説明

硬化性樹脂組成物、その硬化物、プリント配線基板用樹脂組成物、プリント配線基板、フレキシブル配線基板用樹脂組成物、半導体封止材料用樹脂組成物、及びビルドアップ基板用層間絶縁材料用樹脂組成物

【課題】硬化物における難燃性、耐湿性に優れる硬化性樹脂組成物、その硬化物、及び、該硬化性樹脂組成物を用いたプリント配線基板用樹脂組成物、プリント配線基板、フレキシブル配線基板用樹脂組成物、半導体封止材料用樹脂組成物、及びビルドアップ基板用層間絶縁材料用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び、下記構造式(1)
【化1】


(式中、X及びXは、それぞれ独立的に水素原子、又は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、Aは水素原子、又は水酸基である。)で表されるリン原子含有化合物(C)を必須成分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性と耐熱性とに優れる硬化性樹脂組成物、その硬化物、並びに前記硬化性樹脂組成物を用いたプリント配線基板用樹脂組成物、プリント配線基板、フレキシブル配線基板用樹脂組成物、半導体封止材料用樹脂組成物、及びビルドアップ基板用層間絶縁材料用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂及びその硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物は、高耐熱性、耐湿性等の諸物性に優れる点から半導体封止材やプリント回路基板等の電子部品分野、導電ペースト等の導電性接着剤、その他接着剤、複合材料用マトリックス、塗料、フォトレジスト材料、顕色材料等で広く用いられている。
【0003】
近年、プリント配線板材料や半導体封止材などの電子部品や導電性接着剤などの分野では、難燃性を付与するために臭素等のハロゲン系難燃剤がアンチモン化合物とともに配合されている。しかしながら、近年の環境・安全への取り組みのなかで、ダイオキシン発生が懸念されるハロゲン系難燃剤を用いず、且つ発ガン性が疑われているアンチモン化合物を用いない環境・安全対応型の難燃化方法の開発が強く要求されている。また、プリント配線板材料の分野ではハロゲン系難燃剤の使用が高温放置信頼性を損なう要因となっていることから非ハロゲン化への期待が高い。
【0004】
このような要求特性に応え、難燃性と高耐熱性とを兼備したエポキシ樹脂組成物として、例えば、下記特許文献1には、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(以下、「HCA」と略記する。)を配合させてなる技術が開示されている(下記特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、前記した電子部品や導電性接着剤の分野では、吸湿後の耐ハンダ性に優れた材料が求められているところ、かかるHCAを配合してなるエポキシ樹脂組成物は、難燃性は良好なものとなるものの、その硬化物における耐湿性が十分なものでなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平6−17453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、硬化物における難燃性、耐湿性に優れる硬化性樹脂組成物、その硬化物、及び、該硬化性樹脂組成物を用いたプリント配線基板用樹脂組成物、プリント配線基板、フレキシブル配線基板用樹脂組成物、半導体封止材料用樹脂組成物、及びビルドアップ基板用層間絶縁材料用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、特定の縮合環構造を有するリン原子含有化合物をエポキシ樹脂組成物における添加系難燃剤として用いた場合に、電子部品材料の用途において、硬化物の難燃性と優れた耐ハンダ性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び、下記構造式(1)
【0010】
【化1】


(式中、X及びXは、それぞれ独立的に水素原子、又は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、Aは水素原子又は水酸基である。)で表されるリン原子含有化合物(C)を必須成分とすることを特徴とする硬化性樹脂組成物に関する。
【0011】
本発明は、更に、前記硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物に関する。
【0012】
本発明は、更に、前記硬化性樹脂組成物からなるプリント配線基板用樹脂組成物に関する。
【0013】
本発明は、更に、前記硬化性樹脂組成物からなるフレキシブル配線基板用樹脂組成物に関する。
【0014】
本発明は、更に、前記硬化性樹脂組成物をガラス基材に含浸、次いで硬化させてなるプリント配線基板に関する。
【0015】
本発明は、更に、前記硬化性樹脂組成物に加え、更に無機充填剤を含有する半導体封止材料用樹脂組成物に関する。
【0016】
本発明は、更に、前記硬化性樹脂組成物からなるビルドアップ基板用層間絶縁材料用樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、硬化物における難燃性、耐湿性に優れる硬化性樹脂組成物、その硬化物、及び、該硬化性樹脂組成物を用いたプリント配線基板用樹脂組成物、プリント配線基板、フレキシブル配線基板用樹脂組成物、半導体封止材料用樹脂組成物、及びビルドアップ基板用層間絶縁材料用樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明の硬化性樹脂組成物に用いるリン原子含有化合物(C)は、前記した通り、下記構造式(1)
【0020】
【化2】


(式中、X及びXは、それぞれ独立的に水素原子、又は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、Aは水素原子、又は水酸基である。)で表されるものであり、具体的には、下記構造式a1〜a6のものが挙げられる。
【0021】
【化3】


【0022】
本発明では、これらの中でも特に難燃性に優れ、かつ硬化性樹脂組成物の硬化物における耐熱性がより顕著に優れたものとなる点から構造式a1、a2、又はa3で表されるものが好ましい。
【0023】
上記したリン原子含有化合物(C)は、ブロモベンゼン、又は、炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するブロモベンゼンを出発原料として、前記構造式(1)においてAが水酸基である化合物は、以下の反応方法1により製造することができ、また、Aが水素原子である化合物は、以下の合成経路2により製造することができる。
【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
ここで、上記反応方法1及び2の反応式中における各構造式中のXは、水素原子、又は炭素原子数1〜4のアルキル基である。
【0027】
また、本発明では、リン原子含有化合物(C)の配合割合は、(A)〜(C)の合計質量を基準にして、リン原子の質量割合(リン含有量)が1.0〜4.0質量%となる割合であることが硬化物の難燃性に優れる点から好ましく、中でも、1.0〜3.0質量%となる割合であることが耐熱性に優れる点から好ましい。ここでリン原子の質量割合は、具体的には、「JIS K0102−46」に準拠して、リン原子含有化合物(C)中の燐含有率を測定し、(A)〜(C)の合計質量中のリン原子の質量を算出した値である。
【0028】
次に、本発明の硬化性樹脂組成物において用いるエポキシ樹脂(A)は、種々のエポキシ樹脂を用いることができるが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノール化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ビフェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ジグリシジルオキシナフタレン、1,1−ビス(2,7−ジグリシジルオキシ−1−ナフチル)アルカン等の分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;リン原子含有エポキシ樹脂等が挙げられる。また、これらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0029】
ここで、リン原子含有エポキシ樹脂としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(以下、「HCA」と略記する。)のエポキシ化物、HCAとキノン化合物とを反応させて得られるフェノール樹脂のエポキシ化物、フェノールノボラック型エポキシ樹脂をHCAで変性したエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂をHCAで変性したエポキシ樹脂、また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を、HCAとキノン化合物とを反応させて得られるフェノール樹脂で変成して得られるエポキシ樹脂、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂を、HCAとキノン類とを反応させて得られるフェノール樹脂で変成して得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0030】
上記したエポキシ樹脂(A)のなかでも、特に耐熱性の点から、分子構造中にノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂が好ましく、また、溶剤溶解性の点からビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0031】
本発明の硬化性樹脂組成物において用いる前記硬化剤(B)は、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物などが挙げられる。具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられ、アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられ、酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、
無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(フェノール骨格、トリアジン環及び1級アミノ基を分子構造中に有する化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0032】
これらの中でも、特に芳香族骨格を分子構造内に多く含むものが低熱膨張性の点から好ましく、具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(フェノール骨格、トリアジン環及び1級アミノ基を分子構造中に有する化合物)が低熱膨張性に優れることから好ましい。
【0033】
ここで、前記したアミノトリアジン変性フェノール樹脂、すなわちフェノール骨格、トリアジン環及び1級アミノ基を分子構造中に有する化合物は、トリアジン化合物と、フェノール類と、アルデヒド類とを縮合反応させて得られる分子構造を有するものが硬化物の難燃性が良好となる点から好ましい。また、本発明では、該化合物中の窒素原子含有率が10〜25質量%となるもの、好ましくは15〜25質量%となるものを用いることにより硬化物における線膨張係数が著しく低下し、優れた寸法安定性を発現させることができる。
【0034】
更に、上記したトリアジン化合物と、フェノール化合物と、アルデヒドとを縮合反応させた場合には、実際には、種々の化合物の混合物となるため、該化合物は、この混合物として用いることが好ましい。更に、本発明では、低先膨張係数の点から前記混合物中の窒素原子含有率が10〜25質量%となる範囲、なかでも15〜25質量%であることが好ましい。
【0035】
ここで、フェノール骨格とはフェノール化合物に起因するフェノール構造部位を現し、また、トリアジン骨格とはトリアジン化合物に起因するトリアジン構造部位を現す。
【0036】
ここで用いられるフェノール化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール等のアルキルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールA、レゾルシン、カテコール等の多価フェノール類、モノヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシナフタレン当のナフトール化合物、その他フェニルフェノール、アミノフェノール等が挙げられる。これらのフェノール化合物は、単独又は2種類以上併用で使用可能であるが、最終的な硬化物が難燃性に優れ、且つアミノ基含有トリアジン化合物との反応性に優れる点からフェノールが好ましい。
【0037】
次に、トリアジン環を含む化合物としては、特に限定されるものではないが、下記構造式
【0038】
【化6】


(式中、R’、R’、R’は、アミノ基、アルキル基、フェニル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシルアルキル基、エーテル基、エステル基、酸基、不飽和基、シアノ基のいずれかを表わす。)
で表される化合物又はイソシアヌル酸が好ましい。
【0039】
前記構造式で示される化合物のなかでも特に、反応性に優れる点から前記中、R’、R’、R’のうちのいずれか2つ又は3つがアミノ基であるメラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどのグアナミン誘導体に代表されるアミノ基含有トリアジン化合物が好ましい。
【0040】
これらの化合物も使用にあたって1種類のみに限定されるものではなく2種以上を併用することも可能である。
【0041】
次に、アルデヒドは、特に限定されるものではないが、取扱いの容易さの点からホルムアルデヒドが好ましい。ホルムアルデヒドとしては、限定するものではないが、代表的な供給源としてホルマリン、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。
【0042】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるエポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)の配合割合は、前記したとおり、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基の合計1当量に対して、硬化剤(B)中の活性水素又は酸無水物基が0.7〜1.5当量となる割合であることが好ましい。
【0043】
また必要に応じて本発明の硬化性樹脂組成物に硬化促進剤(D)を適宜併用することもできる。前記硬化促進剤(D)としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルフォスフィン、アミン系化合物では2−エチル4−メチルイミダゾールが好ましい。
【0044】
以上詳述した本発明の硬化性樹脂組成物は、上記各成分の他に有機溶剤(E)を配合することが好ましい。ここで使用し得る前記有機溶剤(E)としては、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、1−メトキシ−2−プロパノール等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、また、不揮発分40〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。一方、ビルドアップ用接着フィルム用途では、有機溶剤(E)として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0045】
また、上記熱硬化性樹脂組成物は、難燃性を発揮させるために、例えばプリント配線板の分野においては、信頼性を低下させない範囲で、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合してもよい。
【0046】
前記非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
【0047】
前記窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
【0048】
前記トリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、前記アミノトリアジン変性フェノール樹脂、及び該アミノトリアジン変性フェノール樹脂を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
【0049】
前記シアヌル酸化合物の具体例としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
【0050】
前記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0051】
また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
【0052】
前記シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0053】
前記シリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
【0054】
前記無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
【0055】
前記金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
【0056】
前記金属酸化物の具体例としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
【0057】
前記金属炭酸塩化合物の具体例としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
【0058】
前記金属粉の具体例としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
【0059】
前記ホウ素化合物の具体例としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
【0060】
前記低融点ガラスの具体例としては、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO−MgO−HO、PbO−B系、ZnO−P−MgO系、P−B−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V−TeO系、Al−HO系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
【0061】
前記無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜15質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0062】
前記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
【0063】
前記有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0064】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて無機質充填材を配合することができる。前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填材の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は難燃性を考慮して、高い方が好ましく、硬化性樹脂組成物の全体量に対して20質量%以上が特に好ましい。また導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0065】
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0066】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記した各成分を均一に混合することにより得られる。本発明のエポキシ樹脂、硬化剤、更に必要により硬化促進剤の配合された本発明の硬化性樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。該硬化物としては積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
【0067】
本発明の硬化性樹脂組成物が用いられる用途としては、プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料、半導体封止材料、導電ペースト、ビルドアップ用接着フィルム、樹脂注型材料、接着剤、等が挙げられる。また、これら各種用途のうち、プリント配線板や電子回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ所謂電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。これらの中でも、高難燃性、高耐熱性、低熱膨張性、及び溶剤溶解性といった特性からフレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料、半導体封止材料に用いることが好ましい。
【0068】
ここで、本発明の硬化性樹脂組成物からプリント回路基板を製造するには、前記有機溶剤(E)を含むワニス状の硬化性樹脂組成物を、更に有機溶剤(E)を配合してワニス化した樹脂組成物を、補強基材に含浸し銅箔を重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。ここで使用し得る補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。かかる方法を更に詳述すれば、先ず、前記したワニス状の硬化性樹脂組成物を、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを得る。この時用いる樹脂組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。次いで、上記のようにして得られたプリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、目的とするプリント回路基板を得ることができる。
【0069】
本発明の硬化性樹脂組成物からフレキシルブル配線基板を製造するには、前記エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、リン原子含有化合物(C)、硬化促進剤(D)、及び有機溶剤(E)を配合して、リバースロールコータ、コンマコータ等の塗布機を用いて、電気絶縁性フィルムに塗布する。次いで、加熱機を用いて60〜170℃で1〜15分間加熱し、溶媒を揮発させて、接着剤組成物をB−ステージ化する。次いで、加熱ロール等を用いて、接着剤に金属箔を熱圧着する。その際の圧着圧力は2〜200N/cm、圧着温度は40〜200℃が好ましい。それで十分な接着性能が得られれば、ここで終えても構わないが、完全硬化が必要な場合は、さらに100〜200℃で1〜24時間の条件で後硬化させることが好ましい。最終的に硬化させた後の接着剤組成物膜の厚みは、5〜100μmの範囲が好ましい。
【0070】
本発明の硬化性樹脂組成物から半導体封止材料を調整するには、半導体封止材用に調製されたエポキシ樹脂組成物を作製するためには、前記エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、リン原子含有化合物(C)、硬化促進剤(D)、及び無機充填剤等の配合剤を必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合して得ることができる。その際、無機充填剤としては、通常シリカが用いられるが、その充填率はエポキシ樹脂組成物100質量部当たり、充填剤を30〜95質量%の範囲が用いることが好ましく、中でも、難燃性や耐湿性や耐ハンダクラック性の向上、線膨張係数の低下を図るためには、70質量部以上が特に好ましく、それらの効果を格段に上げるためには、80質量部以上が一層その効果を高めることができる。半導体パッケージ成形としては、該組成物を注型、或いはトランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50〜200℃で2〜10時間に加熱することにより成形物である半導体装置を得る方法がある
【0071】
本発明の硬化性樹脂組成物からビルドアップ基板用層間絶縁材料を得る方法としては例えば、ゴム、フィラーなどを適宜配合した当該硬化性樹脂組成物を、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法としては、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基盤を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0072】
本発明の硬化性樹脂組成物からビルドアップ用接着フィルムを製造する方法は、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を、支持フィルム上に塗布し樹脂組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとする方法が挙げられる。
【0073】
本発明の硬化性樹脂組成物をビルドアップ用接着フィルムに用いる場合、該接着フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。
【0074】
ここで、多層プリント配線板のスルーホールの直径は通常0.1〜0.5mm、深さは通常0.1〜1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
【0075】
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の本発明の硬化性樹脂組成物を調製した後、支持フィルムの表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて硬化性樹脂組成物の層(α)を形成させることにより製造することができる。
【0076】
形成される層(α)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。
【0077】
なお、前記層(α)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0078】
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
【0079】
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1〜40μmとするのが好ましい。
【0080】
上記した支持フィルムは、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルムを剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
【0081】
次に、上記のようして得られた接着フィルムを用いて多層プリント配線板を製造する方法は、例えば、層(α)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、層(α)を回路基板に直接接するように、回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
【0082】
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm(9.8×10〜107.9×10N/m2)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
【0083】
本発明の硬化性樹脂組成物を導電ペーストとして使用する場合には、例えば、微細導電性粒子を該硬化性樹脂組成物中に分散させ異方性導電膜用組成物とする方法、室温で液状である回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とする方法が挙げられる。
【0084】
本発明の硬化物を得る方法としては、一般的な硬化性樹脂組成物の硬化方法に準拠すればよいが、例えば加熱温度条件は、組み合わせる硬化剤の種類や用途等によって、適宜選択すればよいが、上記方法によって得られた組成物を、室温〜250℃程度の温度範囲で加熱すればよい。
【実施例】
【0085】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。
【0086】
合成例1
(下記構造式で表される中間体Aの合成)
【0087】
【化7】


コンデンサー、窒素導入管つきの乾燥したフラスコにリチウムワイヤー3.0g(0.432mol)とジエチルエーテル75mlを仕込み、撹拌する。この溶液にブロモベンゼン31.4g(0.200mol)を滴下ポンプで1時間かけて連続的に添加し、リチウムワイヤーが完全に溶解するまで反応させた。さらに24時間撹拌を継続した後、乾燥THF25mlを添加してフィルターを通過させ残留するリチウムを除去し、目的の化合物(フェニルリチウム)を得た。ヨウ素化したサンプルのGC測定にて目的物へのフルコンバージョン及びビフェニルが存在していないことを確認した。
【0088】
続いて乾燥したフラスコに乾燥THF50mlと、トリフェニルホスフィンオキサイド27.8g(0.100mol)を仕込み、撹拌を開始した。25℃にて上記フェニルリチウム溶液を仕込み、24時間撹拌を継続した。続いて、氷冷した希塩酸をpHが酸性サイドに下がるまで滴下した。有機層を分取した後、水層を再度50mlのジエチルエーテルで抽出した。有機層は再度食塩水で洗浄し、NaSOと共に乾燥させ、ろ過し、溶剤を除去し、淡褐色油状で、結晶性を有する目的の中間体Aを得た。収量は25.2g(収率97%)であった。構造は下記分析により確認した。
MS(EI):260 M(C1813,ベースピーク),288,183(C12).31P NMR(CDClCl):δ=−10.1ppm(Lit. value −11.6)
【0089】
(下記構造式で表される中間体Bの合成)
【0090】
【化8】


続いてコンデンサー、窒素導入管つきの乾燥したフラスコに上記中間体A17.86g(68.7mmol)と乾燥THF40mlを仕込み、25℃の水浴中で撹拌する。この溶液に金属リチウム1.1g(158mmol,2.3当量)を3分割して添加し、金属リチウムが完全に溶解したことを確認した後、更に10時間反応させた。GC測定にて目的物である中間体Bへのフルコンバージョンを確認した。
(下記構造式で表される中間体Cの合成)
【0091】
【化9】


得られた中間体Bに−10℃で乾燥THFと水の1:1混合溶液15mlを加え冷却し、更に、酢酸を無色透明の混合物が発生するまで添加した。水層を棄却した後、有機層を10mlのNaSOにて洗浄、乾燥させた。得られた化合物をろ過、10-2mbar/120℃で乾燥させ、無色透明の中間体C7.5g(40.7mmol,収率59%)を得た。
(下記構造式で表されるリン原子含有化合物(P1)の合成)
【0092】
【化10】


コンデンサー、撹拌子、滴下漏斗つきの乾燥したフラスコに水50mlと30%過酸化水素水溶液20mlを仕込み均一化した。さらに、この溶液中に前記中間体Cを添加し、酸化反応させた。反応完結後、この混合物を30分かけて100℃に昇温し、その後25℃に冷却し、NaOH8gを添加した。30分間撹拌した後、氷浴中で0℃に冷却し、化合物のNa塩の白色小板状結晶をろ過して分取した。この固体を50℃、50mlの水に溶解させ、10%塩酸水溶液40mlを60℃で添加し、pHが酸性サイドになっていることを確認した。固形分をろ過し、20mlの冷水で洗浄し、24時間空気乾燥させ、目的とするリン原子含有化合物(P1)6.5g(30.1mmol、収率74質量%)を得た。リン原子含有化合物(P1)のリン含有量は14.4質量%であった。得られたリン原子含有化合物(P1)のNMR分析結果を下記に示す。
【0093】
NMR(DMSO):
δ(H)=7.42−7.80(m, 6H), 8.0−8.1 (m, 2H);
δ(13C)=221.8(d),228.1 (d), 129.8 (d), 131.6 (d), 133.5, 139.5 (d);
δ(31P)=36.6ppm,
【0094】
実施例1、2、及び比較例1、2
表1に示した配合に従い、下記の方法でエポキシ樹脂組成物を調整し、次いで、下記の条件で硬化させて、積層板を試作し、各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0095】
[エポキシ樹脂組成物の調整]
下記表2記載の組成に従い、エポキシ樹脂、硬化剤及びその他の各成分を配合した後、最終的に組成物の不揮発分(N.V.)を58質量%となるように調整した。
【0096】
[積層板作成条件]
基材:100μm;日東紡績株式会社製ガラスクロス「#2116」
プライ数:6
プリプレグ化条件:160℃/2分
銅箔:18μm;日鉱金属株式会社製 JTC箔
硬化条件:200℃、40kg/cmで1.5時間
成型後板厚:0.8mm
【0097】
[物性試験条件]
ガラス転移温度:エッチング処理を施し銅箔除去した後、TMA法(圧縮荷重法)にて測定。昇温スピード10℃/分。
【0098】
燃焼試験:試験方法はUL−94垂直試験に準拠。
【0099】
ハンダ耐熱性:PCT(121℃、1.2気圧)にて所定時間処理後、288℃のはんだ浴に30秒浸漬し、異常の有無を目視観察した。
【0100】
【表1】

【0101】
表中の略号は以下の通りである。
N−690:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC(株)製「エピクロンN−690」、エポキシ当量:214g/eq.)
HP−7200H:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「エピクロンHP−7200H」、エポキシ当量:279g/eq.)
P1:合成例1で得られたリン原子含有化合物(P1)
HCA:9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド
TD−2090:フェノールノボラック型フェノール樹脂(DIC(株)製「TD−2090」、水酸基当量105g/eq)
2E4MZ:2−エチル−4−メチルイミダゾール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び、下記構造式(1)
【化1】


(式中、X及びXは、それぞれ独立的に水素原子、又は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、Aは水素原子、又は水酸基である。)で表されるリン原子含有化合物(C)を必須成分とすることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記硬化剤(B)が、活性水素又は酸無水物基を有するものであって、かつ、エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)と、前記との配合比率が、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基の合計1当量に対して、硬化剤(B)中の活性水素又は酸無水物基が0.7〜1.5当量となる割合である請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記リン原子含有化合物(C)が、前記(A)、(B)、及び(C)の合計質量中のリン原子の質量割合が1.0〜4.0質量%となる割合で配合されている請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)〜(C)の各成分に加え、更に硬化促進剤(D)を配合する請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)〜(D)の各成分に加え、更に、有機溶剤(E)を含有する請求項4記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1つに記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項7】
請求項5記載の組成物からなるプリント配線基板用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項5記載の組成物からなるフレキシブル配線基板用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項5記載の組成物をガラス基材に含浸、次いで硬化させてなるプリント配線基板。
【請求項10】
請求項4記載の組成物に加え、更に無機充填剤を含有する半導体封止材料用樹脂組成物。
【請求項11】
請求項4記載の組成物からなるビルドアップ基板用層間絶縁材料用樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−172069(P2012−172069A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35769(P2011−35769)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】