説明

組電池及びこれを装備する電動車両

【課題】電池セルを積層しない状態で、絶縁性のセパレータを電池セルの定位置に固定し、セパレータでもって外装缶の表面の一部あるいは全体を絶縁して、電池セルの組み立て工程や取り扱いを極めて容易に、しかも安全にする。
【解決手段】組電池は、複数の電池セル1を絶縁性のセパレータ2を介して積層して、セパレータ2と電池セル1とを定位置に連結している。セパレータ2は、隣接する電池セル1の間に挟着される絶縁プレート部21の周囲に外周壁22を有し、この外周壁22の内側に電池セル1を嵌め込んで定位置に配置する箱形凹部23を設けている。さらに、セパレータ2は、外周壁22のコーナー部に、箱形凹部23に挿入される電池セル1のコーナー部を押圧して、箱形凹部23に挿入される電池セル1を箱形凹部23に固定する押圧固定部9を設けており、この押圧固定部9で、箱形凹部23に挿入される電池セル1をセパレータ2に固定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、ハイブリッド自動車や電気自動車等の自動車を駆動するモータの電源用等に使用される大電流用の組電池及びこれを装備する電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
モータで走行する電気自動車、あるいはモータとエンジンの両方で走行するハイブリッド自動車等の電動車両は、多数の電池セルを備える組電池を電源として搭載している。この組電池は、モータで自動車を走行させるための大きな出力とするために、多数の電池セルを積層している。
【0003】
電池セルを積層している組電池は、電池セルを直列に接続して出力電圧を高くして出力を大きくできる。この組電池は、電池セルの外装缶を金属製とするので、絶縁状態で積層する必要がある。それは、金属製の外装缶が電位を有するので、これを直列に接続する組電池にあっては、隣接する外装缶の間に電位差ができるからである。たとえば、リチウムイオン電池の外装缶は、正負の電極の中間の電位となる。また、外装缶を電極に接続する電池セルにあっては、外装缶の電位が接続している電極の電位となる。以上のように、金属製の外装缶の電池セルは、外装缶が電位を有するので、隣接する電池セルの外装缶同士が接触すると、大きなショート電流が流れる。このため、電池セルを積層している組電池は、積層する電池セルをセパレータで絶縁している。
【0004】
電池セルの間にセパレータを挟着して積層している組電池は、セパレータと電池セルとを嵌合構造で定位置に連結することで、より簡単に位置ずれしないように積層できる。このことを実現する組電池は開発されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−299544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の組電池は、図1に示すように、セパレータ82と電池セル81とを、積層面内における位置ずれを阻止する嵌着構造で連結して、隣接する電池セル81同士の位置ずれを阻止している。セパレータ82と電池セル81を嵌着構造で連結するために、電池セル81の対向する隅部に隅凹部83を設けている。セパレータ82は、電池セル81の対向する隅部に位置するように、電池セル81の隅凹部83に嵌着される隅凸部84を設けている。セパレータ82の隅凸部84を電池セル81の隅凹部83に嵌着して、セパレータ82と電池セル81を定位置に積層している。
【0007】
以上の組電池は、セパレータと電池セルとを定位置に連結できる。しかしながら、この構造は、セパレータと電池セルとを積層する状態で定位置に連結できるのであって、積層しない状態では、セパレータと電池セルとを定位置には連結できない。電池セルは、組電池に組み立てる工程において、あるいは搬送する工程において、金属製外装缶の全面が露出していると、これが電位を有するので取り扱いに気をつける必要がある。金属等が外装缶と電極端子に接触するとショート電流が流れ、あるいは外装缶と電極端子とに触れると感電する恐れがあり、さらに、複数の電池セルの外装缶や電極端子が接触してショート電流が流れることがあるからである。この弊害は、外装缶の表面を熱収縮チューブで被覆することで防止できる。ただ、この構造は、加熱すると収縮して外装缶の表面に密着する独特のプラスチックフィルムを使用するので、部品コストが高くなり、さらに、熱収縮チューブを袋状として、これに電池セルを挿入して、これを外装缶の表面に隙間なく密着させるのにさらに手間がかかる問題点がある。
【0008】
本発明は、以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、複数の電池セルを積層しない状態においても、絶縁性のセパレータを電池セルの定位置に固定でき、セパレータでもって外装缶の表面の一部あるいは全体を絶縁することで、電池セルの組み立て工程や取り扱いを極めて容易に、しかも安全にできる組電池とこれを装備する電動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
本発明の組電池は、複数の電池セル1を絶縁性のセパレータ2、32を介して積層して、セパレータ2、32と電池セル1とを定位置に連結している。セパレータ2、32は、隣接する電池セル1の間に挟着される絶縁プレート部21の周囲に外周壁22を有し、この外周壁22の内側に電池セル1を嵌め込んで定位置に配置する箱形凹部23を設けている。さらに、セパレータ2、32は、外周壁22のコーナー部に、箱形凹部23に挿入される電池セル1のコーナー部を押圧して、箱形凹部23に挿入される電池セル1を箱形凹部23に固定する押圧固定部9を設けており、この押圧固定部9でもって、箱形凹部23に挿入される電池セル1をセパレータ2、32に固定している。
【0010】
以上の組電池は、複数の電池セルを積層しない状態においても絶縁性のセパレータを電池セルの定位置に固定して、セパレータと電池セルとを一体的に扱うことが可能となり、複数の電池セルを積層しない状態にあっても、セパレータでもって外装缶の表面を絶縁し、かつ保護することで、電池セルの組み立て工程や取り扱いを極めて容易に、しかも安全にできる特徴がある。
【0011】
本発明の組電池は、電池セル1が、正負の電極と電解液とを収納してなる金属板からなる外装缶11の開口部に、正負の電極端子13を固定している封口板12を溶接して固定し、セパレータ2、32が、外装缶11の底面1Aの外側に設けてなる底外周壁22Aと、外装缶11の側面1Bの外側に設けている両側外周壁22Bとのコーナー部に押圧固定部9を設けることができる。
以上の組電池は、電池セルの外装缶の底面と側面とのコーナー部に押圧固定部を設けているので、押圧固定部が電池セルの外装缶と封口板との溶接部を損傷することなく、この部分を外周壁で保護しながら、電池セルをセパレータの箱形凹部に固定できる。
【0012】
本発明の組電池は、押圧固定部9を、箱形凹部23に挿入されるピン9A、又はセパレータ32に固定された凸部9Bのいずれかとすることができる。
箱形凹部のコーナー部の隙間にピンを挿入する組電池は、電池セルを箱形凹部にスムーズに挿入しながら、ピンを挿入して電池セルをセパレータに確実に固定できる。特に、ピンを挿入するのみという簡単な作業で効率よく固定作業を行える。
また、押圧固定部をセパレータに固定する組電池は、電池セルを箱形凹部に圧入することで簡単にセパレータに固定できる。また、ピンなどの別部材を必要としないため、コストも低減できる。
【0013】
本発明の組電池は、押圧固定部9を箱形凹部23に挿入されるピン9Aとして、セパレータ2が、底外周壁22Aと両側外周壁22Bとのコーナー部に、ピン9Aを案内するガイド凹部29を備えることができる。
以上の組電池は、ピンをガイド凹部にスムーズに挿入して、電池セルをセパレータの箱形凹部に固定できる。
【0014】
本発明の組電池は、セパレータ2、32の箱形凹部23に挿入された電池セル1と外周壁22との隙間にシール剤17を充填することができる。
これにより、電池セルとセパレータとの間に隙間を無くして、この部分に水分等が入り込むのを回避すると共に、電池セルの発熱をセパレータを介して熱伝導させ、放熱しやすくできる。
【0015】
本発明の組電池は、セパレータ2、32の箱形凹部23に挿入された電池セル1と外周壁22との隙間と、電池セル1の主面1Xと絶縁プレート部21との隙間とにシール剤17を充填することができる。
【0016】
本発明の組電池は、セパレータ2、32の外周壁22の幅(W)を、電池セル1の厚さ(t)に等しくし、かつ、外周壁22の開口部に被覆シート18を接着して、この被覆シート18を、電池セル1の表面に接着することができる。
以上の組電池は、電池セルの表面を被覆シートで被覆することで、この面の結露を防止できる特徴がある。さらに、この被覆シートに絶縁シートを使用することで、積層する電池セルをより確実に絶縁状態で積層できる特徴も実現する。
【0017】
本発明の電動車両は、車両を走行させるモータに電力を供給する電源として、上記の組電池を装備することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の組電池の要部拡大斜視図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる組電池の平面図である。
【図3】図2に示す組電池の側面図である。
【図4】図2に示す組電池のセパレータと電池セルを示す分解斜視図である。
【図5】図4に示すセパレータと電池セルを下側から見た背面斜視図である。
【図6】セパレータの他の一例を示す斜視図である。
【図7】図6に示すセパレータに電池セルを挿入する状態を示す断面図である。
【図8】図4に示すセパレータに電池セルを固定してシール材を充填する状態を示す正面図である。
【図9】図4に示すセパレータに電池セルを固定して被覆シートを接着する状態を示す分解斜視図である。
【図10】図9に示すセパレータと電池セルに被覆シートを接着した状態を示す斜視図である。
【図11】本発明の一実施例にかかる電動車両であってエンジンとモータで走行するハイブリッドカーを示すブロック図である。
【図12】本発明の他の実施例にかかる電動車両であってモータのみで走行する電気自動車を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための組電池とこれを装備する電動車両を例示するものであって、本発明は組電池と電動車両を以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0020】
図2と図3に示す組電池は、主として、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッドカーや、モータのみで走行する電気自動車などの電動車両の電源に最適である。ただし、ハイブリッドカーや電気自動車等の電動車両以外の用途であって、大出力が要求される用途にも使用される。
【0021】
図2と図3に示す組電池100は、複数の電池セル1を絶縁性のセパレータ2を介して積層して電池ブロック10としている。電池ブロック10は、セパレータ2と電池セル1を定位置に連結している。電池ブロック10は、その両端面にエンドプレート3を配置して、一対のエンドプレート3を連結固定具4で固定して、積層しているセパレータ2と電池セル1とを所定の圧力で押圧する状態に固定している。エンドプレート3は、電池セル1の外形とほぼ同じ形状と寸法の四角形として、組電池を両端面から挟着して固定している。
【0022】
(電池セル1)
電池セル1は、幅よりも厚さが薄い外形を四角形とする薄型の角形電池で、互いに平行な姿勢として絶縁材のセパレータ2を間に挟んでセパレータ2でもって絶縁状態に積層している。電池セル1は、図4に示すように、上面1Cの両端部に正負の電極端子13を突出させて固定している。電極端子13を突出させる位置は、正極と負極が左右対称となる位置としている。これにより、電池セル1を裏返して重ねて積層し、隣接して接近する正極と負極の電極端子13を金属板のバスバー(図示せず)で接続し、あるいは直接に接続して、直列に接続できる。電池セル1を直列に接続している組電池100は、出力電圧を高くして出力を大きくできる。ただし、組電池は、電池セルを並列に接続して電流容量を大きくすることもできる。
【0023】
電池セル1はリチウムイオン二次電池である。ただし、電池セル1はリチウムイオン二次電池には特定されず、充電できる全ての電池、たとえばニッケル水素電池なども使用できる。電池セル1は、外装缶11の開口部を封口板12で気密に閉塞している。外装缶11は、正負の電極板を積層している電極体を収納して電解液を充填している。外装缶11は、図4と図5に示すように、底を閉塞する四角い筒状に金属板をプレス加工したもので、上方の開口部を金属板の封口板12で気密に閉塞している。外装缶11は、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板を深絞り加工して製作される。金属板を深絞り加工している外装缶11は、開口部に向かって内形を大きくするテーパー状としている。深絞り加工の金型を型抜きするためである。したがって、外装缶11は、開口部となる上端の外形を底面の外形よりもわずかに大きくしている。封口板12は、外装缶11と同じように、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板で製作される。この封口板12は、正負の電極端子13を両端部に、端子ホルダ14を介して固定している。封口板12は、外装缶11の開口部に挿入され、封口板12の外周と外装缶11の内周との境界にレーザービームを照射して、封口板12は外装缶11にレーザー溶接して気密に固定されている。
【0024】
(端子ホルダ14)
端子ホルダ14は、傾斜面を有する三角形状に形成されており、電池セル1の上面1Cで電極端子13の突出部分を除く周囲を絶縁している。この端子ホルダ14は、プラスチックなどの絶縁性部材で構成される。端子ホルダ14の傾斜面には電極端子13を配置しており、電極端子13を傾斜姿勢で突出させた状態で、電池セル1の両端部の定位置に配置している。一方、正負の電極端子13は、内蔵する正負の電極板(図示せず)に接続されている。
【0025】
(セパレータ2)
セパレータ2は、互いに隣接する電池セル1の間に挟着されて、隣接する電池セル1を一定の間隔に保持して絶縁する。このため、セパレータ2は、絶縁材で構成され、隣接する電池セル1の外装缶11を絶縁しながら保護する。このセパレータ2は、プラスチック等の絶縁材を成形して製作される。
【0026】
セパレータ2は、全体を絶縁材のプラスチックで一体的に成形している。このセパレータ2は、隣接する電池セル1の間に挟着される絶縁プレート部21の周囲に外周壁22を設けて、外周壁22の内側に電池セル1を嵌め込んで定位置に配置する箱形凹部23を設けている。図4のセパレータ2は、電池セル1の底面1Aと、両側側面1Bと、上面1Cの外側に外周壁22を設けて、絶縁プレート部21と外周壁22とで、その内側に、電池セル1を定位置に配置する箱形凹部23を設けている。セパレータ2は、箱形凹部23の内形を電池セル1の外形にほぼ等しく、あるいは電池セル1の外形よりもわずかに大きくして、外周壁22の内側に電池セル1をスムーズに挿入できるようにしている。
【0027】
外周壁22は、電池セル1の底面1Aの外側に配置している底外周壁22Aと、電池セル1の両側面1Bの外側に位置する両側外周壁22Bと、電池セル1の上面1Cの外側に位置する上外周壁22Cとからなる。外周壁22の幅(W)は、電池セル1の厚さ(t)にほぼ等しい。このセパレータ2は、箱形凹部23の内部に電池セル1を収納して保護できる特徴がある。ただし、外周壁の幅(W)は、必ずしも電池セルの厚さ(t)に等しくする必要はなく、電池セルの厚さ(t)よりも小さく、あるいは大きくすることもできる。また、セパレータは、底外周壁と両側外周壁と上外周壁の全ての幅(W)を電池セルの厚さ(t)と等しくする必要はなく、底外周壁のみの幅(W)を電池セルの厚さ(t)とし、あるいは底外周壁と両側外周壁の幅(W)を電池セルの厚さ(t)として上外周壁の幅(W)を電池セルの厚さ(t)よりも小さくし、あるいはまた、底外周壁と上外周壁の幅(W)を電池セルの厚さ(t)として両側外周壁の幅(W)を電池セルの厚さ(t)よりも小さくすることもできる。ただ、本発明の組電池は、セパレータの箱形凹部に電池セルを入れて、押圧固定部9で電池セルを箱形凹部に固定するので、外周壁の幅(W)を、電池セルを箱形凹部に入れて固定できる幅とする。
【0028】
さらに、セパレータ2は、外周壁22のコーナー部に、箱形凹部23に挿入される電池セル1のコーナー部を押圧して、箱形凹部23に挿入される電池セル1を箱形凹部23に固定する押圧固定部9を設けている。このセパレータ2は、押圧固定部9で箱形凹部23に挿入される電池セル1をセパレータ2に固定する。
【0029】
図4のセパレータ2は、底外周壁22Aと両側外周壁22Bとのコーナー部に押圧固定部9を設けている。とくに、図4のセパレータ2は、底外周壁22Aの両端のコーナー部に押圧固定部9を設けている。このセパレータ2は、箱形凹部23に挿入される電池セル1を、押圧固定部9でもって、上外周壁22Cに押圧する。したがって、外装缶11と封口板12との溶接部を外周壁22で保護して、損傷を防止しながら、電池セル1をセパレータ2の箱形凹部23に固定できる。図4のセパレータ2は、底外周壁22Aの両端に押圧固定部9を設けているが、押圧固定部は、底外周壁の一端にのみ設けることもできる。また、図示しないが、押圧固定部は、両側外周壁と上外周壁とのコーナー部に設けることもできる。
【0030】
さらに、図4のセパレータ2は、箱形凹部23のコーナー部に挿入されるピン9Aを押圧固定部9としている。ピン9Aは、図4に示す円柱状ないし多角柱状で、後端に鍔9aを設けている。円柱状ないし多角柱状のピン9Aは、全体を先端に向かって細くなるテーパー状とし、あるいは先端部をテーパー状とすることで、箱形凹部23のコーナー部にスムーズに挿入できる。ただし、ピンは、テーパー状でない柱状とすることもできる。このピンは、外周壁のコーナー部に挿入されて、電池セルを箱形凹部に抜けないように確実に固定できる特徴がある。
【0031】
押圧固定部9のピン9Aは、後端の鍔9aを叩いて、あるいは押圧して、箱形凹部23のコーナー部に挿入される。ピン9Aを挿入する箱形凹部23は、ピン9Aを挿入する外周壁22のコーナー部に、ピン9Aを案内するガイド凹部29を設けている。図4のセパレータ2は、底外周壁22Aと両側外周壁22Bとのコーナー部にピン9Aを挿入するので、このコーナー部にガイド凹部29を設けている。ガイド凹部29と、ここに挿入されるピン9Aは、箱形凹部23に電池セル1を挿入する状態で、電池セル1のコーナー部を外周壁22の内面に押圧して固定する。ピン9Aをガイド凹部29に挿入する構造は、ピン9Aを外周壁22のコーナー部にスムーズに挿入して、電池セル1をセパレータ2の箱形凹部23に固定できる。
【0032】
ただし、押圧固定部9は、図6と図7に示すように、セパレータ32に固定された凸部9Bとして、セパレータ32を成形する工程でセパレータ32と一体的に成形することもできる。このセパレータ32は、図6に示すように、外周壁22のコーナー部に突出するように押圧固定部9の凸部9Bを設けている。凸部9Bは、箱形凹部23の開口部に向かって傾斜する姿勢として、電池セル1をスムーズに箱形凹部23に圧入して、箱形凹部23の内部に確実に固定できる。図6と図7に示す凸部9Bは、箱形凹部23の開口部側の端部を部分的に傾斜させているが、凸部は、箱形凹部の開口部に向かって全体的に傾斜させることもできる。このセパレータ32は、図7(a)に示すように、押圧固定部9を設けない側の電池セル1の一部、図にあっては電池セル1の上部を先に挿入して、その後、図7(b)に示すように、外装缶11の底部を圧入して、箱形凹部23に電池セル1を挿入して固定する。このセパレータ32も、押圧固定部9の凸部9Bを底外周壁22Aの両端部に設けているが、凸部は必ずしもこの位置に設ける必要はなく、底外周壁の一端に、あるいは両側外周壁の上部に設けることもできる。
【0033】
セパレータ2は、図8に示すように、箱形凹部23に挿入された電池セル1と外周壁22との隙間にシール剤17を充填し、あるいは、電池セル1と外周壁22との隙間と、電池セル1の主面1Xと絶縁プレート部21との隙間とにシール剤17を充填して、電池セル1の表面をセパレータ2の表面に隙間なく密着することができる。シール剤17には、シリコン系、ウレタン系、エポキシ系のものであって、未硬化な状態ではペースト状のものを使用する。このシール剤は、電池セル1の表面に塗布し、あるいはセパレータ2の内面に塗布し、あるいはまた、電池セル1とセパレータ2内面の両方に塗布されて、電池セル1を箱形凹部23に挿入し、押圧固定部9でもって電池セル1をセパレータ2に固定する状態で、電池セル1をセパレータ2に隙間なく密着できる。この構造は、単に電池セル1をセパレータ2に外れないように確実に固定することに加えて、電池セル1表面の結露を防止できる特徴がある。とくに、セパレータ2は、電池セル1を押圧固定部9で箱形凹部23に固定するので、シール剤17の未硬化な状態にあっても、箱形凹部23に抜けないように固定して、シール剤17を硬化できる。この構造は、電池セル1とセパレータ2との間の隙間を無くして、この部分に水分等が入り込むのを回避すると共に、電池セル1の表面をセパレータ2で被覆して電池セル1表面の結露を防止し、さらに電池セル1の発熱を効率よくセパレータ2に熱伝導して放熱効率を向上させる。
【0034】
さらに、図9と図10のセパレータ2は、外周壁22の幅(W)を電池セル1の厚さ(t)に等しくして、箱形凹部23に挿入される電池セル1の底面1Aと両側面1Bと上面1Cの両側部とを外周壁22でカバーし、さらに、外周壁22の開口部に被覆シート18を接着して、被覆シート18を電池セル1の露出する表面に接着している。被覆シート18は、プラスチックフィルムからなる絶縁シートである。この構造は、セパレータ2の箱形凹部23に電池セル1を挿入する状態で、電池セル1の表面と外周壁22とに接着剤19を塗布して、被覆シート18を付着し、この状態で外周壁22のコーナー部に設けているガイド凹部29に押圧固定部9のピン9Aを挿入して電池セル1をセパレータ2に固定する。セパレータ2に固定される状態で、接着剤19を硬化させて、被覆シート18を電池セル1と外周壁22の開口部とに接着する。ただし、電池セルをピンで箱形凹部に固定する状態で、電池セルと外周壁の開口部とに接着剤を塗布して、被覆シートを接着することもできる。
【0035】
以上の構造は、電池セル1の表面を被覆シート18で被覆することで、この面の結露を防止できる特徴がある。とくに、この構造は、電池セル1とセパレータ2の外周壁22の内面にシール剤を充填することで、電池セル1の結露をより確実に防止できる特徴がある。
【0036】
さらに、以上のセパレータ2は、底外周壁22Aの下面に、下方に突出する凸部24を設けている。凸部24は、組電池の下方に配設されるケースの底板8(図3参照)等のプレートから電池セル1を離して配置する。凸部24は、高くすることで、下方に配設されるプレートからの距離を大きくして、より好ましい絶縁状態を実現する。したがって、凸部24の高さ(H)は、好ましくは、3mmよりも高く、さらに好ましくは4mmよりも高く、最適には5mmよりも高くする。ただ、凸部が高すぎると組電池の全高が高くなるので、凸部24の高さ(H)は、好ましくは20mmよりも低く、さらに好ましくは15mmよりも低くする。凸部24のある底外周壁22Aは、凸部24でもって下面に配設されるプレートから持ち上げられて離された状態に配置される。このセパレータ2は、電池ブロック10の結露水がプレートに流れ落ちる状態となり、またプレートに結露水が付着し、あるいは他の原因でプレートに水が付着しても、この水から電池セル1を離して、絶縁状態に配置できる。
【0037】
図4と図5のセパレータ2は、底外周壁22Aの先端縁に沿って凸部24を設けているが、凸部は、底外周壁の中間に設けることも、あるいは、底外周壁の絶縁プレート部側の下面に設けることもできる。図のセパレータ2は、底外周壁22Aの長手方向に沿って、その全体に凸部24を設けている。この構造は、凸部24を長くできるので、底外周壁22Aの上に載せる電池セル1の耐荷重を大きくできる。ただ、凸部は、底外周壁を、下方に配設されるプレートから離すために設けるので、必ずしも底外周壁の全長に沿って設ける必要はなく、底外周壁に部分的に設けることもできる。さらに、セパレータは、必ずしも底外周壁に凸部を設ける必要はなく、これを省略することもできる。
【0038】
さらに、図4のセパレータ2は、電池セル1の底面1Aの全面をカバーする長さ(L1)の底外周壁22Aを設けている。このセパレータ2は、電池セル1の底面1Aの全面をカバーすることで、電池セル1の底面1Aを、より確実に絶縁しながら保護できる特徴を実現する。
【0039】
さらに、図4に示すセパレータ2は、両側外周壁22Bを、電池セル1の両側面1Bの全面をカバーする長さ(L2)としている。このセパレータ2は、両側外周壁22Bで電池セル1の両側面1Bの全面をカバーすることで、電池セル1の両側面1Bをより確実に絶縁しながら保護できる特徴がある。また、セパレータ2は、底外周壁22A及び両側外周壁22Bの幅(W)を電池セル1の厚さ(t)に等しく、あるいはこれより大きくすることで、電池セル1を挟着する状態で、電池セル1の底面1Aの両側縁部の前面をカバーして、理想的な状態で電池セル1を保護し、かつ絶縁状態に配置できる。
【0040】
上外周壁22Cは、電池セル1の上面1Cの両端部をカバーする位置に設けられる。電池セル1は上面1Cに電極端子13や安全弁の吐出口15を設けているので、この領域を上外周壁22Cでカバーしない。図4のセパレータ2は、上外周壁22Cを両側外周壁22Bに連続する形状として、電池セル1の上面1Cの両端部のコーナー部を外周壁22でカバーしている。このセパレータ2は、両側外周壁22Bの上端を上外周壁22Cに直角に連結する形状とし、かつ両側外周壁22Bの下端を底外周壁22Aに直角に連結する形状としている。
【0041】
さらに、図3ないし図5のセパレータ2は、電池セル1の間に挟まれる絶縁プレート部21に、電池セル1を効率よく冷却するために、外側面に複数の放熱リブ25を設けている。放熱リブ25は、絶縁プレート部21の放熱面積を大きくして電池セル1を効率よく放熱し、さらに、放熱リブ25の間に冷却空気などの冷却気体を強制送風して、電池セル1をより効率よく放熱する。
【0042】
図3のセパレータ2は、絶縁プレート部21に冷却空気を強制送風する送風隙間16を設けている。送風隙間16のあるセパレータ2は、ここに空気などの冷却用の気体を強制送風して電池セル1を強制冷却する。送風隙間16に強制送風して冷却する組電池は、図示しないが、送風隙間16に連結する送風ダクトを対向位置に設けて、この送風ダクトを介して送風隙間16に冷却気体を強制送風して電池セル1を冷却する。ただし、セパレータは、必ずしも放熱リブや送風隙間を設ける必要はない。それは、図示しないが、組電池の底面を、冷媒などで強制冷却される冷却プレートに熱結合して強制的に冷却することができるからである。
【0043】
(エンドプレート)
電池セル1をセパレータ2の箱形凹部23に収納し、電池セル1が定位置に配置されたセパレータ2を複数積層した電池ブロック10は、図2と図3に示すように、両端にセパレータ2を配置する状態で、両端のエンドプレート3で押圧する状態に固定される。エンドプレート3は、アルミニウムやその合金などの金属で製作され、あるいは硬質のプラスチックで製作される。エンドプレート3は、広い面積で電池セル1を挟着するために、その外形を角形の電池セル1と同じ四角形としている。四角形のエンドプレート3は、角形の電池セル1と同じ大きさに、あるいは角形の電池セル1よりもわずかに大きくしている。プラスチック製のエンドプレート3は、直接に電池セル1に積層され、金属製のエンドプレートは、絶縁材を介して電池セルに積層される。
【0044】
エンドプレート3には、連結固定具4の端部が連結される。連結固定具4は、止ネジ5を介してエンドプレート3に連結している。図2と図3の連結固定具4は、止ネジ5でエンドプレート3に固定しているが、連結固定具の端部を内側に折曲してエンドプレートに連結し、あるいはまた、端部をかしめてエンドプレートに連結することもできる。
【0045】
以上の組電池100は、車両に搭載されて車両を走行させるモータに電力を供給する電源装置として使用される。図11に、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッドカーに電源装置90を搭載する例を示す。この図に示す電源装置90を搭載した車両HVは、車両HVを走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、モータ93に電力を供給する組電池を備える電源装置90と、組電池100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置90は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置90の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、たとえば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置90から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置90の電池を充電する。
【0046】
また、図12に、モータのみで走行する電気自動車に電源装置90を搭載する例を示す。この図に示す電源装置90を搭載した車両EVは、車両EVを走行させる走行用のモータ93と、このモータ93に電力を供給する組電池100を備える電源装置90と、この電源装置90の電池を充電する発電機94とを備えている。モータ93は、電源装置90から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置90の電池を充電する。
【符号の説明】
【0047】
1…電池セル 1A…底面
1B…側面
1C…上面
1X…主面
2…セパレータ
3…エンドプレート
4…連結固定具
5…止ネジ
8…底板
9…押圧固定部 9A…ピン
9a…鍔
9B…凸部
10…電池ブロック
11…外装缶
12…封口板
13…電極端子
14…端子ホルダ
15…吐出口
16…送風隙間
17…シール剤
18…被覆シート
19…接着剤
21…絶縁プレート部
22…外周壁 22A…底外周壁
22B…両側外周壁
22C…上外周壁
23…箱形凹部
24…凸部
25…放熱リブ
29…ガイド凹部
32…セパレータ
81…電池セル
82…セパレータ
83…隅凹部
84…隅凸部
90…電源装置
93…モータ
94…発電機
95…インバータ
96…エンジン
100…組電池
HV…車両
EV…車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを絶縁性のセパレータを介して積層しており、かつ、前記セパレータと前記電池セルとを定位置に連結してなる組電池であって、
前記セパレータは、隣接する電池セルの間に挟着される絶縁プレート部の周囲に外周壁を有し、この外周壁の内側に前記電池セルを嵌め込んで定位置に配置する箱形凹部を設けており、
さらに、前記セパレータは、外周壁のコーナー部に、前記箱形凹部に挿入される電池セルのコーナー部を押圧して、箱形凹部に挿入される電池セルを箱形凹部に固定する押圧固定部を設けており、この押圧固定部でもって、箱形凹部に挿入される電池セルをセパレータに固定してなることを特徴とする組電池。
【請求項2】
前記電池セルが、正負の電極と電解液とを収納してなる金属板からなる外装缶の開口部に、正負の電極端子を固定している封口板を溶接して固定しており、
さらに、前記セパレータは、前記外装缶の底面の外側に設けてなる底外周壁と、前記外装缶の側面の外側に設けている両側外周壁とのコーナー部に押圧固定部を設けている請求項1に記載される組電池。
【請求項3】
前記押圧固定部が、箱形凹部に挿入されるピン、又はセパレータに固定された凸部のいずれかである請求項1又は2に記載される組電池。
【請求項4】
前記押圧固定部が箱形凹部に挿入されるピンで、前記セパレータは、底外周壁と両側外周壁とのコーナー部に、前記ピンを案内するガイド凹部を設けている請求項1又は2に記載される組電池。
【請求項5】
前記セパレータの箱形凹部に挿入された電池セルと外周壁との隙間にシール剤を充填してなる請求項1ないし4のいずれかに記載される組電池。
【請求項6】
前記セパレータの箱形凹部に挿入された電池セルと外周壁との隙間と、電池セルの主面と絶縁プレート部との隙間とにシール剤を充填してなる請求項1ないし4のいずれかに記載される組電池。
【請求項7】
前記セパレータの外周壁の幅(W)が、電池セルの厚さ(t)に等しく、
かつ、外周壁の開口部に被覆シートが接着されて、この被覆シートが、前記電池セルの表面に接着されてなる請求項1ないし6のいずれかに記載される組電池。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の組電池でもって、車両を走行させるモータに電力を供給する電動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−119157(P2012−119157A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267742(P2010−267742)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】