説明

絶縁膜形成用組成物、ポリマーおよびその製造方法、絶縁膜の製造方法、ならびにシリカ系絶縁膜

【課題】吸湿性および比誘電率が低く、エッチング耐性および薬液耐性に優れ、かつ、機械的強度に優れた絶縁膜を形成することができる絶縁膜形成用組成物、ポリマーおよびその製造方法、絶縁膜の製造方法、ならびにシリカ系絶縁膜を提供する。
【解決手段】絶縁膜形成用組成物は、(A)下記一般式(1)で表される少なくとも1種のシランモノマーと、(B)加水分解性基含有カルボシランとを共縮合することによって得られたポリマーと、有機溶剤と、を含有する。
【化1】


・・・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁膜形成用組成物、ポリマーおよびその製造方法、絶縁膜の製造方法、ならびにシリカ系絶縁膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子などに用いられる層間絶縁膜として、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などの真空プロセスで形成されたシリカ(SiO)膜が多用されている。そして、近年、より均一な層間絶縁膜を形成することを目的として、SOG(Spin on Glass)膜と呼ばれるテトラアルコキシランの加水分解生成物を主成分とする塗布型の絶縁膜が使用されるようになっている。また、半導体素子などの高集積化に伴い、有機SOGと呼ばれるポリオルガノシロキサンを主成分とする低比誘電率の層間絶縁膜が開発されている。
【0003】
特に半導体素子などのさらなる高集積化や多層化に伴い、導体間の電気絶縁性のさらなる向上が要求されており、したがって、より低比誘電率でかつ機械的強度に優れた層間絶縁膜材料が求められるようになっている。
【0004】
低比誘電率の材料としては、アンモニアの存在下にアルコキシシランを縮合して得られる微粒子とアルコキシシランの塩基性部分加水分解物との混合物からなる組成物(特開平5−263045号公報、特開平5−315319号公報)や、ポリアルコキシシランの塩基性加水分解物をアンモニアの存在下で縮合することにより得られた塗布液(特開平11−340219号公報、特開平11−340220号公報)が提案されている。しかしながら、これらの方法で得られる材料はいずれも、ポリマー中の炭素原子の含有量が少なく、加工時のエッチングや洗浄薬液などに対する耐性が低い問題があった。絶縁膜中の炭素原子の含有量を高め、各種プロセスに対する耐性(エッチング耐性および薬液耐性)を向上させるには、膜形成用組成物中にポリカルボシラン成分を含めることが有効な方法の一つである。
【0005】
例えば、ポリカルボシラン溶液とポリシロキサン溶液とを混合することにより塗布液を調製し、低誘電率絶縁膜を形成する方法(特開2001−127152号公報)が提案されている。この方法では、カルボシランのドメインとシロキサンのドメインとがそれぞれ不均一な状態にて塗膜中で分散してしまうという問題があった。
【0006】
これに対して、本発明者らは、ポリカルボシランの存在下で加水分解性基含有シランモノマーを反応させることにより、かかる加水分解性基含有シランモノマーに由来するポリシロキサンとポリカルボシランとの共縮合物を得、この共縮合物を含有する膜形成用組成物を用いて絶縁膜を形成する方法を提案した(国際公開番号WO 2005/068538号パンフレット)。この方法によれば、比誘電率が小さく、機械的強度に優れ、かつ、膜中の相分離がない共縮合ポリマー膜を得ることができる。しかし、さらに炭素原子の含有量を上げる目的で、モノマー中のポリカルボシランの成分比を単純に高めた条件にてポリマーを製造した場合、ポリカルボシランと加水分解性含有シランモノマーとの縮合が十分に起こらず、結果的に未反応のシラノール基がポリマー中に多く残る結果、吸湿性が高くなることがわかった。一般に、吸湿性が高くなると、その分エッチングや洗浄薬液などに対する耐性が悪化する。すなわち、この場合、ポリマー中の炭素原子の含有量を増加させても、吸湿性が高くなることにより、エッチング耐性および薬液耐性が相殺されてしまう。
【特許文献1】特開平5−263045号公報
【特許文献2】特開平5−315319号公報
【特許文献3】特開平11−340219号公報
【特許文献4】特開平11−340220号公報
【特許文献5】特開2001−127152号公報
【特許文献6】国際公開第05/068538号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、吸湿性および比誘電率が低く、エッチング耐性および薬液耐性に優れ、かつ、機械的強度に優れた絶縁膜を形成することができる絶縁膜形成用組成物、ポリマーおよびその製造方法、絶縁膜の製造方法、ならびにシリカ系絶縁膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様の絶縁膜形成用組成物は、
(A)下記一般式(1)で表される少なくとも1種のシランモノマーと、(B)加水分解性基含有カルボシランとを共縮合することによって得られたポリマーと、
有機溶剤と、
を含有する。
【0009】
【化4】

・・・・・(1)
(式中、RおよびR〜Rは同一または異なり、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を示し、Xはハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、またはアシロキシ基を示し、nは0〜2の整数を示す。)
【0010】
本発明の第2の態様のポリマーの製造方法は、
(A)下記一般式(1)で表される少なくとも1種のシランモノマーと、(B)加水分解性基含有カルボシランとを共縮合することを含む。
【0011】
【化5】

・・・・・(1)
(式中、RおよびR〜Rは同一または異なり、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を示し、Xはハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、またはアシロキシ基を示し、nは0〜2の整数を示す。)
【0012】
本発明において、「加水分解性基」とは、ポリマーの製造時に加水分解されうる基をいう。加水分解性基の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホン基、メタンスルホン基、およびトリフルオロメタンスルホン基が挙げられる。
【0013】
前記ポリマーの製造方法において、前記(B)加水分解性基含有カルボシランが、下記一般式(2)で表される少なくとも1種のポリカルボシランであることができる。
【0014】
【化6】

・・・・・(2)
(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホン基、メタンスルホン基、トリフルオロメタンスルホン基、アルキル基、アリール基、アリル基、およびグリシジル基からなる群より選ばれる基を示し、Rはハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホン基、メタンスルホン基、トリフルオロメタンスルホン基、アルキル基、アリール基、アリル基、およびグリシジル基からなる群より選ばれる基を示し、R,Rは同一または異なり、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホン基、メタンスルホン基、トリフルオロメタンスルホン基、炭素数2〜6のアルキル基、アリール基、アリル基、およびグリシジル基からなる群より選ばれる基を示し、R〜R10は同一または異なり、置換または非置換のメチレン基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基を示し、a,b,cは、それぞれ0〜10,000の数を示し、10<a+b+c<10,000の条件を満たす。)
【0015】
前記ポリマーの製造方法において、前記共縮合を有機溶剤中にて行なうことができる。
【0016】
前記ポリマーの製造方法において、前記共縮合を、酸性触媒、塩基性触媒、または金属キレート触媒の存在下で行なうことができる。
【0017】
本発明の第3の態様のポリマーは、前記ポリマーの製造方法によって得られる。
【0018】
本発明の第4の態様の絶縁膜の製造方法は、前記絶縁膜形成用組成物を基板に塗布し、30〜450℃に加熱することを含む。
【0019】
前記絶縁膜の製造方法において、高エネルギー線を照射しながら前記加熱を行なうことができる。
【0020】
本発明の第5の態様のシリカ系絶縁膜は、前記絶縁膜の製造方法により得られる。
【発明の効果】
【0021】
前記絶縁膜形成用組成物によれば、(A)下記一般式(1)で表される少なくとも1種のシランモノマーと、(B)加水分解性基含有カルボシランとを共縮合することにより得られたポリマーを含有することにより、炭素原子の含有量をより高くすることができ、かつ、前記モノマー同士の反応性が高いため、未反応のシラノール基の含有量を少なくすることができる。したがって、前記絶縁膜形成用組成物を用いて絶縁膜を形成することにより、吸湿性が低い膜が得られるため、比誘電率が低く、かつ、機械的強度、エッチング耐性(例えば、製膜後のドライエッチング(RIE)に対する耐性)、ならびに薬液耐性(例えば、薬液を用いるウエットエッチングに対する耐性)に優れた絶縁膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る絶縁膜形成用組成物、ポリマーおよびその製造方法、絶縁膜の製造方法、ならびにシリカ系絶縁膜について述べる。
【0023】
1.ポリマーおよびその製造方法
本発明の一実施形態に係るポリマーの製造方法は、(A)下記一般式(1)で表される少なくとも1種のシランモノマー(以下、「(A)成分」ともいう。)と、(B)加水分解性基含有カルボシラン(以下、「(B)成分」ともいう。)とを共縮合することを含む。
【0024】
【化7】

・・・・・(1)
(式中、RおよびR〜Rは同一または異なり、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を示し、Xはハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、またはアシロキシ基を示し、nは0〜2の整数を示す。)
【0025】
(A)成分および(B)成分はそれぞれ、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
前記製造方法によって得られる縮合物(ポリマー)の重量平均分子量は、1,000〜200,000であることが好ましく、2,000〜100,000であることがより好ましく、5,000〜80,000であることがさらに好ましい。前記ポリマーの重量平均分子量が200,000より大きいと、粒子が生成しやすく、また、前記ポリマーの細孔が大きくなりすぎて好ましくない。一方、前記ポリマーの重量平均分子量が1,000より小さいと、塗布性や保存安定性に問題が生じやすい。
【0027】
また、(A)成分および(B)成分を共縮合するときの温度は、通常0〜100℃、好ましくは15〜80℃である。
【0028】
以下、本発明の一実施形態に係るポリマーの製造に用いられる各成分について、それぞれ説明する。
【0029】
1.1.(A)成分
(A)成分は、前記一般式(1)で表される少なくとも1種のシランモノマーである。
【0030】
前記一般式(1)において、RおよびR〜Rで表されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を挙げることができ、好ましくは炭素数1〜5であり、これらのアルキル基は鎖状でも、分岐していてもよく、さらに水素原子がフッ素原子などに置換されていてもよい。アルケニル基としては、例えばビニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、3−ペンテニル基、3−ヘキセニル基を挙げることができる。アルキニル基としては、例えばエニチル基、プロパルギル基、3−ブチニル基、3−ペンチニル基、3−ヘキシニル基を挙げることができる。アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基などを挙げることができる。なかでも、RおよびR〜Rとしては、アルキル基、フェニル基、アルケニル基であることが好ましい。
【0031】
また、前記一般式(1)において、Xで表されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基を挙げることができる。また、アシロキシ基は、アシル基が酸素と結合した1価の原子団であり、例えば、アセチルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、イソブチリルオキシ基を挙げることができる。
【0032】
(A)成分は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
前記ポリマーの製造方法において、(A)成分および(B)成分の総量に対する(A)成分の割合は、10〜90質量%であることが好ましく、15〜80質量%であることがより好ましい。
【0034】
(A)成分の具体例としては、例えば、以下の(i)〜(iii)を挙げることができる。
【0035】
(i)前記一般式(1)において、nが0であるシランモノマー。具体的には、以下のシランモノマーを挙げることができる。
【0036】
【化8】

【0037】
(ii)前記一般式(1)において、nが1であるシランモノマー。具体的には、以下のシランモノマーを挙げることができる。
【0038】
【化9】

【0039】
(iii)前記一般式(1)において、nが2であるシランモノマー。具体的には、以下のシランモノマーを挙げることができる。
【0040】
【化10】

【0041】
1.2.(B)成分
(B)成分は、加水分解性基含有カルボシランである。(B)加水分解性基含有カルボシランは、例えば、下記一般式(2)で表される少なくとも1種のポリカルボシラン(以下、「化合物1」ともいう。)であることができる。
【0042】
【化11】

・・・・・(2)
(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホン基、メタンスルホン基、トリフルオロメタンスルホン基、アルキル基、アリール基、アリル基、およびグリシジル基からなる群より選ばれる基を示し、Rはハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホン基、メタンスルホン基、トリフルオロメタンスルホン基、アルキル基、アリール基、アリル基、およびグリシジル基からなる群より選ばれる基を示し、R,Rは同一または異なり、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホン基、メタンスルホン基、トリフルオロメタンスルホン基、炭素数2〜6のアルキル基、アリール基、アリル基、およびグリシジル基からなる群より選ばれる基を示し、R〜R10は同一または異なり、置換または非置換のメチレン基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基を示し、a,b,cは、それぞれ0〜10,000の数を示し、10<a+b+c<10,000の条件を満たす。)
【0043】
前記一般式(2)において、アルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、へキシレン基、デシレン基等が挙げられ、好ましくは炭素数2〜6であり、これらのアルキレン基は鎖状でも分岐していても、さらに環を形成していてもよく、水素原子がフッ素原子などに置換されていてもよい。
【0044】
前記一般式(2)において、アルケニレン基としては、エテニレン基、プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基等が挙げられ、ジエニルであってもよく、好ましくは炭素数1〜4であり、水素原子がフッ素原子などに置換されていてもよい。アルキニレン基としては、アセチレン基、プロピニレン基等を挙げることができる。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等を挙げることができ、水素原子がフッ素原子などに置換されていてもよい。また、R〜Rは、同一の基でも異なる基であってもよい。
【0045】
また、前記一般式(2)において、a,b,cは同一または異なり、0〜10,000の数で10<a+b+c<10,000である。a+b+c≦10の場合には、膜形成用組成物の保存安定性が劣る場合があり、また、10,000≦a+b+cの場合には、層分離を起こし、均一な膜が形成されないことがある。好ましくは、a,b,cはそれぞれ、0<a<800、0<b<500、0<c<1,000であり、より好ましくは、0<a<500、0<b<300、0<c<500であり、さらに好ましくは、0<a<100、0<b<50、0<c<100である。
【0046】
また、5<a+b+c<1,000であるのが好ましく、5<a+b+c<500であるのがより好ましく、5<a+b+c<250であるのがさらに好ましく、5<a+b+c<100であるのが最も好ましい。
【0047】
前記ポリマーの製造方法において、(A)成分および(B)成分の総量に対する(B)成分の割合は、10〜90質量%であることが好ましく、20〜75質量%であることがより好ましい。(A)成分および(B)成分の総量に対する(B)成分の割合が20〜75質量%であることにより、機械的強度に優れ、かつ比誘電率が低い絶縁膜を形成できるポリマーを得ることができる。
【0048】
化合物1は、例えば、クロロメチルトリクロロシラン、ブロモメチルトリクロロシラン、クロロメチルメチルジクロロシラン、クロロメチルエチルジクロロシラン、クロロメチルビニルジクロロシラン、クロロメチルフェニルジクロロシラン、ブロモメチルメチルジクロロシラン、ブロモメチルビニルジクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、クロロメチルジビニルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、(1−クロロエチル)トリクロロシラン、(1−クロロプロピル)トリクロロシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、ブロモメチルトリメトキシシラン、クロロメチルメチルジメトキシシラン、クロロメチルビニルジメトキシシラン、クロロメチルフェニルジメトキシシラン、ブロモメチルメチルジメトキシシラン、ブロモメチルビニルジメトキシシラン、ブロモメチルフェニルジメトキシシラン、クロロメチルジメチルメトキシシラン、クロロメチルジビニルメトキシシラン、クロロメチルジフェニルメトキシシラン、ブロモメチルジメチルメトキシシラン、ブロモメチルジイソプロピルメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、ブロモメチルトリエトキシシラン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、クロロメチルエチルジエトキシシラン、クロロメチルビニルジエトキシシラン、クロロメチルフェニルジエトキシシラン、ブロモメチルメチルジエトキシシラン、ブロモメチルビニルジエトキシシラン、ブロモメチルフェニルジエトキシシラン、クロロメチルジメチルエトキシシラン、クロロメチルジエチルエトキシシラン、ブロモメチルジビニルエトキシシラン、クロロメチルトリイソプロポキシシランおよびブロモメチルトリイソプロポキシシランから選ばれる少なくとも1種の化合物を、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方の存在下に反応させて、必要に応じてさらにアルコール、有機酸、還元剤などで処理することにより得られる。
【0049】
(B)成分の重量平均分子量は、300〜100,000であることが好ましく、500〜10,000であることがより好ましく、1,000〜5,000であることがさらに好ましい。(B)成分の重量平均分子量が100,000より大きいと、粒子が生成しやすく、また、シリカ系絶縁膜内の細孔が大きくなりすぎて好ましくない。
【0050】
(B)成分は、例えば、下記一般式(3)で表される1種類以上のモノマーの縮合重合反応、あるいは、下記一般式(4)で表される1種類以上の環状化合物の開環重合などの方法によって得ることができる。
【0051】
【化12】

・・・・・(3)
(式中、RおよびRは同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、スルホン基、メタンスルホン基、トリフルオロメタンスルホン基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を示し、Rは置換のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基を示し、Xはハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、またはアシロキシ基を示し、Yはハロゲン原子を示す)
【0052】
【化13】

・・・・・(4)
(式中、RおよびRは同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、スルホン基、メタンスルホン基、トリフルオロメタンスルホン基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を示し、Rは置換のメチレン基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、またはアリーレン基を示し、nは2〜4の整数を示す。)
【0053】
前記一般式(3)および一般式(4)において、R、R、R、およびRで表されるアルコキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびアリール基としては、前記一般式(2)においてR〜Rとして例示された基を用いることができ、RおよびRで表されるアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、およびアリーレン基としては、前記一般式(2)においてR〜R10として例示された基を用いることができる。
【0054】
1.3.触媒
本発明の一実施形態に係るポリマーの製造においては、前記共縮合を触媒(例えば、酸性触媒、塩基性触媒、または金属キレート触媒)の存在下で行なうことが好ましい。
【0055】
1.3.1.塩基性触媒
本発明の一実施形態に係るポリマーの製造において、塩基性触媒の存在下で(A)成分および(B)成分を共縮合することにより、得られるポリマーの分子構造に存在する分子鎖の分岐度を高くすることができ、かつ、その分子量をより大きくすることができる。これにより、上述した構造を有するポリマーを得ることができる。
【0056】
塩基性触媒としては、例えば、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、N−メチルメタノールアミン、N−エチルメタノールアミン、N−プロピルメタノールアミン、N−ブチルメタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルプロパノールアミン、N−エチルプロパノールアミン、N−プロピルプロパノールアミン、N−ブチルプロパノールアミン、N−メチルブタノールアミン、N−エチルブタノールアミン、N−プロピルブタノールアミン、N−ブチルブタノールアミン、N,N−ジメチルメタノールアミン、N,N−ジエチルメタノールアミン、N,N−ジプロピルメタノールアミン、N,N−ジブチルメタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジプロピルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N,N−ジエチルプロパノールアミン、N,N−ジプロピルプロパノールアミン、N,N−ジブチルプロパノールアミン、N,N−ジメチルブタノールアミン、N,N−ジエチルブタノールアミン、N,N−ジプロピルブタノールアミン、N,N−ジブチルブタノールアミン、N−メチルジメタノールアミン、N−エチルジメタノールアミン、N−プロピルジメタノールアミン、N−ブチルジメタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミン、N−エチルジプロパノールアミン、N−プロピルジプロパノールアミン、N−ブチルジプロパノールアミン、N−メチルジブタノールアミン、N−エチルジブタノールアミン、N−プロピルジブタノールアミン、N−ブチルジブタノールアミン、N−(アミノメチル)メタノールアミン、N−(アミノメチル)エタノールアミン、N−(アミノメチル)プロパノールアミン、N−(アミノメチル)ブタノールアミン、N−(アミノエチル)メタノールアミン、N−(アミノエチル)エタノールアミン、N−(アミノエチル)プロパノールアミン、N−(アミノエチル)ブタノールアミン、N−(アミノプロピル)メタノールアミン、N−(アミノプロピル)エタノールアミン、N−(アミノプロピル)プロパノールアミン、N−(アミノプロピル)ブタノールアミン、N−(アミノブチル)メタノールアミン、N−(アミノブチル)エタノールアミン、N−(アミノブチル)プロパノールアミン、N−(アミノブチル)ブタノールアミン、メトキシメチルアミン、メトキシエチルアミン、メトキシプロピルアミン、メトキシブチルアミン、エトキシメチルアミン、エトキシエチルアミン、エトキシプロピルアミン、エトキシブチルアミン、プロポキシメチルアミン、プロポキシエチルアミン、プロポキシプロピルアミン、プロポキシブチルアミン、ブトキシメチルアミン、ブトキシエチルアミン、ブトキシプロピルアミン、ブトキシブチルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラプロピルエチレンジアミン、テトラブチルエチレンジアミン、メチルアミノメチルアミン、メチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルアミノブチルアミン、エチルアミノメチルアミン、エチルアミノエチルアミン、エチルアミノプロピルアミン、エチルアミノブチルアミン、プロピルアミノメチルアミン、プロピルアミノエチルアミン、プロピルアミノプロピルアミン、プロピルアミノブチルアミン、ブチルアミノメチルアミン、ブチルアミノエチルアミン、ブチルアミノプロピルアミン、ブチルアミノブチルアミン、ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、モルホリン、メチルモルホリン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウムなどを挙げることができる。
【0057】
塩基性触媒としては、特に、下記一般式(5)で表される含窒素化合物(以下、「化合物2」ともいう。)であることが好ましい。
(X1X2X3X4N)aY・・・・・(5)
【0058】
前記一般式(5)において、X1,X2,X3,X4は同一または異なり、それぞれ水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基など)、ヒドロキシアルキル基(好ましくはヒドロキシエチル基など)、アリール基(好ましくはフェニル基など)、アリールアルキル基(好ましくはフェニルメチル基など)を示し、Yはハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、1〜4価のアニオン性基(好ましくはヒドロキシ基など)を示し、aは1〜4の整数を示す。
【0059】
化合物2の具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−プロピルアンモニウム、水酸化テトラ−iso−プロピルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化テトラ−iso−ブチルアンモニウム、水酸化テトラ−tert−ブチルアンモニウム、水酸化テトラペンチルアンモニウム、水酸化テトラヘキシルアンモニウム、水酸化テトラヘプチルアンモニウム、水酸化テトラオクチルアンモニウム、水酸化テトラノニルアンモニウム、水酸化テトラデシルアンモニウム、水酸化テトラウンデシルアンモニウム、水酸化テトラドデシルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラ−n−プロピルアンモニウム、塩化テトラ−n−プロピルアンモニウム、臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、塩化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化−n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、水酸化−n−オクタデシルトリメチルアンモニウム、臭化−n−オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化トリデシルメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハイドロジェンサルフェート、臭化トリブチルメチルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム、塩化トリラウリルメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、臭化ベンジルトリエチルアンモニウム、臭化ベンジルトリブチルアンモニウム、臭化フェニルトリメチルアンモニウム、コリン等を好ましい例として挙げることができる。これらのうち特に好ましくは、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−プロピルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラ−n−プロピルアンモニウム、塩化テトラ−n−プロピルアンモニウムである。化合物2は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0060】
塩基性触媒は、単独であるいは2種以上を同時に使用してもよい。また、塩基性触媒の使用量は、(A)成分および(B)成分のケイ素原子総量1モルに対して通常0.0001〜1モルであり、好ましくは0.001〜0.1モルである。塩基性触媒の使用量が0.00001〜1モルであれば、反応中のポリマーの析出やゲル化のおそれが少ない。
【0061】
塩基性触媒の存在下で(A)成分および(B)成分を共縮合させる場合、(A)成分および(B)成分のケイ素原子総量1モル当たり0.5〜150モルの水を用いることが好ましく、0.5〜130モルの水を加えることが特に好ましい。添加する水の量が0.5モル未満であると縮合反応に長時間を要し、生産性の観点から好ましくない。150モルを越えると、縮合反応中のポリマーの析出やゲル化が生じる場合がある。
【0062】
この場合、水とともに、沸点100℃以下のアルコールを用いることが好ましい。ここで、沸点100℃以下のアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールを挙げることができる。沸点100℃以下のアルコールの使用量は、(A)成分および(B)成分のケイ素原子の総量1モルに対して通常3〜100モルであり、好ましくは5〜80モルである。
【0063】
なお、沸点100℃以下のアルコールは、(A)成分および(B)成分の共縮合の際に生じる場合があり、その含量が20重量%以下、好ましくは5重量%以下になるように蒸留などにより除去することが好ましい。また、添加剤として、オルソギ酸メチル等の脱水剤やさらなる金属錯体やレベリング剤が含まれていてもよい。
【0064】
また、塩基性触媒の存在下で(A)成分および(B)成分を共縮合した後、pHを7以下に調整することが好ましい。pHを調整する方法としては、(I)pH調整剤を添加する方法、(II)常圧または減圧下で、組成物中から塩基性触媒を留去する方法、(III)窒素、アルゴンなどのガスをバブリングすることにより、組成物中から塩基性触媒を除去する方法、(IV)イオン交換樹脂により、組成物中から塩基性触媒を除去する方法、(V)抽出や洗浄によって塩基性触媒を系外に除去する方法、などが挙げられる。これらの方法は、それぞれ、組み合わせて用いてもよい。
【0065】
ここで、上記pH調整剤としては、無機酸や有機酸が挙げられる。無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、ホウ酸、シュウ酸などを挙げることができる。また、有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、シキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、リンゴ酸、グルタル酸の加水分解物、無水マレイン酸の加水分解物、無水フタル酸の加水分解物などを挙げることができる。これら化合物は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0066】
上記pH調整剤による組成物のpHは、7以下、好ましくは1〜6に調整される。上記pH調整剤により上記範囲内にpHを調整することにより、膜形成用組成物の貯蔵安定性が向上するという効果が得られる。pH調整剤の使用量は、膜形成用組成物のpHが上記範囲内となる量であり、その使用量は適宜選択される。
【0067】
1.3.2.酸性触媒
酸性触媒としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、ホウ酸などの無機酸;
酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、シキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、シュウ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、リンゴ酸、グルタル酸の加水分解物、無水マレイン酸の加水分解物、無水フタル酸の加水分解物などの有機酸を挙げることができ、有機カルボン酸をより好ましい例として挙げることができる。これらの酸性触媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0068】
酸性触媒の使用量は、(A)成分および(B)成分の総量1モルに対して通常0.0001〜1モル、好ましくは0.001〜0.1モルである。
【0069】
1.3.3.金属キレート触媒
金属キレート触媒としては、例えば、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタンなどのチタンキレート化合物;
トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−t−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−t−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−t−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−t−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;
トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物;
などを挙げることができ、好ましくはチタンまたはアルミニウムのキレート化合物、特に好ましくはチタンのキレート化合物を挙げることができる。これらの金属キレート触媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。
【0070】
金属キレート触媒の使用量は、(A)成分および(B)成分の総量1モルに対して通常0.0001〜1モル、好ましくは0.001〜0.1モルである。
【0071】
1.4.有機溶剤
前記ポリマーの製造においては、有機溶剤中で(A)成分および(B)成分の共縮合を行なうことができる。ここで、有機溶剤としては、後述する有機溶剤の中でも下記一般式(6)で表される溶剤を単独でまたは他の溶剤と組み合わせて用いることが好ましい。
11O(CHCHCHO)γ12 ・・・・・(6)
〔R11およびR12は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはCHCO−から選ばれる1価の有機基を示し、γは1〜2の整数を表す。〕
【0072】
上記一般式(6)において、炭素数1〜4のアルキル基としては、先の一般式(1)においてアルキル基として示したものと同様のものを挙げることができる。
【0073】
上記一般式(6)で表される有機溶剤としては、具体例には、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテートなどが挙げられ、特にプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートが好ましい。これらは1種または2種以上を同時に使用することができる。なお、上記一般式(6)で表される有機溶剤とともに、エステル系溶媒やアミド系溶媒等の他の溶剤が多少含まれていてもよい。
【0074】
本発明の一実施形態に係るポリマーの製造方法によって得られたポリマー中の炭素原子の含有量は12.5〜22.0原子%である。ポリマー中の炭素原子の含有量が12.5原子%より少ないと、エッチング耐性および薬液耐性が低く、一方、ポリマー中の炭素原子の含有量が22.0原子%より多いと、分子の運動性が高まりすぎて、弾性率が低く、場合によってはガラス転移点を示すような膜となり好ましくない。なお、炭素原子の含有量(原子%)は、(A)成分および(B)成分に含まれる加水分解性基が完全に加水分解されてシラノール基となり、この生成したシラノール基が完全に縮合しシロキサン結合を形成した時の元素組成から求められ、具体的には以下の式から求められる。
炭素原子の含有量(%)=(ポリマーの炭素原子数)/(ポリマーの総原子数)×100
【0075】
本発明の一実施形態に係るポリマーの製造方法によれば、(A)上記一般式(1)で表される少なくとも1種のシランモノマーと、(B)加水分解性基含有カルボシランとを共縮合することを含むことにより、例えば、国際公開番号WO 2005/068538号パンフレットに記載されたポリマーと比較して、未反応のシラノール基の残留量が少なく、炭素原子の含有量がより高いポリマーを得ることができる。これにより、前記ポリマーを含む膜形成用組成物を用いて、エッチング耐性および薬液耐性により優れた絶縁膜を形成することができる。
【0076】
2.絶縁膜形成用組成物
本発明の一実施形態に係る絶縁膜形成用組成物(以下、単に「膜形成用組成物」ともいう。)は、前記製造方法によって得られたポリマーおよび有機溶剤を含有する。
【0077】
本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物の全固形分濃度は、好ましくは0.1〜20重量%であり、使用目的に応じて適宜調整される。本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物の全固形分濃度が0.1〜20重量%であることにより、塗膜の膜厚が適当な範囲となり、より優れた保存安定性を有するものとなる。なお、この全固形分濃度の調整は、必要であれば、濃縮および有機溶剤による希釈によって行われる。
【0078】
2.1.有機溶剤
本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物に用いることができる有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒および含ハロゲン溶媒の群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
【0079】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、ヘプタノール−3、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチルヘプタノール−4、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンタンジオール−2,4、2−メチルペンタンジオール−2,4、ヘキサンジオール−2,5、ヘプタンジオール−2,4、2−エチルヘキサンジオール−1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコールなどの多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルなどの多価アルコール部分エーテル系溶媒;などを挙げることができる。これらのアルコール系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0080】
ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョンなどのケトン系溶媒を挙げることができる。これらのケトン系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0081】
アミド系溶媒としては、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドンなどの含窒素系溶媒を挙げることができる。これらのアミド系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0082】
エーテル溶媒系としては、エチルエーテル、i−プロピルエーテル、n−ブチルエーテル、n−ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソールなどのエーテル系溶媒を挙げることができる。これらのエーテル系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0083】
エステル系溶媒としては、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルなどのエステル系溶媒を挙げることができる。これらのエステル系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0084】
脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、i−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらの脂肪族炭化水素系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0085】
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンセン、i−プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−i−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン、トリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらの芳香族炭化水素系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。含ハロゲン溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、フロン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、などの含ハロゲン溶媒を挙げることができる。
【0086】
本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物においては、沸点が150℃未満の有機溶剤を使用することが望ましく、溶剤種としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が特に望ましく、さらにそれらを1種あるいは2種以上を同時に使用することが望ましい。
【0087】
2.2.その他の添加物
本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物は、前記製造方法で得られたポリマーとは別の有機ポリマー(以下、「他の有機ポリマー」という。)、界面活性剤、シランカップリング剤などの成分をさらに含有してもよい。また、これらの添加物は、本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物を製造する前の、各成分が溶解もしくは分散された溶剤中に添加されていてもよい。
【0088】
2.2.1.他の有機ポリマー
本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物で使用可能な他の有機ポリマーは、シリカ系膜中に空孔を形成するための易分解成分として添加することができる。このような有機ポリマーを添加することは、特開2000−290590号公報、特開2000−313612号公報、Hedrick, J.L.,et al. "Templating Nanoporosity in Thin Film Dielectric Insulators". Adv. Mater., 10 (13), 1049, 1998.等の参考文献で記述されており、同様な有機ポリマーを添加してもよい。
【0089】
他の有機ポリマーとしては、例えば、糖鎖構造を有する重合体、ビニルアミド系重合体、(メタ)アクリル系重合体、芳香族ビニル化合物系重合体、デンドリマー、ポリイミド,ポリアミック酸、ポリアリーレン、ポリアミド、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、フッ素系重合体、ポリアルキレンオキサイド構造を有する重合体などを挙げることができる。
【0090】
2.2.2.界面活性剤
本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物で使用可能な界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられ、さらには、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、ポリ(メタ)アクリレート系界面活性剤などを挙げることができ、好ましくはフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤を挙げることができる。
【0091】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、1,1,2,2−テトラフロロオクチル(1,1,2,2−テトラフロロプロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフロロオクチルヘキシルエーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサエチレングリコール(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、パーフロロドデシルスルホン酸ナトリウム、1,1,2,2,8,8,9,9,10,10−デカフロロドデカン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロデカン、N−[3−(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]−N,N′−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、パーフルオロアルキルスルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル−N−エチルスルホニルグリシン塩、リン酸ビス(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−エチルアミノエチル)、モノパーフルオロアルキルエチルリン酸エステルなどの末端、主鎖および側鎖の少なくとも何れかの部位にフルオロアルキルまたはフルオロアルキレン基を有する化合物からなるフッ素系界面活性剤を挙げることができる。
【0092】
また、市販品としては、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183〔以上、大日本インキ化学工業(株)製〕、エフトップEF301、同303、同352〔新秋田化成(株)製〕、フロラードFC−430、同FC−431〔住友スリーエム(株)製〕、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106〔旭硝子(株)製〕、BM−1000、BM−1100〔裕商(株)製〕、NBX−15〔(株)ネオス〕などの名称で市販されているフッ素系界面活性剤を挙げることができる。これらの中でも、上記メガファックF172,BM−1000,BM−1100,NBX−15が特に好ましい。
【0093】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、SH7PA、SH21PA、SH30PA、ST94PA〔いずれも東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製〕などを用いることが出来る。これらの中でも、上記SH28PA、SH30PAが特に好ましい。
【0094】
界面活性剤の使用量は、膜形成用組成物100重量部に対して、通常、0.00001〜1重量部である。これらは、1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。
【0095】
2.2.3.シランカップリング剤
本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物で使用可能なシランカップリング剤としては、例えば、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノグリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、1−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらは、1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。
【0096】
3.絶縁膜の製造方法
本発明の一実施形態に係る絶縁膜の製造方法は、前記本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物を基板に塗布し、30〜450℃に加熱することを含む。
【0097】
本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物を、シリコンウエハ、SiOウエハ、SiNウエハなどの基材に塗布する際には、スピンコート、浸漬法、ロールコート法、スプレー法などの塗装手段が用いられる。
【0098】
この際の膜厚は、乾燥膜厚として、1回塗りで厚さ0.05〜2.5μm程度、2回塗りでは厚さ0.1〜5.0μm程度の塗膜を形成することができる。その後、常温で乾燥するか、あるいは80〜600℃程度の温度で、通常、5〜240分間程度加熱して乾燥することにより、ガラス質または巨大高分子の塗膜を形成することができる。
【0099】
この際の加熱方法としては、例えば、ホットプレート、オーブン、ファーネスなどを使用することができ、加熱雰囲気としては、例えば、大気下、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、真空下、酸素濃度をコントロールした減圧下などで行なうことができる。
【0100】
また、前記塗膜の硬化速度を制御するため、必要に応じて、段階的に加熱したり、あるいは窒素、空気、酸素、減圧などの雰囲気を選択したりすることができる。
【0101】
また、本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物を基板に塗布し、高エネルギー線(例えば、電子線、紫外線)照射下で絶縁膜を形成してもよい。あるいは、本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物を基板に塗布し、高エネルギー線照射下で30〜450℃に加熱することにより、絶縁膜を形成してもよい。
【0102】
4.シリカ系絶縁膜
本発明の一実施形態に係るシリカ系絶縁膜は、上記絶縁膜の製造方法により得られる。
【0103】
本発明の一実施形態に係るシリカ系絶縁膜は、後述する実施例からも明らかであるように、エッチング耐性および薬液耐性に優れ、かつ、比誘電率が低い。
【0104】
具体的には、本発明の一実施形態に係るシリカ系絶縁膜は、その比誘電率が、好ましくは1.5〜3.5であり、より好ましくは1.8〜3.0であり、その弾性率が、好ましくは4.0〜15.0GPaであり、より好ましくは4.0〜12.0GPaであり、膜密度が、好ましくは0.7〜1.3g/cmであり、より好ましくは0.8〜1.27g/cmである。これらのことから、本発明の一実施形態に係るシリカ系絶縁膜は、機械的強度、比誘電率などの絶縁膜特性に極めて優れているといえる。
【0105】
本発明の一実施形態に係るシリカ系絶縁膜は吸湿性が低いため、低い比誘電率を維持することができる。さらに、このようなシリカ系絶縁膜は、吸湿性が低いため、半導体プロセスにおいて用いられるRIE等のエッチングによるダメージを受けにくく、かつ、ウエット洗浄液に対する耐性にも優れている。特に、絶縁膜自体がポーラスな構造を有する比誘電率kが2.5以下のシリカ系絶縁膜では、この傾向は顕著である。
【0106】
以上のように、本発明の一実施形態に係るシリカ系絶縁膜は、
(a)RIEなどの半導体プロセスによるトランジスタ構造へのダメージが極めて少ないことから、エッチング耐性(例えば、ドライエッチング耐性)に優れていること、
(b)薬液耐性(例えば、ウエットエッチング耐性)に優れていること、
(c)膜形成用組成物が特定の組成および炭素原子の含有量を有するので、比誘電率、弾性率などの絶縁膜特性に優れていること、
(d)疎水性が高く、吸湿性が低いため、低い比誘電率を維持できること、
(e)弾性率などの機械的強度が優れており、例えば銅ダマシン構造の形成に耐えうること、
などの特徴を有する。
【0107】
本発明の一実施形態に係るシリカ系絶縁膜は、機械的強度、エッチング耐性および薬液耐性に優れ、かつ、比誘電率が低いことから、LSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAMなどの半導体装置用の層間絶縁膜として特に優れているほか、エッチングストッパー膜、半導体素子の表面コート膜などの保護膜、多層レジストを用いた半導体装置の作製工程の中間層、多層配線基板の層間絶縁膜などの半導体装置の用途に好適に用いることができる。例えば、本発明の一実施形態に係るシリカ系絶縁膜は、銅ダマシンプロセスを含む半導体装置に有用である。
【0108】
5.実施例
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の「部」および「%」は特記しない限り、それぞれ重量部および重量%であることを示している。
【0109】
5.1.実施例、比較例
以下の方法にて、ポリマーの製造、該ポリマーを用いた膜形成用組成物の製造、ならびにシリカ系膜の形成を行った。
【0110】
なお、後述する実施例および比較例で用いられる(B)加水分解性基含有カルボシランは、ジメトキシポリカルボシシラン(B−1)である。ジメトキシポリカルボシシラン(B−1)は、以下の一般式(7)で表される、環状化合物を開環重合することにより得られる重量平均分子量が2,200のポリマーである。
【0111】
【化14】

・・・・・(7)
(式中、nは2以上の整数である。)
【0112】
5.1.1.ポリマーの製造方法
5.1.1−1.合成例1
石英製セパラブルフラスコ中で、ジメトキシポリカルボシラン(B−1)13.5g((B)成分)と、[(トリメチルシリル)メチル]トリエトキシシラン31.5g((A)成分)と、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイドの25重量%水溶液5.2gとをメタノール419gに溶解させたのち、スリーワンモーターで攪拌させ、溶液温度を55℃に安定させた。次に、イオン交換水19.6gとプロピレングリコールモノエチルエーテル512.0gとの混合溶液を1時間かけて溶液に添加した。
【0113】
その後、55℃で4時間反応させたのち、酢酸の10%プロピレングリコールモノプロピルエーテル溶液8.7gを添加し、さらに30分間反応させ、反応液を室温まで冷却した。メタノールおよび水を含む溶液を50℃にてエバポレーションで反応液から除去し、反応液(I)を得た。このようにして得られた縮合物(ポリマー)の重量平均分子量は、25,000であった。
【0114】
5.1.1−2.比較合成例1
石英製セパラブルフラスコ中で、ジメトキシポリカルボシラン(B−1)13.5g((B)成分)と、メチルトリメトキシシラン35.6gと、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイドの25重量%水溶液8.7gとをメタノール410gに溶解させたのち、スリーワンモーターで攪拌させ、溶液温度を55℃に安定させた。次に、イオン交換水31.2gとプロピレングリコールモノエチルエーテル501.2gとの混合溶液を1時間かけて溶液に添加した。
【0115】
その後、55℃で4時間反応させたのち、酢酸の10%プロピレングリコールモノプロピルエーテル溶液14.4gを添加し、さらに30分間反応させ、反応液を室温まで冷却した。メタノールおよび水を含む溶液を50℃にてエバポレーションで反応液から除去して、反応液(II)を得た。このようにして得られた縮合物(ポリマー)の重量平均分子量は、29,000であった。
【0116】
5.1.1−3.比較合成例2
石英製セパラブルフラスコ中で、ジメトキシポリカルボシラン(B−1)44.8g((B)成分)と、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイドの25重量%水溶液7.0gとをメタノール415gに溶解させたのち、スリーワンモーターで攪拌させ、溶液温度を55℃に安定させた。次に、イオン交換水25.7gとプロピレングリコールモノエチルエーテル507.4gとの混合溶液を1時間かけて溶液に添加した。
【0117】
その後、55℃で4時間反応させたのち、酢酸の10%プロピレングリコールモノプロピルエーテル溶液12gを添加し、さらに30分間反応させ、反応液を室温まで冷却した。メタノールおよび水を含む溶液を50℃にてエバポレーションで反応液から除去して、反応液(III)を得た。このようにして得られた縮合物(ポリマー)の重量平均分子量は、28,000であった。
【0118】
5.1.1−4.合成例2
石英製セパラブルフラスコ中で、[(トリメチルシリル)メチル]メチルジクロロシラン24.1g((A)成分)と、ジメトキシポリカルボシラン(B−1)13.5g((B)成分)とをメタノール1,950gに溶解させた。さらに、イオン交換水17.1gを加え、スリーワンモーターで攪拌させた。次いで、この溶液を55℃で1時間反応させた後、反応液を室温まで冷却した。この反応液にジエチルエーテル2,500gおよびイオン交換水2,000gを加え、抽出操作で有機層を取り出した。この有機層にプロピレングリコールモノエチルエーテル溶液2,000gを添加し、メタノール、ジエチルエーテルおよび水をエバポレーションで反応液から除去して、反応液(IV)を得た。このようにして得られた縮合物(ポリマー)の重量平均分子量は、12,000であった。
【0119】
5.1.1−5.比較合成例3
石英製セパラブルフラスコ中で、ジクロロメチルシラン30.5gと、ジメトキシポリカルボシラン(B−1)13.5g((B)成分)とをメタノール1,790gに溶解させたのち、さらにイオン交換水23.9gを加え、室温にて30分間スリーワンモーターで攪拌した。次に、この溶液を55℃で1時間反応させた後、反応液を室温まで冷却した。この反応液にジエチルエーテル2,500gおよびイオン交換水2,000gを加え、抽出操作で有機層を取り出した。この有機層にプロピレングリコールモノエチルエーテル溶液2,000gを添加し、メタノール、ジエチルエーテルおよび水をエバポレーションで反応液から除去して、反応液(V)を得た。このようにして得られた縮合物(ポリマー)の重量平均分子量は、15,000であった。
【0120】
5.1.1−6.比較合成例4
石英製セパラブルフラスコ中に、ジメトキシポリカルボシラン(B−1)44.8g((B)成分)と、35%塩酸43.3gと、メタノール1,591gとを添加した。次に、この溶液を55℃で1時間反応させた後、反応液を室温まで冷却した。この反応液にジエチルエーテル2,500gおよびイオン交換水2,000gを加え、抽出操作で有機層を取り出した。この有機層にプロピレングリコールモノエチルエーテル溶液2,000gを添加し、メタノール、ジエチルエーテルおよび水をエバポレーションで反応液から除去して、反応液(VI)を得た。このようにして得られた縮合物(ポリマー)の重量平均分子量は、10,000であった。
【0121】
5.1.2.膜形成用組成物の製造方法
上記合成例および比較合成例で得られた反応液(I)〜(VI)を0.2μm孔径のテフロン(登録商標)製フィルターでろ過を行ない、実施例1,2および比較例1〜4の膜形成用組成物をそれぞれ得た。
【0122】
得られた前記組成物をスピンコート法でシリコンウエハ上に塗布したのち、ホットプレート上で90℃にて3分間、窒素雰囲気200℃にて3分間基板を乾燥し、さらに400℃の窒素雰囲気下にてホットプレートで60分間基板を焼成した。焼成後に得られたポリマー膜(以下、「シリカ系膜」という)を下記評価方法のとおり評価した。評価結果を表1に示す。
【0123】
【表1】

【0124】
5.2.評価方法
前記5.1.1.で得られた縮合物(ポリマー)および前記5.1.2.で得られたシリカ系膜に関する各種の評価を以下の方法により行なった。
【0125】
5.2.1.ポリマーの重量平均分子量(Mw)
下記条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した。
【0126】
試料:テトラヒドロフランを溶媒として使用し、ポリマー(共縮合物)1gを、100ccのテトラヒドロフランに溶解して調製した。
【0127】
標準ポリスチレン:米国プレッシャーケミカル社製の標準ポリスチレンを使用した。
【0128】
装置:米国ウオーターズ社製の高温高速ゲル浸透クロマトグラム(モデル150−C ALC/GPC)
カラム:昭和電工(株)製のSHODEX A−80M(長さ50cm)
測定温度:40℃
流速:1cc/分
【0129】
5.2.2.シリカ系膜の比誘電率、Δk
0.1Ω・cm以下の抵抗率を有する8インチのN型シリコンウエハ上に、上述の方法にて形成されたシリカ系膜に、蒸着法によりアルミニウム電極パターンを形成させ比誘電率測定用サンプルを作成した。該サンプルを周波数100kHzの周波数で、アリジェント社製、HP16451B電極およびHP4284AプレシジョンLCRメータを用いてCV法によりシリカ系膜の比誘電率を測定した。
【0130】
Δkは、24℃、40%RHの雰囲気で測定した比誘電率(k@RT)と、200℃、乾燥窒素雰囲気下で測定した比誘電率(k@200℃)との差(Δk=k@RT−k@200℃)である。かかるΔkによって、主に、膜の吸湿による誘電率の上昇分を評価することができる。通常、Δkが0.15以上であると、吸湿性の高いシリカ系膜であると言える。
【0131】
5.2.3.シリカ系膜の機械的強度(弾性率・硬度)
上述の方法にて形成されたシリカ系膜について、ナノインデンターXP(ナノインスツルメント社製)を用いて、連続剛性測定法により機械的強度(弾性率・硬度)を測定した。
【0132】
5.2.4.シリカ系膜の薬液耐性
ハイブリッドポリマー膜が形成された8インチウエハーを、室温で0.2%の希フッ酸水溶液中に1分間および3分間浸漬し、上述の方法にて形成されたシリカ系膜の浸漬前後の膜厚変化を観察した。下記に定義する残膜率が99%以上であれば、薬液耐性が良好であると判断し、残膜率が99%未満である場合、薬液耐性が不良であると判断した。表1において、薬液耐性が良好であるものを「A」で示し、薬液耐性が不良であるものを「B」で示した。
残膜率(%)=(浸漬後の膜の膜厚)÷(浸漬前の膜の膜厚)×100
【0133】
5.3.評価結果
実施例1,2でそれぞれ得られたシリカ系膜は、炭素原子の含有量が多く、エッチング耐性および薬液耐性が良好であり、かつ、吸湿性の目安であるΔkも適当な値であった。この結果から、実施例1,2で得られたシリカ系膜は、炭素原子の含有量が多いため、エッチング耐性および薬液耐性に優れており、かつ、未反応のシラノール基の残留量が少ないため、吸湿性が低いと推測される。
【0134】
これに対して、比較例1,3では、ポリマーを製造する際において、(C)成分の配合量が実施例1,2と同一であるが、(A)成分を使用しなかった。このため、比較例1,3でそれぞれ得られたシリカ系膜を希フッ酸水溶液中に3分間浸すと薬液耐性が低下した。
【0135】
また、比較例2,4では、ポリマーの製造において、ポリマーを製造する際において、(A)成分を使用せずに、モノマー中の(B)成分の配合量を多くすることにより、炭素原子の含有量を多くした。その結果、比較例2,4で得られたシリカ系膜は、薬液耐性は良好なものの、Δkが大きい数値となった。
【0136】
以上の実施例からも明らかであるように、本発明のポリマーの製造方法を用いてポリマーを形成し、該ポリマーを含む絶縁膜形成用組成物を用いることにより、吸湿性および比誘電率が低く、炭素原子の含有量が多く、かつ、機械的強度、エッチング耐性、および薬液耐性に優れたシリカ系絶縁膜の形成が可能である。したがって、本発明のシリカ系膜は、機械的強度、エッチング耐性、および薬液耐性に優れ、かつ、比誘電率が低いため、半導体装置の層間絶縁膜などとして好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される少なくとも1種のシランモノマーと、(B)加水分解性基含有カルボシランとを共縮合することによって得られたポリマーと、
有機溶剤と、
を含有する、絶縁膜形成用組成物。
【化1】

・・・・・(1)
(式中、RおよびR〜Rは同一または異なり、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を示し、Xはハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、またはアシロキシ基を示し、nは0〜2の整数を示す。)
【請求項2】
(A)下記一般式(1)で表される少なくとも1種のシランモノマーと、(B)加水分解性基含有カルボシランとを共縮合することを含む、ポリマーの製造方法。
【化2】

・・・・・(1)
(式中、RおよびR〜Rは同一または異なり、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を示し、Xはハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、またはアシロキシ基を示し、nは0〜2の整数を示す。)
【請求項3】
請求項2において、
前記(B)加水分解性基含有カルボシランが、下記一般式(2)で表される少なくとも1種のポリカルボシランである、ポリマーの製造方法。
【化3】

・・・・・(2)
(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホン基、メタンスルホン基、トリフルオロメタンスルホン基、アルキル基、アリール基、アリル基、およびグリシジル基からなる群より選ばれる基を示し、Rはハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホン基、メタンスルホン基、トリフルオロメタンスルホン基、アルキル基、アリール基、アリル基、およびグリシジル基からなる群より選ばれる基を示し、R,Rは同一または異なり、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホン基、メタンスルホン基、トリフルオロメタンスルホン基、炭素数2〜6のアルキル基、アリール基、アリル基、およびグリシジル基からなる群より選ばれる基を示し、R〜R10は同一または異なり、置換または非置換のメチレン基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基を示し、a,b,cは、それぞれ0〜10,000の数を示し、10<a+b+c<10,000の条件を満たす。)
【請求項4】
請求項2または3において、
前記共縮合を有機溶剤中にて行なう、ポリマーの製造方法。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれかにおいて、
前記共縮合を、酸性触媒、塩基性触媒、または金属キレート触媒の存在下で行なう、ポリマーの製造方法。
【請求項6】
請求項2ないし5のいずれかに記載のポリマーの製造方法によって得られる、ポリマー。
【請求項7】
請求項6に記載の絶縁膜形成用組成物を基板に塗布し、30〜450℃に加熱することを含む、絶縁膜の製造方法。
【請求項8】
請求項7において、
高エネルギー線を照射しながら前記加熱を行なう、絶縁膜の製造方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の絶縁膜の製造方法により得られる、シリカ系絶縁膜。

【公開番号】特開2007−254596(P2007−254596A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80992(P2006−80992)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】