説明

粒状結晶の製造方法及び粒状結晶の製造装置

【課題】溶融落下法によって粒状結晶を製造する際に、落下途中に結晶材料の融液の液滴が合体するのを大幅に抑制して、粒径の揃った多数の粒状結晶を製造できる粒状結晶の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】粒状結晶6の製造方法は、坩堝1の中の結晶材料を溶融して融液を作製する工程と、坩堝1のノズル1aに3次元運動を行わせる工程と、ノズル1aから融液を液滴4として排出する工程と、液滴4を落下させる工程と、液滴4を落下中に凝固させる工程と、を含む構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置に用いられる粒状シリコン結晶等を得るのに好適な粒状結晶の製造方法及び粒状結晶の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶シリコンウエハを用いた光電変換効率(以下、変換効率ともいう)の高い太陽電池が実用化されている。この結晶シリコンウエハは結晶性が良く、かつ不純物が少なくて、その分布に偏りのない大型の単結晶シリコンインゴットから切り出されて作製される。
【0003】
しかし、大型の単結晶シリコンインゴットは作製するのに長時間を要するため生産性が悪く、生産コストが高くなってしまう。そのため、大型の単結晶シリコンインゴットを必要とせず、高効率な次世代太陽電池の出現が強く望まれている。
【0004】
そこで、今後の市場において有望な光電変換装置の一つとして、光電変換手段の構成要素として粒状シリコン結晶を用いた太陽電池が注目されている。
【0005】
現在、粒状シリコン結晶を作製するための原料は、単結晶シリコン材料を粉砕した結果として発生するシリコンの微小粒子や流動床法によって気相合成された高純度シリコンを用いている。それら原料のサイズあるいは重量による分別を行った後、赤外線や高周波コイルを用いて原料を容器内で再度溶融し、その後に自由落下させることで球状化させる方法、または高周波プラズマ加熱溶融により球状化させる方法が用いられている。
【特許文献1】特開2002−292265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、溶融原料の重量の均一化が困難で生産性が低いという問題があった。また、均一な結晶粒子が得にくいという問題があった。
【0007】
そこで、特許文献1に記載されているように、ノズルの軸線方向に垂直な方向及び/又は軸線方向に振動を加えることによって作製する結晶粒子の粒径を揃えることが試みられている。例えば、モータでダイヤフラムを駆動して往復運動をさせることによって、溶融原料に直線往復振動を印加している。このような振動を加えることによって、粒径分布を改善することができる。
【0008】
しかしながら、単純に振動を加えても、自由落下中の溶融原料及び/又は結晶粒子がお互いに衝突して合体することが発生する。その結果、粒径分布がブロードになる傾向があり、粒径分布を改善する余地が残っていた。
【0009】
従って、本発明は、上記従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、落下途中に結晶材料の融液の液滴が合体するのを大幅に抑制して、粒径の揃った多数の粒状結晶を製造できる粒状結晶の製造方法及び製造装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の粒状結晶の製造方法は、粒状結晶の製造方法であって、坩堝の中の結晶材料を溶融して融液を作製する工程と、前記坩堝にノズルに3次元運動を行わせる工程と、前記ノズルから前記融液を液滴として排出する工程と、前記液滴を落下させる工程と、前記液滴を落下中に凝固させる工程と、を含む構成である。
【0011】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記3次元運動が、重力の方向である縦方向の運動と、該縦方向に垂直な横平面上の2次元運動とから成る構成である。
【0012】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記縦方向の運動が1次元運動である構成である。
【0013】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記1次元運動の周波数が1kHz〜50kHzである構成である。
【0014】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記2次元運動の周波数が前記坩堝の固有振動数に略一致する構成である。
【0015】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記2次元運動が、円運動である構成である。
【0016】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記横平面上の2次元運動において、ノズルの速度が常にゼロではない構成である。
【0017】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記2次元運動が調和振動である構成である。
【0018】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記横平面上の任意の直交座標(x、y)を設定し、t時間後における座標位置を(X、Y)とした場合、前記2次元運動が、次式で表される構成である。
【数1】

【0019】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記XおよびYの周波数が縦方向の運動の周波数の1/100〜1/2である構成である。
【0020】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は、原料を溶融する工程と、溶融した原料から液柱を排出させる工程と、該液柱を複数の液滴に分裂させる工程と前記複数の液滴を、液滴同士の間隔が大きくなる方向に継続的に落下させる工程と、前記液滴を落下中に凝固させる工程と、を含む構成である。
【0021】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記複数の液滴を、液滴同士の間隔が大きくなる方向に継続的に落下させる工程において、落下の初期に前記複数の液滴を空間に螺旋状に分散させる構成である。
【0022】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記液滴が、落下管の中心軸からしだいに遠ざかるように落下する構成である。
【0023】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記液滴が、放物線を描きながら落下する構成である。
【0024】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記液滴を落下中に凝固させる工程において、前記液滴を不活性ガスによって冷却する構成である。
【0025】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記液滴を落下中に凝固させる工程において、前記液滴を冷却部材に接触させて冷却する構成である。
【0026】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記冷却部材が、落下管である構成である。
【0027】
また、本発明の粒状結晶の製造装置は、結晶材料の融液を入れる坩堝と、前記坩堝に設けられたノズルと、該ノズルに3次元運動を行わせる駆動装置と、前記ノズルから排出される液滴を冷却する冷却部と、を具備する構成である。
【0028】
また、本発明の粒状結晶の製造装置は好ましくは、前記駆動装置が、前記ノズルを、重力の方向である縦方向の運動と、該縦方向に垂直な横平面上の2次元運動とから成る3次元運動を行わせる駆動装置である構成である。
【0029】
また、本発明の粒状結晶の製造装置は好ましくは、前記ノズルが複数存在する構成である。
【0030】
また、本発明の粒状結晶の製造装置は好ましくは、さらに前記坩堝と前記駆動装置との間に冷却シャフトを具備する構成である。
【発明の効果】
【0031】
本発明の粒状結晶の製造方法は、粒状結晶の製造方法であって、坩堝の中の結晶材料を溶融して融液を作製する工程と、前記坩堝にノズルに3次元運動を行わせる工程と、前記ノズルから前記融液を液滴として排出する工程と、前記液滴を落下させる工程と、前記液滴を落下中に凝固させる工程と、を含む構成であることから、以下のような作用効果を有するものと推察される。
【0032】
縦方向の運動において、ノズルが下方向に運動しているときに排出された液滴の落下速度は、ノズルが上方向に運動しているときに排出された液滴の落下速度よりも大きくなる。そのため、縦方向の運動だけでは、落下速度の違いによって、落下途中に、ある液滴が他の液滴に追いついて合体するという現象が生じる。そこで、縦方向の運動に横方向の2次元運動を加えることにより、落下途中に、ある液滴が他の液滴に追いついても、横方向においてそれらの間に間隔が生じているため、合体を防ぐことができる。
【0033】
ただし、横方向の運動が単振動等の停止点を有する運動である場合、停止点において排出された複数の液滴は、横方向において間隔が生じないため、合体し易くなる。従って、横方向の運動は、円運動や楕円運動等の停止点を有さない(常に速度がゼロとならない)2次元運動であることが好ましい。この場合、全ての液滴は、互いに横方向で間隔が生じることになるため、合体が発生しないこととなる。
【0034】
例えば、横方向の2次元運動が円運動や楕円運動である場合、ノズルから排出された多数の液滴は、落下の初期に空間に螺旋状に分散される。この状態で、個々の液滴は、落下管の中心軸からしだいに離れていくように放物運動をする。その放物運動の軌跡は互いに重なることがなく、また落下するにつれて互いに横方向に離れていく。従って、ノズルから排出された多数の液滴は、落下中に合体することがなくなる。
【0035】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記3次元運動が、重力の方向である縦方向の運動と、該縦方向に垂直な横平面上の2次元運動とから成る構成であることから、横方向の運動が円運動や楕円運動等の停止点を有さない(常に速度がゼロとならない)2次元運動であるために、全ての液滴は、互いに横方向で間隔が生じることになるため、合体が発生しないこととなる。
【0036】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記縦方向の運動が1次元運動である構成であることから、坩堝から排出された融液の柱状体を効率良く液滴に分離することができる。
【0037】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記1次元運動の周波数が1kHz〜50kHzである構成であることから、粒状結晶の粒径のばらつきを小さくすることができる。
【0038】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記2次元運動の周波数が前記坩堝の固有振動数に略一致する構成であることから、粒状結晶の粒径分布のピークがより鋭くなる。その詳しい作用機構は明確ではないが、坩堝内の結晶材料の融液が振動を吸収することによって、固有振動数における大きな自励振動が坩堝に発生するのを抑えるとともに、ノイズとなる振動が横方向の2次元運動に重畳されるのを防ぐことができるものと推察される。従って、横平面上の2次元運動の周波数を坩堝の固有振動数に略一致させることによって、坩堝に大きな自励振動を発生させず、さらにノイズとなる振動が加わることを排除して、クリアな軌跡でもって坩堝を運動させることができる。その結果、粒状結晶の粒径をより均一化することができる。
【0039】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記2次元運動が、円運動である構成であることから、ノズルから液柱として排出された融液が複数の液滴に分離した際に、横平面上において液滴同士の間に間隔が生じて、液滴同士が合体するのを効果的に防ぐことができる。従って、ほぼ均一の粒径の粒状結晶を多数製造することができる。
【0040】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記横平面上の2次元運動において、ノズルの速度が常にゼロではない構成であることから、横方向の運動が円運動や楕円運動等の停止点を有さない2次元運動となるために、全ての液滴は、互いに横方向で間隔が生じることになり、合体が発生しないこととなる。
【0041】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記2次元運動が調和振動である構成であることから、2次元運動が円運動や楕円運動等の停止点のない運動となる。
【0042】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記横平面上の任意の直交座標(x、y)を設定し、t時間後における座標位置を(X、Y)とした場合、前記2次元運動が、次式で表される構成であることから、円運動や楕円運動等の停止点のない調和振動として規定される。
【数1】

【0043】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記XおよびYの周波数が縦方向の運動の周波数の1/100〜1/2である構成であることから、円運動の回転直径を小さくして粒状結晶の粒径のばらつきを小さくすることができる。
【0044】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は、原料を溶融する工程と、溶融した原料から液柱を排出させる工程と、該液柱を複数の液滴に分裂させる工程と前記複数の液滴を、液滴同士の間隔が大きくなる方向に継続的に落下させる工程と、前記液滴を落下中に凝固させる工程と、を含む構成であることから、落下途中に、ある液滴が他の液滴に追いついても、横方向においてそれらの間に間隔が生じているため、合体を防ぐことができる。
【0045】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記複数の液滴を、液滴同士の間隔が大きくなる方向に継続的に落下させる工程において、落下の初期に前記複数の液滴を空間に螺旋状に分散させる構成であることから、個々の液滴は、落下管の中心軸からしだいに離れていくように放物運動をし、その放物運動の軌跡は互いに重なることがなく、また落下するにつれて互いに横方向に離れていく。従って、ノズルから排出された多数の液滴は、落下中に合体することがなくなる。
【0046】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記液滴が、落下管の中心軸からしだいに遠ざかるように落下する構成であることから、ノズルから排出された多数の液滴は、落下中に合体することが確実になくなる。
【0047】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記液滴が、放物線を描きながら落下する構成であることから、個々の液滴の放物運動の軌跡は互いに重なることがない。
【0048】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記液滴を落下中に凝固させる工程において、前記液滴を不活性ガスによって冷却する構成であることから、落下管中の雰囲気ガスがヘリウムガスやアルゴンガス等から成る不活性ガスである場合、液滴への雰囲気ガスからの不純物混入を防ぎつつ液滴を落下中に冷却することができる。
【0049】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記液滴を落下中に凝固させる工程において、前記液滴を冷却部材に接触させて冷却する構成であることから、液滴を効率良く粒状結晶とすることができるとともに、落下管の長さを短縮することができる。
【0050】
また、本発明の粒状結晶の製造方法は好ましくは、前記冷却部材が、落下管である構成であることから、冷却部材を別途設ける必要がなく、また落下管の長さを短縮することができる。
【0051】
また、本発明の粒状結晶の製造装置は、結晶材料の融液を入れる坩堝と、前記坩堝に設けられたノズルと、該ノズルに3次元運動を行わせる駆動装置と、前記ノズルから排出される液滴を冷却する冷却部と、を具備する構成であることから、ノズルから排出された液滴同士の合体を防いで粒径の揃った多数の粒状結晶を効率的に製造することができる。また、液滴を効率的に冷却することができるため、落下管の長さを短縮することができ、小型化された製造装置となる。
【0052】
また、本発明の粒状結晶の製造装置は好ましくは、前記駆動装置が、前記ノズルを、重力の方向である縦方向の運動と、該縦方向に垂直な横平面上の2次元運動とから成る3次元運動を行わせる駆動装置である構成であることから、ノズルから排出された液滴同士の合体をより確実に防いで、粒径の揃った多数の粒状結晶を効率的に製造することができる製造装置となる。
【0053】
また、本発明の粒状結晶の製造装置は好ましくは、前記ノズルが複数存在する構成であることから、粒径の揃ったより多数の粒状結晶を効率的に製造することができる製造装置となる。
【0054】
また、本発明の粒状結晶の製造装置は好ましくは、さらに前記坩堝と前記駆動装置との間に冷却シャフトを具備する構成であることから、結晶材料を融解するための熱が駆動装置に伝わるのを防止して、駆動装置の安定的な駆動を実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、本発明の粒状結晶の製造方法及び製造装置について、実施の形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0056】
図1は本発明の粒状結晶の製造装置について実施の形態の一例の側面図であり、粒状結晶の製造装置は、坩堝1と、ノズル1aと、駆動装置と、冷却部である落下管2とを具備する。駆動装置は縦方向振動源3及び横方向振動源5からなり、ノズル1aに3次元運動を行わせることができる。坩堝1には、ノズル1aが設けられている。結晶材料の融液がノズル1aから液滴4として放出され、冷却部に設けられた落下管2及び/または落下管2内のガスによって液滴を冷却して粒状結晶6が得られる。
【0057】
以下図1を用いて本発明の実施形態にかかる粒状結晶の製造方法を説明する。
【0058】
本実施形態にかかる粒状結晶の製造方法は、坩堝1の中の結晶材料を溶融して融液を作製する工程1と、前記坩堝1に設けられたノズル1aに3次元運動を行わせる工程2と、前記ノズル1aから前記融液を液滴4として排出する工程3と、前記液滴4を落下させる工程4と、前記液滴4を落下中に凝固させる工程5とを含む構成である。
【0059】
工程1について、まず坩堝1の上方に設けられたホッパーによって坩堝1中に粉体状の結晶材料を供給する。次に、ホッパーは、坩堝1から結晶材料の融液が排出されて融液量が減少するのを防ぐために、一定時間おきに坩堝1に結晶材料を供給する。
【0060】
坩堝1の中の結晶材料を溶融するには、坩堝1の周囲に設けられた電磁誘導加熱装置や抵抗加熱装置によって行う。坩堝1に直接接触しないことから、電磁誘導加熱装置を用いることが好ましい。このようにして、原料を溶融する。
【0061】
工程2について、ノズル1aから融液を液滴4として排出する直前から、坩堝1の一端(下端)に設けられたノズル1aに3次元運動を行わせる。ノズル1aの3次元運動は、例えば、ノズル1aを重力の方向に沿って往復運動(1次元運動)等させる縦方向の運動と、縦方向に垂直な横平面上の2次元運動とを組み合わせた複合運動である。
【0062】
溶融した原料はノズルから柱状体(以下、液柱という)として排出されるが、この液柱に縦方向の振動を加えることによって、液柱を複数の液滴に分裂させることができる。
【0063】
縦方向の運動は、ノズル1aから液柱として排出された融液が複数の液滴4に分離され易くするために、ノズル1a(及び坩堝1)に加えるものである。従って、縦方向の運動の周波数(振動数)は、1kHz〜50kHz程度がよい。1kHz未満では、粒状結晶6の粒径のばらつきが大きくなり、生産性が低下し易くなる。50kHzを超えると、粒状結晶6の粒径のばらつきが大きくなる。また、縦方向の運動の振幅は0.2〜50μm程度がよい。0.2μm未満では、粒状結晶6の粒径のばらつきが大きくなる傾向がある。50μmを超えると、粒状結晶6の粒径のばらつきが大きくなる傾向がある。
【0064】
横方向の2次元運動は、複数の液滴がお互いの間隔を広げる方向への運動させることができる。たとえば、図4に示すように、ノズル1aの延長線を中心として螺旋状に広がりながら落下させることができる。
【0065】
即ち、本発明の粒状結晶の製造方法は、以下のような作用効果を有するものと推察される。縦方向の運動において、ノズル1aが下方向に運動しているときに排出された液滴4の落下速度は、ノズル1aが上方向に運動しているときに排出された液滴4の落下速度よりも大きくなる。そのため、縦方向の運動だけでは、落下速度の違いによって、落下途中に、ある液滴4が他の液滴4に追いついて合体するという現象が生じる。そこで、縦方向の運動に横方向の2次元運動を加えることにより、落下途中に、ある液滴4が他の液滴4に追いついても、横方向においてそれらの間に間隔が生じているため、合体を防ぐことができる。
【0066】
ただし、横方向の運動が単振動等の停止点を有する運動である場合、停止点において排出された複数の液滴4は、横方向において間隔が生じないため、合体し易くなる。従って、横方向の運動は、円運動や楕円運動等の停止点を有さない(常に速度がゼロとならない)2次元運動であることが好ましい。この場合、全ての液滴4は、互いに横方向で間隔が生じることになるため、合体が発生しないこととなる。
【0067】
例えば、横方向の2次元運動が円運動や楕円運動である場合、ノズル1aから排出された多数の液滴4は、落下の初期に空間に螺旋状に分散される。この状態で、個々の液滴4は、落下管2の中心軸からしだいに離れていくように放物運動をする。その放物運動の軌跡は互いに重なることがなく、また落下するにつれて互いに横方向に離れていく。従って、ノズル1aから排出された多数の液滴4は、落下中に合体することがなくなる。
【0068】
縦方向の運動は、完全な往復運動でなくてもよく、縦長の楕円軌道等であってもよい。
【0069】
横平面上の2次元運動は、横平面を平面視した場合に円運動、楕円運動等のノズル1aの速度が横平面上において常にゼロではない運動である。この場合、ノズル1aから液柱として排出された融液が複数の液滴4に分離した際に、横平面上において液滴4同士の間に間隔が生じて、液滴4同士が合体するのを防ぐことができる。従って、ほぼ均一の粒径の粒状結晶6を多数製造することができる。
【0070】
横平面上の2次元運動が円運動である場合、円運動の周波数(振動数)は、縦振動の周波数の1/100〜1/2程度がよく、1/100未満では、粒状結晶6の粒径のばらつきを小さくするためには、円運動の回転直径が大きくなる。1/2を超えると、粒状結晶6同士を分離させる分離効果が小さくなる傾向がある。
【0071】
また、円運動の振幅(回転直径)は10μm〜10mm程度がよく、10μm未満では、粒状結晶6同士を分離させる分離効果が小さくなる。10mmを超えると、横方向振動源5による坩堝1の制御が困難となり運動にノイズが伴いやすくなる。
【0072】
横平面上の2次元運動の周波数は坩堝1の固有振動数に略一致することが好ましい。この場合、本発明者の実験によると、図3Bに示す粒状結晶6の粒径分布がより鋭くなることが分かった。詳しい作用機構は明確ではないが、坩堝1内の結晶材料の融液が振動を吸収することによって、固有振動数における大きな自励振動が坩堝1に発生するのを抑えるとともに、ノイズとなる振動が横方向の2次元運動に重畳されるのを防ぐことができるものと推察される。従って、横平面上の2次元運動の周波数を坩堝1の固有振動数に略一致させることによって、坩堝1に大きな自励振動を発生させず、さらにノイズとなる振動が加わることを排除して、クリアな軌跡でもって坩堝1を運動させることができる。その結果、粒状結晶6の粒径をより均一化することができる。
【0073】
坩堝1の固有振動数は、坩堝1の材質や大きさ、重量等に依存するが、例えば坩堝1の横方向の固有振動数Fが100Hz程度である場合、横平面上の2次元運動の周波数は、F±10%(F±10Hz)であることがよい。
【0074】
なお、ノズル1aの3次元運動は、縦方向の運動と横平面上の2次元運動とを含めばよく、さらに他の運動を加えてもよい。
【0075】
工程3について、ノズル1aから融液を液滴4として排出する際に、坩堝1内の雰囲気ガス(アルゴンガス等)を大気圧よりも大きくして、融液の液面を加圧することによって、液滴4を効率的に排出させることができる。これにより、ノズル1aから排出される液滴4の個数を10000個/秒程度とすることができる。ノズル1aから排出される液滴4の大きさは直径50〜700μm程度がよい。50μm未満では、粒状結晶6の粒径のばらつきが大きくなる傾向がある。700μmを超えると、粒状結晶6の粒径のばらつきが大きくなる傾向がある。ノズル1aのノズル孔の直径は、40〜300μm程度である。
【0076】
工程4について、液滴4を落下させる際に、坩堝1のノズル部1aから下方に向けて上下方向に配置された落下管2の中を落下させる。落下管2は、シリコン等から成る液滴4よりも高い融点を有する炭化珪素等から成る。落下管2は、落下する液滴4が接触しにくい内径を有するのがよく、1〜5m程度の内径がよい。1m未満では、液滴4が落下管2の内面に接触し易くなり、5mを超えると、装置が大型化する。
【0077】
落下管2の内部の雰囲気ガスは、液滴4への雰囲気ガスからの不純物混入を防ぐために、アルゴンガス等の不活性ガスとされている。
【0078】
工程5において、液滴4を落下中に凝固させることができる。液滴4を落下中に凝固させるには、落下管2の長さを、液滴4が落下しつつ凝固するのに十分な長さとする。従って、落下管2の長さは4〜50m程度とするのがよい。4m未満では、液滴4が落下中に凝固するのが難しくなる。50mを超えると、落下管2が大型化する。
【0079】
なお、落下管2はなくてもよいが、その場合液滴4を大気中で落下させることになる。液滴4を大気中で落下させると、液滴4が大気中のごみ等を吸収するため、結晶品質の低下、純度の低下が発生し易い。
【0080】
坩堝1は、所望の結晶材料を加熱溶融させた結晶材料の融液を入れる容器である。坩堝1の底部にノズル部1aが設けられており、ノズル部1aから液滴4が排出される。液滴4は、落下管2の内部を落下する。なお、坩堝1の上方には粉体状の結晶材料を貯留するとともに一定時間おきに坩堝1に結晶材料を供給するホッパー(図示せず)が設置されている。また、坩堝1内の雰囲気ガスはアルゴンガス等の不活性ガスとされており、坩堝1内の雰囲気ガスを大気圧よりも高い圧力(100kPa程度)にすることによって、ノズル部1aから液滴4を効率よく排出させる。
【0081】
坩堝1は、結晶材料の融点より高い融点を有する材料から成る。坩堝1の材料が結晶材料の融液と顕著に反応すると坩堝1の材料が不純物として粒状結晶6中へ多量に混入する。よって、坩堝1の材料は、結晶材料の融液との反応性が小さい材料であることが好ましい。例えば、粒状結晶6の結晶材料がシリコンであるときは、坩堝1の材料は炭素,炭化珪素,酸化珪素,窒化珪素,酸化アルミニウム等が好ましい。
【0082】
坩堝1において結晶材料を融点以上に加熱する加熱方法は、誘導加熱や抵抗加熱等が適当である。
【0083】
坩堝1のノズル部1aから下方に向けて上下方向に配置された落下管2は、ノズル部1aから排出された液滴4を落下中に冷却して凝固させる容器である。この落下管2の内部は所望の雰囲気ガスで所望の圧力に制御されている。この所望の雰囲気ガスとしては、ヘリウムガス又はアルゴンガスが好ましい。ヘリウムガス又はアルゴンガスは不活性ガスであり、液滴4への雰囲気ガスからの不純物混入を防ぐことができる。
【0084】
さらに、液滴4との反応が小さく、液滴4が凝固して結晶化する際の妨げとなる溶融材料表面への反応層形成が抑制できるため好ましい。また、その圧力は、雰囲気ガス流入量と雰囲気ガス排出量を調整することにより制御する。これにより、落下管2は内部の雰囲気ガスが所定のガスを用いて制御される。
【0085】
また、落下管2は結晶材料の融点よりも高い融点を有する材料から成ることが好ましく、または落下管2自身を冷却するための冷却構造(図示せず)を有することが好ましい。
【0086】
また、落下管2の材料が結晶材料の融点よりも高い融点を有するときは、液滴4が斜め方向に排出されて落下管2の内壁に衝突したとしても、落下管2が材料の融点以上に加熱されることはなく、落下管2の材料が衝突した液滴4中へ不純物として混入することがない。例えば、粒状結晶6の材料がシリコンであるときは、落下管2の材料はシリコンより高融点である炭素,炭化珪素,酸化珪素,窒化珪素,酸化アルミニウム等であることが好ましい。
【0087】
なお、落下管2の材料の融点が結晶材料の融点よりも低いときには、液滴4が外側に斜め方向に排出されて落下管2の内壁に衝突した際に、落下管2が材料の融点以上に加熱されることとなり、衝突した液滴4中へ落下管2の材料が不純物として混入することがあるため好ましくない。しかし、落下管2に落下管2自身を冷却するための冷却構造を付加して、液滴4の衝突によって落下管2が材料の融点以上に加熱されないようにすることで、不純物混入を回避して使用することが可能である。例えば、粒状結晶6の材料がシリコンであるときは、落下管2が二重管構造や水冷ジャケット等で水冷されていれば、落下管2の材料はシリコンよりも低融点であるステンレス,アルミニウム等を用いることができる。
【0088】
縦方向振動源3は、融液を均一径の粒状の液滴に分裂させて落下させるための縦振動(1次元運動)を与える機能を有する。縦振動の伝達は坩堝1を駆動する方法、坩堝1内の融液中に振動源を浸漬する方法がある。また、加振方法としては、圧電式、電磁式、エアー式等がある。図1には、参考のために縦方向をVで示した。
【0089】
坩堝1を駆動する方法の場合、例えば、縦方向振動源3と坩堝1との間には水冷シャフト7を備えることが好ましい。当該水冷シャフト7は、縦方向振動源3の縦振動を坩堝1に伝達するともに、結晶材料を融解するための熱が縦方向振動源3に伝わるのを防止するものである。具体的には、水冷シャフト7の内部に、冷水が流れる通路が形成されており、当該通路に外部から冷水を供給することにより熱の伝わりを防止する。
【0090】
なお、坩堝1と水冷シャフト7は、振動を効率よく伝達するために剛性の高い材料であることが好ましい。具体的には、粒状結晶6がシリコンであるとき、坩堝1及び水冷シャフト7としてカーボン、炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム又はこれらと、石英との複合構造とを用いることが好ましい。
【0091】
横方向振動源5は、前記縦方向振動源3により均一径に分裂して落下させた液滴4を冷却凝固中に他の液滴に衝突させないように、落下軌道をずらす機能を有する。図1には、参考のために横(水平)方向をHで示した。
【0092】
本実施形態において、液滴4同士を衝突させないために、前記横方向振動として、前記融液の落下方向に対して略直交する横平面上において停止点を持たない2次元運動であること特徴としている。2次元運動は、ノズル1aの速度が横平面上において常にゼロとはならない運動であり、例えば、円運動、楕円運動等である。
【0093】
ノズル1aの3次元運動は、具体的には、複数方向に振動する複合振動を指し、横平面上においては以下の式を満たしている振動を意味するものである。すなわち、図1にしめした縦方向Vの運動と水平方向Hの2次元運動を含む。縦方向Vに垂直な平面を横平面とする。
【数1】

【0094】
上記式は、横平面においてX方向を規定し、それと直交する方向をY方向と規定し、t時間後における座標位置を(X、Y)で示すものである。上記式において、はX方向の振幅、AはY方向の振幅、fはX方向に加わる周波数、fはY方向に加わる周波数をそれぞれ示す。Aに対するAの比A/Aは0.2〜5程度が好ましく、さらには0.33〜3、より好適には0.4〜1.25が良い。
【0095】
即ち、本実施形態における横平面上における2次元運動がX方向及びY方向に振動する二次元調和振動子であることを示すものである。
【0096】
なお、調和振動子とは、振幅ないし、それに対応する物理量によることなく定まった周期で振動するものを指し、本実施形態においては、横平面上における二次元調和振動子となる。
【0097】
即ち、特許文献1に記載された従来の技術においては、横平面上における2次元運動が全く無い場合(つまり、縦振動のみの場合)や、縦振動及び前記横平面上において一方向を往復する一次元調和振動子の場合には、ノズル1aは横方向では停止しているか、あるいは横方向の運動が停止点を有しているため、前記縦方向振動源3により坩堝1から排出される液滴4同士に衝突が起き易く、粒状結晶6がばらついてしまう(図2B参照)。
【0098】
それに対して、停止点のない横平面上における2次元運動、すなわち横平面上での連続運動を、縦方向の運動とともに融液に付与することにより、坩堝1から排出される液滴4の排出ポイントが重なりにくく、凝固前に液滴4同士が衝突するのを防止することができる。これにより、粒径ばらつきの小さい粒状結晶6を高い生産性でもって再現性良く製造することができる(図2A参照)。
【0099】
前記横平面上における2次元運動は、運動の一周期において、重なる部分がないことが好ましい。この場合は、さらに液滴4同士が衝突する確率が低減する。
【0100】
また、横平面上における2次元運動が、液滴4の落下方向に対して略直交する横平面上における円運動であることが好ましい。その結果確実に落下軌跡をずらすことが可能となる。さらに、円運動の直径が小さいことが好ましい。個々の液滴4は、落下するに連れて、ノズル1aに加えられた遠心力に起因して、落下管2の中心軸から離れていくように、放物線を描きながら斜め下方に落下する。従って、多数の液滴4の落下軌跡は、下方になるに連れて円の直径が大きくなる螺旋状の軌道を描くように見える。そのため、液滴4同士の衝突確率をさらに低減することが容易となる。
【0101】
また、横平面上における2次元運動が円運動であることが好ましく、その場合横方向振動源5の構成や横方向振動源5の駆動回路の回路配線を変更することなく、円運動の大きさを容易に制御することができる。例えば、円の回転半径を、ノズル1aの配置や構造を変更することなく、横方向振動源5から与える振動の大きさ(振幅)によって制御できる。
【0102】
例えば、横方向振動源5が圧電式振動装置、電磁式振動装置、エアー式振動装置等の振動駆動機構を有するものであり、その振動(往復運動)を周知のカム等によって円運動に変換し、水冷シャフト7を通じて坩堝1に伝達する構成とし、振動駆動機構によって生じる振動の大きさ(振幅)を制御する。圧電式振動装置、電磁式振動装置の場合、駆動信号の入力パワーを調整することによって、円運動の円の回転半径を制御することができる。また、駆動信号の周波数を調整することによって、円運動の速度を制御することができる。エアー式振動装置の場合、エアーシリンダーに供給するエアー圧力、エアー供給時間を調整することにより、エアーシリンダーに組み合わされたピストン(水冷シャフト7につながっている)の往復運動(振動)の振幅、振動数を制御でき、その結果、円運動の円の回転半径、速度を制御することができる。
【0103】
本発明の実施の形態は上述した例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変更を加えても何ら差し支えない。
【0104】
例えば、ノズル1aは複数設けられていてもよい。ノズル1aは、例えば炭化珪素,窒化珪素等から成る円板状等の形状の板状体に貫通孔を形成することによって作製されるが、その貫通孔を複数形成すればノズル1aを複数設けることができる。この構成により、より多くの粒状結晶6を、粒径を揃えて製造することができる。複数のノズル1aは、液滴4同士の合体を防ぐために、なるべく互いに離れた位置に形成されているのがよい。例えば、平面視において板状体の中心を中心点とする円上に等間隔で並ぶように、複数の貫通孔を形成するのがよい。あるいは、縦方向の振動に位相を設けることにより、液柱の排出が時間的に異なるために複数の液滴4の放出を異なったタイミングで行うことができる。これは、特に複数のノズル1a間の距離が近い場合に有効である。
【0105】
例えば、また、本実施の形態ではシリコンについて説明したが、ボールベアリング用のステンレススチール製の粒状結晶、宝飾用等に用いられる金、銀、プラチナ等から成る粒状結晶、砥粒や焼結原料等に用いられる金属粉末の粒状結晶、セラミック粉末の粒状結晶などに応用することも可能である。さらに、粒径分布の小さい、ガラス粒子の作成にも適応することも考えられる。
【0106】
次に、本発明の粒状結晶の製造装置及び粒状結晶の製造方法のより具体的な例を、実施例を用いてさらに説明する。
【実施例】
【0107】
まず、結晶材料として、p型ドーパントとしてBを1×1016原子/cm3添加したシリコンを800g、長さ500mm、直径φ100mmの円筒状の形状でグラファイトから成る坩堝1内へ入れ、坩堝1をその周囲に配置した電磁誘導加熱装置によって加熱した。
【0108】
次いで、坩堝1内の融液に圧力を加え、坩堝1を縦方向振動源3により縦方向に10000Hz(10kHz)、振幅1μmの振動を加えるとともに、横方向振動源5により、X方向及びY方向にそれぞれ振幅(A,A)が100μm、周波数400Hzを加えた。(上記式においては、振幅A=A=100μm、f=f=400Hzとなる。)これにより、横平面上における2次元運動として、停止点のない円運動(回転直径100μm)を与え、ノズル部1aから落下管2の内部へシリコンの融液を排出し、シリコンの液滴4を落下管2の内部を落下させ、冷却して凝固させ、シリコンの粒状結晶6を得た。なお、坩堝1と縦方向振動源3との間及び坩堝1と横方向振動源5には、冷水シャフト7が配置されている。
【0109】
(比較例)
坩堝1に縦方向にのみ同様の振動を加え、横方向には振動を加えないこと以外は、実施例と同様の方法でシリコンの粒状結晶6を得た。
【0110】
上記実施例及び比較例について、シリコンの平均粒径と粒径標準偏差、及びシリコンの光電変換作用によって発生した光電子のライフタイムの平均値とその標準偏差をそれぞれ測定した。その結果を以下の表1に示す。
【表1】

【0111】
この結果より、実施例により得たシリコンの粒状結晶6においては、比較例により得たシリコンの粒状結晶に比較して、粒径ばらつきが小さく、品質ばらつきが小さく、平均品質が高いことが分かる。即ち、本発明の粒状結晶6の製造方法によれば、粒径ばらつきが小さいことから均一な結晶成長が実現できるため、結晶品質のばらつきの小さい粒状結晶6を製造することができる。
【0112】
図3Aに示した比較例で得られた粒状結晶の粒径は、最大ピーク(図中ではメインピーク)の他に、液滴同士を衝突により大きくなったと考えられる別のピーク(図中ではサテライトピーク)が存在していることが分かる。図3(a)に、得られたピークのピーク分離を行った結果を破線で示した。
【0113】
それに対して、図3(b)に示した実施例で得られた粒状結晶6の粒径は、メインピークのみであり、比較例で得られたサテライトピークが存在していない。即ち、本発明を用いることにより、粒径ばらつきの小さい粒状結晶6を高い生産性でもって再現性良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の粒状結晶の製造装置について実施の形態の一例を示す側面図である。
【図2】(A)は、本発明の粒状結晶の製造方法について、実施の形態に係るノズルから排出された融液から複数の液滴に分離する様子を説明するための坩堝及びノズルの側面図、(B)は、従来の粒状結晶の製造方法について、ノズルから排出された融液が複数の液滴に分離する様子を説明するための坩堝及びノズルの側面図である。
【図3】(a)は、比較例で得られた粒状結晶の粒形分布を示すグラフ、(b)は、実施例で得られた粒状結晶の粒径分布を示すグラフである。
【図4】本発明の粒状結晶の製造装置の坩堝及びノズルについて、実施の形態の他例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0115】
1:坩堝
1a:ノズル
2:落下管
3:縦方向振動源
4:液滴
5:横方向振動源
6:粒状結晶
7:水冷シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状結晶の製造方法であって、坩堝の中の結晶材料を溶融して融液を作製する工程と、前記坩堝にノズルに3次元運動を行わせる工程と、前記ノズルから前記融液を液滴として排出する工程と、前記液滴を落下させる工程と、前記液滴を落下中に凝固させる工程と、を含む粒状結晶の製造方法。
【請求項2】
前記3次元運動が、重力の方向である縦方向の運動と、該縦方向に垂直な横平面上の2次元運動とから成る請求項1記載の粒状結晶の製造方法。
【請求項3】
前記縦方向の運動が1次元運動である請求項2記載の粒状結晶の製造方法。
【請求項4】
前記1次元運動の周波数が1kHz〜50kHzである請求項3記載の粒状結晶の製造方法。
【請求項5】
前記2次元運動の周波数が前記坩堝の固有振動数に略一致する請求項2記載の粒状結晶の製造方法。
【請求項6】
前記2次元運動が、円運動である請求項2記載の粒状結晶の製造方法。
【請求項7】
前記横平面上の2次元運動において、ノズルの速度が常にゼロではない請求項2記載の粒状結晶の製造方法。
【請求項8】
前記2次元運動が調和振動である請求項7記載の粒状結晶の製造方法。
【請求項9】
前記横平面上の任意の直交座標(x、y)を設定し、t時間後における座標位置を(X、Y)とした場合、前記2次元運動が次式で表される請求項2記載の粒状結晶の製造方法。
【数1】

【請求項10】
前記XおよびYの周波数が縦方向の運動の周波数の1/100〜1/2である請求項9記載の粒状結晶の製造方法。
【請求項11】
粒状結晶の製造方法であって、原料を溶融する工程と、溶融した原料から液柱を排出させる工程と、該液柱を複数の液滴に分裂させる工程と前記複数の液滴を、液滴同士の間隔が大きくなる方向に継続的に落下させる工程と、前記液滴を落下中に凝固させる工程と、を含む粒状結晶の製造方法。
【請求項12】
前記複数の液滴を、液滴同士の間隔が大きくなる方向に継続的に落下させる工程において、落下の初期に前記複数の液滴を空間に螺旋状に分散させる請求項11記載の粒状結晶の製造方法。
【請求項13】
前記液滴が、落下管の中心軸からしだいに遠ざかるように落下する請求項11記載の粒状結晶の製造方法。
【請求項14】
前記液滴が、放物線を描きながら落下する請求項11記載の粒状結晶の製造方法。
【請求項15】
前記液滴を落下中に凝固させる工程において、前記液滴を不活性ガスによって冷却する請求項14記載の粒状結晶の製造方法。
【請求項16】
前記液滴を落下中に凝固させる工程において、前記液滴を冷却部材に接触させて冷却する請求項14記載の粒状結晶の製造方法。
【請求項17】
前記冷却部材が、落下管である請求項16記載の粒状結晶の製造方法。
【請求項18】
粒状結晶の製造装置であって、結晶材料の融液を入れる坩堝と、前記坩堝に設けられたノズルと、該ノズルに3次元運動を行わせる駆動装置と、前記ノズルから排出される液滴を冷却する冷却部と、を具備する粒状結晶の製造装置。
【請求項19】
前記駆動装置が、前記ノズルを、重力の方向である縦方向の運動と、該縦方向に垂直な横平面上の2次元運動とから成る3次元運動を行わせる駆動装置である請求項18記載の粒状結晶の製造装置。
【請求項20】
前記ノズルが複数存在する請求項18記載の粒状結晶の製造装置。
【請求項21】
さらに前記坩堝と前記駆動装置との間に冷却シャフトを具備する請求項19記載の粒状結晶の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−50256(P2008−50256A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193213(P2007−193213)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】