所定値を超えたことを検出することにより、硫化検出センサの硫化検出体の硫化の度合いを判定する判定手段と、を有することを特徴とする。
【0034】
この第11の構成においては、電圧印加手段により、硫化検出センサと抵抗とが直列接続された回路手段の両端に電圧を印加して一対の電極部間に電流を流し、判断手段が、硫化検出センサにおける一対の電極部間の電圧が所定値を超えたことを検出することにより、硫化検出センサの硫化検出体の硫化の度合いを判定する。よって、判定手段による判定結果を警告灯や警告音等によりしてユーザに知らせることにより、硫化検出回路が実装されたプリント基板に実装された他の電子部品の硫化断線の危険を知らせることができる。
【0035】
また、第12には、上記第11の構成において、電圧印加手段が、所定の間隔で電圧を印加することを特徴とする。よって、硫化検出回路の消費電力を軽減することができる。
【0036】
また、第13には、上記第11又は第12の構成において、上記判定手段が、一対の電極部間の電圧の値と、所定の基準電圧の値とを比較して、その差分を増幅して出力することを特徴とする。よって、一対の電極部間の電圧の値と、基準電圧の値との差がわずかな場合でも十分出力信号を検出することができる。
【0037】
また、第14には、硫化検出回路であって、上記第1又は2又は3又は4又は5又は7の構成の硫化検出センサと、硫化検出センサの硫化検出体に対して光を照射する光照射手段と、硫化検出センサの硫化検出体からの反射光を受光する受光手段と、受光手段により受光した光の光量を検出する光量検出手段と、光量検出手段により検出された光量が所定値を超えたことを検出することにより、硫化検出センサの硫化検出体の硫化の度合いを判定する判定手段と、を有することを特徴とする。
【0038】
この第13の構成の硫化検出センサにおいては、光照射手段が、硫化検出センサの硫化検出体に対して光を照射すると、受光手段が、硫化検出センサの硫化検出体からの反射光を受光し、光量検出手段が、受光手段により受光した光の光量を検出する。そして、判定手段が、光量検出手段により検出された光量が所定値を超えたことを検出することにより、硫化検出センサの硫化検出体の硫化の度合いを判定する。よって、判定手段による判定結果を警告灯や警告音等によりしてユーザに知らせることにより、硫化検出回路が実装されたプリント基板に実装された他の電子部品の硫化断線の危険を知らせることができる。
【0039】
また、第15には、硫化検出回路であって、上記第1又は7の構成の硫化検出センサと、硫化検出センサの硫化検出体に対して光を照射する光照射手段と、硫化検出センサの硫化検出体からの反射光を受光する受光手段で、硫化ガス透過性保護膜に被覆された領域又は外部に露出した領域からの反射光を受光する第1受光手段と、硫化ガス非透過性保護膜に被覆された領域の反射光を受光する第2受光手段とを有する受光手段と、第1受光手段により受光した光の光量を検出する第1光量検出手段と、第2受光手段により受光した光の光量を検出する第2光量検出手段と、第1光量検出手段により検出された光量と第2光量検出手段により検出された光量とを比較することにより、硫化検出センサの硫化検出体の硫化の度合いを判定する判定手段と、を有することを特徴とする。
【0040】
この第15の構成の硫化検出センサにおいては、光照射手段が、硫化検出センサの硫化検出体に対して光を照射すると、第1受光手段が、硫化ガス透過性保護膜に被覆された領域又は外部に露出した領域からの反射光を受光し、第2受光手段が、硫化ガス非透過性保護膜に被覆された領域の反射光を受光する。そして、第1光量検出手段が、第1受光手段により受光した光の光量を検出し、第2光量検出手段が、第2受光手段により受光した光の光量を検出する。そして、判定手段が、第1光量検出手段により検出された光量と第2光量検出手段により検出された光量とを比較することにより、硫化検出センサの硫化検出体の硫化の度合いを判定する。よって、判定手段による判定結果を警告灯や警告音等によりしてユーザに知らせることにより、硫化検出回路が実装されたプリント基板に実装された他の電子部品の硫化断線の危険を知らせることができる。さらには、硫化検出体における硫化されている領域と硫化されていない領域とを相対比較することにより正確に硫化の度合いを検出することができる。
【0041】
また、第16には、上記第3の構成の硫化検出センサの製造方法であって、硫化検出センサにおける絶縁基板の素体となる基板素体で、該絶縁基板の複数個分の大きさを少なくとも有する基板素体の上面の各硫化検出センサの領域に、硫化ガスにより硫化される金属を主材として含有する硫化検出体を形成する硫化検出体形成工程と、硫化検出体における側面電極及びメッキに被覆されない領域を被覆する保護膜を形成する保護膜形成工程で、可溶性の材料により保護膜を形成する保護膜形成工程と、基板素体を電極間方向と直角方向の境界線に沿って分割して複数の短冊状基板を形成する一次分割工程と、短冊状基板に対して側面電極を断面略コ字状に形成する側面電極形成工程で、硫化検出体に接続するように側面電極を形成する側面電極形成工程と、短冊状基板を電極間方向の境界線に沿って分割する二次分割工程と、硫化検出体の露出領域と側面電極とにメッキを形成するメッキ形成工程と、保護膜を溶解することにより、硫化検出体における側面電極及びメッキから露出した領域が外部に露出させる保護膜溶解工程と、を有することを特徴とする。
【0042】
第16の構成の硫化検出センサの製造方法によれば、保護膜を可溶性の材料により形成し、メッキ形成工程後に保護膜を溶解することにより、上記第3の構成の硫化検出センサを製造することができ、容易に上記第3の構成の硫化検出センサを製造することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明に基づく硫化検出センサによれば、チップ抵抗器等の他の電子部品(硫化の度合いを検出する対象である電子部品)が実装されているプリント基板に硫化検出回路(硫化検出体の抵抗値や硫化検出体に光を照射することによる反射光の光量を検出する硫化検出回路)を設け、硫化検出回路に硫化検出センサを接続しておくことにより、硫化検出体の抵抗値や硫化検出体に光を照射することによる反射光の光量を検出することにより累積的な硫化の度合いを検出することができる。また、特に、保護膜の少なくとも一部を透明又は半透明にすることによりが硫化検出体を目視可能に形成した場合には、硫化検出体を目視することにより、硫化検出体の色を判別することにより硫化の度合いを検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明においては、チップ抵抗器等の電子部品の累積的な硫化量を検出して、電子部品が硫化断線する等して故障する前に危険性を検出することができる硫化センサを提供するという目的を以下のようにして実現した。なお、図において、Y1−Y2方向は、X1−X2方向に直角な方向であり、Z1−Z2方向は、X1−X2方向及びY1−Y2方向に直角な方向である。
【実施例1】
【0045】
本発明に基づく硫化検出センサA1は、図1に示すように構成され、絶縁基板10と、硫化検出体20と、下面電極22と、側面電極24と、メッキ26と、保護膜40とを有している。この硫化検出センサA1においては、下面電極22と側面電極24とメッキ26とで電極部を形成しており、電極間方向の両側に一対の電極部が形成されている。
【0046】
ここで、絶縁基板10は、含有率96%(重量比)程度のアルミナにて形成された絶縁体である。この絶縁基板10は、直方体形状を呈しており、平面視すると、略長方形状を呈している。この絶縁基板10は、硫化検出センサA1の基礎部材として用いられている。
【0047】
また、硫化検出体20は、絶縁基板10の上面に接して形成され、全体に略層状を呈し、平面形状は略方形状(略長方形状、略帯状としてもよい)を呈している。また、硫化検出体20は、絶縁基板10の電極間方向には絶縁基板10の一方の端部から他方の端部にまで形成され、また、幅方向には、絶縁基板10の幅よりも短く形成されていて、絶縁基板10の端部との間に所定の距離が設けられている。
【0048】
この硫化検出体20は、硫化ガスにより硫化される金属、例えば、硫化されやすい銀を主材として含有する導電体であり、硫化されていない状態では銀色を呈する。具体的には、硫化検出体20は、ペースト印刷により形成された場合には、銀(Ag)とガラスとが含有されていて、硫化検出体20に対する含有量は、重量比で、銀は95〜98%、ガラスは2〜5%となっている。また、銀蒸着により形成された場合や、銀蒸着及び銀メッキ(つまり、銀蒸着した領域に銀メッキを行なう)により形成された場合には、硫化検出体20は、銀により構成されている。
【0049】
この硫化検出体20の厚さについては、厚さが厚くなるほど硫化断線するまでの時間が長くなるので、検出する硫化の度合い、すなわち、検出する硫化の累積量に応じて硫化検出体20の厚さは調整される。なお、ここでいう硫化の累積量とは、硫化ガスの濃度と該硫化ガスに暴露される時間の積の値の累積量である。なお、硫化検出体20の厚さとしては、100nm以下の場合には、銀蒸着により行なうことができ、0.1〜10μmの場合には銀蒸着及び銀メッキ(つまり、銀蒸着した領域に銀メッキを行なう)により行なうことができ、5〜30μmの場合にはペースト印刷により行なうことができる。
【0050】
なお、ペースト印刷により形成された硫化検出体と、蒸着やメッキにより形成された硫化検出体とを比較すると、蒸着やメッキのように純銀に近いものの方が硫化の進行が遅い。これは、同一の厚さ当たりの銀の量が蒸着やメッキの方が多く、硫化反応の進行が遅いことに起因する。つまり、同じ硫化の累積量を検出する場合には、蒸着やメッキで形成した硫化検出体の方が、ペースト印刷で形成した硫化検出体よりも薄く形成することができる。
【0051】
また、例えば、厚さ10〜15μmの上記硫化検出体を作成し、3ppmの硫化水素雰囲気中で温度40℃、湿度85%で硫化試験を行うと、1000時間程度で抵抗値が大きく変動する。また、パラジウムを硫化検出体に対する含有量を重量比で0〜10%の範囲内とし、その分の銀の含有量を減らすことにより、硫化断線する時間を伸ばすことができ、パラジウムの含有率を高くするほど硫化断線する時間を長くすることができる。
【0052】
また、下面電極22は、絶縁基板10の下面に接して形成され、絶縁基板10の下面の長手方向(X1−X2方向(図1参照))の両端部領域に一対形成されていて、底面視において略方形状を呈している。下面電極22のY1−Y2方向の幅は、絶縁基板10のY1−Y2方向の幅と略同一に形成されている。この下面電極22は、銀系厚膜(銀系メタルグレーズ厚膜)により形成されている。
【0053】
また、側面電極24は、上記絶縁基板10の長手方向(X1−X2方向)の両端に一対形成されており、上面及び側面及び底面を被覆するように略コ字状に形成されている。つまり、この側面電極24は、硫化検出体20の上面の一部と、絶縁基板10の側面と、下面電極22の下面の一部とに接して被覆している。この側面電極24の幅方向の長さは、絶縁基板10の幅方向の長さと同一に形成されている。この側面電極24は、銀系厚膜(例えば、銀系メタルグレーズ厚膜)により形成されている。
【0054】
また、メッキ26は、ニッケルメッキ28と、錫メッキ30とを有している。
【0055】
ここで、ニッケルメッキ28は、電気メッキにより上記保護膜40の端部に接触し、かつ、上記硫化検出体20と側面電極24と下面電極22とを被覆するように略均一の膜厚で配設されている。つまり、ニッケルメッキ28は、硫化検出体20の露出部分と側面電極24と下面電極22の露出部分に接してこれらを被覆している。このニッケルメッキ28は、ニッケルにて形成されており、上記硫化検出体20、側面電極24等のハンダ喰われを防止するために形成されている。
【0056】
また、錫メッキ30は、電気メッキにより上記ニッケルメッキ28の上面を被覆するように略均一の膜厚で配設されている。この錫メッキ30は、錫にて形成されており、硫化検出センサA1の配線基板へのハンダ付けを良好に行うために形成されている。なお、この錫メッキ30は、錫以外にハンダが用いられる場合もある。
【0057】
また、保護膜40は、硫化検出体20の上面に接して形成され、硫化検出体20における電極部に被覆されていない領域(すなわち、電極間方向の両側を除く領域)を被覆するように形成されていて、平面視においては、略方形状を呈している。すなわち、この保護膜40の配設位置をさらに詳しく説明すると、幅方向(Y1−Y2方向)には、硫化検出体20の幅よりも広く形成され、該絶縁基板10の幅よりも若干小さく形成されていて、幅方向には硫化検出体20を被覆している。保護膜40におけるY1−Y2方向に硫化検出体20からはみ出た部分は、絶縁基板10の上面に接している。さらに、電極間方向には、硫化検出体20の長さよりも短く形成されて、硫化検出体20両側の領域が保護膜40から露出している。このように、保護膜40は、硫化検出体20における電極部から露出した領域の全てを被覆している。
【0058】
この保護膜40は、硫化ガス透過性を有するとともに、透明に形成されている。保護膜40を構成する材料としては、シリコン樹脂やフッ素樹脂(例えば、FEP:4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合樹脂)等がある。シリコン樹脂はSi(シリコン)とO(酸素)が直鎖状に繋がるシロキサン結合によりポリマーが形成されており、このシロキサン結合(−Si−O−Si−)は分子間距離が大きいため柔軟であり、分子回転立体障害が小さく、かつ、分子間力が小さいためガス透過性が大きいという物理的性質がある。
【0059】
また、保護膜40を設けることにより、硫化検出体20に対する外部からの接触や湿度や周囲雰囲気による影響を受けにくくすることができ、さらには、製造に際して、保護膜40により硫化検出体20が被覆されているので、メッキをすることができ、通常チップ抵抗器と同じ工程で製作ができるので、低コストで製造が可能となる。また、硫化検出センサA1をプリント基板に実装するときに、誤って硫化検出体20の上にハンダが乗ったり、ハンダフラックスが乗ったりすることがなく、硫化検出に支障をきたすことがない。
また、硫化検出体20が硫化されると表面がボロボロになり剥がれて周囲に散乱するが、保護膜40が設けられていることにより硫化検出体20が散乱することはないので周囲の電子部品に悪影響を及ぼすことはない。
【0060】
なお、硫化検出センサA1をかなりの長期間使用する場合には、上記硫化検出センサA1における電極部を構成する部材、特に、下面電極22と、側面電極24は、パラジウムを20%以上混合させた銀、ニッケル、ニクロム、金等により形成して、電極部を硫化されない構成とするのが好ましい。
【0061】
上記構成の硫化検出センサA1の使用状態及び作用について説明する。硫化検出センサA1は、プリント基板に実装して使用する。つまり、チップ抵抗器等の他の電子部品(硫化の度合いを検出する対象である電子部品)が実装されているプリント基板に硫化検出センサA1を実装する。プリント基板に対する実装に際しては、硫化検出センサA1は、一対の電極部を有しているので、ハンダ付け等により実装することができる。
【0062】
該プリント基板を硫化ガスを含む雰囲気で使用すると、時間経過とともに他の電子部品が硫化されるとともに、硫化検出センサA1における硫化検出体20も硫化する。つまり、硫化ガスが保護膜40を透過して硫化検出体20に接するので、硫化ガスの濃度及び経過時間に応じて硫化していく。硫化の度合いが進むにつれて、硫化検出体20は、銀色から薄茶色、紫色、灰色、黒色の順に変化していく。
【0063】
そして、プリント基板に実装された硫化検出センサA1における硫化検出体20を透明な保護膜40を通して目視することにより、硫化検出体20の色を判別することにより硫化の度合いを知ることができる。例えば、定期的に硫化検出体20の色を監視することにより硫化の程度を知ることができる。
【0064】
また、以下に説明する硫化検出回路により硫化の度合いを検出する方法がある。つまり、硫化検出センサA1を、チップ抵抗器等の他の電子部品(硫化の度合いを検出する対象である電子部品)が実装されているとともに、硫化検出回路W1〜W4(図2、図4〜図6)におけるいずれかの硫化検出回路が設けられたプリント基板に実装し、該硫化検出センサA1は、該硫化検出回路に実装する。
【0065】
なお、硫化検出回路W1〜W4により、硫化検出センサA1の硫化の度合いを検出することにより、間接的に硫化検出センサA1が実装されたプリント基板に実装された他の電子部品の硫化の度合いを知ることができるものである。
【0066】
すなわち、図2に示す硫化検出回路W1は、硫化検出センサA1と、抵抗210と、LED212とを有し、硫化検出センサA1と抵抗210とは直列に接続され、硫化検出センサA1と抵抗210間の接続点214には、LED212が接続されていて、抵抗210の硫化検出センサA1側とは反対側の端部と、硫化検出センサA1の抵抗210側とは反対側の端部との間(つまり、硫化検出センサA1と抵抗210とが直列接続された回路手段の両端)に電圧が印加されるとともに、抵抗210の硫化検出センサA1側とは反対側の端部と、LED212における接続点214側とは反対側の端部との間にも電圧源(電圧印加手段)が接続され電圧が印加されている。
【0067】
硫化検出回路W1においては、硫化検出センサA1の硫化検出体20は、硫化が進むにつれて硫化検出体20を構成する銀が硫化銀に変化することから、その抵抗値が上昇していく。時間が経つにつれてその抵抗値が下がることはない(図3参照)。そして、硫化検出センサA1における硫化検出体20の硫化が進んでおらず、硫化検出体20の抵抗値が低い状態の場合には、LED212に印加される電圧は低いことからLED212は発光しないが、硫化検出体20の硫化が進んで硫化検出体20の抵抗値が高くなると、LED212に印加される電圧も高くなっていき、硫化検出体20の硫化の累積量が高くなって、硫化検出体20の抵抗値がある値(硫化検出レベル(図3参照))を超えることによりてLED212に印加される電圧がある値を超えると、LED212に流れる電流の増加が急になり電流量に応じて発光する。なお、硫化検出体20が断線した場合も当然LED212が発光する。つまり、LED212は、「一対の電極部間の電圧が所定値を超えたことを検出することにより、硫化検出センサの硫化検出体の硫化の度合いを判定する判定手段」として機能する。以上のようにして、硫化検出体20の硫化の累積量がある値を超えると、LED212が発光するので、硫化の累積量があるしきい値を超えたことを検出することができる。
【0068】
次に、図4に示す硫化検出回路W2は、硫化検出センサA1と、抵抗220と、MOSFET222と、抵抗224とを有し、硫化検出センサA1と抵抗220とは直列に接続されるとともに、MOSFET222と抵抗器224とは直列に接続され、MOSFET222のドレイン側が抵抗器224に接続されている。また、MOSFET222のゲートは、硫化検出センサA1と抵抗220間の接続点228に接続されている。また、MOSFET222と抵抗224間からは電圧出力端226が設けられている。また、抵抗220の硫化検出センサA1側とは反対側の端部と、硫化検出センサA1の抵抗220側とは反対側の端部との間(つまり、硫化検出センサA1と抵抗220とが直列接続された回路手段の両端)に電圧源(電圧印加手段)が接続され電圧が印加されるとともに、抵抗224のMOSFET222側とは反対側の端部と、MOSFET222のソース側の間にも電圧源(電圧印加手段)が接続され電圧が印加されている。
【0069】
硫化検出回路W2においては、硫化検出センサA1の硫化検出体20は、硫化が進むにつれて硫化検出体20を構成する銀が硫化銀に変化することから、その抵抗値が上昇していく。時間が経つにつれてその抵抗値が下がることはない(図3参照)。そして、硫化検出センサA1における硫化検出体20の硫化が進んでおらず、硫化検出体20の抵抗値が低い状態の場合には、MOSFET222のゲートに印加される電圧は低いことからMOSFET222のドレイン電流の値も小さく、電圧出力端226の出力も高くなる。一方、硫化検出体20の硫化が進んで硫化検出体20の抵抗値が高くなると、MOSFET222のゲートに印加される電圧も高くなっていき、MOSFET222のドレイン電流の値も大きくなり、電圧出力端226の出力も低くなる。なお、硫化検出体20が断線した場合も当然電圧出力端226の出力は低くなる。つまり、MOSFET222と抵抗224と電圧出力端226により構成される回路は、「一対の電極部間の電圧が所定値を超えたことを検出することにより、硫化検出センサの硫化検出体の硫化の度合いを判定する判定手段」として機能する。この電圧出力端226の出力を監視して、電圧出力端226の電圧が所定電圧値よりも低くなったことを検出することにより、硫化検出体20の硫化の累積量があるしきい値を超えたことを検出することができる。つまり、硫化検出体20の抵抗値が硫化検出レベル(図3参照)になった場合の電圧出力端226の電圧値を所定電圧値としておくことにより、電圧出力端226の所定電圧値を検出して硫化検出体20の抵抗値が硫化検出レベルになったことを検出することができる。
【0070】
次に、図5に示す硫化検出回路W3は、硫化検出センサA1と、抵抗230と、MOSFET232と、増幅器234と、基準電圧源236と、信号出力端238とを有し、硫化検出センサA1と抵抗230とMOSFET232とは直列に接続されるとともに、硫化検出センサA1と抵抗230間の接続点240は、増幅器234の一方の入力端(+側の入力端)に接続され、基準電圧源236は、増幅器234の他方の入力端(−側の入力端)に接続されている。抵抗230は、MOSFET232のソース側に接続され、ゲートには、パルス信号が入力されるようになっている。また、MOSFET232のドレインと、硫化検出センサA1の抵抗230側とは反対側の端部との間には電圧源(電圧印加手段)が接続され電圧が印加されている。このMOSFET232は、その種類はP形チャネルで、動作形式はエンハンスメント形であり、ゲート・ソース間に印加する負電圧(ゲート電圧)が増加するに従い、ドレイン電流が増加する特性を持つ。
【0071】
硫化検出回路W3においては、硫化検出センサA1の硫化検出体20は、硫化が進むにつれて硫化検出体20を構成する銀が硫化銀に変化することから、その抵抗値が上昇していく。時間が経つにつれてその抵抗値が下がることはない(図3参照)。硫化の検出に当たっては、MOSFET232のゲートに対して定期的にパルス信号を入力して(つまり、ゲート電圧をパルス波形の負電圧とする)、MOSFET232をオン動作させる。これにより、硫化検出センサA1と抵抗230とが直列接続された回路手段に電流が流れる。すると、硫化検出センサA1における硫化検出体20の硫化が進んでおらず、硫化検出体20の抵抗値が低い状態の場合には、増幅器234の一方の入力端に印加される電圧は基準電圧よりも低いため、信号出力端238から信号は出力されない。一方、硫化検出体20の硫化が進んで硫化検出体20の抵抗値が高くなると、増幅器234の一方の入力端に印加される電圧が基準電圧よりも高くなり、信号出力端238から信号が出力される。なお、硫化検出体20が断線した場合も当然増幅器234の一方の入力端に印加される電圧が基準電圧よりも高くなり、信号出力端238から信号が出力される。つまり、硫化検出体20の抵抗値が硫化検出レベル(図3参照)になった場合の増幅器234の入力端(+側の入力端)の電圧値を基準電圧の値としておくことにより、硫化検出体20の抵抗値が硫化検出レベルになったことを検出することができる。なお、硫化検出体20が断線した場合も当然信号出力端238から信号が出力される。つまり、増幅器234と基準電圧源236と信号出力端238により構成される回路は、「一対の電極部間の電圧が所定値を超えたことを検出することにより、硫化検出センサの硫化検出体の硫化の度合いを判定する判定手段」として機能する。
【0072】
上記構成の硫化検出回路W3では、MOSFET232に対してパルス信号を入力してMOSFET232を動作させ、パルス信号が入力されている時間だけ硫化検出センサA1に電流を流すので、消費電力を小さくすることができる。特に、硫化検出センサA1における硫化検出体20は銀を主体としていて抵抗値が低いため、硫化検出体20の抵抗値の変化を検出するには、高い値の電流を流して検出される電圧の変化を高感度に検出する必要があり、また、硫化検出体20の硫化は数年という長い期間を経て進行するので、硫化検出回路に対して定常的に電流を流し続けて検出を行なうと、消費電流が大きくなるが、硫化検出回路W3のように、定期的にパルス信号を入力して回路を動作させることにより、消費電力を小さくすることができる。また、増幅器234を設けているので、基準電圧との差がわずかな場合でも十分出力信号を検出することができる。
【0073】
なお、上記硫化検出回路W1、W2においても、回路に対して常時電流を流すのではなく、定期的に電流を流して回路を動作させることにより消費電流を小さくするのが好ましい。
【0074】
また、上記硫化検出センサA1においては、硫化検出体20は平面視において長方形状であるとして説明したが、硫化検出体20を蛇行状に形成することにより、電流経路の幅を小さくするとともに電流経路を長く形成して硫化検出体20の抵抗値を高くすることにより、小さな値の電流で所定の電圧を得ることができるので、好ましいといえる。
【0075】
また、図6に示す硫化検出回路W4は、硫化検出センサA1と、LED250と、受光部252と、光量検出部254と、判定部256とを有している。この硫化検出回路W4においては、LED250から硫化検出センサA1の上面に対して上方から斜めに光を放射すると、光は透明な保護膜40を透過して硫化検出体20の上面で反射し、再び保護膜40を透過して外部に放出される。LED250から放射される光の光量は一定とする。外部に放出された光は受光部252で受光され、光量検出部254が、受光した光の光量を検出する。そして、判定部256は、検出された光量が所定のしきい値以下の場合に硫化検出体20が所定の硫化検出レベルに達していると判定し、図示しない警告灯や警告音等によりユーザに警告する。
【0076】
つまり、上記のように硫化検出体20は、硫化が進むことにより薄茶色、紫色、灰色、黒色の順に変化していき、硫化が進むに従って反射光の光量が小さくなるので、反射光の光量を検知することにより硫化の度合いを検出することができる。
【0077】
なお、上記硫化検出回路W1〜W4においては、上記硫化検出レベルは、該他の電子部品の動作の信頼性が低下する前に検知できるように設定する必要がある。
【実施例2】
【0078】
次に、実施例2の硫化検出センサA2は、上記実施例1の硫化検出センサA1と略同一の構成であるが、保護膜を硫化ガス透過性の保護膜と硫化ガス非透過性の保護膜により構成した点が異なる。
【0079】
すなわち、硫化検出センサA2は、図7に示すように構成され、絶縁基板10と、硫化検出体20と、下面電極22と、側面電極24と、メッキ26と、保護膜40とを有していて、保護膜40は、保護膜42と、保護膜44と、保護膜46とにより構成されている。保護膜42、44、46は、一対の電極部間の硫化検出体20の上面に電極間方向に並んで形成されていて、保護膜42と保護膜44と保護膜46とで、硫化検出体20における電極部から露出した領域(電極間方向の両側を除く領域)の全領域を被覆している。
【0080】
ここで、保護膜42(硫化ガス非透過性保護膜)は、硫化検出体20の上面における一方の(X2側の)メッキ26に接して形成され、平面視においては、略方形状を呈している。すなわち、この保護膜42の配設位置をさらに詳しく説明すると、幅方向(Y1−Y2方向)には、硫化検出体20の幅よりも広く形成され、該絶縁基板10の幅よりも若干小さく形成されていて、幅方向には硫化検出体20に接して硫化検出体20を被覆している。保護膜42におけるY1−Y2方向に硫化検出体20からはみ出た部分は、絶縁基板10の上面に接している。
【0081】
また、保護膜44(硫化ガス非透過性保護膜)は、硫化検出体20の上面における他方の(X1側の)メッキ26に接して形成され、平面視においては、略方形状を呈している。すなわち、この保護膜44の配設位置をさらに詳しく説明すると、幅方向(Y1−Y2方向)には、硫化検出体20の幅よりも広く形成され、該絶縁基板10の幅よりも若干小さく形成されていて、幅方向には硫化検出体20に接して硫化検出体20を被覆している。保護膜44におけるY1−Y2方向に硫化検出体20からはみ出た部分は、絶縁基板10の上面に接している。保護膜44の平面視における形状・大きさは保護膜42と同一に形成されている。
【0082】
この保護膜42と保護膜44は、透明な硫化ガス非透過性保護膜であり、硫化ガスを透過しない材料により形成されている。硫化ガスを透過しない材料としては、ガラス、ポリイミド、ポリエステル、ナイロン、エポキシ、アクリル等が挙げられる。これらを保護膜に使用することにより、硫化検出体20における保護膜42、44に被覆された領域は硫化されないかあるいは硫化の度合いが非常に少ない。また、硫化ガスにより硫化されやすい金属粉(銅粉や銀粉)を保護膜42、44に混合すると、硫化ガスが金属粉に吸着されるので、さらに硫化ガスの非透過性が高くなる。
【0083】
また、保護膜46(硫化ガス透過性保護膜)は、保護膜42と保護膜44の間の位置に設けられ、平面視においては、略方形状を呈している。すなわち、この保護膜46の配設位置をさらに詳しく説明すると、幅方向(Y1−Y2方向)には、硫化検出体20の幅よりも広く形成され、該絶縁基板10の幅よりも若干小さく形成されていて、幅方向には硫化検出体20に接して硫化検出体20を被覆している。保護膜46におけるY1−Y2方向に硫化検出体20からはみ出た部分は、絶縁基板10の上面に接している。保護膜46の電極間方向の端部は、保護膜42、44と接している。
【0084】
この保護膜46は、実施例1における保護膜40と同様に、硫化ガス透過性を有するとともに、透明に形成されていて、保護膜46を構成する材料としては、シリコン樹脂やフッ素樹脂(例えば、FEP:4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合樹脂)等がある。
【0085】
以上のように、保護膜40における全て(つまり、保護膜42、44、46)が、硫化検出体20の上面を目視可能に透明に形成されるとともに、保護膜40の一部(つまり、保護膜46)が、硫化ガスが硫化検出体20に接触可能となるように硫化ガス透過性を有する材質により形成されている。なお、保護膜40における保護膜46のみを透明としてもよい。
【0086】
本実施例の硫化検出センサA2における保護膜40以外の構成は、実施例1の硫化検出センサA1と同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0087】
上記構成の硫化検出センサA2の使用状態及び作用については、上記実施例1の硫化検出センサA1と同様である。すなわち、硫化検出センサA2は、プリント基板に実装して使用し、目視により硫化検出体20の色(特に、硫化検出体20における保護膜46に被覆された領域の色)を監視することにより、目視により硫化の度合いを検出することができ、さらには、上記硫化検出回路W1〜W4により硫化を検出することができる。
【0088】
また、本実施例の硫化検出センサA2においては、硫化ガス透過性の保護膜46と、硫化ガス非透過性の保護膜42、44により硫化検出体20の上面が被覆されているので、硫化されている部分(保護膜46により被覆された領域)と硫化されていない領域(保護膜42、44により被覆された領域)とを相対比較して、色を比較観察することにより、硫化の度合いを正確に判断することができる。つまり、硫化されている部分は、銀色から薄茶色、紫色、灰色、黒色の順に変色が進行するが、硫化されていない部分は、もとの銀色のままであるので、両者を比較することにより目視確認を正確に行なうことができる。特に、長期間使用した硫化検出センサA2は、電極部についても変色が避けられないので、変色しない部分が比較対象として隣接して設けられていることにより、正確に目視確認が可能となる。
【0089】
また、保護膜46と保護膜42の境界領域と保護膜46と保護膜44の境界領域に注目すると、硫化検出体20における保護膜42、44に被覆された領域は硫化ガスが透過しないので硫化されないが、保護膜46に被覆された領域との境界から横方向に進入して徐々に内部の硫化検出体20を硫化し、黒く変色させる。横方向の硫化の進行は遅いので、変色した領域(図8におけるハッチングに示した領域)幅H1を観察することにより長期間に渡る硫化の度合いを観察することができる。硫化検出体20における保護膜46の領域は、硫化されて断線状態になっていても横方向の進行は続行されるので、その機器がどれくらい硫化ガスに暴露されたかの程度を知ることができる。
【0090】
また、図6に示すような硫化検出回路W4を用いる場合に、硫化検出体20における保護膜46に被覆された領域からの反射光を受光する受光部(第1受光手段)と、保護膜42に被覆された領域又は保護膜44に被覆された領域からの反射光を受光する受光部(第2受光手段)とをそれぞれ設け、受光した光の光量をそれぞれ検出する光量検出部(第1光量検出部と第2光量検出部)を設けて、検出した2つの光量を比較する(例えば、2つの光量の差を算出して、該差の値を所定のしきい値と比較する)ことにより硫化の度合いを判定する判定部(判定手段)を設けるようにしてもよい。つまり、硫化検出体20における硫化した領域からの反射光と硫化していない領域からの反射光とを比較するのである。これにより、硫化検出体20における硫化されている領域と硫化されていない領域とを相対比較することにより正確に硫化の度合いを検出することができる。なお、硫化していない領域からの反射光としては、保護膜42と保護膜44のそれぞれに光を照射し、それぞれの反射光を受光して光量を算出し、その光量の平均値を硫化していない領域の光量としてもよい。
【実施例3】
【0091】
次に、実施例3の硫化検出センサA3は、上記実施例1の硫化検出センサA1と略同一の構成であるが、保護膜を設けない構成である点が異なる。
【0092】
すなわち、硫化検出センサA3は、図9に示すように構成され、絶縁基板10と、硫化検出体20と、下面電極22と、側面電極24と、メッキ26とを有している。
【0093】
硫化検出センサA3を構成する上記各部の構成は、実施例1における各部と同様の構成であるので詳しい説明を省略する。
【0094】
また、上記構成の硫化検出センサA3の使用状態及び作用については、上記実施例1の硫化検出センサA1と同様である。すなわち、硫化検出センサA3は、プリント基板に実装して使用し、目視により硫化検出体20の色(特に、保護膜46の領域の硫化検出体20の色)を監視することにより、目視により硫化の度合いを検出することができ、さらには、上記硫化検出回路W1〜W4により硫化を検出することができる。
【0095】
本実施例においては、硫化検出体20が外部に露出しているので、硫化に対して感度がよく、高感度に硫化を検出することができる。
【0096】
上記のように硫化検出体20をむき出しにすると、硫化に対する感度は良いが、ハンダやフラックスが硫化検出体20に接触して硫化を検出できなくなったり、手の油や湿度、汚れ等により検出する期間が変わったりする欠点はあるが、実装後に硫化検出体20の表面を洗浄したり、硫化ガス透過性材料をスプレーする等してでコーティングすれば、実施例1のように保護膜を設けた場合と同等の動作が期待でき、十分実用になる。
【0097】
本実施例の硫化検出センサA3の製造方法としては、煮沸したり溶剤で溶ける可溶性材料で保護膜をして、チップ部品の製造方法と同様にメッキした後、この溶融性保護膜を溶解し取り除く。
【0098】
具体的な製造方法について図10を利用して説明すると、まず、予め一次スリットJ1や二次スリットJ2が設けられたアルミナ基板(基板素体)(このアルミナ基板は、複数の硫化検出センサの絶縁基板の大きさを少なくとも有する大判のものである)の表側の面に、帯状に硫化検出体20Gを形成する。この硫化検出体20Gは、複数の硫化検出センサ分の硫化検出体となる。例えば、硫化検出体のペーストを印刷した後に乾燥・焼成する(図10(a)、硫化検出体形成工程)。なお、蒸着による方法や、蒸着と銀メッキによる方法もある。
【0099】
そして、図10(b)に示すように、保護膜40を形成する(保護膜形成工程)。この保護膜は、煮沸したり溶剤で溶ける可溶性材料により形成する。
【0100】
その後は、一次スリットJ1に沿ってアルミナ基板を一次分割(図10(c)、一次分割工程)した後、一次分割により形成された短冊状基板に側面電極24Gを形成する。側面電極の形成に際しては、側面電極ペーストを印刷した後に乾燥・硬化する(図10(d)、側面電極形成工程)。側面電極ペーストとしては、銀と樹脂とが含有された側面電極ペーストが用いられる。また、側面電極は、ニッケル、クロム、金等を蒸着して形成してもよい。
、その後、二次スリットJ2に沿って二次分割する(二次分割工程)。そして、メッキを形成して(メッキ工程)硫化検出センサA3の素体を形成する。
【0101】
該硫化検出センサA3の素体を形成したら、該硫化検出センサA3の素体から保護膜を除去する。すなわち、保護膜40が煮沸により溶ける可溶性材料である場合には煮沸することにより保護膜40を除去し、保護膜40が溶剤により溶ける可溶性材料である場合には溶剤を用いて保護膜40を除去する(保護膜溶解工程)。以上のようにして、硫化検出センサA3が形成される。
【0102】
また、実施例3の硫化検出センサA3の他の例として、図11に示す硫化検出センサA3’のように、硫化検出センサA3における硫化検出体20の露出領域の両側に、硫化ガス非透過性を有する保護膜42、44を設ける構成としてもよい。保護膜42、44の材質としては、実施例2の保護膜42、44と同様に、ガラス、ポリイミド、ポリエステル、ナイロン、エポキシ、アクリル等が挙げられる。
【0103】
このような構成とすることにより、硫化検出センサA3’をプリント基板にハンダ付けして実装する際に、ハンダが両側の電極部を乗り越えて硫化検出体20に接触するのを防止することができる。
【0104】
また、保護膜42、44を透明な素材とすれば、実施例2の場合と同様に、硫化検出体20の露出した領域(保護膜42と保護膜44の間の領域)と、保護膜42、44により被覆された領域とを比較して、色を比較観察することにより、硫化の度合いを正確に判断することができる。
【実施例4】
【0105】
次に、実施例4の硫化検出センサA4は、上記実施例2の硫化検出センサA2と略同一の構成であるが、実施例2の硫化検出センサA2においては、硫化ガス透過性の保護膜と硫化ガス非透過性の保護膜とを電極間方向に配設したのに対して、本実施例では、硫化ガス透過性の保護膜と硫化ガス非透過性の保護膜とを電極間方向とは直角の方向に配設した点が異なる。
【0106】
すなわち、硫化検出センサA4は、図12に示すように構成され、絶縁基板10と、硫化検出体20と、下面電極22と、側面電極24と、メッキ26と、保護膜40とを有していて、保護膜40は、保護膜48と、保護膜50とにより構成されている。保護膜48、50は、一対の電極部間の硫化検出体20の上面に電極間方向と直角の方向に並んで形成されている。つまり、保護膜48、50ともに両側の一対のメッキ26に接して形成されていて、硫化検出体20における電極部から露出した領域のうち、Y2側の半分の領域が保護膜48により被覆され、Y1側の半分の領域が保護膜50により被覆されている。つまり、硫化検出体20における保護膜48に被覆された領域の電極間方向とは直角方向の幅と、硫化検出体20における保護膜50に被覆された領域の電極間方向とは直角方向の幅とは同一に形成されている。
【0107】
保護膜48は、透明な硫化ガス非透過性保護膜であり、硫化ガスを透過しない材料により形成されている。硫化ガスを透過しない材料としては、実施例2の保護膜42、44と同様に、ガラス、ポリイミド、ポリエステル、ナイロン、エポキシ、アクリル等が挙げられる。これらを保護膜に使用することにより、硫化検出体20における保護膜48に被覆された領域は硫化されないかあるいは硫化の度合いが非常に少ない。また、硫化されやすい金属粉(銅粉や銀粉)を保護膜48に混合すると、硫化ガスが金属粉に吸着されるので、さらに硫化ガスの非透過性が高くなる。
【0108】
また、保護膜50は、実施例1における保護膜40や実施例2の保護膜46と同様に、硫化ガス透過性を有するとともに、透明に形成されていて、保護膜50を構成する材料としては、シリコン樹脂やフッ素樹脂(例えば、FEP:4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合樹脂)等がある。
【0109】
なお、硫化検出体20における保護膜50に被覆された領域が硫化することにより、厚さ方向に硫化が進むとともに、保護膜48に被覆された領域にも硫化が進むが、硫化検出体20の電極間方向とは直角方向の幅(Y1−Y2方向の幅)は、保護膜50に被覆された領域が厚さ方向に硫化して断線しても、保護膜48に被覆された領域は断線しない幅に形成しておく。
【0110】
以上のように、保護膜40における全て(つまり、保護膜48、50)が、硫化検出体20の上面を目視可能に透明に形成されるとともに、保護膜40の一部(つまり、保護膜50)が、硫化ガスが硫化検出体20に接触可能となるように硫化ガス透過性を有する材質により形成されている。なお、保護膜40における保護膜50のみを透明としてもよい。
【0111】
上記構成の硫化検出センサA4の使用状態及び作用については、上記実施例1の硫化検出センサA1と同様である。すなわち、硫化検出センサA4は、プリント基板に実装して使用し、目視により硫化検出体20の色(特に、硫化検出体20における保護膜50に被覆された領域の色)を監視することにより、目視により硫化の度合いを検出することができ、さらには、上記硫化検出回路W1〜W4により硫化を検出することができる。
【0112】
また、本実施例の硫化検出センサA4においては、硫化ガス透過性の保護膜50と、硫化ガス非透過性の保護膜48により硫化検出体20の上面が被覆されているので、硫化されている部分(保護膜50により被覆された領域)と硫化されていない領域(保護膜48により被覆された領域)とを相対比較して、色を比較観察することにより、硫化の度合いを正確に判断することができる。つまり、硫化されている部分は、銀色から薄茶色、紫色、灰色、黒色の順に変色が進行するが、硫化されていない部分は、もとの銀色のままであるので、両者を比較することにより目視確認を正確に行なうことができる。特に、長期間使用した硫化検出センサA4は、電極部についても変色が避けられないので、変色しない部分が比較対象として隣接して設けられていることにより、正確に目視確認が可能となる。
【0113】
また、保護膜48と保護膜50の境界領域に注目すると、硫化検出体20における保護膜48に被覆された領域は硫化ガスが透過しないので硫化されないが、保護膜50に被覆された領域との境界から横方向に進入して徐々に内部の硫化検出体20を硫化し、黒く変色させる。横方向の硫化の進行は遅いので、変色した領域(図13におけるハッチングに示した領域)幅H2を観察することにより長期間に渡る硫化の度合いを観察することができる。
【0114】
また、上記のように、硫化検出体20の電極間方向とは直角方向の幅(Y1−Y2方向の幅)は、保護膜50に被覆された領域が厚さ方向に硫化して断線しても、保護膜48に被覆された領域は断線しない幅に形成されているので、保護膜50に被覆された領域が硫化により断線した場合でも、保護膜48により被覆された領域により導通状態は確保され、保護膜48により被覆された領域の導通幅が徐々に狭くなる。よって、保護膜50に被覆された領域が硫化により断線した場合でも、導通状態が確保されている状態では徐々に抵抗値が上昇していくので、その抵抗値を検出することによりプリント基板に実装された他の電子部品の寿命を予測することができる。特に、横方向の硫化の進行は遅いので、長期間にわたる硫化の検出に適している。なお、硫化検出センサA4は長期間の硫化の検出に適しているので、硫化検出センサA4における電極部を構成する部材、特に、下面電極22と、側面電極24は、パラジウムを20%以上混合させた銀、ニッケル、ニクロム、金等により形成して、電極部を硫化されない構成とするのが好ましい。
【0115】
また、図6に示すような硫化検出回路W4を用いる場合に、硫化検出体20における保護膜50に被覆された領域からの反射光を受光する受光部(第1受光手段)と、保護膜48に被覆された領域からの反射光を受光する受光部(第2受光手段)とをそれぞれ設け、受光した光の光量をそれぞれ検出する光量検出部(第1光量検出部と第2光量検出部)を設けて、検出した2つの光量を比較する(例えば、2つの光量の差を算出して、該差の値を所定のしきい値と比較する)ことにより硫化の度合いを判定する判定部(判定手段)を設けるようにしてもよい。つまり、硫化検出体20における硫化した領域からの反射光と硫化していない領域からの反射光とを比較するのである。
【0116】
なお、上記の各実施例の説明においては、硫化検出体20を構成する材料として、銀を主体とする材料であるとして説明したが、銅又は銅を主体とする材料としてもよい。銅は硫化されると硫化銅となり絶縁物となるので、硫化検出体として用いることができる。
【0117】
また、上記の各実施例においては、硫化検出体20は略方形状を呈し、直線状の幅の広いパターンとしているが、電極部間の絶縁基板上を何回も往復させたり、蛇行させたり、らせん状にして細く長いパターンにすることにより、硫化の抵抗値変化を利用した検出がしやすくなる効果がある。つまり、硫化検出体20は、銀や銅を主体としていてもともと抵抗値が低いことから抵抗値の変化を検出するには大きな電流を流す必要があるが、上記のように細くて長いパターンとすることにより、初期抵抗値が増加し、硫化されたときの抵抗値変化が大きくなり、検出するために必要な電流が小さくて済むので、消費電力を小さくすることができる。硫化は一般に硫化検出体の深さ方向に進行するので、細く長いパターンにしてもパターンの幅方向に硫化断線する可能性は低く、細くて長いパターンとしても抵抗値の検出に支障はない。
【0118】
なお、上記の各実施例において、保護膜40、42、44、46、48、50は透明であるとして説明したが、半透明であってもよい。この場合の半透明の透明度としては、硫化検出体20の上面(特に、上面の色等の状態)を目視可能できる程度であればよい。
【0119】
また、保護膜40、42、44、46、48、50が透明又は半透明でなく不透明で、硫化検出体20の表面の色等の状態を目視できない構成であっても、硫化検出回路W1〜W4による硫化の累積的度合いの検出は可能である。特に、実施例4の場合には、保護膜40を構成する保護膜48、50が不透明であっても、硫化検出体の電極間方向とは直角方向の幅を硫化ガス透過性保護膜に被覆された領域が厚さ方向に硫化して断線しても、硫化ガス非透過性保護膜に被覆された領域は断線しない幅に形成しておくことにより、硫化ガス透過性保護膜に被覆された領域が硫化により断線した場合でも、硫化ガス非透過性保護膜により被覆された領域により導通状態は確保され、長期間にわたる硫化の検出に適しているという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の実施例1に基づく硫化検出センサの構成を示す図であり、(a)は(b)におけるP−P断面図であり、(b)は平面図である。
【図2】硫化検出回路の例を示す回路図である。
【図3】経過時間と抵抗値との関係を示すグラフである。
【図4】硫化検出回路の他の例を示す回路図である。
【図5】硫化検出回路の他の例を示す回路図である。
【図6】硫化検出回路の他の例を示す回路図である。
【図7】本発明の実施例2に基づく硫化検出センサの構成を示す図であり、(a)は(b)におけるQ−Q断面図であり、(b)は平面図である。
【図8】実施例2の硫化検出センサの硫化の進行の状態を示す説明図である。
【図9】本発明の実施例3に基づく硫化検出センサの構成を示す図であり、(a)は(b)におけるR−R断面図であり、(b)は平面図である。
【図10】実施例3の硫化検出センサの製造工程を示す説明図である。
【図11】本発明の実施例3に基づく硫化検出センサの他の例の構成を示す図であり、(a)は(b)におけるS−S断面図であり、(b)は平面図である。
【図12】本発明の実施例4に基づく硫化検出センサの構成を示す図であり、(a)は(b)におけるT−T断面図とU−U断面図を示し、(b)は平面図である。
【図13】実施例4の硫化検出センサの硫化の進行の状態を示す説明図である。
【図14】従来のチップ抵抗器の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0121】
A1、A2、A3、A3’、A4 硫化検出センサ
10 絶縁基板
20 硫化検出体
22 下面電極
24 側面電極
26 メッキ
40、42、44、46、48、50 保護膜
W1、W2、W3、W4 硫化検出回路
210、220、224、230 抵抗
212、250 LED
222、232 MOSFET
234 増幅器
252 受光部
254 光量検出部
256 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
絶縁基板の上面に形成され、硫化ガスにより硫化される金属を主材として含有する硫化検出体と、
絶縁基板の両側の端部に形成され、該硫化検出体と接続して形成された電極部と、
硫化検出体における電極部に被覆されていない領域である非被覆領域を被覆する保護膜で、硫化検出体の上面を目視可能に透明又は半透明に形成されるとともに、硫化ガス透過性を有する材質により形成され、硫化検出体における電極部に被覆されていない領域の一部を被覆する硫化ガス透過性保護膜と、硫化検出体の上面を目視可能に透明又は半透明に形成されるとともに、硫化ガス非透過性を有する材質により形成され、硫化検出体における電極部に被覆されていない領域の一部を被覆する硫化ガス非透過性保護膜とから構成され、硫化ガス透過性保護膜と硫化ガス非透過性保護膜とが電極間方向に並んで配設され、該硫化ガス透過性保護膜と該硫化ガス非透過性保護膜とで硫化検出体における電極部に被覆されていない領域を被覆する保護膜と、
を有することを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項2】
絶縁基板と、
絶縁基板の上面に形成され、硫化ガスにより硫化される金属を主材として含有する硫化検出体と、
絶縁基板の両側の端部に形成され、該硫化検出体と接続して形成された電極部と、
硫化検出体における電極部に被覆されていない領域を被覆し、少なくとも一部が、硫化検出体の上面を目視可能に透明又は半透明に形成されるとともに、硫化ガスが硫化検出体に接触可能となるように硫化ガス透過性を有する材質により形成された保護膜と、
を有することを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項3】
絶縁基板と、
絶縁基板の上面に形成され、硫化ガスにより硫化される金属を含有する硫化検出体と、
絶縁基板の両側の端部に形成され、該硫化検出体と接続して形成された電極部と、
を有し、
硫化検出体における電極部に被覆されていない領域が外部に露出していることを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項4】
硫化検出体における電極部から露出した領域の電極間方向の両側の端部領域には、硫化ガス非透過性を有する材質により形成された硫化ガス非透過性保護膜が形成され、硫化検出体における硫化ガス非透過性保護膜に被覆されていない該一対の硫化ガス非透過性保護膜の間の領域が外部に露出していることを特徴とする請求項3に記載の硫化検出センサ。
【請求項5】
硫化ガス非透過性保護膜が、硫化検出体の上面を目視可能に透明又は半透明に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の硫化検出センサ。
【請求項6】
絶縁基板と、
絶縁基板の上面に形成され、硫化ガスにより硫化される金属を主材として含有する硫化検出体と、
絶縁基板の両側の端部に形成され、該硫化検出体と接続して形成された電極部と、
硫化検出体における電極部に被覆されていない領域である非被覆領域を被覆する保護膜で、硫化ガス透過性を有する材質により形成され、硫化検出体における電極部に被覆されていない領域の一部を被覆する硫化ガス透過性保護膜と、硫化ガス非透過性を有する材質により形成され、硫化検出体における電極部に被覆されていない領域の一部を被覆する硫化ガス非透過性保護膜とから構成され、硫化ガス透過性保護膜と硫化ガス非透過性保護膜とが電極間方向と直角の方向に並んで配設され、該硫化ガス透過性保護膜と該硫化ガス非透過性保護膜とで硫化検出体における電極部に被覆されていない領域を被覆する保護膜と、
を有することを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項7】
上記保護膜を構成する硫化ガス透過性保護膜及び硫化ガス非透過性保護膜が、硫化検出体の上面を目視可能に透明又は半透明に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の硫化検出センサ。
【請求項8】
上記硫化検出体における硫化ガスにより硫化される金属が、銀又は銅であることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7に記載の硫化検出センサ。
【請求項9】
上記硫化ガス透過性保護膜が、シリコン樹脂やフッ素樹脂であることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8に記載の硫化検出センサ。
【請求項10】
上記硫化ガス非透過性保護膜が、ガラス、ポリイミド、ポリエステル、ナイロン、エポキシ、アクリルにおけるいずれかにより形成されていることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8又は9に記載の硫化検出センサ。
【請求項11】
請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8又は9又は10に記載の硫化検出センサと、
硫化検出センサと抵抗とが直列接続された回路手段と、
該回路手段の両端に電圧を印加して一対の電極部間に電流を流す電圧印加手段と、
一対の電極部間の電圧が所定値を超えたことを検出することにより、硫化検出センサの硫化検出体の硫化の度合いを判定する判定手段と、
を有することを特徴とする硫化検出回路。
【請求項12】
電圧印加手段が、所定の間隔で電圧を印加することを特徴とする請求項11に記載の硫化検出回路。
【請求項13】
上記判定手段が、一対の電極部間の電圧の値と、所定の基準電圧の値とを比較して、その差分を増幅して出力することを特徴とする請求項11又は12に記載の硫化検出回路。
【請求項14】
請求項1又は2又は3又は4又は5又は7に記載の硫化検出センサと、
硫化検出センサの硫化検出体に対して光を照射する光照射手段と、
硫化検出センサの硫化検出体からの反射光を受光する受光手段と、
受光手段により受光した光の光量を検出する光量検出手段と、
光量検出手段により検出された光量が所定値を超えたことを検出することにより、硫化検出センサの硫化検出体の硫化の度合いを判定する判定手段と、
を有することを特徴とする硫化検出回路。
【請求項15】
請求項1又は7に記載の硫化検出センサと、
硫化検出センサの硫化検出体に対して光を照射する光照射手段と、
硫化検出センサの硫化検出体からの反射光を受光する受光手段で、硫化ガス透過性保護膜に被覆された領域又は外部に露出した領域からの反射光を受光する第1受光手段と、硫化ガス非透過性保護膜に被覆された領域の反射光を受光する第2受光手段とを有する受光手段と、
第1受光手段により受光した光の光量を検出する第1光量検出手段と、
第2受光手段により受光した光の光量を検出する第2光量検出手段と、
第1光量検出手段により検出された光量と第2光量検出手段により検出された光量とを比較することにより、硫化検出センサの硫化検出体の硫化の度合いを判定する判定手段と、
を有することを特徴とする硫化検出回路。
【請求項16】
請求項3に記載の硫化検出センサの製造方法であって、
硫化検出センサにおける絶縁基板の素体となる基板素体で、該絶縁基板の複数個分の大きさを少なくとも有する基板素体の上面の各硫化検出センサの領域に、硫化ガスにより硫化される金属を主材として含有する硫化検出体を形成する硫化検出体形成工程と、
硫化検出体における側面電極及びメッキに被覆されない領域を被覆する保護膜を形成する保護膜形成工程で、可溶性の材料により保護膜を形成する保護膜形成工程と、
基板素体を電極間方向と直角方向の境界線に沿って分割して複数の短冊状基板を形成する一次分割工程と、
短冊状基板に対して側面電極を断面略コ字状に形成する側面電極形成工程で、硫化検出体に接続するように側面電極を形成する側面電極形成工程と、
短冊状基板を電極間方向の境界線に沿って分割する二次分割工程と、
硫化検出体の露出領域と側面電極とにメッキを形成するメッキ形成工程と、
保護膜を溶解することにより、硫化検出体における側面電極及びメッキから露出した領域が外部に露出させる保護膜溶解工程と、
を有することを特徴とする硫化検出センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−250611(P2009−250611A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94714(P2008−94714)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(593028942)太陽社電気株式会社 (43)
【Fターム(参考)】