説明

繊維複合体及びその製造方法

【課題】本発明は、誘電率及び誘電正接(誘電損失)が低く、且つ、低線膨張率を有する繊維複合体、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、2又は他官能ジヒドロベンゾキサジン化合物の開環重合体中に、コロイダルシリカが繊維状に形成されている繊維複合体を提供する。また、本発明は、繊維シートに、コロイダルシリカ溶液を含浸させ、乾燥させる工程、2又は他官能ジヒドロベンゾキサジン化合物を含浸させる工程、及び全体を加圧下に加熱一体化させる工程を含む、繊維複合体の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2又は多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物の開環重合体を構成成分のひとつとする繊維複合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
古くからプリント配線基板用の樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シアナート樹脂、ビスマレイミド樹脂等が用いられてきた。プリント配線基板には、高周波回路で使用する際の伝導損失の抑制のため、低誘電率、低誘電正接であることが求められているが、上記の樹脂では、その要求を満足するものではなかった。
【0003】
近年、新しい樹脂として、ジヒドロベンゾキサジン環が開環重合反応し、揮発分の発生を伴わずに熱硬化するジヒドロベンゾキサジン化合物が盛んに研究されている。例えば、特開2004−231847号公報には、ジヒドロベンゾキサジン化合物を用いた電気配線板用積層板の組成例が上げられている。
【0004】
しかしながら、樹脂のみでは、要求される低線膨張率に対応できないために、ガラス繊維織布などの無機繊維と複合することが多く、樹脂のもつ低誘電率、低誘電正接を損なう結果となっていた。
【特許文献1】特開2004−231847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題の一つは、前記の問題点である。
従って、本発明の目的は、誘電率及び誘電正接(誘電損失)が低く、且つ、低線膨張率を有する繊維複合体、及び、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2又は多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物の開環重合体中に、コロイダルシリカが繊維状に形成されている繊維複合体、及びその製造方法を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0007】
即ち、本発明は、下記1)〜9)の発明を提供するものである。
1)2又は多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物の開環重合体中に、コロイダルシリカが繊維状に形成されている繊維複合体。
【0008】
2)上記2官能ジヒドロベンゾキサジン化合物が下記の分子構造(1)で示される、前記1)記載の繊維複合体。
【0009】
【化1】

(式中、Rは炭素数2以上の直鎖状アルキレン基又はその水素がアルキル置換された分岐状アルキレン基、或いは脂環式構造を有する炭化水素基を示し、べンゼン環の水素はアルキル基又はアルコキシ基で置換されていてもよい。また、Rは、ジフェニルエーテル基であってもよい。)
なお、本発明においては、脂環式構造には、IUPACでのシクロアルキル、ビシクロアルキルを含むものとする。
【0010】
3)上記多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物が下記の分子構造(I)で示される、前記1)記載の繊維複合体。
【0011】
【化2】

〔式(I)において、
Ar1は、4価の芳香族基を示し、
1は、脂肪族または脂環式構造を有する炭化水素基であり、
nは、2〜500の整数を示す。〕
【0012】
4)前記2官能ジヒドロベンゾキサジン化合物である前記分子構造(1)中のRが下記(i)で示される基である、前記2)に記載の繊維複合体。
【0013】
【化3】

〔式中、*印は前記式(1)におけるNへの結合部位を示す。また、シス−トランス異性体を含む。〕
【0014】
5)前記多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物である前記分子構造(I)中のR1が下記(i)で示される基である、前記3)に記載の繊維複合体。
【0015】
【化4】

〔式中、*印は前記式(I)におけるNへの結合部位を示す。また、シス−トランス異性体を含む。〕
【0016】
6)23℃、100MHz及び1GHzにおける誘電率が2.0〜3.2であり、誘電正接が10-4〜6.0×10-3であり、且つ、熱線膨張率が、2.0×10-5〜4.0×10-5である前記1)〜5)の何れかに記載の繊維複合体。
【0017】
7)マトリクスとして前記2又は多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物の開環重合体以外に、誘電率が2.5以下の樹脂を含有する、前記1)〜6)の何れかに記載の繊維複合体。
【0018】
8)繊維シートに、コロイダルシリカ溶液を含浸させ、乾燥させる工程、2又は多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物を含浸させる工程、及び全体を加圧下に加熱一体化させる工程を含む、繊維複合体の製造方法。
【0019】
9)前記繊維シートが、ポリエチレン樹脂を含む、前記8)記載の繊維複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、誘電率及び誘電正接が低く、且つ、低線膨張率を有する繊維複合体、及び、そのような優れた繊維複合体の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
〔繊維複合体〕
以下、本発明の繊維複合体について、その好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明の繊維複合体は、2又は他官能ジヒドロベンゾキサジン化合物の開環重合体中に、コロイダルシリカが繊維状に形成されている繊維複合体である。即ち、本発明の繊維複合体は、2又は他官能ジヒドロベンゾキサジン化合物を開環重合反応した樹脂(マトリクス樹脂)のもつ低誘電率、低誘電正接を損なうことなく、線膨張率を低下させる方法として、該樹脂中に繊維状にコロイダルシリカを形成させたものである。本発明の繊維複合体は、かかる構成からなるため、誘電率及び誘電正接が低く、且つ、低線膨張率を有するものである。また、繊維複合体にベンゾキサジン樹脂を複合したため、単体の繊維複合体に対して難燃性に優れる。
【0022】
本発明に用いられるマトリクス樹脂である、2又は他官能ジヒドロベンゾキサジン化合物の開環重合体としては特に制限されるものではないが、低い誘電率を有する点から、下記式(1)で示される分子構造の2官能ジヒドロベンゾキサジン化合物の開環重合体であることが好ましい。
【0023】
【化5】

(式中、Rは炭素数2以上の直鎖状アルキレン基又はその水素がアルキル置換された分岐状アルキレン基、或いは脂環式構造を有する炭化水素基であり、べンゼン環の水素はアルキル基又はアルコキシ基で置換されていてもよい。また、Rは、ジフェニルエーテル基であってもよい。)
【0024】
上記式(1)中のRが示す直鎖状アルキレン基について、その炭素数が少なくなると、得られた成形体のヤング率(E’)及びガラス転移温度は高くなるが、誘電率が高くなり、伸び及び可撓性が低下し、逆に炭素数が多くなると、得られた成形体の伸び及び可撓性は高くなり、誘電率は低くなり、誘電正接(特に1GHzの場合)も若干低下する傾向となるが、ヤング率(E’)及びガラス転移温度が低下する。かかる観点から、上記式(1)中のRが示す直鎖状アルキレン基の炭素数は、2〜16が好ましく、より好ましくは6〜12である。
【0025】
又、Rは炭素数2以上の直鎖状アルキレン基の水素がアルキル置換された分岐状アルキレン基であってもよい。前記の分岐状アルキレン基を使用すると、ヤング率(E’)が高くなり、また、耐熱性の指標であるガラス転移温度は高くなり、また、伸び及び可撓性が低下する。また、誘電率の低下及び成型体の伸びを狙って主鎖である直鎖状アルキレン基の炭素数を増やした時には、耐熱性の指標であるガラス転移点が低下してしまう。前記の低誘電率、成型体伸びを確保し、同時に高いガラス転移点とのバランスを取るために、直鎖状アルキレン基の炭素数が多い場合、好ましくは炭素数が4以上、より好ましくは炭素数が5〜12の場合に、該直鎖状アルキレン基の水素をアルキル基に置換して分岐状アルキレン基とするのが好ましく、置換する該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0026】
又、上記式(1)で示される2又は他官能ジヒドロベンゾキサジン化合物中のべンゼン環の水素はアルキル基又はアルコキシ基で置換されていてもよく、該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられ、該アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0027】
また、上記式(1)中のRが示す脂環式構造を有する炭化水素基について、特に、Rが下記(i)で示される基である、ジエチリデントリシクロデカン基の場合には、耐熱性に優れることと、低誘電率、低誘電損失となるため好ましい。
【0028】
【化6】

【0029】
さらに、2又は多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物の開環重合体としては、耐熱性、低誘電率、低誘電損失が向上する点から、下記式(I)で示される分子構造の多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物の開環重合体であることも好ましい。
【0030】
【化7】

〔式(I)において、
Ar1は、4価の芳香族基を示し、
1は、脂肪族または脂環式構造を有する炭化水素基であり、
nは、2〜500の整数を示す。〕
【0031】
式(I)中のAr1が示す4価の芳香族基としては、特に、入手の容易さ、反応性の点から、下記(iii)、(iv)、(v)のいずれかの構造で示されるものが好ましい。
【0032】
【化8】

〔式(iii)〜(v)中、*印はOHへの結合部位、もう一方はオキサジン環4位のメチレン基への結合部位を示す。
また、各芳香環の水素は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、又は置換もしくは無置換フェニル基で置換されていてもよい。
式(iii)におけるXは、直接結合手(原子もしくは原子団が存在しない)、またはヘテロ元素もしくは官能基を含んでいても良い脂肪族、脂環式もしくは芳香族の炭化水素基を示す。〕
【0033】
Ar1が前記構造(iii)である場合において、該構造(iii)中のXが、下記群Aから選択される少なくとも一つであるとさらに好ましい。
このような構造のものであると、入手が容易であり、重合体の機械的、電気的特性等が優れるため非常に好ましい。
【0034】
【化9】

〔各式中、*印は前記構造(iii)における芳香環への結合部位を示す。〕
【0035】
また、群Aの中でも特に下記群Bで示される構造のものは、電気特性、耐熱性に優れるため特に好ましい。
【0036】
【化10】

〔各式中、*印は前記構造(iii)における芳香環への結合部位を示す。〕
【0037】
上記において、Ar1は、特に、入手の容易さ、硬化体の電気特性および耐熱性の点から、下記群Cより選択される少なくとも一つの構造で示されるものも好ましい。
【0038】
【化11】

〔各式中、両端部における*印はOHへの結合部位、もう一方はオキサジン環4位のメチレン基への結合部位を示す。
また、各芳香環の水素は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、又は置換もしくは無置換フェニル基で置換されていてもよい。]
【0039】
Ar1が上記群Cより選択される少なくとも一つである場合にも、Ar1が前記(iii)、(iv)、(v)のいずれかの構造で示される場合と同様に、同様の理由から、脂環式構造を有する炭化水素基を示すR1は、縮環構造を有する脂環式炭化水素基が好ましく、中でも、前記(i)で示される基がより好ましい。
【0040】
このような化合物の具体例としては、(iii)の構造:4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスフェノール(三井化学製 ビスフェノールP、東京化成では「α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン」の化合物名で販売)、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスフェノール(三井化学製 ビスフェノールM)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、2,6−ビス((2−ヒドロキシフェニル)メチル)フェノール等のように、連結部Xを除いて、分子内にベンゼン環を二つ有し、ベンゼン環一つに対してOH基が一つ結合している化合物、
(iv)の構造:1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、のように、分子内に一つのナフタレン環を有し、ナフタレン環に対して二つのOH基が結合した化合物、
(v)の構造:1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)のように分子内に一つのベンゼン環を有し、ベンゼン環に対してOH基が二つ結合した化合物、等が挙げられる。
【0041】
上記の例示としてはOH基の結合している芳香環において、OH基と連結部X((iii)の構造の場合)以外は無置換のものを挙げたが、いずれもOH基のオルト位のいずれか一つが置換可能なHであればよく、芳香環のその他の部位は種々の置換基、たとえば炭素数1〜10の直鎖状あるいは分岐を含む脂肪族炭化水素基や脂環式炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族基で置換されていてもよい。また、連結部Xに芳香環を含む場合においても、この芳香環は種々の置換基、たとえば炭素数1〜10の直鎖状あるいは分岐を含む脂肪族炭化水素基や脂環式炭化水素基等で置換されていてもよい。
【0042】
芳香環が置換されたものの簡単な例示としては、
(iii)の構造:2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、
(v)の構造:2−メチルレゾルシノール、2,5−ジメチルレゾルシノール
等が挙げられるが、当然これに限定されるものではない。
【0043】
式(I)中のR1としては、脂環式構造を有する炭化水素基である場合、得られる樹脂の電気特性と耐熱性が非常に良好であるため好適に使用される。特に、縮環構造を有する脂環式炭化水素基が好ましく、このような縮環構造を有する脂環式炭化水素基において1級アミノ基が結合したような化合物の具体例としては、例えば、3(4),8(9),−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5,2,1,02,6]デカン、2,5(6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、又は、1,3−ジアミノアダマンタン等が挙げられる。3(4),8(9),−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5,2,1,02,6]デカンはCelanese社から「TCD Diamine」の製品名で販売されているものを使用することができ、2,5(6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタンは三井化学から「NBDA」の製品名で販売されているものを使用することができる。これらは単独で用いられても複数を併用してもよい。
【0044】
上記2官能ジヒドロベンゾキサジン化合物は、1価のフェノール化合物と下記一般式(2)で示される脂肪族または脂環式ジアミンとホルムアルデヒド類とから合成されたものが好ましい。一方、上記多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物は、2価のフェノール化合物と下記一般式(2)で示される脂肪族または脂環式ジアミンとホルムアルデヒド類とから合成されたものが好ましい。
【0045】
【化12】

(式中、Rは炭素数2以上の直鎖状アルキレン基又はその水素がアルキル置換された分岐状アルキレン基、或いは脂環式構造を有する炭化水素基を示す。)
【0046】
上記1価のフェノール化合物は、一つのフェノール性水酸基を有し、オルト位の少なくとも一つが水素である化合物であって、例えば、フェノール、クレゾール、2−ブロモー4−メチルフェノール、キシレノール、ノニルフェノール、p−t−ブチルフェノール、オクチルフェノール等が挙げられる。
【0047】
また、このような化合物の具体例としては、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスフェノール(三井化学製 ビスフェノールP、東京化成では「α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン」の化合物名で販売)、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスフェノール(三井化学製 ビスフェノールM)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、2,6−ビス((2−ヒドロキシフェニル)メチル)フェノール等のように、連結部Xを除いて、分子内にベンゼン環を二つ有し、ベンゼン環一つに対してOH基が一つ結合している化合物、
1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、のように、分子内に一つのナフタレン環を有し、ナフタレン環に対して二つのOH基が結合した化合物、
1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)のように分子内に一つのベンゼン環を有し、ベンゼン環に対してOH基が二つ結合した化合物、等が挙げられる。
【0048】
上記一般式(2)で示される脂肪族または脂環式ジアミン中のRは、前記式(1)で示される2官能ジヒドロベンゾキサジン化合物中のRと同一であるか、または前記式(I)で示される多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物中のR1と同一であり、例えば、1,2−ジアミノエチレン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,12−ジアミノドデカン等が挙げられる。
【0049】
上記に加えて、3(4),8(9),−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5,2,1,02,6]デカン、2,5(6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、又は、1,3−ジアミノアダマンタン等が挙げられる。3(4),8(9),−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5,2,1,02,6]デカンはCelanese社から「TCD Diamine」の製品名で販売されているものを使用することができ、2,5(6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタンは三井化学から「NBDA」の製品名で販売されているものを使用することができる。これらは単独で用いられても複数を併用してもよい。
【0050】
上記ホルムアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド水溶液であるホルマリン、ホルムアルデヒドの重合物であるパラホルムアルデヒドが挙げられる。
【0051】
上記2官能ジヒドロベンゾキサジン化合物は、1価のフェノール2モル等量と式(2)で示される脂肪族ジアミン1モル等量とホルムアルデヒド類4モル等量が反応して合成されるが、その合成方法は公知の任意の合成方法が採用されてよい。
【0052】
例えば、上記2官能ジヒドロベンゾキサジン化合物は、1価のフェノール化合物2モルと一般式(2)で示されるジアミン1モルとホルムアルデヒド類4モルを混合し、100〜130℃に加熱しながら、10分〜1時間攪拌することにより容易に合成することができる。
【0053】
また、上記多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物は、2価のフェノール化合物1モルと一般式(2)で示されるジアミン1モルとホルムアルデヒド類4モルを混合し、100〜130℃に加熱しながら、10分〜1時間攪拌することにより容易に合成することができる。
【0054】
又、上記2または多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物の合成に際しては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等のハロゲン化溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール、1,4ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等の溶剤に溶解して行なってもよい。この場合は、50〜130℃に加熱しながら、1〜20時間反応すればよく、反応終了後溶剤を除去し、必要に応じて、アルカリ水溶液やメタノール等のアルコールで洗浄することにより、未反応のフェノール化合物、ジアミン及びホルムアルデヒド類を除去してもよい。
【0055】
2または多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物の開環重合方法は、従来公知の任意の重合方法が採用されてよく、一般には120〜260℃で数時間加熱すればよいが、加熱温度が低かったり、加熱時間が不足すると、ガラス転移温度が向上せず、耐熱性、機械的強度が不足するおそれがある。又、加熱温度が高すぎたり、加熱時間が長すぎると、ガラス転移温度が低下し、耐熱性、機械的強度も低下するおそれがある。従って、開環重合は165〜195℃で0.3〜4時間行うのが好ましい。
【0056】
尚、上記2または多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物を開環重合する際に、硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤としては、ジヒドロベンゾキサジン化合物を開環重合する際に一般的に使用されている任意の硬化促進剤が使用でき、例えば、カテコール、ビスフェノールA等の多官能フェノール類、p−トルエンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸等のスルホン酸類、安息香酸、サリチル酸、シュウ酸、アジピン酸等のカルボン酸類、コバルト(II)アセチルアセトネート、アルミニウム(III) アセチルアセトネート、ジルコニウム(IV)アセチルアセトネート等の金属錯体、酸化カルシウム、酸化コバルト、酸化マグネシウム、酸化鉄等の金属酸化物、水酸化カルシウム、イミダゾール及びその誘導体、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン等の第三級アミン及びこれらの塩、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン・ベンゾキノン誘導体、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボロン塩、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のリン系化合物及びその誘導体が挙げられる。これらは1種で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0057】
硬化促進剤の添加量は特に限定されないが、多量に添加すると機械的物性に悪影響を及ぼすので、一般に、上記2または多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物100重量部に対し5重量部以下であり、好ましくは3重量部以下である。
【0058】
また、本発明の繊維複合体におけるマトリクスとしての、2または多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物の開環重合体は、23℃、100MHz及び1GHzにおける誘電率が2.0〜3.2であることが好ましく、誘電正接が10-4〜6.0×10-3、且つ、熱線膨張率が2.0×10-5〜4.0×10-5であることが好ましい。
【0059】
一般に積層板のような電子材料には、電子機器の高密度化、高速信号伝達性、高周波対応性などに伴い低誘電率特性が要求されており、特にICパッケージのような多層基板の性能としては、23℃、100MHz及び1GHzにおける誘電率は低い程好ましく用いられる。従って、23℃、100MHz及び1GHzにおける誘電率、及び誘電正接が上記範囲にある2または多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物の開環重合体を用いた本発明の繊維複合体は、このような用途に好適に使用できる。
【0060】
また、熱線膨張率が上記範囲にある2または多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物の開環重合体を用いると、その表面やさらに絶縁層を設けた表面上に金属配線や電極が形成される場合に、剥離が生じにくいため好ましい。
【0061】
本発明においては、上記2または多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物の開環重合体の線膨張率を低下させるために、冒頭で述べたように、マトリックス樹脂としての該開環重合体中に、コロイダルシリカを繊維状に形成させる。このようにコロイダルシリカを繊維状に形成させるのは、コロイダルシリカが分散状態でいるよりも、繊維状に配列することで、線膨張率を低下させる効果が大きくなるからである。
【0062】
本発明においては、コロイダルシリカを繊維状に配列させる方法として、繊維状の鋳型を用いることが好ましい。つまり、繊維状の鋳型にコロイダルシリカの溶液を塗布して乾燥させる等の方法により、コロイダルシリカを繊維状に結合させることができる。
【0063】
用いられる鋳型の材料としては、鋳型に誘電率の低い必要性があることからかかる誘電率の条件を満足する限り特に制限されるものではなく、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などが挙げられる。本発明では、特にポリエチレン樹脂を用いた繊維シートを鋳型として用いることが、安価である点から好ましい。
【0064】
鋳型として好ましく用いられるポリエチレン樹脂を用いた繊維シートを構成する繊維状のポリエチレン樹脂としては、特に限定はされないが、2軸延伸により微多孔化させたフィルムが好適に用いられる。その製法としては特に限定されないが、2軸延伸をかけることで、クレーズを発生させながら延伸を行い、繊維状のポリエチレンフィルムを作成することができる。また、ポリエチレン樹脂は無機粒子を含有してもよい。
【0065】
コロイダルシリカは、分散媒(水やアルコールなど)に、微粒子状のシリカが安定的に分散されているものである。本発明においてコロイダルシリカの仕様については特に限定されないが、シリカの粒径は、20〜100nmが好ましい。20nm未満であると分散状態が不安定となるおそれがある。また100nmを超えると皮膜の形成が困難で強い膜とならないおそれがある。
【0066】
シリカの含有量としては、シリカ及び分散媒からなるコロイダルシリカ全量に対して、10〜50重量%が好ましい。10%未満ではできる皮膜が薄くなりすぎるおそれがある。一方、50%を超えると分散が不安定になるおそれがある。
また、コロイダルシリカの代替として、アルミナの微粒子を分散させたアルミナゾルを用いることもできる。仕様は特に問われない。
【0067】
〔繊維複合体の製造方法〕
本発明に係る繊維複合体の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、繊維シートに、コロイダルシリカ溶液を含浸させ、乾燥させる工程、2または多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物を含浸させる工程、及び全体を加圧下に加熱一体化させる工程を含む方法である。本発明の製造方法は、かかる構成からなるため、誘電率及び誘電正接が低く、引張強度、引張弾性率、伸びがバランスよく優れている繊維複合体を容易に得ることができる。特に誘電率が低いこと、安価に入手できることなどの観点から、繊維シートとしては、ポリエチレン樹脂を含むものが好ましい。
【0068】
本発明の製造方法の好適態様を以下に示す。
第1工程では、コロイダルシリカの溶液を、繊維シートとしての微多孔ポリエチレンフィルムにロール塗工等の方法を用いて塗工した後に乾燥を行う。乾燥は50℃〜130℃で行う。乾燥温度が50℃未満では溶媒の乾燥がわるく、130℃を超えるとポリエチレン繊維が収縮するおそれがある。なお、コロイダルシリカは、その性質上、溶媒がなくなれば一体化してガラス化することが知られている。
【0069】
ついで、2または多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物を溶融または溶剤に溶解させることで、粘度を好ましくは30センチポイズ以下とした後に、上記微多孔質のポリエチレンフィルムに含浸させる。
【0070】
ついで、ロールで圧縮し余分の樹脂を除去する。
次に、50℃〜150℃のオーブン中で、溶剤を用いる場合は溶剤除去し、樹脂の仮硬化を行う。仮硬化温度が50℃未満では仮硬化の効率が悪く、150℃を超えると表面が硬化してしまい表面性が悪くなる可能性がある。
【0071】
2または多官能ジヒドロベンゾオキサジン化合物とコロイダルシリカの繊維シートへの含浸順序については、逆にしてジヒドロベンゾオキサジン化合物を先に含浸させても構わない。
【0072】
最後に、表面温度165℃以上に加熱したロール表面をパスさせながら、表面の平滑性を保ちながら、樹脂の硬化を完了させる。
【0073】
上述した繊維複合体の製造方法によって得られる本発明の繊維複合体の好適態様は、上記したように、2または多官能ジヒドロベンゾオキサジン化合物、コロイダルシリカ、及び繊維状の鋳型(繊維シート)の3種から構成されるが、その構成比は下記の範囲であることが好ましい。すなわち、樹脂成分(2または多官能ジヒドロベンゾオキサジン及び繊維状鋳型の合計分)と無機成分(コロイダルシリカ)との重量比が、樹脂成分を1としたときに、無機成分が1〜3であることが好ましい。無機成分の重量比が1未満では、無機成分が少なすぎて、繊維複合体の熱線膨張率を抑える効果が不足するおそれがある。また、無機成分の重量比が3を超えると、無機成分が多すぎて、繊維複合体の誘電率を悪くする恐れがある。
【0074】
実施例
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0075】
〔繊維複合体の評価方法〕
本実施例の繊維複合体の誘電率及び誘電正接の測定方法は以下の通りである。
厚み1mmのシート状成形体を15mm×15mmに切断し、誘電率測定装置に供給し、容量法により、23℃で測定し、100MHz及び1GHzにおける誘電率及び誘電正接を読み取った。
【0076】
本実施例の繊維複合体の線膨張率の測定方法は以下の通りである。
厚み0.5mmのシート状成形体を、4mm×30mmに切断し、線膨張率測定装置(SIIテクノロジー株式会社製、型番;TMA/SS6100)に供給し、50℃〜150℃間で寸法の増加を測定し、線膨張率を計算した。
【0077】
本実施例の繊維複合体は、誘電率の低いマトリクス樹脂と繊維から構成されるので複合体の誘電率も低く、23℃、100MHz及び1GHzにおける誘電率が2.0〜3.2であり、誘電正接が10-4〜6.0×10-3であり、且つ、コロイダルシリカが繊維状に効率よく配置され複合されているので、線膨張率も低い。よって、プリント配線基板のような低誘電率特性が要求されて用途に好適に使用できる。
【実施例1】
【0078】
1,2−ジアミノエタン1モル、フェノール2モル、パラホルムアルデヒド4モル及びクロロホルム1500gを混合した。この混合物を攪拌下60℃に加熱し、クロロホルムが環流し始めてから2時間反応を行った。反応終了後、反応混合物を分液ロートに移し、1規定水酸化ナトリウム水溶液により洗浄し、その後イオン交換水により水洗した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥した後、ロータリーエバポレーターによりクロロホルムを留去し、前記式(1)におけるRがエチレン基である2官能ジヒドロベンゾキサジン化合物を得た。
得られた2官能ジヒドロベンゾキサジン化合物を、THFに溶解し、40w/w/%の溶液として含浸溶液とした。
【0079】
一方、繊維状ポリエチレン(帝人株式会社製、多孔質繊維シート;商品名「ソルフィル」)を、コロイダルシリカ溶液(日産化学工業株式会社製、商品名「IPA-ST」)に浸漬した後、ロール間で圧縮し余分の溶液を除いた後に100℃のオーブンで2分間乾燥を行った。
【0080】
このコロイダルシリカを含む繊維シートに上記した2官能ジヒドロベンゾキサジン化合物の溶液をロール塗工した後、100℃で10分間乾燥し仮硬化させた。ついで、2枚のテフロン(登録商標)板(厚み1mm)に挟み、180℃に加熱された鉄板でプレスを行い、そのまま1時間かけて硬化(開環重合)させた。(加圧力は5kg/cm2とした。)得られた繊維複合体は、厚み約20μmのシート状となった。
【0081】
繊維複合体の評価用サンプルを切り出した後、誘電率、誘電正接(100MHz及び1GHzそれぞれ)、線膨張率の評価を行った。
【実施例2】
【0082】
1,4−ジアミノブタン1モル、フェノール2モル、パラホルムアルデヒド4モル及びクロロホルム1500gを混合した。この混合物を攪拌下60℃に加熱し、クロロホルムが環流し始めてから4時間反応を行った。反応終了後、反応混合物を分液ロートに移し、1規定水酸化ナトリウム水溶液により洗浄し、その後イオン交換水により水洗した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥した後、ロータリーエバポレーターによりクロロホルムを留去し、前記式(1)におけるRがブチレン基である2官能ジヒドロベンゾキサジン化合物を得た。
それ以降の操作は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
【実施例3】
【0083】
1,6−ジアミノヘキサン1モル、フェノール2モル、パラホルムアルデヒド4モル及びクロロホルム1500gを混合した。この混合物を攪拌下60℃に加熱し、クロロホルムが環流し始めてから8時間反応を行った。反応終了後、反応混合物を分液ロートに移し、1規定水酸化ナトリウム水溶液により洗浄し、その後イオン交換水により水洗した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥した後、ロータリーエバポレーターによりクロロホルムを留去して、前記式(1)におけるRがヘキサメチレン基である2官能ジヒドロベンゾキサジン化合物を得た。
それ以降の操作は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
【実施例4】
【0084】
1,8−ジアミノオクタン1モル、フェノール2モル、パラホルムアルデヒド4モル及びクロロホルム1500gを混合した。この混合物を攪拌下60℃に加熱し、クロロホルムが環流し始めてから10時間反応を行った。反応終了後、反応混合物を分液ロートに移し、1規定水酸化ナトリウム水溶液により洗浄し、その後イオン交換水により水洗した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥した後、ロータリーエバポレーターによりクロロホルムを留去して、前記式(1)におけるRがオクタメチレン基である2官能ジヒドロベンゾキサジン化合物を得た。
それ以降の操作は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
【実施例5】
【0085】
3(4),8(9),−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5,2,1,02,6]デカン1モル、(3(4),8(9),−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5,2,1,02,6]デカンはCelanese社から「TCD Diamine」の製品名で販売されているものを使用した)、フェノール2モル、パラホルムアルデヒド4モル及びクロロホルム1500gを混合した。この混合物を攪拌下60℃に加熱し、クロロホルムが環流し始めてから10時間反応を行った。反応終了後、反応混合物を分液ロートに移し、1規定水酸化ナトリウム水溶液により洗浄し、その後イオン交換水により水洗した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥した後、ロータリーエバポレーターによりクロロホルムを留去して、前記式(1)におけるRがジメチリデントリシクロデカン基である2官能ジヒドロベンゾキサジン化合物を得た。
それ以降の操作は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
【実施例6】
【0086】
2,5(6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン 1モル(2,5(6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタンは三井化学から「NBDA」の製品名で販売されているものを使用した)、フェノール2モル、パラホルムアルデヒド4モル及びクロロホルム1500gを混合した。この混合物を攪拌下60℃に加熱し、クロロホルムが環流し始めてから10時間反応を行った。反応終了後、反応混合物を分液ロートに移し、1規定水酸化ナトリウム水溶液により洗浄し、その後イオン交換水により水洗した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥した後、ロータリーエバポレーターによりクロロホルムを留去して、前記式(1)におけるRがジメチリデンノルボルネン基である2官能ジヒドロベンゾキサジン化合物を得た。
それ以降の操作は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
【実施例7】
【0087】
3(4),8(9),−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5,2,1,02,6]デカン1モル、(3(4),8(9),−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5,2,1,02,6]デカンはCelanese社から「TCD Diamine」の製品名で販売されているものを使用した)、ビスフェノールA1モル、パラホルムアルデヒド4モル及びクロロホルム1500gを混合した。この混合物を攪拌下60℃に加熱し、クロロホルムが環流し始めてから10時間反応を行った。反応終了後、反応混合物を分液ロートに移し、1規定水酸化ナトリウム水溶液により洗浄し、その後イオン交換水により水洗した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥した後、ロータリーエバポレーターによりクロロホルムを留去して、前記式(1)におけるRがジメチリデントリシクロデカン基である多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物を得た。GPCによる分子量の測定では、標準ポリスチレン換算で重量平均分子量は4,600であった。
それ以降の操作は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
【実施例8】
【0088】
2,5(6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン 1モル(2,5(6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタンは三井化学から「NBDA」の製品名で販売されているものを使用した)、ビスフェノールA1モル、パラホルムアルデヒド4モル及びクロロホルム1500gを混合した。この混合物を攪拌下60℃に加熱し、クロロホルムが環流し始めてから10時間反応を行った。反応終了後、反応混合物を分液ロートに移し、1規定水酸化ナトリウム水溶液により洗浄し、その後イオン交換水により水洗した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムにより乾燥した後、ロータリーエバポレーターによりクロロホルムを留去して、前記式(1)におけるRがジメチリデンノルボルネン基である多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物を得た。GPCによる分子量の測定では、標準ポリスチレン換算で重量平均分子量は4,900であった。
それ以降の操作は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
【0089】
実施例1〜4の評価結果を表1に示し、実施例5〜8の評価結果を表2に示す。
【表1】

【0090】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、誘電率及び誘電正接が低く、且つ、低線膨張率を有する繊維複合体、及び、その製造方法として、産業上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2又は多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物の開環重合体中に、コロイダルシリカが繊維状に形成されている繊維複合体。
【請求項2】
上記2官能ジヒドロベンゾキサジン化合物が下記の分子構造(1)で示される、請求項1記載の繊維複合体。
【化1】

(式中、Rは炭素数2以上の直鎖状アルキレン基又はその水素がアルキル置換された分岐状アルキレン基、或いは脂環式構造を有する炭化水素基を示し、べンゼン環の水素はアルキル基又はアルコキシ基で置換されていてもよい。また、Rは、ジフェニルエーテル基であってもよい。)
【請求項3】
上記多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物が下記の分子構造(I)で示される、請求項1記載の繊維複合体。
【化2】

〔式(I)において、
Ar1は、4価の芳香族基を示し、
1は、脂肪族または脂環式構造を有する炭化水素基であり、
nは、2〜500の整数を示す。〕
【請求項4】
前記2官能ジヒドロベンゾキサジン化合物である前記分子構造(1)中のRが、下記(i)で示される基である、請求項2に記載の繊維複合体。
【化3】

〔式中、*印は前記式(1)におけるNへの結合部位を示す。また、シス−トランス異性体を含む。〕
【請求項5】
前記多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物である前記分子構造(I)中のR1が、下記(i)で示される基である、請求項3に記載の繊維複合体。
【化4】

〔式中、*印は前記式(I)におけるNへの結合部位を示す。また、シス−トランス異性体を含む。〕
【請求項6】
23℃、100MHz及び1GHzにおける誘電率が2.0〜3.2であり、誘電正接が10-4〜6.0×10-3であり、且つ、熱線膨張率が、2.0×10-5〜4.0×10-5である、請求項1〜5の何れかに記載の繊維複合体。
【請求項7】
マトリクスとして前記2又は多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物の開環重合体以外に、誘電率が2.5以下の樹脂を含有する、請求項1〜6の何れかに記載の繊維複合体。
【請求項8】
繊維シートに、コロイダルシリカ溶液を含浸させ、乾燥させる工程、2又は多官能ジヒドロベンゾキサジン化合物を含浸させる工程、及び全体を加圧下に加熱一体化させる工程を含む、繊維複合体の製造方法。
【請求項9】
前記繊維シートが、ポリエチレン樹脂を含む、請求項8記載の繊維複合体の製造方法。

【公開番号】特開2007−169587(P2007−169587A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200814(P2006−200814)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】