説明

絶縁膜形成用感放射線性樹脂組成物

【課題】有機EL表示素子などの絶縁膜の形成に用いた場合、形成される絶縁膜パターン上面の端縁部が丸みを帯びると共に、有機EL表示素子の劣化現象であるシュリンク(ダークエリア)の発生を抑制し得る絶縁膜を与える感放射線性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)キノンジアジドスルホン酸エステルと、(C)有機溶剤を含む感放射線性樹脂組成物において、前記(A)成分のアルカリ可溶性樹脂として、アルコキシメチル化メラミンとノボラック型樹脂との酸触媒下での反応物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は絶縁膜形成用感放射線性樹脂組成物、さらに詳しくは、有機エレクトロルミネッセンス(以下、エレクトロルミネッセンスを、「EL」と略記する。)表示素子などの絶縁膜の形成に用いた場合、形成される絶縁膜パターン上面の端縁部が丸みを帯びると共に、有機EL表示素子の劣化現象であるシュリンク(ダークエリア)の発生を抑制し得る絶縁膜を与える感放射線性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電界発光を利用したEL素子は、自己発光のため視認性が高く、かつ完全固体素子であるため、耐衝撃性に優れるなどの特徴を有することから、各種表示装置における発光素子としての利用が注目されている。
このEL素子には、発光材料に無機化合物を用いてなる無機EL素子と有機化合物を用いてなる有機EL素子とがあり、このうち、特に有機EL素子は、印加電圧を大幅に低くしうる上、小型化が容易であって、消費電力が小さく、面発光が可能であり、かつ三原色発光も容易であることから、次世代の発光素子としてその実用化研究が積極的になされている。
この有機EL素子の発光体部の構成としては、一般に、透明基板上に順次設けられた透明電極層(陽極)/有機発光体薄膜層(有機発光層)/金属電極層(陰極)の構成を基本とし、これに正孔注入輸送層や電子注入層を適宜設けたもの、例えば陽極/正孔注入輸送層/有機発光層/陰極や、陽極/正孔注入輸送層/有機発光層/電子注入層/陰極などの構成のものが知られている。該正孔注入輸送層は、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有し、また、電子注入層は陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有している。そして、該正孔注入輸送層を発光層と陽極との間に介在させることによって、より低い電界で多くの正孔が発光層に注入され、さらに、発光層に陰極又は電子注入層より注入された電子は、正孔注入輸送層が電子を輸送しないので、正孔注入輸送層と発光層との界面に蓄積され発光効率が上がることが知られている。
【0003】
図1は、有機EL素子の1例の原理図であって、有機EL素子は、この図で示すように、一般に透明基板1上に設けられた透明電極層(陽極)2の上に、正孔注入輸送層7、有機発光層8及び電子注入層9からなる有機EL材料層5が積層され、さらにその上に金属電極層(陰極)6が積層された構成を有している。そして、陽極と陰極との間に電流を流すことにより、有機発光層8において発光が生じ、この場合は、透明基板1側から発光が取り出される。
この有機EL素子を作製するには、まず、ガラス板などの透明基板上に、蒸着法やスパッタリング法などでパターニングされた透明電極層(陽極)を形成したのち、その上に所望のパターンを有する絶縁膜を設ける。この絶縁膜は、例えばポリイミド樹脂膜のエッチング法やフォトレジストを用いるフォトリソグラフィー法により設けることができる。なお、該絶縁膜は遮光膜を兼ねることもできる。
次いで、このようにして透明基板上に設けられた絶縁膜を介して、断面形状が矩形型又は逆テーパ型のレジストパターン層をフォトリソグラフィー法により設けたのち、このレジストパターン層を樹脂隔壁層とし、各隔壁層間に真空蒸着法により、例えば正孔注入輸送層、有機発光層及び電子注入層を順次設けて有機EL材料層を形成し、さらにその上に金属電極層(陰極)を積層することにより、発光体部を形成する。最後にこの発光体部上に封止層を形成することにより、封止された有機EL素子が得られる。
【0004】
図2は、一般の有機EL素子における発光体部の1例の構成を示す部分断面図である。すなわち、パターニングされた透明電極層2が設けられた透明基板1上に、絶縁膜3を介して断面形状が逆テーパ型のレジストパターン層(樹脂隔壁層)4が設けられている。そして、このレジストパターン層とレジストパターン層との間に、表面に金属電極層6を有する有機EL材料層(透明電極層側から、順次正孔注入輸送層、有機発光層及び電子注入層が設けられた構成のもの)5が設けられ、発光体部がレジストパターン層4とは非接触に独立の状態で形成されている。また、レジストパターン層4上も、機能上必要ではないが、製造上の都合から、表面に金属電極層6aを有する有機EL材料層5aが形成されている。
このような構成の有機EL素子における絶縁膜3は、図2で示すように、通常断面形状が矩形状である。しかしながら、該絶縁膜の断面形状が矩形状の場合、各レジストパターン層4間の透明電極層2上に、真空蒸着法により有機EL材料層を形成し、さらにその上に金属電極層(陰極)を積層して発光体部を形成する際に、真空蒸着の性質上、発光体部の側面が垂直の平坦面にはなりにくく、また場合により金属電極層の蒸着時に、該金属電極材料の側面部への回り込みによって、発光の不均一化をもたらしたり、あるいは金属電極材料が透明電極上に付着し、短絡が生じるなど、不良品の発生頻度が多いという問題があった。このような問題を解決するには、上記絶縁膜の断面形状としては、上面の端縁部が丸みを帯び、かつ裾広がり型のものが有利であることが考えられる。該絶縁膜がこのような形状のものである場合、金属電極層の蒸着時に、金属電極材料の回り込みが生じにくくなる。
【0005】
また、近年、基板上に、底面に透明電極層が露出したホールを所望のパターン状に複数設け、このホール内にインクジェット方式により高分子有機EL材料をノズルにより噴射して、有機EL材料層を形成し、さらにその上に金属電極層を積層して有機EL素子を作製する技術が開発されている。この場合、各ホールとホールとの間には、絶縁膜(遮光膜を兼ねることができる)からなるバンクが設けられるが、この絶縁膜も、断面形状が矩形状のものよりも、上面の端縁部が丸みを帯び、かつ裾広がり型のものが有利であると考えられている。
従来、このような問題を解決し得る絶縁膜材料として、アルカリ可溶性樹脂と、1,2−キノンジアジド化合物の組み合わせからなるポジ型感放射線性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−169277号公報
【特許文献2】特開2002−189290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記公報に具体的に記載された感放射線性樹脂組成物は、一般的なノボラック型樹脂を含むものであるが、このような組成物を用いて有機EL素子用の絶縁膜を形成した場合、脱ガスのために素子の発光部分にシュリンク(ダークエリア)が発生し、寿命の長い有機EL素子を安定的に製造することが困難であること、及び従来の絶縁膜においては、酸素プラズマ処理や紫外線−オゾン処理などのドライ処理を行うと、絶縁膜が劣化してダークエリアの増加が起こることが、本発明者の検討により分かった。
本発明は、このような事情のもとで、有機EL表示素子などの絶縁膜の形成に用いた場合、形成される絶縁膜パターン上面の端縁部が丸みを帯びると共に、有機EL表示素子の劣化現象であるシュリンク(ダークエリア)の発生を抑制し得る絶縁膜を与える感放射線性樹脂組成物を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、アルカリ可溶性樹脂を含む感放射線性樹脂組成物において、該アルカリ可溶性樹脂として、アルコキシメチル化メラミンとノボラック型樹脂との酸触媒下での反応物を用いることにより、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)キノンジアジドスルホン酸エステルと、(C)有機溶剤を含む感放射線性樹脂組成物において、前記(A)成分のアルカリ可溶性樹脂が、アルコキシメチル化メラミンとノボラック型樹脂との酸触媒下での反応物(以下、メラミン化ノボラック型樹脂ということがある。)であることを特徴とする絶縁膜形成用感放射線性樹脂組成物、
(2)前記アルコキシメチル化メラミンが、メチロール度3〜6であり、かつ分子量が360〜1200である上記(1)項に記載の絶縁膜形成用感放射線性樹脂組成物、及び
(3)アルコキシメチル化メラミンが、ノボラック型樹脂100重量部に対して、5〜50重量部である上記(1)又は(2)項に記載の絶縁膜形成用感放射線性樹脂組成物、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、有機EL表示素子などの絶縁膜の形成に用いた場合、形成される絶縁膜パターン上面の端縁部が丸みを帯びると共に、有機EL表示素子の劣化現象であるシュリンク(ダークエリア)の発生を抑制し得る絶縁膜を与える感放射線性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の絶縁膜形成用感放射線性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)キノンジアジドスルホン酸エステルと、(C)有機溶剤を含む組成物であり、そして前記(A)成分のアルカリ可溶性樹脂として、アルコキシメチル化メラミンとノボラック型樹脂との酸触媒下での反応物が用いられる。
前記ノボラック型樹脂は、フェノール類と、アルデヒド類又はケトン類とを酸性触媒(例えば、シュウ酸)の存在下で反応させることにより得ることができる。
【0011】
フェノール類としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、4−t−ブチルカテコール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、チモール、イソチモールなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明においては、フェノール類として、得られる絶縁膜の性能の点から、m−クレゾールと、他のフェノール類、例えばp−クレゾール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール及び3,5−ジメチルフェノールの中から選ばれる少なくとも1種とを組み合わせて用いることが好ましい。この場合、m−クレゾールと前記他のフェノール類との使用割合は、重量比で25:75〜85:15が好ましく、30:70〜70:30がより好ましい。
【0012】
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピオンアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、p−n−ブチルベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジフェニルケトンなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明においては、アルデヒド類やケトン類として、ホルムアルデヒド、ホルマリン、パラホルムアルデヒドが好ましい。
【0013】
本発明においては、前記ノボラック型樹脂としては、得られる絶縁膜の現像性(パターニング性)などの点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した単分散ポリスチレン換算の重量平均分子量が、通常3,000〜10,000程度、好ましくは5,000〜7,000であって、後述の方法で測定されるアルカリ溶解速度が、通常5〜100nm/sec程度、好ましくは30〜60nm/secであるものが好適である。
上記ノボラック型樹脂の重量平均分子量は、合成条件を調整することにより、所望の範囲に制御することができる。この他、例えば、(1)合成により得られたノボラック型樹脂を粉砕し、適当な溶解度を持つ有機溶剤で固−液抽出する方法、(2)合成により得られたノボラック型樹脂を良溶剤に溶解させ、貧溶剤中に滴下するか、または貧溶剤を滴下して、固−液もしくは液−液抽出する方法などにより、重量平均分子量を制御することができる。
なおGPCによる重量平均分子量の測定は、GPC測定装置として、製品名「SC8020」[TOSO社製]を用いて、以下の条件で実施する。カラム:TOSO社製製品名「TSKGEL G3000HXL」と「G2000HXL」の各1本の組み合わせ、温度:40℃、溶剤:テトラヒドロフラン、流速:1.0mL/min、試料:濃度0.05〜0.6重量%の試料を0.1mL注入する。
【0014】
一方、(A)成分のもう1つの原料として用いられるアルコキシメチル化メラミンとしては、メチロール度が3〜6の範囲にあり、かつ分子量が360〜1200のものが好適である。前記メチロール度が3〜6の範囲にあれば、ノボラック型樹脂との反応性が良好であり、また分子量が360〜1200の範囲にあれば得られる樹脂膜にスカムがなく、基板と樹脂膜との密着性が良好であるので好ましい。
なお、前記メチロール度は、メラミン1分子中のアミノ基の水素原子がアルコキシメチル基に置換された数の平均値のことである。
このようなアルコキシメチル化メラミンとしては、例えば一般式(1)
【0015】
【化1】

【0016】
[式中、R1〜R6は、それぞれ独立に水素原子又は−CH2OR基(ただし、Rは水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である)を示すが、R1〜R6のうちの少なくとも1つは−CH2OR'(R'は炭素数1〜10のアルキル基である)であり、かつメチロール度が3〜6である。]
で表される分子量360〜1200の化合物を用いることができる。
【0017】
前記一般式(1)において、−CH2OR'で表される炭素数1〜10のアルコキシメチル基としては、炭素数1〜4のアルコキシメチル基が好ましく、具体的にはメトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基などが挙げられる。
このアルコキシメチル化メラミンは、通常メラミンとホルムアルデヒドとを、酸性条件下に反応させ、N−メチロール化体を生成させたのち、このN−メチロール化体に、炭素数1〜10のアルコール、好ましくは炭素数1〜4のアルコールを反応させ、メチロール度が3〜6になるように該N−メチロール基をN−アルコキシメチル基に変換することにより、製造することができる。このようにして得られたアルコキシメチル化メラミンの分子中に、N−アルコキシメチル基が複数存在する場合、複数のN−アルコキシメチル基は、たがいに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
メラミンとホルムアルデヒドとを酸性条件下で反応させる際に、単量体と同時に、重合度が2〜5程度のオリゴマーが生成する。本発明においては、得られるアルコキシメチル化メラミン中の単量体比率は60重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましい。
【0018】
このようなアルコキシメチル化メラミンの具体例としては、メトキシメチル化メラミン、エトキシメチル化メラミン、プロポキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミンなどが挙げられる。また、市販されているアルコキシメチル化メラミンを利用することも可能であり、例えばサイメル(登録商標)300[三井サイテック社製、メトキシメチル化メラミン、単量体比率85%]、同303[三井サイテック社製、メトキシメチル化メラミン、単量体比率60%]、製品名ニカラックMW−30HM[三和ケミカル社製、メトキシメチル化メラミン、単量体比率95%]、製品名ニカラックMW−40[三和ケミカル社製、メトキシ及びブトキシ混合メチル化メラミン]などが挙げられる。
本発明においては、これらのアルコキシメチル化メラミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明においては、前記(A)成分のアルカリ可溶性樹脂として、前述のノボラック型樹脂とアルコキシメチル化メラミンとの酸触媒下での反応物を用いるが、この際、ノボラック型樹脂とアルコキシメチル化メラミンの使用割合は、ノボラック型樹脂100重量部に対して、アルコキシメチル化メラミンが、通常5〜50重量部、好ましくは10〜30重量部である。
前記酸触媒としては、例えばパラトルエンスルホン酸のような有機酸や、塩酸、硫酸などの無機酸が挙げられる。また、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンのような光酸発生剤を混合し、光照射して発生した酸を触媒とすることができる。
前記酸触媒の存在下でのノボラック型樹脂とアルコキシメチル化メラミンとの反応は、例えば一般にレジスト用溶剤として用いられるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの有機溶剤中に、ノボラック型樹脂とアルコキシメチル化メラミンを溶解させ、酸触媒の存在下に、還流などの加熱処理を行うことにより、実施することができる。
【0020】
前記加熱処理温度は、酸触媒が活性化する温度で、100℃以上が好ましく、通常110〜140℃程度である。また、この反応生成物中に残留した酸が、得られる感放射線性樹脂組成物の安定性を悪くするおそれがあるので、前記反応生成物に、トリ−n−プロピルアミンなどのアルカリを添加して中和処理することが好ましい。
また、反応終了後は、水などの貧溶媒を用いて再沈処理などを行うことが望ましい。
このようにして、メラミン化ノボラック型樹脂を得ることができる。
本発明に用いるメラミン化ノボラック型樹脂の重量平均分子量は、通常4,000〜15,000、好ましくは4,000〜10,000、より好ましくは5,500〜8,000である。
【0021】
本発明の感放射線性樹脂組成物において、(B)成分として用いられるキノンジアジドスルホン酸エステルについては特に制限はなく、従来感光剤として公知のものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このキノンジアジドスルホン酸エステルとしては、例えばポリフェノール化合物のフェノール性水酸基が、一定の割合で、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル化、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル化、1,2−ナフトキノンジアジド−6−スルホン酸エステル化、1,2−ベンゾキノンジアジド−5−スルホン酸エステル化、1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル化されたものなどが挙げられる。これらの中でも好ましくは1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、より好ましくは1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルである。1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルを用いることにより感度と解像性のバランスの良い感放射線性樹脂組成物を提供することができる。
【0022】
ここで用いるポリフェノール類は、フェノール性水酸基を分子内に2つ以上、好ましくは3つ以上、より好ましくは4つ有するものである。このポリフェノール類の例としては、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4'−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4,2',4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2',4'−ペンタヒドロキシベンゾフェノン等のポリヒドロキシベンゾフェノン類;トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニルメタン等のポリヒドロキシトリスフェニルアルカン類;フェノール類とホルマリンとのトリマー、フェノール類とホルマリンとのテトラマー、さらにノボラック型樹脂などが挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
ポリフェノール類として、特にトリ又はテトラヒドロキシベンゾフェノン類を用いて得られたキノンジアジドスルホン酸エステルは、良好な感度と解像性を与えるので好適である。
これらのエステルの製造方法は特に制限されないが、常法に従ってキノンジアジドスルホン酸ハライド(好ましくはキノンジアジドスルホン酸クロライド)を、アセトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の溶媒中で炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の無機塩基、又は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリブチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピリジン、ジシクロヘキシルアミン等の有機塩基の存在下、ポリフェノール化合物と反応させることにより得ることができる。
【0023】
本発明で用いられるエステルにおいて、これらのポリフェノール類の水酸基のキノンジアジドスルホン酸エステル化された水酸基の割合(平均エステル化率)は、反応時に用いるポリフェノール類の水酸基の当量数とキノンジアジドスルホン酸ハライドのモル数から算出される値であり、通常60%以上、好ましくは65%以上であって、上限は通常100%、好ましくは90%である。この平均エステル化率が60%以上であれば、パターン形状や解像性を向上させることができる。
本発明においては、この(B)成分のキノンジアジドスルホン酸エステルは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステルは、全感光剤中の含有量が20重量%以下、好ましくは10重量%以下に制御するのが、組成物の保存安定性の観点から有利である。
本発明の感放射線性樹脂組成物においては、この(B)成分のキノンジアジドスルホン酸エステルの含有量は、前記(A)成分のアルカリ可溶性樹脂100重量部当たり、通常1〜50重量部、好ましくは10〜30重量部の範囲で選定される。該(B)成分の含有量が上記範囲内であれば、実効感度と残膜率、解像性などのレジスト特性のバランスに優れる感放射線性樹脂組成物が得られる。
【0024】
本発明の感放射線性樹脂組成物において用いられる(C)成分の有機溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールアルキルエーテル類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、オキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、酢酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸ブチル等のエステル類を挙げることができる。
【0025】
これらの溶剤の中で、溶解性、各成分との反応性及び塗膜の形成のしやすさから、グリコールエーテル類、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、エステル類およびジエチレングリコール類が好ましく用いられる。これらの溶剤は、単独でまたは混合して用いることができる。
さらに必要に応じて、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、しゅう酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の高沸点溶剤を添加することもできる。
【0026】
本発明の感放射線性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない限りにおいて、その他の添加剤を含有させることができる。このようなその他の添加剤としては、例えば紫外線吸収剤、界面活性剤、接着助剤、保存安定剤、消泡剤等が挙げられる。特に紫外線吸収剤を含んだものについては陰極隔壁としても使用が可能となり、二つ以上のプロセスをひとつの材料で達成できるなど、生産性の向上にも大いに貢献できる。
前記紫外線吸収剤は、パターン形状をコントロールするために配合することができる。紫外線吸収剤としては、例えば、WO 01/61410 A1に掲載されている紫外線吸収剤と、以下のビスアジド化合物、具体的には2,6−ビス(4'−アジドベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4'−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、2,6−ビス(4'−アジドベンザル)−4−エチルシクロヘキサノン、4,4'−ジアジドカルコン、1,3−ビス(4'−アジドベンザル)−2−プロパノン、1,3−ビス(4'−アジドベンザル−2'−スルホン酸ナトリウム塩)−2−プロパノン、2,6−ビス(4'−アジドベンザル−2'−スルホン酸ナトリウム塩)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4'−アジドベンザル−2'−スルホン酸ナトリウム塩)−4−メチルシクロヘキサノン、2,6−ビス(4'−アジドベンザル−2'−スルホン酸ナトリウム塩)−4−エチルシクロヘキサノン、2,5−ビス(4'−アジドベンザル−2'−スルホン酸ナトリウム塩)シクロペンタノン、などを用いることができる。
【0027】
前記界面活性剤は、塗布性、例えばストリエーションや乾燥塗膜形成後の放射線照射部の現像性を改良するために配合することができる。界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアリールエーテル類、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが挙げられる。このような界面活性剤の配合量は、組成物の固形分100重量部あたり、通常2重量部以下、好ましくは1重量部以下である。
【0028】
前記接着助剤は、本発明の感放射線性組成物から形成された絶縁膜と基板との密着性を改良するために使用することができる。このような接着助剤としては、官能性シランカップリング剤が好ましく使用され、例えばカルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基などの反応性置換基を有するシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。また、アクリル系ポリマーも接着助剤として用いることができる。このような接着助剤の配合量は、組成物の固形分100重量部あたり、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下である。
【0029】
前記保存安定剤は、一般に塩基性含窒素化合物が用いられる。例えば一般式(2)
789N ・・・(2)
(式中、R7、R8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリール基、ヒドロキシアリール基、アラルキル基またはヒドロキシアラルキル基を示す。ただし、R1、R2及びR3が同時に水素原子となることはない。)
で表される化合物や、含窒素複素環式化合物などが好ましいものとして挙げられる。
【0030】
一般式(2)で表される化合物の具体例としては、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−n−ノニルアミン、ジ−n−デシルアミン等のジアルキルアミン類;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン等のトリアルキルアミン類;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族アミン類;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類を挙げることができる。これらのうち、トリアルキルアミン類が好ましい。
【0031】
含窒素複素環式化合物の具体例としては、イミダゾール、ベンズイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、N−メチル−4−フェニルピリジン、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、8−オキシキノリン、アクリジン等のピリジン類等を挙げることができる。これらのうち、ピリジン類が特に好ましく使用できる。
本発明において、塩基性含窒素化合物は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。本発明における塩基性含窒素化合物の使用量は、(A)成分のアルカリ可溶性樹脂100重量部当たり、通常、0.01〜20重量部、好ましくは0.03〜5重量部である。この場合、塩基性含窒素化合物の使用量が0.01重量部未満では、安定性が悪化する場合があり、また20重量部を超えると、感放射線性樹脂組成物としての感度が低下する場合がある。
【0032】
本発明の感放射線性組成物は、前記の溶剤を用いて調製される。その使用目的により、適宜の固形分濃度を採用できるが、例えば、固形分濃度10〜40重量%とすることができる。また上記のように調製された組成物溶液は、たとえばポアサイズ0.2〜0.7μm程度のフィルタなどを用いてろ過した後、使用に供することもできる。
本発明の感放射線性樹脂組成物を用いて、フォトリソグラフィー法により、基板上に所望パターンの樹脂膜を形成し、好ましくは100〜300℃、より好ましくは140〜250℃に加熱処理することにより、絶縁膜パターン上面の端縁部が丸みを帯びた絶縁膜を作製することができる。
【0033】
本発明の感放射線性樹脂組成物を用いて、有機EL素子用絶縁膜を基板上に設ける場合、該基板としては、透明基板上にパターニングされた透明電極層(陽極)を有するものを用いることができる。上記透明基板としては、400〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上であり、かつ平滑な基板が望ましい。このような透明基板としては、例えばガラス板、ポリマー板等が挙げられる。ガラス板としては、ソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等が好ましく挙げられる。またポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等の板を挙げることができる。これらの中で、通常ガラス板が好ましく用いられる。
【0034】
上記陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物又はこれらの混合物を電極物質とする透明電極が好ましく用いられる。また、陽極のシート抵抗は、数百Ω/cm2以下のものが好ましい。このようなものとしては、ITO(スズドープ酸化インジウム)、SnO2、ZnO、In−Zn−Oなどの導電性材料を電極物質とするものを挙げることができる。この陽極を形成するには、これらの電極物質を、蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させればよい。陽極の膜厚は、材料にもよるが通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選択される。
【0035】
このような有機EL素子用絶縁膜は、以下に示す方法により効率よく製造することができる。まず本発明の感放射線性樹脂組成物を用い、基板、具体的にはパターニングされた透明電極層(陽極)を有する透明基板上に、フォトリソグラフィー法や電子線描画法などにより、パターンを形成する。次いで、該パターンを加熱処理することにより上面の端縁部が丸みを帯び、裾広がり型形状(テーパ形状)の有機EL素子用絶縁膜が得られる。
次に、該絶縁膜の具体的な製造方法について説明する。パターニングされる透明電極層(陽極)を有する透明基板上に、前述の感放射線性樹脂組成物を、スピンナーなどで塗布し、乾燥して樹脂層を設ける。この際、樹脂層の厚さは、最終的に得られる絶縁膜が所定の厚さになるように制御される。次いで、これにマスクアライナー、ミラープロジェクションアライナーや縮小投影露光装置などにより、所望のマスクパターンを介して紫外線、deep−UV、エキシマレーザー光などを照射するか、あるいは電子線により描画し、加熱(PEB処理)する。その後これを現像液、例えば1〜10重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液のようなアルカリ性水溶液などを用いて現像処理することにより、樹脂膜パターンを形成する。
【0036】
次に、このようにして形成された樹脂膜パターンを加熱処理する。この際、加熱処理温度はパターン上面の端縁部が丸みを帯びた裾広がり型形状の絶縁膜が形成されるように制御することが肝要である。上記加熱温度としては、150〜280℃の範囲が好ましく、より好ましくは160〜250℃の範囲である。また、加熱処理時間は、加熱処理温度や加熱処理装置に左右され、一概に定めることはできないが、加熱処理装置として、ホットプレートを用いる場合、通常30〜900秒間程度であり、オーブンを用いる場合は、10〜120分間程度である。このようにして、有機EL素子用絶縁膜が効率よく得られる。この絶縁膜は、上記のように高温での加熱処理が施されているので膜中の揮発成分がほぼ完全に除去されており、有機EL素子に対して悪影響を及ぼすことがない。
【0037】
前記のようにして形成された絶縁膜に、ITO基板上の有機不純物の除去の目的で必要に応じて酸素プラズマ処理や紫外線−オゾン処理などのドライ処理を施したのち、該絶縁膜を介して、従来公知の方法によりレジストパターン層を設けて、発光体間を仕切る隔壁を形成する。
次いで、正孔注入輸送層、有機発光層、電子注入層、陰極層を常法に従って積層することで、有機EL素子が得られる。
【実施例】
【0038】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
なお、樹脂の重量平均分子量及びアルカリ溶解速度は、以下に示す方法に従って測定した。
(1)重量平均分子量(Mw)
明細書本文記載の方法に従って、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定する。
(2)アルカリ溶解速度
まず、ノボラック型樹脂をプロピレングリコールメチルエーテルアセテートに溶解して、固形分濃度20重量%溶液を調製したのち、シリコンウエーハ上に、スピンコーターにて、その回転数をコントロールしながら塗布し、プリベーク温度100℃にて、厚さ1μm程度の樹脂膜を形成する。
次いで、光学式膜厚計[プロメトリクス社製「SM−200」]により、前記樹脂膜の膜厚を正確に測定する。測定点は、シリコンウエーハの直径を6等分した5点とする。
次に、リソテックジャパン社製溶解挙動測定装置「モデル700」を用い、現像液(2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、23℃)での溶解速度を、レーザー光の干渉波形からモニターする。モニター時間は60秒とし、60秒後の残膜厚を測定し、下記の式より算出する。
アルカリ溶解速度=(初期膜厚−60秒後の膜厚)/60(nm/sec)
また、60秒以内に膜厚が0になった場合には、「モデル700」でモニターした干渉波形が一定値になるまでに要した時間を測定し、下記の式より算出する。
アルカリ溶解速度=初期膜厚/干渉波形が一定になるのに要した時間(nm/sec)
【0039】
製造例1
m−クレゾール/p−クレゾールの混合クレゾール(重量比50/50)とホルマリンとを、シュウ酸の存在下に縮合させて得られた重量平均分子量(Mw)が5,000のノボラック型樹脂A(アルカリ溶解速度30nm/sec)100g及びメトキシメチル化メラミン[三井サイテック社製製品名「サイメル303」、単量体比率60%、分子量1200、メチロール度6]20gを、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)に、固形分濃度が30重量%になるように溶解させた。
次いで、この溶液にパラトルエンスルホン酸2gを添加したのち、5分間還流下に加熱処理を行った。その後、トリ−n−プロピルアミンを添加し、中和処理を行った。
次に、この溶液と純水を混合して生成物を析出させ、さらに該生成物を真空乾燥することにより、樹脂B85gを得た。樹脂Bの重量平均分子量(Mw)は6,800であった。
【0040】
実施例1
(1)感放射線性樹脂組成物の調製
製造例1で得られた樹脂B100重量部、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンの1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル(エステル化率67モル%)20重量部及びPGMEA670重量部を混合し、完全に溶解させたのち、ポリテトラフルオロエチレン製の孔径0.5μmのメンブレンフィルター[ミリポア社製]にてろ過し、感放射線性樹脂組成物を調製した。
(2)有機EL素子用部材の作製
表面にパターニングされた膜厚120nmのITO透明電極膜を有するガラス基板上に、上記(1)で得た感放射線性樹脂組成物をスピンコーターにより、乾燥膜厚が1.0μmになるように塗布し、ホットプレート上で100℃にて90秒間加熱処理した。次いで、露光機としてキャノン社製製品名「マスクアライナーPLA504F」を用い、所定のパターンを有するマスクを介してパターン露光し、110℃で60秒間のPEB処理を行ったのち、2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間パドル現像処理した。その後オーブンで、230℃にて30分間加熱処理することにより、図4に示すような200μm四方の発光エリア(面積4×104μm2)を30μm幅のレジストパターンからなる、上面の端縁部が丸みを帯びた裾広がり型の絶縁膜が取り囲む格子状パターンを形成した。図4において、斜線部が絶縁膜であり、正方形の白色部が発光エリアである。
次に、上記絶縁膜に、酸素/アルゴン容量比50/50の混合ガスを用いて、200mWのプラズマ処理を20分間施した。このプラズマ処理絶縁膜が設けられてなるガラス基板上に、製品名「ZPN1168−30」[日本ゼオン社製]をスピンコートし、ホットプレート上で110℃で90秒間加熱して3μmの膜厚の樹脂膜を形成した。次いで、露光機として製品名「PLA504F型」(前出)を用い、所望のパターンを有するマスクを介して露光したのち、2.38重量%TMAHで70秒間パドル現像処理した。この操作により、絶縁膜上に逆テーパ型のレジストパターンが形成された。次に、254nmの照度が1.2mW/cm2の高圧水銀灯を200秒間照射して、該レジストパターンを焼き固めることにより、有機EL素子用部材を作製した。
【0041】
(3)有機EL素子の作製
上記(2)で作製した有機EL素子用部材を基板として用い、下記のようにして有機EL材料を蒸着し、封止処理して有機EL素子を作製した。
該有機EL素子用部材を基板として用い、市販の蒸着装置[日本真空技術(株)製]の基板ホルダーに固定すると共に、モリブデン製抵抗加熱ボートにN,N'−ビス(3−メチルフェニル)−N,N'−ジフェニル−[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジアミン(以下、TPDと略記する)200mgを入れ、また別のモリブデン製抵抗加熱ボートに4,4'−ビス(2,2'−ジフェニルビニル)ビフェニル(以下、DPVBiと略記する)200mgを入れたのち、真空槽を1×10-4Paまで減圧した。次いで、TPD入りのボートを215〜220℃まで加熱し、TPDを蒸発速度0.1〜0.3nm/秒で蒸着させて、膜厚60nmの正孔注入輸送層を形成した。この際の基板温度は室温であった。これを真空槽より取り出すことなく、DPVBi入りのボートを240℃まで加熱し、DPVBiを蒸着速度0.1〜0.3nm/秒で上記正孔注入輸送層上に蒸着させ、膜厚40nmの発光層を形成した。この際の基板温度も室温であった。これを真空槽より取り出し、上記発光層の上にステンレススチール製のマスクを設置し、再び基板ホルダーに固定したのち、モリブデン製ボートにトリス(8−キノリノール)アルミニウム(以下、Alq3と略記する)200mgを入れ、また別のモリブデン製ボートにマグネシウムリボン1gを入れ、さらにタングステン製バスケットに銀ワイヤー500mgを入れて、これらのボートを真空槽に装着した。
次に、真空槽を1×10-4Paまで減圧してから、Alq3入りのボートを230℃まで加熱し、Alq3を蒸着速度0.01〜0.03nm/秒で上記発光層上に蒸着させて、膜厚20nmの電子注入層を形成した。さらに、銀を蒸着速度0.1nm/秒で上記電子注入層上に蒸着させると同時に、マグネシウムを蒸着速度1.4nm/秒で上記電子注入層上に蒸着させ、マグネシウムと銀との混合金属からなる膜厚150nmの陰極を形成することにより、図3に示す有機EL素子の発光体部を形成した。
次に、常法に従って封止層などを形成して有機EL素子を作製した。この素子にITO膜を陽極、混合金属膜を陰極として直流電圧を印加したところ、明所にて5Vから青色発光が確認でき、視認性が極めて良好であった。
この有機EL素子を、25℃で12時間と、85℃で12時間の温度環境を繰り返し、該素子のダークエリアの増加を確認したところ、500時間後の素子の発光エリア面積は、3.8×104μm2(試験前の95%)であった。
【0042】
比較例1
実施例1において、樹脂Bの代わりに、製造例1で用いた樹脂Aを使用した以外は、実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物を調製し、次いで有機EL素子用部材、さらに有機EL素子を作製した。
この有機EL素子について、実施例1と同様にしてダークエリアの増加を確認したところ、500時間後の素子の発光エリア面積は、3×104μm2(試験前の75%)であった。
比較例2
実施例1において、樹脂B100重量部の代わりに、製造例1で用いた樹脂A80重量部を用い、さらにメトキシメチル化メラミン製品名[「サイメル303」(前出)]20重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物を調製し、次いで有機EL素子用部材、さらに有機EL素子を作製した。
この有機EL素子について、実施例1と同様にしてダークエリアの増加を確認したところ、500時間後の素子の発光エリア面積は、2.5×104μm2(試験前の63%)であった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、有機EL表示素子などの絶縁膜の形成に用いた場合、パターン上面の端縁部が丸みを帯びると共に、有機EL表示素子の劣化現象であるシュリンク(ダークエリア)の発生を抑制し得る絶縁膜を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】有機EL素子の1例の原理図である。
【図2】一般の有機EL素子における発光体部の1例の構成を示す部分断面図である。
【図3】実施例及び比較例で作製した絶縁膜のパターンである。
【符号の説明】
【0045】
1 透明基材
2 透明電極層
3 絶縁膜
4 逆テーパ型のレジストパターン層
5、5a 有機EL材料層
6、6a 金属電極層
7 正孔注入輸送層
8 有機発光層
9 電子注入層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)キノンジアジドスルホン酸エステルと、(C)有機溶剤を含む感放射線性樹脂組成物において、前記(A)成分のアルカリ可溶性樹脂が、アルコキシメチル化メラミンとノボラック型樹脂との酸触媒下での反応物であることを特徴とする絶縁膜形成用感放射線性樹脂組成物。
【請求項2】
前記アルコキシメチル化メラミンが、メチロール度3〜6であり、かつ分子量が360〜1200である請求項1に記載の絶縁膜形成用感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
アルコキシメチル化メラミンが、ノボラック型樹脂100重量部に対して、5〜50重量部である請求項1又は2に記載の絶縁膜形成用感放射線性樹脂組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−201653(P2006−201653A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−15219(P2005−15219)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】