説明

組成物、位相差板、液晶表示装置および、位相差板の製造方法

【課題】配向角度が低く、また重合温度により配向角度の変化のないまたは軽減された光学異方性層を安定的に作製するのに有用な組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも一種の液晶性化合物と、少なくとも一種の下記一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマーを含有する組成物。一般式(A)


(一般式(A)中、Mpは3価の連結基を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、Xは置換もしくは無置換の環状連結基を表し、Yは単結合または2価の連結基を表し、Zは置換もしくは無置換の環状基を表し、nは1〜10の整数を表す。ただし、nが2以上の場合、XおよびYは、それぞれ、同じでも異なっていてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性層の形成に有用な組成物およびそれを用いて作製された位相差板とその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、通常、液晶セルを挟んで第1の偏光板と第2の偏光板とが設けられ、液晶セルは一対の基板間に棒状液晶を含有する液晶層を有する。棒状液晶を用いた液晶セル内で生じる位相差を、ディスコティック液晶性化合物(円盤状液晶性化合物)(例えば、2,3,6,7,10,11−ヘキサ{4−(4−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)ベンゾイルオキシ}トリフェニレン等)から形成される光学異方性層を有する光学補償シート(例えば、特許文献1)によって相殺する場合、棒状液晶とディスコティック液晶性化合物との波長分散性が異なるために全ての光の波長について同時に位相差を相殺できず、変色(黒の色味が出ない等)が生じる場合がある。
【0003】
ヘテロ環基による3置換ベンゼン化合物が報告されている(非特許文献1)。この化合物の使用によって低い波長分散性を達成することは容易でなく、より波長分散性の小さい(Re(短波長(例えば450nm))/Re(長波長(例えば650nm))の値が小さい)化合物が望まれている。
【0004】
位相差板のレターデーションRe(λ)は、補償しようとする液晶セルの光学的性質に応じて決定する必要がある。ここで、レターデーション(△nd)は、光学異方性層の屈折率異方性(△n)と光学異方性層の厚さ(d)との積であり、光学異方性層の屈折率異方性(△n)が大きければ、層の厚さ(d)が薄くても液晶セルを補償できる。また、液晶を配向固定化して作製された位相差板においては、配向した液晶の配向角度(チルト角、平均チルト角)によってレターデーションReが変化するため、その配向角度を制御する必要がある。
【0005】
しかしながら、ヘテロ環基の置換した3置換ベンゼン型のディスコティック液晶の場合、配向角度を制御するのが困難であり、特に、低いチルト角でハイブリッド配向させる事が困難であったことから、ディスコティック液晶性化合物の配向角度を所望の角度に低下する事ができる配向制御剤が望まれていた。
【0006】
一方、液晶性化合物に、配向制御剤もしくは配向促進剤を添加する例が開示されているが、3置換ベンゼン型のディスコティック液晶性化合物に対する効果は明示されておらず、また従来の技術では配向角度を所望の角度に制御するのには不十分であった(特許文献2)。
【0007】
また、配向角度の制御に関し、特に、重合時の温度が変化しても配向角度の変化が小さいことが望まれているが、これまでは配向角度の温度依存性が大きく、その改善が望まれていた。
【0008】
【特許文献1】特開平8−50206号公報
【特許文献2】特開2002−129162号公報
【非特許文献1】Molecular Crystals and Liquid Crystals,2001年,370巻,391頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、液晶表示装置の光学補償に寄与する光学異方性層を安定的に作製するのに有用な組成物を提供することを課題とする。特に、ディスコティック液晶性化合物のハイブリッド配向によって発現された光学異方性を示す光学異方性層を、光学特性値のバラツキや配向不良等に起因する欠陥なく(または欠陥を軽減して)作製するのに有用な組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、液晶表示装置の光学補償に有用な位相差板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
(1)少なくとも一種の液晶性化合物と、少なくとも一種の下記一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマーを含有する組成物。
一般式(A)
【化1】

(一般式(A)中、Mpは3価の連結基を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、Xは置換もしくは無置換の環状連結基を表し、Yは単結合または2価の連結基を表し、Zは置換もしくは無置換の環状基を表し、nは1〜10の整数を表す。ただし、nが2以上の場合、XおよびYは、それぞれ、同じでも異なっていてもよい。)
(2)前記一般式(A)中のXが液晶性を有する基を有する、(1)に記載の組成物。
(3)前記一般式(A)中のXが、炭素原子数3〜20の置換もしくは無置換の環状脂肪族基または、炭素原子数6〜30の置換もしくは無置換のフェニレン基である、(1)または(2)に記載の組成物。
(4)前記一般式(A)において、前記Mpが下記Mp−1またはMp−2を表し、前記Lが、−O−、−NRa11−(Ra11は、水素原子、炭素原子数1〜10の置換もしくは無置換の脂肪族炭化水素基、または、炭素原子数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基を表す。)、−S−、−C(=O)−、−S(=O)2−、および、炭素原子数1〜20の置換もしくは無置換のアルキレン基、ならびに、これらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表す、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の組成物。
【化2】

(*は、Lとの連結位置を示す。)
(5)前記一般式(A)において、前記Yが単結合または、−O−、−NRa12−(但し、Ra12は水素原子、炭素原子数1〜10の置換もしくは無置換の脂肪族炭化水素基、または、炭素原子数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基を表す。)、−S−、−C(=O)−、および、−S(=O)2−、ならびに、これらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、前記Zが置換もしくは無置換のフェニル基を表し、nが、1〜4の整数を表す、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の組成物。
(6)前記ポリマーが、さらに、フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位を含む、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の組成物。
(7)前記一般式(A)で表される基を構成単位として含まず、かつ、フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位を含むポリマーを含有する(1)〜(6)のいずれか1項に記載の組成物。
(8)前記一般式(A)で表される基を構成単位として含まず、かつ、フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位を含むポリマーであって親水性基を含有するポリマーを含有する(1)〜(6)のいずれか1項に記載の組成物。
(9)下記一般式(F)で表される繰り返し単位を含むポリマーを含む、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の組成物。
一般式(F)
【化3】

(一般式(F)中、R81およびR82はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、L81、L82は、それぞれ独立に単結合または炭素原子数1〜20の二価の連結基を表し、Rf"は炭素原子数1〜30のフッ化アルキル基を表し、R83は水素原子または親水性基を表し、A8は重合単位を表し、g、h、iはそれぞれの重合単位の質量分率を表す。
(10)前記液晶性化合物の少なくとも一種の粘度が、80〜150℃において、500〜1000mPa・sである、(1)〜(9)のいずれか1項に記載の組成物。
(11)前記液晶性化合物の少なくとも1種が、下記一般式(DI)で表される、(1)〜(10)のいずれか1項に記載の組成物。
【化4】

(一般式(DI)中、Y11、Y12、Y13は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。L1、L2、L3は、それぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。H1、H2、H3はそれぞれ独立に、下記一般式(DI−A)または下記一般式(DI−B)を表す。R1、R2、R3は、それぞれ独立に下記一般式(DI−R)を表す。)
【化5】

(一般式(DI−A)中、YA1、YA2は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。XAは酸素原子、硫黄原子、メチレン、またはイミノを表す。*はL1〜L3と結合する位置を表し、**はR1〜R3と結合する位置を表す。)
【化6】

(一般式(DI−B)中、YB1、YB2は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。XBは酸素原子、硫黄原子、メチレン、またはイミノを表す。*はL1〜L3と結合する位置を表し、**はR1〜R3と結合する位置を表す。)
一般式(DI−R)
*−(−L21−F1n1−L22−L23−Q1
(一般式(DI−R)中、*は一般式(DI)中のH1、H2またはH3に結合する位置を表す。F1は少なくとも1種類の環状構造を有する2価の連結基を表す。L21は単結合または2価の連結基を表す。n1は0〜4の整数を表す。L22は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、を表し、L23は−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q1は重合性基または水素原子を表す。)
(12)前記液晶性化合物の少なくとも1種が、下記一般式(DII)で表される液晶性化合物または下記一般式(DIII)で表される液晶性化合物である、(1)〜(11)のいずれか1項に記載の組成物。
【化7】

(一般式(DII)中、Y31、Y32、Y33はそれぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。R31、R32、R33はそれぞれ独立に下記一般式(DII−R)で表される。)
【化8】

(一般式(DII−R)中、A31、A32は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。X3は酸素原子、硫黄原子、メチレン、またはイミノを表す。F2は6員環状構造を有する2価の環状連結基を表す。n3は、1〜3整数を表す。L31は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、を表し、L32は−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q3は重合性基または水素原子を表す。)
【化9】

(一般式(DIII)中、Y41、Y42およびY43は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、R41、R42およびR43は、それぞれ独立に下記一般式(DIII−A)、または下記一般式(DIII−B)、または下記一般式(DIII−C)を表す。)
【化10】

(一般式(DIII−A)中、A41、A42、A43、A44、A45、A46は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、X41は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、L41は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C≡C−を表し、L42は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q4は、重合性基または水素原子を表す。)
【化11】

(一般式(DIII−B)中、A51、A52、A53、A54、A55、A56は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、X52は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、L51は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C≡C−を表し、L52は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q5は重合性基または水素原子を表す。)
【化12】

(一般式(DIII−C)中、A61、A62、A63、A64、A65、A66は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、X63は、酸素原子、硫黄原子、メチンまたはイミノを表し、L61は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C≡C−を表し、L62は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q6は重合性基または水素原子を表す。)
(13)(1)〜(12)のいずれか1項に記載の組成物を用いてなる光学異方性層を有する位相差板。
(14)(13)に記載の位相差板を有する、液晶表示装置。
(15)(1)〜(12)のいずれか1項に記載の組成物を用いて光学異方性層を形成することを含む位相差板の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液晶表示装置の光学補償に寄与する光学異方性層を安定的に作製するのに有用な組成物を提供することができる。本発明によれば、特に、ハイブリッド配向したディスコティック液晶性化合物の平均傾斜角度を10〜40°の範囲に精密に制御することができ、且つ配向温度の僅かな変動に起因する平均傾斜角度のバラツキを軽減して作製するのに有用な組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本発明において、アルキル基等の「基」は、特に述べない限り、置換基を有していてもよいし、置換基を有していなくてもよい。よって、例えば、「炭素原子数A〜Bのアルキル基」と言う場合、該アルキル基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。また、置換基を有する場合は、該置換基の数も、炭素原子数AおよびBに含まれると解釈する。
まず、本明細書における、Re(λ)、Rth(λ)、チルト角および平均チルト角の詳細について以下に記す。
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターでーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHが算出する。ここで平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
【0013】
また、本明細書において、光学異方性層中のディスコティック液晶性化合物の分子の平均チルト角とは、光学異方性層の一方の面(本発明の位相差板においては配向膜表面)と光学異方性中のディスコティック液晶性化合物の分子の物理的な対象軸とのなす角度をチルト角θ1、および、他方の面(本発明の位相差板においては空気界面)とのなす角度をチルト角θ2とし、その平均値((θ1+θ2)/2)として定義する。しかしながら、θ1および他方の面のチルト角θ2を、直接的にかつ正確に測定することは困難である。そこで本明細書においては、θ1およびθ2は、以下の手法で算出する。本手法は実際の配向状態を正確に表現していないが、光学フィルムのもつ一部の光学特性の相対関係を表す手段として有効である。
本手法では算出を容易にすべく、下記の2点を仮定し、光学異方性層の2つの界面におけるチルト角とする。
1.光学異方性層は円盤状化合物や棒状化合物を含む層で構成された多層体と仮定する。さらに、それを構成する最小単位の層(円盤状化合物または棒状化合物のチルト角は該層内において一様と仮定)は光学的に一軸と仮定する。
2.各層のチルト角は光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化すると仮定する。
具体的な算出法は下記のとおりである。
(1)各層のチルト角が光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化する面内で、光学異方性層への測定光の入射角を変化させ、3つ以上の測定角でレターデーション値を測定する。測定および計算を簡便にするためには、光学異方性層に対する法線方向を0°とし、−40°、0°、+40°の3つの測定角でレターデーション値を測定することが好ましい。このような測定は、KOBRA−21ADHおよびKOBRA−WR(王子計測器(株)製)、透過型のエリプソメーターAEP−100((株)島津製作所製)、M150およびM520(日本分光(株)製)、ABR10A(ユニオプト(株)製)で行うことができる。
(2)上記のモデルにおいて、各層の常光の屈折率をno、異常光の屈折率をne(neは各々すべての層において同じ値、noも同様とする)、および多層体全体の厚みをdとする。さらに各層におけるチルト方向とその層の一軸の光軸方向とは一致するとの仮定の元に、光学異方性層のレターデーション値の角度依存性の計算が測定値に一致するように、光学異方性層の一方の面におけるチルト角θ1および他方の面のチルト角θ2を変数としてフィッティングを行い、θ1およびθ2を算出する。
ここで、noおよびneは文献値、カタログ値等の既知の値を用いることができる。値が未知の場合はアッベ屈折計を用いて測定することもできる。光学異方性層の厚みは、光学干渉膜厚計、走査型電子顕微鏡の断面写真等により測定数することができる。
【0014】
以下、本発明の組成物、および、位相差板について順次説明する。
【0015】
本発明の組成物中には、少なくとも一種の液晶性化合物と、少なくとも一種の一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマー(以下、「本発明で用いるポリマー」ということがある)を含有する組成物が含有されている。以下に、本発明で用いるポリマー、および、好適に用いられる液晶性化合物について順次説明する。
【0016】
一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマー
(1)一般式(A)で表される基
一般式(A)
【化13】

(一般式(A)中、Mpは3価の連結基を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、Xは置換もしくは無置換の環状連結基を表し、Yは単結合または2価の連結基を表し、Zは置換もしくは無置換の環状基を表し、nは1〜10の整数を表す。ただし、nが2以上の場合、XおよびYは、それぞれ、同じでも異なっていてもよい。)
【0017】
一般式(A)中、Mpは、3価の連結基であり、本発明で用いられるポリマーの主鎖を構成する。後述するとおり、これ以外の繰り返し単位を含んで主鎖を構成していてもよい。Mpは、好ましくは、炭素原子数2〜20(置換基の炭素原子数は含まない、以下、Mp中のものについて同じ)の置換もしくは無置換の直鎖または分岐のアルキレン基(例えば、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等)、炭素原子数3〜10の置換もしくは無置換の環状アルキレン基(例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロヘキシレン基等)、置換もしくは無置換のビニレン基、置換もしくは無置換の環状ビニレン基、置換もしくは無置換のフェニレン基、酸素原子を含む基(例えば、エーテル基、アセタール基、エステル基、カルボネート基等を含む基)、窒素原子を含む基(例えば、アミノ基、イミノ基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、イミド基、イミダゾール基、オキサゾール基、ピロール基、アニリド基、マレインイミド基等を含む基)、硫黄原子を含む基(例えば、スルフィド基、スルホン基、チオフェン基等を含む基)、リン原子を含む基(例えば、ホスフィン基、リン酸エステル基等を含む基)、珪素原子を含む基(例えば、シロキサン基等を含む基)の基、およびこれらの基を二つ以上連結して形成される基であって、該基に含まれる水素原子の1つが−L−X基によって置換されている基が好ましく、より好ましくは、置換もしくは無置換のエチレン基、置換もしくは無置換のメチルエチレン基、置換もしくは無置換のシクロヘキシレン基、置換もしくは無置換のビニレン基であって、該基に含まれる水素原子の1つが−L−X基によって置換されている基であり、さらに好ましくは、置換もしくは無置換のエチレン基、置換もしくは無置換のメチルエチレン基、置換もしくは無置換のビニレン基であって、該基に含まれる水素原子の1つが−L−X基によって置換されている基であり、特に好ましくは、置換もしくは無置換のエチレン基、置換もしくは無置換のメチルエチレン基であって、該基に含まれる水素原子の1つが−L−X基によって置換されている基であり、具体的には、後述する、Mp−1およびMp−2が好ましい。
【0018】
以下に、Mpの好ましい具体例を示すが、Mpはこれに限定されるものではない。また、Mp中の*で表される部位はLと連結する部位を表す。
【0019】
【化14】

【0020】
−Mp(L)−として好ましくは、−CR2−CRL−(Rは、それぞれ、水素原子または置換基)および−CR=CL−(Rは、水素原子または置換基)のいずれか1以上の構造のみからなる基であり、より好ましくは、−CR2−CRL−(Rは、それぞれ、水素原子または置換基)構造のみからなる基であり、さらに好ましくは−CR2−CRL−(Rは、それぞれ、水素原子または置換基)であり、特に好ましくは、Mp−1およびMp−2である。
【0021】
一般式(A)中のLで表される2価の連結基としては、炭素原子数1〜20の置換もしくは無置換のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソプロピレン基など)、炭素原子数2〜20の置換もしくは無置換のアルケニレン基(例えば、ビニレン基、ブテン基等)、置換もしくは無置換のアリーレン基(例えば、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、1,4−ナフチレン基等)、−O−、−NRa1−、−S−、−PRa2−、−Si(Ra3)(Ra4)−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NRa5−、−OC(=O)O−、−OC(=O)NRa6−、−NRa7C(=O)NRa8−、−(−O)2CH−等を表す。尚、上記Ra1〜Ra8は水素原子または置換可能な置換基を表し、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(1以上の環構造を含むモノシクロアルキル基、ビシクロアルキル基等のシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールアゾ基、ヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。
また、上記連結基を2つ以上連結させて形成される、以下に示すような連結基でもよい。また、L中の*で表される部位はMpと連結する部位を表す。
下記L−1〜L−7において、mは1〜20の整数を表す。mは、XおよびZの自由度を適切に調整するために、好ましくは1〜16の整数、より好ましくは3〜12の整数、さらに好ましくは3〜6の整数である。XおよびZの自由度を適切に調整することにより、配向させる液晶との相互作用が増し、かつ、XおよびZの方位をより制御でき、より効果的にプレチルト角度を制御できる。
【0022】
【化15】

【0023】
一般式(A)中のLとしてより好ましくは、−O−、−NRa11−(但し、Ra11は水素原子、炭素原子数1〜10の置換もしくは無置換の脂肪族炭化水素基または炭素原子数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基を表す。)、−S−、−C(=O)−、−S(=O)2−、および、炭素原子数1〜20の置換もしくは無置換のアルキレン基、ならびに、これらを2個以上連結して形成される基から選択される2価の連結基である。
前記2個以上連結して形成される2価の連結基としては、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−C(=O)NH−、−NHC(=O)−、−C(=O)O(CH2mO−(但し、mは上記L−1〜L−7中のmについて述べた説明と同義であり、好ましい範囲も同義である。)等)が挙げられる。
【0024】
さらに、一般式(A)中のMpが前記Mp−1またはMp−2を表す場合には、Lは、−O−、−NRa11−(Ra11は、水素原子、炭素原子数1〜10の置換もしくは無置換の脂肪族炭化水素基、または、炭素原子数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基を表す。)、−S−、−C(=O)−、−S(=O)2−、および、炭素原子数1〜20の置換もしくは無置換のアルキレン基、ならびに、これらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基であることが好ましく、−O−、−C(=O)O−、および、−C(=O)NH−、ならびに、これらの1以上とアルキレン基との組み合わせからなる2価の連結基から選択される基がより好ましい。例えば、前記L−1、L−2、および、L−3等である。
【0025】
一般式(A)中のXで表される置換もしくは無置換の環状連結基としては、炭素原子数3〜20の置換もしくは無置換の環状脂肪族基、炭素原子数6〜30の置換もしくは無置換のフェニレン基、飽和もしくは不飽和の置換もしくは無置換のヘテロ環連結基等が挙げられ、炭素原子数3〜20の置換もしくは無置換の環状脂肪族基または炭素原子数6〜30の置換もしくは無置換のフェニレン基がより好ましい。
炭素原子数3〜20の置換もしくは無置換の環状脂肪族基は、炭素原子数3〜15であることがより好ましく、例えば、シクロプロピレン基、無置換シクロペンチレン基、シクロへキシレン基等が挙げられる。また、置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基などが挙げられる。
炭素原子数6〜30の置換もしくは無置換のフェニレン基は、炭素原子数6〜20であることがより好ましく、例えば、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、メトキシフェニレン基、メチルフェニレン基、トリフルオロフェニレン基等が挙げられる。また、置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。
飽和もしくは不飽和の置換もしくは無置換のヘテロ環連結基は、炭素原子数3〜15であることがより好ましく、例えば、ピリジン環連結基、ピペリジン環連結基、フラン環連結基、ベンズイミダゾール環連結基、イミダゾール環連結基、チオフェン環連結基、ピロール環連結基等が挙げられる。また、置換基を有する場合、アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。
【0026】
一般式(A)中のXは、無置換のシクロへキシレン基、炭素原子数6〜20の置換もしくは無置換のフェニレン基がより好ましく、炭素原子数6〜10の置換もしくは無置換のp−フェニレン基がさらに好ましい。
【0027】
一般式(A)中のYで表される2価の連結基としては、炭素原子数1〜20の置換もしくは無置換のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソプロピレン基など)、炭素原子数2〜20の置換もしくは無置換のアルケニレン基(例えば、ビニレン基、ブテン基等)、置換もしくは無置換のアリーレン基(例えば、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、1,4−ナフチレン基等)、−O−、−NRa12−、−S−、−PRa2−、−Si(Ra3)(Ra4)−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NRa5−、−OC(=O)O−、−OC(=O)NRa6−、−NRa7C(=O)NRa8−、−(−O)2CH−等を表す。尚、上記Ra12、Ra2〜Ra8は置換可能な置換基を表し、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(1以上の環構造を含むモノシクロアルキル基、ビシクロアルキル基等のシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールアゾ基、ヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。
【0028】
また、一般式(A)中のYとして好ましくは、単結合、または、−O−、−NRa12−(但し、Ra12は水素原子、炭素原子数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基または炭素原子数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基を表す。)、−S−、−C(=O)−、および、−S(=O)2−、ならびに、これらを2個以上連結して形成される基から選択される2価の連結基である。
Yとしてさらに好ましくは、単結合、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−C(=O)NH−、−NHC(=O)−等)であり、特に好ましくは、単結合、−O−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−である。
【0029】
一般式(A)中のZで表される置換もしくは無置換の環状基としては、炭素原子数5〜20の置換もしくは無置換の環状脂肪族基(例えば、無置換シクロペンチル基、シクロへキシル基、ペンチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基等)、炭素原子数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基(例えば、無置換フェニル基、シアノフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、オクチルオキシフェニル基、ハロゲン原子置換したフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、無置換ナフチル基、シアノビフェニル基、ビフェニル基、パーフルオロヘキシルエチルオキシフェニル基、ヒドロキシブチルフェニル基、カルボキシフェニル基、スルホフェニル基等)、または、置換もしくは無置換のヘテロ環基(例えば、ピリジル基、ジメチルアミノピリジル基、N−メチルイミダゾリル基等)が挙げられる。
【0030】
一般式(A)中、Zとしてより好ましくは、炭素原子数6〜15の置換もしくは無置換のシクロヘキシル基、または、炭素原子数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基であり、さらに好ましくは、炭素原子数6〜15の置換もしくは無置換のフェニル基であり、特に好ましくは炭素原子数6〜10の置換のフェニル基である。
【0031】
一般式(A)中、Zとしては、Zのグループモーメントが、2.0Deby以上、好ましくは3.0Deby以上、より好ましくは、4.0Deby以上であるものが好ましい。このようなZを採用することにより、広い温度範囲で有効に平均チルト角度を減少させることができる。Zにこのような大きなグループモーメントを付与するためには、例えば、Zを置換環状基の置換基として、シアノ基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)を採用することができる。このような置換基の中でも、シアノ基、フッ素原子が特に好ましい。また、同じグループモーメントの値を有するZにおいてもグループモーメントの方向がメソゲン部の長軸方向と平行な方向に向くものは効果がより大きくなり、またチルト角度の温度依存性が良好である。このような置換基の置換位置としては、p−位および/またはm−位が好ましく、より好ましくは、少なくともp−位であり、p−位およびm−位の両方を置換したものがさらに好ましい。置換基の数としては、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。
特に、Yが単結合または、−O−、−NRa12−(但し、Ra12は水素原子、炭素原子数1〜10の置換もしくは無置換の脂肪族炭化水素基、または、炭素原子数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基を表す。)、−S−、−C(=O)−、および、−S(=O)2−、ならびに、これらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基の場合には、Zが置換もしくは無置換のフェニル基を表すことが好ましい。この場合、nは1〜4の整数であることがさらに好ましい。
【0032】
一般式(A)中のnとしては、1〜10の整数し、1〜4の整数であることが好ましく、1または2であることがさらに好ましい。
【0033】
以下に一般式(A)として好ましい構成単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
【化16】

【0035】
【化17】

【0036】
【化18】

【0037】
(2)一般式(A)で表される基以外に含まれてもよい構成単位
本発明で用いるポリマーは、前記一般式(A)で表される基である構成単位のみからなるホモポリマーであってもよいが、他の構成単位との組み合わせからなるコポリマーであってもよい。このような他の構成単位としては、フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位が好ましく、下記一般式(B)で表される基である構成単位がより好ましい。以下に一般式(B)で表される基についての詳細を記す。
【0038】
【化19】

(一般式(B)中、Mp'は3価の連結基を表し、L'は単結合または2価の連結基を表し、Rfは少なくとも一つのフッ素原子を含有する置換基を表す。)
【0039】
Mp'は、一般式(A)中のMpと同義であり、好ましい範囲も同義である。
L'は、好ましくは、−O−、−NRa11−(但し、Ra11は水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素原子数6〜20のアリール基を表す。)、−S−、−C(=O)−、−S(=O)2−、および、炭素原子数1〜20の置換もしくは無置換のアルキレン基、ならびに、これらを2個以上連結して形成される基から選択される2価の連結基である。前記2個以上連結して形成される2価の連結基としては、−C(=O)O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−C(=O)NH−、−NHC(=O)−、−C(=O)O(CH2maO−(但し、maは1〜20の整数を表す)等が挙げられる。
【0040】
さらに、一般式(B)中のMp'が前記Mp−1またはMp−2を表す場合には、L'は、−O−、−NRa11−(Ra11は、水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基、または、炭素原子数6〜20のアリール基を表す。)、−S−、−C(=O)−、−S(=O)2−、および、炭素原子数1〜20の置換もしくは無置換のアルキレン基、ならびに、これらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基であることが好ましく、−O−、−C(=O)O−、および、−C(=O)NH−、ならびに、これらの1以上とアルキレン基との組み合わせからなる基から選択される2価の連結基(例えば、前記L−1、L−2、および、L−3等)がより好ましい。
【0041】
Rfは、少なくとも一つのフッ素原子が置換した炭素原子数1〜30の脂肪族炭化水素基(例えば、トリフルオロエチル基、パーフルオロヘキシルエチル基、パーフルオロヘキシルエトキシエチル基、パーフルオロヘキシルプロピル基、パーフルオロブチルエチル基、パーフルオロオクチルエチル基等)、少なくとも一つのフッ素原子が置換した炭素原子数6〜20のアリール基(例えば、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−(パーフルオロヘキシルエトキシ)エトキシフェニル基等)等が好ましい例として挙げられる。また、Rfは、末端に、CF3基またはCF2H基を有することが好ましく、CF3基を有することがより好ましい。
【0042】
Rfとしてより好ましくは、末端にCF3基を有するアルキル基または末端にCF2基を有するアルキル基である。末端にCF3基を有するアルキル基は、アルキル基に含まれる水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されたアルキル基である。末端にCF3基を有するアルキル基中の水素原子の50%以上がフッ素原子で置換されているアルキル基が好ましく、60%以上が置換されているアルキル基がより好ましく、70%以上が置換されているアルキル基がさらに好ましい。残りの水素原子は、さらに後述の置換基群Dとして例示された置換基によって置換されていてもよい。
末端にCF2H基を有するアルキル基は、アルキル基に含まれる水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されたアルキル基である。末端にCF2H基を有するアルキル基中の水素原子の50%以上がフッ素原子で置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましく、70%以上が置換されているのがさらに好ましい。残りの水素原子は、さらに後述の置換基群Dとして例示された置換基によって置換されていてもよい。
【0043】
置換基群D
本明細書において、置換基群Dには、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは炭素原子数1〜12、特に好ましくは炭素原子数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは炭素原子数2〜12、特に好ましくは炭素原子数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは炭素原子数2〜12、特に好ましくは炭素原子数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは炭素原子数6〜20、特に好ましくは炭素原子数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは炭素原子数0〜10、特に好ましくは炭素原子数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる)、
【0044】
アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは炭素原子数1〜12、特に好ましくは炭素原子数1〜8のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは炭素原子数6〜16、特に好ましくは炭素原子数6〜12のアリールオキシ基であり、例えば、フェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは炭素原子数1〜16、特に好ましくは炭素原子数1〜12アシル基であり、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは炭素原子数2〜16、特に好ましくは炭素原子数2〜12のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは炭素原子数7〜16、特に好ましくは炭素原子数7〜10のアリールオキシカルボニル基であり、例えば、フェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは炭素原子数2〜16、特に好ましくは炭素原子数2〜10のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、
【0045】
アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは炭素原子数2〜16、特に好ましくは炭素原子数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは炭素原子数2〜16、特に好ましくは炭素原子数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは炭素原子数7〜16、特に好ましくは炭素原子数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは炭素原子数1〜16、特に好ましくは炭素原子数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは炭素原子数0〜16、特に好ましくは炭素原子数0〜12のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは炭素原子数1〜16、特に好ましくは炭素原子数1〜12のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
【0046】
アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは炭素原子数1〜16、特に好ましくは炭素原子数1〜12のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは炭素原子数6〜16、特に好ましくは炭素原子数6〜12のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは炭素原子数1〜16、特に好ましくは炭素原子数1〜12のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは炭素原子数1〜16、特に好ましくは炭素原子数1〜12のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは炭素原子数1〜16、特に好ましくは炭素原子数1〜12のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは炭素原子数1〜16、特に好ましくは炭素原子数1〜12のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素原子数3〜40、より好ましくは炭素原子数3〜30、特に好ましくは、炭素原子数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基が二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0047】
末端にCF3基を有するアルキル基または末端にCF2H基を有するアルキル基の例を以下に示す。
【0048】
R1:n−C817
R2:n−C613
R3:n−C49
R4:n−C817−(CH22
R5:n−C613−(CH22
R6:n−C49−(CH22
R7:H−(CF28
R8:H−(CF26
R9:H−(CF24
R10:H−(CF28−(CH2)−
R11:H−(CF26−(CH2)−
R12:H−(CF24−(CH2)−
R13:n−C49−(CH22−O−(CH23−O−
R14:n−C613−(CH22−O−
R15:n−C49−(CH22−O−
【0049】
以下に、フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される好ましい繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
【化20】

【0051】
【化21】

【0052】
また、本発明で用いるポリマーには、一般式(A)で表される構造を含有する構成単位、および、フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位の他、これらの構成単位を形成するモノマーと共重合可能なモノマーより誘導される構成単位を含有してもよい。
共重合可能なモノマーとしては、特に制限はない。好ましいモノマーとしては、例えば、炭化水素系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリマレインイミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアニリド等)、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカルボナート、ポリアミド、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリウレタンおよびポリウレイドを構成するモノマーである。これらは、溶媒への溶解度を向上させたり、ポリマーの凝集を防止する観点で用いることができる。
さらに、主鎖構造が、一般式(A)で表される基が有するものと、同一となることが好ましい。
【0053】
以下に共重合可能な構成単位の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。特に、C−3、C−13、C−15、C−16、C−18が好ましく、C−3、C−13、C−16がより好ましい。
【0054】
【化22】

【0055】
【化23】

【0056】
本発明で用いるポリマーにおける、一般式(A)で表される基の含有率としては、1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がより好ましい。
本発明で用いるポリマーにおけるフルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される繰り返し単位(好ましくは、一般式(B)で表される基)の含有率としては、5〜90質量%が好ましく、10〜80質量%がより好ましい。
上記2種以外の構成単位の含有率としては、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0057】
また、これらの共重合体は、各構成単位が不規則的に導入されたランダム共重合体であっても、規則的に導入されたブロック共重合体であっても良く、ブロック共重合体である場合の各構成単位は、如何なる導入順序で合成されたものであっても良く、同一の構成成分を2度以上用いてもよい。
また、一般式(A)で表される基、一般式(B)で表される基等は、1種類のみであってもよいし、2種類以上であってもよい。2種類以上の場合、上記含有率は、合計含有率である。
【0058】
さらに、本発明で用いるポリマーの分子量範囲は、重量平均分子量(Mw)で、好ましくは1000〜100万であり、より好ましくは2000〜20万であり、さらに好ましくは3000〜10万である。また、本発明で用いるポリマーの分子量分布は、1〜4であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
【0059】
本発明で用いるポリマーの添加量範囲は、液晶性化合物に対して、好ましくは0.001〜10質量%であり、より好ましくは、0.01〜5.0質量%であり、さらに好ましくは、0.05〜1.0質量%である。
【0060】
また、本発明で用いるポリマーが有する好ましい物性としては、液晶性を示すことが好ましい。得に、一般式(A)中のXが液晶性を示すことが好ましい。さらに、液晶性は、25℃〜250℃の間で示されることが好ましい。
ここでいう液晶性とは、結晶と液体の間に示す高粘で流動性のある状態をいい、熱的にその状態が変化するサーモトロピック液晶性と濃度による状態が変化するリオトロピック液晶性のどちらでも良いが、前者のサーモトロピック液晶性であることが好ましい。さらにサーモトロピック液晶性においてもその配列状態によって、ネマチック液晶性、スメクチック液晶性などがあり、本発明においてはどのような配列状態の液晶であっても良いが、好ましくは、ネマチック液晶性である。
【0061】
本発明の組成物に含有されるポリマーとして好ましい具体例を以下の表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
本発明の組成物は、前記一般式(A)で表される構成単位を含むポリマー以外のポリマーを含有してもよい。一般式(A)で表される基を構成単位として含まないポリマー(以下、「添加剤ポリマー」とも称する)は、例えば、平均チルト角を調整する目的(前記一般式(A)で表される基を構成単位として含有するポリマーの効果を低減し、結果、平均チルト角の低下を抑制する)、或いは組成物の表面張力や粘度を調整する等の目的で用いられる。
従って、前記一般式(A)で表される構成単位を含むポリマー以外のポリマーの構造としては、組成物に混合、溶解できるものであれば一般式(A)で表される基を構成単位として含まないこと以外には特に制限はない。
【0064】
こうした添加剤ポリマーの好ましい例としては、フッ素を含有するポリマーが挙げられ、公知の含フッ素ポリマー、含フッ素界面活性剤ポリマー等を好適に用いることができる。これらのうち、フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位を含むポリマーがより好ましく、このような構造単位の好ましい例として、前記した一般式(B)で表される基を構成単位として含むポリマーが挙げられる。
【0065】
【化24】

(一般式(B)中、Mp'は3価の連結基を表し、L'は単結合または2価の連結基を表し、Rfは少なくとも一つのフッ素原子を含有する置換基を表す。)
【0066】
さらに、添加剤ポリマーは、親水性基を含有することが好ましい。親水性基とは、水と強く相互作用することのできる有極性の基である。この親水性基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びこれらの塩構造を有する基、ポリオキシアルキレン鎖(例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン鎖)を有する基等が挙げられる。これらのうち、水酸基、アミノ基、カルボン酸基、スルホン酸機、ポリオキシアルキレン鎖を有する基がより好ましく、水酸基、カルボン酸機、ポリオキシアルキレン鎖を有する基がさらに好ましい。
【0067】
添加剤ポリマーの特に好ましい例として、下記一般式(F)で表される繰り返し単位を含むポリマーを挙げることができる。
一般式(F)
【化25】

(一般式(F)中、R81、R82はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、L81、L82はそれぞれ独立に単結合、または炭素原子数1〜20の二価の連結基を表し、Rf"は炭素原子数1〜30のフッ化アルキル基を表し、R83は水素原子または親水性基を表しA8は重合単位を表し、g、h、iはそれぞれの重合単位の質量分率を表す。)
【0068】
81、R82は、それぞれ独立にメチル基または水素原子を表す。Rf"は、一般式(B)におけるRfと同義であり、好ましい範囲も同義である。L81、L82は、それぞれ独立に単結合または炭素原子数1〜20の二価の連結基を表し、一般式(FL−1)、一般式(FL−2)、一般式(FL−3)のいずれかで表される基であることが好ましく、一般式(FL−1)で表される基であることが特に好ましい。
【0069】
【化26】

(一般式(FL−1)中、*はポリマー主鎖の炭素原子と結合する部位を表し、**はRf"またはR83で表される側鎖と結合する部位を表し、L91は炭素原子数1〜19の連結基を表し、pは0または1である。)
91は好ましくは炭素原子数1〜15の連結基を表し、より好ましくは炭素原子数1〜6の連結基を表し、飽和結合および不飽和結合のいずれを有していてもよく、直鎖構造および分岐構造のいずれを含んでもよい。また、L91は環構造を含んでいても良く、該環構造は、O、N、Sから選ばれるヘテロ原子を有していても含んでいてもよい。
【0070】
【化27】

(一般式(FL−2)中、*はポリマー主鎖の炭素原子と結合する部位を表し、**はRf"またはR83で表される側鎖と結合する部位を表し、L92は炭素原子数1〜19の連結基を表し、qは0または1である。)
92の好ましい範囲は、一般式(FL−1)におけるL91と同一である。
【0071】
【化28】

(一般式(FL−3)中、*はポリマー主鎖の炭素原子と結合する部位を表し、**はRf"またはR83で表される側鎖と結合する部位を表し、L93は炭素原子数1〜19の連結基を表し、rは0または1である。)
93の好ましい範囲は、一般式(FL−1)におけるL91と同一である。
【0072】
83は、水素原子または親水性基を表し、水素原子、または、水酸基、アミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、ポリオキシアルキレン鎖を有する基であることが好ましい。ポリオキシアルキレン鎖を有する基としては、ポリ(オリゴ)エチレンオキシ鎖、ポリ(オリゴ)プロピレンオキシ鎖、ポリ(オリゴ)ブチレンオキシ鎖が好ましい。
本発明の組成物において、一般式(F)で表される繰り返し単位は、1種類のみを構成単位として含有していてもよく、2種類以上を構成単位として含有していてもよい。これらを2種以上用いた共重合体であってもよく、末端は水酸基であっても、また置換基で置換されていてもよい。
また、該ポリアルキレンオキシ鎖の重合度は1〜10,000であることが好ましく、1〜100であることがより好ましい。
【0073】
8は重合単位を表し、他の構成単位を形成する単量体と共重合しうる如何なる単量体から形成されてよく、官能基を含まなくても含んでいても良い。具体的な例としては官能基のないものとして、オレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、3−トリメトキシシリルプロピルアクリレート、ポリエチレンオキシドをエステル部位に有するアクリレート、ポリジメチルシロキサンをエステル部位に有するアクリレートなど)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、グリシジルメタクリレート、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレート、ポリプロピレンオキシドをエステル部位に有するメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、p−メトキシスチレン等)、ビニルピリジン類(2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等)ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−ヒドロキシアクリルアミド、3−アミノプロピルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類(N−ヒドロキシメタクリルアミド、3−アミノプロピルメタクリルアミド等)、アクリロニトリル、カルボキシル基含有ビニルモノマー類(アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等)等を挙げることができ、これらのうちでもアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、スチレン誘導体、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、カルボキシル基含有ビニルモノマー類が好ましく、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類が特に好ましい。
【0074】
g、h、iはそれぞれの重合単位の質量分率(%)を表し、20≦g≦100、0≦h≦80、0≦i≦80であることが好ましく、20≦g≦90、10≦h≦80、0≦i≦70であることがより好ましく、30≦g≦90、10≦h≦70、0≦i≦50であることがさらに好ましい。
【0075】
また、これらの共重合体は、各構成単位が不規則的に導入されたランダム共重合体であっても、規則的に導入されたブロック共重合体であってもよく、ブロック共重合体である場合の各構成単位は、如何なる導入順序で合成されたものであってもよい。また、各構成単位は、それぞれ、1種類のみでもよく、2種類以上が含まれていてもよい。
【0076】
添加剤ポリマーは様々な効果を果たすために用いることができ、それぞれの場合において最適な組成を前記した範囲より選択することができる。以下に代表的な例を示して、それぞれの組成の選択すべき範囲を示すが、添加剤ポリマーの用途はこれらの例に限定されるものではない。
【0077】
添加剤ポリマーは平均チルト角を調整する目的で用いることができる。例えば、一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマーと添加剤ポリマーの両方を用いた場合、添加剤ポリマーを用いなかった場合に比べ平均チルト角を高い値にすることができる。この場合、上記gの値が重要となる。すなわちgの値が、一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマーにおけるフルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位(好ましくは一般式(B)で表される構造)の占める質量分率に対し、同程度とすることが好ましい。フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位(好ましくは一般式(B)で表される構造)の占める質量分率をg'とし、
Δg=g-g'
とした場合、0≦|Δg|≦10であることが好ましく、0≦|Δg|≦5であることが
より好ましい。
【0078】
一方、平均チルト角に影響を与えることなく、添加剤ポリマーを用いる必要性がある場合、例えば、組成物の表面張力を低下させ濡れ性を向上する目的で用いる場合には、gの値が一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマーにおけるフルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位(好ましくは一般式(B)で表される構造)の占める質量分率に対し、高いことが好ましい。この場合には、前記したΔgは10より大きいことが好ましく、より好ましくは、10<Δg≦95であり、更に好ましくは15≦Δg≦90である。これは、第一によりフッ素含率の高いポリマーを添加することで組成物全体の表面張力を低下することが有用であるためであり、第二に平均チルト角に影響を与える一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマーと添加剤ポリマーとを分離させること(よりフッ素含率の高い添加剤ポリマーが空気界面方向に偏析すること)で添加剤ポリマーを加えたことによるチルト角の変化を抑制することができるためである。
【0079】
添加剤ポリマーの分子量範囲は、重量平均分子量(Mw)で、好ましくは1000〜100万であり、より好ましくは2000〜20万であり、さらに好ましくは3000〜10万である。また、本発明で用いるポリマーの分子量分布は、1〜4であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
【0080】
本発明の組成物に含有していてもよい一般式(F)で表される化合物として好ましい具体例を以下に示すが、本発明は以下に限定されるものではない。
【0081】
【化29】

【0082】
【化30】

【化31】

【0083】
【化32】

【0084】
本発明で用いるポリマーの合成は、既知の方法を適用して行うことができる。本発明で用いるポリマーは、付加、縮合および置換反応などのいずれかまたはこれを組み合わせて合成することができる。特に制限はないが、本発明で用いるポリマーがエチレン性の繰り返し単位を含有する場合は、該繰り返し単位に相当するエチレン性不飽和化合物のラジカル重合反応を利用して合成するのが簡便で好ましい。
【0085】
液晶性化合物
本発明で用いられる液晶性化合物は特に定めるものではないが、ディスコティック液晶性を示す化合物であることが好ましく、ディスコティックネマチック相を示す化合物であることがより好ましい。
本発明で用いられる液晶性化合物としては、一般式(DI)で表されるものが例示される。
【0086】
[一般式(DI)で表される化合物]
本発明に用いられる一般式(DI)表される化合物は、ディスコティック液晶性を示すことが好ましく、特に、ディスコティックネマチック相を示すことが好ましい。
【化33】

【0087】
一般式(DI)中、Y11、Y12およびY13はそれぞれ独立に、メチンまたは窒素原子を表す。Y11、Y12およびY13がそれぞれメチンの場合、メチンの水素原子は置換基によって置換されていてもよい。メチンが有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子およびシアノ基を挙げることができる。これらの中では、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子およびシアノ基がより好ましく、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素原子数2〜12アルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜12アシルオキシ基、ハロゲン原子およびシアノ基がさらに好ましい。
【0088】
11、Y12、Y13は、すべてメチンであることが好ましく、またメチンは無置換であることが好ましい。
【0089】
一般式(DI)中、L1、L2およびL3はそれぞれ独立に、単結合または2価の連結基である。前記2価の連結基は、−O−、−S−、−C(=O)−、−NR7−、−CH=CH−、−C≡C−、2価の環状基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基であることが好ましい。上記R7は炭素原子数が1〜7のアルキル基または水素原子であり、炭素原子数1〜4のアルキル基または水素原子であることがより好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0090】
1、L2、L3で表される2価の環状基は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがより好ましく、6員環であることがさらに好ましい。環状基に含まれる環は、縮合環であってもよい。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、および複素環のいずれでもよい。芳香族環の例には、ベンゼン環およびナフタレン環が含まれる。脂肪族環の例には、シクロヘキサン環が含まれる。複素環の例には、ピリジン環およびピリミジン環が含まれる。環状基は、芳香族環および複素環を含んでいるのが好ましい。
【0091】
前記2価の環状基のうち、ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレン基が好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,5−ジイル基およびナフタレン−2,6−ジイル基が好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。
【0092】
1、L2またはL3で表される前記2価の環状基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数が1〜16のアルキル基、炭素原子数が2〜16のアルケニル基、炭素原子数が2〜16のアルキニル基、炭素原子数が1〜16のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素原子数が1〜16のアルコキシ基、炭素原子数が2〜16のアシル基、炭素原子数が1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数が2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数が2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数が2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数が2〜16のアシルアミノ基が含まれる。
【0093】
1、L2およびL3としては、単結合、*−O−CO−、*−CO−O−、*−CH=CH−、*−C≡C−、*−2価の環状基−、*−O−CO−2価の環状基−、*−CO−O−2価の環状基−、*−CH=CH−2価の環状基−、*−C≡C−2価の環状基−、*−2価の環状基−O−CO−、*−2価の環状基−CO−O−、*−2価の環状基−CH=CH−または*−2価の環状基−C≡C−が好ましい。特に、単結合、*−CH=CH−、*−C≡C−、*−CH=CH−2価の環状基−または*−C≡C−2価の環状基−がより好ましく、単結合がさらに好ましい。ここで、*は一般式(I)中のY11、Y12およびY13を含む6員環に結合する位置を表す。
【0094】
一般式(DI)中、H1、H2およびH3はそれぞれ独立に、下記一般式(DI−A)もしくは下記一般式(DI−B)を表す。
【0095】
【化34】

【0096】
一般式(DI−A)中、YA1およびYA2はそれぞれ独立に、メチンまたは窒素原子を表す。YA1およびYA2は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、双方が窒素原子であることがより好ましい。XAは酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表す。XAは、酸素原子であることが好ましい。*はL1〜L3と結合する位置を表し、**はR1〜R3と結合する位置を表す。
【0097】
【化35】

【0098】
一般式(DI−B)中、YB1およびYB2は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。YB1およびYB2は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、双方が窒素原子であることがより好ましい。XBは酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表す。XBは、酸素原子であることが好ましい。*はL1〜L3と結合する位置を表し、**はR1〜R3と結合する位置を表す。
【0099】
1、R2、R3は、それぞれ独立に下記一般式(DI−R)を表す。
一般式(DI−R)
*−(−L21−F1n1−L22−L23−Q1
【0100】
一般式(DI−R)中、*は一般式(DI)中のH1、H2またはH3に結合する位置を表す。F1は少なくとも1種類の環状構造を有する2価の連結基を表す。L21は単結合または2価の連結基を表す。L21が2価の連結基の場合、−O−、−S−、−C(=O)−、−NR7−、−CH=CH−、−C≡C−、およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基であることが好ましい。上記R7は炭素原子数が1〜7のアルキル基または水素原子であり、炭素原子数1〜4のアルキル基または水素原子であることがより好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0101】
21は単結合、**−O−CO−、**−CO−O−、**−CH=CH−または**−C≡C−(ここで、**は一般式(DI−R)中のL21の左側を表す)が好ましい。特に、単結合が好ましい。
【0102】
一般式(DI−R)中のF1は少なくとも1種類の環状構造を有する2価の環状連結基を表す。環状構造は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがより好ましく、6員環であることがさらに好ましい。環状構造は、縮合環であってもよい。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、および複素環のいずれでもよい。芳香族環の例には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環が含まれる。脂肪族環の例には、シクロヘキサン環が含まれる。複素環の例には、ピリジン環およびピリミジン環が含まれる。
【0103】
1のうち、ベンゼン環を有するものとしては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基が好ましい。ナフタレン環を有するものとしては、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン−1,6−ジイル基、ナフタレン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイルナフタレン−2,7−ジイル基が好ましい。シクロヘキサン環を有するものとしては1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。ピリジン環を有するものとしてはピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。ピリミジン環を有するものとしては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。F1は、特に、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレンナフタレン−2,6−ジイル基および1,4−シクロへキシレン基が好ましい。
【0104】
1は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数1〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。該置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲン原子で置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲン原子で置換されたアルキル基がより好ましく、特に、ハロゲン原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0105】
n1は0〜4整数を表す。n1としては、1〜3の整数が好ましく、1または2が好ましい。なお、n1が0の場合は、式(DI−R)中のL22が直接、前記一般式(D1)中のH1〜H3と結合する。n1が2以上の場合、それぞれの−L21−F1は同一でも異なっていてもよい。
【0106】
22は、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C≡C−を表す。好ましくは、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CH2−、−CH=CH−または−C≡C−であり、より好ましくは、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−または−CH2−である。
ここで、上記のうち水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。他の置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が含まれる。特に、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましい。
【0107】
23は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−並びにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基である。ここで、−NH−、−CH2−、−CH=CH−の水素原子は、他の置換基に置き換えられていてもよい。他の置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が含まれる。特に、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましい。これらの置換基に置き換えられることにより、前記一般式(DI)で表される化合物の溶媒に対する溶解性を向上させることができ、容易に、塗布液として本発明の組成物を調製することができる。
【0108】
23は、−O−、−C(=O)−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−並びにこれらの組み合わせからなる群から選ばれる連結基であることが好ましい。L23は、炭素原子を1〜20個含有することが好ましく、炭素原子を2〜14個を含有することがより好ましい。さらに、L23は−CH2−を1〜16個含有することが好ましく、−CH2−を2〜12個含有することがより好ましい。
【0109】
1は重合性基または水素原子である。一般式(DI)で表される化合物を、光学補償フィルムのような位相差の大きさが熱により変化しないことを必要とする光学フィルム等の作製に用いる場合には、Q1は重合性基であることが好ましい。重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。言い換えると、重合性基は、付加重合反応または縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。以下に重合性基の例を示す。
【0110】
【化36】

【0111】
さらに、重合性基は付加重合反応が可能な官能基であることが特に好ましい。そのような重合性基としては、重合性エチレン性不飽和基または開環重合性基が好ましい。
【0112】
重合性エチレン性不飽和基の例としては、下記の式(M−1)〜(M−6)が挙げられる。
【0113】
【化37】

【0114】
式(M−3)、式(M−4)中、Rは水素原子またはアルキル基を表す。Rとしては、水素原子またはメチル基が好ましい。上記(M−1)〜(M−6)の中でも、(M−1)または(M−2)が好ましく、(M−1)がより好ましい。
【0115】
開環重合性基として好ましいのは、環状エーテル基であり、中でもエポキシ基またはオキセタニル基がより好ましく、エポキシ基が最も好ましい。
【0116】
さらに本発明に用いられるディスコティック液晶性化合物として下記一般式(DII)で表される液晶性化合物または下記一般式(DIII)で表される液晶性化合物を用いるのがより好ましい。
【0117】
【化38】

【0118】
一般式(DII)中、Y31、Y32、Y33はそれぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。Y31、Y32およびY33は各々、一般式(DI)中のY11、Y12およびY13の定義とそれぞれ同一であり、好ましい範囲も同義である。
【0119】
31、R32、R33はそれぞれ独立に一般式(DII−R)で表される。
【化39】

【0120】
一般式(DII−R)中、A31、A32は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。A31およびA32としては、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、双方が窒素原子であることが最も好ましい。
3は酸素原子、硫黄原子、メチレン、またはイミノを表す。X3としては、酸素原子であることが好ましい。
【0121】
一般式(DII−R)中、F2は6員環状構造を有する2価の環状連結基を表す。F2に含まれる6員環は、縮合環であってもよい。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。F2に含まれる6員環は、芳香族環、脂肪族環および複素環のいずれでもよい。芳香族環の例には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環およびフェナントレン環が含まれる。脂肪族環の例には、シクロヘキサン環が含まれる。複素環の例には、ピリジン環およびピリミジン環が含まれる。
【0122】
2価の環状基のうち、ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレン基および1,3−フェニレン基が好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン−1,6−ジイル基、ナフタレン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基およびナフタレン−2,7−ジイル基が好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。2価の環状基としては、特に、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基および1,4−シクロへキシレン基が好ましい。
【0123】
2は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。2価の環状基の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲン原子で置換されたアルキル基が好ましく、さらに、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲン原子で置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0124】
n3は、1〜3整数を表す。n3としては、1または2が好ましい。n3が2以上の場合、それぞれのF2は同一でも異なっていてもよい。
【0125】
31は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。L31の好ましい範囲は、一般式(DI−R)中のL22と同一である。
【0126】
32は−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。L32の好ましい範囲は、一般式(DI−R)中のL23と同一である。
【0127】
3は重合性基または水素原子を表し、好ましい範囲は、一般式(DI−R)中のQ1と同一である。
【0128】
次に、一般式(DIII)で表される化合物の詳細を記す。
【0129】
【化40】

【0130】
一般式(DIII)中、Y41、Y42およびY43は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、Y41、Y42およびY43がそれぞれメチンの場合、メチンが有する水素原子は、置換基によって置換されていてもよい。メチンが有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子およびシアノ基を好ましい例として挙げることができる。これらの置換基の中では、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子およびシアノ基がさらに好ましく、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素原子数2〜12アルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜12アシルオキシ基、ハロゲン原子およびシアノ基が特に好ましい。
41、Y42およびY43は、いずれもメチンであることがより好ましく、メチンは無置換であることがより好ましい。
【0131】
41、R42およびR43は、それぞれ独立に下記一般式(DIII−A)、または下記一般式(DIII−B)、または下記一般式(DIII−C)を表す。
波長分散性の小さい位相差板等を作製する場合は、R41、R42およびR43は、それぞれ、一般式(DIII−A)または一般式(DIII−C)で表されるものが好ましく、一般式(DIII−A)で表されるものがより好ましい。
【0132】
【化41】

【0133】
一般式(DIII−A)中、A41、A42、A43、A44、A45、A46は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。A41およびA42は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、双方が窒素原子であることがより好ましい。A43、A44、A45およびA46は、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、全てメチンであることがより好ましい。A43、A44、A45およびA46がそれぞれメチンの場合、メチンが有する水素原子は置換基によって置換されていてもよい。メチンが有する置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
41は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0134】
【化42】

【0135】
一般式(DIII−B)中、A51、A52、A53、A54、A55およびA56はそれぞれ独立に、メチンまたは窒素原子を表す。A51およびA52は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、双方が窒素原子であることがより好ましい。A53、A54、A55およびA56は、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、全てメチンであることがより好ましい。A53、A54、A55およびA56がそれぞれメチンの場合、メチンが有する水素原子は置換基によって置換されていてもよい。メチンが有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲン原子で置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲン原子で置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
52は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0136】
【化43】

【0137】
一般式(DIII−C)中、A61、A62、A63、A64、A65およびA66はそれぞれ独立に、メチンまたは窒素原子を表す。A61およびA62は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、双方が窒素原子であることがより好ましい。A63、A64、A65およびA66は、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、全てメチンであることがより好ましい。A63、A64、A65およびA36がそれぞれメチンの場合、該メチンが有する水素原子は置換基によって置換されていてもよい。メチンが有していてもよい置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
63は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0138】
一般式(DIII−A)中のL41、一般式(DIII−B)中のL51、一般式(DIII−C)中のL61はそれぞれ独立して、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C≡C−を表す。好ましくは、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−であり、より好ましくは、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−または−CH2−である。上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。
このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0139】
一般式(DIII−A)中のL42、一般式(DIII−B)中のL52、一般式(DIII−C)中のL62はそれぞれ独立して、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表す。ここで、−NH−、−CH2−、−CH=CH−の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0140】
42、L52およびL62はそれぞれ独立して、−O−、−C(=O)−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基であることが好ましい。L42、L52、L62はそれぞれ独立して、炭素原子を1〜20個含有することが好ましく、炭素原子を2〜14個含有することがより好ましい。さらに、L42、L52、L62はそれぞれ独立して、−CH2−を1〜16個含有することが好ましく、−CH2−を2〜12個含有することがさらに好ましい。
【0141】
一般式(DIII−A)中のQ4、一般式(DIII−B)中のQ5および一般式(DIII−C)中のQ6は、それぞれ独立して、重合性基または水素原子を表す。これらの好ましい範囲は、一般式(DI−R)中のQ1と同一である。
【0142】
以下に、一般式(DI)、一般式(DII)および一般式(DIII)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0143】
【化44】

【0144】
【化45】

【0145】
【化46】

【0146】
【化47】

【0147】
以下一般式(DIII)で表される化合物を示す。
【0148】
【化48】

【0149】
本発明の液晶性化合物が発現する液晶相としては、カラムナー相およびディスコティックネマチック相(ND相)を挙げることができる。これらの液晶相の中では、良好なモノドメイン性を示すディスコティックネマチック相(ND相)が好ましい。
【0150】
前記一般式(DI)で表される化合物は、液晶相を20℃〜300℃の範囲で発現することが好ましく、40℃〜280℃の範囲で発現することがより好ましく、60℃〜250℃の範囲で発現することがさらに好ましい。ここで20℃〜300℃で液晶相を発現するとは、液晶温度範囲が20℃をまたぐ場合(具体的に例えば、10℃〜22℃)や、300℃をまたぐ場合(具体的に例えば、298℃〜310℃)も含む。40℃〜280℃と60℃〜250℃に関しても同様である。
【0151】
本発明に用いられる一般式(DI)で表される化合物の合成は、既知の方法を適用して合成することができる。
【0152】
本発明で用いられる液晶性化合物の粘度は、好ましくは、80〜150℃において、500〜1000mPa・sであり、より好ましくは、同温度において、(600〜900 )mPa・sである。
【0153】
[位相差板]
本発明の位相差板は、本発明の組成物からなる光学異方性層を有することを特徴とする。本発明の位相差板の一態様は、支持体と、該支持体上に形成された配向膜と、該配向膜によって配向制御され、且つその配向状態に固定された本発明の組成物からなる光学異方性層とを有する態様である。
以下に、光学異方性層、配向膜および支持体について順次詳細に説明する。
【0154】
(1)光学異方性層
本発明の光学異方性層は、前記一般式(DI)で表される液晶性化合物および一般式(A)で表される構造を含有するポリマーを含む組成物からなる。前記光学異方性層は、この他にも所望により重合開始剤や他の添加剤を含む。これらを含む塗布液を、例えば支持体上に形成された本発明の配向膜の表面に塗布し、液晶性化合物を配向、固定化することで形成することができる。液晶性化合物を配向および固定化した後は、支持体を剥離してもよい。
【0155】
(1)−a 形成方法
前記光学異方性層は、前記一般式(DI)で表される液晶性化合物やポリマーを可溶できる溶媒に溶解して調製した塗布液を、支持体上に形成され、且つ、配向性が付与された配向膜上に塗布することによって作製することができる。また、可能であれば蒸着による形成でも良いが、塗布による形成が好適に用いられる。塗布方法としてはカーテンコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、印刷コーティング法、スプレーコーティング法、スロットコーティング法、ロールコーティング法、スライドコーテティング法、ブレードコーティング法、グラビアコーティング法、ワイヤーバー法等の公知の塗布方法が挙げられる。次いで、25℃〜130℃において用いた溶媒を乾燥すると同時に、前記液晶性化合物の分子を配向させ、さらに、紫外線照射等によって固定化することによって、光学異方性層が形成される。重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、100mJ/cm2〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。このようにして形成された光学異方性層の厚さは、光学補償等の用途によって、最適なレターデーションの値によって異なるが、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましい。
【0156】
前記液晶性化合物の分子は、光学異方性層中では、実質的に均一に配向していることが好ましく、実質的に均一に配向している状態で固定されていることがさらに好ましく、重合反応により液晶性化合物が固定されていることが最も好ましい。
【0157】
前記光学異方性層を占める、一般式(DI)で表される化合物または一般式(DI)で表される化合物から得られる重合物の割合は、10〜100質量%であることが好ましく、30〜99質量%であることがさらに好ましく、50〜99質量%であることが最も好ましい。
【0158】
(1)−b 光学異方性層の形成に用いられるその他の材料
液晶性化合物は、配向状態を維持して固定することが好ましく、固定化は、液晶性化合物に導入した重合性基の重合反応によることが好ましい。そのためには、前記塗布液中には、重合開始剤を含有させるのが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応、および電子線を用いるEB硬化が含まれる。このうち、光重合反応(光硬化)およびEB硬化が好ましい。光の作用によりラジカルを発生させる重合開始剤の例としては、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物等が好ましい。アセトフェノン系化合物としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシメチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4'−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、p−ジメチルアミノアセトン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−アジドベンザルアセトフェノン等が挙げられる。ベンジル系化合物としては、例えば、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。ベンゾインエーテル系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラーズケトン、4,4'−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン等が挙げられる。チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。このような芳香族ケトン類からなる感光性ラジカル重合開始剤の中でも、アセトフェノン系化合物およびベンジル系化合物が、硬化特性、保存安定性、臭気等の面で特に好ましい。これらの芳香族ケトン類からなる感光性ラジカル重合開始剤は、1種または2種以上のものを所望の性能に応じて配合して使用することができる。また、感度を高める目的で重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、およびチオキサントン等が含まれる。
【0159】
光重合開始剤は複数種を組み合わせてもよく、使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性化合物の重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。
【0160】
光学異方性層形成用の塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒の例には、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン)、炭化水素(例えば、トルエン、ヘキサン)アルキルハライド(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)などが含まれる。この中でアルキルハライド、ケトンが好ましい。2種類以上の有機溶剤を併用してもよい。
【0161】
本発明の組成物中の液晶性化合物およびその他の添加剤の固形分濃度としては、0.1質量%〜60質量%が好ましく、0.5質量%〜50質量%がより好ましく、2質量%〜40質量%がさらに好ましい。
また、本発明の組成物の粘度は、0.01mPa・s〜100mPa・sが好ましく、0.1mPa・s〜50mPa・sがより好ましい。
【0162】
(1)−c 配向状態
本発明の組成物により形成されてなる光学異方性層は、TN(Twisted Nematic)のような液晶表示モードの位相差板として使用する場合においては、ディスコティックネマチック相がハイブリッド配向した状態を固定化することが好ましい。ここで、ハイブリッド配向とは、膜厚方向で液晶性化合物のチルト角が連続的に変化している状態を表す。
【0163】
液晶性化合物は支持体上(さらに好ましくは配向膜上)に塗布され後、例えば加熱することで液晶相を発現するため、液晶性化合物は支持体側の界面では支持体面または塗布膜界面(配向膜を設けた場合には配向膜界面)のチルト角(例えば、ディスコティック液晶性化合物を用いる場合、支持体面の方向と液晶性化合物の円盤面方向のなす角)で配向し、空気との界面では空気界面のチルト角で配向することとなる。
本発明において、光学異方性層の平均チルト角(例えば、支持体面の方向とディスコティック液晶性化合物の円盤面方向のなす角)は、10〜40°が好ましく、25〜35°がより好ましい。
【0164】
(2)配向膜
本発明の位相差板の作製には配向膜を用いてもよい。配向膜は、化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
【0165】
配向膜に使用するポリマーは、原則として、液晶性化合物を配向させる機能のある分子構造を有する。本発明では、液晶性化合物を配向させる機能に加えて、架橋性官能基(例えば、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、または、液晶性化合物を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーまたは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができし、これらの組み合わせを複数使用することができる。
【0166】
ポリマーの例には、例えば特開平8−338913号公報の段落番号[0022]記載のメタクリレート系重合体、スチレン系重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがより好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。
【0167】
ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。
【0168】
液晶性化合物を配向させる機能を有する側鎖は、一般に疎水性基を官能基として有する。具体的な官能基の種類は、液晶性化合物の種類および必要とする配向状態に応じて決定する。
例えば、変性ポリビニルアルコールの変性基としては、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。変性基の例には、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素原子数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ基、ジアルコキシ基、モノアルコキシ基)等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば、特開2000−155216号公報の段落番号[0022]〜[0145]、特開2002−62426号公報の段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
【0169】
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性化合物を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、位相差板の強度を著しく改善することができる。
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報の段落番号[0080]〜[0100]記載のもの等が挙げられる。
【0170】
配向膜ポリマーは、上記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。
架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。2種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報の段落番号[0023]〜[0024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
【0171】
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用、または、高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。
【0172】
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である上記ポリマー、架橋剤を含む支持体上に塗布した後、加熱乾燥して架橋させ、必要であればラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、支持体上に塗布した後、任意の時期に行なって良い。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例えば、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で、水:メタノールが0より大きく99以下:100未満1以上が好ましく、0より大きく91以下:100未満9以上であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、さらには光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少させることができる。
【0173】
配向膜形成時に利用する塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。加熱乾燥は、例えば、20℃〜110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、80℃〜100℃がより好ましい。乾燥時間は、例えば、1分〜36時間で行なうことができるが、好ましくは1分〜30分である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5が好ましく、5がより好ましい。
【0174】
配向膜は、支持体上または上記下塗層上に設けられる。配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、必要であれば表面をラビング処理することにより得ることができる。
【0175】
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0176】
配向膜上で液晶性化合物を配向させた後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、あるいは、架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させてもよい。配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。前記配向膜用ポリマーを溶媒に溶解して調製した塗布液を、支持体表面に塗布し、25℃〜140℃で塗布液中に含まれる溶媒を乾燥除去することで作製することができる。また、可能であれば蒸着によって形成することもできるが、塗布による形成がより好ましい。このようにして形成された配向膜の厚さは、0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましい。
【0177】
前記配向膜形成用塗布液の調製に用いられる溶媒としては、例えば、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等)、アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド等)、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル等が挙げられ、好ましくは、水、アルコール類およびこれらの混合溶媒である。前記塗布液中の配向膜用ポリマーの濃度は、0.1質量%〜40質量%であるのが好ましく、0.5質量%〜20質量%であるのがより好ましく、2質量%〜10質量%であるのがさらに好ましい。前記塗布液の粘度は、0.1cp〜100cpであるのが好ましく、0.5cp〜50cpであるのがより好ましい。
【0178】
前記塗布液中には、前記配向膜用ポリマー以外にも、適宜添加剤を添加してもよい。例えば、前記配向膜用ポリマーが水溶性の溶媒に溶解し難い場合は、塩基性化合物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、トリエチルアミンなど)や、酸性化合物(例えば、塩酸、酢酸、コハク酸等)を添加して溶解を促進してもよい。
上記方法によって形成された配向膜は、その表面がラビング処理され、液晶配向性が付与されているのが好ましい。ラビング処理としてはポリマー塗布層の表面を、紙や布で一定方向(通常は長手方向)に、数回こすることにより実施することができる。また、ラビング以外の方法としては、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により液晶配向性を付与する事もできる。液晶配向性を付与する方法としては、ポリマーのラビング処理により形成する配向膜が特に好ましい。
【0179】
(3)支持体
位相差板は、支持体を有していてもよく、該支持体は、透明支持体であるのが好ましい。前記支持体は、主に、光学的等方性で、光透過率が80%以上であれば、特に材料の制限はないが、ポリマーフィルムが好ましい。ポリマーの具体例として、セルロースエステル類(例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート)、ノルボルネン系ポリマー、ポリ(メタ)アクリレートエステル類のフィルムなどを挙げることができ、多くの市販のポリマーを好適に用いることが可能である。このうち、光学性能の観点からセルロースエステル類が好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルがさらに好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下脂肪酸で、炭素原子数は、2、3、4であることが好ましい。具体的には、セルロースアセテート、セルロースプロピオネートまたはセルロースブチレートがあげられる。この中でも、セルローストリアセテートが特に好ましい。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いてもよい。また、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても国際公開WO00/26705号パンフレットに記載の分子を修飾することで該発現性を低下させたものを用いることもできる。
【0180】
以下、支持体として好ましく使用されるセルロースエステルについて詳述する。
セルロースエステルとしては、酢化度が55.0〜62.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。特に酢化度が57.0〜62.0%であることが好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。セルロースエステルの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。また、本発明に使用するセルロースエステルは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜1.7であることが好ましく、1.3〜1.65であることがより好ましく、1.4〜1.6であることがさらに好ましい。
セルロースエステルでは、セルロースの2位、3位、6位の水酸基が全体の置換度の1/3ずつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。セルロースの6位水酸基の置換度が、2位、3位に比べて多いほうが好ましい。全体の置換度に対して6位の水酸基が30%〜40%で、アシル基で置換されていることが好ましい。アシル基で置換されている率は、31%以上であることが好ましく、32%以上であることがより好ましい。6位の置換度は、0.88以上であることが好ましい。6位水酸基は、アセチル基以外に炭素原子数3以上のアシル基(例えば、プロピオニル基、ブチリル基、バレロイル基、ベンゾイル基、アクリロイル基)で置換されていてもよい。各位置の置換度の測定は、NMRによって求めることができる。6位水酸基の置換度が高いセルロースエステルは、特開平11−5851号公報の段落番号0043〜0044に記載の合成例1、段落番号0048〜0049に記載の合成例2、段落番号0051〜0052に記載の合成例3の方法を参照して合成することができる。
【0181】
支持体として用いるポリマーフィルム、特に、セルロースアセテートフィルムは、レターデーション値を調整するために、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用してもよい。このようなレターデーション上昇剤を使用する場合、レターデーション上昇剤は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用することが好ましく、0.05〜15質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。さらに、レターデーション上昇剤として、2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。
ここでいう芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環の他、芳香族性ヘテロ環を含む趣旨である。
【0182】
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましく、ベンゼン環および1,3,5−トリアジン環がより好ましい。芳香族化合物は、少なくとも一つの1,3,5−トリアジン環を有することがさらに好ましい。
【0183】
芳香族化合物が有する芳香族環の数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが特に好ましい。二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。このようなレターデーション上昇剤については国際公開WO01/88574号パンフレット、国際公開WO00/2619号パンフレット、特開2000−111914号公報、特開2000−275434号公報、特開2002−363343号公報等に記載されている。
【0184】
セルロースアセテートフィルムは、調製されたセルロースアセテート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法により製造することが好ましい。ドープには、前記のレターデーション上昇剤を添加してもよい。ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許第2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許第640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号公報、特公昭49−5614号公報、特開昭60−176834号公報、特開昭60−203430号公報、特開昭62−115035号の各公報に記載がある。ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100〜160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0185】
ドープは、原料フレークをハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、エステル類(蟻酸メチル、酢酸メチル等)、エーテル類(ジオキサン、ジオキソラン、ジエチルエーテル等)等の溶剤にて溶解する。セルロースアシレートを溶解するための溶剤としては、ジクロロメタンが代表的である。しかし、地球環境や作業環境の観点では、溶剤はジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないことが好ましい。「実質的に含まない」とは、有機溶剤中のハロゲン化炭化水素の割合が5質量%未満(好ましくは2質量%未満)であることを意味する。
ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないセルロースアシレートフィルムおよびその製造法については発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、以下公開技報2001−1745号と略す)に記載されている。
【0186】
調製したセルロースアセテート溶液(ドープ)を用いて、ドープを2層以上流延することによりフィルム化することもできる。ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10〜40%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。複数のセルロースアセテート溶液を流延する場合、支持体の進行方向に間隔をおいて設けた複数の流延口からセルロースアセテートを含む溶液をそれぞれ流延させて、それらを積層させながらフィルムを作製してもよい。例えば、特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および特開平11−198285号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、2つの流延口からセルロースアセテート溶液を流延することによりフィルム化してもよい。例えば、特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および特開平6−134933号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、特開昭56−162617号公報に記載の、高粘度セルロースアセテート溶液の流れを低粘度のセルロースアセテート溶液で包み込み、高粘度および低粘度のセルロースアセテート溶液を同時に押出すセルロースアセテートフィルムの流延方法を用いてもよい。
【0187】
セルロースアセテートフィルムは、さらに延伸処理によりレターデーション値を調整することができる。延伸倍率は、0〜100%の範囲にあることが好ましい。本発明で用いるセルロースアセテートフィルムを延伸する場合には、テンター延伸が好ましく使用され、遅相軸を高精度に制御するために、左右のテンタークリップ速度、離脱タイミング等の差をできる限り小さくすることが好ましい。
【0188】
セルロースエステルフィルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジ−2−エチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、o−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびo−アセチルクエン酸、トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。可塑剤の添加量は、セルロースエステルの量の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることが最も好ましい。
【0189】
セルロースエステルフィルムには、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン類)や紫外線防止剤を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、特開平5−1907073号、特開平5−194789号、特開平5−271471号、特開平6−107854号の各公報に記載がある。
劣化防止剤の添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%であることがより好ましい。添加量を0.01質量%以上とすることにより、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1質量%を越えると、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることができる。紫外線防止剤については、特開平7−11056号公報に記載がある。
【0190】
セルロースアセテートフィルムは、表面処理を施すことが好ましい。具体的方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理または紫外線照射処理が挙げられる。また、特開平7−333433号公報に記載のように、下塗り層を設けることも好ましく利用される。フィルムの平面性を保持する観点から、これら処理においてセルロースアセテートフィルムの温度をTg(ガラス転移温度)以下、具体的には150℃以下とすることが好ましい。
【0191】
セルロースアセテートフィルムの表面処理は、配向膜などとの接着性の観点から、酸処理またはアルカリ処理、すなわちセルロースアセテートに対するケン化処理を実施することが特に好ましい。
以下、アルカリ鹸化処理を例に、具体的に説明する。
アルカリ鹸化処理は、フィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられる。水酸化イオンの規定濃度は、0.1〜3.0Nの範囲にあることが好ましく、0.5〜2.0Nの範囲にあることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温(例えば、25℃)〜90℃の範囲にあることが好ましく、40〜70℃の範囲にあることがさらに好ましい。
【0192】
また、セルロースアセテートフィルムの表面エネルギーは、55mN/m以上であることが好ましく、60〜75mN/mの範囲にあることがさらに好ましい。
セルロースアセテートフィルムの厚さは、5〜500μmの範囲が好ましく、20〜250μmの範囲がより好ましく、30〜180μmの範囲がさらに好ましく、30〜110μmの範囲が特に好ましい。
【0193】
位相差板は、偏光膜と組み合わせて楕円偏光板の用途に供することができる。さらに、透過型、反射型、および半透過型液晶表示装置に、偏光膜と組み合わせて適用することにより、視野角の拡大に寄与する。以下に、位相差板を利用した楕円偏光板および液晶表示装置について説明する。
【0194】
[楕円偏光板]
位相差板と偏光膜を積層することによって楕円偏光板を作製することができる。位相差板を利用することにより、液晶表示装置の視野角を拡大し得る楕円偏光板を提供することができる。前記偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光膜の偏光軸は、フィルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。
【0195】
偏光膜は、位相差板の光学異方性層側に積層する。偏光膜の位相差板を積層した側と反対側の面に保護膜を形成することが好ましい。保護膜は、光透過率が80%以上の透明保護膜が好ましい。透明保護膜としては、一般にセルロースエステルフィルム、好ましくはトリアセチルセルロースフィルムが用いられる。セルロースエステルフィルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。保護膜の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。
【0196】
[液晶表示装置]
本発明の位相差板は、液晶表示装置の視野角の拡大に寄与する。液晶表示装置は、通常、液晶セル、偏光素子および位相差板(光学補償シート)を有する。前記偏光素子は、一般に偏光膜と保護膜からなり、偏光膜と保護膜については、上記楕円偏光で説明したものを用いることができる。TNモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、特開平6−214116号公報、米国特許第5583679号、同5646703号、ドイツ特許公報第3911620A1号の各明細書に記載がある。また、IPSモードまたはFDCモードの液晶セル用位相差板は、特開平10−54982号公報に記載がある。さらに、OCBモードまたはHANモードの液晶セル用位相差板は、米国特許第5805253号明細書および国際公開WO96/37804号パンフレットに記載がある。さらにまた、STNモードの液晶セル用位相差板は、特開平9−26572号公報に記載がある。そして、VAモードの液晶セル用位相差板は、特許登録第2866372号公報に記載がある。
【0197】
本発明において、前記記載の公報を参考にして各種のモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)を作製することができる。位相差板は、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−PDane Switching)、FDC(FerroeDectric Diquid CrystaD)、OCB(OpticaDDy Compensatory Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(VerticaDDy ADigned)およびHAN(Hybrid ADigned Nematic)モードのような様々な表示モードの液晶表示装置に用いることができる。位相差板は、TN(Twisted Nematic)、OCB(OpticaDDy Compensatory Bend)モードの液晶表示装置の光学補償に特に効果がある。
【実施例】
【0198】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0199】
合成例1[D3−10およびD3−10の合成]
下記スキームに従って合成した。
【0200】
【化49】

【0201】
(D3−10Aの合成)
3−シアノ安息香酸クロライド2.5gをテトラヒドロフラン(THF)20mlに溶解させ、3−クロロ−1−プロパノール1.3ml、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)3.0mlを添加後、室温で1時間撹拌した。反応液に水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を減圧濃縮した。残渣をメタノール(MeOH)100mlに溶解させ、50%ヒドロキシルアミン溶液2.8mlを添加後、40℃で1時間撹拌した。冷却後、反応液に水を加え、析出した結晶を濾別、乾燥し、D3−10Aを3.4g得た。
【0202】
(D3−10Bの合成)
3.4gのD3−10Aをジメチルアセトアミド(DMAc)10mlに溶解させ、ピリジン1.2ml、トリメシン酸クロライド1.2gを添加後、120℃で1時間撹拌した。冷却後、メタノールを添加し、析出した結晶を濾取、乾燥し、D3−10Bを3.9g得た。
【0203】
(D3−10の合成)
D3−10B3.9gをジメチルアセトアミド50mlに溶解させ、炭酸カリウム3.7g、ヨウ化ナトリウム2.0g、アクリル酸1.9mlを添加後、100℃で3時間撹拌した。反応液に水を加え、析出した結晶をろ過により濾取した。カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、D3−10を3.0g得た。得られたD3−10のNMRスペクトルは以下の通りである。
【0204】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):2.30(6H、quint)、4.40(6H、t)、4.55(6H、t)、5.85(3H、dd)、6.15(3H、dd)、6.45(3H、dd)、7.65(3H、t)、8.25(3H、d)、8.45(3H、d)、8.90(3H、s)、9.30(3H、s)。
【0205】
得られたD3−10の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって行ったところ、温度を上げていき115℃付近で結晶相からディスコティックネマチック液晶相に変わり、178℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、D3−10は115℃から178℃の間でディスコティックネマチック液晶相を呈することが分った。
【0206】
合成例2 D3−12の合成
合成例1において、3−クロロ−1−プロパノールの代わりに5−ブロム−1−ペンタノール(東京化成)を使用した他は、合成例1と同様にしてD3−12を合成した。カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、D3−12を5.6g得た(収率54%)。得られたD3−12のNMRスペクトルは以下の通りである。
【化50】

【0207】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.60(6H、m)、1.80−1.90(12H、m)、4.25(6H、t)、4.45(6H、t)、5.80(3H、dd)、6.15(3H、dd)、6.40(3H、dd)、7.65(3H、t)、8.25(3H、d)、8.45(3H、d)、8.90(3H、s)、9.30(3H、s)。
【0208】
得られたD3−12の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって行ったところ、温度を上げていき86℃付近で結晶相からディスコティックネマチック液晶相に変わり、142℃を超えると等方性液体相に変わった。すなわち、D3−12は86℃から142℃の間でディスコティックネマチック液晶相を呈することが分った。
【0209】
合成例3 モノマーA−1'
下記スキーム2に従って合成した。
【化51】

【0210】
4−ヒドロキシブチルアクリレート(東京化成品)をアセトニトリル中、メタンスルホニルクロライド(MsCl)によってメタンスルホニル化した後、4−ヒドロキシベンズアルデヒド(和光純薬品)とN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)中で反応させ、4−(4−アクリルオキシブトキシ)フェニルアルデヒドを得た。得られたアルデヒド体を、過酸化水素/塩素酸ナトリウムで酸化することで、4−(4−アクリルオキシブトキシ)安息香酸を得た。この安息香酸と4−ヒドロキシベンゾニトリル(東京化成品)を、THF中、メタンスルホニルクロライド(MsCl)、および、トリエチルアミン(Et3N)を用いた混合酸無水物法により縮合し、1−シアノ−4−(4'−アクリロイルオキシブドキシ)安息香酸)ベンゼン(A−1'と略す)を41g、全収率75%で得た。得られたA−1'のNMRスペクトルは以下の通りである。
【0211】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.90(4H、m)、4.10(2H、t)、4.25(2H、t)、5.85(1H、dd)、6.15(1H、dd)、6.45(1H、dd)、6.95(2H、d)、7.35(2H、d)、7.75(2H、d)、8.12(2H、d)
【化52】

【0212】
合成例4 モノマーA−2'
合成例3において、4−ヒドロキシベンゾニトリルの代わりに4−メドキシフェノール(東京化成)を使用した他の合成例3と同様にして1−メドキシ−4−(4'−アクリロイルオキシブドキシ)安息香酸)ベンゼン23gを得た(収率65%)。以下、A−2'と略す。NMRスペクトルは以下の通りである。
【0213】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.92(4H、m)、3.80(3H,s)、4.10(2H、t)、4.26(2H、t)、5.85(1H、dd)、6.15(1H、dd)、6.45(1H、dd)、6.94(4H、m)、7.10(2H、d)8.12(2H、d)
【化53】

【0214】
合成例5 モノマー A−3'
下記スキーム3に従って合成した。
【化54】

【0215】
6−クロロ−1−ヘキサノール(和光純薬品)と4−ヒドロキシベンズアルデヒド(和光純薬品)をDMAc中に溶解し、攪拌しながら、炭酸カリウム粉末を加え、90°で反応させた後、エタノールから再結晶し、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)フェニルアルデヒドを得た。さらに、生成した4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)フェニルアルデヒドとトリエチルアミンをTHFに溶解させ、氷水浴下、アクリル酸クロリドを加え攪拌した。反応終了後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製後、エタノールから再結晶を行い、4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)フェニルアルデヒドを得た。得られたアルデヒド体を、過酸化水素/塩素酸ナトリウムで酸化することで、4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)安息香酸を得た。該4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)安息香酸と4−ヒドロキシベンゾニトリル(東京化成品)を、THF中、MsCl、および、トリエチルアミンを用いた混合酸無水物法により縮合し、1−シアノ−4−(6'−アクリロイルオキシヘキシルオキシシ)安息香酸)ベンゼンA−3'を31g、全収率50%で得た。
【0216】
NMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.40〜1.60(4H、m)、1.73(2H,quint)、1.82(2H、quint)、4.05(2H、t)、4.16(2H、t)、5.80(1H、dd)、6.12(1H、dd)、6.40(1H、dd)、6.96(2H、d)、7.35(2H、d)、7.74(2H、d)8.12(2H、d)
【化55】

【0217】
合成例6 モノマー A−8'
下記スキーム4に従って合成した。
【化56】

【0218】
4−ヒドロキシベンズアルデヒド(和光純薬品)とトリエチルアミンをTHFに溶解させ、氷水浴下、アクリル酸クロリドを加え攪拌した。反応終了後、エタノールから再結晶を行い、4−アクリロイルオキシフェニルアルデヒドを得た。さらに、得られたアルデヒド体を、過酸化水素/塩素酸ナトリウムで酸化することで、4−アクリロイルオキシ安息香酸を得た。この安息香酸と4−ヒドロキシベンゾニトリル(東京化成品)を、THF中、メタンスルホニルクロライド、および、トリエチルアミンを用いた混合酸無水物法により縮合し、A−8'を26g、全収率57%で得た。NMRスペクトルは以下の通りである。
【0219】
1H−NMR(溶媒:重アセトン、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):6.16(1H、dd)、6.42(1H、dd)、6.62(1H、dd)、7.45(2H、d)、7.60(2H、d)、7.95(2H、d)8.30(2H、d)
【化57】

【0220】
合成例7 モノマー A−25'
合成例3において、4−ヒドロキシベンゾニトリルの代わりに3−フルオロ−4−ヒドロキシベンゾニトリル(東京化成)を使用した他の合成例3と同様にして1−シアノ−2−フルオロ−4−(4'−アクリロイルオキシブドキシ)安息香酸)ベンゼン42gを得た。以下、A−25'と略す(収率84%)。NMRスペクトルは以下の通りである。
【0221】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.90(4H、m)、4.10(2H、t)、4.26(2H、t)、5.85(1H、dd)、6.15(1H、dd)、6.45(1H、dd)、6.96(2H、d)、7.20(2H、m)、7.68(1H,t)、8.10(2H、d)
【化58】

【0222】
合成例8 モノマー A−28'
下記スキーム5に従って合成した。
【化59】

【0223】
1,3−プロパンジオール(東京化成)とトリエチルアミンをTHFに溶解させ、氷水浴下、アクリル酸クロリドを加え攪拌した。反応終了後、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて洗浄し、続いて有機層を1N塩酸および飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒除去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、3−ヒドロキシプロピルアクリレート32gを得た(収率50%)。
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.90(2H、m)、3.70(2H,t)、4.32(2H、t)、5.82(1H、dd)、6.12(1H、dd)、6.42(1H、dd)。
【0224】
さらに、合成例1において、4−ヒドロキシブチルアクリレートの代わりに3−ヒドロキシプロピルアクリレートを使用した他は、合成例3と同様にして1−シアノ−4−(3'―アクリロイルオキシプロピルオキシ)安息香酸)ベンゼン22gを得た(総収率34%)。以下、A−28'と略す。NMRスペクトルは以下の通りである。
【0225】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):2.20(2H,quint)、4.15(2H、t)、4.38(2H、t)、5.85(1H、dd)、6.15(1H、dd)、6.42(1H、dd)、7.00(2H、d)、7.35(2H、d)、7.72(2H、d)8.13(2H、d)
【化60】

【0226】
合成例9 モノマー A−32'
合成例3において、4−ヒドロキシベンゾニトリルの代わりに4−クロロフェノール(東京化成)を使用した他は、合成例3と同様にして1−クロロ−4−(4'−アクリロイルオキシブドキシ)安息酸)ベンゼン27gを得た(収率51%)。
以下、A−32'と略す。NMRスペクトルは以下の通りである。
【0227】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):1.90(4H、m)、4.10(2H、t)、4.26(2H、t)、5.85(1H、dd)、6.15(1H、dd)、6.45(1H、dd)、6.92(2H、m)、7.15(2H、d)、7.35(2H、d)、8.10(2H、d)
【化61】

【0228】
合成例10 ポリマー AD−1の合成
以下のスキームに従って、ポリマーAD−1を合成した。
【化62】

【0229】
100mLの三口フラスコにN−メチルピロリドン(5g)を入れ、窒素を35ml/分の流量で流しながら78℃に加熱した。そこに、A−1'(12g)、B−3'(ダイキン工業製、8g)、重合開始剤(和光純薬(株)製V−65、200mg)のN−メチルピロリドン(20ml)溶液を3時間掛けて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間反応させた。その後、反応系を室温に戻した後、攪拌されたメタノール(800mL)中にゆっくりと注加し、析出したポリマーを吸引ろ過によって取り出し、さらに乾燥した。このようにして本発明に用いるポリマー(AD−1)14.5gを得た。
GPC測定(ポリスチリン換算)で、Mn=10000、Mw/Mn=2.30であった。
得られたポリマーの比率は1H−NMRにより確認した。
【0230】
合成例11 ポリマーAD−2の合成
以下のスキームに従って、ポリマーAD−2を合成した。
【化63】

【0231】
合成例10において、A−1'の代わりにA−2'を使用した他の合成例10と同様にしてポリマーAD−2(14.0g)を得た。
GPC測定(ポリスチリン換算)で、Mn=9000、Mw/Mn=2.45であった。得られたポリマーの比率は1H−NMRにより確認した。
【0232】
合成例12 ポリマーAD−3の合成
以下のスキームに従って、ポリマーAD−3を合成した。
【化64】

【0233】
合成例10において、A−1'の代わりにA−3'を使用した他の合成例10と同様にしてポリマーAD−3(13.8g)を得た。
GPC測定(ポリスチリン換算)で、Mn=12000、Mw/Mn=2.20であった。得られたポリマーの比率は1H−NMRにより確認した。
【0234】
合成例13 ポリマーAD−12の合成
以下のスキームに従って、ポリマーAD−12を合成した。
【化65】

【0235】
100mLの三口フラスコにN−メチルピロリドン(5g)を入れ、窒素を35ml/分の流量で流しながら78℃に加熱した。そこに、A−1'(6g)、B−3'(ダイキン工業製、8g)、C−13'(日本油脂製、ブンレンマーAP−400、6g)、重合開始剤(和光純薬(株)製、V−601、600mg)のN−メチルピロリドン(15ml)溶液を3時間掛けて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間反応させた。その後、反応系を室温に戻した後、攪拌されたメタノール−水混合溶液(800mL)中にゆっくりと注加し、析出したポリマーを吸引ろ過によって取り出し、さらに乾燥した。このようにして本発明に用いるポリマー(AD−12)を10.2g得た。GPC測定(ポリスチリン換算)で、Mn=16500、Mw/Mn=2.45であった。
【0236】
合成例14 ポリマーAD−13の合成
以下のスキームに従って、ポリマーAD−13を合成した。
【化66】

【0237】
合成例13において、C−13'の代わりにC−3'を使用した他は、合成例13と同様にしてポリマーAD−13(13.5g)を得た。GPC測定(ポリスチリン換算)で、Mn=12000、Mw/Mn=2.35であった。
【0238】
合成例15 ポリマー AD−21
以下のスキームに従って、ポリマーAD−21を合成した。
【化67】

【0239】
100mLの三口フラスコにN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(4g)を入れ、窒素を35ml/分の流量で流しながら78℃に加熱した。そこに、A−1'(4.3g)、B−3'(ダイキン工業製、3.2g)、C−13'(日本油脂製、ブンレンマーAP−400、8.5g)、重合開始剤(和光純薬(株)製、V−601、600mg)のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(8g)溶液を3時間掛けて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間反応させた。その後、反応系を室温に戻した後、攪拌された800mLのメタノール−水混合溶液(10/90体積比)中にゆっくりと注加し、析出したポリマーを遠心分離によって取り出し、さらに乾燥した。このようにして本発明に用いるポリマー(AD−21)を14.7g得た。GPC測定(ポリスチリン換算)で、Mn=16000、Mw/Mn=2.52を得た。
【0240】
合成例16 ポリマー AD−22
以下のスキームに従って、ポリマーAD−22を合成した。
【化68】

【0241】
100mLの三口フラスコにメチルエチルケトン(MEK)(4g)を入れ、窒素を35ml/分の流量で流しながら78℃に加熱した。そこに、A−1'(3.2g)、B−3'(ダイキン工業製、6.4g)、C−16'(新中村化学工業、NKエステル,AMP−20G、6.4g)、重合開始剤(和光純薬(株)製、V−601、600mg)のメチルエチルケトン(MEK)(8g)溶液を3時間掛けて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間反応させた。その後、反応系を室温に戻した後、攪拌された800mLのメタノール−水混合溶液(10/90体積比)中にゆっくりと注加し、析出したポリマーを遠心分離によって取り出し、さらに乾燥した。このようにして本発明に用いるポリマー(AD−22)を13.0g得た。GPC測定(ポリスチリン換算)で、Mn=18000、Mw/Mn=2.70であった。
【0242】
合成例17 ポリマー AD−23の合成
以下のスキームに従って、ポリマーAD−23を合成した。
【化69】

【0243】
100mLの三口フラスコにメチルエチルケトン(MEK)(4g)を入れ、窒素を35ml/分の流量で流しながら78℃に加熱した。そこに、A−25'(3.2g)、B−3'(ダイキン工業製、6.4g)、C−13'(日本油脂製、ブンレンマーAP−400、6.4g)、重合開始剤(和光純薬(株)製、V−601、600mg)のメチルエチルケトン(MEK)(8g)溶液を3時間掛けて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間反応させた。その後、反応系を室温に戻した後、攪拌された800mLのメタノール−水混合溶液(10/90体積比)中にゆっくりと注加し、析出したポリマーを遠心分離によって取り出し、さらに乾燥した。このようにして本発明に用いるポリマー(AD−23)を14.6g得た。GPC測定(ポリスチリン換算)で、Mn=15000、Mw/Mn=2.44であった。
【0244】
合成例18 ポリマー AD−24
以下のスキームに従って、ポリマーAD−24を合成した。
【化70】

【0245】
100mLの三口フラスコにN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc) (4g)を入れ、窒素を35ml/分の流量で流しながら78℃に加熱した。そこに、A−28'(6.4g)、B−3'(ダイキン工業製、4.8g)、C−13'(日本油脂製、ブンレンマーAP−400、4.8g)、重合開始剤(和光純薬(株)製、V−601、600mg)のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(8g)溶液を3時間掛けて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間反応させた。その後、反応系を室温に戻した後、攪拌された800mLのメタノール−水混合溶液(10/90体積比)中にゆっくりと注加し、析出したポリマーを遠心分離によって取り出し、さらに乾燥した。このようにして本発明に用いるポリマー(AD−24)を15.0g得た。GPC測定(ポリスチリン換算)で、Mn=21000、Mw/Mn=2.30であった。
【0246】
合成例19 ポリマー AD−25の合成
以下のスキームに従って、ポリマーAD−25を合成した。
【化71】

【0247】
100mLの三口フラスコにメチルエチルケトン(MEK)(4g)を入れ、窒素を35ml/分の流量で流しながら78℃に加熱した。そこに、A−1'(3.2g)、B−3'(ダイキン工業製、6.4g)、C−20'(東京化成、6.4g)、重合開始剤(和光純薬(株)製、V−601、600mg)のメチルエチルケトン(MEK)(8g)溶液を3時間掛けて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間反応させた。その後、反応系を室温に戻した後、攪拌された800mLのメタノール中にゆっくりと注加し、析出したポリマーを遠心分離によって取り出し、さらに乾燥した。このようにして本発明に用いるポリマー(AD−25)を14.0g得た。GPC測定(ポリスチリン換算)で、Mn=19000、Mw/Mn=2.60であった。
【0248】
合成例20 ポリマー AD−26の合成
以下のスキームに従って、ポリマーAD−26を合成した。
【化72】

【0249】
100mLの三口フラスコにN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc) (4g)を入れ、窒素を35ml/分の流量で流しながら78℃に加熱した。そこに、A−1'(6.4g)、B−1' (ダイキン工業製、2.4g)、B−3'(ダイキン工業製、2.4g)、C−13'(日本油脂製、ブンレンマーAP−400、4.8g)、重合開始剤(和光純薬(株)製、V−601、600mg)のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(8g)溶液を3時間掛けて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間反応させた。その後、反応系を室温に戻した後、攪拌された800mLのメタノール−水混合溶液(10/90体積比)中にゆっくりと注加し、析出したポリマーを遠心分離によって取り出し、さらに乾燥した。このようにして本発明に用いるポリマー(AD−24)を15.0g得た。GPC測定(ポリスチリン換算)で、Mn=17500、Mw/Mn=2.42であった。
【0250】
合成例21 ポリマー AD−27の合成
以下のスキームに従って、ポリマーAD−27を合成した。
【化73】

【0251】
100mLの三口フラスコにN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc) (4g)を入れ、窒素を35ml/分の流量で流しながら78℃に加熱した。そこに、A−1'(6.4g)、B−3'(ダイキン工業製、4.8g)、C−13'(日本油脂製、ブンレンマーAP−400、2.4g)、C−20'(東京化成、2.4g)、重合開始剤(和光純薬(株)製、V−601、600mg)のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(8g)溶液を3時間掛けて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間反応させた。その後、反応系を室温に戻した後、攪拌された800mLのメタノール−水混合溶液(10/90体積比)中にゆっくりと注加し、析出したポリマーを遠心分離によって取り出し、さらに乾燥した。このようにして本発明に用いるポリマー(AD−25)を15.2g得た。GPC測定(ポリスチリン換算)で、Mn=14600、Mw/Mn=2.30であった。
【0252】
合成例22 比較用ポリマー AD−Rの合成
以下のスキームに従って、ポリマーAD−Rを合成した。
【化74】

【0253】
100mLの三口フラスコにメチルエチルケトン(MEK)(4g)を入れ、窒素を35ml/分の流量で流しながら78℃に加熱した。そこに、C−4'(東京化成、4.8g)、B−3'(ダイキン工業製、6.4g)、C−13'(日本油脂製、ブンレンマーAP−400、4.8g)、重合開始剤(和光純薬(株)製、V−601、600mg)のメチルエチルケトン(MEK)(8g)溶液を3時間掛けて滴下した。滴下終了後、そのままの温度で4時間反応させた。その後、反応系を室温に戻した後、攪拌された800mLのメタノール中にゆっくりと注加し、析出したポリマーを遠心分離によって取り出し、さらに乾燥した。このようにして本発明と比較するために用いるポリマー(AD−R)を15.2g得た。GPC測定(ポリスチリン換算)で、Mn=13000、Mw/Mn=2.50であった。
【0254】
[実施例1:本発明の組成物(LM−1)の調製]
以下に示した組成の割合で、液晶性化合物(D3−12)、本発明で用いるポリマー(AD−1)、光重合開始剤のイルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株))、および、光増感剤のジエチルチオキサントンをそれぞれ秤量し、メチルエチルケトンに溶解することによって、本発明の組成物(LM−1)を調製した。
【0255】
組成物(LM−1)の組成
・液晶性化合物: D3−12 100質量部
・本発明で用いるポリマー: AD−1 0.4質量部
・イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)) 3.0質量部
・ジエチルチオキサントン 1.0質量部
・メチルエチルケトン 250質量部
【0256】
[実施例2:本発明の組成物(LM−2〜LM−10)の調製]
実施例1において、ポリマー(AD−1)を下記表2に記載のポリマーにそれぞれ変更し、他は同様にして、本発明の組成物(LM−2)〜(LM−10)を調製した。
【0257】
[実施例3:本発明の組成物(LM−11〜LM−17)の調製
実施例1において、下記界面活性剤(F−22)を0.5質量部添加した本発明の組成物(LM−11)を調整した。また、該(LM−11)において、ポリマー(AD−1)を下記表2に記載のポリマーにそれぞれ変更し、他は同様にして本発明の組成物(LM−12〜LM−17)を調整した。
【0258】
界面活性剤(F−22)
【化75】

【0259】
[比較例1:比較用組成物(LH−1、LH−2、LH−3)の調製]
ポリマー(AD−1)を添加しなかった以外は、実施例1の組成物(LM−1)と全て同様にして、比較用組成物(LH−1)を調製した。ポリマー(AD−1)を添加しなかった以外は、実施例3の組成物(LM−11)とすべて同じにして、比較用組成物(LH−2)を調製した。また、ポリマー(AD−1)の代わりに、本発明の効果との比較ために合成したポリマー(AD−R)を添加し、実施例1の組成物(LM−1)と全て同様にして、比較用組成物(LH−3)を調製した。
【0260】
【表2】

【0261】
[実施例4:本発明の位相差板(RM−1)の作製]
(透明支持体の作製)
下記の成分をミキシングタンクに投入し、加熱攪拌して、セルロースアセテート溶液(以下、ドープと呼ぶことがある)を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアセテート溶液組成
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酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート 6.5質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート 5.2質量部
下記のレターデーション上昇剤(1) 0.1質量部
下記のレターデーション上昇剤(2) 0.2質量部
メチレンクロライド 310.25質量部
メタノール 54.75質量部
1−ブタノール 10.95質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0262】
【化76】

【0263】
【化77】

【0264】
得られたドープを流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。溶媒含有率70質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をピンテンターで固定し、溶媒含有率が3〜5質量%の領域で、幅方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、120℃を越える領域で機械方向の延伸率が実質0%、幅方向の延伸率と機械方向の延伸率との比が0.75となるように調整して、厚さ100μmのセルロースアセテートフィルムを作製した。作製したフィルムのレターデーション値を波長632.8nmで測定したところ、厚み方向のレターデーション値が40nm、面内のレターデーション値が4nmであった。作製したセルロースアセテートフィルムを支持体として用いた。
【0265】
(第1下塗り層の形成)
上記透明支持体の上に、下記の組成の塗布液を28mD/m2塗布し、乾燥して、第1下塗り層を形成した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
第1下塗り層塗布液組成
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ゼラチン 5.44質量部
ホルムアルデヒド 1.38質量部
サリチル酸 1.62質量部
アセトン 391質量部
メタノール 158質量部
メチレンクロライド 406質量部
水 12質量部
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【0266】
(第2下塗り層の形成)
第1下塗り層の上に、下記の組成の塗布液を7mD/m2塗布し、乾燥して、第2下塗り層を形成した。
【0267】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
第2下塗り層塗布液組成
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下記のアニオン性ポリマー 0.77質量部
クエン酸モノエチルエステル 10.1質量部
アセトン 200質量部
メタノール 877質量部
水 40.5質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0268】
【化78】

【0269】
(バック層の形成)
透明支持体の反対側の面に、下記の組成の塗布液を25mD/m2塗布し、乾燥して、バック層を形成した。
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バック層塗布液組成
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酢化度55%のセルロースジアセテート 6.56質量部
シリカ系マット剤(平均粒子サイズ:1μm) 0.65質量部
アセトン 679質量部
メタノール 104質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0270】
(配向膜の形成)
下記変性ポリビニルアルコールとグルタルアルデヒド(変性ポリビニルアルコールの5質量%)とを、メタノール/水の混合溶媒(容積比=20/80)に溶解して、5質量%の溶液を調製した。
【0271】
【化79】

【0272】
この溶液を、第2下塗り層の上に塗布し、100℃の温風で120秒間乾燥した後、ラビング処理を行い、配向膜を形成した。得られた配向膜の膜厚は0.5μmであった。配向膜のラビング方向は、透明支持体の流延方向と平行であった。
(光学異方性層の形成)
前記で作製した配向膜のラビング処理面上に、実施例1で調製した本発明の組成物(LM−1)の塗布液を、ワイヤーバーを用いて塗布した。上記の光学異方性層を塗布したフィルムを、120℃の恒温槽中にて配向させ、その温度で200mJ/cm2の紫外線を照射して光学異方性層の配向状態を固定した。室温まで放冷して、本発明の位相差板(RM−1)を作製した。形成した光学異方性層の厚さは約1.0μmであった。
【0273】
[実施例5:本発明の位相差板(RM−2〜RM−17)の作製]
実施例4において、組成物(LM−1)を、組成物(LM−2)〜(LM−17)に変更したこと以外は全て同様にして、位相差板(RM−2)〜(RM−17)を作製した。
【0274】
[比較例2:比較用位相差板(RH−1、RH−2)の作製]
実施例4において、組成物(LM−1)を、組成物(LH−1)、(LH−2)および(LH−3)に変更したこと以外は全て同様にして、比較用の位相差板(RH−1)、(RH−2)および(RH−3)を作製した。
【表3】

【0275】
[位相差板の評価]
[実施例6:位相差板RM−1〜RM−17の評価]
(Re、Rthの測定)
Re(589nm)、Rth(589nm)はそれぞれ、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。実施例4、5および比較例2で得られた位相差板のRe(589nm)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長589nmの光をフィルム法線方向に入射させて測定した。Rth(589nm)は前記Re(589nm)、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基にKOBRA 21ADHが算出した。
【0276】
(平均チルト角の測定)
上記の光学異方性層のレターデーション値の角度依存性の計算が測定値に一致するように、光学異方性層の一方の面におけるチルト角θ1および他方の面のチルト角θ2を変数としてフィッティングを行い、θ1およびθ2を算出した。
この値の平均値((θ1+θ2)/2)から平均チルト角を求めた。
【0277】
[比較例3:比較用位相差板RH−1〜RH−3の評価]
上記と同様な方法で位相差板RH−1〜RH−3の平均チルト角を求めた。
【0278】
また、上記実施例6および比較例3で得られた位相差板の断面の超薄切片を、マイクロトームを用いて作製し、その切片を偏光顕微鏡で観察した。本発明の位相差板RM−1〜RM−17および比較例3のRH−1、2の光学異方性層がハイブリッド配向していることが確認できた。また、比較例3のRH−3の光学異方性層が水平配向していることも判った。
【0279】
(平均チルト角の温度依存性)
光学異方性層の形成において、配向後に100℃まで降温した後、紫外線により配向状態を硬化した以外は同様にして位相差版を作成した後平均チルト角の測定を行い、120℃の時と100℃で配向固定化した時の平均チルト角の差を平均チルト角温度依存性として以下の表4に記載した。
【0280】
【表4】

【0281】
表4の結果から、本発明の位相差板(RM−1)〜(RM−17)は、比較例の位相差板(RH−1)、(RH−2)および(RH−3)と比較して、平均チルト角が10〜40°の範囲に制御できることが判った。かつ、その中間の平均チルト角は温度依存性が少ないことが確認された。
これらの結果から、本発明の一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマーを含有した組成物から作製した位相差板では、温度依存性が少ない状態でディスコティック液晶をハイブリッド配向させた位相差板を得ることができることが確認された。
【0282】
また、一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマーと、一般式(A)で表される基を構成単位として含まないポリマー(以下では、単に界面活性剤と呼ぶ)の両方を含有した組成物から作製した位相差板(RM−11)〜(RM−17)では、それぞれのポリマーに含有されるフルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位の含有量により、一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマーを含有した組成物から作製した対応する位相差板(RM−1)、(RM−4)、(RM−6)〜(RM−10)と比較して、平均チルト角が異なるものがある。
すなわち、界面活性剤に含有されるフルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位の含有量と、一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマーのそれとがほぼ等しい場合(表4における(RH−11)、(RH−12)、(RH−14))では、対応する界面活性剤を含まないもの(それぞれ(RM−1)、(RM−4)、(RM−7))に比較して、平均チルト角は高い値に調整されていることが確認された。
一方、界面活性剤に含有されるフルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位の含有量が、一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマーのそれよりも低い場合(表4における(RH−13)、(RH−15)〜(RH−17))では、対応する界面活性剤を含まないもの(それぞれ(RH−6)、(RH−8)〜(RH−10))と比較して、平均チルト角の値はほとんど変わらないことが確認された。
これらの結果から、界面活性剤を別途加えることで、目的に応じた平均チルト角に調整できることが確認された。また、平均チルト角を変化させることなく、界面活性剤を併用できることも確認された。これらは、界面活性剤に含まれるフルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位の含有量と、本発明の一般式(A)で表される構造を有するポリマーのフルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位の含有量との差によって決定されることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種の液晶性化合物と、少なくとも一種の下記一般式(A)で表される基を構成単位として含むポリマーを含有する組成物。
一般式(A)
【化1】

(一般式(A)中、Mpは3価の連結基を表し、Lは単結合または2価の連結基を表し、Xは置換もしくは無置換の環状連結基を表し、Yは単結合または2価の連結基を表し、Zは置換もしくは無置換の環状基を表し、nは1〜10の整数を表す。ただし、nが2以上の場合、XおよびYは、それぞれ、同じでも異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記一般式(A)中のXが液晶性を有する基を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記一般式(A)中のXが、炭素原子数3〜20の置換もしくは無置換の環状脂肪族基または、炭素原子数6〜30の置換もしくは無置換のフェニレン基である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記一般式(A)において、前記Mpが下記Mp−1またはMp−2を表し、前記Lが、−O−、−NRa11−(Ra11は、水素原子、炭素原子数1〜10の置換もしくは無置換の脂肪族炭化水素基、または、炭素原子数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基を表す。)、−S−、−C(=O)−、−S(=O)2−、および、炭素原子数1〜20の置換もしくは無置換のアルキレン基、ならびに、これらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表す、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【化2】

(*は、Lとの連結位置を示す。)
【請求項5】
前記一般式(A)において、前記Yが単結合または、−O−、−NRa12−(但し、Ra12は水素原子、炭素原子数1〜10の置換もしくは無置換の脂肪族炭化水素基、または、炭素原子数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基を表す。)、−S−、−C(=O)−、および、−S(=O)2−、ならびに、これらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、前記Zが置換もしくは無置換のフェニル基を表し、nが、1〜4の整数を表す、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリマーが、さらに、フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記一般式(A)で表される基を構成単位として含まず、かつ、フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位を含むポリマーを含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記一般式(A)で表される基を構成単位として含まず、かつ、フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される構成単位を含むポリマーであって親水性基を含有するポリマーを含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
下記一般式(F)で表される繰り返し単位を含むポリマーを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
一般式(F)
【化3】

(一般式(F)中、R81およびR82はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、L81、L82は、それぞれ独立に単結合または炭素原子数1〜20の二価の連結基を表し、Rf"は炭素原子数1〜30のフッ化アルキル基を表し、R83は水素原子または親水性基を表し、A8は重合単位を表し、g、h、iはそれぞれの重合単位の質量分率を表す。
【請求項10】
前記液晶性化合物の少なくとも一種の粘度が、80〜150℃において、500〜1000mPa・sである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記液晶性化合物の少なくとも1種が、下記一般式(DI)で表される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【化4】

(一般式(DI)中、Y11、Y12、Y13は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。L1、L2、L3は、それぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。H1、H2、H3はそれぞれ独立に、下記一般式(DI−A)または下記一般式(DI−B)を表す。R1、R2、R3は、それぞれ独立に下記一般式(DI−R)を表す。)
【化5】

(一般式(DI−A)中、YA1、YA2は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。XAは酸素原子、硫黄原子、メチレン、またはイミノを表す。*はL1〜L3と結合する位置を表し、**はR1〜R3と結合する位置を表す。)
【化6】

(一般式(DI−B)中、YB1、YB2は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。XBは酸素原子、硫黄原子、メチレン、またはイミノを表す。*はL1〜L3と結合する位置を表し、**はR1〜R3と結合する位置を表す。)
一般式(DI−R)
*−(−L21−F1n1−L22−L23−Q1
(一般式(DI−R)中、*は一般式(DI)中のH1、H2またはH3に結合する位置を表す。F1は少なくとも1種類の環状構造を有する2価の連結基を表す。L21は単結合または2価の連結基を表す。n1は0〜4の整数を表す。L22は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、を表し、L23は−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q1は重合性基または水素原子を表す。)
【請求項12】
前記液晶性化合物の少なくとも1種が、下記一般式(DII)で表される液晶性化合物または下記一般式(DIII)で表される液晶性化合物である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【化7】

(一般式(DII)中、Y31、Y32、Y33はそれぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。R31、R32、R33はそれぞれ独立に下記一般式(DII−R)で表される。)
【化8】

(一般式(DII−R)中、A31、A32は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。X3は酸素原子、硫黄原子、メチレン、またはイミノを表す。F2は6員環状構造を有する2価の環状連結基を表す。n3は、1〜3整数を表す。L31は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、を表し、L32は−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q3は重合性基または水素原子を表す。)
【化9】

(一般式(DIII)中、Y41、Y42およびY43は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、R41、R42およびR43は、それぞれ独立に下記一般式(DIII−A)、または下記一般式(DIII−B)、または下記一般式(DIII−C)を表す。)
【化10】

(一般式(DIII−A)中、A41、A42、A43、A44、A45、A46は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、X41は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、L41は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C≡C−を表し、L42は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q4は、重合性基または水素原子を表す。)
【化11】

(一般式(DIII−B)中、A51、A52、A53、A54、A55、A56は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、X52は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、L51は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C≡C−を表し、L52は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q5は重合性基または水素原子を表す。)
【化12】

(一般式(DIII−C)中、A61、A62、A63、A64、A65、A66は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、X63は、酸素原子、硫黄原子、メチンまたはイミノを表し、L61は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C≡C−を表し、L62は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q6は重合性基または水素原子を表す。)
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物を用いてなる光学異方性層を有する位相差板。
【請求項14】
請求項13に記載の位相差板を有する、液晶表示装置。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物を用いて光学異方性層を形成することを含む位相差板の製造方法。

【公開番号】特開2007−217656(P2007−217656A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301196(P2006−301196)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】