説明

神経学的に活性な化合物

1位および3位に窒素原子、4位にカルボキシ基ならびに8位にヒドロキシ基を有する二融合6員環を含む神経学的に活性な複素環式化合物であって、一方の環が芳香性である化合物。これらの化合物の調製方法および薬剤または獣医用薬剤としての、特に神経学的状態の治療のための、より具体的にはアルツハイマー病などの神経変性状態の治療のためのその使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経学的に活性な化合物 、その調製方法、および薬剤または獣医用薬剤としてのその使用方法に関するものであり、特に神経学的状態の治療のため、より具体的にはアルツハイマー病などの神経変性状態の治療のための使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景
本明細書で引用される、あらゆる特許または特許出願を含め、全ての参照文献は、参照により本明細書に組み入れられる。いずれの参照文献も先行技術を構成するとは認められない。参照文献の考察はそれらの著者らが主張することを記述しており、出願人は引用文書の正確性および妥当性に意義を唱える権利を保有する。いくつかの先行技術の刊行物が本明細書において参照されるが、この参照は、これらの文献のいずれもオーストラリアにおいてまたはその他任意の国において当技術分野における共通の一般知識の一部を形成することを認めるものではないことが明確に理解されると考えられる。
【0003】
寿命は各種で生物学的に定められていると考えられており、ヒトの寿命の長さは、はっきりとは分からないが、最大で120年までであると考えられる。平均寿命が今世紀に著しく上昇したため、高齢者は人口の増加部分であり、高齢者の保健医療の必要性が数十年の間増加し続けることになると考えられる。
【0004】
正常な老化は、脳細胞の萎縮および/または死滅に起因しうるヒト脳の質量および容量の穏やかな減少を特徴とするが、これらの変化は神経変性状態で倒れた患者の脳では遥かに深刻である。これらの状態の大半は散発性(すなわち、遺伝子の突然変異によらない)で原因不明であるが、多数の遺伝子における何百もの異なる突然変異がいくつかの神経変性状態の家族性(遺伝性)変異体を惹起することが示されている。これらの突然変異を保持する数十個またはそれ以上の遺伝子の多くは、まさにこの10年間で神経変性状態の遺伝的根拠を究明する探求において発見された。神経変性状態は、特定の脳領域の進行性変性(すなわち、神経細胞の機能不全や死滅)のため、長期間にわたって脳が正常に機能した後に次第に進行する。疾患症状の発現は、神経細胞の喪失が患部の脳領域により行われる持続的機能(例えば、記憶、運動)の「閾値」を越える際に起きるため、脳変性の実際の始まりは臨床的発現の何年も前になる場合がある。
【0005】
認知症をもたらす神経学的状態では知的能力およびより高度な統合認知能力が徐々に損なわれ、日常生活の活動が妨げられるようになる。高齢者人口における認知症の正確な罹患率は知られていないが、恐らく65歳を超える人口の15%であり、5%が重度で10%が軽度から中度の認知症であると考えられる。重度の認知症の罹患率は65歳で1%から85歳で45%まで増加する。認知症には多数の原因があるが、アルツハイマー病(AD)は65歳を超える認知症患者の50%を占める。
【0006】
ADは脳の主要な変性疾患である。これは記憶、思考、理解、計算、言語、学習能力および判断などの認知機能の進行的衰退により特徴づけられる。これらの衰退が個人の日常生活動作を妨げるのに十分な場合に認知症と診断される。ADは潜伏性の発症を示し、緩慢な悪化を伴う。この疾患は、加齢による通常の認知機能の衰退とは明確に区別される必要がある。通常の衰退はずっと少なくずっと緩やかであり、より軽度の障害を引き起こす。ADの発症は普通65歳以後であるが、もっと早期の発症も珍しくない。年齢が進むにつれ、罹患率は急速に増加する(5歳毎におよそ倍になる)。人口の平均寿命が上昇しているので、このことは、この疾患を抱えて生存する個体の総数に対し明らかに関係がある。
【0007】
ADの認知症の病因は不明である。いくつかのAD型については遺伝的な素因の証拠がかなりあり(St George-Hyslop, 2000に概説されている)、ApoEのある種のイソ型の発現もADのより高い危険性と関連している(Corder et al., 1993;Czech et al 1994)。アルミニウムの有毒な蓄積がADの病原因子として示唆されたが、この仮説は現在ほとんど破棄されている。AD患者の脳には、β-アミロイドタンパク質(Aβ)を含む異常な沈着物が見られる。
【0008】
Aβはある種の神経変性疾患を患う個体の脳に存在することが知られているものの、それが潜在的な疾患過程の徴候であるのか、または実際にこの疾患の病因に関与するものであるのかは知られていない。例えば、Aβ沈着物は正常な脳防御機構を示すものであり、この機構のなかで脳はAβを隔離しようとするのではないかと考える著者もいる。このような沈着物が正常な個体の脳に存在することがあるからである。脳内に神経原線維変化は存在するが、アミロイドプラークは存在しないタウタンパク質の突然変異が存在しており、この状態はタウオパシーとして知られている。
【0009】
AD療法に対し提案されているアプローチの1つは、脳内でのAβの産生を阻害することである。BACE1およびγ-セクレターゼによるAPPのタンパク質分解切断が完全長のAβを作出し、これが細胞から放出される(Nunan and Small, 2000)。したがってBACE1またはγ-セクレターゼのいずれかの阻害剤は治療的に価値があるとすることができる。または、いくつかの研究によって、コレステロールがAβの放出を左右できることが示されている(Simons et al., 1998;Hartmann, 2001;Fassbender et al., 2001;Frears et al., 1999;Friedhoff et al., 2001)。しかしながら、コレステロール値を低下させることの価値に関しては当技術分野において意見の相違があり、コレステロールが実際に有益であると考える研究者もいる。例えば、Jiら(2002)により、コレステロールとのAβの結合は、Aβのオリゴマー形成を阻害することでAβの毒性を抑制する可能性があることが示唆されている。
【0010】
別のアプローチでは、Aβアミロイド単量体を作出するアミロイド前駆体タンパク質(APP)のタンパク質分解プロセシングを解明することにより、見込みのあるいくつかの治療標的が可能とされうることが提唱されており(Shearman et al., 2000;Sinha et al., 1999)、このアプローチは臨床開発の初期段階にある。Aβを用いた免疫化によって脳からAβを排除しようとする試みは、ADのトランスジェニックマウスでは効果的であった(Schenk et al 1999)が、著しい副作用を伴うことが認められている(Brower, 2002)。
【0011】
アミロイド様原繊維の沈着はその他の神経変性疾患においても重要でありうることも示唆されている。これらの疾患にはパーキンソン病、レヴィー小体の形成を伴う認知症、多系統萎縮症、ハレルフォルデン・スパッツ病および、びまん性のレヴィー小体病が含まれる。
【0012】
ADの病因について矛盾する理論の1つは、その原因となる段階がAβアミロイドタンパク質の脳内生合成と蓄積の経路内にあるということである(Selkoe, 2001;Beyreuther et al., 2001;Bush, 2001による最近の概説を参照のこと)。しかしながら、今日まで、この経路を標的にする薬物または薬剤で、この病気の臨床的発現の緩和に対しまたはアルツハイマー病を含む、神経変性疾患と関連する認知機能の低下を抑制するうえでもしくは改善するうえで持続的な効果を有することが証明されたものはない。
【0013】
さらなる仮説は、ADが、一つには銅および亜鉛、つまり最も症状が重い領域に豊富に存在する金属イオンの過剰結合による、Aβアミロイドの有毒な蓄積によって惹起されるというものである。さらにZn2+とCu2+イオンがAβと相互作用する際に、原繊維やプラーク中へのAβの凝集が起こることが示唆されており(Atwood et al., 1998)、シナプスのZn2+が不足した動物から得られた最近のデータによって確認されている(Lee et al., 2002)。酸化還元的に活性なCu2+-Aβ相互作用がO2からH2O2を作出しうることも示唆された(Huang et al., 1999)。Cu2+とZn2+の両方がAβと脂質膜との相互作用に影響を及ぼすことが示された(Curtain et al., 2001)。
【0014】
脳は金属イオンを濃縮する器官であり、最近の証拠から、金属ホメオスタシスの崩壊が加齢に伴う様々な神経変性疾患において決定的な役割を果たすことが示唆されている。これらの疾患の共通する特徴としては、異常に折り畳まれたタンパク質の沈着(各疾患がその独自の特異的アミロイドタンパク質を有する)および酸化的ストレスの結果としての多大な細胞の損傷が挙げられる。実際に、現在、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、プリオン病、例えば、クロイツフェルトヤコブ病(CJD)、感染性海綿状脳症(TSE)、白内障、ミトコンドリア病、パーキンソン病およびハンチントン病などの、アミロイド形成性の神経疾患の根底にある共通の特徴として金属化学反応が浮かび上がるというデータが急速に蓄積されているところである。このような事例では、特定のタンパク質の病的凝集は遷移金属および市販の還元剤の存在により類型化される生理学的環境における異常な酸化還元活性により促進される[Bush, 2000 (Curr Opin Chem Biol. 2000 Apr;4 (2): 184-91)]。
【0015】
抗生物質であるヨードクロロヒドロキシキノリン[クリオキノール(CQ)としても知られる]を用いたADの治療の方法は、P. N. Geromylatos S. A.による米国特許第5,994,323号および同第6,001,852号の中でならびにBushらによる米国特許出願第09/972,913号の中で開示され主張されている。CQは1970年に抗生物質としての使用が中止された。これは長期間にわたっておよび恐らくは当時推奨されていたものよりも高い用量でその薬物を服用したと考えられる患者で、1960年代に、日本においてのみ観察された珍しい神経学的症候群である亜急性脊髄視神経障害(SMON)との関連性があるためである(Shiraki, 1975)。しかしながら、最近の証拠から、SMONが例外的に脆弱な集団での過剰使用に伴うビタミンB12欠乏によって引き起こされており、したがって臨床的状況における研究用に復権できる可能性もあることが示唆されている(Yassin et al., 2000;Bush and Masters, 2001)。
【0016】
しかしながら、GeromylatosおよびBushの特許には、動物モデルでのまたはヒトでのインビボの結果は提示されていない。米国特許第5,994,323号はCQおよびビタミンB12を含む組成物、ならびにCQの「有害な副作用を抑制しながらCQ投与に応答する疾患または障害」の治療のためのその使用方法について開示している。これらの疾患にはADが含まれる。米国特許第6,001,852号は、好ましくはビタミンB12とともに、CQを用いたADの治療の方法について開示している。米国特許第5,994,323号と米国特許第6,001,852号ではいずれも1日当たり10〜750 mgの投与量が提案されており、米国特許第5,994,323号では治療が長期間にわたる場合、CQは1回に最大で3週間までで、その後1〜4週間の「洗い流し」期間をおいて断続的に投与されるべきであると推奨されている。
【0017】
米国特許出願第09/972,913号では、CQはAβ沈着物を解離させるその能力について専ら言及されている。その他の神経毒性機構については議論されていない。General Hospital CorporationによるPCT/US99/05291には、アミロイドプラークの溶解およびアミロイドプラーク形成の阻害を促進するための特異的な銅および亜鉛のキレート剤と組み合せたCQの使用方法ならびに/またはAβによるROSの産生が開示されている。
【0018】
米国特許第6,001,852号は同様に、CQおよびビタミンB12を含む組成物を、パーキンソン病の治療に利用できることを示唆している。しかしながら、これに関連して、CQは主に黒質からの鉄の除去を介して作用することが示唆されている。
【0019】
AD治療におけるCQの効能は、CNSに侵入し、その後に遷移金属Cu、ZnおよびFeを各種のAβ体から隔離し、それによりAβの毒性を低下させ、排除のためにAβを遊離させるその能力に依存する。CQの有効性は、その経口による生体利用性を制限してしまうその水溶性の低さによって制約される。CQはかなりの抱合体代謝を受けることや上述したように毒性歴を有することも知られている。CQが二座金属リガンドであるという事実から、捕捉されるあらゆる金属イオンに対し少なくとも2分子の参加が必要になる。
【発明の開示】
【0020】
概要
本発明はタンパク質と金属との間の異常な反応によって特徴づけられるものを含め、神経学的状態を治療する手段を提供する。
【0021】
国際特許公報WO2004/031161は、1位に窒素および8位にヒドロキシ基またはメルカプト基を有する二融合6員環を持つ複素環式化合物であって、少なくとも一方の環が芳香性である複素環式化合物について記述している。これらの化合物は薬剤または獣医用薬剤として、特に神経学的状態の治療に、より具体的にはアルツハイマー病などの神経変性状態の治療に有用である。
【0022】
本発明者らは今回、以下の特性の1つまたは複数の集約的な最適化を通じ、1位および3位に窒素原子、4位にカルボキシ基ならびに8位にヒドロキシ基を有する二融合6員環を持つ複素環式化合物であって、両環が芳香性である複素環式化合物を開発した:
(a) 金属のキレート化(以下に定義する);
(b) 水溶性;
(c) 細胞毒性の低減;
(d) アミロイド分散特性;
(e) CNS侵入に適した膜透過性;および
(f) 代謝安定性。
【0023】
これらの化合物は国際特許公報番号2004/031161の包括的な範囲の中に入るが、その中に具体的には開示されておらず、能動輸送を通じてCNSで濃縮される治療例を含み、その金属キレート特性に加え場合によっては金属キレート特性の増強をもたらす抗酸化活性を含み、8-ヒドロキシ部分をマスクして、CNS侵入を促進し血液脳関門(BBB)の内面に存在する公知のエステラーゼ活性を利用するプロドラッグ戦略を実証する。
【0024】
いずれかの理論により束縛されることを望むわけではないが、2位および3位の置換基の性質はプラーク脱凝集の促進に重要でありうると考えられている。これらの置換基は3Dという点で平面的であることが好ましい。環系の平面置換基は遊離リガンドと金属キレートの両方を可能にして、より効率的にプラークと相互作用し、プラークを脱凝集する。
【0025】
本発明によれば、以下の式Iの化合物、その塩、水和物、溶媒和物、誘導体、プロドラッグ、互変異性体および/または異性体が提供される。

式中、
R2はHまたはCH2NR1R4であり、R1およびR4は独立してH、置換されてもよいC1〜6アルキルおよび置換されてもよいC3〜6シクロアルキルから選択され;
R3はH;置換されてもよいC1〜4アルキル;置換されてもよいC1〜4アルケニル;置換されてもよいC3〜6シクロアルキル;置換されてもよい6員アリールまたはヘテロアリールと縮合されてもよい、置換されてもよい6員アリール;置換されてもよい6員アリールまたはヘテロアリールと縮合されてもよい、置換されてもよい飽和または不飽和5員または6員N含有ヘテロシクリル;nが1から6の整数であり、かつR6が置換されてもよいC1〜4アルキル、置換されてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されてもよい飽和もしくは不飽和5員もしくは6員N含有ヘテロシクリルまたは置換されてもよい6員アリールである(CH2)nR6;R8およびR9が独立してH、置換されてもよいC1〜4アルキル、置換されてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されてもよい飽和または不飽和5員または6員N含有ヘテロシクリルおよび置換されてもよい6員アリールであるNR8R9;R10が置換されてもよいC1〜4アルキル、置換されてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されてもよい飽和もしくは不飽和5員もしくは6員N含有ヘテロシクリルまたは置換されてもよい6員アリールであるNHCOR10;R11およびR12が独立してH、置換されてもよいC1〜6アルキル、置換されてもよいC2〜6アルキニルおよび置換されてもよい6員アリールと縮合されてもよい、置換されてもよい5員または6員N含有ヘテロシクリルから選択されるCH2CONR11R12;およびR3が置換されてもよいC1〜6アルキル、ならびにR14が置換されてもよいC1〜6アルキルおよび置換されてもよい6員アリールから選択されるSO2R14から選択され、かつmが1から6である(CH2)mNHR13であり;
R5およびR7は独立してHおよびハロから選択され;
および
XはOまたはSであり、
但し
(i) R2およびR3の少なくとも一方がH以外であり;
(ii) R5およびR7の少なくとも一方がハロであり;ならびに
(iii) XがOであり、R5およびR7がClであり、かつR2がHである場合に、R3はシクロプロピルではない。
【0026】
本発明は同様に、薬剤、好ましくは神経治療薬または神経保護薬、より好ましくは抗アミロイド形成薬としての式Iの化合物の使用方法を提供する。好ましくは、神経学的状態は神経変性状態、より好ましくはアルツハイマー病またはパーキンソン病などの神経変性アミロイドーシスである。
【0027】
式Iの化合物は薬学的にまたは獣医学的に許容される担体と共に薬学的または獣医学的組成物の形態で好都合に投与される。
【0028】
すなわち、本発明はさらに、式Iの化合物および薬学的にまたは獣医学的に許容される担体を含む薬学的または獣医学的組成物を提供する。
【0029】
さらに本発明によれば、その必要性がある被験体への式Iの化合物の有効量の投与を含む、神経学的状態の治療、改善および/または予防の方法が提供される。
【0030】
さらに本発明によれば、神経学的状態の治療、改善および/または予防用の薬物の製造における式Iの化合物の使用方法が提供される。
【0031】
本発明は同様に、神経学的状態の治療、改善および/または予防のための式Iの化合物の使用方法を提供する。
【0032】
本発明はさらに、神経学的状態の治療、改善および/または予防で用いる式Iの化合物を提供する。
【0033】
本発明はさらに、上で定義した式Iの化合物の調製方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:
(a) R5およびR7が上で定義した通りである式V

の保護されてもよい化合物をR3が上で定義した通りであるH2NR3と反応させて、式VII

の保護されてもよい化合物を形成させる段階;
(b) 式VIIの化合物を還元して、式VIII

の保護されてもよい化合物を形成させる段階;
(c) 式VIIIの化合物を環化して、R2がHである式Iの保護されてもよい化合物を形成させる段階;または
(d) R2CHO、R2CO2HまたはRXが置換されてもよいC1〜4アルキルもしくは置換されてもよい6員アリールであるR2C(ORX)の存在下での式VIIIの化合物の環化段階。
【0034】
本発明は同様に、R2がHである上で定義した通りの式Iの化合物の調製方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:
(a) R5およびR7が上で定義した通りである式VI

の保護されてもよい化合物
をアミノ化して、式IX

の保護されてもよい化合物を形成させる段階;および
(b) Lが離脱基であり、RXが上で定義した通りであるR3-LまたはR3OSO2RXと式IXの化合物を反応させる段階。
【0035】
本発明は同様に、R2がHである上で定義した通りの式Iの化合物の調製方法であって、以下の段階を含む方法をさらに提供する:
(a) 上で定義した通りの式VIの保護されてもよい化合物をホルミル化剤と反応させて、式X

の保護されてもよい化合物または式XI

の保護されてもよい化合物
のいずれかを形成させる段階;
(b) R2を含むアシル化剤と式XまたはXIの化合物を反応させて、R2が上で定義した通りである式VII

の保護されてもよい化合物または式XIII

の化合物を形成させる段階;および
(c) R3が上で定義した通りであるH2NR3と式XIIまたはXIIIの化合物を反応させる段階。
【0036】
保護基は、これが存在する場合、上記の方法の任意の適切な段階で除去されてもよいことが理解されると思われる。
【0037】
本発明者らは同様に、R5およびR7の両方がハロである場合に高い収率で後述の式VおよびVIの中間体の前駆物質を調製するより単純な方法を見出した。
【0038】
すなわち、さらに本発明によれば、R5およびR7は上記式Iで定義される通りである、式IV

の化合物の調製方法であって、
式III

の化合物のジアゾ化の段階を含む方法が提供される。
【0039】
式IIIの化合物は、以下の式IIの化合物を還元することによりうまい具合に調製される。

式中、R5およびR7は上記式IVで定義される通りである。
【0040】
式IVの化合物は、以下の式VおよびVIの中間体の調製における前駆物質であり、これを使用して、式IIの化合物を調製することができる。

式中、R5およびR7は上記式IVで定義される通りである。
【0041】
すなわち、本発明は同様に、上で定義した通りの式Vの化合物の調製方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:
(a) 上で定義した通りの式IIIの化合物をジアゾ化して、上で定義した通りの式IVの化合物を形成させる段階;および
(b) 式IVの化合物のニトロ化段階。
【0042】
本発明はさらに、上で定義した通りの式VIの化合物の調製方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:
(a) 上で定義した通りの式IVの化合物をジアゾ化して、上で定義した通りの式Vの化合物を形成させる段階;
(b) 式VIの化合物をニトロ化して、上で定義した通りの式Vの化合物を形成させる段階;および
(c) 式Vの化合物を還元する段階。
【0043】
詳細な説明
本明細書において、言語または必要な含意を表現するため、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」という用語または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変化形は、包括的な意味で使われており、すなわち、記述した特徴の存在を明記するために使われるが、本発明の種々の態様におけるさらなる特徴の存在または追加を除外するために使われるのではない。
【0044】
本明細書で用いられる場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」という単数形は、文脈上明確に別の指示がない限り、複数の局面を含むことに留意しなければならない。すなわち、例えば「化合物」への言及は、単一の化合物、および2つまたはそれ以上の化合物を含む、などである。
【0045】
式Iの好ましい化合物は、以下の式IAの化合物である。

式中、
R5、R7およびXは上記式Iで定義される通りであり;および
R3Aは置換されてもよいC1〜4アルキル;置換されてもよいC1〜4アルケニル;置換されてもよい6員アリールまたはヘテロアリールと縮合されてもよい、置換されてもよい飽和または不飽和5員または6員N含有ヘテロシクリル;nが1から3であり、R6が置換されてもよいC3〜6シクロアルキルまたは置換されてもよい飽和もしくは不飽和5員もしくは6員N含有ヘテロシクリルである(CH2)nR6;R8がHであり、R9がHまたは置換されてもよいC1〜4アルキルまたは置換されてもよい6員アリールであるNR8R9;R10が置換されてもよいC1〜4アルキルまたは置換されてもよい6員アリールであるNHCOR10である。
【0046】
好ましくはR5およびR7はともにハロであり、より好ましくはクロロである。
【0047】
式IAの化合物の実例を以下に示す。




【0048】
式IAの化合物の実例として、化合物1076、1077、1082、1083、1084、1085、1087、1088、1089、1091、1092、1093、1097、1098、1099、1100、1101、1107、1108、1109、1110、1112、1115および1126は3位に、置換されてもよいC1〜4アルキル;置換されてもよいC1〜4アルケニル;置換されてもよい6員アリールと縮合されてもよい、置換されてもよい飽和または不飽和5員または6員N含有ヘテロシクリル、nが1から3であり、R6が置換されてもよいC3〜6シクロアルキルまたは置換されてもよい飽和もしくは不飽和5員もしくは6員N含有ヘテロシクリルである(CH2)nR6;およびR8がHであり、R9がHまたは置換されてもよいC1〜4アルキルまたは置換されてもよい6員アリールであるNR8R9などの、平面置換基を保有する。式IAのこれらの平面化合物のうち、化合物1100および1101は同様に、非常に良好な脱凝集を保有する。
【0049】
式Iの別の好ましい化合物は、以下の式IBの化合物である。

式中、R2、R5、R7およびXは上記式Iで定義される通りである。
【0050】
好ましくはR2は、CH2NR1R4であり、R1およびR4が独立してH、置換されてもよいC1〜6アルキルおよび置換されてもよいC3〜6シクロアルキルから選択される。
【0051】
好ましくはR5およびR7はともにハロであり、より好ましくはクロロである。
【0052】
式IBの実例的な化合物を以下に示す。

【0053】
式IBの実例のどちらも2位に、R1およびR4が独立して置換されてもよいC1〜6アルキルから選択されるCH2NR1R4などの、平面置換基を保有する。化合物1128は同様に、非常に良好な脱凝集を保有する。
【0054】
式Iの化合物のさらなるサブクラスは、以下の式ICの化合物である。

式中、
R5、R7およびXは上記式Iで定義される通りであり;および
R1Cは、R1およびR4が独立してHおよび置換されてもよいC1〜6アルキルから選択されるCH2NR1R4であり;および
R3Cは置換されてもよいC1〜4アルキルである。
【0055】
好ましくはR5およびR7はともにハロであり、より好ましくはクロロである。
【0056】
式ICの実例的な化合物を以下に示す。

【0057】
式Iの化合物の8-ヒドロキシル基をブロックして、プロドラッグ、特にエステルプロドラッグを形成させることができる。8-ヒドロキシは式Iの化合物に対する代謝の主要部位に当たる、つまりグルクロン酸または硫酸塩との抱合により、すぐにでも排泄される親水性の種を生じる。そのような抱合体は恐らく、血液脳関門を通過しない。エステルプロドラッグは式Iの化合物を抱合から保護することができる。血液脳関門と一体化したエステラーゼが次に、その関門の通過中にC8-ヒドロキシを遊離し、CNSでのその役割に向けて化合物を活性化することができる。
【0058】
理論により束縛されることを望むわけではないが、置換基R3およびR5は概ね本発明の化合物のキレート特性において、電子的にまたは立体的に、効果の限界があるものと考えられる。それ故、置換を利用して、細胞毒性ならびに水素結合供与体や受容体の数、親油性(ClogP、ElogPおよびLogD)、溶解性および極性表面積を含む物理化学的特性などのその他のパラメータを調節することができる。これらのパラメータの調節は、化合物の薬物動態プロファイルの最適化に寄与する。置換基R2およびR7は、細胞毒性および物理化学的特性の調節に加えて、その置換基がキレート特性をもたらすならば、活性にも影響を与えることができるものとも仮定される。
【0059】
単独でまたは「置換されてもよいC1〜4アルキル」などの複合語で用いられる「C1〜6アルキル」または「C1〜4アルキル」という用語は、それぞれ1から6個および1から4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素基のことをいう。そのようなアルキル基の実例はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチルまたはヘキシル、好ましくはメチル、エチルまたはプロピルである。
【0060】
本明細書で用いられる「(CH2)n」または「(CH2)m」という用語は、直鎖および分枝鎖の両方を含む。
【0061】
単独でまたは「置換されてもよいC2〜6アルキニル」などの複合語で用いられる「C1〜6アルキニル」という用語は、2から6個の炭素原子を有するおよびさらに1つの三重結合を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素基のことをいう。そのような基の実例はエチニル、1-プロピニル、1-および2-ブチニル、2-メチル-2-プロピニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニルおよび5-ヘキシニルである。
【0062】
単独でまたは「置換されてもよいC3〜6シクロアルキル」などの複合語で用いられる「C3〜6シクロアルキル」という用語は、3から6個の炭素原子を有する飽和炭素環式基のことをいう。そのような基の実例はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシル、好ましくはシクロプロピルである。
【0063】
単独でまたは「置換されてもよい6員アリールと縮合されてもよい、置換されてもよい不飽和または飽和5員または6員N含有ヘテロシクリル基」などの複合語で用いられる「置換されてもよい6員アリールと縮合されてもよい不飽和または飽和5員または6員N含有ヘテロシクリル基」という用語は、少なくとも1個の窒素原子ならびに任意で硫黄および酸素から選択されるその他のヘテロ原子を含む単環式または多環式の複素環基のことをいう。
【0064】
適当な複素環基は、1から4個の窒素原子を含む5員または6員の不飽和ヘテロ単環式基、例えば、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリルまたはテトラゾリル;
ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジノまたはピペラジニルなどの、1から4個の窒素原子を含む5員または6員の飽和ヘテロ単環式基;
インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンゾイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリルまたはテトラゾロピリダジニルなどの、1から5個の窒素原子を含む不飽和縮合複素環基;
オキサゾリル、イソオキサゾリル又はオキサジアゾリルなどの、1から2個の酸素原子および1から3個の窒素原子を含む5員または6員の不飽和ヘテロ単環式基;
モルホニリルなどの、1から2個の酸素原子および1から3個の窒素原子を含む5員または6員の飽和ヘテロ単環式基;
チアゾリルまたはチアジアゾリルなどの、1から2個の硫黄原子および1から3個の窒素原子を含む5員または6員の不飽和ヘテロ単環式基;ならびに
チアゾリジニルなどの、1から2個の硫黄原子および1から3個の窒素原子を含む3から6員の飽和ヘテロ単環式基
などのN含有複素環基を含む。
【0065】
好ましくはヘテロシクリルは、ピラゾリル、ピリジニルもしくはピリミジニルなどの1から3個の窒素原子を含む5員もしくは6員の不飽和ヘテロ単環式基;ピロリジニルもしくはピペラジニルなどの1から4個の窒素原子を含む5員もしくは6員の飽和ヘテロ単環式基;ベンゾイミダゾリルなどの1から5個の窒素原子を含む不飽和縮合複素環基;モルホニリルなどの1から2個の酸素原子および1から3個の窒素原子を含む5員もしくは6員の飽和ヘテロ単環式基;またはチアゾリルなどの、1から2個の硫黄原子および1から3個の酸素原子を含む5員もしくは6員の不飽和ヘテロ単環式基である。
【0066】
単独でまたは「置換されてもよい6員アリール」などの複合語で用いられる「6員アリール」という用語は、6員の複素環式芳香族基のことを意味する。そのようなアリール基の実例はフェニルである。好ましくは、アリールは4-ハロフェニル、より好ましくは4-フルオロフェニルなどの置換されてもよいフェニルである。
【0067】
単独でまたは「置換されてもよい6員ヘテロアリール」などの複合語で用いられる「6員ヘテロアリール」という用語は、1つまたは複数のヘテロ原子を含む6員の芳香族複素環のことを意味する。例の中にはピリジル、ピラジニル、ピリミジニルおよびピリダジニルがあり、これらのそれぞれがメチルまたはメトキシにより置換されてもよい。
【0068】
「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくはフッ素、ヨウ素または塩素、より好ましくは塩素のことをいう。
【0069】
「置換されてもよい」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルデヒド、ハロ、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ハロアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、ベンジルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルケニルオキシ、ハロアリールオキシ、ニトロ、ニトロアルキル、ニトロアルケニル、ニトロアルキニル、ニトロアリール、ニトロヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ベンジルアミノ、ジベンジルアミノ、アシル、アルケニルアシル、アルキニルアシル、アリールアシル、アシルアミノ、ジアシルアミノ、アシルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、アリールスルフェニルオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクルオキシ、ヘテロシクルアミノ、ハロヘテロシクリル、アルキルスルフェニル、アリールスルフェニル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、ベンジルチオ、アシルチオ、リン含有基および同様のものより選択される1つまたは複数の基でさらに置換されてもまたは置換されなくてもよい基のことをいう。任意の置換基はC1-4アルキル、ヒドロキシ、フッ素、C1-4アルコキシまたはC1-4アシルであることが好ましい。
【0070】
「保護基」という用語は、ヒドロキシ、アミノ、カルボニルまたはカルボキシ基などの、特定の官能基を選択条件の下で非反応性とし、後に任意で除去されて官能基を脱マスクしてもよい導入官能基のことをいう。ヒドロキシ保護基は、一時的にヒドロキシ基を非反応性とできるものである。ヒドロキシ保護基とは、一時的にヒドロキシ保護基によって非反応性とされたヒドロキシ基のことをいう。保護されたフェニル基は、OH、NH2などの、付加された反応性の置換基が保護基によって保護されているものであると解釈される。適当な保護基は、その導入および除去の方法と同様、当技術分野において公知であり、Protective Groups in Organic Synthesis, Third Edition, T. W. Greene and P. G. White, John Wiley & Sons, Inc., 1999 (この内容は参照により本明細書に組み入れられる)に記述されている。ヒドロキシ基を保護するために利用できる保護基の例は、シリル基(例えば、トリメチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル)、ベンジル基(例えば、ベンジル、メトキシベンジル、ニトロベンジル)、アルキル基(例えば、メチル、エチル、n-およびi-プロピル、ならびにn-、sec-およびt-ブチル)およびアシル基(例えば、アセチルおよびベンゾイル)を含むが、これらに限定されることはない。
【0071】
脱離基は、例えば、参照により本明細書に組み入れられるJ. March,「Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms and Structure」第4版, 352〜357頁, John Wiley & Sons, New York, 1992に開示されている脱離基などの、任意の適当な公知の種類のものとすることができる。脱離基はハロゲンであることが好ましい。
【0072】
「金属キレート因子」という用語は、本明細書においてその最も広い意味で用いられており、金属原子、好ましくはCu、ZnまたはFeに結合できる2つまたはそれ以上のドナー原子を有する化合物であって、ドナー原子の少なくとも2つが金属原子に同時結合することができ、結果的に生じる金属錯体が金属イオンと生体リガンド錯体のものよりも大きいかまたはそれに等しい熱力学的安定性を有する化合物のことをいう。本発明における神経性疾患の治療としての金属キレート因子の使用は既に知られている「キレート療法」の概念と区別される。「キレート治療」とはウィルソン病、-地中海貧血(thallesemia)および血色素症などの、多量の金属の除去を伴う臨床に関連する用語である。これらの疾患における金属ホメオスタシスの崩壊は、ダムの崩壊に非常に似た壊滅的事象として記述されており、抗し難い問題金属の氾濫をもたらし得る。そのような化合物の作用機構は、多量の金属がキレート物質により隔離され排出により除去されるというものである。比較として、本発明の神経学的状態に関連する金属ホメオスタシスの崩壊は、水漏れする蛇口からの絶え間ない滴により類似しており、十分に長く放置されると、最終的に長期間にわたって局部的な損傷を惹起すると考えられる。本発明の「金属キレート因子」の意図は、毒素の循環が一旦短絡されると内因性浄化過程がより効果的に蓄積アミロイド生成タンパク質に対処できることを目的として、異常な金属-タンパク質相互作用を妨害し、金属の微妙な再配分およびその後の金属分布の正常化を成し遂げることである。
【0073】
式Iの化合物の塩は好ましくは薬学的に許容されるが、薬学的に許容されない塩も同様に、これらが薬学的に許容される塩の調製における中間体として有用であるので、本発明の範囲の中に入ることが理解されると思われる。薬学的に許容される塩の例は、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムおよびアルキルアンモニウムなどの薬学的に許容される陽イオンの塩;塩酸、オルトリン酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸および臭化水素酸などの薬学的に許容される無機酸の酸付加塩;または酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、クエン酸、乳酸、粘液酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トリハロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸およびバレリアン酸などの薬学的に許容される有機酸の塩を含む。
【0074】
さらに、本発明の化合物のいくつかは水または一般的な有機溶媒と溶媒和物を形成することができる。このような溶媒は本発明の範囲内に包含される。
【0075】
好ましくは誘導体は「薬学的に許容される誘導体」である。「薬学的に許容される誘導体」とは、任意の薬学的に許容される塩、水和物、エステル、エーテル、アミド、活性代謝産物、類似体、残基または生物学的にもしくは他の意味で望ましくないものでないその他任意の化合物であって、所望の薬理学的および/または生理学的な効果を誘導する化合物のことを意味する。
【0076】
「プロドラッグ」という用語は、式Iの化合物にインビボで変換される化合物を含むよう本明細書においてその最も広い意味で用いられる。プロドラッグ戦略の利用により、その作用部位、例えば、脳への薬物の送達が最適化される。1つの局面では、この用語は、プロドラッグがBBB、つまりBBB内面のエステラーゼが作用して、エステルを加水分解し式Iの化合物のC8ヒドロキシルを遊離させるBBBを横断するまで、加水分解を抑えるよう設計されたC1-6アルキル部分またはアリールエステル部分の存在のことをいう。第2の局面では、この用語は、抗酸化基、特に3,4,5-トリメトキシフェニル部分またはその誘導体の2位での結合のことをいう。脳を酸化促進性の環境に曝すと、3,4,5-トリメトキシフェニル基はヒドロキシル化されて2-ヒドロキシ-3,4,5-トリメトキシフェニル置換基を生ずるはずであり、そのヒドロキシル基が式Iの化合物のキレート特性を促進するように作用する。
【0077】
「抗酸化剤」という用語は、本明細書においてその最も広い意味で用いられており、毒性のない産物を生成するようにヒドロキシルラジカルなどの反応性酸素種と反応する能力を有する基のことをいう。例としては3,4,5-トリメトキシフェニルおよび3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニルなどのフェノール類、メラトニンなどのインドールアミンならびにフラボノイドが挙げられる。その他の例は、文献(Wright, 2001;Karbownik, 2001;Gilgun-Sherki, 2001)の中で見出すことができる。
【0078】
「互変異性体」という用語は、2つの異性体間の平衡状態で存在できる式Iの化合物を含むよう本明細書においてその最も広い意味で用いられる。このような化合物は2つの原子または基を結びつける結合および化合物中のこれらの原子または基の位置が異なることができる。
【0079】
「異性体」という用語は、本明細書においてその最も広い意味で用いられており、構造異性体、幾何異性体および立体異性体を含む。式Iの化合物は1つまたは複数の不斉中心を持ちうるので、それは鏡像体で存在することができる。
【0080】
本発明の組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体および任意でその他の治療剤とともに化学式Iの少なくとも1つの化合物を含む。各担体、希釈剤、アジュバントおよび/または補形薬は、組成物の他の成分と適合し被験体に有害でないという意味で薬学的に「許容され」なければならない。組成物には経口、直腸、鼻、局所(頬および舌下を含む)、膣または非経口(皮下、筋内、静脈内および皮内を含む)の投与に適したものが含まれる。組成物は、便宜上、投与単位剤形で与えられてもよく、製薬の技術分野において周知の方法により調製されてもよい。このような方法は、1つまたは複数の副成分を構成する担体と活性成分とを結びつける段階を含む。一般に、組成物は液体担体、希釈剤、アジュバントおよび/もしくは補形薬または微細に分割された固体担体あるいは両者と活性成分とを均一におよび密接に結びつけ、必要に応じて生成物を成形することにより調製される。
【0081】
「神経学的状態」という用語は、本明細書においてその最も広い意味で用いられており、神経系の様々な細胞種が神経変性疾患または損傷もしくは暴露の結果として変性したおよび/または損なわれた状態のことをいう。特に、式Iの化合物は、外科的介入、感染、毒性物質への暴露、腫瘍、栄養不足または代謝障害によって神経系細胞への損傷が起きた結果として生じる状態の治療に使用することができる。さらに、式Iの化合物は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、てんかん、薬物乱用もしくは薬物中毒(アルコール、コカイン、ヘロイン、アンフェタミンまたは同様のもの)、脊髄の疾患および/もしくは損傷、ジストロフィーまたは神経網膜の変性(網膜症)などの、神経変性疾患、ならびに糖尿病性神経障害および/または毒素により誘発される末梢性神経障害などの、末梢性神経障害の後遺症の治療に使用することができる。
【0082】
本明細書で用いられる「神経変性疾患」という用語は、ニューロンの統合性が脅かされる異常のことをいう。ニューロンの統合性は、ニューロン細胞が生存の低下を示す場合にまたはニューロンがもはやシグナルを伝播できない場合に脅かされることがある。
【0083】
本発明の化合物で治療できる神経疾患としては、急性間欠性ポルフィリン症;アドリアマイシン誘発性心筋症;AIDS認知症およびHIV-1誘発性神経毒症;アルツハイマー病;筋萎縮性側索硬化症;アテローム性動脈硬化症;白内障;脳虚血;脳性麻痺;脳腫瘍;化学療法誘発性臓器損傷;シスプラチン誘発性腎臓毒症;冠動脈バイパス手術;クロイツフェルト-ヤコブ病および「狂牛」病と関連するその新規の変種;糖尿病性ニューロパシー;ダウン症候群;溺水;てんかんおよび外傷後てんかん;フリードリッヒ運動失調症;前頭側頭型認知症;緑内障;糸球体腎症;血色素症;血液透析;溶血;溶血性尿毒症症候群(ワイル病);出血性脳卒中;ハレルフォルデン-スパッツ病;心臓発作および再潅流傷害;ハンチントン病;レヴィー小体病;間欠性跛行;虚血性脳卒中;炎症性腸疾患;黄斑変性症;マラリア;メタノール誘発性毒症、髄膜炎(無菌性および結核性);運動ニューロン疾患;多発性硬化症;多系統萎縮症;心筋虚血;新生組織形成症;パーキンソン病;周産期仮死;ピック病;進行性核上麻痺;放射線治療誘発性臓器損傷;血管形成術後の再狭窄;網膜症;老人性認知症;統合失調症;敗血症;敗血性ショック;海綿状脳症;くも膜下出血/脳血管けいれん;硬膜下血腫;神経外科を含め、外科手術による外傷;地中海貧血症;一過性脳虚血発作(TIA);外傷性脳損傷(TBI);外傷性脊髄損傷;移植;血管性認知症;ウイルス性髄膜炎;ならびにウイルス性脳炎が挙げられる。
【0084】
さらに、本発明の化合物は同様に、他の治療の効果を増強するために、例えば脳由来の神経増殖因子の神経保護効果を増強するために使われてもよい。
【0085】
本発明は外傷性脳損傷、脊髄損傷、脳虚血、脳卒中(虚血性および出血性)、くも膜下出血/脳血管けいれん、脳腫瘍、アルツハイマー病、クロイツフェルト-ヤコブ病および「狂牛」病と関連するその新規の変種、ハンチントン病、パーキンソン病、フリードリッヒ運動失調症、白内障、レヴィー小体の形成を伴う認知症、多系統萎縮症、ハレルフォルデン-スパッツ病、びまん性レヴィー小体病、筋萎縮性側索硬化症、運動ニューロン疾患、多発性硬化症、致死性家族性不眠症、ゲルストマン・シュトロイスラー・シェインカー病およびアミロイドーシスを伴う遺伝性大脳出血-オランダ型などの急性および慢性の神経疾患を含めて、特に中枢神経系の酸化的損傷を誘発する状態を対象にする。
【0086】
より特定的には、本発明は神経変性アミロイド症の治療を対象にする。神経変性アミロイド症は神経損傷がアミロイドの沈着に起因する任意の状態とすることができる。アミロイドはAβ、シヌクレイン、ハンチンチン、またはプリオンタンパク質を含むが、これらに限定されない種々のタンパク質またはポリペプチド前駆体から形成されることができる。
【0087】
すなわち、その状態は散発性または家族性のアルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、運動ニューロン疾患、白内障、パーキンソン病、クロイツフェルト-ヤコブ病および「狂牛」病と関連するその新規の変種、ハンチントン病、レヴィー小体の形成を伴う認知症、多系統萎縮症、ハレルフォルデン-スパッツ病、ならびにびまん性レヴィー小体病からなる群より選択されることが好ましい。
【0088】
神経変性アミロイド症は、アルツハイマー病またはダウン症候群もしくは家族性アルツハイマー病の数種の常染色体優性型の1つに関連する認知症(St George-Hyslop, 2000に概説されている)などの、Aβ関連状態であることがより好ましい。Aβ関連状態はアルツハイマー病であることが最も好ましい。
【0089】
本発明の全ての局面の特に好ましい態様では、被験体は治療の前に、アルツハイマー病評価スケール(ADAS)-cog試験により判断された場合、認知機能の中等度または重度の障害、例えば25またはそれ以上のADAS-cog値を有する。
【0090】
本発明の化合物および方法は、被験体の認知衰退を遅くするまたは妨げることに加えて、同様に神経変性状態の治療もしくは予防に用いるのに適していてもよく、または神経変性状態の症状の緩和に用いるのに適していてもよい。その化合物は患者が経験する認知衰退の少なくとも部分的な好転を提供することができてもよい。これらの方法および化合物は、神経変性状態になりやすい素因の危険性が増していると同定された被験体に、または軽度認知障害もしくは最小限度の進行性認知障害などの、認知衰退の前臨床的徴候を示す被験体に施された場合、認知衰退の速度を遅くするまたは低減する効果に加えて、臨床症状の発症を予防または遅延することができる場合がある。
【0091】
現在、アルツハイマー病およびその他の認知症は通常、1つまたは複数の警戒すべき症状が現れるまで診断されない。これらの症状は、最近になって米国神経学会により定義された軽度認知障害(MCI)として知られる症候群を構成し、記憶障害を有するが他の点では十分に機能し認知症の臨床基準(Petersen et al., 2001)を満たさない個体の臨床状態のことをいう。MCIの症状は以下を含む:
(1) 職業技能に影響を及ぼす記憶喪失
(2) 慣れ親しんでいる仕事を行うのが困難
(3) 言語障害
(4) 時間および場所に関する見当識障害(迷子になる)
(5) 誤った判断または判断力の低下
(6) 抽象的思考の障害
(7) 物の置き忘れ
(8) 気分または挙動の変化
(9) 人格の変化
(10)自発性欠如。
【0092】
MCIはミニメンタル・ステート試験(Mini Mental Status Exam)および記憶障害検査(Memory Impairment Screen)などの、従来の認知スクリーニング試験、ならびに神経心理学的なスクリーニングバッテリーを用いて検出することができる。
【0093】
本明細書で用いられる「被験体」という用語は、薬学的に活性な作用物質を用いた治療を要する疾患または状態を患う任意の動物のことをいう。被験体は哺乳動物、好ましくはヒトであってもよく、または家畜動物もしくは愛玩動物であってもよい。本発明の化合物はヒトの医療に用いるのに適していることが特に企図される一方で、イヌおよびネコなどの愛玩動物、ならびにウマ、ポニー、ロバ、ラバ、ラマ、アルパカ、ブタ、ウシおよびヒツジなどの家畜動物、または霊長類、ネコ科、イヌ科、ウシ科および有蹄類などの動物園の動物の治療を含めて、動物治療にも適用することができる。
【0094】
適当な哺乳動物には霊長目、齧歯目、ウサギ目、クジラ目、食肉目、奇蹄目および偶蹄目の構成員が含まれる。奇蹄目および偶蹄目の構成員はその類似の生態および経済的重要性から特に好ましい。
【0095】
例えば、偶蹄目は次の9つの科を通じて分布する約150の生物種を含む: ブタ(イノシシ科)、ペッカリー(ペッカリー科)、カバ(カバ科)、ラクダ(ラクダ科)、マメジカ(マメジカ科)、キリンおよびオカピ(キリン科)、シカ(シカ科)、プロングホーン(プロングホーン科)、ならびにウシ、ヒツジ、ヤギおよびアンテロープ(ウシ科)。これらの動物の多くは種々の国々で給餌動物として用いられる。より重要なことには、ヤギ、ヒツジ、ウシ、およびブタなどの経済的に重要な動物の多くは、非常に類似した生態を有し、高度のゲノム相同性を共有する。
【0096】
奇蹄目はウマおよびロバを含み、これらはどちらも経済的に重要であり近縁である。実際に、ウマとロバが異種交配することは周知である。
【0097】
本明細書で用いられる「治療的に有効な量」という用語は、所望の治療反応を得るのに、例えば、神経学的状態を治療する、改善するまたは予防するのに有効な本発明の化合物の量のことを意味する。
【0098】
具体的な「治療的に有効な量」は、治療される特定の状態、被験体の健康状態、治療される被験体の種類、治療の継続期間、併用療法(もしあれば)の性質、ならびに利用される特定の剤形および化合物またはその誘導体の構造のような要因によって明らかに変化すると考えられる。
【0099】
本発明の化合物をさらにその他の薬物と組み合せて、有効な組み合せを提供することができる。この組み合せが式IまたはIIの化合物の活性を消失させない限り、薬学的に活性な作用物質の化学的に適合する任意の組み合せを含むよう意図される。本発明の化合物およびその他の薬物は、別々に、連続的にまたは同時に投与されてもよいことが理解されると思われる。
【0100】
その他の薬物は、例えば、その状態がβ-アミロイド関連状態、特にアルツハイマー病である場合、アセチルコリンエステラーゼ活性部位の阻害剤、例えばフェンセリン、ガランタミン、もしくはタクリン;ビタミンEもしくはビタミンCなどの抗酸化剤;一酸化窒素を放出するよう任意選択的に改変されたフルブリプロフェンもしくはイブプロフェンなどの抗炎症剤(例えばNicOxにより生成されるNCX-2216)または17-β-エストラジオールなどのエストロゲン様物質を含むことができる。
【0101】
薬学的組成物の調製のための方法および薬学的担体は、RemingtonのPharmaceutical Sciences、第20版、Williams & Wilkins, Pennsylvania, USAなどの教科書に記載されているように、当技術分野において周知である。
【0102】
本明細書で用いられる「薬学的担体」とは、式IまたはIIの化合物を被験体に送達するための薬学的に許容される溶媒、懸濁剤または賦形剤である。この担体は液体または固体であってよく、計画された投与方法を考慮して選択される。個々の担体は、組成物の他の成分と適合し被験体に有害でないという意味で薬学的に「許容され」なければならない。
【0103】
式Iの化合物は、従来の毒性のない薬学的に許容される担体、アジュバント、および賦形剤を含有する投与単位剤形で経口的に、局所的に、または非経口的に投与されてもよい。本明細書で用いられる非経口という用語は、皮下注射、肺もしくは鼻腔への投与用のエアロゾル、静脈内の、筋肉内の、くも膜下腔の、頭蓋内の注射または注入の技術を含む。本発明は同様に、本発明の新規の治療の方法で用いるのに適した局所用、経口用および非経口用の薬学的製剤を提供する。本発明の化合物は錠剤、水性もしくは油性の懸濁剤、薬用キャンディー、トローチ剤、散剤、顆粒剤、乳剤、カプセル剤、シロップ剤またはエリキシル剤として経口的に投与されてもよい。経口用の組成物は、薬学的に上質で口当たりのよい調製物を作出するため、甘味剤、香料添加剤、着色剤および保存剤からなる群より選択される1つまたは複数の薬剤を含むことができる。適当な甘味料はスクロース、ラクトース、グルコース、アスパルテームまたはサッカリンを含む。適当な崩壊剤はとうもろこしでんぷん、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸または寒天を含む。適当な香料添加剤はペパーミント油、冬緑油、サクランボ、オレンジまたはラズベリーの香料を含む。適当な保存剤は安息香酸ナトリウム、ビタミンE、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベンまたは亜硫酸水素ナトリウムを含む。適当な滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウムまたはタルクを含む。適当な時間遅延剤は、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンを含む。錠剤は活性成分を、錠剤の製造に適した毒性のない薬学的に許容される補形薬との混合剤として含む。
【0104】
これらの補形薬は、例えば、(1) 炭酸カルシウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなどの、不活性希釈剤;(2) とうもろこしでんぷんまたはアルギン酸などの、顆粒剤および崩壊剤;(3) でんぷん、ゼラチンまたはアカシアなどの、結合剤;ならびに(4) ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなどの、滑沢剤であってもよい。これらの錠剤は被覆されなくてもよく、または公知の技術により被覆されて、胃腸管での分解および吸収を遅らせ、それによりいっそう長い期間にわたる持続作用をもたらしてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンなどの時間遅延材料が利用されてもよい。米国特許第4,256,108号;同第4,160,452号;および同第4,265,874号に記述されている技術を利用し、被覆を行って、制御放出用の浸透性治療錠剤を成形してもよい。
【0105】
式Iの化合物および本発明の方法で有用な薬学的に活性な作用物質は、インビボでの適用の場合、注射によりまたは経時的に漸次潅流により非経口的に独立してまたは一緒に投与することができる。投与は静脈内、動脈内、腹膜内、筋肉内、皮下、腔内、経皮または、例えば、浸透圧ポンプによる注入であってもよい。インビトロでの研究の場合、その作用物質は、生物学的に許容される適切な緩衝液の中に添加されてもまたは溶解されてもよく、それから細胞または組織に添加されてもよい。
【0106】
非経口投与用の調製物は無菌の水溶液または非水溶液、懸濁液、および乳濁液を含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機酸エステルである。水性担体は生理食塩水および緩衝化媒体を含めて、水、アルコール/水溶液、乳濁液または懸濁液を含む。非経口賦形剤は塩化ナトリウム溶液、リンガー・デキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウムを含み、乳酸加リンガー静脈内賦形剤は流動体および栄養補給剤、電解質補充剤(リンガー・デキストロースに基づくものなどの)、ならびに同様のものを含む。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、増殖因子および不活性ガスなどのような、保存料およびその他の添加物が存在していてもよい。
【0107】
通常、「治療する」、「治療(treatment)」などの用語は、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得るため、被験体、組織または細胞に影響を与えることを意味するよう本明細書で用いられる。この効果は疾患またはその徴候もしくは症状を完全にまたは部分的に防ぐという点で予防的であってもよく、および/あるいは疾患の部分的なまたは完全な治癒という点で治療的であってもよい。本明細書で用いられる「治療する」とは、脊髄動物、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の、任意の治療または予防を網羅し、以下を含む: (a) 疾患に対する素因を持ちうるが、未だ疾患に罹患したと診断されていない被験体に疾患が起きることを予防すること;(b) 疾患を阻害すること、すなわち、その進行を妨げること;または(c) 疾患の影響を軽減するもしくは改善すること、すなわち、疾患の影響の逆行を引き起こすこと。
【0108】
本発明は疾患を改善するのに有用な種々の薬学的組成物を含む。本発明の1つの態様による薬学的組成物は、式Iの化合物、その類似体、誘導体もしくは塩、または式Iの化合物および1つもしくは複数の薬学的に活性な作用物質の組み合せを担体、補形薬および添加剤または助剤を用いて被験体への投与に適した形にすることにより調製される。多くの場合に使われる担体または助剤は、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトールおよびその他の糖類、タルク、乳タンパク質、ゼラチン、でんぷん、ビタミン、セルロースおよびその誘導体、動物油および植物油、ポリエチレングリコールならびに無菌水、アルコール、グリセロールおよび多価アルコールなどの、溶媒を含む。静脈内賦形剤は流動体および栄養補給剤を含む。保存料は抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガスを含む。その他の薬学的に許容される担体は、例えば、その内容が参照により本明細書に組み入れられるRemingtonのPharmaceutical Sciences、第20版、Williams and Wilkins (2000)およびThe British National Formulary 第43版 (British Medical Association and Royal Pharmaceutical Society of Great Britain, 2002;http://bnf. rhn. net)に記述されているとおり、水溶液、毒性のない補形薬、例えば、塩、保存料、緩衝液および同様のものを含む。薬学的組成物の各種成分のpHおよび正確な濃度は、当技術分野における日常的な技術により調整される。Goodman and GilmanのThe Pharmacological Basis for Therapeutics (第7版、1985)を参照されたい。
【0109】
薬学的組成物は、用量単位で調製され投与されることが好ましい。固体の用量単位は錠剤、カプセル剤および坐剤とすることができる。被験体の治療の場合、化合物の活性、投与の方法、障害の性質および重症度、被験体の年齢および体重に応じて、異なる日用量が使われてもよい。しかしながら、特定の状況下では、より高いまたはより低い日用量が適することがある。日用量の投与は、個々の用量単位あるいはいくつかの少用量単位の形での単回投与によっても、および同様に、細分化された用量を特定の間隔を置いて複数回投与することによっても行うことができる。
【0110】
本発明による薬学的組成物は、治療的に有効な用量で局所にまたは全身に投与されてもよい。この用途に有効な量は、もちろん、疾患の重症度ならびに被験体の体重および一般的症状に依存すると考えられる。通常、インビトロで使用される投与量は、薬学的組成物のインサイチュー投与に有用な量の有益なガイドとなることがあり、動物モデルを利用して、細胞毒性副作用の治療に有効な投与量を判断することができる。さまざまな検討材料が、例えば、Langer, Science, 249: 1527 (1990)に記述されている。経口用の製剤は、活性成分が不活性な固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合されている硬ゼラチンカプセルの形とすることができる。それらは、活性成分が水または油性媒体、例えば、ピーナッツ油、液体パラフィンもしくはオリーブ油と混合されている軟ゼラチンカプセルの形であってもよい。
【0111】
水性懸濁液は通常、活性物質を水性懸濁液の製造に適した補形薬との混合物として含む。このような補形薬は(1) カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアカシアゴムなどの懸濁剤;(2) (a) レシチンなどの天然に存在するリン脂質;(b) 脂肪酸、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレンとアルキレンオキシドとの縮合生成物;(c) 長鎖脂肪族アルコール、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノールとエチレンオキシドとの縮合生成物;(d) モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールなどの脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、または(e) 脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンとできる分散剤または湿潤剤であってもよい。
【0112】
薬学的組成物は無菌の注射可能な水性または油脂性の懸濁液の形であってもよい。この懸濁液はその適当な分散剤または湿潤剤および上で述べた懸濁剤を用いて公知の方法により製剤化することができる。無菌の注射可能な調製物は同様に、毒性のない非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌の注射可能な溶液または懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液などであってもよい。利用できる許容される賦形剤および溶媒の中には、水、リンガー溶液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の不揮発性油は従来どおり、溶媒または懸濁媒体として利用される。このために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含めて、任意の無菌性の不揮発性油が使われてもよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸には注射物質の調製における用途が見つかる。
【0113】
式Iの化合物は同様に、小さな単層賦形剤、大きな単層賦形剤、および多重層賦形剤などの、リポソーム送達系の形で投与されてもよい。リポソームはコレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンなどの、種々のリン脂質から形成することができる。
【0114】
式Iの化合物は同様に、例えば、当技術分野において慣用されている方法により、調製できる動物用組成物の形で用いるために提供されてもよい。このような動物用組成物の例としては、
(a) 経口投与、外用、例えば水薬(例えば、水性または非水性の溶液または懸濁液);錠剤または丸薬;飼料との混合用の粉末、顆粒またはペレット;舌への適用向けのペースト;
(b) 例えば、無菌の溶液もしくは懸濁液としての、例えば皮下、筋肉内もしくは静脈内注射による非経口投与;または(適切な場合)懸濁液もしくは溶液が乳頭を介して乳房に導入される乳房内注射による非経口投与;
(c) 例えば、皮膚に適用されるクリーム、軟膏もしくはスプレーとしての、局所適用;あるいは
(d) 例えば、腟坐薬、クリームもしくは泡状物質として、経膣的に適合するものが挙げられる。
【0115】
本発明の式Iの化合物の投与量レベルは、体重1キログラム当たり約0.5 mgから約20 mg程度であって、好ましい投与量の範囲は1日につき体重1キログラム当たり約0.5 mgから約10 mg(1日につき1患者当たり約0.5 gから約3 g)である。単回投与量を作出するために担体材料と配合できる活性成分の量は、治療される宿主および特定の投与方法に応じて変化すると考えられる。例えば、ヒトへの経口投与を対象とした製剤は、約5 mgから1 gの活性化合物を全組成物の約5から95パーセントまで異なってよい適切なおよび好都合な量の担体材料とともに含んでもよい。投与単位剤形は通常、活性成分を約5 mgから500 mgの間で含むと考えられる。
【0116】
任意で、本発明の化合物は、計画中に少なくとも合計で2回投与されるような、分割投与計画で投与されてもよい。投与は最長4時間またはそれ以上にわたって少なくとも2時間毎に与えられることが好ましい;例えば、化合物は1時間毎にまたは30分毎に投与されてもよい。1つの好ましい態様では、分割投与計画は、活性薬剤の血中有効含量を維持するため、活性化合物の血中レベルが1回目の投与後に到達した最大血漿レベルのおよそ5〜30%までに低下するほど十分に長い、1回目の投与からの時間を置いた後での本発明の化合物の2回目の投与を含む。任意で、1回または複数回のその後の投与を各先行投与からの間隔に合わせて、好ましくは血漿レベルが直前の最大値のおよそ10〜50%までに低下した時点で与えてもよい。
【0117】
しかしながら、任意の特定の患者に対する具体的な用量レベルは、利用される特定化合物の活性、年齢、体重、全般的健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、薬物の組み合せおよび治療中の特定疾患の重症度を含め、種々の要因に依存することが理解されると思われる。
【0118】
実施例
本発明をここで、以下の非限定的な例を参照する目的でのみ詳細に記述する。
【0119】
明確にするため、本発明の化合物は番号、例えば、1-4および2-3で称される。そのように称される化合物例の構造は表1〜10に示されている。
【0120】
実施例1から6では、以下の参照文献が引用される:
1. Dondoni, A. et al, Synthesis, 1996, 641および1987, 998.
2. Goldstein, H. and Schaaf, E., Helv. Chim. Acta, 1957, 57(23), 132.
3. March, J.「Advanced Organic Chemistry, reactions, mechanisms and structure」中, 第3版, John Wiley & Sons, 1985, pg. 601、およびその中で引用されている参照文献;より具体的な反応条件については、例えば、Giencke, A. and Lackner, H. Liebigs Ann. Chem., 1990, 569;Brown, L. L. et al, J. Med. Chem., 2002, 45, 2841;Koch, V.およびSchnatterer, S. Synthesis, 1990, 499を参照されたい;
4. Linderberg, M. et al, Eur. J. Med. Chem., 1999, 34, 729.
5. T. W. Greene and P. G. M. Wuts (編)「Protective Groups in Organic Synthesis」中, John Wiley & Sons, U. S. A. (1999).
6. Follope, M. P. et al, Eur. J. Med. Chem., 1992, 27, 291;Giencke, A. et al, Liebigs Ann. Chem., 1990, 569.
7. Bavetsias, V. et al, J. Med. Chem., 2002, 45, 3692.
【0121】
一般的な実験の詳細
2,4-ジクロロ安息香酸(1-1)および2,4-ジクロロ-6-ニトロフェノール(2-1B)はAldrichから購入した。試薬/反応物質は全て、特に指定のない限り、Aldrichから供給された。4-アミノ-1,3,5-トリメチルピラゾール、2-アミノ-4,6-ジヒドロキシピリミジン、4-クロロメチル-3,5-ジメチルイソオキサゾールおよび2-クロロメチル-4-メチルチアゾール塩酸塩はLancasterから購入した。(2-アミノメチル)チアゾールは文献1にしたがって調製した。溶媒は分析等級とし、供給された状態のまま使用した。THFはアルゴン下で、ナトリウムとベンゾフェノンから蒸留した。1H NMRスペクトル(δ、対TMS)は、特に指定のない限り、Varian Inova 400分光計で記録した;J値はヘルツで示す。質量スペクトルデータは、Micromass Quattro II質量分析計で記録した。
【0122】
4,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ-2-ニトロ安息香酸(1-6)、つまり一連の8-ヒドロキシ-3H-キナゾリン-4-オンの調製におよび、具体的には、5,7-ジクロロ置換誘導体の合成に使われる重要な中間体の実用的なおよび簡便な合成をスキーム1Aに示す。それ故、GoldsteinおよびSchaaf2にしたがって、
スキーム1A

市販の2,4-ジクロロ安息香酸(1-1)をニトロ化して、2,4-ジクロロ-5-ニトロ安息香酸(1-2)を得る。化合物1-2はアミン1-3およびアセトアミド1-4を経て、3-アセトアミド-4,6-ジクロロ-2-ニトロ安息香酸(1-5)に変換される。続いて1-5の塩基加水分解によって、酸を用いた後処理の後、2-ニトロ安息香酸1-6が得られる。全ての工程は高収率(約90%)で進行し、スケールアップに対する修正が可能である。化合物1-6は同様に、スキーム1Bに示される経路によって作出することができる。すなわち、標準的なまたは日常的な条件3による1-3のジアゾ化により、アルコール1-7を得る。その後、化合物1-7を文献4に既報の条件によりニトロ化して1-6を得る。1-6の調製のためスキーム1Aおよび1Bの両方に示した合成経路は、文献4の方法に関する改善点を表しており、示されている工程は全て高収率で進行する。鉄粉のHOAc液を用い45〜50分間80℃で1-6を還元することにより、標準的な後処置の後、対応するアミン1-8を収率94%で得る。接触水素化4による1-5の還元では、アミン1-8の収率がわずか14%であったのは注目に値することである。
スキーム1B

【0123】
本発明の一連の新規の8-ヒドロキシ-3N置換キナゾリン-4-オンは、スキーム2Aに図示される経路によって合成することができる。
スキーム2A

【0124】
工程A (スキーム2A)では、2-ニトロ安息香酸1-6を最初に、2-1または2-2および2-3のいずれかを経て、アントラニル酸2-4に変換することができる。
【0125】
標準的な手順6を用いた2-4の代替合成をスキーム2Bに示す。すなわち、1-6からの2-2の調製に関する既報の条件にしたがう硫酸ジメチルを用いた2,4-ジクロロ-6-ニトロ安息香酸(2-1B)の処理により、2-2Bを得る。典型的には塩化スズ(II)または鉄粉および氷酢酸/塩酸を用いた、標準的な条件下でのニトロ化合物2-2Bの還元により、アニシジン2-3Bを得る。ヒドロキシルアミン塩酸塩の存在下での抱水クロラールを用いたアニシジン2-3Bの処理、その後の酸加水分解により、イサチン中間体2-4Bを得る。塩基性条件下での過酸化水素を用いた2-4Bの次処理により、アントラニル酸2-4を得る。
スキーム2B

【0126】
高温での、典型的には150℃でのホルムアミドを用いた2-4の処理により、3H-キナゾリン-4-オン2-5を得る。その後、化合物2-5を塩基、例えば炭酸カリウムの存在下で適切なハロゲン化アルキルと反応させて、2-6を得る。工程Cで利用できるハロゲン化アルキルの例は、2-(クロロメチル)ピリジン、(クロロメチル)シクロプロパン、1-(2-クロロエチル)ピロリジン、2-(2-クロロエチル)-1-メチルピロリジン、4-(2-クロロエチル)モルホリン、2-クロロメチル-4-メチルチアゾール塩酸塩、2,6-ビス(クロロメチル)ピリジン、2-ブロモプロパン、1-クロロプロパン、1-クロロ-2-メチルプロパン、2-クロロエチルエチルエーテル、(2-ジエチルアミノ)エチルクロライド塩酸塩、1-クロロブタン、2-クロロブタン、クロチルクロライドおよび4-クロロメチル-3,5-ジメチルイソオキサゾールを含むが、これらに限定されることはない。結果を表にする(表1)。適切にBBr3を利用しまたは高温で水性HBrを用い、2-6から保護基を引き続き除去することで、対応する3-N-(置換)-8-ヒドロキシ-3H-キナゾリン-4-オン2-7を得る。エチルエーテル誘導体2-6Mの場合には、アルコール2-7M1の臭化水素酸塩が得られた(表2)。水性HBrを用いたアルケン2-6Pの処理によって、メトキシ保護基の同時除去とアルケン二重結合の臭化水素反応を引き起こし、化合物2-7P1を得た。
【0127】
工程BおよびC (スキーム2A)では、アントラニル酸1-8を酢酸ギ酸無水物で処理して、ホルミルアミノ化合物2-8またはベンゾ[d][1,3]オキサジン-4-オン2-9を得ることができる。その後、化合物2-8 (または2-9)を典型的にはほぼ還流温度でのトルエンまたはキシレンを用い、高温での三塩化リンまたはオルトギ酸トリエチルなどの縮合剤の存在下、適当なアミンと反応させて8-ヒドロキシ-3H-キナゾリン-4-オン2-7を得る。工程BおよびCで利用できるアミンの例は、2-アミノ-5-メチルチアゾール、2-(2-アミノエチル)ピリジン、3-アミノピリジン、4-アミノモルホリン、1-アミノ-4-メチルピペラジン、1-アミノピロリジン、4-(アミノメチル)ピペリジン、1-アミノピペラジン、5-アミノ-1-エチルピラゾール、5-アミノ-2-メトキシピリジン、4-アミノ-1,3,5-トリメチルピラゾール、2-アミノ-1-メチルベンズアミド、2-アミノ-5-メチルピリジン、2-アミノ-5-クロロピリジンおよび4-アミノピペリジンを含むが、これらに限定されることはない。結果を表にする(表3)。これらの工程により調製できるその他の8-ヒドロキシ-3H-キナゾリン-4-オンを表4に示す。
【0128】
工程D (スキーム2A)では、2-ニトロ安息香酸1-6を最初にCDIなどの活性化剤の存在下、適用なアミンで処理して、適切なN-(置換)ベンズアミド2-10を作出することができる。その後のニトロ基の還元および得られたアミン2-11の、典型的にはCDIもしくはオルトギ酸トリエチルなどの縮合剤の存在下でのギ酸とのまたはホルムアミドとのカップリングにより、対応する3-N-置換誘導体2-7を得る。
【0129】
2-4などの適切にO-保護されたアントラニル酸を利用し、工程BおよびC (スキーム2A)を繰り返すことができる(スキーム3)。これらの場合は、8-ヒドロキシ-3H-キナゾリン-4-オン2-7はO-保護基の除去後に得られる。
スキーム3

【0130】
2-置換8-ヒドロキシ-3H-キナゾリン-4-オンは、スキーム4に描かれる経路によって調製することができる。それ故、工程Eにしたがう、塩化チオニルなどの活性化剤を用いたアントラニル酸1-6の処理および引き続いて酸塩化物中間体のアンモニアとの反応により、対応するベンズアミド4-1を得る。典型的にはSnCl2または鉄粉/HOAcのいずれかを用いた、ニトロ化合物4-1の還元により、対応するアミン4-2を得る。アミン4-2は、クロロアセチル酢酸または2-クロロ-1,1,1-トリメトキシエタンのいずれかで処理して、5,7-ジクロロ-2-クロロメチル-8-ヒドロキシ-3H-キナゾリン-4-オン(4-3A)を得ることができる。2-クロロメチル化合物は同様に、工程Fを経てメトキシアントラニル酸誘導体2-4から調製することができる。すなわち、塩基、典型的にはナトリウムメトキシドの存在下でのクロロアセトニトリルを用いた2-4の処理7により、4-3Bを得る。ジメチルアミン、メチルアミンおよびエチルアミンに限定されないが、そのような一連のアミンを用いた2-クロロメチル誘導体4-3A (または4-3B)のさらなる合成処理により、いくつかの新規の2-置換誘導体4-16A〜4-16Dを得る。
【0131】
いくつかの2,3-二置換8-ヒドロキシ-3H-キナゾリン-4-オン4-9は、スキーム4に示されるように、工程Gにより酸2-1を経て調製することができる。それ故、2-1を活性化剤の存在下、適当なアミンで処理して、対応するベンズアミド4-5を得、これを次に、典型的にはSnCl2または鉄粉/HOAcを用いて、4-6に還元することができる。化合物4-6を続いて2-クロロメチル誘導体4-7に変換し、これを、工程EおよびFで前に述べたものと類似の反応条件を利用して4-8に変換する。典型的にはほぼ還流温度での水性HBrを利用した、4-8の脱保護の後に、対応する2,3-二置換誘導体4-9を得る。
【0132】
2,3-二置換8-ヒドロキシ-3H-キナゾリン-4-オン4-9は同様に、工程HおよびI (スキーム4)を経て入手することができる。工程Hでは、アントラニル酸1-8を2-アジド酢酸クロライド、フタリル-グリシルクロライドおよび[(フェニルメチル)アミノ]酢酸クロライドなどのNP含有アシル化剤で適切にアシル化する。したがって、NP基の例はアジド、フタルイミドおよびベンジルアミノである。高温での、典型的にはほぼ還流温度での無水酢酸の存在下における中間体4-10の引き続く縮合により、ベンゾ[d][1,3]オキサジン-4-オン4-11を得る。適切なアミン(R1NH2)の存在下では、4-11は4-12を生じ、4-12は縮合により4-13を生じる。適当な縮合剤はPCl3、オルトギ酸トリエチル、CDIおよびAc2Oを含む。アミノ基への-NP部分の変換条件は、特定のNP基に依存するはずであり;上記の基の場合、これらはそれぞれ還元、ジメチルアミンおよび触媒存在下、水素化分解である(後者2つの変換条件5のさらなる例は他で見つけることができる)。工程Iでは、適当なアミン(NR1R2)とのアントラニル酸1-8の縮合により、アミン4-14を得る。引き続いて塩化クロロアセチルおよびアミンを用いた4-14の連続的処理により、4-9を得る。
スキーム4

【0133】
3-アミノ-5,7-ジクロロ-8-ヒドロキシ-3H-キナゾリン-4-オン(5-4)および特定の3-(置換)アミノ-3H-キナゾリン-4-オンは、スキーム5に示される経路により調製することができる。典型的には酢酸ギ酸無水物を用いたメチルエステル2-3のN-ホルミル化により、5-1を得る。または、オルトギ酸トリエチルなどのオルトエステルを用いた2-3の処理により、イミデートエステル5-2を得る。ヒドラジンを用いた処理により、5-1または5-2は3-アミノ-3H-キナゾリン-4-オン5-3を生じる。典型的には120℃で水性HBrを用いた、5-3中の保護基の除去により、5-4を得る。適当な酸ハロゲン化物を用いた3-アミノ化合物5-4のさらなる合成処理により、対応する3-置換アシル化誘導体5-5A〜5-5Cを得る。5-7A〜5-7Cなどの誘導体は、4-フルオロフェニルヒドラジン、4-メトキシフェニルヒドラジンまたは2,4-ジフルオロフェニルヒドラジンなどの適切に置換されたヒドラジンに向けたヒドラジン水和物の置換、その後の脱保護により5-2から得ることができる。適当な溶媒、典型的にはエタノールに入れたハロゲン化アルキルを用い、その後脱保護することで、5-3は化合物5-7D〜5-7Gをもたらす。または、化合物5-7D〜5-7Gは同様に、エチルヒドラジン、プロピルヒドラジンおよび(シクロプロピル)メチルヒドラジンなどの適切なアルキル化ヒドラジンを用いた5-2の処理により調製することができる。
スキーム5

【0134】
アミン2-7F2、2-7Q2、2-7R2、2-7S2および2-7X2は、ハロゲン化アルキルまたはアシル化試薬を用いた処理を介して6-1〜6-6などの一連の誘導体に合成することができる。6-1〜6-6のデータを表にする(表9)。
【0135】
いくつかの3-置換-3H-キナゾリン-4-チオン7-2は、スキーム6に示される工程により対応する3H-キナゾリン-4オン2-6から調製することができる。すなわち、P4S10またはラヴェッソン試薬のいずれかを用いた2-6の処理により、チオケトン7-1を得る。引き続いて適切にBBr3を用いた、保護基の除去により、所望の3-置換-3H-キナゾリン-4-チオン7-2を得る。
スキーム6

【0136】
4,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ-2-ニトロ安息香酸(1-6)の調製

塩化スズ(II)水和物 (50 g, 0.29 mol)を2,4-ジクロロ-5-ニトロ安息香酸(1-2)2 (10.0 g, 0.045 mol)のEtOH (200 mL)溶液に添加した。この混合物を70℃で0.5時間攪拌し、冷却し、氷上に注いだ。混合物のpHを8に調整した(飽和NaHCO3)。この懸濁液を室温で5時間攪拌放置し、pH 5にまで再酸性化した(氷HOAc)。得られた白色懸濁液を酢酸エチルで連続的に抽出し、この抽出物を混合し、塩水で洗浄し、乾燥し、濃縮して、所望のアミン(1-3)をオフホワイト色の固形物(8.8g, 96%)として得た。
【0137】
5-アミノ-2,4-ジクロロ安息香酸(1-3): 1H NMR (CD3OD): δ 7.30 (s, 1 H), 7.27(s, 1 H)。
【0138】
無水酢酸(27 mL)を5-アミノ-2,4-ジクロロ安息香酸(1-3) (8.0 g, 0.041 mol)の氷HOAc (150 mL)に添加した。この溶液を室温で0.5時間撹拌し濃縮して、所望のアセトアミド(1-4)を白色の固形物(9.6g, 96%)として得た。
【0139】
5-アセトアミド-2,4-ジクロロ安息香酸(1-4): 1H NMR (CD3OD): δ 8.32 (s, 1 H), 7.62 (s, 1 H), 2.19 (s, 3 H)。
【0140】
5-アセトアミド-2,4-ジクロロ安息香酸(1-4) (9.6 g, 0.039 mol)を発煙硝酸(1.8 mL, 0.043 mol)および濃硫酸(120 mL)の氷冷撹拌溶液に30分にわたって少しずつ添加した。添加が完了した後、さらに発煙硝酸(17 mL)および濃硫酸(80 mL)を30分および60分の間隔で添加した。次いで、反応混合物を0℃でさらに2.5時間攪拌放置し、12〜16℃にまで加温させ、全ての出発物質が消費されるまで(約3時間)この温度で攪拌放置した。この溶液を氷上に注ぎ、酢酸エチルで抽出した(3×)。この有機抽出物を混合し、塩水で洗浄し、乾燥し、濃縮して、3-アセトアミド-4,6-ジクロロ-2-ニトロ安息香酸(1-5)をオレンジ色の固形物(9.8 g, 86%)として得た。
【0141】
3-アセトアミド-4,6-ジクロロ-2-ニトロ安息香酸(1-5): 1H NMR (CD3OD): δ 8.01 (s, 1 H), 2.13 (s, 3 H)。
【0142】
3-アセトアミド-4,6-ジクロロ-2-ニトロ安息香酸(1-5) (9.7 g, 0.033 mol)をKOH (18.7 g, 0.034 mol)のH2O (85 mL)溶液に添加した。この溶液を18時間加熱還流し、室温にまで冷却した。濃HClを添加してpHを0に調整した。この混合物を酢酸エチルおよびH2Oで希釈し、室温で30分間攪拌放置した。この層を分離した。つまり水層を酢酸エチルで抽出し(3×)、この抽出物を元の有機層と混合し、塩水で洗浄し、乾燥し、濃縮して4,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ-2-ニトロ安息香酸(1-6)を暗赤色の固形物(7.4 g, 89%);融点188〜189℃ (文献4 融点186℃ (dec))として得た。
【0143】
4,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ-2-ニトロ安息香酸(1-6): 1H NMR (CD3OD): δ 7.79(s, 1 H);質量スペクトル: m/z 250, 252, 254(M+-1, 100%, 66%, 11%)。
【0144】
5,7-ジクロロ-8-メトキシ-3H-キナゾリン-4-オン(2-5)の調製

硫酸ジメチル(40 mL)を1-6 (15.0 g, 0.059 mol)、炭酸カリウム(66 g, 0.5 mol)およびDMF (300 mL)の攪拌混合物に添加した。得られた混合物を60℃で一晩、その後120℃で2時間攪拌放置した。この反応混合物を真空濃縮した。得られた赤褐色の残留物を水で洗浄し、乾燥した。これにより2-2をオレンジ色の固形物(14.6 g, 88%)として得た。-1H NMR (CDCl3): δ 7.65 (s, 1 H), 4.01 (s, 3 H), 3.92 (s, 3 H)。
【0145】
鉄粉(18.2 g, 0.33 mol)を2-2 (13.3 g, 0.048 mol)の酢酸(120 mL)溶液に添加した。この混合物を55℃で1.5時間攪拌し、その後、熱いうちにセライト(酢酸エチル)を通してろ過した。ろ液を濃縮し、酢酸エチルおよび飽和炭酸ナトリウムを添加し、この混合物をろ過(セライト)した。その有機層を分離し、水で洗浄し、乾燥し(K2CO3)、濃縮して2-3をオフホワイト色の固形物(11.6 g, 97%)として得た。-1H NMR (CDCl3): δ 6.71 (s, 1 H), 3.89 (s, 3 H), 3.79 (s, 3 H)。
【0146】
2-3 (11.5 g, 0.046 mol)のメタノール(250 mL)および水(70 mL)の攪拌溶液に、2 M NaOH (25 mL)を添加した。この反応混合物を1時間加熱還流し、さらに2M NaOHを添加し(25 mL)、混合物をさらに1時間加熱還流した。この溶液を冷却し濃縮して、メタノールを除去した。この濃縮物を水に溶解し、酢酸エチルで抽出し、pHを1〜2 (濃HCl)に調整した。その乳白色の懸濁液を酢酸エチルで抽出した(3×)。混合した抽出物を塩水で洗浄し、乾燥し、濃縮して2-4をベージュ色の固形物(10.4 g, 95%)として得た。-1H NMR (CD3OD): δ 6.70 (s, 1 H), 3.80 (s, 3H)。
【0147】
2-4 (16.9 g, 0.072 mol)およびホルムアミド(150 mL)の攪拌懸濁液を8時間150℃で加熱し、その後、室温にまで冷却させた。水を添加し、生じた沈殿物をろ過により分離し、水で洗浄し、真空乾燥して2-5を淡褐色の固形物(13.0 g, 73%)として得た。-1H NMR (CD3OD): δ 8.08 (s, 1 H), 7.60 (s, 1H), 3.98 (s, 3 H)。
【0148】
実施例1- 5,7-ジクロロ-8-メトキシ-3H-キナゾリン-4-オン(2-5)のアルキル化およびその後の脱保護を介した化合物2-7A2〜2-7R2の調製

2-5 (1.5 g, 6.1 mmol)および塩化物(7.3 mmol)の無水DMF (30 mL)の攪拌溶液に、K2CO3 (9.3 mmol)を添加し、得られた混合物を95℃で16時間加熱し、冷却し、濃縮した。この残留物を酢酸エチルまたはジクロロメタンで抽出し(3×)、抽出物を混合し、水および塩水で連続的に洗浄し、乾燥した。引き続いて適切な溶媒を用いた粉砕、再結晶またはSiO2-ゲルクロマトグラフィーのいずれかによる精製により、対応する3-置換-8-メトキシ-3H-キナゾリン-4-オン(2-6)を得た。
【0149】
使用した塩化物の例は以下である: 1-(2-クロロエチル)ピロリジンは2-6Aをもたらす、2(クロロメチル)シクロプロパンは2-6Bをもたらす、2-(2-クロロエチル)-1-メチルピロリジンは2-6Cをもたらす、2-(クロロメチル)ピリジンは2-6Dをもたらす、4-(2-クロロエチル)モルホリンは2-6Eをもたらす、2-クロロメチル-4-メチルチアゾール塩酸塩は2-6Fをもたらす、4-クロロメチル-3,5-ジメチルイソオキサゾールは2-6Gをもたらす、2-ブロモプロパンは2-6Hをもたらす、1-クロロプロパンは2-6Iをもたらす、1-クロロ-2-メチルプロパンは2-6Jをもたらす、1-クロロブタンは2-6Kをもたらす、2-クロロブタンは2-6Lをもたらす、2-クロロエチルエチルエーテルは2-6Mをもたらす、(2-ジエチルアミノ)エチルクロライド塩酸塩は2-6Nをもたらす、2-クロロメチル-3-メチルピリジン塩酸塩は2-6Oをもたらす、クロチルクロライドは2-6Pをもたらす、2,6-ビス(クロロメチル)ピリジンは2-6Qをもたらすおよび1-塩化エチルは2-6Rをもたらす。1-(2-クロロエチル)ピロリジン塩酸塩、2-クロロメチル-3-メチルピリジン塩酸塩および2-クロロメチル-4-メチルチアゾール塩酸塩の場合には、2.2当量のK2CO3を利用した。
【0150】
(2-クロロメチル)-3-メチルピリジン塩酸塩の調製
2,3-ルチジン(5.00 g, 46.7 mmol)の0℃のクロロホルム(100 mL)攪拌溶液に、m-クロロ過安息香酸(最大77%の試薬12.0 g)を5分にわたって少しずつ添加した。この反応混合物を0℃でさらに30分間撹拌し、その後、室温にまで加温させた。16時間後、反応混合物を濃縮乾固し、水(20 mL)を添加し、混合物のpHを8に調整した(飽和NaHCO3)。混合物を濃縮し、残留物をジクロロメタン/メタノール(4:1)で抽出した。この抽出物を白色の固形物に濃縮した。引き続くカラム精製(SiO2;ジクロロメタン/メタノール, 9:1)により、2,3-ルチジン-N-酸化物を白色の固形物(4.80 g, 83%)として得た。
【0151】
2,3-ルチジン-N-酸化物(4.80 g, 39.0 mmol)の無水酢酸(50 mL)の撹拌溶液を一晩加熱還流し、冷却し、その後濃縮乾固して(2-アセトキシメチル)-3-メチルピリジンを褐色の油状物(6.34 g)として得た。未精製の(2-アセトキシメチル)-3-メチルピリジンおよびK2CO3 (10.0 g, 72.4 mmol)、メタノール(60 mL)および水(30 mL)の混合物を室温で一晩撹拌した。固形物をろ去し、ろ液を濃縮乾固した。この残留物から、カラムクロマトグラフィー(SiO2;ジクロロメタン/メタノール, 9:1)の後、(2-ヒドロキシメチル)-3-メチルピリジンを淡褐色の油状物(2.86 g, 2ステップで59%)として得た。
【0152】
(2-ヒドロキシメチル)-3-メチルピリジン: 1H NMR (CDCl3): δ 8.41 (d, J = 4.9, 1 H), 7.48 (d, J = 7.5, 1 H), 7.16 (dd, J = 4.9および7.5, 1 H), 4.69 (s, 2 H), 4.00 (br, 1 H), 2.22 (s, 3 H)。
【0153】
(2-ヒドロキシメチル)-3-メチルピリジン(1.00 g, 8.1 mmol)のジクロロメタン(30 mL)氷冷溶液に、塩化チオニル(2.5 mL)のジクロロメタン(6 mL)溶液を10分にわたって滴下した。氷浴を除去し、反応混合物を室温で2時間撹拌放置し、濃縮し、その後ジエチルエーテルで洗浄した。これにより、(2-クロロメチル)-3-メチルピリジン塩酸塩を薄黄色(pale straw-coloured)の固形物(1.44 g, 99%)として得た。
【0154】
(2-クロロメチル)-3-メチルピリジン塩酸塩: 1H NMR (CD30D): δ 8.72 (d, J = 5.9, 1 H), 8.54 (d, J = 8.1, 1 H), 8.00 (dd, J = 5.9および8.1, 1 H), 5.05 (s, 2 H), 2.64 (s, 3 H)。
【0155】
調製された化合物2-6A〜2-6Rの収率およびスペクトルデータを表1に示す。
【0156】
脱保護
方法A:
8-メトキシ誘導体2-6 (1.9 g, 5.6 mmol)のジクロロメタン(15 mL)撹拌氷冷溶液に、BBr3 (1 Mジクロロメタン溶液12 mL, 12 mmol)を添加した。次に、この溶液を45℃で18時間撹拌し、冷却し、メタノール(20 mL)を添加した。この混合物を濃縮した。繰り返しメタノールを添加することおよび蒸発により、過剰なホウ酸塩を除去した。未精製の臭化水素塩生成物をエーテルで洗浄した(3×)。一部の化合物を遊離塩基として分離した。すなわち、飽和Na2CO3 (20 mL)を添加し、この混合物をジクロロメタンで抽出した(5×)。混合した抽出物を水で洗浄し、乾燥し、濃縮した。残留物を単純に適切な溶媒で洗浄し、再結晶することによりまたはSiO2-カラムクロマトグラフィーにより精製して、対応する8-ヒドロキシ誘導体2-7を得た。
【0157】
方法B:
3-置換-8-メトキシ-3H-キナゾリン-4-オン(2-6) (5.0 mmol)の48%臭化水素酸(25 mL)溶液を16〜18時間アルゴン雰囲気中で加熱還流し、室温にまで冷却放置した。この反応混合物を濃縮乾固するか、または生じたその沈殿物をろ過により分離するかした。その未精製の固形物を次に、ジエチルエーテル、ジクロロメタンおよびアセトニトリルで連続的に洗浄し、対応する8-ヒドロキシ化合物(2-7)を臭化水素酸塩として得た。一部の化合物を遊離塩基として分離した(条件については上記方法Aを参照のこと)。
【0158】
方法C:
8-メトキシ化合物2-6 (4.46 mmol)および48%臭化水素酸(23 mL)の溶液を120℃で2〜10時間加熱し、室温にまで冷却放置した。水(30 mL)を添加し、pHを5に調整した(NaOHペレット)。生じた沈殿物をろ過により分離し、水で洗浄し、真空乾燥した。
【0159】
エチルエーテル誘導体2-6Mの場合には、アルコールの臭化水素酸塩2-7M1が得られた(表2)。方法AによるBBr3を用いたアルケン2-6Pの処理により、2-7S1を得た。方法Bによる水性HBrを用いた2-6Pの処理を通じて、その臭化物2-7P1を得た。
【0160】
2-7A1〜2-7S1の収率およびスペクトルデータを表2に示す。
【0161】
(表1)実施例1により調製された化合物2-6A〜2-6R



【0162】
(表2)実施例1により2-6から調製された化合物2-7A1〜2-7R1




8-OHおよびHBr (適用される場合)の化学シフトは割当の中に含まれていない
【0163】
2-アミノ-4,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ安息香酸(1-8)の調製

4,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ-2-ニトロ安息香酸(1-6) (700 mg, 2.78 mmol)、鉄粉(400 mg, 7.16 mmol)および氷酢酸(13 mL)の混合物を80℃で50分間加熱し、冷却し、固形物をろ去した。ろ液を褐色の固形物にまで濃縮した。引き続いてSiO2-ゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/HOAc, 100:1〜100:3)により、2-アミノ-4,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ安息香酸(1-8)を淡褐色の固形物(582 mg, 94%)として得た。-1H NMR (DMSO-d6): δ 6.68 (s);これは文献4と一致している。
【0164】
4,6-ジクロロ-2-ホルミルアミノ-3-ヒドロキシ安息香酸(2-8)の調製

ギ酸(90%溶液1.04 mL)および無水酢酸(2 mL)の溶液を50〜60℃で2時間加熱し、冷却した。次に、2-アミノ-4,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ安息香酸(1-8) (425 mg, 1.91 mmol)を室温で撹拌されている酢酸ギ酸無水物に少しずつ添加した。2.5時間後、反応混合物を氷と水の混合物に注ぎ、固形物をろ過により分離した。これにより、4,6-ジクロロ-2-ホルミルアミノ-3-ヒドロキシ安息香酸(2-8)をオレンジ色の固形物(320 mg, 67%)として得た。-1H NMR (DMSO-d6): δ 8.76 (s, 1 H), 8.29 (s, 1 H), 8.13 (s, 1 H);質量スペクトル: m/z 248, 250, 252 (M+ - 1, 100%, 66%, 11%)。
【0165】
実施例2- アミンを用いたPCl3による4,6-ジクロロ-2-ホルミルアミノ-3-ヒドロキシ安息香酸(2-8)の縮合

4,6-ジクロロ-2-ホルミルアミノ-3-ヒドロキシ安息香酸(2-8) (200 mg, 0.80 mmol)、アミン(0.88 mmol)およびトルエン(5 mL)の撹拌混合液に、PCl3 (0.12 mL, 1.38 mmol)のトルエン(1 mL)溶液を2分にわたって滴下した。生じた懸濁液を4〜16時間加熱還流し、冷却した。飽和NaHCO3を添加して、pH 9にした。次いで、混合物のpHを7に再調整し(5 N HCl)、ジクロロメタンで抽出し(3×)、この抽出物を混合し、乾燥した(Na2SO4)。揮発性物質を除去し、これにより5,7-ジクロロ-8-ヒドロキシ-3-(置換)-3H-キナゾリン-4-オン(2-7)を得た。場合によっては、この粗生成物を適切な溶媒、典型的にはジエチルエーテルもしくはジエチルエーテル中の5%メタノールで洗浄することにより、またはSiO2-ゲルクロマトグラフィーもしくは再結晶により精製した。化合物2-7A2および2-7M2の性質決定データを表3に示す。実施例2により2-8から調製されたその他の化合物2-7を表4に示す。
【0166】
実施例2で使用したアミンの例は以下である: (C-チアゾール-2-イル)メチルアミンは2-7A2をもたらす、2-(2-アミノエチル)ピリジンは2-7B2をもたらす、3-アミノピリジンは2-7C2をもたらす、4-アミノモルホリンは2-7D2をもたらす、1-アミノ-4-メチルピペラジンは2-7E2をもたらす、4-(アミノメチル)ピペリジンは2-7F2をもたらす、5-アミノ-1-エチルピラゾールは2-7G2をもたらす、5-アミノ-2-メトキシピリジンは2-7H2をもたらす、2-アミノ-1-メチルベンズアミダゾールは2-7I2をもたらす、2アミノ-5-メチルピリジンは2-7J2をもたらす、2-アミノ-5-クロロピリジンは2-7K2をもたらす、1-アミノピペリジンは2-7L2をもたらすおよび1-アミノピロリジンは2-7M2をもたらす。アミン塩酸塩の場合には、トリエチルアミンなどの塩基の適切な当量を反応混合物に添加した。実施例2により調製したその他の化合物は2-7O2〜2-7AE2である(表4)。
【0167】
(表3)実施例2により2-8から調製された化合物2-7



8-OHの化学シフトは割当の中に含まれていない
【0168】
(表4)実施例2により2-8から調製されたその他2-7N2〜2-7AE2



【0169】
(表5)実施例1および2により調製されたその他の化合物




【0170】
実施例3 2,3-二置換-3H-キナゾリン-4-オン(4-9)の調製

ステップ1: 酸1-8 (1.00 g, 4.50 mmol)の無水ベンゼン(8.3 mL)溶液に、アルゴン雰囲気下で塩化チオニル(2.09 g, 17.6 mmol)を滴下した。この混合物を5時間加熱還流し、その後、過剰な塩化チオニルおよびベンゼンを蒸発により除去した。残留物を無水ジクロロメタン(8.3 mL)に溶解し、0℃にまで冷却し、n-プロピルアミン(798 mg, 13.5 mmol)で処理した。混合物を0℃で15分間撹拌し、その後室温にまで加温し、さらに16時間撹拌した。蒸発および未精製の残留物のカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル, 3:7〜1:1)を通じた精製により、そのベンズアミドである2-アミノ-4,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ-N-(n-プロピル)ベンズアミド(4-14, R1 = n-プロピル)をオレンジ色の固形物(550 mg, 46%)として得た。
【0171】
2-アミノ-4,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ-N-プロピルベンズアミド: 1H NMR (DMSO-d6): δ 8.39 (t, J = 5.6, 1 H), 6.67 (s, 1 H,), 4.94 (br, 1 H), 3.16 (m, 2 H), 2.44 (m, 2 H), 1.50 (m, 2 H), 0.88 (m, 3 H)。
【0172】
ステップ2: 2-アミノ-4,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ-N-プロピルベンズアミド(1.00 g, 4.50 mmol)の氷酢酸(5.5 mL)溶液に、アルゴン雰囲気下で塩化クロロアセチル(718 mg, 6.36 mmol)を滴下した。この混合物を2時間加熱還流し、その後、室温で1時間撹拌した。反応混合物を真空蒸発し、残留物を2 M NaOHで中和した。沈殿物をろ過により分離し、水で洗浄し、真空乾燥した。ジクロロメタン(10 mL)を得られた残留物に添加し、不溶性物質をろ去した。ろ液を濃縮して、その塩化物である2-クロロメチル-5,7-ジクロロ-8-ヒドロキシ-3-n-プロピル-3H-キナゾリン-4-オン(4-15, R1 = n-プロピル)をオレンジ色の固形物(600 mg, 89%)として得た。
【0173】
2-クロロメチル-5,7-ジクロロ-8-ヒドロキシ-3-n-プロピル-3H-キナゾリン-4-オン: 1H NMR (DMSO-d6): δ 7.86 (s, 1 H,), 5.15 (s, 2 H), 4.27 (s, 2 H), 1.52 (m, 2 H), 0.93 (m, 3 H);質量スペクトル: m/z 323, 325, 327(M+ + 1, 100%, 66%, 11%)。
【0174】
ステップ3: 2-クロロメチル-5,7-ジクロロ-8-ヒドロキシ-3-n-プロピル-3H-キナゾリン-4-オン(285 mg, 0.886 mmol)の無水THF (1.3 mL)溶液に、アルゴン雰囲気下でメチルアミンのエタノール溶液(8.0 M溶液7.5 mL, 60 mmol)を滴下した。この混合物を室温で18時間撹拌し、その後濃縮し、得られた残留物に2 M HCl (5 mL)を添加した。混合物を蒸発し、さらに2 M HCl (5 mL)を添加した。残留物を蒸発し、この手順をもう2回繰り返した。混合物をジクロロメタンで粉砕し真空乾燥して、5,7-ジクロロ-8-ヒドロキシ-2-メチルアミノメチル-3-n-プロピル-3H-キナゾリン-4-オン塩酸塩(4-9A)を黄色の固形物(157 mg, 50%)として得た(表6)。
【0175】
適切なアミンに向けて実施例3のn-プロピルアミン(ステップ1)およびメチルアミン(ステップ3)の置換により調製されたその他の2,3-二置換-3H-キナゾリン-4-オン(4-9B〜4-9E)を表6に示す。
【0176】
(表6)実施例3により調製された化合物4-9A〜4-9E

【0177】
実施例4- 2-置換-3H-キナゾリン-4-オン(4-16A〜4-16D)の調製

ナトリウムメトキシドのメタノール氷冷溶液(0.32 M溶液2.8 mL, 0.89 mmol)に、アルゴン雰囲気下でクロロアセトニトリル(0.25 mL, 3.90 mmol)を滴下した。7この反応混合物をRTで30分間撹拌させ、その後、2-4 (0.80 g, 3.39 mmol)の無水メタノール(14 mL)溶液の添加前に0℃にまで再冷却した。この溶液をRTで20時間撹拌放置し、さらに20時間加熱還流した。蒸発および得られた残留物のカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル, 3:7)を通じた精製により、その塩化物4-3Bを白色の固形物(225 mg, 23%)として得た。
【0178】
引き続いて実施例3のステップ3に記述される条件による適当なアミンを用いた4-3Bの処理により、2-置換-8-メトキシ-3H-キナゾリン-4-オンを得た、つまりエチルアミンにより4-4Aを得た、1-プロピルアミンにより4-4Bを得た、ジエチルアミンにより4-4Cを得た、およびジメチルアミンにより4-4Dを得た。引き続いて一般的な脱保護手順(実施例1、方法A)による8-メトキシ保護基の各除去により、4-16A〜4-16Dを得た(表7)。
【0179】
(表7)実施例4により調製された化合物4-4A〜4-4Dおよび4-16A〜4-16D


【0180】
3-アミノ-5,7-ジクロロ-8-ヒドロキシ-3H-キナゾリン-4-オン臭化水素酸塩(5-4またはPB 1099)の調製

2-アミノ-4,6-ジクロロ-3-メトキシ安息香酸メチルエステル(2-3) (6.35 g, 25.4 mmol)およびオルトギ酸トリエチル(60 mL, 361 mmol)の溶液を5日間加熱還流した。この溶液を室温にまで冷却し、減圧下で蒸発させて、そのイミデートである4,6-ジクロロ-2-エトキシメチレンアミノ-3-メトキシ安息香酸メチルエステル(5-2)、および出発材料(7.80 g)を5-2:2-3が約9:1の褐色の油状物として得た。
【0181】
4,6-ジクロロ-2-エトキシメチレンアミノ-3-メトキシ安息香酸メチルエステル(5-2): 1H NMR (DMSO-d6): δ 7.99 (s, 1 H), 7.48 (s, 1 H), 4.22 (q, 2 H), 3.79 (s, 3 H), 3.62 (s, 3 H), 1.28 (t, J = 7.2, 3 H)。
【0182】
イミデート5-2 (400 mg, 1.31 mmol)のエタノール(12 mL)氷冷溶液に、アルゴン雰囲気下でヒドラジン水和物(1.8 mL, 57.8 mmol)を添加した。15分後、この溶液を室温にまで加温し、さらに2時間撹拌した。その高粘度の懸濁液をエタノールで希釈し、ろ過した。固形物を冷エタノールで洗浄し、真空乾燥して、3-アミノ-5,7-ジクロロ-8-メトキシ-3H-キナゾリン-4-オン(5-3)を白色綿毛状の固形物(289 mg, 85%)として得た。
【0183】
3-アミノ-5,7-ジクロロ-8-メトキシ-3H-キナゾリン-4-オン(5-3): 1H NMR (DMSO-d6): δ 8.48 (s, 1 H), 7.74 (s, 1 H), 5.85 (s, 2 H), 3.94 (s, 3 H);質量スペクトル: m/z 260, 262, 264 (M+ + 1, 100%, 66%, 11%)。
【0184】
5-3 (60 mg, 0.231 mmol)および48%水性臭化水素酸(2 mL)の溶液を120℃で2時間加熱した。この溶液を室温にまで冷却し、沈殿物をろ過により分離し、ジクロロメタンおよびジエチルエーテルで連続的に洗浄し、真空乾燥して、3-アミノ-5,7-ジクロロ-8-ヒドロキシ-3H-キナゾリン-4-オン臭化水素酸塩(5-4)を白色の固形物(44 mg, 58%)として得た。
【0185】
3-アミノ-5,7-ジクロロ-8-ヒドロキシ-3H-キナゾリン-4-オン臭化水素酸塩(5-4): 1H NMR (DMSO-d6): δ 8.44 (s, 1 H), 7.60 (s, 1 H);m/z 246, 248, 250 (M+ + 1, 100%, 66%, 11%)。
【0186】
実施例5- 3-(置換)アミノ-5,7-ジクロロ-8-ヒドロキシ-3H-キナゾリン-4-オンの調製

置換フェニルヒドラジン塩酸塩(1.61 mmol)のエタノール(4 mL)氷冷懸濁液に、アルゴン雰囲気下でトリエチルアミン(185 mg, 1.83 mmol)を添加した。この混合物をイミデート5-2 (180 mg, 0.59 mmol)のエタノール(3 mL)溶液の添加前に0℃で15分間撹拌した。得られた混合物を0℃で40分間、その後室温で4日間撹拌した。この懸濁液をろ過し、白色の固形物を冷エタノールで洗浄し、真空乾燥して、8-メトキシ-3-(置換)アミノ化合物5-6を得た。
【0187】
使用したヒドラジンの例は以下である: 2,4-ジフルオロフェニルヒドラジン塩酸塩は5-6Aをもたらす、4-メトキシフェニルヒドラジン塩酸塩は5-6Bをもたらす、および4-フルオロフェニルヒドラジン塩酸塩は5-6Cをもたらす。
【0188】
8-メトキシ化合物(5-6A、5-6Bまたは5-6C) (0.133 mmol)および48%水性臭化水素酸(3 mL)の溶液を120℃で6時間加熱し、室温にまで冷却させた。この固形物をろ過により分離し、ジクロロメタンおよびジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥して、3-(置換)アミノ化合物(5-7A、5-7Bまたは5-7C)を得た(表8)。
【0189】
(表8)実施例5により調製された化合物

8-OHおよびHBr (適用される場合)の化学シフトは割当の中に含まれていない
【0190】
(表9)スキーム5に記述される工程により調製された化合物

【0191】
(表10)表1および2の化合物のいくつかのアルキル化またはアシル化により調製された化合物

【0192】
実施例6- 3-置換-3H-キナゾリン-4-チオン(7-2)の調製

3-置換-3H-キナゾリン-4-オン(0.70 mmol)、P4S10 (0.93 mmol)およびピリジン(5 mL)の混合物を加熱還流した。TLC分析によりモニターした、反応の完了した時点で、混合物を濃縮乾固し、得られた残留物により、カラムクロマトグラフィー(SiO2;酢酸エチル/メタノール, 100:1で溶出)の後に、対応する3H-キナゾリン-4-チオン7-1を得た。
【0193】
3H-キナゾリン-4-チオン7-1の混合物を実施例1で前に述べた条件によりBBr3で処理した。メタノールを用いた常法での後処理により、対応する3H-キナゾリン-4-チオン7-2を得た(表11)。
【0194】
(表11)実施例6により調製された化合物

【0195】
実施例7- 式Iの化合物の評価
以下のアッセイ法を、本発明の方法で用いる適正があるか式Iの化合物を評価するのに利用した。
【0196】
アッセイ法1. 蛍光分析H2O2アッセイ法
蛍光分析アッセイ法を利用して、ジクロロフルオロセインジアセテート(DCF;Molecular Probes, Eugene OR)に基づく銅の存在下でのAβによる過酸化水素生成を試験化合物が阻害する能力について試験した。100%のジメチルスルホキシドのDCF (5 mM)溶液(事前に20℃で1時間アルゴンを用いてパージした)を0.25 M NaOHの存在下で30分間脱アセチル化し、1 mMの最終濃度までpH 7.4で中和した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)原液をpH 7.4で1 μMに調製した。反応は96ウェルプレートに入れたPBS, pH 7.4中で行った(総量 = 250 μl/ウェル)。反応溶液には、50 nMから1 μMの範囲の濃度でAβ1-42、CuCl2をグリシンに1:6の比率で添加することにより調製され、2 Cu-Gly:1 Aβの割合でAβに添加された銅-グリシンキレート(Cu-Gly)、ドーパミン(5 μM)またはアスコルビン酸を含む還元剤、100 μM脱アセチル化DCF、および0.1 μM HRPが含まれた。1〜10 μM EDTAまたは別のキレート剤が遊離銅に対する対照として存在してもよいが、アッセイ法が機能するのには必要とされなかった。この反応混合物を37℃で60分間インキュベートした。PBS pH 7.4中のカタラーゼ(4000単位/ml)およびH2O2 (1〜2.5 μM)標準物質が陽性対照として含まれてもよい。それぞれ485 nMおよび530 nMの励起および発光フィルターを備えたプレートリーダーを用いて、蛍光を記録した。蛍光をH2O2標準物質と比較することにより、H2O2濃度を定めることができる。試験ウェルの中に所与の濃度の試験化合物を含めることにより、Aβ H2O2生成の阻害をアッセイした。
【0197】
アッセイ法2. 神経毒性アッセイ法
皮質神経細胞の初代培養
皮質培養物を既報(White et al., 1998)のように調製した。胚齢14日のBL6Jx129sv系マウスの皮質を摘出し、髄膜を含まないように切り裂き、0.025% (wt/vol)のトリプシン中で解離させた。解離した細胞を25% (vol/vol) FCSおよび5% (vol/vol) HS入りのMEM中2×106細胞/mLの密度で48ウェル培養プレート中にプレーティングし、37℃で2時間インキュベートした。次いで、培地を神経細胞培養用基礎培地(Invitrogen Life Technologies)およびB27培地添加物(Invitrogen Life Technologies)と交換した。培養物を5% CO2中37?で維持した。実験の前に、培地を抗酸化剤不含の神経細胞培養用基礎培地およびB27 (Invitrogen Life Technologies)と交換した。
【0198】
小脳顆粒神経細胞の初代培養
出生後5〜6日(P5〜6)のマウスの小脳を摘出し、髄膜を含まないように切り裂き、0.025%のトリプシン中で解離させた。小脳顆粒神経細胞(CGN)を、10%ウシ胎仔血清(FCS)、2 mMグルタミンおよび25 mM KClを添加したBME (Invitrogen Life Technologies)中350000細胞/cm2で24ウェル培養プレート中にプレーティングした。硫酸ゲンタマイシン(100 μg/mL)を全ての培養培地に添加し、培養物を5% CO2中37?で維持した。
【0199】
アッセイ法3. 細胞生存性のアッセイ法
(a) 細胞生存性のMTSアッセイ法
MTSアッセイ法を利用して、細胞生存性を判定する。培地を抗酸化剤不含のB27培地添加物入り新鮮神経細胞培養用基礎培地と交換する。1/10容量のMTS溶液(Cell Titre 96 Aqueous One, Promega Corporation)を添加し、37℃で2時間インキュベートする。分光光度計を用い、560 nmで200マイクロリットルの一定分量を測定する。
【0200】
(b) 細胞生存性のLDHアッセイ法
乳酸脱水素酵素(LDH)細胞傷害性検出キット(Boehringer Ingelheim)を製造元の取扱説明書に従って用い、血清および細胞残屑を含まない培養上清から細胞死を判定する。
【0201】
(c) Aβ神経毒性およびAβ神経保護のアッセイ法
皮質神経細胞をアッセイ法2のように5日間培養した。6日目に神経細胞培養用基礎(NB)培地(Invitrogen Life Technologies)およびB27培地添加物(Invitrogen Life Technologies)をNB培地およびB27培地添加物(抗酸化剤なし)と交換した。6日目に、試験化合物を個別に神経細胞培養物に添加した:
【0202】
試験化合物を100% DMSOに溶解して、2.5 mMの濃度にした(バイアル当たりに過剰の化合物が秤量された場合には10 mM、その後2.5 mMに希釈)。2.5 mMの原液を10分の1に連続的に希釈して、250 μM、25 μM、2.5 μMの希釈標準溶液を得た。
【0203】
Aβ調製:
Aβを最初に20 mM NaOHに溶解して1 mMの濃度にし、5分間超音波処理した。このペプチドを次にH2Oおよび10×PBSに希釈して、1×PBS中200 μM Aβの最終濃度にした。このペプチドを再び5分間超音波処理し、その後14000 rpmで5分間回転し、新しい試験管に移した。
【0204】
試験化合物を100% DMSOに溶解して、2.5 mMの濃度にした(バイアル当たりに過剰の化合物が秤量された場合には10 mM、その後2.5 mMに希釈)。2.5 mMの原液を10分の1に[NB培地およびB27 (抗酸化剤なし)に]連続的に希釈して、250 μM、25 μM、2.5 μMの希釈標準溶液を得た。試験化合物を細胞に直接的には添加せず、その代わりに以下を含む48ウェル「薬物プレート」にそれらを添加した:
「薬物プレート」の調製:
48ウェルプレートに以下を添加:
ウェル1: NB+B27 (抗酸化剤なし) 515 μl + 25 μM試験化合物24 μl + Aβ希釈液** 60 μl
ウェル2: NB+B27 (抗酸化剤なし) 515 μl + 250 μM試験化合物24 μl + Aβ希釈液60 μl
ウェル3: NB+B27 (抗酸化剤なし) 515 μl + 試験化合物希釈液***24 μl + Aβ1-42 60 μl
ウェル4: NB+B27 (抗酸化剤なし) 515 μl + 2.5 μM試験化合物24 μl + Aβ1-42 60 μl
ウェル5: NB+B27 (抗酸化剤なし) 515 μl + 25 μM試験化合物24 μl + Aβ1-42 60 μl
ウェル6: NB+B27 (抗酸化剤なし) 515 μl + 250 μM試験化合物24 μl + Aβ1-42希釈液60 μl
ウェル7: NB+B27 (抗酸化剤なし) 515 μl + 試験化合物希釈液24 μl + Aβ1-42希釈液60 μl
ウェル8: NB+B27 (抗酸化剤なし) 600 μl
Aβ1-42 60 μlと1ウェル当たりAβ1-42 20 μlと20 μM Aβ1-42とは等価であることに注意されたい。
【0205】
この薬物プレートを37℃で15分間インキュベートした。各ウェルの200 μlを対応する細胞プレートに三つ組で添加した。細胞プレートを37℃で4日間インキュベートした。
NB培地 + B27 (抗酸化剤なし)
**Aβ希釈液 2 mM NaOH、 1×PBS
***PBT希釈液 NB+B27 (抗酸化剤なし)中10% DMSO
【0206】
アッセイ法の完了:
細胞の処理後4日目に、MTSを細胞に添加することによりアッセイ法が完了する。
【0207】
(d) 試験化合物の細胞毒性のアッセイ法
皮質神経細胞をNB培地およびB27培地添加物中でアッセイ法2のように5日間培養した。
【0208】
6日目に試験化合物を抗酸化剤不含のNB培地およびB27培地添加物中の神経細胞培養物に添加した。
【0209】
試験化合物を100% DMSOに溶解して、2.5 mMの濃度にした(バイアル当たりに過剰の化合物が秤量された場合には10 mM、その後2.5 mMに希釈)。2.5 mMの原液を10分の1に連続的に希釈して、250 μM、25 μM、2.5 μMの希釈標準溶液を得た。試験化合物を細胞に直接的には添加せず、その代わりに以下を含む48ウェル「薬物プレート」にそれらを添加した:
「薬物プレート」の調製:
48ウェルプレートに以下を添加:
ウェル1: NB+B27 (抗酸化剤なし) 576 μl + 2.5 μM試験化合物24 μl
ウェル2: NB+B27 (抗酸化剤なし) 576 μl + 25 μM試験化合物24 μl
ウェル3: NB+B27 (抗酸化剤なし) 576 μl + 250 μM試験化合物24 μl
ウェル4: NB+B27 (抗酸化剤なし) 576 μl + 2.5 μM試験化合物24 μl
ウェル5: NB+B27 (抗酸化剤なし) 576 μl + 25 μM試験化合物24 μl
ウェル6: NB+B27 (抗酸化剤なし) 576 μl + 250 μM試験化合物24 μl
ウェル7: NB+B27 (抗酸化剤なし) 576 μl + 試験化合物希釈液**24 μl
ウェル8: NB+B27 (抗酸化剤なし) 600 μl
【0210】
この薬物プレートを37℃で15分間インキュベートした。各ウェルの200 μlを対応する細胞プレートに三つ組で添加した。細胞プレートを37℃で4日間インキュベートした(2化合物を各細胞プレートで試験する)。
NB培地およびB27 (抗酸化剤なし)
**PBT希釈液 NB+B27 (抗酸化剤なし)中10% DMSO
【0211】
アッセイ法の完了時に、1/10容量のMTSをプレート1ウェル当たりに添加した(すなわち、25 μl/250 μl)。プレートを37℃で2時間インキュベートし、その後、吸光度を560 nmで読み取った。
【0212】
アッセイ法4. カスパーゼアッセイ法
神経細胞培養物のカスパーゼ活性を測定するため、増殖培地を除去し、細胞を対照食塩水(pH 7.4)で2回洗浄し、氷冷した細胞抽出用緩衝液をその培養物に直接的に添加する。この抽出用緩衝液は20 mMトリス(pH 7.4)、1 mMスクロース、0.25 mM EDTA、1 mMジチオスレイトール(DTT)、0.5 mM PMSF、1% Triton X-100 (Tx-100)ならびに1 μg/mLのペプスタチンおよびアプロチニンからなる。氷上で15分間インキュベーション後、抽出用緩衝液を除去し、微量遠心機中4℃で5分間遠心分離し、上清100 μLを96ウェルプレートの各ウェルに添加する。200 μM基質(カスパーゼ3、6および8に対するそれぞれDEVD-pNA、VEID-pNAまたはIETD-pNAのいずれか) 100 μLを各ウェルに添加して、終濃度100 μMの基質を得る。プレートを37℃で2、4、6または24時間インキュベートし、吸光度を415 nmの波長(Abs415)で測定する。吸光度の読み取りをpNA単独の既知の標準物質と比較する。
【0213】
アッセイ法5. アネキシンVアッセイ法
細胞とのアネキシンV結合のレベルを測定するため、培養物を対照食塩水(pH 7.4)で2回洗浄し、引き続いて対照食塩水(pH 7.4)中およそ0.5 μg/mLの濃度でアネキシンV-FITCの添加を行う。ヨウ化プロピジウム(10 μg/mL)も同時に培養物に添加する。細胞を暗所中30分間周囲温度でインキュベートし、引き続いて新鮮な対照食塩水で3回洗浄する。Leica DMIRB顕微鏡を用いて、FITC蛍光(励起488 nm、発光510 nm)の分析を行う。ASA400カラーフィルムを用いLeica MPS 60カメラ付属品で写真を撮影し、ネガフィルムをAdobe Photoshop v2.0.1に読み込む。
【0214】
アッセイ法6. リポタンパク質酸化アッセイ法
2通りの異なる金属媒介性脂質過酸化アッセイ法を利用することができる。第1のアッセイ法は金属化タンパク質の酸化活性の測定を含む。これは透析された金属化タンパク質または天然タンパク質(指定濃度の)を0.5 mg/mL LDLと24時間(37℃)混合することにより測定される。脂質過酸化(LPO)は、脂質過酸化アッセイキット(LPO 486, Oxis International Inc. Portland, OR)をキット取扱説明書に従って用い測定する。LPOのレベルは、吸光度(486 nm)をLDL単独(100% LPO)と比較することで測定する。第2のアッセイ法は遊離の、タンパク質非結合性のCuの存在下で天然タンパク質のLPO活性を測定するために使われる。これは20 μM Cu-glyと共に非金属化ペプチド(140 μM)の0.5 mg/mL LDLへの添加と金属化タンパク質に関してのLPOのアッセイ法を含む。LPOのレベルは、吸光度(486 nm)をLDL + Cu-gly (100% LPO)と比較することで測定する。陰性対照として、LDLを同様に、タンパク質を銅で金属化するのに使われたものに匹敵する透析済みのCu-gly溶液に曝す。
【0215】
アッセイ法7. Cuで金属化されたタンパク質によって誘発される細胞毒性
タンパク質または合成ペプチドを金属-グリシン溶液と、タンパク質濃度に対し金属を等モルでまたは2倍で混合する。金属-タンパク質混合物を37℃で一晩インキュベートし、その後、カットオフ値が3,500キロダルトンの小型透析カップ(Pierce, Rockford, IL)を用いて十分に透析する(室温でdH2O (3 L/交換)を2回交換して24時間)。PBS pH 7.4に対するタンパク質の透析により、dH2O透析と同一の活性を有する金属化タンパク質を得た。
【0216】
その神経毒性作用を測定するため、金属化タンパク質、天然タンパク質またはペプチドを2日たった初代皮質神経細胞培養物に添加する。この培養物を同様に、Cu-gly (5または10 μM)またはLDLに曝す。陽性対照の培養物は、Cu-gly + LDLまたはLPO生成物である4-ヒドロキシ-ノネノール(HNE, Sigma Chemicals)で処理する。乳酸脱水素酵素(LDH)アッセイキット(Roche Molecular Biochemicals, Nunawading, Australia)を製造元の取扱説明書に従って用い、細胞死を目的に培養物をアッセイする。
【0217】
アッセイ法8. Aβ媒介性のリソソーム酸性化損失のアクリジンオレンジアッセイ法
培養したマウス皮質神経細胞をAβ1-42 (20 μM)で16時間処理し、その後、5 mg/mlアクリジンオレンジ(AO)を用いて37℃で5分間、37℃で15分間染色する。AO誘発性の蛍光を蛍光顕微鏡の赤色フィルターで測定する。AOはリソソーム指向性の弱塩基であり、これはインキュベーションの間にエンドソーム/リソソーム画分に蓄積し、オレンジ色の蛍光を示す。AOはリソソーム膜上に実質的なプロトン勾配がある限り、リソソーム内に隔離される。Aβ1-42を用いた細胞の処理は、16〜24時間以内にオレンジ色の蛍光が消失することから示されるように、リソソーム膜のプロトン勾配を崩壊させAOを細胞質ゾルに再局在化させる。
【0218】
アッセイ法9. ヒト脳アミロイド可溶化アッセイ法
このアッセイ法は、死後のヒトAD脳から得られた組織抽出物のAβを不溶相から可溶相に移動させる試験化合物の能力を評価するために行われた。
【0219】
DIAX 900ホモジナイザー(Heudolph and Co, Kelheim, Germany)またはその他の適当な装置を用いて、髄膜のない、プラークを持った皮質を最大0.5 gまで、氷冷リン酸緩衝生理食塩水pH 7.4最大2 ml中にてフルスピードで30秒間3回ホモジナイズした。リン酸緩衝生理食塩水で抽出可能な画分を得るため、ホモジネートを100,000×gで30分間遠心分離し、上清を取り除いた。または、その組織を凍結乾燥し、その後微粉砕して粉末を形成し、これを上記の抽出用に一定分量に量り分けた。遠心分離後に上清の一定分量10 μlを取り出し、8% SDS、10% 2-メルカプトエタノールを含有する2×トリス-トリシン(Tris-Ticene) SDSサンプル用緩衝液pH 8.3の等量と混合した。サンプルを次に90℃で10分間加熱し、ゲル電気泳動により分離した。皮質サンプルの不溶性画分は、最初のペレットサンプルをリン酸緩衝生理食塩水1 mlに再懸濁することで得られた。次に、この懸濁液50 μlの一定分量を上記のようにサンプル用緩衝液200 ml中で煮沸した。
【0220】
適切に希釈されたサンプルを10%から20%の勾配ゲル(Novex, San Diego, CA)に負荷することによりトリス-トリシン・ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、その後0.2 μmニトロセルロース膜(Bio-Rad, Hercules, CA)への転写を行った。Aβは、残基番号5から8、17を検出するモノクローナル抗体W02 (または別の適当な抗体)を西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ウサギ抗マウスIgG (Dako, Denmark)と併せて用いることで検出し、高感度化学発光(例えば、ECL;Amersham Life Science, Buckinghamshire, UK)を用いることで可視化した。各ゲルには参照基準物質として0.5、1および2 ngの合成Aβ40 (Keck Laboratory, Yale University, New Haven, CT)を含んだ3レーンが含まれた。
【0221】
ブロット膜は適当な撮像装置、例えば、Fuji LAS3000を用いて読み込み、デンシトメトリーは適当なソフトウェア、例えば、Multigaugeを用いて行った。単量体および二量体Aβのバンドのデンシトメトリー分析に対するシグナル強度の直線範囲は、既知のAβ標準物質に対して定めた。表13に算出されている割合は、賦形剤処置マウス群に対する処置マウス群の平均的読み込みに相当する。
【0222】
全てのサンプルを数回分析し、ゲル負荷および希釈が定量可能な標準曲線の領域内に収まるよう調整した。不溶性Aβは上記の皮質プラークからの不溶性アミロイドプラークに由来するペレット化可能な画分からなり、可溶性画分は単量体および/またはオリゴマー可溶性Aβを含む。
【0223】
1試験化合物ごとに数個のゲルを泳動し、それぞれのゲルにPBS対照を含めた。各ゲルには種々の濃度の試験化合物を含めた。スチューデント「t検定」は任意濃度の各ゲルの試験化合物により得られる最高値の平均と複数のゲルから得たPBS値の平均とを比較するために用いた。したがって、任意の試験化合物により得られる可溶化の平均増加がPBS単独と比べて有意であるか否かについての判定を行うことができる。(+)点の試験化合物はプラークの可溶化においてPBS単独の値より統計学的に有意な増加に達した化合物である。(-)点の試験化合物はプラークの可溶化においてPBS単独の値より統計学的に有意な増加に達しない化合物である。
【0224】
アッセイ法10. 金属分配
試験化合物の存在下における脳組織の抽出後の、亜鉛および銅を含め、様々な金属の分配に対する効果をアッセイするため、アミロイド可溶化アッセイ法の場合のようにヒト脳組織の抽出物由来の可溶性および不溶性の画分を調製する。これら2つの画分中の金属は、誘導結合型プラズマ質量分光測定により、必要に応じ硝酸および/または過酸化水素で適切に前処理した後で分析する。
【0225】
アッセイ法11. 遺伝子導入動物でのAβ沈着に及ぼす試験化合物の投与の影響
遺伝子導入マウスモデルはアルツハイマー病(Games et al., 1995;Hsiao et al., 1996)、パーキンソン病(Masliah et al., 2000)、家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS) (Gurney et al., 1994)、ハンチントン病(Reddy et al., 1998)、およびクロイツフェルトヤコブ病(CJD) (Telling et al., 1994)を含め、いくつかの神経疾患に利用可能である。本発明者らは、アルツハイマー病の遺伝子導入モデルの1つAPP2576遺伝子導入マウス(Hsiao et al., 1996)が同様に、高い白内障の発症率を有することを見出した。これらの動物モデルは本発明の方法を試験するのに適している。
【0226】
APP2576系統の遺伝子導入マウス(Hsiao et al 1996)を使う。8から9ヶ月齢の雌性マウスを選別し、処理のため複数の群に分ける。
【0227】
マウスは間隔を置いて殺処理し、試験化合物を用いた処置で脳アミロイド形成が減少したかどうかを判定するため、および最も効果的な投与プロトコルの特定のためその脳を調べる。脳内および血清中の可溶性および不溶性Aβのレベルは、アッセイ法9. 脳アミロイド可溶化アッセイ法に記述した方法のとおり、較正されたウエスタンブロットを用いて測定する。
【0228】
各群の他のマウスは標準的方法によるモリス水迷路を利用し、認識能力について最大8ヶ月までの期間にわたって試験する。自発運動量、覚醒および全般的健康状態の兆候を含め、特性の組み合せを主観的に評価する5点の整数尺度を用いて、動物の全般的健康状態および安らぎを同様に、予備知識のない技師により毎日測定する。
【0229】
アッセイ法12. 生理化学的特性
極性表面積(PSA)の計算
極性表面積値は、分子特性の計算用のパッケージ「モルインスピレーション(Molinspiration)」を通して利用可能なウェブベースのプログラムを用いて計算した。
【0230】
濁度溶解度測定
溶解性の概算はpH 2.0とpH 6.5の両方で測定した。これはヒトの近位胃腸管に沿って予測できるpH範囲内である。
【0231】
化合物を適切な濃度にまでDMSOに溶解し、その後0.01M HCl (およそpH = 2.0)またはpH 6.5の等張リン酸緩衝液のいずれかにスパイクし、DMSO終濃度を1%にした。次に、サンプルを比濁法により分析して、溶解範囲を測定した[D. Bevan and R. S. Lloyd, Anal. Chem. 2000, 72, 1781-1787により]。
【0232】
cLog P値
ACD Log Pソフトウェアを用いて理論的なLog P値を決定した。引用の値は未成熟なデータベースから計算されており、イオン化されていない種を表す。
【0233】
アッセイ法13. 血液脳関門の透過
試験化合物をDMSOに溶解し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を添加して50 μMの濃度で1.25%〜2.5%のDMSOを含むPBS溶液を得た。各潅流中のBBBの完全性を評価するためおよび脳組織サンプルの残留血管腔(RVS)の容積(すなわち、各潅流の終了時に血管の内腔内に残る流体の容積)を推定するため、血液脳関門(BBB)-非透過性マーカーとして作用する微量の14C-スクロースを各保存輸液に添加した(およそ0.01 μCi/mL)。
【0234】
成体雄性Spague Dawley系ラット(180〜190 g)を1.0 mL/100 g体重の用量のウレタン(25% w/v)の腹腔内注射で麻酔した。右総頸動脈を外科的に露出し脳循環の潅流用にカニューレを挿入した。次いで、全ての注入液が、残存する右内頸動脈を介して脳に入るように、右外頸動脈(これは頭蓋骨の外側の組織に血液を供給する)を右総頚動脈からその分岐部より遠位で連結した。次に、心臓を露出し、注入の開始直前に離断した。ポンプセットにより注入の速度を制御して、3.2 mL/分で送達した(このサイズのラットの場合およそ85%の正常血液が脳に供給される)。注入カニューレには初め、血管を洗い流すようにおよび血液が凝固し小血管を遮断するのを防ぐように作用するヘパリン添加PBS (10 IU/ml)の予洗液0.5 mLが含まれた。
【0235】
1.5分後に、注入ポンプを自動的に停止させ、カニューレを頚動脈から引き抜き、次いで注入液のサンプル(1〜1.5 mL)を注入カニューレの先端から回収した。次に脳を切り離し、右中脳を含む右半球、左中脳を含む左半球および後脳(小脳、脳橋および脳幹)の3つの部分に分けた。右内頚動脈経由の灌流は右半球と右中脳(左半球と後脳は変わりやすい側副潅流を受ける)に優先的に血液を供給するので、脳の右部分だけを次の測定に用いた。各動物から得た脳組織サンプルを-30℃で凍結し、ホモジナイズし、秤量した一定分量をLC-MSにより分析して総脳濃度を得た。分析はMicromass Triple Quad装置を用いて行った。移動相はアセトニトリル/水勾配(0.05%ギ酸を含有する)からなり、カラムはPhenomenex Luna CNとした。
【0236】
各脳組織サンプル由来の少量の一定分量および対応する注入液を液体シンチレーションカウンティングにより分析して、14C-スクロースのレベルを測定した。脳組織中のスクロースの測定濃度(dpm/mg)を対応する注入液のその濃度(dpm/μL)で割ることにより、各脳組織サンプル中の残留血管腔(RVS)を計算した。これは各灌流の終了時に血管内に残存する流体の容積である。このRVSに注入液中の試験化合物の濃度を乗じることにより、各脳組織サンプル中の血管内に存在する試験化合物の総残留量(すなわち、BBBを通過しなかった量)が得られる。これを総脳濃度から差し引くことにより、血管外にある各脳組織サンプル中の薬物の量(すなわち、BBBを通過した量)が得られる。このRVS-補正脳濃度の除算により、脳摂取率が得られる(方程式1)。
方程式1.

【0237】
合計5〜6回の脳潅流実験を試験化合物の各々について行い、平均脳摂取率を計算した。
【0238】
50%を超える比率は極めて急速に脳に進入する化合物を示しており、10〜50%の比率は十分に脳に進入する化合物を示しており、10%に満たない比率(観測されず)は非常にゆっくり脳に進入する化合物を示しているはずであり、治療投与に適さないものと思われ、1%に満たない比率(観測されず)は脳から効率的に排除される化合物を示している。
【0239】
アッセイ法14. 遺伝子導入マウスの脳免疫組織化学
アッセイ法11で言及したAPP2576遺伝子導入マウス(Hsiao et al., 1996)をこのアッセイ法に利用する。ホルマリン固定されたマウスの対側脳組織を冠状に切断する。切片(10 μm)を対応する部位から採取し、抗原回復のため80%ギ酸で処理する。使われる一次抗体はモノクローナル抗体1E8であり(SmithKline Beecham, UK)、これはAβの残基番号18と22の間の抗原決定基を認識する。免疫反応性は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(3,39-ジアミノベンジジン・クロマジェンを使用) (Dako)およびアルカリホスファターゼ(5-ブロモ-4-クロロ 3-インドキシルリン酸およびニトロブルーテトラゾリウムクロライド・クロマジェンを使用) (Dako)を結合した二次抗体で発色させる。切片ごとのプラーク存在量は、下記の尺度に従って、処置に対し盲目的な技師2人が評価する:
0 = プラークは出現せず
1 = 存在するが極めてまばらなプラーク
2 = いくつかのプラークが存在
3 = 多数のプラークが限られた範囲に見られる
4 = 特定の範囲に限定されない大量のプラーク
適用可能な場合、中間値、例えば2.5を割り当てる。
スチューデントの「t」検定を群間の比較に用いる。
【0240】
アッセイ法15. 薬物動態プロファイル
・試験化合物の静脈内注入;適当な賦形剤中2 mg/kgをラット2匹に投与し、動脈血を24時間以内にサンプリングする。
・試験化合物の経口投与;適当な賦形剤中30 mg/kgをラット2匹に経口強制投与により投与し、動脈血を24時間以内にサンプリングする。
・試験化合物の血漿濃度を適当な分析法により測定する。
計算:

CLtotal = IV投与後の総血漿クリアランス
Vαβ = IV投与後の排除相中の分布量
BA = 経口生体利用能
AUCIV = IV投与後の血漿濃度 対 時間0から無限大までの時間軸下の面積
AUC経口 = 経口投与後の血漿濃度 対 時間0から無限大までの時間軸下の面積
β = IV投与後の最終排出速度定数
【0241】
アッセイ法16. 試験化合物のマウス血漿レベルの測定
PB 1075
30 mg/kgでのPB 1075の経口投与は、Na-カルボキシメチルセルロース(CMC)中の懸濁液として、マウス4匹に経口強制投与により投与した。マウス2匹を投与から30分後に殺処理し、マウス2匹を投与から60分後に殺処理した。血液を心臓穿刺により得、血漿を遠心により分離した。
【0242】
PB 1075の濃度は三連四重極型装置を用いてLC/MSにより測定した。移動相はアセトニトリル(ACN)/水勾配(0.05%ギ酸を含有する)からなり、カラムはPhenomenex Lunea 5 μm C8 (50×2 mm)カラムとした。
【0243】
供給された急性毒性マウス血漿サンプルをACNによるタンパク質沈殿の後に直接的に注入した。血漿での分析法は10から10,000 ng/mlの範囲で直線性であった(R2 = 0.994)。血漿からのPB 1075の回収率は約100%であった。
【0244】
マウス血漿サンプル中のPB 1075の濃度を表12に示す。
【0245】
(表12)30 mg/kgで経口投与後のマウス血漿中のPB 1075の濃度

【0246】
PB 1076
30 mg/kgでのPB 1076の経口投与は、Na-カルボキシメチルセルロース(CMC)中の懸濁液として、マウス4匹に経口強制投与により投与した。マウス2匹を投与から30分後に殺処理し、マウス2匹を投与から60分後に殺処理した。血液を心臓穿刺により得、血漿を遠心により分離した。
【0247】
PB 1076の濃度は三連四重極型装置を用いてLC/MSにより測定した。移動相はアセトニトリル(ACN)/水勾配(0.05%ギ酸を含有する)からなり、カラムはPhenomenex Luna 5 μm C8 (50×2 mm)カラムとした。
【0248】
マウス血漿サンプルをACNによるタンパク質沈殿の後に直接的に注入した。血漿での分析法は500から10,000 ng/mlの範囲で直線性であった(R2 = 0.999)。血漿からのPB 1076の回収率は約85%であった。
【0249】
30 mg/kgで経口的に投与後のマウス血漿中のPB 1076の濃度を表13に示す。
【0250】
(表13)30 mg/kgで経口投与後のマウス血漿中のPB 1076の濃度

【0251】
PB 1077
30 mg/kgでのPB 1077の経口投与は、Na-カルボキシメチルセルロース(CMC)中の懸濁液として、マウス4匹に経口強制投与により投与した。マウス2匹を投与から30分後に殺処理し、マウス2匹を投与から60分後に殺処理した。血液を心臓穿刺により得、血漿を遠心により分離した。
【0252】
PB 1077の濃度は三連四重極型装置を用いてLC/MSにより測定した。移動相はアセトニトリル(ACN)/水勾配(0.05%ギ酸を含有する)からなり、カラムはPhenomenex Luna 5 μm C8 (50×2 mm)カラムとした。
【0253】
マウス血漿サンプルをACNによるタンパク質沈殿の後に直接的に注入した。血漿での分析法は5から5,000 ng/mlの範囲で直線性であった(R2 = 0.999)。血漿からのPB 1077の回収率は約92%であった。
【0254】
30 mg/kgで経口的に投与後のマウス血漿中のPB 1077の濃度を表14に示す。
【0255】
(表14)30 mg/kgで経口投与後のマウス血漿中のPB 1077の濃度

【0256】
アッセイ法17. 合成アミロイドプラーク脱凝集アッセイ法
このアッセイ法では、合成によるアルツハイマーのA-β42残基ペプチドの、亜鉛との沈殿によって形成された凝集体を脱凝集する試験化合物の能力を測定する。
【0257】
合成プラーク脱凝集アッセイ法はチオフラビンT蛍光に基づくアッセイ法であり、このアッセイ法では、亜鉛の存在下でのアルツハイマーA-βタンパク質(Aβ)のインキュベーションによって作出された合成凝集体を脱凝集する試験化合物の能力を測定する。
【0258】
アルツハイマーのアミロイドプラークに最も多い形態である42残基のA-βを亜鉛塩の添加により沈殿させて、結晶性のアミロイドプラークコアと物理化学的に合致するβシート立体構造の凝集体を形成させる。βシート構造の内部にインターカレートする際に特異的蛍光を示す作用物質チオフラビンTは、凝集過程の間にA-β/Zn凝集体に取り込まれる。試験化合物による金属結合凝集体の可溶化は、βシート構造が失われるのにつれて蛍光の減少を引き起こすはずである。このアッセイ法における化合物の活性は、その金属キレート特性、溶解性、疎水性およびアミロイド塊との相互作用に影響を与える構造要素の組み合せである。
【0259】
このアッセイ法はプラーク脱凝集のインビトロモデルとして、試験化合物が結合金属を求めてAβと競合するようまたは金属結合部位に競合的に結合することで金属に取って代わるよう作用し、結果的に亜鉛により沈殿されたAβが可溶化されることを引き起こす過程をモデルとする。
【0260】
アッセイ試薬
便宜上、合成Aβペプチドの一定分量を調製する。Aβを蒸留H2Oに溶解し、ペプチド濃度を有効な標準曲線に対して214 nmの吸光度により評価する。Aβ/Znは溶媒のみ(DMSO)の存在下で凝集し、陰性対照として対照賦形剤(PBS)を各アッセイ法に含める。試験化合物をDMSOに溶解して、5 mMの濃度にした。必要に応じて所望の終濃度の100倍にまでDMSO中で希釈を行い、A-β凝集体にすぐに添加した。
【0261】
方法
A-β1-42をPBS pH 6.6中、ZnCl2およびチオフラビンT (ThT)とともに(1:2:2)のモル比で回転ホイール上37℃にて24時間インキュベートする。インキュベーション後、凝集体を試験薬物とともに、回転させながら37℃でさらに2時間インキュベートする。PBSブランク、未処理の凝集体およびDMSO対照を各実験に含める。2時間インキュベーション後、サンプルをキュベット中でLS55 (Perkin Elmer)蛍光光度計によりThT蛍光について測定する。
【0262】
データはFL Winlabソフトウェア(Perkin Elmer)で作成し、GraphPad Prism v4.0ソフトウェアを用いて解析する。データは複数の読み込みの平均として計算する。
【0263】
結果
結果を50%脱凝集(IC50)が得られる濃度(μM)としておよび5 μMでの脱凝集割合として(5/%低減として表される)表形式で示す。この2つの値はともに脱凝集の効率の指標となる。
【0264】
化合物が試験される濃度範囲内で50%脱凝集を達成しない場合には、その結果は、化合物が試験される最大濃度に当たる20 μMよりも大きい(>20 μM)と記録される。この結果から、試験化合物はAβ1-42凝集体を脱凝集可能にすることが相対的に弱いと示唆される。20 μM未満でIC50を達成できるおよび5 μMで20%を超える脱凝集を記録する試験化合物は「優良」と考えられる。20 μM未満でIC50を達成できるおよび5 μMで40%を超える脱凝集を記録する試験化合物は「非常に優良」と考えられる。
【0265】
(表15)









【0266】
説明および例の中で引用される参照文献が以下の頁に掲載されており、この参照により本明細書に組み入れられる。
参照文献






【0267】
本発明を明確にするおよび理解するため少し詳細に記述してきたが、本明細書に開示した本発明の概念の範囲から逸脱することなく、本明細書に記述した態様および方法にさまざまな変更および変形を行えることは当業者には明らかであると思われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式Iの化合物、その塩、水和物、溶媒和物、誘導体、プロドラッグ、互変異性体および/または異性体:

式中、
R2が、HまたはCH2NR1R4であり、R1およびR4が独立してH、置換されてもよいC1〜6アルキルおよび置換されてもよいC3〜6シクロアルキルから選択され;
R3がH;置換されてもよいC1〜4アルキル;置換されてもよいC1〜4アルケニル;置換されてもよいC3〜6シクロアルキル;置換されてもよい6員アリールまたはヘテロアリールと縮合されてもよい、置換されてもよい6員アリール;置換されてもよい6員アリールまたはヘテロアリールと縮合されてもよい、置換されてもよい飽和または不飽和5員または6員N含有ヘテロシクリル;nが1から6の整数であり、かつR6が置換されてもよいC1〜4アルキル、置換されてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されてもよい飽和もしくは不飽和5員もしくは6員N含有ヘテロシクリルまたは置換されてもよい6員アリールである(CH2)nR6;R8およびR9が独立してH、置換されてもよいC1〜4アルキル、置換されてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されてもよい飽和または不飽和5員または6員N含有ヘテロシクリルおよび置換されてもよい6員アリールであるNR8R9;R10が置換されてもよいC1〜4アルキル、置換されてもよいC3〜6シクロアルキル、置換されてもよい飽和もしくは不飽和5員もしくは6員N含有ヘテロシクリルまたは置換されてもよい6員アリールであるNHCOR10;R11およびR12が独立してH、置換されてもよいC1〜6アルキル、置換されてもよいC2〜6アルキニルおよび置換されてもよい6員アリールと縮合されてもよい、置換されてもよい5員または6員N含有ヘテロシクリルから選択されるCH2CONR11R12;およびR3が置換されてもよいC1〜6アルキル、ならびにR14が置換されたC1〜6アルキルおよび置換されてもよい6員アリールから任意で選択されるSO2R14から選択され、かつmが1から6である、(CH2)mNHR13であり;
R5およびR7が独立してHおよびハロから選択され;および
XがOまたはSであり、
但し
(i) R2およびR3の少なくとも一方がH以外であり;
(ii) R5およびR7の少なくとも一方がハロであり;ならびに
(iii) XがOであり、R5およびR7がClであり、かつR2がHである場合に、R3がシクロプロピルではない。
【請求項2】
以下の式IAの化合物である、請求項1記載の化合物:

式中、
R5およびR7ならびにXが請求項1で定義される通りであり;および
R3が置換されてもよいC1〜4アルキル;置換されてもよいC1〜4アルケニル;置換されてもよい6員アリールまたはヘテロアリールと縮合されてもよい、置換されてもよい飽和または不飽和5員または6員N含有ヘテロシクリル;nが1から3であり、かつR6が置換されてもよいC3〜6シクロアルキルまたは置換されてもよい飽和もしくは不飽和5員もしくは6員N含有ヘテロシクリルである(CH2)nR6;R8がHであり、かつR9がHまたは置換されてもよいC1〜4アルキルまたは置換されてもよい6員アリールであるNR8R9;R10が置換されてもよいC1〜4アルキルまたは置換されてもよい6員アリールであるNHCOR10である。
【請求項3】
R3が置換されてもよいC1〜4アルキル;置換されてもよいC1〜4アルケニル;置換されてもよい6員アリールまたはヘテロアリールと縮合されてもよい、置換されてもよい飽和または不飽和5員または6員N含有ヘテロシクリル;nが1から3であり、かつR6が置換されてもよいC3〜6シクロアルキルまたは置換されてもよい飽和もしくは不飽和5員もしくは6員N含有ヘテロシクリルである(CH2)nR6;またはR8がHであり、かつR9がHもしくは置換されてもよいC1〜4アルキルもしくは置換されてもよい6員アリールであるNR8R9である、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
以下の通りである、請求項1〜3のいずれか一項記載の化合物:





【請求項5】
以下の式IBの化合物である、請求項1記載の化合物:

式中、R2、R5、R7およびXが請求項1で定義される通りである。
【請求項6】
R2がCH2NR1R4であり、R1およびR4が独立してH、置換されてもよいC1〜6アルキルおよび置換されてもよいC3〜6シクロアルキルから選択される、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
以下の通りである、請求項1、5または6のいずれか一項記載の化合物:


【請求項8】
以下の式ICの化合物である、請求項1記載の化合物:

式中、
R5、R7およびXが請求項1で定義される通りであり;および
R2CがCH2NR1R4であり、R1およびR4が独立してHおよび置換されてもよいC1〜6アルキルから選択され;および
R3Cが置換されてもよいC1〜4アルキルである。
【請求項9】
以下の通りである、請求項8記載の化合物:


【請求項10】
R5およびR7がともにハロである、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項11】
R5およびR7がともにクロロである、請求項9記載の化合物。
【請求項12】
薬剤としての、請求項1〜11のいずれか一項で定義される式Iの化合物の使用方法。
【請求項13】
薬剤が神経治療薬または神経保護薬である、請求項12記載の使用方法。
【請求項14】
薬剤が抗アミロイド形成薬である、請求項12または請求項13記載の使用方法。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか一項で定義される式Iの化合物および薬学的にまたは獣医学的に許容される担体を含む薬学的または獣医学的組成物。
【請求項16】
他の薬物をさらに含む、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
他の薬物がアセチルコリンエステラーゼ活性部位の阻害剤、抗酸化剤、抗炎症剤またはエストロゲン様物質である、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
その必要性がある被験体への請求項1〜11のいずれか一項で定義される式Iの化合物の有効量の投与を含む、神経学的状態の治療、改善および/または予防の方法。
【請求項19】
神経学的状態が神経変性疾患である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
神経変性疾患が神経変性アミロイドーシスである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
神経変性疾患が散発性もしくは家族性のアルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、白内障、パーキンソン病、クロイツフェルト-ヤコブ病および「狂牛」病と関連するその新規の変種、ハンチントン病、レヴィー小体の形成を伴う認知症、多系統萎縮症、ハレルフォルデン-スパッツ病、びまん性レヴィー小体病、致死性家族性不眠症、ゲルストマン・シュトロイスラー・シェインカー病、アミロイドーシスを伴う遺伝性大脳出血-オランダ型、多発性硬化症、タウオパシー、運動ニューロン疾患またはプリオン病である、請求項19または請求項20記載の方法。
【請求項22】
神経変性疾患がパーキンソン病である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
神経変性疾患がAβ関連状態である、請求項19〜21のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
Aβ関連状態がアルツハイマー病またはダウン症候群もしくは家族性アルツハイマー病の数種の常染色体優性型の1つに関連する認知症である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
被験体の認知衰退を遅くする、低減するまたは妨げる、請求項18〜24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
他の薬物の別の、連続のまたは同時の投与をさらに含む、請求項18〜25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
他の薬物がアセチルコリンエステラーゼ活性部位の阻害剤、抗酸化剤、抗炎症剤またはエストロゲン様物質である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
式Iの化合物が経口的に、局所的にまたは非経口的に投与される、請求項18〜27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
神経学的状態の治療、改善および/または予防用の薬物の製造における、請求項1〜11のいずれか一項で定義される式Iの化合物の使用方法。
【請求項30】
神経学的状態の治療、改善および/または予防のための請求項1〜11のいずれか一項で定義される式Iの化合物の使用方法。
【請求項31】
神経学的状態の治療、改善および/または予防で用いる請求項1〜11で定義される式Iの化合物。
【請求項32】
請求項1〜11のいずれか一項で定義される式Iの化合物の調製方法であって、以下の段階を含む方法:
(a) R5およびR7が請求項1で定義した通りである式V

の保護されてもよい化合物を、R3が請求項1で定義した通りであるH2NR9と反応させて、式VII

の保護されてもよい化合物を形成させる段階;
(b) 式VIIの化合物を還元して、式VIII

の保護されてもよい化合物を形成させる段階;
(c) 式VIIIの化合物を環化して、R2がHである式Iの保護されてもよい化合物を形成させる段階;または
(d) R2CHO、R2CO2HまたはRXが置換されてもよいC1〜4アルキルもしくは置換されてもよい6員アリールであるR2C(ORX)3の存在下での式VIIIの化合物の環化段階。
【請求項33】
R2がHである請求項1〜11のいずれか一項で定義される式Iの化合物の調製方法であって、以下の段階を含む方法:
(a) R5およびR7が請求項1で定義した通りである式VI

の保護されてもよい化合物をアミノ化して、式IX

の保護されてもよい化合物を形成させる段階;および
(b) Lが離脱基であり、かつRXが請求項32で定義した通りであるR3-LまたはR3OSO2RXと式IXの化合物を反応させる段階。
【請求項34】
請求項1〜11のいずれか一項で定義される式Iの化合物の調製方法であって、以下の段階を含む方法:
(a) 請求項33で定義した通りの式VIの保護されてもよい化合物をホルミル化剤と反応させて、式X

の保護されてもよい化合物または式XI

の保護されてもよい化合物のいずれかを形成させる段階;
(b) R2を含むアシル化剤と式XまたはXIの化合物を反応させて、R2が請求項1で定義した通りである式XII

の保護されてもよい化合物または式XIII

の化合物を形成させる段階;および
(c) R3が請求項1で定義した通りであるH2NR3と式XIIまたはXIIIの化合物を反応させる段階。
【請求項35】
R5およびR7が請求項1で定義される通りである式IV

の化合物の調製方法であって、
式III

の化合物のジアゾ化の段階を含む方法。
【請求項36】
請求項32で定義した通りの式Vの化合物の調製方法であって、以下の段階を含む方法:
(a) 請求項35で定義した通りの式IIIの化合物をジアゾ化して、請求項35で定義した通りの式IVの化合物を形成させる段階;および
(b) 式IVの化合物のニトロ化段階。
【請求項37】
請求項33で定義した通りの式VIの化合物の調製方法であって、以下の段階を含む方法:
(a) 請求項35で定義した通りの式IVの化合物をジアゾ化して、請求項32で定義した通りの式Vの化合物を形成させる段階;
(b) 式VIの化合物をニトロ化して、式Vの化合物を形成させる段階;および
(c) 式Vの化合物を還元する段階。

【公表番号】特表2007−530601(P2007−530601A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505341(P2007−505341)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【国際出願番号】PCT/AU2005/000477
【国際公開番号】WO2005/095360
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(503004149)プラナ バイオテクノロジー リミティッド (9)
【Fターム(参考)】