説明

給紙装置および画像形成装置および用紙パック

【課題】包装紙の所定の一部を残したままでの用紙の装填を許容するとともに,特別な機構なくしてそのその包装紙を除去するようにした給紙装置,その給紙装置を有する画像形成装置,その給紙装置への装填に適した用紙パックを提供すること。
【解決手段】用紙パックとして,包装紙91に,搬送方向側方の側方ミシン目と,搬送方向前方の前方ミシン目93とが形成されているものを用いる。側方ミシン目を破って包装紙91のうち側面の部分を取り除き,用紙束13に搬送方向と平行に帯状の包装紙91が巻き付いている状態として給紙カセットに装填する。すると,給紙ローラ14がまず逆回転することにより,前方ミシン目93を破る。その後に給紙ローラ14を正回転させることにより,包装紙91は通常の用紙搬送時のように送出され排紙部に排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,画像形成装置等,用紙を用いる装置における用紙の供給源たる給紙装置であって,用紙の装填を容易に行うことができるようにした給紙装置に関する。本発明はまた,その給紙装置を用いた画像形成装置に関する。本発明はさらに,その給紙装置に装填されるのに適した用紙パックにも関する。
【背景技術】
【0002】
従来から,画像形成装置等では,給紙装置を備え,使用するシート状の用紙をこの給紙装置に装填するようにしている。給紙装置に装填される用紙は,給紙ミスの防止等のため,きちんと整頓された状態で装填されるべきである。一方,装填される用紙は通常,多数枚(例えば250枚)を積み重ねて包装紙で包装した状態で提供されている。この,包装された状態では当然,多数の用紙がきれいに整頓されている。
【0003】
しかしながら給紙装置への装填時には通常,包装を解かなければならない。包装を解かれた用紙は,単なる積み重ね状態であり,きちんと整頓された状態を当然に維持するものではない。このため,包装を解かれた用紙を,きちんと整頓された状態を維持したまま給紙装置に装填することは必ずしも容易ではない。そこで,包装紙の一部を残したまま給紙装置に装填できるようにする技術が提案されている。例えば特許文献1では,包装紙のうち,用紙取り出し側の端面のみを取り除いた状態で給紙装置にセットするようにしている。そして,残りの包装紙は,用紙が給紙装置にセットされたあとで,用紙取り出し側の反対側から引っ張って除去することとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−187185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら前記した従来の技術には,次のような問題点があった。まず,用紙取り出し方向の反対側に,包装紙の一部を噛み込んだり引っ張ったりする機構が必要である。このため装置構成が複雑である。さらに,用紙を装填する動作においても,包装紙の一部を前記機構に噛み込ませる必要があり,煩雑であった。また,2以上の用紙パックを同時に装填した場合や,用紙がある程度残っている上に用紙パックを追加で装填したときなどには除去動作に難があった。さらに,前記機構により除去された包装紙の排出,収納のためのスペースを設ける必要があった。
【0006】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,包装紙の所定の一部を残したままでの用紙の装填を許容するとともに,特別な機構なくしてそのその包装紙を除去するようにした給紙装置,その給紙装置を有する画像形成装置,その給紙装置への装填に適した用紙パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の給紙装置は,複数枚の用紙を収納する収納箱と,収納箱に収納されている用紙に上方から圧接する給紙ローラとを有し,給紙ローラの回転により,収納箱に収納されている用紙を1枚ずつ搬送方向に送出する装置であって,収納箱からの用紙送出動作を制御する用紙送出制御部を有し,用紙送出制御部による制御に,給紙ローラの正回転により用紙を1枚ずつ送出する通常印字モードと,収納箱に収納されている用紙に搬送方向と平行に帯状の包装紙が巻き付けられている場合にその包装紙を排出する包装紙排出モードとがあり,包装紙排出モードでは,給紙ローラを逆回転させて包装紙の1箇所を引きちぎることと,その後に給紙ローラを正回転させて包装紙を搬送方向に送出することとを行うものである。
【0008】
この給紙装置では,収納箱に収納されている用紙束に搬送方向と平行に帯状の包装紙が巻き付けられている場合には,包装紙排出モードの制御が行われる。包装紙排出モードではまず,給紙ローラを逆回転させて包装紙の1箇所を引きちぎる。そしてその後に,給紙ローラを正回転させて包装紙を搬送方向に送出する。これにより当該包装紙を除去し,通常印字モードによる用紙の送出が可能な状態とする。
【0009】
本発明の給紙装置は,収納箱に収納されている用紙に帯状の包装紙がついているかいないかを識別する包装紙識別センサを有することが望ましい。この場合に用紙送出制御部は,包装紙識別センサにより帯状の包装紙がついていると識別された場合に包装紙排出モードの制御を行い,包装紙識別センサにより帯状の包装紙がついていないと識別された場合に通常印字モードの制御を行うことになる。
【0010】
本発明の給紙装置はさらに,給紙ローラの逆回転による帯状の包装紙の引きずりを,給紙ローラによる押圧箇所以外の箇所で防止する引きずり防止部材を有することが望ましい。引きずり防止部材を有することにより,給紙ローラの逆回転時に,帯状の包装紙の全体が引きずられて移動してしまうことを防止できる。これにより帯状の包装紙を確実に引きちぎることができる。
【0011】
ここで上記の引きずり防止部材は,用紙束における搬送方向前方側の端面に接触することが望ましい。引きずり防止部材がこの位置にあることにより,給紙ローラの逆回転の際,帯状の包装紙における,給紙ローラより前方の部分にストレスを掛けて引きちぎることができる。また,具体的には,給紙ローラの正回転と同じ向きの回転のみが許容されたブレーキローラであることが望ましい。このようなブレーキローラであれば,給紙ローラの逆回転時の引き刷りを防止しつつ,その後の正回転による送出に対する妨げとはならない。
【0012】
本発明の給紙装置では,給紙ローラの逆回転時の圧接力を,通常印字モード時の圧接力より強い圧接力とすることが望ましい。包装紙排出モードの逆回転時には帯状の包装紙を開裂させなければならない。このため,通常印字モードでの単なる用紙の送出のときよりも強い搬送力が必要だからである。
【0013】
本発明の給紙装置は,収納箱の外に配置され,収納箱から送出された用紙を搬送する搬送ローラを有することが望ましい。この場合に用紙送出制御部は,給紙ローラの正回転を,送出した用紙または帯状の包装紙が搬送ローラに達した後,給紙ローラから抜けきる前に停止することが望ましい。これにより,用紙または帯状の包装紙を送出した直後に後続の用紙が連れ送りされてしまうことを防止できる。本発明の給紙装置では,給紙ローラを,包装紙排出モードでの逆回転に先立ち正回転させることとしてもよい。これにより,帯状の包装紙における容易開裂箇所が給紙ローラの位置から近い場合でも,逆回転の回転量を確保できる。
【0014】
本発明は,上記のいずれかの給紙装置と,その給紙装置から送出された用紙に画像を形成する画像形成部とを有する画像形成装置をも対象とする。
【0015】
本発明の用紙パックは,複数枚積み重ねられた用紙を包装紙で包んでなるものであって,包装紙には,給紙装置に収納された際にその給紙装置における搬送方向に対し両側の側方となる面と,給紙装置に収納された際に搬送方向の中央となる部分との間にそれぞれ周状に設けられた側方容易開裂箇所と,給紙装置に収納された際に上向きとなる面における,搬送方向の前方側の端部から,給紙装置の給紙ローラに押圧される箇所までの範囲内の箇所に,両側の側方容易開裂箇所の間に設けられた前方容易開裂箇所とが形成されており,側方容易開裂箇所を開列させて包装紙のうち搬送方向に対する側方の部分を取り除くと,残った包装紙が,用紙に搬送方向と平行に巻き付いた帯状の包装紙となるものである。
【0016】
この用紙パックは,側方容易開裂箇所を開列させて包装紙のうち側方の部分を取り除いた状態で本発明の給紙装置に装填されるものである。この状態での用紙パックでは,用紙束に,帯状の包装紙が搬送方向と平行に巻き付いている。これを本発明の給紙装置に装填すると給紙装置では,包装紙排出モードの制御が行われる。よって,給紙ローラの逆回転により帯状の包装紙の前方容易開裂箇所が引きちぎられ,そして給紙ローラの正回転により包装紙が排除される。これにより,用紙束のみを給紙装置に装填下のと同じ状態になる。
【0017】
本発明の用紙パックは,複数枚積み重ねられた用紙に巻き付けてなるものであって,包装紙が,給紙装置に収納された際にその給紙装置における搬送方向となる方向と平行に巻き付いた帯状のものであり,給紙装置に収納された際に上向きとなる面における,搬送方向の前方側の端部から,給紙装置の給紙ローラに押圧される箇所までの範囲内の箇所に設けられた前方容易開裂箇所が形成されているものであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば,包装紙の所定の一部を残したままでの用紙の装填を許容するとともに,特別な機構なくしてそのその包装紙を除去するようにした給紙装置,その給紙装置を有する画像形成装置,その給紙装置への装填に適した用紙パックが提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態に係る画像形成装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】給紙カセットおよびその周囲を示す断面図である。
【図3】実施の形態に係る用紙パックにおける包装紙を示す透視斜視図である。
【図4】実施の形態に係る用紙パックの好ましい外観を示す斜視図である。
【図5】実施の形態に係る用紙パックの包装紙の側面部分を除去した状態を示す斜視図である。
【図6】実施の形態に係る画像形成装置における包装紙排出モードでの制御を説明するフローチャートである。
【図7】給紙ローラが逆回転している状況を示す斜視図である。
【図8】給紙ローラの逆回転により包装紙のミシン目が引きちぎられた状況を示す斜視図である。
【図9】給紙ローラの正回転により,ミシン目開裂後の包装紙を搬送している状況を示す斜視図である。
【図10】給紙ローラの正回転により用紙を搬送している状況を示す斜視図である。
【図11】包装紙排出モードでの給紙ローラの圧接力の経時変化を示すタイミングチャートである。
【図12】残っている用紙束の上に用紙パックを装填した場合のその後の状況を示す斜視図(その1)である。
【図13】残っている用紙束の上に用紙パックを装填した場合のその後の状況を示す斜視図(その2)である。
【図14】残っている用紙束の上に用紙パックを装填した場合のその後の状況を示す斜視図(その3)である。
【図15】包装紙の変形例(その1)を示す透視斜視図である。
【図16】包装紙の変形例(その2)を示す透視斜視図である。
【図17】図6のフローチャートの一部についての変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,図1に示す画像形成装置100,およびそれへの装填に適した用紙パック(後述)にて本発明を具体化したものである。図1の画像形成装置100は,給紙装置1と,画像形成部2と,排紙部3とを有している。画像形成部2は,中間転写ベルト4を中心に構成されている。中間転写ベルト4に沿って,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色の感光体5が配置されている。各感光体5にはそれぞれ,帯電器10,現像器11等のデバイスが備えられている。また,4つの感光体5の下方に,露光器6が設けられている。画像形成装置100にはさらに,二次転写ローラ7や定着器8,トナー容器9,排紙ローラ19等が設けられている。
【0021】
これにより,各感光体5の表面をそれぞれ帯電器10で帯電し,そこに露光器6で潜像を書き込み,現像器11で現像してトナー像とするようになっている。そのトナー像は,中間転写ベルト4上に重ね合わせられ,その重ねトナー画像が二次転写ローラ7により,給紙装置1から供給された用紙に二次転写される。二次転写を受けた用紙が,定着器8での定着を経て排紙ローラ19により排紙部3に排紙されるのである。
【0022】
かかる画像形成装置100の要部である給紙装置1について説明する。給紙装置1は,図2に示すように,給紙カセット12を中心に構成されている。給紙カセット12は基本的に,用紙束13を収納する箱体である。給紙カセット12は画像形成装置100の本体に対し引き出し可能となっている。給紙装置1にはさらに,給紙ローラ14,包装紙識別センサ15,ブレーキローラ16,搬送ローラ17,制御部18が備えられている。
【0023】
給紙ローラ14は,給紙カセット12中の用紙束13のうち一番上の用紙に対して上方から圧接されるように配置されている。その圧接力Fは,後述するように調節されるようになっている。給紙ローラ14は,用紙束13のうち一番上の用紙を用紙搬送方向(図2中右向き)に送り出すことを基本的な役割とするものである。本形態における給紙ローラ14は,正回転(図2中反時計回り)と逆回転(図2中時計回り)との両方が可能である。包装紙識別センサ15は,給紙カセット12中の用紙束13に後述する包装紙がついているか否かを識別するセンサである。具体的には,直下にある紙の色や模様等により,その紙が画像形成用の用紙であるかその包装紙であるかを識別するセンサである。
【0024】
ブレーキローラ16は,給紙カセット12中の用紙束13の搬送方向前方側の端面に接するローラである。ブレーキローラ16は,給紙ローラ14の正回転と同じ向きの自由回転のみが可能で,逆向きには回転できないローラである。搬送ローラ17は,給紙カセット12から送出された用紙の搬送経路Gにおける前方に設けられたローラ対である。搬送ローラ17は,用紙を画像形成部2へ向けて駆動するローラ対である。制御部18は,給紙ローラ14の回転や圧接力F,搬送ローラ17の回転を制御するものである。画像形成装置100の全体の制御部と兼用であってもよい。制御部18は,包装紙識別センサ15から信号を受けるようになっている。
【0025】
制御部18による制御には,通常印字モードと包装紙排出モードとがある。通常印字モードは,通常の画像形成の際に用いられるモードである。すなわち,給紙カセット12中の用紙束13の最上の用紙を給紙ローラ14の正回転により1枚ずつ搬送方向へ送出し,送出された用紙を搬送ローラ17で画像形成部2へ搬送するモードである。包装紙排出モードは,本発明としての特徴的なモードであるが,その内容については後述する。
【0026】
次に,本形態に係る用紙パックについて説明する。本形態の用紙パックも,多数枚のシート状の用紙を積み重ねて包装紙で包んだものである点では一般的な用紙パックと共通する。本形態の用紙パックの特徴点は,図3に示すように包装紙91にミシン目が入っていることである。図3中の太い破線が包装紙91のミシン目を示している。本形態の用紙パックのミシン目には,側方ミシン目92と,前方ミシン目93とがある。
【0027】
側方ミシン目92は,装填状態で用紙搬送方向に対する左右両側の側面となる面80,81の周りの角部をそれぞれ1周するように形成されている。前方ミシン目93は,装填状態で用紙搬送方向の前面となる面82と,装填状態で上側となる面84との間の角部に,左右両方の側方ミシン目92の間に形成されている。なお,これらのミシン目は,他の箇所の包装紙よりも開裂しやすい箇所であるが,流通過程等で独りでに開裂してしまうほど脆弱ではない。
【0028】
かかる本形態の用紙パック90は好ましくは,図4に示すように,上面84に,前方表示86と上面表示87と識別マーク88とが印刷されているとよい。前方表示86は,前面82が,用紙パック90を給紙カセット12に装填した際に用紙搬送方向前方側(図2中右側)に向くべき面である旨を示す表示である。上面表示87は,上面84が,用紙パック90を給紙カセット12に装填した際に上向きになるべき面である旨を示す表示である。識別マーク88は,用紙パック90を給紙カセット12に装填した際に,包装紙91が未だ完全には除去されていないことを包装紙識別センサ15に検知されるためのマークである。なお識別マーク88については,包装紙識別センサ15の検知領域にわたる単なる地色でもよい。ただし用紙自体の色とは異なっていなければならない。
【0029】
本形態の用紙パック90を給紙カセット12に装填する際には,まず,側方ミシン目92を2箇所とも破る。これにより,包装紙91のうち,図3中の右側面80および左側面81の部分を除去し,図5に示す状態とする。この操作は,画像形成装置100のユーザにより,給紙カセット12への装填の直前に行われる。この状態の用紙パック90では,包装紙91における右側面80および左側面81のあった箇所が窓となっており,そこから中の用紙束13が見えている。また,包装紙91のうち,上面84,前面82,下面85,後面83の部分からなる帯状の部分が残っており,用紙束13に搬送方向と平行に巻き付いた状態となっている。この状態でも前方表示86,上面表示87,識別マーク88は用紙パック90に残っている。また,前方ミシン目93は未だ開裂していない。
【0030】
給紙カセット12には,図5に示す状態の用紙パック90をそのまま装填する。このときむろん,給紙カセット12は画像形成装置100の本体から引き出しておく。この際,用紙束13がばらけたりして装填に手間取ることはない。帯状に残っている包装紙91により用紙束13が束ねられているからである。また,その際ユーザは容易に,用紙パック90を装填すべき正しい向きを認識できる。図5の用紙パック90に前方表示86,上面表示87が残っているからである。このため,装填された用紙パック90では確実に,前面82が用紙搬送方向前方側を向いており上面84が上向きになっている。
【0031】
用紙パック90が装填された給紙カセット12を画像形成装置100の本体に押し込むと,図2に示したように,給紙ローラ14が用紙束13に対し上方から圧接され,用紙束13の前方側の端面にブレーキローラ16が接触する状態となる。また,包装紙識別センサ15により識別マーク88が検知される。これにより制御部18は,給紙カセット12に装填された用紙束13に帯状の包装紙91がついていることを認識できる。この場合に帯状の包装紙91を除去するのが前述の包装紙排出モードである。
【0032】
また,この状態で包装紙91の外面と給紙ローラ14との間の摩擦係数が,包装紙91の内面と用紙束13との間の摩擦係数より高い値となるようにされている。具体的には,前者の摩擦係数は後者の摩擦係数の6倍程度である。
【0033】
なお,給紙カセット12には,包装紙が完全に除去された通常の用紙束を装填することも無論できる。その場合には包装紙識別センサ15が識別マーク88を検知することはない。このため制御部18は,給紙カセット12に装填された用紙束13に包装紙91がついていないことを認識できる。
【0034】
以下,給紙カセット12を画像形成装置100の本体に押し込んだときに制御部18によりなされる給紙ローラ14や搬送ローラ17の回転制御を,図6のフローチャートにより説明する。図6のフローチャート中,S1およびS2の処理は,既に述べた,ユーザにより手動でなされる処理である。S3以降が,給紙カセット12が画像形成装置100に押し込まれたときに制御部18によりなされる制御である。
【0035】
給紙カセット12が画像形成装置100に押し込まれると最初に,給紙カセット1中の用紙束13に帯状の包装紙91がついているか否かを確認する(S3)。この確認は前述のように包装紙識別センサ15による。帯状の包装紙91がついていない場合には(S3:無),図6の処理を終了し,待機状態となる。すなわちいつでも,通常印字モードでの画像形成を開始できる状態である。
【0036】
帯状の包装紙91がついている場合には(S3:有),包装紙排出モードでの制御を行う。この時点で給紙ローラ14やブレーキローラ16は,用紙束13そのものではなく帯状の包装紙91に接触している。包装紙排出モードではまず,図7に示すように給紙ローラ14を逆回転させる(S4)。このため包装紙91のうち上面84の部分には,前述の摩擦係数の関係もあり,搬送方向と逆向きの力Bが加わる。一方,包装紙91のうち前面82の部分は,力Bに引きずられることなくその場に留まろうとする。図7には示していないが前面82にはブレーキローラ16が接触しており,前述のようにブレーキローラ16は逆回転できないからである。これにより包装紙91の前方ミシン目93にストレスが掛かり,図8に示すように前方ミシン目93は開裂する。
【0037】
この給紙ローラ14の逆回転は,包装紙91の上面84を後ろ向きに搬送した距離が40mmに達するまで行われる(S5:Yes)。40mmというのは,前方ミシン目93を確実に開裂させることができ,かつ,開裂により生じた上面84の先端89が給紙ローラ14から抜けてしまうには至らない距離として,あらかじめ設定された距離である。なお図7,図8では前方表示86,上面表示87,識別マーク88を省略している。また図8で上面84の先端89は給紙ローラ14から抜けていないものとする。
【0038】
包装紙91を後ろ向きに搬送した距離が40mmに達すると,給紙ローラ14の逆回転を停止し,代わって正回転させる(S6)。また搬送ローラ17も正回転させる。これにより図9に示すように,包装紙91は通常の用紙が搬送される場合と同様に搬送方向に搬送される。すなわち包装紙91は,給紙ローラ14の正回転により図9中右やや下向きに送出され,その後は搬送ローラ17により,図2に示した搬送経路Gに沿って搬送される。こうして包装紙91は,給紙カセット12から排出される。
【0039】
このとき,用紙束13を包んでいる包装紙91のうち,上面84の部分のみならず,図5の時点で存在しているすべての部分が排出される。この時点での包装紙91は,前方ミシン目93が引きちぎられたとはいえ,給紙カセット12の後面側および底面側ではつながっている1枚の紙だからである。このときブレーキローラ16は障害にならない。ブレーキローラ16は正回転に関しては自由に回転できるものだからである。また,送出された包装紙91は,折り目が付いてはいるものの1枚の紙であるから,画像形成装置100の内部での進行に支障はなく,図1中の排紙部3へ排出される。
【0040】
この場面での給紙ローラ14の正回転は,排出される包装紙91のうち,給紙ローラ14をまだ抜けていない残りの部分の長さが10mmになるまで行われ(S7:Yes),その時点で停止される(S8)。このように包装紙91が抜けきる前に給紙ローラ14を停止させるのは,用紙束13中の最上の用紙が包装紙91に続いて送出されてしまうのを防ぐためである。この時点での包装紙91は既に搬送ローラ17に捉えられており,その後は搬送ローラ17(およびさらにその下流の排紙ローラ19)により搬送される。
【0041】
そして,包装紙91がすべて排紙部3へ排出されたら(S9:Yes),搬送ローラ17(およびさらにその下流の排紙ローラ19)を停止する(S10)。これにより給紙カセット12は,包装紙91のない,用紙束13のみが装填されている状態となる。つまり,際し余から包装紙をすべて除去した用紙束を装填した場合と同じ状態になっている。このため,「S3:無」の場合と同様に,通常印字モードでの画像形成を待機する状態となる。
【0042】
その後,プリントジョブがあると図10に示すように,給紙ローラ14の正回転により用紙束13中の最上の用紙20を送出する通常印字モードの制御が行われる。この通常印字モードの制御は一般的なものである。なお図10では省略しているが,通常印字モードで送出される用紙20も実際には,搬送ローラ17に捉えられて画像形成部2へ向かう。
【0043】
ここで,前述の包装紙排出モードにおける,給紙ローラ14の圧接力Fについて説明する。包装紙排出モードでの給紙ローラ14の圧接力Fは,図11に示すように調節される。すなわち,図6中のS4の逆回転を行うに先立ち,通常印字モードでの圧接力FのレベルLよりも高いレベルHに上げられる。具体的には,レベルLの6倍程度の圧接力Fとされる。このレベルHの圧接力Fにて,給紙ローラ14による包装紙91の搬送力として,10N(ニュートン)程度が期待できる。これだけの搬送力があれば,前方ミシン目93を確実に開裂させるのに十分である。S4の逆回転は,このように給紙ローラ14の圧接力FをレベルHに上げた状態で行われる。
【0044】
S4の逆回転が終了すると,給紙ローラ14の圧接力FはレベルLに戻される。S6の給紙ローラ14の正回転は,レベルLの圧接力Fにて行われる。前方ミシン目93の開裂が済めばもはや,レベルHほどの高い圧接力は不要だからである。
【0045】
ただし,S6の正回転を,図11中に破線で示すように,レベルHとレベルLとの中間のレベルDの圧接力Fで行うこととすることも考えられる。S6の正回転では,包装紙91のうち用紙束13の下に挟まっている部分を引っ張り出さなければならない分,通常印字モードでの単なる用紙20の搬送時よりは高い搬送力が必要だからである。レベルLでこれに足りない場合にはレベルDを用いなければならない。その場合でもS6の正回転が済むと,給紙ローラ14の圧接力FはレベルLに戻される。あるいは,包装紙91が用紙束13の下から抜けきった時点でレベルLに戻してもよい。
【0046】
なお,S6の正回転を,レベルHの圧接力Fで行ってはいけないわけではない。また,レベルLの圧接力Fで十分に包装紙91を引き出せるのであればそれでもよい。
【0047】
本形態では,給紙カセット12に用紙束13がまだ残っているうちに,新たな用紙パック90を追加して装填することもできる。その場合には残っている用紙束13の上に新たな用紙パック90を載置する。載置する用紙パック90は当然,図5に示した状態のもの,すなわち,包装紙91の右側面80と左側面81とが除去された状態のものである。すると,給紙カセット12が画像形成装置100に押し込まれてから前述と同様に図6のS3以降の処理が行われる。
【0048】
このためまず,図12に示すように給紙ローラ14の逆回転による前方ミシン目93の開裂が行われる。なお図12でも,前方表示86,上面表示87,識別マーク88を省略している。そして図13に示すように給紙ローラ14の正回転による包装紙91の排出が行われる。これにより,図14に示す通常モードでの用紙20の送出が可能な状態となる。
【0049】
本実施の形態で使用する用紙パック90における包装紙は,図3に示したものに限らず,図15に示すようなものであってもよい。図15に示す包装紙94は,図3の包装紙91に対し,側方ミシン目92の位置を少し変更したものである。すなわち,図3の包装紙91では左右の側方ミシン目92が側面80,81の周りのちょうど角部の位置に形成されている。これに対し図15の包装紙94では,左右の側方ミシン目92が少し内側に寄った位置に形成されている。このようなものでも,側方ミシン目92を破れば,包装紙94のうち側面80,81の部分がすべて用紙パックから除去されることに変わりはない。要は,側面80,81を,用紙パックに帯状に残る部分から確実に分離できればよいのである。
【0050】
用紙パック90の変形例としては,図16に示すようなものも考えられる。図16に示す包装紙95は,図3の包装紙91に対し,前方ミシン目93の位置を少し変更したものである。すなわち,図3の包装紙91では前方ミシン目93が上面84と前面82との間のちょうど角部の位置に形成されている。これに対し図16の包装紙95では,前方ミシン目93が少し後方にずらされて上面84の中に形成されている。このようなものでも,給紙ローラ14の逆回転により前方ミシン目93を引きちぎることができることに変わりはない。ただし,前方ミシン目93の位置は,給紙ローラ14に圧接される位置よりは前方寄りでなければならない。用紙パック90の変形例としてはさらに,図15の変形と図16の変形との両方を適用したものも考えられる。
【0051】
図16に示すような用紙パックを用いる場合,給紙ローラ14の逆回転により,開裂により生じた上面84の先端89が給紙ローラ14から抜けてしまうことも考えられる。そのようなことがないように逆回転の量(図6のS5の数値)を設定しておく必要がある。
【0052】
あるいは,図17に示すように,図6のS4の逆回転に先立ち給紙ローラ14を少し正回転させることとしてもよい。この正回転の間には,帯状の包装紙91の全体が,用紙束13の周りを回転するように移動する。このようにすると,前方ミシン目93を確実に開裂させることができ,かつ,開裂してできた先端89が給紙ローラ14から抜けてしまうには至らないような逆回転量を確保することができる。なお,給紙ローラ14の設置位置によっては,図3に示す用紙パック90を用いる場合でも図17の正回転を行った方がよい。
【0053】
以上詳細に説明したように本実施の形態の画像形成装置100の給紙装置1では,給紙ローラ14に逆転機能を与えている。また,給紙カセット12に装填された用紙束13の前方側端面にブレーキローラ16が接触するようにしている。そして,給紙カセット12に装填する用紙パック90として,包装紙91に側方ミシン目92および前方ミシン目93の入っているものを用い,その側方ミシン目92を破って包装紙91のうち帯状部分のみが残った状態で給紙カセット12に装填することとしている。
【0054】
このため画像形成装置100では,給紙ローラ14を一旦逆回転させて包装紙91の前方ミシン目93を破ってから給紙ローラ14を正回転させることで,帯状の包装紙91を排紙部3に排紙することができる。これにより,用紙パック90に包装紙91の一部がついたまま給紙カセット12に装填でき,自動的に画像形成可能な状態となる画像形成装置100が実現されている。また,包装紙91の排出の際,給紙カセット12に残る用紙束13は別段ダメージを受けることはない。また,給紙ローラ14や排紙部3という一般的に存在するものを用いるので,包装紙91の除去やその排出スペースのための特別な構成を追加する必要がない。したがって装置構成は簡素である。
【0055】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,画像形成装置100については,スキャナ機能を備えたものであってもよいし,公衆回線等との通信機能を備えていてもよい。カラーでなくモノクロであってもよい。画像形成部2は,トナーの代わりにインクを用いるものであってもよい。
【0056】
ブレーキローラ16については,説明したような一方向性の自由回転ローラを用いる代わりに,用紙パック90に対して圧接と離間とが可能な固定摩擦部材を用いてもよい。その場合には,当該部材は基本的には用紙パック90から離間させておいて,給紙ローラ14の逆回転の際に限り当該部材を用紙パック90に圧接させることになる。また,給紙ローラ14の図6中のS6の正回転については,説明では,包装紙91が抜けきる少し前に停止することとしたが,これに限らない。包装紙91の先端89が搬送ローラ17に捉えられたら給紙ローラ14をその駆動源から切り離して従動回転状態にする,ということでもよい。
【0057】
また,用紙パック90の包装紙91の容易開裂箇所については,ミシン目には限らない。例えば側方ミシン目92については,ミシン目の代わりに,糸または細身の樹脂テープを包装紙91の当該箇所に仕込んでおいてもよい。その糸またはテープをユーザが手で引っ張ることによりその場所を開裂させることができる。前方ミシン目93については,ミシン目の代わりに,局所的に紙厚を薄くしておいてもよいし,単に包装紙91の端部同士を粘着テープで留めるだけでもよい。また,側方ミシン目92を設ける代わりに,図5に示す状態のもの,あるいはその集合体をさらに別の包装材で包装することも考えられる。さらには,図5に示す状態のものをそのまま商品として提供することも考えられる。
【符号の説明】
【0058】
1 給紙装置
2 画像形成部
12 給紙カセット
13 用紙束
14 給紙ローラ
15 包装紙識別センサ
16 ブレーキローラ
17 搬送ローラ
18 制御部
91 包装紙
92 側方ミシン目
93 前方ミシン目
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の用紙を収納する収納箱と,前記収納箱に収納されている用紙に上方から圧接する給紙ローラとを有し,前記給紙ローラの回転により,前記収納箱に収納されている用紙を1枚ずつ搬送方向に送出する給紙装置において,
前記収納箱からの用紙送出動作を制御する用紙送出制御部を有し,
前記用紙送出制御部による制御に,
前記給紙ローラの正回転により用紙を1枚ずつ送出する通常印字モードと,
前記収納箱に収納されている用紙に搬送方向と平行に帯状の包装紙が巻き付けられている場合にその包装紙を排出する包装紙排出モードとがあり,
前記包装紙排出モードでは,
前記給紙ローラを逆回転させて前記包装紙の1箇所を引きちぎることと,
その後に前記給紙ローラを正回転させて前記包装紙を搬送方向に送出することとを行うことを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給紙装置において,
前記収納箱に収納されている用紙に帯状の包装紙がついているかいないかを識別する包装紙識別センサを有し,
前記用紙送出制御部は,
前記包装紙識別センサにより帯状の包装紙がついていると識別された場合に前記包装紙排出モードの制御を行い,
前記包装紙識別センサにより帯状の包装紙がついていないと識別された場合に前記通常印字モードの制御を行うことを特徴とする給紙装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の給紙装置において,
前記給紙ローラの逆回転による前記帯状の包装紙の引きずりを,前記給紙ローラによる押圧箇所以外の箇所で防止する引きずり防止部材を有することを特徴とする給紙装置。
【請求項4】
請求項3に記載の給紙装置において,前記引きずり防止部材は,
前記用紙の束における搬送方向前方側の端面に接触し,前記給紙ローラの正回転と同じ向きの回転のみが許容されたブレーキローラであることを特徴とする給紙装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載の給紙装置において,前記制御部は,
前記給紙ローラの逆回転時の圧接力を,前記通常印字モード時の圧接力より強い圧接力とすることを特徴とする給紙装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1つに記載の給紙装置において,
前記収納箱の外に配置され,前記収納箱から送出された用紙を搬送する搬送ローラを有し,
前記用紙送出制御部は,前記給紙ローラの正回転を,送出した用紙または帯状の包装紙が前記搬送ローラに達した後,前記給紙ローラから抜けきる前に停止することを特徴とする給紙装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1つに記載の給紙装置において,前記制御部は,
前記給紙ローラを,前記包装紙排出モードでの逆回転に先立ち正回転させることを特徴とする給紙装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1つに記載の給紙装置と,
前記給紙装置から送出された用紙に画像を形成する画像形成部とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
複数枚積み重ねられた用紙を包装紙で包んでなる用紙パックにおいて,
前記包装紙には,
給紙装置に収納された際にその給紙装置における搬送方向に対し両側の側方となる面と,給紙装置に収納された際に搬送方向の中央となる部分との間にそれぞれ周状に設けられた側方容易開裂箇所と,
給紙装置に収納された際に上向きとなる面における,搬送方向の前方側の端部から,給紙装置の給紙ローラに押圧される箇所までの範囲内の箇所に,両側の側方容易開裂箇所の間に設けられた前方容易開裂箇所とが形成されており,
前記側方容易開裂箇所を開列させて前記包装紙のうち搬送方向に対する側方の部分を取り除くと,残った包装紙が,用紙に搬送方向と平行に巻き付いた帯状の包装紙となるものであることを特徴とする用紙パック。
【請求項10】
複数枚積み重ねられた用紙に包装紙を巻き付けてなる用紙パックにおいて,
前記包装紙は,
給紙装置に収納された際にその給紙装置における搬送方向となる方向と平行に巻き付いた帯状のものであり,
給紙装置に収納された際に上向きとなる面における,搬送方向の前方側の端部から,給紙装置の給紙ローラに押圧される箇所までの範囲内の箇所に設けられた前方容易開裂箇所が形成されているものであることを特徴とする用紙パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−201704(P2011−201704A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73482(P2010−73482)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】