説明

耐溶剤性画像形成性要素

平版印刷版前駆体として有用な、多層、熱現像性要素を開示する。当該画像形成性要素は、基体と、該基体上の下部層と、該下部層上の上部層とを含んで成る。上部層は、重合状態で、ノルボルネン又はノルボルネン誘導体を含むコポリマーを有する。得られた平版印刷版は印刷室薬剤に対する、優れた耐性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平版印刷に関する。具体的には、本発明は、良好な耐溶剤性を有する平版印刷版前駆体として有用な多層画像形成性要素に関する。
【背景技術】
【0002】
コンベンショナルな印刷又は「湿式」平版印刷の場合、画像領域として知られるインク受容領域を親水性表面上に発生させる。表面が水で湿潤され、そしてインクが着けられると、親水性領域は水を保持してインクを弾き、そしてインク受容領域はインクを受容して水を弾く。インクは画像が再現されるべき材料の表面に転写される。典型的には、インクは中間ブランケットに先ず転写され、ブランケットは、画像が再現されるべき材料の表面にインクを転写する。
【0003】
平版印刷版前駆体として有用な画像形成性要素は、典型的には、基体の親水性表面上に適用された画像形成性層を含む。画像形成性層は、好適なバインダー中に分散することができる1種又は2種以上の輻射線感受性成分を含む。或いは、輻射線感受性成分はバインダー材料であってもよい。画像形成に続いて、画像形成性層の画像形成された領域又は画像未形成領域が、好適な現像剤によって除去され、下側に位置する親水性の基体表面を露出する。画像形成された領域が除去される場合には、前駆体はポジ型である。逆に、画像未形成領域が除去される場合には、前駆体はネガ型である。それぞれの事例において、残される画像形成性層領域(すなわち画像領域)はインク受容性であり、そして、現像プロセスによって露出された親水性表面領域は、水及び水溶液、典型的には湿し水を受容し、そしてインクを弾く。
【0004】
紫外線及び/又は可視線を用いた画像形成性要素のコンベンショナルな画像形成が、透明領域と不透明領域とを有するマスクを通して行われた。画像形成は、マスクの透明領域の下側に位置する領域内で行われるが、しかし不透明領域の下側に位置する領域内では行われない。その一方で、マスクを通して画像形成する必要性を取り除く直接的なデジタル画像が、印刷産業分野においてますます重要になってきている。平版印刷版を調製するための画像形成性要素が、赤外線レーザーとともに使用するために開発されている。熱画像形成性単層要素は、例えば、米国特許第6,090,532号明細書(West);同第6,280,899号明細書(Parsons);同第6,596,469号明細書(McCullough);及び国際公開第99/21715号パンフレットに開示されている。引用することによりこれらの開示内容を本明細書に組み入れる。熱画像形成性多層要素は、例えば、米国特許第6,294,311号、同第6,352,812号、及び同第6,593,055号の各明細書(Shimazu)、米国特許第6,352,811号明細書(Patel);米国特許第6,358,669号及び同第6,528,228号の各明細書(Savariar-Hauck);及び米国特許出願公開第2004/0067432号明細書(Kitson)に開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
使用時に、平版印刷版は湿し水と接触する。加えて、印刷版はしばしば、紫外線硬化性インクを除去するために、攻撃的なブランケット洗剤、例えば、「UV洗剤」に曝される。しかしながら、これらの系の多くは、湿し水及び/又は攻撃的なブランケット洗剤に対する耐性が限られている。従って、これらの溶剤に対して耐性を有する、平版印刷版前駆体として有用な、熱画像形成性要素が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの形態において、本発明は、優れた耐薬品性を有する画像形成性要素である。画像形成性要素は:
基体と、基体上の下部層と、下部層上の上部層とを含み;
該要素は、光熱変換材料を含み;
該上部層は、インク受容性であり;
熱画像形成前は、該上部層はアルカリ性現像剤によって除去可能ではなく;
熱画像形成により該上部層内に画像形成された領域を形成した後は、該画像形成された領域は該アルカリ性現像剤によって除去可能であり;
該下部層は、アルカリ性現像剤によって除去可能であり;そして
該上部層は、重合形態で、グループ(a)のモノマー及びグループ(b)のモノマーを含むコポリマーから成る群から選択されたコポリマーを含み:
グループ(a)のモノマーが:
【0007】
【化1】

【0008】
、及びこれらの混成から成る群から選択され;
グループ(b)のモノマーが:
【0009】
【化2】

【0010】
、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、ヒドロキシスチレン、CH(R11)CH(CO2R12)、CH(R11)CH(CON(R12)2)、CH2CH(OR12)、及びこれらの混成
から成る群から選択され;
R1、R2、R4、及びR5はそれぞれ独立して、水素、フェニル、置換型フェニル、ハロゲン、炭素原子数1〜6のアルキル、炭素原子数1〜6のアルコキシ、炭素原子数1〜7のアシル、炭素原子数1〜7のアシルオキシ、炭素原子数1〜7のカルボアルコキシ、又はこれらの混成であり;
R3、R6、及びR7はそれぞれ-CH2-であり;
各R8及びR9はそれぞれ独立して、水素又はメチル、又はこれらの混成であり;
各R10は、水素、ヒドロキシル、炭素原子数1〜6のアルキル、フェニル、置換型フェニル、ベンジル、又はこれらの混成であり;そして、
各R11は、水素、メチル、又はこれらの混成であり;
各R12は、水素、炭素原子数1〜6のアルキル、フェニル、置換型フェニル、又はこれらの混成であり;そして、
該コポリマーは、約15モル%以上のグループ(a)のモノマーと、約10モル%以上のグループ(b)のモノマーとを含む。
【0011】
別の形態において、本発明は、基体上にコポリマーを含む上部層を含む画像形成性要素に熱画像形成及び現像を施すことにより、画像を形成する方法である。別の形態において、本発明は、画像形成性要素に画像形成及び現像を施すことにより形成された画像である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
文脈が他のことを示すのでない限り、明細書及び特許請求の範囲において、高分子材料、コポリマー、グループ(a)のモノマー、グループ(b)のモノマー、追加されるモノマー、光熱変換材料、界面活性剤という用語、及び同様の用語は、このような材料の混合物をも含む。特に断りのない限り、全てのパーセンテージは重量パーセントであり、全ての温度は摂氏(℃)である。熱画像形成は、高温体、例えば、サーマルヘッド、又は赤外線による画像形成を意味する。
【0013】
多層画像形成性要素
1つの形態において、本発明は、基体、基体上の下部層と、該下部層上の上部層とを含む多層画像形成性要素である。要素はまた光熱変換材料を含む。上部層はインク受容性であり、そして好ましくは光熱変換材料を実質的に有していない。熱画像形成前には、上部層は、アルカリ性現像剤によって除去することはできないが、しかし、画像形成後には、上部層の画像形成された領域は現像剤によって除去することができる。下部層は、現像剤によって除去することができる。
【0014】
上部層
上部層は、重合形態で、グループ(a)のモノマーとグループ(b)のモノマーとを含むコポリマー又はコポリマーの混合物を含む。少量のその他のモノマーがコポリマー中に存在してよいが、このようなモノマーは典型的には必要とされないので、コポリマーは、グループ(a)のモノマーとグループ(b)のモノマーとから本質的に成る。
【0015】
コポリマーは典型的には、重合形態で、グループ(a)のモノマーとグループ(b)のモノマーとから本質的に成るか、又はこれらのモノマーから成る。コポリマーは、約15モル%以上のグループ(a)のモノマーと、約10モル%以上のグループ(b)のモノマーとを含む。コポリマーは典型的には、約15モル%〜約90モル%のグループ(a)のモノマーと、約10モル%〜約85モル%、好ましくは約15モル%〜約50モル%のグループ(b)のモノマーとを含む。電子不足オレフィン、例えば、無水マレイン酸又はマレイミドがグループ(b)のモノマーとして使用される。1:1の交互コポリマー(すなわち50モル%のグループ(a)のモノマー、及び50モル%のグループ(b)のモノマー)が典型的には生成される。
【0016】
上部層は典型的には70重量%以上、より典型的には90重量%以上、そしてさらにより典型的には95重量%以上のコポリマーを含む。上部層が光熱変換材料を実質的に有しない場合には、上部層は典型的には少なくとも98〜99重量%のコポリマーを含む。
【0017】
グループ(a)のモノマーは、
【0018】
【化3】

【0019】
、及びこれらの混成から成る群から選択されたノルボルネン又はノルボルネン誘導体である。
【0020】
グループ(b)のモノマーは、
【0021】
【化4】

【0022】
、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、ヒドロキシスチレン、CH(R11)CH(CO2R12)、CH(R11)CH(CON(R12)2)、CH2CH(OR12)、及びこれらの混成から成る群から選択される。
【0023】
R1、R2、R4、及びR5はそれぞれ独立して、水素、フェニル、置換型フェニル、ハロゲン、炭素原子数1〜6のアルキル、炭素原子数1〜6のアルコキシ、炭素原子数1〜7のアシル、炭素原子数1〜7のアシルオキシ、炭素原子数1〜7のカルボアルコキシ、又はこれらの混成である。置換型フェニル基は、例えば、2-メチルフェニル、3-メチルフェニル、4-メチルフェニル、4-t-ブチルフェニル、4-メトキシフェニル、3-エトキシフェニル、4-シアノフェニル、4-クロロフェニル、4-フルオロフェニル、4-アセトキシフェニル、4-カルボキシフェニル、4-カルボキシメチルフェニル、4-カルボキシエチルフェニル、3,5-ジクロロフェニル、及び2,4,6-トリメチルフェニルを含む。ハロゲンは、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、及びブロモ(Br)を含む。炭素原子数1〜6のアルキル基は例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソ-ペンチル、ネオ-ペンチル、n-ヘキシル、イソ-ヘキシル、1,1-ジメチル-ブチル、2,2-ジメチル-ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、メチルシクロペンチル、及びシクロヘキシルを含む。炭素原子数1〜6のアルコキシ基は、-OR基(Rは炭素原子数1〜6のアルキル基である)であり、例えば、上記のような基である。例は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソ-プロポキシ、n-ブトキシ、及びt-ブトキシである。炭素原子数1〜7のアシル基は、-C(O)R基(Rは炭素原子数1〜6のアルキル基である)であり、例えば、上記のような基である。例は、CH3CO-(アセチル)、CH3CH2CO-、CH3(CH2)2CO-、CH3(CH2)3CO-、(CH3)3CCO-、及び(CH3)3CCH2CO-である。炭素原子数1〜7のアシルオキシ基は、-OC(O)R基(Rは炭素原子数1〜6のアルキル基である)であり、例えば、上記のような基である。例は、H3CC(O)O-(アセチルオキシ)、CH3CH2C(O)O-、CH3(CH2)2C(O)O-、CH3(CH2)3C(O)O-、(CH3)3CC(O)O-、及び(CH3)3CCH2C(O)O-である。炭素原子数1〜7のカルボアルコキシ基は、-CO2R基(Rは炭素原子数1〜6のアルキル基である)であり、例えば、上記のような基である。例は、-CO2CH3(カルボメトキシ)、-CO2CH2CH3、-CO2(CH2)2CH3、-CO2(CH2)3CH3、-CO2C(CH3)3(カルボ-t-ブトキシ)、-CO2CH2C(CH3)3、-CO2(CH2)4CH3、及び-CO2(CH2)5CH3である。
【0024】
R3、R6、及びR7はそれぞれ-CH2-である。
【0025】
各R8及びR9はそれぞれ独立して、水素もしくはメチル、又はこれらの混成であり、典型的には水素である。
【0026】
各R10は、水素、ヒドロキシル、炭素原子数1〜6のアルキル、フェニル、置換型フェニル、ベンジル、又はこれらの混成である。炭素原子数1〜6のアルキル及び置換型フェニル基の例は上記の通りである。R10は典型的には、水素、ヒドロキシル、メチル、フェニル、シクロヘキシル、ベンジル、又はこれらの混成である。
【0027】
各R11は独立して、水素、メチル、又はこれらの混成である。
【0028】
各R12は独立して、水素、炭素原子数1〜6のアルキル、フェニル、又はこれらの混成であり、典型的には水素、メチル、又はこれらの混成である。
【0029】
コポリマーの調製
ノルボルネン及びいくつかの置換型ノルボルネン、グループ(a)のモノマーが商業的に入手可能である。当業者には明らかなように、ディールス-アルダー反応によって、グループ(a)の或る特定のモノマーを調製することができる。シクロペンタジエンと適切なオレフィンとをディールス-アルダー反応させることにより、多くの置換型ノルボルネンを調製することができる。シクロペンタジエン二量体を熱分解することにより、シクロペンタジエンが典型的に調製される。t-ブチル5-ノルボルネン-2-カルボキシレートは、例えば、シクロペンタジエンとt-ブチルアクリレートとをディールス-アルダー反応させることにより調製することができる。対応する2-ヒドロキシプロピル・エステルは、シクロペンタジエンと2-ヒドロキシプロピルアクリレートとをディールス-アルダー反応させることにより調製することができる。置換型ノルボルネンの調製、及びコポリマーへの置換型ノルボルネンの変換は、例えば、米国特許第6,593,441号明細書(Jung);同第6,632,930号明細書(Jung);米国特許第6,103,445号明細書(Willson);A.J. Pasquale他、Macromolecules, 34, 8064-8071 (2001)、及びJ. Byers他、J. Photopolym. Sci. Technol., 11(3), 465-474 (1998)に開示されている。引用することによりこれらの開示内容を本明細書に組み入れる。
【0030】
コポリマーは、ラジカル重合によって調製することができる。典型的な調製の場合、グループ(a)モノマーとグループ(b)モノマーとが共重合される。ラジカル重合は当業者によく知られており、例えば、Macromolecules(マクロ分子)第2巻、第2版、H.G. Elias編、Plenum, New York, 1984の第20章及び21章に記載されている。有用なフリーラジカル開始剤は、過酸化物、例えば、過酸化ベンゾイル、ヒドロペルオキシド、例えば、クミルヒドロペルオキシド、及びアゾ化合物、例えば、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)である。連鎖移動剤、例えば、ドデシルメルカプタンを使用して、化合物の分子量を制御することができる。電子不足オレフィン、例えば、無水マレイン酸又はマレイミドがグループ(b)モノマーとして使用される場合、1:1の交互コポリマーが典型的には生成される。ラジカル重合に適した溶剤は、反応物質に対して不活性でありそして反応に特に不都合な影響を及ぼすことがない液体、例えば、水;エステル、例えば、エチルアセテート及びブチルアセテート;ケトン、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、及びアセトン;アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピル、n-プロパノール、2-メトキシエタノール(メチルCELLOSOLVE(商標))、n-ブタノール;エーテル、例えば、ジオキサン及びテトラヒドロフラン;及びこれらの混成を含む。
【0031】
グループ(a)のモノマーは例えば、ノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン)及びその誘導体、例えば、メチル-5-ノルボルネン-2-カルボキシレート、t-ブチル5-ノルボルネン-2-カルボキシレート、及び5-ノルボルネン-2-カルボン酸のその他のエステル;シス-5-ノルボルネン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物、及び対応するイミド、例えば、N-メチル、N-ヒドロキシル、N-フェニル、N-シクロヘキシル、及びN-ベンジルイミド;テトラシクロドデセン(テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデス-3-エン)及びその誘導体、例えば、(テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデス-3-エン-8-カルボン酸のエステル、例えば、メチル(テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデス-3-エン)-8-カルボキシレート、エチル(テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデス-3-エン)-8-カルボキシレート、及びt-ブチル(テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデス-3-エン)-8-カルボキシレート;(テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデス-3-エン-エンド-8,9-ジカルボン酸及びその対応イミド、例えば、N-メチル、N-ヒドロキシル、N-フェニル、N-シクロヘキシル、及びN-ベンジルイミド;及びこれらの混成を含む。
【0032】
グループ(b)のモノマーは例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ヒドロキシスチレン、アクリル酸エステル、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、及びフェニルアクリレート;メタクリル酸エステル、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、及びフェニルメタクリレート;メタクリルアミド及びアクリルアミド、例えば、メタクリルアミド、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、及びp-アミノ安息香酸のアクリルアミド及びメタクリルアミド;無水マレイン酸;マレイン酸イミド、例えば、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-メチルマレイミド、N-ヒドロキシマレイミド;ビニルエーテル、例えば、メチルビニルエーテル及びエチルビニルエーテル;及びこれらの混成を含む。
【0033】
上部層内に、1種又は2種以上の他の付加されたポリマーが存在してもよい。追加されるポリマーは、これが存在する場合、上部層の約0.1重量%〜約50重量%、好ましくは約1重量%〜約20重量%を占める。追加されるポリマーは、典型的にはフェノール樹脂、例えば、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、又はポリビニルフェノールである。追加される好ましい樹脂は、存在するのであれば、ノボラック樹脂である。
【0034】
ノボラック樹脂は商業的に入手可能であり、そして当業者によく知られている。これらの樹脂は典型的には、フェノール、例えば、フェノール、m-クレゾール、o-クレゾール、p-クレゾールなどと、アルデヒド、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなど、又はケトン、例えば、アセトンとを酸触媒の存在において縮合反応させることにより調製される。重量平均分子量は典型的には、約1,000〜15,000である。典型的なノボラック樹脂は例えば、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール-クレゾール-ホルムアルデヒド樹脂、p-t-ブチルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂、及びピロガロール-アセトン樹脂を含む。重量平均分子量10,000以上の溶剤可溶性ノボラック樹脂;10モル%以上のp-クレゾールを含む、重量平均分子量8,000以上の溶剤可溶性m-クレゾール/p-クレゾール・ノボラック樹脂;及びこれらの混合物が特に有用であり得る。
【0035】
上部層はその他の成分、例えば、画像形成性要素のコンベンショナルな成分である色素(染料、dye)及び界面活性剤を含むこともできる。界面活性剤、例えば、フッ素化界面活性剤、又はポリエトキシル化ジメチルポリシロキサン・コポリマー、又は界面活性剤の混合物が、塗布用溶剤中に他の成分を分散させるのを助けるように、且つ/又は塗布助剤として作用するように、存在することができる。画像形成され、そして/又は現像された要素の目視検査を補助するように、色素が存在してよい。プリントアウト色素は、処理中に未露光領域から露光された領域を区別する。コントラスト色素は、現像された画像形成性要素、すなわち、結果として生じた平版印刷版における画像形成された領域から画像未形成領域を区別する。
【0036】
下部層
下部層はこれが存在する場合、上部層と基体との間にある。下部層は、基体の上方にあり、典型的には基体上にある。下部層は、現像剤によって除去可能な高分子材料を含み、そして好ましくは現像剤中に可溶性である。加えて、高分子材料は好ましくは、上部層を塗布するために使用される溶剤中には不溶性であるので、下部層を溶解させることなしに、上部層を下部層上に塗布することができる。他の成分、追加のポリマー、光熱変換材料、及び界面活性剤が下部層内に存在していてもよい。有用な高分子材料は、カルボキシ官能性アクリル、ビニルアセテート/クロトネート/ビニルネオデカノエート・コポリマー、スチレン無水マレイン酸コポリマー、フェノール樹脂、マレイン酸処理ウッド・ロジン、及びこれらの組み合わせを含む。湿し水及び攻撃的な洗剤の両方に対する耐性を提供する下部層が、米国特許第6,294,311号明細書(Shimazu)に開示されている。
【0037】
特に有用な高分子材料は、ポリビニルアセタール、及び、N置換型マレイミド、特にN-フェニルマレイミド;メタクリルアミド、特にメタクリルアミドと、アクリル酸及び/又はメタクリル酸、特にメタクリル酸とを含むコポリマーである。このタイプの好ましい高分子材料は、N-フェニルマレイミド、メタクリルアミド及びメタクリル酸から成るコポリマーであり、より好ましくは、約25〜約75モル%、好ましくは約35〜約60モル%のN-フェニルマレイミド;約10〜約50モル%、好ましくは約15〜約40モル%のメタクリルアミド;及び約5〜約30モル%、好ましくは約10〜約30モル%のメタクリル酸を含有するコポリマーである。メタクリルアミドのうちのいくらか又は全ての代わりに、他の親水性モノマー、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレートを使用することができる。メタクリルアミドのうちのいくらか又は全ての代わりに、他のアルカリ可溶性モノマー、例えば、アクリル酸を使用することもできる。これらの高分子材料は、下部層のための塗布用溶剤として使用することができる乳酸メチル/メタノール/ジオキソラン(15:42.5:42.5重量%)混合物中に可溶性である。しかし、これらの高分子材料は、アセトン及びトルエンのような溶剤中には溶けにくい。アセトン及びトルエンは、下部層を溶解させることなしに、下部層上に上部層を塗布するための溶剤として使用することができる。2003年8月14日付けで出願された米国特許出願第10/641,888号明細書;2004年4月8日付けで出願された米国特許出願第10/820,546号明細書;及び米国特許第6,893,783明細書(Kitson他)に開示された、ベーキング可能な下部層を使用することもできる。
【0038】
下部層は、1種又は2種以上の他の高分子材料を含むこともできる。ただし、これらの高分子材料の添加が、下部層の耐薬品性及び溶解特性に不都合な影響を与えないことを条件とする。好ましい他の高分子材料は、存在する場合は、ノボラック樹脂である。ノボラック樹脂を添加すると、現像後のベーキング・プロセスにより印刷部材の連続運転時間を改善することができる。
【0039】
光熱変換材料
赤外線で画像形成されるべき画像形成性層は、典型的には、光熱変換材料として知られる赤外線吸収剤を含む。光熱変換材料は輻射線を吸収し、そしてこれを熱に変換する。光熱変換材料は上部層内、下部層内、及び/又は上部層と下部層との間の別個の吸収体層内に存在してよい。光熱変換材料は高温体で画像形成するのに必要というわけではないが、光熱変換材料を含有する画像形成性要素を、高温体、例えば、サーマルヘッド又はサーマルヘッド・アレイで画像形成することもできる。
【0040】
光熱変換材料は、輻射線を吸収し、そしてこれを熱に変換することができる任意の材料であってよい。好適な材料は色素及び顔料を含む。好適な顔料は例えば、カーボンブラック、ヘリオゲン・グリーン、ニグロシン・ベース、酸化鉄(III)、酸化マンガン、プリシアン・ブルー、及びパリス・ブルーを含む。顔料粒子のサイズは、顔料を含有する層の厚さを上回るべきではない。好ましくは、粒子のサイズは、層の厚さの半分以下になる。
【0041】
光熱変換材料は、適切な吸収スペクトル及び溶解度を有する色素であってよい。色素、特に750 nm〜1200 nmの高い吸光係数を有する色素が好ましい。好適な色素の例は、以下のクラス:メチン、ポリメチン、アリールメチン、シアニン、ヘミシアニン、ストレプトシアニン、スクアリリウム、ピリリウム、オキソノール、ナフトキノン、アントラキノン、ポルフィリン、アゾ、クロコニウム、トリアリールアミン、チアゾリウム、インドリウム、オキサゾリウム、インドシアニン、インドトリカルボシアニン、オキサトリカルボシアニン、フタロシアニン、チオシアニン、チアトリカルボシアニン、メロシアニン、クリプトシアニン、ナフタロシアニン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、カルコゲノピリロアリーリデン、及びビス(カルコゲノピリロ)ポリメチン、オキシインドリジン、ピラゾリンアゾ、及びオキサジンのクラス、の色素を含む。吸収色素は、数多くの刊行物、例えば、欧州特許第0 823 327号明細書(Nagasaka);米国特許第4,973,572号明細書(DeBoer);同第5,244,771号明細書(Jandrue);同第5,208,135号明細書(Patel他);及び同第5,401,618号明細書(Chapman)に開示されている。有用な吸収色素の他の例は、ADS-830A及びADS-1064(American Dye Source, カナダ国Montreal)、EC2117(FEW, ドイツ国Wolfen)、Cyasorb IR 99及びCyasorb IR 165(Glendale Protective Technology)、Epolite IV-62B及びEpolite III-178(Epoline)、SpectraIR 830A及びSpectraIR 840A(Spectra Colors)、並びに下に示される構造を有するIR色素、及び下に示される構造を有するIR色素A及びIR色素Bを含む。
【0042】
【化5】

【0043】
水溶性光熱変換材料は、例えば、1つ又は2つ以上のスルフェート及び/又はスルホネート基を有するシアニン色素を含む。2〜4つのスルホネート基を含有する他の赤外線吸収性シアニン・アニオンが、例えば、米国特許第5,107,063号明細書(West);同第5,972,838号明細書(Pearce);同第6,187,502号明細書(Chapman);同第5,330,884号明細書(Fabricius);及び特開昭63-033477号公報に開示されている。ポリスルホネート・アニオンを用いたシアニン色素の調製が、例えば、米国特許出願公開第2005/0113546号明細書に開示されている。N-アルキルスルフェートシアニン化合物の調製が、例えば、米国特許出願公開第2005/0130059号明細書に開示されている。
【0044】
要素中に存在する光熱変換材料の量は、一般には、画像形成波長において光学濃度0.05以上、好ましくは光学濃度約0.5から約2以上〜3を提供するのに十分である。当業者によく知られているように、特定の波長において特定の光学濃度を生成するのに必要な化合物の量は、Beerの法則を用いて決定することができる。存在する量は、選択された化合物に依存するが、光熱変換材料が下部層内だけに、又は上部層内にだけ存在する場合には、光熱変換材料は典型的には、層の約0.2重量%〜約8重量%、より典型的には約0.5重量%〜約4重量%を占める。
【0045】
他の層
光熱変換材料は別個の吸収体層内に存在してよい。吸収体層が存在するときには、この層は上部層と下部層との間に位置し、或いは下部層が存在しない場合には、上部層と基体との間に位置する。吸収体層は好ましくは、光熱変換材料と、任意には界面活性剤とから本質的に成る。光熱変換材料が別個の吸収体層内に存在する場合には、光熱変換材料の使用量を少なくすることが可能である。吸収体層は好ましくは、画像形成用輻射線の90%以上、好ましくは99%以上を吸収するのに十分な厚さを有する。典型的には、吸収体層の塗布重量は、約0.02 g/m2〜約2 g/m2、好ましくは約0.05 g/m2〜約1.5 g/m2である。吸収体層を含む要素は、米国特許第6,593,055号明細書(Shimazu)に開示されている。
【0046】
画像形成性要素の製造中及び貯蔵中に、下部層から上部層への光熱変換材料の移動を最小限に抑えるために、要素は下部層と上部層との間にバリヤ層を含んでよい。バリヤ層は、現像剤中に可溶性の高分子材料を含む。この高分子材料が下部層内の高分子材料とは異なる場合、この材料は、下部層内の高分子材料が不溶性である1種以上の有機溶剤中に可溶性であることが好ましい。バリヤ層のための好ましい高分子材料はポリビニルアルコールである。バリヤ層内の高分子材料が下部層内の高分子材料と異なる場合、バリヤ層の厚さは、下部層の厚さの約5分の1未満、好ましくは下部層の厚さの約10分の1未満であるべきである。バリヤ層を含む画像形成性要素は、米国特許第6,723,490号明細書(Patel)に開示されている。
【0047】
基体
基体は支持体を含む。支持体は、平版印刷版として有用な画像形成性要素を調製するために従来使用されている任意の材料であってよい。支持体は、強力であり、安定であり、そして可撓性であることが好ましい。支持体は、色記録がフルカラー画像で表されるような使用条件下では、寸法の変化に抵抗すべきである。典型的には、支持体はいかなる自立型材料であってもよく、例えば、高分子フィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート・フィルム、セラミック、金属、又は剛性紙、又はこれらの材料のうちのいずれかのラミネーションを含む。金属材料は、アルミニウム、亜鉛、チタン及びこれらの合金を含む。
【0048】
典型的には、高分子フィルムは、後続の層との付着性を改善するために、一方又は両方の表面上に下塗り層を含有する。この層又はこれらの層の性質は、基体及び後続の層の組成に依存する。下塗り層材料の例は、付着促進材料、例えば、アルコキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、及びエポキシ官能性ポリマー、並びに、写真フィルム内のポリエステル・ベース上に使用されるコンベンショナルな下塗り材料である。
【0049】
基体は、これがアルミニウム又はアルミニウム合金から成るシートを含む場合、印刷から生じる摩耗に耐えるのに十分な厚さを有し、また印刷プレス内で胴に巻き付けるのに十分に薄くあるべきであり、その厚さは典型的には約100 μm〜約600 μmである。支持体は典型的には、当業者に知られた種々の方法によって清浄化され、粗面化され、そして陽極酸化される。最初に、界面活性剤、有機溶剤、又はアルカリ性水溶液を用いた脱脂処理を典型的に施すことにより、シート表面から油脂を除去する。次いで、よく知られた技術、例えば、機械的粗面化(例えば、ボール研磨、ブラシ研磨、ブラスト研磨、及びバフ研磨)、化学的粗面化(表面を選択的に溶解することにより表面を粗面化する)、又は電気化学的粗面化、又はこのような化学的、機械的、及び/又は電気化学的処理の組み合わせ(マルチ・グレイニング)によって、表面を粗面化することができる。高温の酸性溶液(例えば、硫酸又はリン酸)又はアルカリ性溶液(水酸化ナトリウム、又は水酸化ナトリウムと混合されたリン酸三ナトリウム)を使用して、基体のエッチングが行われる。陽極酸化を行うことにより、表面の酸化アルミニウム親水性層、典型的には0.3 g/m2以上の重量の酸化アルミニウム層を形成することができる。陽極酸化は、電解質、例えば、硫酸、リン酸、クロム酸、ホウ酸、クエン酸、シュウ酸、又はこれらの混合物を含む電解溶液中の陽極として支持体を使用して、電流を通すことにより実施される。陽極酸化は、例えば、米国特許第3,280,734号明細書(Fromson)、及び同第5,152,158号明細書(Chu)に開示されている。
【0050】
次いで、清浄化され、粗面化され、そして陽極酸化された支持体は、アルカリ金属ケイ酸塩、例えば、水性ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、又は典型的にはケイ酸ナトリウムで親水性処理することができる。親水性処理は、例えば、米国特許第2,714,066号明細書(Jewett)、及び同第3,181,461号明細書(Fromson)に記載されている。支持体は、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液中で浸漬されるか、又は電気分解される。
【0051】
典型的には、基体は、アルミニウム支持体と上側の層との間に、中間層を含む。中間層は、例えば、ケイ酸塩、デキストリン、ヘキサフルオロケイ酸、リン酸塩/フッ化物、ポリビニルホスホン酸(PVPA)、ビニルホスホン酸コポリマー、又は水溶性ジアゾ樹脂でアルミニウム支持体を処理することにより、形成することができる。(1)ホスホン酸基及び/又はホスフェート基、及び(2)アルキレングリコール又はポリアルキレングリコール側鎖を含む酸基を含む、中間層材料として有用なコポリマーも、2004年8月20日付けで出願された米国特許出願第10/922,782号明細書に開示されている。この開示内容を引用することにより本明細書中に組み入れる。(1)酸基及び/又はホスホン酸基、及び(2)3つのアルコキシ及び/又はフェノキシ基で置換されたシリル基を含む、中間層材料として有用なコポリマーが、2004年8月27日付けで出願された米国特許出願第10/928,339号明細書に開示されている。引用することにより開示内容を本明細書に組み入れる。
【0052】
支持体の裏側(すなわち、上部層及び下部層とは反対側)には、静電防止剤及び/又はスリップ層又は艶消し層を塗布することにより、画像形成性要素の取り扱い及び「感触」を改善することができる。
【0053】
単層画像形成性要素
別の形態において、本発明は、基体上に上部層を含む画像形成性層に、熱画像形成及び現像を施すことにより、画像を形成する方法である。下部層は画像形成性要素内に存在してもしなくてもよい。画像形成性要素は光熱変換材料を含む。
【0054】
単層画像形成性要素は下部層を含まない。上部層は基体上にあるか、或いは当該要素は、基体と吸収体層と上部層とから成る。要素は光熱変換材料を含み、光熱変換材料は上部層内及び/又は吸収体層内に存在する。上部層はインク受容性である。熱画像形成前には、上部層は、アルカリ性現像剤によって除去することはできないが、しかし熱画像形成後に、上部層の画像形成された領域を、現像剤によって除去することができる。上部層、吸収体層、基体、及び光熱変換材料はそれぞれ上記の通りである。
【0055】
画像形成性要素の調製
「溶剤」及び「塗布用溶剤」という用語は、溶剤の混合物を含む。これらの用語は、材料のうちのいくらか又は全てを溶液中にではなく、溶剤中に懸濁又は分散することができる場合にも使用される。塗布用溶剤は、種々の層内に存在する成分の性質に応じて選択される。画像形成性要素は、順次、基体の親水性表面上に、存在するならば下部層を適用し;下部層上に、もし存在するならば吸収体層又はバリヤ層を適用し;次いで、コンベンショナルな技術を用いて上部層を適用することにより、調製することができる。
【0056】
下部層は、存在する場合は、任意のコンベンショナルな方法、例えば、塗布又はラミネーションによって適用することができる。典型的には、成分は好適な塗布用溶剤中に分散又は溶解され、そして結果として生じた混合物は、コンベンショナルな方法、例えば、スピン塗布、バー塗布、グラビア塗布、ダイ塗布、又はローラ塗布によって塗布される。下部層は、例えば、メチルエチルケトンと、1-メトキシプロパン-2-オルと、γ-ブチロラクトンと、水との混合物;ジエチルケトンと、水と、乳酸メチルと、γ-ブチロラクトンとの混合物;ジエチルケトンと、水と、乳酸メチルとの混合物から適用することができる。
【0057】
バリヤ層を含む画像形成性要素の調製は、米国特許第6,723,490号明細書(Patel)に開示されている。この開示内容を引用することにより本明細書中に組み入れる。吸収体層を含む画像形成性要素の調製は、米国特許第6,593,055号明細書(Shimazu)に開示されている。バリヤ層も吸収体層も存在しない場合には、上部層は下部層上に塗布される。下部層が溶けて上部層と混ざり合うのを防止するために、上部層は、下部層が事実上不溶性である溶剤から塗布されるのがよい。このように、上部層のための塗布用溶剤は、上部層を形成できるほど十分に上部層の成分が可溶性であり、そしていかなる下部層も事実上不溶性であるような溶剤であるのがよい。典型的には、下部層を塗布するために使用される溶剤は、塗布層を塗布するために使用される溶剤よりも極性が大きい。上部層は、例えば、ジエチルケトンから、又はジエチルケトンと1-メトキシ-2-プロピルアセテートとの混合物から適用することができる。中間乾燥工程、すなわち下部層上への上部層の塗布前に下部層を乾燥させて塗布用溶剤を除去する工程を利用して、層の混合を防止することもできる。
【0058】
或いは、下部層、上部層、又は両方の層は、層成分の溶融混合物から、コンベンショナルな押出塗布法によって適用することもできる。典型的には、このような溶融混合物は揮発性有機溶剤を含有しない。
【0059】
要素が下部層、吸収体層、又はバリヤ層を含まない場合には、上部層は基体の上に直接に塗布される。
【0060】
画像形成及び処理
画像形成性要素は、画像形成性要素によって吸収される波長領域内で、変調された近赤外線又は赤外線を発光するレーザー又はレーザー・アレイを用いて熱画像形成することができる。赤外線、特に約800 nm〜約1200 nmの赤外線が、画像形成のために典型的に使用される。画像形成は従来、約830 nm、約1056 nm、又は約1064 nmで発光するレーザーを用いて行われる。商業的に入手可能な好適な画像形成装置は、画像セッター、例えば、CREO(商標) Trendsetter (Creo,カナダ国British Columbia, Burnaby)、Screen PlateRiteモデル4300、モデル8600及びモデル8800(Screen, Rolling Meadows, 米国Illinois, Chicago,)、及びGeber Crescent 42T (Gerber Systems,米国CT, South Windsor)を含む。
【0061】
或いは、画像形成性要素は、高温体、例えば、サーマル印刷ヘッドを含有するコンベンショナルな装置を使用して熱画像形成することもできる。好適な装置は少なくとも1つのサーマルヘッドを含むが、しかし普通はサーマルヘッド・アレイを含み、例えば、サーマル・ファクス機及び昇華プリンター内で使用されるTDKモデルNo. LV5416、GS618-400サーマル・プロッター(Oyo Instruments,米国TX, Houston)、又はModel VP-3500 サーマル・プリンター(Seikosha America,米国NJ, Mahwah)である。
【0062】
画像形成により、画像形成された(露光済)領域と、相補的な画像未形成(未露光)領域との潜像を含む画像形成済要素が生成される。印刷版又は印刷フォームを形成するために画像形成された要素を現像すると、画像形成された領域が除去され、下側の基体の親水性表面が露出されることにより、潜像が画像に変換される。
【0063】
現像剤は、相補的な画像未形成領域に実質的な影響を及ぼすことなしに、上部層の画像形成された領域、存在する場合は、下側に位置する吸収体層又はバリヤ層の領域、及び下側に位置する下部層領域に浸透してこれらの領域を除去することができるいかなる液体又は溶液であってもよい。現像は、上部層の画像形成された領域、もし存在するならば下側に位置する吸収体層又はバリヤ層の領域、及び下側に位置する下部層領域を現像剤中で除去するのに十分に長い時間にわたって行われるが、しかし、上部層の画像未形成領域を除去するほど長くは行われない。従って、画像形成された領域は、現像剤中で「可溶性」又は「除去可能」として記述される。なぜならば、これらは現像剤中で、画像未形成領域よりも迅速に除去され、そして溶解及び/又は分散されるからである。典型的には、下部層は現像剤中で溶解され、吸収体層は、現像剤中で溶解又は分散され、そして上部層は現像剤中で分散される。
【0064】
典型的にはネガ型の画像形成性要素とともに使用される溶剤系アルカリ性現像剤は、本発明の画像形成性要素とともに使用するための優れた現像剤である。溶剤系現像剤は有機溶剤又は有機溶剤の混合物を含む。現像剤は単一相である。従って、相分離が生じないように、有機溶剤は水と混和性であるか、或いは、少なくとも、現像剤に添加される範囲で現像剤中に可溶性でなければならない。下記溶剤及びこれらの溶剤の混合物は、現像剤中の使用に適している:フェノールと、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドとの反応生成物、例えば、エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール);ベンジルアルコール;エチレングリコール及びプロピレングリコールと、炭素原子数6以下の酸とのエステル;及びエチレングリコール、ジエチレングリコール、及びプロピレングリコールと、炭素原子数6以下のアルキル基とのエーテル、例えば、2-エチルエタノール及び2-ブトキシエタノール。単一の有機溶剤又は有機溶剤の混合物を使用することができる。有機溶剤は典型的には、現像剤の重量を基準として約0.5重量%〜約15重量%、好ましくは現像剤の重量を基準として約3重量%〜約5重量%の濃度で、現像剤中に存在する。商業的に入手可能な有用な溶剤系現像剤は、956 現像剤及び955 現像剤(Kodak Polychrome Graphics, 米国CT Norwalk)を含む。他の有用な現像剤は、pHが約7以上の水溶液である。典型的な水性アルカリ性現像剤は、pHが8.0〜約13.5、典型的には約11以上、好ましくは約12以上の現像剤である。有用な商業的に入手可能な水性アルカリ性現像剤は、3000 現像剤及び9000 現像剤(Kodak Polychrome Graphics, 米国CT Norwalk)を含む。
【0065】
現像剤は、界面活性剤又は界面活性剤の混合物を含んでもよい。好ましい界面活性剤は、アルキルナフタレンスルホネートのアルカリ金属塩;典型的には炭素原子数6〜9の脂肪族アルコールの硫酸モノエステルのアルカリ金属塩;及び典型的には炭素原子数6〜9のアルカリ金属スルホネートを含む。好ましいアルカリ金属はナトリウムである。界面活性剤又は界面活性剤の混合物は典型的には、現像剤の重量を基準として約0.5重量%〜約15重量%、好ましくは現像剤の重量を基準として約3重量%〜約8重量%を占める。現像剤は、pHを比較的一定に、典型的には約5.0〜約12.0、好ましくは約6.0〜約11.0、より好ましくは約8.0〜約10.0に維持するために、緩衝剤系を含んでもよい。数多くの緩衝剤系が当業者に知られている。典型的には緩衝剤系は、例えば、水溶性アミン、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、又はトリ-i-プロピルアミンと、スルホン酸、例えば、ベンゼンスルホン酸又は4-トルエンスルホン酸との組み合わせ;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の四ナトリウム塩とEDTAとの混合物;リン酸塩の混合物、例えば、モノ-アルカリリン酸塩とトリ-アルカリリン酸塩との混合物;及びアルカリホウ酸塩とホウ酸との混合物を含む。水が典型的には、現像剤の残余を構成する。
【0066】
現像剤は典型的には、露光済領域を除去するのに十分な力で要素に噴霧することにより、前駆体に適用される。或いは、浸漬型現像浴、水ですすぐための区分、ガミング処理区分、乾燥区分、及び導電性測定ユニットを備えた処理装置内で現像を行うこともでき、或いは、画像形成済前駆体を現像剤でブラシ処理することができる。それぞれの事例において、印刷版が生成される。現像は、商業的に入手可能な噴霧処理装置、例えば、85 NS(Kodak Polychrome Graphics)内で好都合に行うことができる。
【0067】
現像に続いて、印刷版は水ですすがれ、乾燥させられる。乾燥は赤外線ラジエーターによって、又は温風で好都合に行うことができる。乾燥後には、印刷版はガミング溶液で処理することができる。ガミング溶液は、1種又は2種以上の水溶性ポリマー、例えば、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸、ポリメタクリルアミド、ポリビニルメチルエーテル、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ゼラチン、及び多糖、例えば、デキストラン、プルラン、アラビアゴム、及びアルギン酸を含む。好ましい材料は、アラビアゴムである。
【0068】
現像済され、ガミング処理された版はベーキング処理することにより、版の連続運転時間を長くすることもできる。ベーキング処理は、例えば、約220℃〜約240℃で約7分〜10分にわたって、又は約120℃の温度で約30分にわたって行うこともできる。
【0069】
産業上の利用可能性
本発明の画像形成性要素は、印刷室の薬品、例えば、グリコールエーテル及びジアセトンアルコールに対する優れた耐性、良好な耐現像剤性、及び良好な湿潤貯蔵寿命を有する。これらの要素は、水性アルカリ性現像剤で熱画像形成し、そして現像することにより、平版印刷版を形成することができる。画像形成性要素を画像形成し、そして現像することにより、平版印刷版を形成したら、湿し水、次いで平版印刷用インクをその表面上の画像に着けることにより、印刷を行うことができる。湿し水は、画像形成及び現像プロセスによって露出された親水性基体の表面によって取り込まれ、そしてインクは、現像プロセスによって除去されていない層領域によって取り込まれる。次いでインクを好適な受容材料(例えば、布地、紙、金属、ガラス、又はプラスチック)に、直接的に又はオフセット印刷ブランケットを使用して間接的に転写することにより、受容材料上に画像の所望の刷りを提供する。
【実施例】
【0070】
本発明の有利な特性は、下記例を参照することにより観察することができるが、これらの例は本発明を限定するものではない。
【0071】
用語解説
956現像剤:溶剤系(フェノキシエタノール)アルカリ性ネガティブ現像剤(Kodak Polychrome Graphics, 米国CT Norwalk)
AIBN:2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(DuPont, 米国Delaware, Wilmington)
BC:2-ブトキシエタノール
BYK 307:ポリエトキシル化ジメチルポリシロキサン・コポリマー(BYK Chemie, 米国CT Wallingford)
【0072】
CREO(商標) Trendsetter 3244x:Procom Plusソフトウェアを使用し、830 nmで発光するレーザー・ダイオード・アレイを有する商業的に入手可能なプレート・セッター(Creo Products, カナダ国BC, Burnaby)
DAA:ジアセトンアルコール(4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)
現像剤A:1部のND1ネガティブ現像剤及び4部の水
DUREZ(商標)33816:ノボラック樹脂、70% m-クレゾール/30% p-クレゾール;MW 45,000、溶剤縮合によって製造(Durez, 米国NY, Grand island)
エチル・バイオレット:C.I. 42600; CAS 2390-59-2(ラムダmax=596 nm)
[(p-(CH3CH2)2NC6H4)3C+CI-](Aldrich, 米国WI, Milwaukee)
【0073】
Electra Excel(商標):感熱性、ポジ型、単層の条件抑制ノボラック含有印刷版前駆体(Kodak Polychrome Graphics, 米国CT Norwalk)
Goldstar(商標)現像剤:メタケイ酸ナトリウムを基剤とする水性アルカリ性現像剤(Kodak Polychrome Graphics, 米国CT Norwalk)
IR色素A:赤外線吸収色素(Eastman Kodak, 米国NY Rochester)(ラムダmax=830 nm) (上記構造参照)
IR色素C:2-[2-[2-クロロ-3-[(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-インドル-2-イリデン)エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]エテニル]-1,3,3-トリメチル-3H-ヨードニウムブロミド(Honeywell Specialty Chemicals, Morristown, 米国NJ)
LB-6564:フェノール/クレゾール・ノボラック樹脂(Bakelite AG, 英国Southampton)
ND-1現像剤:ネガティブ現像剤(Kodak Polychrome Graphics, 米国CT Norwalk)
【0074】
ポリマー1:N-フェニルマレイミド(41.5モル%)、メタクリルアミド(37.5モル%)、及びメタクリル酸(21モル%)のコポリマー
SILIKOPHEN(商標)P50X:フェニルメチルポリシロキサン樹脂(Tego Chemie Service, 独国Essen)
基体A:電気グレイニング、陽極酸化、及びポリビニルホスホン酸の溶液による処理を施された、0.3 mmゲージのアルミニウム・シート
基体B:電気グレイニング、陽極酸化、及び無機リン酸塩の溶液による処理を施された、0.3 mmゲージのアルミニウム・シート
SWORD(商標)Excel(商標):感熱性、ポジ型、多層の印刷版前駆体(Kodak Polychrome Graphics, 米国CT Norwalk)
XDSA:1,3-ジメチル-4,6-ベンゼンジスルホンアニリド
【0075】
評価手順
現像剤液滴試験:22℃で最大5分間にわたって30秒間のインターバルで、上部層表面上に大きな現像剤液滴を置いた。攻撃の最初の視覚的徴候が現れた時間、及び上部層を完全に除去するための時間を記録した。
【0076】
耐溶剤性液滴試験:22℃で最大16分間にわたって2分間のインターバルで、2-ブトキシエタノール(ブチルCELLOSOLVE(商標))(水中80%)又はジアセトンアルコール(水中80%)の大きな液滴を上部層表面上に置いた。上部層に対する損傷が発生する時間を観察した。除去された上部層の量を評価した(1=除去なし;10=完全除去)。
【0077】
画像形成・処理試験:プロット0及びプロット12内部試験パターンを使用して、画像形成性要素をCREO(商標) Trendsetter 3244上で8ワットで熱画像形成した。画像形成エネルギーは、136、115、100、88、及び79 mJ/cm2であった。その結果として生じた画像形成された画像形成性要素を、現像剤A及び浸漬時間12秒を用いて、PK910II処理装置(Kodak Polychrome Graphics, 米国CT Norwalk)内で30℃で現像した。結果として得られる平版印刷版をクリーンアウト(画像形成された領域が現像剤によって完全に除去されるときの最低画像形成エネルギー)、及び最良解像(印刷版が最良に機能するときの画像形成エネルギー)に関して評価した。
【0078】
例1
加熱マントル、撹拌器、温度計、及び凝縮器を備えた500 ml反応ケトルに、無水マレイン酸(20.41 g)、ノルボルネン(19.59 g)、及び乾燥ジオキソラン(136 g)を添加した。混合物を窒素雰囲気下で60℃まで加熱し、そして窒素流入管を介して1時間にわたって混合物全体にわたって窒素を発泡させた。次いで、窒素流入管を溶液から取り外し、そしてAIBN(0.3 g)を添加した。反応混合物を窒素雰囲気下でさらに24時間にわたって60℃で加熱した。
【0079】
反応混合物を冷却し、そして2Lのジエチルエーテル/ヘキサン(50/50容積:容積比)中に注いだ。コポリマーを濾過し、ジエチルエーテル/ヘキサンで数回洗浄し、そして50℃で48時間にわたって乾燥させた。収量:25 g(62.5 %)。
【0080】
コポリマーは下記構造を有すると考えられる:
【0081】
【化6】

【0082】
例2
例1の手順をN-フェニルマレイミド(25.91 g)及びノルボルネン(14.09 g)で繰り返した。AIBN添加後、20時間にわたって60℃で加熱し続けた。収量:19.0 g(47.5 %)。
【0083】
コポリマーは下記構造を有すると考えられる:
【0084】
【化7】

【0085】
例3
下記手順によって画像形成性要素を調製した。
下部層:2-ブタノン/1-メトキシ-2-プロパノール/ガンマ-ブチロラクトン/水(65:15:10:10重量比)の混合物中に、84.5重量%のポリマー1と、15重量%のIR色素Aと、0.5重量%のBYK 307とから成る6.5重量%の混合物を含有する塗布用溶液を、0.03インチ巻線バーを使用して基体A上に塗布し、そしてその結果生じた要素を35秒間にわたって135℃で乾燥させた。下部層の塗布重量:1.5 g/m2
【0086】
上部層:ジエチルケトン/1-メトキシ-2-プロパノールアセテート中に、例1において形成された99.1重量%のコポリマーと、0.4重量%のエチル・バイオレットと、0.5重量%のBYK 307とから成る7.1重量%の混合物を含有する塗布用溶液を、0.015 cm(0.006インチ)巻線バーを使用して下部層上に塗布し、そしてその結果生じた要素を35秒間にわたって135℃で乾燥させた。上部層の塗布重量:0.7 g/m2
【0087】
例4
例3の手順を繰り返した。ただしこの例では、例1で形成されたコポリマーの代わりに、例2で形成されたコポリマーを上部層内に使用した。
【0088】
例5
例3及び4で調製された画像形成性要素を、現像剤Aを用いた現像剤液滴試験、耐溶剤性液滴試験、及び画像形成・処理試験において評価した。結果を表1、2及び3に示す。SWORD(商標)Excel(商標)平版印刷版前駆体を、比較のために使用した。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
【表3】

【0092】
例6
例3において調製された画像形成性要素を、0、1、3又は5日間にわたって、40℃及び80%相対湿度の湿潤チャンバー内に置き、そして例5に記載したように評価した。結果を表4、5及び6に示す。
【0093】
【表4】

【0094】
【表5】

【0095】
【表6】

【0096】
例7
例3で調製された画像形成性要素を、956現像剤を使用して現像剤液滴試験において評価した。この画像形成性要素を画像形成・処理試験においても評価したが、ただしこの例では、画像形成を126、119、105、100、95、90、86、82、及び79 mJ/cm2で実施し、そして画像形成された画像形成性要素は、処理速度3.5フィート/分で956現像剤中で現像した。結果は次の通りである:
【0097】
956現像剤を用いた液滴試験 120秒
クリーンアウト 79 mJ/cm2
最良解像 105 mJ/cm2
【0098】
例8
SWORD(商標)Excel(商標)画像形成性要素、及び例3で生成された画像形成性要素を、パンチを使用してそれぞれカットして、直径4インチの4つのディスクにした。各ディスクを秤量し、次いでBC/水(80/20容積比、1分間)中に浸漬し、すすぎ、30分間にわたって150℃の炉内で乾燥させ、10分間冷却し、そして再秤量した。次いで各ディスクを1時間にわたって550℃の炉内に置くことにより、上部層及び下部層を除去し、10分間冷却し、そして秤量した。BC/水(80:20)中に浸すことにより除去された上部層及び下部層のパーセンテージを計算した。
【0099】
BC/水(80:20)中に2、4、8及び16分間にわたって浸漬することによって、試験を繰り返した。DAA水(80:20)中に1、2、4、8及び16分間にわたって浸漬することによって、試験を繰り返した。結果は表7に示す。
【0100】
【表7】

【0101】
SWORD(商標)Excel(商標)画像形成性要素は上部層及び下部層の約29%を1分間で失った。これは上部層の損失に相当する。更なる漸次の重量損失は、耐溶剤性がより高い下部層の損失に起因するものであった。例3において調製された画像形成性要素は、BC/水(20:20)及びDAA/水(20:20)の両方に対して耐性である。
【0102】
例9
この例では、単層印刷版前駆体を示す。下記成分(組成物中の総固形分量を基準とする)を含有する塗布用溶液を、2-ブタノン/1-メトキシプロパン-2-オル/ガンマ-ブチロラクトン/水(65:15:10:10重量)中で調製した:37.7重量%のLB-6564;31.5重量%のDUREZ(商標)33816;16.9重量%の例1のコポリマー;1.45重量%のIR色素A;0.45重量%のIR色素C;3.9重量%のXDSA;1.9重量%のエチル・バイオレット;5.8重量%のSILIKOPHEN(商標)P50X;及び0.4重量%のBYK 307。塗布用溶液を、巻線バーを使用して基体B上に塗布し、そして90秒間にわたって100℃で乾燥させた。上部層の塗布重量:1.5 g/m2
【0103】
結果として生じた単層画像形成性要素、及びElectra Excel(商標)単層画像形成性要素を、CREO(商標) Trendsetterを使用して、画像形成エネルギー120、130、140、150、160、170、及び180 mJ/cm2で画像形成した。結果として生じた画像形成された画像形成性要素を、Goldstar(商標)現像剤を含有するMERCURY(商標)Mark V浸漬処理装置(Kodak Polychrome Graphics, 米国CT Norwalk)内で、処理速度750 mm/分で23.0℃で処理した。
【0104】
生成された画像を、Gretag MacBeth D19C濃度計(Gretag Macbeth Color Data Systems, 英国The Wirral)で評価した。結果を表7に示す。光学濃度の減少は、現像プロセス中に失われた上部層の量の尺度である。両画像形成性要素は、現像中にほぼ同じ量だけ光学濃度が低減する。しかし、本発明の画像形成性要素は、24時間にわたって湿し水中に浸されたときに、極めて少量しか光学濃度を示さない。
【0105】
【表8】

【0106】
a.最良解像が観察されたときの画像形成エネルギー。
b.印刷版の光学濃度。
c.処理中の画像未形成領域の光学濃度の変化。
d.印刷版が24時間にわたって湿し水中に浸されたときの光学濃度の変化。湿し水は10重量%のi-プロピルアルコール、6重量%のAstro Mark II(BW Darrah, St. Charles, IL, USA)、及び84%の脱イオン水を含有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、該基体上の下部層と、該下部層上の上部層とを含む画像形成性要素であって:
該要素は、光熱変換材料を含み;
該上部層は、インク受容性であり;
熱画像形成前は、該上部層はアルカリ性現像剤によって除去可能ではなく;
熱画像形成により該上部層内に画像形成された領域を形成した後は、該画像形成された領域は該アルカリ性現像剤によって除去可能であり;
該下部層は、アルカリ性現像剤によって除去可能であり;そして
該上部層は、重合形態で、グループ(a)のモノマー及びグループ(b)のモノマーを含むコポリマーから成る群から選択されたコポリマーを含み:
グループ(a)のモノマーが:
【化1】

、及びこれらの混成から成る群から選択され;
グループ(b)のモノマーが:
【化2】

、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、ヒドロキシスチレン、CH(R11)CH(CO2R12)、CH(R11)CH(CON(R12)2)、CH2CH(OR12)、及びこれらの混成
から成る群から選択され;
R1、R2、R4、及びR5はそれぞれ独立して、水素、フェニル、置換型フェニル、ハロゲン、炭素原子数1〜6のアルキル、炭素原子数1〜6のアルコキシ、炭素原子数1〜7のアシル、炭素原子数1〜7のアシルオキシ、炭素原子数1〜7のカルボアルコキシ、又はこれらの混成であり;
R3、R6、及びR7はそれぞれ-CH2-であり;
各R8及びR9はそれぞれ独立して、水素又はメチル、又はこれらの混成であり;
各R10は、水素、ヒドロキシル、炭素原子数1〜6のアルキル、フェニル、置換型フェニル、ベンジル、又はこれらの混成であり;そして、
各R11は、水素、メチル、又はこれらの混成であり;
各R12は、水素、炭素原子数1〜6のアルキル、フェニル、置換型フェニル、又はこれらの混成であり;そして、
該コポリマーは、約15モル%以上のグループ(a)のモノマーと、約10モル%以上のグループ(b)のモノマーとを含む。
【請求項2】
グループ(b)のモノマーが:
【化3】

、及びこれらの混成から成る群から選択され;そして
該上部層が、約90重量%以上の該コポリマーを含む請求項1に記載の要素。
【請求項3】
該上部層が、該光熱変換材料を実質的に有していない請求項1に記載の要素。
【請求項4】
グループ(a)のモノマーが、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、及びこれらの混成から成る群から選択され、そして、グループ(b)のモノマーが、無水マレイン酸、マレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、及びこれらの混成から成る群から選択される請求項3に記載の要素。
【請求項5】
グループ(a)のモノマーが、ノルボルネンである請求項4に記載の要素。
【請求項6】
該コポリマーが、ノルボルネンと、無水マレイン酸、マレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、及びこれらの混成から成る群から選択されるモノマーとの約1:1のコポリマーである請求項1に記載の要素。
【請求項7】
該上部層が、該光熱変換材料を実質的に有しておらず、そして該下部層が、重合形態で、25〜約75モル%のN-フェニルマレイミド;約10〜約50モル%のメタクリルアミド;及び約5〜約30モル%のメタクリル酸を含むコポリマーを含み;そして
該上部層が約90重量%以上の該コポリマーを含む請求項6に記載の要素。
【請求項8】
画像を形成する方法であって、該方法は:
i) 基体と、該基体上の上部層とを含む画像形成性要素を熱画像形成し;そして、画像形成された領域と、相補的な画像未形成領域とを上部層内に含む画像形成された画像形成性要素を形成する工程、
ここで、該要素は、光熱変換材料を含み;
該上部層は、インク受容性であり;
熱画像形成前は、該上部層はアルカリ性現像剤によって除去可能ではなく;
熱画像形成により該上部層内に画像形成された領域を形成した後は、該画像形成された領域は該アルカリ性現像剤によって除去可能であり;
該上部層は、重合形態で、グループ(a)のモノマーとグループ(b)のモノマーとを含むコポリマーから成る群から選択されたコポリマーを含み:
グループ(a)のモノマーは:
【化4】

、及びこれらの混成
から成る群から選択され;
グループ(b)のモノマーは:
【化5】

、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、ヒドロキシスチレン、CH(R11)CH(CO2R12)、CH(R11)CH(CON(R12)2)、CH2CH(OR12)、及びこれらの混成から成る群から選択され;
R1、R2、R4、及びR5は、それぞれ独立して、水素、フェニル、置換型フェニル、ハロゲン、炭素原子数1〜6のアルキル、炭素原子数1〜6のアルコキシ、炭素原子数1〜7のアシル、炭素原子数1〜7のアシルオキシ、炭素原子数1〜7のカルボアルコキシ、又はこれらの混成であり;
R3、R6、及びR7は、それぞれ-CH2-であり;
各R8及びR9は、それぞれ独立して、水素もしくはメチル、又はこれらの混成であり;
各R10は、水素、ヒドロキシル、炭素原子数1〜6のアルキル、フェニル、置換型フェニル、ベンジル、又はこれらの混成であり;そして、
各R11は、水素、メチル、又はこれらの混成であり;
各R12は、水素、炭素原子数1〜6のアルキル、フェニル、置換型フェニル、又はこれらの混成であり;そして、
該コポリマーは、約15モル%以上のグループ(a)のモノマーと、約10モル%以上のグループ(b)のモノマーとを含み;そして
ii) 該画像形成された画像形成性要素を該アルカリ性現像剤で現像し、そして画像形成された領域を除去することにより、該画像を形成する工程
の各工程を含んで成る。
【請求項9】
該上部層が、該基体上にあり、該上部層が、光熱変換材料を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
グループ(b)のモノマーが:
【化6】

、及びこれらの混成から成る群から選択され;そして
該上部層が、約90重量%以上の該コポリマーを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
グループ(a)のモノマーが、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、及びこれらの混成から成る群から選択され、そして、グループ(b)のモノマーが、無水マレイン酸、マレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、及びこれらの混成から成る群から選択される請求項9に記載の方法。
【請求項12】
グループ(a)のモノマーが、ノルボルネンである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該コポリマーが、ノルボルネンと、無水マレイン酸、マレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、及びこれらの混成から成る群から選択されるモノマーとの約1:1のコポリマーであり;そして
該上部層が、約90重量%以上の該コポリマーを含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
該要素が、該上部層と該基体との間に下部層をさらに含み;そして該下部層が、該アルカリ性現像剤によって除去可能である請求項8に記載の方法。
【請求項15】
該上部層が、該光熱変換材料を実質的に有しておらず、そして該下部層が、該基体上にある請求項14に記載の方法。
【請求項16】
グループ(b)のモノマーが:
【化7】

、及びこれらの混成から成る群から選択され;そして
該上部層が、約90重量%以上の該コポリマーを含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
グループ(a)のモノマーが、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、及びこれらの混成から成る群から選択され、そして、グループ(b)のモノマーが、無水マレイン酸、マレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、及びこれらの混成から成る群から選択される請求項15に記載の方法。
【請求項18】
グループ(a)のモノマーが、ノルボルネンである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
該コポリマーが、ノルボルネンと、無水マレイン酸、マレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、及びこれらの混成から成る群から選択されるモノマーとの約1:1のコポリマーである請求項15に記載の方法。
【請求項20】
該下部層が、25〜約75モル%のN-フェニルマレイミド;約10〜約50モル%のメタクリルアミド;及び約5〜約30モル%のメタクリル酸を重合形態で含むコポリマーを含み;
該上部層が、約90重量%以上の該コポリマーを含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
i) 基体と、該基体上の上部層とを含む画像形成性要素を熱画像形成し;そして、画像形成された領域と、相補的な画像未形成領域とを上部層内に含む画像形成された画像形成性要素を形成する工程、
ここで、該要素は、光熱変換材料を含み;
該上部層は、インク受容性であり;
熱画像形成前は、該上部層はアルカリ性現像剤によって除去可能ではなく;
熱画像形成により該上部層内に画像形成された領域を形成した後は、該画像形成された領域は該アルカリ性現像剤によって除去可能であり;
該上部層は、重合形態で、グループ(a)のモノマーとグループ(b)のモノマーとを含むコポリマーから成る群から選択されたコポリマーを含み:
グループ(a)のモノマーが:
【化8】

、及びこれらの混成から成る群から選択され;
グループ(b)のモノマーが:
【化9】

、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、ヒドロキシスチレン、CH(R11)CH(CO2R12)、CH(R11)CH(CON(R12)2)、CH2CH(OR12)、及びこれらの混成から成る群から選択され;
R1、R2、R4、及びR5は、それぞれ独立して、水素、フェニル、置換型フェニル、ハロゲン、炭素原子数1〜6のアルキル、炭素原子数1〜6のアルコキシ、炭素原子数1〜7のアシル、炭素原子数1〜7のアシルオキシ、炭素原子数1〜7のカルボアルコキシ、又はこれらの混成であり;
R3、R6、及びR7は、それぞれ-CH2-であり;
各R8及びR9は、それぞれ独立して、水素又はメチル、又はこれらの混成であり;
各R10は、水素、ヒドロキシル、炭素原子数1〜6のアルキル、フェニル、置換型フェニル、ベンジル、又はこれらの混成であり;そして、
各R11は、水素、メチル、又はこれらの混成であり;
各R12は、水素、炭素原子数1〜6のアルキル、フェニル、置換型フェニル、又はこれらの混成であり;そして、
該コポリマーは、約15モル%以上のグループ(a)のモノマーと、約10モル%以上のグループ(b)のモノマーとを含み;そして
ii) 該画像形成された画像形成性要素を、該アルカリ性現像剤で現像し、そして画像形成された領域を除去することにより、該画像を形成する工程
の各工程を含む方法によって調製された画像。
【請求項22】
該要素が、該上部層と該基体との間に下部層をさらに含み;
該下部層が、該アルカリ性現像剤によって除去可能であり;
該下部層が、基体上にあり;
該上部層が、該光熱変換材料を実質的に有しておらず;
グループ(a)のモノマーが、ノルボルネンであり;
グループ(b)のモノマーが、無水マレイン酸、マレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、及びこれらの混成から成る群から選択され;そして
該上部層が、約90重量%以上の該コポリマーを含む請求項21に記載の画像。

【公表番号】特表2008−518276(P2008−518276A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538984(P2007−538984)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/037445
【国際公開番号】WO2006/047150
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】