説明

翼及びその製造方法

【課題】セラミックス基複合材料製のタービン静翼の剛性を確保した上で、タービン静翼の肉厚を薄くして、タービン静翼の軽量化を十分に促進する。
【解決手段】外層翼15の内面に中空状の内層翼17が一体的に設けられ、内層翼17は外層翼15の前縁側内面15aから後縁側内面15tにかけて延びてあって、内層翼17の背側外面17dは外層翼15の背側内面15dに一体的に接合され、内層翼17の腹側外面17vは外層翼15の腹側内面15vに一体的に接合され、内層翼17は、隣接するように組合せた中空状の複数の翼分割部材19,21により分割して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェットエンジン等のガスタービンエンジンのタービン又は圧縮機に用いられるタービン翼等の翼及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジェットエンジンのタービンに用いられるタービン翼は、通常、ニッケル合金等の耐熱合金により構成されている。一方、近年、ニッケル合金よりも耐熱性に優れかつ比重の小さいセラミックス基複合材料(CMC)等の複合材料が注目されており、セラミックス基複合材料を構成材料とするタービン翼(セラミックス基複合材料製のタービン翼)も開発されている(特許文献1及び特許文献2参照)。そして、セラミックス基複合材料製のタービン翼は、次のような手法によって製造されている。
【0003】
即ち、セラミックス基複合材料製のタービン翼の内面形状に対応した表面形状を有するマンドレルを用い、セラミックス繊維(セラミックス繊維の繊維束)をマンドレルの表面に沿って2次元的及び/又は3次元的に織り込むことにより、マンドレルの表面にセラミックス繊維により構成された織物成形体を形成する。続いて、気相含浸法(CVI)、液相含浸焼成法(PIP)等の含浸法に基づいて織物成形体にセラミックスマトリックスを含浸させる。そして、含浸済みの織物成形体に対して機械加工等を施すことにより、セラミックス基複合材料製のタービン翼を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−206779号公報
【特許文献2】特開2003−148105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、耐熱合金を構成材料とするタービン翼(耐熱合金製のタービン翼)はロストワックス精密鋳造法によって製造され、形状の自由度が高いものの、セラミックス基複合材料製のタービン翼は形状の自由度が低く、タービン翼の内部に補強リブ等を形成することが容易でない。そのため、セラミックス基複合材料製のタービン翼の肉厚を厚くして、剛性を確保しなければならず、タービン翼の軽量化を十分に促進させることはできないという問題がある。
【0006】
なお、前述の問題は、ガスタービンエンジンのタービンに用いられる複合材料製のタービン翼だけでなく、ガスタービンの圧縮機に用いられる複合材料製の圧縮機翼についても生じるものである。
【0007】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成の翼及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の特徴は、ガスタービンエンジンのタービン又は圧縮機に用いられ、強化繊維とマトリックスとからなる複合材料を構成材料とする翼(複合材料製の翼)において、強化繊維とマトリックスとからなる複合材料により構成された中空状の外層翼(アウター翼)と、前記外層翼の内面に一体的に設けられ、強化繊維とマトリックスとからなる複合材料により構成され、前記外層翼の前縁側内面から後縁側内面にかけて延びてあって、背側外面が前記外層翼の背側内面に一体的に接合され、腹側外面が前記外層翼の腹側内面に一体的に接合された中空状の内層翼(インナー翼)と、を備え、前記内層翼は、隣接するように組合せた中空状の複数の翼分割部材(内層翼構成部材)により分割して構成されていることを要旨とする。
【0009】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、翼とは、タービン翼及び圧縮機翼を含む意であって、タービン翼とは、タービン静翼及びタービン動翼を含む意であって、圧縮機翼とは、圧縮機静翼及び圧縮機動翼を含む意である。
【0010】
第1の特徴によると、中空状の前記外層翼の内面に中空状の前記内層翼が一体的に設けられ、前記内層翼が隣接するように組合せた中空状の複数の前記翼分割部材により分割して構成されているため、複数の前記翼分割部材の隣接部分によって前記翼の内側に補強リブを形成することができる。
【0011】
本発明の第2の特徴は、第1の特徴から構成された翼(複合材料製の翼)を製造する方法において、各翼分割部材の内面形状に対応する表面形状を有したマンドレルを用い、各マンドレルの表面に強化繊維により構成された翼分割部材用織物成形体を形成する翼分割部材用織物形成工程(翼分割部材用織物成形工程)と、各翼分割部材用織物成形体にマトリックスを含浸させることにより、各翼分割部材用織物成形体を中空状の前記翼分割部材に仕上げる翼分割部材用含浸工程と、前記翼分割部材用含浸工程の途中又は終了後に、各マンドレルを各翼分割部材用織物成形体又は各翼分割部材から取外す取外し工程と、前記翼分割部材用織物形成工程、前記翼分割部材用含浸工程、及び前記取外し工程の終了後に、複数の前記翼分割部材を隣接するように組合せることにより、複数の前記翼分割部材からなる前記内層翼を形成する組合せ工程と、前記組合せ工程の終了後に、前記内層翼の表面に強化繊維により構成された外層翼用織物成形体を形成する外層翼用織物形成工程(外層翼用織物成形工程)と、前記外層翼用織物形成工程の終了後に、前記外層翼用織物成形体にマトリックスを含浸させることにより、前記外層翼用織物成形体を前記外層翼に仕上げる外層翼用含浸工程と、を備えたことを要旨とする。
【0012】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、翼の製造方法とは、タービン静翼の製造方法、タービン動翼の製造方法、圧縮機静翼の製造方法、及び圧縮機動翼の製造方法を含む意である。
【0013】
第2の特徴によると、中空状の複数の前記翼分割部材を隣接するように組合せることによって前記内層翼を形成し、前記内層翼の表面に強化繊維により構成された前記外層翼用織物成形体を形成しているため、複数の前記翼分割部材の隣接部分によって前記翼の内側に補強リブを形成することができる。
【0014】
本発明の第3の特徴は、第1の特徴から構成された翼(複合材料製の翼)を製造する方法において、各翼分割部材の内面形状に対応する表面形状を有したマンドレルを用い、各マンドレルの表面に強化繊維により構成された翼分割部材用織物成形体を形成する翼分割部材用織物形成工程(翼分割部材用織物成形工程)と、前記翼分割部材用織物形成工程の終了後に、複数の前記翼分割部材用織物成形体を隣接するように組合せることにより、複数の前記翼分割部材用織物成形体からなる内層翼用織物成形体を形成する組合せ工程と、前記組合せ工程の終了後に、前記内層翼用織物成形体の表面に強化繊維により構成された外層翼用織物成形体を形成する外層翼用織物形成工程(外層翼用織物成形工程)と、前記外層翼用織物形成工程の終了後に、前記外層翼用織物成形体及び前記内層翼用織物成形体にマトリックスを含浸させることにより、前記外層翼用織物成形体及び前記内層翼用織物成形体を前記外層翼及び前記内層翼にそれぞれ仕上げる含浸工程と、前記含浸工程の途中又は終了後に、各マンドレルを各分割部材用織物成形体又は各翼分割部材から取外す取外し工程と、を備えたことを要旨とする。
【0015】
第3の特徴によると、中空状の複数の前記翼分割部材用織物成形体を隣接するように組合せることによって前記内層翼用織物成形体を形成し、前記内層翼用織物成形体の表面に強化繊維により構成された前記外層翼用織物成形体を形成しているため、複数の前記翼分割部材の隣接部分によって前記翼の内側に補強リブを形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の前記翼分割部材の隣接部分によって複合材料製の前記翼の内側に前記補強リブを形成できるため、複合材料製の前記翼の剛性を確保した上で、前記翼の肉厚を薄くして、前記翼の軽量化を十分に促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図2におけるI-I線に沿った拡大断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るタービンステータセグメントの側面図であって、一部断面してある。
【図3】図3(a)(b)は、本発明の第2及び第3実施形態に係るタービン静翼の製造方法における翼分割部材用織物形成工程を説明する図である。
【図4】図4(a)(b)は、本発明の第2実施形態に係るタービン静翼の製造方法における翼分割部材用含浸工程を説明する図である。
【図5】図5(a)(b)は、本発明の第2実施形態に係るタービン静翼の製造方法における取外し工程を説明する図である。
【図6】図6(a)は、本発明の第2実施形態に係るタービン静翼の製造方法における組合せ工程を説明する図、図6(b)は、本発明の第2実施形態に係るタービン静翼の製造方法における外層翼用織物形成工程を説明する図である。
【図7】図7は、本発明の第2実施形態に係るタービン静翼の製造方法における外層翼用含浸工程を説明する図である。
【図8】図8(a)は、本発明の第3実施形態に係るタービン静翼の製造方法における組合せ工程を説明する図、図8(b)は、本発明の第3実施形態に係るタービン静翼の製造方法における外層翼用織物形成工程を説明する図である。
【図9】図9(a)は、本発明の第3実施形態に係るタービン静翼の製造方法における含浸工程を説明する図、図9(b)は、本発明の第3実施形態に係るタービン静翼の製造方法における取外し工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1及び図2を参照して説明する。なお、図面中、「FF」は、前方向(上流方向)、「FR」は、後方向(下流方向)、「In」は、径方向内側、「Out」は、径方向外側を指してある。
【0019】
図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態に係るタービンステータセグメント(タービンノズルセグメント)1は、ジェットエンジンのタービン(図示省略)に用いられるタービンステータ(タービンノズル、図示省略)を周方向に分割してなるものである。
【0020】
タービンステータセグメント1は、複数(1つのみ図示)のタービン静翼3を具備しており、各タービン静翼3は、セラミックスマトリックス(マトリックスの一例)とセラミックス繊維(強化繊維の一例)とからなるセラミックス基複合材料(複合材料の一例)を構成材料としている。なお、タービン静翼3の構成の詳細については、後述する。
【0021】
複数のタービン静翼3の外側端部(径方向外側の端部)には、円弧状のアウターバンド5が一体的に連結するように設けられており、このアウターバンド5は、ニッケル合金等の耐熱合金により構成されている。また、アウターバンド5の前側には、タービンのタービンケース(図示省略)の一部分に係止可能な円弧状のフロント爪7が形成されており、アウターバンド5の後側には、タービンケースの一部分に係止可能な円弧状のリア爪9が形成されている。なお、アウターバンド5が耐熱合金により構成される代わりに、セラミックス基複合材料、炭素基複合材料等の複合材料により構成されるようにしても構わない。
【0022】
複数のタービン静翼3の内側端部(径方向内側の端部)には、円弧状のインナーバンド11が一体的に連結するように設けられており、このインナーバンド11は、ニッケル合金等の耐熱合金により構成されている。また、インナーバンド11の内周面には、タービンのタービンケースに一体的に連結したステータ支持部材(図示省略)の嵌合溝(図示省略)に嵌合可能な円弧状の突出片13が形成されている。なお、インナーバンド11が耐熱合金により構成される代わりに、セラミックス基複合材料、炭素基複合材料等の複合材料により構成されるようにしても構わない。
【0023】
続いて、第1実施形態に係るタービン静翼3の構成の詳細について説明する。
【0024】
タービン静翼3は、中空状の外層翼(アウター翼)15を備えており、この外層翼15は、セラミックス繊維とセラミックスマトリックスとからなるセラミックス基複合材料により構成されている。なお、外層翼15の構成材料としての繊維をセラミックス繊維にする代わりに、炭素繊維、ガラス繊維、又はこれらの混合繊維(セラミックス繊維、炭素繊維、ガラス繊維のうちの少なくとも2種以上の混合繊維)としたり、外層翼15の構成材料としてのマトリックスをセラミックスマトリックスにする代わりに、炭素マトリックス、又はガラスマトリックスにしたりしても構わない。
【0025】
外層翼15の内面には、中空状の内層翼(インナー翼)17が一体的に設けられており、この内層翼17は、セラミックス繊維とセラミックスマトリックスとからなるセラミックス基複合材料により構成されている。また、内層翼17は、外層翼15の前縁側内面15aから後縁側内面15tにかけて延びてあって、内層翼17の背側外面17dは、外層翼15の背側内面15dに一体的に接合されており、内層翼17の腹側外面17vは、外層翼15の腹側内面15vに一体的に接合されている。なお、内層翼17の構成材料である繊維をセラミックス繊維とする代わりに、炭素繊維、ガラス繊維、又はこれらの混合繊維としたり、内層翼17の構成材料であるマトリックスをセラミックスマトリックスとする代わりに、炭素マトリックス、又はガラスマトリックスにしたりしても構わない。
【0026】
そして、内層翼17は、隣接するように組合せた中空状の一対(2つ)の翼分割部材(内層翼構成部材)19,21により分割して構成されている。なお、翼分割部材19,21の個数は、2つに限るものでなく、複数であれば構わない。
【0027】
タービン静翼3の前縁3a及び腹面3vには、一方の翼分割部材19の内部にフロントインサート(図示省略)を介して導入された冷却空気を噴射する複数の噴射孔23が形成されており、各噴射孔23は、外層翼15及び一方の翼分割部材19を連続して貫通してある。また、タービン静翼3の後縁3tには、他方の翼分割部材21の内部にリアインサート(図示省略)を介して導入された冷却空気を排出する複数の排出孔25が形成さており、各排出孔25は、外層翼15及び他方の翼分割部材21を連続して貫通してある。なお、冷却空気は、ジェットエンジンの圧縮機(図示省略)から抽気した圧縮空気である。
【0028】
続いて、本発明の第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0029】
中空状の外層翼15の内面に中空状の内層翼17が一体的に設けられ、内層翼17が隣接するように組合せた中空状の一対の翼分割部材19,21により分割して構成されているため、一対の翼分割部材19,21の隣接部分によってセラミックス基複合材料製のタービン静翼3の内側に補強リブRを簡単に形成することができる。
【0030】
従って、本発明の第1実施形態によれば、セラミックス基複合材料製のタービン静翼3の剛性を確保した上で、タービン静翼3の肉厚を薄くして、タービン静翼3の軽量化を十分に促進することができる。
【0031】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係るタービン静翼の製造方法について図3(a)(b)から図7(a)(b)を参照して説明する。
【0032】
本発明の第2実施形態に係るタービン静翼の製造方法は、本発明の第1実施形態に係るタービン静翼3を製造する方法であって、翼分割部材用織物形成工程(翼分割部材用織物成形工程)、翼分割部材用含浸工程、取外し工程、組合せ工程、外層翼用織物形成工程(外層翼用織物成形工程)、外層翼用含浸工程、及び機械加工工程を備えている。そして、本発明の第2実施形態に係るタービン静翼の製造方法における各工程の具体的な内容は、次のようになっている。
【0033】
(2-1)翼分割部材用織物形成工程
図3(a)(b)に示すように、各翼分割部材19,21の内面形状に対応する表面形状を有したマンドレル27,29を用い、セラミックス繊維(セラミックス繊維の繊維束)をブレード織り又は平織り等により各マンドレル27,29の表面に沿って2次元的及び/又は3次元的に織り込む。これにより、各マンドレル27,29の表面にセラミックス強化繊維により構成された翼分割部材用織物成形体19F,21Fを形成する。なお、セラミックス繊維の織り方の変更は、適宜に可能であって、セラミックス繊維を織り込む代わりに、各マンドレル27,29の表面にセラミックス繊維からなる織物(図示省略)を巻付けることによって翼分割部材用織物成形体19F,21Fを成形しても構わない。
【0034】
(2-2)翼分割部材用含浸工程
図4(a)(b)に示すように、気相含浸法(CVI法)、液相含浸焼成法(PIP法)、及び固相含浸法に基づいて各翼分割部材用織物成形体19F,21Fにセラミックスマトリックスを含浸させる。これにより、各翼分割部材用織物成形体19F,21Fを翼分割部材19,21に仕上げることができる。なお、セラミックスマトリックスの含浸法の変更は、適宜に可能である。
【0035】
(2-3)取外し工程
翼分割部材用含浸工程の途中又は終了後に、各マンドレル27,29を図5において左右方向へ移動させることより、図5(a)(b)に示すように、各マンドレル27,29を各翼分割部材用織物成形体19F,21F又は各翼分割部材19,21から取外す。
【0036】
(2-4)組合せ工程
翼分割部材用織物形成工程、翼分割部材用含浸工程、及び取外し工程の終了後に、図6(a)に示すように、一対の翼分割部材19,21を適宜の組合せ治具31の所定位置にセットすることにより、一対の翼分割部材19,21を隣接するように組合せる。これにより、一対の翼分割部材19,21からなる内層翼17を形成することができる。
【0037】
(2-5)外層翼用織物形成工程
組合せ工程の終了後に、図6(b)に示すように、セラミックス繊維(セラミックス繊維の繊維束)をブレード織り又は平織り等により内層翼17の表面に沿って2次元的及び/又は3次元的に織り込む。これにより、内層翼17の表面に強化繊維により構成された外層翼用織物成形体15Fを形成することができる。なお、セラミックス繊維の織り方の変更は、適宜に可能であって、セラミックス繊維を織り込む代わりに、内層翼17の表面にセラミックス繊維からなる織物(図示省略)を巻付けることによって外層翼用織物成形体15Fを成形しても構わない。
【0038】
(2-6)外層翼用含浸工程
外層翼用織物形成工程の終了後に、図7(a)に示すように、気相含浸法(CVI法)、液相含浸焼成法(PIP法)、及び固相含浸法に基づいて外層翼用織物成形体15Fにセラミックスマトリックスを含浸させる。これにより、外層翼用織物成形体15Fを外層翼15に仕上げることができる。なお、セラミックスマトリックスの含浸法の変更は、適宜に可能である。
【0039】
(2-7)機械加工工程
外層翼用含浸工程の終了後に、機械加工によって複数の噴射孔23及び複数の排出孔25を形成する。なお、複数の噴射孔23及び排出孔25を形成した後に、適宜の含浸法によって外層翼15及び内層翼17の表面にコーティング処理を施すことが望ましい。
【0040】
以上により、セラミックス基複合材料製のタービン静翼3を製造することができる。
【0041】
続いて、第2実施形態の作用及び効果について説明する。
【0042】
中空状の一対の翼分割部材19,21を隣接するように組合せることによって内層翼17を形成し、内層翼17の表面にセラミックス強化繊維により構成された外層翼用織物成形体15Fを成形しているため、一対の翼分割部材19,21の隣接部分によってセラミックス基複合材料製のタービン静翼3の内側に補強リブR(図1参照)を形成することができる。
【0043】
従って、本発明の第2実施形態によれば、本発明の第1実施形態と同様の効果を奏するものである。
【0044】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について図3(a)(b)、図8(a)(b)、及び図9(a)(b)を参照して説明する。
【0045】
本発明の第3実施形態に係るタービン静翼の製造方法は、本発明の第2実施形態に係るタービン静翼の製造方法と同様に、本発明の第1実施形態に係るタービン静翼3を製造する方法であって、翼分割部材用織物形成工程(翼分割部材用織物成形工程)、組合せ工程、外層翼用織物形成工程(外層翼織物成形工程)、含浸工程、取外し工程、及び機械加工工程を備えている。そして、本発明の第3実施形態に係るタービン静翼の製造方法における各工程の具体的な内容は、次のようになっている。
【0046】
(3-1)翼分割部材用織物形成工程
図3(a)(b)に示すように、第2実施形態に係るタービン静翼の製造方法における(2-1)翼分割部材用織物形成工程と同様の処理を実行することにより、各マンドレル27,29の表面にセラミックス強化繊維により構成された翼分割部材用織物成形体19F,21Fを形成する。
【0047】
(3-2)組合せ工程
翼分割部材用織物形成工程の終了後に、図8(a)に示すように、一対のマンドレル27,29を接近させることにより、一対の翼分割部材用織物成形体19F,21Fを隣接するように組合せる。これにより、一対の翼分割部材用織物成形体19F,21Fからなる内層翼用織物成形体17Fを形成することができる。
【0048】
(3-3)外層翼用織物形成工程
組合せ工程の終了後に、図7(b)に示すように、第2実施形態に係るタービン静翼の製造方法における(2-5)外層翼用織物形成工程と同様の処理を実行することにより、内層翼用織物成形体17Fの表面に強化繊維により構成された外層翼用織物成形体15Fを形成する。
【0049】
(3-4)含浸工程
外層翼用織物形成工程の終了後に、図9(a)に示すように、気相含浸法(CVI法)、液相含浸焼成法(PIP法)、及び固相含浸法に基づいて外層翼用織物成形体15F及び内層翼用織物成形体17Fにセラミックスマトリックスを含浸させる。これにより、外層翼用織物成形体15F及び内層翼用織物成形体17Fを外層翼15及び内層翼17にそれぞれ仕上げることができる。
【0050】
(3-5)取外し工程
含浸工程の途中又は終了後に、第2実施形態に係るタービン静翼の製造方法における(2-3)取外し工程と同様の処理を実行することにより、図9(b)に示すように、各マンドレル27,29を各翼分割部材用成形体19F,21F又は各翼分割部材19,21から取外す。
【0051】
(3-6)機械工工程
取外し工程の終了後に、第2実施形態に係るタービン静翼の製造方法における(2-7)機械加工工程と同様の処理を実行することにより、複数の噴射孔23及び複数の排出孔25を形成する。
【0052】
以上により、セラミックス基複合材料製のタービン静翼3を製造することができる。
【0053】
続いて、本発明の第3実施形態の作用及び効果について説明する。
【0054】
中空状の一対の翼分割部材用織物成形体19F,21Fを隣接するように組合せることによって内層翼用織物成形体17Fを形成し、内層翼用織物成形体17Fの表面にセラミックス繊維により構成された外層翼用織物成形体15Fを成形しているため、複数の翼分割部材19,21の隣接部分によってセラミックス基複合材料製のタービン静翼3の内側に補強リブR(図1参照)を形成することができる。
【0055】
従って、本発明の第3実施形態によれば、本発明の第1実施形態と同様の効果を奏するものである。
【0056】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、例えば、本発明の第1実施形態に係るタービン静翼3の構成をタービン動翼(図示省略)、圧縮機静翼(図示省略)、又は圧縮機動翼に適用したり、本発明の第2及び第3実施形態に係るタービン静翼の製造方法の構成をタービン動翼の製造方法、圧縮機静翼の製造方法、又は圧縮機動翼の製造方法に適用したりする等、その他、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0057】
1 タービンステータセグメント
3 タービン静翼
3a タービン静翼の前縁
3t タービン静翼の後縁
3v タービン静翼の腹面
5 アウターバンド
11 インナーバンド
15 外層翼
15F 外層翼用織物成形体
15a 外層翼の前縁側内面
15d 外層翼の背側内面
15t 外層翼の後縁側内面
15v 外層翼の腹側内面
17 内層翼
17F 内層翼用織物成形体
17d 内層翼の背側外面
17v 内層翼の腹側外面
19 翼分割部材
19F 翼分割部材用織物成形体
21 翼分割部材
21F 翼分割部材用織物成形体
23 噴射孔
25 排出孔
27 マンドレル
29 マンドレル
31 組合せ治具
R 補強リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジンのタービン又は圧縮機に用いられ、強化繊維とマトリックスとからなる複合材料を構成材料とする翼において、
強化繊維とマトリックスとからなる複合材料により構成された中空状の外層翼と、
前記外層翼の内面に一体的に設けられ、強化繊維とマトリックスとからなる複合材料により構成され、前記外層翼の前縁側内面から後縁側内面にかけて延びてあって、背側外面が前記外層翼の背側内面に一体的に接合され、腹側外面が前記外層翼の腹側内面に一体的に接合された中空状の内層翼と、を備え、
前記内層翼は、隣接するように組合せた中空状の複数の翼分割部材により分割して構成されていることを特徴とする翼。
【請求項2】
複合材料は、セラミックス基複合材料又は炭素系複合材料であることを特徴とする請求項1に記載の翼。
【請求項3】
請求項1に記載の翼を製造する方法において、
各翼分割部材の内面形状に対応する表面形状を有したマンドレルを用い、各マンドレルの表面に強化繊維により構成された翼分割部材用織物成形体を形成する翼分割部材用織物形成工程と、
各翼分割部材用織物成形体にマトリックスを含浸させることにより、各翼分割部材用織物成形体を中空状の前記翼分割部材に仕上げる翼分割部材用含浸工程と、
前記翼分割部材用含浸工程の途中又は終了後に、各マンドレルを各翼分割部材用成形体又は各翼分割部材から取外す取外し工程と、
前記翼分割部材用織物形成工程、前記翼分割部材用含浸工程、及び前記取外し工程の終了後に、複数の前記翼分割部材を隣接するように組合せることにより、複数の前記翼分割部材からなる前記内層翼を形成する組合せ工程と、
前記組合せ工程の終了後に、前記内層翼の表面に強化繊維により構成された外層翼用織物成形体を形成する外層翼用織物形成工程と、
前記外層翼用織物形成工程の終了後に、前記外層翼用織物成形体にマトリックスを含浸させることにより、前記外層翼用織物成形体を前記外層翼に仕上げる外層翼用含浸工程と、を備えたことを特徴とする翼の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の翼を製造する方法において、
各翼分割部材の内面形状に対応する表面形状を有したマンドレルを用い、各マンドレルの表面に強化繊維により構成された翼分割部材用織物成形体を形成する翼分割部材用織物形成工程と、
前記翼分割部材用織物形成工程の終了後に、複数の前記翼分割部材用織物成形体を隣接するように組合せることにより、複数の前記翼分割部材用織物成形体からなる内層翼用織物成形体を形成する組合せ工程と、
前記組合せ工程の終了後に、前記内層翼用織物成形体の表面に強化繊維により構成された外層翼用織物成形体を形成する外層翼用織物形成工程と、
前記外層翼用織物形成工程の終了後に、前記外層翼用織物成形体及び前記内層翼用織物成形体にマトリックスを含浸させることにより、前記外層翼用織物成形体及び前記内層翼用織物成形体を前記外層翼及び前記内層翼にそれぞれ仕上げる含浸工程と、
前記含浸工程の途中又は終了後に、各マンドレルを各翼分割部材用成形体又は各翼分割部材から取外す取外し工程と、を備えたことを特徴とする翼の製造方法。
【請求項5】
複合材料は、セラミックス基複合材料又は炭素基複合材料であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の翼の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−99346(P2011−99346A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253187(P2009−253187)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】