説明

硬化されたシリコーン樹脂基材のエンボス加工方法

本発明は、(i)形状を含有する種型の表面が硬化されたシリコーン樹脂基材に面するように、種型と該シリコーン樹脂熱硬化性基材とを重ねること;(ii)該種型の軟化点よりは低いが該シリコーン樹脂のTgよりもわずかに高い温度での加圧下で(i)の生成物に圧力をかけること;(iii)(ii)の生成物を冷却して、かつ該型への圧力を維持すること;および(iv)該基材を剥離して、それゆえ該形状が該シリコーン樹脂基材上に刻まれること;を含む、硬化されたシリコーン樹脂熱硬化性基材をエンボス加工して種型から該基材上にパターンを刻む方法に関する。硬化されたシリコーン樹脂熱硬化性基材は、非常に滑らかな表面を提供することによって熱エンボス加工リソグラフィーに有機熱可塑性プラスティック以上の利点を提供し、マイクロメーターおよびナノメーターの領域内で複製の高忠実性を促進し、離型のための剥離剤が必要ない。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
品物または基材の表面をエンボス加工することは、その表面上にパターンを与える加工をするのに重要であり簡単である。表面上に刻まれたパターンは、品物をより視覚的にアピールし、または摩擦を大きくするような表面上の機能をも加える。
【背景技術】
【0002】
熱エンボス法は基本的に、そのガラス転移温度以上にポリマーの温度を上げることによって軟化したポリマーにパターンを刻印することである。ポリカーボネートおよびPMMA(ポリメタクリル酸メチル)を含めた幅広い種類の熱可塑性ポリマー類がミクロン以下のスケールサイズの形状に熱エンボス加工することはうまくいっている。この技術は、主に流体装置に関する規定のマイクロチャネルや井筒(wells)に使われる。このアプローチの利点は、ミクロンスケールの形状を伴う部品を経済的に大量生産する可能性とともに、ポリマーの幅広い範囲の特性を活用できることである。熱可塑性ポリマー類はエンボス加工適用において基材として使われてきたが、熱硬化性ポリマー類は、種型としては提案されてきたけれども硬化された熱硬化性類は使われていなかった。
【0003】
ソフトリソグラフィーによって作られる熱硬化ポリマーの型を用いてポリマー類をエンボス加工することは、シン、ルボ(Xing,Rubo);ワン、チャ(Wang,Zhe);ハン、ヤンチャン(Han,Yanchun)によって開示されている。(Changchun Institute of Applied Chemistry, State Key Laboratory of Polymer Physics and Chemistry, Chinese Academy of Sciences, Changchun, 中華人民共和国, Journal of Vacuum Science & Technology, B: Microelectronics and Nanometer Structures (2003), 21 (4), 1318-1322)
【0004】
熱エンボス加工リソグラフィーでのウェハスケールの熱硬化性作業用刻印(working stamp)の性能は、ドイツのブッパータール(Wuppertal)のブッパータール総合大学(Univ. of Wuppertal)のルーシュ、ニルス(Roos Nils);シュルツ、ヒューバート(Schulz Hubert);フィンク、マリオン(Fink Marion);ファイファー、カール(Pfeiffer Karl);オセンバーグ、フランク(Osenberg Frank);シーア、ヘラクリスティン(Scheer Hella−Christin);によっても開示されている。(会報SPIE-The International Society for Optical Engineering (2002), 4688 (Pt. 1, Emerging Lithographic Technologies VI), 232-239.)
【0005】
シリコーン樹脂は、ほとんどの場合エンボス加工処理の剥離層として使用されるものとして開示されている。特開平11−59094号公報では、基材上の、シリコーンを包含する未硬化の樹脂をエンボス加工ロールと平面ロールの間を通過させ、該樹脂を凝固させ、そして該基材を取り除くことという適用が開示されている。
【0006】
特開平6−210740号公報では、熱可塑性フィルム上のコーティングとして熱硬化性シリコーン化合物を使うこと、そして該結果生成物はその後熱エンボス加工処理で使われることが開示されている。
【0007】
特開平05−338091号公報では、シリコーン樹脂を包含する放射線硬化性樹脂で、これが基材上のコーティング層を形成し、その後エンボス加工処理を受けることが開示されている。
【0008】
それ故、前記技術はエンボス加工処理で未硬化のシリコーン樹脂を使うことを開示している。しかしながら、この技術分野において、エンボス加工処理に硬化されたシリコーン樹脂を使うことはどこにも開示されていない。未硬化シリコーン樹脂のエンボス加工は、それを硬化するための加熱又は放射線の使用、およびそれが硬化される前に樹脂を支持する基材を必要とする。該樹脂を適用する追加ステップもまた必要である。もし該硬化されたシリコーン樹脂がエンボス加工され得るならば、該処理は単純化される。さらに、該シリコーン樹脂は独立のフィルム又はプラックの形態であり、剥離コーティングの形態でないならば、放射線および熱の耐性のようなシリコーン樹脂のほかの利点を十分活用し得る。
【0009】
近年エンボス加工は、マイクロメーターの形状を伴う表面パターンを転写するのに有用な技術となることが明らかとなっており、それはマイクロ流体装置およびマイクロ電子回路を加工するのに使われ得る。それらの場合、剥離(離型)を容易できれいにするシリコーンポリマー類の能力は、他のポリマー類と比較して真に顕著なものである。
【0010】
ワンらは、フッ化マレイミドおよびグリシジルメタクリレートを熱マイクロエンボス加工およびE−ビームリトクラフィのための基材として使用して、チャネル型導波管および他のマイクロ構造を加工することを開示した。(Wang, Jianguo; Shustack, Paul J.; Garner,Sean M. , Science Technology Division, Coming Inc. , Coming, NY, USA, Proceedings of SPIE-The International Society for Optical Engineering (2002), 4904 (Optical Fiber and Planar Waveguide TechnologyII), ppl29-138)
【0011】
シフト(Schift)らは、熱エンボス加工およびリフトオフ(lift-off)を用いた、ケイ素基材上のシラン類のナノパターニングを開示した。(Schift, H.; Heyderman, L. J.; Padeste, C.; Gobrecht, J. , Laboratory for Micro-and Nanotechnology, Paul Scherrer Institute, Villigen, Switzerland, Microelectronic Engineering (2002), pp. 61-62,423-428)
【0012】
チ(Qi)らは、ニッケルベースの成型用金型からポリメチルメタクリレートの熱エンボス加工することを開示した。(Qi, Shize; Liu, Xuezhu; Ford, Sean; Barrows, James; Thomas, Gloria; Kelly,Kevin ; McCandless, Andrew; Lian, Kun ; Goettert, Jost; Soper, Steven A. , Department of Chemistry, Louisiana State University, Baton Rouge, LA, USA. , Lab on a Chip (2002), pp. 2 (2), 88-95)
【0013】
同様に、ヒライらは、ケイ素チップ上で薄いPMMA層に微細の回折光学パターンを転写するケイ素の鋳型の使用を開示した。(ヒライ、ヨシヒコ;オカノ、マサト;オクノ、タカユキ;トヨタ、ヒロシ;ヨツヤ、ツトム;キクタ、ヒサオ;タナカ、ヨシオ)日本、大阪府立大学大学院、機械系工学、(会報 The International Society for Optical Engineering (2001), 4440 (Lithographic and Micromachining Techniques for Optical Component Fabrication), pp. 228-23 7)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、(i)形状を含有する種型の表面がシリコーン樹脂基材に面するように、種型と硬化されたシリコーン樹脂熱硬化性基材とを重ねること;(ii)該種型の軟化点よりは低いが該シリコーン樹脂のTgよりもわずかに高い温度での加圧下で(i)の生成物に圧力をかけること;(iii)(ii)の生成物を冷却して、かつ該型への圧力を維持すること;および(iv)該基材を剥離して、それゆえ、該形状が該シリコーン樹脂基材上に刻まれること;を含む、硬化されたシリコーン樹脂熱硬化性基材をエンボス加工して、種型から該基材上にパターンを刻む方法に関する。
【0015】
前記基材はフィルム、プラック、またはコーティングの形態であり得る。硬質のシリコーン樹脂熱硬化性基材は、室温からわずかに100℃より上まで、典型的には50℃〜80℃の間の中程度のガラス転移温度を有する。
【0016】
前記方法は、前記種型と前記硬質シリコーン樹脂基材を所定の時間の間共に圧縮して、一方で前記シリコーンのガラス転移温度よりわずかに上の温度にその系を加熱し、その後圧力を維持しながらその系を室温に戻すこと、それから離型することを伴う。熱エンボス加工処理の通常の時間は5分〜数時間の間であり、さらに典型的には1〜3時間である。適用する力は広く変化し得るが、それは典型的には1メートルトン以上である。
【0017】
重ね合わせの順序は重要ではないが、その方向は種型の形状が該シリコーン樹脂基材に面しているようにする。その型の形状の複製忠実度はこの技術によって得られる。該基材の温度がそのガラス転移より下のままである限り、その形状はシリコーン樹脂基材上で変化しないままである。
【0018】
室温より上の中程度のガラス転移温度と破損するまで比較的大きな伸張とを伴う硬質の熱硬化性シリコーン樹脂は前記基材として使われる。前記種型は、現実には通常金属製であるが、該シリコーン樹脂のTgより実質的に高い軟化点を有する任意の物質から作られ得る。該種型はシリコンウェハ、シリコンカーバイド、窒化ケイ素、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、多くの合金類、および金属酸化物によって例示される。
【0019】
硬質シリコーン熱硬化性樹脂の典型的なガラス転移温度は通常、その組成物、その配合に使われる架橋剤のタイプ(追加の硬化された樹脂類を適用)およびその構造に依るが、やや室温より上からやや100℃より上までで変動する。本発明の方法に使うのに有用な硬質のシリコーン樹脂基材は、米国特許第6,368,535号明細書に開示されているような付加硬化性シリコーン樹脂によって例示され、これは、(1)構成要素(A)および(B)を含む組み合わせを共重合することを含む方法によって得られた硬化性シルセスキオキサン樹脂組成物であって、構成要素(A)が加水分解前駆体の加水分解物であり、該加水分解前駆体は(i)有機トリアルコキシシランまたは有機トリハロシランと(ii)トリ有機モノアルコキシシラン、トリ有機モノハロシラン、ジシロキサン、およびジシラザンから選択したモノ官能性シランとを含み、そして構成要素(B)は式:
【0020】
【化1】

【0021】
を有するシリル末端炭化水素である(式中、各Rが独立してハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、オキシモ基、アルキルオキシモ基、アリールオキシモ基、アルキルカルボキシル基、およびアリールカルボキシル基から選択され、各Rは、アルキル基およびアリール基から独立に選択され、そしてRは二価の炭化水素基である)、
を開示している。該加水分解前駆体は(iii)二有機ジハロシランおよび二有機ジアルコキシシランから選択される二官能性シランをさらに含み得る。
【0022】
前記加水分解前駆体は、(iii)二有機ジハロシランおよび二有機ジアルコキシシランから成る群から選択される二官能性シランをさらに含み得る。典型的に、構成要素(i)はメチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、またはそれらの組み合わせから選択される有機トリハロシランである。
【0023】
前記’535号特許の構成要素(B)に好適な化合物は
【0024】
【化2】

【0025】
【化3】

および
【0026】
【化4】

【0027】
(式中、Rは上記に定義した通りで、xは1〜6、好ましくは1〜4である)
によって例示されている。
【0028】
前記’535号特許内の構成要素(B)としての使用に好適な化合物は、下記に示したものによってさらに例示され得る。これらの化合物類は当技術分野において知られており、市販されている。例えば、下に示したp−ビス(ヒドロキシジメチルシリル)ベンゼンは、ペンシルバニアのタリータウン(Tullytown)のゲレスト株式会社(Gelest,Inc)から入手され得、そしてp−ビス(クロロジメチルシリルエチル)ベンゼンはユナイテッドケミカルテクノロジー株式会社から入手し得る。
【0029】
【化5】

【0030】
【化6】

【0031】
構成要素(A)は、テトラエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリオキシモシラン、およびテトラオキシモシランから成る群から選択される架橋剤(C)をさらに含み得る。
【0032】
前記組み合わせは、(D)弱い縮合触媒をさらに含み得、それは典型的にIVB金属類の金属エステルおよびIVB金属類のアルコキシドから選択される。
【0033】
前記方法はさらに(2)硬化性シルセスキオキサン樹脂組成物を一時、その硬化性組成物を硬化するのに十分な温度まで加熱して、その結果硬化されたシルセスキオキサン樹脂を形成することを含む。該方法は、ステップ(2)より前に、硬化性シルセスキオキサン樹脂組成物に強い縮合反応触媒を加えることをもさらに含み得る。その強い縮合触媒は典型的に、亜鉛オクトエート、コリンオクトエート、硫酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、金属シラノレート類、および生石灰から選択される。該組成物内の強い縮合触媒の量は、典型的に0〜2、好ましくは0.05〜0.4重量%である。
【0034】
前記方法は、さらに
(E)実験式(R(3−p)SiO1/2)(RSiO2/2((R(2−q)SiO2/2)(RSiO2/2(R(3−p)SiO1/2
を有する第一のシリコーンゴム(式中、各Rは上記の通りであり、各々およびRは独立して、非官能性のR基から選択され、pは1、2または3であり、qは1または2であり、xは6以上の整数であり、そしてyは0または10までの整数である)、
(F)実験式 RSiO(RSiO)(RSiO)SiR
を有する第二のシリコーンゴム(式中、Rは上記のようなRまたはRであり、そして各Rは上記の通りであり、ただし1分子あたり少なくとも2つのR基がRでなければならず、mが150〜1,000、nが0〜10である)、および
(G)溶媒、
ここで一以上の構成要素(E)、(F)および(G)がステップ(1)の後でステップ(2)の前に、硬化性シルセスキオキサン樹脂組成物に添加される。
【0035】
構成要素(E)は第一の任意のシリコーンゴムである。硬化性組成物内で構成要素(E)の量は0〜30重量%、好ましくは5〜20重量%である。構成要素(E)に関する好適なシリコーンゴムおよびそれらの硬化性組成物へ組み入れる方法は、米国特許第5,747,608号明細書および第5,830,950号明細書に開示されている。該シリコーンゴムは実験式:(R(3−p)SiO1/2)(RSiO2/2((R(2−q)SiO2/2)(RSiO2/2(R(3−p)SiO1/2)を有する(式中、各Rは上記の通りであり、pは1、2、または3であり、qは1または2であり、zは6以上の整数であり、そしてyは0または10までの整数である。)。構成要素(E)内の各R基は、独立して、上記のRに関する非官能基から選択される。各Rは官能基であり、それは上記のように、本発明の硬化性シルセスキオキサンを形成するための硬化反応に加わる。
【0036】
前記実験式において、zは前記シリコーンゴムの平均非官能性線状鎖長、すなわちR基の間の平均鎖長を表している。それ故、構成要素(E)は、多種類の重合度のシリコーンゴムの混合物であり得、それらの全ては上記実験式によって表されるものである。本発明に関連する大部分のシリコーンゴムは鎖の末端のみで反応性基を有する。そのような場合には、ここで使われている用語「重合度」(「DP」)はzの値と同じである。DPは末端官能性シロキシ基Rを包含しない。
【0037】
本発明の好ましい実施態様として、前記R基がメチル基、フェニル基、またはそれらの組み合わせである。構成要素(A)シルセスキオキサン前駆体のR基および(E)第一のシリコーンゴムのR基の高い割合が、主にメチルまたは主にフェニルのいずれかである場合、(A)シルセスキオキサン前駆体および(E)第一のシリコーンゴムは一般的に相溶性であり、そのゴムを比較的均質に全体的に、硬化されたシルセスキオキサン樹脂構造に分散させることを可能にする。
【0038】
構成要素(F)は第二の任意のシリコーンゴムである。この任意のシリコーンゴムは実験式RSiO(RSiO)(RSiO)SiRのポリ二有機シロキサンであり、式中各Rおよび各Rは上記の通りであり、ただし1分子あたり少なくとも2つのR基がRでなければならず、mは150〜1,000で、好ましくは246〜586であり、そしてnは1〜10である。硬化性組成物内の構成要素(F)の量は一般的に0〜15重量%、好ましくは2〜8重量%である。
【0039】
典型的に、構成要素(G)である、溶媒の量は組成物の0〜90重量%、好ましくは0〜50重量%である。(G)として好適な溶媒は、メチル、エチル、イソプロピル、およびt−ブチルのようなアルコール;ベンゼン、トルエン、およびキシレンのような芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン、およびオクタンのような脂肪族炭化水素;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコール、メチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、およびエチレングリコールn−ブチルエーテルのようなグリコールエーテル;および1,1,1−トリクロロエタンおよびメチレンクロライドのようなハロゲン化炭化水素;が挙げられる。トルエンおよびイソプロピルアルコールが好ましい。
【0040】
本発明の方法での使用にも好適な硬質シリコーン樹脂基材は、米国特許第6,310,146号明細書で開示されている付加の硬化されたシリコーン樹脂によって例示され、それは、
(A’)実験式RSiO(4−a−b−c)/2(式中、aが0または正数であり、bが0または正数であり、cが0または正数であり、ただし、0.8≦(a+b+c)≦3.0、そして構成要素(A’)が平均して1分子あたり少なくとも2つのR基を有し、各Rは独立して不飽和脂肪族を有する一価の炭化水素基と水素原子とから成る群から選択される官能基であり、各Rは非官能基とRとから選択される一価の炭化水素基であり、各Rは非官能基とRとから選択される一価の炭化水素基である)
を有することを条件とする構成単位を含むシルセスキオキサンコポリマー;
(B’)一般式
【0041】
【化7】

【0042】
(式中、RとRは構成要素(A)に関し上記の通りであり、ただし構成要素(A)のRが水素原子である場合、構成要素(B’)のRが一価の不飽和炭化水素基であり、そして構成要素(A’)のRが一価の不飽和炭化水素基の場合、構成要素(B’)のRが水素原子であり、そしてRが二価の炭化水素基である)を有するシリル末端炭化水素;
および(C’)ヒドロシリル化反応触媒:
を含むヒドロシリル化反応硬化性組成物を開示している。
【0043】
前記組成物は、
(D’)ヒドロシリル化反応触媒抑制剤、
(E’)実験式(R(3−p)SiO1/2)(RSiO2/2((R(2−q)SiO2/2)(RSiO2/2(R(3−p)SiO1/2
(式中、各Rが上記の通りであり、構成要素(E’)の各R基が、独立して、Rに関する非官能基から選択され、pが1、2、または3であり、qが1または2であり、zが6以上の整数であり、そしてyが0または10までの整数である)を有する第一のシリコーンゴム、
(F’)実験式RSiO(RSiO)(RSiO)SiR
(式中、各Rは上記の通りであり、各RはRとRとから成る群から選択され、ただし1分子あたり少なくとも2つのR基がRでなければならず、mが150〜1,000であり、そしてnが1〜10である)を有する第二のシリコーンゴムの0〜15重量%、そして
(G’)溶媒、
から選択される1以上の構成要素をさらに含み得る。
【0044】
構成要素(A’)および(B’)は、総計で構成要素(A’)および(B’)のケイ素結合水素原子(SiH)および不飽和炭化水素基(C=C)が、1.0:1.0〜1.5:1.0、さらに典型的に1.1:1.0〜1.5〜1.0の範囲のモル比(SiH:C=C)で硬化性組成物に存在するように、典型的に硬化性組成物に加えられる。組成物内の構成要素(A’)および(B’)の量は1分子あたりC=CおよびSi−H基の数によるであろう。しかしながら、構成要素(A’)の量は典型的に組成物の50〜98重量%であり、そして構成要素(B’)の量は典型的に組成物の2〜50重量%である。典型的に、Rはビニルまたはアリルのようなアルケニル基である。典型的にRおよびRはアルキルおよびアリール基から成る群から選択される非官能基である。好適なアルキル基としては、メチル、エチル、イソプロピル、n−ブチルおよびイソブチル基などが挙げられる。好適なアリール基はフェニルによって例示される。構成要素(A’)のための好適なシルセスキオキサンコポリマー類は(PhSiO3/20.75(ViMeSiO1/20.25で例示され、Phがフェニル基であり、Viがビニル基を表し、そしてMeがメチル基を表す。
【0045】
構成要素(B’)は典型的に式:
【0046】
【化8】

【0047】
【化9】

【0048】
【化10】

【0049】
(式中、Rは上記に定義された通りであり、そしてxが1〜6の整数である。)を有する化合物から選択される。構成要素(B’)のために使用される最も一般的な化合物は、p−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンである。
【0050】
典型的に構成要素(C’)は白金触媒であり、そして典型的に硬化性組成物の重量あたり1〜10ppmの白金を供するのに十分な量で硬化性組成物に加えられる。構成要素(C’)は塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)白金(II)、塩化白金(platinum chloride)、酸化白金、オレフィンのような不飽和有機化合物と白金化合物との錯体、不飽和炭化水素基を含有する有機シロキサンと白金化合物との錯体、例えば、カールシュテットの触媒(すなわち、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンと塩化白金酸の錯体)および1,3−ジエテニル−1,1,3,3,−テトラメチルジシロキサン、および有機シロキサンと白金化合物類の錯体(該錯体が有機シロキサン樹脂内に組み込まれる)のような白金触媒類によって例示される。
【0051】
構成要素(D’)は任意の、典型的には一体型(one part)の組成物が調製される時に加えられる触媒抑制剤である。好適な抑制剤は、米国特許第3,445,420号明細書に開示されている。構成要素(D’)は、好ましくはメチルブチノールまたはエチニルシクロヘキサノールのようなアセチレンアルコールである。構成要素(D’)はより好ましくはエチニルシクロヘキサノールである。抑制剤の他の例は、ジエチルマレイン酸、ジエチルフマル酸、ビス(2−メトキシ−1−メチルエチル)マレイン酸、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、エチレンジアミン、ジフェニルホスフィン、ジフェニル亜リン酸塩、トリオクチルホスフィン、ジエチルフェニルホスフォニト(phosphonite)、およびメチルジフェニルホスフィニトが挙げられる。
【0052】
構成要素(D’)はヒドロシリル反応の硬化性組成物の0〜0.05重量%で存在している。構成要素(D’)は、典型的に該硬化性組成物の0.0001〜0.05重量パーセントで表される。構成要素(D’)は、好ましくは該硬化性組成物の総重量の0.0005〜0.01重量パーセントで表される。構成要素(D’)はさらに好ましくは該硬化性組成物の総量の0.001〜0.004重量パーセントで表される。
【0053】
構成要素(E’)は任意のシリコーンゴムである。ヒドロシリル化反応硬化性組成物の構成要素(E’)の量は0〜30重量%、好ましくは5〜20重量%である。構成要素(E’)に関する好適なシリコーンゴムおよびそれらを硬化性組成物に混和するための方法は、米国特許第5,747,608号明細書および米国特許第5,830,950号明細書に開示されている。該シリコーンゴムは実験式:
(R(3−P)SiO1/2)(RSiO2/2((R(2−q)SiO2/2)(RSiO2/2(R(3−p)SiO1/2
(式中、各Rは上記の通りであり、pが1、2、または3であり、qが1または2であり、zは6以上の整数であり、yは0または10までの整数である)を有する。各Rは官能基であり、それは上記で議論されたような本発明の硬化されたシルセスキオキサンを形成するための硬化反応に加わる。構成要素(E’)内の各Rは、独立して、上記のRに関する非官能基から選択される。
【0054】
実験式の中で、zはシリコーンゴムの平均非官能性線状鎖長、すなわちR基の間の平均鎖長を表している。それ故、構成要素(E’)は、上記実験式によって全て表される、多種の重合度のシリコーンゴムの混合物であり得る。使用される大部分のシリコーンゴムは、鎖の末端基でのみRを有する。そういった場合には、ここで使用されたような用語「重合度」(「DP」)はzの値と同じである。DPは末端官能性シロキシ基を包含しない。
【0055】
好ましい実施態様において、前記R基はメチル基、フェニル基、またはそれらの組み合わせである。構成要素(A’)シルセスキオキサンコポリマーのR基および(E’)第一のシリコーンゴムのR基の高い割合が、主にメチルまたは主にフェニルのいずれかである場合、(A’)シルセスキオキサンコポリマーおよび(E’)第一のシリコーンゴムは一般的に相溶性であり、そのゴムを比較的均質に、完全に硬化されたシルセスキオキサン樹脂構造に分散させることを可能とする。
【0056】
構成要素(F’)の第二の任意のシリコーンゴムは、
実験式RSiO(RSiO)(RSiO)SiR
(式中、各Rは上記の通りであり、各RはRおよびRから成る群から選択され、ただし1分子あたり少なくとも2つのR基がRでなければならず、mは150〜1,000、好ましくは246〜586であり、nが1〜10である)のポリ二有機シロキサンである。該硬化性組成物内での構成要素(F’)の量は、一般的に0〜15重量%、好ましくは2〜8重量%である。
【0057】
構成要素(A’)、(B’)および(C’)、ならびにいくつかの任意の構成要素を含むヒドロシリル化反応硬化性組成物、任意の溶媒である構成要素(G’)に溶解させられ得る。典型的に該溶媒の量は、該硬化性組成物の0〜90重量%、好ましくは0〜50重量%である。該溶媒は、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、およびt−ブチルアルコールのようなアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、およびメチルイソブチルケトンのようなケトン;ベンゼン、トルエン、およびキシレンのような芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン、およびオクタンのような脂肪族炭化水素;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコール、メチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、およびエチレングリコールn−ブチルエーテルのようなグリコールエーテル;ジクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタンおよびメチレンクロライドのようなハロゲン化炭化水素;クロロホルム;ジメチルスルホキシド;ジメチルホルムアミド;アセトニトリルおよびテトラヒドロフランであり得る。トルエンがより好ましい。
【0058】
上記のヒドロシリル化反応硬化性組成物は、構成要素(A’)から(C’)を含む組成物および上記の任意成分を混合することを含む方法によって調製される。混合は任意の好適な手段によって実行され得る。該硬化性組成物は、一体型または複数体型のいずれかの組成物として作製されうる。
【0059】
該硬化性組成物が一体型の組成物として配合される場合、その一体型の組成物を調製する方法は一般的に、(I)(C’)の前記触媒および(D’)の前記抑制剤を予備混合して、その結果錯体を形成すること、そして(II)構成要素(A’)、(B’)、および望ましい任意の構成要素(E’)から(G’)と錯体とを混合することを含む。
【0060】
本発明の代替の実施態様において、一体型の組成物は、(i)(C’)の前記触媒および(D’)の前記抑制剤を予備混合して、その結果錯体を形成すること、(ii)構成要素(A’)、(B’)、(E’)、(F’)および(G’)を混合すること、(iii)ステップ(ii)の生成物から(G’)溶媒を除去すること、その結果流体で粘性の低い組成物を形成すること、そしてその後、(iv)ステップ(iii)の生成物と該錯体とを混合することによって調製されうる。
【0061】
二体型の組成物は、(1)構成要素(A’)を含む第一部を調製すること、そして(2)構成要素(B)を含む第二部を調製すること、ここで構成要素(C’)が第一部または第二部のいずれにも混合され、そしてその後第一部と第二部を別々にしておくことによって調製され得る。第一部および第二部は使用前に即座に混合される。
【0062】
好ましくは、前記二体型の組成物は、(1’)構成要素(A’)、(E’)、(F’)および(G’)を混合して、第一部を形成し、(2’)該第一部と構成要素(B’)を含む第二部から成る群から選択されるものと、構成要素(C’)とを混合することによって調製される。その後、第一部および第二部は、使用前に即座に混合するまで別々にしておく。
【0063】
上記の方法のいずれもが、硬化前に組成物を脱気するステップをさらに含んでも良い。脱気は、典型的に穏やかな真空化を該組成物に受けさせることによって実行される。
【0064】
硬化されたシルセスキオキサン樹脂は、上記ヒドロシリル化反応硬化性組成物を硬化するのに十分な時間、温度で、該ヒドロシリル化反応硬化性組成物を加熱することを含む方法によって調製される。該硬化性組成物は硬化前に脱気されてもよく、そして任意の溶媒は硬化前または硬化中に取り除かれてもよい。該溶媒は任意の使いやすい方法、例えば該硬化性組成物を穏やかに加熱または減圧にさらすことによって取り除かれてもよい。
【0065】
本発明の方法に使用するのに好適な硬質シリコーン樹脂基材は、PCT特許出願番号JP03/07154号にも例示されており、それは(C’’)白金触媒の存在下で、(A’’)平均式RSiO(4−a)/2によって表されるシリコーン樹脂(式中、Rが独立して、1〜10の炭素原子を有する一価の炭化水素基であり、aが0〜2までの整数(双方排他的)であり、そしてその分子内に少なくとも2つの不飽和脂肪族炭化水素基を有する)と、(B’’)その分子内に少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物と反応させることを含む方法によって得られるシリコーン樹脂を含むポリシロキサンフィルムを開示している。
構成要素(A’’)は典型的に構成単位
(RSiO2/2(i)
(RSiO2/2(ii)
(RSiO3/2(iii)および
(SiO4/2(iv)
(式中、RおよびRは、各々独立して、不飽和脂肪族炭化水素基および1〜10の炭素原子を有する一価の炭化水素基から選択され、Rはアリール基または1〜8の炭素原子を有するアルキル基であり、aが0以上の値を有し、bが0以上の値を有し、cが0以上の値を有し、dが0以上の値を有し、ただしc+dの値が0より大きく、a+b+c+dの値が1であり、それはシリコーン樹脂中で少なくとも2つのケイ素結合不飽和脂肪族炭化水素原子が存在する)を含むシリコーン樹脂である。構成要素(A’’)は、構成単位(ViMeSiO1/20.25および(PhSiO3/20.75(Viがビニル基を表し、Phがフェニル基であり、およびMeがメチル基を表す)を含むシリコーン樹脂によって例示される。
【0066】
構成要素(B’’)はp−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンによって例示される。典型的に構成要素(C’’)は白金触媒であり、典型的に硬化性組成物の重量あたり1〜10ppmの白金を供するのに十分な量を硬化性組成物に加えられる。構成要素(C’’)は、塩化白金酸、塩化白金酸アルコール溶液、ジクロロビス(トリフェニルフォスフィン)白金(II)、塩化白金、酸化白金、オレフィンのような不飽和有機化合物と白金化合物の錯体、カールステッドの触媒(すなわち、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンと塩化白金酸の錯体)および1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンのような不飽和炭化水素基を含有する有機シロキサンと白金化合物の錯体、および有機シロキサンと白金化合物の錯体(該錯体は有機シロキサン樹脂内に組み込まれている)によって例示される。好適なヒドロシリル化反応触媒類は米国特許第3,419,593号明細書に記載されている。
【0067】
本願発明は、独立のフィルムまたは厚いプラックとしてこれらの基材のエンボス加工に対応する。これらの基材は、非常に滑らかな表面(それらは自己平坦化されている)という付加的な利益を有し、それは非常に高い忠実度で転写パターンをすばらしく改善する。10Å(AFMによるRMSの値)と同じくらいの低さの表面の平均粗さは、硬質シリコーン樹脂フィルム内に容易に観察される。独立のフィルムまたはPETのプラックまたはポリカーボネートのような一般的な有機熱可塑性基材は、かなりの荒い表面を示す(典型的なRMSは数十オングストロームのオーダーである)。
【0068】
現在のエンボス加工処理では、パターン転写後、種型から基材の剥離を促進するために、剥離剤で基材もしくはより一般的には種型のいずれかを表面処理をすることもまた不可欠である。最も一般的な剥離剤は、シリコーンポリマーまたはフルオロシリコーンを包含するフルオロポリマーである。これらの剥離コーティングが存在しないと、熱エンボス加工は離型する間、種型とポリマー基材との間の接着力によって生じる複製のパターンのゆがみ(変形)のために失敗する。
【0069】
硬化されたシリコーン樹脂熱硬化性基材は、非常に滑らかな表面を提供することによって熱エンボス加工リソグラフィーに有機熱可塑性プラスティック以上の利点を提供し、マイクロメーターおよびナノメーターの領域内で複製の高忠実性を促進し、離型のための剥離剤が必要ない。
【実施例】
【0070】
<実施例1>
攪拌棒、添加漏斗、温度計およびDean Stark trapを備えた丸底三口フラスコ内を、17gの(ViMeSi)O、107gのPhSi(OMe)、1gのHO、および0.1gのトリフルオロメタンスルホン酸で満たした。該混合物を60℃で2時間熱した。22.2g以上のHOおよび27.2gのトルエンを加え、そして該混合物を50℃で2時間攪拌した。その後、温度を上げて、還流を維持して、メタノールを冷却器(コンデンサー)の底から取り出した。該温度が80℃に到達した時、該フラスコを40℃に冷却した。0.23gのCaCOを加え、加熱なしに24時間攪拌した。この後18gのトルエンと0.1gのKOHを加えた。該温度を還流するまで上昇させ、水が出てこなくなるまで凝結水を冷却器の底から取り出した。主要部分の樹脂を室温に冷やし、0.18gのViMeSiClを攪拌して入れた。該樹脂溶液を最終的にろ過し、追加のトルエンを固体含有量75重量%まで調節して加えうる。該結果生成物は構成単位(PhSiO3/20.75および(ViMeSiO1/20.25を含むシリコーン樹脂であった。
【0071】
加熱マントルで加熱され、乾燥窒素でパージした、攪拌棒、冷却器、2つの添加漏斗、温度計を備えた丸底5Lの三口フラスコ内に、84gのMgおよび406gのTHFを充填した。10gのBrCHCHBrを活性Mgに加えた。添加漏斗の一つに、526gのTHFに270gのジブロモベンゼン溶液、および他方の添加漏斗に400gのTHFを加えた。該フラスコを50〜60℃に加熱し、その後200mlのTHFを加え、ジブロモベンゼン溶液をゆっくり加えた。還流をこのステップの間維持した。このステップの後、500mlのTHFを加えてフラスコを5時間65℃で加熱し、そのフラスコを冷却したのち、500ml以上のTHFを加え、フラスコを氷水浴で冷却しながら440gのジメチルクロロシランをゆっくり加えた。還流が維持されるように、クロロシランを添加し調整した。クロロシランの添加の後、フラスコを一晩中60℃で加熱した。その後、フラスコを室温まで冷却し、1000mlのトルエンを加えた。NHCl飽和水溶液をゆっくり加えて加水分解し、過剰なクロロシランを濃縮し、それから該混合物を透明な底相が得られるまで大量の水で洗った。上部の有機相を収集し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒の大部分をフラスコ内が150℃の温度に到達するまで蒸留によって取り除いた。濃縮された粗生成物を真空蒸留によってさらに精製した。生成物のGC純度は97%、およびFT−IR、29Si、13CおよびHNMRをその構造を立証するのに使った。結果生成物は1,4−HMeSi−Ph−SiMeH(p−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン)の構造を有する化合物であった。
【0072】
シリコーン樹脂熱硬化性基材を、構成単位(PhSiO3/20.75および1,4−HMeSi−Ph−SiMeHと(ViMeSiO1/20.25を含むシリコーン樹脂を混合することによって調製し、SiH/SiViの率は1.1/1で、溶媒のトルエンを10mmHgの真空下で80℃に加熱することによって取り除いた。混合物の残余トルエンは1wt%未満であった。この混合物をその後ポリエチレンシート上で成形して、150℃で2時間硬化した。該混合物を5ppmの白金で触媒した。該硬化されたフィルムを温水内でPE基材からはがし、冷却した。動的機械分析により、該フィルムは実験条件によって75〜90℃の間のTgを有する。
【0073】
前記硬化されたフィルムを、平らで、滑らかなステンレス鋼プレートの上に置き、米国25セントを該フィルムの上端に置いた。該プレート、フィルムおよびコインを80℃の加熱プレスに置き、2メートルトンの力を120分間適用した。その後、その重なりを圧力で圧迫しながら冷却した。冷却後、該樹脂フィルムを図1で見られるようにコインによって明確にエンボス加工した。
【0074】
<実施例2>
100mm×80mmの寸法にカットした実施例1の硬化されたシロキサンフィルムを、パターン化された直径2インチのシリコンウェハに置き、その後2つのステンレス鋼プレート(230mm×230mm)の間に挟んだ。その系を加熱プレスに置き、5メートルトンの一定の力で2時間100℃で加熱した。動的機械分析により、実験条件によって該フィルムは80〜95℃の間のTgを有する。それ故、該フィルムはエンボス加工している間そのTg以上にした。その系は加圧下で冷却してもよい。光学顕微鏡は、ウェハのパターンが図2に見られるようなシリコーン樹脂フィルムにエンボス加工されたことを示した。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、実施例1のエンボス加工されたシリコーン樹脂フィルム(左)および米国25セントコイン(右)の光学的画像(10倍拡大)である。
【図2】図2は、実施例1のエンボス加工されたシリコーン樹脂フィルム(左)およびパターンウェハ(右)の光学的画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)形状を含有する種型の表面がシリコーン樹脂基材に面するように、種型と該シリコーン樹脂熱硬化性基材とを重ねること;
(ii)該種型の軟化点よりは低いが該シリコーン樹脂のTgよりもわずかに高い温度での加圧下で(i)の生成物に圧力をかけること;
(iii)(ii)の生成物を冷却して、かつ該型への圧力を維持すること;および
(iv)該基材を剥離して、それゆえ該形状が該シリコーン樹脂基材上に刻まれること;
を含む、硬化されたシリコーン樹脂熱硬化性基材をエンボス加工して種型から該基材上にパターンを刻む方法。
【請求項2】
前記基材がフィルム、プラック、またはコーティングの形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記硬質シリコーン樹脂熱硬化性基材が50℃〜120℃のガラス転移温度を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記圧力が1メートルトン以上である、請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記種型が、シリコンウェハ、シリコンカーバイド、窒化ケイ素、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、合金および金属酸化物から選択される、請求項1、2、3、または4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記硬化されたシリコーン樹脂熱硬化性基材が、(1)構成要素(A)および(B)を含む組み合わせを共重合することを含む方法によって得られる組成物であって、構成要素(A)が加水分解前駆体の加水分解物であり、該加水分解前駆体は、(i)有機トリアルコキシシランまたは有機トリハロシランと(ii)トリ有機モノアルコキシシラン、トリ有機モノハロシラン、ジシロキサン、およびジシラザンから選択されたモノ官能性シランとを含み、そして構成要素(B)は式:
【化1】

(式中、各Rが、独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、オキシモ基、アルキルオキシモ基、アリールオキシモ基、アルキルカルボキシル基、およびアリールカルボキシル基から選択され、各Rが、アルキル基およびアリール基から独立に選択され、そしてRが二価の炭化水素基である)を有するシリル末端炭化水素である、請求項1、2、3、4、または5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記硬化されたシリコーン樹脂熱硬化性基材が、
(A’)実験式RSiO(4−a−b−c)/2
(式中、aが0または正数であり、bが0または正数であり、cが0または正数であり、ただし、0.8≦(a+b+c)≦3.0であり、そして構成要素(A’)が平均して1分子あたり少なくとも2つのR基を有し、各Rは独立して不飽和脂肪族を有する一価の炭化水素基と水素原子とからなる群から選択される官能基であり、各Rは非官能基とRとから選択される一価の炭化水素基であり、各Rは非官能基とRとから選択される一価の炭化水素基であることを条件とする)
を有する構成単位を含むシルセスキオキサンコポリマー;
(B’)一般式
【化2】

(式中、RおよびRは構成要素(A’)に関し上記の通りであり、ただし構成要素(A’)のRが水素原子である場合、構成要素(B’)のRが一価の不飽和炭化水素基であり、そして構成要素(A’)のRが一価の不飽和炭化水素基である場合、構成要素(B’)のRが水素原子であり、そしてRが二価の炭化水素基である)
を有するシリル末端炭化水素;
および(C’)ヒドロシリル化反応触媒;
を含む組成物である、請求項1、2、3、4、または5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記硬化されたシリコーン樹脂熱硬化性基材が、(C’’)白金触媒の存在下で、(A’’)平均式RSiO(4−a)/2によって表されるシリコーン樹脂(式中、Rが独立して1〜10の炭素原子を有する一価の炭化水素基であり、aが0〜2の整数(双方排他的)であり、その分子内に少なくとも2つの不飽和脂肪族炭化水素基を有する)と、(B’’)その分子内に少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物とを反応させることを含む方法によって得られるシリコーン樹脂を含むポリシロキサンフィルムである、請求項1、2、3、4、または5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
構成要素(A’’)が、構成単位
(RSiO1/2(i)
(RSiO2/2(ii)
(RSiO3/2(iii)および
(SiO4/2(iv)
(式中、RおよびRが、各々独立して、不飽和脂肪族炭化水素基および1〜10の炭素原子を有する一価の炭化水素基から選択され、Rがアリール基または1〜8の炭素原子を有するアルキル基であり、aが0以上の値を有し、bが0以上の値を有し、cが0以上の値を有し、dが0以上の値を有し、ただし、c+dの値が0より大きく、a+b+c+dの値が1であり、そのシリコーン樹脂内に少なくとも2つのケイ素結合不飽和脂肪族炭化水素原子が存在する)
を含むシリコーン樹脂である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
構成要素(B’’)がp−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンである、請求項8または9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−516112(P2007−516112A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541178(P2006−541178)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/035078
【国際公開番号】WO2005/051636
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】