説明

硬化物製造用キット及び硬化物製造用組成物、並びにその使用

【課題】硬化物の形成時に大気で長期開放しても空気中の水分により、変質することなく硬化安定性に優れ、白濁することなく透明性に優れた硬化物を製造するための硬化物製造用キット及び硬化物製造用組成物の提供。また、前記硬化物を半導体発光デバイスの封止物として用いることにより、光学特性に優れた半導体発光デバイスの提供。
【解決手段】本発明の硬化物製造用キットは、混合して使用する硬化物製造用キットであり、少なくともシラノール基を有するポリオルガノシロキサン及びアルキルシリケートを脱アルコール反応させて得られるアルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンを含むA液と、少なくとも金属錯体化合物と溶媒とを含むB液とを有する。また、本発明の硬化物製造用組成物は、少なくとも前記アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンと、金属錯体化合物と、溶媒とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光デバイスの封止物として好適に使用可能な硬化物を製造するための硬化物製造用キット及び硬化物製造用組成物、より詳細には半導体発光デバイス封止物の製造用キット及び半導体発光デバイス封止物の製造用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光ダイオード(Light Emitting Diode:以下、LEDと称することがある)を光源として用いた半導体発光デバイスにおいては、耐衝撃、及び防汚などの目的から、封止物を備えることが知られている。
【0003】
前記封止物は、使用環境、用途等に応じて様々な樹脂が用いられており、耐光性、耐熱性などの観点から、ゾルゲル法を利用したシリコーン硬化樹脂などが用いられている。しかし、これらの封止物は、触媒との関係で実用化に際して様々な問題がある。
例えば、ゾルゲル法を利用した封止物として、金属錯体化合物(触媒)を用いてオルガノポリシロキサンとアルキルシリケートとを縮合させたシリコーン硬化樹脂を製造する方法が提案されているが(例えば、特許文献1参照)、この場合、硬化物の形成時に大気で長期開放すると、空気中の水分により変質が生じて硬化安定性が保てず、白濁して透明性に優れない硬化物となってしまうという問題がある。また、これらの硬化物を半導体発光デバイスの封止物として用いると、光学的特性に劣るという重大な問題がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
したがって、硬化物の形成時に大気で長期開放しても空気中の水分により、変質することなく硬化安定性に優れ、白濁することなく透明性に優れた硬化物、及び前記硬化物を半導体発光デバイスの封止物として用いた光学特性に優れた半導体発光デバイスの速やかな開発が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−274272号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Journal of Sol−Gel Science and Technology,Volume 16,Issue 3,1999,Pages 209−220
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、硬化物の形成時に大気で長期開放しても空気中の水分により、変質することなく硬化安定性に優れ、白濁することなく透明性に優れた硬化物を製造するための硬化物製造用キット及び硬化物製造用組成物を提供することを目的とする。また、前記硬化物を半導体発光デバイスの封止物として用いることにより、光学特性に優れた半導体発光デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、ポリオルガノポリシロキサンと、アルキルシリケートと、触媒として金属錯体化合物とを反応させて硬化物を形成させる際、大気で長期開放すると空気中の水分により、前記アルキルシリケート同士が結合して硬化物の変質や白濁が生じることを知見した。
そこで、前記ポリオルガノシロキサンと、前記アルキルシリケートとを予め脱アルコール反応させてアルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンとすることにより、前記アルキルシリケート同士の結合を回避することができ、硬化物の形成時に大気で長期開放しても空気中の水分により、変質することなく硬化安定性に優れ、白濁することなく透明性に優れた硬化物となることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 混合して使用する硬化物製造用キットであり、少なくともシラノール基を有するポリオルガノシロキサン及びアルキルシリケートを脱アルコール反応させて得られるアルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンを含むA液と、少なくとも金属錯体化合物と溶媒とを含むB液と、を有することを特徴とする硬化物製造用キットである。
<2> アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンのA液における含有量が、10質量%〜100質量%である前記<1>に記載の硬化物製造用キットである。
<3> 金属錯体化合物のB液における含有量が、0.05質量%〜7.5質量%である前記<1>から<2>のいずれかに記載の硬化物製造用キットである。
<4> 金属錯体化合物の中心金属が、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンの少なくともいずれかである前記<1>から<3>のいずれかに記載の硬化物製造用キットである。
<5> 金属錯体化合物が、アルミニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナート、及びチタンアセチルアセトナートの少なくともいずれかである前記<1>から<4>のいずれかに記載の硬化物製造用キットである。
<6> シラノール基を有するポリオルガノシロキサンが、下記一般式(2)で表される前記<1>から<5>のいずれかに記載の硬化物製造用キットである。
【化1】

ただし、前記一般式(2)中、Rは、互いに、同一であってもよいし、異なってもよく、フッ素を含まない有機基を表す。また、nは、1以上の整数を表す。
<7> アルキルシリケートが、下記一般式(3)で表される前記<1>から<6>のいずれかに記載の硬化物製造用キットである。
【化2】

ただし、前記一般式(3)中、Rは、互いに、同一であってもよいし、異なってもよく、アルコキシ基、又はフッ素を含まない1価の有機基を表す(ただし、Rのうちの少なくとも1つはアルコキシ基である)。また、nは、1以上の整数を表す。
<8> アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンが、下記一般式(1)−1で表される前記<1>から<7>のいずれかに記載の硬化物製造用キットである。
【化3】

ただし、前記一般式(1)−1中、mは、8〜10の整数を表し、nは、180〜220の整数を表す。
<9> 少なくともシラノール基を有するポリオルガノシロキサン及びアルキルシリケートを脱アルコール反応させて得られるアルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンと、金属錯体化合物と、溶媒とを含むことを特徴とする硬化物製造用組成物である。
<10> アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンの含有量が、15質量%〜90質量%である前記<9>に記載の硬化物製造用組成物である。
<11> 金属錯体化合物の含有量が、0.005質量%〜0.7質量%である前記<9>から<10>のいずれかに記載の硬化物製造用組成物である。
<12> 金属錯体化合物の中心金属が、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンの少なくともいずれかである前記<9>から<11>のいずれかに記載の硬化物製造用組成物である。
<13> 金属錯体化合物が、アルミニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナート、及びチタンアセチルアセトナートの少なくともいずれかである前記<9>から<12>のいずれかに記載の硬化物製造用組成物である。
<14> シラノール基を有するポリオルガノシロキサンが、下記一般式(2)で表される前記<9>から<13>のいずれかに記載の硬化物製造用組成物である。
【化4】

ただし、前記一般式(2)中、Rは、互いに、同一であってもよいし、異なってもよく、フッ素を含まない有機基を表す。また、nは、1以上の整数を表す。
<15> アルキルシリケートが、下記一般式(3)で表される前記<9>から<14>のいずれかに記載の硬化物製造用組成物である。
【化5】

ただし、前記一般式(3)中、Rは、互いに、同一であってもよいし、異なってもよく、アルコキシ基、又はフッ素を含まない1価の有機基を表す(ただし、Rのうちの少なくとも1つはアルコキシ基である)。また、nは、1以上の整数を表す。
<16> アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンが、下記一般式(1)−1で表される前記<9>から<15>のいずれかに記載の硬化物製造用組成物である。
【化6】

ただし、前記一般式(1)−1中、mは、8〜10の整数を表し、nは、180〜220の整数を表す。
<17> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の硬化物製造用キット、又は前記<9>から<16>のいずれかに記載の硬化物製造用組成物を用いて形成されることを特徴とする硬化物である。
<18> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の硬化物製造用キットを半導体発光デバイスの封止物の形成に使用することを特徴とする半導体発光デバイス封止物の製造用キットである。
<19> 前記<9>から<16>のいずれかに記載の硬化物製造用組成物を半導体発光デバイスの封止物の形成に使用することを特徴とする半導体発光デバイス封止物の製造用組成物である。
<20> 半導体発光デバイスの封止物として前記<17>に記載の硬化物を備えることを特徴とする半導体発光デバイスである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硬化物の形成時に大気で長期開放しても空気中の水分により、変質することなく硬化安定性に優れ、白濁することなく透明性に優れた硬化物を製造するための硬化物製造用キット及び硬化物製造用組成物を提供することができる。また、前記硬化物を半導体発光デバイスの封止物として用いることにより、光学特性に優れた半導体発光デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の半導体発光デバイスの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(硬化物製造用キット及び硬化物製造用組成物)
本発明の硬化物製造用キットは、硬化物を形成する際に、縮合反応する材料を含むA液と、触媒を含むB液とを混合して使用するいわゆる2液型組成物である。
本発明の硬化物製造用組成物は、硬化物を形成する際に、縮合反応する材料と触媒とを1つの液中に混合して使用するいわゆる1液型組成物である。
【0013】
前記硬化物製造用キットは、混合して使用する硬化物製造用キットであり、少なくともアルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンを含むA液と、少なくとも金属錯体化合物と溶媒とを含むB液とを有し、更に必要に応じてその他の成分を含む。
前記硬化物製造用組成物は、少なくともアルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンと、金属錯体化合物と、溶媒とを含み、更に必要に応じてその他の成分を含む。
【0014】
<アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサン>
前記アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンは、シラノール基を有するポリオルガノシロキサン(以下、単にポリオルガノシロキサンと称する)及びアルキルシリケートを脱アルコール反応させて得られる樹脂であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンが好ましく、下記一般式(1)−1で表される全てのアルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンを混合してなる混合物がより好ましい。
【化7】

ただし、前記一般式(1)中、Rは、互いに、同一であってもよいし、異なってもよく、フッ素を含まない有機基を表す。Rは、互いに、同一であってもよいし、異なってもよく、アルコキシ基、又はフッ素を含まない1価の有機基を表す(ただし、Rのうちの少なくとも1つはアルコキシ基である)。また、nは、1以上の整数を表す。
【化8】

ただし、前記一般式(1)−1中、mは、8〜10の整数を表し、nは、180〜220の整数を表す。
【0015】
前記アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンの硬化物製造用キットのA液における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%〜100質量%が好ましく、15質量%〜90質量%がより好ましく、20質量%〜80質量%が更に好ましく、25質量%〜60質量%が特に好ましい。前記含有量が、10質量%未満であると、架橋密度が低くなり硬度が不十分になることがある。
前記アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンの硬化物製造用組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、15質量%〜90質量%が好ましく、15質量%〜85質量%がより好ましく、15質量%〜75質量%が特に好ましい。前記含有量が、15質量%未満であると、架橋密度が低くなり硬度が不十分になることがある。
【0016】
前記アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンの質量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算で、400〜80,000が好ましく、4,000〜60,000がより好ましく、6,000〜40,000が特に好ましい。前記質量平均分子量が、400未満であると、半導体発光デバイス封止物用樹脂における低分子シロキサンの発生が多くなり、その結果電気接点の絶縁不良を招き易くなることがある。なお、前記質量平均分子量の測定としては、例えば、LC/PDA装置(Waters製 Alliance2695)により、測定することができる。
【0017】
<<ポリオルガノシロキサン>>
前記ポリオルガノポリシロキサンは、前記アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンを合成する際に用いる樹脂である。また、前記ポリオルガノシロキサンは、前記アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンの合成に用いられるだけでなく、前記硬化物製造用キット及び前記硬化物製造用組成物に、前記アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンと共に含有させてもよい。
【0018】
前記ポリオルガノシロキサンとしては、その分子の主鎖及び/又は側鎖に、少なくとも2つ以上の、シラノール基及びアルコキシシリル基のいずれかの官能基、及びシロキサン結合(Si−O−Si)を有するシロキサンであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサンが好ましい。
【化9】

ただし、前記一般式(2)中、Rは、互いに、同一であってもよいし、異なってもよく、フッ素を含まない有機基を表す。また、nは、1以上の整数を表す。
【0019】
前記ポリオルガノシロキサンが有する有機基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選ばれる少なくともいずれかを含んでもよい炭化水素基などが挙げられる。前記炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アシル基などが挙げられる。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基などが挙げられる。前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基などが挙げられる。前記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基などが挙げられる。前記アシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び耐熱着色安定性に優れる点で、メチル基が好ましい。
【0020】
前記ポリオルガノシロキサンが有する有機基又はシロキサン結合の平均数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ケイ素1原子当たり1個以上2個以下が好ましく、構造制御の観点より、ケイ素1原子当たり2個がより好ましい。
【0021】
前記ポリオルガノシロキサンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、メチルフェニルポリシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、直鎖型であってもよいし、スター型、櫛形などの分岐構造を有するものであってもよい。これらの中でも、透明性に優れる点で、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が好ましい。
【0022】
前記ポリオルガノシロキサンとしては、適宜合成したものを使用してもよく、前記合成する方法としては、例えば、ジメチルジアルコキシシランを加水分解及び縮合させることにより合成する方法、ジメチルジクロロシランを加水分解及び縮合させることにより合成する方法、環状オルガノシロキサンを開環縮合させることにより合成する方法などが挙げられる。
前記ジメチルジアルコキシシランとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−i−プロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシランなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記環状オルガノシロキサンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記ポリオルガノシロキサンとしては、市販品を使用してもよく、前記市販品としては、例えば、XC96−723、XF−3905、YF−3057、YF−3800、YF−3802、YF−3807、YF−3897(いずれも末端シラノール基ポリジメチルシロキサン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、YF3804(末端シラノール基メチルフェニルポリシロキサン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、DMS−S12、DMS−S14、DMS−S15、DMS−S21、DMS−S27、DMS−S31、DMS−S32、DMS−S33、DMS−S35、DMS−S42、DMS−S45、DMS−S51(いずれも両末端シラノール基ポリジメチルシロキサン、Gelest社製)、PDS−0338、PDS−1615(両末端シラノール基ジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体、Gelest社製)、PDS−9931(両末端シラノール基ポリジフェニルシロキサン、Gelest社製)、SR−21(両末端シラノール基ポリフェニルシルセスキオキサン、小西化学工業製)、SR−23(両末端アルコキシシリル基ポリフェニルシルセスキオキサン、小西化学工業製)、SR−13(両末端アルコキシシリル基ポリメチルシルセスキオキサン、小西化学工業製)、SR−33(両末端アルコキシシリル基ポリメチルフェニルシルセスキオキサン、小西化学工業製)などが挙げられる。
【0024】
前記ポリオルガノシロキサンの質量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算で、300〜1,000,000が好ましく、1,000〜100,000がより好ましく、3,000〜50,000が特に好ましい。前記質量平均分子量が、300未満であると、半導体発光デバイス封止物用樹脂における低分子シロキサンの発生が多くなり、その結果電気接点の絶縁不良を招き易くなることがあり、1,000,000を超えると、液の粘度が高くなり過ぎて作業性が悪くなることがある。
なお、前記質量平均分子量の測定としては、例えば、LC/PDA装置(Alliance2695、Waters製)により測定することができる。
【0025】
前記ポリオルガノシロキサンは、前記アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンの合成に用いられるだけでなく、前記硬化物製造用キット及び前記硬化物製造用組成物に、前記アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンと共に含有させてもよい。
前記ポリオルガノポリシロキサンの硬化物製造用キットのA液における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、88質量%以下が好ましく、5質量%〜80質量%がより好ましく、10質量%〜70質量%が特に好ましい。前記含有量が、88質量%を超えると、架橋密度が低くなり硬度が不十分になることがある。
前記ポリオルガノポリシロキサンの硬化物製造用組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、80質量%以下が好ましく、4質量%〜75質量%がより好ましく、8質量%〜70質量%が特に好ましい。前記含有量が、80質量%を超えると、架橋密度が低くなり硬度が不十分になることがある。
【0026】
<<アルキルシリケート>>
前記アルキルシリケートとしては、フッ素を含まず、ケイ素とそれに結合するアルコキシ基を有し、前記ポリオルガノシロキサンと脱アルコール反応することができるシロキサンであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(3)で表されるアルキルシリケートが好ましい。
【化10】

ただし、前記一般式(3)中、Rは、互いに、同一であってもよいし、異なってもよく、アルコキシ基、又はフッ素を含まない1価の有機基を表す(ただし、Rのうちの少なくとも1つはアルコキシ基である)。また、nは、1以上の整数を表す。
【0027】
前記アルキルシリケートが有するアルコキシ基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び耐熱着色安定性に優れる点で、エトキシ基が好ましい。
【0028】
前記アルキルシリケートが有するフッ素を含まない1価の有機基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選ばれる少なくともいずれかを含んでもよい炭化水素基などが挙げられる。前記炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アシル基などが挙げられる。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基などが挙げられる。前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基などが挙げられる。前記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基などが挙げられる。前記アシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び耐熱着色安定性に優れる点で、メチル基が好ましい。
【0029】
前記アルキルシリケートが有するアルコキシ基又はシロキサン結合の平均数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ケイ素1原子当たり、3個以上4個以下が好ましく、3.5個以上4個以下がより好ましい。
【0030】
前記アルキルシリケートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリn−プロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリn−プロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン、メチルトリクロロシラン、γ−アシノプロピルトリエトキシシラン、4−アシノブチルトリエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノメチルフェネチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、(p−クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、4−クロロフェニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン等を縮合して得られるポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、硬化性及び硬化後の架橋密度の点で、テトラエトキシシランを縮合して得られるエチルシリケートオリゴマー、テトラメトキシシラン等を縮合して得られるメチルシリケートオリゴマーが好ましい。
【0031】
前記アルキルシリケートとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、シリケート40、シリケート45(いずれもエチルシリケートオリゴマー、多摩化学工業株式会社製)、Mシリケート51(メチルシリケートオリゴマー、多摩化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0032】
前記アルキルシリケートの質量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、硬化時間、可使時間が適切な長さとなり、硬化性及び相溶性に優れるという観点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算で、160〜100,000が好ましく、200〜10,000がより好ましい。
【0033】
前記アルキルシリケートは、前記アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンの合成に用いられるだけでなく、前記硬化物製造用キット及び前記硬化物製造用組成物に、前記アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンと共に含有させてもよい。
前記アルキルシリケートの硬化物製造用キットのA液における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30質量%以下が好ましく、1質量%〜20質量%がより好ましく、2質量%〜10質量%が特に好ましい。前記含有量が、30質量%を超えると、硬化物が脆くなることがある。
前記アルキルシリケートの硬化物製造用組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25質量%以下が好ましく、0.5質量%〜20質量%がより好ましく、1質量%〜15質量%が特に好ましい。前記含有量が、25質量%を超えると、硬化物が脆くなることがある。
【0034】
<<脱アルコール反応>>
前記脱アルコール反応としては、前記ポリオルガノシロキサンの末端に有する前記水酸基と前記アルキルシリケートとが有する前記アルコキシとが反応して脱アルコールされる反応であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記ポリオルガノシロキサン及び前記アルキルシリケートを混合した溶液を加熱し、生成するアルコールを留去することにより行うことができる。
また、前記脱アルコール反応の具体例としては、下記式(1)に示すように、前記アルキルシリケートの末端に有するアルコキシ基と、前記ポリオルガノシロキサンの末端に有する水酸基とが脱アルコール化させてシロキサン結合(Si−O結合)が形成されて脱アルコール化される反応などが挙げられる。以上により、前記ポリオルガノシロキサン及び前記アルキルシリケートが脱アルコール反応されて前記アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンを得ることができる。
【化11】

【0035】
<金属錯体化合物>
前記金属錯体化合物としては、前記アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンの縮合反応の触媒として機能することができ、金属原子とそれに配位する配位子を含む化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−iso−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−tert−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−iso−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−tert−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−iso−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−tert−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−iso−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−tert−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジルコニウムテトラエチルアセトアセテート、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトナート等のジルコニウムキレート化合物;ジ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−iso−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−iso−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−tert−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、ジ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−iso−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−iso−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−tert−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、モノ(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ビス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトナート等のアルミニウムキレート化合物;テトラエトキシチタニウム、テトラ−i−プロポキシチタニウム、テトラ−n−ブトキシチタニウム、トリエトキシ・アセチルアセトナートチタニウム、トリ−n−プロポキシ・アセチルアセトナートチタニウム、トリ−i−プロポキシ・アセチルアセトナートチタニウム、トリ−n−ブトキシ・アセチルアセトナートチタニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、エトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタニウム、n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタニウム、i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタニウム、n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)チタニウム、トリエトキシ・エチルアセトアセテートチタニウム、トリ−n−プロポキシ・エチルアセトアセテートチタニウム、トリ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートチタニウム、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートチタニウム、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、エトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタニウム、n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタニウム、i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタニウム、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタニウム、モノアセチルアセトナート・トリス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ビス(アセチルアセトナート)・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、トリス(アセチルアセトナート)・モノ(エチルアセトアセテート)チタニウム、チタンアセチルアセトナート等のチタニウムキレート化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記ポリオルガノシロキサンと前記アルキルシリケートとを縮合する際に、高い歩留まりで硬化物形成液を合成することができる点、可使時間、硬化時間が適切な長さとなる点、硬化安定性、貯蔵安定性、透明性に優れる点で、中心金属がアルミニウム、ジルコニウム、及びチタンの少なくとも1種である金属錯体化合物が好ましく、アルミニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナート、及びチタンアセチルアセトナートの少なくともいずれかである金属錯体化合物がより好ましい。
【0036】
前記金属錯体化合物の配位子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、βジケトン化合物に由来する配位子やケトエステル化合物に由来する配位子などが挙げられる。前記βジケトン化合物としては、例えば、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘキサンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−ヘプタンジオン、2−メチルヘキサン−3,5−ジオン、2,4−オクタンジオン、3,5−オクタンジオン、6−メチルヘプタン−2,4−ジオン、5−メチルヘプタン−2,4−ジオン、2,2−ジメチルヘキサン−3,5−ジオン、2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン、4,6−ノナンジオン、2,8−ジメチルノナン−4,6−ジオン、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトンなどが挙げられる。前記ケトエステル化合物としては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸tert−ブチル、プロピオニル酢酸メチル、プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸イソプロピル、プロピオニル酢酸tert−ブチルなどが挙げられる。
これらの中でも、反応性と貯蔵安定性との両立ができる点で、アセチルアセトンに由来する配位子、アセト酢酸エチルに由来する配位子が好ましい。
【0037】
前記金属錯体化合物としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記金属錯体化合物の市販品としては、アルミニウムアセチルアセトナート(株式会社同仁化学研究所製)、アルミニウムアセチルアセトナート,99%(Strem Chemicals,Inc製)、2,4−ペンタジオン酸アルミニウム(Chempur Feinchemikalien und Forschungsbedarf GmbH製)、2,4−ペンタジオン酸アルミニウム(Alfa Aesar社製)、トリス(エチルアセトアセタト)アルミニウム、76%ビス(エチルアセトアセタト)(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム 2−プロパノール溶液(株式会社ワコーケミカル製)、ALCH、ALCH−TR、AIPD、アルミキレートM、アルミキレートD、アルミキレートA(いずれも、川研ファインケミカル株式会社製)、ジルコニウムアセチルアセトナート(オルガチックスZC−150、マツモトファインケミカル株式会社製)、チタンイソプロポキシド(和光純薬工業株式会社製)、チタンアセチルアセトナート(オルガチックスTC−401、マツモトファインケミカル株式会社製)、チタンジプロポキシビス(アセチルアセトネート)(オルガチックスTC−100、マツモトファインケミカル株式会社製)などが挙げられる。
【0038】
前記金属錯体化合物の硬化物製造用キットのB液における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05質量%〜7.5質量%が好ましく、0.1質量%〜5質量%がより好ましく、0.15質量%〜2.5質量%が特に好ましい。前記含有量が、0.05質量%未満であると、硬化が不均一化若しくは硬化が不十分となることがあり、7.5質量%を超えると、A液との混合時に析出が生じることがある。一方、前記含有量が前記特に好ましい範囲であると、均一な硬化物が得られる点で有利である。
前記金属錯体化合物の硬化物製造用組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.005質量%〜0.7質量%が好ましく、0.008質量%〜0.5質量%がより好ましく、0.01質量%〜0.3質量%が特に好ましい。前記含有量が、0.005質量%未満であると、硬化が不均一化若しくは硬化が不十分となることがあり、0.7質量%を超えると、前記金属錯体化合物の溶解度を超えることがある。一方、前記含有量が前記特に好ましい範囲であると、均一な硬化物が得られる点で有利である。
【0039】
<溶媒>
前記溶媒としては、前記金属錯体化合物を均一に溶解できる溶媒であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール等の第1級アルコール、イソプロパノール、イソブタノール、sec−ブチルアルコール等の第2級アルコール、tert−ブチルアルコール(t−ブタノール)、tert−アミルアルコール等の第3級アルコール、メトキシメタノール、メトキシエタノール、エトキシメタノール、2−エトキシエタノール等の各種アルコール系溶媒;トルエン、キシレン、2−フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、フェノール等の芳香族溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘキサンジオン等のβジケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒;アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル等のケトエステル系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素等のハロアルカン溶媒;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記金属錯体化合物の溶解性及び揮発性に優れる点、硬化物を形成する際に生じる泡の発生が抑制される点で、メタノール、エタノール等のアルコールを2種以上含むアルコール系溶媒;前記芳香族溶媒;前記βジケトン系溶媒、前記ケトエステル系溶媒等の配位性溶媒が好ましく、具体的には、トルエン、キシレン、アセチルアセトン、及びアセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチルが好ましい。
【0040】
前記溶媒は、アルコール溶媒と非アルコール溶媒とを含むことができる。
前記溶媒におけるアルコール溶媒と非アルコール溶媒との質量混合比率(アルコール溶媒/非アルコール溶媒)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1/9〜9/1が好ましく、4/6〜8/2がより好ましい。前記質量混合比率(アルコール溶媒/非アルコール溶媒)が、1/9未満であると、前記金属錯体化合物の溶解性が低くなることがあり、9/1を超えると、前記金属錯体化合物の溶解性が低くなることがある。一方、前記より好ましい範囲であると、前記金属錯体化合物の溶解性、硬化物とする際に生じる泡の発生を抑制することができる点で有利である。
【0041】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機フィラー、無機蛍光体などが好適に挙げられ、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定性改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、カップリング剤、酸化防止剤、防腐剤、熱安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤などを含有してもよい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記無機フィラーとしては、光学特性を低下させない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ、疎水性超微粉シリカ、平板状雲母、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記無機蛍光体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、LEDに広く利用されている、イットリウム、アルミニウム、ガーネット等のYAG系蛍光体;ZnS系蛍光体;YS系蛍光体;赤色発光蛍光体;青色発光蛍光体;緑色発光蛍光体;CdSe、InP等のナノ粒子で形成される量子ドット系蛍光体などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
<硬化物製造用キット及び硬化物製造用組成物の使用形態>
前記硬化物製造用キットの使用形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンを含むA液と、前記金属錯体化合物及び前記溶媒を含むB液とを混合機により混合した後、4時間以内に使用(塗布)することが好ましい。
前記硬化物製造用組成物の使用形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンと、前記金属錯体化合物と、前記溶媒とを混合機により混合した後、4時間以内に使用(塗布)することが好ましい。
【0045】
<硬化物製造用キット及び硬化物製造用組成物の用途>
本発明の硬化物製造用キットを用いることにより、前記硬化物の形成時に大気で長期開放しても、空気中の水分による変質が生じず、硬化安定性が高く、透明性に優れた硬化物を製造することができるため、半導体発光デバイス封止物の製造用キットとして好適に用いられる。
本発明の硬化物製造用組成物を用いることにより、前記硬化物の形成時に大気で長期開放しても、空気中の水分による変質が生じず、硬化安定性が高く、透明性に優れた硬化物を製造することができるため、半導体発光デバイス封止物の製造用組成物として好適に用いられる。
【0046】
(硬化物)
本発明の硬化物は、シリコーン樹脂の硬化物からなり、前記硬化物製造用キット、又は前記硬化物製造用組成物を混合して得られた縮合物を目的とする形状の型に入れて成形した後に、これを加熱、及び必要に応じて乾燥することで得られるものである。また、本発明の硬化物は、前記縮合物を目的とする部位に塗布した状態で加熱、及び必要に応じて乾燥することにより、目的とする部位に直接形成することもできる。
なお、前記反応に用いた溶媒、及び前記縮合反応により生成した水などは、前記加熱、及び必要に応じて乾燥により気化し、除去されると考えられるが、必ずしも前記溶媒や前記水が気化しない場合についても、流動性を有する縮合物が流動性を失うという点で、硬化する現象に含まれるものとする。
【0047】
前記硬化物は、前記金属錯体化合物(触媒)の金属原子が微量残存しており、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析計(株式会社島津製作所製、GCMS−QP1100EX)、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製、3070E)等を用いることにより、硬化物中の前記金属錯体化合物(触媒)における金属の含有量を特定することができる。また、前記金属錯体化合物(触媒)の金属原子は、硬化物中で換算すると1質量%以下、より正確には0.001質量%〜1質量%程度残存している。前記硬化物中に含まれる金属原子は、金属錯体化合物がアルミニウム錯体の場合にはアルミニウム原子であり、金属錯体化合物がジルコニウム錯体の場合にはジルコニウム原子となる。
【0048】
<<硬化物の製造方法>>
前記硬化物の製造方法は、前記硬化物製造用キット、又は前記硬化物製造用組成物を混合して得られた縮合物を目的とする形状の型に入れて成形した後に、20℃以上100℃未満の領域で加熱する第1工程と、100℃以上180℃以下の領域で加熱する第2工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0049】
−第1工程−
前記第1工程は、前記硬化物製造用キット、又は前記硬化物製造用組成物を、20℃以上100℃未満の領域で加熱する工程であり、前記加水分解により生成されたアルコールを気化し、残留溶媒、溶存水蒸気による発泡を防ぐための工程である。なお、前記第1工程により、前記縮合反応を一部進めてもよい。
【0050】
前記第1工程において、硬化物製造用キットを用いて加熱する方法としては、例えば、前記A液と前記B液とを反応容器に一括で仕込んで混合し加熱する方法、一方の液に他方の液を間欠的に又は連続的に添加しながら混合し加熱する方法などが挙げられる。
前記第1工程において、硬化物製造用組成物を用いて加熱する方法としては、例えば、前記ポリオルガノシロキサンと、前記アルキルシリケートと、前記金属錯体化合物と、前記溶媒とを反応容器に一括で仕込んで混合し加熱する方法が挙げられる。
なお、前記混合する方法としては、例えば、ミキサー(株式会社シンキー製 あわとり練太郎)により混合する方法が挙げられ、前記混合した直後から、混合後25℃の条件下での24時間後における、前記硬化物製造用キット又は前記硬化物製造用組成物の粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、可使時間の長さを適切にするという観点から、5mPa・s〜10,000mPa・sが好ましく、100mPa・s〜5,000mPa・sがより好ましい。前記粘度の測定は、振動式粘度計を用い、25℃、湿度35%の条件下で行われるものとする。
【0051】
前記第1工程における加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25℃以上100℃未満が好ましく、30℃以上95℃未満がより好ましく、40℃以上95℃未満が特に好ましい。前記加熱温度が、25℃未満であると、溶媒等が十分蒸発せず、硬化が不十分になることがあり、100℃以下であると、硬化物の形状が悪くなりやすく、また、加熱に要する熱エネルギーが大きく、省エネの観点から好ましくなく、コストアップを招くことがある。一方、前記加熱温度が前記特に好ましい範囲であると、溶媒を十分蒸発させる点で有利である。
【0052】
前記第1工程における加熱時間としては、前記塗布乃至注入した縮合物の厚みなどにより一概には決まらないが、10分間〜24時間が好ましく、30分間〜12時間がより好ましく、1時間〜6時間が特に好ましい。前記加熱時間が、10分間未満であると、溶媒等が十分蒸発せず、硬度、耐熱性が得られないことがあり、24時間を超えると、加熱に要する熱エネルギーが大であり、省エネの観点で好ましくなく、コストアップを招くことがある。一方、前記加熱時間が前記特に好ましい範囲であると、溶媒を十分蒸発させる点で有利である。
【0053】
−第2工程−
前記第2工程は、100℃以上180℃以下の領域で加熱する工程であり、縮合物を硬化させるための工程であり、前記第1工程において低温で硬化させた後、第2工程において高温で追硬化するため、得られる硬化物中に内部応力が発生しにくく、クラックや剥離を防ぐための工程である。
【0054】
前記第2工程における加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100℃以上180℃以下が好ましく、120℃以上170℃以下がより好ましく、140℃以上160℃以下が特に好ましい。前記加熱温度が、100℃未満であると、溶媒の蒸発が不十分になることがあり、180℃を超えると、硬化する際に硬化組成物と共に加熱される部材(例えば、LEDチップ等)が熱により劣化する恐れがあることがある。一方、前記加熱温度が前記特に好ましい範囲であると、得られる硬化物中に内部応力が発生しにくく、クラックや剥離を防ぐことができる点で有利である。
【0055】
前記第2工程における加熱時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10分間〜24時間が好ましく、30分間〜12時間がより好ましく、1時間〜6時間が特に好ましい。前記加熱時間が、10分間未満であると、硬化ムラが生じることがあり、24時間を超えると、硬化物がもろくなることがある。一方、前記加熱時間が前記特に好ましい範囲であると、得られる硬化物中に内部応力が発生しにくく、クラックや剥離を防ぐことができる点で有利である。
【0056】
−その他の工程−
前記その他の工程としては、上述の加熱工程の前に、前記縮合物を適応させる発光素子の形状に応じて塗布及び/又は注入などを行って成型する工程、上述の加熱工程の後に、得られた半導体発光デバイス用封止物に対し必要に応じて各種の後処理する工程などが挙げられる。
【0057】
前記成型する工程における塗布方法としては、例えば、スプレーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、スピンコート法などが挙げられる。
前記成型する工程における注入方法としては、例えば、圧力注入法、インクジェット法などが挙げられる。
【0058】
前記後処理する工程としては、例えば、モールド部との密着性の改善のための表面処理する工程、反射防止膜の作製する工程、光取り出し効率向上のための微細凹凸面の作製する工程などが挙げられる。
【0059】
本発明の硬化物は、前記硬化物製造用キット、及び前記硬化物製造用組成物を用いて形成されるものであり、前記硬化物の形成時に大気で長期開放しても、空気中の水分による変質が生じず、硬化安定性が高く、透明性に優れるため、半導体発光デバイス封止物として好適に用いられる。
【0060】
(半導体発光デバイス)
本発明の半導体発光デバイスは、半導体発光デバイス封止物として、前記硬化物を含み、更に必要に応じてその他の構成を含む。
【0061】
ここで、図1を参照して、本発明の半導体発光デバイスの一例について説明する。
図1に示すように、本発明の半導体発光デバイスは、発光素子を実装するためのパッケージ4と、LEDチップからなる発光素子2と、ボンディングワイヤ1と、発光素子2を熱乃至ガスから保護するための硬化物(封止物)3とを備えている。
【0062】
前記パッケージ4としては、発光素子2を実装できる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、材質が、セラミックス製のもの、形状が、円形の凹み部を有するものなどが挙げられ、更にパッケージの内側にヒートシンクがはめ込まれていてもよい。前記パッケージとしては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、KD−LA6F70、KD−V93B95−B(京セラ株式会社製)などが挙げられる。
【0063】
前記発光素子2としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、紫外から赤外域までどのような波長の光を発するものを用いてもよく、例えば、窒化ガリウム系のLEDチップが挙げられる。前記LEDチップとしては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、サファイア及び窒化ガリウム(GaN)系の青色LEDチップ(Genelite製)が挙げられる。
前記発光素子2の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記パッケージ4に、シリコーン系ダイボンド材で固定され、金製のボンディングワイヤ(不図示)で接続された形態を有してもよい。
【0064】
前記硬化物3としては、例えば、前記縮合物を注射針、マイクロピペットなどを用いて封止部内に滴下して成型を行い、次いで、前述の第1工程及び第2工程により前記縮合物を硬化させることによって作製する。
前記縮合物の滴下量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記パッケージ4を水平方向から見た時に液面がパッケージ4の上縁と同等の高さとなる量が好ましい。
【0065】
本発明の半導体発光デバイスは、硬化物3を備えているため、発光装置の光耐久性、熱耐久性を向上させることができる。また、硬化物3にクラックや剥離が起きにくく、黄変による着色劣化もなく、短波長においても優れた透明性を有することが可能となる。更に、硬化物3中に泡が入ること(泡不良)がないため、光色の均一性に優れ、半導体発光デバイス間の光色ばらつきもほとんどなく、発光素子2の光の外部への取り出し効率を従来に比べて高めることができる。
【実施例】
【0066】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0067】
(製造例1)
<アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンの製造>
窒素雰囲気中で末端シラノール基PDMS(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名「XF3905」、粘度700mm/s)300gにエチルシリケートオリゴマー(多摩化学工業株式会社製、シリケート45)40gを混合して、140℃に加熱し、そのまま6時間反応させることで、下記一般式(1)−1で表されるエトキシシラン変性ポリジメチルシロキサンを調製した。下記一般式(1)−1で表される全てのアルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンを混合してなる混合物を調製した。
【化12】

ただし、前記一般式(1)−1におけるmは、8〜10の整数を表し、nは、180〜220の整数を表す。
【0068】
(実施例1〜15及び比較例1〜6)
<硬化物製造用キットを用いた硬化物の製造>
硬化物製造用キットとして、表1に示す各材料を混合して得られたA液と、表2に示す各材料を混合して得られたB液とを用いた。なお、表1中に記載のアルコキシシラン変性ポリジメチルシロキサンは、製造例1で製造したものを使用した。
ここで、前記A液中に含まれる各材料の混合は、10分間振とうさせて十分に混ざり合わせることで行い、前記B液中に含まれる各材料の混合は、撹拌子を入れてスターラーで撹拌させながら室温で60分間行った。また、前記触媒の溶解状態は、30分間静置後に底に触媒が目視で確認できた場合に「非溶解」と判断し、確認できなかった場合に「溶解」と判断した。
【0069】
前記A液と前記B液とをこの順にガラスバイアルに添加して前記ガラスバイアル内でよく振とうさせた後、ミックスローター(アズワン社製、MR−5)を用いて15分間混合することにより混合物を調製した。得られた混合物を四フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシビニルエーテル共重合樹脂(PFA)製シャーレ(アズワン社製、PFAシャーレ)に液の厚みが1.0mm程度になるように分注し、加熱炉(ヤマト科学株式会社製、DK340S)にて、85℃で4時間加熱した後に、150℃で2時間加熱することにより硬化物を製造した。
なお、前記硬化物における金属錯体の金属元素の含有量が1質量%以下であることは、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製、3070E)を用いて確認した。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
(実施例16〜21及び比較例7)
<硬化物製造用組成物を用いた硬化物の製造>
硬化物製造用組成物は、表3に示す各材料を混合して得られた溶液を容器に添加して振とうさせた後、ミックスローター(アズワン社製、MR−5)を用いて15分間混合することにより調製した。前記触媒の溶解状態は、30分間静置後に底に触媒が目視で確認できた場合に「非溶解」と判断し、確認できなかった場合に「溶解」と判断した。なお、表3中に記載のアルコキシシラン変性ポリジメチルシロキサンは、製造例1で製造したものを使用した。
【0073】
前記硬化物製造用組成物を四フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシビニルエーテル共重合樹脂(PFA)製シャーレ(アズワン社製、PFAシャーレ)に液の厚みが1.0mm程度になるように分注し、加熱炉(ヤマト科学株式会社製、DK340S)にて、85℃で4時間加熱した後に、150℃で2時間加熱することにより硬化物を製造した。
なお、前記硬化物における金属錯体の金属元素の含有量が1質量%以下であることは、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製、3070E)を用いて確認した。
【0074】
【表3】

【0075】
なお、表1、表2、及び表3に示す各材料は、表4に記載の市販品を用いた。
【0076】
【表4】

【0077】
(評価)
実施例1〜21及び比較例1〜7で製造した硬化物について、以下のように評価した。各種評価の結果を表5に示す。
【0078】
<硬化安定性>
大気で長期開放した場合に、空気中の水分により変質することなく硬化安定性に優れるか否かを評価するために、前記硬化物の形成時に水を添加して硬化物安定性を試験した。
具体的には、実施例1〜15及び比較例1〜6で調製した硬化物製造用キットにおける前記B液に4質量%の水を添加した後、前記A液と混合して加熱硬化して得られた硬化物の硬化安定性について下記評価基準により評価した。また、実施例16〜21及び比較例7で調製した硬化物製造用組成物に4質量%の水を添加した後、混合して加熱硬化して得られた硬化物の硬化安定性について下記評価基準により評価した。
また、実施例及び比較例で得られた硬化物の弾性率についても併せて測定を行い、硬化安定性について評価した。
[評価基準]
◎:支持膜を形成し、かつ弾性率が1.50MPa以上
○:支持膜を形成し、弾性率が1.50MPa以下
△:支持膜の一部が硬化されていない、又は同処方同条件で支持膜を形成させても、支持膜を形成できる場合と形成できない場合がある
×:全く硬化せずゾル液のまま
【0079】
<透明性>
大気で長期開放した場合に、空気中の水分により白濁することなく透明性に優れた硬化物を形成することができるか否かを評価するために、前記硬化物の形成時に水を添加せずに形成した硬化物の硬化直後における透過率、及び前記硬化物の形成時に水を添加して形成した硬化直後における透過率に加え、両者の透過率の差(透明性)を試験した。
前記硬化物の形成時に水を添加せずに形成した硬化物の硬化直後における透過率として、実施例1〜15及び比較例1〜6で調製した硬化物製造用キットを用いて得られた硬化物(厚み:1.0mm)の硬化直後の透過率を温度25℃、湿度50%RHの条件にて測定した。また、実施例16〜21及び比較例7で調製した硬化物製造用組成物を用いて得られた硬化物(厚み:1.0mm)の硬化直後の透過率を温度25℃、湿度50%RHの条件にて測定した。
そして、前記硬化物の形成時に水を添加して形成した硬化直後における透過率として、実施例1〜15及び比較例1〜6で調製した硬化物製造用キットにおける前記B液に温度25℃、湿度50%RHの条件にて4質量%の水を添加した後、前記A液と混合して加熱硬化して得られた硬化物(厚み:1.0mm)の透過率を測定した。また、実施例16〜21及び比較例7で調製した硬化物製造用組成物に温度25℃、湿度50%RHの条件にて4質量%の水を添加した後、混合して加熱硬化して得られた硬化物(厚み:1.0mm)の透過率を測定した。なお、前記硬化物の透過率の測定は、紫外可視分光装置(日本分光社製、製品名「V−560」、測定波長:450nm)を用いて行った。
前記硬化物の透明性として、水を添加せずに形成した硬化物の硬化直後における透過率と、水を添加して形成した硬化直後における透過率との差を下記評価基準により評価した。
[評価基準]
◎:水無添加時の透過率が90%超で、水添加時との透過率の差が20%未満
○:水無添加時の透過率が90%超で、水添加時との透過率の差が20%以下
△:水無添加時の透過率が90%以下で、水添加時との透過率の差が20%未満
×:水無添加時の透過率が90%以下で、水添加時との透過率の差が20%以下
【0080】
【表5】

【0081】
以上より、実施例における硬化物製造用キット及び硬化物製造用組成物を用いた硬化物は、その硬化時に大気で長期開放しても空気中の水分により、変質することなく硬化安定性に優れ、白濁することなく透明性に優れることがわかった。また、前記硬化物を半導体発光デバイスの封止物として用いることにより、光学特性に優れた半導体発光デバイスとすることができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の硬化物製造用キット及び硬化物製造用組成物を用いてなる硬化物は、特に半導体発光デバイスの封止物として有用であり、短波長においても優れた透明性を有することから、ディスプレイ材料、光記録媒体材料、光学機器材料、光部品材料、光ファイバー材料、光・電子機能有機材料、半導体集積回路周辺材料等の用途にも、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0083】
1 ボンディングワイヤ
2 発光素子(LEDチップ)
3 硬化物(封止材)
4 パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合して使用する硬化物製造用キットであり、少なくともシラノール基を有するポリオルガノシロキサン及びアルキルシリケートを脱アルコール反応させて得られるアルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンを含むA液と、少なくとも金属錯体化合物と溶媒とを含むB液と、を有することを特徴とする硬化物製造用キット。
【請求項2】
アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンのA液における含有量が、10質量%〜100質量%である請求項1に記載の硬化物製造用キット。
【請求項3】
金属錯体化合物のB液における含有量が、0.05質量%〜7.5質量%である請求項1から2のいずれかに記載の硬化物製造用キット。
【請求項4】
金属錯体化合物の中心金属が、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンの少なくともいずれかである請求項1から3のいずれかに記載の硬化物製造用キット。
【請求項5】
金属錯体化合物が、アルミニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナート、及びチタンアセチルアセトナートの少なくともいずれかである請求項1から4のいずれかに記載の硬化物製造用キット。
【請求項6】
シラノール基を有するポリオルガノシロキサンが、下記一般式(2)で表される請求項1から5のいずれかに記載の硬化物製造用キット。
【化1】

ただし、前記一般式(2)中、Rは、互いに、同一であってもよいし、異なってもよく、フッ素を含まない有機基を表す。また、nは、1以上の整数を表す。
【請求項7】
アルキルシリケートが、下記一般式(3)で表される請求項1から6のいずれかに記載の硬化物製造用キット。
【化2】

ただし、前記一般式(3)中、Rは、互いに、同一であってもよいし、異なってもよく、アルコキシ基、又はフッ素を含まない1価の有機基を表す(ただし、Rのうちの少なくとも1つはアルコキシ基である)。また、nは、1以上の整数を表す。
【請求項8】
アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンが、下記一般式(1)−1で表される請求項1から7のいずれかに記載の硬化物製造用キット。
【化3】

ただし、前記一般式(1)−1中、mは、8〜10の整数を表し、nは、180〜220の整数を表す。
【請求項9】
少なくともシラノール基を有するポリオルガノシロキサン及びアルキルシリケートを脱アルコール反応させて得られるアルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンと、金属錯体化合物と、溶媒とを含むことを特徴とする硬化物製造用組成物。
【請求項10】
アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンの含有量が、15質量%〜90質量%である請求項9に記載の硬化物製造用組成物。
【請求項11】
金属錯体化合物の含有量が、0.005質量%〜0.7質量%である請求項9から10のいずれかに記載の硬化物製造用組成物。
【請求項12】
金属錯体化合物の中心金属が、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンの少なくともいずれかである請求項9から11のいずれかに記載の硬化物製造用組成物。
【請求項13】
金属錯体化合物が、アルミニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナート、及びチタンアセチルアセトナートの少なくともいずれかである請求項9から12のいずれかに記載の硬化物製造用組成物。
【請求項14】
シラノール基を有するポリオルガノシロキサンが、下記一般式(2)で表される請求項9から13のいずれかに記載の硬化物製造用組成物。
【化4】

ただし、前記一般式(2)中、Rは、互いに、同一であってもよいし、異なってもよく、フッ素を含まない有機基を表す。また、nは、1以上の整数を表す。
【請求項15】
アルキルシリケートが、下記一般式(3)で表される請求項9から14のいずれかに記載の硬化物製造用組成物。
【化5】

ただし、前記一般式(3)中、Rは、互いに、同一であってもよいし、異なってもよく、アルコキシ基、又はフッ素を含まない1価の有機基を表す(ただし、Rのうちの少なくとも1つはアルコキシ基である)。また、nは、1以上の整数を表す。
【請求項16】
アルコキシシラン変性ポリオルガノシロキサンが、下記一般式(1)−1で表される請求項9から15のいずれかに記載の硬化物製造用組成物。
【化6】

ただし、前記一般式(1)−1中、mは、8〜10の整数を表し、nは、180〜220の整数を表す。
【請求項17】
請求項1から8のいずれかに記載の硬化物製造用キット、又は請求項9から16のいずれかに記載の硬化物製造用組成物を用いて形成されることを特徴とする硬化物。
【請求項18】
請求項1から8のいずれかに記載の硬化物製造用キットを半導体発光デバイスの封止物の形成に使用することを特徴とする半導体発光デバイス封止物の製造用キット。
【請求項19】
請求項9から16のいずれかに記載の硬化物製造用組成物を半導体発光デバイスの封止物の形成に使用することを特徴とする半導体発光デバイス封止物の製造用組成物。
【請求項20】
半導体発光デバイスの封止物として請求項17に記載の硬化物を備えることを特徴とする半導体発光デバイス。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−255050(P2012−255050A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127545(P2011−127545)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】