説明

美白用皮膚外用剤

【課題】 日焼けや生理不順等複数の原因に由来して発生する色黒、肌質の異常、しみ等の改善に優れた美白用皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【解決手段】
(1)下記の(A)〜(E)を含有することを特徴とする美白用皮膚外用剤。
(A)チロシナーゼ活性阻害作用を有するソウハクヒ抽出物
(B)メラニン合成抑制剤
(C)活性酸素消去剤
(D)エストロゲン様作用を有するカッコン抽出物
(E)ヒアルロニダーゼ阻害作用を有するアセチルチロシン
(2)前記(B)のメラニン合成抑制剤として、特にサンザシ抽出物、セイヨウボダイジュ抽出物、クロレラ抽出物から選ばれる1種以上を用い、(C)の活性酸素消去剤として、特にワレモコウ抽出物、ボタンピ抽出物、オリーブ葉抽出物、茶抽出物から選ばれる1種以上を用いる美白用皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チロシナーゼ活性阻害剤、メラニン合成阻害剤、活性酸素消去剤、エストロゲン様作用剤及びヒアルロニダーゼ阻害剤を含有する美白用皮膚外用剤に関する。さらに詳しくは、チロシナーゼ活性阻害作用を有するソウハクヒ抽出物、メラニン合成抑制剤、活性酸素消去剤、エストロゲン様作用を有するカッコン抽出物及びヒアルロニダーゼ阻害作用を有するアセチルチロシンを配合した、皮膚美白効果が著しく改良され、日焼け後の肌質改善に優れ、高いしみ改善効果を持つ美白用皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚におけるメラニン色素の役割は、紫外線による皮膚障害を緩和することにあるが、局所的な色素沈着、いわゆるシミ等は過剰にメラニン合成が亢進しており、美容上大きな問題であり、これらを制御できる美白剤は極めてニーズが高い。皮膚におけるメラニン生成及び代謝機構から、美白薬剤の作用機序として、メラノサイト内のメラニン生成抑制、既成メラニンの還元、表皮内メラニン排出促進、メラノサイトに対する選択的毒性が考えられる。その中で、美白化粧品にはメラノサイトに対する緩和性から、アルブチン、ビタミンC及びその誘導体、エラグ酸、ルシノール、カモミラETなどが配合されている。メラニン生成抑制剤の評価方としては、in vitroの評価としては、チロシナーゼ活性阻害作用、B16メラノーマ細胞を用いたメラニン合成阻害が検討されてきた(非特許文献1、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7参照)。
【0003】
また、活性酸素による色素沈着に対する係りも研究されてきており、活性酸素の中で最も安定であるH2O2がメラノーマ細胞のチロシナーゼのレベルを上昇させる。この作用はH2O2に特異なものである。また、メラニン生成の律速段階であるチロシナーゼによるチロシンのDOPAへのhydroxylation及びドーパキノンへの酸化過程において活性酸素が関与するなどの報告がある(非特許文献2)。このようなことから、これまで活性酸素から皮膚を守る化粧料が開発されており、特に天然物から活性酸素消去剤の開発が行なわれてきた(非特許文献2、特許文献8、特許文献9参照)。
【0004】
一方、ストレス社会である現代では、20歳代、30歳代女性にストレスによる生理不順が増加しており、これに伴う皮膚障害の一つとして生理不順由来のしみが問題となっている。これらは、一般的な日焼けによるしみや日焼けによる肌質の異常と複合的な症状を呈しており、対応化粧品の開発が望まれている。
【0005】
しかしながら、これまで開発されている多くは、個々の有用性、皮膚外用剤への配合検討が主であり、複合原因による症状に対する有効性、安全性、コスト性等の面において問題があり、未だ充分に満足のいくものではなかった。以下に従来の公知文献を挙げる。
【0006】
【非特許文献1】武田ら監修、化粧品の有用性、薬事日報社、144−161、2001
【非特許文献2】正木仁,FRAGRANCE JOURNAL,Vol.32,No.4,2004,26−32
【特許文献1】特開平8−48621
【特許文献2】特開平8−283143
【特許文献3】特開平9−315928
【特許文献4】特開2000−109476
【特許文献5】特開2001−2558
【特許文献6】特開2002−114626
【特許文献7】特開2003−104835
【特許文献8】特開2004−168732
【特許文献9】特開2004−238310
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、日焼けや生理不順等複数の原因に由来して発生する色黒、肌質の異常、しみ等の改善に優れた美白用皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以上のような現状に鑑み、真に優れた美白効果を有する皮膚外用剤を得るべく鋭意研究を重ねた結果、(A)高いチロシナーゼ活性阻害作用を有するソウハクヒ抽出物、(B)メラニン合成抑制作用のあるサンザシ抽出物、セイヨウボダイジュ抽出物、クロレラ抽出物から選ばれる1種以上の植物抽出物、(C)活性酸素消去作用のあるワレモコウ抽出物、ボタンピ抽出物、オリーブ葉抽出物から選ばれる1種以上の植物抽出物、(D)エストロゲン様作用のあるカッコン抽出物及び(E)抗炎症作用のあるアセチルチロシンを併用した皮膚外用剤に、優れた美白効果及び日焼け後の肌質改善効果、しみ改善効果を高める相乗効果を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本願発明は下記の請求項により構成されている。
請求項1: 下記の(A)〜(E)を含有することを特徴とする美白用皮膚外用剤。
(A)チロシナーゼ活性阻害作用を有するソウハクヒ抽出物、
(B)メラニン合成抑制剤
(C)活性酸素消去剤
(D)エストロゲン様作用を有するカッコン抽出物
(E)ヒアルロニダーゼ阻害作用を有するアセチルチロシン
請求項2: メラニン合成抑制剤が、サンザシ抽出物、セイヨウボダイジュ抽出物、クロレラ抽出物、から選ばれる1種以上の植物抽出物である請求項1の美白用皮膚外用剤。
請求項3: 活性酸素消去剤が、ワレモコウ抽出物、ボタンピ抽出物、オリーブ葉抽出物、茶抽出物から選ばれる1種以上の植物抽出物である請求項1の美白用皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0010】
本願発明に係る美白用皮膚外用剤は以上のように構成したから、(A)チロシナーゼ活性阻害作用を有するソウハクヒ抽出物、(B)メラニン合成抑制剤(例:サンザシ抽出物、セイヨウボダイジュ抽出物、クロレラ抽出物等から選ばれる1種以上の植物抽出物)、(C)活性酸素消去剤(例:ワレモコウ抽出物、ボタンピ抽出物、オリーブ葉抽出物、茶抽出物等から選ばれる1種以上の植物抽出物)、(D)エストロゲン様作用のあるカッコン抽出物、及び(E)ヒアルロニダーゼ阻害作用を有するアセチルチロシン等の各成分の相乗作用により、優れた美白効果及び日焼け後の肌質改善効果、しみ改善効果を有する安全性の高い美白用皮膚外用剤が得られるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の必須構成成分の一つであるソウハクヒとは、クワ科(Moraceae)クワ(Morus)マグワ(Morus alba L.)の根皮で、このマグワは東アジアで広く栽培されている。ソウハクヒ抽出物にチロシナーゼ活性阻害作用のあることは、広く知られている。本発明で用いるソウハクヒ抽出物は、通常チロシナーゼ活性阻害作用を高めたものを使用するのが好ましい。
【0012】
本発明において用いるメラニン生成抑制剤は、既知のメラニン合成抑制剤で良いが、スクリーニングにより確認した結果、特に、サンザシ抽出物、セイヨウボダイジュ抽出物、クロレラ抽出物が好ましい。これらを1種又は2種以上の組み合わせで使用することもできる。
【0013】
本発明において用いるサンザシとは、バラ(Rosaceae)サンザシ属(Crataegus)サンザシ(Crataegus cuneata Sieb.et Zucc.)の果実である。
【0014】
本発明において用いるセイヨウボダイジュとは、シナノキ科(Tiliaceae)シナノキ属(Tilia)のTilia cordata Mill.、Tilia platyphyllos Scop.、Tilia europaea Linneの花又は/及び葉である。
【0015】
本発明において用いるクロレラとは、緑藻網クロロコックム目クロレラ属(Chlorella)クロレラ(Chlorella vulgaris)で、単細胞藻である。
【0016】
本発明において用いる活性酸素消去剤は、一般に広く使用されている活性酸素消去作用が期待されるものの中で、効果及び安全性の高い、ワレモコウ抽出物、ボタンピ抽出物、オリーブ葉抽出物、茶抽出物が主たるものである。
【0017】
本発明において用いるワレモコウとは、バラ科(Rosaceae)ワレモコウ属(Sanguisorba)ワレモコウ(Sanguisorba officinalis)の根茎である。
【0018】
本発明において用いるボタンピとは、ボタン科(Paeoniaceae)ボタン属(Paeonia)、ボタン(Paeonia suffruticosa)の根皮である。
【0019】
本発明において用いるオリーブとは、モクセイ科(Oleaceae)、オリーブ属(Olea)、オリーブ(Olea europaea)の葉である。
【0020】
本発明において用いる茶類としては、緑茶(煎茶、焙じ茶、玉露、かぶせ茶、てん茶等)、ウーロン茶,紅茶等の不発酵茶、半発酵茶、発酵茶を挙げることができる。
【0021】
本発明で使用するエストローゲン様作用剤は、一般に女性ホルモン様作用を有するとして広く使用されているもので良く、ダイズ抽出物、カッコン抽出物、プエラリア・ミリィフィカ抽出物、レッドクローバー抽出物等があるが、イソフラボノイド含有量の高いカッコン抽出物を用いる。
【0022】
本発明において用いるカッコンとは、マメ科(Leguminosae)クズ属(Pueraria)、クズ(Pueraria lobata)の根である。カッコン抽出物は、プエラリン、ダイゼインなどのイソフラボノイドを含有し、エストローゲン様作用を有することは、広く知られている。通常カラム処理して、イソフラボン濃度を高めた抽出物を使用する。
【0023】
本発明において用いるアセチルチロシンは、化粧品に一般に皮膚コンディショニング剤として使用されているものであるが、ヒアルロニダーゼ阻害作用のあることは、これまで知られていない。
【0024】
本発明において用いる抽出物の調製方法について、以下に例をあげて詳述する(以下の方法に限られるものではない。)。
【0025】
(製造例1)ソウハクヒ抽出物の製法
日局ソウハクヒ300gに30vol%エタノール溶液3000gを加え、50℃にて8時間抽出した後、ろ過し、ろ液を減圧下約500gまで濃縮する。濃縮液を合成吸着体ダイヤイオンHP−20を充填したカラムに通液する。30vol%エタノール溶液にて洗浄後、50vol%エタノール溶液にて溶出し、溶出液を減圧乾固した後、50%1,3−ブチレングリコール300gを加え溶解した後、ろ過して、ソウハクヒ抽出物を製する。製品の蒸発残留物は、3.12%であった。
【0026】
(製造例2)サンザシ抽出物の製法
サンザシ100gに30vol%エタノール溶液2000gを加え、室温にて3日間抽出する。これをろ過し、ろ液を200gまで濃縮した後、濃縮液を合成吸着体ダイヤイオンHP−20を充填したカラムに通液する。10vol%エタノール溶液にて洗浄後、50vol%エタノール溶液にて溶出し、溶出液を濃縮乾固する。乾固物に50%1,3−ブチレングリコール500gを加え溶解した後、ろ過して、サンザシ抽出物を製する。製品の蒸発残留物は、1.54%であった。
【0027】
(製造例3)セイヨウボダイジュ抽出物
セイヨウボイジュ100gに50vol%エタノール溶液2000gを加え、室温にて3日間抽出する。これをろ過し、ろ液を200gまで濃縮した後、濃縮液を合成吸着体ダイヤイオンHP−20を充填したカラムに通液する。10vol%エタノール溶液にて洗浄後、50vol%エタノール溶液にて溶出し、溶出液を濃縮乾固する。乾固物に50%1,3−ブチレングリコール500gを加え溶解した後、ろ過して、セイヨウボダイジュ抽出物を製する。製品の蒸発残留物は、1.74%であった。
【0028】
(製造例4)クロレラ抽出物
クロレラ100gに精製水3000gを加え、70℃にて5時間抽出し、冷後、ろ過する。ろ液を減圧下、1000gまで濃縮する。濃縮液に活性炭を加え、50℃にて、脱色脱臭する。ろ過後、ろ液に30%1,3−ブチレングリコール1000gを加え、更にろ過し、クロレラ抽出物を製する。製品の蒸発残留物は、2.8%であった。
【0029】
(製造例5)ワレモコウ抽出物の製法
ワレモコウ100gに50vol%エタノール溶液1000gを加え、室温にて3日間抽出する。これをろ過し、ろ液を減圧下、濃縮乾固する。乾固物を30%1,3−ブチレングリコール1000gに溶解した後、ろ過してワレモコウ抽出物を製する。製品の蒸発残留物は、1.74%であった。
【0030】
(製造例6)ボタンピ抽出物の製法
ボタンピ100gに50%エタノール溶液2000gを加え、室温にて3日間抽出する。これをろ過し、ろ液を減圧下、濃縮乾固する。乾固物を30%1,3−ブチレングリコール1000gに溶解した後、ろ過してボタンピ抽出物を製する。製品の蒸発残留物は、1.13%であった。
【0031】
(製造例7)オリーブ葉抽出物の製法
オリーブ葉100gに50vol%エタノール溶液2000gを加え、50℃にて8時間抽出する。これをろ過し、ろ液を減圧下、濃縮乾固する。乾固物を30%1,3−ブチレングリコール1000gに溶解した後、ろ過してオリーブ葉抽出物を製する。製品の蒸発残留物は、1.52%であった。
【0032】
(製造例8)茶抽出物の製造法
緑茶100gに50vol%エタノール2000gを加え、室温にて3日間抽出後、これをろ過する。ろ液を減圧下、濃縮乾固する。乾固物を30%1,3−ブチレングリコール1000gに溶解した後ろ過して茶葉抽出物を得る。製品の蒸発残留物は、1.95%であった。
【0033】
(製造例9)カッコン抽出物の製造
カッコン100gに無水エタノール2000mLを加え、室温で5日間抽出する。これをろ過し、ろ液を減圧下濃縮乾固し、50%1,3−ブチレングリコール溶液200gを加え溶解した後、ろ過してカッコン抽出物を製する。製品の蒸発残留物は、1.53%であった。
【0034】
つぎに、上記製法にて製造した抽出物及びアセチルチロシンの個々の効果について、参考例として例示する。
【0035】
(参考例1)ソウハクヒ抽出物のチロシナーゼ活性阻害作用
試験試料は、製造例1で50%1,3−ブチレングリコール溶液に溶解前の乾固物を用い、精製水にて希釈し、0.01mg/mLの濃度とした。10%FBS(牛胎児血清;日冷より購入)及びテオフィリン(0.09mg/mL)含有MEM(Gibco社)を用い、マウス由来B16メラノーマ培養細胞を96穴プレートに5×10cells/wellの密度で播種し、37℃、5%COにて24時間培養した後、試験試料の各濃度を添加し、37℃、5%COにてさらに3日間培養した。チロシナーゼ活性の測定前にウエル中の培地は除去し、PBS100μLで2回洗浄した。各ウエル中に45μLk1%トラインX(ローム・アンド・ハウス社)を含むPBSを加え、1分間プレートを振動させ、細胞膜を破壊し、マイクロプレートリーダーで、波長475nmの吸光度を測定し、これを0分時の吸光度とした。その後、すばやく5μLの10mMのL-DOPA溶液を加えて、37℃にて60分間インキュベートした。1分間プレートを振動させた後、同様に吸光度を測定し、60分時の吸光度とした。試験試料を添加していない(コントロール)場合の0分時と60分時の吸光度差に対する試験試料の吸光度差の割合をチロシナーゼ活性阻害率とした。チロシナーゼ活性阻害率は、78.6%であった。
なお、前記製造例1のカラム処理を行わないソウハクヒ抽出物とカラム処理したソウハクヒ抽出物では、約10倍の阻害活性の差が現われた。
【0036】
(参考例2)メラニン生成抑制効果試験
製造例2〜4の各抽出物をPBS(−)にて希釈して固形分換算で、0.05mg/mLとしたものを試験試料とした。マウス由来B16メラノーマ細胞を5%FBSを含むDMEM培地を用いて、35mMのシャーレに5×10cellずつ播種し、5%COにて37℃24時間培養した。24時間後、シャーレの培地を除去し、5%FBSを含むDMEM培地2mLと試験試料20μL加え、さらに37℃にて3日間培養した。培地を除去し、PBS(−)で2回洗浄後、トリプシン−EDTAを用いて細胞を剥離し、1.5mLチュウブに入れ、25℃、12000回転、10分間遠心操作し、細胞ペレットを作成した。コントロールには、20μLのPBS(−)を用いた。評価は、下記の評価基準にて行なった。
【0037】
<評価基準>
細胞ペレットの色調
0−コントロールと同様な黒色
1−コントロールに比べわずかに薄い黒色
2−コントロールに比べて明瞭に薄い黒色
3−灰色に近い黒色
4−灰色
5−白色
細胞ペレットの量
1−コントロールに比べ明瞭に少ない。
2−コントロールに比べわずかに少ない。
3−コントロールと同量
試験結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1に示したように、抽出物にはメラニン生成抑制効果が見られ、細胞毒性も少なかった。
【0040】
(参考例3)
活性酸素消去能の測定は、製造例5〜8の抽出物を用いて、SOD様活性及びDPPHラジカル消去能を測定した。SOD様活性は、NBT法(XOD系と組み合わせたBeauchampsらの方法 Anal.Bioche.,44、279〜287、1971)に従った。DPPHラジカル(ジフェニルピクリルヒドラジルラジカル)消去能の測定は、DPPHラジカル(Sigma社)をエタノールに溶解し0.1mM溶液とし、0.1mMDPPHラジカル溶液3mLを試験管にとり、各濃度に精製水にて希釈した試験溶液0.5mLを加え、室温で10分間放置後、波長517nmで吸光度を測定する方法で行った。試験結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
(参考例4)
エストロゲン様作用の測定は、製造例9のカッコン抽出物についてエストロゲン様作用活性をエストロゲン依存性細胞の増殖に対する影響を調べる方法(In vitro cell.Dev.Biol.28A,595−602,1992)で測定した。ヒト乳がん細胞由来のMCF−7細胞を5%FBS(チャコール・デキストラン処理)、1mMピルビン酸ナトリウムを含有するEagles MEM(フェノールレッド除去)を用いて、5×10 cell/mLの密度で浮遊させた細胞懸濁液0.1mLを96穴マイクロカルチャープレートに播種し、37℃、5%CO下で24時間培養した。その後各濃度の試料をカルチャープレートに添加し、6日間培養を行なった。培養後MTT還元法にて細胞濃度の測定を行い、エストロゲン様作用とした。本発明で使用するカッコン抽出物を0.5%添加した結果は、増殖率142.3%であった。
【0043】
(参考例5)ヒアルロニダーゼ活性阻害作用の測定
ヒアルロニダーゼは、結合組織に分布するヒアルロン酸の加水分解酵素であり、炎症時において活性化され、結合組織のマトリックスを破壊し、炎症系の細胞及び血管の透過性を高める役割を演じると考えられている。また起炎酵素として知られており、抗炎症剤や抗アレルギー剤により阻害されることも知られている。従って、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用は、抗アレルギー活性の一つとされている。
【0044】
(試験方法)
アセチルチロシンを0.1M酢酸緩衝液(pH3.5に調製)にて各濃度に希釈した溶液0.2mLにヒアルロニダーゼ(Sigma社製,TypeIV-S,最終酵素活性を400NFunit/mL)0.1mLを加え、37℃にて20分間で放置後、活性化剤としてcompound48/80(Sigma社製)の酢酸緩衝液溶液(0.1mg/mL)0.2mLを加え、更に37℃にて20分間放置する。これにヒアルロン酸カリウム(和光純薬工業製)溶液(最終濃度0.4mg/mL)0.5mLを加え、37℃にて40分間放置する。次に、氷上にて0.4N水酸化ナトリウム溶液0.2mLを加えて反応を停止させた後、ホウ酸溶液(ホウ酸4.95gに水50mLを加え、1N水酸化ナトリウム溶液にてpH9.1に調製した後、水を加えて100mLとする)0.2mLを加え、混和後沸騰水浴中にて3分間加熱し酵素を失活させる。次に氷上にて室温まで冷却し、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド試薬(和光純薬工業製、10gに10N塩酸溶液12.5mL、酢酸87.5mLを混合溶解し、使用直前に酢酸にて10倍に希釈する)6mLを加え、37℃にて20分間放置した後、585nmにて吸光度を測定する。なお、試料溶液の代わりに酢酸緩衝液を入れたものを対照とし、各資料溶液、対照について酵素を入れないものブランクとし、阻害活性率を求め、各濃度より50%阻害活性濃度(IC50)を求めた。IC50は、3.62mg/mLであった。
【0045】
本発明の必須成分であるソウハクヒ抽出物、メラニン生成抑制剤、活性酸素消去剤、カッコン抽出物及びアセチルチロシンの配合量は、特に規定するものではない。配合する製品の種類、性状、品質、期待する効果の程度により異なるが、乾燥固形物に換算して好ましくは、0.0001%〜10.0%、特に0.001%〜1.0%が効果の面から好ましい。
【0046】
本発明の皮膚外用剤は、上記必須成分以外に通常の皮膚外用剤で使用される任意の成分を含有することができる。例えば、油分、湿潤剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、界面活性剤、防腐剤、保湿剤、香料、水、アルコール、増粘剤の他、皮脂分泌調整剤、消炎剤、収斂剤、抗酸化剤、抗アレルギー剤等、さらに生理活性作用を有する動植物抽出物及びこれらの抽出分画、精製物を必要に応じて適宜配合し、剤型に応じて常法により製造することができる。
【0047】
本発明の皮膚外用剤の剤型は、任意であり、化粧水などの可溶化系、乳液、クリームなどの乳化系、または、軟膏、分散液、粉末系などの従来皮膚外用剤に用いられる何れの剤型でもかまわない。また、一般皮膚化粧料に限定されるものではなく、医薬品、医薬部外品、薬用化粧料等を包含するものである。用途も、化粧水、乳液、クリーム、パック等の基礎化粧料、ファンデーション等のメークアップ化粧料、シャンプー、リンス、石けん、ボディーシャンプーなどのトイレタリー製品、浴用剤等を問わない。
【0048】
以下に、実施例を挙げて本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)美白効果試験
夏期の太陽光に4時間(1日2時間2日間)晒された20〜25歳の健常な女性20名を被験者とし、左右上腕内側部皮膚を対象として太陽光に晒された日の5日後より、各皮膚外用剤を朝夕1回ずつ2週間塗布した。皮膚外用剤の処方は下記に示す。
【0050】
(実施例2、3)美白効果用皮膚外用剤
下記成分(1)〜(10)、別に下記成分(11)〜(16)を75℃に加温溶解しそれぞれA液及びB液とする。A液にB液を加えて乳化し、攪拌しながら冷却し、クリームを調製した。薬剤で示した抽出物は、製造例で製造したものを使用し、コントロールには、50%1,3−ブチレングリコール溶液を使用した。
(成分) (重量%)
(1)ホホバ油 3.0%
(2)スクワラン 2.0%
(3)メチルポリシロキサン 0.5%
(4)ステアリルアルコール 0.5%
(5)セチルアルコール 0.5%
(6)トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 12.5%
(7)モノステアリン酸グリセリル 5.0%
(8)モノステアリン酸ジグリセリル 1.5%
(9)モノステアリン酸デカグリセリル 3.0%
(10)防腐剤 適量
(11)キサンタンガム 0.1%
(12)グリセリン 1.0%
(13)1,3−ブチレングリコール 3.0%
(14)防腐剤 適量
(15)薬剤(表3記載) 5.0%
(16)精製水 残余
【0051】
【表3】

【0052】
使用後の淡色化効果を下記の判定基準に基づいて判定した。結果を表4に記す。
【0053】
(判定基準)
有効 :コントロールに比較して明らかな淡色化効果が認められた。
やや有効:コントロールに比較して淡色化効果が認められた。
効果なし:コントロールとほぼ同程度であった。
【0054】
また、日焼け後の肌質の改善効果を下記の判定基準に基づいて判定した。結果を表4に記す。
【0055】
(判定基準)
有効 :コントロールに比較して明らかな肌質の改善効果が認められた。
やや有効:コントロールに比較して明らかな肌質の改善効果が認められた。
効果なし:コントロールとほぼ同程度であった。
【0056】
【表4】

【0057】
表4から明らかなように、淡色化効果に関しては、比較例、実施例共に効果の差はなく、有効な結果を示した。チロシナーゼ活性阻害作用効果のあるソウハクヒ抽出物とメラニン合成抑制剤であるサンザシ抽出物、セイヨウボダイジュ抽出物、クロレラ抽出物の組み合わせにて、有効な淡色化効果があることが確認された。一方、日焼け後の肌質の改善効果では、活性酸素消去剤を加えた組み合わせ、さらにエストロゲン様作用のあるカッコン抽出物を加えた組み合わせ、さらに本発明のアセチルチロシンを組み合わせたクリームに明らかな差異があることが示された。本発明の皮膚外用剤に日焼けの淡色効果及び肌質の改善効果があることが確認された。
【0058】
(実施例4)しみの改善効果試験
25歳〜39歳のしみに悩む女性60名を被験者とし、各10名ずつ実施例1,2及び比較例1〜4のクリームを朝夕2回、洗顔後に顔面皮膚に連日塗布し、3ケ月間使用後及び6ケ月間使用した後、しみに対する改善効果について調べた。使用期間中に皮膚の異常を訴えた者はいなかった。効果は、顔面のしみの状態を視覚評価した。結果を表5に示す。
【0059】
(判定基準)
有効 :しみが目立たなくなった。
やや有効:しみが以前より目立たなくなった。
効果なし:変化なし。
【0060】
【表5】

【0061】
表5より明らかなように、本発明の組み合わせの皮膚外用剤にしみ改善の相乗効果をみいだすことができた。
【0062】
さらに、本発明による美白用皮膚外用剤の実施例を示す。いずれの実施例も美白効果を有し、安全性の高い皮膚外用剤であった。
【0063】
(実施例5)化粧水
下記成分(9)〜(12)を混合溶解させA液とし、これとは別に下記成分(1)〜(8)及び(13)を混合溶解させてB液とし、A液とB液を均等に混合し、化粧水を調製した。
(成分) (重量%)
(1)クインスシードエキス 5.0%
(2)グリセリン 3.0%
(3)1,3−ブチレングリコール 2.0%
(4)ソウハクヒ抽出物(製造例1) 1.0%
(5)サンザシ抽出物(製造例2) 1.0%
(6)ボタンピ抽出物(製造例6) 1.0%
(7)カッコン抽出物(製造例9) 1.0%
(8)アセチルチロシン 0.01%
(9)ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル 1.2%
(10)エチルアルコール 5.0%
(11)防腐剤 適量
(12)香料 適量
(13)精製水 残余
【0064】
(実施例6)乳液
下記成分(1)〜(10)、別に(11)〜(15)及び(17)を75℃で加熱溶解させてそれぞれA液及びB液とし、A液にB液を加えて乳化し、攪拌しながら50℃まで冷却し、成分(16)を加え、乳液を調製した。
(成分) (重量%)
(1)ホホバ油 1.0%
(2)スクワラン 2.0%
(3)ベヘニルアルコール 1.0%
(4)トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 2.0%
(5)テトラグリセリン縮合リシノレイン酸 0.1%
(6)モノオレイン酸プロピレングリコール 0.5%
(7)モノステアリン酸グリセリン 1.0%
(8)モノミリスチン酸ヘキサグリセリル 1.0%
(9)モノミリスチン酸デカグリセリル 0.5%
(10)防腐剤 適量
(11)ソウハクヒ抽出物(製造例1) 1.0%
(12)セイヨウボダイジュ抽出物(製造例3) 1.0%
(13)オリーブ葉抽出物(製造例7) 1.0%
(14)カッコン抽出物(製造例9) 1.0%
(15)アセチルチロシン 0.05%
(16)香料 適量
(17)精製水 残余
【0065】
(実施例7)石けん
石けん製造の定法により下記成分を混合し製した。
(成分) (重量%)
(1)石けん素地 53.2%
(2)スクロール 19.4%
(3)ホホバ油 0.25%
(4)ソウハクヒ.抽出物(製造例1) 1.5%
(5)クロレラ抽出物(製造例4) 0.5%
(6)ボタンピ抽出物(製造例6) 0.5%
(7)カッコン抽出物(製造例9) 0.5%
(8)アセチルチロシン 0.1%
(9)濃グリセリン 6.5%
(10)ヒドロキシエタンジホスホン酸 0.15%
(11)常水 残余
【0066】
(実施例8)クレンジングジェル
下記成分(1)〜(3)、別に(4)〜(11)及び(13)を70℃に加熱溶解させてそれぞれA液及びB液とし、A液にB液を加えて均一になるまで攪拌する。攪拌しながら50℃まで冷却し、成分(12)を加えてクレンジングジェルを製した。
(成分) (重量%)
(1)モノミリスチン酸ヘキサグリセリル 20.0%
(2)流動パラフィン 58.8%
(3)防腐剤 適量
(4)ソウハクヒ抽出物(製造例1) 1.5%
(5)セイヨウボダイジュ抽出物(製造例3) 0.5%
(6)ワレモコウ抽出物(製造例5) 0.5%
(7)カッコン抽出物(製造例9) 0.5%
(8)アセチルチロシン 0.1%
(9)濃グリセリン 5.9%
(10)アスコルビン酸 0.5%
(11)ソルビトール 5.0%
(12)香料 適量
(13)精製水 残余


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(E)を含有することを特徴とする美白用皮膚外用剤。
(A)チロシナーゼ活性阻害作用を有するソウハクヒ抽出物
(B)メラニン合成抑制剤
(C)活性酸素消去剤
(D)エストロゲン様作用を有するカッコン抽出物
(E)ヒアルロニダーゼ阻害作用を有するアセチルチロシン
【請求項2】
メラニン合成抑制剤が、サンザシ抽出物、セイヨウボダイジュ抽出物、クロレラ抽出物、から選ばれる1種以上の植物抽出物である請求項1の美白用皮膚外用剤。
【請求項3】
活性酸素消去剤が、ワレモコウ抽出物、ボタンピ抽出物、オリーブ葉抽出物、茶抽出物から選ばれる1種以上の植物抽出物である請求項1の美白用皮膚外用剤。


【公開番号】特開2006−241009(P2006−241009A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55370(P2005−55370)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(599098518)株式会社ディーエイチシー (31)
【Fターム(参考)】