説明

積層型電子部品の製造方法

【課題】誘電体層としての機能を維持しつつ内部電極パターンと誘電体層との間の接合強度を高めることができる積層型電子部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】積層型電子部品1の製造方法では、複数の開口部22を有するように内部電極パターン6を支持体20上に形成し、その後、大径セラミック粒子Aと小径セラミック粒子Bとを含むセラミックペーストP2を小径セラミック粒子Bが開口部22に充填されるように内部電極パターン6上に付与してグリーンシート30を形成し、そのグリーンシート30を積層して積層体を形成した後、積層体を切断、焼成して複数の部品素体2を形成すると共に、部品素体2に端子電極4を形成する。この製造方法では、大径セラミック粒子Aの粒径をα、小径セラミック粒子Bの粒径をβ、開口部22の口径をγとした場合に、粒径α>口径γ>粒径βの関係を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の製造方法として、セラミックグリーンシート上に導電性ペーストを付与して内部電極パターンを形成し、そのセラミックグリーンシートを積層して得られた積層体を分割及び焼成した後、端子電極を形成して電子部品を完成させる方法が広く知られている。ところで、この製造方法では、内部電極パターンとセラミック層(誘電体層)との間の接合強度が弱いため、焼成の際にデラミネーションが発生してしまう場合があり、例えばPETフィルムなどの支持体上に開口部を有する内部電極パターンを形成し、その上に、セラミックペーストを付与して開口部にセラミックペーストを所定量充填させることで、内部電極パターンと誘電体層との接合強度を高めて、セラミックグリーンシートを作成する方法が例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−349674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の発明には、単に内部電極パターンに開口部を設けてその開口部にセラミックペーストを充填させるといったことが開示されているに過ぎず、開口部への充填率のみに焦点を当てた特許文献1に記載の製造方法では、セラミックペーストが本来担う誘電体層としての機能の低下を招いてしまう懼れがあった。
【0005】
本発明は、誘電体層としての機能を維持しつつ内部電極パターンと誘電体層との間の接合強度を高めることができる積層型電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る積層型電子部品の製造方法は、内部電極パターンが複数の開口部を有するように当該内部電極パターンを支持体上に形成する工程と、粒径の異なる大径セラミック粒子Aと小径セラミック粒子Bとを含むセラミックペーストを、小径セラミック粒子Bが開口部に充填されるように内部電極パターン及び支持体上に付与して、内部電極パターンを含むグリーンシートを形成する工程と、グリーンシートを複数積層して積層体を形成する工程と、積層体を切断及び焼成して複数の部品素体を形成し、当該部品素体それぞれに端子電極を形成する工程と、を備え、大径セラミック粒子Aの粒径をα、小径セラミック粒子Bの粒径をβ、開口部の口径をγとした場合に、粒径α>口径γ>粒径βの関係を満たすことを特徴としている。
【0007】
本発明に係る積層型電子部品の製造方法では、セラミックペーストに含まれる大径セラミック粒子Aの粒径αと小径セラミック粒子Bの粒径βとが、開口部の口径γに対して、粒径α>口径γ>粒径βの関係を満たすようになっている。この場合、大径セラミック粒子Aによって誘電体層を所定の厚みに確実に形成できる一方、小径セラミック粒子Bを開口部内に十分な量、充填させることができる。これにより、本発明によれば、誘電体層としての機能を維持しつつ内部電極パターンと誘電体層との間の接合強度を高めた積層型電子部品を製造することができる。
【0008】
また、本発明に係る積層型電子部品の製造方法では、小径セラミック粒子Bの粒径βが開口部の口径γよりも小さいため、小径セラミック粒子Bの開口部への充填が容易に行えることから、小径セラミック粒子Bを開口部内において柱状となるように充填させることができ、グリーンシートを積層した際、積層方向における誘電体層同士の密着性を向上させることができる。この結果、本製造方法で製造される積層型電子部品では、素体強度を向上させることが可能となる。更に、本発明に係る積層型電子部品の製造方法では、開口部に充填された小径セラミック粒子Bなどのセラミック粒子が共材の役割を果たすため、内部電極パターンと誘電体層との焼結温度の差を小さくすることができ、その結果、焼成の際における焼成ムラを改善することができる。
【0009】
上記積層型電子部品の製造方法において、セラミックペーストに含まれる大径セラミック粒子Aと小径セラミック粒子Bとの重量比が、A:B=90:10〜60:40であるようにしてもよい。小径セラミック粒子Bの重量比を10%以上とすることにより、セラミック粒子の開口部への充填率が低下して素体強度の低下を招いてしまうといったことを抑制することができる。また、大径セラミック粒子Aの重量比を60%以上とすることにより、誘電体層の不十分な形成によって発生する誘電率等の低下を抑制することができる。
【0010】
上記積層型電子部品の製造方法では、小径セラミック粒子Bの粒径βと開口部の口径γとが、2β≦γの関係を満たすようにしてもよい。この場合、開口部への小径セラミック粒子Bの充填率をより向上させることができる。
【0011】
上記積層型電子部品の製造方法では、内部電極パターンを形成する工程において、内部電極パターンの主電極部分の開口比率が、内部電極パターンの引出し電極部分の開口比率よりも大きくなるように、内部電極パターンを形成するようにしてもよい。この場合、比較的、焼結性の良好な内部電極パターンの主電極部分の開口比率を大きくすることで、主電極部分と引出し電極部分とにおける焼成が均一になるようにし、内部電極パターンと誘電体層との間の焼成ムラをより改善できる。
【0012】
上記積層型電子部品の製造方法では、内部電極パターンを形成する工程において、内部電極パターンをスクリーン印刷法により形成する場合、内部電極パターンの単位面積あたり10%〜40%が開口部となるように導電性ペーストが通過できない埋没領域をメッシュ部に形成したスクリーン版を用いて、内部電極パターンを印刷形成するようにしてもよい。この場合、内部電極パターンに形成される開口部の割合及び大きさを精度良く制御することができ、これにより、素体強度の向上と焼成ムラの改善を更に促進することができる。
【0013】
上記積層型電子部品の製造方法では、内部電極パターンを形成する工程において、内部電極パターンをグラビア印刷法により形成する場合、内部電極パターンの単位面積あたり10%〜40%が開口部となるように導電性ペーストが充填されない埋没領域をセル部に形成したグラビアロールを用いて、内部電極パターンを印刷形成するようにしてもよい。この場合、内部電極パターンに形成される開口部の割合及び大きさを精度良く制御することができ、これにより、素体強度の向上と焼成ムラの改善を更に促進することができる。
【0014】
上記積層型電子部品の製造方法では、グリーンシートを形成する工程は、小径セラミック粒子(B)を含むセラミックペーストを付与する第一の付与工程と、大径セラミック粒子(A)を含むセラミックペーストを付与する第二の付与工程とを有し、第一の付与工程の後に、第二の付与工程を行うようにしてもよい。この場合、小径セラミック粒子Bを付与した後に、大径セラミック粒子Aを付与するといった簡易な方法により、開口部へのセラミック粒子の充填率を容易に向上させることができ、素体強度の向上と焼成ムラの改善を更に促進することができる。また、開口部に主として充填される小径セラミック粒子Bを付与した後に大径セラミック粒子Aを付与するので、誘電体層の厚みをより均一にすることができ、その結果、容量ばらつきを抑制することができる。
【0015】
上記積層型電子部品の製造方法では、内部電極パターンを形成する導電性ペーストがセラミック材料を含まないようにしてもよい。この場合、共材として用いられるセラミック材料が内部電極パターンに含まれていないため、セラミック材料が内部電極パターンに含まれている場合に発生し得るセラミック材料の誘電体層への拡散による誘電率ばらつきを抑制することができる。また、内部電極パターンにセラミック材料が含まれていないため、内部電極の分散性が向上し、粒子の凝集を抑制することができるため、良好な破壊電圧とすることができる。
【0016】
上記積層型電子部品の製造方法では、積層体を形成する工程において、積層方向に隣接する内部電極パターンの開口部同士の少なくとも一部が重なるようにグリーンシートを積層して積層体を形成するようにしてもよい。この場合、積層方向に隣接する開口部同士が重なることにより、容量ばらつきを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、誘電体層としての機能を維持しつつ内部電極パターンと誘電体層との間の接合強度を高めることができる積層型電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る製造方法によって製造される積層型電子部品の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示した積層型電子部品の層構造を示す断面図である。
【図3】図1に示した積層型電子部品の製造工程を示すフローチャートである。
【図4】図1に示した積層型電子部品の製造工程の一部を示す概略断面図である。
【図5】(a)は、図4におけるVa-Va線に沿った部分断面図であり、(b)は、(a)におけるVb-Vb線に沿った断面図である。
【図6】スクリーン版の平面図とその一部拡大図である。
【図7】セラミック粒子A,Bの粒径α,βと開口部の口径γとの関係を示す図である。
【図8】(a)は、図4におけるVIIIa-VIIIa線に沿った部分断面図であり、(b)は、(a)におけるVIIIb-VIIIb線に沿った断面図である。
【図9】グラビアロールとその一部拡大図である。
【図10】内部電極パターンにおける開口部の比率を異ならせた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。また、説明の便宜上、各図面では各部の形状を誇張して示す場合があり、図面上の寸法比率は各図面間では必ずしも一致しない場合がある。
【0020】
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る製造方法によって製造される積層型電子部品1の構成について説明する。本実施形態では、積層型電子部品として、以下、積層コンデンサを例にとって説明するが、これに限定されるわけではなく、他の積層型電子部品でもよい。積層型電子部品1は、部品素体2と、端子電極4と、内部電極6とを備えて構成される。
【0021】
部品素体2は、図2に示されるように、複数の誘電体層8が積層されて形成され、略直方体形状をなしている。誘電体層8は、例えばBaTiO系、(Ti,Zr)O系、(Ba,Ca)TiO系といった電歪特性を有する誘電体材料によって形成されている。端子電極4は、部品素体2における長手方向の端面2aを覆うようにそれぞれ形成され、互いに対向するように配置される。端子電極4は、多層化されており、部品素体2に接する内側の層には、例えばCu,Ni,Ag−Pdなどが用いられ、外側の層には、例えばNi−Snなどのめっきが施されている。
【0022】
内部電極6は、部品素体2内において、少なくとも一層の誘電体層8を間に挟むように交互に積層される。内部電極6は、積層方向に隣接する他の内部電極6と対向して静電容量部を形成する主電極部分6aと、主電極部分6aを端子電極4に向かって引き出す引出し電極部分6bとから構成される。交互に積層された内部電極6の一方は、端子電極4の一方に接続され、内部電極6の他方は、端子電極4の他方に接続される。誘電体層8の厚みは、例えば2〜3μm程度である。
【0023】
続いて、上述した構成を有する積層型電子部品1の製造方法について説明する。
【0024】
図3は、積層型電子部品1の製造工程を示すフローチャートである。積層型電子部品1の製造にあたっては、まずは、内部電極6となる内部電極パターン6を形成するための導電性ペーストP1と、誘電体層8を形成するためのセラミックペーストP2とを準備する(ステップS01)。導電性ペーストP1は、例えばNi,Ag,Pdなどの金属粉末にバインダ樹脂や溶剤等を混合したペースト状の組成物である。なお、本実施形態では、導電性ペーストP1には、共材としてのセラミック材料が含まれないようになっているが、含まれるようにしてもよい。
【0025】
セラミックペーストP2は、誘電体層8を構成する誘電体材料の原料に、有機ビヒクルなどを混合・混練することによって得られるペーストである。誘電体材料として、例えば、BaTiO系、(Ti,Zr)O系、(Ba,Ca)TiO系といった複合酸化物に含まれる各金属原子の酸化物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などの組み合わせが挙げられる。セラミックペーストP2は、誘電体材料として、粒径の異なる大径セラミック粒子Aと小径セラミック粒子Bとを含んで構成される。
【0026】
大径セラミック粒子Aの粒径αは、例えば2〜4μmであり、小径セラミック粒子Bの粒径βは、粒径αよりも小さく、例えば0.05〜0.5μmである。また、本実施形態では、大径セラミック粒子Aと小径セラミック粒子Bとの重量比A:Bが90:10〜60:40の間になるようにセラミックペーストP2を構成している。
【0027】
続いて、導電性ペーストP1とセラミックペーストP2の両ペーストの準備が終了すると、図4(a)に示されるように、PETなどからなる長尺状の支持体20を準備する(ステップS02)。そして、図4(b)に示されるように、支持体20上の所定の箇所に導電性ペーストP1が付与されるようにスクリーン印刷を行い、複数の内部電極パターン6を形成する(ステップS03)。本実施形態で説明する製造方法は、多数の積層型電子部品1を同時に製造する方法であり、これら複数の内部電極パターン6は、複数の積層型電子部品1における内部電極6の一つにそれぞれ対応する。
【0028】
ところで、本実施形態では、ステップS03で内部電極パターン6を形成する際、図5に示されるように、内部電極パターン6が複数の開口部22を有するように内部電極パターン6を形成する。これら開口部22は、平均して、内部電極パターン6の単位面積あたり10%〜40%を占めるような空隙面積となっている。このような開口部22を有する内部電極パターン6を形成するには、例えば、スクリーン印刷に用いるスクリーン版24のメッシュ部26(図6参照)に導電性ペーストP1が通過できない埋没領域28を所定数形成し、スクリーン印刷を行う際、これら埋没領域28で導電性ペーストP1の通過を遮ることで、内部電極パターン6の単位面積あたり10%〜40%が開口部22となるようにすることができる。
【0029】
続いて、ステップS03の内部電極6の形成が終了すると、図4(c)に示されるように、PET20上に形成された内部電極パターン6と内部電極パターン6が形成されてないPET20上の箇所にセラミックペーストP2を塗布して、PET20上にグリーンシート30を形成する(ステップS04)。グリーンシート30は、内部電極パターン6と誘電体層8とを含んで構成される。
【0030】
ここで、ステップS04で用いられるセラミックペーストP2に含まれる大径セラミック粒子Aの粒径α及び小径セラミック粒子Bの粒径βと内部電極パターン6に形成された開口部22の口径γとの関係について説明する。図7から明らかなように、大径セラミック粒子Aは、小径セラミック粒子Bの粒径βや開口部22の口径γよりも大きい粒径αとなっており、また、小径セラミック粒子Bは、大径セラミック粒子Aの粒径αや開口部22の口径γよりも小さい粒径βとなっている。すなわち、以下の式(1)の関係を満たす。
粒径α>口径γ>粒径β…(1)
そして、更に、本実施形態では、小径セラミック粒子Bの粒径βが開口部22の口径γの半分以下の長さとなっている。すなわち、以下の式(2)の関係を満たす。
2β≦γ…(2)
【0031】
このように、セラミックペーストP2には、粒径の異なる二種類のセラミック粒子A,Bが含まれている。このため、ステップS04での塗布により、図8に示されるように、小径セラミック粒子Bが主として開口部22内に充填されるようになる。その一方、大径セラミック粒子Aは、開口部22内には、ほぼ充填されることがなく、誘電体層8を構成するように配置される。なお、誘電体層8を構成する領域に小径セラミック粒子Bが多少は含まれる。その後、塗布されたセラミックペーストP2等を乾燥し、PET20を剥がしてグリーンシート30を得る。グリーンシート30は複数枚必要であるため、同様の処理を繰り返す。
【0032】
続いて、複数のグリーンシート30の形成が終了すると、複数のグリーンシート30を積層し、積層方向に隣接する内部電極パターン6の主電極部分6aのみが互いに重なるように、積層方向に直交する方向にグリーンシート30を少しずらして位置合わせを行う。この位置合わせにより、各主電極部分6aが静電容量部として機能するようになる。その後、積層されたグリーンシート30を積層方向に加圧し、これにより、積層体が形成される(ステップS05)。
【0033】
積層体が形成されると、この積層体を引出し電極部分6bに対応する所定の箇所で切断して複数の部品素体2を形成し(ステップS06)、その後、部品素体2を焼成する(ステップS07)。焼成は、部品素体2を例えば還元雰囲気下で1100〜1300℃程度に加熱することにより行われる。なお、焼成処理に先立ち、部品素体2に脱バインダ処理を行ってもよい。脱バインダ処理は、部品素体2を空気中又はN及びHの混合ガス中などの還元雰囲気中に配置し、200〜600℃程度に加熱することにより行われる。また、部品素体2の焼成後、得られた焼成物に、必要に応じて800〜1100℃、2〜10時間程度のアニール処理を施してもよい。
【0034】
続いて、部品素体2の端面2aを覆うように導電性ペーストP3を塗布して焼き付けを行い、更にメッキを施すことにより、端子電極4を形成する(ステップS08)。導電性ペーストP3は、例えばCuを主成分とする金属粉末に、ガラスフリット及び有機ビヒクルを混合したものを用いることができる。金属粉末は、Ni,Ag−PdあるいはAgを主成分とするものであってもよい。めっきは、Ni,Sn,Ni−Sn合金,Sn−Ag合金,Sn−Bi合金などの金属めっきが用いられる。また、金属めっきは、例えば、NiとSnとで二層以上形成した多層構造としてもよい。以上により、図1及び図2に示した積層型電子部品1が完成する。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る積層型電子部品1の製造方法では、セラミックペーストP2に含まれる大径セラミック粒子Aの粒径αと小径セラミック粒子Bの粒径βとが、開口部22の口径γに対して、粒径α>口径γ>粒径βの関係を満たすようになっている。このため、開口部22に入り難い大径セラミック粒子Aによって誘電体層8を所定の厚みに確実に形成できる一方、小径セラミック粒子Bを開口部22内に十分な量、充填させることができる。その結果、この製造方法によれば、誘電体層8としての機能を維持しつつ内部電極パターン6と誘電体層8との間の接合強度を高めた積層型電子部品1を製造することができる。
【0036】
また、小径セラミック粒子Bの粒径βが開口部22の口径γよりも小さいため、小径セラミック粒子Bの開口部22への充填が容易に行えることから、小径セラミック粒子Bを開口部22内において、図8(b)に示すように、柱状となるように充填させることができる。言い換えると、内部電極パターン6の開口部22の一端から他端に向かって略連続するように小径セラミック粒子Bを開口部22内に沿って充填させることができる。このため、グリーンシート30を積層して焼成等を行った際、この柱状の小径セラミック粒子Bが積層方向において隣接する誘電体層8同士を繋ぐ部材として機能し、積層方向における誘電体層8同士の密着性を向上させることができる。この結果、本製造方法で製造される積層型電子部品1では、素体強度を向上させることが可能となる。
【0037】
また、開口部22に充填された小径セラミック粒子Bなどのセラミック粒子がいわゆる共材の役割を果たすため、内部電極パターン6と誘電体層8との焼結温度の差を小さくすることができ、その結果、焼成の際における焼成ムラを改善することもできる。
【0038】
また、本実施形態では、セラミックペーストに含まれる大径セラミック粒子Aと小径セラミック粒子Bとの重量比が、A:B=90:10〜60:40の関係を満たすようになっている。このように、小径セラミック粒子Bの重量比を10%以上とすることにより、セラミック粒子の開口部22への充填率が低下して素体強度の低下を招いてしまうといったことを抑制することができる。また、大径セラミック粒子Aの重量比を60%以上とすることにより、誘電体層8の不十分な形成によって発生する誘電率等の低下を抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態では、小径セラミック粒子Bの粒径βと開口部22の口径γとが、2β≦γの関係を満たすようになっている。このため、開口部22への小径セラミック粒子Bの充填率をより向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態では、内部電極パターン6を形成する工程において、内部電極パターン6をスクリーン印刷法により形成するようにしており、内部電極パターン6の単位面積あたり10%〜40%が開口部22となるように導電性ペーストが通過できない埋没領域28をメッシュ部26に形成したスクリーン版24を用いて、内部電極パターン6を印刷形成するようにしている。このようにスクリーン印刷のメッシュ部26を利用しているため、内部電極パターン6に形成される開口部22の割合及び大きさを精度良く制御することができ、これにより、積層型電子部品1の素体強度の向上と焼成ムラの改善を更に促進することができる。
【0041】
また、本実施形態では、内部電極パターン6を形成する導電性ペーストP1がセラミック材料を含まないようになっている。このように、通常、共材として用いられるセラミック材料が内部電極パターン6に含まれていないため、セラミック材料が内部電極パターン6に含まれている場合に発生し得るセラミック材料の誘電体層8への拡散による誘電率ばらつきを抑制することができる。また、内部電極パターン6にセラミック材料が含まれていないため、内部電極6の分散性が向上し、粒子の凝集を抑制することができるため、積層型電子部品1を良好な破壊電圧とすることができる。
【0042】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、スクリーン印刷を用いて内部電極パターン6に開口部22を形成するようにしていたが、図9に示されるように、内部電極パターン6を形成する工程において、内部電極パターン6をグラビア印刷法により形成するようにし、スクリーン印刷の場合と同様に、内部電極パターン6の単位面積あたり10%〜40%が開口部22となるように導電性ペーストが充填されない埋没領域38をセル部36に形成したグラビアロール34を用いて、内部電極パターン6を印刷形成するようにしてもよい。この場合であっても、グラビア印刷のセル部36を利用していることから、内部電極パターン6に形成される開口部22の割合及び大きさを精度良く制御することができ、これにより、積層型電子部品1の素体強度の向上と焼成ムラの改善を促進することができる。
【0043】
また、上記実施形態では、グリーンシートを形成する工程において、大径セラミック粒子Aと小径セラミック粒子Bとの両方を含むセラミックペーストP2を用いて塗布を行っていたが、大径セラミック粒子Aを含むセラミックペーストP21と、小径セラミック粒子Bを含むセラミックペーストP22とを準備し、小径セラミック粒子Bを含むセラミックペーストP22を付与する第一の付与工程を行った後に、大径セラミック粒子Aを含むセラミックペーストP21を付与する第二の付与工程を行うようにしてもよい。この場合、小径セラミック粒子Bを付与した後に、大径セラミック粒子Aを付与するといった簡易な方法により、開口部22へのセラミック粒子の充填率を容易に向上させることができ、積層型電子部品1の素体強度の向上と焼成ムラの改善を促進することができる。また、開口部22に主として充填される小径セラミック粒子Bを付与した後に大径セラミック粒子Aを付与するので、誘電体層8の厚みをより均一にすることができ、その結果、容量ばらつきを抑制することもできる。
【0044】
また、上記実施形態では、製造工程における内部電極パターン6がそのまま積層型電子部品1の内部電極6となっていたが、図10に示されるように、製造工程における内部電極パターン6が2つの内部電極6に対応しており、切断時にこの内部電極パターン6の略中央が切断されることにより、図10(b)に示されるように、積層型電子部品1をそれぞれ構成するグリーンシート30a,30bとなるようにしてもよい。そして、このように製造する場合において、内部電極パターン6を形成する工程において、内部電極パターン6の主電極部分6aの開口比率が、内部電極パターン6の引出し電極部分6bの開口比率よりも大きくなるように、内部電極パターン6を形成するようにしてもよい。この場合、比較的、焼結性の良好な内部電極パターン6の主電極部分6aの開口比率を大きくすることで、主電極部分6aと引出し電極部分6bとにおける焼成が均一になるようにし、内部電極パターン6と誘電体層8との間の焼成ムラをより改善できる。なお、このように主電極部分6aと引出し電極部分6bとの開口比率を異ならせる手法を上述した実施形態にそのまま適用させてもよいことはいうまでもない。
【0045】
また、上記実施形態では、積層体を形成する工程において、内部電極パターン6の各開口部22が積層方向に隣接する開口部22とどのような配置とするかについては特に限定することなくグリーンシート30の積層を行ったが、積層体を形成する工程において、積層方向に隣接する内部電極パターン6の開口部22同士の少なくとも一部が重なるようにグリーンシート30を積層して積層体を形成するようにしてもよい。このように形成することにより、積層方向に隣接する開口部22同士が重なることになり、積層型電子部品1における容量ばらつきをより一層、抑制することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…積層型電子部品、2…部品素体、4…端子電極、6…内部電極パターン、8…誘電体層、22…開口部、24…スクリーン版、26…メッシュ部、28,38…埋没領域、34…グラビアロール、36…セル部、A…大径セラミック粒子、B…小径セラミック粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部電極パターンが複数の開口部を有するように当該内部電極パターンを支持体上に形成する工程と、
粒径の異なる大径セラミック粒子Aと小径セラミック粒子Bとを含むセラミックペーストを、前記小径セラミック粒子Bが前記開口部に充填されるように前記内部電極パターン及び前記支持体上に付与して、前記内部電極パターンを含むグリーンシートを形成する工程と、
前記グリーンシートを複数積層して積層体を形成する工程と、
前記積層体を切断及び焼成して複数の部品素体を形成して、当該部品素体それぞれに端子電極を形成する工程と、を備え、
前記大径セラミック粒子Aの粒径をα、前記小径セラミック粒子Bの粒径をβ、前記開口部の口径をγとした場合に、粒径α>口径γ>粒径βの関係を満たすことを特徴とする積層型電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記セラミックペーストに含まれる前記大径セラミック粒子Aと前記小径セラミック粒子Bとの重量比が、A:B=90:10〜60:40であることを特徴とする請求項1に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記小径セラミック粒子Bの粒径βと前記開口部の口径γとが、2β≦γの関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記内部電極パターンを形成する工程において、前記内部電極パターンの主電極部分の開口比率が、前記内部電極パターンの引出し電極部分の開口比率よりも大きくなるように、前記内部電極パターンを形成することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記内部電極パターンを形成する工程において、前記内部電極パターンをスクリーン印刷法により形成する場合、前記内部電極パターンの単位面積あたり10%〜40%が前記開口部となるように導電性ペーストが通過できない埋没領域をメッシュ部に形成したスクリーン版を用いて、前記内部電極パターンを印刷形成することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記内部電極パターンを形成する工程において、前記内部電極パターンをグラビア印刷法により形成する場合、前記内部電極パターンの単位面積あたり10%〜40%が前記開口部となるように導電性ペーストが充填されない埋没領域をセル部に形成したグラビアロールを用いて、前記内部電極パターンを印刷形成することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記グリーンシートを形成する工程は、前記小径セラミック粒子Bを含むセラミックペーストを付与する第一の付与工程と、前記大径セラミック粒子Aを含むセラミックペーストを付与する第二の付与工程とを有し、前記第一の付与工程の後に、前記第二の付与工程を行うことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記内部電極パターンを形成する導電性ペーストがセラミック材料を含まないことを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記積層体を形成する工程において、積層方向に隣接する前記内部電極パターンの前記開口部同士の少なくとも一部が重なるように前記グリーンシートを積層して前記積層体を形成することを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の積層型電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−198936(P2011−198936A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62819(P2010−62819)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】