説明

移動体表示装置

【課題】移動体の特定の挙動を検出することで、その挙動を示した位置を自動的に記憶することができる移動体表示装置を提供する。
【解決手段】移動体表示装置としてのプロッタ装置は、GPS受信機と、メモリと、CPUと、を備える。GPS受信機は、測位信号を取得して、当該自船の位置を算出する。また、GPS受信機は、測位信号に基づいて、自船の速度又は向きを算出する。メモリは、GPS受信機で算出した前記速度が所定時間内に所定の変化量以上変化したこと、又は、GPS受信機で算出した向きが所定時間内に所定角度以上変化したことを検出した場合に、前記変化が生じた位置を記憶する。CPUは、前記変化が生じた位置に対応するマークをディスプレイに表示するための処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位信号に基づいて決定される移動体の位置と、特定の場所を示すマークと、を表示画面に表示するための移動体表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
港、給油所及び魚が良く釣れた場所等の特定の位置を記憶させ、これらの特定の位置を示すマークを自船位置(移動体の位置)とともに表示可能なプロッタ装置(移動体表示装置)が従来から知られている。この種のプロッタ装置を開示するものとして、例えば特許文献1がある。
【0003】
また、プロッタ装置には、出発地から目的地に到達するためのルートを作成し、当該ルートを自船位置とともに画面上に表示する機能を有するものがある。ルート上には、船がその進路を変更する箇所として変針点が設定される。この変針点は、航海上避けなければならないエリア(浅瀬、進入禁止区域、島及び半島等)を考慮して、出発地から目的地を結ぶようにして設定される。ルートの作成方法としては、自船が通過したポイント(位置)をマークとして記憶し、これらのマークに基づいて作成する方法がある。また、予めユーザによって設定されたマークを出発地、経由地及び目的地等に設定し、これらのマークを繋ぐようにして作成する方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−288562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自船が通過したポイントに基づいて自動的にルートを作成する方法は、実際に航行した航路を再現することができる点で便利である。しかし、自船が通過したポイントは、距離や時間等で一定の間隔をあけて設定されるため、実際に船が進路を変えた場所に必ずしも変針点が設定される訳ではなかった。
【0006】
過去に航行した航路の再現性を高める方法として、マーク位置を設定する間隔を短くすることが考えられる。しかし、マーク位置を設定する間隔を短くすれば、設定されるマークの数が必要以上に増えてしまい、画面の視認性が損なわれるおそれがある。また、記憶させるマークが増えればメモリの記憶領域を圧迫し、表示処理等の負荷も増大してしまう。そこで、船が進路変更を行っている最中に、変針点としてマークを手動で設定する方法が考えられる。しかし、船の針路変更を行うたびにマークを設定する操作をするのは手間が掛かり、操船に集中するあまりマークの入力操作を忘れてしまうおそれもあった。
【0007】
このことは、カジキマグロ等の比較的大型な魚が掛かった位置を、釣りポイントとして記憶させる際のマークの入力操作においても言うことができる。大型魚がヒットした場合、針の掛かり(フックアップ)を確実にする等のために、ヒットの直後に船速を急上昇させることが望まれる。しかしながら、このように素早い操船が要求される緊迫した状況下では、船速を上昇させる操作を行いながらマークを手動で設定することは困難であった。また、大型魚を釣り上げた後又は逃げられた後に、魚が掛かったポイントとしてマークを入力しようとしても、その時点では、実際にヒットした位置から船が離れてしまっていることが多い。従って、魚が掛かった位置を正確にマークとして記憶させることは困難であった。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、移動体の特定の挙動を検出することで、その挙動を示した位置を自動的に記憶することができる移動体表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の観点によれば、以下のように構成される移動体表示装置が提供される。即ち、移動体表示装置は、位置算出部と、挙動算出部と、位置記憶部と、を備える。前記位置算出部は、対象とする移動体の測位信号を取得して、当該移動体の位置を算出する。前記挙動算出部は、前記測位信号に基づいて、前記移動体の位置変化を算出する。前記位置記憶部は、予め設定された判定条件を満たす前記位置変化が検出された場合に、当該位置変化が検出された位置を記憶する。
【0011】
これにより、判定条件を適宜設定することで、移動体の特定の挙動を検出して、その位置を自動的に記憶させることができる。従って、位置を記憶させる操作を忘れたために場所がわからなくなったり、記憶させた位置が意図した場所から大きく外れてしまったりするようなことを確実に防止できる。また、移動体が特定の挙動を示した位置が記憶されるので、ユーザは、特定の挙動が検出された位置を目的地としたり、移動体が目的地へと向かうためのルートの通過点としたりすることができる。
【0012】
前記の移動体表示装置においては、以下のように構成されることが好ましい。前記挙動算出部は、速度又は向きを算出する。前記位置記憶部は、前記挙動算出部で算出した前記速度が所定時間内に所定の変化量以上変化したこと、又は、前記挙動算出部で算出した前記向きが所定時間内に所定角度以上変化したことを検出した場合に、その変化が生じた位置を記憶する。
【0013】
これにより、移動体の進路を変更するために減速して当該移動体の向きを変更した場合、そのような移動体の挙動が検出されて、進路の変更場所が自動的に記憶されることになる。従って、過去に記憶された場所を通るように目的地から出発地までのルートを設定することで、以前に通った経路をより正確に再現することができる。また、特定の状況下で移動体が急加速又は急減速した場合も、そのような移動体の挙動が検出されて、実際に急加速又は急減速を行った場所が自動的に記憶されることになる。
【0014】
前記の移動体表示装置においては、前記所定時間、前記所定の変化量及び前記所定角度の少なくとも何れか1つの条件が移動体の速度に基づいて変更されることが好ましい。
【0015】
これにより、移動体の速度を考慮に入れることで、位置を記憶すべき挙動を必要かつ十分に検出することができる。
【0016】
前記の移動体表示装置においては、表示画面において前記位置変化が生じた位置にマークを表示するための処理を行うマーク表示処理部を備えることが好ましい。
【0017】
これにより、ユーザは、特定の挙動が検出された位置に表示されるマークを参考にして、移動体の進路を決定することができる。
【0018】
前記の移動体表示装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記位置記憶部は、前記位置変化が生じた位置を記憶するとともに、前記移動体の速度を記憶可能に構成されている。前記マーク表示処理部は、当該速度に基づいて異なる態様のマークを設定する。
【0019】
これにより、速度に応じて異なる移動体の状況をマークの表示に自動的に反映させることができる。
【0020】
前記の移動体表示装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記位置記憶部は、前記位置変化が生じた位置を記憶するとともに、当該位置が記憶された日時を記憶可能に構成されている。前記マーク表示処理部は、当該日時に応じてマークを異なる態様で表示させる。
【0021】
これにより、入力された日時がマークの態様に反映されることになるので、表示画面に多数のマークが表示されている場合でも、他のマークと区別し易く、必要な情報を容易に探し出すことができる。また、特定の挙動を検出して記憶されたマークの場合、日時の情報が反映されることで、マークが付けられた場所でどの時期に特定の挙動が示されたか等を容易に把握することができる。
【0022】
前記の移動体表示装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、移動体表示装置は、水深を検出する測深部を接続可能に構成される。前記マーク表示処理部は、前記位置変化が生じた位置を記憶するときの水深に応じて、マークを異なる態様で表示させる。
【0023】
これにより、水深がマークの態様に反映されることになるので、マークを見ることで、特定の挙動が検出された場所の環境や状況を直感的に判断することができる。例えば、ユーザは、当該マークが付けられた場所で釣ることができる魚の種別のおおよそを、水深を手掛かりとして判断することができる。
【0024】
前記の移動体表示装置においては、所定の条件を満たした場合に、マーク位置を記憶することを禁止する禁止機能を備えることが好ましい。
【0025】
これにより、変化が生じた位置が大量に記憶されて位置記憶部に過大な負担が掛かることを防止できる。
【0026】
前記の移動体表示装置においては、前記マーク表示処理部は、所定の条件を満たした場合に、マークを前記表示画面に表示しないように処理することが好ましい。
【0027】
これにより、必要性に乏しい場所にマークが表示されにくくなるので、必要な情報を確認し易くすることができる。また、マークの表示処理の負荷を軽減することができる。
【0028】
前記の移動体表示装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記所定の条件は、当該移動体の位置を基準として設定された所定範囲に、過去に前記位置変化が生じて記憶された位置情報が存在する場合に満たされる。
【0029】
これにより、同じエリアに位置が過剰に密集して記憶されたり、大量にマークが表示されて表示画面の視認性が損なわれたりする事態を防止することができる。
【0030】
前記の移動体表示装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記所定の条件は、予め設定されている入力位置を基準として設定された所定範囲に当該移動体が存在する場合、又は、当該移動体の位置を基準として設定された所定範囲に予め設定されている入力位置が存在する場合に満たされる。
【0031】
これにより、マークを入力したくないエリアで、過剰に位置が記憶されたり、過剰にマークが表示されたりすることを防止できる。
【0032】
前記の移動体表示装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記移動体は船舶である。前記所定の条件は、沿岸を基準として設定された所定範囲に当該船舶が存在する場合、又は、当該船舶の位置を基準として設定された所定範囲に海岸線が存在する場合に満たされる。
【0033】
即ち、沿岸周辺領域では、マークを表示させる必要性が一般的に高くない一方で、入り組んだ地形が多いために船が進路を頻繁に変更しなければならないことが多い。この点、上記の構成によれば、船が沿岸の周辺で向きを変える度にマーク位置が自動的に記憶されたり、沿岸の周辺でマークが大量に表示されたりすることを防止することができる。
【0034】
前記の移動体表示装置においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記移動体は船舶であり、他船の識別情報を受信する識別情報受信機を接続可能に構成される。前記所定の条件は、自船位置を基準として設定された所定範囲に前記識別情報を発信した他船が存在する場合、又は、前記識別情報を発信した他船位置を基準として設定された所定範囲に当該自船が存在する場合に満たされる。
【0035】
これにより、他船を回避するために自船が一時的に回避行動を行った場合に、マーク位置が自動的に記憶される又はマークが表示されてしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係るプロッタ装置の正面図。
【図2】プロッタ装置の電気的構成の要部を示すブロック図。
【図3】メモリに記憶されるマークテーブルの項目を模式的に示す説明図。
【図4】マーク自動入力を設定するメニュー画面の一例をメニューツリーで表現した模式図。
【図5】マーク自動入力が行われる様子を示すディスプレイの模式図。
【図6】禁止ルールによってマーク自動入力が行われない場合を示すディスプレイの模式図。
【図7】マーク自動入力の処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る移動体表示装置(航跡表示装置)としてのプロッタ装置1の正面図である。図2は、プロッタ装置1の電気的構成の要部を示すブロック図である。図3は、メモリに記憶されるマークテーブルの項目を模式的に示す説明図である。
【0038】
プロッタ装置1は舶用機器として用いられるものであり、自船位置を海図とともに表示するものである。図1及び図2に示すように、プロッタ装置1は、CPU11と、メモリ12と、GPS受信機13と、操作キー14と、メモリーカード接続部25と、ディスプレイ15と、ブザー16と、を主要な構成として備えている。また、図2に示すように、プロッタ装置1には、GPSアンテナ21と、測深機23と、AIS受信機22と、が接続されている。
【0039】
また、プロッタ装置1は、レーダアンテナ(レーダ装置)及び魚群探知機等の外部装置(図面において省略)とハブを介してネットワーク接続されており、他船の位置情報や魚の存在情報を取得してディスプレイ15に表示できるように構成されている。このプロッタ装置1が外部装置と行うデータ通信は、適宜の通信プロトコルを用いて行われている。この通信プロトコルとしては、例えば、NMEA(National Marine Electronics Association)2000によって規定される通信プロトコルを採用することができる。
【0040】
また、プロッタ装置1は、特定の位置を緯度経度情報として記憶し、ディスプレイ15に表示される画像の対応する位置にマークとして表示する機能を有している。そして、本実施形態のプロッタ装置1は、船の特定の挙動を検出し、その特定の挙動を示した位置を自動的に記憶するマーク自動入力機能を有している。また、プロッタ装置1は、ルート作成機能を有しており、予め記憶されているマーク等の情報に基づいてルートを作成したり、航跡をルートとして記憶したりできるように構成されている。
【0041】
次に、マーク自動入力を実現するプロッタ装置1の構成について説明する。なお、以下の説明において、マーク位置と、そのマーク位置に対応するマークの外観情報等をメモリ12に記憶させることを「マークを入力する」等と表現することがある。
【0042】
CPU11は、プロッタ装置1の各部の制御を行うためのものである。プロッタ装置1の自動入力機能がONされている状態では、このCPU11が、外部から送られてくる船の挙動を示す情報を監視し、船が特定の挙動を示した場合に自動的にマークを入力する制御及びマークの入力に伴う各種の処理等を行う。また、本実施形態のCPU11は、メモリ12に自動的に記憶された位置をマークとして表示画面に表示するための処理を実行するマーク表示処理部としての機能を有している。
【0043】
メモリ12は、航跡情報、ルート情報等の各種の情報を記憶することができる。また、メモリ12は、マークに関する位置等の情報を記憶可能な位置記憶部としての機能を有している。図3(a)に示すように、このメモリ12には、マークの位置を示す緯度経度情報(Lat,Lot)、マークが入力された日時を示す情報(YYMMDDhhmm)、マークの外観を決定するマーク情報等がテーブル形式で記憶される。なお、Latは緯度を示す情報であり、Lotは経度を示す情報である。また、YYMMDDhhmmのうち、YYは年(例えば2000年であれば00)、MMは月、DDは日、hhは時、mmは分をそれぞれ意味する。マーク情報は、外観を示す情報であり、形状、色及び模様を示す情報を意味する。図3では、説明をわかり易くするためにマーク情報を図形で表現したが、実際にはディスプレイ15に表示される外観に対応するマークコード(数字やアルファベット等)で記憶される。
【0044】
GPS受信機13には、プロッタ装置1の外部に接続されるGPSアンテナ21が受信したGPS衛星からの信号が入力されており、この信号に基づいて自船の位置を算出する。また、GPS受信機13は、測位信号の情報に基づいて船速情報及び船の進路情報を出力可能に構成されている。GPS受信機13から出力された船速情報及び進路情報はCPU11に送信され、これらの情報に基づいてCPU11は船の挙動を監視する。このように、本実施形態のGPS受信機13は、自船の位置を算出する位置算出部として機能するとともに、自船の挙動を算出する挙動算出部としても機能するように構成されている。なお、以下の説明において、進路を、船が進行する向きを示すという意味で「船の向き」と表現することがある。
【0045】
操作キー14は、プロッタ装置1の各種の機能を実行させるための操作手段である。ユーザは、操作キー14を操作してディスプレイ15上にメニュー画面を呼び出して各種の設定を変更できるように構成されている。また、マーク自動入力を行う際の各種の条件の変更も、この操作キー14を操作することによって行うことができる。
【0046】
メモリーカード接続部25は、メモリーカード(海図情報媒体)35を接続するためのものである。メモリーカード接続部25に接続されるメモリーカード35には、海岸線等の海図データが予め記憶されている。CPU11は、メモリーカード35に記憶されている海図データをメモリ12に読み込んで、ディスプレイ15に表示させることができる。
【0047】
表示画面としてのディスプレイ15は、自船、航跡、マーク及び地図等の各種の情報を表示するためのものであり、液晶等により構成されている。本実施形態のプロッタ装置1は、自船位置、航跡及びマークを表示する表示情報と、魚群情報等を示す表示情報と、を上下又は左右2分割でディスプレイ15に同時に表示できるように構成されている。
【0048】
報知手段としてのブザー16は、CPU11からの動作信号を受信すると発音する発音装置として構成されている。本実施形態では、マークが自動入力されると作動するように構成されている。
【0049】
プロッタ装置1に接続されるAIS受信機22は、他船に搭載されるAIS(Automatic Identification System:船舶自動識別装置)から識別情報を受信するためのものである。このAIS受信機22には、他船に搭載されるAISから送信されるVHF電波を受信するためのAISアンテナ32が接続されている。本実施形態のプロッタ装置1は、AIS受信機22がAISアンテナ32を介して受信した識別情報に基づいて他船の識別情報をディスプレイ15に表示可能に構成されている。
【0050】
測深機23は、超音波を出力するとともに、その反射波を受信して深度情報を得るためのものである。CPU11は、この測深機23から送信されてきた情報に基づいて、ディスプレイ15に水深情報を表示させることができる。
【0051】
以上の構成で、プロッタ装置1は、自船の位置、航跡、マーク及び海図をディスプレイ15に表示する。次に、図4から図7までを参照して、上述したマーク自動入力機能の詳細について説明する。図4は、マーク自動入力を設定するメニュー画面の一例をメニューツリーで表現した模式図である。図5は、マーク自動入力が行われる様子を示すディスプレイの模式図である。図6は、禁止ルールによってマーク自動入力が行われない場合を示すディスプレイの模式図である。図7は、マーク自動入力の処理を示すフローチャートである。
【0052】
まず、マーク自動入力機能の設定方法を参照しつつ、マーク自動入力を行う際の条件について説明していく。本実施形態のプロッタ装置1は、操作キー14が有するメニューキーを操作することで、ディスプレイ15にメインメニューが表示され、このメインメニュー画面から各種の設定を行うように構成されている。ユーザは、このメインメニューに表示される項目の1つである「マーク自動入力」を選択し、操作キー14を適宜操作することで、マーク自動入力のON/OFFの切替え及びマーク自動入力の条件の条件設定を行うことができる。
【0053】
図4に示すように、メインメニューからマーク自動入力を選択すると、「判定モード」と、「マーク設定」と、「禁止ルール」と、が表示される。それぞれの項目を選択すると、設定できる各種の条件が表示される。
【0054】
「判定モード」は、船の挙動を検出する方法を選択する項目であり、本実施形態では、船速判定モードと方位判定モードとの2種類から船の挙動を検出する方法を選択できるように構成されている。また、この判定モードは、船速判定モードと方位判定モードとの何れかのみを選択しなければならないものではなく、両方の検出方法を組み合わせて用いることもできる。
【0055】
「船速判定モード」は、GPS受信機13から測位信号に基づいて出力される船速情報に基づいてマーク位置を自動設定するモードである。この船速判定モードでは、マーク位置を設定する判定条件として、船速判定時間(所定時間)と、設定変化量(所定の変化量)と、が用いられる。CPU11は、船速判定時間内に、船速が設定変化量を超えた場合にマーク位置を自動的に設定する。例えば、船速判定時間を5秒と設定し、設定変化量を5ktに設定した場合、船速が5秒間に5kt以上増速又は減速した場合にマーク位置が自動的に設定されることになる。
【0056】
なお、船速判定モードの判定条件は、船速判定時間内で、カウント開始時の船速から一時的に変化量を超えるように船速が変化した場合のみにマークの自動入力を行うように設定することも可能である。即ち、船速判定時間内に、設定変化量をいったん超えた後に船速判定時間のカウント開始時の船速に戻るように船速が変化するような場合のみにマークの自動入力を行うのである。従って、この判定条件では、船の停止時の急減速及び発進時の急加速のような増速又は減速し続ける船の挙動のみが検出されることになり、一時的な急加速及び急減速のみを検出したい場合に有効である。
【0057】
「方位判定モード」は、GPS受信機13から測位信号に基づいて出力される方位情報に基づいてマーク位置を自動設定するモードである。この方位判定モードでは、方位判定時間(所定時間)と、設定角度(所定角度)と、がマーク位置を設定する判定条件になる。CPU11は、方位判定時間内に、船の向きが設定角度を超えるように変化した場合にマーク位置を自動的に設定する。
【0058】
また、方位判定モードでは、船速が遅い場合には感度を下げ、船速が速い場合には船速が遅い場合に比べて感度を上げるように、船速に応じて判定条件を自動的に変更するように処理される。このような処理を行うことで、波等の外乱の影響を受け易く船の向きが頻繁に変化する船速が遅い場合でも、過剰なマークの自動入力が防止されている。なお、船速は、前記方位判定時間をカウントする際の船速である。本実施形態では、前記方位判定時間カウント開始前の5秒間の船速を平均したものである船速平均値を、前記方位判定時間をカウントする際の船速として用いている。また、プロッタ装置1には、船速を判定するための船速判定値が予め記憶されており、この船速判定値と、前記船速平均値と、を比較することによって船速が遅いか速いかを判断する。より具体的には、船速判定値が10ktに設定されている場合は、以下のように処理される。即ち、CPU11は、入力された船速平均値が10kt以上である場合は、方位判定時間を30秒、設定角度を30度に設定し、前記船速平均値が10kt未満である場合は、方位判定時間を60秒、設定角度を60度に設定する制御を行う。
【0059】
以上に説明したように、船速判定モード、方位判定モードの少なくとも何れかの機能をONすることで、船の特定の挙動が検出され、マーク位置が自動的に設定される。なお、本実施形態のプロッタ装置1は、船速判定時間、設定変化量、方位判定時間、設定角度及び船速判定値等の各種の条件を決定する数値を、ユーザによって変更できるように構成されている。これにより、ユーザは、船の規模、能力及び使用目的等によって前記判定条件を調整することができる。
【0060】
次に、「マーク設定」について説明する。本実施形態のプロッタ装置1は、マークの自動入力時の条件に応じてマークの外観を異ならせて表示できるように構成されている。ユーザは、マーク設定を選択することで、マーク自動入力時のマークの外観を決定する条件を設定することができる。図4に示すように、マーク情報を選択すると、「速度選択」「季節選択」「水深選択」が表示される。次に、表示されたこれらの項目について説明する。
【0061】
「速度選択」では、船速に応じて表示するマークの形状を決定する機能のON/OFFの切替え及び条件の変更を行うことができる。船速は前述した船速平均値と同じものであり、予め設定されているマーク形状判定値と比較し、その結果に応じてマークの形状を決定する。本実施形態では、船速が速い場合は移動を目的としている状態と判定し、クルージングマーク(図3(a)のマーク情報に示す旗のマーク)60をマークの形状として設定する。一方、船速が遅い場合は釣りを行っている状態と判定し、フィッシングマーク(図3(a)のマーク情報に示す魚のマーク)70をマークの形状として設定する。
【0062】
例えば、マーク形状判定値が10ktに設定されている場合は、以下のように処理される。即ち、入力された船速平均値が10kt以上の場合は、CPU11は判定条件を満たした位置に記憶されるマークの形状をクルージングマーク60に設定する処理を行う。一方、前記船速平均値が10kt未満の場合は、CPU11は、判定条件を満たした位置に記憶されるマークの形状をフィッシングマーク70に設定する処理を行う。この速度選択の機能をONすることで、ディスプレイ15に表示されるマークの形状を見ることで、当該マークが自動入力されたときの船の状況を直感的に把握することができるのである。なお、本実施形態のプロッタ装置1は、マーク形状判定値及び選択されるマークの外観等をユーザによって変更できるように構成されている。
【0063】
「季節選択」では、マーク自動入力時の日時情報に基づいてマークの色及び模様を決定する機能のON/OFFの切替え及び条件の変更を行うことができる。本実施形態では、季節選択機能をONすることで、図3(b)に示すように、季節ごとに設定される色及び模様がマークの色として設定される。季節の区分は日時情報を適宜の日時で区分けして決められたものであり、マーク自動入力時の日時情報に基づいて該当する季節が選択される。なお、図3(b)に示すように、本実施形態では、フィッシングマークが形状として設定されるときのみ、季節選択機能による色選択が行われるように設定することができる。
【0064】
「水深選択」では、マーク自動入力時の水深情報に基づいてマークの色及び模様を決定する機能のON/OFFの切替え及び条件の変更を行うことができる。水深情報は、測深機23から入力されてくる情報である。本実施形態では、水深の深度に応じた色及び模様がテーブル形式でメモリ12に記憶されている。水深選択機能をONすることで、測深機23から入力される深度情報に基づいてフィッシングマークの色が設定される。例えば、水深が深くなればなるほど段階的に色が濃くなるように設定することで、水深情報をマークの色及び模様に反映し、マークが記憶された位置の水深をユーザが直感的に把握できるようにすることができる。
【0065】
次に、図5を参照して、マークが自動入力される状況について説明する。なお、以下の説明では、判定モードとしては船速判定モードが単独で設定されており、速度選択機能及び季節選択機能がONになっている場合で説明する。また、船速判定時間は5秒、設定変化量は5kt、マーク形状判定値は10ktに設定されているものとする。なお、季節選択機能は、フィッシングマークが形状として設定されるときのみ、色選択を行うように設定されている。従って、クルージングマーク60は、季節に関係なく同じ色で表示されることになる。
【0066】
図5に示すP地点での船50の挙動について説明する。例として、船50が、P地点に到達する直前では船速平均値が10kt以下であったが、P地点に到達した時点で魚が掛かったので20ktまで急加速した場合を考える。このような船50の挙動は、船速判定モードのマーク位置設定の前記判定条件を満たす。従って、P地点にマーク位置が設定され、船速平均値からフィッシングマーク70がマークの形状として設定される。更に、マークの色及び模様が日時情報から決定される。図5では、P地点を通過した日時が秋に区分される日時であったので、秋に対応するマークの色及び模様が選択されている。
【0067】
図5に示すQ地点での船50の挙動について説明する。この例では、船50は、Q地点に到達する直前では船速平均値が10kt以上であったが、Q地点で目的地に向かうために船の進路を変更しており、このとき、船速を5kt以上減速している。このような船50の挙動は、船速判定モードのマーク位置の前記判定条件を満たす。従って、Q地点にマーク位置が設定され、船速平均値からクルージングマーク60がマークの形状として設定される。上述したように、クルージングマーク60が選択される場合は、季節に関係なく同じ色で表示されるので、色を設定するための処理は行われない。
【0068】
このように、船速を判定することで、船の特定の挙動(進路の変更及び釣り等)を検出できることがわかる。なお、本実施形態では、マーク位置として記憶される緯度経度情報は、マーク位置の入力条件を満たしたときの船速判定時間(方位判定モードのときは方位判定時間)のカウントを開始した時点の緯度経度情報に基づいてマーク位置が設定される。従って、図5で説明した状況ではP地点及びQ地点にマーク位置がそれぞれ設定されることになる。
【0069】
次に、図6を参照して「禁止ルール」について説明する。プロッタ装置1は、マーク自動入力の禁止事項として、図4に示すように、「所定範囲内複数マーク禁止」、「ホームポート近くでのマーク禁止」、「沿岸近くでのマーク禁止」及び「所定範囲内に他船がいる場合のマーク禁止」を設定できるように構成されている。これらの機能(禁止ルール)をONすることで、マーク位置を設定する判定条件を満たした場合でも、前記禁止ルールの条件を満たした場合には、例外的に当該マーク位置がメモリ12に記憶されないことになる。
【0070】
図6(a)を参照して「所定範囲内複数マーク禁止」機能について説明する。所定範囲内複数マーク禁止は、自船位置を中心とした半径Rnmの円として設定される所定範囲90aにおいて既にマークが設定されている場合は、新たなマークを自動入力しない機能である。図6(a)に示すように、この機能をONすることで、所定範囲90aにマーク(クルージングマーク60)がある場合は、マーク位置を設定する判定条件を満たしたとしても、新たなマークが記憶されないことになる。
【0071】
また、本実施形態のプロッタ装置1は、船速に応じて前記所定範囲90aの大きさが変更されるように構成されている。本実施形態では、CPU11が、船速が速い場合はRの値が小さくなるように設定し、船速が遅い場合はRの値が大きくなるように設定する。なお、ここでいう船速とは、上述した船速平均値と同様のものであり、この船速平均値と、予め設定されている禁止ルール船速判定値と、を比較し、その結果に応じてRが設定される。
【0072】
例えば、船速判定値が10ktに設定される場合は以下のように処理される。即ち、CPU11は、船速平均値が10kt以上の場合はRを0.5nmに設定し、10kt未満の場合はRを1.0nmに設定する処理を行う。このようにCPU11が船速に応じて所定範囲90aを変更する処理を行うことで、同一エリア内に入力されるマークの数をより適切なものとすることができる。
【0073】
図6(b)を参照して、「ホームポート近くでのマーク禁止」機能について説明する。即ち、本実施形態のプロッタ装置1は、自船のホームポート(港)91等の位置を予め拠点として登録することができる。そして、ホームポート近くでのマーク禁止機能は、上記のように予め入力された位置(入力位置)の近傍では、マークを自動入力しない機能である。この機能をONすると、図6(b)に示すように、ホームポート91を中心として設定される所定範囲90b内に船50が存在するときには、マークの自動入力が禁止される。なお、「ホームポート近くでのマーク禁止」機能は、自船を中心として定めた所定範囲内に前記入力位置が存在する場合にマーク禁止を行う構成とすることもできる。
【0074】
次に、図6(c)を参照して、「沿岸近くでのマーク禁止」機能について説明する。沿岸近くでのマーク禁止機能は、メモリーカード35に記憶されている海図のデータに基づいて所定範囲90cを設定し、マーク位置の記憶を禁止する機能である。本実態形態では、沿岸から2nmの範囲が所定範囲90cとして設定されている。この機能をONすると、図6(c)に示すように、所定範囲90c内に船50があるときは、マーク位置を設定する判定条件を満たした場合でもマーク位置が記憶されない。なお、「沿岸近くでのマーク禁止」機能は、自船を中心として定めた所定範囲内に陸地や海岸線が存在する場合にマーク禁止を行う構成とすることもできる。
【0075】
次に、図6(d)を参照して「所定範囲内に他船がいる場合のマーク禁止」機能について説明する。上述したように、本実施形態では、他船92に搭載されるAISの識別情報に基づいて、他船92の識別情報を取得できるように構成されている。所定範囲内に他船がいる場合のマーク禁止機能は、AISの識別情報を受信したときに、当該識別情報の送信元である他船92が、自船を中心として設定される所定範囲90dにあることを検出した場合には、マーク位置の記憶を禁止する機能である。この機能をONすると、図6(d)に示すように、識別情報を発信している他船92が所定範囲90dにあるときはマークが記憶されない。なお、「所定範囲内に他船がいる場合のマーク禁止」機能は、他船を中心として定めた所定範囲内に自船が存在する場合にマーク禁止を行う構成とすることもできる。
【0076】
以上に説明してきたように、目的等に応じて禁止ルールを設定することで、マークの自動入力をより適切なものとすることができる。なお、本実施形態のプロッタ装置1は、上述した所定範囲の設定方法及び所定範囲を、船の規模、能力、目的等に応じて変更できるように構成されている。
【0077】
なお、上記禁止ルールは、単にマーク位置の自動記憶を行わないようにするだけであって、手入力によるマークの設定まで禁止するものではない。即ち、本実施形態のプロッタ装置1は、上記禁止ルールがON状態であって、禁止ルールの条件を満たす位置に自船が存在している場合であっても、ユーザがマニュアル操作でマークを入力することでマーク位置を記憶させることができるようになっている。
【0078】
次に、図7を参照して、マーク自動入力の一連の処理について詳細に説明する。プロッタ装置1の操作キー14が操作されてマーク自動入力が設定されると、図7のフローが開始される。なお、図7のフローでは、判定モードとして方位判定モードが選択されているとする。また、以下の説明において、マーク入力条件とは、マーク位置の判定条件を満たし、かつ、禁止ルールの条件に該当せず、マーク位置(緯度経度情報)、日時及びマーク情報(マークの外観)がメモリ12に記憶される条件をいう。
【0079】
まず、CPU11は、船の挙動を検出するための条件を読み込む(S101)。このS101の処理では、判定モード(方位判定モード)、マーク設定、禁止ルール及び各種の条件がメモリ12から読み込まれる。次に、CPU11は、ユーザによって条件が変更されているか否かを調べる(S102)。ユーザによって条件が変更されている場合は、新たな条件が読み込まれ、更新処理される(S103)。
【0080】
S104の処理では、GPS受信機13から出力される船の向きを示す進路情報がCPU11によって読み込まれる。CPU11は、読み込んだ情報を一定時間の範囲で平均化した後(S105)、マーク入力条件を満たすか判定を行う(S106)。このS106の判定処理では、S101で読み込まれた条件又はS103の処理で読み込まれた条件に基づいて判定される。なお、この判定処理は、既に説明した判定条件の処理及び禁止ルールに関する処理である。
【0081】
S106の判定処理の結果、マーク入力条件を満たしていた場合は、マークの位置やディスプレイ15に表示される外観等、マークの各種の設定を行う(S107)。ここでいう各種の設定とは、緯度経度情報(位置情報)日時、及びマークの外観情報(形状、模様及び色彩)等である。次に、CPU11は、S107の処理で設定された各種の設定をテーブル形式でメモリ12に記憶する(S108)。CPU11は、S108の処理を行うとともにブザー16に動作信号を送信して当該ブザー16を作動させる(S109)。S109の処理を終えると、S102の処理に戻って以上の処理を繰り返す。なお、S106の処理でマーク入力条件を満たさないと判定された場合は、S107からS109までの処理を行うことなくS102の処理に戻る。以後、マーク自動入力機能がOFFされるまで、S102からS106まで(マーク入力条件を満たすときはS109まで)の処理を繰り返す。
【0082】
これによって、進路が現実に変更された位置に対応するようにマーク位置が設定され、マーク位置が設定された状況に基づいてマーク情報が自動的に設定される。設定されたマーク情報は、ディスプレイ15に表示されるとともに、ルートを作成する際にも用いることができる。なお、判定モードにおいて船速判定モードが選択された場合についても、同様の手順で処理が行われる。
【0083】
以上に示したように、本実施形態のプロッタ装置1は以下のように構成される。即ち、プロッタ装置1は、GPS受信機13と、メモリ12と、を備える。GPS受信機13は、測位信号を取得して、当該自船の位置を算出する。また、GPS受信機13は、測位信号に基づいて、自船の位置変化を算出する。メモリ12は、予め設定された判定条件を満たす位置変化が検出された場合に、当該位置変化が検出された位置を記憶する。
【0084】
これにより、判定条件を適宜設定することで、自船の特定の挙動を検出して、その位置を自動的に記憶させることができる。従って、位置を記憶させる操作を忘れたために魚が掛かった場所がわからなくなったり、位置を記憶させた場所が実際に魚が掛かった場所から大きく外れてしまったりするようなことを確実に防止できる。また、自船が特定の挙動を示した位置が記憶されるので、ユーザは、特定の挙動が検出された位置を目的地としたり、移動体が目的地へと向かうためのルートの通過点としたりすることができる。
【0085】
また、本実施形態のプロッタ装置1においては、以下のように構成される。GPS受信機13は、速度及び向きを算出する。メモリ12は、GPS受信機13で算出した速度が所定時間内に所定の変化量以上変化したこと、又は、GPS受信機13で算出した向きが所定時間内に所定角度以上変化したことを検出した場合に、前記変化が生じた位置を位置変化が生じた位置として記憶する。
【0086】
これにより、船の進路を変更するために減速して船の向きを変更した場合、そのような船の挙動が検出されて、進路の変更場所が自動的に記憶されることになる。従って、過去に記憶された場所を通るように目的地から出発地までのルートを設定することで、以前に通った航路をより正確に再現することができる。また、魚を釣る等の特定の状況下で、船が急加速又は急減速した場合も、そのような船の挙動が検出されて、実際に、急加速又は急減速を行った場所が自動的に記憶されることになる。
【0087】
また、本実施形態のプロッタ装置1においては、船速判定時間、方位判定時間、設定変化量及び設定角度の少なくとも何れか1つの条件が船速に基づいて自動的に変更される。
【0088】
これにより、船速を考慮に入れることで、マーク位置を記憶すべき挙動を必要かつ十分に検出することができる。
【0089】
また、本実施形態のプロッタ装置1においては、ディスプレイ15において前記位置変化が生じた位置にマークを表示するための処理を行うCPU11を備える。
【0090】
これにより、ユーザは、特定の挙動が検出された位置に表示されるマークを参考にして、自船の進路を決定することができる。
【0091】
また、本実施形態のプロッタ装置1においては、以下のように構成される。即ち、メモリ12は、前記変化が生じた位置を記憶するとともに、変化が生じたときの船速を記憶可能に構成されている。CPU11は、当該船速に基づいて異なる態様のマークを設定する。
【0092】
これにより、移動時や釣りをしている時等、船速に応じて異なる船の状況をマークの形状に自動的に反映させることができる。
【0093】
また、本実施形態のプロッタ装置1においては、以下のように構成される。即ち、メモリ12は、変化が生じた位置を記憶するとともに、当該位置が記憶された日時を記憶可能に構成されている。CPU11は、当該日時に応じて、マークを異なる態様で表示させる。
【0094】
これにより、入力された日時がマークの色及び模様(態様)に反映されることになるので、ディスプレイ15に多数のマークが表示されている場合でも、他のマークと区別し易く、必要な情報を容易に探し出すことができる。また、魚を釣り上げる際の船の急加速(特定の挙動)を検出して記憶されたマークの場合、日時の情報が反映されることで、マークが付けられた場所でどの時期に魚が掛かったか等を容易に把握することができる。
【0095】
また、本実施形態のプロッタ装置1においては、以下のように構成される。即ち、プロッタ装置1は、水深を検出する測深機23を接続可能に構成される。CPU11は、マークが自動的に設定されたときの測深機23からの水深情報に応じて、マークを異なる色及び模様(態様)でディスプレイ15に表示させる。
【0096】
これにより、水深情報がマークの色及び模様に反映されることになるので、ユーザは、マークを見ることで水深の程度を把握できる。従って、ユーザは、マークが付けられた場所で釣ることができる魚の種別を判断する手掛かりを得ることができる。
【0097】
また、本実施形態のプロッタ装置1においては、所定の条件を満たした場合に、マーク位置を記憶することを禁止する禁止ルールを設定できる機能を備える。
【0098】
これにより、必要性の乏しい場所にマークが表示されにくくなるので、必要な情報を確認し易くなる。また、マークの過剰入力が防止されるので、メモリ12の負担を軽減できる。
【0099】
また、本実施形態のプロッタ装置1においては、禁止ルールの所定条件が、船50の位置を基準として設定された所定範囲90aに、過去に前記位置変化が生じて記憶された位置情報が存在する場合に満たされるように設定することができる(図6(a)参照)。
【0100】
これにより、同じエリアに過剰にマークが表示されてディスプレイ15の視認性が損なわれる事態を防止することができる。
【0101】
また、本実施形態のプロッタ装置1においては、禁止ルールの所定条件が、予め設定されているホームポート(入力位置)91を基準位置として設定された所定範囲90cに自船が存在している場合に満たされるように設定することができる(図6(b)参照)。
【0102】
これにより、マークを入力したくないエリアで、過剰に位置が記憶されたり、過剰にマークが表示されたりすることを防止できる。例えば、船50をホームポート91から外海に出発させるまでに生じる船速の変化や船の向きの変化を検出してマークが自動入力されてしまうことを確実に防止することができる。
【0103】
また、本実施形態のプロッタ装置1においては、禁止ルールの所定条件が、沿岸を基準として設定された所定範囲90bに船50が存在している場合に満たされるように設定することができる(図6(c)参照)。
【0104】
即ち、沿岸周辺領域では、マークを表示させる必要性が一般的に高くない一方で、入り組んだ地形が多いために船が進路を頻繁に変更しなければならないことが多い。この点、上記の構成によれば、船が沿岸の周辺で向きを変える度にマークが自動入力されることを防止することができる。
【0105】
また、本実施形態のプロッタ装置1においては、他船の識別情報を受信するAIS受信機22を接続可能に構成される。そして、プロッタ装置1は、禁止ルールの所定条件が、自船位置を基準として設定された所定範囲90dに、AIS信号を発信した他船が存在している場合に満たされるように設定することができる。
【0106】
これにより、他船を回避するために自船が一時的な回避行動を行った場合に、その挙動が検出されてマークが自動的に記憶されることを防止できる。この結果、必要性の高くないマークの記憶を抑制することができる。
【0107】
以上に本発明の実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
【0108】
上記実施形態の船速判定モードの判定条件は、船速平均値に応じて変更できるように構成することもできる。
【0109】
上記実施形態では、GPS受信機13から出力される船速情報に基づいてマーク自動入力に関する各種の制御を行う構成であるが、外部に配置される船速センサの信号やエンジンの回転数に基づいて船速を判定し、各種の制御を行う構成とすることもできる。より具体的には、船舶が備えるエンジンの回転数を検出する回転数検出センサを適宜の箇所に配置し、この回転数検出センサの信号をプロッタ装置1に入力する。そして、CPU11は、適宜のタイミングで入力されるエンジンの回転数を示す信号を監視し、この信号に基づいて各種の制御を行う構成とすることができる。
【0110】
例えば、マーク設定の速度選択におけるマーク形状を選択する際の条件判定に、判定時間(船速判定時間又は方位判定時間)開始時のエンジンの回転数を用いることができる。エンジンの回転数を判定するためのエンジン判定値を1000回転に設定した場合、マーク形状は、以下のように決定されることになる。即ち、マーク位置設定の判定条件を満たす挙動を船が示した場合において、CPU11は、判定時間カウント開始時のエンジンの回転数が1000回転を超えた場合はクルージングマーク60を設定する制御を行う。一方、CPU11は、判定時間カウント開始時のエンジンの回転数が1000回転未満の場合はフィッシングマーク70を設定する制御を行う。この制御によっても、マークの形状に船速が反映されることになる。なお、プロッタ装置1及び回転数検出センサは、NMEA2000に規定される通信プロトコルを用いて通信を行うことができるように電気的に接続されていることが好ましい。
【0111】
上記実施形態では、GPS受信機13から出力される進路情報に基づいてマーク自動入力に関する各種の制御を行う構成であるが、外部に配置される方位計の信号に基づいて、船の向きを判定し、各種の制御を行う構成とすることもできる。また、複数のGPSアンテナを備えるGPSコンパスからの情報から船首方位の差を取得し、取得した情報に基づいて船の向きの変化を検出する構成とすることもできる。
【0112】
また、上記実施形態では、マークが自動入力されたことをブザー16によってユーザに知らせるように構成されているが、この構成は適宜変更することができる。例えば、音声で「マークが入力されました」とアナウンスする構成に変更することができる。また、ユーザにマークが自動入力されたことを知らせるという観点からは報知手段を備えることが好ましいが、上記実施形態のプロッタ装置1の構成からブザー16等の報知手段を省略することもできる。
【0113】
また、上記実施形態の構成に加えて、プロッタ装置1がマーク位置の平均化機能を備えるように構成することもできる。例えば、所定の範囲に複数のマークが入力された場合は、これらのマークの位置を適宜の方法で平均化して、複数のマークを1つのマークに再設定する構成とすることが考えられる。これにより、表示画面の視認性の向上と表示負荷の軽減を実現することができる。
【0114】
また、上記実施形態では、禁止ルールが設定された状態で、禁止ルールの条件を満たした場合には、マーク位置がメモリ12に記憶されないように構成されているが、この構成は事情に応じて適宜変更することができる。例えば、以下のようにプロッタ装置1を構成することができる。即ち、プロッタ装置1は、禁止ルールが設定された状態で禁止ルールの条件を満たした場合であっても、特定の挙動が検出された場合にはその位置をメモリ12に記憶させる。このとき、メモリ12には、当該マークの位置等の情報とともに、禁止ルールに該当していた旨の情報を記憶しておく。そして、CPU11は、禁止ルールの条件を満たした状態で入力されたマークについてはディスプレイ15に表示しないように処理を行う。この構成によっても、不必要な場所にマークが表示されないので、ユーザが必要な情報を確認しにくくなる事態を防止できる。
【0115】
上記実施形態では、プロッタ装置1内にGPS受信機13が配置される構成であるが、GPS受信機を外部に配置する構成に変更することもできる。
【0116】
また、上記実施形態では、GPS受信機13が位置算出部として機能するとともに挙動算出部として機能する構成であるが、プロッタ装置1は、この構成に限定される訳ではない。例えば、CPU11が測位信号に基づいて船速及び船の向きを算出する挙動算出部としての機能を有するようにプロッタ装置1を構成することもできる。
【0117】
また、上記実施形態では、GPS衛星からの信号に基づいて測位信号を受信する構成であるが、GNSS(Global Navigation Satellite System)を利用する構成であれば、適宜変更することができる。例えば、GLONASS衛星やGALILEO衛星からの測位信号を受信する構成に変更することができる。
【符号の説明】
【0118】
1 プロッタ装置(移動体表示装置)
11 CPU(マーク表示処理部)
12 メモリ(位置記憶部)
13 GPS受信機(位置算出部、挙動算出部)
15 ディスプレイ(表示画面)
23 測深機(測深部)
22 AIS受信機(識別情報受信機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象とする移動体の測位信号を取得して、当該移動体の位置を算出する位置算出部と、
前記測位信号に基づいて、前記移動体の位置変化を算出する挙動算出部と、
予め設定された判定条件を満たす前記位置変化が検出された場合に、当該位置変化が検出された位置を記憶する位置記憶部と、
を備えることを特徴とする移動体表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体表示装置であって、
前記挙動算出部は、速度又は向きを算出し、
前記位置記憶部は、前記挙動算出部で算出した前記速度が所定時間内に所定の変化量以上変化したこと、又は、前記挙動算出部で算出した前記向きが所定時間内に所定角度以上変化したことを検出した場合に、その変化が生じた位置を記憶することを特徴とする移動体表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の移動体表示装置であって、
前記所定時間、前記所定の変化量及び前記所定角度の少なくとも何れか1つの条件が移動体の速度に基づいて変更されることを特徴とする移動体表示装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の移動体表示装置であって、
表示画面において前記位置変化が生じた位置にマークを表示するための処理を行うマーク表示処理部を備えることを特徴とする移動体表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の移動体表示装置であって、
前記位置記憶部は、前記位置変化が生じた位置を記憶するとともに、前記移動体の速度を記憶可能に構成されており、
前記マーク表示処理部は、当該速度に基づいて異なる態様のマークを設定することを特徴とする移動体表示装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の移動体表示装置であって、
前記位置記憶部は、前記位置変化が生じた位置を記憶するとともに、当該位置が記憶された日時を記憶可能に構成されており、
前記マーク表示処理部は、当該日時に応じてマークを異なる態様で表示させることを特徴とする移動体表示装置。
【請求項7】
請求項4から6までの何れか一項に記載の移動体表示装置であって、
水深を検出する測深部を接続可能に構成され、
前記マーク表示処理部は、前記位置変化が生じた位置を記憶するときの水深に応じて、マークを異なる態様で表示させることを特徴とする移動体表示装置。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の移動体表示装置であって、
所定の条件を満たした場合にマーク位置を記憶することを禁止する禁止機能を備えることを特徴とする移動体表示装置。
【請求項9】
請求項4から7までの何れか一項に記載の移動体表示装置であって、
前記マーク表示処理部は、所定の条件を満たした場合に、マークを前記表示画面に表示しないように処理することを特徴とする移動体表示装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の移動体表示装置であって、
前記所定の条件は、当該移動体の位置を基準として設定された所定範囲に、過去に前記位置変化が生じて記憶された位置情報が存在する場合に満たされることを特徴とする移動体表示装置。
【請求項11】
請求項8から10までの何れか一項に記載の移動体表示装置であって、
前記所定の条件は、予め設定されている入力位置を基準として設定された所定範囲に当該移動体が存在する場合、又は、当該移動体の位置を基準として設定された所定範囲に予め設定されている入力位置が存在する場合に満たされることを特徴とする移動体表示装置。
【請求項12】
請求項8から11までの何れか一項に記載の移動体表示装置であって、
前記移動体は船舶であり、
前記所定の条件は、沿岸を基準として設定された所定範囲に当該船舶が存在する場合、又は、当該船舶の位置を基準として設定された所定範囲に海岸線が存在する場合に満たされることを特徴とする移動体表示装置。
【請求項13】
請求項8から12までの何れか一項に記載の移動体表示装置であって、
前記移動体は船舶であり、
他船の識別情報を受信する識別情報受信機を接続可能に構成され、
前記所定の条件は、自船位置を基準として設定された所定範囲に前記識別情報を発信した他船が存在する場合、又は、前記識別情報を発信した他船位置を基準として設定された所定範囲に当該自船が存在する場合に満たされることを特徴とする移動体表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−76542(P2011−76542A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229868(P2009−229868)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】