説明

結晶質誘電体薄膜の製造方法およびそれにより製造された結晶質誘電体薄膜並びにこれを具備する薄膜キャパシタ

【課題】本発明は、300℃以下の低温で結晶質誘電体薄膜を形成することのできる結晶質誘電体薄膜の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明による結晶質誘電体薄膜の製造方法は、基板上に非晶質誘電体薄膜を形成する段階と、上記非晶質誘電体薄膜を水中に浸漬して水熱処理する段階とを含む。上記非晶質誘電体薄膜を形成する段階は、非晶質誘電体ゾルを基板上にコーティングする段階と、コーティングされた晶質誘電体ゾルをベーキングする段階とを含む。ベーキング後にはベーキング処理された結果物を乾燥する段階をさらに含むことができる。所望の厚さの薄膜を得るために、コーティングとベーキングは多数回繰り返すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタに用いることのできる誘電体薄膜の製造方法に関するものであって、特に300℃以下の低温で誘電体膜を結晶化させることができる結晶質誘電体薄膜の製造方法およびそれにより製造される誘電体薄膜、並びにこれを具備する薄膜キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷回路基板(PCB)において小型化と高周波化の進展により、PCB基板上に搭載され配置された受動素子等が製品の小型化に障害要因として作用している。とりわけ、半導体素子の急激なエンベッディド(embedded)傾向と入力/出力端子数の増加により能動集積回路チップの周囲にキャパシタを含んだ多数の受動素子を配置するための空間を確保しにくくなっている。また、入力端子に安定的な電源を供給するためにデカップリング(decoupling)用キャパシタが使用されるが、このようなデカップリングキャパシタは高周波による誘導インダクタンスを低減させることができるよう入力端子から最近接距離に配置されなければならない。
【0003】
電子素子の小型化と優れた高周波特性に対する要求が高まるにつれ、能動集積回路チップの周囲にキャパシタを最適に配置させる方案として、キャパシタを集積回路チップの直下の基板に内蔵(embedding)させる方法が提案された。特に、薄膜内蔵キャパシタ(thin film embedded capacitor)は、能動集積回路チップの直下の印刷回路基板内に誘電体薄膜を形成して成るキャパシタである。このような薄膜内蔵キャパシタは、能動集積回路チップの入力端子から非常に近接した距離に配置されることで、集積回路チップ端子とキャパシタを連結する導線の長さが短くなり、これにより高周波による誘導インダクタンスが効果的に減少され得る。
【0004】
薄膜内蔵キャパシタから十分なキャパシタンスを得るためには、キャパシタに使用される誘電体薄膜の誘電率が高くなければならない。高い誘電率を得るためには薄膜内の誘電体が結晶質になっているべきである。このような結晶質誘電体薄膜を得るためには、通常的に非晶質状態の誘電体薄膜を基板上に形成した後、熱処理を通じてその薄膜を結晶化させる。即ち、非晶質状態の誘電体薄膜はキャパシタ材料としては不十分であるため、非晶質薄膜を結晶化させるための熱処理段階を必要とする。
【0005】
図1は、従来の結晶質誘電体薄膜を製造する方法を概略的に示すフローチャットである。図1を参照すれば、予めTiOゾル(sol)、またはPLZTゾルなど誘電体ゾルを備えた後、基板上に誘電体ゾルを塗布する(R1段階)。その後、300ないし400℃で塗布された誘電体ゾルを熱分解してゾル内に含まれた有機物等を除去する(R2段階)。これにより、基板上には非晶質状態の誘電体薄膜が形成される。その後、基板上に形成された誘電体薄膜を結晶化させるために、600℃の温度で熱処理し誘電体薄膜を焼成する。これにより、結晶質の誘電体薄膜を得るようになる。下記特許文献1は、二酸化チタンゾルを基板上にコーティングした後、600ないし700℃で熱処理することで結晶質のTiO薄膜を得ることができることを開示している。
【0006】
しかし、このような方法は、600℃以上の高温熱処理工程を伴うため、使用される基板材料に制約がある。即ち、熱に弱いポリマー系のPCB基板には適用しにくい点がある。また、ポリマー系基板以外の基板、例えばセラミック基板を使用しても高温での熱衝撃によって基板または基板上に形成された金属層などが損傷を受ける恐れがある。さらに、高温熱処理工程によって工程費用と時間が増加してしまう。
【特許文献1】特許第2517874号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した問題点を解決するためのものであって、その目的は高温の所定の工程なしでも低温で結晶質誘電体薄膜を形成することができる結晶質誘電体薄膜の製造方法及びそれにより形成される結晶質誘電体薄膜を提供することである。
【0008】
さらに、本発明の他の目的は、上記方法により形成された結晶質誘電体薄膜を具備する薄膜キャパシタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した技術的課題を達成するために、本発明による結晶質誘電体薄膜の製造方法は、基板上に非晶質誘電体薄膜を形成する段階と、上記非晶質誘電体薄膜を水中に浸漬して水熱処理(hydrothermal treatment)する段階とを含む。上記水熱処理は、密閉された空間(例えば密閉されたチャンバ)内で上記非晶質誘電体薄膜を蒸留水中に浸漬して300℃以下の温度で加熱することにより行われる。
【0010】
好ましくは、上記水熱処理段階は80ないし300℃の温度範囲で行う。より好ましくはは、150ないし300℃の温度範囲で行う。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、上記非晶質誘電体薄膜を形成する段階は、非晶質誘電体ゾル(sol)を基板上にコーティングする段階と、上記コーティングされた非晶質誘電体ゾルをベーキング(baking)する段階とを含む。上記ベーキング後には上記ベーキング処理された結果物を乾燥する段階をさらに含むことができる。上記コーティングする段階は、スピンコーティング(spin coating)法、ディップコーティング(dip coating)法、またはスプレーコーティング(spray coating)法などを利用して行うことができる。所望の厚さの薄膜を得るために、上記コーティングとベーキングは多数回繰り返すことができる。
【0012】
本発明の他の実施形態によれば、上記非晶質誘電体薄膜を形成する段階は、基板上に非晶質誘電体薄膜を蒸着する段階を含む。例えば、スパッタリングを利用して基板上に非晶質誘電体薄膜を蒸着することができる。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、上記非晶質誘電体薄膜を形成する段階は基板上に非晶質TiO薄膜を形成する段階を含む。上記非晶質TiO薄膜を形成する段階は、非晶質TiOゾルを基板上にコーティングする段階と、上記コーティングされた非晶質TiOゾルをベーキングする段階とを含むことができる。この場合、ベーキング段階後にベーキングされた結果物を乾燥する段階をさらに含むことができる。好ましくは、上記ベーキング段階は、150ないし250℃の温度で行う。好ましくは、上記乾燥段階は150ないし250℃の温度で行う。他の方案として、上記非晶質TiO薄膜を形成する段階は、例えば、スパッタリング法を利用して基板上に非晶質TiO薄膜を蒸着する段階を含む。TiO薄膜を形成する場合、上記水熱処理は、150ないし250℃の温度で行うことが好ましい。
【0014】
本発明の他の実施形態によれば、上記非晶質誘電体薄膜を形成する段階は、基板上に非晶質PLZT薄膜を形成する段階を含む。上記非晶質PLZT薄膜を形成する段階は、非晶質PLZTゾルを基板上にコーティングする段階と、上記コーティングされた非晶質PLZTゾルをベーキングする段階とを含むことができる。この場合、ベーキング段階後にベーキングされた結果物を乾燥する段階をさらに含むことができる。好ましくは、上記ベーキング段階は150ないし250℃の温度で行う。好ましくは、上記乾燥段階は150ないし250℃の温度で行う。他の方案として、上記非晶質PLZT薄膜を形成する段階は、基板上に非晶質PLZT薄膜を蒸着する段階を含む。PLZT薄膜を形成する場合、上記水熱処理は200ないし300℃の温度で行うことが好ましい。
【0015】
本発明は、上記製造方法によって形成された結晶質誘電体薄膜を提供する。また、本発明は上記製造方法により形成された結晶質誘電体薄膜を具備する薄膜キャパシタを提供する。本発明による薄膜キャパシタは、下部電極及び上部電極と、その間に介在された上記結晶質誘電体薄膜とを含む。上記薄膜キャパシタは薄膜内蔵キャパシタとして有用に使用されることが可能である。
【0016】
本発明によれば、従来と異なって、300℃以下の低温工程を通じて非晶質誘電体薄膜を結晶化させることが可能である。これにより、高温工程時に生じる基板の損傷などがなく、基板材料に対する選択の幅が非常に広くなる。従って、熱に弱いポリマー系基板を使用して薄膜内蔵キャパシタを具現することが可能となる。また、工程が比較的単純で、高温工程が省略されるので、工程費用と時間が節約できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、300℃以下の低温工程を通じて非晶質誘電体薄膜を容易に結晶化させることができる。これにより、高温工程時に生じる基板の損傷などがなく、基板材料に対する選択の幅が非常に広くなる。従って、熱に弱いポリマー系基板を使用して薄膜内蔵キャパシタを具現することが可能となる。また、工程が比較的単純、かつ工程費用と時間が節約できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付された図面を用いて本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な異なる形態で変形されることができ、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。本発明の実施形態は、当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。従って、図面での要素等の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために誇張され得る。
【0019】
図2は、本発明による結晶質誘電体薄膜を製造する方法を示すフローチャットである。図2を参照すれば、先ず基板上に、例えば、TiO、PLZTなどから成る非晶質誘電体薄膜を形成する(S1段階)。その後、非晶質誘電体薄膜が形成された基板を蒸留水が貯まっている水熱処理装置(図10参照)に入れ、水熱処理する(S2段階)。水熱処理は、80ないし300℃で行うことができる。ここで水熱処理とは、密閉された空間に収納された水中に処理対象物を浸漬してから加熱処理することを意味する。水熱処理時、処理対象物は熱エネルギーのみならず、水蒸気による圧力を受けるようになる。
【0020】
使用される基板には、特別な制限がない。高温工程を伴わないため、エポキシ等ポリマー系基板を使用することもできる。上記基板は上部にキャパシタ下部電極のような異種物質層を具備することもできる。また、シリコン(Si)ウェーハや金属箔(foil)を基板として使用することもできる。とりわけ、金属箔上に結晶質誘電体薄膜を作製すれば、これにより得られた金属/誘電体の多層構造がPCB基板に直接付着できる。このようにPCB基板上に付着された金属/誘電体の多層構造は薄膜内蔵キャパシタとして有用に使用され得る。
【0021】
基板上に形成される誘電体は、例えば、TiO、PLZTなどがある。このような誘電体は結晶化されている場合、十分な誘電率を表すことによって、薄膜キャパシタ用誘電体として使用され得る。しかし、本発明が上記2種の誘電体に限定されるわけではなく、他種類のセラミック誘電体が使用されるとができ、誘電体には各種添加剤が添加されることもできる。
【0022】
本発明者らは、繰り返された実験を通じて、非晶質誘電体薄膜は300℃以下の低温でも水熱処理により十分に結晶化されるということを見出した。本発明によれば、非晶質誘電体薄膜を300℃以下の温度で水熱処理することによって、別の高温熱処理工程なしでも30以上の高誘電率を有する結晶質誘電体薄膜を得ることが可能となる。
【0023】
好ましくは、上記水熱処理は80ないし300℃の温度範囲で行う。さらに好ましくは、150ないし300℃の温度範囲で行う。水熱処理温度が80℃より低くなれば、非晶質誘電体薄膜の結晶化が十分な速度で進まない。また、水熱処理温度が300℃を超えるとしても結晶化速度に大きく影響を及ぼさず、水熱処理装置内の圧力が高くなり水熱処理装置の保持及び補修費用が増加することがあり得る。結晶質TiO薄膜を得るための水熱処理は、150ないし250℃の温度で行うことが好ましい。結晶質PLZT薄膜を得るための水熱処理は、200ないし300℃の温度で行うことが好ましい。
【0024】
本発明によれば、上記S1段階において適用できる非晶質誘電体薄膜形成方法では特別な制限がない。例えば、非晶質誘電体ゾルを基板上にコーティングし、コーティングされたゾル内の有機物質を除去するようベーキング(baking)することによって、非晶質誘電体薄膜を得ることができる。コーティング方法としては、スピンコーティング(spin coating)、ディップコーティング(dip coating)、またはスプレーコーティング(spray coating)など多様な方法を使用することができる。また、所望の厚さの誘電体薄膜を得るために、上記コーティングとベーキングを多数回繰り返すこともできる。上記コーティングとベーキングは、150ないし250℃の温度範囲で行うことが好ましい。最終ベーキングが完了した後には、150ないし250℃の温度範囲で乾燥工程を行うことができる。
【0025】
非晶質誘電体薄膜を得るための他の方案として蒸着法を使用することもできる。例えば、スパッタリングを利用して上記基板上に非晶質誘電体薄膜を蒸着することもできる。
【0026】
以下、本発明の諸実施例による結晶質誘電体薄膜の製造方法を説明する。
【実施例1】
【0027】
第1実施例では、ゾル-ゲルスピンコーティング(sol-gel spin coating)法と水熱処理を利用して基板上に結晶質TiO薄膜を形成した。このために先ず、Siウェーハ上にSiO膜、Ti膜ど及びPt膜が順次に積層された基板を用意する。その後、該Pt/Ti/SiO/Si基板上に非晶質TiOゾル(sol)をスピンコーティングを利用してコーティングした。上記非晶質TiOゾルは、チタニウムアルコキシド(titanium alkoxide)をアルコキシアルコール(alkoxy alcohol)中で加水分解して得たものである。チタ二ウムアルコキシドとしては、チタニウムイソプロポキシド(titanium isopropoxide)を用いた。スピンコーティングは、1回当り20秒間4000rpmで実施した。
【0028】
次に、ゾル内の有機物質を除去するために上記コーティングされたTiOゾルを200℃でベーキング処理した。こうしたコーティングとベーキング工程を3回繰り返して行った。最後のベーキング工程が完了した後には、ベーキングされた結果物を200℃の温度で加熱して乾燥させた。かかる工程段階を経ることによって、上記Pt/Ti/SiO/Si基板上に300nm厚さの非晶質TiO薄膜を得た。図7a及び図7bは、上記コーティング、及びベーキング、並びに乾燥段階を経って得たTiO薄膜の表面と断面を示すSEM写真である。図7a、7bに示しているように、上記TiO薄膜は結晶質の粒子のない非晶質状態を示している。
【0029】
次に、上記非晶質TiO薄膜を200℃の温度で水熱処理した。水熱処理は図10に示しているようなオートクレーブ(autoclave)形態の水熱処理装置10を使用して行うことができる。図10を参照すれば、水熱処理装置10は、外壁50内で密閉空間を提供するチャンバ54を含む。チャンバ54内には蒸留水58が貯まっている容器56が設置されており、温度測定のための熱電対(thermocouple)62が設置されている。外壁50内に、そしてチャンバ54外には、ヒーター52が設置されている。非晶質TiO薄膜を水熱処理するために、非晶質TiO薄膜が形成されている基板Sを密閉された空間内の蒸留水58に浸漬した後、チャンバ54内部を約200℃の温度で加熱した。
【0030】
かかる水熱処理によって非晶質TiO薄膜は結晶質に変わった。このように得られた結晶質TiO薄膜は、図8a及び図8bのSEM写真に示されている。図8aは本実施例により製造された結晶質TiO薄膜の表面を示し、図8bはその断面を示す。図8a及び図8bに示しているように、結晶質の多数粒子が示されている。このような結晶状態によって、本実施例によって最終的に得たTiO薄膜は高い誘電率を示す。
【実施例2】
【0031】
第2実施例では、ゾル-ゲルスピンコーティング(sol-gel spin coating)法と水熱処理を利用して基板上に結晶質PLZT薄膜を形成した。このために先ずPt/Ti/SiO/Si基板を用意した。該Pt/Ti/SiO/Si基板上に非晶質PLZTゾル(sol)をスピンコーティングを利用してコーティングした。上記非晶質PLZTゾルは、メタノール系鉛アセテート三水化物(methanol-based lead acetate trihydrate)、チタニウムイソプロポキシド、ランタンイソプロポキシド(lanthanum isopropoxide)、ジルコニウムN-ブトキシド(zirconium N-butoxide)から得たものである。スピンコーティングは、1回当り20秒間4000rpmで実施した。
【0032】
次に、ゾル内の有機物質を除去するために、上記コーティングされたPLZTゾルを200℃でベーキング処理した。このようなコーティングとベーキング工程を3回繰り返して行った。最後のベーキング工程が完了した後には、ベーキングされた結果物を200℃の温度で加熱し乾燥させた。このような工程段階を経ることによって、上記Pt/Ti/SiO/Si基板上に300nm厚さの非晶質PLZT薄膜を得た。
【0033】
次に、図10に示しているような水熱処理装置10を使用して、上記非結晶質PLZT薄膜を250℃の温度で水熱処理した。このような水熱処理によって非晶質PLZT薄膜は結晶質に変わった。こうして得られた結晶質PLZT薄膜は図11a及び図11bのSEM写真に表している。図11aは本実施例によって作製された結晶質PLZT薄膜の表面を示しており、図11bはその断面を示す。図11a及び11bに示しているように、SEM写真には結晶質の多数粒子が表している。このような結晶状態によって、本実施例によって最終的に得たPLZT薄膜は高い誘電率を示す。
【0034】
図3ないし図6は、本発明の一実施形態による薄膜キャパシタの製造方法を説明するための断面図である。先ず、図3を参照すれば、例えばポリマー系PCB基板、シリコンウェーハまたはセラミック基板などから成る基板101上に金属膜103を形成する。該金属膜103はキャパシタの下部電極を成す。金属膜103では、例えば、銅箔(Cu foil)を使用することができる。
【0035】
その後、図4に示しているように、金属膜103上に非晶質誘電体薄膜105を形成する。該非晶質誘電体薄膜105は、例えば、上記第1または2実施形態で説明した非晶質誘電体薄膜の形成法、またはスパッタリング法により形成され得る。
【0036】
その後、上記結果物102を図10に示しているような水熱処理装置10に入れ、80ないし300℃の温度範囲で水熱処理を行うことによって、上記非晶質誘電体薄膜105を結晶化させる。これにより、図5に示しているように、結晶質誘電体薄膜105'を得るようになる。次に、図6に示しているように、結晶質誘電体薄膜105'上に金属膜107を形成する。該金属膜107はキャパシタの上部電極を成す。これにより、本実施形態による薄膜キャパシタを得るようになる。該薄膜キャパシタは薄膜内蔵キャパシタとして有用に使用され得る。
【0037】
図9は、このように作製してから得た薄膜キャパシタの周波数によるキャパシタンスを示すグラフである。特に、図9のキャパシタンスは、上記第1実施例により製造された結晶質TiO薄膜を具備した薄膜キャパシタのキャパシタンスを示す。図9に示しているように、本発明により作製された誘電体薄膜を用いた薄膜キャパシタは、従来の高温熱処理を通じて得た誘電体薄膜を用いた薄膜キャパシタのキャパシタンスに類似するか、若干高いキャパシタンスを示す。図9に示したキャパシタンス測定に使用された従来と本発明の薄膜キャパシタンスは、全て同一なサイズと厚さを有し、誘電体としてTiOを使用したものである。このように、本発明によれば、300℃以下の低温工程でも良質の結晶質誘電体薄膜を得ることができ、十分なキャパシタンスを有する薄膜キャパシタを製造することが可能となる。
【0038】
本発明は、上述した実施形態及び添付された図面によって限定されるものではなく、添付された請求範囲によって限定されるものである。また、本発明は請求範囲に記載した本発明の技術的思想を外れない範囲内において多様な形態の置換、変形及び変更が可能であることは当技術分野の通常の知識を有する者にとっては自明である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】従来の結晶質誘電体薄膜の製造方法を概略的に示すフローチャットである。
【図2】本発明による結晶質誘電体薄膜の製造方法を概略的に示すフローチャットである。
【図3】本発明の一実施形態による薄膜キャパシタ(thin film capacitor)を製造する方法を説明するための断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による薄膜キャパシタ(thin film capacitor)を製造する方法を説明するための断面図である。
【図5】本発明の一実施形態による薄膜キャパシタ(thin film capacitor)を製造する方法を説明するための断面図である。
【図6】本発明の一実施形態による薄膜キャパシタ(thin film capacitor)を製造する方法を説明するための断面図である。
【図7a】本発明の一実施形態による製造工程中の水熱処理前のTiO薄膜の表面を示すSEM写真である。
【図7b】図7aのTiO薄膜の断面を示すSEM写真である。
【図8a】本発明の一実施形態によって水熱処理されたTiO薄膜の表面を示すSEM写真である。
【図8b】図8aのTiO薄膜の断面を示すSEM写真である。
【図9】本発明の一実施形態により製造された結晶質TiO薄膜を用いた薄膜キャパシタのキャパシタンスを示すグラフである。
【図10】本発明による製造工程中に使用され得る水熱処理装置を概略的に示す断面図である。
【図11a】本発明の一実施形態により水熱処理されたPLZT薄膜の表面を示すSEM写真である。
【図11b】図11aのPLZT薄膜の断面を示すSEM写真である。
【符号の説明】
【0040】
101 基板 103、107 金属膜
105 非晶質誘電体薄膜 105' 結晶質誘電体薄膜
50 外壁 52 ヒーター
54 密閉されたチャンバ 56 容器
58 蒸留水 62 熱電対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に非晶質誘電体薄膜を形成する段階と、
上記非晶質誘電体薄膜を水中に浸漬して水熱処理する段階と、
を含むことを特徴とする結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項2】
上記水熱処理段階は、密閉された空間内で上記非晶質誘電体薄膜を蒸留水中に浸漬して300℃以下の温度で加熱することにより行われることを特徴とする請求項1に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項3】
上記水熱処理段階は、80ないし300℃の温度で行うことを特徴とする請求項1に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項4】
上記水熱処理段階は、150ないし300℃の温度で行うことを特徴とする請求項1に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項5】
上記非晶質誘電体薄膜を形成する段階は、非晶質誘電体ゾルを基板上にコーティングする段階と、
上記コーティングされた非晶質誘電体ゾルをベーキングする段階と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項6】
上記ベーキング段階後には、上記ベーキング処理された結果物を乾燥する段階をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項7】
上記コーティングする段階は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、またはスプレーコーティング法とを利用して行うことを特徴とする請求項5に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項8】
上記コーティングとベーキングは多数回繰り返すことを特徴とする請求項5に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項9】
上記非晶質誘電体薄膜を形成する段階は、基板上に非晶質誘電体薄膜を蒸着する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項10】
上記非晶質誘電体薄膜を蒸着する段階は、基板上に非晶質誘電体薄膜をスパッタリングする段階を含むことを特徴とする請求項9に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項11】
上記非晶質誘電体薄膜を形成する段階は、基板上に非晶質TiO薄膜を形成する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項12】
上記非晶質TiO薄膜を形成する段階は、非晶質TiOゾルを基板上にコーティングする段階と、
上記コーティングされた非晶質TiOゾルをベーキングする段階と、
を含むことを特徴とする請求項11に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項13】
上記ベーキング段階後にベーキングされた結果物を乾燥する段階をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項14】
上記ベーキングする段階は、150ないし250℃の温度で行うことを特徴とする請求項12に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項15】
上記乾燥段階は、150ないし250℃の温度で行うことを特徴とする請求項13に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項16】
上記非晶質TiO薄膜を形成する段階は、基板上に非晶質TiO薄膜を蒸着する段階を含むことを特徴とする請求項11に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項17】
上記非晶質TiO薄膜を蒸着する段階は、基板上に非晶質TiO薄膜をスパッタリングする段階を含むことを特徴とする請求項16に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項18】
上記水熱処理段階は、150ないし250℃の温度で行うことを特徴とする請求項11に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項19】
上記非晶質誘電体薄膜を形成する段階は、上記基板上に非晶質PLZT薄膜を形成する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項20】
上記非晶質PLZT薄膜を形成する段階は、非晶質PLZTゾルを基板上にコーティングする段階と、
上記コーティングされた非晶質PLZTゾルをベーキングする段階と、
を含むことを特徴とする請求項19に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項21】
上記ベーキング段階後にベーキングされた結果物を乾燥する段階をさらに含むことを特徴とする請求項20に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項22】
上記ベーキングする段階は、150ないし250℃の温度で行うことを特徴とする請求項20に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項23】
上記乾燥段階は、150ないし250℃の温度で行うことを特徴とする請求項21に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項24】
上記非晶質PLZT薄膜を形成する段階は、基板上に非晶質PLZT薄膜を蒸着する段階を含むことを特徴とする請求項19に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項25】
上記非晶質PLZT薄膜を蒸着する段階は、基板上に非晶質PLZT薄膜をスパッタリングする段階を含むことを特徴とする請求項24に記載の結晶質誘電体薄膜の製造方法。
【請求項26】
請求項1乃至請求項25のいずれかの1項の製造方法により形成されたことを特徴とする結晶質誘電体薄膜。
【請求項27】
下部電極と、
上記下部電極上に形成された請求項26の結晶質誘電体薄膜と、
上記結晶質誘電体薄膜上に形成された上部電極と、
を含むことを特徴とする薄膜キャパシタ。
【請求項28】
上記薄膜キャパシタは、薄膜内蔵(embedded)キャパシタであることを特徴とする請求項27に記載の薄膜キャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図11a】
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【図11b】
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【公開番号】特開2006−339158(P2006−339158A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153256(P2006−153256)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】