説明

絶縁膜形成材料及び絶縁膜

【課題】 絶縁性のばらつきがなく、膜質が均質であって、極めて低い比誘電率を有する絶縁膜、及びこれを形成しうる絶縁膜形成材料を提供する。
【解決手段】 本発明の絶縁膜形成材料は、アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物を溶媒に溶解させた重合性組成物からなる絶縁膜形成材料であって、含水量が5重量%未満であることを特徴とする。前記アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物には、例えば式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体と、式(2)で表されるアミン誘導体、及び/又は下記式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体との組み合わせであるか、若しくは式(5A)、(5B)又は(5C)で表されるプレポリマーなどが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造等に用いる絶縁膜、特に耐熱性や機械的強度に優れ低い比誘電率を示す絶縁膜及び絶縁膜形成材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、回路パターンの微細化が進む半導体プロセスにおいて、層間絶縁膜の低誘電率化が求められている。このような層間絶縁膜を基板上に形成する方法としては、例えば、溶質(絶縁膜を形成する化合物)を溶媒に溶解させて得られる塗布液を、スピンコート法、ディップコート法、スプレー法等を用いて基板上に展開した後、焼成により溶媒を除去、乾燥して膜を得る方法が一般に知られている(例えば、特開2004−307804 号公報等)。しかし、上記方法で形成された層間絶縁膜は、同一面内においてリーク電流レベルの高い領域と低い領域が混在し、不均質であるという問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開2004−307804 号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、絶縁性のばらつきがなく、膜質が均質であって、極めて低い比誘電率を有する絶縁膜、及びこれを形成しうる絶縁膜形成材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、絶縁性の不均質性が、絶縁膜形成時に基板上に塗布する塗布液中の水分に起因することを見出した。より具体的には、基板上に塗布する塗布液中に、水分が一定量以上含まれていると、溶媒が蒸発して塗布液が濃縮される過程において、水が比較多く含まれる相(水リッチ相)と水が比較少ない相(水プアー相)に相分離を起こし、水リッチ相中の絶縁膜成分の濃度が薄くなる。この絶縁膜成分の少なかった相が最終的に膜密度の低い部分(場合によっては微小ピンホール)を形成する為、最終的に不均質な膜が形成されてしまう。また、製膜後空気中より低密度部分又はピンホールに吸着された水、あるいはピンホール壁表面自体が電子の運搬経路となって、絶縁性が損なわれることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0006】
すなわち、本発明は、アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物を溶媒に溶解させた重合性組成物からなる絶縁膜形成材料であって、含水量が5重量%未満であることを特徴とする絶縁膜形成材料を提供する。
【0007】
前記アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物には、例えば下記式(1)
【化1】

(式中、X1、X2、X3、X4は、同一又は異なって、単結合又は2価の芳香族性又は非芳香族性環式基を示し、Ra、Rb、Rc、Rdは、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はアシル基を示す。但し、Ra、Rb、Rc、Rdのうち少なくとも3つは、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はアシル基を示す)
で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体と、下記式(2)
【化2】

(式中、環Yは単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環を示し、Re、Rf、Rg、Rhは環Yに結合している置換基であって、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基を示す。但し、Re、Rf、Rg、Rhのうち少なくとも2つは、保護基で保護されていてもよいアミノ基を示す)
で表されるアミン誘導体、及び/又は下記式(3)
【化3】

[式中、X1、X2、X3、X4は、同一又は異なって、単結合又は2価の芳香族性又は非芳香族性環式基を示し、R1、R2、R3、R4は、アダマンタン環又は環X1、X2、X3、X4に結合している置換基であって、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、アシル基、若しくは下記式(4A)、(4B)又は(4C)
【化4】

(式(4A)、(4B)、(4C)中、環Yは、同一又は異なって、単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環を示し、Qは、酸素原子、硫黄原子、又はNHを示し、R5、R6、R7は、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基を示し、R′はハロホルミル基以外のアシル基からカルボニル基を除した基を示す。但し、R6、R7のうち少なくとも一つは保護基で保護されていてもよいアミノ基を示す)
で表される基を示す。但し、R1、R2、R3、R4のうち少なくとも3つは、同一又は異なって、式(4A)、(4B)又は(4C)で表される基を示す]
で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体との組み合わせ、及び下記式(5A)、(5B)又は(5C)
【化5】

[式中、X1、X2、X3、X4は前記に同じ。L1、L3は水素原子、炭化水素基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はアシル基を示し、W1、W2、W3は、水素原子、炭化水素基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、アシル基、若しくは下記式(6)
【化6】

(式中、環Yは前記に同じ。Re〜hはRe、Rf、Rg、Rhの何れかを示すことを意味する。Zは、Ra〜RdとRe〜Rhとの反応により形成された結合であって、イミン結合、アミド結合、エステル結合又はチオエステル結合を示す。A1は、Re、Rf、Rg、Rhの何れか、若しくは下記式(7A)、(7B)又は(7C)
【化7】

(式中、W1、W2、W3、L1、L3、Zは前記に同じ。X1〜4はX1、X2、X3、X4の何れかであることを示す)
で表される基を示す)但し、式(5A)中に示されている4つのW1のうち少なくとも1つ、及び(5B)中に示されている3つのW2のうち少なくとも1つ、式(5C)中に示されている2つのW3のうち少なくとも1つは前記式(6)で表される基である。A1、W1、W2、W3、L1、L3、Xがそれぞれ複数個存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい]
であるポリマーが含まれる。本発明の絶縁膜形成材料に用いられる溶媒の含水量は、例えば1000重量ppm以下である。
【0008】
また、本発明は、アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物を溶媒に溶解させて重合性組成物を調製する際に、絶縁膜形成材料の含水量を5重量%未満に制御することを特徴とする絶縁膜形成材料の製造方法を提供する。
【0009】
本発明は、また、上記本発明の絶縁膜形成材料で形成され、該絶縁膜形成材料を構成するアダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物の重合反応により得られるポリマーからなる絶縁膜を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物を溶媒に溶解させた重合性組成物からなる絶縁膜形成材料を、含水量を5重量%未満に保持した状態で基板に塗布した後、焼成して絶縁膜を得る絶縁膜の製造方法を提供する。前記アダマンタン骨格を有する化合物は、上記に例示の化合物であってもよい。
【0011】
また、本発明は、上記本発明の絶縁膜の製造方法により得られる絶縁膜を提供する。
【0012】
本明細書中、式(2)で表されるアミン誘導体と式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体とを総称して、単に「ポリアミン類」と称する場合がある。前記「ポリアミン類」は、特に限定しない限り、式(2)で表されるアミン誘導体、式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体、及びこれらの混合物のいずれをも含む意味に用いる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の絶縁膜形成材料によれば、含水量が特定値未満であるため、基板上に塗布した塗布液に起きやすい相分離を回避でき、表面の電気的特性にばらつきのない均質な膜を得ることができる。こうして得られる絶縁膜は、残存する水や保管時の吸湿による絶縁性の低下を生じにくく、低誘電率化を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物]
本発明の絶縁膜形成材料は、アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物で構成されている。前記少なくともアダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物とは、アダマンタン骨格を有する化合物を少なくとも含み、重合反応により空孔構造を有する高分子架橋体(ポリマー)を形成可能な化合物であれば特に限定されず、1種又は2種以上の化合物を組み合わせて用いることができる。
【0015】
アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物には、例えば、前記式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体とポリアミン類との組み合わせ、及び前記式(5A)、(5B)又は(5C)で表されるプレポリマーなどが挙げられる。前記式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体とポリアミン類との組み合わせには、式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体と式(2)で表されるアミン誘導体との組み合わせ、式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体と式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体との組み合わせ、式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体と式(2)で表されるアミン誘導体と式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体との組み合わせ等が含まれる。
【0016】
[カルボニル基含有アダマンタン誘導体とポリアミン類との組み合わせ]
式(1)中、X1、X2、X3、X4は、同一又は異なって、単結合又は2価の芳香族性又は非芳香族性環式基を示す。Ra、Rb、Rc、Rdは、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、アシル基を示す。但し、Ra、Rb、Rc、Rdのうち少なくとも3つは、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はアシル基を示す。式(1)中のアダマンタン骨格は、反応や高分子架橋体の物性を損なわない範囲で置換基を有していてもよい。
【0017】
1、X2、X3、X4における2価の芳香族性環式基に対応する芳香族性環には、単環または多環の芳香族炭素環及び芳香族複素環が含まれる。なお、本明細書において「多環」とは、隣接する2つの環が2個以上の原子を共有した縮合環構造を有するもののほか、2つ以上の環が単結合、2価の炭化水素基(メチレン基、ビニレン基等)、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子等の1又は2以上の連結基を介して結合した構造を有するものも含む意味に用いる。
【0018】
単環の芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環が挙げられる。多環の芳香族炭化水素環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環などの2つ以上の芳香環がそれぞれ2個以上の原子を共有した縮合環構造をもつもの;ビフェニル環、ビフェニレン環、フルオレン環、スチルベン環などの2つ以上の芳香環が単結合等の連結基を介して結合した構造のものなどが挙げられる。芳香族複素環としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を1又は2以上含む単環または多環の芳香族複素環が挙げられる。芳香族複素環の具体例としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピコリン環などの単環;キノリン環、イソキノリン環、アクリジン環、フェナジン環などの多環などが挙げられる。これらの環は、反応や高分子架橋体の物性を損なわない範囲で置換基を有していてもよい。
【0019】
1、X2、X3、X4における2価の非芳香族性環式基に対応する非芳香族性環には、単環又は多環の脂環式炭素環及び非芳香族性複素環が含まれる。脂環式炭素環としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは3〜12員)程度のシクロアルカン環;シクロプロペン環、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは3〜10員)程度のシクロアルケン環などの単環の脂環式炭素環;アダマンタン環、パーヒドロインデン環、デカリン環、パーヒドロフルオレン環、パーヒドロアントラセン環、パーヒドロフェナントレン環、トリシクロデカン環、トリシクロウンデカン環、テトラシクロドデカン環、パーヒドロアセナフテン環、パーヒドロフェナレン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環など2〜6環程度の橋かけ環式炭素環などが挙げられる。非芳香族性複素環としては、例えば、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を有する5又は6員の複素環、これらを含む縮合環などが挙げられる。前記非芳香族性環式基は、反応や高分子架橋体の物性を損なわない範囲で置換基を有していてもよい。
【0020】
なかでも、X1、X2、X3、X4としては、重合により形成される空孔の容積が大きく、低密度な構造が得られやすい点で、2価の芳香族性又は非芳香族性環式基が好ましく、耐熱性及び機械的強度の点で特に2価の芳香族性環が好ましく用いられる。また、生産効率及び取扱性の点で、2価の芳香族性環式基に対応する芳香族性環として、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環等が用いられる場合が多い。
【0021】
1、R2、R3、R4における炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの結合した基などが含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ドデシル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜6)程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル、3−メチル−4−ペンテニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜5)程度の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基;エチニル、プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜5)程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキニル基などが挙げられる。
【0022】
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは3〜12員)程度のシクロアルキル基、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは3〜10員)程度のシクロアルケニル基などの単環の脂環式炭化水素基;アダマンタン環、パーヒドロインデン環、デカリン環、パーヒドロフルオレン環、パーヒドロアントラセン環、パーヒドロフェナントレン環、トリシクロデカン環、トリシクロウンデカン環、テトラシクロドデカン環、パーヒドロアセナフテン環、パーヒドロフェナレン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環など2〜4環程度の橋かけ環式炭素環などを有する橋かけ環炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜20(好ましくは6〜14)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0023】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など)が含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、アラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基など)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。
【0024】
前記脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの結合した基は、置換基を有していてもよい。置換基としては反応や高分子架橋体の物性を損なわないものであれば特に限定されない。
【0025】
a、Rb、Rc、Rdにおける保護基で保護されていてもよいカルボキシル基の「保護基」としては、例えば、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ヘキシルオキシなどのC1-10アルコキシ基;メトキシメチルオキシ、メトキシエトキシメチルオキシ基などの(C1-4アルコキシ)1−2C1-4アルコキシ基など)、シクロアルキルオキシ基(シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどのC3-20シクロアルキルオキシ基など)、テトラヒドロフラニルオキシ基、テトラヒドロピラニルオキシ基、アリールオキシ基(フェノキシ、メチルフェノキシ基などのC6-20アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(ベンジルオキシ、ジフェニルメチルオキシ基などのC7-18アラルキルオキシ基)、トリアルキルシリルオキシ基(トリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ基などのトリC1-4アルキルシリルオキシ基)、置換基を有してもよいアミノ基(アミノ基;メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノなどのモノまたはジ置換C1-6アルキルアミノ基;ピロリジノ、ピペリジノ基などの環状アミノ基)、置換基を有してもよいヒドラジノ基[ヒドラジノ基、N−フェニルヒドラジノ基、アルコキシカルボニルヒドラジノ基(t−ブトキシカルボニルヒドラジノ基などのC1-10アルコキシカルボニルヒドラジノ基など)、アラルキルオキシカルボニルヒドラジノ基(ベンジルオキシカルボニルヒドラジノ基などのC7-18アラルキルオキシカルボニルヒドラジノ基)など]、アシルオキシ基(アセトキシ、プロピオニルオキシ基などのC1-10アシルオキシ基など)、アシル基(アセチル、プロピオニル基などのC1-10アシル基など)などが挙げられる。カルボキシル基の保護基は、これらに限定されず、有機合成の分野で用いられる他の保護基も使用できる。
【0026】
保護基で保護されたカルボキシル基の好ましい例には、C1-6アルコキシ−カルボニル基、(C1-4アルコキシ)1−2−C1-4アルコキシ−カルボニル基、N−置換カルバモイル基、テトラヒドロピラニルオキシカルボニル基、テトラヒドロフラニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、トリアルキルシリルオキシカルボニル基、トリアルコキシメチル基が含まれる。
【0027】
a、Rb、Rc、Rdにおけるアシル基としては、脂肪族アシル基(ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などのC1-10の脂肪族アシル基)、脂環式アシル基(シクロヘキシルカルボニル基などのC4-20脂環式アシル基)、芳香族アシル基(ベンゾイル、ナフトイル基などのC7-20芳香族アシル基)、ハロホルミル基(ハロゲン化カルボニル基)[クロロホルミル基(塩化カルボニル基)、ブロモホルミル基(臭化カルボニル基)、フルオロホルミル基(フッ化カルボニル基)、ヨードホルミル基(ヨウ化カルボニル基)]、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニルなどのC1-4アルコキシ−カルボニル基など);アラルキルオキシ−カルボニル基(ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基などのC7-20アラルキルオキシカルボニル基)などが挙げられる。
【0028】
式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体には、例えば、下記式(1A)及び(1B)で表される化合物等が含まれる。
【化8】

【0029】
前記式(1A)、(1B)中、Z1、Z2、Z3、Z4は、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はアシル基を示し、Rは水素原子又は炭化水素基を示しており、これらの基には式(3)におけるRa等として例示のものを利用できる。X1等は式(1)と同様である。本願明細書中では、上記式(1A)で表される化合物を「カルボニル基含有4官能アダマンタン誘導体」、式(1B)で表される化合物を「カルボニル基含有3官能アダマンタン誘導体」と称する場合がある。また、式(1)におけるRa、Rb、Rc、Rdのうち3又は4つ[式(1A)、(1B)中、Z1、Z2、Z3、Z4のうち3又は4つ]が、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はハロホルミル基である化合物を「カルボキシル類」、ホルミル基である化合物を「アルデヒド類」、ホルミル基及びハロホルミル基を除くアシル基である化合物を「ケトン類」と称する場合がある。
【0030】
式(1A)で表されるカルボニル基含有4官能アダマンタン誘導体の代表的な例として、例えば、1,3,5,7−アダマンタンテトラカルボン酸、1,3,5,7−テトラキス(4−カルボキシフェニル)アダマンタン、1,3,5,7−アダマンタンテトラカルボン酸テトラクロリド、1,3,5,7−テトラキス(4−クロロホルミルフェニル)アダマンタン;1−メトキシカルボニル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−(t−ブトキシカルボニル)−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−テトラヒドロピラニル(THP)オキシカルボニル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−フェノキシカルボニル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−メトキシメチル(MEM)オキシカルボニル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−トリメチルシリル(TMS)オキシカルボニル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1,3,5−トリカルボキシ−7−アダマンタンカルボン酸クロリド、1−ジエチルカルバモイル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−(1−ピロリジニルカルボニル)−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1,3,5−トリス(カルボキシフェニル)−7−カルボキシアダマンタン、1,3,5−トリス(4−カルボキシフェニル)−7−(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタン;1,3−ビス(メトキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(t−ブトキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(フェノキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(メトキシメチルオキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(トリメチルシリルオキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−5,7−アダマンタンジカルボン酸ジクロリド、1,3−ビス(ジエチルカルバモイル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(1−ピロリジニルカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(4−カルボキシフェニル)−5,7−ビス(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタン;1,3,5−トリス(メトキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(t−ブトキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(フェノキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(メトキシメチルオキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(トリメチルシリルオキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1−カルボキシ−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸トリクロリド、1,3,5−トリス(ジエチルカルバモイル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(1−ピロリジニルカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1−(4−カルボキシフェニル)−3,5,7−トリス(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタン;1,3,5,7−テトラキス(メトキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(t−ブトキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(フェノキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(メトキシメチルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(トリメチルシリルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−アダマンタンテトラカルボン酸テトラクロリド、1,3,5,7−テトラキス(ジエチルカルバモイル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(1−ピロリジニルカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタンなどのカルボン酸類;1,3,5,7−アダマンタンテトラアルデヒド、1,3,5,7−アダマンタンテトラキスベンズアルデヒドなどのアルデヒド類;フェニルアダマンチルケトン(1,3,5,7−テトラベンゾイルアダマンタン)などのケトン類などが挙げられる。
【0031】
式(1B)で表されるカルボニル基含有3官能アダマンタン誘導体の代表的な例として、例えば、1,3,5−アダマンタントリカルボン酸、7−メチル−1,3,5−アダマンタントリカルボン酸、7−フェニル−1,3,5−アダマンタントリカルボン酸、1,3,5−トリス(4−カルボキシフェニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(4−カルボキシフェニル)−7−メチルアダマンタン、1,3,5−トリス(4−カルボキシフェニル)−7−フェニルアダマンタン;1−メトキシカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−(t−ブトキシカルボニル)−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−フェノキシカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−メトキシメチルオキシカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−トリメチルシリルオキシカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−5−アダマンタンカルボン酸クロリド、1−ジエチルカルバモイル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−ピロリジニルカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(4−カルボキシフェニル)−5−(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタン;1,3−ビス(メトキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(t−ブトキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(フェノキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(メトキシメチルオキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(トリメチルシリルオキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1−カルボキシ−3,5−アダマンタンジカルボン酸ジクロリド、1,3−ビス(ジエチルカルバモイル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(1−ピロリジニルカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1−(4−カルボキシフェニル)−3,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェニル)−アダマンタン;1,3,5−トリス(メトキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(t−ブトキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(フェノキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(メトキシメチルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(トリメチルシリルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−アダマンタントリカルボン酸トリクロリド、1,3,5−トリス(ジエチルカルバモイル)アダマンタン、1,3,5−トリス(1−ピロリジニルカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(4−クロロホルミルフェニル)アダマンタンなどの等のカルボン酸類、1−カルボキシ−3−カルボキシフェニル−5−メチルアダマンタン等のカルボン酸類;1,3,5−アダマンタントリアルデヒド、1,3,5−トリホルミル−4−メチルアダマンタン、1,3,5−アダマンタントリスベンズアルデヒドなどのアルデヒド類;1,3,5−トリスベンゾイルアダマンタン)などのケトン類などが挙げられる。
【0032】
これらのカルボニル基含有アダマンタン誘導体は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。なかでも、式(1A)で表されるカルボニル基含有4官能アダマンタン誘導体は、嵩高い構造を有し、反応時の立体障害により疎な空孔を効率よく形成でき、低誘電率化を達成しやすい点で好ましく用いられる。
【0033】
前記式(1)(1A及び1B)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体は、公知の方法により、又は公知の有機合成反応、公知のカルボキシル基への保護基の導入法(例えば、エステル化、アミド化による方法等)等を利用することにより得ることができる。
【0034】
前記式(2)中、環Yは単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環を示し、Re、Rf、Rg、Rhは、環Yに結合している置換基であって、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいメルカプト基を示す。
【0035】
e、Rf、Rg、Rhのうち一対の基(例えば、ReとRf、RgとRh)は、環化の容易さの点から、それぞれ、環Yの構成原子の1,2位(α位)又は1,3位(β位)の位置に結合しているのが好ましい。また、該一対の基は、2つのアミノ基、アミノ基とヒドロキシル基、アミノ基とメルカプト基の何れかの組み合わせが好ましい。このような一対の基を有するアミン誘導体は、官能基又は官能基群として1個のカルボニル基と環を形成可能である。
【0036】
環Yにおける単環又は多環の芳香族性環には芳香族炭素環及び芳香族複素環が含まれる。単環の芳香族炭素環としては、ベンゼン環が挙げられる。多環の芳香族炭素環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環などの2つ以上の芳香環がそれぞれ2個以上の原子を共有した縮合環構造をもつもの;ビフェニル環、ビフェニレン環、フルオレン環、スチルベン環などの2つ以上の芳香環が1又は2以上の連結基[例えば、単結合、2価の炭化水素基(メチレン基、ビニレン基等)、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子等]を介して結合した構造を有するものなどが挙げられる。芳香族複素環としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を1又は2以上含む単環または多環の芳香族複素環が挙げられる。芳香族複素環の具体例としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピコリン環などの単環;キノリン環、イソキノリン環、アクリジン環、フェナジン環などの多環などが挙げられる。
【0037】
環Yにおける単環又は多環の非芳香族性環には脂環式炭化水素環及び非芳香族性複素環が含まれる。該非芳香族性環としては、前記Zaにおける非芳香族性環式基に対応する非芳香族性環などが挙げられる。環Zbにおける単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環は、反応や高分子架橋体の物性を損なわない範囲で置換基を有していてもよい。
【0038】
e、Rf、Rg、Rhにおける保護基で保護されていてもよいアミノ基の「保護基」としては、例えば、アシル基(ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などのC1-6脂肪族アシル基;ベンゾイル、ナフトイル基などの炭素数6〜20程度の芳香族アシル基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニルなどのC1-4アルコキシ−カルボニル基など)、アラルキルオキシ−カルボニル基(ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基などのC7-20アラルキルオキシカルボニル基)、アルキリデン基(メチリデン、エチリデン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチリデン、イソブチリデン、ペンチリデン、シクロペンチリデン、ヘキリデン、シクロヘキシリデン基などの脂肪族アルキリデン基;ベンジリデン、メチルフェニルメチリデンなどの芳香族アルキリデン基など)などが挙げられる。アミノ基の保護基としては、これらに限定されず、有機合成の分野で慣用のものを使用できる。
【0039】
また、アミノ基の保護基としては、複数のアミノ基を同時に保護しうる保護基(多官能保護基)を使用することもできる。このような保護基には、例えば、カルボニル基、オキサリル基、ブタン−2,3−ジイリデン基などが含まれる。このような保護基を使用した場合には、Re、Rf、Rg、Rhのうちの2つの基が同時に一つの多官能保護基に保護され、環Zbに隣接する環が形成される。また、Re、Rf、Rg、Rhにおける保護基で保護されていてもよいアミノ基には、反応や最終的な高分子架橋体の物性を損なわない範囲で、モノ置換アミノ基も含まれる。モノ置換アミノ基の例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基などのアルキルアミノ基;シクロヘキシルアミノ基などのシクロアルキルアミノ基;フェニルアミノ基などのアリールアミノ基;ベンジルアミノ基などのアラルキルアミノ基などが挙げられる。
【0040】
e、Rf、Rg、Rhにおける保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基や保護基で保護されていてもよいメルカプト基の「保護基」には、例えば、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基などのC1-6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの3〜15員のシクロアルキル基)、アラルキル基(ベンジル基などのC7-20アラルキル基など)、置換メチル基(メトキシメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル基などの総炭素数2〜10程度の置換メチル基)、置換エチル基(1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル基など)、アシル基(ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などのC1-10の脂肪族アシル基;シクロヘキシルカルボニル基などのC4-20脂環式アシル基;ベンゾイル、ナフトイル基などのC7-20芳香族アシル基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニルなどのC1-4アルコキシ−カルボニル基など)、アラルキルオキシカルボニル基(ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基などのC7-20アラルキルオキシ−カルボニル基)などが含まれる。ヒドロキシル基及びメルカプト基の保護基としては、これらに限定されず、有機合成の分野で慣用のものを使用できる。
【0041】
式(2)で表されるアミン誘導体としては、(i)Re、Rf、Rg、Rhのうちの保護基で保護されていてもよいアミノ基が全て保護基で保護されていないアミノ基である化合物、(ii)Re、Rf、Rg、Rhの少なくとも1つがアルキリデン基で保護されたアミノ基である化合物(すなわち、イミン誘導体)、(iii)Re、Rf、Rg、Rhの少なくとも1つがアシルアミノ基である化合物(すなわち、アミド誘導体)、(iv)Re、Rf、Rg、Rhの少なくとも1つがアルコキシカルボニル基やアラルキルオキシカルボニル基で保護されたアミノ基である化合物(すなわち、カルバミン酸エステル誘導体)、(v)Re、Rf、Rg、Rhの少なくとも1つがモノ置換アミノ基である化合物などが例示される。
【0042】
前記(i)〜(v)に例示されるアミン誘導体の代表的な化合物として、環Yをベンゼン環に限り、また、保護基を有している場合の保護基の数も4置換体又は2置換体に限定した化合物を以下に例示するが、これらに限られるものではない。すなわち、環Yがビフェニル環等の場合にも、以下の化合物に対応する化合物が例示される。
【0043】
前記(i)Re、Rf、Rg、Rhのうちの保護基で保護されていてもよいアミノ基が全て保護基で保護されていないアミノ基である化合物の代表的な例として、1,2,4,5−テトラアミノベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ジヒドロキシベンゼン、1,5−ジアミノ−2,4−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ジメルカプトベンゼン、1,5−ジアミノ−2,4−ジメルカプトベンゼンなどが挙げられる。
【0044】
前記(ii)Re、Rf、Rg、Rhの少なくとも1つがアルキリデン基で保護されたアミノ基である化合物(すなわち、イミン誘導体)の代表的な例として、下記式で表される化合物などが挙げられる。
【化9】

【0045】
前記イミン誘導体には、式(2)におけるRe、Rfが共にアルキリデン基で保護されたアミノ基であって、N,N’’−ジイソプロピリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N’’’−ジイソプロピリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N’’−ジシクロヘキシリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N’’’−ジシクロヘキシリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N’’−ジベンジリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N’’’−ジベンジリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンなどのRg、Rhが共にアミノ基であるイミン誘導体;N,N’,N’’,N’’’−テトライソプロピリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N’,N’’,N’’’−テトラシクロヘキシリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N’,N’’,N’’’−テトラベンジリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンなどのRg、Rhが共にアルキリデン基で保護されたアミノ基であるイミン誘導体などが含まれる。
【0046】
さらに、前記イミン誘導体には、式(2)におけるRe、Rfが共にアルキリデン基で保護されたアミノ基であって、N,N’’−ジイソプロピリデン−N’,N’’’−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N’’’−ジイソプロピリデン−N’,N’’−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N’’−ジシクロヘキシリデン−N’,N’’’−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N’’’−ジシクロヘキシリデン−N’,N’’’−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N’’−ジベンジリデン−N’,N’’’−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N’’’−ジベンジリデン−N’,N’’’−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N’’−ジイソプロピリデン−N’,N’’’−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N’’’−ジイソプロピリデン−N’,N’’−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N’’−ジシクロヘキシリデン−N’,N’’’−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N’’’−ジシクロヘキシリデン−N’,N’’’−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N’’−ジベンジリデン−N’,N’’’−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N’’’−ジベンジリデン−N’,N’’’−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンなどのRg、Rhが共にモノ置換アミノ基であるイミン誘導体が含まれる。
【0047】
前記イミン誘導体には、上記の他に、N,N’−ジイソプロピリデン−2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジアミン、N,N’−ジイソプロピリデン−2,4−ジヒドロキシ−1,5−ベンゼンジアミン、N,N’−ジシクロヘキシリデン−2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジアミン、N,N’−ジシクロヘキシリデン−2,4−ジヒドロキシ−1,5−ベンゼンジアミン、N,N’−ジベンジリデン−2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジアミン、N,N’−ジベンジリデン−2,4−ジヒドロキシ−1,5−ベンゼンジアミンなどのRg、Rhが共にヒドロキシル基であるイミン誘導体;N,N’−ジイソプロピリデン−2,5−ジメルカプト−1,4−ベンゼンジアミン、N,N’−ジイソプロピリデン−2,4−ジメルカプト−1,5−ベンゼンジアミン、N,N’−ジシクロヘキシリデン−2,5−ジメルカプト−1,4−ベンゼンジアミン、N,N’−ジシクロヘキシリデン−2,4−ジメルカプト−1,5−ベンゼンジアミン、N,N’−ジベンジリデン−2,5−ジメルカプト−1,4−ベンゼンジアミン、N,N’−ジベンジリデン−2,4−ジメルカプト−1,5−ベンゼンジアミンなどのRg、Rhが共にメルカプト基であるイミン誘導体が含まれる。
【0048】
前記(iii)Re、Rf、Rg、Rhの少なくとも1つがアシルアミノ基である化合物(すなわち、アミド誘導体)としては、下記式で表される化合物などが例示される。
【化10】

【0049】
前記アミド誘導体には、式(6)におけるRe、Rfが共にアシルアミノ基であって、1,2,4,5−テトラキス(アセトアミノ)ベンゼンなどのRg、Rhが共にアシルアミノ基であるアミド誘導体;1,4−ビス(アセトアミノ)−2,5−ビス(メチルアミノ)ベンゼン、1,5−ビス(アセトアミノ)−2,4−ビス(メチルアミノ)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,5−ビス(メチルアミノ)ベンゼン、1,5−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,4−ビス(メチルアミノ)ベンゼン、1,4−ビス(アセトアミノ)−2,5−ビス(フェニルアミノ)ベンゼン、1,5−ビス(アセトアミノ)−2,4−ビス(フェニルアミノ)ベンゼンなどのRg、Rhが共にモノ置換アミノ基であるアミド誘導体;1,4−ビス(アセトアミノ)−2,5−ジアセトキシベンゼン、1,5−ビス(アセトアミノ)−2,4−ジアセトキシベンゼン、1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,5−ジメトキシカルボニルオキシベンゼン、1,5−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,4−ジメトキシカルボニルオキシベンゼンなどのRg、Rhが共に保護基で保護されたヒドロキシル基であるアミド誘導体;1,4−ビス(アセトアミノ)−2,5−ジアセチルチオベンゼン、1,5−ビス(アセトアミノ)−2,4−ジアセチルチオベンゼンなどのR7、R8が共に保護基で保護されたメルカプト基であるアミド誘導体が含まれる。
【0050】
前記(iv)Re、Rf、Rg、Rhの少なくとも1つがアルコキシカルボニル基やアラルキルオキシカルボニル基で保護されたアミノ基である化合物(すなわち、カルバミン酸エステル誘導体)としては、下記式で表される化合物などが例示される。
【化11】

【0051】
前記カルバミン酸エステル誘導体には、式(2)におけるRe、Rfが共にアルコキシカルボニル基であって、1,2,4,5−テトラキス(アセチルアミノ)ベンゼンなどのRg、Rhが共にアルコキシカルボニル基であるカルバミン酸エステル誘導体;1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,5−ビス(フェニルアミノ)ベンゼン、1,5−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,4−ビス(フェニルアミノ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メチルアミノ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(フェニルアミノ)ベンゼンなどのRg、Rhが共にモノ置換アミノ基であるカルバミン酸エステル誘導体;1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,5−ジメトキシカルボニルオキシベンゼン、1,5−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,4−ジメトキシカルボニルオキシベンゼンなどのRg、Rhが共に保護基で保護されたヒドロキシル基であるカルバミン酸エステル誘導体;1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,5−ジメトキシカルボニルチオベンゼン、1,5−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,4−ジメトキシカルボニルチオベンゼンなどのRg、Rhが共に保護基で保護されたメルカプト基であるカルバミン酸エステル誘導体が含まれる。
【0052】
前記(v)Re、Rf、Rg、Rhの少なくとも1つがモノ置換アミノ基である化合物の代表的な例としては、式(6)におけるRe、Rfが共にモノ置換アミノ基であって、1,4−ジアミノ−2,5−ビス(メチルアミノ)ベンゼン、1,5−ジアミノ−2,4−ビス(メチルアミノ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ビス(フェニルアミノ)ベンゼン、1,5−ジアミノ−2,4−ビス(フェニルアミノ)ベンゼンなどのRg、Rhが共にアミノ基である化合物などが挙げられる。
【0053】
前記式(2)で表されるアミン誘導体には、上記の他に、Re、Rf、Rg、Rhのうち少なくとも2つが互いに結合して隣接する原子とともに環を形成した化合物が含まれる。このようなポリアミン誘導体としては、例えば、分子内のアミノ基が前記複数のアミノ基を同時に保護しうる保護基(多官能保護基)で保護された化合物などが挙げられる。このような化合物の代表的な例としては、1,2,4,5−テトラアミノベンゼンが2つのオキサリル基で保護された化合物[式(2)において、環Yがベンゼン環であって、ReとRf、RgとRhがそれぞれオキサリル基で保護されたアミノ基である化合物]、1,2,4,5−テトラアミノベンゼンが2つのブタン−2,3−ジイリデン基で保護された化合物[式(2)において、環Zがベンゼン環であって、ReとRf、RgとRhがそれぞれブタン−2,3−ジイリデン基で保護されたアミノ基である化合物]などが挙げられる。
【0054】
これらのアミン誘導体は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0055】
前記式(2)で表されるアミン誘導体は、公知の方法により、又は公知の有機合成反応、公知のアミノ基への保護基の導入法(例えば、アシル化、イミノ化、アルキル化による方法等)等を利用することにより得ることができる。
【0056】
式(3)中、X1、X2、X3、X4は、同一又は異なって、単結合又は2価の芳香族性又は非芳香族性環式基を示す。R1、R2、R3、R4は、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、アシル基、若しくは前記式(4A)、(4B)又は(4C)で表される基を示す。但し、R1、R2、R3、R4のうち少なくとも3つは、同一又は異なって、(4A)、(4B)又は(4C)で表される基を示す。式(4A)、(4B)、(4C)中、環Yは、同一又は異なって、単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環を示し、Qは、酸素原子、硫黄原子、又はNHを示し、R5、R6、R7は、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基を示す。但し、R6、R7のうち少なくとも一つは保護基で保護されていてもよいアミノ基を示す。R′は、ハロホルミル基以外のアシル基からカルボニル基を除した基を示す。具体的には、例えば、ハロホルミル基以外のアシル基がホルミル基である場合には水素原子であり、ハロホルミル基以外のアシル基がアセチル基の場合にはメチル基であることを意味している。式(3)中のアダマンタン骨格は、反応や高分子架橋体の物性を損なわない範囲で置換基を有していてもよい。
【0057】
1、X2、X3、X4における単結合及び2価の芳香族性又は非芳香族性環式基は、式(1)におけるX1等と同様である。R1、R2、R3、R4における炭化水素基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、アシル基は、式(1)におけるRa等と同様である。式(4A)、(4B)、(4C)における環Yは、式(2)における環Yと同様であり、R5、R6、R7における保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基は、式(2)におけるRe等と同様である。
【0058】
式(4A)、(4B)、(4C)中、環Yに結合するN、R5、R6、R7のうち一対の基(例えばNとR5、R6とR7)は、環化の容易さの点から、環Yの構成原子の1,2位(α位)又は1,3位(β位)の位置に結合しているのが好ましい。このような一対の基のうち、例えばR5とNは、隣接する基とともに環を形成可能である。すなわち、式(4A)で表される基は分子内のイミンと環Yに結合するR5との環化反応により、式(4B)で表される基は分子内のアミドと環Yに結合するR5との環化反応により、それぞれイミダゾール、オキサゾール、チアゾール等の環が形成され、対応する式(4C)で表される基を生成しうる。また、上記の一対の基のうち、例えばR6とR7は、1個のカルボニル基を有する化合物(例えば、式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体等)と環を形成可能である。
【0059】
式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体の代表的な化合物として、R1、R2、R3、R4が全て式(4A)、(4B)又は(4C)で表される基である化合物を以下に例示する。
【0060】
【化12】

前記式(3A)、(3B)、(3C)中、環Ya、Yb、Yc、Ydは、同一又は異なって、式(1)における環Yと同様であり、環Yaに結合するR5a、R6a、R7a、環Ybに結合するR5b、R6b、R7b、環Ycに結合するR5c、R6c、R7c、環Ydに結合するR5d、R6d、R7dは、同一又は異なって、式(2A)等におけるR5等と同様である。式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体には、例えば、上記式(3A)等に代表される分子内に3以上のイミンを含有するイミン型アダマンタン誘導体、式(3B)に代表される分子内に3以上のアミド結合を含有するアミド型アダマンタン誘導体、式(3C)に代表される分子内に3以上の環を含有する環含有アダマンタン誘導体などが含まれる。
【0061】
式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体において、式(3A)等で表されるイミン型アダマンタン誘導体及び(3B)等で表されるアミド型アダマンタン誘導体は、式(1C)で表される環含有アダマンタン誘導体の中間体という関係にある。具体的には、式(3A)又は式(3B)で表される化合物は、分子内のイミン又はアミドが、それぞれ環Yに結合するR5との結合により環を形成して、対応する式(3C)で表される環含有アダマンタン誘導体を生成しうる。なお、式(3C)で表される化合物の中間体としては、上記式(3A)及び(3B)に限定されず、例えば、分子内に式(4A)と(4B)とを共に有する化合物であってもよい。式(3C)で表される環含有アダマンタン誘導体には、Qの種類に応じて、下記式(3C-N)、(3C-O)、(3C-S)で表される化合物等が含まれる。
【0062】
【化13】

【0063】
また、式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体の代表的な化合物として、R1、R2、R3が全て式(4A)、(4B)又は(4C)で表される基であり、R4が非反応性基(水素原子又は炭化水素基)又は反応性官能基(保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はアシル基)である化合物を以下に例示する。
【0064】
【化14】

【化15】

【化16】

【0065】
前記式(3A-Z)、(3B-Z)、(3C-Z)中、Zは保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はアシル基を示し、式(3A-R)、(3B-R)、(3C-R)中、Rは水素原子又は炭化水素基を示しており、これらは、前記式(3)中のR1等における基と同様である。環Ya、R6a等は前記と同様である。Qは、酸素原子、硫黄原子、又はNHを示す。上記式(3A-Z)、(3A-R)は、分子内に3つのイミンを含有するイミン型アダマンタン誘導体、上記式(3B-Z)、(3B-R)は、分子内に3つのアミド結合を含有するアミド型アダマンタン誘導体を表している。上記式(3C-Z)、(3C-R)で表される化合物は、分子内に3つの環を形成した環含有アダマンタン誘導体を表しており、上記前記イミン型アダマンタン誘導体やアミド型アダマンタン誘導体等より誘導可能である。
【0066】
式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体の製造は、例えば、前記式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体と、前記式(2)で表されるアミン誘導体とを原料に用いて、一般的なアミド化反応、イミン誘導体(シッフ塩基)生成反応、エステル化反応、チオエステル化反応、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール等の環形成反応等に準じて行うことができる。このような反応としては、例えば、 E. W. Neuse, Advances in Polymer Science 47, p1-p42 (1982)に記載されているポリベンズイミダゾール合成法;アミン化合物と、アルデヒド、カルボン酸、カルボン酸ハライド、オルトエステル及びケトンから選択される少なくとも一つの化合物とを反応させる公知の方法等を利用できる。また、カルボン酸とアミノフェノールとの反応によるアミド結合形成反応を経由してオキサゾール環を形成する反応として、Terashima, M. et al. Synthesis, 484-485 (1982)に記載されている反応;アルデヒドとアミノフェノールとの反応によるシッフ塩基を経由してのオキサゾール環を形成する反応として、Y. Kawashita et al. Org. Lett. 3713-3715 (2003) に記載されているシッフ塩基の酸化による環化反応等を利用することができる。また、その他の酸化によるオキサゾール環形成反応を用いてもよい。
【0067】
式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体の生成反応は、例えば、前記式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体と、前記式(2)で表されるアミン誘導体とを溶媒に溶解して行われる。式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体及び式(2)で表されるアミン誘導体は、上記に例示のものから適宜選択して利用できる。なかでも、式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体としてアルデヒド類(例えば1,3,5−アダマンタンテトラキスベンズアルデヒド、1,3,5,7−アダマンタンテトラキスベンズアルデヒド等)を用いると、式(2)で表されるアミン誘導体との反応を制御し易く、式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体を効率よく生成することができる点で有利である。
【0068】

反応溶媒としては、原料[式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体、式(2)で表されるアミン誘導体等]を溶解し反応を阻害しないものであればよく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;ジメチルイミダゾリジン、ジメチルイミダゾリノン(ジメチルイミダゾリジン−ジオン)等の環状アミノアセタール類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;スルホン類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、安息香酸エステル、γ―ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのエステル類;ジオキサン、テトラヒロドフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種類以上を混合して使用できる。
【0069】
なかでも、アミド類、環状アミノアセタール類、スルホン類などの非プロトン性極性溶媒が好ましく、特に、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;ジメチルイミダゾリジン、ジメチルイミダゾリノン(ジメチルイミダゾリジン−ジオン)等の環状アミノアセタール類などが好ましく用いられる。
【0070】
溶解は、アミン誘導体等が酸化されない限度において、例えば空気雰囲気下で行われ、好ましくは窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行われる。また、カルボニル基含有アダマンタン誘導体として、式(1)におけるRa、Rb、Rc、Rdの少なくとも一つがアシル基(例えばホルミル基等)である場合には、反応系内に酸素を供給するのが好ましい。酸素は、窒素、アルゴンなどの不活性ガスで希釈した混合ガス(空気等)を使用することもできる。
【0071】
反応温度は、原料の種類等によって異なるが、一般には0℃〜280℃の範囲で適宜選択できる。反応温度は、一定でもよく、連続又は逐次的に変化させてもよい。例えば、カルボニル基含有アダマンタン誘導体がアダマンタンテトラキスベンズアルデヒドであり、テトラアミン誘導体が保護基を有しないアミンである場合には、反応温度は、−30℃〜150℃程度である。
【0072】
前記カルボニル基含有アダマンタン誘導体とアミン誘導体との使用割合は広い範囲で選択でき、両者を当量用いてもよく、何れか一方を過剰量用いてもよい。本発明においては、好ましくは、カルボニル基含有アダマンタン誘導体に対し、化学量論量を超える過剰のテトラアミン誘導体が用いられる。この方法によれば、高分子量化(架橋構造からなる高分子化)に伴うゲル化を抑制することができ、目的の化合物を収率よく得ることができ好ましい。アミン誘導体の仕込量は、カルボニル基含有アダマンタン誘導体に対して、例えば0.1〜1000当量、好ましくは1〜800当量、さらに好ましくは20当量以上(特に20〜500当量)程度である。アミン誘導体の使用量が少なすぎると、1分子のカルボニル基含有アダマンタン誘導体に結合するアミン誘導体の分子数が少なくなる場合があり、また、カルボニル基含有アダマンタン誘導体の橋頭位方向に結合したアミン誘導体が、別のカルボニル基含有アダマンタン誘導体とアミド結合を形成する反応が進行しやすく、式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体を得ることが困難となる傾向にある。また、アミン誘導体の使用量が多すぎると、未反応の残存アミンと式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体との分離、精製が非効率、不経済となりやすい。
【0073】
反応は、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行うことができる。本発明においては、好ましくは、カルボニル基含有アダマンタン誘導体を、アミン誘導体を溶媒に溶解した溶液中に逐次添加する方法が行われる。カルボニル基含有アダマンタン誘導体を、化学量論量を超える過剰のテトラアミン誘導体を溶解した溶液に逐次添加する
【0074】
反応には、原料の種類に応じて、保護基を脱離するための適当な触媒(塩基触媒、酸触媒等)や反応剤、トラップ剤(塩基、脱水剤等)、縮合化剤(ポリリン酸等)などを使用してもよい。
【0075】
このようにして、式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体のRa、Rb、Rc、Rdにおける保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はアシル基と、前記アミン誘導体のRe、Rf、Rg、Rhにおける保護基で保護されていてもよいアミノ基との反応により式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体が生成する。具体的には、式(1)におけるRa等の種類に応じて、例えば、Ra等がハロホルミル基を除くアシル基の場合は、イミン(シッフ塩基)生成反応により前記式(3A)、(3A-Z)、(3A-R)の何れかで表されるイミン型アダマンタン誘導体が生成する。また、Ra等が保護基で保護されていてもよいカルボキシル基及び/又はハロホルミル基の場合は、アミド化反応により前記式(3B)、(3B-Z)、(3B-R)の何れかで表されるアミド型アダマンタン誘導体が生成する。これらのイミン型アダマンタン誘導体及びアミド型アダマンタン誘導体は、さらにイミン及びアミドにおける環化反応の進行により、前記式(3C)[(3C-N)、(3C-O)、(3C-S)]、(3C-Z)、(3C-R)の何れかで表される環型アダマンタン誘導体を生成する。
【0076】
生成するアミノ基含有アダマンタン誘導体の分子量は、例えば500〜30000、好ましくは700〜10000、さらに好ましくは1100〜1500程度である。アミノ基含有アダマンタン誘導体の分子量は、原料となるカルボニル基含有アダマンタン誘導体の分子量と、テトラアミン誘導体の分子量の3乃至4倍数の和とほぼ同等であり、これらの原料を適宜選択することにより調整できる。
【0077】
生成したアミノ基含有アダマンタン誘導体は、例えば、沈殿、再沈殿、晶析、再結晶、濾過、抽出、乾燥等の分離精製手段により単離することができる。
【0078】
上記のアミノ基含有アダマンタン誘導体には、(i)前記式(1A)で表される4官能アダマンタン誘導体と式(2)で表されるアミン誘導体との反応により得られる、式(3A)又は(3A-Z)で表されるイミン型化合物、式(3B)又は(3B-Z)で表されるアミド型化合物、式(3C)又は(3C-Z)で表されるイミダゾール型化合物、及び(ii)前記式(1B)で表される3官能アダマンタン誘導体と式(2)で表されるアミン誘導体との反応により得られる、式(3A-R)で表されるイミン型3官能化合物、(3B-R)で表されるアミド型3官能化合物、(3C-R)で表されるイミダゾール型3官能化合物が含まれる。
【0079】
式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体とポリアミン類との組み合わせからなる重合性化合物は、反応により高分子量化した高分子架橋体を生成することができる。式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体と、ポリアミン類の使用量比(モル比)は、形成する絶縁膜の機能に影響しない限り、ポリアミン類の種類や溶媒に対する溶解度に応じて広範囲から適宜選択することができ、両者を当量用いてもよく、何れか一方を過剰量用いてもよい。例えば、式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体と式(2)で表されるアミン誘導体とを組み合わせる場合には、一般に、アミン誘導体を過剰量用いる場合が多く、例えば、アミン誘導体の使用量は、カルボニル基含有アダマンタン誘導体に対して、一般に0.01〜100当量、好ましくは1〜50当量、さらに好ましくは4〜20当量程度である。また、式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体と式(2)で表されるアミン誘導体との使用量比(モル比)は、例えば1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは20/80〜80/20程度であり、当量で用いることもできる。
【0080】
[式(5A)、(5B)又は(5C)で表されるプレポリマー]
式(5A)、(5B)又は(5C)中、X1、X2、X3、X4は、同一又は異なって、単結合又は2価の芳香族性又は非芳香族性環式基を示し、W1は、水素原子、炭化水素基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、アシル基、若しくは前記式(6)を示す。但し、式(5)中に示されている4つのW1のうち少なくとも1つは前記式(6)で表される基である。式(6)中、環Yは前記と同様であり、Re〜hはRe、Rf、Rg、Rhの何れかを示すことを意味する。Zは、Ra〜RdとRe〜Rhとの反応により形成された結合であって、イミン結合、アミド結合、エステル結合又はチオエステル結合を示す。A1は、Re、Rf、Rg、Rhの何れか、又は前記式(7)を示す。式(7)中、W1、Zは前記と同様であり、X1〜4はX1、X2、X3、X4の何れかであることを示す。A1、W1、Xがそれぞれ複数個存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0081】
式(5)で表されるプレポリマーとしては、例えば、前記式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体とポリアミン類との反応により得られるプレポリマーであって、イミン結合、アミド結合、エステル結合又はチオエステル結合等の鎖状結合を有し、前記結合部位においてイミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環等の環を形成可能なプレポリマー等が挙げられる。
【0082】
前記式(5)で表されるプレポリマーの製造は、例えば、前記式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体と、前記式(2)で表されるアミン誘導体又は式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体とを原料に用いて、一般的なアミド化反応、イミン誘導体(シッフ塩基)生成反応、エステル化反応、チオエステル化反応、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール等の環形成反応等に準じて行うことができる。例えば、前記式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体のRa、Rb、Rc、Rdにおける保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はアシル基と、前記式(2)で表されるアミン誘導体のRe、Rf、Rg、Rhに又は式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体のR6、R7における保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基との反応によりイミン結合、アミド結合、エステル結合又はチオエステル結合が形成されたプレポリマーが生成される。なお、式(2)におけるRe、Rf、Rg、Rh又は式(3)におけるR6、R7のうち1又は2個が保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基である時、エステル結合やチオエステル結合が形成されずに、イミン結合又はアミド結合のみが形成される場合がある。カルボニル基含有アダマンタン誘導体とポリアミン類との結合の代表的な例としては、式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体と式(2)で表されるアミン誘導体又は式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体とが、カルボキシル基の保護基及び/又はアミノ基の保護基の脱離を伴って重縮合し、重合生成物としてアダマンタン骨格含有ポリベンズアゾール類(イミダゾール、オキサゾール、チアゾール類)等が形成される。
【0083】
プレポリマーの生成反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、アミノ基含有アダマンタン誘導体の生成反応における溶媒として例示のものを利用できる。反応温度は、原料(カルボニル基含有アダマンタン誘導体やポリアミン類等)の種類等によって異なるが、一般には−60℃〜200℃の範囲で適宜選択できる。例えば、カルボニル基含有アダマンタン誘導体がカルボン酸ハライドであり、ポリアミン類が保護基を有しないアミンである場合には、反応温度は、−10℃〜50℃程度である。
【0084】
前記カルボニル基含有アダマンタン誘導体とポリアミン類との使用割合は広い範囲で選択でき、両者を当量用いてもよいが、ポリアミン類を過剰量用いる場合が多い。一般に、ポリアミン類を過剰量用いる場合が多い。例えば、ポリアミン類の使用量は、カルボニル基含有アダマンタン誘導体に対して、一般に0.01〜100当量、好ましくは1〜50当量、さらに好ましくは4〜20当量程度である。
【0085】
反応には、原料として用いるカルボニル基含有アダマンタン誘導体及びポリアミン類の種類に応じて、反応を促進させたり、保護基を脱離するための適当な触媒(塩基触媒、酸触媒等)や反応剤、トラップ剤(塩基、脱水剤等)などを使用してもよい。
【0086】
このようにして、式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体のRa、Rb、Rc、Rdにおける保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はアシル基と、式(2)で表されるアミン誘導体のRe、Rf、Rg、Rh又は式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体のR6、R7における保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基との反応により、イミン結合、アミド結合、エステル結合又はチオエステル結合が形成されたプレポリマーが生成する。なお、Re、Rf、Rg、Rh、R6、R7のうち1又は2個が保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基である時、エステル結合やチオエステル結合が形成されずに、アミド結合のみが形成される場合がある。
【0087】
生成するプレポリマーの重量平均分子量は、例えば200〜100000、好ましくは300〜50000、さらに好ましくは1000〜30000程度である。プレポリマーの分子量は、アダマンタンポリカルボン酸誘導体とポリアミン誘導体との使用割合や、反応温度、反応時間等の反応条件を適宜選択することにより調整できる。
【0088】
生成したプレポリマーは、例えば、沈殿、再沈殿、晶析、再結晶、濾過、抽出、乾燥等の分離精製手段により単離することができる。
【0089】
上記のプレポリマーには、(i)前記式(1A)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体と式(2)で表されるアミン誘導体との反応により得られる、前記式(5A)で表される化合物、(ii)前記式(1B)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体と、式(2)で表されるアミン誘導体、式(3A)との反応により得られる、下記式(5B)で表される化合物、(iii)前記式(1B)中のZ1がRに置換された化合物に対応するカルボニル基含有アダマンタン誘導体と式(2)で表されるアミン誘導体との反応により得られる、前記式(5C)で表される化合物が含まれる。また、上記のプレポリマーには、ポリアミン類として、式(2)で表されるアミン誘導体の代わりに式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体を用いたプレポリマーや、これらのプレポリマーの混合物、式(1A)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体に対応する構成単位、式(1B)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体に対応する構成単位の2以上が混在するプレポリマーも含まれる。
【0090】
式(5A)、(5B)、(5C)において、X1、X2、X3、X4、L1、L3は前記に同じであり、W1、W2、W3は、R1、R2、R3、R4の何れか、又は前記式(6)で表される基を示す。式(6)中、環Yは前記に同じであり、Re〜hはRe、Rf、Rg、Rhの何れかを示すことを意味する。Xは、Ra〜RdとRe〜Rhとの反応により形成された結合であって、イミン結合、アミド結合、エステル結合又はチオエステル結合を示す。A1は、Re、Rf、Rg、Rhの何れか、若しくは前記式(7A)、(7B)又は(7C)で表される基を示す。式(7A)、(7B)、(7C)中、W1、W2、W3、Xは前記に同じであり、X1〜4はX1、X2、X3、X4の何れかであることを示す。なお、但し、式(5A)中に示されている4つのW1のうち少なくとも1つ、及び(5B)中に示されている3つのW2のうち少なくとも1つ、式(5C)中に示されている2つのW3のうち少なくとも1つは前記式(6)で表される基である。A1、W1、W2、W3、L1、L3、Xがそれぞれ複数個存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0091】
式(5A)、(5B)又は(5C)で表されるプレポリマーは単独で又は複数を組み合わせて
用いてもよい。また、これらのプレポリマーは、プレポリマーの原料として用いたモノマー成分(式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体やポリアミン類)とを組み合わせて用いることも可能である。モノマー成分を添加することにより、プレポリマーのポリマー鎖を延長でき、高分子量化した高分子架橋体を得ることができる。該モノマー成分の使用量は、プレポリマー100重量部に対して、例えば、0〜50重量部、好ましくは5〜30重量部である。特に、ポリアミン類の総量[式(2)で表されるアミン誘導体と式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体との合計]が、プレポリマー100重量部に対して、10〜25重量部程度となるように混合して使用することが好ましい。
【0092】
式(5A)、(5B)又は(5C)で表されるプレポリマーは溶媒に可溶である。このような溶媒としては、後述するアダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物を溶解する溶媒として例示のものが挙げられる。
【0093】
[溶媒]
本発明の絶縁膜形成材料は、アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物を溶媒に溶解させた重合性組成物で構成される。溶媒としては、アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物を溶解可能で、重合や環化反応等を阻害しないものであればよく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;スルホン類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、安息香酸エステル、乳酸エチル、γ―ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのエステル類;ジオキサン、テトラヒロドフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)などのエーテル類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロメタンなどのニトロ化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;これらの混合溶媒などが挙げられる。
【0094】
アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物として用いられる上記に例示のプレポリマーは、特に、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒に溶解しやすく、例えば、前記3種の何れかの溶媒に対する溶解度(g/100g;20℃)は、1以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上である。
【0095】
[その他の成分]
本発明の絶縁膜形成材料は、上記以外の他の成分を含んでいてもよく、例えば、重合反応を促進するための触媒を添加してもよい。触媒の代表的な例としては、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の酸触媒が挙げられる。触媒の使用量は、上記モノマー成分(カルボニル基含有アダマンタン誘導体、ポリアミン類、プレポリマーと組み合わせるモノマー成分等)の総量に対して、例えば0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%程度である。また、本発明の絶縁膜形成材料には、塗布性を改善する目的で、溶液の粘度を調節するための添加剤を添加してもよい。このような添加剤の代表的な例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのアルキレングリコール類やポリアルキレングリコール類;ポリベンズイミダゾール類;ポリベンゾオキサゾール類などが挙げられる。添加剤の使用量は、絶縁膜形成材料(塗布液)の総量に対して、例えば0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%程度である。
【0096】
さらに、本発明の絶縁膜形成材料には、重合後の分子量を調整するためのモノカルボン酸類、及び/又は重合後の架橋度を調整するためのジカルボン酸類を添加してもよい。モノカルボン酸類の代表的な例としては、アダマンタンカルボン酸、安息香酸などのモノカルボン酸;アダマンタンカルボン酸メチルエステル、安息香酸メチルエステルなどのモノカルボン酸誘導体などが挙げられ、ジカルボン酸類の代表的な例としては、アダマンタンジカルボン酸、テレフタル酸などのジカルボン酸;アダマンタンジカルボン酸ジメチルエステル、テレフタル酸ジメチルエステルなどのジカルボン酸誘導体などが挙げられる。カルボニル基含有アダマンタン誘導体の使用量又はプレポリマーを構成するモノマー成分とプレポリマーと併用するモノマー成分の総量に対して、モノカルボン酸類の使用量は、例えば0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%程度であり、ジカルボン酸類の使用量は、例えば0〜100モル%、好ましくは0〜50モル%程度である。
【0097】
本発明の絶縁膜形成材料には、形成される絶縁被膜の基盤密着性を高めるための密着促進剤を添加してもよい。密着促進剤の代表的な例としては、トリメトキシビニルシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、アルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピレートなどが挙げられる。密着促進剤の使用量は、上記モノマー成分の総量に対して、例えば0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%程度である。
【0098】
[絶縁膜形成材料]
本発明の絶縁膜形成材料を構成する重合性組成物の調製法は、アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物を溶媒に完全に溶解しうる方法であれば特に限定されず、例えば、重合性化合物、溶媒、その他の成分からなる混合物を撹拌又は静置することにより行われる。
【0099】
本発明の絶縁膜形成材料は、含水量が5重量%未満(5%未満〜0%程度)であることを主な特徴としている。含水量が5%以上の絶縁膜形成材料は、互いに相溶性のない水と溶媒を含むため、基板上に塗布した塗布膜に相分離が生じてしまい、焼成により得られる絶縁膜の膜厚が不均一となり、膜表面の電気的特性にばらつきが生じるという問題があった。これは、相分離が生じた塗布膜の焼成により、その相分離構造に起因する膜密度の低い部分がそのまま残ってしまい、焼成後に微小な低密度領域又はピンホールを形成する事が原因であると推察している。すなわち、塗布液中に含まれていた水分は焼成時に全て蒸発してしまうが、焼成後に形成された低密度部又はピンホールは空気中の水分を吸着しやすく、またピンホール壁表面自身が絶縁膜内部より電子の伝導性が高い為、局所的にリーク電流が高くなる(絶縁性が低下する)という弊害があった。これに対し、水分量が5%未満の低い絶縁膜形成材料によれば、均一な厚みを有し、膜表面の広い範囲で絶縁性にばらつきがなく均質であり、優れた比誘電率を有する絶縁膜を得ることができる。絶縁膜形成材料の含水量は好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下である。絶縁膜形成材料の含水量は、絶縁膜形成材料の製造方法、及び製造後の絶縁膜形成材料の保管方法等を適宜選択することにより制御することができる。なお、本発明における絶縁膜形成材料の含水量は、カールフィッシャー電量滴定法により測定した値を意味している。
【0100】
本発明の絶縁膜形成材料の製造方法は、アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物を溶媒に溶解させて重合性組成物を調製する際に、絶縁膜形成材料の含水量を5重量%未満(好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下)に制御することを特徴としている。本発明の絶縁膜形成材料の含水量は、絶縁膜形成材料の構成成分及び調製条件等を適宜選択することにより調整できる。
【0101】
本発明において、重合性組成物を調製する際に絶縁膜形成材料の含水量を制御する手段としては、例えば、絶縁膜形成材料を構成するアダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物及び/又は溶媒の水分量を制御する方法、前記重合性化合物を溶媒に溶解する反応容器内の水分量を制御する方法等が挙げられる。アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物及び/又は溶媒の水分量は、例えば溶解前に予め乾燥処理を施す方法や、水分量が管理された雰囲気下(例えば湿度0.1%以下)で保管する方法、シリカゲル、モレキュラーシーブ等の吸湿剤等を用いる方法等により制御可能である。前記重合性化合物及び/又は溶媒に好適な化合物の具体例としては、例えば120℃以上の温度で真空乾燥を行った化合物、密栓できる容器等を用いて外気との接触を極力避けて保管された化合物、シリカゲル等の吸湿剤を入れた密閉容器(デシケーター等)に保管された化合物、モレキュラーシーブ等の吸湿剤で処理された化合物等が挙げられる。絶縁膜形成材料の製造に用いるアダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物の含水量は、低いほど好ましく、例えば5重量%未満、好ましくは2重量%以下、より好ましくは2重量%以下である。また、溶媒の含水量は、低いほど好ましく、例えば1.5重量%以下、好ましくは1000重量ppm以下、より好ましくは500重量ppmである。さらに、本発明においては、絶縁膜形成材料調製時の水分の混入を極力低減させるため、絶縁膜形成材料の調製に用いる反応容器として、例えば予めヒートガン等による熱風や電気炉などの乾熱手段により十分乾燥させた反応容器(フラスコなどのガラス容器等)が好ましく用いられる。
【0102】
アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物(モノマー及びプレポリマーの総量)の溶媒に対する濃度は、使用する溶媒に対する溶解度に応じて任意に選択され、例えば5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%程度である。高濃度の重合性化合物を溶解した絶縁膜形成材料により形成される絶縁膜は、膜厚を大きくすることができるため優れた電気的特性を示し、種々の半導体製造プロセスに対応した膜厚を有する絶縁膜を形成することができる。また、絶縁膜形成材料中に重合性化合物が析出することがなく、優れた塗布性を発揮することができる。
【0103】
溶解は、重合性化合物に用いるアミン誘導体等が酸化されない限度において、例えば空気雰囲気下で行われ、好ましくは窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行われる。溶解させる温度は、特に限定されず、重合性化合物の溶解性や溶媒の沸点に応じて、またプレポリマーを溶解させる際には、高分子架橋体への転化が生じない範囲で加熱してもよく、例えば0〜200℃、好ましくは10〜150℃程度である。本発明では、絶縁膜形成材料の含水量を低減する目的で、溶解時の雰囲気の水分量が低いことが好ましく、例えば、乾燥不活性ガス(乾燥窒素等)を反応容器内に導入しつつ溶解処理が施される。溶解後は必要に応じて濾過処理が施されてもよい。
【0104】
こうして得られた絶縁膜形成材料は、調製後速やかに絶縁膜の製造に用いることができるが、絶縁膜の製造に供されるまで一定期間(例えば10日以上)保存する必要がある場合には、水分量が管理された雰囲気下(例えば湿度40%以下)で保管されることが好ましい。このような保管方法としては、化合物の水分量を抑制する方法として公知の方法を用いることができ、例えば、外気との接触を遮断した状態で保管する方法、吸湿剤等を用いる方法、乾燥ガスを通気する方法等が挙げられる。本発明の好ましい態様としては、前記絶縁膜形成材料を、含水量を5重量%未満(好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは1重量%以下)に保持した状態で基板に塗布した後、焼成することにより絶縁膜を製造する方法が挙げられる。この方法によれば、均一な厚みを有し、膜表面の広い範囲で絶縁性にばらつきがなく均質であり、優れた比誘電率を有する絶縁膜を容易に得ることができる。
【0105】
本発明の絶縁膜は、上記アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性組成物からなる絶縁膜形成材料を基材上に塗布した後、焼成(加熱)して重合反応させることにより形成される。前記基材としては、例えば、シリコンウェハー、金属基板、セラミック基板などが挙げられる。塗布方法としては、特に限定されず、スピンコート法、ディップコート法、スプレー法などの慣用の方法を用いることができる。
【0106】
加熱温度は、用いる重合性成分が重合する温度であれば特に制限されないが、例えば室温〜500℃、好ましくは100〜450℃、より好ましくは150〜400℃程度であり、一定温度又は段階的温度勾配が付されてもよい。加熱は、形成される薄膜の性能に影響がない限り、例えば空気雰囲気下で行われてもよく、好ましくは不活性ガス(窒素、アルゴンなど)雰囲気下、又は真空雰囲気下で行われる。
【0107】
加熱により、式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体のカルボニル基と、式(2)で表されるアミン誘導体又は式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体の官能基との結合による重合反応が進行する。
【0108】
例えば、前記式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体のRa、Rb、Rc、Rdにおける保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はアシル基と、前記式(2)で表されるアミン誘導体のRe、Rf、Rg、Rh又は式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体のR6、R7における保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基との反応によりイミン結合、アミド結合、エステル結合又はチオエステル結合が形成されたポリマーが生成する。なお、式(1)のRe、Rf、Rg、Rh又は式(2)のR6、R7のうち1又は2個が保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基である時、エステル結合やチオエステル結合が形成されずに、イミン結合又はアミド結合のみが形成される場合がある。カルボニル基含有アダマンタン誘導体とポリアミン類との結合の代表的な例としては、式(1)で表されるアダマンタンポリカルボン酸類と式(2)で表されるアミン誘導体又は式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体とが、カルボキシル基の保護基及び/又はアミノ基の保護基の脱離を伴って重縮合し、重合生成物としてアダマンタン骨格含有ポリベンズアゾール類(イミダゾール、オキサゾール、チアゾール類)等が形成される。
【0109】
アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物として、式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体と式(2)で表されるアミン誘導体との組み合わせを用いた場合には、カルボニル基含有アダマンタン誘導体が4官能化合物又は3官能化合物であるため、隣接する架橋点(又は結節点)同士の距離(辺)が長く大きい空孔が形成され、結果として極めて低い誘電率を達成することができる。より詳細には、式(1A)で表される4官能化合物は4方向へ分岐した3次元構造を有する架橋点を、式(1B)で表される3官能化合物は3方向へ分岐した3次元構造を有する架橋点をそれぞれ形成することにより、4官能化合物及び/又は3官能化合物であるカルボニル基含有アダマンタン誘導体とアミン誘導体とが結合して疎な空孔構造からなるポリマーを生成することができる。なお、4官能化合物(3官能化合物)単独では、重合時に架橋点が多く形成されるため高密度化し、また、分子の自由度が減少するため未架橋点を生じ、比誘電率を上昇させる場合がある。このため、カルボニル基含有アダマンタン誘導体として、式(1A)で表される4官能化合物と式(1B)で表される3官能化合物とを組み合わせて用いることにより、互いに立体的な障害を生じて、アミン誘導体との結合による重合反応により形成される空隙が大きく、低密度な疎な空孔構造を有するポリマーとなる点で有利ある。
【0110】
上記重合性化合物を含む絶縁膜形成材料から形成された絶縁膜は、カルボニル基含有アダマンタン誘導体として、例えば、式(1B)で表される3官能化合物を用いることにより、3次元構造を有するアダマンタン化合物と2次元構造を有する芳香族ポリアミンとが結合して、アダマンタン骨格を頂点(架橋点)として3方向に架橋した構造(3つの6角形が互いに2頂点又は2辺を共有してなるユニット)を有する高分子膜が形成される。また、式(1A)で表される4官能化合物を用いることにより、アダマンタン骨格を頂点(架橋点)として4方向に架橋した構造(3つの6角形が互いに2辺を共有してなるユニット)を有する網目状の高分子膜を形成することができる。このような絶縁膜は、内部に多数の分子レベルの空孔を均一に分散して有するため、特に優れた比誘電率を有することができる。
【0111】
アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物として、式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体と式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体との組み合わせを用いた場合には、モノマー成分同士の立体障害により重合反応時に密度の低下を防ぐことができるため、巨大分子レベルの空孔構造を有するポリマーを得ることができる。すなわち、一方のモノマー成分に用いる式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体は、中心のアダマンタン骨格を中心とし、R1、R2、R3、R4を頂点とする四面体(ほぼ正四面体)であって、前記R1、R2、R3、R4の少なくとも3つが式(4A)、(4B)、(4C)の何れかで表される基で構成されている立体的に嵩高い構造(容積の大きい構造)を有する巨大分子である。他方のモノマー成分に用いる式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体は、中心のアダマンタン骨格を中心とし、Ra、Rb、Rc、Rdを頂点とする四面体(ほぼ正四面体)である。これらをモノマー成分とする重合反応においては、式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体が有するR1、R2、R3、R4を頂点とする巨大四面体と、式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体が有するRa、Rb、Rc、Rdを頂点とする四面体とは、極めて大きい立体障害により互いの四面体構造の空間内部への貫入を防ぎ、さらに、伸長中のオリゴマー、ポリマー等の侵入も制限される。このため、両モノマー成分が本来有する四面体構造が保持され、これらの四面体の容積に対応するサイズの空孔が規則正しく配置された密度の低い構造を有するポリマーを形成することができる。
【0112】
さらに、式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体と式(1)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体との組み合わせによれば、分子のサイズ差が遙かに小さくなっており、熱運動による分子の衝突頻度が十分に上がるため、反応率を上昇させることができ(例えば反応率60%以上)、膜質、機械特性共に優れた膜を形成することができる。また、立体構造の観点からは、式(3)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体は、嵩高い構造を有する巨大分子であって、やはり立体障害を有するモノマー成分との重合反応によって、空孔内へのモノマー成分の浸入やポリマー鎖の貫通が抑制される。そのため、内部に均一且つ大きいサイズの分子レベルの空孔が多数分散した高秩序の空孔構造を容易に構築することができる。このように形成されたポリマーからなる絶縁膜は、空孔率が高いので比誘電率が低く、架橋により十分な耐熱性及び機械的強度を有する上、配線からの銅の拡散が極めて少ないという利点を有する。このような絶縁膜形成材料を焼成して得られる絶縁膜は、上記空孔構造を有するポリマーで構成されるため、比誘電率(K値)が、例えば3未満(好ましくは2.8未満、より好ましくは2.3未満程度)であり、極めて低い比誘電率を発揮することができる。
【0113】
また、前記式(5A)、(5B)又は(5C)で表されるプレポリマーからは、式(1A)又は(1B)で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体に由来するアダマンタン骨格と、式(2)で表されるアミン誘導体に由来する単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環と、重縮合部分に形成される含窒素環を主な構成単位として含む高分子量重合体が得られる。そして、4官能のアダマンタンポリカルボン酸誘導体から誘導された式(5A)で表されるプレポリマーからは、アダマンタン骨格を頂点(架橋点)として4方向に架橋した構造(3つの6角形が互いに2辺を共有してなるユニット)を持ち多数の空孔を有する網目状の高分子膜を形成することができる。また、3官能のアダマンタンポリカルボン酸誘導体から誘導された式(5B)で表されるプレポリマーからは、アダマンタン骨格を頂点(架橋点)として3方向に架橋した構造(3つの6角形が互いに2頂点又は2辺を共有してなるユニット)を持ち多数の空孔を有する高架橋型高分子膜が形成される。また、2官能のアダマンタンポリカルボン酸誘導体から誘導された式(5C)で表されるプレポリマーからは、ポリマー分子鎖中のセグメント間の排除体積効果により、1ポリマー分子が存在する領域への他の分子鎖の貫通が制限されるため、モノマー混合物から直接高分子量重合体を得る場合と比べて疎な充填構造を有する空孔率の高い高分子膜を形成することができる。
【0114】
前記式(5A)、(5B)又は(5C)で表されるプレポリマーは溶媒に溶解しやすく、濃度の高い溶液を調製できるので、所望の厚みの薄膜を容易に形成できると共に、予めモノマー成分がある程度多量化された構造が形成されているため、重合が円滑に進行するとともに、空孔内へのモノマー成分の浸入やポリマー鎖の貫通が抑制される。そのため、内部に多数の分子レベルの空孔が均一に分散した高秩序の空孔構造を容易に構築することができる。そして、このように形成された高分子量重合体からなる絶縁膜は、空孔率が高いので比誘電率が低く、架橋により十分な耐熱性及び機械的強度を有する上、配線からの銅の拡散が極めて少ないという利点を有する。
【0115】
また、本発明の絶縁膜は、アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物の種類に応じて、例えば、オキサゾール環、チアゾール環等の窒素原子を一つのみ含む環を主構成単位に有するポリマー(単窒素環系化合物)と、イミダゾール環等の窒素原子を複数個含む環を主構成単位に有するポリマー(イミダゾール系化合物)等で構成することができる。単窒素環系化合物は、イミダゾール系化合物と比較して塩基性が低く、親水性が低下する傾向にあるため、水分をより吸湿しにくくなり、絶縁性、経時変化等の膜の性質を安定化するものと推察され、絶縁膜の低誘電率化に有利な場合がある。
【0116】
こうして得られる本発明の絶縁膜は内部に多数の分子レベルの空孔を均一に分散して有するため、優れた比誘電率を示す。本発明の絶縁膜は、特に、膜表面の広範囲において電気的特性が均一であり、局所的にリーク電流が高くなるなどの問題がなく、優れた品質を有している。絶縁膜の電気的特性は、例えば、電気化学測定、インピーダンス測定装置、水銀プローバ等を用いて評価できる。
【0117】
加熱により形成される絶縁膜の膜厚は、用途に応じて適宜設定できるが、一般には50nm以上(50〜2000nm程度)、好ましくは100nm以上(100〜2000nm程度)、さらに好ましくは300nm以上(300〜2000nm程度)である。膜厚が50nm未満では、リーク電流が発生するなどの電気的特性に悪影響を及ぼしたり、半導体製造工程における化学的機械研磨(CMP)による膜の平坦化が困難となるなどの問題が生じやすいため、特に層間絶縁膜用途としては適さない。
【0118】
本発明の絶縁膜は、低誘電率且つ高耐熱性を示すため、例えば、半導体装置等の電子材料部品における絶縁被膜として使用することができ、特に層間絶縁膜として有用である。
【実施例】
【0119】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。原料、溶媒及び塗布液の含水量、カールフィッシャー電量滴定法により測定した。なお、高分子膜の膜厚はエリプソメーターを用いて測定し、高分子膜の密度は、X線反射率測定の解析により求め、高分子膜の比誘電率は膜の表面にAl電極を形成して測定した。赤外線吸収スペクトルの測定はうす膜による透過法を採用した。重量平均分子量はポリスチレン換算の値である。密度は25℃の値である。
【0120】
製造例1
下記式で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体の合成
【化17】

反応容器(3つ口フラスコ)に、上記式(2-1)で表される3,3’−ジアミノベンジジン77.68g(0.362mmol)を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)307gを加えて溶解させた後、氷浴で0℃以下に保った。この反応容器へ、上記式(1A-1)で表されるアダマンタンテトラキスベンズアルデヒド1.01g(1.8mmol)をDMAc501gに溶解させた溶液を、滴下ロートを用いて6ml/minの速度で滴下した。滴下中、反応溶液内の液温が0℃を超えないように注意した。滴下終了後、滴下ロートをDMAc105gで洗浄し、これも反応容器内に滴下した。反応液に、テフロン(登録商標)チューブを用いて酸素濃度5モル%の酸素窒素混合ガスを導入しながら、反応容器をオイルバスにより加熱して液温を90℃に保ち、9時間反応させた。反応終了後、反応液を、別の容器中の水9.13kgへ滴下し、沈殿と上澄みからなるスラリーを、滴下終了後から約1時間撹拌した。撹拌中、反応液は、アミンの酸化を防止するため窒素をバブリングさせた。生成した沈殿物を濾別し、反応容器に再度移し、水1.83kgを加えて窒素雰囲気下、加熱還流を30分施して熱水洗浄を施した。温度が下がらないうちに沈殿物を濾別した後、得られた濾過物を真空乾燥機で乾燥させた。
乾燥終了後、得られた沈殿を還流管を備えた反応容器へ移し、テトラヒドロフラン(THF)1.83kgを加え、窒素雰囲気下で加熱還流することによりTHF洗浄を施した。再度固形分を濾別し、真空乾燥機で乾燥した生成物の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、図1に示されるNMRスペクトルデータ及び図2に示される赤外線吸収スペクトルデータにより、上記式(3C-N1)で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体が形成されていることを確認した。アミノ基含有アダマンタン誘導体の収量は24.5g、収率は90%であった。
[NMRスペクトルデータ]
1H−NMR(DMSO−d6) δ(ppm):2.32(12H<−CH2−>), 4.60(16H<−NH2>),6.62−6.97(12H<芳香環プロトン>), 7.53−7.78(12H<芳香環プロトン>),7.87(8H),8.24(8H) 12.85(4H)
[赤外線吸収スペクトルデータ(cm-1)]
3419(N−H<伸縮振動>),2933(−CH2−のC−H<伸縮振動>),1623( −C=N−<伸縮振動>),1420−1520(芳香環<面内振動>),1280(芳香族−NH2<伸縮振動>)
【0121】
製造例2(実施例2に用いるプレポリマー)
下記式で表されるプレポリマー(イミダゾール前駆体ポリマー)の合成
【化18】

3つ口フラスコに、3,3’−ジアミノベンジジン25.4g(119mmol)を入れ、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)200gを加えて溶解させ、窒素脱気を30分間施した。窒素気流下で撹拌しながら、氷冷下、フラスコ内に、アダマンタンテトラカルボン酸クロリド3.00g(7.8mmol)のDMAc溶液(濃度1.5重量%)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌を続けた。反応終了後、反応混合液を8倍量の水に落とし、析出物を濾別、洗浄し、乾燥させた。乾燥後、析出物を再度DMAcに溶解させ、固形分濃度を12重量%に調整し、8倍量の水に落とした。析出物を濾別、洗浄の後、乾燥に付し、標記のプレポリマー5.93gを得た(収率59.3%)。重量平均分子量は約1万であった。上記式中、nは繰り返しの数であり0以上の整数を示す。このプレポリマーは前記式(5A)で表されるプレポリマーに含まれる。
[NMRスペクトルデータ]
1H−NMR(DMSO-d6) δ:1.51−2.60(m,アダマンタン環),4.63(b,NH2),6.45−7.58(m,芳香環),8.71−8.88(q,−CONH−)
【0122】
実施例1
製造例1で得たアミノ基含有アダマンタン誘導体及びアダマンタンテトラキス安息香酸を真空乾燥機に投入し、120℃〜140℃の温度下で40時間乾燥した。乾燥処理後のアミノ基含有アダマンタン誘導体及びアダマンタンテトラキス安息香酸の残留水分量はいずれも1.5重量%であった。
3方コックを備えた30mlフラスコに撹拌子を入れ、容器内に乾燥窒素(湿度0.1%以下)を導入しながら、上記乾燥処理を施したアミノ基含有アダマンタン誘導体50mg、アダマンタンテトラキス安息香酸23.2mgを投入し、さらにN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)とジメチルイジダゾリジノン(DMI)との混合溶媒[混合比1:1(重量比)、水分量約300ppm]を加えて、60℃で1時間攪拌し、基質を溶解させて固形分濃度10重量%の塗布液を調製した。
室温に戻した塗布液を、細孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターでろ過した後、水分量を測定したところ塗布液の含水量は0.12重量%であった。
【0123】
この塗布液を8インチのシリコンウェハ上に2〜3ml滴下し、回転数100〜5000rpmでスピンコートした。これを窒素雰囲気下、石英製チャンバー内で室温〜400℃で120分間加熱焼成して膜を形成した。こうして得られた高分子膜の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、下記のスペクトルデータにより、目的の架橋ポリベンズイミダゾール膜が形成されていることが確認された。得られた膜の膜厚は160nmであった。膜の密度は1.20g/cm3、比誘電率は2.1であった。
得られた絶縁膜の直径8インチのシリコンウェハ表面10点の電気抵抗を測定したところ、面内の比抵抗値がすべて1010〜1017(Ω・cm)の膜で、電気的特性のばらつきがなく均質であった。この絶縁膜表面10点の印加電界と電流密度との相関を示すグラフを図1に示す。図1によれば、絶縁膜上の全ての測定点において同じようなリーク電流値が示されていることから、低水分量の塗布液を用いて製膜することにより、膜の相分離が抑制されたものと思われ、表面の電気的特性が均一な絶縁膜が得られていた。
[赤外線吸収スペクトルデータ(cm-1)]
3419(N−H<伸縮振動>),2933(−CH2−<C−H伸縮振動>),1623(−C=N−<伸縮振動>),1420−1520(芳香環<面内振動>),1280(芳香族−NH2<伸縮振動>)
【0124】
比較例1
実施例1において、乾燥処理を施していない製造例1で得たアミノ基含有アダマンタン誘導体(水分量5重量%)及びアダマンタンテトラキス安息香酸(水分量6重量%)を用い、フラスコ容器内に湿度0.1%の乾燥窒素を導入して溶解処理を施した点以外は実施例1と同様の方法で塗布液を調製した。
室温に戻した塗布液を、細孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターでろ過した後、水分量を測定したところ塗布液の含水量は6重量%であった。
この塗布液を用いて実施例1と同様の操作により膜を形成した。こうして得られた高分子膜の赤外線吸収スペクトル測定により、目的の架橋ポリベンズイミダゾール膜が形成されていることを確認した。得られた膜の膜厚は160nmであった。膜の密度は1.20g/cm3、比誘電率は4.0であった。
得られた絶縁膜の直径8インチのシリコンウェハ表面に10点の電気抵抗を測定したところ、6点は比抵抗値が1010〜1017(Ω・cm)であったが、4点において絶縁破壊が生じており導通していた。この絶縁膜表面10点の印加電界と電流密度との相関を示すグラフを図2に示す。図2によれば、低い印加電界で電流密度が大きな数値を示す2つの測定点と、印加電界と電流密度の相関が乱れている2つの測定点において、絶縁破壊が生じていた。これは、塗布液中の水分量が多いため製膜時に相分離を起こし、焼成後の膜内に微小な低密度領域又はピンホールが形成されて膜の均一性が損なわれること、さらに、これらの低密度領域やピンホールが水分を吸着しやすく、その界面[ピンホール等の壁面]が絶縁膜内部(緻密層)より電子の伝達性が高いため、局所的にリーク電流が高くなることにより絶縁性が損なわれたことによるものと推察される。
【0125】
実施例2
製造例2で得たプレポリマーを真空乾燥機に投入し、120℃〜140℃の温度下で40時間乾燥した。乾燥処理後のプレポリマーの残留水分量は1.5重量%であった。
3方コックを備えた30mlフラスコに撹拌子を入れ、容器内に乾燥窒素(湿度0.1%以下)を導入しながら、上記乾燥処理を施したプレポリマー(イミダゾール前駆体ポリマー)1.40gと、アダマンタンテトラキス安息香酸23.2mgを投入し、さらにN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)とジメチルイジダゾリジノン(DMI)との混合溶媒[混合比1:1(重量比)、水分量約300ppm]18.6gを加えて、60℃で1時間攪拌し、基質を溶解させて固形分濃度10重量%の塗布液を調製した。
室温に戻した塗布液を、細孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターでろ過した後、水分量を測定したところ塗布液の含水量は0.13重量%であった。
【0126】
この塗布液を8インチのシリコンウェハ上に2〜3ml滴下し、回転数100〜5000rpmでスピンコートした。これを窒素雰囲気下、石英製チャンバー内で室温〜400℃で120分間加熱焼成して膜を形成した。こうして得られた高分子膜の赤外線吸収スペクトルの測定したところ、下記のスペクトルデータにより、目的の架橋ポリベンズイミダゾール膜が形成されていることが確認された。得られた膜の膜厚は350nmであった。膜の密度は1.29g/cm3、比誘電率は2.6であった。
得られた絶縁膜の直径8インチのシリコンウェハ表面10点の電気抵抗を測定したところ、面内の比抵抗値がすべて1010〜1017(Ω・cm)の膜で、電気的特性のばらつきがなく均質であった。
[赤外線吸収スペクトルデータ(cm-1)]
3419(N−H<伸縮振動>),2933(−CH2−<C−H伸縮振動>),1623(−C=N−<伸縮振動>),1420−1520(芳香環<面内振動>),1280(芳香族−NH2<伸縮振動>)
【0127】
比較例2
実施例2において、乾燥処理を施していない製造例2で得たプレポリマー(水分量5.8重量%)として乾燥処理を施さないものを用いた点以外は実施例2と同様の方法で塗布液を調製した。
室温に戻した塗布液を、細孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターでろ過した後、水分量を測定したところ塗布液の含水量は5.3重量%であった。
この塗布液を用いて実施例1と同様の操作により膜を形成した。こうして得られた高分子膜の赤外線吸収スペクトルを測定して、目的の架橋ポリベンズイミダゾール膜が形成されていることが確認された。得られた膜の膜厚は320nmであった。膜の密度は1.29g/cm3、比誘電率は3.5であった。
得られた絶縁膜の直径8インチのシリコンウェハ表面10点の電気抵抗を測定したところ、4点の比抵抗値は1010〜1017(Ω・cm)であったが、6点において絶縁破壊が生じており導通していた。
【0128】
実施例3
下記式で表される反応を利用した絶縁膜の製造
【化19】

3方コック及び還流管を備えた3口フラスコに、3,3’−ジアミノベンジジン8.70g(40.6mmol)、アセトン60g、酢酸1.2g(20.1mmol)を加え、オイルバスで70℃に加熱して3時間還流させることにより、上記式(2-2)で表されるアセトイミン体を生成させた。反応液を室温まで冷却し、内容物をナスフラスコに移液し、エバポレーターにて溶媒を除去することによりアセトイミン体溶液(アミン誘導体溶液)の濃縮液を得た。
別容器に上記式(1B-1)で表されるアダマンタントリカルボン酸7.26g(27.1mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)45.5gに溶解させ、上記アセトイミン体の濃縮液と混合した。再度エバポレーターを用いて溶媒がほぼなくなるまで濃縮した。濃縮終了後、全液量が63gとなるようにDMAc(水分量1.5重量%)を加えて固形分が充分溶解するまで攪拌することにより、固形分濃度25重量%の塗布液を調製した。
得られた塗布液を、細孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターでろ過した後、水分量を測定したところ塗布液の含水量は2.5重量%であった。
この塗布液を8インチのシリコンウェハ上に2〜3ml滴下し、回転数100〜5000rpmでスピンコートした。これを窒素雰囲気下、石英製チャンバー内で室温〜400℃で120分間加熱焼成して膜を形成した。こうして得られた高分子膜の赤外線吸収スペクトル測定により、目的の架橋ポリベンズイミダゾール膜が形成されていることを確認した。得られた膜の膜厚は560nmであった。膜の密度は1.24g/cm3、比誘電率は2.8であった。
得られた絶縁膜の直径8インチのシリコンウェハ表面10点の電気抵抗を測定したところ、面内の比抵抗値がすべて1010〜1017(Ω・cm)の膜で、電気的特性のばらつきがなく均質であった。
[赤外線吸収スペクトルデータ(cm-1)]
3420(N−H<伸縮振動>),2925(−CH2−<C−H伸縮振動>),1620(−C=N−<伸縮振動>),1420−1520(芳香環<面内振動>),1280(芳香族−NH2<伸縮振動>),806(芳香環<面外伸縮>)
【0129】
比較例3
実施例3と同様の方法によりアセトイミン体溶液の濃縮液を得た。
別容器にアダマンタントリカルボン酸7.26g(27.1mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)45.5gに溶解させ、上記アセトイミン体の濃縮液と混合した。再度エバポレーターを用いて溶媒を15g除去した。濃縮終了後、全液量が63gとなるようにDMAc(水分量1.5重量%)を加えて固形分が充分溶解するまで攪拌することにより、固形分濃度25重量%の塗布液を調製した。
得られた塗布液を、細孔径0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターでろ過した後、水分量を測定したところ塗布液の含水量は8.2重量%であった。
この塗布液を用いて実施例1と同様の操作により膜を形成した。こうして得られた高分子膜の赤外線吸収スペクトルを測定して、目的の架橋ポリベンズイミダゾール膜が形成されていることが確認された。得られた膜の膜厚は550nmであった。膜の密度は1.24g/cm3、比誘電率は3.8であった。
得られた絶縁膜の直径8インチのシリコンウェハ表面に10点の電気抵抗を測定したところ、8点は比抵抗値が1010〜1017(Ω・cm)であったが、2点において絶縁破壊が生じており導通していた。
【0130】
(評価方法)
実施例1及び比較例1で得た絶縁膜表面に対し、任意の10点において比誘電率は膜の表面にAl電極を形成して測定した。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】実施例1で得られた絶縁膜の絶縁性評価に用いた図である。
【図2】比較例1で得られた絶縁膜の絶縁性評価に用いた図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物を溶媒に溶解させた重合性組成物からなる絶縁膜形成材料であって、含水量が5重量%未満であることを特徴とする絶縁膜形成材料。
【請求項2】
アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物が、下記式(1)
【化1】

(式中、X1、X2、X3、X4は、同一又は異なって、単結合又は2価の芳香族性又は非芳香族性環式基を示し、Ra、Rb、Rc、Rdは、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はアシル基を示す。但し、Ra、Rb、Rc、Rdのうち少なくとも3つは、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はアシル基を示す)
で表されるカルボニル基含有アダマンタン誘導体と、下記式(2)
【化2】

(式中、環Yは単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環を示し、Re、Rf、Rg、Rhは環Yに結合している置換基であって、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基を示す。但し、Re、Rf、Rg、Rhのうち少なくとも2つは、保護基で保護されていてもよいアミノ基を示す)
で表されるアミン誘導体、及び/又は下記式(3)
【化3】

[式中、X1、X2、X3、X4は、同一又は異なって、単結合又は2価の芳香族性又は非芳香族性環式基を示し、R1、R2、R3、R4は、アダマンタン環又は環X1、X2、X3、X4に結合している置換基であって、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、アシル基、若しくは下記式(4A)、(4B)又は(4C)
【化4】

(式(4A)、(4B)、(4C)中、環Yは、同一又は異なって、単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環を示し、Qは、酸素原子、硫黄原子、又は−NH−を示し、R5、R6、R7は、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基を示す。但し、R6、R7のうち少なくとも一つは保護基で保護されていてもよいアミノ基を示し、R′はハロホルミル基以外のアシル基からカルボニル基を除した基を示す)
で表される基を示す。但し、R1、R2、R3、R4のうち少なくとも3つは、同一又は異なって、式(4A)、(4B)又は(4C)で表される基を示す]
で表されるアミノ基含有アダマンタン誘導体との組み合わせであるか、若しくは下記式(5A)、(5B)又は(5C)
【化5】

[式中、X1、X2、X3、X4は前記に同じ。L1、L3は水素原子、炭化水素基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はアシル基を示し、W1、W2、W3は、水素原子、炭化水素基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、アシル基、若しくは下記式(6)
【化6】

(式中、環Yは前記に同じ。Re〜hはRe、Rf、Rg、Rhの何れかを示すことを意味する。Zは、Ra〜RdとRe〜Rhとの反応により形成された結合であって、イミン結合、アミド結合、エステル結合又はチオエステル結合を示す。A1は、Re、Rf、Rg、Rhの何れか、若しくは下記式(7A)、(7B)又は(7C)
【化7】

(式中、W1、W2、W3、L1、L3、Zは前記に同じ。X1〜4はX1、X2、X3、X4の何れかであることを示す)
で表される基を示す)但し、式(5A)中に示されている4つのW1のうち少なくとも1つ、及び(5B)中に示されている3つのW2のうち少なくとも1つ、式(5C)中に示されている2つのW3のうち少なくとも1つは前記式(6)で表される基である。A1、W1、W2、W3、L1、L3、Xがそれぞれ複数個存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい]
で表されるプレポリマーである請求項1記載の絶縁膜形成材料。
【請求項3】
アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物を溶媒に溶解させて重合性組成物を調製する際に、絶縁膜形成材料の含水量を5重量%未満に制御することを特徴とする絶縁膜形成材料の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の絶縁膜形成材料で形成され、該絶縁膜形成材料を構成するアダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物の重合反応により得られるポリマーからなる絶縁膜。
【請求項5】
アダマンタン骨格を有する化合物を含む重合性化合物を溶媒に溶解させた重合性組成物からなる絶縁膜形成材料を、含水量を5重量%未満に保持した状態で基板に塗布した後、焼成して絶縁膜を得る絶縁膜の製造方法。
【請求項6】
アダマンタン骨格を有する化合物が請求項2記載の化合物である請求項5記載の絶縁膜の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載の絶縁膜の製造方法により得られる絶縁膜。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−217455(P2007−217455A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36518(P2006−36518)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】