空間像表示装置
【課題】実在感に優れ、かつ高精細な空間像の形成が可能な空間像表示装置を提供する。
【解決手段】空間像表示装置10Aは、複数の画素22を有し映像信号に応じた2次元表示画像を生成する表示部2と、画素22の各々に対応して設けられ、画素22の各々を通過する光を集光する複数のマイクロレンズ11からなる第1レンズアレイ1と、この第1レンズアレイ1を通過して集光された光を平行光もしくは収束光に変換して射出する第2レンズアレイ3とを備える。表示部2の各画素22を透過する光は、第1レンズアレイ11によって集光されたのち、第2レンズアレイ3に向かう。このため、各画素22から第2レンズアレイ3に入射する光は、あたかも点光源から射出された光のように振る舞い、第2レンズアレイ3において平行光または収束光に容易に変換される。
【解決手段】空間像表示装置10Aは、複数の画素22を有し映像信号に応じた2次元表示画像を生成する表示部2と、画素22の各々に対応して設けられ、画素22の各々を通過する光を集光する複数のマイクロレンズ11からなる第1レンズアレイ1と、この第1レンズアレイ1を通過して集光された光を平行光もしくは収束光に変換して射出する第2レンズアレイ3とを備える。表示部2の各画素22を透過する光は、第1レンズアレイ11によって集光されたのち、第2レンズアレイ3に向かう。このため、各画素22から第2レンズアレイ3に入射する光は、あたかも点光源から射出された光のように振る舞い、第2レンズアレイ3において平行光または収束光に容易に変換される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間に物体の立体映像を表示する空間像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体映像の生成は、人間の持つ認識生理機能を利用することにより実現されるものである。すなわち、観察者は、左右の眼に入る画像のズレ(両眼視差)や輻輳角からの認識、眼の水晶体の焦点距離を眼の毛様体やチン小体を使って調節する際に起こる生理機能(焦点距離調整機能)からの認識、および運動したときに見える画像の変化による認識(運動視差)に基づき、脳で総合的に処理する過程で立体を認識している。上記の認識生理機能のうち「両眼視差」や「輻輳角」を利用した従来の立体映像の生成方法としては、例えば、左右、色の異なる眼鏡をかけて左右の眼にそれぞれ異なる画像(視差画像)を送る方法や、液晶シャッタの付いたゴーグルをかけて液晶シャッタを高速に切り替えて左右の眼に視差画像を送る方法などがある。また、2次元表示装置に左右のそれぞれの眼に対応した画像を映しこれをレンチキュラーレンズで左右のそれぞれの眼に振り分けることによって立体画像を表現する方法も存在する。さらに、レンチキュラーレンズを用いる方法に類似したものとして、液晶ディスプレイ表面にマスクを設け右眼には右眼用の画像が左眼には左眼用の画像が見えるようにすることによって立体像を表現する方法も開発されている。
【0003】
ところが、上記のような特別な眼鏡やゴーグルを使用して視差画像を得る方法は、観察者にとって非常に煩わしいものである。一方、レンチキュラーレンズを用いる方法等では、1つの2次元画像表示装置の領域を右眼用の領域と左眼用の領域とに分割する必要があるので、高精細な画像の表示には適さないという問題がある。
【0004】
そこで、近年、光線再生法に基づく空間像表示装置の検討が進められている(例えば非特許文献1参照)。光線再生法とは、ディスプレイから放射される多数本の光線で空間像を表現しようとするものであり、理論的には、裸眼観察であっても正確な運動視差情報と焦点距離情報とを観察者に提供し、比較的、眼精疲労の少ない空間像が得られるものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】高木康博,「立体映像とフラットパネル型立体表示技術」,光学,第35巻,第8号,2006年,p.400−406
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の光線再生法であっても、実際には、ディスプレイの表示面から(それと垂直な方向へ)離れた位置に認識させるような空間像を得ようとした場合、ディスプレイの表示面からの距離が大きくなるほどその空間像の実在感や精細度が劣化してしまう。これは、ディスプレイの表示面に表示される2次元表示画像が、それぞれ有限の大きさを有する複数の画素によって構成されているため、観察者の眼に発散光として到達するからであると考えられる。以下、図12および図13を参照して上記の現象について詳細に説明する。
【0007】
図13(A)および図14(A)は、光線再生法に基づく空間像を観察者が認識している理想的な状態を表す概念図である。図13(A)では、ある空間像を構成する任意の点像Z1を所定の位置に形成する場合を考える。点像Z1を形成するには、ディスプレイDP上の複数の画素(ここでは3つの画素PX1〜PX3を代表して表す)から、点像Z1を配置したい位置を通過するように光線L1〜L3をそれぞれ放射すればよい。放射された光線L1〜L3は、観察者の瞳Pを通して網膜Rに到達する。このとき、観察者の眼は、瞳Pを通過した各光線L1〜L3が網膜R上の一点に集まるように、眼に備わっている焦点距離可変レンズ(レンズ体)の焦点距離を自動的に調節する。調節された焦点距離は、空間像が配置された場所に実際に実物体が配置された場合と一致するので、観察者は、空間像(点像Z1)が、空間像を配置しようとした位置に配置されているかのように認識することができる。この際、画素PX1〜PX3が広がりを持たない点光源であれば、光線L1〜L3は、例えば図14(A)に表したように、その点光源LS1から自らの焦点距離FLだけ離れた位置にある投影レンズLNを通過する光線L1〜L3は、その太さが変わらない平行光Lpをそれぞれ形成する。
【0008】
ところが実際には、画素PX1〜PX3から放射された光線L1〜L3はそれぞれ発散光を形成する。これは、先に述べたように、各画素PX1〜PX3が有限の広がりを有する光源、すなわち点光源の集まりであることに起因する。具体的には図14(B)に表したように、有限領域に広がる光源LS2から自らの焦点距離FLだけ離れた位置にある投影レンズLNを通過する光線L1〜L3は、その太さが徐々に太くなる発散光Ldを形成する。一般に、発散光Ldの発散の度合いは、有限領域の光源の面積によって変わり、その面積が小さいほど平行光束に近づき、面積が大きいほど放射される光束の発散の度合いが大きくなる。したがって、この場合、各画素PX1〜PX3の占有面積にもよるが、観察者は、例えば図13(B)に示したように点像Z1そのものが有限の領域に広がるぼやけた像であると認識してしまう。その結果、複数の点像Z1が集まって構成される空間像も精細度に欠けるものとなる。あるいは、光線L1〜L3が発散光を形成することによって、図13(C)に示したように、観察者は、より鮮明な点像を求めてディスプレイDP上の画素G1〜G3そのものを見てしまうこととなる。この場合、単にディスプレイDP上に3つの異なる点像が認識されるだけである。このように、ディスプレイ上の画素からの光線が発散光を形成する場合には、空間像がぼやけてしまうか、空間像を認識することができなくなってしまう、という問題が起こる。この問題は、特に、空間像を、ディスプレイの表示面から離れた位置に認識させる場合に顕著となる。したがって、より奥行きのある空間像を観察者が認識できるような技術が求められる。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、実在感に優れ、かつ、高精細な空間像を形成することのできる空間像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の空間像表示装置は、複数の画素を有し映像信号に応じた2次元表示画像を生成する2次元画像生成手段と、画素の各々に対応して設けられ、画素の各々を通過する光を集光する複数の第1のレンズからなる第1のレンズアレイと、この第1のレンズアレイを通過して集光された光を平行光もしくは収束光に変換して射出する第2のレンズアレイとを備えるようにしたものである。ここで、「第1のレンズ」が「画素の各々に対応して設けられ」とは、1つの画素に対して1つの第1のレンズが配置される場合に限らず、1つの画素に対して複数の第1のレンズが配置される場合をも含む概念である。
【0011】
本発明の空間像表示装置では、2次元画像生成手段の各画素を通過する光が第1のレンズアレイによって集光されたのち、第2のレンズアレイに向かう。このため、第2のレンズアレイに入射する光が、あたかも点光源から射出された光のように振る舞うので、第1のレンズアレイによって集光された光は、第2のレンズアレイによって容易に平行光もしくは収束光に変換されて射出される。よって、観察者の眼には、平行光または収束光によって形成される空間像が認識される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の空間像表示装置によれば、2次元画像生成手段の各画素を通過する光を、発散した状態ではなく平行光または収束光として観察者の眼に到達させることができる。このため、観察者は、実在感(奥行き感)に優れ、かつ、高精細な立体映像を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明における第1の実施の形態としての空間像表示装置の一構成例を表す概略図である。
【図2】図1に示した第1レンズアレイ1の構成を表す斜視図、および表示部2の画素22の配置を表す平面図である。
【図3】図1に示した第2レンズアレイ3の構成を表す斜視図である。
【図4】図1に示した偏向部4における液体光学素子41の構成を示す斜視図である。
【図5】図1に示した空間像表示装置において立体映像を観測する際の動作を説明するための概念図である。
【図6】第1の変形例としての液体光学素子41Aの構成を示す斜視図である。
【図7】第2の変形例としての第1レンズアレイ1Aの斜視構成、およびその透過光の進行する様子を表す概念図である。
【図8】第3の変形例としての空間像表示装置10Bの、水平面内における一構成例を表す概略図である。
【図9】図8に示した拡散板の斜視構成、およびその透過光の進行する様子を表す概念図である。
【図10】第4の変形例としての第1レンズアレイ1Bの斜視構成、およびその透過光の進行する様子を表す概念図である。
【図11】本発明における第2の実施の形態としての空間像表示装置の一構成例を表す概略図である。
【図12】図11に示した空間像表示装置におけるレンズユニットの一構成例を表す概略図である。
【図13】光源と、レンズを透過する光の広がりとの関係を説明するための概念図である。
【図14】ディスプレイからの光線の種類と、観察者が認識する像との関係を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(第1および第2のレンズアレイの間に2次元画像生成手段が配置された例)
2.第2の実施の形態(第1のレンズアレイよりも光源側に2次元画像生成手段が配置された例)
【0015】
[第1の実施の形態]
まず、図1〜図4を参照し、本発明における第1の実施の形態としての空間像表示装置10(後述の変形例や第2の実施の形態との区別のため、これ以降、空間像表示装置10Aと表記する)について説明する。図1は、空間像表示装置10Aの、水平面内における一構成例を表すものである。図2(A)は、図1に示した第1レンズアレイ1の斜視構成を表し、図2(B)は、図1に示した表示部2のXY平面での画素22の配置を表している。図3は、図1に示した第2レンズアレイ3の斜視構成を表すものである。図4は、図1に示した偏向部4(後述)の具体的な構成を表すものである。
【0016】
<空間像表示装置の構成>
図1に示したように、空間像表示装置10Aは、光源(図示せず)の側から、第1レンズアレイ1、画素22(後述)を複数有する表示部2、第2レンズアレイ3、偏向部4、を順に備えている。
【0017】
第1レンズアレイ1は、光軸(Z軸)と直交する面(XY平面)に沿ってマトリクス状に並ぶ複数のマイクロレンズ11(11a,11b,11c)を有している(図2(A))。マイクロレンズ11は、それぞれ光源からのバックライトBLを集光し、対応する各画素22へ向けて射出するものである。マイクロレンズ11は、レンズ面が球面であり、光軸を含む水平面(XZ平面)を通過する光の焦点距離と、光軸を含み水平面と直交する面(YZ平面)を通過する光の焦点距離とが互いに一致するものである。全てのマイクロレンズ11は、互いに等しい焦点距離f11を有することが望ましい。バックライトBLとしては、蛍光灯などの拡散光をそのまま用いてもよいが、そのような拡散光をコリメータレンズなどによって平行化した平行光を用いることが望ましい。第2レンズアレイ3において平行光もしくは収束光に変換し易くなるからである。なお、第2レンズアレイ3の構成や機能の詳細については後述する。バックライトBLとして拡散光をそのまま第1レンズアレイ1へ入射する場合、光源と第1レンズアレイ1との間隔を大きくするほど、第1レンズアレイ1へ入射する直前のバックライトBLの平行度が高くなる。反対に、光源と第1レンズアレイ1との間隔を小さくするほど、第1レンズアレイ1へ入射するバックライトBLの平行度は低くなる。このような第1レンズアレイ1へ入射するバックライトBLの平行度は、第2レンズアレイ3からの射出光の平行度に反映される。そのため、用途に応じて(すなわち、表示する空間像の仮想位置と表示部との距離に応じて)第2レンズアレイ3からの射出光の平行度を調整すればよい。
【0018】
表示部2は、映像信号に応じた2次元表示画像を生成するものであり、具体的にはバックライトBLが照射されることにより表示画像光を射出するカラー液晶デバイスである。表示部2は、第1レンズアレイ1の側からガラス基板21と、それぞれ画素電極および液晶層を含む複数の画素22と、ガラス基板23とが順に積層された構造を有している。ガラス基板21およびガラス基板23は透明であり、いずれか一方には赤(R),緑(G),青(B)の着色層を有するカラーフィルタが設けられている。このため、画素22は、赤色を表示する画素22Rと、緑色を表示する画素22Gと、青色を表示する画素22Bとに分類される。この表示部2では、例えば、図2(B)に示したように、X軸方向においては画素22Rと、画素22Gと、画素22Bとが順に繰り返し配置される一方、Y軸方向においては同色の画素22が揃うように配置されている。本明細書では、便宜上、X軸方向に並ぶ画素22を行と呼び、Y軸方向に並ぶ画素22を列と呼ぶ。
【0019】
各画素22は、XY平面においてY軸方向に延在する矩形状をなしており、Y軸方向に並ぶ一群のマイクロレンズ11a〜11cからなるマイクロレンズ群12(図2(A))に対応して設けられている。すなわち、第1レンズアレイ1と表示部2とは、マイクロレンズ群12のマイクロレンズ11a〜11cを通過した光が各画素22の有効領域内のスポットSP1〜SP3に集光するような位置関係となっている(図2(A)および図2(B))。例えば、マイクロレンズ群12nのマイクロレンズ11a〜11cを通過した光は、画素22RnのスポットSP1〜SP3に集光する。同様に、マイクロレンズ群12n+1からの光は画素22Rn+1に集光し、マイクロレンズ群12n+2からの光は画素22Rn+2に集光する。なお、1つのマイクロレンズ11に対応して1つの画素22が配置されていてもよいし、2または4以上のマイクロレンズ11に対応して1つの画素22が配置されていてもよい。
【0020】
第2レンズアレイ3は、第1レンズアレイ1および表示部2を通過して集光された光を水平面内において平行光もしくは収束光に変換して射出するものである。具体的には、第2レンズアレイ3は、いわゆるレンチキュラーレンズであり、例えば図3に示したように、Y軸に沿った軸を中心とした円柱面を各々有する複数のシリンドリカルレンズ31がX軸方向に並ぶように配置されたものである。したがって、シリンドリカルレンズ31は、光軸(Z軸)を含む水平面において屈折力を発揮する。図1では、X軸方向に沿って並ぶ9列の画素22ごとに1つのシリンドリカルレンズ31が設けられているが、この数はこれに限定されるものではない。また、シリンドリカルレンズ31は、Y軸から所定の角度θ(θ<45°)だけ傾いた軸を中心とした円柱面を有するものとしてもよい。全てのシリンドリカルレンズ31は、互いに等しい焦点距離f31を有することが望ましい。また、第1レンズアレイ1と第2レンズアレイ3との距離f13は、各々の焦点距離の合計、すなわちマイクロレンズ11の焦点距離f11とシリンドリカルレンズ31の焦点距離f31との合計|f11+f31|と一致し、もしくはその合計よりも大きい。距離f13が|f11+f31|と一致する場合には、バックライトBLが平行光であれば、シリンドリカルレンズ31からの射出光も平行光となる。一方、距離f13が|f11+f31|よりも大きい場合には、バックライトBLが平行光であれば、シリンドリカルレンズ31からの射出光は収束光となる。
【0021】
偏向部4は、複数の液体光学素子41を有しており、それによって第2レンズアレイ3から射出された光を、画素22ごとに、または一群の画素22を一単位として水平面内(XZ平面内)において偏向するものである。
【0022】
図4(A)〜図4(C)に、液体光学素子41の具体的な斜視構成を表す。図4(A)に示したように、液体光学素子41は、光軸(Z軸)上において、互いに屈折率および界面張力の異なる透明な無極性液体42および極性液体43が、銅などからなる一対の電極44A,44Bの間に挟まれるように配置されたものである。一対の電極44A,44Bは、それぞれ、透明な底板45および天板46と絶縁性のシール部47を介して接着され、固定されている。電極44A,44Bは、それぞれの外表面と接続された端子44AT,44BTを介して外部電源(図示せず)と接続されている。天板46は、酸化インジウム錫(ITO:Indium Tin Oxide)や酸化亜鉛(ZnO)などの透明な導電材料によって構成され、接地電極として機能する。電極44A,44Bはそれぞれ制御部(図示せず)と接続されており、所定の大きさの電位に設定できるようになっている。なお、電極44A,44Bと異なる側面(XZ平面)は図示しないガラス板などで覆われており、無極性液体42および極性液体43が完全に密閉された空間に封入された状態となっている。無極性液体42および極性液体43は、その閉空間において互いに溶解せずに分離して存在し、界面41Sを形成している。
【0023】
電極44A,44Bの内表面(互いの対向面)44AS,44BSは、疎水性絶縁膜によって覆われていることが望ましい。この疎水性絶縁膜は、極性液体43に対して疎水性(撥水性)を示す(より厳密には無電界下において無極性液体42に親和性を示す)と共に、電気的絶縁性に優れた性質を有する材料からなるものである。具体的には、フッ素系の高分子であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。但し、電極44Aと電極44Bとの電気的絶縁性をより高めることを目的として、電極44Aおよび電極44Bと上記の疎水性絶縁膜との間に例えばスピン・オン・グラス(SOG)などからなる他の絶縁膜を設けるようにしてもよい。
【0024】
無極性液体42は、ほとんど極性を有さず、かつ、電気絶縁性を示す液体材料であり、例えばデカン、ドデカン、ヘキサデカンもしくはウンデカンなどの炭化水素系材料のほか、シリコンオイルなどが好適である。無極性液体42は、電極44Aと電極44Bとの間に電圧を印加しない場合において、底板45の表面を全て覆う程度に十分な容量を有していることが望ましい。
【0025】
一方、極性液体43は、極性を有する液体材料であり、例えば水のほか、塩化カリウムや塩化ナトリウムなどの電解質を溶解させた水溶液が好適である。極性液体43に電圧を印加すると、疎水性絶縁膜に対する濡れ性(極性液体43と疎水性絶縁膜との接触角)が無極性液体42と比べて大きく変化する。極性液体43は、接地電極としての天板46と接している。
【0026】
一対の電極44A,44Bと底板45および天板46とに囲まれるように封入された無極性液体42および極性液体43は、互いに混在することなく分離し、界面41Sを形成する。なお、無極性液体42および極性液体43は互いにほぼ同等の比重を有するように調整されており、無極性液体42と極性液体43との位置関係は封入する順序で決定される。無極性液体42および極性液体43は透明であることから、界面41Sを透過する光は、その入射角と無極性液体42および極性液体43の屈折率とに応じて屈折する。
【0027】
この液体光学素子41では、電極44A,44Bの間に電圧が印加されていない状態(電極44A,44Bの電位がいずれも零である状態)では、図4(A)に示したように、界面41Sは、極性液体43の側から無極性液体42へ向けて凸の曲面をなす。内表面44ASに対する無極性液体42の接触角42θA、および内表面44BSに対する無極性液体42の接触角42θBは、内表面44AS,44BSを覆う疎水性絶縁膜の材料種によって調整することができる。ここで、無極性液体42が極性液体43よりも大きな屈折率を有していれば、液体光学素子41は負の屈折力を発揮する。これに対し、無極性液体42が極性液体43よりも小さな屈折率を有していれば、液体光学素子41は正の屈折力を発揮する。例えば、無極性液体42が炭化水素系材料またはシリコンオイルであり、極性液体43が水または電解質水溶液であれば、液体光学素子41が負の屈折力を発揮することとなる。界面41SはY軸方向においては一定の曲率を有し、その曲率はこの状態(電極44A,44Bの間に電圧を印加しない状態)が最大となる。
【0028】
電極44A,44Bの間に電圧が印加されると、例えば図4(B)に表したように界面41Sの曲率が小さくなり、ある一定以上の電圧を印加すると平面となる。すなわち、接触角42θA,42θBがいずれも直角(90°)となる。この現象は以下のように推察される。すなわち、電圧印加により、内表面44AS,44BS(またはそれを覆う疎水性絶縁膜の表面)に電荷が蓄積され、その電荷のクーロン力によって、極性を有する極性液体43が内表面44AS,44BS(または疎水性絶縁膜)へ引き寄せられる。すると、極性液体43が内表面44AS,44BS(または疎水性絶縁膜)と接触する面積を拡大する一方、無極性液体42が内表面44AS,44BS(または疎水性絶縁膜)と接触する部分から極性液体43によって排除されるように移動(変形)し、結果として界面41Sが平面に近づくこととなる。なお、図4(B)は、電極44Aの電位(Vaとする)と電極44Bの電位(Vbとする)とが互いに等しい(Va=Vb)場合を示している。電位Vaと電位Vbとが異なる場合には、例えば図4(C)に表したように、X軸およびZ軸に対して傾斜した平面(Y軸に対しては平行な面)となる(42θA≠42θB)。なお、図4(C)は、電位Vaよりも電位Vbが大きい(接触角42θAよりも接触角42θBが大きい)場合を示している。この場合、例えば電極44A,44Bと平行に進行して液体光学素子41へ入射した入射光φは、界面41SにおいてXZ平面内で屈折し、偏向される。したがって、電位Vaおよび電位Vbの大きさを調整することで、入射光φをXZ平面内の所定の向きへ偏向可能となる。
【0029】
<空間像表示装置の動作>
次に、空間像表示装置10Aの動作について、図5を参照して説明する。
【0030】
一般に、観測者は、ある物体上の物点を観測するとき、その物点を点光源として発射される球面波を観測することにより、3次元空間の固有な場所に存在する「点」として認識している。通常、自然界においては物体から発射される波面は同時に進行し、かつ常に連続的に、ある波面形状を伴って観測者に到達する。ところが、現状ではホログラフィ技術を除いては、空間の各点における光波の波面を同時かつ連続的に再現することは困難である。しかしながら、ある仮想物体があって、その仮想の各点からの光波が発射され、それぞれの光波が観測者に到達する時刻が多少不正確であっても、また連続的に到達するのではなく間歇的な光信号として到達しても、人の眼にはこの積分作用があることによって、不自然な感覚を感じることなく仮想物体を観測することができる。本実施の形態の空間像表示装置10Aでは、この人の眼の積分作用を利用して空間各点の波面を時系列的に順序立てて高速に形成することにより、従来よりも自然な3次元画像を形成することができる。
【0031】
空間像表示装置10Aでは、以下のようにして空間像を表示することができる。図5は、空間像表示装置10Aを使用して観測者I,IIが立体映像としての仮想物体IMGを観測している状態を上方から眺めた場合の概念図である。以下、その動作原理を説明する。
【0032】
例えば、仮想物体IMGにおける任意の仮想物点(例えば仮想物点B)の映像光波は次のように形成される。まず、左右それぞれの眼に対応した2種類の画像を表示部2に表示する。その際、光源からバックライトBL(ここでは図示せず)を第1レンズアレイ1に照射し、複数のマイクロレンズ11を透過する光を、それぞれに対応する画素22へ向けて集光させる。例えば、図2(A)に示したように、マイクロレンズ群12nのマイクロレンズ11a〜11cを通過した光を、画素22RnのスポットSP1〜SP3に集光させる。各画素22に到達した光は、表示画像光として発散しながら第2レンズアレイ3へ向かう。各画素22からの表示画像光は、第2レンズアレイ3を通過する際、平行光もしくは収束光に変換される。当然、2つの画像を同時に表示することは不可能であるので、それぞれの画像は順次表示されて最終的にそれぞれ左右の眼に順次送られる。例えば、仮想物点Cに対応することとなる画像は、表示部2における点CL1(左眼用)および点CR1(右眼用)にそれぞれ表示される。その際、表示部2における点CL1(左眼用)および点CR1(右眼用)に位置する画素22に対し、それぞれに対応するマイクロレンズ11から収束光が照射される。表示部2から射出される表示画像光は、第2レンズアレイ3、水平方向の偏向部4を順次透過したのち観測者IIの左眼IILおよび右眼IIRに各々到達する。同様に、観測者Iに対する仮想物点Cの画像は表示部2における点BL1(左眼用)および点BR1(右眼用)にそれぞれ表示され、第2レンズアレイ3、水平方向の偏向部4を順次透過したのち観測者Iの左眼ILおよび右眼IRに各々到達する。この動作は人の眼の積分効果の時定数内に高速に行われるので、観測者I,IIは画像が順次送られてきていることを認識することはなく、仮想物点Cを認識することができる。
【0033】
第2レンズアレイ3から射出された表示画像光は、水平面内において平行光または収束光として偏向部4へ向かう。偏向部4の点CL2,CR2に到達した光波は水平面内において所定方向へ偏向され、それぞれ観測者IIの左眼IILおよび右眼IIRへ向かって放射される。ここで、例えば、偏向角が観測者IIの左眼IILに向いたときに表示画像光の波面が点CL2に到達し、偏向角が観測者IIの右眼IIRに向いたときに表示画像光の波面が点CR2に到達するように、偏向部4による偏向角に同期して表示部2が画像光を送り出すようにする。偏向部4からの表示画像光の波面が観測者IIの左眼IILおよび右眼IIRに到達することにより、観測者IIは仮想物体IMG上の仮想物点Cを3次元空間中の一点として認識することができる。仮想物点Bについても同様に、表示部2の点BL1,BR1から放射された画像光は、第2レンズアレイ3を経たのち、それぞれ偏向部4の点BL2,BR2に到達する。点BL2,BR2に到達した光波は水平面内において所定方向へ偏向され、それぞれ観測者IIの左眼IILおよび右眼IIRへ向かって放射される。なお、図5では、表示部2の点BL1,BR1において、観測者Iに対する仮想物点Cの画像を表示すると共に観測者IIに対する仮想物点Bの画像を表示する様子を表しているが、これらは同時に表示されるのではなく、互いに異なるタイミングで表示される。
【0034】
このように、空間像表示装置10Aでは、バックライトBLを、第1レンズアレイ1の各マイクロレンズ11によって対応する各画素22の有効領域内のスポットに一旦集光させたのち、表示部2からの表示画像光を第2レンズアレイ3へ向けて発散させている。このため、第2レンズアレイ3に入射する表示画像光は、あたかも点光源から射出された光のように振る舞う。表示部2からの表示画像光は、第2レンズアレイ3によって水平面内において平行光もしくは収束光に変換される。したがって、表示画像光を、水平面内において発散した状態ではなく平行光または収束光として観察者の眼に到達させることができる。このため、観察者は、実在感(奥行き感)に優れ、かつ、高精細な立体映像(空間像)を認識することができる。特に、第2レンズアレイ3によって水平面内において平行光に変換するようにした場合には、空間像表示装置10Aに対する観察者の相対位置が特定されることがないので、より多くの観察者が同時に高精細な立体映像(空間像)を認識することができる。また、偏向部4において液体光学素子41を用いるようにしたので、ガラス板などの偏向板を用いる場合よりもコンパクトな構成を実現することができる。
【0035】
(変形例1)
次に、本実施の形態における第1の変形例(変形例1)について説明する。本実施の形態では、第2レンズアレイ3をレンチキュラーレンズによって構成し、水平面内においてのみ表示画像光の平行化を行うようにした。これに対し、本変形例では、等方的な屈折力を有する球面レンズを複数配置することによって第2レンズアレイ3を構成する。さらに、偏向部4を、図6に表した液体光学素子41Aによって構成する。液体光学素子41Aは、Y軸に沿って対向する一対の電極48A,48Bをさらに備えたことを除き、他は液体光学素子41と同様の構成を有するものである。電極48A,48Bは、それぞれ、銅などからなり、シール部49を介して底板45、天板46、電極44A,44Bの各々と絶縁されている。電極48A,48Bは、それぞれの外表面と接続された端子48AT,48BTを介して外部電源(図示せず)と接続されている。液体光学素子41Aでは、電極44A,44Bの間に電圧を印加するのに加え、電極48A,48Bの間にも電圧を印加することにより、界面41SがY軸に対しても傾斜することとなる。したがって、電極48Aの電位および電極48Bの電位の大きさを調整することで、入射光φをYZ平面における所定の向きにも(鉛直方向にも)偏向可能となる。そうした場合には、観測者の両眼を結ぶ仮想線が水平方向から外れている(傾いている)場合(例えば観測者が寝転んだ姿勢をとった場合)であっても、左右の眼に対して所定の画像が到達することとなるので立体視が可能となる。
【0036】
(変形例2)
次に、図7参照して、上記第1の実施の形態における第2の変形例(変形例2)について説明する。本変形例は、第1レンズアレイ1の代わりに第1レンズアレイ1Aを備えるようにしたものである。図7は、第1レンズアレイ1Aの斜視構成と共に、第1レンズアレイ1Aを透過した光の進行する様子(光軸と直交する面での光の広がりの変化)を表している。
【0037】
図7に示したように、第1レンズアレイ1Aにおけるマイクロレンズ11Aは、光軸を含む第1の平面(XZ平面)における焦点位置CP1と、光軸を含む第2の平面(XY平面)における焦点位置CP2とが互いに異なるものである。すなわち、マイクロレンズ11Aのレンズ面は楕円球状を有しており、そのマイクロレンズ11Aを透過する光は、XZ平面においては焦点位置CP1に焦点を結び、XY平面においては焦点位置CP2に焦点を結ぶようになっている。この場合、例えば焦点位置CP1または焦点位置CP2において画素22を通過するようにする。但し、各画素22の有効領域内にマイクロレンズ11からの光の外縁(透過領域)が収まるのであれば、画素22の位置は特に限定されない。
【0038】
本変形例の場合、マイクロレンズ11Aによって鉛直方向に表示画像光が拡散されるので、観察者が画面の上下方向(鉛直方向)に多少ずれた位置に立っていたとしても、観察者は空間像を視認することができる。なお、上記第1の実施の形態の構成であっても、第2レンズアレイ3がレンチキュラーレンズであるので、鉛直方向においてマイクロレンズ11によって定まる発散角が得られる。しかしながら、そのマイクロレンズ11によって定まる発散角が小さく、観察者が空間像を認識することができる空間像表示装置10Aと観察者との相対位置の許容範囲(観察可能範囲)が十分に確保できない場合もある。そこで、本変形例のように、レンズ面が楕円球状をなすマイクロレンズ11Aを用いることで、鉛直方向における観察可能範囲をやや広げることができる。
【0039】
(変形例3)
次に、図8および図9を参照して、本実施の形態における第3の変形例(変形例3)としての空間像表示装置10Bについて説明する。図8は、空間像表示装置10Bの、水平面内における一構成例を表すものである。
【0040】
空間像表示装置10Bは、偏向部4の投影側に拡散板5をさらに備えるようにしたものである。図9は、図8に示した拡散板5の斜視構成と共に、拡散板5を透過した光の進行する様子(光軸と直交する面での光の広がりの変化)を表している。拡散板5は、偏向部4からの光を鉛直方向(Y軸方向)のみに拡散させるものである。偏向部4からの光は、X軸方向には拡散しないようになっている。このような拡散板5としては、例えばレンズ拡散板(米国Luminit,LLC社;型番LSD40×0.2など)を用いるとよい。あるいは、例えば図3に示した第2レンズアレイ3のように、複数のシリンドリカルレンズが配列されたレンチキュラーレンズを用いてもよい。但し、この場合、シリンドリカルレンズはX軸に沿った軸を中心とした円柱面を有するものとし、それらをY軸方向に配列させるようにする。さらに、シリンドリカルレンズの円柱面の曲率をなるべく大きくし、Y軸方向の単位長さあたりのレンチキュラーレンズの数を大きくするほうがよい。なお、ここでは、拡散板5は、第2レンズアレイ3の投影側に配置されているが、第1レンズアレイ1と第2レンズアレイ3との間に配置するようにしてもよい。
【0041】
本変形例では、拡散板5によって鉛直方向に表示画像光を拡散するようにしたので、変形例2と同様に、観察者が画面の上下方向(鉛直方向)に多少ずれた位置に立っていたとしても、観察者は空間像を視認することができる。その場合の鉛直方向における観察可能範囲は、変形例2よりもさらに広げることが可能である。
【0042】
(変形例4)
次に、図10を参照して、本実施の形態における第4の変形例(変形例4)としての第1レンズアレイ1Bについて説明する。図10は、第1レンズアレイ1Bの斜視構成と共に、第1レンズアレイ1Bを透過した光の進行する様子(光軸と直交する面での光の広がりの変化)を表している。
【0043】
図10に示したように、第1レンズアレイ1Bは、鉛直方向(Y軸方向)に沿った軸を中心とした円柱面を各々有する複数のシリンドリカルレンズ12がX軸方向に並列配置されたものである。シリンドリカルレンズ12は、水平面内(XZ平面)においてのみバックライトBLを集光するように機能する。すなわち、シリンドリカルレンズ12を透過する光は、XZ平面においては焦点位置CP1に焦点を結ぶようになっている。この場合、例えば焦点位置CP1において画素22を通過するようにする。但し、各画素22の有効領域内にシリンドリカルレンズ12からの光の外縁(透過領域)が収まるのであれば、画素22の位置は特に限定されない。
【0044】
本変形例においても、上記第1の実施の形態と同様の効果が得られる。なお、この場合においても、上記変形例3における拡散板5を併せて設けるようにすれば、変形例3と同様の効果が得られる。また、本変形例の第1レンズアレイ1Bは、マイクロレンズアレイ11,11Aを有する第1レンズアレイ1,1Aと比べ、より簡便かつ高精度に製作可能である。すなわち、各シリンドリカルレンズ12におけるXZ平面の断面形状は一定であるので、金型を作製する際にはY軸に沿って切削し、Y軸方向に延在する溝を形成すればよい。これに対し、X軸方向およびY軸方向の双方に複数配列されたマイクロレンズアレイ11,11Aの金型を作製するにはNC旋盤等を用いて1つ1つのレンズ面を個別に作製する必要がある。このため、煩雑であるうえ、マイクロレンズアレイ11,11A同士の相対位置の誤差が生じやすい。
【0045】
[第2の実施の形態]
次に、図11および図12を参照して、本発明における第2の実施の形態としての空間像表示装置10Cについて説明する。図11は、空間像表示装置10Cの全体構成を表す概略図である。図12は、図11に示した破線に囲まれた領域の一部を拡大したものである。
【0046】
空間像表示装置10Cは、いわゆるリアプロジェクタ型ディスプレイであり、筐体60の内部に投射光学ユニット61と、反射ミラー62と、レンズユニット63とを備えたものである。この空間像表示装置10Cでは、投射光学ユニット61の内部に2次元表示画像を生成する表示部(図示せず)を有しており、その表示部から射出された表示画像光が反射ミラー62を経由してレンズユニット63へ到達するようになっている。図12に、レンズユニット63の水平面内における一構成例を示す。図12に示したように、レンズユニット63は、投射光学ユニット61の側から、フレネルレンズ7、第1レンズアレイ1、第2レンズアレイ3、偏向部4が順に配置されたものである。フレネルレンズ7は、投射光学ユニット61から反射ミラー62を経て入射される表示画像光を平行光に変換するものである。なお、第1レンズアレイ1、第2レンズアレイ3および偏向部4は、上記第1の実施の形態のものと同様であるので、説明を省略する。投射光学ユニット61からの表示画像光は、赤(R),緑(G),青(B)の各色光が合成されずに分離された状態で射出され、画素22R,画素22Gおよび画素22Bの各々に対応したマイクロレンズ11に各色光が分離されたまま入射するようになっている。各マイクロレンズ11から射出された表示画像光は集光したのち第2レンズアレイ3へ入射し、第2レンズアレイ3によって平行光もしくは収束光に変換されて偏向部4へ向かう。偏向部4に到達した表示画像光は、適切な方向へ偏向され、観察者に到達することとなる。
【0047】
このように、表示部を第1レンズアレイ1と第2レンズアレイ3との間ではなく、第1レンズアレイ1の入射側に配置するようにした場合であっても、上記第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0048】
なお、本実施の形態では、第1レンズアレイ1と第2レンズアレイ3との間の結像点の近傍に、鉛直方向に光を拡散させる拡散板(異方性拡散板)や、鉛直方向および水平方向の双方に光を拡散させる拡散板(等方性拡散板)を配置するようにしてもよい。その場合、鉛直方向における観察可能範囲を広げることができ、観察者が画面の上下方向(鉛直方向)に多少ずれた位置に立っていたとしても、観察者は空間像を視認することができる。また、本実施の形態においても、上記第1の実施の形態に示した第1〜第4の変形例をそれぞれ適用することが可能であり、同様の効果が得られる。
【0049】
以上、いくつかの実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。例えば上記実施の形態等では、表示デバイスとして液晶デバイスを利用した例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば有機EL素子、プラズマ発光素子、フィールドエミッション(FED)素子、あるいは発光ダイオード(LED)などの自発光素子をアレイ状に配設したものを表示デバイスとして適用することもできる。このような自発光型の表示デバイスを用いた場合には、バックライト用の光源を別途設ける必要がないので、より簡素な構成を実現することができる。また、上記実施の形態等で説明した液晶デバイスは透過型のライトバルブとして機能するものであるが、GLV(グレーティングライトバルブ)やDMD(デジタルマルチミラー)などの反射型のライトバルブを表示デバイスとして用いることも可能である。
【0050】
また、上記第1の実施の形態における変形例1では、表示画像光を偏向部4において水平方向の偏向および鉛直方向の偏向を同時に行うようにしたが、水平方向の偏向と、鉛直方向の偏向とを別の手段によって個別に行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10…空間像表示装置、1…第1レンズアレイ、11…マイクロレンズ、12…マイクロレンズ群、21…ガラス基板、22…画素、23…ガラス基板、3…第2レンズアレイ、4…偏向部、41…偏向素子、41S…界面、42…無極性液体,43…極性液体、44A,44B…電極、45…底板、46…天板、47…シール部、5…拡張板、60…筐体、61…投射光学ユニット、62…反射ミラー、63…レンズユニット、7…フレネルレンズ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間に物体の立体映像を表示する空間像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体映像の生成は、人間の持つ認識生理機能を利用することにより実現されるものである。すなわち、観察者は、左右の眼に入る画像のズレ(両眼視差)や輻輳角からの認識、眼の水晶体の焦点距離を眼の毛様体やチン小体を使って調節する際に起こる生理機能(焦点距離調整機能)からの認識、および運動したときに見える画像の変化による認識(運動視差)に基づき、脳で総合的に処理する過程で立体を認識している。上記の認識生理機能のうち「両眼視差」や「輻輳角」を利用した従来の立体映像の生成方法としては、例えば、左右、色の異なる眼鏡をかけて左右の眼にそれぞれ異なる画像(視差画像)を送る方法や、液晶シャッタの付いたゴーグルをかけて液晶シャッタを高速に切り替えて左右の眼に視差画像を送る方法などがある。また、2次元表示装置に左右のそれぞれの眼に対応した画像を映しこれをレンチキュラーレンズで左右のそれぞれの眼に振り分けることによって立体画像を表現する方法も存在する。さらに、レンチキュラーレンズを用いる方法に類似したものとして、液晶ディスプレイ表面にマスクを設け右眼には右眼用の画像が左眼には左眼用の画像が見えるようにすることによって立体像を表現する方法も開発されている。
【0003】
ところが、上記のような特別な眼鏡やゴーグルを使用して視差画像を得る方法は、観察者にとって非常に煩わしいものである。一方、レンチキュラーレンズを用いる方法等では、1つの2次元画像表示装置の領域を右眼用の領域と左眼用の領域とに分割する必要があるので、高精細な画像の表示には適さないという問題がある。
【0004】
そこで、近年、光線再生法に基づく空間像表示装置の検討が進められている(例えば非特許文献1参照)。光線再生法とは、ディスプレイから放射される多数本の光線で空間像を表現しようとするものであり、理論的には、裸眼観察であっても正確な運動視差情報と焦点距離情報とを観察者に提供し、比較的、眼精疲労の少ない空間像が得られるものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】高木康博,「立体映像とフラットパネル型立体表示技術」,光学,第35巻,第8号,2006年,p.400−406
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の光線再生法であっても、実際には、ディスプレイの表示面から(それと垂直な方向へ)離れた位置に認識させるような空間像を得ようとした場合、ディスプレイの表示面からの距離が大きくなるほどその空間像の実在感や精細度が劣化してしまう。これは、ディスプレイの表示面に表示される2次元表示画像が、それぞれ有限の大きさを有する複数の画素によって構成されているため、観察者の眼に発散光として到達するからであると考えられる。以下、図12および図13を参照して上記の現象について詳細に説明する。
【0007】
図13(A)および図14(A)は、光線再生法に基づく空間像を観察者が認識している理想的な状態を表す概念図である。図13(A)では、ある空間像を構成する任意の点像Z1を所定の位置に形成する場合を考える。点像Z1を形成するには、ディスプレイDP上の複数の画素(ここでは3つの画素PX1〜PX3を代表して表す)から、点像Z1を配置したい位置を通過するように光線L1〜L3をそれぞれ放射すればよい。放射された光線L1〜L3は、観察者の瞳Pを通して網膜Rに到達する。このとき、観察者の眼は、瞳Pを通過した各光線L1〜L3が網膜R上の一点に集まるように、眼に備わっている焦点距離可変レンズ(レンズ体)の焦点距離を自動的に調節する。調節された焦点距離は、空間像が配置された場所に実際に実物体が配置された場合と一致するので、観察者は、空間像(点像Z1)が、空間像を配置しようとした位置に配置されているかのように認識することができる。この際、画素PX1〜PX3が広がりを持たない点光源であれば、光線L1〜L3は、例えば図14(A)に表したように、その点光源LS1から自らの焦点距離FLだけ離れた位置にある投影レンズLNを通過する光線L1〜L3は、その太さが変わらない平行光Lpをそれぞれ形成する。
【0008】
ところが実際には、画素PX1〜PX3から放射された光線L1〜L3はそれぞれ発散光を形成する。これは、先に述べたように、各画素PX1〜PX3が有限の広がりを有する光源、すなわち点光源の集まりであることに起因する。具体的には図14(B)に表したように、有限領域に広がる光源LS2から自らの焦点距離FLだけ離れた位置にある投影レンズLNを通過する光線L1〜L3は、その太さが徐々に太くなる発散光Ldを形成する。一般に、発散光Ldの発散の度合いは、有限領域の光源の面積によって変わり、その面積が小さいほど平行光束に近づき、面積が大きいほど放射される光束の発散の度合いが大きくなる。したがって、この場合、各画素PX1〜PX3の占有面積にもよるが、観察者は、例えば図13(B)に示したように点像Z1そのものが有限の領域に広がるぼやけた像であると認識してしまう。その結果、複数の点像Z1が集まって構成される空間像も精細度に欠けるものとなる。あるいは、光線L1〜L3が発散光を形成することによって、図13(C)に示したように、観察者は、より鮮明な点像を求めてディスプレイDP上の画素G1〜G3そのものを見てしまうこととなる。この場合、単にディスプレイDP上に3つの異なる点像が認識されるだけである。このように、ディスプレイ上の画素からの光線が発散光を形成する場合には、空間像がぼやけてしまうか、空間像を認識することができなくなってしまう、という問題が起こる。この問題は、特に、空間像を、ディスプレイの表示面から離れた位置に認識させる場合に顕著となる。したがって、より奥行きのある空間像を観察者が認識できるような技術が求められる。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、実在感に優れ、かつ、高精細な空間像を形成することのできる空間像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の空間像表示装置は、複数の画素を有し映像信号に応じた2次元表示画像を生成する2次元画像生成手段と、画素の各々に対応して設けられ、画素の各々を通過する光を集光する複数の第1のレンズからなる第1のレンズアレイと、この第1のレンズアレイを通過して集光された光を平行光もしくは収束光に変換して射出する第2のレンズアレイとを備えるようにしたものである。ここで、「第1のレンズ」が「画素の各々に対応して設けられ」とは、1つの画素に対して1つの第1のレンズが配置される場合に限らず、1つの画素に対して複数の第1のレンズが配置される場合をも含む概念である。
【0011】
本発明の空間像表示装置では、2次元画像生成手段の各画素を通過する光が第1のレンズアレイによって集光されたのち、第2のレンズアレイに向かう。このため、第2のレンズアレイに入射する光が、あたかも点光源から射出された光のように振る舞うので、第1のレンズアレイによって集光された光は、第2のレンズアレイによって容易に平行光もしくは収束光に変換されて射出される。よって、観察者の眼には、平行光または収束光によって形成される空間像が認識される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の空間像表示装置によれば、2次元画像生成手段の各画素を通過する光を、発散した状態ではなく平行光または収束光として観察者の眼に到達させることができる。このため、観察者は、実在感(奥行き感)に優れ、かつ、高精細な立体映像を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明における第1の実施の形態としての空間像表示装置の一構成例を表す概略図である。
【図2】図1に示した第1レンズアレイ1の構成を表す斜視図、および表示部2の画素22の配置を表す平面図である。
【図3】図1に示した第2レンズアレイ3の構成を表す斜視図である。
【図4】図1に示した偏向部4における液体光学素子41の構成を示す斜視図である。
【図5】図1に示した空間像表示装置において立体映像を観測する際の動作を説明するための概念図である。
【図6】第1の変形例としての液体光学素子41Aの構成を示す斜視図である。
【図7】第2の変形例としての第1レンズアレイ1Aの斜視構成、およびその透過光の進行する様子を表す概念図である。
【図8】第3の変形例としての空間像表示装置10Bの、水平面内における一構成例を表す概略図である。
【図9】図8に示した拡散板の斜視構成、およびその透過光の進行する様子を表す概念図である。
【図10】第4の変形例としての第1レンズアレイ1Bの斜視構成、およびその透過光の進行する様子を表す概念図である。
【図11】本発明における第2の実施の形態としての空間像表示装置の一構成例を表す概略図である。
【図12】図11に示した空間像表示装置におけるレンズユニットの一構成例を表す概略図である。
【図13】光源と、レンズを透過する光の広がりとの関係を説明するための概念図である。
【図14】ディスプレイからの光線の種類と、観察者が認識する像との関係を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(第1および第2のレンズアレイの間に2次元画像生成手段が配置された例)
2.第2の実施の形態(第1のレンズアレイよりも光源側に2次元画像生成手段が配置された例)
【0015】
[第1の実施の形態]
まず、図1〜図4を参照し、本発明における第1の実施の形態としての空間像表示装置10(後述の変形例や第2の実施の形態との区別のため、これ以降、空間像表示装置10Aと表記する)について説明する。図1は、空間像表示装置10Aの、水平面内における一構成例を表すものである。図2(A)は、図1に示した第1レンズアレイ1の斜視構成を表し、図2(B)は、図1に示した表示部2のXY平面での画素22の配置を表している。図3は、図1に示した第2レンズアレイ3の斜視構成を表すものである。図4は、図1に示した偏向部4(後述)の具体的な構成を表すものである。
【0016】
<空間像表示装置の構成>
図1に示したように、空間像表示装置10Aは、光源(図示せず)の側から、第1レンズアレイ1、画素22(後述)を複数有する表示部2、第2レンズアレイ3、偏向部4、を順に備えている。
【0017】
第1レンズアレイ1は、光軸(Z軸)と直交する面(XY平面)に沿ってマトリクス状に並ぶ複数のマイクロレンズ11(11a,11b,11c)を有している(図2(A))。マイクロレンズ11は、それぞれ光源からのバックライトBLを集光し、対応する各画素22へ向けて射出するものである。マイクロレンズ11は、レンズ面が球面であり、光軸を含む水平面(XZ平面)を通過する光の焦点距離と、光軸を含み水平面と直交する面(YZ平面)を通過する光の焦点距離とが互いに一致するものである。全てのマイクロレンズ11は、互いに等しい焦点距離f11を有することが望ましい。バックライトBLとしては、蛍光灯などの拡散光をそのまま用いてもよいが、そのような拡散光をコリメータレンズなどによって平行化した平行光を用いることが望ましい。第2レンズアレイ3において平行光もしくは収束光に変換し易くなるからである。なお、第2レンズアレイ3の構成や機能の詳細については後述する。バックライトBLとして拡散光をそのまま第1レンズアレイ1へ入射する場合、光源と第1レンズアレイ1との間隔を大きくするほど、第1レンズアレイ1へ入射する直前のバックライトBLの平行度が高くなる。反対に、光源と第1レンズアレイ1との間隔を小さくするほど、第1レンズアレイ1へ入射するバックライトBLの平行度は低くなる。このような第1レンズアレイ1へ入射するバックライトBLの平行度は、第2レンズアレイ3からの射出光の平行度に反映される。そのため、用途に応じて(すなわち、表示する空間像の仮想位置と表示部との距離に応じて)第2レンズアレイ3からの射出光の平行度を調整すればよい。
【0018】
表示部2は、映像信号に応じた2次元表示画像を生成するものであり、具体的にはバックライトBLが照射されることにより表示画像光を射出するカラー液晶デバイスである。表示部2は、第1レンズアレイ1の側からガラス基板21と、それぞれ画素電極および液晶層を含む複数の画素22と、ガラス基板23とが順に積層された構造を有している。ガラス基板21およびガラス基板23は透明であり、いずれか一方には赤(R),緑(G),青(B)の着色層を有するカラーフィルタが設けられている。このため、画素22は、赤色を表示する画素22Rと、緑色を表示する画素22Gと、青色を表示する画素22Bとに分類される。この表示部2では、例えば、図2(B)に示したように、X軸方向においては画素22Rと、画素22Gと、画素22Bとが順に繰り返し配置される一方、Y軸方向においては同色の画素22が揃うように配置されている。本明細書では、便宜上、X軸方向に並ぶ画素22を行と呼び、Y軸方向に並ぶ画素22を列と呼ぶ。
【0019】
各画素22は、XY平面においてY軸方向に延在する矩形状をなしており、Y軸方向に並ぶ一群のマイクロレンズ11a〜11cからなるマイクロレンズ群12(図2(A))に対応して設けられている。すなわち、第1レンズアレイ1と表示部2とは、マイクロレンズ群12のマイクロレンズ11a〜11cを通過した光が各画素22の有効領域内のスポットSP1〜SP3に集光するような位置関係となっている(図2(A)および図2(B))。例えば、マイクロレンズ群12nのマイクロレンズ11a〜11cを通過した光は、画素22RnのスポットSP1〜SP3に集光する。同様に、マイクロレンズ群12n+1からの光は画素22Rn+1に集光し、マイクロレンズ群12n+2からの光は画素22Rn+2に集光する。なお、1つのマイクロレンズ11に対応して1つの画素22が配置されていてもよいし、2または4以上のマイクロレンズ11に対応して1つの画素22が配置されていてもよい。
【0020】
第2レンズアレイ3は、第1レンズアレイ1および表示部2を通過して集光された光を水平面内において平行光もしくは収束光に変換して射出するものである。具体的には、第2レンズアレイ3は、いわゆるレンチキュラーレンズであり、例えば図3に示したように、Y軸に沿った軸を中心とした円柱面を各々有する複数のシリンドリカルレンズ31がX軸方向に並ぶように配置されたものである。したがって、シリンドリカルレンズ31は、光軸(Z軸)を含む水平面において屈折力を発揮する。図1では、X軸方向に沿って並ぶ9列の画素22ごとに1つのシリンドリカルレンズ31が設けられているが、この数はこれに限定されるものではない。また、シリンドリカルレンズ31は、Y軸から所定の角度θ(θ<45°)だけ傾いた軸を中心とした円柱面を有するものとしてもよい。全てのシリンドリカルレンズ31は、互いに等しい焦点距離f31を有することが望ましい。また、第1レンズアレイ1と第2レンズアレイ3との距離f13は、各々の焦点距離の合計、すなわちマイクロレンズ11の焦点距離f11とシリンドリカルレンズ31の焦点距離f31との合計|f11+f31|と一致し、もしくはその合計よりも大きい。距離f13が|f11+f31|と一致する場合には、バックライトBLが平行光であれば、シリンドリカルレンズ31からの射出光も平行光となる。一方、距離f13が|f11+f31|よりも大きい場合には、バックライトBLが平行光であれば、シリンドリカルレンズ31からの射出光は収束光となる。
【0021】
偏向部4は、複数の液体光学素子41を有しており、それによって第2レンズアレイ3から射出された光を、画素22ごとに、または一群の画素22を一単位として水平面内(XZ平面内)において偏向するものである。
【0022】
図4(A)〜図4(C)に、液体光学素子41の具体的な斜視構成を表す。図4(A)に示したように、液体光学素子41は、光軸(Z軸)上において、互いに屈折率および界面張力の異なる透明な無極性液体42および極性液体43が、銅などからなる一対の電極44A,44Bの間に挟まれるように配置されたものである。一対の電極44A,44Bは、それぞれ、透明な底板45および天板46と絶縁性のシール部47を介して接着され、固定されている。電極44A,44Bは、それぞれの外表面と接続された端子44AT,44BTを介して外部電源(図示せず)と接続されている。天板46は、酸化インジウム錫(ITO:Indium Tin Oxide)や酸化亜鉛(ZnO)などの透明な導電材料によって構成され、接地電極として機能する。電極44A,44Bはそれぞれ制御部(図示せず)と接続されており、所定の大きさの電位に設定できるようになっている。なお、電極44A,44Bと異なる側面(XZ平面)は図示しないガラス板などで覆われており、無極性液体42および極性液体43が完全に密閉された空間に封入された状態となっている。無極性液体42および極性液体43は、その閉空間において互いに溶解せずに分離して存在し、界面41Sを形成している。
【0023】
電極44A,44Bの内表面(互いの対向面)44AS,44BSは、疎水性絶縁膜によって覆われていることが望ましい。この疎水性絶縁膜は、極性液体43に対して疎水性(撥水性)を示す(より厳密には無電界下において無極性液体42に親和性を示す)と共に、電気的絶縁性に優れた性質を有する材料からなるものである。具体的には、フッ素系の高分子であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。但し、電極44Aと電極44Bとの電気的絶縁性をより高めることを目的として、電極44Aおよび電極44Bと上記の疎水性絶縁膜との間に例えばスピン・オン・グラス(SOG)などからなる他の絶縁膜を設けるようにしてもよい。
【0024】
無極性液体42は、ほとんど極性を有さず、かつ、電気絶縁性を示す液体材料であり、例えばデカン、ドデカン、ヘキサデカンもしくはウンデカンなどの炭化水素系材料のほか、シリコンオイルなどが好適である。無極性液体42は、電極44Aと電極44Bとの間に電圧を印加しない場合において、底板45の表面を全て覆う程度に十分な容量を有していることが望ましい。
【0025】
一方、極性液体43は、極性を有する液体材料であり、例えば水のほか、塩化カリウムや塩化ナトリウムなどの電解質を溶解させた水溶液が好適である。極性液体43に電圧を印加すると、疎水性絶縁膜に対する濡れ性(極性液体43と疎水性絶縁膜との接触角)が無極性液体42と比べて大きく変化する。極性液体43は、接地電極としての天板46と接している。
【0026】
一対の電極44A,44Bと底板45および天板46とに囲まれるように封入された無極性液体42および極性液体43は、互いに混在することなく分離し、界面41Sを形成する。なお、無極性液体42および極性液体43は互いにほぼ同等の比重を有するように調整されており、無極性液体42と極性液体43との位置関係は封入する順序で決定される。無極性液体42および極性液体43は透明であることから、界面41Sを透過する光は、その入射角と無極性液体42および極性液体43の屈折率とに応じて屈折する。
【0027】
この液体光学素子41では、電極44A,44Bの間に電圧が印加されていない状態(電極44A,44Bの電位がいずれも零である状態)では、図4(A)に示したように、界面41Sは、極性液体43の側から無極性液体42へ向けて凸の曲面をなす。内表面44ASに対する無極性液体42の接触角42θA、および内表面44BSに対する無極性液体42の接触角42θBは、内表面44AS,44BSを覆う疎水性絶縁膜の材料種によって調整することができる。ここで、無極性液体42が極性液体43よりも大きな屈折率を有していれば、液体光学素子41は負の屈折力を発揮する。これに対し、無極性液体42が極性液体43よりも小さな屈折率を有していれば、液体光学素子41は正の屈折力を発揮する。例えば、無極性液体42が炭化水素系材料またはシリコンオイルであり、極性液体43が水または電解質水溶液であれば、液体光学素子41が負の屈折力を発揮することとなる。界面41SはY軸方向においては一定の曲率を有し、その曲率はこの状態(電極44A,44Bの間に電圧を印加しない状態)が最大となる。
【0028】
電極44A,44Bの間に電圧が印加されると、例えば図4(B)に表したように界面41Sの曲率が小さくなり、ある一定以上の電圧を印加すると平面となる。すなわち、接触角42θA,42θBがいずれも直角(90°)となる。この現象は以下のように推察される。すなわち、電圧印加により、内表面44AS,44BS(またはそれを覆う疎水性絶縁膜の表面)に電荷が蓄積され、その電荷のクーロン力によって、極性を有する極性液体43が内表面44AS,44BS(または疎水性絶縁膜)へ引き寄せられる。すると、極性液体43が内表面44AS,44BS(または疎水性絶縁膜)と接触する面積を拡大する一方、無極性液体42が内表面44AS,44BS(または疎水性絶縁膜)と接触する部分から極性液体43によって排除されるように移動(変形)し、結果として界面41Sが平面に近づくこととなる。なお、図4(B)は、電極44Aの電位(Vaとする)と電極44Bの電位(Vbとする)とが互いに等しい(Va=Vb)場合を示している。電位Vaと電位Vbとが異なる場合には、例えば図4(C)に表したように、X軸およびZ軸に対して傾斜した平面(Y軸に対しては平行な面)となる(42θA≠42θB)。なお、図4(C)は、電位Vaよりも電位Vbが大きい(接触角42θAよりも接触角42θBが大きい)場合を示している。この場合、例えば電極44A,44Bと平行に進行して液体光学素子41へ入射した入射光φは、界面41SにおいてXZ平面内で屈折し、偏向される。したがって、電位Vaおよび電位Vbの大きさを調整することで、入射光φをXZ平面内の所定の向きへ偏向可能となる。
【0029】
<空間像表示装置の動作>
次に、空間像表示装置10Aの動作について、図5を参照して説明する。
【0030】
一般に、観測者は、ある物体上の物点を観測するとき、その物点を点光源として発射される球面波を観測することにより、3次元空間の固有な場所に存在する「点」として認識している。通常、自然界においては物体から発射される波面は同時に進行し、かつ常に連続的に、ある波面形状を伴って観測者に到達する。ところが、現状ではホログラフィ技術を除いては、空間の各点における光波の波面を同時かつ連続的に再現することは困難である。しかしながら、ある仮想物体があって、その仮想の各点からの光波が発射され、それぞれの光波が観測者に到達する時刻が多少不正確であっても、また連続的に到達するのではなく間歇的な光信号として到達しても、人の眼にはこの積分作用があることによって、不自然な感覚を感じることなく仮想物体を観測することができる。本実施の形態の空間像表示装置10Aでは、この人の眼の積分作用を利用して空間各点の波面を時系列的に順序立てて高速に形成することにより、従来よりも自然な3次元画像を形成することができる。
【0031】
空間像表示装置10Aでは、以下のようにして空間像を表示することができる。図5は、空間像表示装置10Aを使用して観測者I,IIが立体映像としての仮想物体IMGを観測している状態を上方から眺めた場合の概念図である。以下、その動作原理を説明する。
【0032】
例えば、仮想物体IMGにおける任意の仮想物点(例えば仮想物点B)の映像光波は次のように形成される。まず、左右それぞれの眼に対応した2種類の画像を表示部2に表示する。その際、光源からバックライトBL(ここでは図示せず)を第1レンズアレイ1に照射し、複数のマイクロレンズ11を透過する光を、それぞれに対応する画素22へ向けて集光させる。例えば、図2(A)に示したように、マイクロレンズ群12nのマイクロレンズ11a〜11cを通過した光を、画素22RnのスポットSP1〜SP3に集光させる。各画素22に到達した光は、表示画像光として発散しながら第2レンズアレイ3へ向かう。各画素22からの表示画像光は、第2レンズアレイ3を通過する際、平行光もしくは収束光に変換される。当然、2つの画像を同時に表示することは不可能であるので、それぞれの画像は順次表示されて最終的にそれぞれ左右の眼に順次送られる。例えば、仮想物点Cに対応することとなる画像は、表示部2における点CL1(左眼用)および点CR1(右眼用)にそれぞれ表示される。その際、表示部2における点CL1(左眼用)および点CR1(右眼用)に位置する画素22に対し、それぞれに対応するマイクロレンズ11から収束光が照射される。表示部2から射出される表示画像光は、第2レンズアレイ3、水平方向の偏向部4を順次透過したのち観測者IIの左眼IILおよび右眼IIRに各々到達する。同様に、観測者Iに対する仮想物点Cの画像は表示部2における点BL1(左眼用)および点BR1(右眼用)にそれぞれ表示され、第2レンズアレイ3、水平方向の偏向部4を順次透過したのち観測者Iの左眼ILおよび右眼IRに各々到達する。この動作は人の眼の積分効果の時定数内に高速に行われるので、観測者I,IIは画像が順次送られてきていることを認識することはなく、仮想物点Cを認識することができる。
【0033】
第2レンズアレイ3から射出された表示画像光は、水平面内において平行光または収束光として偏向部4へ向かう。偏向部4の点CL2,CR2に到達した光波は水平面内において所定方向へ偏向され、それぞれ観測者IIの左眼IILおよび右眼IIRへ向かって放射される。ここで、例えば、偏向角が観測者IIの左眼IILに向いたときに表示画像光の波面が点CL2に到達し、偏向角が観測者IIの右眼IIRに向いたときに表示画像光の波面が点CR2に到達するように、偏向部4による偏向角に同期して表示部2が画像光を送り出すようにする。偏向部4からの表示画像光の波面が観測者IIの左眼IILおよび右眼IIRに到達することにより、観測者IIは仮想物体IMG上の仮想物点Cを3次元空間中の一点として認識することができる。仮想物点Bについても同様に、表示部2の点BL1,BR1から放射された画像光は、第2レンズアレイ3を経たのち、それぞれ偏向部4の点BL2,BR2に到達する。点BL2,BR2に到達した光波は水平面内において所定方向へ偏向され、それぞれ観測者IIの左眼IILおよび右眼IIRへ向かって放射される。なお、図5では、表示部2の点BL1,BR1において、観測者Iに対する仮想物点Cの画像を表示すると共に観測者IIに対する仮想物点Bの画像を表示する様子を表しているが、これらは同時に表示されるのではなく、互いに異なるタイミングで表示される。
【0034】
このように、空間像表示装置10Aでは、バックライトBLを、第1レンズアレイ1の各マイクロレンズ11によって対応する各画素22の有効領域内のスポットに一旦集光させたのち、表示部2からの表示画像光を第2レンズアレイ3へ向けて発散させている。このため、第2レンズアレイ3に入射する表示画像光は、あたかも点光源から射出された光のように振る舞う。表示部2からの表示画像光は、第2レンズアレイ3によって水平面内において平行光もしくは収束光に変換される。したがって、表示画像光を、水平面内において発散した状態ではなく平行光または収束光として観察者の眼に到達させることができる。このため、観察者は、実在感(奥行き感)に優れ、かつ、高精細な立体映像(空間像)を認識することができる。特に、第2レンズアレイ3によって水平面内において平行光に変換するようにした場合には、空間像表示装置10Aに対する観察者の相対位置が特定されることがないので、より多くの観察者が同時に高精細な立体映像(空間像)を認識することができる。また、偏向部4において液体光学素子41を用いるようにしたので、ガラス板などの偏向板を用いる場合よりもコンパクトな構成を実現することができる。
【0035】
(変形例1)
次に、本実施の形態における第1の変形例(変形例1)について説明する。本実施の形態では、第2レンズアレイ3をレンチキュラーレンズによって構成し、水平面内においてのみ表示画像光の平行化を行うようにした。これに対し、本変形例では、等方的な屈折力を有する球面レンズを複数配置することによって第2レンズアレイ3を構成する。さらに、偏向部4を、図6に表した液体光学素子41Aによって構成する。液体光学素子41Aは、Y軸に沿って対向する一対の電極48A,48Bをさらに備えたことを除き、他は液体光学素子41と同様の構成を有するものである。電極48A,48Bは、それぞれ、銅などからなり、シール部49を介して底板45、天板46、電極44A,44Bの各々と絶縁されている。電極48A,48Bは、それぞれの外表面と接続された端子48AT,48BTを介して外部電源(図示せず)と接続されている。液体光学素子41Aでは、電極44A,44Bの間に電圧を印加するのに加え、電極48A,48Bの間にも電圧を印加することにより、界面41SがY軸に対しても傾斜することとなる。したがって、電極48Aの電位および電極48Bの電位の大きさを調整することで、入射光φをYZ平面における所定の向きにも(鉛直方向にも)偏向可能となる。そうした場合には、観測者の両眼を結ぶ仮想線が水平方向から外れている(傾いている)場合(例えば観測者が寝転んだ姿勢をとった場合)であっても、左右の眼に対して所定の画像が到達することとなるので立体視が可能となる。
【0036】
(変形例2)
次に、図7参照して、上記第1の実施の形態における第2の変形例(変形例2)について説明する。本変形例は、第1レンズアレイ1の代わりに第1レンズアレイ1Aを備えるようにしたものである。図7は、第1レンズアレイ1Aの斜視構成と共に、第1レンズアレイ1Aを透過した光の進行する様子(光軸と直交する面での光の広がりの変化)を表している。
【0037】
図7に示したように、第1レンズアレイ1Aにおけるマイクロレンズ11Aは、光軸を含む第1の平面(XZ平面)における焦点位置CP1と、光軸を含む第2の平面(XY平面)における焦点位置CP2とが互いに異なるものである。すなわち、マイクロレンズ11Aのレンズ面は楕円球状を有しており、そのマイクロレンズ11Aを透過する光は、XZ平面においては焦点位置CP1に焦点を結び、XY平面においては焦点位置CP2に焦点を結ぶようになっている。この場合、例えば焦点位置CP1または焦点位置CP2において画素22を通過するようにする。但し、各画素22の有効領域内にマイクロレンズ11からの光の外縁(透過領域)が収まるのであれば、画素22の位置は特に限定されない。
【0038】
本変形例の場合、マイクロレンズ11Aによって鉛直方向に表示画像光が拡散されるので、観察者が画面の上下方向(鉛直方向)に多少ずれた位置に立っていたとしても、観察者は空間像を視認することができる。なお、上記第1の実施の形態の構成であっても、第2レンズアレイ3がレンチキュラーレンズであるので、鉛直方向においてマイクロレンズ11によって定まる発散角が得られる。しかしながら、そのマイクロレンズ11によって定まる発散角が小さく、観察者が空間像を認識することができる空間像表示装置10Aと観察者との相対位置の許容範囲(観察可能範囲)が十分に確保できない場合もある。そこで、本変形例のように、レンズ面が楕円球状をなすマイクロレンズ11Aを用いることで、鉛直方向における観察可能範囲をやや広げることができる。
【0039】
(変形例3)
次に、図8および図9を参照して、本実施の形態における第3の変形例(変形例3)としての空間像表示装置10Bについて説明する。図8は、空間像表示装置10Bの、水平面内における一構成例を表すものである。
【0040】
空間像表示装置10Bは、偏向部4の投影側に拡散板5をさらに備えるようにしたものである。図9は、図8に示した拡散板5の斜視構成と共に、拡散板5を透過した光の進行する様子(光軸と直交する面での光の広がりの変化)を表している。拡散板5は、偏向部4からの光を鉛直方向(Y軸方向)のみに拡散させるものである。偏向部4からの光は、X軸方向には拡散しないようになっている。このような拡散板5としては、例えばレンズ拡散板(米国Luminit,LLC社;型番LSD40×0.2など)を用いるとよい。あるいは、例えば図3に示した第2レンズアレイ3のように、複数のシリンドリカルレンズが配列されたレンチキュラーレンズを用いてもよい。但し、この場合、シリンドリカルレンズはX軸に沿った軸を中心とした円柱面を有するものとし、それらをY軸方向に配列させるようにする。さらに、シリンドリカルレンズの円柱面の曲率をなるべく大きくし、Y軸方向の単位長さあたりのレンチキュラーレンズの数を大きくするほうがよい。なお、ここでは、拡散板5は、第2レンズアレイ3の投影側に配置されているが、第1レンズアレイ1と第2レンズアレイ3との間に配置するようにしてもよい。
【0041】
本変形例では、拡散板5によって鉛直方向に表示画像光を拡散するようにしたので、変形例2と同様に、観察者が画面の上下方向(鉛直方向)に多少ずれた位置に立っていたとしても、観察者は空間像を視認することができる。その場合の鉛直方向における観察可能範囲は、変形例2よりもさらに広げることが可能である。
【0042】
(変形例4)
次に、図10を参照して、本実施の形態における第4の変形例(変形例4)としての第1レンズアレイ1Bについて説明する。図10は、第1レンズアレイ1Bの斜視構成と共に、第1レンズアレイ1Bを透過した光の進行する様子(光軸と直交する面での光の広がりの変化)を表している。
【0043】
図10に示したように、第1レンズアレイ1Bは、鉛直方向(Y軸方向)に沿った軸を中心とした円柱面を各々有する複数のシリンドリカルレンズ12がX軸方向に並列配置されたものである。シリンドリカルレンズ12は、水平面内(XZ平面)においてのみバックライトBLを集光するように機能する。すなわち、シリンドリカルレンズ12を透過する光は、XZ平面においては焦点位置CP1に焦点を結ぶようになっている。この場合、例えば焦点位置CP1において画素22を通過するようにする。但し、各画素22の有効領域内にシリンドリカルレンズ12からの光の外縁(透過領域)が収まるのであれば、画素22の位置は特に限定されない。
【0044】
本変形例においても、上記第1の実施の形態と同様の効果が得られる。なお、この場合においても、上記変形例3における拡散板5を併せて設けるようにすれば、変形例3と同様の効果が得られる。また、本変形例の第1レンズアレイ1Bは、マイクロレンズアレイ11,11Aを有する第1レンズアレイ1,1Aと比べ、より簡便かつ高精度に製作可能である。すなわち、各シリンドリカルレンズ12におけるXZ平面の断面形状は一定であるので、金型を作製する際にはY軸に沿って切削し、Y軸方向に延在する溝を形成すればよい。これに対し、X軸方向およびY軸方向の双方に複数配列されたマイクロレンズアレイ11,11Aの金型を作製するにはNC旋盤等を用いて1つ1つのレンズ面を個別に作製する必要がある。このため、煩雑であるうえ、マイクロレンズアレイ11,11A同士の相対位置の誤差が生じやすい。
【0045】
[第2の実施の形態]
次に、図11および図12を参照して、本発明における第2の実施の形態としての空間像表示装置10Cについて説明する。図11は、空間像表示装置10Cの全体構成を表す概略図である。図12は、図11に示した破線に囲まれた領域の一部を拡大したものである。
【0046】
空間像表示装置10Cは、いわゆるリアプロジェクタ型ディスプレイであり、筐体60の内部に投射光学ユニット61と、反射ミラー62と、レンズユニット63とを備えたものである。この空間像表示装置10Cでは、投射光学ユニット61の内部に2次元表示画像を生成する表示部(図示せず)を有しており、その表示部から射出された表示画像光が反射ミラー62を経由してレンズユニット63へ到達するようになっている。図12に、レンズユニット63の水平面内における一構成例を示す。図12に示したように、レンズユニット63は、投射光学ユニット61の側から、フレネルレンズ7、第1レンズアレイ1、第2レンズアレイ3、偏向部4が順に配置されたものである。フレネルレンズ7は、投射光学ユニット61から反射ミラー62を経て入射される表示画像光を平行光に変換するものである。なお、第1レンズアレイ1、第2レンズアレイ3および偏向部4は、上記第1の実施の形態のものと同様であるので、説明を省略する。投射光学ユニット61からの表示画像光は、赤(R),緑(G),青(B)の各色光が合成されずに分離された状態で射出され、画素22R,画素22Gおよび画素22Bの各々に対応したマイクロレンズ11に各色光が分離されたまま入射するようになっている。各マイクロレンズ11から射出された表示画像光は集光したのち第2レンズアレイ3へ入射し、第2レンズアレイ3によって平行光もしくは収束光に変換されて偏向部4へ向かう。偏向部4に到達した表示画像光は、適切な方向へ偏向され、観察者に到達することとなる。
【0047】
このように、表示部を第1レンズアレイ1と第2レンズアレイ3との間ではなく、第1レンズアレイ1の入射側に配置するようにした場合であっても、上記第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0048】
なお、本実施の形態では、第1レンズアレイ1と第2レンズアレイ3との間の結像点の近傍に、鉛直方向に光を拡散させる拡散板(異方性拡散板)や、鉛直方向および水平方向の双方に光を拡散させる拡散板(等方性拡散板)を配置するようにしてもよい。その場合、鉛直方向における観察可能範囲を広げることができ、観察者が画面の上下方向(鉛直方向)に多少ずれた位置に立っていたとしても、観察者は空間像を視認することができる。また、本実施の形態においても、上記第1の実施の形態に示した第1〜第4の変形例をそれぞれ適用することが可能であり、同様の効果が得られる。
【0049】
以上、いくつかの実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。例えば上記実施の形態等では、表示デバイスとして液晶デバイスを利用した例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば有機EL素子、プラズマ発光素子、フィールドエミッション(FED)素子、あるいは発光ダイオード(LED)などの自発光素子をアレイ状に配設したものを表示デバイスとして適用することもできる。このような自発光型の表示デバイスを用いた場合には、バックライト用の光源を別途設ける必要がないので、より簡素な構成を実現することができる。また、上記実施の形態等で説明した液晶デバイスは透過型のライトバルブとして機能するものであるが、GLV(グレーティングライトバルブ)やDMD(デジタルマルチミラー)などの反射型のライトバルブを表示デバイスとして用いることも可能である。
【0050】
また、上記第1の実施の形態における変形例1では、表示画像光を偏向部4において水平方向の偏向および鉛直方向の偏向を同時に行うようにしたが、水平方向の偏向と、鉛直方向の偏向とを別の手段によって個別に行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10…空間像表示装置、1…第1レンズアレイ、11…マイクロレンズ、12…マイクロレンズ群、21…ガラス基板、22…画素、23…ガラス基板、3…第2レンズアレイ、4…偏向部、41…偏向素子、41S…界面、42…無極性液体,43…極性液体、44A,44B…電極、45…底板、46…天板、47…シール部、5…拡張板、60…筐体、61…投射光学ユニット、62…反射ミラー、63…レンズユニット、7…フレネルレンズ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有し、映像信号に応じた2次元表示画像を生成する2次元画像生成手段と、
前記画素の各々に対応して設けられ、前記画素の各々を通過する光を集光する複数の第1のレンズからなる第1のレンズアレイと、
前記第1のレンズアレイを通過して集光された光を平行光もしくは収束光に変換して射出する第2のレンズアレイと
を備えた空間像表示装置。
【請求項2】
前記第1のレンズアレイと前記第2のレンズアレイとの距離は、各々の焦点距離の合計と一致し、もしくはその合計よりも大きい請求項1記載の空間像表示装置。
【請求項3】
前記第1のレンズアレイに入射する光を平行光に変換する光平行化手段をさらに備えた請求項1記載の空間像表示装置。
【請求項4】
前記2次元画像生成手段は、光軸上において、前記第1のレンズアレイと前記第2のレンズアレイとの間に位置する液晶パネルである
請求項1記載の空間像表示装置。
【請求項5】
前記2次元画像生成手段は、光軸上において、前記第1のレンズアレイの入射側に位置する
ことを特徴とする請求項1記載の空間像表示装置。
【請求項6】
前記第1のレンズは、光軸を含む第1の平面における焦点位置と、光軸を含むと共に前記第1の平面と直交する第2の平面における焦点位置とが互いに異なる
請求項1記載の空間像表示装置。
【請求項7】
前記第2のレンズアレイは、光軸と直交する第1の方向に沿った軸を中心とした円柱面を各々有する複数のシリンドリカルレンズが光軸および前記第1の方向の双方と直交する第2の方向に並列配置されたものである
請求項1記載の空間像表示装置。
【請求項8】
前記第1の方向に入射光を散乱させる異方性拡散板が、
前記第1のレンズアレイと前記第2のレンズアレイとの間、または前記第2のレンズアレイの投影側に配置されている
請求項7記載の空間像表示装置。
【請求項9】
前記第1のレンズアレイは、前記第1の方向に沿った軸を中心とした円柱面を各々有する複数のシリンドリカルレンズが前記第2の方向に並列配置されたものである
請求項7記載の空間像表示装置。
【請求項10】
前記第1のレンズアレイを通過した光が集光する位置に、光軸と直交する面において前記第1のレンズアレイを通過した光を等方的に拡散させる等方性拡散板が配置されている
請求項5記載の空間像表示装置。
【請求項11】
前記第2のレンズアレイから射出された光を、画素単位で、または一群の画素を一単位として水平面内において偏向する複数の液体光学素子をさらに備え、
前記液体光学素子は、一対の電極と、光軸上において前記一対の電極間に封入され、互いに異なる屈折率を有すると共に分離された状態を保つ極性液体および無極性液体とを含む
請求項1記載の空間像表示装置。
【請求項12】
前記極性液体は、前記一対の電極と隔離された接地電極と接している請求項11記載の空間像表示装置。
【請求項13】
前記一対の電極の対向面は、無電界下において前記無極性液体に親和性を示す絶縁膜によって覆われている請求項11記載の空間像表示装置。
【請求項1】
複数の画素を有し、映像信号に応じた2次元表示画像を生成する2次元画像生成手段と、
前記画素の各々に対応して設けられ、前記画素の各々を通過する光を集光する複数の第1のレンズからなる第1のレンズアレイと、
前記第1のレンズアレイを通過して集光された光を平行光もしくは収束光に変換して射出する第2のレンズアレイと
を備えた空間像表示装置。
【請求項2】
前記第1のレンズアレイと前記第2のレンズアレイとの距離は、各々の焦点距離の合計と一致し、もしくはその合計よりも大きい請求項1記載の空間像表示装置。
【請求項3】
前記第1のレンズアレイに入射する光を平行光に変換する光平行化手段をさらに備えた請求項1記載の空間像表示装置。
【請求項4】
前記2次元画像生成手段は、光軸上において、前記第1のレンズアレイと前記第2のレンズアレイとの間に位置する液晶パネルである
請求項1記載の空間像表示装置。
【請求項5】
前記2次元画像生成手段は、光軸上において、前記第1のレンズアレイの入射側に位置する
ことを特徴とする請求項1記載の空間像表示装置。
【請求項6】
前記第1のレンズは、光軸を含む第1の平面における焦点位置と、光軸を含むと共に前記第1の平面と直交する第2の平面における焦点位置とが互いに異なる
請求項1記載の空間像表示装置。
【請求項7】
前記第2のレンズアレイは、光軸と直交する第1の方向に沿った軸を中心とした円柱面を各々有する複数のシリンドリカルレンズが光軸および前記第1の方向の双方と直交する第2の方向に並列配置されたものである
請求項1記載の空間像表示装置。
【請求項8】
前記第1の方向に入射光を散乱させる異方性拡散板が、
前記第1のレンズアレイと前記第2のレンズアレイとの間、または前記第2のレンズアレイの投影側に配置されている
請求項7記載の空間像表示装置。
【請求項9】
前記第1のレンズアレイは、前記第1の方向に沿った軸を中心とした円柱面を各々有する複数のシリンドリカルレンズが前記第2の方向に並列配置されたものである
請求項7記載の空間像表示装置。
【請求項10】
前記第1のレンズアレイを通過した光が集光する位置に、光軸と直交する面において前記第1のレンズアレイを通過した光を等方的に拡散させる等方性拡散板が配置されている
請求項5記載の空間像表示装置。
【請求項11】
前記第2のレンズアレイから射出された光を、画素単位で、または一群の画素を一単位として水平面内において偏向する複数の液体光学素子をさらに備え、
前記液体光学素子は、一対の電極と、光軸上において前記一対の電極間に封入され、互いに異なる屈折率を有すると共に分離された状態を保つ極性液体および無極性液体とを含む
請求項1記載の空間像表示装置。
【請求項12】
前記極性液体は、前記一対の電極と隔離された接地電極と接している請求項11記載の空間像表示装置。
【請求項13】
前記一対の電極の対向面は、無電界下において前記無極性液体に親和性を示す絶縁膜によって覆われている請求項11記載の空間像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−169847(P2010−169847A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11585(P2009−11585)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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