説明

耐摩耗性コーティングおよびその製造方法

【課題】耐摩耗性が、小さな摩擦係数で燃料供給ユニットの寿命全体を通して保証される、耐摩耗性コーティング、およびこのようなコーティングの製造方法を提供する。
【解決手段】特に燃料供給ユニット用の、摩擦摩耗に曝された焼結材料からなる機械またはエンジン部品1の所定の表面2上の耐摩耗性コーティングであって、機械またはエンジン部品1の所定の表面2にspおよびsp混成カーボンを有する少なくとも1つの無金属アモルファス炭化水素層5を含む耐摩耗性コーティングを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に燃料供給ユニット内の焼結材料からなる機械またはエンジン部品用の、摩擦摩耗に曝された焼結材料からなる機械またはエンジン部品の所定の表面上の耐摩耗性コーティングと、このタイプの耐摩耗性コーティングを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼結材料からなるあらゆる所望の機械またはエンジン部品に応用することができるが、本発明およびそれに基づく対象は、燃料供給ユニット用の焼結材料の機械またはエンジン部品に関して、より詳細にはカムプレートに基づきより詳細に説明する。
【0003】
出願人は、例えばLuk−Automobiltechnikによる4、5、および10気筒タンデムポンプの場合に、いわゆるリジッドベーン原理(rigid vane principle)に基づいた燃料供給ユニットに精通している。この原理は、供給ユニットの中間プレートに回転可能に配置され、カムプレートの特定の接触表面により中間プレートの指定された噛合表面に接触しているカムプレートを使用する。カムプレートおよび中間プレートは両方とも、コストの理由から焼結材料で作られていることが好ましい。カムプレートと中間プレートの間に起こる摩擦接触点のため、対応する接触表面での放射状に起こる材料摩耗が、5および10気筒ポンプの場合に、供給ユニットの中間プレート上でより大きな程度で起こる。
【0004】
特定の性状を得るように熱化学処理を関連する接触相手部材に行うことによって、このような摩擦、すなわち機械的および/または摩擦的原因の結果、小さな粒子が外れることにより表面の望ましくない変化を一般に引き起こす、接触相手部材の長期間の負荷で起こる摩耗現象を少なくすることが試みられてきた。例えば、接触表面は炭窒化処理、軟窒化処理、窒化処理、および/または酸化処理される。
【0005】
しかし、この方法の欠点は、使用される熱化学処理にも関わらず、例えば中間プレートのプラズマ軟窒化処理にも関わらず、少なくはなったが過剰の摩耗が特に5および10気筒供給ユニットの場合に放射状に起こり続けているという事実であるということが分かった。カムプレート上のプラズマ軟窒化処理は、また、いくつかの問題を引き起こす。カムプレートに作用する負荷に耐えるため、焼結処理後に、吸熱ガス雰囲気内で冷却し、約200℃から250℃で焼き戻される。プラズマ軟窒化処理は、約550℃から590℃の温度で起こる。この場合、カムプレートの元の硬度が失われ、負荷点でさらに高周波焼入れしなければならない。基材またはカムプレート材料の焼き戻し温度より高い処理温度でのコーティング中に、カムプレートのミクロ構造は変化し、したがってその仕上げ寸法も変化するが、これは構造的な理由から極めて不利であり望ましくない。
【0006】
さらに、焼結材料で作られた部品は極めて多孔質であり、それによって例えば冷却潤滑剤などの異物を含んでいる。これらの異物は、コーティング処理が異物のガス抜けによって妨げられないようにするため、プラズマ軟窒化処理の前に取り除かなければならない。したがって、不都合なことに別の処理ステップが必要である。さらに、カムプレートの極めて不均一な焼結金属表面により、塗布された摩耗層は軟窒化処理の場合に高い均一性を特徴としておらず、それによって摩耗層のスポーリングにつながる可能性がある。さらに、材料の縁部でそりが起こることもある。
【0007】
さらに、プラズマ軟窒化処理などの熱化学処理の欠点は、例えば、比較的高い硬度の結合層は予熱処理によって作られた比較的低い材料硬度のカムプレート上に低いホールドを有するだけであり、それによって結合層は望ましくない方法でカムプレートから外れる可能性があるということである。
【0008】
さらに、出願人はリン酸マンガン処理により部品の接触表面を処理する、またはスライドコーティングでこれらをコーティングする、または接触表面に電気めっき層を塗布する方法に精通している。摩擦は小さくすることができるが、このような層の耐摩耗性は低く、それによって層が取り除かれる。電気めっき層の場合、さらに、環境への影響が不利な要因として考えられる。
【0009】
さらに、出願人は超硬合金または高速度鋼から使用する部品相手部材を作る方法に精通している。しかし、この方法の欠点は、これらの材料が極めて高い質量を有し、極めて洗練された製造技術によって処理することしかできないという事実であることが分かっている。
【0010】
出願人はまた、例えばTiN、CrN、(Ti、Al)Nなどの高い表面硬度を有する層をPVDまたは(PA)CVD処理によってカムプレートに塗布することに精通している。しかし、この方法の欠点は、部品相手部材間に発生するより高い摩擦と、カムプレートの大きな表面硬度により、対向する本体、すなわち供給ユニットの中間プレートの摩耗が不利な方法で大きくなり、それによって供給ユニット全体の寿命が短くなるという事実であるということが分かっている。
【0011】
PVDまたは(PA)CVD処理により、しっかりした接着コーティングを備えた焼結材料を提供することは以前は可能ではなかった。というのは、第1に孔および低い硬度により、基材は必然的に硬い摩耗保護層に対する極めて質の悪い保護を提供し、第2に、製造技術により、大部分は油状の残留物が真空コーティング処理で焼結材料の孔からガス抜けされ、その結果、コーティング処理が妨げられる、または摩耗保護層を基材に結合させることができないからである。
【0012】
本発明の目的はしたがって、上記欠点を取り除き、特に耐摩耗性が小さな摩擦係数で燃料供給ユニットの寿命全体を通して保証される、耐摩耗性コーティング、およびこのようなコーティングの製造方法を提供することである。
【0013】
この目的は、特許請求の範囲第1項の特徴を備えた耐摩耗性コーティングによって装置側で、また特許請求の範囲第14項の特徴を備えた方法によって方法側で、本発明により達成される。
【0014】
本発明が基づいている考えは、摩擦摩耗に曝された焼結材料からなる機械またはエンジン部品の所定の表面上の耐摩耗性コーティングは、機械またはエンジン部品の所定の表面の摩擦を小さくし、耐摩耗性を大きくするように、spおよびsp混成カーボンが機械またはエンジン部品の所定の表面に塗布された少なくとも1つの無金属アモルファス炭化水素層を含んでいるということである。
【0015】
したがって、本発明は、例えば燃料供給ユニット内のカムプレートと中間プレートの間の接触領域内の耐摩耗性が従来技術と比較して大きいという点において、従来技術を凌ぐ利点を有する。さらに、中間プレートとのスライド接触の際の摩擦の減少が、従来技術と比較して保証されている。
【0016】
別の利点は、有利にはマイクロ構造に対するカムプレートまたは焼結材料の性状、および機能関連部品の許容範囲が、本発明による耐摩耗性コーティングを塗布した場合に有利には変化しないということである。したがって、本発明による耐摩耗性コーティングの使用により、基材として低コストの焼結材料に戻ることが可能になり、それによって部品を焼結処理によって競争的に製造することができる。焼結材料に塗布されたコーティングは、接着強度および耐摩耗性を有するコーティングを呈示し、部品の性状を変化させず、有利には摩擦相手部材、したがって供給ユニットの寿命を延長する。
【0017】
特許請求の範囲第1項で特定される耐摩耗性コーティング、および特許請求の範囲第14項で特定されるこのようなコーティングの製造方法の有利な修正および改良は、従属請求項に見出すことができる。
【0018】
好ましい発展によると、アモルファス炭化水素層は、多くても20原子%の水素比を有する。その結果、機械またはエンジン部品、またはカムプレートの所定の表面は、金属製の対向する本体、すなわち中間プレートに接着する傾向がほとんどなく、高い耐摩擦摩耗性、高い耐化学性、高い機械強度、および高い硬度/弾性係数比を有する。より高い水素比は、潤滑剤などとの望ましくない結合につながる可能性がある。
【0019】
アモルファス炭化水素層は、処理関連の不純物、例えば1原子%未満のOまたはAr原子、金属などを有することが好ましい。
【0020】
別の好ましい例示的実施形態によると、コーティング全体は、約2.0μmから5.0μmの厚さをしており、アモルファス炭化水素層は1.0μmから4.0μmの厚さをしていることが好ましい。このような層の厚さにより、別の処理が必要なく、設定された表面構造または形態が保持されるような小さな程度に機械またはエンジン部品の寸法が変化する。
【0021】
別の好ましい発展によると、少なくとも1つの中間層、または少なくとも1つの接着促進層、またはこれら2つの層の組合せが、機械またはエンジン部品の所定の表面とアモルファス炭化水素層の間に設けられる。少なくとも1つの中間層はこの場合、金属含有炭化水素層として形成されており、金属成分はW、Ti、Hf、Ge、または前記成分の組合せであることが好ましい。中間層は、約0.5μmから2.0μmの厚さをしていることが好ましい。少なくとも1つの接着促進層は、遷移金属の金属物質、ホウ化物、炭化物、および/または窒化物を含んでいることが好ましい。接着促進層は、約0.1μmから0.5μmの厚さをしていることが好ましい。
【0022】
別の好ましい例示的実施形態によると、アモルファス炭化水素層が、PVDまたは(PA)CVD処理により、機械またはエンジン部品の所定の表面に被着される。少なくとも1つの中間層および/または少なくとも1つの接着促進層の被着が、PVD処理により起こることが好ましい。
【0023】
被着したアモルファス炭化水素層は、さらなる熱的および/または機械的処理が行われないことが好ましい。
【0024】
別の好ましい例示的実施形態によると、機械またはエンジン部品の所定の表面は、硬化焼結スチールからなっている。したがって、基材として低コストの焼結スチールに戻り、機械またはエンジン部品を焼結処理によって競争的に製造することが可能である。
【0025】
アモルファス炭化水素層の被着前に、機械またはエンジン部品の所定の表面は、洗浄炉などの中でのその後のガス抜き作業と共に、洗浄、例えば様々な洗浄槽内での槽洗浄が行われることが好ましい。その結果、基体へのコーティングの永久的な接着が保証される。
【0026】
別の好ましい例示的実施形態によると、アモルファス炭化水素層、少なくとも1つの中間層、および/または少なくとも1つの接着促進層が、それぞれの場合に、機械またはエンジン部品の焼き戻し温度より低いコーティング温度で被着される。あらゆるガス抜き作業のガス抜き温度はまた有利には、機械またはエンジン部品の焼き戻し温度より低い。その結果、機械またはエンジン部品はあらゆる硬度の損失または歪みが起こらない。
【0027】
耐摩耗性コーティングの使用の例は、内燃機関のディーゼル供給ユニットの中間プレートに対するカムプレートの接触表面であり、カムプレートは焼結材料で作られている。しかし、焼結材料からなる、中間プレート、例えばバケットタペット、油圧支持挿入要素、ローリングベアリング部品、制御ピストン、リリースベアリング、ピストンピン、ベアリングブッシュ、リニアガイドなどのバルブギア部品が、このタイプの耐摩耗性コーティングを備えることも可能である。
【0028】
本発明を、例示的実施形態に基づき、添付の図面を参照して以下により詳細に説明する。
【0029】
図面中、同じ参照番号はそうでないと記されていない限り、同じである、または機能的に同じである部品を示す。
【0030】
図1は、ディーゼル供給ユニットの平面図を示し、図2は本発明の好ましい例示的実施形態による、図1のディーゼル供給ユニット6の線A−Aに沿った断面図を示す。ディーゼル供給ユニット6は中間プレート7を有し、この中でカムプレート1が回転して、例えば、リジッドベーン原理に基づき、タンデムポンプシステムを作動させるようにカムプレート1と中間プレート7の間に摩擦接触表面を形成する。これが起こると、材料の摩耗は特に、摩擦力が生じたことにより、供給ユニット6のカムプレート1と中間プレート7の間の接触表面で起こる。
【0031】
カムプレート1の耐摩耗性を大きくして、その寿命を長くするため、カムプレート1のこれらの接触表面2が摩耗保護または耐摩耗性コーティングを備えていることが望ましい。
【0032】
図3は、図1のカムプレート1の詳細の拡大図を示している。図3から分かるように、耐摩耗性コーティング3、4、5は、耐摩耗性を大きくし、摩擦トルクを小さくするように、カムプレート1の所定の表面2上に設けられている。
【0033】
本発明の好ましい例示的実施形態によると、焼結材料、特に硬化焼結材料の金属基体が、カムプレート1の基体として使用されている。このような基体材料を使用することにより、従来の製造技術に戻り、基体を焼結処理で競争的に製造することが可能になる。
【0034】
図2にさらに示すように、接着促進層3が、所定の表面、または中間プレート7に対するカムプレート1の接触表面2に塗布される。接着促進層3は、例えばPVD処理(物理的気相成長法)によって、カムプレート1の所定の表面2に被着させることができる。接着促進層3は、遷移金属の金属物質、ホウ化物、炭化物、および窒化物などを含んでいることが好ましく、0.1μmから0.5μmの厚さをしていることが好ましい。接着促進層3は、基体1にその後に塗布される中間層または機能層の原子の付着の改良法または架橋の改良法として働く。接着促進層3の厚さは、使用される中間層4、または顧客の要望および要求に基づき選択される。
【0035】
本例示的実施形態によると、中間層4はその後、図3に示すように、例えばPVD処理と同様の方法で接着促進層3に被着される。中間層4は例えば、金属含有炭化水素層(Me−C:H)として塗布することができ、金属成分としてW、Ti、Hf、Geなどが個別に、または複数一緒に生じることが可能である。中間層4は例えば、約0.5μmから2.0μmの厚さをしており、接着促進層3上に機能層を付着する改良法として、または接着促進層3がない場合、物理的、機械的および化学的視点から、基体1上に機能層を付着する改良法として働く。中間層4の厚さはこの場合も、使用される層の構成、およびそれぞれの用件に適合するようになっている。
【0036】
図3にさらに示すように、実際の機能層5がその後、中間層4の上に被着される。この場合、機能層5は基体1の上に直接、接着促進層3の上に直接、または図3に示すように、中間層4の上に直接のいずれかで被着することができる。中間層4から機能層5への特別な移行が展開して、機能層5の最適な結合を保証し、層システム内または多孔質基材と層システムの間の臨界インターフェイス内に最も低い可能な応力を誘導し、それによって結合の形および接着の形の両方でスポーリングを避けることが好ましい。この段階で、特定の塗布領域では、接着促進層3および/または中間層4なしですませることも可能であることを指摘すべきである。
【0037】
機能層5は、アモルファス炭化水素層(a−C:H)として形成され、PVDおよび/または(PA)CVD処理(プラズマ化学蒸着)により、意図した層に、本例示的実施形態によると中間層4に被着されていることが好ましい。
【0038】
PVD処理の場合、出発物質、例えばグラファイトは、高エネルギー炭素イオンの蒸気がグラファイトから発せられ、コーティングされる表面の方向にガイドされるように加熱される。この場合、コーティングされる表面は、1つまたは複数の層を形成するように、処理チャンバ内で1回または複数回、高エネルギーイオンの蒸気を通してガイドすることができる。
【0039】
(PA)CVD処理の場合、プラズマはガス混合物をコーティングされる材料部品が存在する処理チャンバ内にガイドするのに使用される。所定の温度で、導入されたガスは互いに化学的に反応し、コーティングされる材料部品の表面上に薄い凝縮層となる。
【0040】
基体1、接着促進層3、中間層4およびアモルファス炭化水素層5からなる完全な層システムの仕事は、このコーティングと対向する本体、例えば燃料供給ユニット6の中間プレート7の間の摩擦を小さくし、コーティングされたカムプレート1、および対向する本体の寿命を長くすることである。
【0041】
したがって、アモルファス炭化水素層5は、多くとも20原子%の水素比を有することが好ましく、それによって金属製の対向する本体への接着する傾向がほとんどないこと、高い耐摩擦摩耗性、高い耐化学性、高い機械強度、および高い硬度/弾性係数比が保証される。あるいは、アモルファス炭化水素層5は、spおよびsp混成カーボンを含み、1原子%未満の処理関連不純物が与えられることが好ましい。
【0042】
アモルファス炭化水素層5は、約1.0μmから4.0μmの層厚であることが好ましい。個別の層3、4、5を含むコーティングの合計厚さは、約2.0μmから5.0μmであることが好ましい。このようなコーティング全体の厚さにより、別の処理が必要なく、設定された表面構造または形態が保持されるような小さな程度に機械またはエンジン部品またはカムプレート1の寸法が変化する。摩擦的仕事がコーティングの表面によって保証され、それによって設定構造が混合摩擦の領域を小さくし、低摩擦コーティングにより、摩擦力、したがって表面にかけられる負荷を小さくする。一方、機械的仕事が、基体と共に層システムによって保証される。
【0043】
対向する本体、この場合は例えば、供給ユニット6の中間プレート7は、軽量構造および費用削減の利益のために、鉄炭素合金で作られていることが好ましい。加えて、低粘度低添加物油を使用することができる。さらに、最小限の潤滑剤または延長したオイル交換間隔を達成することができる。
【0044】
基体のコーティング前に、この所定の領域2を、洗浄炉などの中でその後のガス抜き作業と共に、例えば様々な洗浄槽内での槽洗浄により洗浄することが好ましい。その結果、基体上のコーティングの接着性は有利に改善される。
【0045】
個別のコーティング作業のコーティング温度は約200℃であり、基体のガス抜き作業のガス抜き温度は約240℃である。これらの温度範囲はしたがって、カムプレート1の焼結材料の焼き戻し温度より低い。その結果、カムプレート1は有利に、硬度の損失や歪みが起こらない。
【0046】
本発明はしたがって、耐摩耗性コーティング、およびこのような耐摩耗性コーティングを製造する方法を提供し、基材として低コストの焼結材料に戻ることが可能であるが、本発明によるコーティングなしでは摩擦負荷に耐えない。部品の必要な複雑な幾何形状により、したがって製造の理由から、本発明によるコーティングを有する焼結材料を使用することができ、それによって部品を焼結処理によって競争的に製造することができることが有利である。合計層厚さが低いことにより、コーティングは極めて均一に、感知できるほど粗さが増すことなく塗布することができる。その結果、コーティングは特定の許容度なしで、また費用がかかる別の処理なしで可能である。
【0047】
上記のコーティングは、設定構造によって、混合摩擦領域を小さくし、低摩擦コーティングにより、摩擦力、したがって表面に加えられる負荷を小さくし、また耐摩耗性を大きくする摩擦システムを作り出す。
【0048】
供給ユニット内のカムプレートのコーティング接触表面とは別に、言うまでもなく、例えば対向する本体に加えて他のエンジンまたは機械部品、すなわち中間プレート、例えばバケットタペット、油圧支持挿入要素、ローリングベアリング部品、制御ピストン、リリースベアリング、ピストンピン、ベアリングブッシュ、リニアガイドなどの他のバルブギア部品を本発明によりコーティングすることも可能である。
【0049】
本発明を好ましい例示的実施形態に基づき上記で説明したが、これらに限るものではなく、様々な方法で変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の例示的実施形態によるディーゼル供給ユニットの平面図である。
【図2】切断線A−Aに沿った、図1のディーゼル供給ユニットの断面図である。
【図3】中間プレートに対するカムプレートの接触表面上に被着された、本発明の好ましい例示的実施形態による耐摩耗性コーティングの拡大図である。
【符号の説明】
【0051】
1 機械またはエンジン部品/カムプレート
2 機械またはエンジン部品の所定の表面/中間プレートに対するカムプレートの接触表面
3 接着促進層
4 中間層
5 アモルファス炭化水素層/機能層
6 燃料供給ユニット
7 中間プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に燃料供給ユニット用の、摩擦摩耗に曝された焼結材料からなる機械またはエンジン部品(1)の所定の表面(2)上の耐摩耗性コーティングであって、前記機械またはエンジン部品(1)の前記所定の表面(2)の摩擦を少なくし、耐摩耗性を大きくするように、前記機械またはエンジン部品(1)の前記所定の表面(2)に塗布されたspおよびsp混成カーボンを有する少なくとも1つの無金属アモルファス炭化水素層(5)を含む耐摩耗性コーティング。
【請求項2】
前記アモルファス炭化水素層(5)は、多くても20原子%の水素比を有することを特徴とする、請求項1に記載の耐摩耗性コーティング。
【請求項3】
前記アモルファス炭化水素層は、1原子%未満の処理関連不純物を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の耐摩耗性コーティング。
【請求項4】
前記アモルファス炭化水素層(5)は約1.0μmから4.0μmの厚さをしていることを特徴とする、先行する請求項の少なくとも一項に記載の耐摩耗性コーティング。
【請求項5】
少なくとも1つの接着促進層(3)および/または少なくとも1つの中間層(4)が、前記機械またはエンジン部品(1)の前記所定の表面(2)と前記アモルファス炭化水素層(5)の間に設けられていることを特徴とする、先行する請求項の少なくとも一項に記載の耐摩耗性コーティング。
【請求項6】
前記少なくとも1つの中間層(4)は、金属含有炭化水素層として形成されることを特徴とする、請求項5に記載の耐摩耗性コーティング。
【請求項7】
前記金属含有炭化水素層(4)の金属成分は、W、Ti、Hf、Ge、または前記成分の組合せを含むことを特徴とする、請求項6に記載の耐摩耗性コーティング。
【請求項8】
前記少なくとも1つの中間層(4)は約0.5μmから2.0μmの厚さをしていることを特徴とする、請求項5から7の少なくとも一項に記載の耐摩耗性コーティング。
【請求項9】
前記少なくとも1つの接着促進層(3)は、遷移金属の金属物質、ホウ化物、炭化物、および/または窒化物を含んでいることを特徴とする、請求項5から8の少なくとも一項に記載の耐摩耗性コーティング。
【請求項10】
前記接着促進層(3)は約0.1μmから0.5μmの厚さをしていることを特徴とする、請求項5から9の少なくとも一項に記載の耐摩耗性コーティング。
【請求項11】
前記機械またはエンジン部品(1)の前記所定の表面(2)は硬化焼結スチールからなることを特徴とする、先行する請求項の少なくとも一項に記載の耐摩耗性コーティング。
【請求項12】
燃料供給ユニットのポンプ装置の中間プレートに対する、焼結材料で作られたカムプレート(1)の接触表面(2)としての、先行する請求項の少なくとも一項に記載のコーティング(3、4、5)の使用。
【請求項13】
燃料供給ユニット(6)、例えばバケットタペット、カムシャフト、油圧支持挿入要素、ローリングベアリング部品、制御ピストン、リリースベアリング、ピストンピン、ベアリングブッシュ、リニアガイドなどのバルブギア部品の焼結材料からなる、中間プレート(7)の所定の表面(2)上での、請求項1から11の少なくとも一項に記載のコーティング(3、4、5)の使用。
【請求項14】
特に燃料供給ユニット用の、摩擦摩耗に曝された焼結材料からなる機械またはエンジン部品(1)の所定の表面(2)上の耐摩耗性コーティングを製造する方法であって、前記機械またはエンジン部品(1)の前記所定の表面(2)の摩擦を少なくし、耐摩耗性を大きくするように、前記機械またはエンジン部品(1)の前記所定の表面(2)にspおよびsp混成カーボンを有する少なくとも1つの無金属アモルファス炭化水素層(5)を塗布するステップを含む方法。
【請求項15】
前記アモルファス炭化水素層(5)は、PVDおよび/または(PA)CVD処理によって前記機械またはエンジン部品(1)の前記所定の表面(2)上に被着されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アモルファス炭化水素層(5)は、多くても20原子%の水素比で形成されていることを特徴とする、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記アモルファス炭化水素層は、1原子%未満の処理関連不純物で形成されていることを特徴とする、請求項14から16の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項18】
前記アモルファス炭化水素層(5)は約1.0μmから4.0μmの厚さで形成されていることを特徴とする、請求項14から17の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項19】
前記アモルファス炭化水素層(5)の被着前に、前記機械またはエンジン部品(1)の前記所定の表面(2)は、洗浄炉などの中でその後のガス抜き作業と共に、洗浄、例えば様々な洗浄槽内での槽洗浄が行われることを特徴とする、請求項14から18の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つの接着促進層(3)および/または少なくとも1つの中間層(4)が、前記機械またはエンジン部品(1)の前記所定の表面(2)と前記アモルファス炭化水素層(5)の間に形成されていることを特徴とする、請求項14から19の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの中間層(4)は、金属含有炭化水素層として形成されることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記金属含有炭化水素層(4)の金属成分は、W、Ti、Hf、Ge、または前記成分の組合せを含むことを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの中間層(4)は約0.5μmから2.0μmの厚さで形成されていることを特徴とする、請求項20から22の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの接着促進層(3)は、遷移金属の金属物質、ホウ化物、炭化物、および/または窒化物で形成されていることを特徴とする、請求項20から23の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの接着促進層(3)は約0.1μmから0.5μmの厚さで形成されていることを特徴とする、請求項20から24の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項26】
前記アモルファス炭化水素層(5)、前記少なくとも1つの中間層(4)および/または前記少なくとも1つの接着促進層(3)は、それぞれの場合、前記機械またはエンジン部品(1)の焼き戻し温度より低いコーティング温度で被着されることを特徴とする、請求項14から25の少なくとも一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−119907(P2007−119907A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−245246(P2006−245246)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(504466409)シャエフラー カーゲー (59)
【出願人】(506307485)ルク アオトモビールテヒニック ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー (1)
【Fターム(参考)】