説明

移相回路

【課題】 移相量を常に一定に制御可能とし、電源電圧変動時等の影響の低減、素子バラツキの影響を低減する移相回路の提供。
【解決手段】基準周波数信号が入力されて2分配され一方の信号は位相比較器102の一方の入力となり、他方の信号は移相器101を介してその位相が移相された後に、前記位相比較器102の他方の入力となり、位相比較器102の出力はループフィルタ(LPF)103を介して差動増幅器104の一方の入力端子に入力され、差動増幅器104の出力信号により移相器101の移相量が制御されるPLLループを有し、差動増幅器104の他方の入力端子に印加される基準電圧により前記移相器101での移相量が定まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移相回路に関し、特に半導体集積回路上に形成される高精度な移相回路に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯無線端末等では直交復調方式が用いられ、一般的にはローカル(LO)信号にπ/2の位相差を持たせ、2つのミキサで周波数変換するやり方があり、あるいは、サブハーモニックミキサを用いる場合には、LO信号にπ/4の位相差を持たせる必要がある。例えば、そのための90°(π/2)移相器としては、図14に示したRC−CRを用いた回路が普通であったが、最近では高周波(RF)信号を直接ベースバンド信号に変換するダイレクトコンバージョン方式の受信方式が一般的になり、LO周波数をRF周波数の2倍の周波数に設定してフリップ・フロップから構成される図15(A)に示したジョンソン・カウンタで2分周してπ/2の位相差を得る場合が多く見受けられる。図15(B)は、図15(A)の回路の動作波形を示す図であり、fLO1を2逓倍した2fLO1で駆動される、1段目と2段目のフリップフロップ(FF)の出力Qからは、fLO1(I)(同相信号)と、90°(π/2)の位相差のfLO1(Q)(直交信号)が出力される。
【0003】
スーパーヘテロダインの1方式であるIF周波数を低く設定して集積化し易い周波数帯にした「Low−IF方式」と呼ばれる受信方式もある。Low−IF方式でも、直交復調方式が用いられ、LO信号にπ/2の位相差を持たせる必要がある。この場合には、RF周波数とLO周波数はIF周波数だけ異なるので自己混合(self−mixing)の問題やLOスプリアスの問題に関しても厳しくなくなる。また、サブハーモニックミキサに要求されるLO信号に持たせるπ/4の位相差は高周波の場合には特に困難を伴う。
【0004】
特許文献1(特開平10−200376号公報)には、こうした目的でπ/4の位相差を得るための移相器が記載されている。図16に示すように、10.7MHz当りのIF帯ではOPアンプを用いた2組のRCアクティブ帯域通過フィルタ(BPF)のRとCの定数を変更して、具体的には第1のRCアクティブBPF(21)においては、R1=5kΩ、R2=10kΩ、C=1.74pFとし、第2のRCアクティブBPF(22)においては、R1=5kΩ、R2=10kΩ、C=3.10pFとすると、集積回路上では製造バラツキが生じて、抵抗R1、R2や容量Cの絶対値が設計値からズレても、抵抗R1、R2の比や容量Cの比は、ほぼ一定に保たれるから、CRの時定数の間でも比を取るとほぼ一定になることが期待される。
【0005】
したがって、図17(A)、(B)に振幅、位相の周波数特性として示すように、所望のBPFでは、中心周波数は、設計値からズレても、BPF間での位相差は、ほぼ一定になることが期待される。
【0006】
現実には、第1のRCアクティブBPF(21)と、第2のRCアクティブBPF(22)では、R1、R2はいずれも等しい値に設定されており、R1:R2=1:2となっている。R1、R2の比が整数値になっているために、第1のRCアクティブBPF(21)と第2のRCアクティブBPF(22)間でも抵抗比を維持し易い。
【0007】
しかし、容量Cについては、第1のRCアクティブBPF(21)では1.74pFと第2のRCアクティブBPF(22)では3.10pFとなっており、その比が3.10/1.74=1.7816となり、整数値には設定されていない。
【0008】
したがって、第1のRCアクティブBPF(21)と第2のRCアクティブBPF(22)とでは、容量比を一定値に維持することは、事実上は非常に難しく、寄生容量まで考慮すると、このように半端な容量比の値を一定に維持することは不可能であると言える。なぜなら、RCアクティブBPFの周波数特性には、当然ではあるが、抵抗に付く寄生容量の値と容量に付く寄生容量の値が効いてくることは論を待たない。
【0009】
ここで、抵抗に付く寄生容量の値と容量に付く寄生容量の値は製造バラツキでもそれほどは変動せず、0.数pF程度となるものと期待できるが、抵抗の値と容量の値はそれぞれ±20%程度の製造バラツキがあり、抵抗に付く寄生容量の値と容量に付く寄生容量の値と意図した容量値(1.74pFおよび3.10pF)の総和は、意図した容量値に±20%程度の製造バラツキがあると、第1のRCアクティブBPF(21)と第2のRCアクティブBPF(22)との間ではその比が一定になることはない。
【0010】
一方、高周波の場合には、図18に示すように、RCアクティブBPFを諦め、RC全域通過フィルタとバッファ・アンプとの組み合わせに変更している。
【0011】
π/4の位相差を得るには、第1のRC全域通過フィルタ(43)では、R=168Ω、C=1.5pF、第2のRC全域通過フィルタ(44)では、R=112Ω、C=1.0pFとなる。
【0012】
この値では、168Ω:112Ω=3:2、1.5pF/1.0pF=3:2と、これらの比がいずれも小さな値の自然数となっており、抵抗に付く寄生容量の値と容量に付く寄生容量の値と意図した容量値(1.5pFおよび1.0pF)の総和は意図した容量値に±20%程度の製造バラツキがあっても、第1のRC全域通過フィルタ(43)と第2のRC全域通過フィルタ(44)との間でも、その比がほぼ一定になるように設定されている。
【0013】
すなわち、単位抵抗を56Ω、単位容量を0.5pFとし、単位抵抗に付く寄生容量をa、単位容量に付く寄生容量をb、単位容量当りの製造バラツキによる変化量をcとすると、第1のRC全域通過フィルタ(43)では、
Rtotal1=56Ω×3=168Ω、
Ctotal1=3a+3b+3×(0.5pF+c)
=3×(a+b+c+0.5pF)
となる。
【0014】
一方、第2のRC全域通過フィルタ(44)では、
Rtotal2=56Ω×2=112Ω、
Ctotal2=2a+2b+2×(0.5pF+c)
=2×(a+b+c+0.5pF)
となる。
【0015】
したがって、
Rtotal1×Ctotal1/(Rtotal2×Ctotal2)
=3×3/(2×2)=(3/2)
となり、第1のRC全域通過フィルタ(43)と第2のRC全域通過フィルタ(44)とでは、製造バラツキや寄生容量があっても、時定数の比が一定になるように設定されており、集積回路上に実現された場合にも、時定数の比がほぼ一定になると期待できる訳である。
【0016】
【特許文献1】特開平10−200376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上記した従来の回路は、下記記載の問題点を有している。
【0018】
第1の問題点は、バラツキが大きくなる、ということである。その理由は、オープンループ回路で構成されているためである。
【0019】
第2の問題点は、移相量を電子的に可変するとか、微小範囲で調整するとかの機能を持たせることが困難である、ということである。
【0020】
その理由は、RCフィルタの素子の相対精度で移相量を決定しているためである。
【0021】
本発明は、上記問題点に鑑みて創案されたものであって、PLLループを構成して移相量を常に一定に制御する、移相回路を提供することにある。
【0022】
本発明は、特性・性能を向上し、電源電圧変動時の影響の低減、素子バラツキの影響の低減、高精度化を図る移相回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の1つの側面(アスペクト)に係る移相回路は、基準周波数が入力されて2分配され、一方の信号は位相比較器の一方の入力となり、他方の信号は移相器を介して位相が移相された後に、前記位相比較器の他方の入力となり、前記位相比較器の出力にはローパスフィルタを介して差動増幅器の一方の入力端子に入力され、前記差動増幅器の出力信号により前記移相器の移相量が制御されるPLLループを有し、前記差動増幅器の他方の入力端子に印加される基準電圧により前記移相器の移相量が定まる。
【0024】
本発明において、前記ローパスフィルタと前記差動増幅器が一体となったアクティブローパスフィルタである。
【0025】
本発明において、前記位相比較器の2つの入力端子の前に、分周数が互いに等しい第1、第2の周波数分周器が挿入される構成としてもよい。
【0026】
本発明において、前記基準電圧が電源電圧の4分の1であり、移相量がπ/4である。
【0027】
本発明の他の側面(アスペクト)に係る移相回路は、基準周波数が入力されて第1の移相器を介して位相が移相された後に2分配され、一方の周波数信号は位相比較器の一方の入力となり、他方の周波数信号は第2の移相器を介して位相が移相された後に前記位相比較器の他方の入力となり、前記位相比較器の出力にはローパスフィルタを介して差動増幅器の一方の入力端子に入力され、前記差動増幅器の出力信号により前記第1および第2の移相器の移相量が制御されるPLLループを有し、前記差動増幅器の他方の入力端子に印加される基準電圧により前記移相器の移相量が定まる。
【0028】
本発明において、前記ローパスフィルタと前記差動増幅器が一体となったアクティブローパスフィルタである。
【0029】
本発明において、前記位相比較器の2つの入力端子の前に、分周数が互いに等しい第1、第2の周波数分周器が挿入される。
【0030】
本発明において、前記基準電圧が電源電圧の4分の1であり、それぞれの移相器の移相量がπ/4であり、移相量の和がπ/2である。
【0031】
本発明のさらに他の側面(アスペクト)に係る移相回路は、基準周波数が位相比較器の一方の入力となり、VCO(電圧制御発振器)の出力が前記位相比較器の他方の入力となり、前記位相比較器の出力はローパスフィルタを介して差動増幅器の一方の入力端子に入力され、前記差動増幅器の出力信号により前記VCOが制御されるPLLループを有し、前記差動増幅器の他方の入力端子に印加される基準電圧により前記移相器の移相量が定まる。
【0032】
本発明において、前記ローパスフィルタと前記差動増幅器が一体となったアクティブローパスフィルタである。
【0033】
本発明において、前記位相比較器の2つの入力端子の前に、分周数が互いに等しい第1、第2の周波数分周器が挿入される。
【0034】
本発明において、前記基準電圧が電源電圧の2分の1であり、移相器の移相量がπ/2である。
【0035】
本発明において、前記基準電圧を可変する手段を有し、移相器の移相量を可変自在とする構成としてもよい。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、位相器の移相量をPLLで制御しているため、位相器の移相量を一定とすることができる。
【0037】
本発明によれば、電源電圧から基準電圧を得てPLLループの位相器の移相量を決定しているため、バラツキに対する影響を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
次に、発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0039】
図1は、本発明の一実施形態の移相回路の構成を示すブロック図である。図1において、基準周波数fREFが入力端子100から印加され、一方は位相比較器102の一方の入力信号となり、他方は移相器(Phase shifter)101で移相され、位相比較器102の他方の入力信号とされる。したがって、位相比較器102の2つの入力信号が位相差を持つ信号1と信号2として利用できる。
【0040】
位相比較器102の出力信号は矩形波形となり、ラグリード・フィルタからなるループ・フィルタ(LPF)103により平滑化され直流電圧となる。この電圧は差動増幅器104(電圧利得が−G)により増幅されて移相器(Phase shifter)101の制御電圧VCONとなっている。ここで、移相器(Phase shifter)101は、制御電圧VCONが高くなると位相遅れが大きくなるものとする。したがって、負帰還ループを構成しており、すなわち、PLLループを構成している。また、この基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして可変すれば、移相量を可変することができることになる。
【0041】
次に図1の回路の動作を説明する。図1において、移相器(Phase shifter)101はPLLループ内に取り込まれているから、ループ・フィルタ103をラグリード型フィルタとして、位相遅れが90°(π/2)以内に納まるものとして、移相器101での位相変化幅は、位相遅れで高々90°(π/2)しか許容されない。これは、移相器101での位相変化幅が、位相遅れで90°(π/2)を超えると、PLLの負帰還ループが維持できなくなり、正帰還となって発振してしまい、安定動作とはならなくなるからである。
【0042】
この条件を考慮すると、移相器101として利用可能な構成は、RCからなる1次LPFなどに限定される。高周波での利用を前提としているから、印加電圧で容量値が変化するバラクタ容量を可変Cとして用いるのが最も容易である。
【0043】
このように、入力された基準周波数fREFと移相器(Phase shifter)101の出力信号間に位相差が生じるから、この2つの信号を位相の異なる信号として利用する。
【0044】
ここで注意すべき点は、基準周波数の位相を変化させるが、周波数には何も変化はないことである。
【0045】
また、位相比較器102には、XOR(Exclusive OR;排他的論理和)回路を用いる。XOR回路は、ディジタル回路であり、出力振幅はhighの場合に、電源電圧VDD、lowの場合にGND電圧0Vをとる。
【0046】
したがって、位相比較器102にXOR回路を用い、差動増幅器104の正相入力端子(+)に印加される基準電圧が電源電圧VDDの半分(1/2)の場合には、PLLループが引き込まれてロックした場合に、位相比較器102の2つの入力信号間には、90°(π/2)の位相差が生じるが、基準電圧を電源電圧VDDの半分(1/2)から変更することで、PLLループが引き込まれてロックした場合に、位相比較器102の2つの入力信号間に生じる位相差を、90°(π/2)から異ならせることができる。したがって、この基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして可変すれば、移相量を可変することができることになる。
【0047】
このことから、位相比較器102は線形動作し、差動増幅器104の正相入力端子に与えられる基準電圧がVDD/2で、位相比較器102の2つの入力信号間に生じる位相差は90°であるから、基準電圧の設定値が1%の誤差を持つと、移相誤差は、1.1°に相当することになる。
【0048】
すなわち、基準電圧を1%可変すると移相を1.1°だけ可変することができることになる。
【0049】
<実施例1>
図2は、本発明の移相回路の一実施例を示す回路図である。図2において、基準周波数fREFが入力端子100から印加され、一方はインターフェース回路105で矩形波に波形整形されて位相比較器102であるXOR回路の一方の入力信号となり、他方は移相器(Phase shifter)101で位相が45°(π/4)だけ遅れ、振幅が1/√2に減衰した後に、インターフェース回路106で振幅が増幅され、矩形波に波形整形されて位相比較器102であるXOR回路の他方の入力信号となっている。したがって、位相比較器102の2つの入力信号が位相差を持つ信号として利用できる。XOR回路の出力信号は、デューティが1:3の矩形波形となり、ラグリード・フィルタからなるループ・フィルタ103により平滑化されると、直流電圧としてはVDD/4の値となる。ループ・フィルタ103を構成するラグリード・フィルタは、一端がフィルタ入力端をなし、他端がフィルタ出力端をなす抵抗R1と、抵抗R1の他端とGND電位間に直列に接続された抵抗R2と容量Cよりなる。
【0050】
ループ・フィルタ103により平滑化された直流電圧は、基準電圧としてVDD/4の電圧が正相入力端子に印加された差動増幅器104(電圧利得が−G)により増幅されて、移相器(Phase shifter)101の制御電圧VCONとなっている。すなわち、PLLループを構成している。したがって、この基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗を切り替えて、VDD/4から、±1%程度可変することで、移相量を45°(π/4)から±1.1°(±0.01222π)程度だけ可変できることになる。
【0051】
図2において、移相器(Phase shifter)101はPLLループ内に取り込まれていることから、ループ・フィルタ103をラグリード型フィルタとしているので、位相遅れが90°(π/2)以内に納まるものとすると、移相器101での位相変化幅は位相遅れで高々90°(π/2)しか許容されない。それを超えるとPLLの負帰還ループが維持できなくなり、正帰還となって発振してしまい安定動作とはならなくなる。
【0052】
この条件を考慮すると、移相器101として利用可能なのは、RCからなる1次LPFなどに限定される。高周波での利用を前提としているから、印加電圧で容量値が変化するバラクタ容量を可変Cとして用いるのが最も容易である。
【0053】
このように、入力された基準周波数と移相器(Phase shifter)101の出力信号間に位相差が生じるから、この2つの信号を位相の異なる信号として利用する。ここで注意すべき点は、基準周波数の位相を変化させるだけで周波数は何も変わらないことである。
【0054】
また、位相比較器102に用いられるXOR回路は、ディジタル回路であり、出力振幅はhighの場合に電源電圧VDD、lowの場合にGND電圧0Vをとる。したがって、位相比較器102にXOR回路を用い、基準電圧が電源電圧VDDの半分(1/2)の場合には、PLLループが引き込まれてロックした場合に、位相比較器102の2つの入力信号間には、90°(π/2)の位相差が生じるが、基準電圧を電源電圧VDDの4分の1(VDD/4)に変更することで、PLLループが引き込まれてロックした場合に、位相比較器102の2つの入力信号間に生じる位相差を45°(π/4)に設定することができる。
【0055】
ここで、移相器(Phase shifter)101は、制御電圧VCONが高くなると位相遅れが大きくなるものとする。例えば、移相器(Phase shifter)101を、RCの1次LPFとし、容量Cが電極間に電圧を印加することでその容量値を大きくできるバラクタ(varactor diode)を用い、印加電極間電圧の増加に対し容量値が単調に増加するものとすれば、RCの1次LPFからなる移相器(Phase shifter)101において、位相差が45°(π/4)になる点は、1次LPFの3dBカットオフ周波数においてであり、この点付近における周波数の変化に対する位相の変化量は大きい。すなわち、傾きが大きな領域であり、位相比較器102は線形動作すると、基準電圧VDD/2で位相差90°であるから、基準電圧の設定値が1%の誤差を持つと移相誤差は、1.1°に相当することになる。したがって、基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして、±1%程度可変すれば、移相量を±1.1°程度可変することができる。
【0056】
<実施例2>
図3に示すように、ループ・フィルタと差動増幅器を一体化する構成としてもよい。図3において、基準周波数fREFが入力端子から印加され、一方はインターフェース回路105で矩形波に波形整形されて位相比較器102であるXOR回路の一方の入力信号となり、他方は移相器(Phase shifter)101で位相が45°(π/4)だけ遅れ、振幅が1/√2に減衰した後に、インターフェース回路106で振幅が増幅され、矩形波に波形整形されて位相比較器102であるXOR回路の他方の入力信号となっている。したがって、位相比較器102の2つの入力信号が位相差を持つ信号として利用できる。XOR回路の出力信号はデューティが1:3の矩形波形となり、平滑化されると直流電圧としては電源電圧VDDの4分の1の値(VDD/4)となる。この信号が、ラグリード・フィルタ特性と電圧利得を有するRCアクティブフィルタ107からなるループ・フィルタに入力される。このRCアクティブフィルタ107を構成する差動増幅器104の正相入力端子(+)には、基準電圧としてVDD/4の電圧が印加されており、差動増幅器104の逆相入力端子(−)と出力端子間には、抵抗R3と容量Cの直列回路と、抵抗R2とが並列に接続され、差動増幅器104の正相入力端子とXOR回路との間には抵抗R1が接続され、直流電圧利得Gは、−R2/R1となる。
【0057】
信号は、この電圧利得で増幅され、高域信号成分が除去されて移相器(Phase shifter)101の制御電圧となっている。すなわち、PLLループを構成している。したがって、この基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして可変すれば、移相量を可変することができることになる。
【0058】
図3の回路動作を説明する。図3において、移相器(Phase shifter)101はPLLループ内に取り込まれているから、ループ・フィルタをラグリード型フィルタとしているので位相遅れが90°(π/2)以内に納まるものとすると、移相器101での位相変化幅は位相遅れで高々90°(π/2)しか許容されない。それを超えるとPLLの負帰還ループが維持できなくなり、正帰還となって発振してしまい安定動作とはならなくなる。
【0059】
この条件を考慮すると移相器101として利用可能なのはRCからなる1次LPFなどに限定される。高周波での利用を前提としているから、印加電圧で容量値が変化するバラクタ容量を可変Cとして用いるのが最も容易である。このように、入力された基準周波数と移相器(Phase shifter)101の出力信号間に位相差が生じるから、この2つの信号を位相の異なる信号として利用する。ここで注意すべき点は基準周波数の位相を変化させるだけで周波数は何も変わらないことである。また、位相比較器102には用いられるXOR回路はディジタル回路であり、出力振幅はhighの場合に電源電圧VDD、lowの場合にGND電圧0Vをとる。したがって、位相比較器102にXOR回路を用い基準電圧が電源電圧VDDの半分(VDD/2)の場合には、PLLループが引き込まれてロックした場合に位相比較器の2つの入力信号間には90°(π/2)の位相差が生じるが、基準電圧を電源電圧VDDの4分の1(VDD/4)に変更することでPLLループが引き込まれてロックした場合に位相比較器の2つの入力信号間に生じる位相差を45°(π/4)に設定することができる。
【0060】
ここで、移相器(Phase shifter)101は制御電圧VCONが高くなると位相遅れが大きくなるものとする。例えば、移相器(Phase shifter)101をRCの1次LPFとし、容量Cが電極間に電圧を印加することでその容量値を大きくできるバラクタを用い、印加電極間電圧の増加に対し容量値が単調に増加するものとすれば、RCの1次LPFからなる移相器(Phase shifter)101において、位相差が45°(π/4)になる点は、1次LPFの3dBカットオフ周波数においてであり、この点付近における周波数の変化に対する位相の変化量は大きい。すなわち、傾きが大きな領域であり、位相比較器102は線形動作すると、基準電圧VDD/2で位相差90°であるから、基準電圧の設定値が1%の誤差を持つと移相誤差は1.1°に相当することになる。したがって、基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして±1%程度可変すれば、移相量を±1.1°程度可変することができる。
【0061】
<実施例3>
図4に示すように、図2に示した回路において、XOR回路を用いた位相比較器102のそれぞれの入力端子の前に、インターフェース回路105、106に代えて、同一分周数の周波数分周回路108、109を挿入し、位相比較器102への入力周波数を低くすることができる。
【0062】
図4において、基準周波数fREFが入力端子から印加され、一方は分周数nの周波数分周回路108を介して位相比較器102であるXOR回路の一方の入力信号となり、他方は移相器(Phase shifter)101で位相が45°(π/4)だけ遅れ、振幅が1/√2に減衰した後に、分周数nの周波数分周回路109を介して、矩形波に波形整形されて位相比較器102であるXOR回路の他方の入力信号となっている。したがって、位相比較器102の2つの入力信号が位相差を持つ信号として利用できる。
【0063】
ここで、分周数nの各周波数分周回路の出力波形はデューティが1:1の矩形波形(デューティ比が50%)となるように、分周数nが設定されている。この場合に、位相比較器102であるXOR回路の出力信号は、デューティが1:3の矩形波形となり、ラグリード・フィルタからなるループ・フィルタ103により平滑化されると直流電圧としてはVDD/4の値となる。ループ・フィルタ103の出力電圧は、基準電圧としてVDD/4の電圧が印加された差動増幅器104(電圧利得が−G)により増幅されて移相器(Phase shifter)101の制御電圧となっている。すなわち、PLLループを構成している。したがって、この基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして可変すれば、移相量を可変することができることになる。
【0064】
図4の回路の動作を説明する。図4において、移相器(Phase shifter)101はPLLループ内に取り込まれているから、ループ・フィルタ103をラグリード型フィルタとしているので位相遅れが90°(π/2)以内に納まるものとすると、移相器101での位相変化幅は、位相遅れで高々90°(π/2)しか許容されない。それを超えると、PLLの負帰還ループが維持できなくなり、正帰還となって発振してしまい、安定動作とはならなくなる。この条件を考慮すると、移相器101として利用可能なのはRCからなる1次LPFなどに限定される。高周波での利用を前提としているから、印加電圧で容量値が変化するバラクタ容量を可変Cとして用いるのが最も容易である。
【0065】
このように、入力端子100に入力された基準周波数fREFと移相器(Phase shifter)101の出力信号の間に位相差が生じるから、この2つの信号を位相の異なる信号として利用する。ここで注意すべき点は基準周波数fREFの位相を変化させるだけで周波数は何も変わらないことである。
【0066】
また、位相比較器102をなすXOR回路はディジタル回路であり、出力振幅はhighの場合に電源電圧VDD、lowの場合にGND電圧0Vをとる。したがって、位相比較器にXOR回路を用い基準電圧が電源電圧VDDの半分(1/2)の場合には、PLLループが引き込まれてロックした場合に位相比較器の2つの入力信号間には90°(π/2)の位相差が生じるが、基準電圧を電源電圧VDDの4分の1(VDD/4)に変更することでPLLループが引き込まれてロックした場合に位相比較器の2つの入力信号間に生じる位相差を45°(π/4)に設定することができる。ここで、移相器(Phase shifter)101は制御電圧VCONが高くなると位相遅れが大きくなるものとする。例えば、移相器(Phase shifter)をRCの1次LPFとし、容量Cが電極間に電圧を印加することでその容量値を大きくできるバラクタを用い、印加電極間電圧の増加に対し容量値が単調に増加するものとすれば、RCの1次LPFからなる移相器(Phase shifter)において、位相差が45°(π/4)になる点は1次LPFの3dBカットオフ周波数においてであり、この点付近における周波数の変化に対する位相の変化量は大きい。すなわち、傾きが大きな領域であり、位相比較器102は線形動作すると、基準電圧がVDD/2で位相差90°であることから、基準電圧の設定値が1%の誤差を持つと移相誤差は1.1°に相当することになる。したがって、基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして±1%程度可変すれば、移相量を±1.1°程度可変することができる。
【0067】
<実施例4>
図5は、本発明の第4の実施例の構成を示す図である。図5を参照すると、本実施例は、図3に示した回路において、XOR回路を用いた位相比較器102のそれぞれの入力端子の前に、インターフェース回路105、106に代えて、同一分周数の周波数分周回路108、109を挿入し、位相比較器102への入力周波数を低くすることができる。すなわち、ループ・フィルタと差動増幅器を一体化したRCアクティブフィルタ(アクティブLPF)107を用いることができる。
【0068】
図5において、基準周波数fREFが入力端子100から印加され、一方は分周数nの周波数分周回路108を介して位相比較器102であるXOR回路の一方の入力信号となり、他方は移相器(Phase shifter)101で位相が45°(π/4)だけ遅れ、振幅が1/√2に減衰した後に、分周数nの周波数分周回路109を介して、矩形波に波形整形され、位相比較器102であるXOR回路の他方の入力信号となっている。したがって、位相比較器102の2つの入力信号が位相差を持つ信号として利用できる。
【0069】
ここで、分周数nの各周波数分周回路108、109の出力波形はデューティが1:1の矩形波形(デューティ比が50%)となるように分周数nが設定されている。この場合に、位相比較器102であるXOR回路の出力信号はデューティが1:3の矩形波形となり、平滑化されると、直流電圧としては、電源電圧VDDの4分の1の値(VDD/4)となる。この信号が、ラグリード・フィルタ特性と電圧利得を有するRCアクティブフィルタ107からなるループ・フィルタに入力される。RCアクティブフィルタ107を構成する差動増幅器104の正相入力端子(+)には、基準電圧としてVDD/4の電圧が印加されており、差動増幅器104の逆相入力端子(−)と出力端子間には、抵抗R3と容量Cの直列回路と、抵抗R2とが並列に接続され、差動増幅器104の正相入力端子と、XOR回路との間には抵抗R1が接続され、直流電圧利得Gは、−R2/R1となる。信号は、この電圧利得で増幅され、高域信号成分が除去されて移相器(Phase shifter)101の制御電圧VCONとなっている。すなわち、PLLループを構成している。したがって、この基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして可変すれば、移相量を可変することができることになる。
【0070】
図5の回路の動作を説明する。図5において、移相器(Phase shifter)101は、PLLループ内に取り込まれているから、ループ・フィルタをラグリード型フィルタとしているので位相遅れが90°(π/2)以内に納まるものとすると、移相器101での位相変化幅は、位相遅れで高々90°(π/2)しか許容されない。それを超えるとPLLの負帰還ループが維持できなくなり、正帰還となって発振してしまい安定動作とはならなくなる。この条件を考慮すると、移相器101として利用可能な構成は、RCからなる1次LPFなどに限定される。高周波での利用を前提としているから、印加電圧で容量値が変化するバラクタ容量を可変Cとして用いるのが最も容易である。このように、入力された基準周波数と移相器(Phase shifter)101の出力信号間に位相差が生じるから、この2つの信号を位相の異なる信号として利用する。ここで注意すべき点は基準周波数の位相を変化させるだけで周波数は何も変わらないことである。
【0071】
また、位相比較器102にはXOR回路を用いる。XOR回路はディジタル回路であり、出力振幅はhighの場合に電源電圧VDD、lowの場合にGND電圧0Vをとる。
したがって、位相比較器102にXOR回路を用い基準電圧が電源電圧VDDの半分(VDD/2)の場合には、PLLループが引き込まれてロックした場合に位相比較器102の2つの入力信号間には90°(π/2)の位相差が生じるが、基準電圧を電源電圧VDDの4分の1(VDD/4)に変更することでPLLループが引き込まれてロックした場合に位相比較器102の2つの入力信号間に生じる位相差を45°(π/4)に設定することができる。
【0072】
ここで、移相器(Phase shifter)101は制御電圧VCONが高くなると位相遅れが大きくなるものとする。例えば、移相器(Phase shifter)101を、RCの1次LPFとし、容量Cが電極間に電圧を印加することでその容量値を大きくできるバラクタを用い、印加電極間電圧の増加に対し容量値が単調に増加するものとすれば、RCの1次LPFからなる移相器(Phase shifter)101において、位相差が45°(π/4)になる点は1次LPFの3dBカットオフ周波数においてであり、この点付近における周波数の変化に対する位相の変化量は大きい。すなわち、傾きが大きな領域であり、位相比較器102は線形動作すると、基準電圧VDD/2で位相差90°であるから、基準電圧の設定値が1%の誤差を持つと移相誤差は1.1°に相当することになる。したがって、基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして±1%程度可変すれば、移相量を±1.1°程度可変することができる。
【0073】
<実施例5>
次に、π/2(90°)移相回路の構成方法について説明する。良く知られているように、PLLループを構成して制御するためには、負帰還ループを構成する必要がある。しかし、1次LPFから構成された移相器を単に2次LPFに変更したのでは、2次LPFで位相が、0°から180°まで回り、更に、ループ・フィルタ(1次LPF)でも同様に位相が回るために、現実には、負帰還ループを構成することができない。
【0074】
PLL回路にループ・フィルタ(1次LPF)は必須であるために、PLLループ内に取り込める移相器は、1次LPFが限度である。
【0075】
したがって、2次LPFを2つの1次LPFに分解して、一方を、PLLループ内に配置し、他方をPLLループ外に配置する。
【0076】
ただし、2つの1次LPFは同一とし、同一制御電圧VCONが印加され、その時の移相量が同一になるものと期待できる。
【0077】
図6において、基準周波数fREFが入力端子100から印加され第1の移相器(Phase shifter1)110で、位相が45°(π/4)だけ遅れ、振幅が1/√2に減衰し2分配される。すなわち、一方は、インターフェース回路105で振幅が増幅され、矩形波に波形整形されて位相比較器102であるXOR回路の一方の入力信号となり、他方は、第2の移相器(Phase shifter2)111で位相が45°(π/4)だけ遅れ、振幅が1/√2に減衰した後に、インターフェース回路106で振幅が増幅され、矩形波に波形整形されて位相比較器102であるXOR回路の他方の入力信号となっている。ここで、第1の移相器(Phase shifter1)110と第2の移相器(Phase shifter2)111とは、共通に制御電圧VCONで制御されている。したがって、第1の移相器(Phase shifter1)110と第2の移相器(Phase shifter2)111でのそれぞれの移相量はほぼ等しい。このことにより、2つの移相器での移相量の総和は90°(π/2)となる。したがって、基準周波数と位相比較器102の一方の入力信号が位相差を持つ信号として利用できる。
【0078】
XOR回路の出力信号はデューティが1:3の矩形波形となり、ラグリード・フィルタからなるループ・フィルタ103により平滑化されると直流電圧としてはVDD/4の値となる。ループ・フィルタ103の出力電圧は、基準電圧としてVDD/4の電圧が印加された差動増幅器104(電圧利得が−G)により増幅されて第1、第2の移相器(Phase shifter)110、111の制御電圧VCONとなっている。すなわち、PLLループを構成している。したがって、この基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして可変すれば、移相量を可変することができることになる。
【0079】
図6の回路の動作を説明する。図6において、第1の移相器(Phase shifter1)110はPLLループの外に配置され、第2の移相器(Phase shifter2)111はPLLループ内に取り込まれているから、ループ・フィルタをラグリード型フィルタとしているので位相遅れが90°(π/2)以内に納まるものとすると、第2の移相器111での位相変化幅は位相遅れで高々90°(π/2)しか許容されない。それを超えるとPLLの負帰還ループが維持できなくなり、正帰還となって発振してしまい安定動作とはならなくなる。この条件を考慮すると第1の移相器110と第2の移相器111を同一とした場合に、移相器として利用可能なのはRCからなる1次LPFなどに限定される。高周波での利用を前提としているから、印加電圧で容量値が変化するバラクタ容量を可変Cとして用いるのが最も容易である。
【0080】
このように、入力された基準周波数と第2の移相器(Phase shifter2)111の出力信号間に位相差が生じるから、この2つの信号を位相の異なる信号として利用する。ここで注意すべき点は基準周波数の位相を変化させるだけで周波数は何も変わらないことである。また、位相比較器102にはXOR回路を用いる。XOR回路はディジタル回路であり、出力振幅はhighの場合に電源電圧VDD、lowの場合にGND電圧0Vをとる。
【0081】
したがって、位相比較器102にXOR回路を用い、差動増幅器104の正相入力端子の基準電圧が電源電圧VDDの半分(1/2)の場合には、PLLループが引き込まれてロックした場合に位相比較器102の2つの入力信号間には、90°(π/2)の位相差が生じるが、基準電圧を電源電圧VDDの4分の1(VDD/4)に変更することでPLLループが引き込まれてロックした場合に位相比較器102の2つの入力信号間に生じる位相差を45°(π/4)に設定することができる。
【0082】
ここで、第1の移相器(Phase shifter1)110と第2の移相器(Phase shifter2)111は共に制御電圧VCONが高くなると位相遅れが大きくなるものとする。例えば、2つの移相器(Phase shifter)110、111をRCの1次LPFとし、容量Cが電極間に電圧を印加することでその容量値を大きくできるバラクタを用い、印加電極間電圧の増加に対し容量値が単調に増加するものとすれば、RCの1次LPFからなるいずれの移相器(Phase shifter)110、111においても、位相差が45°(π/4)になる点は1次LPFの3dBカットオフ周波数においてであり、この点付近における周波数の変化に対する位相の変化量は大きい。すなわち、傾きが大きな領域であり、位相比較器102は線形動作すると、基準電圧VDD/2で位相差90°であることから、基準電圧の設定値が1%の誤差を持つと、移相誤差は1.1°に相当することになる。他に生じる移相誤差は、第1の移相器(Phase shifter1)110と第2の移相器(Phase shifter2)111の整合性に起因する。したがって、基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして±1%程度可変すれば、移相量を±2.2°程度可変することができる。
【0083】
<実施例6>
図7は、本発明の第6の実施例の構成を示す図である。図7を参照すると、本実施例は、図6の構成において、ループ・フィルタと差動増幅器を一体化したものである。図7において、基準周波数fREFが入力端子から印加され第1の移相器(Phase shifter1)110で位相が45°(π/4)だけ遅れ、振幅が1/√2に減衰し2分配される。すなわち、一方はインターフェース回路105で振幅が増幅され、矩形波に波形整形されて、位相比較器102であるXOR回路の一方の入力信号となり、他方は第2の移相器(Phase shifter2)111で位相が45°(π/4)だけ遅れ、振幅が1/√2に減衰した後に、インターフェース回路106で振幅が増幅され、矩形波に波形整形されて位相比較器102であるXOR回路の他方の入力信号となっている。ここで、第1の移相器(Phase shifter1)110と第2の移相器(Phase shifter2)111とは、共通に制御電圧VCONで制御されている。したがって、第1の移相器(Phase shifter1)110と第2の移相器(Phase shifter2)111でのそれぞれの移相量はほぼ等しい。このことにより、2つの移相器での移相量の総和は90°(π/2)となる。したがって、基準周波数と位相比較器102の一方の入力信号が位相差を持つ信号として利用できる。
【0084】
位相比較器102であるXOR回路の出力信号はデューティが1:3の矩形波形となり、平滑化されると直流電圧としては電源電圧VDDの4分の1の値(VDD/4)となる。この信号が、ラグリード・フィルタ特性と電圧利得を有するRCアクティブフィルタ107からなるループ・フィルタに入力される。RCアクティブフィルタ107を構成する差動増幅器104の正相入力端子(+)には基準電圧としてVDD/4の電圧が印加されており、差動増幅器104の逆相入力端子(−)と出力端子間には、抵抗R3と容量Cの直列回路と、抵抗R2とが並列に接続され、差動増幅器104の正相入力端子とXOR回路との間には抵抗R1が接続され、直流電圧利得Gは、−R2/R1となる。信号はこの電圧利得Gで増幅され、高域信号成分が除去されて第1の移相器(Phase shifter1)110と第2の移相器(Phase shifter2)111の共通の制御電圧となっている。すなわち、第1の移相器(Phase shifter1)110を除いた回路ブロックでPLLループを構成している。したがって、この基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして可変すれば、移相量を可変することができることになる。
【0085】
図7の回路の動作を説明する。図7において、第1の移相器(Phase shifter1)110はPLLループの外に配置され、第2の移相器(Phase shifter2)111はPLLループ内に取り込まれているから、ループ・フィルタをラグリード型フィルタとしているので位相遅れが90°(π/2)以内に納まるものとすると、第2の移相器(Phase shifter2)111での位相変化幅は位相遅れで高々90°(π/2)しか許容されない。それを超えるとPLLの負帰還ループが維持できなくなり、正帰還となって発振してしまい安定動作とはならなくなる。この条件を考慮すると移相器として利用可能なのはRCからなる1次LPFなどに限定される。高周波での利用を前提としているから、印加電圧で容量値が変化するバラクタ容量を可変Cとして用いるのが最も容易である。
【0086】
このように、入力された基準周波数fREFと第2の移相器(Phase shifter2)111の出力信号間に位相差が生じるから、この2つの信号を位相の異なる信号として利用する。ここで注意すべき点は基準周波数の位相を変化させるだけで周波数は何も変わらないことである。
【0087】
また、位相比較器102にはXOR回路を用いる。XOR回路はディジタル回路であり、出力振幅はhighの場合に電源電圧VDD、lowの場合にGND電圧0Vをとる。
したがって、位相比較器102にXOR回路を用い基準電圧が電源電圧VDDの半分(VDD/2)の場合には、PLLループが引き込まれてロックした場合に位相比較器102の2つの入力信号間には90°(π/2)の位相差が生じるが、基準電圧を電源電圧VDDの4分の1(VDD/4)に変更することでPLLループが引き込まれてロックした場合に位相比較器102の2つの入力信号間に生じる位相差を45°(π/4)に設定することができる。
【0088】
ここで、第1の移相器(Phase shifter1)110と第2の移相器(Phase shifter2)111は共に制御電圧VCONが高くなると位相遅れが大きくなるものとする。例えば、2つの移相器(Phase shifter)110、111をRCの1次LPFとし、容量Cが電極間に電圧を印加することでその容量値を大きくできるバラクタを用い、印加電極間電圧の増加に対し容量値が単調に増加するものとすれば、RCの1次LPFからなる移相器(Phase shifter)110、111において、位相差が45°(π/4)になる点は、1次LPFの3dBカットオフ周波数においてであり、この点付近における周波数の変化に対する位相の変化量は大きい。すなわち、傾きが大きな領域であり、位相比較器102は線形動作すると、基準電圧VDD/2で位相差90°であるから、基準電圧の設定値が1%の誤差を持つと移相誤差は1.1°に相当することになる。他に生じる移相誤差は第1の移相器(Phase shifter1)110と第2の移相器(Phase shifter2)111の整合性に起因する。したがって、基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして±1%程度可変すれば、移相量を±2.2°程度可変することができる。
【0089】
<実施例7>
図8は、本発明の第7の実施例の構成を示す図である。図6に示した回路において、XOR回路を用いた位相比較器102のそれぞれの入力端子の前に、インターフェース回路105、106に代えて、同一分周数の周波数分周回路108、109を挿入し、位相比較器102への入力周波数を低くすることができる。
【0090】
図8において、基準周波数fREFが入力端子100から印加され第1の移相器(Phase shifter1)110で位相が45°(π/4)だけ遅れ、振幅が1/√2に減衰し2分配される。すなわち、一方は分周数nの周波数分周回路108を介して位相比較器102であるXOR回路の一方の入力信号となり、他方は第2の移相器(Phase shifter2)111で位相が45°(π/4)だけ遅れ、振幅が1/√2に減衰した後に、分周数nの周波数分周回路109を介して、矩形波に波形整形されて位相比較器102であるXOR回路の他方の入力信号となっている。ここで、第1の移相器(Phase shifter1)110と第2の移相器(Phase shifter2)111とは、共通に制御電圧VCONで制御されている。したがって、第1の移相器(Phase shifter1)110と第2の移相器(Phase shifter2)111でのそれぞれの移相量はほぼ等しい。このことにより、2つの移相器での移相量の総和は90°(π/2)となる。したがって、基準周波数と位相比較器102の一方の入力信号が位相差を持つ信号として利用できる。
【0091】
XOR回路の出力信号はデューティが1:3の矩形波形となり、ラグリード・フィルタからなるループ・フィルタ103により平滑化されると直流電圧としてはVDD/4の値となる。ループ・フィルタ103の出力電圧は、基準電圧としてVDD/4の電圧が印加された差動増幅器(電圧利得が−G)により増幅されて、第1、第2の移相器(Phase shifter)110、111の制御電圧となっている。すなわち、PLLループを構成している。したがって、この基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして可変すれば、移相量を可変することができることになる。
【0092】
次に、図8の回路の動作を説明する。図8において、第1の移相器(Phase shifter1)110はPLLループの外に配置され、第2の移相器(Phase shifter2)111はPLLループ内に取り込まれているから、ループ・フィルタをラグリード型フィルタとしているので位相遅れが90°(π/2)以内に納まるものとすると、第2の移相器111での位相変化幅は位相遅れで高々90°(π/2)しか許容されない。それを超えると、PLLの負帰還ループが維持できなくなり、正帰還となって発振してしまい安定動作とはならなくなる。この条件を考慮すると、第1の移相器110と第2の移相器111を同一とした場合に、移相器として利用可能なのはRCからなる1次LPFなどに限定される。高周波での利用を前提としているから、印加電圧で容量値が変化するバラクタ容量を可変Cとして用いるのが最も容易である。
【0093】
このように、入力された基準周波数と第2の移相器(Phase shifter2)111の出力信号間に位相差が生じるから、この2つの信号を位相の異なる信号として利用する。ここで注意すべき点は基準周波数の位相を変化させるだけで周波数は何も変わらないことである。
【0094】
また、位相比較器102にはXOR回路を用いる。XOR回路はディジタル回路であり、出力振幅はhighの場合に電源電圧VDD、lowの場合にGND電圧0Vをとる。
したがって、位相比較器102にXOR回路を用い基準電圧が電源電圧VDDの半分(1/2)の場合には、PLLループが引き込まれてロックした場合に位相比較器102の2つの入力信号間には90°(π/2)の位相差が生じるが、基準電圧を電源電圧VDDの4分の1(VDD/4)に変更することでPLLループが引き込まれてロックした場合に位相比較器102の2つの入力信号間に生じる位相差を45°(π/4)に設定することができる。
【0095】
ここで、第1の移相器(Phase shifter1)110と第2の移相器(Phase shifter2)111は共に制御電圧VCONが高くなると位相遅れが大きくなるものとする。例えば、2つの移相器(Phase shifter)110、111をRCの1次LPFとし、容量Cが電極間に電圧を印加することでその容量値を大きくできるバラクタを用い、印加電極間電圧の増加に対し容量値が単調に増加するものとすれば、RCの1次LPFからなるいずれの移相器(Phase shifter)110、111においても、位相差が45°(π/4)になる点は1次LPFの3dBカットオフ周波数においてであり、この点付近における周波数の変化に対する位相の変化量は大きい。すなわち、傾きが大きな領域であり、位相比較器102は線形動作すると、基準電圧VDD/2で位相差90°であるから、基準電圧の設定値が1%の誤差を持つと、移相誤差は1.1°に相当することになる。他に生じる移相誤差は、第1の移相器(Phase shifter1)110と第2の移相器(Phase shifter2)111の整合性に起因する。したがって、基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして、±1%程度可変すれば、移相量を±2.2°程度可変することができる。
【0096】
<実施例8>
図9は、本発明の第8の実施例の構成を示す図である。図9に示すように、図8の構成において、ループ・フィルタと差動増幅器を一体化することができる。
【0097】
図9において、基準周波数fREFが入力端子100から印加され第1の移相器(Phase shifter1)110で位相が45°(π/4)だけ遅れ、振幅が1/√2に減衰し2分配される。すなわち、一方は、分周数nの周波数分周回路108を介して位相比較器102であるXOR回路の一方の入力信号となり、他方は第2の移相器(Phase shifter2)111で位相が45°(π/4)だけ遅れ、振幅が1/√2に減衰した後に、分周数nの周波数分周回路109を介して、矩形波に波形整形されて、位相比較器102であるXOR回路の他方の入力信号となっている。ここで、第1の移相器(Phase shifter1)110と第2の移相器(Phase shifter2)111とは、共通に制御電圧VCONで制御されている。
【0098】
したがって、第1の移相器(Phase shifter1)110と第2の移相器(Phase shifter2)111でのそれぞれの移相量はほぼ等しい。このことにより、2つの移相器での移相量の総和は90°(π/2)となる。したがって、基準周波数と位相比較器102の一方の入力信号が位相差を持つ信号として利用できる。
【0099】
位相比較器102であるXOR回路の出力信号はデューティが1:3の矩形波形となり、平滑化されると直流電圧としては電源電圧VDDの4分の1の値(VDD/4)となる。この信号が、ラグリード・フィルタ特性と電圧利得を有するRCアクティブフィルタ107からなるループ・フィルタに入力される。このRCアクティブフィルタ107を構成する差動増幅器104の正相入力端子(+)には基準電圧としてVDD/4の電圧が印加されており、差動増幅器104の逆相入力端子(−)と出力端子間には、抵抗R3と容量Cの直列回路と、抵抗R2とが並列に接続され、差動増幅器104の正相入力端子とXOR回路との間には、抵抗R1が接続され、直流電圧利得Gは−R2/R1となる。信号はこの電圧利得Gで増幅され、高域信号成分が除去されて第1の移相器(Phase shifter1)110と第2の移相器(Phase shifter2)111の共通の制御電圧となっている。
【0100】
すなわち、第1の移相器(Phase shifter1)110を除いた回路ブロックでPLLループを構成している。したがって、この基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして可変すれば、移相量を可変することができることになる。
【0101】
次に図9の回路の動作を説明する。図9において、第1の移相器(Phase shifter1)110はPLLループの外に配置され、第2の移相器(Phase shifter2)111はPLLループ内に取り込まれているから、ループ・フィルタをラグリード型フィルタとしているので位相遅れが90°(π/2)以内に納まるものとすると、第2の移相器(Phase shifter2)111での位相変化幅は位相遅れで高々90°(π/2)しか許容されない。それを超えると、PLLの負帰還ループが維持できなくなり、正帰還となって発振してしまい安定動作とはならなくなる。この条件を考慮すると移相器として利用可能なのはRCからなる1次LPFなどに限定される。高周波での利用を前提としているから、印加電圧で容量値が変化するバラクタ容量を可変Cとして用いるのが最も容易である。
【0102】
このように、入力された基準周波数fREFと第2の移相器(Phase shifter2)111の出力信号間に位相差が生じるから、この2つの信号を位相の異なる信号として利用する。ここで注意すべき点は、基準周波数fREFの位相を変化させるだけで周波数は何も変わらないことである。
【0103】
また、位相比較器102にはXOR回路を用いる。XOR回路はディジタル回路であり、出力振幅はhighの場合に電源電圧VDD、lowの場合にGND電圧0Vをとる。
したがって、位相比較器102にXOR回路を用い基準電圧が電源電圧VDDの半分(VDD/2)の場合には、PLLループが引き込まれてロックした場合に位相比較器102の2つの入力信号間には90°(π/2)の位相差が生じるが、基準電圧を電源電圧VDDの4分の1(VDD/4)に変更することでPLLループが引き込まれてロックした場合に位相比較器102の2つの入力信号間に生じる位相差を45°(π/4)に設定することができる。
【0104】
ここで、第1の移相器(Phase shifter1)110と第2の移相器(Phase shifter2)111は共に制御電圧VCONが高くなると位相遅れが大きくなるものとする。例えば、2つの移相器(Phase shifter)110、111をRCの1次LPFとし、容量Cが電極間に電圧を印加することでその容量値を大きくできるバラクタを用い、印加電極間電圧の増加に対し容量値が単調に増加するものとすれば、RCの1次LPFからなる移相器(Phase shifter)110、111において、位相差が45°(π/4)になる点は1次LPFの3dBカットオフ周波数においてであり、この点付近における周波数の変化に対する位相の変化量は大きい。すなわち、傾きが大きな領域であり、位相比較器102は線形動作すると、基準電圧VDD/2で位相差90°であることから、基準電圧の設定値が1%の誤差を持つと移相誤差は1.1°に相当することになる。他に生じる移相誤差は第1の移相器(Phase shifter1)110と第2の移相器(Phase shifter2)111の整合性に起因する。したがって、基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして±1%程度可変すれば、移相量を±2.2°程度可変することができる。
【0105】
<実施例9>
図10に示すように、電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)を用いた良く知られたPLL回路を用いても90°(π/2)移相回路を実現することができる。
【0106】
図10において、基準周波数fREFが入力端子100から印加され、インターフェース回路105で矩形波に波形整形されて位相比較器102であるXOR回路の一方の入力信号となり、VCO112からの発振周波数が印加され、インターフェース回路106で矩形波に波形整形されて位相比較器102であるXOR回路の他方の入力信号となっている。したがって、位相比較器102の2つの入力信号が位相差を持つ信号として利用できる。
【0107】
XOR回路の出力信号はデューティが1:1の矩形波形となり、ラグリード・フィルタからなるループ・フィルタ103により平滑化されると、直流電圧としてはVDD/2の値となる。ループ・フィルタ103の出力電圧は、基準電圧としてVDD/2の電圧が印加された差動増幅器104(電圧利得が−G)により増幅されて、VCO112の制御電圧VCONとなっている。すなわち、PLLループを構成している。したがって、この基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして可変すれば、移相量を可変することができることになる。
【0108】
次に図10の回路の動作を説明する。図10において、VCO112、位相比較器102、ループ・フィルタ(ラグリード型フィルタ)103はPLL回路を構成している。高周波での利用を前提としているから、VCO112のタンク回路には、LCタンク回路を用い、容量Cには、印加電圧で容量値が変化するバラクタ容量を可変Cとして用いるのが最も容易である。
【0109】
また、位相比較器102にはXOR回路を用いる。XOR回路はディジタル回路であり、出力振幅はhighの場合に電源電圧VDD、lowの場合にGND電圧0Vをとる。
したがって、位相比較器102にXOR回路を用い基準電圧が電源電圧VDDの半分(1/2)の場合には、PLLループが引き込まれてロックした場合に位相比較器102の2つの入力信号間には90°(π/2)の位相差が生じる。このように、入力された基準周波数とVCO112の出力信号間に位相差が生じるから、この2つの信号を位相の異なる信号として利用する。
【0110】
ここで、VCO112は、制御電圧VCONが高くなると発振周波数が下がるものとする。例えば、VCO112をLCタンク回路からなる同調回路を持つものとし、容量Cが電極間に電圧を印加することでその容量値を大きくできるバラクタを用い、印加電極間電圧の増加に対し容量値が単調に増加するものとすれば良い。
【0111】
位相比較器102は線形動作すると、基準電圧VDD/2で位相差90°であることから、基準電圧の設定値が1%の誤差を持つと、移相誤差は1.1°に相当することになる。したがって、基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして±1%程度可変すれば、移相量を±1.1°程度可変することができる。
【0112】
<実施例10>
図11は、本発明の第10の実施例の構成を示す図である。図11を参照すると、本実施例は、図10のループ・フィルタと差動増幅器を一体化することができる。
【0113】
図11において、基準周波数fREFが入力端子100から印加されインターフェース回路105で矩形波に波形整形されて位相比較器102であるXOR回路の一方の入力信号となり、VCO112からの発振周波数が印加され、インターフェース回路106で振幅が増幅され、矩形波に波形整形されて位相比較器102であるXOR回路の他方の入力信号となっている。したがって、位相比較器102の2つの入力信号が位相差を持つ信号として利用できる。
【0114】
XOR回路の出力信号はデューティが1:1の矩形波形となり、平滑化されると直流電圧としては電源電圧VDDの2分の1の値(VDD/2)となる。この信号が、ラグリード・フィルタ特性と電圧利得を有するRCアクティブフィルタ107からなるループ・フィルタに入力される。RCアクティブフィルタ107を構成する差動増幅器104の正相入力端子(+)には基準電圧としてVDD/2の電圧が印加されており、差動増幅器104の逆相入力端子(−)と出力端子間には、抵抗R3と容量Cの直列回路と、抵抗R2とが並列に接続され、差動増幅器104の正相入力端子とXOR回路との間には抵抗R1が接続され、直流電圧利得Gは、−R2/R1となる。信号はこの電圧利得Gで増幅され、高域信号成分が除去されてVCO(Phase shifter)112の制御電圧となっている。すなわち、PLLループを構成している。したがって、この基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして可変すれば、移相量を可変することができることになる。
【0115】
次に図11の回路の動作を説明する。図11において、VCO112、位相比較器102、アクティブフィルタ107からなるループ・フィルタ(ラグリード型フィルタ)はPLL回路を構成している。高周波での利用を前提としているから、印加電圧で容量値が変化するバラクタ容量を可変Cとして用いるのが最も容易である。
【0116】
また、位相比較器102にはXOR回路を用いる。XOR回路はディジタル回路であり、出力振幅はhighの場合に電源電圧VDD、lowの場合にGND電圧0Vをとる。
したがって、位相比較器102にXOR回路を用い基準電圧が電源電圧VDDの半分(VDD/2)の場合には、PLLループが引き込まれてロックした場合に位相比較器102の2つの入力信号間には90°(π/2)の位相差が生じる。このように、入力された基準周波数とVCO112の出力信号間に位相差が生じるから、この2つの信号を位相の異なる信号として利用する。
【0117】
ここで、VCO112は、制御電圧VCONが高くなると発振周波数が下がるものとする。例えば、VCO112をLCタンク回路からなる同調回路を持つものとし、容量Cが電極間に電圧を印加することでその容量値を大きくできるバラクタを用い、印加電極間電圧の増加に対し容量値が単調に増加するものとすれば良い。
【0118】
位相比較器102は線形動作すると、基準電圧VDD/2で位相差90°であるから、基準電圧の設定値が1%の誤差を持つと移相誤差は1.1°に相当することになる。したがって、基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして±1%程度可変すれば、移相量を±1.1°程度可変することができる。
【0119】
<実施例11>
図12は、本発明の第11の実施例の構成を示す図である。図12を参照すると、本実施例は、図10に示した回路において、XOR回路を用いた位相比較器102のそれぞれの入力端子の前に、インターフェース回路105、106に代えて、同一分周数の周波数分周回路108、109を挿入し、位相比較器102への入力周波数を低くすることができる。
【0120】
図12において、基準周波数fREFが入力端子100から印加され、分周数nの周波数分周回路108を介して位相比較器102であるXOR回路の一方の入力信号となり、VCO112からの発振周波数が印加され、分周数nの周波数分周回路109を介して位相比較器102であるXOR回路の他方の入力信号となっている。したがって、位相比較器102の2つの入力信号が位相差を持つ信号として利用できる。
【0121】
XOR回路の出力信号はデューティが1:1の矩形波形となり、ラグリード・フィルタからなるループ・フィルタ103により平滑化されると直流電圧としてはVDD/2の値となる。ループ・フィルタ103の出力電圧は、基準電圧としてVDD/2の電圧が印加された差動増幅器104(電圧利得が−G)により増幅されてVCO112の制御電圧VCONとなっている。すなわち、PLLループを構成している。したがって、この基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして可変すれば、移相量を可変することができることになる。
【0122】
次に、図12の回路の動作を説明する。図12において、VCO112、分周回路108、109、位相比較器102、ループ・フィルタ(ラグリード型フィルタ)103は、PLL回路を構成している。高周波での利用を前提としているから、VCO112のタンク回路にはLCタンク回路を用い、容量Cには印加電圧で容量値が変化するバラクタ容量を可変Cとして用いるのが最も容易である。
【0123】
また、位相比較器102にはXOR回路を用いる。XOR回路はディジタル回路であり、出力振幅はhighの場合に電源電圧VDD、lowの場合にGND電圧0Vをとる。
したがって、位相比較器102にXOR回路を用い基準電圧が電源電圧VDDの半分(1/2)の場合には、PLLループが引き込まれてロックした場合に位相比較器102の2つの入力信号間には90°(π/2)の位相差が生じる。このように、入力された基準周波数とVCO112の出力信号間に位相差が生じるから、この2つの信号を位相の異なる信号として利用する。
【0124】
ここで、VCO112は制御電圧VCONが高くなると発振周波数が下がるものとする。例えば、VCO112をLCタンク回路からなる同調回路を持つものとし、容量Cが電極間に電圧を印加することでその容量値を大きくできるバラクタを用い、印加電極間電圧の増加に対し容量値が単調に増加するものとすれば良い。
【0125】
位相比較器102は線形動作すると、基準電圧VDD/2で位相差90°であるから、基準電圧の設定値が1%の誤差を持つと、移相誤差は1.1°に相当することになる。したがって、基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして±1%程度可変すれば、移相量を±1.1°程度可変することができる。
【0126】
<実施例12>
図13は、本発明の第12の実施例の構成を示す図である。図12を参照すると、本実施例は、図12のループ・フィルタ103と差動増幅器104を一体化したものである。
【0127】
図13において、基準周波数fREFが入力端子100から印加され、分周数nの周波数分周回路108を介して位相比較器102であるXOR回路の一方の入力信号となり、VCO112からの発振周波数が印加され、分周数nの周波数分周回路109を介して位相比較器102であるXOR回路の他方の入力信号となっている。したがって、位相比較器102の2つの入力信号が位相差を持つ信号として利用できる。
【0128】
位相比較器102であるXOR回路の出力信号はデューティが1:1の矩形波形となり、平滑化されると直流電圧としては電源電圧VDDの2分の1の値(VDD/2)となる。この信号が、ラグリード・フィルタ特性と電圧利得を有するRCアクティブフィルタ107からなるループ・フィルタに入力される。このRCアクティブフィルタ107を構成する差動増幅器104の正相入力端子(+)には基準電圧としてVDD/2の電圧が印加されており、差動増幅器104の逆相入力端子(−)と出力端子間には、抵抗R3と容量Cの直列回路と、抵抗R2とが並列に接続され、差動増幅器104の正相入力端子とXOR回路との間には抵抗R1が接続され、直流電圧利得Gは−R2/R1となる。信号はこの電圧利得Gで増幅され、高域信号成分が除去されてVCO112(Phase shifter)の制御電圧となっている。すなわち、PLLループを構成している。したがって、この基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして可変すれば、移相量を可変することができることになる。
【0129】
次に図13の回路の動作を説明する。図13において、VCO112、周波数分周回路108、109、位相比較器102、アクティブフィルタ107からなるループ・フィルタ(ラグリード型フィルタ)は、PLL回路を構成している。
【0130】
高周波での利用を前提としているから、印加電圧で容量値が変化するバラクタ容量を可変Cとして用いるのが最も容易である。また、位相比較器102にはXOR回路を用いる。XOR回路はディジタル回路であり、出力振幅はhighの場合に電源電圧VDD、lowの場合にGND電圧0Vをとる。
【0131】
したがって、位相比較器102にXOR回路を用い基準電圧が電源電圧VDDの半分(VDD/2)の場合には、PLLループが引き込まれてロックした場合に位相比較器102の2つの入力信号間には90°(π/2)の位相差が生じる。このように、入力された基準周波数とVCO112の出力信号間に位相差が生じるから、この2つの信号を位相の異なる信号として利用する。
【0132】
ここで、VCO112は制御電圧VCONが高くなると発振周波数が下がるものとする。例えば、VCO112をLCタンク回路からなる同調回路を持つものとし、容量Cが電極間に電圧を印加することでその容量値を大きくできるバラクタを用い、印加電極間電圧の増加に対し容量値が単調に増加するものとすれば良い。
【0133】
位相比較器102は線形動作すると、基準電圧VDD/2で位相差90°であるから、基準電圧の設定値が1%の誤差を持つと移相誤差は1.1°に相当することになる。したがって、基準電圧をスイッチ等で分圧抵抗の一部を切り替えるなどして±1%程度可変すれば、移相量を±1.1°程度可変することができる。
【0134】
本発明の活用例として、LSI上に集積される無線端末用フロントエンドにおいて、サブハーモニックミキサを用いるダイレクトコンバージョン方式の受信システム用の45°(π/4)移相回路や一般的なダイレクトコンバージョン方式の受信システム用の90°(π/2)移相回路やその他の直交変復調回路用の90°(π/2)移相回路が挙げられる。特に、最近の集積回路プロセスの超々微細化の進展に伴い、周波数特性が向上し、RF−MOSとして1チップ上に集積される場合の要求が高まっているが、本発明は、そうした要望に答えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の一実施例の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施例の回路構成を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施例の回路構成を示す図である。
【図4】本発明の第3の実施例の回路構成を示す図である。
【図5】本発明の第4の実施例の回路構成を示す図である。
【図6】本発明の第5の実施例の回路構成を示す図である。
【図7】本発明の第6の実施例の回路構成を示す図である。
【図8】本発明の第7の実施例の回路構成を示す図である。
【図9】本発明の第8の実施例の回路構成を示す図である。
【図10】本発明の第9の実施例の回路構成を示す図である。
【図11】本発明の第10の実施例の回路構成を示す図である。
【図12】本発明の第11の実施例の回路構成を示す図である。
【図13】本発明の第12の実施例の回路構成を示す図である。
【図14】RC−CRを用いた従来の90°移相回路の構成を示す図である。
【図15】ジョンソン・カウンタを用いた従来の90°移相回路の構成を示す図である。
【図16】特許文献1に記載された回路構成を示す図である。
【図17】特許文献1に記載された回路の周波数特性を示す図である。
【図18】特許文献1に記載された他の回路構成を示す図である。
【符号の説明】
【0136】
21 第1の帯域通過フィルタ(RCアクティブBPF)
22 第2の帯域通過フィルタ(RCアクティブBPF)
41 第1の全域通過フィルタ
42 第2の全域通過フィルタ
43 第1のRC全域通過フィルタ
44 第1のRC全域通過フィルタ
100 入力端子
101 移相器(Phase shifter)
102 位相比較器(XOR)
103 ループフィルタ(LPF)
104 差動増幅器
105、106 インターフェース回路
107 RCアクティブフィルタ(アクティブLPF)
108、109 周波数分周回路
110 第1の移相器(Phase shifter1)
111 第2の移相器(Phase shifter2)
112 VCO

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準周波数信号が入力されて2つに分配され、
前記基準周波数信号を分配した一方の信号を、第1の入力端子に入力する位相比較器と、
前記基準周波数信号を分配した他方の信号を入力し該他方の信号の位相を移相した信号を出力する移相器と、
を備え、
前記移相器の出力信号は、前記位相比較器の第2の入力端子に入力され、
前記位相比較器の出力を入力するローパスフィルタと、
第1の入力端子が前記ローパスフィルタの出力に接続された差動増幅器と、
を備え、
前記差動増幅器の出力信号により、前記移相器の移相量が制御されるPLLループを有し、
前記差動増幅器の第2の入力端子に印加される基準電圧により、前記移相器の移相量が定まる、ことを特徴とする移相回路。
【請求項2】
前記ローパスフィルタと前記差動増幅器とを一体としてなるアクティブローパスフィルタを備えている、ことを特徴とする請求項1記載の移相回路。
【請求項3】
前記位相比較器の第1及び第2の入力端子の前に、分周数の互いに等しい第1、第2の周波数分周器が挿入されている、ことを特徴とする請求項1又は2記載の移相回路。
【請求項4】
前記基準電圧が、電源電圧の4分の1であり、移相量がπ/4である、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の移相回路。
【請求項5】
基準周波数信号を入力し該信号の位相を移相した信号を出力する第1の移相器と、
前記第1の移相器で位相が移相された信号が2つに分配され、
前記2つに分配された一方の信号を第1の入力端子に入力する位相比較器と、
前記2つに分配された他方の信号を入力し該他方の信号の位相を移相した信号を出力する第2の移相器と、
を備え、
前記第2の移相器の出力信号が前記位相比較器の第2の入力端子に入力され、
前記位相比較器の出力を入力するローパスフィルタと、
第1の入力端子が前記ローパスフィルタの出力に接続された差動増幅器と、
を備え、
前記差動増幅器の出力信号により、前記第1および第2の移相器の移相量が制御されるPLLループを有し、
前記差動増幅器の第2の入力端子に印加される基準電圧により、前記第1及び第2の移相器の移相量が定まる、ことを特徴とする移相回路。
【請求項6】
前記ローパスフィルタと前記差動増幅器とを一体としてなるアクティブローパスフィルタを備えている、ことを特徴とする請求項5記載の移相回路。
【請求項7】
前記位相比較器の第1、第2の入力端子の前に、分周数が互いに等しい第1、第2の周波数分周器が挿入されている、ことを特徴とする請求項5又は6記載の移相回路。
【請求項8】
前記基準電圧が電源電圧の4分の1であり、前記第1及び第2の移相器の移相量がπ/4であり、移相量の和がπ/2であることを特徴とする請求項5又は6記載の移相回路。
【請求項9】
基準周波数信号を第1の入力端子に入力する位相比較器と、
制御電圧によって発振周波数を可変させる電圧制御発振器と、
を備え、
前記電圧制御発振器の出力信号が前記位相比較器の第2の入力端子に入力され、
前記位相比較器の出力を入力とするローパスフィルタと、
前記ローパスフィルタの出力を第1の入力端子に入力する差動増幅器と、
を備え、
前記差動増幅器の出力信号により、前記電圧制御発振器の発振周波数が制御されるPLLループを有し、
前記差動増幅器の第2の入力端子に印加される基準電圧により、前記移相器の移相量が定まることを特徴とする移相回路。
【請求項10】
前記ローパスフィルタと前記差動増幅器とを一体としてなるアクティブローパスフィルタを備えている、ことを特徴とする請求項9記載の移相回路。
【請求項11】
前記位相比較器の第1、第2の入力端子の前に、分周数が互いに等しい第1、第2の周波数分周器が挿入されている、ことを特徴とする請求項9又は10記載の移相回路。
【請求項12】
前記基準電圧が電源電圧の2分の1であり、移相器の移相量がπ/2であることを特徴とする請求項9又は10記載の移相回路。
【請求項13】
前記基準電圧を可変する手段を有し、
前期移相器の移相量を可変自在としてなる、ことを特徴とする請求項1乃至3、請求項5乃至7、および請求項9乃至11のいずれか一記載の移相回路。
【請求項14】
前記位相比較器の第2の入力端子に入力される信号が、移相回路の出力信号として用いられる、ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一に記載の移相回路。
【請求項15】
前記第1の移相器に入力される基準周波数信号と、前記位相比較器の第2の入力端子に入力される信号が、移相回路の出力信号として用いられる、ことを特徴とする請求項5乃至8のいずれか一に記載の移相回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−78995(P2008−78995A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255763(P2006−255763)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】