説明

積層板および積層板の製造方法

【課題】剥離強度を低下させず、電気めっき中の銅膜の変色や焼けによる不良を生じない積層板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】積層板10を、ポリイミド基板20上に形成された銅を含まない第1の中間層30と、前記第1の中間層上に形成された第2の中間層40と、前記第2の中間層上に形成された金属層60と、を備える。ポリイミド基板20と中間層との剥離強度を低下させず、金属層60が電気めっき中に変色したり焼けたりすることを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂に金属膜を形成した積層板、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル金属積層板は、主として、可とう性を有するプリント配線板用の基材として使用されている。近年、プリント配線板を使用した電子機器の小型化、高密度化の傾向が加速されており、プリント配線板のファインピッチ化・高誘電特性化の要求が高まってきている。そのため、基材と金属層とからなる2層構造を有し、接着剤を用いずに製造できるフレキシブル金属積層板の開発が盛んに進められている。
【0003】
フレキシブル金属積層板の製造方法は、金属層を形成する方法の違いにより区別される。具体的には、スパッタ蒸着法、イオンプレーティング等のメタライジングにより直接薄い金属層を形成した後、必要な膜厚分だけ電解めっきにより増厚する方法、ポリイミドフィルム上に、無電解メッキ触媒金属又はその前駆体を含有するポリマー層を積層し、その後に無電解メッキすることにより、ポリイミド上に金属層を形成する方法(特許文献1)、ポリイミド樹脂のワニス化を利用し、金属箔をキャスティング法、ラミネート法等により接着する方法等がある。これらの種々の方法によって、2層構造の金属(例えば、銅)の積層板が製造される。特に、スパッタ蒸着や無電解めっきにより金属層を形成する方法は、ファインピッチ化に適した製造方法として検討されている。
【0004】
ポリイミド上に形成される金属層の材料として、導電性に優れ、比較的安価な材料である銅が主として用いられる。ただし銅をポリイミド上に直接形成した場合、銅とポリイミドの界面においては、経時変化により、銅とポリイミドの密着性が大幅に低下することが知られている。このため、銅とポリイミドとの間に中間層として銅以外の金属を用いるのが一般的である。例えば、銅以外の金属としてニッケルを用いる方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/066460号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の無電解めっきにてポリイミド基板上に中間層を形成する方法では、その中間層形成後に、電気めっきにて銅層を形成するのが一般的である。中間層形成後に、電気めっきにて中間層上に銅層を形成するには、中間層に用いるニッケル膜の膜厚を厚く形成して電気抵抗値を低く抑える必要がある。中間層の電気抵抗値が高い場合、電気めっき時に必要な電流を流すために、高電圧を加える必要がある。高電圧を印加する事は、電気めっきで形成した膜に変色や焼けなどを生じさせるという問題があった。そのため従来は、ポリイミド上に形成する中間層として150nm程度の厚みのニッケルめっき膜を形成していた。
【0007】
しかしながら、中間層(ニッケル層)を厚く(約100[nm]以上)すると、中間層(ニッケル膜)とポリイミド樹脂の界面に加わる応力も大きくなり、ポリイミド基板から中間層が剥離を生じるという問題が発生する。
【0008】
以上をまとめると、従来の方法では、中間層を薄く形成した場合には、高電圧印加により電気めっき中の銅膜が変色したり焼けたりするという問題が生じ、中間層を厚く形成した場合、ポリイミド基板から中間層が剥離を生じるという問題が生じていた。
【0009】
そこで、本発明の目的は、剥離強度を低下させず、電気めっき中に銅膜が変色したり焼けたりすることを防止して、高品質な積層板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の第1の発明に係る積層板は、ポリイミド基板と、ポリイミド基板上に形成された銅を含まない第1の中間層と、第1の中間層上に形成された銅を含む第2の中間層と、第2の中間層上に形成された金属層と、を備える。
【0011】
ここでは、中間層2層のうち、ポリイミド基板側の銅をふくまない第1の中間層は基板との間の必要な剥離強度を確保できるとともに、第1の中間層上に形成された銅を含む第2の中間層により、電気抵抗を低く抑えられ、金属層を形成する際に膜に焼けや変色が生じることを防ぐことができる。
【0012】
第2の発明に係る積層板は、第1の発明の積層板であって、第1の中間層の主成分は、ニッケルである。
【0013】
第3の発明に係る積層板は、第1または第2の発明の積層板であって、第2の中間層はさらに、ニッケルを含む。
【0014】
第4の発明に係る積層板は、第1の発明の積層板であって、第1の中間層及び第2の中間層の膜厚は、合わせて100nm以下である。
ここでは、中間層全体の膜厚を所定値以下に抑えることにより、剥離強度の低下を防ぐことができる。
【0015】
第5の発明に係る積層板の製造方法は、ポリイミド基板上に、銅を含まない第1の中間層を形成し、第1の中間層上に銅を含む第2の中間層を形成し、第2の中間層上に金属層を形成する。
【0016】
第6の発明に係る積層板の製造方法は、第5の発明の製造方法であって、第1の中間層及び第2の中間層は、湿式めっき法により形成する。
【0017】
第7の発明に係る積層板の製造方法は、第6の発明の製造方法であって、第1の中間層は、無電解ニッケルめっき工程により形成し、第2の中間層は、無電解銅ニッケルめっき工程により形成する。
【0018】
第8の発明に係る積層板の製造方法は、第5の発明の製造方法であって、第1の中間層及び第2の中間層の膜厚は、合わせて100nm以下になるように形成する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る積層板及びその製造方法によれば、剥離強度を低下させず、銅膜の電気めっき中の変色や焼けを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一の実施形態に係る積層板の構造を示す図
【図2】上記実施形態に係る積層板の製造手順を示す図
【図3】上記実施形態に係る積層板の製造に用いるめっき装置の構成図
【図4】(a)は本発明の一の実施例を示し、(b)は中間層がニッケルリンである比較例1を示し、図4(c)は中間層が銅ニッケルリンである比較例2を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一の実施形態に係る積層板及びその製造方法について、図1〜図3を用いて以下に説明する。
<1.積層板>
<1.1.積層板10の構成>
図1は本発明の積層板10の構造を示すものである。
【0022】
積層板10は、ポリイミド基板20と、第1の中間層30と、第2の中間層40と、金属層60と、を有する。第1の中間層30と第2の中間層40により、中間層50が形成される。
【0023】
ポリイミド基板20は、ポリイミドフィルムを有する。
第1の中間層30は、ポリイミド基板20の上に形成されている。第1の中間層30は、例えば、ニッケルリン(Ni−P)により形成される。
【0024】
第2の中間層40は、第1の中間層上に形成されており、銅を含む。第2の中間層40は、例えば、銅ニッケルリン(Cu−Ni−P)により形成される。
金属層60は、第2の中間層上に形成される。金属層60は、銅(Cu)などにより形成される。
【0025】
<1.2.積層板の製造方法>
以下に、本実施形態による積層板10の製造方法に関して説明する。
【0026】
なお、本実施形態の積層板10では、ポリイミド基板20として、例えば東レデュポン社製ポリイミドフィルムのカプトン(登録商標)150EN−Cを用いる。また、第1の中間層30として、ニッケルリン(Ni−P)を用い、銅を含む第2の中間層40として銅ニッケルリン(Cu−Ni−P)を用い、金属層60として銅(Cu)を用いて製造するものとする。
【0027】
また、以下の製造方法においては、第1の中間層30及び第2の中間層40は、湿式めっき法の一つである無電解めっき法を用いて製造される。また、金属層60の製造方法としては、他の湿式めっき法である電気メッキ法を用いる。
【0028】
図2は、本実施形態の積層板10の製造手順を示し、図3は、本実施形態の積層板10の製造に用いるめっき装置70の構成を示す。
ポリイミド基板20は、図2に示す製造手順に従い、図3に示すめっき装置70を用いて加工される。
【0029】
図2に示すように、本実施形態に係る製造方法は、脱脂工程180、アルカリ処理工程190、触媒付与工程200、還元工程210、無電解ニッケルめっき工程220、無電解銅ニッケルめっき工程230、電解銅めっき工程240の順に処理を行う。また、各工程間には用いた薬品を次工程に持ち込まないために純水を用いた洗浄工程250が設けられている。
【0030】
また、図3に示すように、めっき装置70は、ロール状に巻かれたポリイミド基板20を巻きだす巻き出し装置80と、脱脂工程180を行う脱脂槽90と、アルカリ処理工程190を行うアルカリ処理槽100と、触媒付与工程200を行う触媒槽110と、還元工程210を行う還元槽120と、無電解ニッケルめっき工程220を行う無電解ニッケルめっき槽130と、無電解銅ニッケルめっき工程230を行う銅ニッケルめっき槽140と、電解銅めっき工程240を行う電解銅めっき槽150とを備える。めっき装置70はさらに、各槽の間に設けられ、洗浄工程を行う洗浄槽160と、ポリイミド樹脂20aを巻き取る巻き取り装置170と、を備える。
【0031】
以下、本実施形態に係る製造方法を実施例に沿って詳細に説明する。
<<脱脂工程180>>
まず脱脂工程180において、ポリイミド基板20の表面に付着している異物、油分などを除去する。
【0032】
実施例において、脱脂工程180で用いる脱脂液は、荏原ユージライト社製脱脂液ES−100を用いた。ES−100は、濃度10〜100ml/l、処理時間10秒〜10分、温度40℃〜60℃の間で用いるのが望ましい。
【0033】
<<アルカリ処理工程190>>
次に、アルカリ処理工程190において、ポリイミド基板20の表面をアルカリ処理する。
実施例において、アルカリ処理には、荏原ユージライト社製アルカリ処理液ES−200を用いた。アルカリ処理工程190では、ポリイミド表面のイミド環が加水分解し、カルボン酸が生成される。ES−200は、濃度10〜100ml/l、処理時間10秒〜10分、温度20℃から65℃の条件で用いるのが望ましい。
【0034】
アルカリ処理に用いる処理液ES−200の濃度、処理時間、温度を変更することにより、アルカリ処理の程度を制御可能であり、濃度、処理時間、温度を適切に組み合わせることで、適切な処理を行うことができる。ただしアルカリ処理の程度を強くした場合、耐薬品性が低下する傾向にあるため、上記条件よりも大幅に強い処理を行うことは望ましくない。また濃度、処理時間、温度のいずれか一つの条件を上記記載の処理条件に対して大幅に過剰な処理になる条件に設定し、残りの条件を調整することで、アルカリ処理の程度が上記記載の条件と実質的に同等になるように処理することは可能であるが、極端な条件設定をした場合、均一で安定な処理を行うことが困難になる。そのためアルカリ処理条件は、上記条件の範囲内で選択することが望ましい。
【0035】
<<触媒付与工程200>>
次に触媒付与工程200において、パラジウムを含む溶液にポリイミド樹脂20aを接触させる。
実施例において、パラジウムを含む溶液としては、荏原ユージライト社製触媒液ES−300を用いた。触媒付与工程200では、溶液に含まれるパラジウム錯体がポリイミド樹脂表面のカルボン酸に結合して、ポリイミド樹脂表面に取り込まれる。ES−300は、濃度50〜250ml/l、処理時間10秒〜10分、温度20℃から65℃の条件で用いるのが望ましい。
【0036】
<<還元工程210>>
次に、還元工程210において、パラジウム錯体の還元液に、触媒付与工程200後のポリイミド樹脂20aを接触させる。還元工程210では、ポリイミド樹脂20a表面に結合したパラジウム錯体が、金属パラジウムに還元される。
【0037】
実施例において、還元工程で用いる還元溶液としては、荏原ユージライト社製還元液ES−400を、濃度5〜30ml/l、処理時間30秒〜10分、温度20℃から60℃の条件で用いるのが望ましい。
【0038】
還元を過剰に行った場合、触媒がポリイミド表面から脱落する現象が顕著になり、続く無電解ニッケルめっき工程において、めっき析出不良の原因となる場合があるため、前記の条件より大幅に過剰な還元処理を行うことは望ましくない。また還元が不十分な場合、触媒の活性が不足し、めっき析出不良を生じるため、還元処理を前記条件より大幅に過少に行うことも望ましくない。
【0039】
<<無電解ニッケルめっき工程220>>
次に、無電解ニッケルめっき工程220において、ポリイミド樹脂20aをニッケルめっき液に接触させ、第1の中間層30としてニッケルリン(Ni−P)を形成する。
【0040】
実施例において、ニッケルリン(Ni−P)めっき液としては、荏原ユージライト社製ニッケルめっき液ES−500を用いた。ES−500は、温度38℃、処理時間1分〜3分の条件で使用し、めっき膜厚が20nmから50nmの範囲で、リン濃度が1.5%程度から4%程度になるように形成した。リン濃度が高すぎるとエッチング加工が困難になる傾向があるが、4%程度であればエッチング加工可能であった。めっき膜厚は蛍光X線膜厚測定により行った。まためっき膜中の各成分の濃度については、ICP質量分析装置により分析を行った。
膜厚は、ニッケルめっき液の温度と処理時間により制御できる。
【0041】
<<無電解銅ニッケルめっき工程230>>
次に、無電解銅ニッケルめっき工程230において、第1の中間層30を形成したポリイミド基板20を、銅ニッケルめっき液に浸漬させ、銅を含む第2の中間層40である銅ニッケルリン(Cu−Ni−P)を形成する。
【0042】
実施例において、銅ニッケルめっき液としては、硫酸ニッケル六水和物、及び硫酸銅五水和物を含む、無電解銅ニッケルめっき液を用いた。膜厚及び成分分析は、上記第1の中間層(ニッケルリン)の測定と同様の方法で行った。
【0043】
銅を含む第2の中間層40の厚みは、めっき時間を制御することで任意の厚みに制御可能である。本実施例では、第2の中間層40の厚みは、50nmとした。
めっき膜中のニッケル及び銅の濃度は、銅ニッケルめっき液中の硫酸ニッケル六水和物と硫酸銅五水和物の含有量を制御することにより行う。まためっき膜厚については、銅ニッケルめっき液に浸漬する時間により制御することが可能である。
【0044】
<<電解銅めっき工程240>>
最後に、電解銅めっき工程240において、第2の中間層40上に金属層60を形成する。金属層60は、電解銅めっき膜であり、厚みは8.5μmである。膜厚は、めっき中に流す電流量により制御する。
【0045】
<<洗浄工程250>>
上記各工程の間で常温の純水を用いて洗浄を行う。洗浄は、各工程で用いた薬品を洗い流し、次工程に薬品を持ち込まないことを目的としている。洗浄不足で上流工程から下流工程に薬品を持ち込んだ場合、さまざまな品質の低下を生じる原因となる。
【0046】
<1.3.実施形態の効果>
図4(a)は本発明の本実施形態(すなわち図1と同等)に係る積層板10の構成を示す。図4(b)は、比較例1として、中間層50がNi−Pの単層により形成された例を示す。図4(c)は比較例2として、中間層50がCu−Ni−Pの単層により形成された例を示す。
【0047】
図4(a)においては、中間層50は、膜厚が50[nm]であるNi−P層(第1の中間層30)と、膜厚が50[nm]であるCu−Ni−P層(第2の中間層40)とから構成される。図4(b)においては、中間層50は、膜厚が100[nm]であるNi−P層から構成される。図4(c)においては、中間層50は、膜厚が100[nm]であるCu−Ni−P層から構成される。即ち、これら三つの例においては、中間層50の膜厚を100[nm]に形成して比較を行った。
【0048】
表1は、図4(a)(b)(c)に示す構成に関し、中間層50の表面の電気抵抗値、及び、150℃/168時間放置後の剥離強度を示す。
【0049】
【表1】

【0050】
中間層50の表面の電気抵抗は、4探針測定法によって、端子間距離1[mm]にて測定した。また、剥離強度は日本電子回路工業規格(JPCA−BM01 11.5.3)に基づいて測定を行った。
【0051】
図4(b)の中間層50の表面の電気抵抗率は、0.964[ohm]と非常に高くなってしまうため、金属層60の電気めっき時の印加電圧が15[V]から20[V]程度必要である。したがって、電気めっきで形成した膜に焼けや変色が生じてしまう。
【0052】
一方、図4(a)、図4(c)の構成の場合は、電気抵抗率が低く抑えることができるため、金属層60の電気めっき時の印加電圧は、8[V]以下に抑えることができる。したがって、電気めっきで形成した膜に焼けや変色が生じることはない。
【0053】
図4(c)の場合、金属層60の電気めっき時の焼けや変色がおさえることができるが、表1に示すとおり、150℃/168時間放置後の剥離強度が悪化している。この剥離強度は、実用的には、0.4[N/mm]必要であるが、図4(c)の場合、0.25[N/mm]しかないことがわかる。すなわち、図4(c)の構成では、経時的に膜の密着度が低下していることがわかる。これは、以下の原因によるものと考えられる。
【0054】
図4(c)に示すようなCu−Ni−Pのみを中間層として用いた場合、電気抵抗率を低く抑えることができる。しかしながら、本発明者らが検討を行った結果、上記に示すように、Cu−Ni−Pを中間層に用いた場合に、高温高湿状態で放置後、即ち、経時的に、ポリイミド基板20と中間層50との間の剥離強度が、低下することが分かった。
【0055】
ポリイミド基板20上に銅層を直接形成した基板では、ポリイミドを透過してくる水分や酸素により銅が酸化されること、及び銅がポリイミド樹脂側に拡散していくことが、ポリイミド樹脂と銅の間の剥離強度低下の原因であることがよく知られている。それと同様に、銅ニッケル合金を中間層に用いた場合は、銅の含有比率を高めると、Cu−Ni−P中の銅の成分がポリイミド基板に経時的に拡散すると考えられる。よって、銅をポリイミド上に直接形成した場合と同様の現象が生じてしまう。
【0056】
すなわち、Cu−Ni−Pのみを中間層50に用いた場合、経時的に剥離強度が低下し、その結果として、ポリイミド基板20から中間層50が剥離を生じるという問題が生じてしまう。
【0057】
しかしながら、本発明の実施形態に係る積層板10(図4(a)の構成)では、第2の中間層40のCu−Ni−P中の銅の成分が、ポリイミド基板20に経時的に拡散することを第1の中間層30のNi−Pによって防止していると考えられる。
【0058】
すなわち、中間層50をNi−P/Cu−Ni−Pという2層構造にする事によって、経時的な剥離強度低下の防止も行うことが出来る。
【0059】
<2.他の実施形態>
なお、上記実施例では、東レデュポン社製ポリイミドフィルムのカプトン(登録商標)150EN−Cを用いたが、これに限定されない。例えば、宇部興産製のユーピレックス(登録商標)や鐘淵化学製のアピカル(登録商標)等を用いても、同様の方法で本実施形態の積層板を製造することが可能である。
【0060】
また、本実施形態では、第1の中間層30は、ニッケルリン(Ni−P)を用いたが、銅に比べてポリイミド樹脂との密着性に優れた材料であれば、どのような材料でも良い。
また、上記実施例において、第1の中間層30及び第2の中間層40は、湿式めっき法を用いて製造を行うとしたが、この方法に限定するものではない。例えば、真空蒸着、物理蒸着(PVD:Physical Vapor Deposition:物理気相成長法、例えばスパッタリング法等)、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法、例えばプラズマCVD法)等の乾式メッキ法や、スピンコート法などを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の積層板及びその製造方法によれば、安価で高品質な積層板を得ることができ、特に、携帯電話などの稼動部を有する機器や薄型テレビなどの部品設置スペースが限られる機器内部の電気的な接続部品として有用である。
【符号の説明】
【0062】
10 積層板
20 ポリイミド基板
30 第1の中間層
40 第2の中間層
50 中間層
60 金属層
70 めっき装置
80 巻き出し装置
90 脱脂槽
100 アルカリ処理槽
110 触媒槽
120 還元槽
130 無電解ニッケルめっき槽
140 銅ニッケルめっき槽
150 電解銅めっき槽
160 洗浄槽
170 巻き取り装置
180 脱脂工程
190 アルカリ処理工程
200 触媒付与工程
210 還元工程
220 無電解ニッケルめっき工程
230 無電解銅ニッケルめっき工程
240 電解銅めっき工程
250 洗浄工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド基板と、
前記ポリイミド基板上に形成された銅を含まない第1の中間層と、
前記第1の中間層上に形成された銅を含む第2の中間層と、
前記第2の中間層上に形成された金属層と、
を備える、
積層板。
【請求項2】
前記第1の中間層の主成分は、ニッケルである、
請求項1に記載の積層板。
【請求項3】
前記第2の中間層はさらに、ニッケルを含む、
請求項1または2に記載の積層板。
【請求項4】
前記第1の中間層及び前記第2の中間層の膜厚は、合わせて100nm以下である、
請求項1に記載の積層板。
【請求項5】
ポリイミド基板上に、銅を含まない第1の中間層を形成し、
前記第1の中間層上に銅を含む第2の中間層を形成し、
前記第2の中間層上に金属層を形成する、
積層板の製造方法。
【請求項6】
前記第1の中間層及び前記第2の中間層は、湿式めっき法により形成する、
請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第1の中間層は、無電解ニッケルめっき工程により形成し、
前記第2の中間層は、無電解銅ニッケルめっき工程により形成する、
請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第1の中間層及び前記第2の中間層の膜厚は、合わせて100nm以下になるように形成する、
請求項5に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−274587(P2010−274587A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130898(P2009−130898)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】