説明

空気調和機及び空気調和機の製造方法

【課題】モータの最大能力を高めることなくAPFを向上させる技術を提供する。
【解決手段】暖房高負荷運転時に電機子巻線16CRに高調波電流を流して希土類磁石14MRbを誘導加熱し、残留磁束密度を低下させる。もってラジアルギャップ型モータ10Rの回転数を向上させる。希土類磁石14MRbは冷媒の動線と略平行を呈する冷媒通路30Pの近傍に設けることにより、加熱された希土類磁石14MRbの熱を冷媒が回収する。冷房高負荷運転時には電流位相進めによる弱め界磁制御によって同一トルク指令値に対して大きな回転数を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房運転を行う空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機は、特に高い暖房能力を必要とし、低温時の暖房運転開始時に、最大能力を発揮するように設計されている。しかしながら、長時間運転をする場合には通常、高い暖房能力はさほど必要がない。このことは冷房についても同様である。つまり、長時間運転をするときのモータ能力は特段高くする必要はない。特に、建物の高断熱化により長時間運転する状態における負荷は年々小さくなる傾向にある。したがって、高負荷時の暖房能力の要求を満たすように設計すると、長時間運転時の運転効率が低下する。換言すれば、特に低負荷のモータ効率を向上させてモータのAPF(Annual Performance Factor;通年エネルギ消費効率)を向上させることが、省エネルギの観点から望ましい。
【0003】
このように、低負荷におけるモータの効率を高め、低温時の暖房運転開始時のように負荷が高い暖房能力を必要とするときには、電源の昇圧を利用することが考えられる。しかしその他、モータ電流の位相をずらせて弱め磁束制御を利用する技術(特許文献1)、磁石の磁束を短絡する鉄片を利用する技術(特許文献2)、界磁調整コイルを利用する技術(特許文献3)等が提案されている。また、弱め磁束制御と昇圧とを、暖房運転時と冷房運転時とで使い分ける技術(特許文献4)も提案されている。
【0004】
【特許文献1】特許第3021947号公報
【特許文献2】特開平11−275789号公報
【特許文献3】特開2006−141106号公報
【特許文献4】特開2006−313023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータ電流の位相をずらせる弱め磁束制御では、制御の安定性が低下し、運転範囲が大幅に拡大するわけではない。また、弱め磁束のための電流(いわゆるd軸電流)により銅損が増加する。
【0006】
電源の昇圧を利用する技術では、回路が複雑化するために回路作成に掛かるコストが増大したり、生産工程が増加したりする。また、あまりに高圧にすると絶縁構造を強化しなければならない。
【0007】
磁束を短絡する鉄片を利用する技術では、機械的な可動部分を設けることになるので、構成要素のサイズ等の誤差や、組立工程でのミスにより信頼性が低下する。また、可動部分の正確な動作を確保することに課題がある。
【0008】
界磁調整コイルでのみで界磁を弱めるためには、これに大きな電流を流す必要がある。
【0009】
上記の技術に鑑み、本発明の課題は、高負荷時の暖房運転を実現する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、第1の発明は、回転軸(Q)方向に延在するシャフト(12)の周りで周方向に回転可能な複数の希土類磁石(14MA,14MR)を有するロータ(14A,14R)と、前記ロータと対向する電機子巻線(16CA,16CR)を有するステータ(16A,16R)とを有するモータ(10A,10R)を搭載して冷媒を圧縮する圧縮機(30;30A,30R)を備え、暖房運転可能な空気調和機(100)であって、前記暖房運転であって前記モータが予め定められた回転数以上の回転数で前記圧縮機を運転する暖房高負荷運転の場合には、前記電機子巻線に高調波電流を流して前記希土類磁石を誘導加熱する。
【0011】
第2の発明は、第1の発明であって、前記空気調和機は更に冷房運転が可能であり、前記モータ(10A,10R)が前記暖房高負荷運転をする場合には前記誘導加熱を行い、前記冷房運転において前記モータが予め定められた回転数以上の回転数で前記圧縮機を運転する冷房高負荷運転をする場合には電流位相進めによる弱め磁束制御を行う。
【0012】
第3の発明は、第1の発明であって、前記空気調和機は更に冷房運転が可能であり、前記空気調和機は、電源から供給される交流を直流に変換するコンバータ(52)と、前記コンバータから得られる直流を交流に変換して前記電機子巻線(16CA,16CR)に供給するPWMインバータ(54)と、前記コンバータと前記PWMインバータとを接続するDCリンク部(56)とを有するインバータ(50)を更に備え、前記モータ(10A,10R)が前記暖房高負荷運転をする場合には前記誘導加熱を行い、前記冷房運転において前記モータが予め定められた回転数以上の回転数で前記圧縮機を運転する冷房高負荷運転をする場合には前記コンバータによって前記DCリンク部の電圧を昇圧する。
【0013】
第4の発明は、第1の発明であって、前記空気調和機は更に冷房運転が可能であり、前記空気調和機は、電源から供給される交流を直流に変換するコンバータ(52)と、前記コンバータから得られる直流を交流に変換して前記電機子巻線(16CA,16CR)に供給するPWMインバータ(54)と、前記コンバータと前記PWMインバータとを接続するDCリンク部(56)とを有するインバータ(50)を更に備え、前記暖房高負荷運転における前記PWMインバータの出力信号のデューティは、前記冷房運転において前記モータが予め定められた回転数以上の回転数で前記圧縮機を運転する冷房高負荷運転における前記モータに対する前記PWMインバータの出力信号のデューティよりも低く、前記暖房高負荷運転における前記インバータのDCリンク部(54)の電圧は、前記冷房高負荷運転における前記DCリンク部の電圧よりも高い。
【0014】
第5の発明は、第1又は第2の発明であって、前記空気調和機は、電源から供給される交流を直流に変換するコンバータ(52)と、前記コンバータから得られる直流を交流に変換して前記電機子巻線(16CA,16CR)に供給するPWMインバータ(54)と、前記コンバータと前記PWMインバータとを接続するDCリンク部(56)とを有するインバータ(50)を更に備え、前記インバータは前記モータ(10A,10R)に、前記暖房高負荷運転以外では正弦波電流を通電し、前記暖房高負荷運転において過変調された電流を供給する。
【0015】
第6の発明は、第1又は第2の発明であって、前記空気調和機は、電源から供給される交流を直流に変換するコンバータ(52)と、前記コンバータから得られる直流を交流に変換して前記電機子巻線(16CA,16CR)に供給するPWMインバータ(54)と、前記コンバータと前記PWMインバータとを接続するDCリンク部(56)とを有するインバータ(50)を更に備え、前記インバータは前記電機子巻線に、前記暖房高負荷運転において矩形波電流を通電し、前記暖房高負荷運転以外において正弦波電流を通電する。
【0016】
第7の発明は、第6の発明であって、前記暖房高負荷運転において前記PWMインバータ(54)は前記電機子巻線(16CA,16CR)に、前記矩形波通電の無通電区間に高調波電流を重畳して通電する。
【0017】
第8の発明は、第1又は第2の発明であって、前記空気調和機は、電源から供給される交流を直流に変換するコンバータ(52)と、前記コンバータから得られる直流を交流に変換して前記電機子巻線(16CA,16CR)に供給するPWMインバータ(54)と、前記コンバータと前記PWMインバータとを接続するDCリンク部(56)とを有するインバータ(50)を更に備え、前記暖房高負荷運転における前記インバータのキャリア周波数は、前記暖房高負荷運転以外でのキャリア周波数よりも高い。
【0018】
第9の発明は、第1ないし第6及び第8の発明のいずれかであって、前記モータ(10A,10R)への給電には無通電区間が設けられ、前記無通電区間に前記モータによる誘起電圧を計測し、前記誘起電圧に基づいて前記モータの主磁束(φa)を見積もる。
【0019】
第10の発明は、第9の発明であって、前記無通電区間は、前記電機子巻線に供給される電流の前記誘起電圧の履歴に基づいて前記誘起電圧が極大となるときを含む予め定められた期間に設けられる。
【0020】
第11の発明は、第9の発明であって、前記モータは多相モータであり、前記無通電区間は、前記電機子巻線に供給される電流の各相の前の履歴に基づいて前記誘起電圧が極大となるときを含む予め定められた期間に設けられる。
【0021】
第12の発明は、第9ないし第11の発明のいずれかであって、見積もられた前記界磁磁束(φa)に基づいて、前記モータのq軸インダクタンス(Lq)の低下を補正する係数(kq)を補正する。
【0022】
第13の発明は、第9ないし第12の発明のいずれかであって、前記誘導加熱を開始した後に前記誘起電圧の低下が予め定められた閾値以上となったときに前記誘導加熱を停止する。
【0023】
第14の発明は、第1ないし第8の発明のいずれかであって、前記空気調和機は前記冷媒の吐出管の近傍に温度センサ(62)を更に備え、前記温度センサが計測した温度が予め定められた閾値以上の場合には、前記誘導加熱を行わない。
【0024】
第15の発明は、第1又は第2の発明であって、前記空気調和機は、電源から供給される交流を直流に変換するコンバータ(52)と、前記コンバータから得られる直流を交流に変換して前記電機子巻線(16CA,16CR)に供給するPWMインバータ(54)と、前記コンバータと前記PWMインバータとを接続するDCリンク部(56)とを有するインバータ(50)を更に備え、前記誘導加熱を開始後に、前記インバータの、前記モータ(10A,10R)へのトルク指令値に対応して前記電機子巻線に供給する電流の増分が、予め定められた閾値以上の場合には、前記誘導加熱を停止する。
【0025】
第16の発明は、第1ないし第8の発明のいずれかであって、前記空気調和機は前記電機子巻線(16CA,16CR)の巻線温度を検出する巻線温度センサ(64)を更に備え、前記巻線温度センサが計測した温度が予め定められた閾値以上の場合には、前記誘導加熱を行わない。
【0026】
第17の発明は、第1ないし第12の発明のいずれかであって、前記空気調和機は前記誘導加熱を開始してからの期間を計測するタイマ(66)を更に備え、前記タイマが予め定められた期間を計測した後に前記誘導加熱を停止する。
【0027】
第18の発明は、第1ないし第12の発明のいずれかであって、瞬停復帰後には前記誘導加熱の開始を留保する。
【0028】
第19の発明は、第1又は第2の発明であって、前記空気調和機は、電源から供給される交流を直流に変換するコンバータ(52)と、前記コンバータから得られる直流を交流に変換して前記電機子巻線(16CA,16CR)に供給するPWMインバータ(54)と、前記コンバータと前記PWMインバータとを接続するDCリンク部(56)とを有するインバータ(50)を更に備え、前記空気調和機は前記DCリンク部の電圧と前記モータ(10A,10R)に流れる電流から前記ロータ(14)の回転数を得、前記回転数の単位時間当たりの変分が予め定められた閾値以下になるまで前記誘導加熱の開始を留保する。
【0029】
第20の発明は、第1ないし第19の発明のいずれかであって、前記ロータ(14)はロータコア(140A,140R)を有し、前記ステータ(16A,16R)はステータコア(160A,160R)を有し、前記ステータコアの材質は、前記ロータコアの材質よりも鉄損が小さい。
【0030】
第21の発明は、第20の発明であって、前記ロータ(14)は前記回転軸(Q)を法線とする面内に延在する複数の第1電磁鋼板を有し、前記ステータ(16A,16R)は前記面内に延在する複数の第2電磁鋼板を有し、一の前記第1電磁鋼板の前記回転軸方向の厚みは、一の前記第2電磁鋼板の前記回転軸方向の厚みよりも大きい。
【0031】
第22の発明は、第20又は第21の発明であって、前記ロータコア(140A,140R)の材質は、珪素鋼板又は圧粉鉄心のいずれかが採用され、前記ステータコア(160A,160R)の材質は、アモルファス、フェライトコア又はパーマロイのいずれかが採用される。
【0032】
第23の発明は、第1ないし第22の発明のいずれかであって、前記ステータ(16A,16R)は前記圧縮機(30;30A,30R)の容器(32)内に固定され、前記容器には、前記ステータが固定される位置と対応する位置に放熱フィン(34)が設けられる。
【0033】
第24の発明は、第1ないし第22の発明のいずれかであって、前記モータ(10A)はアキシャルギャップ型モータであり、前記圧縮機(30A)は前記冷媒を圧縮する圧縮機構部(36)と、前記圧縮機構部及び前記モータを格納して高圧ドームを呈する容器(32)を有し、前記ステータ(16A)は前記容器(32)の前記圧縮機構部(36)側に設けられ、前記圧縮機は前記容器の前記高圧ドーム内の前記圧縮機構部の周囲に、又は前記電機子巻線(16CA)を有するステータと接触する低圧冷媒ジャケット(38)を更に有する。
【0034】
第25の発明は、第1ないし第22の発明のいずれかであって、前記モータ(10A)はアキシャルギャップ型モータであり、前記電機子巻線(16CA)は空芯コイル(16CS)が採用される。
【0035】
第26の発明は、第25の発明であって、前記ロータ(14A)は、前記ステータ(16A)を前記回転軸(Q)方向において挟んで互いにと対向する。
【0036】
第27の発明は、第26の発明であって、前記空芯コイル(16CS)は自己融着性の平角線で成形される。
【0037】
第28の発明は、第26の発明であって、前記空芯コイル(16CS)は耐熱樹脂及び繊維フィラで成型される。
【0038】
第29の発明は、第20ないし第22の発明のいずれかであって、前記電機子巻線(16CA,16CR)と前記ステータコア(160A,160R)との間には絶縁体(20)である高調波吸収材料(20A)が配設される。
【0039】
第30の発明は、第1ないし第29の発明のいずれかであって、前記希土類磁石(14MA,14MR)は、前記ロータ(14)が有するロータコア(140A,140R)の表面に配設される。
【0040】
第31の発明は、第20ないし第23及び第29の発明のいずれかであって、前記モータ(10R)はラジアルギャップ型モータであり、前記電機子巻線(16CR)は分布巻又は波巻の巻線方式で巻回され、前記電機子巻線のコイルエンド(16CE)の少なくとも一方は前記ロータコア(140R)の前記回転軸(Q)方向の端部に向けて突出し、前記希土類磁石(14MR)の端部は前記ロータコアを介さずに前記コイルエンドと対向する。
【0041】
第32の発明は、第31の発明であって、前記電機子巻線(16CR)は自己融着性材料が採用される。
【0042】
第33の発明は、第32の発明であって、前記電機子巻線(16CA,16CR)は平角線が採用される。
【0043】
第34の発明は、第31ないし第33の発明のいずれかを製造する方法であって、前記ロータコア(140R)を配設した後に、前記電機子巻線(16CR)の前記回転軸(Q)方向の端部たるコイルエンドを整形する工程を備える、空気調和機の製造方法である。
【0044】
第35の発明は、第32又は第33の発明を製造する方法であって、前記ロータコア(140R)を配設した後に、前記電機子巻線(16CR)のコイルエンドを整形する工程と、前記コイルエンドの整形後に前記自己融着性材料を融着する、空気調和機の製造方法である。
【0045】
第36の発明は、第31ないし第33の発明のいずれかを製造する方法であって、前記ステータコア(160R)はティース(16T)とヨーク(16Y)とからなり、前記ロータ(14)を配置した状態で前記ティースを前記ロータの周囲に配置する第1工程と、前記第1工程で配置された前記ティースに前記電機子巻線(16CR)を巻回する第2工程と、前記第2工程後に前記ヨークを前記ティースと連接する第3工程とを備える、空気調和機の製造方法である。
【0046】
第37の発明は、第31ないし第33の発明のいずれかであって、前記コイルエンド(16CE)は、前記回転軸(Q)方向の一方側の端部のみが前記回転軸に向けて突出する。
【0047】
第38の発明は、第37の発明であって、前記突出する前記コイルエンド(16CE)は、前記圧縮機(30;30A,30R)の圧縮機構部(36)側に設けられる。
【0048】
第39の発明は、第31ないし第33の発明のいずれかであって、前記モータ(10R)は、インナーロータ型モータであり、前記コイルエンド(16CE)は、前記回転軸(Q)方向からの俯瞰視で線分を呈する。
【0049】
第40の発明は、第31の発明であって、前記希土類磁石(14MA,14MR)は、前記ロータコア(140A,140R)から前記回転軸(Q)方向へと向かって突出する。
【0050】
第41の発明は、第40の発明であって、前記ステータコア(160A,160R)の前記回転軸(Q)方向の端部で、前記コイルエンド(16CE)と前記ステータコアとの間には絶縁体(20)が配設され、前記絶縁体は、前記ステータ(16A,16R)よりも前記ロータ側に突出する。
【0051】
第42の発明は、第40の発明であって、前記ロータコア(140R)は、前記回転軸(Q)方向の端部で前記回転軸方向を法線とする面内に延在する一対の端板(142T,142B)と、前記端板で挟まれて前記回転軸方向に積層された複数の第1電磁鋼板とを含み、前記端板は前記回転軸方向を法線とし、前記第1電磁鋼板が位置する面での前記希土類磁石(14MR)の断面の最大面積よりも小さい孔(144)を含み、前記希土類磁石は前記回転軸方向の端部において前記孔と嵌合する段差を呈する。
【0052】
第43の発明は、第31の発明であって、前記ロータコア(140R)は、前記回転軸(Q)方向の端部で前記回転軸方向を法線とする面内に延在する端板(142T,142B)と、前記端板で挟まれて前記回転軸方向に積層された複数の第1電磁鋼板とを含み、前記端板は、前記端板の熱容量が前記希土類磁石の熱容量よりも小さい材質が採用され、前記コイルエンド(16CE)は前記端板を介して前記希土類磁石(14MR)と対向する。
【0053】
第44の発明は、第43の発明であって、前記ロータコア(140R)と前記希土類磁石(14MR)との間には、前記ロータコアよりも熱容量の大きい第1断熱体が設けられ、前記ロータコアと前記端板(142T,142B)との間には、前記ロータコアよりも熱容量の大きい第2断熱体が設けられる。
【0054】
第45の発明は、第1ないし第29の発明のいずれかであって、前記モータ(10B)はアキシャルギャップ型モータであり、前記電機子巻線(16CB)は分布巻の巻線方式で巻回され、前記電機子巻線の外周側の部位は、前記希土類磁石(14MA)の外縁端部へと向かって湾曲する。
【0055】
第46の発明は、第45の発明であって、前記電機子巻線(16CB)は自己融着性材料が採用される。
【0056】
第47の発明は、第46の発明であって、前記電機子巻線(16CB)は平角線が採用される。
【0057】
第48の発明は、第46又は第47の発明を製造する方法であって、前記電機子巻線(16CB)を成形する第1工程と、前記第1工程後に前記自己融着性材料を融着する第2工程とを備える、空気調和機の製造方法である。
【0058】
第49の発明は、第45の発明であって、前記ステータ(16A)はその外周側で前記圧縮機(30A)の容器(32)内に保持され、前記電機子巻線(16CA)のコイルエンド(16CE)の外周側の部位は、前記ステータと前記回転軸(Q)方向で対向する前記ロータ(14)へと向かって屈曲する。
【0059】
第50の発明は、第49の発明であって、前記コイルエンド(16CE)の内周側の部位は、前記回転軸(Q)方向へと向かって屈曲する。
【0060】
第51の発明は、第49の発明であって、前記コイルエンド(16CE)の内周側の部位は、前記回転軸(Q)方向を法線とする面内に延在する。
【0061】
第52の発明は、第45の発明であって、前記電機子巻線(16C)と対向する側において、前記回転軸(Q)方向を法線とする面内で前記回転軸を中心とする径方向における前記希土類磁石(14MA,14MR)の外周側端部が露出する。
【0062】
第53の発明は、第45の発明であって、前記希土類磁石(14MA,14MR)は非磁性体ホルダで保持される。
【0063】
第54の発明は、第1ないし第29の発明のいずれかであって、前記モータ(10R)はラジアルギャップ型モータであり、一の前記希土類磁石(14MR)は複数の磁石体(14Mp)を有して、前記ロータ(14)が有するロータコア(140R)に埋設され、前記複数の磁石体のうち、一の前記磁石体の保磁力は、前記一の磁石体よりも前記回転軸(Q)に近い側に配設される他の前記磁石体の保磁力よりも高い。
【0064】
第55の発明は、第54の発明であって、一の前記希土類磁石(14MA,14MR)は、前記回転軸(Q)に平行な略同一面上に配設される前記複数の磁石体(14Mp)を有する。
【0065】
第56の発明は、第54の発明であって、一の前記希土類磁石(14MA,14MR)は、前記回転軸(Q)方向を法線とする断面視で前記複数の磁石体(14Mp)が前記ステータへ向けて開口する凹形状を呈して配設される。
【0066】
第57の発明は、第54の発明であって、前記複数の磁石体(14Mp)のうち、一の前記磁石体と他の前記磁石体との間には、前記磁石体よりも熱容量の大きい第3断熱体(22;22S,22C)が設けられる。
【0067】
第58の発明は、第57の発明であって、前記第3断熱体(22)は樹脂スペーサ(22S)が採用される。
【0068】
第59の発明は、第57の発明であって、前記第3断熱体(22)は前記磁石体(14Mp)を覆う樹脂コーティング(22C)が採用される。
【0069】
第60の発明は、第57の発明であって、前記第3断熱体(14I)は前記複数の磁石体(14Mp)同士の間に設けられる空隙(14Ig)が採用される。
【0070】
第61の発明は、第1ないし第29の発明のいずれかであって、前記モータ(10R)はラジアルギャップ型モータであり、一の前記希土類磁石(14MA,14MR)は、前記ロータ(14)が有するロータコア(140A,140R)に埋設された複数の磁石体(14Mp)を有し、前記一の前記希土類磁石において前記複数の磁石体は、それぞれの前記ステータ側の端点同士を結ぶ距離が、それぞれの前記ステータと反対側の端点同士を結ぶ距離よりも長い。
【0071】
第62の発明は、第1ないし第29の発明のいずれかであって、前記希土類磁石(14MA,14MR)は、前記ロータ(14)が有するロータコア(140A,140R)に埋設され、前記希土類磁石と前記ロータコアの側面との間に高熱伝導性樹脂(24)を配設する。
【0072】
第63の発明は、第1ないし第29の発明のいずれかであって、前記希土類磁石(14MA,14MR)は、前記ロータ(14)が有するロータコア(140A,140R)に埋設され、前記希土類磁石と前記ロータコアの側面との間にダイカストによってアルミが配設される。
【0073】
第64の発明は、第1ないし第29の発明のいずれかであって、前記圧縮機(30;30A,30R)に流れる前記冷媒の動線は、前記希土類磁石に接する冷媒通路(30R)と略平行を呈する。
【0074】
第65の発明は、第64の発明であって、前記モータ(10R)はラジアルギャップ型モータであり、前記ロータ(14)は前記希土類磁石(14MR)を埋設して前記回転軸(Q)に平行に延在するロータコア(140R)を更に有し、前記ロータコアには前記希土類磁石の前記ロータコアの側面側端部を露出させる空隙(142)が設けられ、前記冷媒は前記空隙を流れる。
【0075】
第66の発明は、第64の発明であって、前記モータ(10R)はラジアルギャップ型モータであり、前記ロータ(14R)は、前記希土類磁石(14MR)を露出して配置するロータコア(140R)を更に有し、前記冷媒は、前記ラジアルギャップ型モータのエアギャップ(10G)を流れる。
【0076】
第67の発明は、第65又は第66の発明であって、前記圧縮機(30;30A,30R)は、吐出ポート(42)を備えた圧縮機構部(36)を有し、前記回転軸(Q)方向を法線とする面内における前記回転軸から前記吐出ポートまでの距離は、前記面内における前記回転軸から前記冷媒の通路までの距離以下である。
【0077】
第68の発明は、第1ないし第29の発明のいずれかであって、前記シャフト(12)は前記回転軸(Q)方向に延在する貫通孔(12H)を呈し、前記貫通孔は前記ロータ(14)の内部を貫通する方向へと向かって分岐している。
【0078】
第69の発明は、回転軸(Q)方向に延在するシャフト(12)の周りで周方向に回転可能で、前記周方向に交互に極性が異なる磁極を呈するロータ(14C)と、前記磁極に界磁磁束を供給する希土類磁石(14N,14S;14N1,14S1)と、前記回転軸方向において前記ロータと対向して電機子巻線(16CA)を有する第1ステータ(16A)と、前記第1ステータとは反対側から前記ロータと対向する磁性板と、前記界磁磁束を調整する界磁調整巻線(16F)とを有する第2ステータ(402)とを備えたモータ(10C)を用いて冷媒を圧縮し、暖房運転及び冷房運転が可能な空気調和機(100)であって、前記暖房運転であって前記モータが予め定められた回転数以上の回転数で回転して前記冷媒を圧縮する暖房高負荷運転の場合には、前記界磁調整巻線に高調波電流を通電して前記希土類磁石を誘導加熱し、前記冷房運転であって前記モータが予め定められた回転数以上の回転数で回転して前記冷媒を圧縮する冷房高負荷運転の場合には、前記界磁調整巻線に電流を通電して前記界磁磁束を弱める。
【0079】
第70の発明は、第69の発明であって、前記希土類磁石(14N,14S)は前記周方向に交互に極性が異なる磁極を呈して前記ロータ(14C)に複数設けられる。
【0080】
第71の発明は、第69の発明であって、前記ロータ(14C)は、前記希土類磁石(14N)からN極の界磁磁束を受けて前記回転軸(Q)の周りに設けられた第1磁性環(14NR)と、前記希土類磁石(14S)からS極の界磁磁束を受けて前記回転軸の周りに設けられた第2磁性環(14SR)と、前記第1ステータ(16A)に対向して前記周方向に環状に複数配置され、前記第1磁性環によって相互に磁気的に連結され、前記第2磁性環と磁気的に分離される第1磁性板(14NB)と、前記第1ステータに対向して前記周方向に環状に複数配置され、前記第2磁性環によって相互に磁気的に連結され、前記第1磁性環と磁気的に分離される第2磁性板(14SB)とを有する。
【0081】
第72の発明は、第71の発明であって、前記希土類磁石は前記第1磁性環(14NR)に前記N極の界磁磁束を供給する第1磁極面(14NP)を呈する第1磁石(14N1)と、前記第2磁性環(14SR)に前記S極の界磁磁束を供給する第2磁極面(14SP)を呈する第2磁石(14S1)とを有して、前記ロータ(14C)に設けられる。
【0082】
第73の発明は、第71の発明であって、前記希土類磁石(14N1,14S1)は、前記第1磁性環に前記N極の界磁磁束を供給する第1磁極面と、前記第2磁性環に前記S極の界磁磁束を供給する第2磁極面とを有し、前記第2ステータ(402)に設けられる。
【0083】
第74の発明は、回転軸(Q)方向に延在するシャフト(12)の周りで周方向に回転可能な複数の希土類磁石(14MA,14MR)を有するロータ(14A,14R)と、前記ロータと対向する電機子巻線(16CA,16CR)を有するステータ(16A,16R)とを有するモータ(10A,10R)を搭載して冷媒を圧縮する圧縮機(30;30A,30R)を備え、暖房運転可能な空気調和機(100)であって、前記希土類磁石と近接する補助巻線(18)を更に備え、前記暖房運転であって前記モータが予め定められた回転数以上の回転数で前記圧縮機を運転する暖房高負荷運転の場合には、前記補助巻線に高調波電流を流して前記希土類磁石を誘導加熱する。
【0084】
第75の発明は、第74の発明であって、前記モータ(10A)はアキシャルギャップ型モータであって、前記補助巻線(18)は前記ロータ(14A)の外周側に配置される。
【0085】
第76の発明は、第74の発明であって、前記モータ(10R)はラジアルギャップ型モータであって、前記補助巻線(18)は前記ロータ(14A)の前記回転軸(Q)方向の端部において前記希土類磁石(14MA)に近接に近接して設けられる。
【0086】
第77の発明は、第74の発明であって、前記モータ(10A)はアキシャルギャップ型モータであって、前記ステータ(16A)は前記回転軸(Q)方向において前記ロータ(14A)を挟んで一対設けられ、一の前記ステータは、電機子巻線(16CA)が配設されたステータコア(160A)を有し、他の前記ステータは、前記ロータ側に前記補助巻線(18)が配設されたステータコアを有する。
【発明の効果】
【0087】
第1の発明によれば、希土類磁石の残留磁束密度を誘導加熱で弱めることで高速運転を可能にし、希土類磁石付近に冷媒を流すことにより冷媒温度が上昇する。もって高負荷時の暖房運転に資することができる。
【0088】
第2の発明によれば、冷房高負荷運転時には電流位相進めによる弱め磁束制御を行うので、冷媒温度を高めすぎることなくモータの回転数を早めることができる。
【0089】
第3の発明によれば、冷房高負荷運転時にはモータに印加する電圧を高めるので、冷媒温度を高めすぎることなくモータの回転数を早めることができる。
【0090】
第4の発明によれば、暖房運転時のデューティを小さくし、DCリンク部の電圧を高くすることで電流の高調波成分が増加し、誘導加熱に資する。
【0091】
第5及び第6の発明によれば、電機子巻線に流れる電流の高調波成分を高め、誘導加熱に資する。
【0092】
第7の発明によれば、電機子巻線に流れる電流の高調波成分を更に高める。
【0093】
第8の発明によれば、高調波電流の周波数を高め、誘導加熱に資する。
【0094】
第9の発明によれば、誘起電圧を計測することによって、当該誘起電圧とモータの回転数との関係から界磁磁束を見積もることができ、もって加熱減磁をしてもセンサレス運転できる。
【0095】
第10の発明によれば、誘起電圧の極大値近傍で無通電区間を設けるので、界磁磁束の見積りの誤差の発生を回避又は抑制できる。
【0096】
第11の発明によれば、界磁磁束の見積りの誤差の発生を、より効果的に回避又は抑制できる。
【0097】
第12の発明によれば、より確実に無通電区間を設けることができる。
【0098】
第13の発明によれば、誘起電圧の計測によって希土類磁石の温度を推定できる。よって、当該誘起電圧が予め定められた閾値以上に低下した場合に誘導加熱を停止することで、不可逆減磁を回避又は抑制できる。
【0099】
第14の発明によれば、冷媒の温度から希土類磁石の温度を推定できるので、不可逆減磁を回避又は抑制できる。
【0100】
トルク指令値に対応して電機子巻線に供給される電流は、界磁磁束が小さくなるほど増大するので、第15の発明によれば、不可逆減磁を回避又は抑制できる。
【0101】
第16の発明によれば、電機子巻線の温度から希土類磁石の温度を推定できるので、不可逆減磁を回避又は抑制できる。
【0102】
第17の発明によれば、過剰な誘導加熱を回避又は抑制し、もって不可逆減磁を回避又は抑制できる。
【0103】
起動時に希土類磁石が減磁していると界磁磁束が低下し、圧縮機の動作が不安定になる。また、起動直前に不可逆減磁が起こる直前であった場合も考えられる。第18の発明によれば、瞬停復帰後には誘導加熱を行わないことで、不可逆減磁を回避又は抑制でき。
【0104】
第19の発明によれば、圧縮機の動作を安定させることができる。
【0105】
第20の発明によれば、誘導加熱をしても電機子の過熱を回避又は抑制できる。
【0106】
第21の発明によれば、誘導加熱を行ってもステータの過熱を回避又は抑制できる。
【0107】
第22の発明によれば、ステータコアの鉄損が小さい。
【0108】
第23の発明によれば、ステータを放熱し、もってその過熱を回避又は抑制できる。
【0109】
第24の発明によれば、ステータが冷却され、もってその過熱を回避又は抑制できる。
【0110】
第25の発明によれば、ティースを有していないので、ロータを効率的に誘導加熱できる。
【0111】
第26の発明によれば、空芯コイルを採用しやすい。
【0112】
第27及び第28の発明によれば、空芯コイルの成形が容易であり、ロータを効率的に加熱できる。
【0113】
第29の発明によれば、電機子の過熱を回避又は抑制できる。
【0114】
第30の発明によれば、ロータコアに阻害されずに効率的に希土類磁石を加熱できる。
【0115】
第31の発明によれば、ロータに設けられた希土類磁石を効率的に加熱できる。
【0116】
第32及び第33の発明によれば、コイルエンドの整形が容易である。
【0117】
第34及び第35の発明によれば、第32の発明のモータの製造が容易である。
【0118】
第36及び第37の発明によれば、第31の発明のモータの製造が容易である。
【0119】
第38の発明によれば、圧縮機の製造が容易である。
【0120】
第39の発明によれば、コイルエンドの整形が容易である。
【0121】
第40の発明によれば、磁石を効率的に加熱できる。
【0122】
第41の発明によれば、絶縁の延面距離を伸長できる。
【0123】
第42の発明によれば、端板を用いて第1電磁鋼板の積層を維持しつつ、希土類磁石を効率的に誘導加熱できる。
【0124】
第43の発明によれば、ロータコアの端板として希土類磁石よりも熱容量が小さい材質を採用するので、端板を用いても希土類磁石を加熱できる。
【0125】
第44の発明によれば、ロータコアに熱が拡散するのを回避又は抑制し、希土類磁石を効率的に加熱できる。
【0126】
第45の発明によれば、効率的に希土類磁石を加熱できる。
【0127】
第46ないし第48の発明によれば、コイルエンドの整形が容易である。
【0128】
第49の発明によれば、電機子巻線がロータに配設された希土類磁石に近付くので、効率的に磁石を加熱できる。しかもステータを外周側で保持しているので、容器の材質として適切な熱容量を有する材質を採用すればステータの熱を放熱できる。
【0129】
第50の発明によれば、回転軸方向を法線とする面内で当該回転軸を中心とした径方向の磁束のアンバランスを解消できる。
【0130】
第51の発明によれば、第49の発明によるコイルエンドの折り曲げによる抵抗を低減できる。
【0131】
第52の発明によれば、効率的に希土類磁石を加熱できる。
【0132】
第53の発明によれば、加熱効率を損なうことなく、希土類磁石を遠心力に抗して保持できる。
【0133】
第54の発明によれば、希土類磁石の不可逆減磁を回避又は抑制できる。
【0134】
第55の発明によれば、希土類磁石の配置が容易である。
【0135】
第56の発明によれば、他の磁石体がステータから離れて位置するので、その不可逆減磁をより効果的に回避又は抑制できる。
【0136】
第57の発明によれば、一の磁石体から他の磁石体への熱伝導が阻止され、希土類磁石の不可逆減磁を回避または抑制できる。
【0137】
第58及び第59の発明によれば、熱伝導の阻止と磁石体同士の固定を兼用できる。
【0138】
第60の発明によれば、空隙を通る冷媒若しくは通風により、磁石体を冷却できる。
【0139】
第61の発明によれば、ステータに近い側において複数の磁石体の端点が存在するので、誘導加熱の効果が磁石に起きやすい。
【0140】
第62の発明によれば、希土類磁石とロータコアとの熱伝導性を高め、もって希土類磁石を効率的に加熱できる。
【0141】
第63の発明によれば、希土類磁石とロータコアとの熱伝導性を高め、もって希土類磁石を効率的に加熱できる。
【0142】
第64の発明によれば、希土類磁石の熱を有効に冷媒へと回収できる。
【0143】
第65の発明によれば、空隙が、希土類磁石の磁束がロータコア内で短絡的に流れるのを防ぐ磁気障壁として機能するとともに、冷媒が希土類磁石の熱を回収する通路としても機能する。
【0144】
第66の発明によれば、希土類磁石の熱を有効に回収できる。
【0145】
第67の発明によれば、冷媒を効率的に希土類磁石近傍に導くことができ、もって希土類磁石の熱の効率的な回収に資する。
【0146】
第68の発明によれば、希土類磁石の熱を有効に回収できる。また、油分離に資する。
【0147】
第69ないし第73の発明によれば、電機子巻線を有する第1ステータと、磁性板を有する第2ステータとの間に磁極を呈するロータが配設されるので、スラスト力を低減できる。また、界磁調整巻線を界磁調整に供するのみならず誘導加熱にも供することができる。
【0148】
第74ないし第76の発明によれば、補助巻線に高調波電流を流すことにより希土類磁石を加熱できる。
【0149】
第77の発明によれば、ロータと、一対のステータとの間に働く、回転軸方向の力が相殺される。しかも補助巻線からの一のステータまでの間に誘導加熱の対象となる希土類磁石を有したロータが介在するので、一のステータを不要に加熱することが回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0150】
本発明の基本的な思想は、界磁を発生させる永久磁石の加熱減磁を利用する。一般に永久磁石は熱を受けて残留磁束密度が低下する性質をもつ。磁石を加熱することにより残留磁束密度を低下させてモータの回転数を向上させる。
【0151】
圧縮機に搭載されるモータの出力限界速度の式は、以下のように表される。すなわち、
【0152】
【数1】

【0153】
ただし、
ωc:出力限界速度(電気角速度)、
Vom:=Vam−Ra・Iam、
Vam:電圧制限値…インバータの出力可能な最大電圧、
Ra:電機子巻線抵抗、
Iam:電流制限値…連続運転ではモータの定格電流に相当、
Ψa:={√(3/2)}Ψf=(√3)Ψe、
Ψf:1相当たりの永久磁石による電機子鎖交磁束の最大値、
Ψe:永久磁石による電機子鎖交磁束の実効値、
Ld:d軸インダクタンス
【0154】
ここでd軸とはモータの回転子の磁極方向を示し、これに直交する方向をq軸とする。
【0155】
つまり電流位相を必要以上に進めずに(トルクを最大とする程度に)制御したとしても、残留磁束密度が低下すればΨaが低下し、もって動作点磁束密度が低下して電気角速度ωcは大きくなる。つまり不安定となる電流位相の進相を伴わずに高速回転が可能となる。
【0156】
そして磁石の熱が冷媒に回収されるので暖房の熱に利用できる。かかる技術ではモータの運転を高速にし、かつ冷媒が熱を回収するので、必要な最大暖房能力に対して通常必要とされる圧縮機の最大能力に比べ、最大能力が小さなモータで圧縮機を駆動する。
【0157】
図1は空気調和機の暖房運転時の冷媒回路中の冷媒の流れを示す模式図であり、図2は空気調和機の冷房運転時の冷媒回路中の冷媒の流れを示す模式図である。なお、図1及び図2においては、冷媒回路内で相対的に圧力の高い箇所を実線で示し、相対的に圧力の低い箇所を一点鎖線で示している。
【0158】
空気調和機100は室外ユニット200と室内ユニット300とに大別できる。
【0159】
暖房運転時には、室外ユニット200が有する圧縮機30で圧縮された冷媒(ガス冷媒)が当該冷媒の経路を切替える四方弁202、及びガス閉鎖弁204を経由して室内ユニット300へと送られる。
【0160】
室内ユニット300は熱交換器302を有している。暖房運転時の熱交換器302は、圧縮機30において圧縮される冷媒の凝縮器として機能し、凝縮された冷媒(液冷媒)は室外ユニット200側に設けられる液閉鎖弁206及び電動膨張弁208を経由して熱交換器210へと送られる。
【0161】
暖房運転時の熱交換器210は、熱交換器302において凝縮された液冷媒の蒸発器として機能し、蒸発した冷媒は四方弁202を経由して圧縮機30へと戻る。暖房運転時は上記のサイクルを反復する。
【0162】
すなわち暖房運転時には、室内ユニット300の熱交換器302に高温高圧のガス冷媒が導かれて室内の空気と熱交換される。ガス冷媒は凝縮して室内の空気温度を上昇させ、凝縮した冷媒(液冷媒)となって電動膨張弁208で断熱膨張して低温低圧となり、その後、冷媒は気液状態となる。冷媒は室外ユニット200の熱交換器210に導かれて外気と熱交換した結果、ガス冷媒となって圧縮機30に吸入される。
【0163】
冷房運転時には、圧縮機30で圧縮されたガス冷媒が四方弁202を経由して熱交換器210へと送られる。冷房運転時の熱交換器210は、圧縮機30において圧縮されるガス冷媒の凝縮器として機能し、凝縮された液冷媒は電動膨張弁208及び液閉鎖弁206を経由して熱交換器302へと送られる。
【0164】
冷房運転時の熱交換器302は、熱交換器210において凝縮された液冷媒の蒸発器として機能し、蒸発したガス冷媒はガス閉鎖弁204及び四方弁202を経由して圧縮機30へと戻る。冷房運転時は上記のサイクルを反復する。
【0165】
すなわち冷房運転時には、室外ユニット200の熱交換器210に高温高圧のガス冷媒が導かれて外気と熱交換されて液化する。液冷媒は電動膨張弁208で断熱膨張して低温低圧となり、その後気液状態となる。冷媒は室内ユニット300の熱交換器302に導かれて室内の空気と熱交換され、室内の空気温度を低下させる。その結果、冷媒は気化して圧縮機30に吸入される。
【0166】
通常、室外ユニット200の熱交換器210の熱交換断面積は、室内ユニット300の熱交換器302の熱交換断面積よりも大きい。そのため、暖房運転時には、室外ユニット200を流れる冷媒と室内ユニット300を流れる冷媒との間で所定の温度差が必要となる。かかる温度差を担保するためには室外ユニット200を流れる冷媒と室内ユニット300を流れる冷媒との間で所定の圧力差が必要である。したがって、冷房運転時よりも暖房運転時の方が、圧縮機30に搭載されるモータの負荷が大きい。つまり、暖房運転時にモータが最大回転数を発揮する。
【0167】
圧縮機30にはモータが搭載されており、当該モータはアキシャルギャップ型とラジアルギャップ型とに類別される。
【0168】
以下では、まず本発明の第1実施形態として、圧縮機30がアキシャルギャップ型のモータを搭載した場合を例に図面を参照しながら説明し、次に本発明の第2実施形態として、圧縮機30がラジアルギャップ型のモータを搭載した場合を例に図面を参照しながら説明する。さらに、第1及び第2実施形態の変形例を示す。なお、図1を初めとする以下の図には、本発明に関係する要素のみを示す。
【0169】
〈第1実施形態〉
〈アキシャルギャップ型モータ10Aの構成〉
図3はアキシャルギャップ型モータ10Aの分解斜視図であり、回転軸Qに沿って分解して示している。アキシャルギャップ型モータ10Aは例えば、界磁子たるロータ14Aと電機子たるステータ16A及び磁性体400とを備えている。実際の構成では、ロータ14Aは回転軸Q方向で僅かな空隙を介してステータ16Aと磁性体400とに挟まれる。
【0170】
ロータ14Aは希土類磁石14MAと、希土類磁石14MAのステータ16A側を覆うロータコア140Aとを有している。希土類磁石14MAは回転軸Qの周囲で環状に配置され、ロータコア140Aは非磁性体からなる保持枠(図示省略)を介してシャフト12(図4参照)を保持する孔14HAが回転軸Q近傍に設けられている。希土類磁石14MAとロータコア140Aとは磁極ごとに独立であるため、樹脂等の非磁性体で一体化される必要がある。これは、上述の保持枠と兼用する。
【0171】
ステータ16Aは、ステータコア160Aとそれに保持されるティース16TA、及び電機子巻線16CAを有している。
【0172】
ステータコア160Aは回転軸Q方向を法線とする面内に延在しており、ロータ14Aに保持されるシャフト12を貫通させる孔16HAが設けられている。なお、孔16HAに軸受を設けてロータ14Aを保持しても良い。
【0173】
ティース16TAはステータコア160Aの回転軸Qを法線とする主面のうち、ロータ14Aと対向する側の主面において回転軸Qの周りで環状に配置され、電機子巻線16CAが巻回される芯として機能する。
【0174】
電機子巻線16CAは、ティース16TAに絶縁体(図示省略)を介して巻回される。なお、本願で特に断らない限り、電機子巻線16CAは、これを構成する導線の1本1本を指すのではなく、導線が一纏まりに巻回された態様を指すものとする。これは図面においても同様である。また、巻始め及び巻終わりの引出線、及びそれらの結線も図面においては省略した。
【0175】
磁性体400は巻線を持たないステータと把握することができる。例えば、シャフト12を貫通させる孔400Hが回転軸Q近傍に設けられている。ロータ14Aと磁性体400との間には磁気的な吸引力が働くので、ロータ14Aとステータ16Aとの間に働くスラスト力をキャンセルすることができる。スラスト力は、シャフト12を支持する軸受(図示省略)に働くので、スラスト力をキャンセルすることで軸受損失を低減できる。なお、磁性体400を、ステータ16Aと同じ構成に置き換えて、両側のステータを共に電機子としても良い。
【0176】
〈圧縮機30Aの構成〉
図4は圧縮機30Aの断面図である。圧縮機30Aは、アキシャルギャップ型モータ10Aと容器32と圧縮機構部36とを備えている。ただし、アキシャルギャップ型モータ10Aについては側面を示している。圧縮機構部36は容器32内に配置され、容器32内かつ圧縮機構部36の上側にアキシャルギャップ型モータ10Aが配置される。そして圧縮機構部36は、シャフト12を介してアキシャルギャップ型モータ10Aによって駆動される。
【0177】
容器32の下側側方には吸入管41が接続される一方、容器32の上側には吐出管42が接続されている。吸入管41から供給される冷媒は、圧縮機構部36に導かれる。吸入管41及び吐出管42も、図4においてはその側面が示されている。
【0178】
容器32内側にステータコア160A及び磁性体400の外周側が固定されて、アキシャルギャップ型モータ10Aが固定される。シャフト12の下端側が圧縮機構部36に連結されている。
【0179】
圧縮機構部36は、シリンダ状の本体部70と、上端板71T及び下端板71Bとを備える。上端板71T及び下端板71Bは、それぞれ本体部70の開口側の上側と下側に取り付けられる。シャフト12は、上端板71T及び下端板71Bを貫通して、本体部70の内部に挿入されている。
【0180】
シャフト12は、圧縮機構部36の上端板71Tに設けられた軸受72Tと、圧縮機構部36の下端板71Bに設けられた軸受72Bにより回転自在に支持されている。本体部70内のシャフト12にはクランクピン73が設けられる。クランクピン73にはピストン74が嵌合して駆動される。ピストン74及びこれに対応するシリンダとの間に形成された圧縮室75において、冷媒が圧縮される。ピストンは偏芯した状態で回転子、又は公転運動を行い、圧縮室75の容積を変化させる。
【0181】
アキシャルギャップ型モータ10Aが回転することにより、圧縮機構部36が駆動されると、吸入管41から圧縮機構部36に冷媒が供給され、圧縮機構部36(とりわけ圧縮室75)で冷媒を圧縮する。圧縮機構部36で圧縮された高圧冷媒は、圧縮機構部36の吐出ポート43から容器32内に吐出される。さらに高圧冷媒は、シャフト12の周りに設けられた溝(図示省略)、ロータ14A及びステータ16Aの内部を回転軸Q方向に貫通する孔(図示省略)、ステータ16A及びロータ14Aの外周部と容器32の内面との間の空間等を通って、アキシャルギャップ型モータ10Aの上部空間に運ばれる。その後、吐出管42を介して容器32の外部に吐出される。
【0182】
〈空気調和機の運転方法〉
図5は電源PSとモータ10Aとの接続を示す図である。空気調和機100が備える圧縮機30に搭載されるモータ10A、とりわけ電機子巻線16CAには電源PSからインバータ50を介して電流が供給される。具体的にはまず、電源PSから供給される交流をコンバータ52が直流に変換し、コンバータ52から得られる直流をPWMインバータ54が交流に変換して電機子巻線16CAに供給する。コンバータ52とPWMインバータ54とはDCリンク部56で接続されている。電源PSは三相であっても良いし、単相であっても良い。
【0183】
上述のようなモータ10Aにおいて、暖房運転時の最高回転数、又は予め定められた回転数以上の負荷領域(以下、「暖房高負荷運転」と称する)で希土類磁石14MAを加熱減磁し、相対的にモータ10Aに印加する電圧を上昇させる。具体的には、希土類磁石14MAを加熱すると希土類磁石14MAの残留磁束密度が低下し、動作点磁束密度も低下する。すると、アキシャルギャップ型モータ10Aの誘起電圧がDCリンク部56の電圧に比べて十分に小さくなるため、より高速での運転が可能となる。換言すれば、希土類磁石14MAの残留磁束密度を誘導加熱で弱めることで高速運転を可能にする。
【0184】
磁石を加熱する方法としては誘導加熱(IH;Induction Heating)が知られている。誘導加熱においては、希土類の焼結磁石(特にネオジウム系焼結磁石)の導電率が高く、内部に渦電流が発生しやすい。一方、ロータコア140Aやステータコア160Aは鉄損を低減するために、積層鋼板や圧粉鉄芯で形成されることが多く、渦電流は発生しにくい。したがって、希土類磁石14MAはロータコア140Aやステータコア160A以上に発熱しやすい。
【0185】
希土類焼結磁石は、高温で不可逆減磁が発生するが、モータは通常、起動不良や油切れ等によるロック時の不可逆減磁を想定して設計されている。したがって安定して運転しているときは、減磁に対して比較的余裕がある。逆に、弱め界磁制御のために不安定な進角をするときには、脱調しやすくなるために不可逆減磁に敏感になる。
【0186】
そこで、暖房高負荷運転時において、誘導加熱により希土類磁石14MAを加熱する。さらに、希土類磁石14MAよりも低温である冷媒を希土類磁石14MA近傍に流すことにより冷媒温度を上昇させるので暖房運転に資する。例えば、従来と同一の暖房能力を実現しようとすると、その熱の分だけ圧縮機30の能力を小さくできる。したがって、長時間運転する低負荷運転に対して、暖房高負荷運転時のアキシャルギャップ型モータ10Aの負荷がさほど大きくならないので、低負荷運転時のモータ効率、ひいては圧縮機30の圧縮効率が向上する。
【0187】
冷房運転時には、電流位相進めによって界磁を弱めて冷房運転時のモータ10Aの最高回転数、又は予め定められた回転数以上の負荷領域(以下、「冷房高負荷運転」と称する)での運転を行う。又は冷房高負荷運転時には、DCリンク部56の電圧を昇圧させても良い。
【0188】
〈加熱減磁の手法〉
〈電流波形〉
希土類磁石14MAを加熱減磁するために電機子巻線16CAに供給される電流は以下のようにすることが望ましい。
【0189】
暖房高負荷運転時の加熱減磁は、例えば、電機子巻線16CAに高調波電流を重畳することによって実現できる。具体例を挙げれば、PWMインバータのキャリア周波数より十分高い周波数の電流を重畳すれば良い。又は、暖房高負荷運転時のPWMインバータ54の出力信号のデューティを、冷房高負荷運転時のPWMインバータ54の出力信号のデューティよりも小さくするため、暖房高負荷運転時のDCリンク部56の電圧を、冷房高負荷運転時のDCリンク部56の電圧よりも高くすれば良い。すなわち、暖房運転時のデューティを小さくするため、DCリンク部56の電圧を高くすることで、電機子巻線16CAに流れる電流の高調波成分が増加し、誘導加熱に資する。
【0190】
図6はPWMインバータ54の出力信号のデューティ(同図(a))と電機子巻線16CAに流れる電流(同図(b))との関係を示す図である。PWMインバータ54の出力信号のデューティが大きい場合(図中鎖線で示す)と、小さい場合(図中実線で示す)とを比較すると、後者の場合の方が、電機子巻線16CAに流れる電流の電流波形に急峻なピークが現れる。これは当該電流の高調波成分が増加したことを示している。但し、DCリンク部56の電圧が低いままでは当該ピークも小さいため、暖房高負荷時にPWMインバータ54の出力信号のデューティを小さくする場合には、DCリンク部56の電圧を高めることが望ましい。
【0191】
なお、図3では、希土類磁石14MAのステータ16A側にロータコア140Aがあるが、希土類磁石14MAをステータ16A側に露出させても良く、その場合にはより効率的に希土類磁石14MAを誘導加熱できる。
【0192】
図7は正弦波電流SC1と過変調電流MC1とを示す電流波形図である。暖房高負荷運転時には、PWMインバータ54において過変調して出力される過変調電流MC1を電機子巻線16CAに供給する。暖房高負荷運転時以外のとき(以下、「定常運転時」と称する)には正弦波電流SC1を電機子巻線16CAに供給する。過変調電流MC1は矩形波に近づいて大きく歪むので、電機子巻線16CAに流れる電流に高調波電流が重畳されている、と把握することができる。なお、アキシャルギャップ型モータ10Aの電源PSは例えばU相、V相、W相の三相交流電源が採用されるため、電流波形図は各相で異なるが、図7では一の相についてのみ示している。
【0193】
図8は正弦波電流SC2と矩形波電流BC2とを示す電流波形図である。図8においても図7と同様に一の相についてのみの電流波形図を示している。暖房高負荷運転時には、矩形波電流BC2を電機子巻線16CAに供給する。定常運転時には正弦波電流SC2を電機子巻線16CAに供給する。矩形波電流BC2は過変調電流MC1よりも高調波成分が大きくなるので、誘導加熱にはより望ましい。なお、図7又は図8のように定常運転時に正弦波電流を供給する場合には、電流波形と磁束波形とが一致する電流制御が望ましい。
【0194】
図9は矩形波電流BC3と高調波電流HC3とを示す電流波形図である。暖房高負荷運転時には矩形波電流BC3の無通電区間に高調波電流HC3を流すことにより、希土類磁石14MAを更に誘導加熱できる。なお、高調波電流HC3を流す際には、インバータ50のキャリア周波数を高めることにより誘導加熱を促進できる。この波形では矩形波が存在しているが、本実施形態においては、高調波電流HC3をキャリア周波数より十分大きくするのが望ましく、振幅又はデューティ比は小さくても良い。
【0195】
又は、暖房高負荷運転時には、定常運転時よりもインバータ50のキャリア周波数を高くするようにしても良い。暖房高負荷運転時には通常、アキシャルギャップ型モータ10Aの回転数が高くなるので、キャリア周波数を高くすることで、正弦波電流波形が滑らかになるという利点がある。
【0196】
電機子巻線16CAに流れる電流によって誘導加熱される領域は、電機子巻線16CAから表皮深さδの範囲であり、一般に次式で表される。
【0197】
【数2】

【0198】
ここで、
ω:=電機子巻線16CAに流れる電流の角周波数、
μ:=電機子巻線16CAを構成する導線の絶対透磁率、
σ:=電機子巻線16CAを構成する導線の導電率
【0199】
仮に、周波数ω/2πを5kHzとすると、表皮深さδは数ミリメートル程度となる。すなわち、キャリア周波数をこの程度の周波数に設定すれば、電機子巻線16CAから希土類磁石14MAまでの距離が数ミリメートルあっても誘導加熱の効果を得ることができる。
【0200】
〈φaの観測・補正〉
誘導加熱により界磁磁束φaが減ずれば、ロータコア140A内部の磁束密度が低下する。また過度の誘導加熱は後述する不可逆減磁を招来する。一般にq軸インダクタンスは界磁磁束φaが大きいほど低下する。これは、界磁磁束φaが増大することによってロータコア140Aが磁気飽和するからである。したがって、加熱減磁が進むに従ってq軸インダクタンスが大きくなる。そこで、誘導加熱を行う場合には、界磁磁束φaの低下を計測し、q軸インダクタンスLqを補正することが望ましい。これによりロータ14Aの位置を検出する位置センサを用いないセンサレス運転を、安定して行うことが可能となる。
【0201】
一般にモータの誘起電圧V0には、前出のモータ逆誘起電圧φ、回転角速度ω、d軸電流id、q軸電流iq、d軸インダクタンスLd及びq軸インダクタンスLqについて次式が成立することが知られている。
【0202】
【数3】

【0203】
今、d軸電流id、q軸電流iqのいずれも零とすれば、式(3)からd軸インダクタンスLd及びq軸インダクタンスLqの影響を除去できる。また、誘起電圧V0と、回転角速度ωは容易に計測可能であるから、これらから計算して界磁磁束φaを得ることができる。換言すれば、界磁磁束φaを観測するためには、その観測を、電機子電流が流れない無通電区間に行うことが望ましい。
【0204】
図7及び図8のように正弦波電流SC1,SC2を供給する場合には、誘起電圧V0が最大値を採るときに通電を強制的に休止して無通電区間を設け、当該無通電区間において界磁磁束φaを得るようにしても良い。誘起電圧V0が最大値を採るときに無通電区間を設けることにより、得られる界磁磁束φaの誤差を小さくすることができる。
【0205】
無通電区間を設ける場合、アキシャルギャップ型モータ10Aに接続されるU,V,Wの各相のうちいずれか一の相の誘起電圧V0が最大値を採るときに無通電区間を設ける。又は、各相全ての誘起電圧V0を計測すれば、120°ごとに最大値を採るので、界磁磁束φaを得る機会が増加し、その測定精度が向上する。
【0206】
〈不可逆減磁防止〉
希土類磁石14MAは過度に誘導加熱を行うと、逆磁界を取り去っても磁束量が回復しない不可逆減磁という現象が生じる。これは特にネオジウム系の希土類磁石で顕著な現象である。不可逆減磁が生じると、暖房・冷房を問わず定常運転及び高負荷運転が不安定となり、また、効率も低下する。そこで、不可逆減磁を防止する策を講じることが望ましい。例えば、圧縮機構部36から出た冷媒温度よりも希土類磁石14MAの温度が高ければ、吐出管42から出る冷媒が希土類磁石14MAの熱を回収して冷媒温度を上げることができる。換言すれば、冷媒によって希土類磁石14MAの熱を回収し、過度に加熱されることを回避又は抑制できる。
【0207】
また、不可逆減磁を防止する策としては、希土類磁石14MAの温度を推定又は計測し、予め定められた温度閾値を超える場合に誘導加熱を停止する方法が考えられる。又は、不可逆減磁が起こるときの界磁磁束を実験的に求めて閾値として記憶し、運転中に得られる界磁磁束φaと当該閾値とを比較して誘導加熱を停止する方法が考えられる。
【0208】
〈温度推定による不可逆減磁の回避〉
希土類磁石14MAの温度で判断する場合には例えば、圧縮機30Aの吐出管42の近傍に温度センサ62を設けて冷媒温度を検知する。冷媒は希土類磁石14MAと熱交換しているので、当該冷媒温度を検知することにより、希土類磁石14MAの温度を推定することができる。
【0209】
〈トルク指令値に基づく不可逆減磁の回避〉
運転中に得られる界磁磁束φaと予め定められた閾値とを比較する場合には例えば、インバータ50内部のトルク指令値に対する電流の増分により希土類磁石14MAの温度の増減を検知する。
【0210】
図10はモータ制御技術を例示するブロック図である。アキシャルギャップ型モータ10Aのモータ制御装置80は、速度制御部81、電流指令部82、電流制御部83及び位置検出部84を備えている。
【0211】
速度制御部81と電流指令部82とはあいまって、アキシャルギャップ型モータ10Aのロータ14Aの回転角速度ωとその指令値ω*とに基づいて、d軸電流指令値id*と、q軸電流指令値iq*とを生成する。
【0212】
具体的には、速度制御部81が回転角速度ωとその指令値ω*とに基づいて、トルク指令値τ*を生成する。この際、回転角速度ωの指令値ω*が上昇しても、電流指令部82、電流制御部83からそれぞれ回転角速度ωを低下させる垂下指令S2,S3のいずれか一方が与えられれば、トルク指令値τ*の上昇は行わない。
【0213】
電流指令部82はトルク指令値τ*と、電流位相指令値β*とに基づいてd軸電流指令値id*と、q軸電流指令値iq*とを生成する。ここで、電流位相指令値β*と、d軸電流指令値id*及びq軸電流指令値iq*との間には次式の関係が維持される。
【0214】
【数4】

【0215】
この際、アキシャルギャップ型モータ10Aに与えられる電圧の絶対値が、所定値Vtを超えると電流制御部83から過電圧を検出したことを示す過電圧検出信号S1が電流指令部82に与えられ、電流位相指令値β*を増大させて弱め界磁制御を行う。
【0216】
電流制御部83は、電流指令部82から得られたd軸電流指令値id*及びq軸電流指令値iq*並びにロータ14Aの位置角θに基づいてアキシャルギャップ型モータ10Aの回転を制御する電流ixを供給する。
【0217】
位置検出部84は、アキシャルギャップ型モータ10Aに供給された電流ixや電圧vxに基づいて位置角θを推定によって検出し、また回転角速度ωをも求める。
【0218】
電流ix及び電圧vxは、アキシャルギャップ型モータ10AがU,V,W相の各相についてのモータであれば、U相電流iu、V相電流iv、W相電流iwの総称及びU相電圧vu、V相電圧vv、W相電圧vwの総称に、それぞれ相当する。
【0219】
一般に、モータのトルクはモータに流れる電流と界磁磁束との積に比例するので、トルク指令値τ*が一定であるにもかかわらず、電流ixが増大した場合には、界磁磁束φaが減少していると判断できる。
【0220】
不可逆減磁を防止する策としては、上記の他に例えば以下のような手法が考えられる。
【0221】
希土類磁石14MAと密着したロータコア140Aは、電機子巻線16CAと僅かな空隙を介して対向しているので、電機子巻線16CAの温度を検出することにより、希土類磁石14MAの温度を推定できる。したがって、例えば誘導加熱開始前に電機子巻線16CAの温度を検出し、当該温度が予め定められた温度閾値を超えている場合には誘導加熱を行わないことで、不可逆減磁を防止できる。
【0222】
図11は電源PSとアキシャルギャップ型モータ10Aとの接続を示す図である。不可逆減磁防止のためには、アキシャルギャップ型モータ10Aに誘導加熱の開始時からの期間を計測するタイマ66を更に設け、誘導加熱開始から予め定められた期間が経過した後に誘導加熱を停止するようにしても良い。
【0223】
また、瞬停が発生した場合には、瞬停が発生する直前まで誘導加熱を行っていた場合を考慮して、復帰直後の誘導加熱は行わないことが望ましい。このような場合に引き続いて誘導加熱を行うと過度の加熱となってしまう可能性があるからである。
【0224】
アキシャルギャップ型モータ10Aがセンサレス運転をしている場合、起動時の希土類磁石14MAの界磁磁束φaは一定量以上あることが安定して運転する上で望ましい。したがって、ロータ14Aの回転数を計測し、計測された回転数の単位時間当たりの変分が予め定められた閾値以下になるまで誘導加熱を行わない。換言すれば、アキシャルギャップ型モータ10Aの運転が安定するまでは誘導加熱の開始を留保する。
【0225】
以上のような策を講じることにより、希土類磁石14MAを過度に加熱することを回避又は抑制し、もって不可逆減磁を回避又は抑制できる。
【0226】
〈ステータの過熱防止〉
電機子巻線16CAに流れる電流に高調波電流が重畳した場合、希土類磁石14MAだけでなく他の要素も誘導加熱される。ロータコア140Aが加熱される場合には希土類磁石14MAの加熱に加勢するので特段の支障はないが、ステータ16Aを加熱すると、電機子巻線16CAの温度も上昇して電気抵抗値が上がり、銅損が増大するという問題がある。したがって、希土類磁石14MAを加熱しつつもステータ16Aの加熱は抑制することが望ましい。
【0227】
そこで、以下、ステータ16Aの加熱を抑制する手法について説明する。なお、以下の手法は適宜に組合せて採用することができる。
【0228】
ステータ16Aの加熱を抑制する第1の手法としては、ステータコア160Aとロータコア140Aとを比較した場合、ステータコア160Aの方が鉄損が小さくなるようにする。例えば、ロータコア140Aの材質として珪素鋼板や圧粉鉄心等を採用し、ステータ16Aの材質としてアモルファス、フェライトコア又はパーマロイ等の鉄損の小さい材質を採用しても良い。
【0229】
また、ステータ16Aの加熱を抑制する第2の手法として、電機子巻線16CAとステータコア160Aとの間に絶縁体たる高調波吸収材料20Aを配設しても良い。
【0230】
図12は圧縮機30Aの断面図である。ステータ16Aの加熱を抑制する第3の手法は、モータがインナーロータ式のラジアルギャップ型モータかアキシャルギャップ型モータ10Aである場合に採用できる。アキシャルギャップ型モータ10Aを例にとって説明すれば、そのステータ16Aが、圧縮機30Aの容器32の内周側に嵌合して保持され、ステータ16Aを保持している部位に対応する容器32の外側に放熱フィン34等の放熱機構を更に設ける。放熱フィン34によってステータ16Aを効率的に冷却する。なお、放熱フィン34を電機子巻線16CAの位置に対応する位置まで延長して、あるいは電機子巻線16CAの位置に対応する位置に別途設けて、電機子巻線16CAをも効率的に冷却しても良い。なお、圧縮機30(図1,図2参照)がラジアルギャップ型モータを搭載する態様については後に詳述する。
【0231】
図13はアキシャルギャップ型モータを取り外した圧縮機30の断面図である。ステータ16Aの加熱を抑制する第4の手法は、圧縮機30に搭載されるモータがアキシャルギャップ型モータ10Aかアウターロータ式のラジアルギャップ型モータであって、そのステータ16Aを圧縮機構部36側に固定する。これにより圧縮機構部36を介してステータ16Aから容器32へと放熱される。この場合、高圧ドームを呈する容器32内に圧縮機構部36の上部に低圧冷媒ジャケット38を更に設けて低温で吸入した冷媒をステータ16Aに密着させることで、希土類磁石14MA付近に達する前の冷媒とステータ16Aとを熱交換させてステータを積極的に冷却しても良い。ステータ16Aの冷却により、電機子巻線16CAの温度上昇を抑え、銅損を抑制する。ここで、低圧冷媒ジャケット38は、圧縮機の吸入ガスをいったん溜めて、圧縮機構部36に冷媒を供給するためのものであり、高圧ドーム内において、低圧冷媒ジャケット38の部分だけ周りに比べて温度が低い。
【0232】
以上、アキシャルギャップ型モータ10Aを搭載する圧縮機30Aを例に、希土類磁石14MAを誘導加熱して減磁する手法について説明したが、当該手法を実現するにあたり、圧縮機30に搭載されるモータの種類によって、装置構成の態様は異なる。圧縮機30に搭載されるモータがラジアルギャップ型である場合については後に詳述する。
【0233】
図14はコアレスステータを採用したアキシャルギャップ型モータ10Bの分解斜視図であり、回転軸Q方向に沿って分解して示している。ステータ16Aの加熱を抑制する第5の手法として、上述したステータ16Aに代えて、ティース16TA及びヨークを持たない空芯コイル16CSを採用して、いわゆるギャップワインディングモータとしても良い。
【0234】
アキシャルギャップ型モータ10Bは、2つのロータ14Aが回転軸Q方向に沿って空芯コイル16CSを挟んで対向している。空芯コイル16CSは自己融着性を有する平角形の導線を採用することにより容易に成形できる。又は、導線で空芯コイル16CSを成形後に耐熱樹脂及び繊維フィラでモールドすることにより容易に得られる。
【0235】
電機子巻線16CSを用いて希土類磁石14MAを加熱するので、希土類磁石14MAと電機子巻線16CSとは可能な限り近接することが望ましい。この観点からは、希土類磁石14MAがロータコア140Aの表面に配設されることが通常である、アキシャルギャップ型モータを採用することが好適である。
【0236】
〈第2実施形態〉
〈モータ形態特有の適用〉
本実施形態では、圧縮機30がラジアルギャップ型モータ10Rを搭載する態様について説明する。
【0237】
図15はラジアルギャップ型モータ10Rの一部の分解斜視図であり、回転軸Qを中心として径方向に分解して示している。
【0238】
〈ラジアルギャップ型モータ10Rの構成〉
ラジアルギャップ型モータ10Rは例えば、界磁子たるロータ14Rと電機子たるステータ16Rとを備えている。実際のラジアルギャップ型モータではロータ14Rは回転軸Qを中心とする径方向で僅かな空隙を介してステータ16Rと対向している。
【0239】
ステータ16Rは、ヨーク16Yとそれに保持されるティース16TR、及びティース16TRを芯として巻回される電機子巻線16CRを有している。ここではティース16TRは2個のみ図示したが、実際のモータ10Rでは、ティース16TRは回転軸Qの周りで環状に配置され、ロータ14Rを囲む。電機子巻線16CRは、例えば複数のティース16TRに跨った分布巻方式又は波巻方式で巻回される。
【0240】
ロータ14Rは希土類磁石14MRと、希土類磁石14MRを保持する略円柱形のロータコア140Rとを有し、ロータコア140Rには、回転軸Q方向に沿ってシャフト12が貫挿されている。
【0241】
希土類磁石14MRは回転軸Q方向からの平面視で円弧状の柱状体に形成されており、ロータコア140Rに側面に配設されている。具体的には、希土類磁石14MRは、回転軸Qを中心とする内径がロータコア140Rの円の半径と等しく、外径が予め定められた長さに形成されている。そして、当該内径を呈する表面がロータコア140Rの側面に配設される。つまりここではモータ10RとしてSPM(Surface Permanent Magnet;表面磁石型)モータを例示している。
【0242】
図16はSPMモータのロータ14Raの平面図である。ロータ14Raは、ロータコア140Raと希土類磁石14MRと保持部材14HRとを有している。上記ロータ14Rに代えて、図16に示すようなロータ14Raを採用しても良い。
【0243】
保持部材14HRは、回転軸Qを中心とした略円筒形に形成され、その内側でロータコア140Ra及び希土類磁石14MRを保持する。具体的には、保持部材14HRの内側に希土類磁石14MRが内側表面に沿って均等に配設され、ロータコア140Raが保持部材14HR及び希土類磁石14MRで囲まれる領域を占めるように形成される。なお、保持部材14HRは磁気的にエアギャップとして機能するため、薄いことが望ましい。
【0244】
換言すれば、ロータコア140Raは略円柱体の側面に回転軸Q方向に沿って溝を呈し、当該溝に希土類磁石14MRを配設することによって平面視で略円形を呈する。そして、ロータコア140Ra及び希土類磁石14MRの外側に略円筒形の保持部材14HRを嵌合することによって、ロータ14Raの回転に起因した遠心力に抗して希土類磁石14MRを強固に保持する。
【0245】
この場合、希土類磁石14MRを磁気的に短絡させないよう、保持部材14HRは非磁性体で形成する。また希土類磁石14MRを誘導加熱することを妨げないように、保持部材14HRには渦電流損の小さな材料を採用する。あるいは希土類磁石14MRを間接的に加熱することに鑑みれば、保持部材14HRには熱伝導率の高い材料を採用する。例えば、希土類磁石14MRにはSUSが採用できる。
【0246】
図17はIPM(Interior Permanent Magnet;磁石埋込型)モータのロータ14Rbの平面図である。上記ロータ14R,14Raに代えて、図17に示すようなロータ14Rbを採用しても良い。ロータ14Rbは、ロータコア140Rbと希土類磁石14MRbとを有しており、ロータコア140Rbが回転軸Q方向に延在する孔を呈し、当該孔に希土類磁石14MRbが埋設される。このとき、希土類磁石14MRbはその磁極面を、径方向を法線とする面内に延在する。
【0247】
図18はラジアルギャップ型モータ10Rを搭載した圧縮機30Rの断面図であり、ロータ14Rbを採用した態様を示している。なお、上記第1実施形態と同様の機能を有する要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0248】
圧縮機30Rは容器32の内部にラジアルギャップ型モータ10Rと圧縮機構部36とを備えている。
【0249】
電機子巻線16CRが分布巻方式や波巻方式で巻回されている場合、電機子巻線16CRはコイルとして整形された後にティース16TRへと貫挿される。よって電機子巻線16CRのうち回転軸Q方向の端部でティース16TRの端面から突出する部分たるコイルエンド16CEは、集中巻方式で巻回される場合に比べて可撓性が高い。
【0250】
ラジアルギャップ型モータ10Rにおいては、希土類磁石14MRの表面のうち、回転軸Qを中心とする径方向外側の表面は、ロータ14Raのように保持部材14HRで覆われていたり、ロータ14Rbのようにロータコアの内部に希土類磁石14MRが埋設されていたりして、露出しないことがある。しかし、このような態様を採用した場合であっても、希土類磁石14MRの表面のうち回転軸Q方向の端部は、ロータコア表面に露出している。
【0251】
したがって、コイルエンド16CEが呈する可撓性を利用し、コイルエンド16CEを希土類磁石14MRへと向けて突出する形状に整形することにより、保持部材14HRやロータコア140Rを介さずに希土類磁石14MR,14MRbを誘導加熱することができる。例えば電機子巻線16CRは自己融着性を有する平角形の導線を採用し、コイルエンド16CEを上述のように成形した後に融着させる。
【0252】
なお、ステータの加熱を抑制するためには、ステータコア160Rを構成する電磁鋼板の1枚の厚みとロータコア140Rを構成する電磁鋼板の1枚の厚みとを比較した場合、ステータコア160Rの鉄損が小さくなるように、例えば、ステータコア160Rを構成する電磁鋼板の1枚の厚みがロータコア140Rを構成する電磁鋼板の1枚の厚みよりも薄くするのが良い。
【0253】
ラジアルギャップ型モータ10Rにおいては、希土類磁石14MR,14MRbの近傍に、冷媒の動線が延伸する方向と略平行な冷媒通路30Pが確保されていることが望ましい。つまり、冷媒通路30Pは冷媒の動線と略平行を呈していることが望ましい。
【0254】
図19はIPMロータ14Rmの平面図である。IPMロータ14Rmは、ロータコア140Rに希土類磁石14MRbが埋設され、回転軸Q方向からの平面視で希土類磁石14MRbの長手方向の両端に空隙142を設けており、希土類磁石14MRbの側面の一部が露出する。
【0255】
空隙142は、希土類磁石14MRbの磁束がロータコア140R内で短絡的に流れるのを防ぐ磁気障壁、いわゆるフラックスバリアとしても機能する。この空隙142を冷媒通路30Pとすることで、希土類磁石14MRbの熱を効率的に回収できる。
【0256】
図20はSPMロータ14Rnの平面図であり、SPMロータ14Rnの周囲に設けられるステータは省略し、当該ステータとSPMロータ14Rnとの間に形成されるエアギャップ10Gを仮想的に示している。
【0257】
SPMロータ14Rnは、略円柱形を呈するロータコア140Rの側面に希土類磁石14MRが配設されており、その周囲にエアギャップ10Gを呈している。このエアギャップ10Gを冷媒通路30Pとすることで、希土類磁石14MRの熱を効率的に回収できる。
【0258】
図21は圧縮機構部36側からモータ側を見たときの上端板71Tを示す図である。上記図19及び図20のいずれの態様においても、回転軸Qを中心とした圧縮機構部36の吐出ポート43までの距離は、同心円で冷媒通路30Pまでの距離よりも短いことが望ましい。これは、冷媒に遠心力が働くために、冷媒が径方向外側から径方向内側へと向かうのが困難であるからである。
【0259】
図22はラジアルギャップ型モータ10Rにおけるシャフト12及びロータ14Rの断面図であり、図23はアキシャルギャップ型モータ10Aにおけるシャフト12及びロータ14Aの断面図である。図22及び図23に示す如くシャフト12に貫通孔12Hを設け、貫通孔12Hを冷媒通路30Pとして連通させても良い。
【0260】
具体的には、ラジアルギャップ型モータ10Rの場合はシャフト12に貫通孔12Hを設け、適宜の位置で回転軸Q方向から径方向外側へ向かう方向へと分岐させてロータコア140R内を通って希土類磁石14MRへ導く。
【0261】
アキシャルギャップ型モータ10Aの場合はシャフト12に貫通孔12Hを設け、希土類磁石14MAを保持するロータコア140Aに対応する位置で回転軸Q方向から径方向外側へ向かう方向へと分岐させてロータコア140A内を通って希土類磁石14MAへと導く。
【0262】
いずれの態様においても、希土類磁石14MA,14MRへと導かれた冷媒はステータ16A,16R側へと抜けて吐出管42へと向かう。
【0263】
このように、冷媒通路30Pをシャフト12内に設け、遠心力で径方向外側へと導くので、冷媒油の分離にも資する。
【0264】
図24はコイルエンド16CEを回転軸Qへと向けて突出させた場合のモータ10R及びこれによって駆動される圧縮機構部36の断面図である。なお、各要素はそれぞれ簡略化している。コイルエンド16CEを回転軸Qへと向けて突出させる場合には、ティース16TRの回転軸Q方向の両端に形成されるコイルエンド16CEのうち、少なくとも圧縮機構部36側のコイルエンド16CEを回転軸Qへと向けて突出させることが望ましい。希土類磁石14MR(あるいは希土類磁石14MRb)を誘導加熱するために回転軸Qへと向けて突出させるコイルエンド16CEとして、圧縮機構部36側のコイルエンド16CEを選択することにより、ステータ16Rを圧縮機30Rの容器32内に配設した後でロータ14R,14Ra,14Rbを挿入するのが容易である。
【0265】
さらに、希土類磁石14MR,14MRbの回転軸Q方向の長さをロータコア140R,140Rbの同方向の長さよりも長くし、ロータコア140R,140Rbの端面から希土類磁石14MR,14MRbを突出させても良い。
【0266】
コイルエンド16CEが希土類磁石14MR,14MRbへと向けて突出するラジアルギャップ型モータ10Rを製造するには、例えば以下のような工程で製造する。
【0267】
まず、電機子巻線16CRをティース16TRに巻回し(具体的にはコイル状に予め形成された電機子巻線16CRをティース16TRの周囲に配置する)、ヨーク16Yをティース16TRに取付ける(図15参照)。回転軸Q方向のいずれか一方側のコイルエンド16CE、例えば、圧縮機30Rに配設するときに圧縮機構部36(図18参照)と対向する側のコイルエンド16CEを回転軸Qへと向かって突出させる(図24参照)。
【0268】
その後、回転軸Q方向の他方側からロータ14Rをステータ16Rで囲まれる空間に挿入し、シャフト12と圧縮機構部36とを嵌合する。しかる後に、回転軸Q方向の他方側のコイルエンド16CEを回転軸Qへと突出させることが望ましい。この位置でのコイルエンド16CEも誘導加熱に資するからである。
【0269】
図25はステータ16が2極分布巻の場合のラジアルギャップ型モータ10Rの平面図であり、回転軸Q方向からの俯瞰図を示している。電機子巻線16CRが収納されるスロット等の詳細部は省略している。電機子巻線16CRは1相のみを示し、その他の相は省略している。図25に示す如く、上述のようにして製造されるラジアルギャップ型モータ10Rにおいては、回転軸Q方向からの平面視でコイルエンド16CEは線分を呈することが望ましい。かかる形態によってコイルエンド16CEは、ロータ14R(14Rb)に備えられた希土類磁石(図示省略)に近づきやすく、誘導加熱の効果も高い。
【0270】
図26はラジアルギャップ型モータ10Rの断面図である。電機子巻線16CRには高電圧が印加されるために、電機子巻線16CRとロータコア140Rとの電気的な距離が短い程絶縁破壊が生じやすい。誘導加熱の目的でコイルエンド16CEを回転軸Qへと向けて突出すると、上記の距離が短くなるので、電機子巻線16CRとステータコア160Rとの間に配設される絶縁体20を配設し、当該絶縁体20は回転軸Qへと向けて突出するコイルエンド16CEに沿って回転軸Qへと向けて突出することが望ましい。これによりいわゆる絶縁の沿面距離を確保することができ、絶縁破壊を回避又は抑制できる。
【0271】
図27は図26のロータ14Rbの断面図である。ロータコア140Rbは回転軸Q方向を法線とする面内に延在する一対の端板142T,142Bと、当該端板142T,142Bで挟まれて回転軸Q方向に積層された複数の第1電磁鋼板146とを含んでいる。第1電磁鋼板146の積層体はその積層方向に貫通する孔146Hを呈しており、孔146Hには希土類磁石14MRbが貫挿される。
【0272】
希土類磁石14MRbの回転軸Q方向の長さは上記積層体の回転軸Q方向の長さよりも長く、希土類磁石14MRbのうち上記積層体から突出する突出部位14Mpは段差を呈する。突出部位14Mpの回転軸Q方向を法線とする面内での面積は、孔146Hの回転軸Q方向を法線とする面内での面積よりも小さい。
【0273】
端板142T,142Bはそれぞれ突出部位14Mpと整合する孔144を呈しており、孔144,146Hが形成する段差は突出部位14Mpが呈する段差と契合する。端板142T,142Bは回転軸Q方向の両方向から上記積層体及び希土類磁石14MRbを挟んでロータ14Rbを形成する。
【0274】
したがって、コイルエンド16CEは端板142T,142Bを介して希土類磁石14MRbと対向する。ここで、端板142T,142Bの材質は希土類磁石14MRbよりも熱容量の小さい材質を採用することにより、端板142T,142Bを用いても加熱効率が大きく低下することを回避する。
【0275】
希土類磁石14MRbは端板142T,142Bを介して誘導加熱されるので、希土類磁石14MRbと端板142T,142Bとは熱的に結合していることが望ましいが、希土類磁石14MRbからロータコア140Rbへと放熱されるのは抑制する必要がある。したがって、ロータコア140Rbと希土類磁石14MRbとの間、すなわち孔146Hの表面には、ロータコア140Rbよりも熱容量の大きい第1断熱体152を配設し、ロータコア140Rbと端板142T,142Bとの間、すなわち第1電磁鋼板146の積層体の端面には、ロータコア140Rbよりも熱容量の大きい第2断熱体154を配設する。
【0276】
具体的には、第1断熱体152及び第2断熱体154の配設は、第1電磁鋼板146の積層体に断熱フィルムを貼付したり、当該積層体をコーティングしたりして実現できる。
【0277】
したがって、端板142T,142Bによって第1電磁鋼板146の積層を維持しつつ、希土類磁石14MRbを効率的に誘導加熱できる。
【0278】
〈変形例〉
以上、本発明の好適な態様について説明したが、本発明は上述の態様に限定されるものではなく、以下に示す種々の態様を採用できる。
【0279】
〈アキシャルギャップ型モータ〉
図28ないし図30はアキシャルギャップ型モータ10Bの側面図である。本実施形態においては、ロータとステータとがそれぞれ1つずつ対向する形態である。ロータは、ロータコア140Aのステータ側に複数個の希土類磁石14MAが周方向に交互に磁極を呈するように配置される。ロータコア140Aは希土類磁石14MAのバックヨークとして働く。アキシャルギャップ型モータ10Bは、電機子巻線16CBが分布巻方式で巻回され、図28に示す如く電機子巻線16CBの外周側の部位16Coが希土類磁石14MAの外縁端部へと向かって湾曲する。換言すれば、ロータコア140Aに複数の電機子巻線16CB及び複数のティース16TAが、環状に配設されると、各電機子巻線16CBの部位16Coが全体として、環状に配設された複数の希土類磁石14MAを覆うように整形される。
【0280】
このとき、電機子巻線16CBの内周側の部位16Ciがロータ14Aとは反対側に湾曲することにより、U,V,Wの各相の径方向のアンバランスを緩和できる。
【0281】
又は、図29に示す如く電機子巻線16CBの内周側の部位16Ciが希土類磁石14MAの内縁端部へと向かって湾曲する。つまり、ロータコア140Aに配設された複数の電機子巻線16CBが全体として、複数の希土類磁石14MAの外縁端部及び内縁端部を覆うように整形されても良い。
【0282】
又は、図30に示す如く電機子巻線16CBの内周側の部位16Ciは湾曲させなくても良い。
【0283】
これらの態様は、相ごとのアンバランスの緩和、湾曲による抵抗の抑制、加熱効率等を考慮して適宜に選択できる。
【0284】
また、これらの態様は電機子巻線16CBを、自己融着性を有する平角形の導線で整形し、整形後に融着させることにより容易に実現できる。希土類磁石14MAをロータ14Aが保持する際に、例えばSUS等の非磁性体ホルダで保持すれば、加熱効率を損なうことなく、希土類磁石14MAを遠心力に抗して保持できる。
【0285】
〈IPMモータ〉
図31はIPMロータ14Riの分解斜視図である。IPMロータ14Riはラジアルギャップ型モータ10Rに搭載されるロータである。希土類磁石14MRは例えば、2つの第1磁石体14Mp1と第2磁石体14Mp2とを有し、2つの第1磁石体14Mp1が第2磁石体14Mp2を挟んで直線上に並んだ状態でロータコア140Rに埋設される。このとき、第2磁石体14Mp2は第1磁石体14Mp1よりも回転軸Qに近い。
【0286】
ここで、第1磁石体14Mp1の保磁力を第2磁石体14Mp2の保磁力よりも高くすることにより希土類磁石14MRの不可逆減磁を回避又は抑制できる。
【0287】
図32はIPMロータ14Rjの平面図である。IPMロータ14Rjは第1磁石体14Mp1及び第2磁石体14Mp2が、平面視でロータコア140Rの外周側(つまりステータ側)へ開口する凹形状を呈して埋設される。ここで、保磁力が相対的に高い2つの第1磁石体14Mp1のそれぞれが、第2磁石体14Mp2の延在方向の両端から近接して当該凹形状を呈する。このとき、第2磁石体14Mp2は、相対的にステータ(図示省略)から離れて位置するので、不可逆減磁を回避又は抑制できる。
【0288】
さらに、第1磁石体14Mp1と第2磁石体14Mp2との間に、いずれの磁石体よりも熱容量の大きい断熱体(22)を設けても良い。具体例を挙げれば、樹脂スペーサ22Sを第1磁石体14Mp1と第2磁石体14Mp2との間に挿入しても良いし、第1磁石体14Mp1及び第2磁石体14Mp2に樹脂コーティング22Cを施しても良い。
【0289】
又は、第1磁石体14Mp1と第2磁石体14Mp2との間に空隙を設けても良い。空隙を設けた場合には、当該空隙を通る冷媒若しくは通風により、第1磁石体14Mp1及び第2磁石体14Mp2を冷却できる。
【0290】
これによって、第1磁石体14Mp1から第2磁石体14Mp2への熱伝導が阻止されるので、希土類磁石14MRの不可逆減磁を回避又は抑制できる。特に第1磁石体14Mp1の保磁力を大きくし、ここで主に誘導加熱による弱め磁束を行うものとして、第2磁石体14Mp2は残留磁束密度の高い磁石を採用することができる。
【0291】
図33はIPMロータ14Rkの平面図である。IPMロータ14Rkに配設される希土類磁石14MRは2つの磁石体14Mpを有する。
【0292】
2つの磁石体14Mpのうち、一方の磁石体14Mpにおいてステータ(図示省略)に最も近い点と、他方の磁石体14Mpにおいてステータに最も近い点とを結んだ距離を距離d1とする。また、一方の磁石体14Mpにおいてステータから最も遠い点と、他方の磁石体14Mpにおいてステータから最も遠い点とを結んだ距離を距離d2とすると、距離d1の方が距離d2よりも長い。
【0293】
要するに、希土類磁石14MRは、2つの磁石体14Mpが略V字状を呈してロータコア140Rに埋設され、しかも当該V字を構成する2つの辺の開口側に相当する部位が最もステータに近付くように埋設されている。
【0294】
希土類磁石14MR、とりわけ磁石体14Mpを以上のように配設すれば、端点がステータに近接するので、主として当該端点を選択的に誘導加熱することができる。
【0295】
IPMモータの場合、ロータコア140Rを介して加熱するようにしても良い。その場合、磁石体14Mpとロータコア140Rとの間に高熱伝導性樹脂24を配設するか、又は磁石体14Mpとロータコア140Rとの間にダイカストによってアルミ26を配設しても良い。
【0296】
〈磁石からの熱の回収〉
加熱減磁によって所望の制御を実行した後に、誘導加熱された希土類磁石14MA,14MR,14MRbの熱を回収する必要がある。加熱された希土類磁石14MA,14MR,14MRbの温度は暖房運転時の冷媒温度よりも高い、すなわち、暖房運転時であっても冷媒温度は加熱された希土類磁石14MA,14MR,14MRbの温度よりも低い。そこで本発明では、希土類磁石14MA,14MR,14MRbの付近に冷媒通路を設ける。
【0297】
〈界磁調整コイルの適用−1〉
図34はアキシャルギャップ型モータ10Cの分解斜視図であり、回転軸Q方向に沿って分離して示している。アキシャルギャップ型モータ10Cは、例えば第2ステータ402がロータ14Cと対向する側の主面に界磁調整巻線16Fを備えている。第2ステータ402は磁性体からなり、第2ステータ400に対して回転軸Qを中心軸としてロータ14C側に開口する円形の溝404が設けられ、界磁調整巻線16Fは溝404において回転軸Qを軸として巻回される。
【0298】
界磁調整巻線16Fは、周方向に巻回された巻線であって、電機子巻線16CAに鎖交する界磁磁束を発生させて弱め界磁制御を行うために設けられている。界磁調整巻線16Fに直流を供給することによって生じる磁束によって希土類磁石14MAの磁束を弱めることができる。
【0299】
アキシャルギャップ型モータ10Cが暖房高負荷運転を行っている場合には、この界磁調整巻線16Fに高調波電流HCを供給することによって希土類磁石14MAを誘導加熱することができる。また、アキシャルギャップ型モータ10Cが冷房高負荷運転を行っている場合には、この界磁調整巻線16Fに直流を供給することによって弱め界磁制御をすることができる。
【0300】
なお、アキシャルギャップ型モータ10Cのロータ14Cは次のような構成を有する。すなわちロータ14Cは、複数の希土類磁石14N,14Sと、第1磁性板14NB及び第2磁性板14SBと、第1磁性環14NR及び第2磁性環14SRとを有している。
【0301】
具体的には、電機子巻線16CA側にN極の磁極面を呈する希土類磁石14Nの複数と、電機子巻線16CA側にS極の磁極面を呈する希土類磁石14Sの複数とが、回転軸Qを中心として周方向に交互に配列している。
【0302】
希土類磁石14Nのそれぞれは電機子巻線16CAと反対側(S極側)で、複数の第1磁性板14NBのそれぞれと回転軸Q方向に積み重ねられた構造を呈し、さらに複数の第1磁性板14NBのそれぞれは電機子巻線16CAと反対側で第1磁性環14NRによって相互に磁気的に連結される。同様に、希土類磁石14Sのそれぞれは電機子巻線16CAと反対側(N極側)で、複数の第2磁性板14SBのそれぞれと回転軸Q方向に積み重ねられた構造を呈し、さらに複数の第2磁性板14SBのそれぞれは電機子巻線16CAと反対側で第2磁性環14SRによって相互に磁気的に連結される。つまり、第1磁性環14NRと第2磁性環14SRとは回転軸Qを中心とした同心環を呈し、それぞれ第1磁性板14NB又は第2磁性板14SBと連結している。
【0303】
図35は図34のロータ14Cを部分的に示す断面斜視図であり、第1磁性環14NR及び第2磁性環14SRと、第1磁性板14NB及び第2磁性板14SBと、希土類磁石14N,14Sと、磁性板15NB,15SBとが回転軸Q方向に沿って積み重ねられた構造を示している。
【0304】
第1磁性環14NRは第2磁性環14SRの内周側に配置されても、外周側に配置されてもよい。
【0305】
また、複数の希土類磁石14Nのそれぞれに対して電機子巻線16CA側の磁極面に磁性板15NBを積み重ね、複数の希土類磁石14Sのそれぞれに対して電機子巻線16CA側の磁極面に磁性板15SBを積み重ねても良い。磁性板15NB,15SBを有していれば、電機子巻線16CAによって発生する磁界が希土類磁石14N,14Sに与える減磁を抑制できる。
【0306】
〈界磁調整コイルの適用−2〉
図36は図34の第1の変形例を示すアキシャルギャップ型モータ10Dの分解斜視図であり、回転軸Q方向に沿って分離して示している。アキシャルギャップ型モータ10Dは、上述のアキシャルギャップ型モータ10Cで示した希土類磁石14N,14S及び磁性板15NB,15SBに代えて、第2ステータ402に環状の希土類磁石14N1,14S1を有している。つまり、磁性環14NR,14SR及び磁性板14NB,14SBがアキシャルギャップ型モータ10Dの回転子として機能する。
【0307】
具体的には、第2ステータ402が回転軸Q方向を法線とする面内に呈する主面のうち、回転子と対向する側の主面上に、回転軸Qを中心とする環状の希土類磁石14N1,14S1を有している。より具体的には、回転子を構成する第1磁性環14NRと希土類磁石14N1とが対向し、第2磁性環14SRと希土類磁石14S1とが対向している。
【0308】
図36では、界磁巻線16Fを、希土類磁石14N1と希土類磁石14S1との間に配置している場合を例示しているが、希土類磁石14N1の外周側や、希土類磁石14S1の内周側に配置しても良い。
【0309】
〈界磁調整コイルの適用−3〉
図37は図34の第2の変形例を示すアキシャルギャップ型モータ10Eの分解斜視図であり、回転軸Q方向に沿って分離して示している。また、図38は図37に示した第2ステータ402を電機子巻線16CA側から見た斜視図である。
【0310】
環状の希土類磁石14N1,14S1は必ずしも第2ステータ402に設けられる必要はなく、回転子14Eに、より具体的には磁性環14NR,14SRに電機子巻線16CAとは反対側から設けられていても良い。
【0311】
具体的には、第1磁性環14NRが呈する主面のうち第2ステータ402と対向する主面上に希土類磁石14N1を設け、第2磁性環14SRが呈する主面のうち第2ステータ402と対向する主面上に希土類磁石14S1を設けても良い。
【0312】
図34〜図38に示されたいずれの態様も、第1磁性環14NR及び第2磁性環14SR、引いては第1磁性板14NB及び第2磁性板14SBは、希土類磁石14N,14S(あるいは希土類磁石14N1,14S1)から、N極及びS極の界磁磁束を受けていることになる。
【0313】
上述のように界磁調整巻線16Fを適用した態様に低圧冷媒ジャケット38(図13参照)を採用する場合には、電機子巻線16CAを有するステータ16Aを圧縮機構部36側に固定する。これにより圧縮機構部36を介してステータ16Aから容器32へと放熱される。この場合、高圧ドームを呈する容器32内に圧縮機構部36の上部に低圧冷媒ジャケット38を設けて低温で吸入した冷媒をステータ16Aに密着させることで、希土類磁石14N,14S,14N1,14S1付近に達する前の冷媒とステータ16Aとを熱交換させてステータを積極的に冷却しても良い。ステータ16Aの冷却により、電機子巻線16CAの温度上昇を抑え、銅損を抑制する。
【0314】
〈誘導加熱専用コイル〉
図39はアキシャルギャップ型モータ10Aのロータ14Aの断面図である。本発明は必ずしも電機子巻線16CA,16CB,16CRや界磁巻線16Fに高調波電流HCを重畳する必要はなく、誘導加熱専用の補助巻線18を別途に設けても良い。例えば、アキシャルギャップ型モータ10Aに補助巻線18を設ける場合には、図39に示す如く、ロータ14Aが延在する面内でロータ14Aの周囲に補助巻線18を更に設け、高調波電流HCを通電しても良い。
【0315】
図40はラジアルギャップ型モータ10Rのロータ14Rの断面図である。ラジアルギャップ型モータ10Rに補助巻線18を設ける場合には、図40に示す如く、ロータ14Rの回転軸Q方向の端部に補助巻線18を更に設け、高調波電流HCを通電しても良い。
【0316】
図41は非巻線ステータ402を有するアキシャルギャップ型モータ10Dの断面図である。図3で説明した第2ステータ400のように電機子巻線を持たないステータ402を有するモータの場合には、第2ステータ400に補助巻線18を更に設け、高調波電流HCを通電しても良い。
【0317】
以上に示した種々の態様は適宜組合せて採用することができるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0318】
【図1】空気調和機の暖房運転時の冷媒の流れを示す模式図である。
【図2】空気調和機の冷房運転時の冷媒の流れを示す模式図である。
【図3】アキシャルギャップ型モータの一部の分解斜視図である。
【図4】アキシャルギャップ型モータを搭載した圧縮機の断面図である。
【図5】電源とモータとの接続を示す図である。
【図6】PWMインバータ出力信号のデューティとDCリンク部電圧との関係を示す図である。
【図7】正弦波電流と過変調電流とを示す電流波形図である。
【図8】正弦波電流と矩形波電流とを示す電流波形図である。
【図9】矩形波電流と高調波電流とを示す電流波形図である。
【図10】トルク指令値に基づいて不可逆減磁を回避する手法を説明する概念図である。
【図11】電源とモータとの接続を示す図である。
【図12】圧縮機の断面図である。
【図13】アキシャルギャップ型モータを取り外した圧縮機の断面図である。
【図14】コアレスステータを採用したアキシャルギャップ型モータの分解斜視図である。
【図15】ラジアルギャップ型モータの一部の分解斜視図である。
【図16】SPMモータのロータの平面図である。
【図17】IPMモータのロータの平面図である。
【図18】ラジアルギャップ型モータを搭載した圧縮機の断面図である。
【図19】IPMロータの平面図である。
【図20】SPMロータの平面図である。
【図21】圧縮機構部側からモータ側を見たときの上端板を示す図である。
【図22】ラジアルギャップ型モータにおけるシャフト及びロータの断面図である。
【図23】アキシャルギャップ型モータにおけるシャフト及びロータの断面図である。
【図24】コイルエンドを回転軸へと向けて突出させた場合の圧縮機の一部の断面図である。
【図25】ロータが2極の場合のラジアルギャップ型モータの平面図である。
【図26】ラジアルギャップ型モータの断面図である。
【図27】図22のロータの断面図である。
【図28】アキシャルギャップ型モータの側面図である。
【図29】アキシャルギャップ型モータの側面図である。
【図30】アキシャルギャップ型モータの側面図である。
【図31】IPMロータの分解斜視図である。
【図32】IPMロータの平面図である。
【図33】IPMロータの平面図である。
【図34】アキシャルギャップ型モータの分解斜視図である。
【図35】図34のロータを部分的に示す断面斜視図である。
【図36】図34の変形例を示す図である。
【図37】図34の変形例を示す図である。
【図38】図37の一部を示す図である。
【図39】アキシャルギャップ型モータのロータの断面図である。
【図40】ラジアルギャップ型モータのロータの断面図である。
【図41】非巻線ステータを有するアキシャルギャップ型モータの断面図である。
【符号の説明】
【0319】
100 空気調和機
10A,10R モータ
10G エアギャップ
12 シャフト
14A,14R ロータ
140A,140R ロータコア
14MA,14MR 希土類磁石
14Mp 磁石体
142 端板
144 孔
16A,16R ステータ
160A,160R ステータコア
16CA,16CR 電機子巻線
16CE コイルエンド
16CS 空芯コイル
16T ティース
16F 界磁巻線
16Y ヨーク
18 第2電機子巻線
20 絶縁体
20A 高調波吸収材料
30,30A,30R 圧縮機
30R 冷媒通路
32 容器
34 放熱フィン
36 圧縮機構部
38 冷媒ジャケット
42 吐出ポート
50 PWMインバータ
52 コンバータ
54 インバータ
56 DCリンク部
62 温度センサ
64 巻線温度センサ
66 タイマ
152 第1断熱体
154 第2断熱体
φa 界磁磁束
Lq q軸インダクタンス
Q 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(Q)方向に延在するシャフト(12)の周りで周方向に回転可能な複数の希土類磁石(14MA,14MR)を有するロータ(14A,14R)と、前記ロータと対向する電機子巻線(16CA,16CR)を有するステータ(16A,16R)とを有するモータ(10A,10R)を搭載して冷媒を圧縮する圧縮機(30;30A,30R)を備え、暖房運転可能な空気調和機(100)であって、
前記暖房運転であって前記モータが予め定められた回転数以上の回転数で前記圧縮機を運転する暖房高負荷運転の場合には、前記電機子巻線に高調波電流を流して前記希土類磁石を誘導加熱する、空気調和機。
【請求項2】
請求項1記載の空気調和機(100)であって、
前記空気調和機は更に冷房運転が可能であり、
前記モータ(10A,10R)が前記暖房高負荷運転をする場合には前記誘導加熱を行い、
前記冷房運転において前記モータが予め定められた回転数以上の回転数で前記圧縮機を運転する冷房高負荷運転をする場合には電流位相進めによる弱め磁束制御を行う、空気調和機。
【請求項3】
請求項1記載の空気調和機(100)であって、
前記空気調和機は更に冷房運転が可能であり、
前記空気調和機は、電源から供給される交流を直流に変換するコンバータ(52)と、前記コンバータから得られる直流を交流に変換して前記電機子巻線(16CA,16CR)に供給するPWMインバータ(54)と、前記コンバータと前記PWMインバータとを接続するDCリンク部(56)とを有するインバータ(50)を更に備え、
前記モータ(10A,10R)が前記暖房高負荷運転をする場合には前記誘導加熱を行い、
前記冷房運転において前記モータが予め定められた回転数以上の回転数で前記圧縮機を運転する冷房高負荷運転をする場合には前記コンバータによって前記DCリンク部の電圧を昇圧する、空気調和機。
【請求項4】
請求項1記載の空気調和機(100)であって、
前記空気調和機は更に冷房運転が可能であり、
前記空気調和機は、電源から供給される交流を直流に変換するコンバータ(52)と、前記コンバータから得られる直流を交流に変換して前記電機子巻線(16CA,16CR)に供給するPWMインバータ(54)と、前記コンバータと前記PWMインバータとを接続するDCリンク部(56)とを有するインバータ(50)を更に備え、
前記暖房高負荷運転における前記PWMインバータの出力信号のデューティは、前記冷房運転において前記モータが予め定められた回転数以上の回転数で前記圧縮機を運転する冷房高負荷運転における前記モータに対する前記PWMインバータの出力信号のデューティよりも低く、
前記暖房高負荷運転における前記インバータのDCリンク部(54)の電圧は、前記冷房高負荷運転における前記DCリンク部の電圧よりも高い、空気調和機。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載の空気調和機(100)であって、
前記空気調和機は、電源から供給される交流を直流に変換するコンバータ(52)と、前記コンバータから得られる直流を交流に変換して前記電機子巻線(16CA,16CR)に供給するPWMインバータ(54)と、前記コンバータと前記PWMインバータとを接続するDCリンク部(56)とを有するインバータ(50)を更に備え、
前記インバータは前記モータ(10A,10R)に、
前記暖房高負荷運転以外では正弦波電流を通電し、
前記暖房高負荷運転において過変調された電流を供給する、空気調和機。
【請求項6】
請求項1又は請求項2記載の空気調和機(100)であって、
前記空気調和機は、電源から供給される交流を直流に変換するコンバータ(52)と、前記コンバータから得られる直流を交流に変換して前記電機子巻線(16CA,16CR)に供給するPWMインバータ(54)と、前記コンバータと前記PWMインバータとを接続するDCリンク部(56)とを有するインバータ(50)を更に備え、
前記インバータは前記電機子巻線に、
前記暖房高負荷運転において矩形波電流を通電し、
前記暖房高負荷運転以外において正弦波電流を通電する、空気調和機。
【請求項7】
請求項6記載の空気調和機(100)であって、
前記暖房高負荷運転において前記PWMインバータ(54)は前記電機子巻線(16CA,16CR)に、前記矩形波通電の無通電区間に高調波電流を重畳して通電する、空気調和機。
【請求項8】
請求項1又は請求項2記載の空気調和機(100)であって、
前記空気調和機は、電源から供給される交流を直流に変換するコンバータ(52)と、前記コンバータから得られる直流を交流に変換して前記電機子巻線(16CA,16CR)に供給するPWMインバータ(54)と、前記コンバータと前記PWMインバータとを接続するDCリンク部(56)とを有するインバータ(50)を更に備え、
前記暖房高負荷運転における前記インバータのキャリア周波数は、
前記暖房高負荷運転以外でのキャリア周波数よりも高い、空気調和機。
【請求項9】
請求項1ないし請求項6及び請求項8のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
前記モータ(10A,10R)への給電には無通電区間が設けられ、
前記無通電区間に前記モータによる誘起電圧を計測し、前記誘起電圧に基づいて前記モータの主磁束(φa)を見積もる、空気調和機。
【請求項10】
請求項9記載の空気調和機(100)であって、
前記無通電区間は、前記電機子巻線に供給される電流の前記誘起電圧の履歴に基づいて前記誘起電圧が極大となるときを含む予め定められた期間に設けられる、空気調和機。
【請求項11】
請求項9記載の空気調和機(100)であって、
前記モータは多相モータであり、前記無通電区間は、前記電機子巻線に供給される電流の各相の前の履歴に基づいて前記誘起電圧が極大となるときを含む予め定められた期間に設けられる、空気調和機。
【請求項12】
請求項9ないし請求項11のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
見積もられた前記界磁磁束(φa)に基づいて、前記モータのq軸インダクタンス(Lq)の低下を補正する係数(kq)を補正する、空気調和機。
【請求項13】
請求項9ないし請求項12のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
前記誘導加熱を開始した後に前記誘起電圧の低下が予め定められた閾値以上となったときに前記誘導加熱を停止する、空気調和機。
【請求項14】
請求項1ないし請求項8のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
前記空気調和機は前記冷媒の吐出管の近傍に温度センサ(62)を更に備え、
前記温度センサが計測した温度が予め定められた閾値以上の場合には、前記誘導加熱を行わない、空気調和機。
【請求項15】
請求項1又は請求項2記載の空気調和機(100)であって、
前記空気調和機は、電源から供給される交流を直流に変換するコンバータ(52)と、前記コンバータから得られる直流を交流に変換して前記電機子巻線(16CA,16CR)に供給するPWMインバータ(54)と、前記コンバータと前記PWMインバータとを接続するDCリンク部(56)とを有するインバータ(50)を更に備え、
前記誘導加熱を開始後に、前記インバータの、前記モータ(10A,10R)へのトルク指令値に対応して前記電機子巻線に供給する電流の増分が、予め定められた閾値以上の場合には、前記誘導加熱を停止する、空気調和機。
【請求項16】
請求項1ないし請求項8のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
前記空気調和機は前記電機子巻線(16CA,16CR)の巻線温度を検出する巻線温度センサ(64)を更に備え、
前記巻線温度センサが計測した温度が予め定められた閾値以上の場合には、前記誘導加熱を行わない、空気調和機。
【請求項17】
請求項1ないし請求項12のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
前記空気調和機は前記誘導加熱を開始してからの期間を計測するタイマ(66)を更に備え、
前記タイマが予め定められた期間を計測した後に前記誘導加熱を停止する、空気調和機。
【請求項18】
請求項1ないし請求項12のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
瞬停復帰後には前記誘導加熱の開始を留保する、空気調和機。
【請求項19】
請求項1又は請求項2記載の空気調和機(100)であって、
前記空気調和機は、電源から供給される交流を直流に変換するコンバータ(52)と、前記コンバータから得られる直流を交流に変換して前記電機子巻線(16CA,16CR)に供給するPWMインバータ(54)と、前記コンバータと前記PWMインバータとを接続するDCリンク部(56)とを有するインバータ(50)を更に備え、
前記空気調和機は前記DCリンク部の電圧と前記モータ(10A,10R)に流れる電流から前記ロータ(14)の回転数を得、前記回転数の単位時間当たりの変分が予め定められた閾値以下になるまで前記誘導加熱の開始を留保する、空気調和機。
【請求項20】
請求項1ないし請求項19のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
前記ロータ(14)はロータコア(140A,140R)を有し、
前記ステータ(16A,16R)はステータコア(160A,160R)を有し、
前記ステータコアの材質は、前記ロータコアの材質よりも鉄損が小さい、空気調和機。
【請求項21】
請求項20記載の空気調和機(100)であって、
前記ロータ(14)は前記回転軸(Q)を法線とする面内に延在する複数の第1電磁鋼板を有し、
前記ステータ(16A,16R)は前記面内に延在する複数の第2電磁鋼板を有し、
一の前記第1電磁鋼板の前記回転軸方向の厚みは、一の前記第2電磁鋼板の前記回転軸方向の厚みよりも大きい、空気調和機。
【請求項22】
請求項20又は請求項21記載の空気調和機(100)であって、
前記ロータコア(140A,140R)の材質は、珪素鋼板又は圧粉鉄心のいずれかが採用され、
前記ステータコア(160A,160R)の材質は、アモルファス、フェライトコア又はパーマロイのいずれかが採用される、空気調和機。
【請求項23】
請求項1ないし請求項22のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
前記ステータ(16A,16R)は前記圧縮機(30;30A,30R)の容器(32)内に固定され、
前記容器には、前記ステータが固定される位置と対応する位置に放熱フィン(34)が設けられる、空気調和機。
【請求項24】
請求項1ないし請求項22のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
前記モータ(10A)はアキシャルギャップ型モータであり、
前記圧縮機(30A)は前記冷媒を圧縮する圧縮機構部(36)と、前記圧縮機構部及び前記モータを格納して高圧ドームを呈する容器(32)を有し、
前記ステータ(16A)は前記容器(32)の前記圧縮機構部(36)側に設けられ、
前記圧縮機は前記容器の前記高圧ドーム内の前記圧縮機構部の周囲に、又は前記電機子巻線(16CA)を有する前記ステータと接触する低圧冷媒ジャケット(38)を更に有する、空気調和機。
【請求項25】
請求項1ないし請求項22のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
前記モータ(10A)はアキシャルギャップ型モータであり、
前記電機子巻線(16CA)は空芯コイル(16CS)が採用される、空気調和機。
【請求項26】
請求項25記載の空気調和機(100)であって、
前記ロータ(14A)は、前記ステータ(16A)を前記回転軸(Q)方向において挟んで互いにと対向する、空気調和機。
【請求項27】
請求項26記載の空気調和機(100)であって、
前記空芯コイル(16CS)は自己融着性の平角線で成形される、空気調和機。
【請求項28】
請求項26記載の空気調和機(100)であって、
前記空芯コイル(16CS)は耐熱樹脂及び繊維フィラで成型される、空気調和機。
【請求項29】
請求項20ないし請求項22のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
前記電機子巻線(16CA,16CR)と前記ステータコア(160A,160R)との間には絶縁体(20)である高調波吸収材料(20A)が配設される、空気調和機。
【請求項30】
請求項1ないし請求項29のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
前記希土類磁石(14MA,14MR)は、前記ロータ(14)が有するロータコア(140A,140R)の表面に配設される、空気調和機。
【請求項31】
請求項20ないし請求項23及び、請求項29のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
前記モータ(10R)はラジアルギャップ型モータであり、
前記電機子巻線(16CR)は分布巻又は波巻の巻線方式で巻回され、
前記電機子巻線のコイルエンド(16CE)の少なくとも一方は前記ロータコア(140R)の前記回転軸(Q)方向の端部に向けて突出し、
前記希土類磁石(14MR)の端部は前記ロータコアを介さずに前記コイルエンドと対向する、空気調和機。
【請求項32】
請求項31記載の空気調和機(100)であって、
前記電機子巻線(16CR)は自己融着性材料が採用される、空気調和機。
【請求項33】
請求項32記載の空気調和機(100)であって、
前記電機子巻線(16CA,16CR)は平角線が採用される、空気調和機。
【請求項34】
請求項31ないし請求項33のいずれか記載の空気調和機(100)を製造する方法であって、
前記ロータコア(140R)を配設した後に、前記電機子巻線(16CR)の前記回転軸(Q)方向の端部たるコイルエンドを整形する工程を備える、空気調和機の製造方法。
【請求項35】
請求項32又は請求項33記載の空気調和機(100)を製造する方法であって、
前記ロータコア(140R)を配設した後に、前記電機子巻線(16CR)のコイルエンドを整形する工程と、
前記コイルエンドの整形後に前記自己融着性材料を融着する、空気調和機の製造方法。
【請求項36】
請求項31ないし請求項33のいずれか記載の空気調和機(100)を製造する方法であって、
前記ステータコア(160R)はティース(16T)とヨーク(16Y)とからなり、
前記ロータ(14)を配置した状態で前記ティースを前記ロータの周囲に配置する第1工程と、
前記第1工程で配置された前記ティースに前記電機子巻線(16CR)を巻回する第2工程と、
前記第2工程後に前記ヨークを前記ティースと連接する第3工程と
を備える、空気調和機の製造方法。
【請求項37】
請求項31ないし請求項33のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
前記コイルエンド(16CE)は、前記回転軸(Q)方向の一方側の端部のみが前記回転軸に向けて突出する、空気調和機。
【請求項38】
請求項37記載の空気調和機(100)であって、
前記突出する前記コイルエンド(16CE)は、前記圧縮機(30;30A,30R)の圧縮機構部(36)側に設けられる、空気調和機。
【請求項39】
請求項31ないし請求項33のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
前記モータ(10R)は、インナーロータ型モータであり、
前記コイルエンド(16CE)は、前記回転軸(Q)方向からの俯瞰視で線分を呈する、空気調和機。
【請求項40】
請求項31記載の空気調和機(100)であって、
前記希土類磁石(14MA,14MR)は、前記ロータコア(140A,140R)から前記回転軸(Q)方向へと向かって突出する、空気調和機。
【請求項41】
請求項40記載の空気調和機(100)であって、
前記ステータコア(160A,160R)の前記回転軸(Q)方向の端部で、前記コイルエンド(16CE)と前記ステータコアとの間には絶縁体(20)が配設され、
前記絶縁体は、前記ステータ(16A,16R)よりも前記ロータ側に突出する、空気調和機。
【請求項42】
請求項40記載の空気調和機(100)であって、
前記ロータコア(140R)は、前記回転軸(Q)方向の端部で前記回転軸方向を法線とする面内に延在する一対の端板(142T,142B)と、前記端板で挟まれて前記回転軸方向に積層された複数の第1電磁鋼板とを含み、
前記端板は前記回転軸方向を法線とし、前記第1電磁鋼板が位置する面での前記希土類磁石(14MR)の断面の最大面積よりも小さい孔(144)を含み、
前記希土類磁石は前記回転軸方向の端部において前記孔と嵌合する段差を呈する、空気調和機。
【請求項43】
請求項31記載の空気調和機(100)であって、
前記ロータコア(140R)は、前記回転軸(Q)方向の端部で前記回転軸方向を法線とする面内に延在する端板(142T,142B)と、前記端板で挟まれて前記回転軸方向に積層された複数の第1電磁鋼板とを含み、
前記端板は、前記端板の熱容量が前記希土類磁石の熱容量よりも小さい材質が採用され、
前記コイルエンド(16CE)は前記端板を介して前記希土類磁石(14MR)と対向する、空気調和機。
【請求項44】
請求項43記載の空気調和機(100)であって、
前記ロータコア(140R)と前記希土類磁石(14MR)との間には、前記ロータコアよりも熱容量の大きい第1断熱体が設けられ、
前記ロータコアと前記端板(142T,142B)との間には、前記ロータコアよりも熱容量の大きい第2断熱体が設けられる、空気調和機。
【請求項45】
請求項1ないし請求項29のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
前記モータ(10B)はアキシャルギャップ型モータであり、
前記電機子巻線(16CB)は分布巻の巻線方式で巻回され、
前記電機子巻線の外周側の部位は、前記希土類磁石(14MA)の外縁端部へと向かって湾曲する、空気調和機。
【請求項46】
請求項45記載の空気調和機(100)であって、
前記電機子巻線(16CB)は自己融着性材料が採用される、空気調和機。
【請求項47】
請求項46記載の空気調和機(100)であって、
前記電機子巻線(16CB)は平角線が採用される、空気調和機。
【請求項48】
請求項46又は請求項47記載の空気調和機(100)を製造する方法であって、
前記電機子巻線(16CB)を成形する第1工程と、
前記第1工程後に前記自己融着性材料を融着する第2工程と
を備える、空気調和機の製造方法。
【請求項49】
請求項45記載の空気調和機(100)であって、
前記ステータ(16A)はその外周側で前記圧縮機(30A)の容器(32)内に保持され、
前記電機子巻線(16CA)のコイルエンド(16CE)の外周側の部位は、前記ステータと前記回転軸(Q)方向で対向する前記ロータ(14)へと向かって屈曲する、空気調和機。
【請求項50】
請求項49記載の空気調和機(100)であって、
前記コイルエンド(16CE)の内周側の部位は、前記回転軸(Q)方向へと向かって屈曲する、空気調和機。
【請求項51】
請求項49記載の空気調和機(100)であって、
前記コイルエンド(16CE)の内周側の部位は、前記回転軸(Q)方向を法線とする面内に延在する、空気調和機。
【請求項52】
請求項45記載の空気調和機(100)であって、
前記電機子巻線(16C)と対向する側において、前記回転軸(Q)方向を法線とする面内で前記回転軸を中心とする径方向における前記希土類磁石(14MA,14MR)の外周側端部が露出する、空気調和機。
【請求項53】
請求項45記載の空気調和機(100)であって、
前記希土類磁石(14MA,14MR)は非磁性体ホルダで保持される、空気調和機。
【請求項54】
請求項1ないし請求項29のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
前記モータ(10R)はラジアルギャップ型モータであり、
一の前記希土類磁石(14MR)は複数の磁石体(14Mp)を有して、前記ロータ(14)が有するロータコア(140R)に埋設され、
前記複数の磁石体のうち、一の前記磁石体の保磁力は、前記一の磁石体よりも前記回転軸(Q)に近い側に配設される他の前記磁石体の保磁力よりも高い、空気調和機。
【請求項55】
請求項54記載の空気調和機(100)であって、
一の前記希土類磁石(14MA,14MR)は、前記回転軸(Q)に平行な略同一面上に配設される前記複数の磁石体(14Mp)を有する、空気調和機。
【請求項56】
請求項54記載の空気調和機(100)であって、
一の前記希土類磁石(14MA,14MR)は、前記回転軸(Q)方向を法線とする断面視で前記複数の磁石体(14Mp)が前記ステータへ向けて開口する凹形状を呈して配設される、空気調和機。
【請求項57】
請求項54記載の空気調和機(100)であって、
前記複数の磁石体(14Mp)のうち、一の前記磁石体と他の前記磁石体との間には、前記磁石体よりも熱容量の大きい第3断熱体(22;22S,22C)が設けられる、空気調和機。
【請求項58】
請求項57記載の空気調和機(100)であって、
前記第3断熱体(22)は樹脂スペーサ(22S)が採用される、空気調和機。
【請求項59】
請求項57記載の空気調和機(100)であって、
前記第3断熱体(22)は前記磁石体(14Mp)を覆う樹脂コーティング(22C)が採用される、空気調和機。
【請求項60】
請求項57記載の空気調和機(100)であって、
前記第3断熱体(14I)は前記複数の磁石体(14Mp)同士の間に設けられる空隙(14Ig)が採用される、空気調和機。
【請求項61】
請求項1ないし請求項29のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
前記モータ(10R)はラジアルギャップ型モータであり、
一の前記希土類磁石(14MA,14MR)は、前記ロータ(14)が有するロータコア(140A,140R)に埋設された複数の磁石体(14Mp)を有し、
前記一の前記希土類磁石において前記複数の磁石体は、それぞれの前記ステータ側の端点同士を結ぶ距離が、それぞれの前記ステータと反対側の端点同士を結ぶ距離よりも長い、空気調和機。
【請求項62】
請求項1ないし請求項29のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
前記希土類磁石(14MA,14MR)は、前記ロータ(14)が有するロータコア(140A,140R)に埋設され、
前記希土類磁石と前記ロータコアの側面との間に高熱伝導性樹脂(24)を配設する、空気調和機。
【請求項63】
請求項1ないし請求項29のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
前記希土類磁石(14MA,14MR)は、前記ロータ(14)が有するロータコア(140A,140R)に埋設され、
前記希土類磁石と前記ロータコアの側面との間にダイカストによってアルミが配設される、空気調和機。
【請求項64】
請求項1ないし請求項29のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
前記圧縮機(30;30A,30R)に流れる前記冷媒の動線は、前記希土類磁石に接する冷媒通路(30R)と略平行を呈する、空気調和機。
【請求項65】
請求項64記載の空気調和機(100)であって、
前記モータ(10R)はラジアルギャップ型モータであり、
前記ロータ(14)は前記希土類磁石(14MR)を埋設して前記回転軸(Q)に平行に延在するロータコア(140R)を更に有し、
前記ロータコアには前記希土類磁石の前記ロータコアの側面側端部を露出させる空隙(142)が設けられ、
前記冷媒は前記空隙を流れる、空気調和機。
【請求項66】
請求項64記載の空気調和機(100)であって、
前記モータ(10R)はラジアルギャップ型モータであり、
前記ロータ(14R)は、前記希土類磁石(14MR)を露出して配置するロータコア(140R)を更に有し、
前記冷媒は、前記ラジアルギャップ型モータのエアギャップ(10G)を流れる、空気調和機。
【請求項67】
請求項65又は請求項66記載の空気調和機(100)であって、
前記圧縮機(30;30A,30R)は、吐出ポート(42)を備えた圧縮機構部(36)を有し、
前記回転軸(Q)方向を法線とする面内における前記回転軸から前記吐出ポートまでの距離は、前記面内における前記回転軸から前記冷媒の通路までの距離以下である、空気調和機。
【請求項68】
請求項1ないし請求項29のいずれか記載の空気調和機(100)であって、
前記シャフト(12)は前記回転軸(Q)方向に延在する貫通孔(12H)を呈し、
前記貫通孔は前記ロータ(14)の内部を貫通する方向へと向かって分岐している、空気調和機。
【請求項69】
回転軸(Q)方向に延在するシャフト(12)の周りで周方向に回転可能で、前記周方向に交互に極性が異なる磁極を呈するロータ(14C)と、
前記磁極に界磁磁束を供給する希土類磁石(14N,14S;14N1,14S1)と、
前記回転軸方向において前記ロータと対向して電機子巻線(16CA)を有する第1ステータ(16A)と、
前記第1ステータとは反対側から前記ロータと対向する磁性板と、前記界磁磁束を調整する界磁調整巻線(16F)とを有する第2ステータ(402)と
を備えたモータ(10C)を用いて冷媒を圧縮し、暖房運転及び冷房運転が可能な空気調和機(100)であって、
前記暖房運転であって前記モータが予め定められた回転数以上の回転数で回転して前記冷媒を圧縮する暖房高負荷運転の場合には、前記界磁調整巻線に高調波電流を通電して前記希土類磁石を誘導加熱し、
前記冷房運転であって前記モータが予め定められた回転数以上の回転数で回転して前記冷媒を圧縮する冷房高負荷運転の場合には、前記界磁調整巻線に電流を通電して前記界磁磁束を弱める、空気調和機。
【請求項70】
請求項69記載の空気調和機(100)であって、
前記希土類磁石(14N,14S)は前記周方向に交互に極性が異なる磁極を呈して前記ロータ(14C)に複数設けられる、空気調和機。
【請求項71】
請求項69記載の空気調和機(100)であって、
前記ロータ(14C)は、
前記希土類磁石(14N)からN極の界磁磁束を受けて前記回転軸(Q)の周りに設けられた第1磁性環(14NR)と、
前記希土類磁石(14S)からS極の界磁磁束を受けて前記回転軸の周りに設けられた第2磁性環(14SR)と、
前記第1ステータ(16A)に対向して前記周方向に環状に複数配置され、前記第1磁性環によって相互に磁気的に連結され、前記第2磁性環と磁気的に分離される第1磁性板(14NB)と、
前記第1ステータに対向して前記周方向に環状に複数配置され、前記第2磁性環によって相互に磁気的に連結され、前記第1磁性環と磁気的に分離される第2磁性板(14SB)と
を有する、空気調和機。
【請求項72】
請求項71記載の空気調和機(100)であって、
前記希土類磁石は前記第1磁性環(14NR)に前記N極の界磁磁束を供給する第1磁極面(14NP)を呈する第1磁石(14N1)と、前記第2磁性環(14SR)に前記S極の界磁磁束を供給する第2磁極面(14SP)を呈する第2磁石(14S1)とを有して、前記ロータ(14C)に設けられる、空気調和機。
【請求項73】
請求項71記載の空気調和機であって、
前記希土類磁石(14N1,14S1)は、前記第1磁性環に前記N極の界磁磁束を供給する第1磁極面と、前記第2磁性環に前記S極の界磁磁束を供給する第2磁極面とを有し、前記第2ステータ(402)に設けられる、空気調和機。
【請求項74】
回転軸(Q)方向に延在するシャフト(12)の周りで周方向に回転可能な複数の希土類磁石(14MA,14MR)を有するロータ(14A,14R)と、前記ロータと対向する電機子巻線(16CA,16CR)を有するステータ(16A,16R)とを有するモータ(10A,10R)を搭載して冷媒を圧縮する圧縮機(30;30A,30R)を備え、暖房運転可能な空気調和機(100)であって、
前記希土類磁石と近接する補助巻線(18)を更に備え、
前記暖房運転であって前記モータが予め定められた回転数以上の回転数で前記圧縮機を運転する暖房高負荷運転の場合には、前記補助巻線に高調波電流を流して前記希土類磁石を誘導加熱する、空気調和機。
【請求項75】
請求項74記載の空気調和機(100)であって、
前記モータ(10A)はアキシャルギャップ型モータであって、
前記補助巻線(18)は前記ロータ(14A)の外周側に配置される、空気調和機。
【請求項76】
請求項74記載の空気調和機(100)であって、
前記モータ(10R)はラジアルギャップ型モータであって、
前記補助巻線(18)は前記ロータ(14A)の前記回転軸(Q)方向の端部において前記希土類磁石(14MA)に近接に近接して設けられる、空気調和機。
【請求項77】
請求項74記載の空気調和機(100)であって、
前記モータ(10A)はアキシャルギャップ型モータであって、
前記ステータ(16A)は前記回転軸(Q)方向において前記ロータ(14A)を挟んで一対設けられ、
一の前記ステータは、電機子巻線(16CA)が配設されたステータコア(160A)を有し、
他の前記ステータは、前記ロータ側に前記補助巻線(18)が配設されたステータコアを有する、空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2009−293907(P2009−293907A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150890(P2008−150890)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】