説明

締結手段を備えた滅菌ラップ

外科器具及び用品等をラップし、運搬し、保管するのに適する滅菌ラップシステムが開示される。滅菌ラップシステムは、滅菌されるべき物品の周りに閉じられた状態で保持されるようにするために、滅菌条件に暴露されることにより活性化する接着領域を、その表面に備えている。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
病院の中央サービス室(CSR)、或いは滅菌処理室(SPD)の要員は、外科用品をパッケージすることを通常業務としており、パッケージされた内容物の滅菌条件を滅菌の時点からそれを使用する時点に至るまで確実に維持する必要がある。滅菌された用品を、手術室その他の部門に配達する業務には様々な活動が必要となる。
【0002】
手術室に於いて用いられる外科器具及び用品の多くは再使用可能である。これらの用品は、通常クランプ、メスのハンドル、リトラクター、鉗子、はさみ、外科用タオル、容器等が含まれる。これらの用品の多くは、手術の後に再び集められ、別の手術を行うことができる前に滅菌される。用いられる滅菌パッケージシステムは、滅菌されるべき物品を収容可能であって、滅菌プロセスに於ける物理的条件に適合し、かつ耐え得るものでなければならない。
【0003】
一般的な滅菌パッケージシステムとしては、シール可能なパウチや滅菌ラップがある。通常、滅菌パウチは小さく軽量の物品に用いられる。滅菌パウチは、フレキシブルな材料を、開口を有するパウチ状とし、その内部に滅菌されるべき器具を収容するようにしたものである。開口は、粘着ストリップやピール可能な熱シールにより閉じられる。このような滅菌パウチの例が特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【特許文献1】米国特許5,459,978号(Weiss et al.)
【特許文献2】米国特許3,991,881号(Augurt)
【0004】
それに対して、滅菌ラップは、通常、より大きな、より重い、或いは不規則な形状を有する物品に用いられる。特に、滅菌ラップは、いくつもの物品を収容するトレイを滅菌するために用いられる。多くの場合、トレイには、特定の手術で必要とされる器具の全てを収容し、その重量は、5から30ポンドにも及ぶ。通常、金属用品はステンレス器具トレイ内に収容された状態で、外科タオル、ドレープ或いはガウン等のような柔らかい用品はそのままラップされる。滅菌ラップは通常、織布或いは不織布からなり、所定の方法によりトレイ或いはパッケージ内容物の周りにラップされると、トレイ或いはパッケージは、ラップに完全に包まれるようになる。所定の方法によりトレイ或いはパッケージ内容物の周りにラップされると、滅菌用の蒸気、ガス或いは他の媒体がトレイの内容物を滅菌し得るように侵入可能であるが、滅菌後は、バクテリアその他の感染を引き起こす物質或いはそれらの媒体等のような汚染物の侵入を防止することができる。
【0005】
パッケージされた内容物の滅菌条件を確保しかつ維持するために、Association of Operating Room Nurses(手術室看護士協会:AORN)は、病院に於いて処理されるパッケージのラッピング及び取り扱いに関する標準的な手順を定めている。多くの病院に於いては、AORNにより推奨されているように、2層のバリア材料を用いるダブルラップ方法が採用されている。これによれば、いずれか一方の材料の層に於ける欠陥のためにラップが汚染する可能性を減少させることができる。
【0006】
ダブルラップの主な手順は、パッケージ内容物を先ず1枚の滅菌ラップシートによりラップし、続いて第2の滅菌ラップシートによりラップするという逐次的な方法である。ダブルラップのもう1つの方法は、パッケージ内容物を、2枚の滅菌ラップシートにより同時にラップする同時的な方法からなる。即ち、2枚の滅菌ラップシートを上下に互いに整合するように重ね合わせ、ラップされるべき物品をこの2枚のシートの上に配置し、次にこの物品を2枚のシートにより同時にラップする。外側及び内側両層を一体的な積層ラップとして取り扱い得るように外側層と内側層とを一体化し、同時的ラップに際する労力を低減するための製品が開発されている。そのような製品としては、Kimberly-Clark Corporationにより製造されている KIMGUARD(登録商標) ONE-STEP(登録商標)があり、その構造の一部が特許文献3及び特許文献4に記載されている。他の同種の2プライ(2層)滅菌ラップが、特許文献5及び特許文献6に記載されている。
【特許文献3】米国特許5,635,134号
【特許文献4】米国特許5,688,476号
【特許文献5】米国特許6,406,764号(Bayer)
【特許文献6】米国特許6,517,916号(Bayer et al.)
【0007】
一般的な滅菌方法としては、限定的ではないが、蒸気によるオートクレービング(高圧蒸気殺菌法)、酸化エチレンガスに対する暴露、或いは米国California州Irvineに所在する STERRAD Sterilization SystemのAdvanced Sterilization Systemにより行われているような過酸化水素プラズマに対する暴露等がある。ラップされたトレイ及びその内容物が一旦滅菌されると、ラップされたトレイは、通常、外科手術に必要となる時点まで保管される。
【0008】
ラップされたトレイが必要となった時には、通常、手術室のような使用場所に運搬される。保管及び手術室への運搬の途中で、ラップされたトレイは、幾つかの異なる時点に於いて取り扱われることになる。ラップされたパッケージが取り扱われる度に、パッケージされた内容物の滅菌条件が損なわれる可能性が存在する。ラップされた内容物が汚染される2つの最も一般的な原因は、ラッピング材料が裂けたり、損壊することによる理由と、ラップの外面に水分その他の異物が付着する理由とからなる。何れの場合に於いても、トレイ及び内容物を再処理する必要が生じる。
【0009】
このようなパッケージを、最初にラップした時点から、滅菌、保管、取り扱い、運搬、物品の取り出し及び最終的な再使用に至るまで、パッケージを追跡する研究が種々なされている。これらの研究によれば、取り扱い及び保管の手法及び手順が改善され、改良された滅菌パッケージ製品を利用するようになったことから、ラップシートが裂けたり、ラップシートに孔が空くことによりラップされた物品が汚染される頻度が低減していることが示された。このような努力の1つの動機は経済的なものである。滅菌パッケージが汚染される度に、それは、通常の使用のサイクルから取り出され、内部の物品が取り出され、再びラップされ、更に新たな滅菌ラップによりラップされた後に再び滅菌されることにより、再び利用し得るようになる。これは時間及び費用の浪費である。
【0010】
このようなラップ方法は、滅菌パッケージをシールすることを助ける。ラップされる物品に応じて、良好な纏わり特性、はっきりとした折れ目や挟み込み部を形成する能力を有する適切なサイズの滅菌ラップを選択することにより、滅菌ラップを、滅菌されるべき物品に巻きついた状態に保持することが可能となる。更に、滅菌ラップを折りたたんだ後に残ったラップのばらけた(緩い)端部は、粘着テープにより固定される。このような粘着テープは、ラップのばらけた端部を保持するばかりでなく、滅菌条件に暴露されたときに変色するように構成されている場合がある。このように変色する粘着テープは、滅菌パッケージが滅菌処理されているか否かを示す表示手段として機能する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような粘着テープは、滅菌パッケージを準備する際の追加の材料となる。また、粘着テープは、滅菌ラップのばらけた端部を保持する機能のみにより、滅菌パッケージを閉じた状態に保持する。滅菌パッケージを閉じた状態に保持する働きは、滅菌ラップを折り畳むこと及び粘着テープが滅菌ラップと接触する部分に於いて接合部を形成することの両者の質の組み合わせにより支配される。従って、粘着テープが、滅菌処理の前後に於いて剥がれたりすると、滅菌ラップが開いてしまう心配がある。
【0012】
従って、再処理が必要となる可能性を低減し得るような新規の滅菌ラップシステムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、滅菌条件により活性化されるような接着領域を備えた少なくとも1枚の第1のシートを含む滅菌ラップシステムに関する。このような滅菌条件としては、スチーム滅菌条件、酸化エチレン滅菌条件及び過酸化水素プラズマ滅菌条件が含まれる。本発明は、2層のシートを互いに結合して構成された滅菌ラップシステムの表面に活性化可能な接着領域が設けられるような実施例を含む。滅菌ラップシステムのシートは、スパンボンド、メルトブローン及びスパンボンド不織布ウェブからなる積層体からなるものであって良く、或る実施例では、シートはポリプロピレンを含む。
【0014】
本発明の或る実施例では、接着領域が、滅菌ラップシステムの表面の少なくとも1つの区画された領域に設けられ、当該接着領域の全表面積が、滅菌ラップシステムの全表面積よりも小さい。別の実施例では、当該システムが、第2の締結手段を有する。
【0015】
接着領域は、活性化されたことを表示するものであって良い。接着領域は、活性化されたときに変色することにより、活性化されたことを表示するものであって良い。
【0016】
本発明は、更に上記したような滅菌ラップシステムと、滅菌されるべき物品とを組み合わせることにより形成されるラップされたパッケージを提供する。或る実施例では、物品が、少なくとも1つの再使用可能な医療器具を含む。
【0017】
本発明は、また、物品を提供するステップと、滅菌ラップシステムにより前記物品をラップするステップと、前記物品を実質的に滅菌するのに十分な時間をもって、ラップされた前記物品を滅菌条件に暴露するステップとを有する、物品を滅菌する方法を提供する。この方法で用いられる滅菌ラップシステムは、スパンボンド、メルトブローン及びスパンボンド不織布ウェブからなる2層のシートを互いに結合した積層体を含み、その表面には滅菌条件により活性化される接着領域が設けられる。本発明の或る実施例では、滅菌条件が、スチーム滅菌条件、酸化エチレン滅菌条件及び過酸化水素プラズマ滅菌条件等からなる。本発明の別の実施例では、物品をラップした後、かつラップされた前記物品を滅菌条件に暴露する前に、第2の締結手段により滅菌ラップシステムを閉じた状態にしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に於いて、外科用品等のような滅菌対象をラップし、滅菌し、保管し、利用するための逐次的或いは同時的ラップ手順のいずれに於いても用いるのに適する滅菌ラップシステムを説明する。本発明は、病院や外科手術室に於いて利用することに関連して説明するが、本発明の滅菌ラップシステムは、対象を滅菌する必要があるあらゆる分野に於いて利用可能である。従って、本発明の以下に於ける説明は、本発明の利用範囲を限定するものではないことを了解されたい。
【0019】
本発明の滅菌ラップは、滅菌条件に暴露されたときに活性化されるようなシール用接着領域を備えた単一のシート材料として実現することができる。図1及び2に示されるように、滅菌ラップシステム10は、第1のシート12の一方の面の全体に渡ってシール用接着領域26を設けてなるものであって良い。滅菌ラップシステム10は、第1のシート12の上面からなる第1の外面44を有し、図1及び2に示された実施例では、この面上にはシール用接着領域26が設けられていない。第1のシート12の反対側の面には、シール用接着領域26が設けられており、この面が、滅菌ラップシステム10の第2の外面46を構成する。
【0020】
図1に示されるような滅菌トレイ18等からなる物品をラップするためには、物品を第1の外面44に接触させるように滅菌ラップシステム10の表面に配置し、ラップシステムの四隅を1つずつ物品上に折り重ね、ラップされたパッケージを形成する。このようなラップの過程の間或いはその後に於いて、滅菌トレイ18はラップシステム10の第1の外面44のみに接触する。その結果として形成されるラップされた物品の外面は、シール用接着領域26をなす第2の外面46からなる。逐次的なラップ手順の場合には、図1に示されたのと同様な滅菌ラップシステム10のシートを、ラップされた物品に更に同様にラップし、露出する外面上にシール用接着領域26を備えた、完成されたラップされたパッケージを構成することができる。
【0021】
滅菌ラップシステム10は、滅菌されるべき物品をラップし得るように十分に大きなサイズを有するものでなければならない。滅菌ラップシステム10の折り畳まれる部分のそれぞれは、滅菌されるべき物品の大部分を覆い得るようでなければならず、その上に折り畳まれる部分は、その下の折り畳まれた部分に重合し、滅菌されるべき物品が、滅菌ラップシステム10の折り畳まれた部分により完全に覆われるようにする。一般に、滅菌ラップシステムは、様々なサイズの物品及びトレイをラップするために様々なサイズを備えているものであって良い。典型的なサイズは、18、24、30、36、40、45、48及び54インチ角を含み、或いは54×72インチの長方形を含むものであって良い。(1インチ=2.54cm)。
【0022】
適切にラップされた後は、ラップされ、完成したパッケージは、滅菌装置に移送され、滅菌条件に暴露される。上記したように、このような滅菌条件は、スチーム滅菌条件、酸化エチレン滅菌条件及び過酸化水素プラズマ滅菌条件等からなるものであって良い。シール用接着領域26は、このような滅菌条件に暴露されたときに活性化され、ラップされたパッケージが、完全にラップされた状態に保持されるように、即ち閉じられるように、接合部を形成し或いは強化するように、シール用接着領域26の組成が定められる。このような閉じた状態が達成されると、滅菌ラップシステムのバリヤ特性及び滅菌ラップシステムが折り畳まれていることにより形成される紆余曲折した通路のおかげで、異物の侵入を防ぐことができる。
【0023】
シール用接着領域26を設けることにより、滅菌ラップシステムは、滅菌条件に暴露されると、完全にシールされた状態になる。シール用接着領域26が、滅菌ラップシステムの全表面を覆う場合、或いは適所に配置された場合、シール用接着領域26は折り畳まれた部分を互いに接合し、異物の侵入に対して紆余曲折した通路を完全に閉じることができる。
【0024】
本発明の別の実施例では、図3、4に示されるように、複数プライ滅菌ラップシステム上にシール用接着領域26が設けられている。滅菌ラップシステムは、前記実施例と同様な第1のシート12に加えて、第2のシート14を備えている。図4に示された複数プライ滅菌ラップシステムの場合も、単一シートの実施例の場合と同様に、第1のシート12の片面上にシール用接着領域26が設けられ、これが第2の外面46を構成する。しかしながら、図3に示されるように、第2のシート14の上面が、滅菌トレイ18を載置するべき第1の外面44を構成する。
【0025】
図3に示されるように、このような滅菌ラップシステムを、第1及び第2のシート12、14を共に滅菌トレイ18の周りに、単一のシートを滅菌トレイ18の周りにラップするのと同様な要領でラップするような同時的ラップ方法に使用することができる。前記した場合と同様に、滅菌トレイ18は、滅菌ラップシステムの第1の外面44とのみ接触する。結果として得られたラップされた物品の外面は、シール用接着領域26をなす第2の外面46により構成される。シール用接着領域26は、滅菌条件に暴露されたときに、活性化し、ラップされた物品を閉じた状態に保持する接合部を形成し、或いはそのような接合部を強化する。
【0026】
図3に示されるような物品18のラップを容易にするために、2枚のシートが一体に保持されるように互いに結合されている一方、ユーザが複数の異なるシートにより物品がラップされていることを視覚的に確認し得るように、各シートが視覚的に異なる特性を有する。通常、シートは、その外周16の全て或いは一部に於いて互いに接合される。図3、4に示されているように、2枚のシートが、ラップの2本の概ね平行なエッジa−a’、b−b’の全長に渡って互いに接合されている。エッジは、接着剤、縫い合わせ、熱溶着及び超音波溶着等、一般的に接合と呼ばれているあらゆる手段により接合することができる。図3、4に示されるように、超音波溶着により連続的な接合線20が、第1及び第2のシート12、14の対向する辺上の外周16のやや内側或いは外周16に沿ってエッジの全長に渡って延在する。
【0027】
連続的な接合線20に加えて或いはそれに代えて、複数のシートを互いに接合するために第2の接合部22を設けることができる。図3に示される第2の接合部22は、2列の互いに間隔をおいて設けられた個別の接合点の集合からなり、互いに隔置される個々の接合点は四角形その他の形状を有し、滅菌ラップシステム10のエッジ方向から見たときに、異なる列の接合点が互いにオフセットされることにより、互いにオーバーラップした位置を占めるように形成される。この接合パターンは、米国Wisconsin州Neenahに所在する本件出願人であるKimberly-Clark Corporationにより製造される使い捨ての外科手術用ガウンに於ける袖を縫うために利用されている。第2の接合部22は、連続的な接合部20の僅かに内側であって、それのみによって或いは連続的接合部20と協働して、第1及び第2のシート12、14を互いに接合する働きを発揮する。
【0028】
更に、外周の4辺に於いて各シートを互いに接合するように、接合部をシートの全周に渡って設けることもできる。
【0029】
図1、2に示された単一のシートからなる実施例の第1のシート12及び図3、4に示された複数シートからなる実施例の第1及び第2のシート12、14は、様々な材料により形成することができる。滅菌ラップシステムは、通常、再使用可能と使い捨てとからなる2つの種類に分類される。再使用可能なものは、その名が示す通り、通常、洗濯或いは他の形式の洗浄処理により繰り返し使用可能なものであり、使い捨てのものは、1回使用した後に捨てられ或いはリサイクルされるような1回限り使用される物品である。一般に、布、リネンその他の織布は再利用可能なものであり、天然或いは合成繊維の何れか或いは両者からなる不織布材料を含むものは使い捨てシステムを構成する。このような不織布の材料としては、紙、ポリマー繊維等がある。また、そのような材料として、滅菌成分を透過可能であって、細菌その他の汚染物の透過を妨げ得るようなフィルムがある。
【0030】
不織布滅菌ラップシステムは、そのバリア特性、経済性及び品質の均一性のために特に好まれるようになってきた。非不織布材料は、限定的ではないが、空気集積(air laying)、湿式集積(wet laying)、水流絡合(hydroentangling)、スパンボンド、メルトブローン、ステープルファイバーカーディング及びボンディング並びに溶液紡績(solution spinning)を含む様々な方法により製造することができる。繊維自体は、限定的ではないが、セルロース、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィン等を含む様々な天然或いは合成材料から製造することができる。繊維は、スパンボンディングやメルトブローンプロセスにより製造されるような通常は3インチ以下であるが、それ以上の長さを有するものであっても良い連続的な繊維からなる比較的短いステープル長さ繊維からなるものであって良い。どのような材料を選択した場合でも、それにより製造されたラップが、使用される特定の滅菌方法に適合していなければならず、ラップされた内容物が、使用されるまでその滅菌条件を維持し得るような、十分な強度及びバリア特性を有するものでなければならない。
【0031】
ポリオレフィン系の繊維及びそれにより得られる不織布が、特に滅菌ラップシステムの製造に適していることが見出された。本件の譲受人であるKimberly-Clark Corporationにより製造されるポリプロピレンスパンボンド不織布を、滅菌ラップ、特に第1のシート12に対して強度を与えるために用いることができる。或る好適な実施例に於いては、第1のシート12を、スパンボンド層−メルトブローン層(SM)或いはスパンボンド層−メルトブローン層−スパンボンド層(SMS)からなる積層体により形成し、それによって、第1のシート12に対して所要の強度及びバリア特性を与えるようにしている。
【0032】
SMS材料は、互いに積層された3つの別個の層から形成される。これら3つの層を形成するための方法は、本出願人に譲渡された米国特許(特許文献7)に記載されており、その内容については、ここに言及することをもって本出願の一部とする。この特許に記載された材料は、一般にSMSと呼ばれるスパンボンド層−メルトブローン層−スパンボンド層を備えた3層構造の積層体からなる。SMSの2つの外側の層は、押し出しポリオレフィン繊維或いはフィラメントを、ランダムなパターンで配置し互いに接合してなるスパンボンド材料からなる。内側層は、スパンボンド層の繊維よりも概ね小径のやはり押し出しされたポリオレフィン繊維からなるメルトブローン層をなしている。その結果、メルトブローン層は、その繊維構造が微細であることから、バリア特性を改善し、滅菌材が繊維の間を通過することができ、しかも細菌その他の汚染物の透過を阻止することができる。逆に、2つの外側スパンボンド層は、積層体全体の強度の大部分を構成する。積層体は、その表面に於いて規則的に繰り返される間欠的な接合パターンを用いて形成されると良い。このパターンは、接合部が積層体の表面積の約5−50%を占めるように選択すると良い。好ましくは、接合部は積層体の表面の10−30%を占める。
【特許文献7】米国特許4,041,203号(Block et al.)
【0033】
本発明の特徴の1つは、第1及び第2のシート12、14の各層について、個別に特性を設定し得ることにある。これらの2枚のシートは互いに同一のものからなるものであって良いが、ある好適実施例に於いては、第1のシート12が第2のシート14よりも高い強度を有するようにされている。これにより、外側の物体により引き裂かれることに対して、より強い抵抗を発揮し、その他の理由によりラップされた対象が暴露される事態をより良く防止することが可能となる。逆に、ある別の実施例に於いては、第2のシート14が第1のシート12よりも高いバリア特性を有するようにされている。バリア特性及び強度特性を調整することは、内側及び下側のシートの斤量或いは各シートの個々の層の斤量を調整することにより達成することができる。これらいずれのシートについても適切な斤量として1平方ヤード当たり約0.5から3.5オンス(OSY)(1平方メートル当たり約17から119グラム(gsm))として与えられる。
【0034】
本発明の滅菌ラップシステムに設けられるシール用接着領域26は、滅菌条件に暴露されたときに、活性化するように構成される。更に、それに用いられる接着剤は、滅菌ラップシステムに用いられるシート材料に対して適合性を有するものでなければならない。
【0035】
ここで用いられる「接着剤」或いは「接着領域」なる用語は、1つまたは複数層或いは複数シートの滅菌ラップの少なくとも一部を、表面の結合により互いに接合するために適合される任意の物質を指す。このような物質は、有機物、無機物、天然、合成或いはそれらの組み合わせからなる。接着剤の例としては、カゼイン、澱粉、ピッチ、ゴム、粘漿剤、テレピン樹脂(ロジン)、セルロース、ラテックスゴム、ゴム溶剤、ワックス、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、シリコーンポリマーなどを含む。
【0036】
ここで用いられる「活性化」なる用語は、滅菌時に接合を形成し或いは接合を強化するようなシール用接着領域の能力を指す。特に、本発明に於いて言及されている滅菌時とは、滅菌条件に暴露させたり、滅菌条件に暴露した後にそのような条件から取り出すことを指す。活性化された接着剤は、別の表面或いは基層に対して接合部を形成することができる。例えば、活性化された接着剤は、同様の活性化された接着剤がコーティングされた別の表面と接合部を形成することができる。或いは、活性化された接着剤と、滅菌システムのシートを構成する材料との間に接合部を形成することもできる。活性化された接着剤は、システムを閉じられた状態に保持するために滅菌ラップシステム上に選択的に設けられた特定の表面或いは表面コーティングに対して接合部を形成するものであって良い。或いはシステムのシート間に実質的にシールされた境界面を提供する。ここで言う活性化とは、滅菌条件に暴露されたり、滅菌条件に暴露された後にそのような条件から取り出されたときに接合部を形成し或いは事前に形成された接合部を強化するものである限り、上記したような可能性の1つまたは複数を伴うものであって良い。
【0037】
ここで用いられる「滅菌条件」なる用語は、産業製品或いは医療製品に於いて細菌その他の感染性の生物を実質的に或いは完全に破壊するために用いられる特定の滅菌処理方法に於いて発生する条件を指すものとする。例えば、スチーム滅菌処理を行う場合、接着剤は、スチーム或いは凝縮水により形成される水分に対する暴露によって活性化されるように構成することができる。同様に、酸化エチレン滅菌処理方法に於いて用いられる滅菌ラップシステムの場合、シール用接着領域は、酸化エチレンに暴露されることにより活性化するように構成することができる。例えば、そのような接着剤はアルコールまたはアミン機能基を備えていることにより、酸化エチレンに暴露された時に追加のポリマー化を行うようにすることができる。
【0038】
滅菌ラップシステムが、過酸化水素プラズマ滅菌処理方法に適用される場合、シールは、過酸化水素に暴露された時に活性化するように構成することができる。また、滅菌条件は、それぞれの滅菌処理方法に於ける他の化学物質やパラメータ(温度、湿度など)を上記に代えて或いは上記に加えて伴うものであって良い。そのような場合、接着剤は、主たる滅菌媒体及び追加の化学物質或いはパラメータの一部或いは全てとの組み合わせにより活性化されるように構成することができる。
【0039】
他の技術分野に於いては、外部条件、化学物質、温度或いは放射などに暴露された時に活性化する接着剤が用いられることがある。このような接着剤は、実用上の特定の必要性を満足するように変更を加えることができる。このような活性化可能な接着剤の非限定的な例としては、封筒を閉じたり切手を貼ったりするために100年以上にも渡って利用されてきた水分により活性化される、澱粉系の或いは澱粉がコーティングされた接着剤がある。水分により活性化される接着剤は、例えば封筒や切手をなめたり他の方法により湿すことにより接着剤表面に対して水分が適用されるまで粘着性を発揮しない。このような澱粉系の或いは他の水分により活性化される接着剤の例は以下の特許文献8〜19に記載されている。
【特許文献8】米国特許25,590号(Stetson)
【特許文献9】米国特許2,272,516号(Edson)
【特許文献10】米国特許2,282,364号(Kunze et al.)
【特許文献11】米国特許2,365,020号(Stillwell)
【特許文献12】米国特許3,071,485号(Wurzburg et al.)
【特許文献13】米国特許3,271,228号(Ives)
【特許文献14】米国特許3,322,703号(Lindemann)
【特許文献15】米国特許4,105,824号(Monte)
【特許文献16】米国特許4,181,557号(Doggett et al.)
【特許文献17】米国特許4,288,493号(Kropp)
【特許文献18】米国特許4,325,851号(Colon et al.)
【特許文献19】米国特許5,413,829号(Brown et al.)
【0040】
他の分野に於いては、熱により活性化する他の接着剤が開発されている。本発明の材料に対して適合し、用いられる特定の滅菌方法の熱条件に適合するような同様の接着剤を開発することができる。別の非限定的な例に於いては、ユーザの皮膚に製品を接着させるために、皮膚の温度により活性化するような、吸収性製品や包帯のために用いられる接着剤が開発されている。例えば、以下の特許文献20〜23に記載されている。
【特許文献20】米国特許5,156,911(Stewart)
【特許文献21】米国特許5,387,450(Stewart)
【特許文献22】米国特許5,648,167(Peck)
【特許文献23】米国特許6,565,549(Peck)
【0041】
他の温度感応性接着剤の例に関する記載は、以下の特許文献24〜37に見ることができる。
【特許文献24】米国特許2,223,575(Pitman)
【特許文献25】米国特許2,608,542(Smith et al.)
【特許文献26】米国特許2,608,543(Wiswell et al.)
【特許文献27】米国特許2,653,880(Hendricks et al.)
【特許文献28】米国特許3,104,979(Lawton et al.)
【特許文献29】米国特許3,619,270(Tesch)
【特許文献30】米国特許3,625,787(Radl)
【特許文献31】米国特許4,135,033(Lawton)
【特許文献32】米国特許5,695,376(Datta et al.)
【特許文献33】米国特許5,905,099(Everaerts et al.)
【特許文献34】米国特許6,500,536(Yamada et al.)
【特許文献35】米国特許6,632,498(Zimmermann et al.)
【特許文献36】米国特許6,696,150(Ikeda et al.)
【特許文献37】米国特許6,753,379(Kawate et al.)
【0042】
別の分野に於いて、別の手段により活性化される接着剤の非限定的な例が知られており、紫外線或いは光の照射又はプラズマガスへの暴露により活性化される接着剤の例としては、以下の特許文献38〜43を参照されたい。
【特許文献38】米国特許4,900,388(Wyslotskyr)
【特許文献39】米国特許5,702,771(Shipston et al.)
【特許文献40】米国特許6,326,450(Shipston et al.)
【特許文献41】米国特許6,492,019(Shipston et al.)
【特許文献42】米国特許5,728,787(Cantor)
【特許文献43】米国特許6,676,795(Levandoski)
【0043】
マイクロ波により活性化されるホットメルトの例が特許文献44に記載されている。高エネルギー電子ビームより活性化を行う例が特許文献45に記載されている。紫外線、電子ビーム、ガンマ線、可視光或いはマイクロ波により活性化されることにより架橋する様々圧力感応性の接着剤ポリマーに関する記載が特許文献46に見られる。
【特許文献44】米国特許4,906,497(Hellmann et al.)
【特許文献45】米国特許4,803,104(Peigneur et al.)
【特許文献46】国際公開公報WO 92/11295(Audett et al. )
【0044】
1つの滅菌条件以外にも、複数の条件下に於いて活性化し得るようなシール用接着領域を構成することも可能である。このようなシール用接着領域としては、スチーム滅菌条件、酸化エチレン滅菌条件及び過酸化水素プラズマ滅菌条件の任意の組み合わせにより活性化されるように構成されるものがある。シール用接着領域は、紫外線波長の放射、ガンマ線放射、電子ビーム、プラズマ或いは赤外線滅菌条件に対する暴露により活性化されるように構成することもできる。当業者であれば、物品を滅菌するために現在存在する或いは将来開発されるであろう新規な滅菌条件下に於いて活性化するようなシール用接着領域を将来に渡って構成し得ることは容易に理解できよう。
【0045】
シール用接着領域に更に別の機能性を組み込むこともできる。例えば、シール用接着領域が、滅菌により変色するように構成することができる。これにより、シールの色を見ることにより、シール用接着領域すなわち滅菌ラップシステムが滅菌条件に暴露されたか否かを視覚的にユーザが判定することが可能となる。
【0046】
別の機能性としては、滅菌した後に、特定の態様をもってシール用接着領域が開くようにすることが含まれる。例えば、シール用接着領域が、追加の化学反応或いは紫外線波長の放射などのエネルギーに暴露された時に開放するように構成することができる。或いは、あるレベルの力を加えたり、特定の方向に力を加えた時に、それが接着された基層から剥がれるように構成することができる。
【0047】
このような機能及びまたは追加の機能の任意の組み合わせを、シール用接着領域の構成に組み込むことができる。
【0048】
シール用接着領域を、滅菌ラップシステムの表面に対して、覆うように或いは特定の配置をもって、任意の態様をもって適用することができる。このような適用方法としては、当該技術分野に於いて一般的に知られている任意の方法を選択することができる。例えば、シール用接着領域を、滅菌ラップシステムの表面にプリントすることができる。或いは、シール用接着領域を、スプレー、スワール、ビード或いはスロットコーティング法により適用することができる。シール用接着領域を、ロール状のものとし、それを巻き解き、滅菌ラップシステムに対して適用しかつ結合することができる。このようなシール用接着領域は、シート材料の製造時にシート材料自体に組み込むこともできる。当業者であれば、滅菌ラップシステムの表面に対してシール用接着領域を提供する方法としては様々なものがあることが用意に理解できよう。
【0049】
シール用接着領域26は、滅菌ラップシステム10上に、様々な位置にかつ様々な配置をもって適用することができる。ラッピング方法の最適化が図れるように位置及び配置を定めれば良い。図2、4に示されるように、シール用接着領域26は、滅菌ラップシステム10の全表面を覆うように設けられていて良い。図1〜4は、滅菌ラップシステムの第2の外面46上に設けられたシール用接着領域を示しており、この面は滅菌トレイ18に接触する面とは反対側の面である。或いは、シール26を、滅菌ラップシステム10(図示せず)の第1の外面44のみに或いは第1及び第2の外面44、46の両者に対して適用することができる。
【0050】
本発明の別の実施例に於いては、シール用接着領域が滅菌ラップシステムの表面の区分された領域に配置され、それにより接着剤により覆われた全表面積が、滅菌ラップシステムの全表面積よりも小さくなるようにされている。このように区分された接着パターンは、第1の外面44上或いは、第2の外面46上或いは第1及び第2の外面44、46の両者上に設けられていて良い。例えば、図5は、第1の外面44の隅部のような、単一の接着領域30に配置される。図面では、単一の接着領域30が三角形をなすものと示されているが、滅菌ラップシステムの特定の必要に応じて任意の形状或いはサイズのものであって良い。
【0051】
シール用接着領域は、複数の区分された領域に配置することもできる。図6に示された実施例では、シール用接着領域が、第2の外面46の3つの区分された領域に配置されている。即ち、シール用接着領域は、第1の隅部接着領域32、第2の隅部接着領域33及び第3の隅部接着領域34に配置されている。第1の隅部接着領域32のサイズは、図示された第2及び第3の領域のいずれよりも大きいものであって良く、或いは3つの領域の全てが同一のサイズであったり、3つのうちのいずれかが異なるサイズを有するものとすることもできる。隅部接着領域の全てが、三角形をなすものとして示されているが、任意の形状を有するものであって良い。この実施例に於ける接着領域の全面積は、個々の接着領域の面積の和であって、滅菌ラップシステムの全表面積よりも小さい。
【0052】
図7に示されているように、さらに別の実施例では、区分された接着領域が、交差するパターン36をなして配置されている。交差するパターンを構成する要素は、隅部に至るまで延在するものであっても、図示されているものよりも短いものであっても良い。またパターンは、図示されているものよりも広かったり或いは狭かったりするものであっても良い。シール用接着領域の配置としては、他の形状及びパターンも可能である。図7に示されるような交差するパターンに代えて、接着剤を、平行な列、斜め線の配置、らせんパターン、平行なサイン波状のパターンなどを第1及び第2の外面44、46のいずれか或いは両者に設けることができる。
【0053】
さらに別の実施例では、シール用接着領域26が、図8に示されるように複数の局部的な不連続な接着剤の点38として滅菌ラップシステム10上に配置されている。これらの接着剤の点は、滅菌ラップシステム10の表面に渡って均一に配置されていても、或いは接着剤の点を異なる密度で含むような2つ以上のゾーンに分けることもできる。特に図8に示されているように、滅菌ラップシステム10を、図8に於いて想像線54に示されるように、第1のゾーン50と第2のゾーン52とに区画することができる。第1のゾーン50は、第2の領域52よりも単位面積当りより多くの数の接着剤の点を有している。さらに、第1のゾーン50は、第2のゾーン52を完全に外囲し、結果として滅菌ラップシステム10の中心部よりも外周部に於いてより高密度の接着剤の点を有するような滅菌ラップシステム10が提供される。
【0054】
様々なサイズ及び寸法の複数の追加のパターンを考えることが出来る。このようなパターンは、第1の外面44、第2の外面46或いはその両面に設けられていて良い。シール用接着領域が、第1及び第2の外面44、46の両面に設けられている場合、各面のパターンは同一であっても、或いは面によってパターンが異なっても良い。パターンのサイズ、配置及び形状は、第1の外面44と第2の外面46とで異なるものであって良い。両面に於ける接着領域の面積は等しくても或いは異なるものであっても良い。接着剤の配置、全面積及びパターンは、特定の滅菌ラップシステムの必要性或いはそれを折り畳む方法に適合するように選択することができる。
【0055】
また、シール用接着領域26を用いることにより、第1の外面44と第2の外面46とを見分けるための表示として利用することもできる。例えば、シール用接着領域26を片面のみに或いは両面に異なるパターンをもって配置することにより、ユーザが裏表を判別し、滅菌ラップシステムを適正に整合し或いは操作することを助けることができる。
【0056】
図示され且つ上記されたシール用接着領域26の配置、サイズ及びデザインは、単なる少数の例であって、当業者であれば、接着領域の他の配置、サイズ及びデザインが可能であって、採用される滅菌ラップシステム及び折り畳み方法とマッチするように任意に選択し得ることは明らかである。このような折り畳み方法が図9(A)から9(D)に例示的に示されている。これらの図面は、図3に示されるような複数プライ1ステップ滅菌ラップシステム10を、同時的ラップ方法により滅菌されるべき物品の周りに折り畳む様子を示している。この実施例に於けるラップされるべき物品は滅菌トレイ18からなる。図9(A)から9(D)には複数プライ1ステップ滅菌ラップシステム10が図示され且つ説明されているが、本発明に基づく、図1に示されるような単一プライ滅菌システムを用いて同様の手順を実行することも可能である。
【0057】
ラップ手順は、まず滅菌トレイ18を滅菌ラップシステム上に配置することにより開始される。図9(A)に示されるように、この実施例に於いて用いられる滅菌ラップシステム10は、図5に示されるような、第2のシート14の表面に単一の接着領域30を備えているものからなる。滅菌トレイ18は滅菌ラップシステム10の中心に置かれ、滅菌ラップシステム10は、その単一の接着領域30が上側の隅に位置するように配置される。滅菌ラップシステムの下側の隅部が、第1の想像折り線70に沿って折り畳まれ、折り畳まれた下側の隅部が滅菌トレイ18の上側に達しそれを部分的に覆うようにする。図9(B)に示されるように、下側の隅部が折り畳まれると、第1のシート12が露出し、第2のシート14が滅菌トレイ18に接触するようになる。
【0058】
第2のステップは、図9(B)に示されるように、滅菌ラップシステム10の左及び右隅を、第2の想像折り線72に沿って折り曲げることからなる。折り畳まれた左側及び右側の隅部は、図(C)に示されるように滅菌トレイ18の更なる部分を覆う。最後のステップは、単一の接着領域30を有する上側の隅を、第3の想像折り線74に沿って折り曲げることからなる。図9(D)に示されるように、この最後の折り曲げにより、滅菌トレイ18は滅菌ラップシステム10の内部に折り込まれることとなり、ラップされたパッケージ80が形成される。この最後の折り曲げステップに於いて、上側の隅は、ラップされたパッケージ80の他方の側で挟み込まれる(タック:tuck)され得るように、充分な大きさを有するものからなる。
【0059】
ラップされたパッケージ80の全面は、第1のシート12の表面であり、包まれた滅菌トレイ18は、第2のシート14の表面とのみ接触する。また、最後の折り曲げの結果、滅菌ラップシステム10の上側の隅の単一の接着領域30は、下側の隅の第1の折り曲げ部が形成された時に露出した第1のシート12の部分と接触する。
【0060】
次にパッケージは滅菌装置に移送され、滅菌条件に暴露される。単一の接着領域30のシールは、滅菌条件に暴露されることにより活性化され、それが第1のシート12と接触する領域に於いて第1のシート12と接合される。
【0061】
本発明の別の実施例に於いては、シール用接着領域は、滅菌条件に暴露されて活性化される前であれば、滅菌ラップシステムの他の部分、使用されていない他の滅菌ラップシステム、滅菌されるべき物品或いはそれ以外の物品に対して、意に反して粘着することのないように適合されている。このような好ましくない粘着により、滅菌ラップシステムの扱いがユーザにとって厄介となる場合がある。そこでシール用接着領域を、滅菌条件に暴露された時に初めて粘着性或いは接着性を帯びるように構成することにより、このような問題を回避することができる。例えば、このようなシール用接着領域は、滅菌条件に暴露される前は粘着性を有さないコーティングをなす。或いは、シール用接着領域は、滅菌ラップシステムの表面に適用されたときには或る程度の粘着性を示すが、滅菌条件に暴露されるまではコーティングにより表面を非粘着性とすることもできる。
【0062】
さらに別のシール用接着領域に於いては、活性化前から粘着性を有するシール用接着領域をピール材料と共に用いることにより意に反する粘着を回避するようにしている。このようなピール材料としては、紙、プラスチック、不織布等がある。ピール材料は、滅菌ラップの最後の折り畳みステップの終了後に除去され、シールを露出させ、粘着性のシールが、滅菌条件に暴露される前の滅菌ラップシステムの最後の折り畳み部分を保持するようにする。このピール材料は、その全体が除去されるように或いはユーザがシールの暴露したい部分に対応する領域に於いてのみ選択的に除去されるように構成することができる。
【0063】
これは、封筒等に於いて、一般的に粘着領域と共に用いられるものと同様のものである。このような封筒は、そのフラップに圧力に感応する粘着剤がプリントされ、この粘着領域がシリコーンコーティングされたピール紙によって覆われている。ピール紙を除去すると粘着領域が露出する。次にフラップを封筒本体に折り重ね、それに圧力を加えると封筒が閉じられる。
【0064】
或いは、シール用接着領域を、特定の対応表面コーティングにのみ粘着するようなものとすることもできる。このような対応表面コーティングは、同様のシール用接着領域がコートされた他の面でも、他の選択的なコーティングがなされた面であっても良い。この種の選択的なシール用接着領域を備えた滅菌ラップシステム10の一実施例が図10に示されている。図10に於いては、シール用接着領域が、滅菌ラップシステム10の第2の外面46に選択的な接着領域62として配置されている。対応表面領域64は、滅菌ラップシステム10の、選択的接着領域62の対角方向の隅或いは反対側に配置されている。図9(A)から9(D)について前記したように、図10の滅菌ラップシステムを折り畳むと、選択的接着領域62が、対応表面領域64の近傍に達し、両領域が互いに接合する。
【0065】
本発明の別の実施例は、第2の締結手段を組み込むことにより、シール用接着領域が、滅菌条件に暴露され、活性化をされることにより、滅菌ラップシステムを閉じた状態で保持するようになるまで、滅菌ラップシステムの折り畳まれた部分を固定された状態に保持する。このような第2の締結手段は、ラップされたパッケージが形成される間及びラップされたパッケージが滅菌装置に移送されるまで、滅菌ラップシステムを閉じた状態に保持するためにのみに必要とされる。或いは、第2の締結手段が、それ自体でラップされたパッケージを閉じた状態に保持するのに充分な強度を有するものであって、シール用接着領域が、バリアを提供することに加え、閉じる力を増強するようななものとすることができる。第2の締結手段は、滅菌ラップシステムの永久的な部分であっても、或いはラップされたパッケージが滅菌条件に暴露された後には除去されるように構成されたものであっても良い。
【0066】
第2の締結手段は、滅菌ラップを、滅菌条件に暴露されるまで閉じた状態に保持し得る限り、滅菌ラップシステムの任意の場所に設けられたものであって良い。例えば、図11に示されるように、滅菌ラップシステムは図5に示されるような単一の接着領域30を有し、更に第2の締結手段68を備えたものとすることができる。当業者であれば容易に理解できるように、第2の締結手段68は、図5に示された例に於ける場合とは、異なる配置であったり、或いはそれよりも大きかったり或いは小さかったりさらには異なる形状を有するものであって良い。
【0067】
第2の締結手段を提供するための1つの方法については既に簡単に述べてある。すなわち、シール用接着領域は、ラップされたパッケージを閉じた状態に保持し得るが、滅菌ラップシステムを取り扱いが厄介なものにするほどには粘着性を有していないような適度なレベルの粘着性を有するものであって良い。先に述べたように、粘着性のシールを、ラップされたパッケージを閉じる前にシール用接着領域から除去されるようなピール材料と共に用いることもできる。また、第2の締結手段を区分された領域にのみ用い、閉じられた滅菌ラップシステムの最後の折り重ね部分のみを保持するものであって良い。最後に、現在用いられているような粘着テープを用いて、閉じられた滅菌ラップシステムの最後の折り畳み部を保持するようにすることもできる。シール用接着領域を用いることにより、このような粘着テープが、現在のもののように強力なものである必要はなく、或いは滅菌環境に暴露された後であって無菌環境に送り込まれる前に、粘着テープを除去することができる。
【0068】
さらに別の第2の締結手段としては、受動的な締結手段がある。ラップされたパッケージの最後の隅のタックは、パッケージを滅菌条件に暴露する前にパッケージを保持するための唯一の要素であって良い。同様に、ラップされたパッケージ内の滅菌されるべき物品の重量を利用して、最後の隅部の端部を、この物品の下側に配置することにより保持するようにして、物品の重量を利用することも出来る。或いは、最後の隅の端部が、それ自体の重量により閉じた状態に保持されるようにすることもできる。このような受動的な締結手段の他のものとしては、折り畳み部或いは皺を保持し得るようなラップ上の剛性を高められたゾーン或いは領域を追加するものからなる。このような剛性の高められた領域は、ラップ材料にコーティングを加えたり、追加の接合を行ったり、ワイヤーメッシュを組み合わせたり或いは皺或いは折り畳み部をより強固に保持し得るような他の方法より形成することができる。
【0069】
第2の締結手段は、磁石の吸引力を利用して、ラップされたパッケージが滅菌条件に暴露されるまでパッケージを閉じた状態に保持することも含む。磁石は、滅菌ラップシステムが特定の態様によりラップされた時に、磁石が互いの吸引力により或いは包まれた金属の滅菌トレイに対する互いの吸引力によりパッケージを閉じた状態に保持するように滅菌ラップシステムに組み込まれる。同様に、滅菌ラップシステムに静電気を帯びさせ、或いは滅菌ラップシステムの一部の表面に静電気を帯びさせ、静電気の吸引力により、滅菌されるべき物品が滅菌条件に暴露されるまで、ラップされたパッケージ内に閉じられるようにすることもできる。
【0070】
第2の締結手段の更なる実施例としては機械的な締結手段がある。このような機械的な締結手段は、フック、ループ、玉、きのこ、矢じり、軸の先に形成された玉、雄雌嵌合要素、クリップ、バックル、スナップ、ボタン等の様な幾何学的な形状を有する部材を組み合わせるものからなる。或る実施例に於いては、締結要素はフックアンドループ締結要素を含む。当業者であれば、フック及びループの形状、密度及びポリマー組成は、締結要素及び対応締結要素間の所要の締結のレベルを達成し得るように選択されることが容易に理解できよう。
【0071】
言うまでもなく、本発明は1つ又は複数の機械的締結手段及び接着剤を、単独で或いは組み合わせて利用するような締結手段を包含する。滅菌ラップシステムに、機械的締結手段及び接着ストリップの両者を用いることにより、滅菌環境に暴露されるようになるまで滅菌ラップシステムを閉じた状態に保持する上での追加の選択肢が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に基づく滅菌ラップシステムを示す斜視図であって、滅菌ラップシステムによりラップされるべき滅菌トレイが滅菌ラップシステム上に配置されて示されている。
【図2】図1に示された滅菌ラップシステムの実施例の側断面図である。
【図3】本発明に基づく複数プライ、1ステップ滅菌ラップシステムの実施例を示す斜視図であって、滅菌ラップシステムによりラップされるべき滅菌トレイが滅菌ラップシステム上に配置されて示されている。
【図4】図3に示された複数プライ、1ステップ滅菌ラップシステムの実施例の側断面図である。
【図5】シール用接着領域の様々な配置の一例を示す滅菌ラップシステムの底面図である。
【図6】シール用接着領域の様々な配置の一例を示す滅菌ラップシステムの底面図である。
【図7】シール用接着領域の様々な配置の一例を示す滅菌ラップシステムの底面図である。
【図8】シール用接着領域の様々な配置の一例を示す滅菌ラップシステムの底面図である。
【符号の説明】
【0073】
10 滅菌ラップシステム
12 第1のシート 14 第2のシート
26 シール用接着領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌ラップシステムであって、
外周部、上面及び全表面積を有する下面を備えた少なくとも1枚の第1のシートと、
前記第1のシートの前記下面に設けられた接着領域とを有し、
前記接着領域が全接着表面積を有し、かつ滅菌条件により活性化されることを特徴とするシステム。
【請求項2】
外周部、上面及び下面を備えた少なくとも1枚の第2のシートを更に有し、前記第1及び第2のシートが、前記外周部にて互いに結合され、前記第2のシートの前記下面が、前記第1のシートの前記上面に対向することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1及び第2のシートが、スパンボンド、メルトブローン及びスパンボンド不織布ウェブからなる積層体をなすことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1及び第2のシートが、ポリプロピレンを含むことを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記接着領域が、スチーム滅菌条件により活性化されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記接着領域が、酸化エチレン滅菌条件により活性化されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記接着領域が、過酸化水素プラズマ滅菌条件により活性化されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
接着領域が、前記第2のシートの前記下面の少なくとも1つの区画された領域に設けられ、当該接着領域の全表面積が、当該下面の全表面積よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記接着領域が、活性化されたことを表示するものからなることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記接着領域が、活性化されたときに変色することにより、活性化されたことを表示するものからなることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
当該システムが、第2の締結手段を有することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
滅菌ラップシステムと、滅菌されるべき物品とを組み合わせることにより形成されるラップされたパッケージであって、
滅菌されるべき物品と、
第1のシート及び第2のシートを含む滅菌ラップシステムとを有し、
前記第1のシートの少なくとも一部に接着領域が設けられ、前記第1のシートが、スパンボンド、メルトブローン及びスパンボンド不織布ウェブからなる積層体を含み、前記第2のシートが、スパンボンド、メルトブローン及びスパンボンド不織布ウェブからなる積層体を含み、
前記滅菌されるべき物品が、前記滅菌ラップシステム上に配置され、かつ前記滅菌ラップシステムを、前記物品上に折り畳むことによりラップされ、
前記接着領域が滅菌処理により活性化し、前記滅菌ラップシステムを閉じた状態に保持するための結合部を形成することにより、ラップされたパッケージを構成するようにしたことを特徴とするパッケージ。
【請求項13】
前記物品が、少なくとも1つの再使用可能な医療器具を含むことを特徴とする請求項12に記載のラップされたパッケージ。
【請求項14】
前記第1及び第2のシートが、互いに結合されていることを特徴とする請求項12に記載のラップされたパッケージ。
【請求項15】
前記滅菌ラップシステムを閉じた状態に保持するための第2の締結手段を更に有することを特徴とする請求項12に記載のパッケージ。
【請求項16】
物品を滅菌する方法であって、
物品を提供するステップと、
(a)スパンボンド、メルトブローン及びスパンボンド不織布ウェブからなる積層体を含む第1のシート、
(b)スパンボンド、メルトブローン及びスパンボンド不織布ウェブからなる積層体を含む第2のシート及び
(c)前記第1のシートに設けられた、滅菌条件により活性化される接着領域を有する滅菌ラップシステムにより前記物品をラップするステップと、
前記物品を実質的に滅菌するのに十分な時間をもって、ラップされた前記物品を滅菌条件に暴露するステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項17】
前記滅菌条件が、スチーム滅菌条件、酸化エチレン滅菌条件及び過酸化水素プラズマ滅菌条件から選択されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記物品をラップした後、かつラップされた前記物品を滅菌条件に暴露する前に、第2の締結手段により前記滅菌ラップシステムを閉じた状態にするステップを更に有することを特徴とする請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9(A)】
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【図9(B)】
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【図9(C)】
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【図9(D)】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−520511(P2008−520511A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543029(P2007−543029)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/033138
【国際公開番号】WO2006/055083
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】