説明

端末位置検出システム及び船員位置管理システム

【課題】無線LANによって端末位置を検出する端末位置検出システムにおいて、様々な原因で生じる検出位置精度の低下を抑制する。
【解決手段】端末位置検出システム1が備える複数の中継機3は、検出対象者100が携帯する無線LAN端末装置2から送信される無線フレームを受信し、その受信状態に関する受信状態情報を作成する。位置演算装置4は、中継機3から取得した受信状態情報に基づいて、それぞれの無線LAN端末装置2の位置を演算により推定し、表示装置5に表示させる。ただし、推定された現在の無線LAN端末装置2の位置が、当該無線LAN端末装置2の過去の位置を含む所定範囲から外れていた場合は、推定された現在の無線LAN端末装置2の位置は誤りと判定され、表示装置5に表示されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LANによって端末位置を検出する端末位置検出システムに関する。詳細には、当該端末位置検出システムにおいて位置検出精度を容易に管理する手段を提供するとともに、異常の迅速な発見に寄与する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、移動局としての無線LAN端末と、基地局としてのアクセスポイントと、を備え、無線LAN端末の位置を測定することが可能な端末位置検出システムが知られている。例えば、無線LAN端末がアクセスポイントの電界強度を測定することで、自機の位置を推定することが可能なシステムが広く知られている。また、無線LAN端末から複数のアクセスポイントまで電波が到達する時間をそれぞれ計測して、その到達時間差から端末の位置を3点測位することも行われている。
【0003】
また、特許文献1に開示される移動体位置検出システムも、移動体の所在位置、領域の確認及び検出に用いられるものである。この移動体位置検出システムでは、各移動体が持つ移動局は、基地局から選択呼出信号により呼び出され、応答信号を送信して応答する。基地局は、応答信号の受信時に受信電界レベルを測定する。本システムの動作は大きく分けると、学習サイクルと表示サイクルとからなる。学習サイクルでは、移動局からの電波のゾーン対応の基地局ごとの受信電界レベルの値を収集し1つの検出パターンとし、移動局の位置を変更しながら検出パターンを順次求め、得られた検出パターンと当該移動局の位置との対応を学習しながらデータベースを作成する。そして、表示サイクルでは、移動局の位置検出時に得られた検出パターンとデータベースの検出パターンとを照合することにより、当該移動局の存在するゾーン位置を検出し表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−182144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の構成は、例えば移動体が移動局を持ったまま移動している場合に、受信電波強度の測定バラツキ等により、突然、離れた場所や異なる区画が検出結果として示される場合があった。従って、検出結果としての移動体の位置が無関係な位置に瞬間的に移動することがあり、ユーザを混乱させるおそれがあった。また、移動局(端末)の送信電力のバラツキ、移動局の送信出力及び基地局の受信感度の経時変化など、種々の要因によって位置検出精度が低下することがあり、この点で改善の余地が残されていた。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、無線LANによって端末位置を検出する端末位置検出システムにおいて、様々な原因で生じる検出位置精度の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の端末位置検出システムが提供される。即ち、この端末位置検出システムは、複数の中継機と、位置演算装置と、表示装置と、を備える。前記中継機は、移動体とともに移動する無線LAN端末装置から当該無線LAN端末装置の識別情報を含んで送信される無線フレームを受信し、その受信状態に関する受信状態情報を作成する。前記位置演算装置は、前記中継機から取得した前記受信状態情報に基づいて、それぞれの前記無線LAN端末装置の位置を演算により推定する。前記表示装置は、前記位置演算装置が推定した位置を表示する。前記位置演算装置は、位置推定部と、誤り判定部と、を備える。前記位置推定部は、前記受信状態情報に基づいて前記無線LAN端末装置の位置を推定する。前記誤り判定部は、前記位置推定部により推定された現在の前記無線LAN端末装置の位置が、当該無線LAN端末装置の過去の位置との間で所定の関係を満たす場合に、その推定された位置を誤りと判定する。前記表示装置は、前記位置演算装置が推定した位置を、前記誤り判定部によって誤りと判定されたものを除いて表示することが可能である。
【0009】
これにより、位置推定部が推定した位置が過去の位置から不自然に移動したような位置関係にある場合は、その位置を誤りと判定し、表示装置での表示から除外することができる。従って、表示装置における位置表示の挙動が不安定になることを防止し、信頼性の高い端末位置検出システムを提供することができる。
【0010】
前記の端末位置検出システムにおいては、前記誤り判定部は、前記位置推定部により得られた現在の前記無線LAN端末装置の位置が、当該無線LAN端末装置の直近の位置を含む所定の領域の外側にある場合に誤りと判定することが好ましい。
【0011】
これにより、表示装置における位置表示が不連続的に移動するような挙動を防止できるので、安定的で自然な表示を実現することができる。
【0012】
前記の端末位置検出システムにおいては、前記誤り判定部は、前記所定の領域を、当該無線LAN端末装置の直近までの位置変化を考慮して定めることが好ましい。
【0013】
これにより、無線LAN端末装置が属する移動体の直前までの移動方向、移動速度等を考慮して、推定された位置が誤りであるか否かを的確に判定することができる。
【0014】
前記の端末位置検出システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記無線LAN端末装置からの前記無線フレームの受信時における受信強度を検出するとともに、前記無線LAN端末装置の識別情報を前記無線フレームから取得する。前記受信強度及び前記識別情報を含むように前記受信状態情報を作成する。
【0015】
これにより、中継機と無線LAN端末装置との位置関係に応じて大きく変化する受信強度を用いて無線LAN端末装置の位置推定を行うので、良好な推定精度を実現できる。また、無線LAN端末装置に一意に付与される識別情報が受信状態情報に含まれるので、複数の無線LAN端末装置であっても、それぞれを容易に特定した上でその位置を推定することができる。
【0016】
前記の端末位置検出システムにおいては、前記中継機が作成する前記受信状態情報には、前記無線フレームの受信時の通信速度、変調方式及び通信誤り評価値のうち少なくとも何れかが更に含まれることが好ましい。
【0017】
これにより、中継機の数が少なくても、受信状態情報に含まれる多様なパラメータを用いて、無線LAN端末装置の位置を良好な精度で推定することができる。
【0018】
前記の端末位置検出システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記位置演算装置は登録地点受信状態情報記憶部を備える。前記登録地点受信状態情報記憶部には、複数の地点の位置と、当該地点に配置された前記無線LAN端末装置が前記無線フレームを送信したときに、当該無線フレームを受信した前記中継機のそれぞれが作成する受信状態情報と、を関連づけて事前に記憶しておくことが可能である。前記位置演算装置は、前記中継機から受信状態情報を受信したときは、当該受信状態情報と、前記登録地点受信状態情報記憶部に記憶された受信状態情報である登録受信状態情報と、を比較し、最も近いと判定された登録受信状態情報に対応する地点を前記無線LAN端末装置の現在の位置であると推定する選択推定処理を行う。
【0019】
これにより、例えば間取りが複雑な構造物等、電波が複雑に反射し易い環境においても、無線LAN端末装置の位置を良好な精度で推定することができる。
【0020】
前記の端末位置検出システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記中継機は、前記無線LAN端末装置から前記無線フレームを受信したときは、その受信強度を検出し、当該受信強度を含んだ受信状態情報を作成して前記位置演算装置に送信するように構成されている。前記位置演算装置は、前記中継機から前記受信状態情報を受信したときは、少なくとも前記受信強度について、現在及び過去に受信した複数の受信状態情報を対象として平均値を計算する。前記受信状態情報と前記登録受信状態情報との間で受信強度同士を比較するときは、前記受信状態情報における受信強度として前記平均値を用いる。
【0021】
これにより、受信状態における受信強度のバラツキを予め取り除いた状態で登録受信状態情報と比較できるので、より信頼性の高い位置推定を実現できる。
【0022】
前記の端末位置検出システムにおいては、前記位置演算装置は、複数の受信状態情報から前記受信強度の平均値を計算するときは、所定の範囲から外れる受信強度を有する受信状態情報については、前記平均値を計算する対象から除外することが好ましい。
【0023】
これにより、明らかにノイズと判るような極端な受信状態情報を除外することができるので、より信頼性の高い位置推定を実現できる。
【0024】
前記の端末位置検出システムにおいては、前記位置演算装置は、前記登録地点受信状態情報記憶部に記憶された複数の登録受信状態情報の間を補間する計算を行うことにより、当該登録地点受信状態情報記憶部に記憶されていない地点における受信状態情報を推定し、これを当該登録地点受信状態情報記憶部に追加的に記憶させることが可能であることが好ましい。
【0025】
これにより、システムの運用前の段階で、実際に無線LAN端末装置をその場所へ持って行かなければならない地点の数を減らすことができるので、作業負担を低減することができる。
【0026】
前記の端末位置検出システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記位置演算装置は、前記登録地点受信状態情報記憶部に新規の地点及び受信状態情報を関連づけて記憶させようとする場合において、既に記憶されている前記登録受信状態情報の何れかと当該新規の受信状態情報との乖離度が所定の値より小さく、当該登録受信状態情報に対応する地点と前記新規の地点との距離が所定距離より大きいときは、登録警告情報を作成する。
【0027】
これにより、受信状態情報が相互に似ていて紛らわしい地点があることがシステムの運用前の段階で早期に判明するので、中継機の追加又はレイアウト変更等の対策を素早く検討することができる。
【0028】
前記の端末位置検出システムにおいては、前記位置演算装置は、前記登録地点受信状態情報記憶部に記憶されている地点に前記無線LAN端末装置が位置していることを前記選択推定処理以外の方法で推定又は確認した場合には、当該無線LAN端末装置が送信した無線フレームに基づいて前記中継機が作成した受信状態情報で、前記登録地点受信状態情報記憶部の内容のうち当該地点に対応する登録受信状態情報を更新することが好ましい。
【0029】
これにより、登録受信状態情報を必要に応じて適宜更新することができるので、例えば無線LAN端末装置の送信出力の経時変化や、中継機の受信感度の経時変化等に対応することができる。この結果、長期間にわたって良好な精度で位置推定を行うことができる。
【0030】
前記の端末位置検出システムにおいては、前記位置演算装置は、前記中継機から受信した受信状態情報と、当該受信状態情報に最も近いと判定された登録受信状態情報と、の間の近似度を評価した位置精度情報を作成することが好ましい。
【0031】
これにより、位置精度情報を用いて、無線LAN端末装置の位置推定の状況を適切に把握することができるので、ユーザは状況に応じた的確な判断を行うことができる。
【0032】
前記の端末位置検出システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記中継機は、前記無線LAN端末装置から前記無線フレームを受信したときは、その受信強度を検出し、当該受信強度を含んだ受信状態情報を作成して前記位置演算装置に送信するように構成されている。前記位置演算装置は、前記中継機から前記受信状態情報を受信したときは、少なくとも前記受信強度について、現在及び過去に受信した複数の受信状態情報を対象として平均値を計算する。前記受信強度の平均値の計算に用いられる受信状態情報の数は、前記位置精度情報に基づいて変化する。
【0033】
これにより、位置精度が良くないときは平均値の計算の対象となる受信状態情報の数を増やすようにすることで、安定した位置推定精度を実現することができる。一方、位置精度が良好なときは平均値の計算の対象となる受信状態情報の数を減らすことで、リアルタイム性を重視した位置表示を行うことができる。
【0034】
前記の端末位置検出システムにおいては、前記表示装置は、前記位置演算装置が推定した位置を表示するとともに、前記位置精度情報に応じて変化する視覚的表示を行うことが好ましい。
【0035】
これにより、表示装置を見ることで現在の位置推定の確度について容易に確認することができるので、状況を一層総合的に把握することができる。
【0036】
前記の端末位置検出システムにおいては、前記表示装置は、前記位置演算装置が推定した位置を、前記無線LAN端末装置の位置管理を行う領域を示す地図に重ねるようにして表示することが好ましい。
【0037】
これにより、移動体の管理領域内での位置を一層素早く且つ的確に理解することができる。
【0038】
前記の端末位置検出システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この端末位置検出システムは、火災検出センサを備える。そして、前記火災検出センサが火災を検出した場合は、当該火災検出センサの位置を前記地図に重ねるようにして前記表示装置に表示する。
【0039】
これにより、火災の発生位置が移動体(人物)との関係で瞬時に把握できるので、素早い緊急対応が可能になる。また、火災の発生位置、地図、移動体の位置を1つの表示装置に表示できるため、情報の一元的な把握が簡単になるとともに、表示装置のコンパクト化も容易になる。
【0040】
前記の端末位置検出システムにおいては、前記中継機は、他の中継機が送信した無線フレームを受信して、当該無線フレームの送信元である中継機の識別情報と、前記無線フレームの受信強度の情報と、を含む中継機間受信状態情報を作成可能に構成されていることが好ましい。
【0041】
これにより、中継機同士で送受信してその受信状態を取得することで、中継機の受信感度の経時変化等、位置演算装置の位置推定精度の管理やメンテナンス作業の際に参考となる有用な情報を得ることができる。
【0042】
前記の端末位置検出システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記位置演算装置は、それぞれの前記中継機から前記中継機間受信状態情報を反復して取得するように構成されている。現在の中継機間受信状態情報が直近の中継機間受信状態情報より変化し、その変化量が所定値より大きい場合は、中継機に異常が発生した旨の異常情報を作成する。
【0043】
これにより、自己診断により中継機の異常を早期発見できるので、位置演算装置による位置推定精度を長期間にわたって良好に維持することができる。
【0044】
前記の端末位置検出システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記位置演算装置は登録地点受信状態情報記憶部を備える。前記登録地点受信状態情報記憶部には、複数の地点の位置と、当該地点に配置された前記無線LAN端末装置が前記無線フレームを送信したときに、当該無線フレームを受信した前記中継機のそれぞれが作成する受信状態情報と、を関連づけて事前に記憶しておくことが可能である。前記位置演算装置は、前記中継機から受信状態情報を受信したときは、当該受信状態情報と、前記登録地点受信状態情報記憶部に記憶された受信状態情報である登録受信状態情報と、を比較し、最も近いと判定された登録受信状態情報に対応する地点を前記無線LAN端末装置の現在の位置であると推定する選択推定処理を行う。前記受信状態情報に最も近い登録受信状態情報の判定にあたっては、異常の発生が検知された中継機に関する受信状態情報と登録受信状態情報の差よりも、それ以外の中継機に関する受信状態情報と登録受信状態情報の差を重点的に考慮する。
【0045】
これにより、特定の中継機に異常が発生して信頼性が低下した場合にも柔軟に対応して、的確な位置推定を実現することができる。
【0046】
前記の端末位置検出システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記中継機は、前記無線LAN端末装置からの無線フレームの電波強度が所定時間以内に所定値より大きく低下したことを検出した場合には、当該無線LAN端末装置の前記識別情報を含む電波強度低下情報を作成して前記位置演算装置に送信するように構成されている。前記位置演算装置は、推定した前記無線LAN端末装置の位置が所定の落下危険領域にあるときに前記電波強度低下情報を受信したときは、落下検知情報を作成する。前記表示装置は、前記落下検知情報に基づいて異常発生表示を行う。
【0047】
これにより、移動体の高所からの落下が疑われる状況を素早く検知して表示装置に表示できるので、近くの者に指示して現場に急行させる等の処置を迅速に行うことができる。また、そのような高所からの落下の危険がない領域に無線LAN端末装置があるときは、電波強度の鋭い低下を検出しても異常発生表示は行われないので、誤報が頻発することを防止できる。
【0048】
前記の端末位置検出システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記無線LAN端末装置は、自機の落下を検出可能な加速度センサを備えるとともに、この加速度センサが自機の落下を検出すると落下検知信号を中継機に送信するように構成されている。前記位置演算装置は、推定した前記無線LAN端末装置の位置が所定の落下危険領域にあるときに前記落下検知信号を受信したときは、落下検知情報を作成する。前記表示装置は、前記落下検知情報に基づいて異常発生表示を行う。
【0049】
これにより、移動体の高所からの落下が疑われる状況を素早く検知して表示装置に表示できるので、近くの者に指示して現場に急行させる等の処置を迅速に行うことができる。また、加速度センサにより自機の落下を直接的に検出するので、移動体の落下を的確に検知することができる。更に、そのような高所からの落下の危険がない領域に無線LAN端末装置があるときは、落下検知信号を受信しても異常発生表示は行われないので、誤報の発生を防止できる。
【0050】
前記の端末位置検出システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記無線LAN端末装置は、自機の長時間の落下を検知すると、落下検知信号を前記中継機に送信するように構成されている。前記表示装置は、前記落下検知信号に基づいて異常発生表示を行う。
【0051】
これにより、移動体の長時間の落下を素早く検知して表示装置に表示できるので、近くの者に指示して現場に急行させる等の処置を迅速に行うことができる。
【0052】
前記の端末位置検出システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記無線LAN端末装置は、自機の水没を検知すると、水没信号を前記中継機に送信するように構成されている。前記表示装置は、前記水没信号に基づいて異常発生表示を行う。
【0053】
これにより、無線LAN端末装置の水没を素早く検知して表示装置に表示できるので、近くの者に指示して現場に急行させる等の処置を迅速に行うことができる。
【0054】
前記の端末位置検出システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この端末位置検出システムは、船舶位置取得装置と、海流情報取得装置と、を備える。前記船舶位置取得装置は、当該端末位置検出システムが設置されている船舶の位置を取得する。前記海流情報取得装置は、前記船舶の周辺における海流の情報を取得する。前記表示装置は、前記異常発生表示を行うときは、異常発生時における前記船舶の位置及び周辺の海流の情報を併せて表示する。
【0055】
これにより、移動体(例えば、船員)が船舶から落水した場合において、異常の発生を知らせるとともに救助のための有用な情報が表示装置に自動的に表示されるので、的確な処置を素早く行うことができる。
【0056】
前記の端末位置検出システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この端末位置検出システムは、人体を検出することが可能な人体検出装置を備える。前記人体検出装置は、前記位置演算装置が前記無線LAN端末装置の位置を推定可能な領域内に設定される所定の管理領域の境界部分に配置される。前記位置演算装置は、前記人体検出装置の近傍に前記無線LAN端末装置が存在しないにもかかわらず当該人体検出装置が人体を検出した場合は、端末不携帯者検知情報を作成する。前記表示装置は、前記端末不携帯者検知情報に基づいて異常発生表示を行う。
【0057】
これにより、不審者の侵入等を素早く検知して的確な対応を行うことができる。
【0058】
前記の端末位置検出システムにおいては、以下の構成とすることもできる。即ち、この端末位置検出システムは、人体を検出することが可能な人体検出装置を備える。前記人体検出装置は、前記位置演算装置が前記無線LAN端末装置の位置を推定可能な領域内に設定される所定の管理領域の境界部分に配置される。前記位置演算装置は、前記人体検出装置の近傍に前記無線LAN端末装置が存在しないか、前記人体検出装置の近傍に存在する前記無線LAN端末装置のすべてが一定時間以上静止しているにもかかわらず、当該人体検出装置が人体を検出した場合は、端末不携帯者検知情報を作成する。前記表示装置は、前記端末不携帯者検知情報に基づいて異常発生表示を行う。
【0059】
即ち、人体検出装置が人体を検出したときに、当該人体検出装置の近傍で検出された無線LAN端末装置が全て静止状態だった場合は、無線LAN端末装置とともに移動体(人体)が前記人体検出装置の設置場所を通過しようとしているのではないと考えられる。従って、このときは端末不携帯者検知情報を作成するようにすることで、端末不携帯者のゲート通過を正確に検出して異常表示することができる。
【0060】
前記の端末位置検出システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この端末位置検出システムは、人体を検出することが可能な人体検出装置を備える。前記人体検出装置は、前記位置演算装置が前記無線LAN端末装置の位置を推定可能な領域内に設定される所定の管理領域の境界部分に配置される。前記位置演算装置は、前記人体検出装置の配置場所で前記管理領域の境界を通過する前記無線LAN端末装置が検出されないにもかかわらず、前記人体検出装置が人体を検出した場合は、端末不携帯者検知情報を作成する。前記表示装置は、前記端末不携帯者検知情報に基づいて異常発生表示を行う。
【0061】
これにより、人体検出装置が人体を検出したときに、人体検出装置の配置場所で前記管理領域の境界を通過する無線LAN端末装置が検出された場合以外は、端末不携帯者が人体検出装置の設置場所を通過したものと判断される。従って、端末不携帯者の通過を正確に検出して異常表示することができる。
【0062】
前記の端末位置検出システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この端末位置検出システムは、人体を検出することが可能な人体検出装置を備える。前記人体検出装置は、前記位置演算装置が前記無線LAN端末装置の位置を推定可能な領域内に設定される所定の管理領域の境界部分に配置される。前記中継機のうち少なくとも1つは、前記人体検出装置による人体検出領域の近傍に配置される。前記位置演算装置は、前記人体検出領域の近傍に配置される中継機から取得した前記受信状態情報が所定の条件を満たさないにもかかわらず、前記人体検出装置が人体を検出した場合は、端末不携帯者検知情報を作成する。前記表示装置は、前記端末不携帯者検知情報に基づいて異常発生表示を行う。
【0063】
即ち、人体検出装置の配置場所で前記管理領域の境界を移動体(人体)が無線LAN端末装置とともに通過しようとしている場合、その移動体の無線LAN端末装置から送信された無線フレームは、当該人体検出装置の人体検出領域の近傍に配置された中継機によって相当に良好に受信されるはずである。本発明ではこのことを利用して、このように中継機が無線フレームを良好に受信できた場合以外は、端末不携帯者が人体検出装置の検出領域を通過したものと判断する。従って、端末不携帯者の通過を正確に検出して異常表示することができる。
【0064】
前記の端末位置検出システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記人体検出装置は複数備えられる。前記位置演算装置は、前記人体検出装置の近傍で検出された無線LAN端末装置の識別情報が、それぞれの前記人体検出装置に応じて定められる通過許可条件を満たすか否かを判定し、満たさない場合は通過不許可者検知情報を作成する。前記表示装置は、前記通過不許可者検知情報に基づいて異常発生表示を行う。
【0065】
これにより、人体検出装置ごとに、その設置場所を通過可能な移動体と通過できない移動体を管理することができる。また、通過不可能な移動体が人体検出装置の設置場所を通過した場合には、異常を適切に表示することができる。
【0066】
前記の端末位置検出システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この端末位置検出システムは、前記人体検出装置が人体を検出するのに連動して当該人体を撮影可能なカメラを備える。異常発生時に、前記カメラによって撮影した画像を前記無線LAN端末装置に配信可能に構成されている。
【0067】
これにより、不審者の情報を素早く周知することで、周囲の者に一層適切な対応を促すことができる。
【0068】
前記の端末位置検出システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記位置演算装置が推定した前記無線LAN端末装置の位置が所定の禁止領域内にある場合に禁止領域立入検知情報を作成する。前記表示装置は、前記禁止領域立入検知情報に基づいて異常発生表示を行う。
【0069】
これにより、禁止領域への移動体の立入りを素早く検知して的確な対応を行うことができる。
【0070】
前記の端末位置検出システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記無線LAN端末装置は情報表示部を備えている。異常発生時においては、当該異常の内容を示す情報を前記無線LAN端末装置に配信して前記情報表示部に表示させる。
【0071】
これにより、発生した異常の内容を移動体(人物)に配信することで、多数の者が救助及び避難等の適切な行動を迅速に開始することができる。
【0072】
前記の端末位置検出システムにおいては、異常発生時においては、前記位置演算装置によって推定された位置が異常発生地点から近い無線LAN端末装置と、そうでない無線LAN端末装置と、の間で異なる情報を配信可能に構成されていることが好ましい。
【0073】
これにより、異常発生箇所に対する位置関係に応じた的確な処置が可能になる。
【0074】
前記の端末位置検出システムにおいては、前記中継機は、複数フロアの建造物において上下方向に隣り合うフロアの両方に設置されるとともに、上側のフロアの中継機は、下側のフロアの中継機と上下方向に対応しないように配置されることが好ましい。
【0075】
これにより、中継機の数が少ない場合(例えば、1フロアあたり2つ)であっても、良好な精度で無線LAN端末装置の位置を推定することができる。従って、システムの設置コストを低減できるとともに、配線が簡素化される。
【0076】
本発明の第2の観点によれば、前記の端末位置検出システムを船舶に設置するとともに、前記無線LAN端末装置を船員に携帯させた船員位置管理システムが提供される。
【0077】
これにより、無線LAN端末装置を介して船員の位置を精度良く推定できる船員位置管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態に係る端末位置検出システムの全体的な構成を示した概略図。
【図2】無線LAN端末装置の機能ブロック図。
【図3】中継機の機能ブロック図。
【図4】位置演算装置の機能ブロック図。
【図5】受信状態情報記憶部の記憶内容を概念的に示す図。
【図6】システム運用の前段階において、船舶内において無線LAN端末装置から無線フレームを送信させる地点の例を示す図。
【図7】無線LAN端末装置が図6の各地点から無線フレームを送信させたときの、各中継機が測定した電波強度を示すグラフ。
【図8】地点選択部が推定した無線LAN端末装置の位置を誤り判定部が判定する様子を示す概念図。
【図9】表示装置の機能ブロック図。
【図10】表示装置によるディスプレイへの描画例を示す図。
【図11】描画部における描画レイヤを示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0079】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る端末位置検出システム1の全体的な構成を示した概略図である。
【0080】
図1に示す端末位置検出システム1は、建造物としての船舶201において、検出対象者(移動体)100の位置をリアルタイムに検出して視覚的に表示するためのものである。この検出対象者としては様々に考えられるが、典型的には、当該船舶201の船員、乗客、関係者等である。
【0081】
この端末位置検出システム1は、複数の無線LAN端末装置2と、複数の中継機3と、位置演算装置4と、表示装置5と、を備える。中継機3と位置演算装置4は、有線LAN6によって相互に接続されている。
【0082】
本実施形態において、無線LAN端末装置2は、前記検出対象者100がそれぞれ常時携帯するVoIP端末として構成されている。また、中継機3は無線LANアクセスポイントとして構成されている。以上の構成により、無線と有線を組み合わせたローカルエリアネットワーク(LAN)が構築されている。
【0083】
それぞれの無線LAN端末装置2には、当該無線LAN端末装置2を識別するための一意の識別子(識別情報)が割り当てられている。無線LAN端末装置2は、前記識別子の情報を含んだ無線フレームを送信することができる。
【0084】
中継機3は、船舶のほぼ全体を含むように予め設定された位置検出対象領域に設置されている。また、複数の中継機3のそれぞれは、前記位置検出対象領域のどこに無線LAN端末装置2があったとしても、少なくとも何れかの中継機3は当該無線LAN端末装置2からの前記無線フレームを受信できるように、そのレイアウトが適切に定められている。それぞれの中継機3は、無線LAN端末装置2から無線フレームを受信した場合は、それに基づいて受信状態情報を作成し、位置演算装置4へ有線LAN6を介して送信する。
【0085】
本実施形態において、前記船舶201は船室部分が複数フロアを有するように構成されている。当該船室部分において、中継機3は複数フロアのそれぞれに配置されており、かつ、それぞれの中継機3は、すぐ上の階又は下の階の中継機3と上下方向で対応しない位置に配置されている。これにより、無線LAN端末装置2と同フロアの中継機3のみならず、上下フロアの中継機3を効率的に活用することで、中継機3の設置個数を減らしても無線LAN端末装置2の位置演算精度を実用的なレベルに維持することができる。この結果、設備コストを低減できる。
【0086】
位置演算装置4及び表示装置5は、船員の位置を管理するための装置であり、例えば船舶のブリッジ部に設置されている。位置演算装置4はサーバとして動作するものであり、制御装置及び処理装置としてのCPU、記憶装置としてのROM及びRAM等を備えて構成されている。位置演算装置4は、各中継機3から受信した受信状態情報に基づいて各無線LAN端末装置2の位置(ひいては、当該無線LAN端末装置2を携帯する検出対象者100の位置)を演算により推定し、端末位置情報を作成する。この端末位置情報は表示装置5に送信され、この表示装置5は当該端末位置情報に基づいて、検出対象者100の位置を表示する。
【0087】
有線LAN6にはGPS装置(船舶位置取得装置)7及び海流情報取得装置8が接続されており、自船の位置及び周辺の海流情報を取得することができる。
【0088】
また、船舶201の適宜位置には火災検出センサ9が配置されており、この火災検出センサ9は、有線LAN6に接続された火災場所取得装置10に接続されている。火災場所取得装置10は、火災検出センサ9から火災検知信号を受信すると、その旨の信号(火災検知信号)とともに、当該火災検出センサ9の位置を位置演算装置4に送信することができる。なお、この火災検出センサ9は、無線LAN端末装置2の位置管理を行う領域内に配置されても良いし、当該領域外に配置されても良い。
【0089】
船舶201の乗船口及び下船口としてのゲート202には、人体検出装置としてのゲート通過検出装置11が配置されている。このゲート通過検出装置11は、人体センサとしての赤外線センサ12と、画像撮影装置としてのカメラ13と、を備えている。
【0090】
この構成で、ゲート通過検出装置11は、ゲート202を通過しようとする人物101を赤外線センサ12によって検知すると、自動的にカメラ13で当該人物101を撮影できるようになっている。ゲート通過検出装置11は無線LANに接続されており、人体を検出した旨の信号、あるいはカメラ13で撮影した画像を、中継機3を介して位置演算装置4に送信できるように構成されている。
【0091】
また、位置演算装置4は、様々な要因で発生する異常を検知して異常情報を出力することがある。表示装置5は、この異常情報が入力されると、異常が発生した旨をディスプレイに表示する(異常発生表示)。このように、表示装置5は、各無線LAN端末装置2の位置のほか、各種の情報を単一のディスプレイに表示することができる。
【0092】
次に、図2を参照して無線LAN端末装置2の構成を説明する。図2は無線LAN端末装置2の機能ブロック図である。
【0093】
図2に示す無線LAN端末装置2は、無線を使用したVoIP端末として構成されている。この無線LAN端末装置2は、無線送受信機21と、アンテナ22と、ディスプレイ(情報表示部)23と、マイク24と、スピーカ25と、水検出センサ26と、加速度センサ27と、SOSスイッチ28と、非常情報作成部29と、を備えている。また、無線LAN端末装置2は、図示しないCPU、ROM及びRAM等のハードウェアを備えている。
【0094】
無線送受信機21は、中継機3との間で無線接続してデータパケット(MACフレーム)の単位で通信を行い、音声、画像、テキストメッセージ等の各種データをやり取りすることができる。無線送受信機21は読出専用メモリからなるMACアドレス記憶部21aを備えており、このMACアドレス記憶部21aには前記識別子としてのMACアドレスが記憶されている。このMACアドレスはそれぞれの無線送受信機21について一意に定まるように付与されており、前記MACフレームのあて先及び送信元を指すアドレスとして用いられる。
【0095】
無線LAN端末装置2は、無線送受信機21を用いて、例えばIEEE802.11bで規定されたMACフレームを所定の時間間隔(例えば、1秒〜3秒に1回の間隔)で送信することができる。このMACフレームには、送信元の無線LAN端末装置2(即ち自機)のMACアドレス、前述の各種データが格納されるユーザデータ、及びフレームチェックシーケンス(FCS)が含まれている。FCSはデータ伝送時に発生したビット誤りを検出するためのものであり、本実施形態では誤り検出技術として、32ビットの巡回冗長検査(CRC)を用いている。
【0096】
無線送受信機21は、前記MACフレームに物理層のヘッダを適宜付加した上で、相手側の装置へ無線フレームとして送信する。前記物理層のヘッダのうちPLCPヘッダ(物理層コンバージェンスプロトコルヘッダ)の部分には、実際の送信に用いられるデータ伝送速度及び変調方式に関する情報が含まれている。なお、MACフレーム送信時の前記データ伝送速度及び変調方式は、その時点での電波状態等に応じて適宜変更される。
【0097】
無線LAN端末装置2は、各種の情報を表示可能なディスプレイ23を備えている。そして無線LAN端末装置2は、他の装置から送信されたMACフレームを無線送受信機21が受信した場合は、当該MACフレームから画像、テキストメッセージ等を取り出して前記ディスプレイ23に表示できるように構成されている。
【0098】
前記マイク24及びスピーカ25は、無線LAN端末装置2をVoIP端末として機能させるための音声入力部及び音声出力部として機能する。マイク24から入力された音声データは適宜ディジタル符号化された上でパケット化され、当該パケットを前記無線送受信機21が無線フレームとして他の装置へ送信する。一方、音声データのパケットが無線送受信機21に送信されてきた場合は、当該音声データが適宜復元されてスピーカ25から出力される。
【0099】
水検出センサ26は、無線LAN端末装置2を携帯する検出対象者100が例えば船舶のデッキから落水したことを検知するためのものである。水検出センサ26は、水を検知したときは非常情報作成部29に適宜の信号を出力する。この信号が入力された非常情報作成部29は、無線LAN端末装置2が(検出対象者100とともに)水没したものと判断し、落水を検知した旨の情報を無線送受信機21から無線送信させる。
【0100】
加速度センサ27も同様に、前記検出対象者100の落水を検知するためのものである。加速度センサ27の出力信号は非常情報作成部29へ入力される。非常情報作成部29は、加速度センサ27が無重力に近い状態を所定時間以上継続して検知し、その直後に大きな加速度を検知した場合は、無線LAN端末装置2が(検出対象者100とともに)高所から落下したものと判断し、落水が疑われる旨の情報を無線送受信機21から無線送信させる。
【0101】
SOSスイッチ28は、緊急事態の発生を他の装置に知らせるためのものである。例えば船舶の乗組員(検出対象者100)が、海賊の襲来、危険区画での事故発生等を目撃した場合は、携帯している無線LAN端末装置2のSOSスイッチ28を押すことで、当該SOSスイッチ28の操作信号が非常情報作成部29に入力される。SOSスイッチ28の操作を検出した非常情報作成部29は、緊急事態情報を作成して無線送受信機21から無線送信させる。これにより、危険の発生を迅速に知らせることができる。
【0102】
次に、図3を参照して中継機3の構成を説明する。図3は中継機3の機能ブロック図である。
【0103】
図3に示す基地局としての中継機3は、前記無線LAN端末装置2と無線フレームを送受信して各種データのやり取りを行うとともに、無線LAN端末装置2から送信される電波強度を計測できるように構成されている。この中継機3は、無線送受信機31と、アンテナ32と、誤り度計算部33と、受信状態情報作成部34と、を備えている。また、中継機3は、図示しないCPU、ROM及びRAM等のハードウェアを備えている。
【0104】
無線送受信機31は、無線LAN端末装置2の無線送受信機21との間で無線フレームを送受信できるように構成されている。この無線送受信機31は、MACアドレス記憶部31aと、MACアドレス取得部31bと、電波強度計測部31cと、通信条件取得部31dと、通信エラー検出部31eと、を備えている。
【0105】
MACアドレス記憶部31aは、無線LAN端末装置2のMACアドレス記憶部21aと同様に、一意の識別子であるMACアドレスを記憶するように構成されている。
【0106】
MACアドレス取得部31bは、無線LAN端末装置2から受信した無線フレームを解析して、送信元の当該無線LAN端末装置2のMACアドレスを取得できるように構成されている。
【0107】
電波強度計測部31cは、無線LAN端末装置2から無線フレームを受信した際の電波強度(受信強度)を測定できるように構成されている。
【0108】
通信条件取得部31dは、無線LAN端末装置2から受信した無線フレームに含まれる前記PLCPヘッダを解析することで、無線フレームを受信した際の伝送速度及び変調方式を取得することができる。
【0109】
通信エラー検出部31eは、無線LAN端末装置2から受信した無線フレームの内容に基づいてCRCを計算し、前記FCSと照合する。そして、その照合結果に基づいて通信エラーの発生の有無を判断し、その結果を誤り度計算部33へ出力することができる。通信エラーの検出は所定の時間間隔で反復して行われるので、その検出結果(通信エラーの有無)は次々と誤り度計算部33に入力される。
【0110】
誤り度計算部33は、直近に入力された複数個(具体的には、4個)のエラー検出結果を記憶できるとともに、当該エラー検出結果に基づいて所定の計算を行うことで誤り度を計算することができる。この誤り度は、通信エラーが頻発し易い状況であるか否かを評価した値であり、エラーが頻発する状況では誤り度は1に近くなる一方、エラーが全く発生しない場合は誤り度が0になる。
【0111】
この誤り度の計算は、具体的には以下のように行われる。即ち、最初に作業変数の内容を0にリセットする。次に、最も新しいエラー検出結果が「エラーあり」だった場合は、作業変数の内容に0.4を加算する(「エラーなし」だった場合は加算しない)。同様に、2番目に新しい検出結果が「エラーあり」だった場合は0.3を、3番目が「エラーあり」だった場合は0.2を、4番目が「エラーあり」だった場合は0.1を、それぞれ作業変数に加算する。以上の計算により得られた作業変数の値が誤り度である。
【0112】
中継機3の無線送受信機31が無線LAN端末装置2からの無線フレームを受信すると、受信状態情報作成部34は、当該無線LAN端末装置2からの受信状態に関する情報(受信状態情報)を作成する。この受信状態情報には、MACアドレス取得部31bにより得られた無線LAN端末装置2のMACアドレスと、MACアドレス記憶部31aに記憶されている中継機3自身のMACアドレスと、が含まれる。更に、この受信状態情報は、電波強度計測部31cにより計測された電波強度と、通信条件取得部31dにより取得されたデータ伝送速度及び変調方式と、誤り度計算部33により計算された誤り度と、を含んで作成される。受信状態情報作成部34は、作成した受信状態情報を位置演算装置4へ有線LAN6を介して送信する。
【0113】
次に、図4を参照して位置演算装置4の構成を説明する。図4は位置演算装置4の機能ブロック図である。
【0114】
図4に示す位置演算装置4は、1台の無線LAN端末装置2から送信された無線フレームを1又は複数の中継機3が受信して、それぞれの中継機3が作成した受信状態情報に基づき、当該無線LAN端末装置2の位置を推定できるように構成されている。
【0115】
位置演算装置4は、受信状態情報取得部41と、受信状態情報記憶部42と、登録地点受信状態情報記憶部43と、位置履歴情報記憶部44と、領域特性情報記憶部45と、演算部46と、を備えている。
【0116】
受信状態情報取得部41は、中継機3が作成した前記受信状態情報を有線LAN6経由で受信し、これを受信状態情報記憶部42に保存できるように構成されている。
【0117】
ここで、1台の無線LAN端末装置2が送信した無線フレームが周囲の複数の中継機3に受信された場合は、中継機3のそれぞれが当該無線フレームについて受信状態情報を作成することになる。従って、その場合は、無線LAN端末装置2の1回の無線フレームの送信に基づいて複数の受信状態情報が作成され、それぞれが受信状態情報記憶部42に記憶される。
【0118】
図5には、受信状態情報記憶部42の記憶内容の例が概念的に示されている。図5の表において、1つの行が1つの受信状態情報を表している。表の上側の3行(第1行〜第3行)は、MACアドレス[AA:BB:CC:DD:EE:01]を有する無線LAN端末装置2が送信した無線フレームを、MACアドレス[AB:CD:EF:00:00:01]〜[03]の3台の中継機3が受信して、それぞれ作成した受信状態情報である。
【0119】
また、表の第4行目に示すように、他のMACアドレスを有する無線LAN端末装置2が無線フレームを送信した場合についても同様に、受信状態情報記憶部42に記憶される。
【0120】
また、詳細は図示しないが、受信状態情報記憶部42は、送信側の無線LAN端末装置2のMACアドレス及び受信側の中継機3のMACアドレスが互いに等しい受信状態情報を、複数記憶することができる。これにより、定量的な情報である電波強度や誤り度については、複数の受信状態情報の間で平均値を計算することができる。平均値を計算する際にどこまで過去の受信状態情報を利用するか(平均値の計算に用いる受信状態情報の数)については、任意に定めることができるが、後述の位置精度情報の値に応じて動的に変化させることもできる。また、通常想定される電波強度の範囲として定められている所定の範囲から電波強度の値が外れているときは、平均値の計算の際に当該データを無視するようにすることで、電波強度の過度のバラツキを防止することができる。
【0121】
登録地点受信状態情報記憶部43は、システムの運用前の準備段階で、予め定めた地点に無線LAN端末装置2を位置させて無線フレームを送信させた場合に、当該無線フレームを受信した中継機3のそれぞれが作成した受信状態情報を記憶させるものである。この受信状態情報は、無線LAN端末装置2の位置と関連づけた形で、登録地点受信状態情報記憶部43に記憶される。なお、以降の説明では、登録地点受信状態情報記憶部43に記憶された受信状態情報を「登録受信状態情報」と称することがある。
【0122】
図6には、準備段階で無線LAN端末装置2から無線フレームを送信させる地点(受信状態情報を登録させる地点)がA〜Jに示されている。図6は船舶内の一部の構造を平面図として示したものであり、適宜の箇所に中継機3p,3q,3rが配置されている。
【0123】
図7には、図6に示すそれぞれの地点から無線LAN端末装置2が無線フレームを送信した場合において、各中継機3p,3q,3rが測定した電波強度がグラフで示されている。
【0124】
中継機3p,3q,3rが測定する電波強度は、無線LAN端末装置2の位置(無線フレームの送信地点)が中継機3から遠ざかるほど小さくなり、また、中継機3と無線LAN端末装置2の間に壁等の障害物があると更に低下する傾向がある。また、船舶内の壁の形状等によっても電波状況は大きく影響を受ける。従って、ある地点から近接する他の地点に移動するだけで、中継機3p,3q,3rのそれぞれが検出する電波強度の組合せパターンが大きく変化することも多い。
【0125】
本実施形態ではこれに着目し、図7に示すような各中継機3p,3q,3rの電波強度の組合せパターン(受信状態情報の組合せパターン)を、当該地点の位置情報と関連づけた形で登録地点受信状態情報記憶部43に事前に記憶させている。なお、図7は説明を理解し易くするために電波強度だけの地点ごとの変化が描かれているが、各中継機3p,3q,3rで得られたその他の情報(例えば、伝送速度、変調方式、誤り度)についても登録地点受信状態情報記憶部43に記憶されることは勿論である。この登録受信状態情報は、受信状態情報記憶部42に記憶された受信状態情報と照合するために用いられる。
【0126】
システム運用前の準備作業としては、船舶201内で無線LAN端末装置2をくまなく移動させながら、無線LAN端末装置2からの電波強度を各中継機3に測定させて受信状態情報を作成させ、この受信状態情報を位置情報とともに、位置演算装置4の登録地点受信状態情報記憶部43に記憶させる。
【0127】
ただし、この準備作業では、無線LAN端末装置2は主要のポイントにのみ移動させて位置情報と受信状態情報を登録させることとし、他のポイントの受信状態情報については、補間計算による推計値を位置演算装置4に登録する構成とすることもできる。この場合、事前準備の負担を軽減できる。
【0128】
また、互いに十分に離れた地点であるにもかかわらず、受信状態(例えば電波強度)の組合せパターン同士が偶然に良く似てしまうような場合も考えられる。これは位置検出精度を悪化させる原因になるので、本実施形態の位置演算装置4では、新しい地点及び受信状態情報を新規に登録しようとするごとに、当該受信状態情報と、既に登録されている登録受信状態情報のそれぞれとの乖離度を計算するように構成されている。この乖離度としては、例えば、後述するマッチング距離を用いることとすれば良い。
【0129】
そして、新規登録が指定された受信状態情報と、前記登録受信状態情報の何れかと、の乖離度が所定の値より小さかった場合には(即ち、よく似ていた場合には)、位置演算装置4は、当該登録受信状態情報に対応する地点と、今回登録しようとする地点との距離を計算する。そして、計算された距離が所定距離よりも大きいときは、位置演算装置4は登録警告情報を作成し、これに基づいて所定の警告が例えば表示装置5に出力されるようになっている。これにより、位置を誤検出するおそれが大きい地点が生じていることをシステム運用開始前に警告できるので、中継機3のレイアウト変更等の対策を早期に検討することができる。
【0130】
図4に示す領域特性情報記憶部45は、落水の危険がある船舶内の所定の領域(例えば、デッキ)の情報、及び、機関士以外の乗組員は原則として立ち入ってはならない機関室の領域の情報等を記憶する。なお、上記の立入禁止区域は船員ごとに(即ち、無線LAN端末装置2ごとに)個別に定めることができる。
【0131】
位置履歴情報記憶部44は、後述の演算部46による計算で得られた各無線LAN端末装置2の位置の履歴を、例えば直近2回分だけ記憶することができる。
【0132】
演算部46は主に、受信状態情報記憶部42に記憶された受信状態情報に基づいて、無線LAN端末装置2の現在位置を推定するためのものである。この演算部46は、マッチング距離計算部46aと、地点選択部(位置推定部)46bと、誤り判定部46cと、位置情報作成部46dと、位置精度情報作成部46eと、異常情報作成部46fと、を備えている。
【0133】
マッチング距離計算部46aは、受信状態情報記憶部42に記憶されている受信状態情報と、登録地点受信状態情報記憶部43に記憶されているそれぞれの登録受信状態情報と、の間のマッチング距離(乖離度)を計算する。
【0134】
受信状態情報の要素としては、受信強度のほか、変調方式、通信速度、誤り度等があるので、マッチング距離は上記の要素のそれぞれの差異を適切に評価したものの合計とするのが好ましい。例えば、受信強度に関する部分のマッチング距離は、各中継機3p,3q,3rにおける受信強度の差を二乗和した値を用いることができる。
【0135】
また、前記マッチング距離の計算の際は、前述したとおり、中継機3から取得した受信状態情報の電波強度あるいは誤り度として、複数の受信状態情報の間で計算した平均値を採用することができる。この場合、ノイズの悪影響を効果的に低減することができる。
【0136】
地点選択部46bは、計算されたマッチング距離が最も小さい登録地点受信状態情報に対応する地点を、図6のA〜Jの地点から選択する。これにより、無線LAN端末装置2の位置を暫定的に定めることができる。
【0137】
誤り判定部46cは、地点選択部46bによって得られた地点(無線LAN端末装置2の位置)が、位置履歴情報記憶部44に記憶されている過去の位置から不自然に飛んでいないかを検査する。
【0138】
以下、誤り判定部46cの目的について具体的に説明する。即ち、例えば図6のC地点に位置している検出対象者100が他の場所へ向かう場合、船舶内の間取りの関係上、検出対象者100は必ずB地点又はD地点を通過する必要がある。従って、無線LAN端末装置2の位置検出を行う時間間隔を十分に短く定めれば、直前までC地点にあった無線LAN端末装置2が突然に例えばF地点に移動することは極めて考えにくく、この場合は誤検出として無視すべきということができる。
【0139】
そこで誤り判定部46cは、地点選択部46bで得られた推定位置が、過去の無線LAN端末装置2の位置との関係で不自然であるときは、位置検出に誤りが生じたと判定する。一方、隣接する地点間で無線LAN端末装置2が移動するような小刻みの移動の場合は、誤り判定部46cは位置の推定が正常であると判定する。
【0140】
次に、誤り判定部46cによる誤りの判定方法の考え方について、図8を参照して説明する。図8(a)には、地点選択部46bによって推定された位置が符号P1で示されるとともに、その直前(直近)の無線LAN端末装置2の位置が符号P0で示されている。
【0141】
誤り判定部46cは最初に、直近の位置P0を中心とする円形の領域(許容領域)Qを定める。そして、この許容領域Qの内部に、地点選択部46bによって推定された位置P1が入っていれば正常と判定し、当該位置P1が許容領域Qの外側に位置している場合は誤りと判定する。
【0142】
図8(a)の例では、位置P1は正常と判定される。しかし、地点選択部46bによって推定された位置として仮に位置P1ではなくP2が推定されていた場合には、当該位置P2は誤りと判定されることになる。
【0143】
なお、図8(a)は、無線LAN端末装置2が直近までその場に静止していた場合の例を示しており、このときは、許容領域Qは当該直近の位置P0を中心とする円形の領域とされる。ただし、直近までの無線LAN端末装置2の位置の変化(移動方向及び移動速度の少なくとも何れか一方)に基づいて、許容領域Qの形状及び大きさを適宜変更することもできる。図8(b)は、直近まで無線LAN端末装置2が移動していた場合を示しており、この場合は、許容領域Qはその移動方向の前方側をある程度遠方までカバーするように、若干細長く形成される。なお、直近までの無線LAN端末装置2の位置の変化は、直近の位置P0と、その1つ前の位置と、を比較することにより取得することができる。
【0144】
位置情報作成部46dは、地点選択部46bで得られた無線LAN端末装置2の位置のうち、誤り判定部46cによって誤りなしと判定されたものに基づいて、位置情報を作成する。この位置情報には、無線LAN端末装置2の位置を座標で表したデータと、当該無線LAN端末装置2のMACアドレスの情報と、が含まれている。作成された位置情報は、表示装置5へ送信される。
【0145】
位置精度情報作成部46eは、受信状態情報と、無線LAN端末装置2の位置として選択された地点に対応する登録受信状態情報との前記マッチング距離に基づき、位置精度情報を作成する。作成された位置精度情報は、表示装置5へ送信される。
【0146】
異常情報作成部46fは、例えば前記領域特性情報記憶部45において立入りが禁止されている領域に無線LAN端末装置2が入った場合等に、異常である旨を表す異常情報を作成する。この立入りの有無の判定は、例えば、立入禁止領域を矩形の組合せで表現した場合の各頂点の座標データを前記領域特性情報記憶部45に予め記憶させておき、位置情報作成部46dから得られる無線LAN端末装置2の位置の座標と当該矩形の頂点の座標とを比較することで行うことができる。作成された異常情報は、表示装置5へ送信される。
【0147】
なお、上記の説明では、位置演算装置4は登録地点受信状態情報記憶部43の記憶内容に基づいて無線LAN端末装置2の位置を推定するように構成しているが、そのような推定を行わなくても、特別な事情がある等により、無線LAN端末装置2の位置が確認又は推定できる場合があり得る。
【0148】
また、例えば、一端に中継機3が配置された直線状の細長い道を、無線LAN端末装置2を携帯した検出対象者100が当該中継機3に向かって歩き、途中でT字状の分岐部に差し掛かったとする。すると、電波が脇道にも送信されるようになるので、そのときに中継機3が受信する電波強度は若干低下する。従って、このような電波強度の挙動を監視することで、無線LAN端末装置2が当該分岐部に位置していることを推定することができる。
【0149】
そして、登録地点受信状態情報記憶部43に記憶されている地点の1つがその分岐路に設定されている場合は、位置演算装置4は、無線LAN端末装置2が前記分岐部に差し掛かった時点において中継機3から得られた受信状態情報で、当該地点に係る既存の登録地点受信状態情報を更新することができる。これにより、中継機3の受信感度等の経時変化に対応して登録地点受信状態情報を適宜更新することができるので、長い期間にわたって良好な精度の位置推定を行うことができる。
【0150】
次に、図9を参照して表示装置5の構成を説明する。図9は表示装置5の機能ブロック図である。
【0151】
図9に示す表示装置5は、無線LAN端末装置2の位置等の様々な情報を前記位置演算装置4から受信して、各種の情報を視覚的に表示できるように構成されている。この表示装置5は、船舶地図記憶部51と、描画部52と、ディスプレイ53と、を備えている。
【0152】
船舶地図記憶部51は、船舶内の地図を表す地図データを記憶可能に構成されている。この地図は、システム運用前の段階において、適宜の操作によって船舶地図記憶部51に登録される。
【0153】
描画部52は、前記地図データ、位置演算装置4から受信した位置情報及び異常情報等に基づいて、ディスプレイ53に所定の情報を描画する。
【0154】
図10にはディスプレイ53の表示例が示されており、この例においては船舶の地図111が描かれるとともに、位置演算装置4で検出された無線LAN端末装置2の位置に人の図形112が表示されている。この図形112は、無線LAN端末装置2の検出位置が変化するのに応じて、その表示位置が刻々と更新されることはいうまでもない。
【0155】
図10に示すように、本実施形態の描画部52は、位置推定の精度を表す円113を人の図形112と同じ位置に表示するように構成されている。この円は、位置演算装置4の位置精度情報作成部46eによって作成された位置精度情報に応じて、その大きさを更新しながら表示されるようになっている。具体的には、前記マッチング距離が小さいときは小さい円が表示され、マッチング距離が大きいときは大きい円が表示される。これにより、ユーザは位置推定の精度を直感的に理解することができる。
【0156】
また、表示装置5が位置演算装置4から異常情報を受信したときは、当該表示装置5はディスプレイ53に異常表示114を行うように構成されている。この異常表示114は、本実施形態では「CAUTION!!!」という文字列としているが、事情に応じて異なる文字列又は図形等に変更することもできる。また、表示装置5にスピーカを備え、前記異常表示と併せて警報音を出力するように構成すると、注意喚起効果が高まるので有利である。
【0157】
図11は、描画部52が行う描画方法を概念的に示したものである。描画部52は内部的に、地図レイヤ121と、位置表示レイヤ122と、異常表示レイヤ123と、を有している。これらのレイヤ121,122,123は、互いに独立したビットマップデータとして構成されている。そして描画部52は、地図レイヤ121に地図111を、位置表示レイヤ122に人の図形112及び位置推定の精度を表す円113を、異常表示レイヤ123に異常表示114を、それぞれ描画した上で、3枚のレイヤを合成する。これにより、図9に示すように、地図111の上に人の図形112及び異常表示114等が重ねられた状態の画面を単一のディスプレイ53に表示することができる。
【0158】
この構成により、船員(検出対象者100)のそれぞれの所在をリアルタイムに把握できるため、例えば機関室等での操作が発生した場合等は、近傍にいる船員に対応を要請することができる。この結果、業務の効率化を実現することができる。
【0159】
次に、無線LAN端末装置2側において水検出センサ26によって落水が検知されたり、SOSスイッチ28が押されたりした場合の動作について説明する。無線LAN端末装置2の非常情報作成部29は、状況に応じた非常情報を作成して、無線送受信機21から送信させる。この非常情報は、中継機3を経由して位置演算装置4に出力される。当該非常情報を受信した位置演算装置4は、異常情報を作成して表示装置5に送信し、これに基づいて表示装置5に適宜の警告表示をさせる。このとき表示装置5は、上記警告表示とともに、当該無線LAN端末装置2の位置を同時に表示させる。これにより、落水等が起こった現場の位置を迅速に把握することができる。
【0160】
なお、中継機3が検知していた無線LAN端末装置2の電波が急激に弱くなったり、途絶えたりした場合も、船員等の落水が疑われる。これに適切に対処するために、中継機3は図略の電波強度低下情報作成部を備えており、無線LAN端末装置2の無線フレームの電波強度が所定時間以内に所定値より大きく低下したことを検知したときは、その旨の情報(電波強度低下情報)を作成して位置演算装置4に送信するように構成されている。なお、この電波強度低下情報には、電波強度が低下した無線LAN端末装置2のMACアドレスの情報が含まれている。
【0161】
この電波強度低下情報を受信した位置演算装置4は、領域特性情報記憶部45を参照し、当該無線LAN端末装置2の位置(直近の位置)がデッキ上であったか否かを調べる。そして、無線LAN端末装置2の直近の位置がデッキ上だった場合は、船員(検出対象者100)が落水した可能性が高いと判断して、上述の場合と同様に表示装置5に適宜の警告表示をさせる。一方、無線LAN端末装置2の直近の位置がデッキ上以外だった場合は、無線LAN端末装置2のバッテリが切れたり、エリアを外れたために電波が途絶えただけの可能性が高いと判断し、上記の警告表示等は行わない。これにより、誤報を少なくすることができる。なお、船員の直近の位置がデッキ上であったか否かの判定は、前記立入禁止領域の判定と同様に、デッキを表す矩形領域の座標を前記領域特性情報記憶部45に予め記憶させておき、無線LAN端末装置2の直近の位置の座標と比較することで行うことができる。
【0162】
次に、船舶に火災が発生して火災検出センサ9がそれを検知した場合の動作について説明する。火災検出センサ9が火災を検知すると、当該火災検出センサ9に接続されている火災場所取得装置10が、当該火災検出センサ9の位置を含む情報を位置演算装置4に送信する。位置演算装置4は異常情報を作成するとともに、当該火災検出センサ9の位置の情報とともに表示装置5へ送信する。表示装置5では、火災を検知した火災検出センサ9の位置(即ち、火災発生位置)を、各船員の位置(人の図形112)とともに地図111に重ねて表示する。
【0163】
これにより、火災検出時の出火場所を即座に把握できる。また、火元の近隣に位置する船員の無線LAN端末装置2に対して火災発生メッセージを配信することにより、迅速な消火及び避難活動を行うことができる。更に、区画を密閉して炭酸ガス消火を行う際は、(炭酸ガス消火装置の動作が人命に関わることから)内部に人員がいないことを確認する必要があるが、このときに本実施形態の端末位置検出システム1を判断の材料の1つとすることができる。この場合、区画から人員が退避していることの確認は表示装置5上で迅速に行うことができるので、早期の消火が可能になる。
【0164】
また、上記の端末位置検出システム1は、船舶の接岸中において船員が乗船中か下船中かを把握する目的で使用することもできる。即ち、ある船員が携帯する無線LAN端末装置2からの無線フレームが中継機3で検出された場合には、当該船員が乗船中であり、そうでない場合は下船中であると判断することができる。また、前記ゲート202を通過する船員の移動する向きを位置演算装置4を用いて求めることで、船員の乗船及び下船を検知することもできる。船員の乗船、下船が検知された場合、表示装置5にその旨を表示するようにすれば良い。以上により、例えば乗員が下船したままでの出港を回避することができる。
【0165】
また、端末位置検出システム1は、例えば、関係者以外の者が無線LAN端末装置2を携帯しないにもかかわらず前記ゲート202を通過して乗船又は下船しようとするのを検知することもできる。即ち、位置演算装置4は、ゲート通過検出装置11の赤外線センサ12が人間の通過を検知したにもかかわらず、ゲート通過検出装置11の近傍に設定された所定の領域に無線LAN端末装置2が存在しないと判定した場合は、端末不携帯者検知情報を作成する。表示装置5は、この端末不携帯者検知情報を受信すると、その旨の異常が発生したことを適宜表示する。従って、ユーザは、予期しない何者かがゲート202を通過したことを早期に把握して備えることができる。このとき、ゲート通過時の不携帯者をカメラ13で撮影し、その画像をそれぞれの無線LAN端末装置2に配信することで、船員は不審者の様子等の極めて有用な情報を前もって得ることができ、より的確な対応が可能になる。
【0166】
ただし、例えばゲート202の近くで船員がたまたま体を休めており、その船員の無線LAN端末装置2が検出されている場合は、不審者のゲート202の通過を適切に検出できないおそれがあると考えられる。これを防止するためには、無線LAN端末装置2の位置の履歴を用いることが有効である。即ち、例えば、ゲート通過検出装置11の近傍で無線LAN端末装置2が検出された場合でも、それが一定時間以上静止している場合には、当該無線LAN端末装置2はゲート通過者の無線LAN端末装置2ではないと判断することができる。そして、それ以外に無線LAN端末装置2がゲート通過検出装置11の近傍で検出されないにもかかわらず、ゲート通過検出装置11の赤外線センサ12が人間の通過を検知した場合は、上記の端末不携帯者検知情報を作成するようにすれば良い。
【0167】
また、それぞれの無線LAN端末装置2の位置の変化を追跡し、実際にゲート202を通過している無線LAN端末装置2が検出されていない場合に、赤外線センサ12で検知した者は無線LAN端末装置2の不携帯者であるとして、上記の端末不携帯者検知情報を作成することもできる。更には、ゲート通過検出装置11とほぼ同じ位置(例えば、ゲート202の通路と直接対面する位置)に前記中継機3を配置した上で、当該中継機3が例えば略最高レベルの受信状態を検出していない場合に、ゲート通過者は無線LAN端末装置2の不携帯者であるとして、端末不携帯者検知情報を作成する構成とすることもできる。
【0168】
以上のようにしてゲート202を通過する不審者を検出することができるが、無線LAN端末装置2を携帯している者であっても、例えばゲート202が複数設置されている場合、通過できる者をそれぞれのゲート202ごとに制限したい場合が考えられる。この場合は、例えば以下のように構成することが考えられる。即ち、それぞれのゲート202ごとに通過許可条件を予め定めた上で、位置演算装置4が、ゲート通過検出装置11の近傍で検出された無線LAN端末装置2(即ち、ゲート202を通過した者の無線LAN端末装置2)のMACアドレスに基づいて、当該無線LAN端末装置2の携帯者がゲート202を通過可能な者か否かを判定するようにする。なお、通過許可条件の例としては、通過可能な者に係る無線LAN端末装置2のMACアドレスのリストとすることが考えられる。そして、通過が禁止されているのにゲート202を通過した者がいた場合、位置演算装置4はその旨の情報(通過不許可者検知情報)を作成する。そして、表示装置5は、この通過不許可者検知情報に基づいて異常情報を適宜表示する。以上により、複数のゲート202ごとに人員の出入りを適切に管理することができる。
【0169】
なお、上記の構成において受信状態情報は、中継機3が無線LAN端末装置2と無線で送受信することで作成されていたが、中継機3同士が無線で送受信することによって、中継機3と中継機3の間の受信状態情報(以下、中継機間受信状態情報と称する)を作成することもできる。この中継機間受信状態情報の内容は、前述の無線LAN端末装置2からの無線フレーム受信に係る受信状態情報と実質的に同一である。
【0170】
中継機3は、他の中継機3が送信する無線フレームを受信して解析することにより、上記の中継機間受信状態情報を作成して位置演算装置4に送信する。この中継機間受信状態情報の作成及び送信は、所定の時間間隔で繰り返して行われる。
【0171】
位置演算装置4は、刻々と受信される中継機間受信状態情報の内容の変化を監視する。そして、中継機間受信状態情報の内容が従来から変化し、その変化量が所定値より大きい場合(即ち、中継機3の性能が急激に変化した場合)は、中継機3に異常が発生した旨の異常情報を作成し、表示装置5側へ送信するように構成されている。これにより、いわゆる自己診断機能が実現され、ユーザは表示装置5の表示によって中継機3の異常の発生を迅速に認識することができる。
【0172】
また、上記の自己診断機能において異常が発生したと判断された中継機3については、当該中継機3が受信状態情報を通常どおり作成したとしても、その内容を全面的に信頼して無線LAN端末装置2の位置を推定することはできない。そこで、位置演算装置4は、前記マッチング距離計算部46aによるマッチング距離の計算において、当該異常に係る中継機3が作成した受信状態情報を登録受信状態情報と比較したときの差よりも、他の(正常な)中継機3が作成した受信状態情報を登録受信状態情報と比較したときの差を重点的に考慮するようになっている。これにより、一部の中継機3に異常が発生した場合でも、位置推定の精度を一定程度確保することができる。
【0173】
以上に示すように、本実施形態の端末位置検出システム1は、複数の中継機3と、位置演算装置4と、表示装置5と、を備える。それぞれの中継機3は、検出対象者100とともに移動する無線LAN端末装置2から当該無線LAN端末装置2のMACアドレスを含んで送信される無線フレームを受信したときは、その受信状態に関する受信状態情報を作成する。位置演算装置4は、中継機3から取得した受信状態情報に基づいて、それぞれの無線LAN端末装置2の位置を演算により推定する。表示装置5は、位置演算装置4が推定した位置を表示する。位置演算装置4は、地点選択部46bと、誤り判定部46cと、を備える。地点選択部46bは、受信状態情報に基づいて前記無線LAN端末装置2の位置を推定する。誤り判定部46cは、地点選択部46bにより推定された現在の無線LAN端末装置2の位置が、当該無線LAN端末装置2の過去の位置との間で所定の関係を満たす場合に、その推定された位置を誤りと判定する。表示装置5は、位置演算装置4が推定した位置を、誤り判定部46cによって誤りと判定されたものを除いて表示することが可能である。
【0174】
これにより、地点選択部46bが推定した位置が過去の位置から不自然に移動したような位置関係にある場合は、その位置を誤りと判定し、表示装置5での表示から除外することができる。従って、表示装置5における位置表示の挙動が不安定になることを防止し、信頼性の高い端末位置検出システムを提供することができる。
【0175】
また、本実施形態において誤り判定部46cは、地点選択部46bにより得られた現在の無線LAN端末装置2の位置が、当該無線LAN端末装置2の直近の位置を含む所定の領域の外側にある場合に誤りと判定する。
【0176】
これにより、表示装置5における位置表示が不連続的に移動するような挙動を防止できるので、安定的で自然な表示を実現することができる。
【0177】
また、本実施形態において誤り判定部46cは、前記所定の領域を、当該無線LAN端末装置2の直近までの位置変化を考慮して定めている。
【0178】
これにより、無線LAN端末装置2を携帯する検出対象者100の直前までの移動方向、移動速度等を考慮して、推定された位置が誤りであるか否かを的確に判定することができる。
【0179】
また、本実施形態において中継機3は、無線LAN端末装置2からの無線フレームの受信時における受信強度を検出するとともに、無線LAN端末装置2のMACアドレスを無線フレームから取得する。そして中継機3は、受信強度及びMACアドレスを含むように受信状態情報を作成する。
【0180】
これにより、中継機3と無線LAN端末装置2との位置関係に応じて大きく変化する受信強度を用いて無線LAN端末装置2の位置推定を行うので、良好な推定精度を実現できる。また、無線LAN端末装置2に一意に付与されるMACアドレスが受信状態情報に含まれるので、複数の無線LAN端末装置2であっても、それぞれを容易に特定した上でその位置を推定することができる。
【0181】
また、本実施形態において中継機3が作成する受信状態情報は、無線フレームの受信時の通信速度、変調方式及び誤り度を含む。
【0182】
これにより、中継機3の数が少なくても、受信状態情報に含まれる多様なパラメータを用いて、無線LAN端末装置2の位置を良好な精度で推定することができる。
【0183】
また、本実施形態の位置演算装置4は登録地点受信状態情報記憶部43を備える。この登録地点受信状態情報記憶部43には、複数の地点の位置(図6のA〜Jの地点)と、当該地点に配置された無線LAN端末装置2が無線フレームを送信したときに、当該無線フレームを受信した中継機3のそれぞれが作成する受信状態情報と、を関連づけて事前に記憶しておくことが可能である。位置演算装置4は、中継機3から受信状態情報を受信したときは、当該受信状態情報と、登録地点受信状態情報記憶部43に記憶された受信状態情報である登録受信状態情報と、を比較する。そして、地点選択部46bは、受信状態情報に最も近いと判定された登録受信状態情報に対応する地点を無線LAN端末装置2の現在の位置であると推定する選択推定処理を行う。
【0184】
これにより、例えば間取りが複雑な構造物等、電波が複雑に反射し易い環境においても、無線LAN端末装置2の位置を良好な精度で推定することができる。
【0185】
また、本実施形態において中継機3は、無線LAN端末装置2から無線フレームを受信したときは、その受信強度を検出し、当該受信強度を含んだ受信状態情報を作成して位置演算装置4に送信するように構成されている。一方、位置演算装置4は、中継機3から受信状態情報を受信したときは、少なくとも受信強度について、現在及び過去に受信した複数の受信状態情報を対象として平均値を計算する。そして、位置演算装置4は、受信状態情報と前記登録受信状態情報との間で受信強度同士を比較するときは、前記受信状態情報における受信強度として前記平均値を用いる。
【0186】
これにより、受信状態における受信強度のバラツキを予め取り除いた状態で登録受信状態情報と比較できるので、より信頼性の高い位置推定を実現できる。
【0187】
また、本実施形態において位置演算装置4は、複数の受信状態情報から受信強度の平均値を計算するときは、所定の範囲から外れる受信強度を有する受信状態情報については、平均値を計算する対象から除外するようになっている。
【0188】
これにより、明らかにノイズと判るような極端な受信状態情報を除外することができるので、より信頼性の高い位置推定を実現できる。
【0189】
また、本実施形態において位置演算装置4は、登録地点受信状態情報記憶部43に記憶された複数の登録受信状態情報の間を補間する計算を行うことにより、当該登録地点受信状態情報記憶部43に記憶されていない地点における受信状態情報を推定し、これを当該登録地点受信状態情報記憶部43に追加的に記憶させることが可能である。
【0190】
これにより、システムの運用前の段階で、実際に無線LAN端末装置2をその場所へ持って行かなければならない地点の数を減らすことができるので、作業負担を低減することができる。
【0191】
また、本実施形態において位置演算装置4は、登録地点受信状態情報記憶部43に新規の地点及び受信状態情報を関連づけて記憶させようとする場合においては、既に記憶されている登録受信状態情報の何れかと当該新規の受信状態情報との乖離度が所定の値より小さく、当該登録受信状態情報に対応する地点と前記新規の地点との距離が所定距離より大きいときは、登録警告情報を作成する。
【0192】
これにより、受信状態情報が相互に似ていて紛らわしい地点があることがシステムの運用前の段階で早期に判明するので、中継機3の追加又はレイアウト変更等の対策を素早く検討することができる。
【0193】
また、本実施形態において位置演算装置4は、登録地点受信状態情報記憶部43に記憶されている地点に無線LAN端末装置2が位置していることを前記選択推定処理以外の方法で推定又は確認した場合には、当該無線LAN端末装置2が送信した無線フレームに基づいて中継機3が作成した受信状態情報で、登録地点受信状態情報記憶部43の内容のうち当該地点に対応する登録受信状態情報を更新する。
【0194】
これにより、登録受信状態情報を必要に応じて適宜更新することができるので、例えば無線LAN端末装置2の送信出力の経時変化や、中継機3の受信感度の経時変化等に対応することができる。この結果、長期間にわたって良好な精度で位置推定を行うことができる。
【0195】
また、本実施形態において位置演算装置4は、中継機3から受信した受信状態情報と、当該受信状態情報に最も近いと判定された登録受信状態情報と、の間の近似度を評価した位置精度情報を作成する。
【0196】
これにより、位置精度情報を用いて、無線LAN端末装置2の位置推定の状況を適切に把握することができるので、ユーザは状況に応じた的確な判断を行うことができる。
【0197】
また、本実施形態において位置演算装置4は、中継機3から受信状態情報を受信したときは、少なくとも受信強度について、現在及び過去に受信した複数の受信状態情報を対象として平均値を計算する。受信強度の平均値の計算に用いられる受信状態情報の数は、前記位置精度情報に基づいて変化する。
【0198】
これにより、位置精度が良くないときは平均値の計算の対象となる受信状態情報の数を増やすようにすることで、安定した位置推定精度を実現することができる。一方、位置精度が良好なときは平均値の計算の対象となる受信状態情報の数を減らすことで、リアルタイム性を重視した位置表示を行うことができる。
【0199】
また、本実施形態において表示装置5は、位置演算装置4が推定した位置を表示するとともに、位置精度情報に応じて大きさが変化する円113を併せて表示している。
【0200】
これにより、表示装置5を見ることで現在の位置推定の確度について容易に確認することができるので、状況を一層総合的に把握することができる。
【0201】
また、本実施形態において表示装置5は、位置演算装置4が推定した位置を、船舶内の地図111に重ねるようにして表示している。
【0202】
これにより、検出対象者100の船舶内での位置を一層素早く且つ的確に理解することができる。
【0203】
また、本実施形態の端末位置検出システム1においては、火災検出センサ9が火災を検出した場合は、当該火災検出センサ9の位置を前記地図111に重ねるようにして表示装置5に表示する。
【0204】
これにより、火災の発生位置が検出対象者100との関係で瞬時に把握できるので、素早い緊急対応が可能になる。また、火災の発生位置、地図111、検出対象者100の位置を1つの表示装置5に表示できるため、情報の一元的な把握が簡単になるとともに、表示装置5のコンパクト化も容易になる。
【0205】
また、本実施形態において中継機3は、他の中継機3が送信した無線フレームを受信して、当該無線フレームの送信元である中継機3のMACアドレスと、無線フレームの受信強度の情報と、を含む中継機間受信状態情報を作成することができる。
【0206】
これにより、中継機3同士で送受信してその受信状態を取得することで、中継機3の受信感度の経時変化等、位置演算装置4の位置推定精度の管理やメンテナンス作業の際に参考となる有用な情報を得ることができる。
【0207】
また、本実施形態において位置演算装置4は、それぞれの中継機3から中継機間受信状態情報を反復して取得するように構成されている。そして位置演算装置4は、現在の中継機間受信状態情報が直近の中継機間受信状態情報より変化し、その変化量が所定値より大きい場合は、中継機3に異常が発生した旨の異常情報を作成する。
【0208】
これにより、自己診断により中継機3の異常を早期発見できるので、位置演算装置4による位置推定精度を長期間にわたって良好に維持することができる。
【0209】
また、本実施形態において、位置演算装置4のマッチング距離計算部46aは、異常の発生が検知された中継機3に関する受信状態情報と登録受信状態情報の差よりも、それ以外の中継機3に関する受信状態情報と登録受信状態情報の差を重点的に考慮したマッチング距離を計算するように構成されている。そして、地点選択部46bは、前記マッチング距離に基づき、中継機3から取得した受信状態情報に最も近いと判定された登録受信状態情報に対応する地点を、無線LAN端末装置2の現在の位置であると推定する。
【0210】
これにより、特定の中継機3に異常が発生して信頼性が低下した場合にも柔軟に対応して、的確な位置推定を実現することができる。
【0211】
また、本実施形態の端末位置検出システム1において、中継機3は、無線LAN端末装置2からの無線フレームの電波強度が所定時間以内に所定値より大きく低下したことを検出した場合には、当該無線LAN端末装置2のMACアドレスを含む電波強度低下情報を作成して位置演算装置4に送信するように構成されている。そして、位置演算装置4は、推定した無線LAN端末装置2の位置が所定の落下危険領域(例えば、デッキ)にあるときに電波強度低下情報を受信したときは、落下検知情報を作成する。また、表示装置5は、前記落下検知情報に基づいて異常発生表示を行う。
【0212】
これにより、検出対象者100の船舶からの落水を素早く検知して表示装置5に表示できるので、近くの者に指示して現場に急行させる等の処置を迅速に行うことができる。また、落水の危険がない領域に無線LAN端末装置2があるときは、電波強度の鋭い低下を検出しても異常発生表示は行われないので、誤報が頻発することを防止できる。
【0213】
なお、上記のように中継機3が電波強度の低下を検出して電波強度低下情報を送信する代わりに、以下のように構成することもできる。即ち、無線LAN端末装置2の加速度センサ27が自機の落下を検出した場合は、落下検知信号を中継機3に送信し、中継機3は、受信した落下検知信号を位置演算装置4に送信する。このとき、中継機3は、当該落下検知信号を送信した無線LAN端末装置2のMACアドレス等を、位置演算装置4に併せて送信する。そして、位置演算装置4は、推定した無線LAN端末装置2の位置が所定の落下危険領域(例えば、デッキ)にあるときに落下検知信号を受信したときは、落下検知情報を作成する。
【0214】
これにより、検出対象者100の船舶からの落水を素早く検知して表示装置5に表示できる。また、加速度センサ27により自機の落下を直接的に検出するので、落水を的確に検知することができる。更には、そのような高所からの落下の危険がない領域(デッキ以外の領域)に無線LAN端末装置2があるときは、落下検知信号が受信されても異常発生表示は行われないので、誤報の発生を防止できる。
【0215】
また、本実施形態において無線LAN端末装置2は、自機の長時間の落下を検知すると(具体的には、加速度センサ27が無重力に近い状態を所定時間以上継続して検知し、その直後に大きな加速度を検知すると)、落下検知信号を中継機3に送信するように構成されている。表示装置5は、落下検知信号に基づいて異常発生表示を行う。
【0216】
これにより、検出対象者100の長時間の落下(船舶からの落水を含む)を素早く検知して表示装置5に表示できるので、近くの者に指示して現場に急行させる等の処置を迅速に行うことができる。
【0217】
また、本実施形態において無線LAN端末装置2は、自機の水没を水検出センサ26で検知すると、水没信号を中継機3に送信するように構成されている。表示装置5は、前記水没信号に基づいて異常発生表示を行う。
【0218】
これにより、無線LAN端末装置2の水没(船舶からの落水を含む)を素早く検知して表示装置5に表示できるので、近くの者に指示して現場に急行させる等の処置を迅速に行うことができる。
【0219】
また、本実施形態の端末位置検出システム1は、GPS装置7と、海流情報取得装置8と、を備える。GPS装置7は、船舶201の位置を取得する。海流情報取得装置8は、船舶201の周辺における海流の情報を取得する。表示装置5は、異常発生表示を行うときは、異常発生時における船舶201の位置及び周辺の海流の情報を併せて表示する。
【0220】
これにより、検出対象者100(例えば、船員)が船舶201から落水した場合において、異常の発生を知らせるとともに救助のための有用な情報が表示装置5に自動的に表示されるので、的確な処置を素早く行うことができる。
【0221】
また、本実施形態の端末位置検出システム1は、人体を検出することが可能なゲート通過検出装置11を備える。このゲート通過検出装置11は、所定の管理領域(位置演算装置4が無線LAN端末装置2の位置を推定可能な領域内に設定される領域)の境界部分であるゲート202に配置される。位置演算装置4は、ゲート通過検出装置11の近傍に無線LAN端末装置2が存在しないにもかかわらず当該ゲート通過検出装置11が人体を検出した場合は、端末不携帯者検知情報を作成する。表示装置5は、前記端末不携帯者検知情報に基づいて異常発生表示を行う。
【0222】
これにより、不審者の乗船等を素早く検知して的確な対応を行うことができる。
【0223】
なお、本実施形態の端末位置検出システム1においては、位置演算装置4は、ゲート通過検出装置11の近傍に無線LAN端末装置2が存在しないか、ゲート通過検出装置11の近傍に存在する無線LAN端末装置2のすべてが一定時間以上静止しているにもかかわらず、ゲート通過検出装置11が人体を検出した場合は、端末不携帯者検知情報を作成するように構成することもできる。
【0224】
即ち、ゲート通過検出装置11が人体を検出したときに、当該ゲート通過検出装置11の近傍で検出された無線LAN端末装置2が全て静止状態だった場合は、ゲート202を通過しようとしている船員はいないと考えられる。従って、このときは端末不携帯者検知情報を作成するようにすることで、端末不携帯者のゲート通過を正確に検出して異常表示することができる。
【0225】
また、本実施形態の端末位置検出システム1においては、位置演算装置4は、ゲート通過検出装置11の配置場所で前記管理領域の境界を通過する無線LAN端末装置2が検出されないにもかかわらず、ゲート通過検出装置11が人体を検出した場合は、端末不携帯者検知情報を作成するように構成することもできる。
【0226】
これにより、ゲート通過検出装置11が人体を検出したときに、ゲート通過検出装置11の配置場所で前記管理領域の境界を通過する無線LAN端末装置2が検出された場合以外は、端末不携帯者がゲート202を通過したものと判断される。従って、端末不携帯者のゲート通過を正確に検出して異常表示することができる。
【0227】
また、本実施形態の端末位置検出システム1においては、複数の中継機3のうち1つをゲート通過検出装置11の近傍に配置した場合、以下のようにすることもできる。即ち、ゲート通過検出装置11の近傍に配置された中継機3から取得した受信状態情報が所定の条件(具体的には、受信状態がほぼ最良のレベルであること)を満たさないにもかかわらず、ゲート通過検出装置11が人体を検出した場合は、位置演算装置4が端末不携帯者検知情報を作成する。
【0228】
これにより、ゲート通過検出装置11が人体を検出したときに、ゲート通過検出装置11の近傍の中継機3が無線LAN端末装置2からの無線フレームを極めて良好に受信した場合以外は、端末不携帯者がゲート202を通過したものと判断される。従って、簡素な制御により、端末不携帯者のゲート通過を正確に検出して異常表示することができる。
【0229】
また、本実施形態の端末位置検出システム1は、前記ゲート202(ゲート通過検出装置11)が複数配置されている場合、以下のように構成することもできる。即ち、位置演算装置4は、ゲート通過検出装置11の近傍で検出された無線LAN端末装置2の識別情報が、それぞれのゲート202(ゲート通過検出装置11)に応じて定められる通過許可条件を満たすか否かを判定し、満たさない場合は通過不許可者検知情報を作成する。表示装置5は、通過不許可者検知情報に基づいて異常発生表示を行う。
【0230】
これにより、ゲート202ごとに(ゲート通過検出装置11ごとに)、当該ゲート202を通過可能な者と通過できない者を管理することができる。そして、通過不可能な者がゲート202を通過した場合には異常を適切に表示することができる。
【0231】
また、本実施形態の端末位置検出システム1は、ゲート通過検出装置11が人体を検出するのに連動して当該人体を撮影可能なカメラ13を備える。そして端末位置検出システム1は、異常発生時に、カメラ13によって撮影した画像を無線LAN端末装置2に配信することができる。
【0232】
これにより、不審者の情報を素早く周知することで、検出対象者100としての乗組員に一層適切な対応を促すことができる。
【0233】
また、本実施形態において、位置演算装置4は、推定した無線LAN端末装置2の位置が所定の禁止領域(例えば、前記立入禁止区域)内にある場合に禁止領域立入検知情報を作成する。表示装置5は、禁止領域立入検知情報に基づいて異常発生表示を行う。
【0234】
これにより、禁止領域への乗組員等の立入りを素早く検知して的確な対応を行うことができる。
【0235】
また、本実施形態において、無線LAN端末装置2はディスプレイ23を備えている。そして端末位置検出システム1は、異常発生時においては、当該異常の内容の情報を無線LAN端末装置2に配信してディスプレイ23に表示させる。
【0236】
これにより、発生した異常の内容を検出対象者100に配信することで、船舶内の多数の者が救助及び避難等の適切な行動を迅速に開始することができる。
【0237】
また、本実施形態の端末位置検出システム1は、異常発生時においては、位置演算装置4によって推定された位置が異常発生地点から近い無線LAN端末装置2と、そうでない無線LAN端末装置2と、の間で、異なる情報を配信可能に構成されている。
【0238】
これにより、例えば火災が発生した場合において、火元に最も近い乗組員には当該火元付近にある可燃性物質等を除去する等の応急処置を指示し、やや離れた乗組員には、後の炭酸ガス消火に備えて直ちに火元の区画から避難すべき旨を指示する等、異常発生箇所に対する位置関係に応じた的確な処置が可能になる。
【0239】
また、本実施形態の端末位置検出システム1において、中継機3は、複数フロアの建造物において上下方向に隣り合うフロアの両方に設置される。そして、上側のフロアの中継機3は、下側のフロアの中継機3と上下方向に対応しないように配置されている。
【0240】
これにより、例えば無線LAN端末装置2が上側のフロアに位置している場合に、上側のフロアのみならず下側のフロアの中継機3も効率的に活用して、無線LAN端末装置2の位置を推定することができる。特に、下側のフロアの中継機3は上側のフロアの中継機3と上下方向で対応しない位置にあるので、当該下側のフロアの中継機3の受信状態を、無線LAN端末装置2の上側のフロアにおける位置(平面方向での位置)を推定するための有力な根拠とすることができる。従って、中継機3の数がより少ない場合(例えば、1フロアあたり2つ)であっても、無線LAN端末装置2の位置をほぼ問題ない精度で推定することができる。従って、システムの設置コストを低減できるとともに、配線が簡素化される。
【0241】
また、本実施形態では、端末位置検出システム1を船舶に設置するとともに、無線LAN端末装置2を船員に携帯させることで、船員位置管理システムが構築されている。
【0242】
これにより、無線LAN端末装置2を介して船員の位置を精度良く推定できる船員位置管理システムを提供することができる。
【0243】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は例えば下記のように変更することができる。
【0244】
受信状態情報としては、上記実施形態では変調方式、通信速度、電波強度、誤り度の4つを含むように構成されているが、そのうち何れか1つ〜3つを省略することもできる。また、前記誤り度の計算は上記の方法に限らず、適宜定めることができる。
【0245】
誤り判定部46cにおいて用いられる許容領域Qの形状は円形に限らず、他の任意の形状に変更することができる。
【0246】
ゲート通過検出装置11は、上記実施形態では赤外線センサ12で人体を検出するように構成されているが、これに代えて前記カメラ13のモーションセンサによって人体を検出するように変更することができる。
【0247】
前記無線LAN端末装置2として、無線LAN機能付きの汎用の携帯電話を使用することもできる。
【0248】
本発明の端末位置検出システムは、船舶での使用に限定されるものではなく、例えば病院、学校、老人ホーム等の各種施設で、移動体たる人物の位置を検出あるいは管理するために適用することができる。
【符号の説明】
【0249】
1 端末位置検出システム
2 無線LAN端末装置
3 中継機
4 位置演算装置
5 表示装置
46b 地点選択部(位置推定部)
46c 誤り判定部
100 検出対象者(移動体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体とともに移動する無線LAN端末装置から当該無線LAN端末装置の識別情報を含んで送信される無線フレームを受信し、その受信状態に関する受信状態情報を作成する複数の中継機と、
前記中継機から取得した前記受信状態情報に基づいて、それぞれの前記無線LAN端末装置の位置を演算により推定する位置演算装置と、
前記位置演算装置が推定した位置を表示する表示装置と、
を備え、
前記位置演算装置は、
前記受信状態情報に基づいて前記無線LAN端末装置の位置を推定する位置推定部と、
前記位置推定部により推定された現在の前記無線LAN端末装置の位置が、当該無線LAN端末装置の過去の位置との間で所定の関係を満たす場合に、その推定された位置を誤りと判定する誤り判定部と、
を備え、
前記表示装置は、前記位置演算装置が推定した位置を、前記誤り判定部によって誤りと判定されたものを除いて表示することが可能であることを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の端末位置検出システムであって、
前記誤り判定部は、前記位置推定部により得られた現在の前記無線LAN端末装置の位置が、当該無線LAN端末装置の直近の位置を含む所定の領域の外側にある場合に誤りと判定することを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項3】
請求項2に記載の端末位置検出システムであって、
前記誤り判定部は、前記所定の領域を、当該無線LAN端末装置の直近までの位置変化を考慮して定めることを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の端末位置検出システムであって、
前記中継機は、
前記無線LAN端末装置からの前記無線フレームの受信時における受信強度を検出するとともに、前記無線LAN端末装置の識別情報を前記無線フレームから取得し、
前記受信強度及び前記識別情報を含むように前記受信状態情報を作成することを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項5】
請求項4に記載の端末位置検出システムであって、
前記中継機が作成する前記受信状態情報には、前記無線フレームの受信時の通信速度、変調方式及び通信誤り評価値のうち少なくとも何れかが更に含まれることを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の端末位置検出システムであって、
前記位置演算装置は登録地点受信状態情報記憶部を備え、
前記登録地点受信状態情報記憶部には、
複数の地点の位置と、
当該地点に配置された前記無線LAN端末装置が前記無線フレームを送信したときに、当該無線フレームを受信した前記中継機のそれぞれが作成した受信状態情報と、
を関連づけて事前に記憶しておくことが可能であり、
前記位置演算装置は、前記中継機から受信状態情報を受信したときは、当該受信状態情報と、前記登録地点受信状態情報記憶部に記憶された受信状態情報である登録受信状態情報と、を比較し、最も近いと判定された登録受信状態情報に対応する地点を前記無線LAN端末装置の現在の位置であると推定する選択推定処理を行うことを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項7】
請求項6に記載の端末位置検出システムであって、
前記中継機は、前記無線LAN端末装置から前記無線フレームを受信したときは、その受信強度を検出し、当該受信強度を含んだ受信状態情報を作成して前記位置演算装置に送信するように構成されており、
前記位置演算装置は、前記中継機から前記受信状態情報を受信したときは、少なくとも前記受信強度について、現在及び過去に受信した複数の受信状態情報を対象として平均値を計算し、
前記受信状態情報と前記登録受信状態情報との間で受信強度同士を比較するときは、前記受信状態情報における受信強度として前記平均値を用いることを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項8】
請求項7に記載の端末位置検出システムであって、
前記位置演算装置は、複数の受信状態情報から前記受信強度の平均値を計算するときは、所定の範囲から外れる受信強度を有する受信状態情報については、前記平均値を計算する対象から除外することを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項9】
請求項6から8までの何れか一項に記載の端末位置検出システムであって、
前記位置演算装置は、前記登録地点受信状態情報記憶部に記憶された複数の登録受信状態情報の間を補間する計算を行うことにより、当該登録地点受信状態情報記憶部に記憶されていない地点における受信状態情報を推定し、これを当該登録地点受信状態情報記憶部に追加的に記憶させることが可能であることを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項10】
請求項6から9までの何れか一項に記載の端末位置検出システムであって、
前記位置演算装置は、前記登録地点受信状態情報記憶部に新規の地点及び受信状態情報を関連づけて記憶させようとする場合において、
既に記憶されている前記登録受信状態情報の何れかと当該新規の受信状態情報との乖離度が所定の値より小さく、当該登録受信状態情報に対応する地点と前記新規の地点との距離が所定距離より大きいときは、登録警告情報を作成することを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項11】
請求項6から10までの何れか一項に記載の端末位置検出システムであって、
前記位置演算装置は、前記登録地点受信状態情報記憶部に記憶されている地点に前記無線LAN端末装置が位置していることを前記選択推定処理以外の方法で推定又は確認した場合には、当該無線LAN端末装置が送信した無線フレームに基づいて前記中継機が作成した受信状態情報で、前記登録地点受信状態情報記憶部の内容のうち当該地点に対応する登録受信状態情報を更新することを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項12】
請求項6から11までの何れか一項に記載の端末位置検出システムであって、
前記位置演算装置は、前記中継機から受信した受信状態情報と、当該受信状態情報に最も近いと判定された登録受信状態情報と、の間の近似度を評価した位置精度情報を作成することを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項13】
請求項12に記載の端末位置検出システムであって、
前記中継機は、前記無線LAN端末装置から前記無線フレームを受信したときは、その受信強度を検出し、当該受信強度を含んだ受信状態情報を作成して前記位置演算装置に送信するように構成されており、
前記位置演算装置は、前記中継機から前記受信状態情報を受信したときは、少なくとも前記受信強度について、現在及び過去に受信した複数の受信状態情報を対象として平均値を計算し、
前記受信強度の平均値の計算に用いられる受信状態情報の数は、前記位置精度情報に基づいて変化することを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の端末位置検出システムであって、
前記表示装置は、前記位置演算装置が推定した位置を表示するとともに、前記位置精度情報に応じて変化する視覚的表示を行うことを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項15】
請求項1から14までの何れか一項に記載の端末位置検出システムであって、
前記表示装置は、前記位置演算装置が推定した位置を、前記無線LAN端末装置の位置管理を行う領域を示す地図に重ねるようにして表示することを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項16】
請求項15に記載の端末位置検出システムであって、
火災検出センサを備え、
前記火災検出センサが火災を検出した場合は、当該火災検出センサの位置を前記地図に重ねるようにして前記表示装置に表示することを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項17】
請求項1から16までの何れか一項に記載の端末位置検出システムであって、
前記中継機は、他の中継機が送信した無線フレームを受信して、当該無線フレームの送信元である中継機の識別情報と、前記無線フレームの受信強度の情報と、を含む中継機間受信状態情報を作成可能に構成されていることを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項18】
請求項17に記載の端末位置検出システムであって、
前記位置演算装置は、それぞれの前記中継機から前記中継機間受信状態情報を反復して取得するように構成されており、
現在の中継機間受信状態情報が直近の中継機間受信状態情報より変化し、その変化量が所定値より大きい場合は、中継機に異常が発生した旨の異常情報を作成することを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項19】
請求項18に記載の端末位置検出システムであって、
前記位置演算装置は登録地点受信状態情報記憶部を備え、
前記登録地点受信状態情報記憶部には、
複数の地点の位置と、
当該地点に配置された前記無線LAN端末装置が前記無線フレームを送信したときに、当該無線フレームを受信した前記中継機のそれぞれが作成した受信状態情報と、
を関連づけて事前に記憶しておくことが可能であり、
前記位置演算装置は、前記中継機から受信状態情報を受信したときは、当該受信状態情報と、前記登録地点受信状態情報記憶部に記憶された受信状態情報である登録受信状態情報と、を比較し、最も近いと判定された登録受信状態情報に対応する地点を前記無線LAN端末装置の現在の位置であると推定する選択推定処理を行い、
前記受信状態情報に最も近い登録受信状態情報の判定にあたっては、異常の発生が検知された中継機に関する受信状態情報と登録受信状態情報の差よりも、それ以外の中継機に関する受信状態情報と登録受信状態情報の差を重点的に考慮することを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項20】
請求項1から19までの何れか一項に記載の端末位置検出システムであって、
前記中継機は、前記無線LAN端末装置からの無線フレームの電波強度が所定時間以内に所定値より大きく低下したことを検出した場合には、当該無線LAN端末装置の前記識別情報を含む電波強度低下情報を作成して前記位置演算装置に送信するように構成されており、
前記位置演算装置は、推定した前記無線LAN端末装置の位置が所定の落下危険領域にあるときに前記電波強度低下情報を受信したときは、落下検知情報を作成し、
前記表示装置は、前記落下検知情報に基づいて異常発生表示を行うことを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項21】
請求項1から20までの何れか一項に記載の端末位置検出システムであって、
前記無線LAN端末装置は、自機の落下を検出可能な加速度センサを備えるとともに、この加速度センサが自機の落下を検出すると落下検知信号を中継機に送信するように構成されており、
前記位置演算装置は、推定した前記無線LAN端末装置の位置が所定の落下危険領域にあるときに前記落下検知信号を受信したときは、落下検知情報を作成し、
前記表示装置は、前記落下検知情報に基づいて異常発生表示を行うことを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項22】
請求項1から20までの何れか一項に記載の端末位置検出システムであって、
前記無線LAN端末装置は、自機の長時間の落下を検知すると、落下検知信号を前記中継機に送信するように構成されており、
前記表示装置は、前記落下検知信号に基づいて異常発生表示を行うことを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項23】
請求項1から20までの何れか一項に記載の端末位置検出システムであって、
前記無線LAN端末装置は、自機の水没を検知すると、水没信号を前記中継機に送信するように構成されており、
前記表示装置は、前記水没信号に基づいて異常発生表示を行うことを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項24】
請求項20から23までの何れか一項に記載の端末位置検出システムであって、
当該端末位置検出システムが設置されている船舶の位置を取得する船舶位置取得装置と、
前記船舶の周辺における海流の情報を取得する海流情報取得装置と、
を備え、
前記表示装置は、前記異常発生表示を行うときは、異常発生時における前記船舶の位置及び周辺の海流の情報を併せて表示することを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項25】
請求項1から24までの何れか一項に記載の端末位置検出システムであって、
人体を検出することが可能な人体検出装置を備え、
前記人体検出装置は、前記位置演算装置が前記無線LAN端末装置の位置を推定可能な領域内に設定される所定の管理領域の境界部分に配置され、
前記位置演算装置は、前記人体検出装置の近傍に前記無線LAN端末装置が存在しないにもかかわらず当該人体検出装置が人体を検出した場合は、端末不携帯者検知情報を作成し、
前記表示装置は、前記端末不携帯者検知情報に基づいて異常発生表示を行うことを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項26】
請求項1から24までの何れか一項に記載の端末位置検出システムであって、
人体を検出することが可能な人体検出装置を備え、
前記人体検出装置は、前記位置演算装置が前記無線LAN端末装置の位置を推定可能な領域内に設定される所定の管理領域の境界部分に配置され、
前記位置演算装置は、前記人体検出装置の近傍に前記無線LAN端末装置が存在しないか、前記人体検出装置の近傍に存在する前記無線LAN端末装置のすべてが一定時間以上静止しているにもかかわらず、当該人体検出装置が人体を検出した場合は、端末不携帯者検知情報を作成し、
前記表示装置は、前記端末不携帯者検知情報に基づいて異常発生表示を行うことを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項27】
請求項1から24までの何れか一項に記載の端末位置検出システムであって、
人体を検出することが可能な人体検出装置を備え、
前記人体検出装置は、前記位置演算装置が前記無線LAN端末装置の位置を推定可能な領域内に設定される所定の管理領域の境界部分に配置され、
前記位置演算装置は、前記人体検出装置の配置場所で前記管理領域の境界を通過する前記無線LAN端末装置が検出されないにもかかわらず、前記人体検出装置が人体を検出した場合は、端末不携帯者検知情報を作成し、
前記表示装置は、前記端末不携帯者検知情報に基づいて異常発生表示を行うことを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項28】
請求項1から24までの何れか一項に記載の端末位置検出システムであって、
人体を検出することが可能な人体検出装置を備え、
前記人体検出装置は、前記位置演算装置が前記無線LAN端末装置の位置を推定可能な領域内に設定される所定の管理領域の境界部分に配置され、
前記中継機のうち少なくとも1つは、前記人体検出装置による人体検出領域の近傍に配置され、
前記位置演算装置は、前記人体検出領域の近傍に配置される中継機から取得した前記受信状態情報が所定の条件を満たさないにもかかわらず、前記人体検出装置が人体を検出した場合は、端末不携帯者検知情報を作成し、
前記表示装置は、前記端末不携帯者検知情報に基づいて異常発生表示を行うことを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項29】
請求項25から28までの何れか一項に記載の端末位置検出システムであって、
前記人体検出装置は複数備えられ、
前記位置演算装置は、前記人体検出装置の近傍で検出された無線LAN端末装置の識別情報が、それぞれの前記人体検出装置に応じて定められる通過許可条件を満たすか否かを判定し、満たさない場合は通過不許可者検知情報を作成し、
前記表示装置は、前記通過不許可者検知情報に基づいて異常発生表示を行うことを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項30】
請求項29に記載の端末位置検出システムであって、
前記人体検出装置が人体を検出するのに連動して当該人体を撮影可能なカメラを備え、
異常発生時に、前記カメラによって撮影した画像を前記無線LAN端末装置に配信可能に構成されていることを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項31】
請求項1から30までの何れか一項に記載の端末位置検出システムであって、
前記位置演算装置が推定した前記無線LAN端末装置の位置が所定の禁止領域内にある場合に禁止領域立入検知情報を作成し、
前記表示装置は、前記禁止領域立入検知情報に基づいて異常発生表示を行うことを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項32】
請求項1から31までの何れか一項に記載の端末位置検出システムであって、
前記無線LAN端末装置は情報表示部を備えており、
異常発生時においては、当該異常の内容を示す情報を前記無線LAN端末装置に配信して前記情報表示部に表示させることを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項33】
請求項32に記載の端末位置検出システムであって、
異常発生時においては、前記位置演算装置によって推定された位置が異常発生地点から近い無線LAN端末装置と、そうでない無線LAN端末装置と、の間で異なる情報を配信可能に構成されていることを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項34】
請求項1から33までの何れか一項に記載の端末位置検出システムであって、
前記中継機は、複数フロアの建造物において上下方向に隣り合うフロアの両方に設置されるとともに、上側のフロアの中継機は、下側のフロアの中継機と上下方向に対応しないように配置されることを特徴とする端末位置検出システム。
【請求項35】
請求項1から34までの何れか一項に記載の端末位置検出システムを船舶に設置するとともに、前記無線LAN端末装置を船員に携帯させたことを特徴とする船員位置管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−236866(P2010−236866A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81866(P2009−81866)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】