説明

給液遮断弁

【課題】 液体が流れるときには弁室内において球体弁をより確実に安定させ、タンクの液体がなくなったときに確実に流路を閉止することができる給液遮断弁を提供する。
【解決手段】 ガス圧によって付勢された液体流路の途中にあって、一次側流路11,112と、二次側流路14と、その間には弁室13を備え、この弁室13の二次側流路14には弁座21を設けると共に、弁室13内には流路内の液体よりも比重が小さい球体弁16を設け、一次側流路11,12の弁室13に対する流入部23よりも弁座21を低く位置させる。また弁室13の内壁との間に隙間13bを形成した状態で弁室13内に筒状体30を設け、流入部23を筒状体30の内側に設けると共に、球体弁16を筒状体30に収容する。そして筒状体30の側面に、流入部23から流入する液体を隙間13bに導くための開口31を設けた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールボンベなどから加圧によって液体をサーバに供給する液ラインの途中に設けられるもので、ボンベの液体がなくなったときには確実かつ素早く閉弁することができる弁装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に業務用ビールサーバは、ビールを充填したタンクからビールを供給する際に炭酸ガスの加圧によってビールをタンクから押し出すように構成される。そして、タンクにビールが残存しているうちは炭酸ガスがビールタンクの内液面を押し下げ、これによってビールは外部に向かって供給される。このような装置ではビールがタンクに残っていて正常に機能しているときはよいが、ビールの残量がなくなったときには泡と炭酸ガスが勢いよくサーバ側に放出されることになり、不都合である。
【0003】
この種の問題を解決するため、例えば特許文献1に開示される給液遮断弁が知られている。かかる給液遮断弁は、弁室内に供給液体よりも比重の小さい球体弁が設けられており、弁室内に液体の適正な渦流が形成されている場合には、球体弁がその渦流に引き込まれ弁室内の所定位置で回転しながら安定する。そしてタンクの液体残量がなくなると球体弁はガス圧によって弁座に着座して液体の供給を自動停止する機能を有している。
【0004】
また、この給液遮断弁は、球体弁が弁座に着座して液体供給を停止した状態を解除するために、弁座と並列にリセット弁を別途設けた構造となっている。
【0005】
【特許文献1】特許第3611027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の給液遮断弁はその使用状態において所期の目的を有効に果たしており、特に問題を有するものではないが、本発明者はこれに対して更なる改良を行った。即ち、本発明は、上記従来の給液遮断弁の改良に係るものであり、液体が流れるときには弁室内において球体弁をより確実に安定させ、タンクの液体がなくなったときに確実に流路を閉止することができる給液遮断弁を提供すると共に、弁室内にリセット用の弁構造を別途設けることなく、球体弁が弁座に着座して液体供給を停止した状態を比較的簡単に解除することができる給液遮断弁を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る給液遮断弁が採用したところは、ガス圧によって付勢された液体流路の途中にあって、一次側流路と、二次側流路と、その間には弁室を備え、この弁室の前記二次側流路には弁座を設けると共に、前記弁室内には流路内の液体よりも比重が小さい球体弁を備え、前記一次側流路の弁室に対する流入部よりも前記弁座を低く位置させた給液遮断弁において、弁室の内壁との間に隙間を形成した状態で弁室内に筒状体を設け、前記流入部が筒状体の内側に設けられると共に、前記球体弁が筒状体に収容されており、筒状体の側面には前記流入部から流入する液体を前記隙間に導くための開口を設けた点にある。これにより、給液遮断弁を液体が流れる場合には、球体弁が筒状体の内側で回転しながら渦流に引き込まれる。このとき、弁室において弁座に向かう液流は、筒状体の内側を通る主流と、筒状体の外側の前記隙間を通る副流とに分流される。そのため、主流成分が強い流れとなることはなく、球体弁は筒状体内側の所定位置でより確実に安定する。
【0008】
また、上記給液遮断弁においては、前記筒状体を筒中心軸周りに回動可能とすると共に、筒状体の下部には球体弁が弁座に着座した状態を解除する解除手段を設け、筒状体の回動動作に伴って解除手段が前記球体弁を弁座から離脱させるように構成することが好ましい。これにより、弁室内に解除用の弁構造を別途設ける必要がなくなり、比較的簡単な構造となる。
【0009】
このような解除手段は、例えば、筒状体の下端部を弁座とほぼ同じ高さ位置若しくはそれよりも更に低い位置にまで延設し、その裾部分の少なくとも一部に球体弁が通過することのできる切欠部を設けることにより形成できる。また、筒状体の下端部から下方に延びる棒体を設け、該棒体を少なくとも弁座とほぼ同じ高さ位置にまで延設することにより、この棒体を解除手段としてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る給液遮断弁によれば、弁室において弁座に向かう液流が、筒状体の内側を通る主流と、筒状体の外側の隙間を通る副流とに分流される構造としたので、筒状体内側の主流成分はそれ程大きな流れにはならず、筒状体内側での渦流形成がより確実に行われ、常に球体弁を安定した位置に留めておくことができる。その一方、タンクの液体がなくなったときには球体弁が確実に流路を閉止できる構造となっている。
【0011】
また、筒状体を筒中心軸周りに回動可能なように構成すると共に、筒状体の下部に球体弁が弁座に着座した状態を解除する解除手段を設け、筒状体の回動動作に伴って解除手段が球体弁を弁座から離脱させる構成を採用すれば、弁室内に解除用の弁構造を別途設ける必要がなく、球体弁が弁座に着座して液体供給を停止した状態を比較的簡単に解除できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を詳述する。図1は本発明に係る給液遮断弁5を備えた液体供給装置の全体を示す図である。例えば、この液体供給装置は業務用ビールサーバ装置として提供されるものであり、ビールタンク1と、ビールタンク1の内圧に対して加圧するための炭酸ガスボンベ2と、内部に冷却機構が内蔵された公知のビールサーバ3、ビールを注ぎだすためのコック4とを備えて構成される。そして本発明に係る給液遮断弁5は、ビールタンク1およびこれに接続された炭酸ガスボンベ2の下流に設けられる。
【0013】
図2乃至図5は本実施形態における給液遮断弁5の内部機構を示す図である。尚、各図においてはビール(液体)の流路を矢印で示している。この給液遮断弁5は、ハウジング10、弁座保持具20、底板22、固定具24、連結具25及び筒状体30を備え、遮断弁内部に一次側流路11,12と弁室13と二次側流路14を形成すると共に、弁室13の内部にビール等の液体よりも比重が軽い球体弁16を設けている。
【0014】
弁座保持具20はハウジング10内部の二次側流路14の下部に装着され、弁室13から二次側流路14への入口となる部分に、Oリングからなる弁座21を保持する。底板22はハウジング10の底部に装着される。この底板22には一次側流路11,12の液体を弁室13に導くための円筒状の流入部23が立設されており、底板22がハウジング10の底部に装着されたとき、流入部23は弁室13の内部にまで突出して弁室13への流入口が弁座21よりも高い位置となる。そして固定具24は底板22をハウジング10の底部に装着した状態で固定すると共に、遮断弁を上流側流路に取り付けるための機能を有している。尚、連結具25は二次側流路14を外部配管に連結するためのものである。
【0015】
一方、筒状体30は弁室13よりも内径が小さい円筒体であり、その上部には、弁室13の天井部に形成された貫通孔を通ってハウジング外部に導出された頭部34を有している。この頭部34は、弁室13を液密状態に保ったまま、筒状体30の中心軸33周りに回動可能にハウジング10に固定される。そして頭部34には筒状体30をR方向に回動操作するための操作部35が取り付けられる。
【0016】
この筒状体30は、弁室13の内壁との間に一定の隙間を形成した状態で弁室13内に設けられる。したがって、弁室13は筒状体30によって内室部13aと外室部13bに仕切られ、内室部13aは筒状体30の内側となり、外室部13bは筒状体30の側壁と弁室13の内壁との一定の隙間となる。尚、この隙間は球体弁16の径よりも小さな隙間である。そして筒状体30の側壁は弁室13の下方にまで延設されており、流入部23は筒状体30の内側の内室部13aに設けられた状態になると共に、球体弁16は筒状体30の内側に収容される。そして筒状体30には、流入部23から流入する液体を、弁室13の内壁と筒状体側壁との間に形成された隙間の外室部13bに導出するための開口部31が流入部23よりも高い位置に設けられる。この開口部31は球体弁16よりも小径の開口である。また筒状体30を包囲する外室部13bにおいてほぼ均等な液流を形成するためには、複数の開口部31を筒状体30の側面周りにほぼ均等な間隔で配置することが好ましい。
【0017】
また筒状体30下部の裾部分には、球体弁が弁座に着座した状態を解除する解除手段37が設けられる。本実施形態の解除手段37は、筒状体30の下端部が弁座21とほぼ同じ高さ位置若しくはそれよりも更に低い位置にまで延設され、その裾部分の少なくとも一部に球体弁16が移動することのできる大きさで形成されたアーチ状の切欠部32によって構成される。この解除手段は、後述するように、タンク1のビール残量が所定以下となることにより球体弁16が弁座21に着座してビールの供給を停止した後、タンク1を新規なものに交換したときに球体弁12の着座状態を解除して、ビールの供給を再開する機能を有するものであり、このための解除作業は操作部35を中心軸33の周りのR方向に回動させることによって行う。
【0018】
上記構成の給液遮断弁5は、例えば固定具24を外せば、底板22をハウジング10の底部から取り出すことができる。また、筒状体30の頭部34から操作部35を取り外せば、筒状体30もハウジング10の下方から取り出すことができる。そして弁座保持具20及び球体弁16等もハウジング10から取り出し可能である。したがって、給液遮断弁5は比較的簡単に分解して各構成部材を取り出すことができる構造を有しており、各構成部材を個別に洗浄して再度組み付けることにより、何度も繰り返して使用することが可能な態様である。
【0019】
次に、給液遮断弁5の動作を説明する。先ず、図2はコック4を開いてビールが炭酸ガスによって加圧された状態でビールサーバ3に向かって流れているところを示している。このとき筒状体30に形成されたアーチ状の切欠部32は、弁座21に対向する位置に向けられる。ビールは矢印のように一次側流路11,12から流入部23を通って弁室13内に流入し、筒状体30の内側の内室部13aで大きな渦流を形成する。そして内室部13aに流入した液体の大部分は、内室部13aから弁座21に向かう主流を形成する一方、内室部13aに流入した液体の一部は、筒状体30の開口部31を介して弁室13の内壁と筒状体側壁との隙間に形成された外室部13bに流出し、そこから弁座21に向かう副流を形成する。主流と副流の双方はアーチ状切欠部32の辺りで合流し、弁座11を介して二次側流路14に流れ込み、図1のビールサーバ3に供給される。球体弁12は液体よりも比重が小さいので浮力によって弁室13内で浮こうとするが、内室部13aの渦流に引き込まれておよそ図示した位置で回転しながら安定する。
【0020】
次にコック4を閉じてビールの供給を一時停止した場合には、給液遮断弁5の態様は図3に移行する。コック4はビールの流路において最終の給液停止弁として機能するが、給液遮断弁5は流路の途中に位置するので、コック4が閉じられたとき、給液遮断弁5の内部は液密の状態で流体が安定する。そうすると、球体弁16は液体よりも比重が小さいので、その浮力によって弁室13の筒状体30の内側で最高位に浮き上がることになる。流体はコック4を開くまで安定した状態を維持するので、球体弁16も図示した位置で停止する。
【0021】
そして、再びコック4を開いてビールなどを供給すれば流体が流路を形成するので、球体弁16が渦流に引き込まれて図2の状態に復帰する。給液遮断弁5においては流入部23を少なくとも弁座21よりも高い位置に設けているので、球体弁16は適切に渦流に引き込まれ、所定位置で回転しながら安定する。また流路内に急激な水流が生じた場合であっても、その急激な液流の一部を、筒状体30に設けた開口部31から弁室13の内壁と筒状体側壁との隙間で形成した外室部13bに送り出し、そこから副流として弁座21に導くので、筒状体30の内側に形成される主流成分を減少させ、筒状体30の内側には適切な渦流が形成される構造となっている。そのため、筒状体30の内側において球体弁16は常に安定した位置で回転することになる。
【0022】
続いて、図2の状態を維持している間にビールタンク1の流体残量がなくなった場合、弁室13内の液体は乱流を形成しながら炭酸ガスによって二次側流路14に押し出されるが、液位が低下することにしたがって球体弁16の位置も降下することになる。そして、さらに炭酸ガスの加圧が継続しているため、図4に示したように、球体弁16は瞬間的にアーチ状の切欠部32を潜って弁座21に押し付けられた状態で着座し、遮断弁の機能を発揮する。この後は炭酸ガスの加圧が継続しているので、弁室13内は高圧状態となり、球体弁16は弁座21から離脱することがない。
【0023】
そして、空のビールタンク1を満杯のタンクに取り替えた場合には、弁室13内にビールが充満した後に、図5に示すように操作部35をR方向に回動させ、球体弁16が流路を閉止した状態を解除するための操作を行う。この解除操作により、筒状体30は中心軸33を中心にR方向に回動し、アーチ状切欠部32の縁部が弁座21に着座した球体弁16に当たって、強制的に球体弁16を弁座21から離脱させ、流路の閉止状態を解除する。これにより、弁室13から二次側流路14への流路が確保される結果、流入部23から弁室13へのビールの流入が可能な状態となる。そして球体弁16は浮力によって浮上すると共に、流入する液体によって形成される渦流に引き寄せられる。こうした作用によって、解除操作時には球体弁12は瞬時に図2に示した位置に復帰し、ビールサーバ3へのビールの供給を再開することができる。尚、ここまでの動作は瞬時であり、ビールの供給が再開されたなら、速やかに操作部35を元の位置に戻し、切欠部32を弁座21に対向する位置に向けておくことが必要である。
【0024】
このように本実施形態では、筒状体30の下部に設けた切欠部32が、球体弁16が弁座21に着座した状態を解除する解除手段37として機能するので、弁室13内に別途リセット弁等の構造物を設ける必要がなく、比較的簡単な構造で解除機能が実現されており、しかもその解除操作は極めて簡単なものとなっている。
【0025】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述したものに限定されるものではない。例えば、上記実施例では、弁座21とほぼ同じ高さ位置若しくはそれよりも更に低い位置にまで延設された筒状体30の少なくとも一部に球体弁16が通過することのできる切欠部32を設けることによって、球体弁16が弁座21に着座した状態を解除するための解除手段37が構成される場合を例示した。しかし、本発明における解除手段はこのような態様に限定されるものではなく、例えば筒状体30の下端部が弁座21よりも高いと位置となるように形成され、その下端部の少なくとも1箇所に下方に延びる棒体を設けると共に、この棒体を少なくとも弁座21とほぼ同じ高さ位置にまで延設することにより、解除手段37を構成してもよい。この場合、筒状体30の回動動作に伴って、筒状体30の下端から延設された棒体が弁座21に着座した球体弁16に当たり、強制的に球体弁16を弁座21から離脱させて流路の閉止状態を解除できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る給液遮断弁を備えた液体供給装置の全体を示す図である。
【図2】給液遮断弁における給液時の状態を示す図である。
【図3】給液遮断弁における給液の一時停止時の状態を示す図である。
【図4】給液遮断弁においてタンクのビール残量がなくなった状態を示す図である。
【図5】給液遮断弁において解除手段を操作した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ビールタンク
2 炭酸ガスボンベ
3 ビールサーバ
4 コック
5 給液遮断弁
11,12 一次側流路
13 弁室
13a 内室部
13b 外室部
14 二次側流路
16 球体弁
21 弁座
23 流入部
30 筒状体
31 開口部
32 切欠部
33 中心軸
35 操作部
37 解除手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス圧によって付勢された液体流路の途中にあって、一次側流路と、二次側流路と、その間には弁室を備え、この弁室の前記二次側流路には弁座を設けると共に、前記弁室内には流路内の液体よりも比重が小さい球体弁を備え、前記一次側流路の弁室に対する流入部よりも前記弁座を低く位置させた給液遮断弁において、
弁室の内壁との間に隙間を形成した状態で弁室内に筒状体を設け、前記流入部が筒状体の内側に設けられると共に、前記球体弁が筒状体に収容されており、筒状体の側面には前記流入部から流入する液体を前記隙間に導くための開口が設けられて成ることを特徴とする給液遮断弁。
【請求項2】
前記筒状体は筒中心軸周りに回動可能とすると共に、筒状体の下部には球体弁が弁座に着座した状態を解除する解除手段を設けており、前記筒状体の回動動作に伴って前記解除手段が前記球体弁を弁座から離脱させることを特徴とする請求項1記載の給液遮断弁。
【請求項3】
前記解除手段は、筒状体の下端部を弁座とほぼ同じ高さ位置若しくはそれよりも更に低い位置にまで延設し、その裾部分の少なくとも一部に球体弁が通過することのできる切欠部を設けて形成されることを特徴とする請求項2記載の給液遮断弁。
【請求項4】
前記解除手段は、筒状体の下端部から下方に延びる棒体を設け、該棒体を少なくとも弁座とほぼ同じ高さ位置にまで延設して形成されることを特徴とする請求項2記載の給液遮断弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−1635(P2007−1635A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185459(P2005−185459)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(595151121)株式会社ヰゲタ (11)
【Fターム(参考)】