積層体の製造方法
【課題】複数の基板を積層して積層体を形成する場合において、ウェーハ上にマーカーを設けることなく基板同士を位置合せして重ね合わせることが可能な積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】圧力センサーの製造方法は、感圧素子層10、ベース層の接合面に傾斜部208、306を形成する外形形成工程と、傾斜部208、306を用いて位置合せを行いながら、感圧素子層10、ダイアフラム層20、ベース層を重ね合わせて接合面を接合剤40で接合する接合工程とを備える。
【解決手段】圧力センサーの製造方法は、感圧素子層10、ベース層の接合面に傾斜部208、306を形成する外形形成工程と、傾斜部208、306を用いて位置合せを行いながら、感圧素子層10、ダイアフラム層20、ベース層を重ね合わせて接合面を接合剤40で接合する接合工程とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造方法に関し、特に、各基板同士を位置合せして積層する積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動子、等の圧電デバイス、圧力センサー、等の物理量検出デバイス、そして、半導体やチップ部品(コンデンサー、サーミスタ、等)等をパッケージに搭載した電子デバイスは、2つ以上の基板を積層した積層構造を有している(例えば、特許文献1、2、9参照)。
【0003】
このような積層構造を形成するために、各基板同士を重ね合わせて接合する必要があるが、接合剤が接合部からはみ出したり、各基板の大きさや形状が異なる場合には各基板の位置合せが正確にできないという問題があった。
【0004】
各基板の接合部から接合剤がはみ出すのを防止する技術として、各基板の接合部に溝を設ける技術や(例えば、特許文献3−5参照)、各基板の接合部に凸部や段部を設ける技術が存在する(例えば、特許文献6−8参照)。
【0005】
また、これら積層型の電子デバイスの製造方法として、前記電子デバイスを構成する各層の基板に相当する個片を多数連結してなる各ウェーハ(マザー基板)を積層した後、積層したウェーハの積層体を個片に分離し、前記電子デバイスを製造するのが一般的である。ここで、各ウェーハを積層する際、予め、各ウェーハの所定の位置にアライメント用のマーカー(認識マーク)を設け、各ウェーハを積層するときに、カメラによる画像処理にて前記マーカーを用いてアライメントし、層間で位置ズレが生じないように各ウェーハを積層している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−327922号公報
【特許文献2】特開2008−241287号公報
【特許文献3】特開昭56−06182号公報
【特許文献4】特開昭53−7172号公報
【特許文献5】特開2008−267896号公報
【特許文献6】特開2009−302996号公報
【特許文献7】特開2001−136047号公報
【特許文献8】特開2001−093998号公報
【特許文献9】特開2010−246001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した技術では、通常、ウェーハの数箇所に前記マーカーを設ける必要があるために、その分、個片のレイアウト面積が減るので、ウェーハ積層体からの個片(電子デバイス)の取り数が減少してしまう問題点があった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、複数の基板を積層して積層体を形成する場合において、ウェーハ上にマーカーを設けることなく基板同士を位置合せして重ね合わせることが可能な積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]少なくとも2つの基板を積層して形成される積層体の製造方法であって、前記2つの基板が接合される少なくとも一方の接合面に、傾斜部を形成する外形形成工程と、前記傾斜部を位置合せに用いて、前記2つの基板を重ね合わせて接合する接合工程とを備えたことを特徴とする積層体の製造方法。
本発明によれば、接合面に形成した傾斜部を用いて各基板同士を位置合せして重ね合わせ、積層体を形成することができる。更に、マザーウェーハ積層体から得られる個片の積層体の取り数を増加させることができる。
【0010】
[適用例2]前記基板は異方性を有する結晶材料からなり、前記傾斜部は、前記外形形成工程において前記基板をウェットエッチングすることにより形成されることを特徴とする適用例1に記載の積層体の製造方法。
本発明によれば、傾斜部は、異方性を有する結晶材料からなる基板をウェットエッチングすることにより形成することができるため、傾斜部を容易に形成することができ、エッチング異方性により形成される傾斜部を利用して基板同士を位置合せすることができる。
【0011】
[適用例3]前記傾斜部は2つの傾斜面を含み、前記接合工程において、前記2つの傾斜面同士が交わる交線を位置合せに用いて、前記2つの基板の前記接合面を接合することを特徴とする適用例1又は2に記載の積層体の製造方法。
本発明によれば、傾斜面の交線をアライメントマークとして用いることで、各基板同士を位置合せして積層することができる。また、接合面の面積が大きくなるため、接合強度を大きくすることができる。
【0012】
[適用例4]前記基板は水晶で形成されていることを特徴とする適用例1乃至3のうち何れか1項に記載の積層体の製造方法。
本発明によれば、水晶は光透過性があり、異方性を有する結晶材料であるため、ウェットエッチングにより傾斜部を形成し、傾斜部に光を照射して位置合せを行うことができる。
【0013】
[適用例5]前記基板はATカット板であることを特徴とする適用例2乃至4のうち何れか1項に記載の積層体の製造方法。
本発明によれば、ATカット板をウェットエッチングした場合に特定の形状の傾斜部が形成されるため、当該傾斜部を用いて位置合せを行うことができる。
【0014】
[適用例6]前記基板はZカット板であることを特徴とする適用例2乃至4のうち何れか1項に記載の積層体の製造方法。
本発明によれば、Zカット板をウェットエッチングした場合に特定の形状の傾斜部が形成されるため、当該傾斜部を用いて位置合せを行うことができる。
【0015】
[適用例7]前記基板は光透過性を有する基板であり、前記接合工程において、前記傾斜部に光を照射することにより位置合せを行いながら、前記2つの基板を重ね合わせて接合することを特徴とする適用例1乃至6のうち何れか1項に記載の積層体の製造方法。
本発明によれば、基板に形成された傾斜部に光を照射すれば、光の屈折角及び反射角の違いにより傾斜部を認識することができるため、傾斜部を位置合せに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る圧力センサーの断面図である。
【図2】同実施形態に係る圧力センサーの斜視展開図である。
【図3】同実施形態に係る圧力センサーの感圧素子層の平面図である。
【図4】同実施形態に係る圧力センサーの製造方法の工程図である。
【図5】変形例に係る圧力センサーの断面図である。
【図6】変形例に係る各基板の接合面に形成される傾斜部の断面形状を示す模式図である。
【図7】変形例に係る各基板の接合面に形成される傾斜部の断面形状を示す模式図である。
【図8】変形例に係る圧力センサーの斜視図である。
【図9】圧力センサーの振動部として1つの柱状ビームを用いた場合の感圧素子層の平面図である。
【図10】圧力センサーの振動部としてATカット振動子を用いた場合の、感圧素子層、各マザーウェーハ、及び圧力センサーの斜視図である。
【図11】圧電デバイスの圧電振動基板の振動部が音叉振動子である場合の圧電デバイスの分解斜視図及び圧電振動基板の裏面図である。
【図12】圧電デバイスの圧電振動基板の振動部がATカット水晶振動子である場合の圧電デバイスの分解斜視図及び圧電振動基板の裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る積層体の製造方法を圧力センサーの製造方法に適用した場合の実施形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。図1は本実施形態に係る圧力センサー1の断面図であり、図2は圧力センサー1の分解斜視図である。これらの図に示すように、圧力センサー1は、感圧素子層10と、感圧素子層10の一方の主面側及び他方の主面側それぞれを気密封止するように覆うダイアフラム層20及びベース層30と、の3つの基板を備えている。各層10、20、30は水晶板で形成されている。水晶は、異方性結晶材料であり光透過性を有している。また、各層10、20、30は、それぞれZカット板であり、水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸に平行な辺と、機械軸としてのY軸に平行な辺とを有し、光学軸としてのZ軸方向に厚みを有している。
【0018】
図3は感圧素子層10の平面図である。図2及び図3に示すように、感圧素子層10は、中央に感圧素子としての双音叉素子106と、その周囲を囲む枠部108とを有している。双音叉素子106は、振動部としての一対の平行な柱状ビーム16a,16bと、両柱状ビーム16a,16bの両端に接続される一対の基部16cとを有している。双音叉素子106は屈曲振動をする振動素子であるとともに、柱状ビーム16a,16bに引張応力又は圧縮応力が印加されると、その共振周波数が変化する周波数変化型の感圧素子であり、所謂、双音叉型の圧電振動子である。
【0019】
枠部108は、各基部16cから柱状ビーム16a,16bと直交する方向に延びる一対の梁部110a,110bを介して双音叉素子106と連結されている。
枠部108の一方の主面のうち、X軸に平行に延びる2つの領域それぞれには、X軸に沿ってアライメントマーク102aが形成されている。また、枠部108の他方の主面のうち、X軸に平行に延びる2つの領域それぞれには、X軸に沿ってアライメントマーク102bが形成されている。但し、アライメントマーク102a,102bは、後述する引出電極(リード電極)116a,116bが設けられている領域と重ならないように形成されている。これらのアライメントマーク102a,102bとしては、金属膜、溝、凸部等が用いられる。
【0020】
感圧素子層10の一方の主面側のアライメントマーク102aは、圧力センサー1の製造工程においてダイアフラム層20と感圧素子層10とを重ね合わせる際の位置合せに用いることができる。
他方の主面側のアライメントマーク102bは、圧力センサー1の製造工程においてベース層30と感圧素子層10とを重ね合わせる際の位置合せに用いることができる。
【0021】
双音叉素子106の各柱状ビーム16a,16bには、各々の表裏面と両側面に、図3に示すような励振電極112が設けられ、双音叉素子106の基部16cには当該励振電極112と電気的に接続された第1の入出力電極114a、第2の入出力電極114bが設けられている。前記第1、第2の入出力電極114a,114bには夫々、引出電極116a,116bが接続されており、当該引出電極116a,116bは梁部110a,110bを介して枠部108に各々引き出されている。
【0022】
ダイアフラム層20は、図1、2に示すように、一方の主面側に被測定圧力を受圧する受圧面204を有している。受圧面204は可撓性を有し、外部からの被測定圧力を受圧すると撓み変形する。受圧面204の周縁には枠部206が形成されており、当該枠部206は感圧素子層10の枠部108と対向するように配置されている。
【0023】
ダイアフラム層20の他方の主面側であって受圧面204の裏側となる密閉側の主面には、双音叉素子106の一対の基部16cを固定し、受圧面204の撓み変形により受圧面204で受圧した被測定圧力を力に変換して双音叉素子106に伝達するための一対の支持部210が設けられている。
【0024】
ダイアフラム層20の一対の支持部210と双音叉素子106の一対の基部16c、及びダイアフラム層20における他方の主面側の枠部206と感圧素子層10における一方の主面側の枠部108とは、ダイアフラム層20と感圧素子層10とを接合する際の接合面となり、これらの接合面は接合剤40を介して接合される。接合剤40としては、例えば、低融点ガラス、金属材料、接着剤等を用いることができるが、本実施形態では一実施形態として低融点ガラスを用いる。
【0025】
ダイアフラム層20における他方の主面側の枠部206のうち、X軸に平行に延びる2つの領域それぞれには、X軸に沿って傾斜部208が形成されている。この傾斜部208は、ダイアフラム層20のウェットエッチング時にエッチング異方性に起因して形成されたものである。傾斜部208は、傾きの異なる2つの傾斜面を有し、当該2つの傾斜面が交わった部分に稜線208aが形成されている。稜線208aは、ダイアフラム層20を感圧素子層10と重ね合わせて接合するときのアライメントマークとして用いられる。すなわち、圧力センサー1の製造過程においてダイアフラム層20と感圧素子層10とを重ね合わせる際に、ダイアフラム層20の傾斜部208の稜線208aと、感圧素子層10のアライメントマーク102aとが平面視して一致するように重ね合わせることで、ダイアフラム層20と感圧素子層10とを位置合せすることができる。
【0026】
なお、エッチング異方性とは、基板の結晶構造に起因したものであり、基板の結晶方向によりエッチング速度が異なることをいう。このようなエッチング異方性を有する基板に対して所定時間ウェットエッチングを行った場合、エッチング速度の違いにより、傾斜面や突起が形成されることとなる。
【0027】
ベース層30は、双音叉素子106を収容する内部空間Sを密封するための基板である。ベース層30は、感圧素子層10における他方の主面側を覆うように配置されている。ベース層30の一方の主面側の中央部には、内部空間Sを形成するための凹部302が形成されている。凹部302を囲んで枠部304が設けられている。当該枠部304は感圧素子層10の枠部108と対向するように配置されている。
【0028】
ベース層30における一方の主面側の枠部304は、感圧素子層10における他方の主面側の枠部108と接合剤40を介して接合される。ベース層30における一方の主面側の枠部304のうち、X軸に平行に延びる2つの領域それぞれには、X軸に沿って傾斜部306が形成されている。この傾斜部306は、ベース層30のウェットエッチング時にエッチング異方性に起因して形成されたものである。傾斜部306は、傾きの異なる2つの傾斜面を有し、当該2つの傾斜面の交わりによって稜線306aが形成されている。稜線306aは、ベース層30を感圧素子層10と重ね合わせて接合するときに、位置合せ用のアライメントマークとして用いられる。すなわち、圧力センサー1の製造過程においてベース層30と感圧素子層10とを重ね合わせる際に、ベース層30の傾斜部306の稜線306aと、感圧素子層10のアライメントマーク102bとが平面視して一致するように重ね合わせることで、ベース層30と感圧素子層10とを位置合せすることができる。
【0029】
ベース層30の中央部には、厚さ方向に貫通する封止孔308が設けられている。この封止孔308は、内部空間Sを真空にするために用いられる。
なお、図示されていないが、ベース層30の外部に露出した面には電極端子が設けられており、この電極端子は図示しない導電パターンを介して双音叉素子106との間で信号の入出力を行う。
【0030】
このように、各層10、20、30の接合面に傾斜部208、304やアライメントマーク102a,102bを設けることにより、各層10、20、30同士の大きさや形状が異なっていたとしても、傾斜部208、304とアライメントマーク102a,102bとを用いて位置合せを行って各層10、20、30同士を重ね合わせることができ、良品率を向上させることができる。また、接合面の面積を大きくすることができるため、接合強度を大きくすることができる。
【0031】
以上のように構成された圧力センサー1は、内部が気密に封止され、真空状態に保持されており、絶対圧を検出するセンサーとなっている。双音叉素子106は、図示せぬ発振回路と電気的に接続され、当該発振回路から交流電圧(電気信号)を双音叉素子106の励振電極112に供給すると、2つの柱状ビーム16a,16bが互いに近づいたり離れたりする屈曲振動が励振され、固有の共振周波数で振動する。前記発振回路は双音叉素子106の共振周波数を示す電気信号を出力し、図示せぬ演算手段が当該信号で示される共振周波数から圧力値に変換して当該圧力値を検出値として出力する。
【0032】
次に、図4を参照して、上記構成における圧力センサー1の製造方法について説明する。まず、主面の法線が水晶の光学軸であるZ軸に対して略0度となるように水晶の原石をカットしたZカット板を3枚用意し、感圧素子層10、ダイアフラム層20、ベース層30形成用のマザーウェーハ(水晶素板)とする。
【0033】
ダイアフラム層20については、ダイアフラム層20形成用のマザーウェーハ上に、複数のダイアフラム層20の形状を、フォトリソグラフィー技術を用いたウェットエッチングにより形成する(ステップS101)。具体的には、まず、傾斜部208の稜線208aを形成する部分を覆うマスクをマザーウェーハの一方の主面に被せてハーフエッチングを行う。このエッチングによって、エッチング異方性により図1に示す傾斜部208が形成される。次に、凹部202を形成する部分が開口し、且つ、傾斜部208、枠部206及び支持部210を形成する部分を覆うマスクを、マザーウェーハの一方の主面に被せて、このマスクの開口部分をウェットエッチングする。開口部分が所望の深さまでエッチングされたらエッチングを終了し、マザーウェーハ上のマスクを除去する。そして、支持部210の表面に電極(不図示)をスパッタリングなどで形成する。これにより複数のダイアフラム層20の形状が形成されたマザーウェーハが出来上がる。
【0034】
また、ベース層30については、ベース層30形成用のマザーウェーハ上に複数のベース層30の形状を、フォトリソグラフィー技術を用いたウェットエッチングにより形成する(ステップS201)。具体的には、まず、傾斜部306の稜線306aを形成する部分を覆うマスクを前記マザーウェーハの一方の主面に被せてハーフエッチングを行う。このエッチングによって、エッチング異方性により図1に示す傾斜部306が形成される。次に、凹部302を形成する部分が開口し、且つ、傾斜部306及び枠部304を形成する部分を覆うマスクをマザーウェーハの一方の主面に被せて、このマスクの開口部分をエッチングする。エッチングが終了した後、マザーウェーハ上のマスクを除去する。そして、ベース層30の必要な箇所に電極(不図示)をスパッタリングなどで形成する。これにより複数のベース層30の形状が形成されたマザーウェーハが出来上がる。
【0035】
また、感圧素子層10については、まず、感圧素子層10形成用のマザーウェーハ上に複数の感圧素子層10の外形を、フォトリソグラフィー技術を用いたウェットエッチングにより形成する(ステップS301)。具体的には、感圧素子層10の双音叉素子106、梁部110a,110b、枠部108を形成する部分を覆うマスクをマザーウェーハの両方の主面上に被せて、このマスクの開口部分を厚さ方向に貫通するまでエッチングする。エッチングが終了した後、マザーウェーハ上のマスクを除去する。これにより、複数の感圧素子層10の形状が形成されたマザーウェーハが出来上がる。
【0036】
なお、アライメントマーク102a,102bとして溝を形成する場合には、アライメントマーク102a、102bを形成する部分以外を覆うマスクを前記マザーウェーハの主面に被せてハーフエッチングを行う工程を加えるとよい。或いは双音叉素子106に溝を形成する工程と同時に形成するとよい。
【0037】
次に、感圧素子層10の柱状ビーム16a,16b、基部16c、梁部110a,110b、枠部108上に、励振電極112、第1の入出力電極114a、第2の入出力電極114b、引出電極116a,116bをスパッタリングなどで形成する(ステップS302)。なお、アライメントマーク102a,102bとして金属膜を形成する場合には、この工程で同時に形成することができる。
【0038】
次に、各マザーウェーハの感圧素子層10とダイアフラム層20、及び感圧素子層10とベース層30とを位置合せしながら重ね合わせて、各接合面を接合剤40を介して接合し、3層の積層体を形成する(ステップS303)。
【0039】
具体的には、まず、接合面となる一対の支持部210と枠部206の部分が開口するマスクをダイアフラム層20形成用のマザーウェーハに被せて、一対の支持部210と枠部206の表面に接合剤40を塗布し、仮焼成する。
【0040】
次に、ダイアフラム層20の他方の主面と感圧素子層10の一方の主面とを重ね合わせて、感圧素子層10の他方の主面側(下方)から光を照射する。この状態でダイアフラム層20の一方の主面側(上方)から視認すると、ダイアフラム層20の傾斜部208が形成されている部分は光の屈折角や反射角が他の部分と異なるため、明度の違いにより各傾斜部208の稜線208aを視覚的に認識することができる。また、アライメントマーク102a,102bが形成されている部分は、当該アライメントマーク102a,102bが溝の場合は光の屈折角や反射角が異なり、金属膜の場合は光を通さないため、明度の違いによりアライメントマーク102a、102bを視覚的に認識することができる。したがって、当該傾斜部208の稜線208aとアライメントマーク102aとが平面視で重なり合うように位置合せを行うことにより、ダイアフラム層20と感圧素子層10とを所望の位置で正確に重ね合わせることできる。
【0041】
この重ね合わせた状態においては、傾斜部208の稜線208aとアライメントマーク102aとが、また、ダイアフラム層20の一対の支持部210と感圧素子層10の一対の基部16cとが、接合剤40を介して対向する位置に配置される。
【0042】
次に、加熱により接合剤40を溶融させる。その後、加熱を停止して接合剤40を硬化させることで、感圧素子層10とダイアフラム層20とは接合剤40で接合され、2層構造となる。
感圧素子層10とベース層30についても、感圧素子層10における他の主面側の枠部108と、ベース層30における一方の主面側の枠部304とを接合面として、アライメントマーク102bと傾斜部306の稜線306aとを位置合せに用いて、上述した感圧素子層10とダイアフラム層20との接合手順と同様の手順で接合し、3層構造のマザーウェーハ積層体とする。
【0043】
次に、当該マザーウェーハ積層体のダイシングを行い、複数の圧力センサー1に個片化する(ステップS305)。これにより複数の圧力センサー1を製造することができる。
このような圧力センサー1は、実装基板に実装して圧電モジュールとすることができる。この場合、ベース層30の凹部302に、双音叉素子106と電気的に接続され、双音叉素子106を駆動するための発振回路を内蔵したIC(Integrated Circuit)等の回路を搭載することができる。
【0044】
以上説明したように、感圧素子層10、ベース層30の接合面それぞれに、傾斜部208、306を設け、ダイアフラム層20の両主面の接合面それぞれにアライメントマーク102a,102bを設けたため、各層10、20、30同士を傾斜部208、306を利用して位置合せして重ね合わせることができ、製造された圧力センサー1の良品率を向上させることができる。更に、マザーウェーハ積層体から得られる個片の積層体の取り数を増加させることができる。
【0045】
また、エッチング異方性により形成される傾斜部208、306を利用して層10、20、30同士を位置合せすることができるため、製造工程を増やすことなく効率的に製造することができる。また、接合面に傾斜部208、306を設けることで、接合剤40の接触面積を大きくすることができ、接合強度を強くすることができる。
【0046】
なお、上述した実施形態では、ダイアフラム層20とベース層30に傾斜部を設けた場合について説明したが、ダイアフラム層20とベース層30のみならず、感圧素子層10に傾斜部を設けてもよい。
図5には、全ての層に傾斜部を設けた場合の圧力センサー1Aの断面図を示す。同図においては、上述した実施形態に係る圧力センサー1の構成と同等の部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0047】
感圧素子層10Aが有する枠部108の一方の主面のうち、X軸に平行に延びる2つの領域それぞれには、X軸に沿って傾斜部102cが形成されている。また、枠部108の他方の主面のうち、X軸に平行に延びる2つの領域それぞれには、X軸に沿って傾斜部102dが形成されている。各傾斜部102c、102dは、傾斜部208、306と同様に、傾きの異なる2つの傾斜面を有し、当該2つの傾斜面が交わった部分に稜線が形成されるため、当該稜線をアライメントマークとして用いることができる。
【0048】
なお、感圧素子層10をダイアフラム層20及びベース層30と重ね合わせた時に傾斜部102c、102dがダイアフラム層20及びベース層30の接合面と嵌合するように当該接合面の形状を形成することにより、傾斜部102c、102d全体をアライメントマークとして用いてもよい。
【0049】
圧力センサー1Aの製造工程においては、ダイアフラム層20の傾斜部208の稜線と、感圧素子層10の傾斜部102dの稜線とが、平面視して重なり合うように、ダイアフラム層20と感圧素子層10とを重ね合わせることで、ダイアフラム層20と感圧素子層10との位置合せを行うことができる。また、接合面となる傾斜部208、102cの傾斜面同士の傾きを同じにすることで、重ね合せ易く、また、接合すべき接合面同士を誤ることがない。
【0050】
同様に、ベース層30の傾斜部306の稜線と、感圧素子層10の傾斜部102cの稜線とが、平面視して重なり合うように、ベース層30と感圧素子層10とを重ね合わせることで、ベース層30と感圧素子層10との位置合せを行うことができる。また、同様に、接合面となる傾斜部208、102dの傾斜面同士の傾きを同じにすることで、重ね合わせ易い等の効果が生じる。
その他の構成は上述した実施形態と同様である。
【0051】
なお、傾斜部はX軸方向全体に亘って設けなくてもよく、傾斜部を所定間隔置きに設けてもよい。
また、上述した実施形態では、各層10、20、30はZカット板であるとして説明したが、これに限らず、エッチングにより特定の傾斜部が形成されるカット板であればよく、例えば、ATカット板であってもよい。ATカット板とは、水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ約35度15分傾けた軸をZ’軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ約35度15分傾けた軸をY’軸とし、前記X軸と前記Z’軸に平行な面を主面とし、前記Y’軸に平行な方向を厚みとするように切りだされた水晶基板である。
【0052】
なお、各層10,20,30に、エッチング異方性を有さない材料を用いてもよく、この場合にはエッチングにより自然に所望の傾斜部を形成することができないため、上述した傾斜部が形成されるように意図的にエッチングやサンドブラスト加工を行ってもよい。
【0053】
また、上述した実施形態では、傾斜部の稜線をアライメントマークとして用いたが、例えば、図6に示すように、一方の基板の傾斜部を突起形状とし、他方の基板の傾斜部を谷形状とし、各傾斜部の2つの傾斜面が交わる交線同士をアライメントマークとして用いてもよい。この場合、各基板の傾斜部同士が嵌合するようにすることで、容易に位置合せを行うことができる。
【0054】
また、図7に示すように、一方の基板の傾斜部の稜線の位置が、他方の基板の傾斜部の稜線の位置と対向するように形成してもよい。この場合には、向かい合う傾斜部の稜線同士を平面視で重なるように重ね合わせることで、位置合せをすることができる。
【0055】
なお、上述した実施形態では、積層体として、気体や液体の圧力を検出する圧力センサーを例にとって説明したが、積層体は圧力センサーに限定されることはない。例えば、指等により直接押圧した場合の前記指の押圧による外力を検出する力センサーであってもよいし、圧電振動子や半導体等の電子素子を密閉して収容するパッケージであってもよい。
【0056】
また、積層体としての圧力センサーは、図8に示すようなものであってもよい。図7に示す圧力センサー1Bが上述した実施形態に係る圧力センサー1と異なる点は、感圧素子層10B及びベース層30Bの長辺がダイアフラム層20Bより長く、張出部32が形成されている点である。そして、感圧素子層10Bの一方の主面側の張出部32は外部に露出しており、当該露出した部分には、引出電極116a,116bから延びる、接続端子としてのパッド電極42a,42bが設けられている。また、張出部32にはアライメントマーク102aは設けられていない。
【0057】
感圧素子層10Bの2つの長辺の側面と2つの短辺の側面、ダイアフラム層20Bの2つの長辺の側面と1つの短辺の側面、ベース層30Bの2つの長辺の側面と2つの短辺の側面には、それぞれ1つの凸部58が設けられている。これらの凸部58は、感圧素子層10B、ダイアフラム層20B、ベース層30Bを製造する際に、感圧素子層10B用のマザーウェーハに形成された複数の感圧素子層10B同士を連結する各梁部、ダイアフラム層20B用のマザーウェーハに形成された複数のダイアフラム層20B同士を連結する各梁部、ベース層30B用のマザーウェーハに形成された複数のダイアフラム層20B同士を連結する各梁部を、それぞれ切断することにより形成されたものである。これらの凸部58も、感圧素子層10B、ダイアフラム層20B、ベース層30Bを積層する際の位置合わせ用のアライメントマークとして用いることができる。その他の点は、圧力センサー1と同様の構成である。
【0058】
また、上述した実施形態では、圧力センサー1の振動部として一対の柱状ビーム16a,16bを用いたが、例えば、図9に示すように1つの柱状ビームのみを用いてもよいし、図10に示すように、厚みすべり振動をする、ATカット水晶を用いた厚みすべり振動子(いわゆるATカット振動子)を用いてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、接合剤40として低融点ガラスを用いた接合方法を示したが、各基板の接合方法はこれに限定されることはなく、例えば、アルコキシド、オルガノシノキシ基などを含む接合剤を用い、当該接合剤にプラズマや紫外線等のエネルギー線を照射することにより活性化させて接合する方法や、半田付けによる接合、金錫合金等の共晶金属材料を加圧密着し加熱溶融した後に冷却固化する共晶接合方法、エポキシ系、ポリイミド系等の接着剤を用いた接合方法、熱硬化性樹脂による接合方法等を用いてもよい。
また、上述した実施形態では、3層の積層体について説明したが、2層であっても、4層以上であってもよい。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、その技術的範囲内で様々な変形又は変更を加えて実施することができる。例えば、本発明は、少なくとも2層以上の構造を有しているのにも好適である。また、圧力センサーに限定されることなく、加速度センサー、ジャイロセンサー、等の物理量検出素子、全般に適用できる。更に、温度センサー、圧電振動子等の圧電デバイスに適用することができる。圧電振動基板の振動部としては、音叉振動子(図11参照)、ATカット水晶振動子(図12参照)、水晶のX軸(電気軸)を中心にして所定の角度だけ回転して得られる回転Y板を用いた水晶振動子、その他のカットで切断された水晶振動子、水晶以外の圧電材料を用いた圧電振動子、等を広く適用できる。
【0061】
また、本発明の積層体は、上述した圧電モジュール以外に、例えば携帯電話、ハードディスク、パーソナルコンピューター、BS及びCS放送用の受信チューナー、同軸ケーブルや光ケーブル中を伝搬する高周波信号や光信号用の各種処理装置、広い温度範囲で高周波・高精度クロック(低ジッタ、低位相雑音)を必要とするサーバー・ネットワーク機器、無線通信用機器等の様々な電子機器、加速度センサー、回転速度センサー等の各種センサー装置にも広く適用することができる。
このような各種センサー装置及び電子機器としては、例えば一般工業用計測機器、電子血圧計、高度・気圧・水深計測機能付き電子機器、携帯機器、自動車などが挙げられる。
【0062】
そして、上述のように外力によるダイアフラムの機械的な変形を電気的信号として計測するものとして、携帯電話機やパソコン等の小型の携帯機器での高度計測に上述した実施形態に係る圧力センサーを応用してマイクロホンとして利用可能である。
【0063】
更に、近年注目をされるようになった水素やメタノール等の燃料電池は、軽量化や利便性等に起因して、例えば、ビデオカメラ、ノート型パーソナルコンピューター、携帯用電話機、携帯情報端末機(Personal Digital Assistants:PDA)、オーディオプレーヤ、プロジェクタ載置台、カプセル型医療機器の通信機能を具備した電子機器といった各種情報処理装置の燃料費電池としての用途が考えられる。即ち、水素を燃料として電力を発生させる燃料電池セルと、該燃料電池セルに水素を供給する水素吸蔵合金容器筐体と、該水素吸蔵合金容器筐体と上記燃料電池セルとの間に配設された検出用圧力センサーと、圧力調整弁と安全弁とを備えた燃料電池システムに於いて、上述した実施形態に係る圧力センサーを使用することができる。
【0064】
更に、事故等のイベント発生時前後の必要な時間のみについて、デジタルタコグラフとドライブレコーダの双方が生成するデータを関連付けて記録し、その後の解析等に有用なデータを提供することが可能な車両用情報記録装置において、前記デジタルタコグラフは、前記車両の走行状況を検出する走行状況検知手段と、前記ドライブレコーダとの間で情報を送受信するデジタルタコグラフ通信手段と、情報を記録するデジタルタコグラフ記録手段と、前記走行状況検知手段から入力した走行状況および前記デジタルタコグラフ通信手段から受信した情報を受けて、前記デジタルタコグラフ記録手段に情報を記録するデジタルタコグラフ制御部と、を有しているが、前記走行状況検知手段として、高精度な圧力検出が可能な、上述した実施形態に係る圧力センサーを適用できる。
【0065】
更に、被測定者にかかる負荷を検出する活動量計測システムにおいて、前記負荷を圧力として検出する場合においては、検出器として、上述した実施形態に係る圧力センサーを適用できる。
また、外部からの侵入または異常を検知する異常検知センサーと、前記異常検知センサーが異常を検知したときに警報を発する警報手段とを含むセキュリティシステムにおいて、警戒モード設定手段は、警戒モードに応じて、前記異常検知センサーと前記警報手段とによる警戒動作を作動させる場合に、前記異常検知センサーとして、上述した実施形態に係る圧力センサーを適用できる。
【0066】
更に、本発明の電子機器の一例として腕時計型電子機器の本体が存在し、当該本体には、上述した実施形態に係る圧力センサーを搭載することができ、当該圧力センサーはダイナミックレンジやリニアリティなどの特性に優れたものとすることができる。
【0067】
更に、特に自動車においては、例えばインテークマニホールド圧若しくはチャージ圧、ブレーキ圧、エアサスペンション圧、タイヤ圧、ハイドロリック貯蔵圧、ショックアブソーバ圧、冷却媒体圧、自動変速機における変調圧、ブレーキ圧、タンク圧のような圧力検出に上述した実施形態に係る圧力センサーを適用できる。
【0068】
また、自動車のサイドドアの内部の圧力変化により側面衝突を検出する装置においては、衝突時に圧力センサーのダイアフラムが衝撃力を受けた場合に、これを圧力変化として検出する度合いを少なくして、圧力の変化をより高精度に検出するという要求がある。この場合、車両のサイドドアの内部に配設された圧力センサーにより、車両の側面に加わる衝撃を検出する側面衝突検出装置が利用されるが、前記側面衝突検出装置の前記圧力センサーが、圧力を検出するダイアフラムを持ち、そのダイアフラムの受圧面が前記サイドドアの内部の圧力変動により歪むことを検出することによって車両の側面に加わる衝撃を検出する構成を有する場合に、前記圧力センサーに上述した実施形態に係る圧力センサーを適用できる。
【符号の説明】
【0069】
1………圧力センサー、10………感圧素子層、102a,102b………アライメントマーク、106………双音叉素子、16a,16b………柱状ビーム、16c………基部、108………枠部、110a,110b………梁部、112………励振電極、114a………第1の入出力電極、114b………第2の入出力電極、116a,116b………引出電極、20………ダイアフラム層、202………凹部、204………受圧面、206………枠部、208………傾斜部、208a………稜線、210………支持部、30………ベース層、302………凹部、304………枠部、306………傾斜部、306a………稜線、308………封止孔、40………接合剤。
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造方法に関し、特に、各基板同士を位置合せして積層する積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動子、等の圧電デバイス、圧力センサー、等の物理量検出デバイス、そして、半導体やチップ部品(コンデンサー、サーミスタ、等)等をパッケージに搭載した電子デバイスは、2つ以上の基板を積層した積層構造を有している(例えば、特許文献1、2、9参照)。
【0003】
このような積層構造を形成するために、各基板同士を重ね合わせて接合する必要があるが、接合剤が接合部からはみ出したり、各基板の大きさや形状が異なる場合には各基板の位置合せが正確にできないという問題があった。
【0004】
各基板の接合部から接合剤がはみ出すのを防止する技術として、各基板の接合部に溝を設ける技術や(例えば、特許文献3−5参照)、各基板の接合部に凸部や段部を設ける技術が存在する(例えば、特許文献6−8参照)。
【0005】
また、これら積層型の電子デバイスの製造方法として、前記電子デバイスを構成する各層の基板に相当する個片を多数連結してなる各ウェーハ(マザー基板)を積層した後、積層したウェーハの積層体を個片に分離し、前記電子デバイスを製造するのが一般的である。ここで、各ウェーハを積層する際、予め、各ウェーハの所定の位置にアライメント用のマーカー(認識マーク)を設け、各ウェーハを積層するときに、カメラによる画像処理にて前記マーカーを用いてアライメントし、層間で位置ズレが生じないように各ウェーハを積層している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−327922号公報
【特許文献2】特開2008−241287号公報
【特許文献3】特開昭56−06182号公報
【特許文献4】特開昭53−7172号公報
【特許文献5】特開2008−267896号公報
【特許文献6】特開2009−302996号公報
【特許文献7】特開2001−136047号公報
【特許文献8】特開2001−093998号公報
【特許文献9】特開2010−246001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した技術では、通常、ウェーハの数箇所に前記マーカーを設ける必要があるために、その分、個片のレイアウト面積が減るので、ウェーハ積層体からの個片(電子デバイス)の取り数が減少してしまう問題点があった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、複数の基板を積層して積層体を形成する場合において、ウェーハ上にマーカーを設けることなく基板同士を位置合せして重ね合わせることが可能な積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]少なくとも2つの基板を積層して形成される積層体の製造方法であって、前記2つの基板が接合される少なくとも一方の接合面に、傾斜部を形成する外形形成工程と、前記傾斜部を位置合せに用いて、前記2つの基板を重ね合わせて接合する接合工程とを備えたことを特徴とする積層体の製造方法。
本発明によれば、接合面に形成した傾斜部を用いて各基板同士を位置合せして重ね合わせ、積層体を形成することができる。更に、マザーウェーハ積層体から得られる個片の積層体の取り数を増加させることができる。
【0010】
[適用例2]前記基板は異方性を有する結晶材料からなり、前記傾斜部は、前記外形形成工程において前記基板をウェットエッチングすることにより形成されることを特徴とする適用例1に記載の積層体の製造方法。
本発明によれば、傾斜部は、異方性を有する結晶材料からなる基板をウェットエッチングすることにより形成することができるため、傾斜部を容易に形成することができ、エッチング異方性により形成される傾斜部を利用して基板同士を位置合せすることができる。
【0011】
[適用例3]前記傾斜部は2つの傾斜面を含み、前記接合工程において、前記2つの傾斜面同士が交わる交線を位置合せに用いて、前記2つの基板の前記接合面を接合することを特徴とする適用例1又は2に記載の積層体の製造方法。
本発明によれば、傾斜面の交線をアライメントマークとして用いることで、各基板同士を位置合せして積層することができる。また、接合面の面積が大きくなるため、接合強度を大きくすることができる。
【0012】
[適用例4]前記基板は水晶で形成されていることを特徴とする適用例1乃至3のうち何れか1項に記載の積層体の製造方法。
本発明によれば、水晶は光透過性があり、異方性を有する結晶材料であるため、ウェットエッチングにより傾斜部を形成し、傾斜部に光を照射して位置合せを行うことができる。
【0013】
[適用例5]前記基板はATカット板であることを特徴とする適用例2乃至4のうち何れか1項に記載の積層体の製造方法。
本発明によれば、ATカット板をウェットエッチングした場合に特定の形状の傾斜部が形成されるため、当該傾斜部を用いて位置合せを行うことができる。
【0014】
[適用例6]前記基板はZカット板であることを特徴とする適用例2乃至4のうち何れか1項に記載の積層体の製造方法。
本発明によれば、Zカット板をウェットエッチングした場合に特定の形状の傾斜部が形成されるため、当該傾斜部を用いて位置合せを行うことができる。
【0015】
[適用例7]前記基板は光透過性を有する基板であり、前記接合工程において、前記傾斜部に光を照射することにより位置合せを行いながら、前記2つの基板を重ね合わせて接合することを特徴とする適用例1乃至6のうち何れか1項に記載の積層体の製造方法。
本発明によれば、基板に形成された傾斜部に光を照射すれば、光の屈折角及び反射角の違いにより傾斜部を認識することができるため、傾斜部を位置合せに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る圧力センサーの断面図である。
【図2】同実施形態に係る圧力センサーの斜視展開図である。
【図3】同実施形態に係る圧力センサーの感圧素子層の平面図である。
【図4】同実施形態に係る圧力センサーの製造方法の工程図である。
【図5】変形例に係る圧力センサーの断面図である。
【図6】変形例に係る各基板の接合面に形成される傾斜部の断面形状を示す模式図である。
【図7】変形例に係る各基板の接合面に形成される傾斜部の断面形状を示す模式図である。
【図8】変形例に係る圧力センサーの斜視図である。
【図9】圧力センサーの振動部として1つの柱状ビームを用いた場合の感圧素子層の平面図である。
【図10】圧力センサーの振動部としてATカット振動子を用いた場合の、感圧素子層、各マザーウェーハ、及び圧力センサーの斜視図である。
【図11】圧電デバイスの圧電振動基板の振動部が音叉振動子である場合の圧電デバイスの分解斜視図及び圧電振動基板の裏面図である。
【図12】圧電デバイスの圧電振動基板の振動部がATカット水晶振動子である場合の圧電デバイスの分解斜視図及び圧電振動基板の裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る積層体の製造方法を圧力センサーの製造方法に適用した場合の実施形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。図1は本実施形態に係る圧力センサー1の断面図であり、図2は圧力センサー1の分解斜視図である。これらの図に示すように、圧力センサー1は、感圧素子層10と、感圧素子層10の一方の主面側及び他方の主面側それぞれを気密封止するように覆うダイアフラム層20及びベース層30と、の3つの基板を備えている。各層10、20、30は水晶板で形成されている。水晶は、異方性結晶材料であり光透過性を有している。また、各層10、20、30は、それぞれZカット板であり、水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸に平行な辺と、機械軸としてのY軸に平行な辺とを有し、光学軸としてのZ軸方向に厚みを有している。
【0018】
図3は感圧素子層10の平面図である。図2及び図3に示すように、感圧素子層10は、中央に感圧素子としての双音叉素子106と、その周囲を囲む枠部108とを有している。双音叉素子106は、振動部としての一対の平行な柱状ビーム16a,16bと、両柱状ビーム16a,16bの両端に接続される一対の基部16cとを有している。双音叉素子106は屈曲振動をする振動素子であるとともに、柱状ビーム16a,16bに引張応力又は圧縮応力が印加されると、その共振周波数が変化する周波数変化型の感圧素子であり、所謂、双音叉型の圧電振動子である。
【0019】
枠部108は、各基部16cから柱状ビーム16a,16bと直交する方向に延びる一対の梁部110a,110bを介して双音叉素子106と連結されている。
枠部108の一方の主面のうち、X軸に平行に延びる2つの領域それぞれには、X軸に沿ってアライメントマーク102aが形成されている。また、枠部108の他方の主面のうち、X軸に平行に延びる2つの領域それぞれには、X軸に沿ってアライメントマーク102bが形成されている。但し、アライメントマーク102a,102bは、後述する引出電極(リード電極)116a,116bが設けられている領域と重ならないように形成されている。これらのアライメントマーク102a,102bとしては、金属膜、溝、凸部等が用いられる。
【0020】
感圧素子層10の一方の主面側のアライメントマーク102aは、圧力センサー1の製造工程においてダイアフラム層20と感圧素子層10とを重ね合わせる際の位置合せに用いることができる。
他方の主面側のアライメントマーク102bは、圧力センサー1の製造工程においてベース層30と感圧素子層10とを重ね合わせる際の位置合せに用いることができる。
【0021】
双音叉素子106の各柱状ビーム16a,16bには、各々の表裏面と両側面に、図3に示すような励振電極112が設けられ、双音叉素子106の基部16cには当該励振電極112と電気的に接続された第1の入出力電極114a、第2の入出力電極114bが設けられている。前記第1、第2の入出力電極114a,114bには夫々、引出電極116a,116bが接続されており、当該引出電極116a,116bは梁部110a,110bを介して枠部108に各々引き出されている。
【0022】
ダイアフラム層20は、図1、2に示すように、一方の主面側に被測定圧力を受圧する受圧面204を有している。受圧面204は可撓性を有し、外部からの被測定圧力を受圧すると撓み変形する。受圧面204の周縁には枠部206が形成されており、当該枠部206は感圧素子層10の枠部108と対向するように配置されている。
【0023】
ダイアフラム層20の他方の主面側であって受圧面204の裏側となる密閉側の主面には、双音叉素子106の一対の基部16cを固定し、受圧面204の撓み変形により受圧面204で受圧した被測定圧力を力に変換して双音叉素子106に伝達するための一対の支持部210が設けられている。
【0024】
ダイアフラム層20の一対の支持部210と双音叉素子106の一対の基部16c、及びダイアフラム層20における他方の主面側の枠部206と感圧素子層10における一方の主面側の枠部108とは、ダイアフラム層20と感圧素子層10とを接合する際の接合面となり、これらの接合面は接合剤40を介して接合される。接合剤40としては、例えば、低融点ガラス、金属材料、接着剤等を用いることができるが、本実施形態では一実施形態として低融点ガラスを用いる。
【0025】
ダイアフラム層20における他方の主面側の枠部206のうち、X軸に平行に延びる2つの領域それぞれには、X軸に沿って傾斜部208が形成されている。この傾斜部208は、ダイアフラム層20のウェットエッチング時にエッチング異方性に起因して形成されたものである。傾斜部208は、傾きの異なる2つの傾斜面を有し、当該2つの傾斜面が交わった部分に稜線208aが形成されている。稜線208aは、ダイアフラム層20を感圧素子層10と重ね合わせて接合するときのアライメントマークとして用いられる。すなわち、圧力センサー1の製造過程においてダイアフラム層20と感圧素子層10とを重ね合わせる際に、ダイアフラム層20の傾斜部208の稜線208aと、感圧素子層10のアライメントマーク102aとが平面視して一致するように重ね合わせることで、ダイアフラム層20と感圧素子層10とを位置合せすることができる。
【0026】
なお、エッチング異方性とは、基板の結晶構造に起因したものであり、基板の結晶方向によりエッチング速度が異なることをいう。このようなエッチング異方性を有する基板に対して所定時間ウェットエッチングを行った場合、エッチング速度の違いにより、傾斜面や突起が形成されることとなる。
【0027】
ベース層30は、双音叉素子106を収容する内部空間Sを密封するための基板である。ベース層30は、感圧素子層10における他方の主面側を覆うように配置されている。ベース層30の一方の主面側の中央部には、内部空間Sを形成するための凹部302が形成されている。凹部302を囲んで枠部304が設けられている。当該枠部304は感圧素子層10の枠部108と対向するように配置されている。
【0028】
ベース層30における一方の主面側の枠部304は、感圧素子層10における他方の主面側の枠部108と接合剤40を介して接合される。ベース層30における一方の主面側の枠部304のうち、X軸に平行に延びる2つの領域それぞれには、X軸に沿って傾斜部306が形成されている。この傾斜部306は、ベース層30のウェットエッチング時にエッチング異方性に起因して形成されたものである。傾斜部306は、傾きの異なる2つの傾斜面を有し、当該2つの傾斜面の交わりによって稜線306aが形成されている。稜線306aは、ベース層30を感圧素子層10と重ね合わせて接合するときに、位置合せ用のアライメントマークとして用いられる。すなわち、圧力センサー1の製造過程においてベース層30と感圧素子層10とを重ね合わせる際に、ベース層30の傾斜部306の稜線306aと、感圧素子層10のアライメントマーク102bとが平面視して一致するように重ね合わせることで、ベース層30と感圧素子層10とを位置合せすることができる。
【0029】
ベース層30の中央部には、厚さ方向に貫通する封止孔308が設けられている。この封止孔308は、内部空間Sを真空にするために用いられる。
なお、図示されていないが、ベース層30の外部に露出した面には電極端子が設けられており、この電極端子は図示しない導電パターンを介して双音叉素子106との間で信号の入出力を行う。
【0030】
このように、各層10、20、30の接合面に傾斜部208、304やアライメントマーク102a,102bを設けることにより、各層10、20、30同士の大きさや形状が異なっていたとしても、傾斜部208、304とアライメントマーク102a,102bとを用いて位置合せを行って各層10、20、30同士を重ね合わせることができ、良品率を向上させることができる。また、接合面の面積を大きくすることができるため、接合強度を大きくすることができる。
【0031】
以上のように構成された圧力センサー1は、内部が気密に封止され、真空状態に保持されており、絶対圧を検出するセンサーとなっている。双音叉素子106は、図示せぬ発振回路と電気的に接続され、当該発振回路から交流電圧(電気信号)を双音叉素子106の励振電極112に供給すると、2つの柱状ビーム16a,16bが互いに近づいたり離れたりする屈曲振動が励振され、固有の共振周波数で振動する。前記発振回路は双音叉素子106の共振周波数を示す電気信号を出力し、図示せぬ演算手段が当該信号で示される共振周波数から圧力値に変換して当該圧力値を検出値として出力する。
【0032】
次に、図4を参照して、上記構成における圧力センサー1の製造方法について説明する。まず、主面の法線が水晶の光学軸であるZ軸に対して略0度となるように水晶の原石をカットしたZカット板を3枚用意し、感圧素子層10、ダイアフラム層20、ベース層30形成用のマザーウェーハ(水晶素板)とする。
【0033】
ダイアフラム層20については、ダイアフラム層20形成用のマザーウェーハ上に、複数のダイアフラム層20の形状を、フォトリソグラフィー技術を用いたウェットエッチングにより形成する(ステップS101)。具体的には、まず、傾斜部208の稜線208aを形成する部分を覆うマスクをマザーウェーハの一方の主面に被せてハーフエッチングを行う。このエッチングによって、エッチング異方性により図1に示す傾斜部208が形成される。次に、凹部202を形成する部分が開口し、且つ、傾斜部208、枠部206及び支持部210を形成する部分を覆うマスクを、マザーウェーハの一方の主面に被せて、このマスクの開口部分をウェットエッチングする。開口部分が所望の深さまでエッチングされたらエッチングを終了し、マザーウェーハ上のマスクを除去する。そして、支持部210の表面に電極(不図示)をスパッタリングなどで形成する。これにより複数のダイアフラム層20の形状が形成されたマザーウェーハが出来上がる。
【0034】
また、ベース層30については、ベース層30形成用のマザーウェーハ上に複数のベース層30の形状を、フォトリソグラフィー技術を用いたウェットエッチングにより形成する(ステップS201)。具体的には、まず、傾斜部306の稜線306aを形成する部分を覆うマスクを前記マザーウェーハの一方の主面に被せてハーフエッチングを行う。このエッチングによって、エッチング異方性により図1に示す傾斜部306が形成される。次に、凹部302を形成する部分が開口し、且つ、傾斜部306及び枠部304を形成する部分を覆うマスクをマザーウェーハの一方の主面に被せて、このマスクの開口部分をエッチングする。エッチングが終了した後、マザーウェーハ上のマスクを除去する。そして、ベース層30の必要な箇所に電極(不図示)をスパッタリングなどで形成する。これにより複数のベース層30の形状が形成されたマザーウェーハが出来上がる。
【0035】
また、感圧素子層10については、まず、感圧素子層10形成用のマザーウェーハ上に複数の感圧素子層10の外形を、フォトリソグラフィー技術を用いたウェットエッチングにより形成する(ステップS301)。具体的には、感圧素子層10の双音叉素子106、梁部110a,110b、枠部108を形成する部分を覆うマスクをマザーウェーハの両方の主面上に被せて、このマスクの開口部分を厚さ方向に貫通するまでエッチングする。エッチングが終了した後、マザーウェーハ上のマスクを除去する。これにより、複数の感圧素子層10の形状が形成されたマザーウェーハが出来上がる。
【0036】
なお、アライメントマーク102a,102bとして溝を形成する場合には、アライメントマーク102a、102bを形成する部分以外を覆うマスクを前記マザーウェーハの主面に被せてハーフエッチングを行う工程を加えるとよい。或いは双音叉素子106に溝を形成する工程と同時に形成するとよい。
【0037】
次に、感圧素子層10の柱状ビーム16a,16b、基部16c、梁部110a,110b、枠部108上に、励振電極112、第1の入出力電極114a、第2の入出力電極114b、引出電極116a,116bをスパッタリングなどで形成する(ステップS302)。なお、アライメントマーク102a,102bとして金属膜を形成する場合には、この工程で同時に形成することができる。
【0038】
次に、各マザーウェーハの感圧素子層10とダイアフラム層20、及び感圧素子層10とベース層30とを位置合せしながら重ね合わせて、各接合面を接合剤40を介して接合し、3層の積層体を形成する(ステップS303)。
【0039】
具体的には、まず、接合面となる一対の支持部210と枠部206の部分が開口するマスクをダイアフラム層20形成用のマザーウェーハに被せて、一対の支持部210と枠部206の表面に接合剤40を塗布し、仮焼成する。
【0040】
次に、ダイアフラム層20の他方の主面と感圧素子層10の一方の主面とを重ね合わせて、感圧素子層10の他方の主面側(下方)から光を照射する。この状態でダイアフラム層20の一方の主面側(上方)から視認すると、ダイアフラム層20の傾斜部208が形成されている部分は光の屈折角や反射角が他の部分と異なるため、明度の違いにより各傾斜部208の稜線208aを視覚的に認識することができる。また、アライメントマーク102a,102bが形成されている部分は、当該アライメントマーク102a,102bが溝の場合は光の屈折角や反射角が異なり、金属膜の場合は光を通さないため、明度の違いによりアライメントマーク102a、102bを視覚的に認識することができる。したがって、当該傾斜部208の稜線208aとアライメントマーク102aとが平面視で重なり合うように位置合せを行うことにより、ダイアフラム層20と感圧素子層10とを所望の位置で正確に重ね合わせることできる。
【0041】
この重ね合わせた状態においては、傾斜部208の稜線208aとアライメントマーク102aとが、また、ダイアフラム層20の一対の支持部210と感圧素子層10の一対の基部16cとが、接合剤40を介して対向する位置に配置される。
【0042】
次に、加熱により接合剤40を溶融させる。その後、加熱を停止して接合剤40を硬化させることで、感圧素子層10とダイアフラム層20とは接合剤40で接合され、2層構造となる。
感圧素子層10とベース層30についても、感圧素子層10における他の主面側の枠部108と、ベース層30における一方の主面側の枠部304とを接合面として、アライメントマーク102bと傾斜部306の稜線306aとを位置合せに用いて、上述した感圧素子層10とダイアフラム層20との接合手順と同様の手順で接合し、3層構造のマザーウェーハ積層体とする。
【0043】
次に、当該マザーウェーハ積層体のダイシングを行い、複数の圧力センサー1に個片化する(ステップS305)。これにより複数の圧力センサー1を製造することができる。
このような圧力センサー1は、実装基板に実装して圧電モジュールとすることができる。この場合、ベース層30の凹部302に、双音叉素子106と電気的に接続され、双音叉素子106を駆動するための発振回路を内蔵したIC(Integrated Circuit)等の回路を搭載することができる。
【0044】
以上説明したように、感圧素子層10、ベース層30の接合面それぞれに、傾斜部208、306を設け、ダイアフラム層20の両主面の接合面それぞれにアライメントマーク102a,102bを設けたため、各層10、20、30同士を傾斜部208、306を利用して位置合せして重ね合わせることができ、製造された圧力センサー1の良品率を向上させることができる。更に、マザーウェーハ積層体から得られる個片の積層体の取り数を増加させることができる。
【0045】
また、エッチング異方性により形成される傾斜部208、306を利用して層10、20、30同士を位置合せすることができるため、製造工程を増やすことなく効率的に製造することができる。また、接合面に傾斜部208、306を設けることで、接合剤40の接触面積を大きくすることができ、接合強度を強くすることができる。
【0046】
なお、上述した実施形態では、ダイアフラム層20とベース層30に傾斜部を設けた場合について説明したが、ダイアフラム層20とベース層30のみならず、感圧素子層10に傾斜部を設けてもよい。
図5には、全ての層に傾斜部を設けた場合の圧力センサー1Aの断面図を示す。同図においては、上述した実施形態に係る圧力センサー1の構成と同等の部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0047】
感圧素子層10Aが有する枠部108の一方の主面のうち、X軸に平行に延びる2つの領域それぞれには、X軸に沿って傾斜部102cが形成されている。また、枠部108の他方の主面のうち、X軸に平行に延びる2つの領域それぞれには、X軸に沿って傾斜部102dが形成されている。各傾斜部102c、102dは、傾斜部208、306と同様に、傾きの異なる2つの傾斜面を有し、当該2つの傾斜面が交わった部分に稜線が形成されるため、当該稜線をアライメントマークとして用いることができる。
【0048】
なお、感圧素子層10をダイアフラム層20及びベース層30と重ね合わせた時に傾斜部102c、102dがダイアフラム層20及びベース層30の接合面と嵌合するように当該接合面の形状を形成することにより、傾斜部102c、102d全体をアライメントマークとして用いてもよい。
【0049】
圧力センサー1Aの製造工程においては、ダイアフラム層20の傾斜部208の稜線と、感圧素子層10の傾斜部102dの稜線とが、平面視して重なり合うように、ダイアフラム層20と感圧素子層10とを重ね合わせることで、ダイアフラム層20と感圧素子層10との位置合せを行うことができる。また、接合面となる傾斜部208、102cの傾斜面同士の傾きを同じにすることで、重ね合せ易く、また、接合すべき接合面同士を誤ることがない。
【0050】
同様に、ベース層30の傾斜部306の稜線と、感圧素子層10の傾斜部102cの稜線とが、平面視して重なり合うように、ベース層30と感圧素子層10とを重ね合わせることで、ベース層30と感圧素子層10との位置合せを行うことができる。また、同様に、接合面となる傾斜部208、102dの傾斜面同士の傾きを同じにすることで、重ね合わせ易い等の効果が生じる。
その他の構成は上述した実施形態と同様である。
【0051】
なお、傾斜部はX軸方向全体に亘って設けなくてもよく、傾斜部を所定間隔置きに設けてもよい。
また、上述した実施形態では、各層10、20、30はZカット板であるとして説明したが、これに限らず、エッチングにより特定の傾斜部が形成されるカット板であればよく、例えば、ATカット板であってもよい。ATカット板とは、水晶の結晶軸である、電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ約35度15分傾けた軸をZ’軸とし、前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ約35度15分傾けた軸をY’軸とし、前記X軸と前記Z’軸に平行な面を主面とし、前記Y’軸に平行な方向を厚みとするように切りだされた水晶基板である。
【0052】
なお、各層10,20,30に、エッチング異方性を有さない材料を用いてもよく、この場合にはエッチングにより自然に所望の傾斜部を形成することができないため、上述した傾斜部が形成されるように意図的にエッチングやサンドブラスト加工を行ってもよい。
【0053】
また、上述した実施形態では、傾斜部の稜線をアライメントマークとして用いたが、例えば、図6に示すように、一方の基板の傾斜部を突起形状とし、他方の基板の傾斜部を谷形状とし、各傾斜部の2つの傾斜面が交わる交線同士をアライメントマークとして用いてもよい。この場合、各基板の傾斜部同士が嵌合するようにすることで、容易に位置合せを行うことができる。
【0054】
また、図7に示すように、一方の基板の傾斜部の稜線の位置が、他方の基板の傾斜部の稜線の位置と対向するように形成してもよい。この場合には、向かい合う傾斜部の稜線同士を平面視で重なるように重ね合わせることで、位置合せをすることができる。
【0055】
なお、上述した実施形態では、積層体として、気体や液体の圧力を検出する圧力センサーを例にとって説明したが、積層体は圧力センサーに限定されることはない。例えば、指等により直接押圧した場合の前記指の押圧による外力を検出する力センサーであってもよいし、圧電振動子や半導体等の電子素子を密閉して収容するパッケージであってもよい。
【0056】
また、積層体としての圧力センサーは、図8に示すようなものであってもよい。図7に示す圧力センサー1Bが上述した実施形態に係る圧力センサー1と異なる点は、感圧素子層10B及びベース層30Bの長辺がダイアフラム層20Bより長く、張出部32が形成されている点である。そして、感圧素子層10Bの一方の主面側の張出部32は外部に露出しており、当該露出した部分には、引出電極116a,116bから延びる、接続端子としてのパッド電極42a,42bが設けられている。また、張出部32にはアライメントマーク102aは設けられていない。
【0057】
感圧素子層10Bの2つの長辺の側面と2つの短辺の側面、ダイアフラム層20Bの2つの長辺の側面と1つの短辺の側面、ベース層30Bの2つの長辺の側面と2つの短辺の側面には、それぞれ1つの凸部58が設けられている。これらの凸部58は、感圧素子層10B、ダイアフラム層20B、ベース層30Bを製造する際に、感圧素子層10B用のマザーウェーハに形成された複数の感圧素子層10B同士を連結する各梁部、ダイアフラム層20B用のマザーウェーハに形成された複数のダイアフラム層20B同士を連結する各梁部、ベース層30B用のマザーウェーハに形成された複数のダイアフラム層20B同士を連結する各梁部を、それぞれ切断することにより形成されたものである。これらの凸部58も、感圧素子層10B、ダイアフラム層20B、ベース層30Bを積層する際の位置合わせ用のアライメントマークとして用いることができる。その他の点は、圧力センサー1と同様の構成である。
【0058】
また、上述した実施形態では、圧力センサー1の振動部として一対の柱状ビーム16a,16bを用いたが、例えば、図9に示すように1つの柱状ビームのみを用いてもよいし、図10に示すように、厚みすべり振動をする、ATカット水晶を用いた厚みすべり振動子(いわゆるATカット振動子)を用いてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、接合剤40として低融点ガラスを用いた接合方法を示したが、各基板の接合方法はこれに限定されることはなく、例えば、アルコキシド、オルガノシノキシ基などを含む接合剤を用い、当該接合剤にプラズマや紫外線等のエネルギー線を照射することにより活性化させて接合する方法や、半田付けによる接合、金錫合金等の共晶金属材料を加圧密着し加熱溶融した後に冷却固化する共晶接合方法、エポキシ系、ポリイミド系等の接着剤を用いた接合方法、熱硬化性樹脂による接合方法等を用いてもよい。
また、上述した実施形態では、3層の積層体について説明したが、2層であっても、4層以上であってもよい。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、その技術的範囲内で様々な変形又は変更を加えて実施することができる。例えば、本発明は、少なくとも2層以上の構造を有しているのにも好適である。また、圧力センサーに限定されることなく、加速度センサー、ジャイロセンサー、等の物理量検出素子、全般に適用できる。更に、温度センサー、圧電振動子等の圧電デバイスに適用することができる。圧電振動基板の振動部としては、音叉振動子(図11参照)、ATカット水晶振動子(図12参照)、水晶のX軸(電気軸)を中心にして所定の角度だけ回転して得られる回転Y板を用いた水晶振動子、その他のカットで切断された水晶振動子、水晶以外の圧電材料を用いた圧電振動子、等を広く適用できる。
【0061】
また、本発明の積層体は、上述した圧電モジュール以外に、例えば携帯電話、ハードディスク、パーソナルコンピューター、BS及びCS放送用の受信チューナー、同軸ケーブルや光ケーブル中を伝搬する高周波信号や光信号用の各種処理装置、広い温度範囲で高周波・高精度クロック(低ジッタ、低位相雑音)を必要とするサーバー・ネットワーク機器、無線通信用機器等の様々な電子機器、加速度センサー、回転速度センサー等の各種センサー装置にも広く適用することができる。
このような各種センサー装置及び電子機器としては、例えば一般工業用計測機器、電子血圧計、高度・気圧・水深計測機能付き電子機器、携帯機器、自動車などが挙げられる。
【0062】
そして、上述のように外力によるダイアフラムの機械的な変形を電気的信号として計測するものとして、携帯電話機やパソコン等の小型の携帯機器での高度計測に上述した実施形態に係る圧力センサーを応用してマイクロホンとして利用可能である。
【0063】
更に、近年注目をされるようになった水素やメタノール等の燃料電池は、軽量化や利便性等に起因して、例えば、ビデオカメラ、ノート型パーソナルコンピューター、携帯用電話機、携帯情報端末機(Personal Digital Assistants:PDA)、オーディオプレーヤ、プロジェクタ載置台、カプセル型医療機器の通信機能を具備した電子機器といった各種情報処理装置の燃料費電池としての用途が考えられる。即ち、水素を燃料として電力を発生させる燃料電池セルと、該燃料電池セルに水素を供給する水素吸蔵合金容器筐体と、該水素吸蔵合金容器筐体と上記燃料電池セルとの間に配設された検出用圧力センサーと、圧力調整弁と安全弁とを備えた燃料電池システムに於いて、上述した実施形態に係る圧力センサーを使用することができる。
【0064】
更に、事故等のイベント発生時前後の必要な時間のみについて、デジタルタコグラフとドライブレコーダの双方が生成するデータを関連付けて記録し、その後の解析等に有用なデータを提供することが可能な車両用情報記録装置において、前記デジタルタコグラフは、前記車両の走行状況を検出する走行状況検知手段と、前記ドライブレコーダとの間で情報を送受信するデジタルタコグラフ通信手段と、情報を記録するデジタルタコグラフ記録手段と、前記走行状況検知手段から入力した走行状況および前記デジタルタコグラフ通信手段から受信した情報を受けて、前記デジタルタコグラフ記録手段に情報を記録するデジタルタコグラフ制御部と、を有しているが、前記走行状況検知手段として、高精度な圧力検出が可能な、上述した実施形態に係る圧力センサーを適用できる。
【0065】
更に、被測定者にかかる負荷を検出する活動量計測システムにおいて、前記負荷を圧力として検出する場合においては、検出器として、上述した実施形態に係る圧力センサーを適用できる。
また、外部からの侵入または異常を検知する異常検知センサーと、前記異常検知センサーが異常を検知したときに警報を発する警報手段とを含むセキュリティシステムにおいて、警戒モード設定手段は、警戒モードに応じて、前記異常検知センサーと前記警報手段とによる警戒動作を作動させる場合に、前記異常検知センサーとして、上述した実施形態に係る圧力センサーを適用できる。
【0066】
更に、本発明の電子機器の一例として腕時計型電子機器の本体が存在し、当該本体には、上述した実施形態に係る圧力センサーを搭載することができ、当該圧力センサーはダイナミックレンジやリニアリティなどの特性に優れたものとすることができる。
【0067】
更に、特に自動車においては、例えばインテークマニホールド圧若しくはチャージ圧、ブレーキ圧、エアサスペンション圧、タイヤ圧、ハイドロリック貯蔵圧、ショックアブソーバ圧、冷却媒体圧、自動変速機における変調圧、ブレーキ圧、タンク圧のような圧力検出に上述した実施形態に係る圧力センサーを適用できる。
【0068】
また、自動車のサイドドアの内部の圧力変化により側面衝突を検出する装置においては、衝突時に圧力センサーのダイアフラムが衝撃力を受けた場合に、これを圧力変化として検出する度合いを少なくして、圧力の変化をより高精度に検出するという要求がある。この場合、車両のサイドドアの内部に配設された圧力センサーにより、車両の側面に加わる衝撃を検出する側面衝突検出装置が利用されるが、前記側面衝突検出装置の前記圧力センサーが、圧力を検出するダイアフラムを持ち、そのダイアフラムの受圧面が前記サイドドアの内部の圧力変動により歪むことを検出することによって車両の側面に加わる衝撃を検出する構成を有する場合に、前記圧力センサーに上述した実施形態に係る圧力センサーを適用できる。
【符号の説明】
【0069】
1………圧力センサー、10………感圧素子層、102a,102b………アライメントマーク、106………双音叉素子、16a,16b………柱状ビーム、16c………基部、108………枠部、110a,110b………梁部、112………励振電極、114a………第1の入出力電極、114b………第2の入出力電極、116a,116b………引出電極、20………ダイアフラム層、202………凹部、204………受圧面、206………枠部、208………傾斜部、208a………稜線、210………支持部、30………ベース層、302………凹部、304………枠部、306………傾斜部、306a………稜線、308………封止孔、40………接合剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの基板を積層して形成される積層体の製造方法であって、
前記2つの基板が接合される少なくとも一方の接合面に、傾斜部を形成する外形形成工程と、
前記傾斜部を位置合せに用いて、前記2つの基板を重ね合わせて接合する接合工程と
を備えたことを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項2】
前記基板は異方性を有する結晶材料からなり、前記傾斜部は、前記外形形成工程において前記基板をウェットエッチングすることにより形成されることを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記傾斜部は2つの傾斜面を含み、
前記接合工程において、前記2つの傾斜面同士が交わる交線を位置合せに用いて、前記2つの基板の前記接合面を接合することを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記基板は水晶で形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記基板はATカット板であることを特徴とする請求項2乃至4のうち何れか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記基板はZカット板であることを特徴とする請求項2乃至4のうち何れか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記基板は光透過性を有する基板であり、
前記接合工程において、
前記傾斜部に光を照射することにより位置合せを行いながら、前記2つの基板を重ね合わせて接合することを特徴とする請求項1乃至6のうち何れか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項1】
少なくとも2つの基板を積層して形成される積層体の製造方法であって、
前記2つの基板が接合される少なくとも一方の接合面に、傾斜部を形成する外形形成工程と、
前記傾斜部を位置合せに用いて、前記2つの基板を重ね合わせて接合する接合工程と
を備えたことを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項2】
前記基板は異方性を有する結晶材料からなり、前記傾斜部は、前記外形形成工程において前記基板をウェットエッチングすることにより形成されることを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記傾斜部は2つの傾斜面を含み、
前記接合工程において、前記2つの傾斜面同士が交わる交線を位置合せに用いて、前記2つの基板の前記接合面を接合することを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記基板は水晶で形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記基板はATカット板であることを特徴とする請求項2乃至4のうち何れか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記基板はZカット板であることを特徴とする請求項2乃至4のうち何れか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記基板は光透過性を有する基板であり、
前記接合工程において、
前記傾斜部に光を照射することにより位置合せを行いながら、前記2つの基板を重ね合わせて接合することを特徴とする請求項1乃至6のうち何れか1項に記載の積層体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−38680(P2013−38680A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174749(P2011−174749)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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