説明

管理機

【課題】歩行用管理機での運転者の労力を軽減させるため、二輪駆動より大きな駆動力を有する四輪駆動の管理機で、前輪、後輪及びロータリ耕耘装置をエンジンで駆動させる乗用管理機よりも簡易な機構を用いて駆動する四輪駆動の管理機が望まれていた。
【解決手段】駆動源となるエンジン4とロータリ13と走行輪31、51を備える管理機において、走行輪を前輪31と後輪51より構成し、該ロータリ13及び前輪31をエンジン4からミッションケース2を介して駆動し、後輪の駆動軸をモータ52の出力軸53と連動連結し、前記前輪31の回転に合わせて駆動可能に構成した。また、前記後輪51を左右一対設け、該左右の後輪にそれぞれモータ52を連動連結した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリ及び前輪を駆動するエンジンと左右の後輪を駆動する第一モータ、第二モータと、該第一モータ、第二モータに電力を供給するバッテリを有するハイブリッド車両である四輪駆動の管理機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体の前面にロータリ耕耘装置を設け、エンジンによりロータリ耕耘装置および車輪を駆動させる管理機の技術は公知となっている(特許文献1)。また、前輪(車輪)をエンジンで駆動し、ロータリをモータで駆動したハイブリッド管理機は公知となっている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−084811号公報
【特許文献2】特開2001−161104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記のような構造では、実際に作業をする際、運転者は歩きながら作業をしなければならず労力を必要とした。また、前輪、後輪及びロータリ耕耘装置をエンジンで駆動させる乗用管理機よりも簡易な機構を用いて駆動する四輪駆動の管理機が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、駆動源となるエンジンとロータリと走行輪を備える管理機において、走行輪を前輪と後輪より構成し、該ロータリ及び前輪をエンジンからミッションケースを介して駆動し、後輪の駆動軸をモータの出力軸と連動連結し、前記前輪の回転に合わせて駆動可能に構成したものである。
【0006】
請求項2においては、前記後輪を左右一対設け、該左右の後輪にそれぞれモータを連動連結したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0008】
請求項1においては、前部の二輪駆動に比して、前後の走行輪で駆動するので大きな駆動力を取り出すことができ、更に、前輪と後輪の駆動系が異なるため、エンジンのみの四輪駆動に比べ簡易な機構で前後それぞれ駆動して走破性を向上することができる。また、前輪と後輪がそれぞれ別の駆動系を有しているので、一方の駆動系が機能しなくなったとしても他方の駆動系が機能していれば作業を続けることができる。さらに低速でも有効にエネルギを抽出できるモータを用いることで環境に対する負荷を減少させることが可能となる。
【0009】
請求項2においては、旋回時に、旋回半径の内側の車輪を前輪、後輪ともに低速または停止することができるため、旋回性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る管理機の全体的な構成を示した左側面図、図2はエンジン及びバッテリの出力系統図、図3は後フレーム部分の平面図である。
【0011】
まず、本発明の一例である管理機1の全体構成について説明する。
管理機1は、前後中央にミッションケース2を配置し、該ミッションケース2の前部にエンジンフレーム3を前方に突設し、該エンジンフレーム3上にエンジン4を載置固定している。該エンジン4より側方に出力軸5が突出しており、該出力軸5には第一出力プーリ6及び第二出力プーリ7が嵌設されている。第一出力プーリ6はミッションケース2内に設けられており、同じくミッションケース2内には、ベルト8、主クラッチ9、耕耘クラッチ10、前輪変速機11、耕耘変速機12などが設けられている。
【0012】
ミッションケース2上にはハンドル基台20を設け、該ハンドル基台20上にハンドル21の前端下部を上下回動可能に配置し、身長にあわせてハンドル21の高さを変更したりすることを可能に構成している。該ハンドル21はハンドル基台20より後斜め上方に突出され、該ハンドル21の後部にサイドクラッチレバー22や主クラッチレバーやアクセルレバー等を配置している。
【0013】
また、前記ミッションケース2は側面視略「入」字状に構成され、後下方に延出したミッションケース2の下部に車軸30が左右水平方向に横架され、該車軸30の両側に前輪31R・31Lが固定されている。ロータリ13については、ミッションケース2の下部から前斜め下方にロータリ駆動ケース32が突設され、該ロータリ駆動ケース32の下部にロータリ軸33が左右両側方へ突出して横架されている。こうして、駆動源となるエンジン4からミッションケース2を介して前輪31とロータリを駆動可能としている。
【0014】
また、前記ミッションケース2から前方に、ビーム34が略水平方向に突設され、該ビーム34の左右下側部に耕耘カバー35が取り付けられている。該耕耘カバー35は耕耘爪の回転軌跡の上方や上側方や上前方や上後方を覆うように構成している。
【0015】
前記ビーム34の前端にはゲージ輪36を支持する支持杆37を上下調節可能に支持している。該支持杆37を摺動して固定し、ゲージ輪36の高さを調節することで、耕耘深さを調節できるようにしている。
【0016】
また、バッテリ40はエンジンフレーム3上またはエンジン4近傍に固設配置されており、その近傍に発電機41と、該発電機41で発生する交流電力を直流電力に変換する交流直流インバータ42が配置されている。エンジンフレーム3またはミッションケース2の後端から後方に後フレーム50が突設されて連結されている。該後フレーム50は連結部50a、乗降板50b、後輪駆動ケース50c・50dなどから構成されている。すなわち、後フレーム50は、前端中央に連結部50aを設け、フレーム3またはミッションケース2の後部から突設している機体側連結部54と第一ヒッチ54及び第二ヒッチ55を介して連結している。第一ヒッチを介することで上下方向の屈曲が可能となり、第二ヒッチを介することで左右方向の屈曲が可能となる。これにより、旋回を可能とし、さらに耕耘時に起伏のある走行面を走行する際、管理機の作業姿勢を確保することを可能とする。又、後フレーム50の後部には乗降板50bを左右水平方向に横設し、耕耘作業や走行時等において乗降板50b上に運転者が乗り、ハンドル21を保持して操作可能としている。後フレーム50の後部両側には上下方向に後輪駆動ケース50c・50dが立設され、該後輪駆動ケース50c・50dの上側部にモータ52R・52Lが固設されている。該モータ52R・52Lからは出力軸53R・53Lが突出され、後輪駆動ケース内に配置したスプロケットやチェーン等よりなる動力伝達機構を介して後輪51R・51Lの出力軸と連動連結されている。但し、後輪駆動ケース50c・50d内に配置する動力伝達機構はチェーン式に限定するものではなくベルト式等であってもよい。
前記モータ52R・52Lは制御回路55を介してバッテリ40と接続されており、該制御回路55には前輪31R・31Lの回転数を検知する手段として車軸近傍に設けた回転数センサー56R・56Lと接続されている。こうして、前輪31R・31Lの回転数に合わせて後輪51R・51Lを駆動する構成としている。
【0017】
次に、この管理機1の伝達駆動系の一例について説明する。エンジン4の駆動力は出力軸5に嵌設された第一出力プーリ6と第二出力プーリ7によって、前輪31R・31L及びロータリ軸33を駆動させるための駆動力と、発電機41を駆動するための駆動力とを取出可能としている。第一出力プーリ6はベルトを介して第三プーリ60に駆動力を伝達する。第三プーリ60には回動軸61が突設してあり連動して回転する。回動軸61には主クラッチ9、第一ギア63、耕耘クラッチ10、第二ギア65が設けられている。第一ギア63は前輪変速機11や複数のギアを介して、車軸30に嵌設されたファイナルギア66に動力を伝達し、ファイナルギア66が回動することで車軸30も回動させることができる。車軸30の両側にはクラッチ68R・68Lが設けられ、ハンドルに設けたサイドクラッチレバーと連結されて、このサイドクラッチレバーの操作により動力伝達を断つことにより、左右どちらかの車輪だけを停止させて旋回可能とすることができる。
また、第二ギア65は耕耘変速機12を介してロータリ駆動ケース32内のギアに動力を伝達し、該ロータリ駆動ケース32内の複数のギアを介して、ケース下部に横架されているロータリ軸33を駆動させる。
【0018】
前記ミッションケース2の側面に主変速レバー70とPTO変速レバー71を配置し、主変速レバー70の操作により走行速度を変速し、PTO変速レバー71の操作により、ロータリ13の回転速度や回転方向を変更できるようにしている。
【0019】
一方、第二出力プーリ7より取り出された駆動力は、ベルト80を介して発電機41の入力軸81に嵌設している第四プーリ82に伝達される。発電機41により発電された交流電力は、交流直流インバータ42を介して直流電力に変換され、バッテリ40に充電するように構成されている。充電された直流電力は必要に応じて、前記交流直流インバータ42により交流電力に変換され、図示せぬ配線を介して後輪51R・51Lにそれぞれ配設されたモータ52R・52Lに供給される。モータ52R・52Lの出力は後輪駆動ケース内50c・50dのスプロケットやチェーンを介して後輪51R・51Lに伝達されるように構成されている。
【0020】
このように、ロータリ13と前輪31R・31Lと後輪51R・51Lとを有し、該ロータリ13及び前輪31R・31Lをエンジン4によって駆動する管理機1において、後輪51R・51Lをバッテリ40から電力を受けたモータ52R・52Lによって駆動させたことにより、前部の二輪駆動に比して、前後の走行輪で駆動するので大きな駆動力を取り出すことができ、前輪と後輪の駆動系が異なるため、エンジンのみの四輪駆動に比べ簡易な機構で四輪を駆動することができる。また前輪と後輪がそれぞれ別の駆動系を有しているので、一方の駆動系が機能しなくなったとしても他方の駆動系が機能していれば作業を続けることができる。さらに低速でも有効にエネルギを抽出できるモータを用いることで環境に対する負荷を減少させることが可能となる。
【0021】
また、モータ52R・52Lはそれぞれハンドル21の近傍に配置されたサイドクラッチレバーの操作に合わせて回転速度を制御することも可能である。これにより、後輪51R・51Lの回転数を左右それぞれ個別に変更することが可能となる。
【0022】
以上のように構成することで、例えば進行方向に向かって右旋回時には、前輪31Rと後輪51Rの回転速度を遅くすることで滑らかに旋回することが可能である。また進行方向に向かって左に旋回する際は、前輪31Lと後輪51Lの回転速度を遅くすることで滑らかに旋回することが可能である。さらに回転を止めてしまうことで旋回半径の小さい旋回も可能となる。
【0023】
このように、ロータリ13と前輪31R・31Lと後輪51R・51Lとを有し、該ロータリ13及び前輪31R・31Lをエンジン4によって駆動する管理機において、後輪51R・51Lをそれぞれモータ52R・52Lによって駆動させたことにより、旋回時に、旋回半径の内側の車輪を前輪、後輪ともに低速または停止することができるため、旋回性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例に係る管理機の全体的な構成を示した左側面図。
【図2】エンジン及びバッテリの出力系統図。
【図3】後フレーム部分の平面図。
【符号の説明】
【0025】
1 管理機
2 ミッションケース
4 エンジン
40 バッテリ
41 発電機
42 交流直流インバータ
52R、52L モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源となるエンジンとロータリと走行輪を備える管理機において、走行輪を前輪と後輪より構成し、該ロータリ及び前輪をエンジンからミッションケースを介して駆動し、後輪の駆動軸をモータの出力軸と連動連結し、前記前輪の回転に合わせて駆動可能に構成したことを特徴とする管理機。
【請求項2】
前記後輪を左右一対設け、該左右の後輪にそれぞれモータを連動連結したことを特徴とする請求項1に記載の管理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−22378(P2007−22378A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208555(P2005−208555)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(390029621)ニューデルタ工業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】