説明

粘弾性流体の粘度調整方法及びその装置

【課題】粘度を調整することができるとともに、生産性を向上することのできる粘弾性流体の粘度調整方法及びその装置を提供する。
【解決手段】第1押出装置10内の未加硫ゴムRの圧力及び温度を検出するとともに、その検出結果に基づいて未加硫ゴムRの粘度を推定することができるので、例えば周知のムーニー粘度測定機を用いて未加硫ゴムRの粘度を測定する場合のように、第1押出機10によって押出された未加硫ゴムRから粘度測定用にゴム片を切出す必要がなく、生産性の向上を図ることができる。また、推定された粘度に基づいて第2押出装置10における未加硫ゴムRの加工条件を調整することができるので、未加硫ゴムRの粘度を調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未加硫ゴム等の粘弾性流体の粘度を調整する粘弾性流体の粘度調整方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の粘弾性流体の粘度調整装置としては、ニーダー等によって混練されて成る未加硫ゴムが投入され、投入された未加硫ゴムを所定の口金から押出す二軸押出機と、二軸押出機から押出された未加硫ゴムの粘度を測定するムーニー粘度測定装置などの粘度測定装置とを備え、粘度測定装置の測定結果に基づいて二軸押出機に投入する未加硫ゴムの量を調整することにより、二軸押出機から押出される未加硫ゴムの粘度を調整するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−076290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、未加硫ゴムの粘度は製造される製品の寸法精度や剛性などの品質に大きな影響を与えるため、前述のように未加硫ゴムの粘度を調整することにより製品の品質を向上することができる。
【0005】
しかしながら、前記粘度調整装置では、ムーニー粘度測定装置などの粘度測定装置を用いて二軸押出機から押出された未加硫ゴムの粘度を測定することから、二軸押出機から押出された未加硫ゴムから粘度測定用のゴム片を切出す必要があり、ゴム片の切出しは作業者によって行われることになるので、生産性の向上を図る上で好ましくないという問題点があった。
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、粘度を調整することができるとともに、生産性を向上することのできる粘弾性流体の粘度調整方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記目的を達成するために、本発明の粘弾性流体の粘度調整方法は、押出装置の投入口に粘弾性流体を投入する投入工程と、押出装置内の粘弾性流体の圧力を検出する圧力検出工程と、圧力検出工程の検出結果に基づいて粘弾性流体の粘度を推定する粘度推定工程と、前記押出装置から押出された粘弾性流体を所定の練増装置を用いて練増する練増工程とを含み、粘度推定工程によって推定された粘度に基づいて練増工程の加工条件を調整するようにしている。
【0008】
また、本発明の粘弾性流体の粘度調整装置は、粘弾性流体を投入するための投入口を有し、投入された粘弾性流体を所定の押出口から押出す押出装置と、押出装置内の粘弾性流体の圧力を検出する圧力センサと、圧力センサの検出結果に基づいて粘弾性流体の粘度を推定する粘度推定手段と、前記押出装置から押出された粘弾性流体を練増する練増装置とを備え、粘度推定手段によって推定された粘度に基づいて練増装置の加工条件を調整するように構成している。
【0009】
これにより、押出装置内の粘弾性流体の圧力を検出するとともに、その検出結果に基づいて粘弾性流体の粘度を推定することができるので、例えばムーニー粘度測定機を用いて粘度を測定する場合のように、粘度測定用にゴム片を切出す必要が無く、生産性の向上を図ることができる。また、推定された粘度に基づいて練増工程における加工条件を調整することから、粘弾性流体の粘度を調整することができる。
【0010】
また、本発明の粘弾性流体の粘度調整方法は、押出装置の投入口に粘弾性流体を投入する投入工程と、押出装置内の粘弾性流体の圧力を検出する圧力検出工程と、圧力検出工程の検出結果に基づいて粘弾性流体の粘度を推定する粘度推定工程とを含み、粘度推定工程によって推定された粘度に基づいて前記押出装置の加工条件または押出装置に投入する前の粘弾性流体を加工する所定の加工装置の加工条件を調整するようにしている。
【0011】
また本発明の粘弾性流体の粘度調整装置は、粘弾性流体を投入するための投入口を有し、投入された粘弾性流体を所定の押出口から押出す押出装置と、押出装置内の粘弾性流体の圧力を検出する圧力センサと、圧力センサの検出結果に基づいて粘弾性流体の粘度を推定する粘度推定手段とを備え、粘度推定手段によって推定された粘度に基づいて前記押出装置の加工条件または押出装置に投入する前の粘弾性流体を加工する所定の加工装置の加工条件を調整するように構成している。
【0012】
これにより、押出装置内の粘弾性流体の圧力を検出するとともに、その検出結果に基づいて粘弾性流体の粘度を推定することができるので、例えばムーニー粘度測定機を用いて粘度を測定する場合のように、粘度測定用にゴム片を切出す必要が無く、生産性の向上を図ることができる。また、推定された粘度に基づいて前記押出装置の加工条件または押出装置に投入する前の粘弾性流体を加工する所定の加工装置の加工条件を調整することから、粘弾性流体の粘度を調整することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の粘弾性流体の粘度調整方法及びその装置によれば、粘弾性流体の粘度を調整することができ、しかも生産性を向上することができるので、粘弾性流体を用いて製造される製品の品質の向上及び生産性の向上の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を示す粘弾性流体の粘度調整装置の正面図
【図2】粘弾性流体の粘度調整装置のブロック図
【図3】制御装置のフローチャート
【図4】P×exp[−Ea/(R×T)]とムーニー粘度との相関データ
【図5】Pとムーニー粘度との相関データ
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態の粘弾性流体の粘度調整装置を図1乃至図4を参照しながら説明する。
【0016】
この粘弾性流体の粘度調整装置は、第1押出装置10と、第1押出装置10から押出された粘弾性流体としての未加硫ゴムRが投入される第2押出装置20と、各押出装置10,20を制御する制御装置30とを備えている。
【0017】
第1押出装置10は、投入された未加硫ゴムRを所定方向に向かって押出す単軸または複軸の第1スクリュー式押出機11と、第1スクリュー式押出機11によって押出された未加硫ゴムRを所定方向に向かって押出す第1ギアポンプ12と、第1ギアポンプ12によって押出された未加硫ゴムRが通過する口金13とを有する。
【0018】
第1スクリュー式押出機11は、筒状のシリンダー部11aと、シリンダー部11a内に配置されたスクリュー部11bと、シリンダー部11aの一部に設けられた投入部11cとを有する。スクリュー部11bはサーボモータ等のモータ(図示せず)を有する駆動装置11dによって回転するようになっており、スクリュー部11bが回転すると、投入部11cから投入された未加硫ゴムRがスクリュー部11bによって混練されながらシリンダー部11a内を所定方向(本実施形態の図1では紙面左側)に向かって押出されるようになっている。また、第1スクリュー式押出機11は周知の温調装置(図示せず)によって温度調整されるようになっている。
【0019】
第1ギアポンプ12は、一対のギア12aと、各ギア12aを収容しているハウジング12bとを有する。各ギア12aはサーボモータ等のモータ(図示せず)を有する駆動装置12cによって回転し、第1スクリュー式押出機11から押出された未加硫ゴムRが各ギア12aとハウジング12bとの間を通過して所定方向(本実施形態の図1では紙面左側)に向かって押出されるようになっている。また、第1ギアポンプ12には第1圧力センサ12dが設けられ、第1圧力センサ12dは各ギア12aとハウジング12bとの間を通過した未加硫ゴムRの圧力を検出するようになっている。さらに、第1ギアポンプ12には第1温度センサ12eが設けられ、第1温度センサ12eは各ギア12aとハウジング12bとの間を通過する前の未加硫ゴムRの温度を検出するようになっている。また、第1ギアポンプ12は周知の温調装置(図示せず)によって温度調整されるようになっている。
【0020】
口金13は第1ギアポンプ12に固定され、第1ギアポンプ12によって押出された未加硫ゴムRが口金13の押出口13aから外部に押出されるようになっている。また、口金13内の未加硫ゴムRの通路は押出口13aに向かって徐々に狭くなるように形成されている。
【0021】
第2押出装置20は、投入された未加硫ゴムRを所定方向に向かって押出す単軸または複軸の第2スクリュー式押出機21と、第2スクリュー式押出機21によって押出された未加硫ゴムRを所定方向に向かって押出す第2ギアポンプ22と、第2ギアポンプ22によって押出された未加硫ゴムRが通過する口金23とを有する。
【0022】
第2スクリュー式押出機21は、筒状のシリンダー部21aと、シリンダー部21a内に配置されたスクリュー部21bと、シリンダー部21aの一部に設けられた投入部21cとを有する。スクリュー部21bはサーボモータ等のモータ(図示せず)を有する駆動装置21dによって回転するようになっており、スクリュー部21bが回転すると、投入部21cから投入された未加硫ゴムRがスクリュー部21bによって混練されながら筒状部21a内を所定方向(本実施形態の図1では紙面左側)に向かって押出されるようになっている。また、第2スクリュー式押出機21は周知の温調装置(図示せず)によって温度調整されるようになっている。
【0023】
第2ギアポンプ22は、一対のギア22aと、各ギア22aを収容しているハウジング22bとを有する。各ギア22aはサーボモータ等のモータ(図示せず)を有する駆動装置22cによって回転し、第2スクリュー式押出機21から押出された未加硫ゴムRが各ギア22aとハウジング22bとの間を通過して所定方向(本実施形態の図1では紙面左側)に向かって押出されるようになっている。また、第2ギアポンプ22には第2圧力センサ22dが設けられ、第2圧力センサ22dは各ギア22aとハウジング22bとの間を通過した未加硫ゴムRの圧力を検出するようになっている。さらに、第2ギアポンプ22には第2温度センサ22eが設けられ、第2温度センサ22eは各ギア22aとハウジング22bとの間を通過する前の未加硫ゴムRの温度を検出するようになっている。また、第2ギアポンプ22は周知の温調装置(図示せず)によって温度調整されるようになっている。
【0024】
口金23は第2ギアポンプ22に固定され、第2ギアポンプ22によって押出された未加硫ゴムRが口金23の押出口23aから外部に押出されるようになっている。また、口金23内の未加硫ゴムRの通路は押出口23aに向かって徐々に狭くなるように形成されている。
【0025】
制御装置30はCPUや記憶部を有する周知のコンピュータから成り、各駆動装置11d,12c,21d,22c、各圧力センサ12d,22d及び各温度センサ12e,22eに接続されている。また、制御装置30には、未加硫ゴムRの種類ごとに、P×exp[−Ea/(R×T)]と125℃におけるムーニー粘度ML(1+4)との相関データと、各相関データに基づいて求められた相関式が格納されている。本実施形態の相関式は、一例としてN=α×P×exp[−Ea/(R×T)]となっている。式中のNは未加硫ゴムRのムーニー粘度に関する値であり、αは未加硫ゴムRごとに設定される定数である。また、Pは圧力センサ12dによって検出された未加硫ゴムRの圧力、Eaは活性化エネルギー、Rは気体定数である。図4の場合、値Nは直線L1のように変化し、値Nは直接的にムーニー粘度の推定値を示す。尚、図4に示すように、出願人はP×exp[−Ea/(R×T)]と未加硫ゴムRのムーニー粘度との間に強い相関性があることを見出し、この相関性からムーニー粘度の推定に用いる前記相関式を見出すに至った。
【0026】
以上のように構成された粘度調整装置では、ニーダー等の未加硫ゴムRの加工装置(図示せず)によって混練された未加硫ゴムRが第1押出装置10に投入され、第1押出装置10から押出された未加硫ゴムRが第2押出装置20に投入されるようになっている。また、第2押出装置20から押出された未加硫ゴムRが所望の粘度に調整されるようになっている。
【0027】
この未加硫ゴムRの粘度の調整方法の一例について、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。この場合、第1押出装置10の第1スクリュー式押出機11、第1ギアポンプ12及び第2押出装置20の第2ギアポンプ22の回転速度は一定であり、第2押出装置20の第1スクリュー式押出機11の回転速度を調整することにより、第2押出装置20から押出された未加硫ゴムRが所望の粘度に調整されるようになっている。また、各押出機11,21及び各ギアポンプ12,22の温度はそれぞれ温調装置によって所定の温度に調整されている。
【0028】
この未加硫ゴムRの粘度を調整する場合、制御装置30は、ニーダー等で混練された未加硫ゴムRが第1押出装置10の投入部11cに投入されるとともに、第1押出装置10から押出されている状態で、第1圧力センサ12dによって各ギア12aとハウジング12bとの間を通過した未加硫ゴムRの圧力を検出するとともに(S1)、温度センサ12eによって未加硫ゴムRの温度を検出し(S2)、検出された圧力及び温度と前記相関式とに基づいて未加硫ゴムRの粘度に関する値Nを求めるとともに、その値Nを用いて未加硫ゴムRの粘度を推定し(S3)、推定された粘度に基づいて第2押出装置20の第2スクリュー式押出機21の回転速度を調整する(S4)。
【0029】
これにより、例えばステップS3で推定した未加硫ゴムRの粘度が所定の基準値よりも低い場合は、第2押出装置20の第2スクリュー式押出機21の回転速度を遅くすることにより、第2押出装置20による未加硫ゴムRの粘度の低下を抑制し、一方、ステップS3で推定した未加硫ゴムRの粘度が所定の基準値より高い場合は、第2押出装置20の第2スクリュー式押出機21の回転速度を速くすることにより、第2押出装置20によって未加硫ゴムRの粘度を積極的に低下させることができる。即ち、第2押出装置20から押出された未加硫ゴムRを所望の粘度に調整することが可能となる。
【0030】
尚、本実施形態の場合、値Nが直接的にムーニー粘度の推定値を示しているので、ステップS3において推定される粘度と未加硫ゴムRの粘度に関する値Nとが等しくなっている。
【0031】
このように、本実施形態によれば、第1押出装置10内の未加硫ゴムRの圧力及び温度を検出するとともに、圧力及び温度の検出結果に基づいて未加硫ゴムRの粘度を推定することができるので、例えば周知のムーニー粘度測定機を用いて未加硫ゴムRの粘度を測定する場合のように、第1押出機10によって押出された未加硫ゴムRから粘度測定用にゴム片を切出す必要がなく、生産性の向上を図ることができる。また、推定された粘度に基づいて第2押出装置10における未加硫ゴムRの加工条件を調整することができるので、未加硫ゴムRの粘度を調整することができる。従って、第2押出装置10から押出された未加硫ゴムRを用いて製造される製品の品質の向上及び生産性の向上の両立を図ることができる。
【0032】
また、第1押出装置10は第1スクリュー式押出機11及び第1ギアポンプ12を備え、第1スクリュー式押出機11に未加硫ゴムRが投入され、第1スクリュー式押出機11から押出された未加硫ゴムRが第1ギアポンプ12を通過し、第1ギアポンプ12から押出された未加硫ゴムRが口金13の押出口13aから押出される構造になっている。ここで、スクリュー式押出機は未加硫ゴムRの練増しに適しており、ギアポンプは未加硫ゴムRの定量的な押出しに適している。即ち、第1スクリュー式押出機11の回転速度を調整することにより、第1押出装置10による未加硫ゴムRの練増度合を容易且つ確実に調整することができ、第1ギアポンプ12の回転速度を調整することにより、第1スクリュー式押出機11の回転速度に拘わらず、第1押出装置10による未加硫ゴムRの単位時間あたりの押出量を容易且つ確実に調整することができる。即ち、未加硫ゴムRを用いて製造される製品の品質の向上及び生産性の向上の両立を図る上で極めて有利である。
【0033】
また、ステップS3において、相関式であるN=α×P×exp[−Ea/(R×T)]によって求められる粘度に関する値N、検出された圧力及び温度を用いて未加硫ゴムRの粘度を推定するようにしている。ここで、図4に示すように、P×exp[−Ea/(R×T)]と未加硫ゴムRのムーニー粘度との間に強い相関性がある。このため、前記値Nを用いて行われる未加硫ゴムRの粘度の推定精度を向上することができ、未加硫ゴムRを用いて製造される製品の品質の向上を図る上で極めて有利である。
【0034】
尚、式中の−Ea/Rは定数であることから、これを定数βとし、前記式をN=α×P×exp[β×(1/T)]と書き換えることも可能であり、この場合でも前述と同様の作用効果を達成可能である。また、βの値を(−Ea/R)以外の他の定数とすることも可能であり、この場合は値Nが直接的にムーニー粘度の推定値にはならないが、その値Nから未加硫ゴムRの粘度を推定可能であり、前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0035】
また、第1圧力センサ12dは第1ギアポンプ12から押出された後且つ口金13の押出口13aから押出される前の未加硫ゴムRの圧力を検出するようにしている。ここで、第1圧力センサ12dの検出圧力は第1ギアポンプ12からの押出量の影響を受けるが、ギアポンプは未加硫ゴムRの定量的な押出しに優れているので、圧力センサ12dによる検出結果と未加硫ゴムRの粘度との相関を確保することができる。即ち、未加硫ゴムRの粘度の推定精度を向上することができ、未加硫ゴムRを用いて製造される製品の品質の向上を図る上で極めて有利である。
【0036】
また、第2押出装置20は、第2スクリュー式押出機21及び第2ギアポンプ22を備え、第2スクリュー式押出機21に未加硫ゴムRが投入され、第2スクリュー式押出機21から押出された未加硫ゴムRが第2ギアポンプ22を通過し、第2ギアポンプ22から押出された未加硫ゴムRが口金23の押出口23aから押出される構造になっている。ここで、スクリュー式押出機は未加硫ゴムRの練増しに適しており、ギアポンプは未加硫ゴムRの定量的な押出しに適している。即ち、第2スクリュー式押出機21の回転速度を調整することにより、第2押出装置20による未加硫ゴムRの練増度合を容易且つ確実に調整することができ、第2ギアポンプ22の回転速度を調整することにより、第2スクリュー式押出機21の回転速度に拘わらず、第2押出装置20による未加硫ゴムRの単位時間あたりの押出量を容易且つ確実に調整することができる。即ち、未加硫ゴムRを用いて製造される製品の品質の向上及び生産性の向上の両立を図る上で極めて有利である。
【0037】
尚、本実施形態では、P×exp[−Ea/(R×T)]と125℃におけるムーニー粘度ML(1+4)との相関データと、各相関データに基づいて求められた相関式とが未加硫ゴムRの種類ごとに制御装置30に格納されている。これに対し、検出された未加硫ゴムRの圧力Pと125℃におけるムーニー粘度ML(1+4)との相関データ(図5参照)と、各相関データに基づいて求められた相関式とが未加硫ゴムRの種類ごとに制御装置30に格納されている場合でも、前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0038】
この場合、相関式の一例はN=λ×Pとなり、前記ステップS3において、検出された圧力及び温度と相関式とに基づいて未加硫ゴムRの粘度に関する値Nが求められる代わりに、検出された圧力と相関式とに基づいて未加硫ゴムRの粘度に関する値Nが求められる。式中のNは未加硫ゴムRのムーニー粘度に関する値であり、λは未加硫ゴムRの種類や温度ごとに設定される定数である。即ち、図5に示すように、値Nは直線L2のように変化し、値Nは直接的にムーニー粘度の推定値を示す。この場合でも、前述と同様の作用効果を達成することが可能であるが、図5は図4に比べて相関関係が弱いので、ステップS3のように検出された圧力及び温度と前記相関式とに基づいて未加硫ゴムRの粘度に関する値Nを求める方が、未加硫ゴムRを用いて製造される製品の品質の向上を図る上で好ましい。
【0039】
尚、本実施形態では、推定された粘度に基づいて第2押出装置20のスクリュー式押出機21の回転速度を調整することにより、第2押出装置20から押出される未加硫ゴムRの粘度を調整するものを示した。これに対し、推定された粘度に基づいて第2押出装置20のスクリュー式押出機21やギアポンプ22の温度を調整することにより、第2押出装置20から押出される未加硫ゴムRの粘度を調整することも可能であり、第2押出装置20のその他の加工条件を調整することにより粘度を調整することも可能である。
【0040】
尚、本実施形態では、第1押出装置10によって押出された未加硫ゴムRを第2押出装置20によって練増し、また、第2押出装置20による未加硫ゴムRの加工条件を前記推定した粘度に基づいて調整するものを示した。これに対し、第2押出装置20の代わりにスクリュー式押出機、周知のロール、その他の未加硫ゴムRの練増装置を設けることも可能であり、この場合でも前記推定した粘度に基づいてスクリュー押出機の回転速度やロールの間隙を調整することや、前記推定した粘度に基づいてスクリュー押出機やロールによる練増を行うか否かを判断することや、スクリュー押出機やロールによる加工時間や加工回数を調整することにより、未加硫ゴムRの粘度を調整することが可能であり、前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0041】
尚、本実施形態では、第1押出装置10に第1スクリュー式押出機11、第1ギアポンプ12及び口金13を設けたものを示した。これに対し、第1押出装置10を第1スクリュー式押出機11及び口金13とから構成し、圧力センサ12dによって第1スクリュー式押出機11から押出された後且つ口金13の押出口13aから押出される前の未加硫ゴムRの圧力を検出することも可能であり、この場合でも前記推定した粘度に基づいて第2押出装置20による未加硫ゴムRの加工条件を調整することが可能であり、前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0042】
尚、本実施形態では、第1ギアポンプ12に圧力センサ12dを取付け、第1ギアポンプ12から押出された後且つ口金13の押出口13aから押出される前の未加硫ゴムRの圧力を検出している。これに対し、圧力センサ12dによって第1スクリュー式押出機11から押出された未加硫ゴムRの圧力を検出することも可能であり、圧力センサ12dを口金13に設け、押出口13aから押出される直前の未加硫ゴムRの圧力を検出することも可能であり、これらの場合でも前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0043】
尚、本実施形態では、第1押出装置10によって押出された未加硫ゴムRを第2押出装置20によって練増し、また、第2押出装置20による未加硫ゴムRの加工条件を前記推定した粘度に基づいて調整するものを示した。これに対し、前記推定した粘度に基づいて第1押出装置10の加工条件を調整することにより、第1押出装置10または第2押出装置20から押出される未加硫ゴムRの粘度を調整することも可能であり、この場合でも前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0044】
また、前記推定した粘度に基づいて、第1押出装置10に投入する前の未加硫ゴムRを加工する例えば周知のニーダー等の加工装置の加工条件を調整することにより、第1押出装置10から押出される未加硫ゴムRの粘度を調整可能であり、この場合でも前述と同様の作用効果を達成可能である。
【0045】
尚、本実施形態では、制御装置30に相関データ及び相関式の両方が格納されているものを示したが、制御装置30に相関データを格納せずに未加硫ゴムRの種類ごとに相関式を格納するだけでも、前述と同様の作用効果を達成することが可能である。
【0046】
尚、本実施形態では、粘弾性流体として未加硫ゴムRを用いるものを示したが、未加硫ゴムRの代わりにポリウレタンや熱可塑性エラストマー等の他の粘弾性流体を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0047】
10…第1押出装置、11…第1スクリュー式押出機、12…第1ギアポンプ、13…口金、20…第2押出装置、21…第2スクリュー式押出機、22…第2ギアポンプ、30…制御装置、R…未加硫ゴム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出装置の投入口に粘弾性流体を投入する投入工程と、
押出装置内の粘弾性流体の圧力を検出する圧力検出工程と、
圧力検出工程の検出結果に基づいて粘弾性流体の粘度を推定する粘度推定工程と、
前記押出装置から押出された粘弾性流体を所定の練増装置を用いて練増する練増工程とを含み、
粘度推定工程によって推定された粘度に基づいて練増工程の加工条件を調整する
ことを特徴とする粘弾性流体の粘度調整方法。
【請求項2】
押出装置の投入口に粘弾性流体を投入する投入工程と、
押出装置内の粘弾性流体の圧力を検出する圧力検出工程と、
圧力検出工程の検出結果に基づいて粘弾性流体の粘度を推定する粘度推定工程とを含み、
粘度推定工程によって推定された粘度に基づいて前記押出装置の加工条件または押出装置に投入する前の粘弾性流体を加工する所定の加工装置の加工条件を調整する
ことを特徴とする粘弾性流体の粘度調整方法。
【請求項3】
前記押出装置として、スクリュー式押出機及びギアポンプを有するとともに、スクリュー式押出機に前記粘弾性流体が投入され、スクリュー式押出機から押出された粘弾性流体がギアポンプを通過し、ギアポンプから押出された粘弾性流体が所定の押出口から押出されるように構成された押出装置を用いる
ことを特徴とする請求項1または2の何れかに記載の粘弾性流体の粘度調整方法。
【請求項4】
押出装置内の粘弾性流体の温度を検出する温度検出工程を含み、
前記粘度推定工程において、圧力検出工程における検出結果、温度検出工程における検出結果及び以下の式(1)によって粘度に関する値Nを求め、該値Nを用いて粘弾性流体の粘度を推定する
ことを特徴とする請求項1、2または3の何れかに記載の粘弾性流体の粘度調整方法。
N=α×P×exp[β×(1/T)]…式(1)
式(1)中、α及びβはそれぞれ所定の定数、Pは圧力検出工程の検出結果、Tは温度検出工程の検出結果である。
【請求項5】
前記圧力検出工程において、ギアポンプから押出された後且つ押出口から押出される前の粘弾性流体の圧力を検出する
ことを特徴とする請求項3に記載の粘弾性流体の粘度調整方法。
【請求項6】
前記所定の練増装置として、スクリュー式押出機及びギアポンプを有するとともに、スクリュー式押出機に前記粘弾性流体が投入され、スクリュー式押出機から押出された粘弾性流体がギアポンプを通過し、ギアポンプから押出された粘弾性流体が所定の押出口から押出されるように構成された他の押出装置を用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の粘弾性流体の粘度調整方法。
【請求項7】
粘弾性流体を投入するための投入口を有し、投入された粘弾性流体を所定の押出口から押出す押出装置と、
押出装置内の粘弾性流体の圧力を検出する圧力センサと、
圧力センサの検出結果に基づいて粘弾性流体の粘度を推定する粘度推定手段と、
前記押出装置から押出された粘弾性流体を練増する練増装置とを備え、
粘度推定手段によって推定された粘度に基づいて練増装置の加工条件を調整するように構成した
ことを特徴とする粘弾性流体の粘度調整装置。
【請求項8】
粘弾性流体を投入するための投入口を有し、投入された粘弾性流体を所定の押出口から押出す押出装置と、
押出装置内の粘弾性流体の圧力を検出する圧力センサと、
圧力センサの検出結果に基づいて粘弾性流体の粘度を推定する粘度推定手段とを備え、
粘度推定手段によって推定された粘度に基づいて前記押出装置の加工条件または押出装置に投入する前の粘弾性流体を加工する所定の加工装置の加工条件を調整するように構成した
ことを特徴とする粘弾性流体の粘度調整装置。
【請求項9】
前記押出装置がスクリュー式押出機及びギアポンプを有するとともに、スクリュー式押出機に前記粘弾性流体が投入され、スクリュー式押出機から押出された粘弾性流体がギアポンプを通過し、ギアポンプから押出された粘弾性流体が所定の押出口から押出されるように構成されている
ことを特徴とする請求項7または8の何れかに記載の粘弾性流体の粘度調整装置。
【請求項10】
押出装置内の粘弾性流体の温度を検出する温度センサを備え、
前記粘度推定手段を、圧力センサの検出結果、温度センサの検出結果及び以下の式(1)によって粘度に関する値Nを求め、該値Nを用いて粘弾性流体の粘度を推定するように構成した
ことを特徴とする請求項7、8または9の何れかに記載の粘弾性流体の粘度調整装置。
N=α×P×exp[β×(1/T)]…式(1)
式(1)中、α及びβはそれぞれ所定の定数、Pは圧力検出工程の検出結果、Tは温度検出工程の検出結果である。
【請求項11】
前記圧力センサを、ギアポンプから押出された後且つ押出口から押出される前の粘弾性流体の圧力を検出するように設けた
ことを特徴とする請求項9に記載の粘弾性流体の粘度調整装置。
【請求項12】
前記練増装置がスクリュー式押出機及びギアポンプを有するとともに、スクリュー式押出機に前記粘弾性流体が投入され、スクリュー式押出機から押出された粘弾性流体がギアポンプを通過し、ギアポンプから押出された粘弾性流体が所定の押出口から押出されるように構成されている
ことを特徴とする請求項7に記載の粘弾性流体の粘度調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−214708(P2010−214708A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62864(P2009−62864)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】