説明

脂肪族アルコール類の塩基性エステルおよび抗炎症薬または免疫調整薬としての使用

一般式R1−O−CO−Aで、式中R1はC12〜C24アルキルまたはC10〜C24アルケニルで、Aは少なくとも1つの非環状または環状アミノ基および/または三級または四級窒素原子を含有する少なくとも1つの複素芳香環を含む残基である脂肪族アルコールの塩基性エステル類または製剤上許容されているそれらの塩は抗炎症性および免疫調整薬で、免疫介在炎症の治療および細胞性と体液性応答に関与する抗原のアジュバントとして有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の分野)
本発明は脂肪族アルコールの塩基性エステル類および、それらの特に免疫介在の炎症の治療に有用な抗炎症薬または免疫調整薬として、および細胞性並びに体液性反応の両方が関与する抗原用のアジュバントとしての利用に関する。
略語:アジュバント関節炎:CFA;完全フロインドアジュバント;DTH:遅延型過敏症;EAE:実験的な自己免疫性脳脊髄炎;GA:酢酸グラチラマー;IFA:不完全フロインドアジュバント;IV:静脈内;MBP:ミエリン塩基性タンパク質;MS:多発性硬化症;MSCH:マウス脊髄ホモジネート;OA:オレイルアルコール;PBS:リン酸緩衝食塩水;SC:皮下に
【背景技術】
【0002】
(本発明の背景)
1.炎症
炎症は通常3相に分けられる:急性炎症、免疫応答および慢性炎症である。急性炎症は組織損傷に対する初期の応答であり、ヒスタミン、セロトニン、ブラジキニン、プロスタグランジン群およびロイコトリエン群が介在する。当該免疫応答は通常は急性炎症相が先行し、免疫担当細胞が急性または慢性炎症反応の間に外部有機体または抗原性物質に応じて活性化するときに起こる。宿主への免疫応答の結果は、侵入生物が食細胞に食べられるか中和されるので役に立つ。しかしながら、当該結果は、関節リュウマチで起こるような内在性損傷プロセスの解消がないまま慢性的炎症へと導くと有害なものとなろう。
【0003】
炎症を生じた患者の治療は、患者の呈する症状および主な継続的苦情である組織損傷プロセスの低下または抑制と共に疼痛の軽減に導く。
【0004】
抗炎症薬は通常ステロイド系またはグルココルチコイド系および非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)に分類される。当該グルココルチコイド系は有力な抗炎症剤であるが、長期のコルチコステロイド療法に関する高い毒性はある種の急性炎症状態を除いてはそれらの使用を抑制している。そこで、非ステロイド系抗炎症剤が関節リュウマチのような慢性状態の治療には主な役割を担ってきた。
【0005】
非ステロイド系抗炎症剤の中には、アミノアリールカルボン酸類、アリール酢酸類、アリール酪酸類、アリールカルボン酸類、アリールプロピオン酸類、ピラゾール、ピラゾロン、サリチル酸、および特定の抗関節炎/抗リュウマチ薬を含む幾つかの他の異なる構造の誘導体が含まれる。
【0006】
現行の抗炎症剤の代替物として役目をはたすことができる新規な非ステロイド形抗炎症剤を提供するようになれば、これは極めて望ましいことである。
【0007】
2.ワクチン類およびアジュバント類
リンパ球は免疫系の主なる細胞で、獲得免疫および免疫的特質の多様性、特異性、記憶と自己/非自己認識の責を担っている。成熟B細胞は抗原類に対する受容体群として働く膜結合免疫グロブリン(抗体)分子の合成および表示により他のリンパ球と区別される。抗原と当該膜結合抗体の成熟ナイーブB細胞上での相互作用は、類似の特異性を持つB細胞クローン類の活性化と分化、および膜結合抗体は持たないが、同じ抗原結合特異性を持つ抗体分子を分泌するB細胞クローン類の結果としての産生をもたらす。
【0008】
Tリンパ球もBリンパ球のように抗体に対する膜受容体を有している。しかしながら、B細胞上の膜結合抗体とは異なりT細胞受容体(TCR)は遊離抗体を認知しない。その代わり、当該TCRは主要組織適合遺伝子複合体(MHC)内の遺伝子にコード化された自己分子に結合する抗原のみを認識する。大部分のT細胞で認識されるためには、当該抗原は抗原提示細胞(APC)の表面またはウイルス感染細胞、癌細胞および移植片の上でMHV分子と共に表示されねばならない。
【0009】
B細胞のように、T細胞も識別できる膜分子を発現する。全てのT細胞の亜集団は当該TCR、CD3を含むポリペプチドの複合体を発現し、多くは2種の膜分子、CD4およびCD8の1種または他方の存在で区別ができる。当該膜糖タンパク質分子のCD4を発現するT細胞は、クラスIIMHC分子に結合した抗体の認識するだけに限られ、二量体膜糖タンパク質であるCD8発現するT細胞はクラスIMHC分子に結合した抗原の認識に限られる。
【0010】
一般的に、CD4およびCD8の発現もTリンパ球の主な亜集団を規定する。CD4T細胞は一般的にTヘルパー(T)細胞として機能し、クラスIIに制限される;CD8T細胞は一般的にT細胞傷害(T)細胞として機能し、クラスIに制限される。
【0011】
細胞は抗原提示細胞上にある抗原−クラスIIMHC複合体を認識することにより活性化される。活性化後、当該T細胞は分裂を開始し、各々同じ抗原−IIクラスMHC複合体に特異的なエフェクター細胞のクローンを生じる。これらのT細胞は、免疫応答に参加するB細胞、T細胞および他の細胞の活性化に中心的役割を果たす種々なサイトカイン類を分泌する。
【0012】
細胞が産生したサイトカイン類のパターンにおける変化は他の白血球間で展開する免疫応答のタイプを変化させうる。そこで、T細胞は、活性化したときそれらが分泌する特徴的サイトカイン類により2種の群に分類された:当該T1応答は、炎症を支援するサイトカインプロフィールを産生し、ある種のT細胞およびマクロファージを活性化するのに対して、当該T2細胞反応は主にB細胞および抗体に依存する免疫応答を活性化する。こうして、T1細胞はT細胞増殖を誘導するIL−2および組織炎症を仲介するIFN−γのようなサイトカインを誘導する。T2細胞はこれに対してB細胞を活性化してある種のIgGイソ型を分泌するB細胞を活性化し、T1炎症サイトカイン類の産生を抑制するIL−4、そしてマクロファージによる炎症性サイトカイン産生を抑制するIL−10を分泌することにより、間接的にT1細胞によるサイトカイン産生を低下させて、クラスIIMHC発現を下方制御による抗原提示細胞に影響を与える。
【0013】
自己免疫は免疫系の自己成分に対する不適切な反応から生じ、TまたはB細胞の自己反応性クローンの活性化および内因性抗体に対する体液性または細胞性介在の応答発生を導き、細胞、組織および器官への結果としてもたらされる傷害が伴う。ときには当該損傷は自己免疫傷害のアジソン病、例えば自己免疫性溶血性貧血および悪性貧血などの自己免疫貧血、橋本甲状腺炎および強皮症におけるように抗体で引き起こされる。
【0014】
多くの自己免疫障害、例えばインスリン依存真性糖尿病(IDDMまたはI型糖尿病)、多発性硬化症、関節リュウマチおよび自己免疫性甲状腺炎は内因性抗原で活性化したT細胞が介在している組織破壊を特徴としている。自己抗原に対するこれらの免疫応答は、自己反応性Tリンパ球の持続的活性により維持される。
【0015】
自己免疫疾患は、免疫応答が単一の器官または腺に独特な目標抗原に向けられていて症状が大体その器官に限られている器官特異の疾患、および当該応答が目広い範囲の標抗原に向けられ、数多くの器官や組織を巻き込む全身性自己免疫疾患に分類される。器官特異的な自己免疫疾患の例にはインスリン依存型真性糖尿病、多発性硬化症、関節リュウマチ、甲状腺炎および重症筋無力症が含まれ、全身性自己免疫疾患には全身性エリトマトーデスおよび強皮症が含まれる。
【0016】
器官特異的な自己免疫疾患の病因に寄与しているのはT1細胞である。例えば、マウスでの実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は、例えばミエリン塩基性タンパク質(MBP)またはプロテオリピッドタンパク質(PLP)のような免疫抗原に特異なCD41細胞により引き起こされるという有力な証拠がある。当該疾患は1匹の動物から他の動物に、MBPまたはPLPのどちらかで免疫性を与えた動物からのT細胞、または当該動物からクローン化したT細胞株により転移させることができる。T1タイプ応答は同じように他のT細胞介在の疾患または接触性皮膚炎のような状態にも関与しているようである。
【0017】
器官特異な自己免疫疾患の多くの事例では、自己反応性CD4T細胞の結果として発症する。これらのT細胞の分析はT1/T2のバランスが自己免疫病発症を起こさせるかどうかに影響できることを示した。T1細胞は自己免疫病の発症に関与している一方、幾つかの症例ではT2細胞が当該疾患の誘導に対してだけではなく既存の疾患の進行も防ぎ、同種移植耐性の誘導や維持に関与する。
【0018】
自己免疫疾患の治療のためには幾つかの治療上の取り組み方が開発されてきた。種々の自己抗原の同定および配列決定が、自己免疫T細胞活性を調節する新しい取り組み方の進歩を導いてきた。自己免疫疾患の病因に関与する抗原全体、またはそれらの配列から生じるペプチドが自己免疫疾患の治療のために提案されてきた。
【0019】
自己免疫疾患の免疫的に特有な治療用に適した合成ペプチドは、自己免疫疾患の病因に関与するT細胞により認識されるペプチド類である。これらのペプチド類は当該疾患に関与する抗原の配列内にある病因配列からなる配列或いはその類似体であってよく、その中の配列は本来のアミノ酸残基の1種以上が異なるアミノ酸残基で置換されており、特に“改変ペプチド”と呼ばれ、病因の本来対応物(即ち、TCRと接触する領域)のエピトープ中に単一のアミノ酸置換を含むが、アグレトープ(即ち、MHCと接触する領域)にはなにも改変がない。
【0020】
各自己免疫疾患は、当該疾患に関係する抗原の配列から直接由来するか改変ペプチド或いは他のその類似体であるような治療において利用するのにその理想的なペプチドがあるであろう。そこで、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質(MOG)およびプロテオリピッド(PLP)のような自己抗原に敏感なT細胞が関与する多発性強化症(MS)のような疾患では、それの治療にはMBP、MOGまたはPLP或いはその類似体が必要とされるであろう;筋無力症はアセチルコリン受容体からのペプチドで治療でき;甲状腺炎はサイログロブリンで;1型糖尿病はグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)またはインスリン配列からのペプチドで;全身性エリテマトーデスはP53タンパク質由来のペプチドで;そしてギラン・バレー症候群はミエリン抗原P2からのペプチドにより治療できる。
【0021】
最近、自己免疫疾患に関係する病因自己抗原由来のペプチドまたはその類似体が当該疾患の治療用に提案されている。例えば、ヒトMBP配列(米国特許第5,817,629号、米国特許第6,252,040号)およびその類似体(米国特許第5,948,764号;米国特許第6,329,499号)は多発性硬化症の治療用に記述されていた;ヒトGADおよびインスリンの65kDイソ型のペプチド類似体は糖尿病の治療用に提案され(それぞれ米国特許第5,945,401号、米国特許第6,197,926号);そして自己抗原またはその断片はぶどう膜網膜炎(米国特許第5,961,977号)の治療用として記載されていた。上で挙げた特許の各々および全部は参照により本明細書中に完全に開示されるように援用されている。
【0022】
種々の自己免疫疾患のそれぞれについては、抗炎症T2表現型のT細胞を活性化するであろう関連ペプチドをアジュバント中に入れて投与するのが望ましい。これが自己免疫プロセスを阻止するだろうと期待される。自己免疫疾患の治療に関与しない状況でもT2表現型の特異的なT細胞を活性化するのに有効なこともあるかもしれない。しかしながら、自己抗原がからむ治療は、治療を受ける被験者において危険なT1自己免疫を活性化するかもしれないT1型免疫を誘導しないアジュバントで行わねばならない。そこで、非炎症性T2型T細胞を誘導するであろう特異な抗原と組合せることができるアジュバントを同定することが必要である。
【0023】
アジュバントはその性質上非特異的な免疫調節剤である。上で概括した目的に適したアジュバントは、望ましい抗炎症表現型の特異的T細胞の活性を誘導するように、治療的ワクチン接種にて抗原または他の分子と組み込むことができる非特異的な免疫調節剤である。
【0024】
自己免疫疾患のようなT細胞が介在する疾患、障害または状態の治療用に適した数種のペプチドは、不完全フロインドアジュバント(IFA)として知られる鉱物油の乳化物のような油性賦形剤中でマウスに皮下に投与すると効果的であることが示されている。しかしながら、IFAは完全フロインドアジュバント(CFA:Mycobacteriumの殺菌した菌体の種々な量を含む鉱物油の調剤)と共にヒトへの使用は、体内で鉱物油は分解できないので許されていない。
【0025】
ペプチド療法のために、分解することができ、そして担体、デポーまたは免疫増強剤/促進剤として役に立つアジュバントとして作用する効果ある媒体を発見することは大いに期待されるであろう。
【0026】
3.当技術に関連する参考文献
幾つかの脂肪アルコールおよび脂肪酸のエステル類が医薬組成物で利用する溶媒または乳化剤として記述されてきた。例えば、セチルアルコールは医薬組成物にて乳化剤および硬化剤として用いられ(The Merck Index,2001,13thedition,pp.347−8,#2037)、オレイルアルコールは薬剤用の担体として使用され(The Merck Index,2001,13thedition,pp.1222,#6900)、およびオレイン酸のアルキルエステル類は薬剤の溶媒として使用できる(The Merck Index,2001,13thedition,pp.6899,#6898)。
【0027】
主に蜜蝋から分離されるより高級な脂肪族一級アルコールの混合物は穏やかな抗炎症活性を有することが記載されていた。そのような混合物の組成は開示されていない(Rodriguez等、1998)。
【0028】
例えばオクタデシルおよびニコチン酸(Z)−9−オクタデセン−1−イルのような長鎖アルコール類のニコチナート酸エステルの質量分析は長鎖アルコール類の構造を明らかにするために研究された(Vetter and Meister,1981)。当該化合物類は生物的活性が認められなかった。
【0029】
〜C16飽和アルコール類、例えばデシル、ウンデシル、テトラデシルおよびヘキサデシルアルコールなどと4−アミノメチル安息香酸(PAMBA)とのエステル類は、それらの抗線溶作用活性につき検討されたが、活性がないことが判明した(Markwardt等、1966)。短鎖アルコールのPAMBAエステル類は生体外の培養内皮細胞の増殖を低下できることが見出され、当該ヘキシルエステルはより効果的であった(Beyer and Pilgrim,1991)。
【0030】
アルキルN,N−二置換アミノ酸、例えばアルキルN,N−ジメチルアミノ酢酸で、当該アルキルがオクチル、デシル、ドデシルまたはテトラデシルおよびデシル(4−メチル−1−ピペラジニル)酢酸はインドメタシンおよび他の薬物についての可能性ある経皮吸収促進剤として記載されている(Wong等、1989;米国特許番号第4,980,378号)。
【0031】
治療活性物質と、1位と4位の両方をメチルおよびオレイルオキシカルボニルメチル遊離基で置換された4級ピペラジニウム化合物のようなカチオン脂質を含む遺伝子治療で利用する複合体は米国特許第6,291,423号に記載されている。
【0032】
N,N−ジメチルアミノ酢酸と、例えばテトラデシル、セチルおよびステアリルアルコール並びにアルケノール類とのエステル類はヘアー化粧品での使用としてJP2000−302650に記載されている。当該オレイルエステルについては具体的には開示されていない。
【0033】
長鎖アルコール類、例えばデシル、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、ステアリルおよびオレイルアルコールとベタイン[(カルボキシメチル)トリメチルアンモニウムハイドロオキサイド分子内塩]のエステルは調製され、それらの薬力学的性質が研究され(Mytayer および Jacob.,1952),或いは冷却水処理における殺生物剤としての活性が試験された(Rucka等、1983)。
【0034】
N−カルボキシメチル−ピペリジン、−ピペラジンおよび−モルホリン化合物のラウリル、ミリスチルおよびセチルエステルの4級アンモニウム塩は殺菌剤として記述されていた(Smith等、1951)。
【0035】
アミノ酸、例えばグリシン、フェニルグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、リシン、プロリン、フェニルアラニンおよびチロシンのステアリルエステル類およびペプチド類のステアリルエステル類は細菌用のアジュバントおよびウイルス性ヒトワクチンとして提案されている(Penney等、1985,1993;Nixon−George等、1990)。
【0036】
DL−2−フェニルグリシンオクチルまたはデシルエステル、或いはDL−2−(4−ジメチルアミノフェニル)グリシンオクチルエステルのような、DL−ω−フェニルアミノ酸とC〜C10アルカノール類のエステル類は消炎性、抗ヒスタミン性、鎮痙性、抗酸化性および抗炎症性として記載されている(Shulz等、1982;Schewe等、1991;Kontogiorgis等、2001)。
【0037】
アミノ酸のより高級なエステル、例えばグリシン、フェニルグリシン、アラニン、バリン、ノルバリン、ロイシン、イソロイシン、リシンおよびフェニルアラニンのラウリル、ミリスチル、セチルおよびステアリルエステル類およびそれらのN−より低級アルキル誘導体は米国特許第3,821,403号(Misato等、1974)に植物病の制御に有用として記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
(本発明の要約)
本発明によれば、長鎖アルコールと少なくとも1個の塩基性基を含むカルボン酸とのある種のエステル類は抗炎症性免疫調節剤として働くので炎症、特に免疫介在炎症の治療と同時に、細胞性および体液性応答の両方に関与する特異な抗原との組合せのアジュバントにも使用することができ、前記アジュバントは担体またはデポー或いは免疫増強剤/促進剤として役に立つ。
【0039】
1つの態様では、本発明は一般式Iの化合物:
【化1】


または製剤上で許容されているその塩、式中R1はC12〜C24アルキルまたはC10〜C24アルケニルで、Aは少なくとも1つの非環式または環式アミノ基および/または三級か四級窒素原子を含む少なくとも1個の複素芳香環を含有する残基である化合物を、炎症治療用の医薬組成物を調製するために利用する方法に関する。
【0040】
他の態様では、本発明は一般式Ia:
【化2】


または製剤上で許容されているその塩のアジュバント、式中R1はC10〜C24アルキルまたはC10〜C24アルケニルで、Aは少なくとも1つの非環式または環式アミノ基および/または三級か四級窒素原子を含むが少なくとも1個の複素芳香環を含有する残基であるが、R1がC18アルキルでAが少なくとも1つの非環式アミノ基または−CO−Aがプロリン残基である化合物を除いたアジュバントを、更に抗原を含んでいる医薬組成物の調製に使用する方法に関する。
【0041】
一般式Iaのアジュバントと共に使用する抗原は、自己免疫疾患、メラノーマなどの異なるタイプの癌および細菌やウイルス感染のような感染病に関与する抗原であり得る。そのような抗原および本発明のアジュバントを含む治療製剤は、自己免疫疾患の治療、およびT2型免疫応答を好んで必要とするT細胞介在免疫効果のためのT細胞を活性化するのに特に有用でありうる。
【0042】
これまでに定義したような上記式の化合物の幾種類かは新規であり、本発明の更なる態様を構成するものである。
【課題を解決するための手段】
【0043】
(本発明の詳細な説明)
1つの態様によれば、本発明は一般式Iの化合物:
【化3】


またはその製剤上で許容されている塩、式中R1はC12〜C24アルキルまたはC10〜C24アルケニルで、Aは少なくとも1つの非環式または環式アミノ基および/または三級か四級窒素原子を含む少なくとも1個の複素芳香環を含有する残基である化合物を、炎症治療用の医薬組成物を調製するために使用する方法を提供する。
【0044】
本発明の本態様の1つの実施形態において、式Iの前記の抗炎症性化合物における当該残基Aは:
(i)
【化4】


式中R2はH、C〜Cアルキル、アリールまたはアラルキルで、いずれのアリール部分も非置換でも、またはニトロ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、NR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されていてもよく;R3はH、電子対かC〜Cアルキル;R4およびR5はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキル、或いはR4とR5はそれらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルで置換された窒素原子が間に入る5〜7員の飽和環を形成し;R6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである;
(ii)NR6R7またはCR8R8NR6R7により置換されたフェニルで、R6,R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである;そして
(iii)
【化5】


式中R9がH、低級アルキルまたはインドリル(C〜C)アルキルでXが対イオン、或いはR9が電子対でXは不在、などからなる群より選ばれる。
【0045】
他の態様では、本発明は一般式Ia:
【化6】


または製剤上で許容されているその塩、式中R1がC10〜C24アルキルまたはC10〜C24アルケニルでAは少なくとも1つの非環状または環状アミノ基、および/または三級か四級窒素原子を含む少なくとも1つの複素芳香環を含む残基であるが、R1がC18アルキルでAが少なくとも1つの非環状アミノ基を含む残基または−CO−Aがプロリンの残基である化合物を除いたアジュバントを、抗原を更に含む治療製剤の調製のための使用に提供する。
【0046】
本発明の本態様の1つの実施形態において、式Iaの前記アジュバントにおける残基Aは:
(i)
【化7】


式中R2はH、C〜Cアルキル、アリールまたはアラルキルで、いずれのアリール部分も非置換でも、またはニトロ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、NR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されていてもよく;R3はH、電子対かC〜Cアルキルで;R4およびR5はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキル、或いはR1がオクダデシルのときR4とR5がHまたはC〜Cアルキルでなければ、R4とR5はそれらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルで置換された窒素原子が間に入る5〜7員の飽和環を形成し;そしてR6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである;
(ii)NR6R7またはCR8R8NR6R7により置換されたフェニルで、R6,R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである;そして
(iii)
【化8】


式中R9がH、C〜Cアルキルまたはインドリル(C〜C)アルキルでXが対イオン、或いはR9が電子対でXは不在、などからなる群より選ばれる。
【0047】
更なる態様では、本発明は一般式:R1−O−CO−Aで:
式中(i)R1はC20〜C24アルキルまたはC10〜C24アルケニルで、Aは下式の残基:
【化9】


式中R2はH、C〜Cアルキル、アリールまたはアラルキルで、いずれのアリール部分も非置換でも、またはニトロ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、NR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されていてもよく;R3はH、電子対またはC〜Cアルキルで;R4およびR5はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキル、或いはR4とR5はそれらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルで置換された窒素原子が間に入った5〜7員の飽和環を形成し;そしてR6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである;または
(ii)R1はC18アルキルおよびAは下式の残基で:
【化10】


式中R2がHで;R3は電子対で;R4およびR5はそれらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルで置換されている窒素原子が間に入った5〜7員飽和環を形成するもの;または
(iii)R1がC〜Cアルキルで、Aが下式の残基で;
【化11】


式中R2は非置換アリールまたは、アリールまたはアラルキルで、アリール部分もニトロ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、NR6R7またはCR8R8NR6R7で置換され;R3はH、電子対かC〜Cアルキルで;R4およびR5はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキル、或いはR4とR5はそれらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルで置換された窒素原子が間に入った5〜7員の飽和環を形成し;そしてR6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである;または
(iv)R1がC10アルキルおよびAが下式の残基で:
【化12】


式中R2はC〜Cアルキルで;R3はH、電子対かC〜Cアルキルで;R4およびR5はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキル、或いはR4とR5はそれらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルで置換された窒素原子が間に入った5〜7員の飽和環を形成し;そしてR6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである;または
(v)R1がC10〜C24アルキルまたはC10〜C24アルケニルで、AはNR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されたフェニルで;式中R6、C7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルであるが、R1がC10〜C24アルキルおよびAが−CH−NHで置換されたフェニルである化合物は除かれる;或いは
(vi)R1がC10〜C24アルキルまたはC10〜C24アルケニルで、AはN下式の基で:
【化13】


式中R9がC〜Cアルキルまたはインドリル(C〜C)アルキルでXが対イオンなどの新規化合物;および製剤上で許容されているその塩に関する。
【0048】
明確にするために、本明細書および請求項中の全ての式における*印はR1−O−CO−基の−CO−に結合する位置を示す。
【0049】
本発明によれば、式IaのアジュバントについてR1はC10〜C24アルキルまたはアルケニルであるか、炎症治療用の式Iaの化合物についてR1はC12〜C24アルキルまたはC10〜C24アルケニルである。両方の場合において、R1は好ましくはC12〜C20、より好ましくはC16〜C18、最も好ましくはC18アルキルまたはアルケニルである。当該アルキル基は直鎖または側鎖でもよく、好ましくはドデシル、テトラデシル、ヘキサデシルおよびオクタデシルからなる群より選ぶので、当該遊離基R1−O−はそれぞれ飽和脂肪アルコールであるラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(パルミチルアルコールとしても知られている)およびステアリルアルコールから由来する。当該アルケニル基は1つ以上の二重結合を有することができ、好ましくはヘキサデセニル、オクタデセニル、オクタデカジエニルおよびオクタデカトリエニルからなる群より選ばれるので当該遊離基R1−O−は不飽和アルコールであるパルミトレイルアルコールまたは、好ましくは1つ以上の二重結合を有するC18不飽和脂肪アルコールでトランス型、または好ましくは、これだけに限らないがオレイルアルコール(シス−9−オクタデセノール)、リノレイルアルコール(シス−9,12−オクタデカジエノール)、γ−リノレニルアルコール(シス−6,9,12−オクタデカトリエノール)およびγ−リノレニルアルコール(シス−9,12,15−オクタデカトリエノール)のようなシス型から由来する。多くの好ましい実施形態では、R1はシス−9−オクタデセニル遊離基で、オクタデカ−(Z)−9−エニルまたはオレイルとも称する。
【0050】
当該残基Aは非環状または環状でありうる一級、二級または三級アミノ基あるいは四級アンモニウム基を含む。当該アミノ基が非環状である場合、生じる化合物はアミノ酸のエステルである。
【0051】
そこで、1つの実施形態では本発明の医薬組成物または治療用組成物において、或いは本発明の新規化合物の幾つかを含む化合物において、Aは下式の遊離基:
【化14】


式中R2はH、C〜Cアルキル、アリールまたはアラルキルで、いずれのアリール部分も非置換でも、またはニトロ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、NR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されていてもよく;R3はH、電子対またはC〜Cアルキルで;R4およびR5はそれぞれ別々にC〜Cアルキル、或いR4とR5はそれらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルで置換された窒素原子が間に入る5〜7員の飽和環を形成し;そしてR6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルであるが、前述および請求項で規定した制限がある。例えば式Iaのアジュバントおよび新規化合物については、R1がオクタデシル(ステアリル)のときはR4およびR5はHまたはC〜Cアルキルではありえず;新規化合物については、R1がC12〜C16アルキルであると、R2はH、C〜Cアルキルまたは非置換アラルキルではありえず、或いはR1がC10アルキルであると、R2はH、アリールまたはアラルキルではありえない。
【0052】
好ましい実施形態では、R2はHである。本明細書で使うとき、C〜Cアルキルは直鎖または分岐のアルキル遊離基で、これだけには限らないがメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、二級ブチル、ペンチルおよびヘキシルのような1から6個の炭素原子を有する。本明細書でそのもの、または“アラルキル”遊離基の部分として使用する用語“アリール”はフェニルおよびナフチルのようなC〜C10芳香族炭素環式遊離基を称する。用語“アラルキル”では、当該アルキルは同じようにC〜Cアルキル遊離基を称する。好ましい実施形態では、当該アラルキル基はベンジルである。好ましい実施形態では、当該フェニルおよびベンジル基は非置換またはヒドロキシで置換された、例えばp−ヒドロキシベンジルである。
【0053】
式中R3が電子対でR4およびR5がHである上記式の幾つかの化合物は、アミノ酸のエステルであり、例えばグリシン(R2はH)、アラニン(R2はメチル)、バリン(R2はイソプロピル)、ロイシン(R2はイソブチル)、イソロイシン(R2は二級ブチル)、フェニルグリシン(R2はフェニル)、フェニルアラニン(R2はベンジル)、チロシン(R2はパラ−ヒドロキシベンジル)のエステルである。
【0054】
本発明の幾つかの実施形態によれば、R4およびR5はそれが結合している窒素原子と共に、ピロリジン、アゼピンおよび好ましくは6員環、より好ましくはピペリジン、ピペラジンまたはモルホリンのような、場合により酸素原子または窒素原子が間に入った5〜7員飽和環を形成することができる。当該ピペラジン環は4位がC〜Cアルキル、好ましくはメチルで置換されてもよい。
【0055】
1つの好ましい実施形態では、R2はHまたはフェニルで、R3はH、電子対またはメチルで、R4およびR5はそれぞれHまたはメチル、或いはR4およびR5はそれが結合しているN原子と共に、場合により窒素原子の1位または4位にメチルが置換しているモルホリン環またはピペラジン環を形成する。抗炎症性化合物およびアジュバントとして使用する本実施形態による化合物の例は、化合物1、3、4、7、9、11として本明細書で同定した新規エステル類である:
1.N,N−ジメチルアミノ−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル
3.酒石酸(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル
4.酒石酸(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸オクタデシルエステル
7.塩化4−メチル−4−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニルメチル−モルホリン−4−イウム
9.ピペラジン−1−イル−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル塩酸塩
11.α−アミノ−α−フェニル酢酸オクタデカ−(9)−エニルエステル塩酸塩。
【0056】
本発明の他の実施形態は、AはNR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されたフェニルで、R6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである。好ましい実施形態では、AはCR8R8NR6R7で置換され、そのRはHであり、R6とR7はそれぞれHまたはC〜Cアルキルで、好ましくはメチルである。本実施形態による化合物の例は、両者とも抗炎症剤およびアジュバントとして使用するための4−ジメチルアミノメチル安息香酸の新規エステルで、本明細書では化合物5および10として同定されている。
5.4−ジメチルアミノメチル−安息香酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル塩酸塩
10.4−ジメチルアミノメチル−安息香酸オクタデカ−(E)−9−エニルエステル塩酸塩。
【0057】
その上更なる本発明の実施態様では、Aは下式のピリジル基で:
【化15】


式中R9が電子対でXは不在、或いはR9がメチルまたはインドリルエチルでXは塩素、臭素、ヨウ素およびトシラートからなる群より選んだ対イオンである。これらの化合物はニコチン酸のエステル類である。本実施形態による化合物の例は、本明細書で化合物2、6a、6b、6cおよび8と同定した化合物で、抗炎症薬およびアジュバント両方に使用され、その中で化合物6a、6b、6cおよび8は新規化合物である:
2.ニコチン酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル;
6a.よう化1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウム;
6b.塩化1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウム;
6c.1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウムトシラート;および
8.臭化1−[(2−(1H−インドール−3−イル)−エチル)−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウム;
【0058】
本発明のエステル類は一般的に結晶性で、非吸湿性および水溶性で、より簡単に精製できて、原料の飽和またはシス−不飽和アルコール類より経口および非経口製剤用に処方しやすい。
【0059】
本発明で同様に意図しているのは式IおよびIaの化合物の製剤上許容されている塩、両方の酸付加塩および非環状または環状アンモニウム基の四級塩または対イオンを伴うピリジニウム塩である。当該化合物の製剤上で許容されている酸付加塩には、当該塩基と塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、よう化水素酸、亜リン酸などのような無機酸と共に脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族と芳香族スルホン酸などのような有機酸からの塩が含まれる。それ故そのような塩類には硫酸塩、ピロ硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、よう化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマール酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタール酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩(トシラート)、フェニル酢酸、クエン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩などが含まれる。
【0060】
前記塩基性化合物の酸付加塩は遊離塩基型を望ましい酸の充分な量を従来の方法で接触させて塩を調製する。当該遊離塩基型は当該塩型と塩基を接触させて再生でき、従来法にて当該遊離塩基を単離する。当該遊離型は個々のそれらの塩型とは、極性溶媒における溶解度のようなある種の物理的性質で幾分異なるが、そうでなければ当該塩は本発明の目的に関して個々のそれらの遊離塩基と同等である。
【0061】
本発明の1つの実施形態では、一般式Iの化合物はオレイルアルコールのような長鎖脂肪族アルコールと適したアミノ酸とを反応させて調製できる。そこで、オレイルアルコールをN,N−ジメチルグリシンと反応させると本明細書で化合物1とした化合物を与える。他の実施形態では、当該長鎖脂肪族アルコールをニコチン酸のハロゲン化物、例えばオレイルアルコールをニコチン酸クロリドと反応させると本明細書で化合物2とした化合物を与える。
【0062】
更なる実施形態では、当該長鎖脂肪族アルコールをハロメチル酢酸クロリドと反応させ、得られたエステルをその後、適したアミンと反応させる。例えば、オレイルアルコールを塩化クロロアセチルと反応させ、得られたクロロ酢酸オレイルエステルをピペラジンまたはN−メチルモルホリンと反応させて遊離塩基を生じさせ、その後塩に変換するが、例えばそれぞれ化合物3または化合物7である。同様に、ステアリルアルコールを塩化クロロ酢酸と反応させ、得られたクロロ酢酸ステアリルエステルを4−メチル−ピペラジンと反応させて遊離塩基を与え、その後塩、例えば化合物4に変換する。
【0063】
本発明による他の方法を以下の実施例で説明するが、これは本明細書の式Iの類似化合物を調製するのに使用することができる。オレイルアルコールと活性化アミノ酸の間の反応は広い範囲の有機溶媒、例えばアセトニトリル、クロロホルムのような極性溶媒および例えばヘキサンのような非極性溶媒の両方で、室温から還流までの広い温度範囲、および1〜2時間から1〜2日間の範囲の期間で実施できる。
【0064】
4級ピリジニウム塩類は上記のようにか、或いはハロゲン化アルキル類、スルホン化アルキル類およびハロアルキルインドール類のような当技術分野の当事者であればよく知っているアルキル化剤を用いるのどちらかで、ニコチン酸オレイルをアルキル化して調製する。ハロ酢酸オレイルは広い範囲の有機溶媒、例えばアセトニトリルのような極性および例えばヘキサンのような非極性溶媒の中で、室温から還流の広い温度範囲および1〜2時間から1〜2日間の範囲の期間にてアミン類と反応できる。適した後処理および精製後に得た油状または低融点の遊離塩基は製剤上で許容されている塩に変換させる。後者は通常高融点で水溶性の固体である。
【0065】
当然なことながら、R1がシス−アルケニル基である本発明のエステル類の調製に関しては、オレイルアルコールのような出発物質のシス−不飽和アルコールは実質的に純粋なシス−不飽和型、少なくともシス型を約80%含有することを意味する試薬を使用することができる。例えば、市販のオレイルアルコールは純度約85%で、不純物の多くはトランス類似体(エライジルアルコール)から構成されている。
【0066】
免疫系は、生得および適応の力の両面で全てのタイプの炎症を制御するのに関与し、炎症は創傷治癒、結合組織の再構築、血管形成、器官再生、神経保護のようなプロセスと共に自己免疫、アレルギー、移植片拒絶および感染で見られる適応免疫応答における原動力である。そこで、ここで説明したもののような炎症応答を調整する抗炎症剤は種々な状態において有用となるであろう。
【0067】
本発明の免疫調整薬で治療できる炎症性疾患、障害または状態は、これに限らないが自己免疫疾患、重度のアレルギー、喘息から選ばれる免疫介在の慢性または急性炎症性疾患、障害または状態、或いは移植片拒絶、アルツハイマー病のような慢性変性疾患、神経保護、器官再生、皮膚の慢性潰瘍または統合失調症から選ばれる疾患、障害または状態に関連する炎症が含まれる。
【0068】
本発明により治療できる自己免疫疾患の例は多発性硬化症または、例えば関節リュウマチ、ライター症候群を伴う反応性関節炎、強直性脊椎炎または他の免疫系を介した関節の炎症のようなヒト関節炎状態である。
【0069】
そこで本発明は、重症筋無力症、ギラン・バレー症候群または他の神経系の炎症症;乾癬、尋常性天疱瘡または他の皮膚病;全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎または他の腎臓を冒す疾患;アテローム性動脈硬化症または他の血管の炎症;自己免疫性肝炎、例えばクローン病、膵炎または消化器系の他の障害のような炎症性大腸炎、膵炎または他の消化器官系の障害;I型真性糖尿病(インスリン依存真性糖尿病またはIDDM)、自己免疫性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、または他の内分泌系の疾患から選択される免疫介在炎症性疾患の治療に関する。1つの好ましい実施形態での、当該免疫介在炎症性疾患、障害または状態は乾癬である。
【0070】
本発明による薬剤の抗炎症活性を試験するのに使用するモデルの1つはアジュバント関節炎で、ラットのある種の系統に完全フロインドアジュバント(CFA)中のMycobacterium tuberculosisにて免疫性を与えて誘導しうる実験的関節の疾患である。これらの動物は関節炎を発症し、その特徴はヒトにおける関節リュウマチの特徴と同じなので、関節リュウマチ、ライター症候群における反応性関節炎、強直性脊椎炎または他の免疫系を介した関節の炎症のようなヒト関節状態の動物モデルとして役に立つ。アジュバント関節炎は細胞介在自己免疫反応、移植片拒絶およびアレルギー性反応を含む一般的な免疫介在炎症のモデルとしても役に立つ。例えば、関節炎リュウマチを抑制できる治療にはコルチコステロイド類、サイクロスポリンA、アザチオプリンのような免疫抑制剤および自己免疫疾患の治療で広く使用される他の免疫抑制剤が含まれる。そこで、治療製剤によるアジュバント関節炎の抑制は、当該薬剤が広く抗炎症剤として有用である可能性があるということを示す。
【0071】
本発明は更に、製剤上で許容されている担体および今までに説明した一般式Iの化合物を含んだ炎症の治療用の医薬組成物に関する。
【0072】
本発明で提供される医薬組成物は固体、半固体または液体の形でよく、更に製剤上で許容されている増量剤、担体または賦形剤および他の不活性な成分と添加剤が含まれる。当該組成物は、これだけには限らないが経口、局所または、例えば皮下、静脈内、筋肉内またはいずれか他の適した経路の注射による非経口のような、いずれか適した経路で投与できる。化合物の多くは油状であるので、これらは好ましくは非経口的に、より好ましくは皮下的に投与される。連続して与えるならば、本発明の化合物はおのおの典型的には1日に1〜4回の注射、または例えばミニポンプを使用して連続的皮下注入で投与される。当該投薬量は患者の状態および疾患の重症度によるが、施術者による適切な判断に従って決定されるであろう。
【0073】
非経口投与に関しては、望ましい程度の純度の当該化合物を製剤上で許容されている担体、即ち使用する投薬量や濃度では服用者には無毒で製剤中の他の成分と適合するものと混合し、注射できる形状の単位投薬量に処方できる。一般的に当該製剤は当該化合物を液状担体または細かくした固体担体または両方と均一で密に接触させて調製される。そして、必要であれば当該生成物は望ましい製剤に成形する。好ましくは、当該担体は非経口担体、より好ましくは服用者の血液と等張である溶液である。そのような担体媒体には水、生理食塩水、リンガー溶液およびデキストロース溶液が含まれる。不揮発性油のような非水系媒体もリポソームと共に使用できる。これらの製剤は当分野の当事者であれば知っている、例えば“Remington’s Pharmaceutical Science”,A.R.Gennaro,ed.,17th edition,1985,Mack Publishing Company Easton,PA,USA中に記載されているような従来法で作成できる。
【0074】
他の態様では、本発明は炎症、特に免疫介在炎症の治療用の、これまでに定義したような式Iの化合物の効果量を必要としている患者に投与することを含む方法に関する。
【0075】
更なる態様では、本発明はこれまでの式Iaのアジュバントおよび抗原を含む治療用組成物に関する。当該抗原は毒素、細菌性またはウイルス性抗原のような体液性応答を惹起するものでもよいが、好ましくはペプチドのような細胞性応答を惹起する抗原である。
【0076】
当該治療製剤は自己免疫疾患、アルツハイマー病またはパーキンソン病のような神経変性疾患、メラノーマのような癌、または細菌およびウイルス感染の両方を含む感染症の治療に有用な抗原を含むことができる。
【0077】
好ましい実施形態では、当該治療用組成物はT細胞介在疾患、障害または状態の治療用であり、前記T細胞介在疾患、障害または状態の病因に関係する炎症T細胞で認識される抗原を含む。
【0078】
更に好ましい実施形態では、当該治療用組成物はT細胞介在疾患、障害または状態の病因に関係する炎症T細胞で認識される抗原を含み、前記製剤は個体のT細胞サイトカイン応答をT1からT2へ移行させる。
【0079】
本発明の抗炎症性免疫調整薬は脂質エマルションを形成し、治療を行う疾患、障害または状態に関与するT細胞が活性をもつ抗原性物質と共にワクチンアジュバントとして使用する場合、処置前のT1T細胞応答から処置後にT2T細胞応答への移行を介するのに役に立つ。この発見は、当該脂質エマルションがいずれのT1介在疾患または状態の治療用のワクチン中に使用できる寛容原性の生物活性担体であることを証明する。当該ワクチンでは、当該抗原は治療的効果に対して免疫的特異性を提供する一方、本発明の生物活性担体は生物的効果、即ちT1→T2移行を提供する。本発明の前記生物活性担体が介在した移行により自己反応のスペクトルを有する疾患、障害および状態を、望ましいT細胞サイトカイン移行を誘導できる単一抗原/担体の組合せにより止めることができる。
【0080】
本発明に従った好ましい実施形態では、当該治療製剤はTH1細胞が介する器官特異的自己免疫疾患の治療用の抗原および式Iaの免疫調整薬のアジュバントを含む。当該疾患の例には、これだけに限らないが多発性硬化症、I型真性糖尿病、関節リュウマチおよび自己免疫性甲状腺炎のような自己免疫疾患が含まれる。
【0081】
当該製剤に使用される抗原は前記自己免疫疾患の病因に関係する炎症T細胞により認識される抗原で、当該疾患プロセスに関与するタンパク質全体、そのようなタンパク質の配列由来のペプチド、病原自己抗原ペプチドのエピトープの中に単一アミノ酸置換体を有する改変ペプチドまたは当該疾患に関係する炎症T細胞により認識されるいずれかの他のペプチドであってよい。
【0082】
そこで、多発性硬化症(MS)の治療のためには、当該抗原はMBP、MOGまたはPLP或いは米国特許番号5,817,629号に記載されているペプチド類MBP(75−95)、MBP(86−95)およびMBP(82−98)のようなヒトMBP配列から由来するペプチドまたは米国特許番号5,948,764号と第6,239,499号に記載されているそれらの類似体、或いはMOGペプチドまたはPLPペプチドとそれらの類似体でありえて、全てのこれらの特許は全体が開示されるように参照により本明細書中に援用されている。当該抗原は、コポリマー1またはCop1の酢酸塩の一般名であり、4個のアミノ酸からなるランダムコポリマーである酢酸グラチラマー:MBPと機能的に交差反応し、抗原提示ではMHCクラスIIにおいてMBPと競争できるチロシン−グルタミン酸塩−アラニン−リシンである。酢酸グラチラマーはCOPAXONE(登録商標)(Teva Pharmaceuticals Ltd.,Petah Tikva,Israelの商標)の商品名でMSの治療用に数カ国で既に承認されている。
【0083】
真性糖尿病I型(IDDM)の治療用に、当該ペプチドはグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)または米国特許第5,945,401号に記載されているGADペプチド類似体、或いは生来のインスリンB鎖配列の9から23の残基で、12、13、15および/または16の位置で改変され、更に米国特許第6,197,926号に記載されているように改変されていてもよい残基を含んだペプチドのようなインスリンペプチド類似体から由来することができ、これら全ての特許は全体が本明細書で公開されるように参照により本明細書に援用されている。
【0084】
他の自己免疫疾患の治療用に、当該ペプチドは当該疾患に関係する抗原の配列またはそのペプチド類似体から由来するであろう。そこで、自己免疫性甲状腺炎の治療のためには、当該ペプチドはチログロブリンの配列から;関節リュウマチのためには、当該自己抗原はII型コラーゲンまたはマイコバクテリウム生命体、例えばMycobacterium tuberculosis、例えばアジュバント関節炎においてTリンパ球で認識されるマイコバクテリアのエピトープ、または対応するヒトHSP60或いはそのペプチドを構成しているhsp60で知られている60kDaの熱ショックタンパク質から由来することができ;重症筋無力症の治療には、当該ペプチドはアセチルコリン受容体または全体が本明細書で開示されるように参照により本明細書中に援用されている米国特許第6,066,621号に記載されているようなその類似体の配列から由来し;全身性エリテマトーデスの治療用には、当該ペプチドはタンパク質P53の配列から由来するペプチドで;そしてギラン・バレー症候群の治療のためには、当該ペプチドはミエリン抗原P2の配列から由来することができる。
【0085】
当該抗原は非ペプチド抗原であってもよい。本発明に従って使用できる非ペプチド性抗原の例には、これに限らないがリン脂質症候群の治療用のリン脂質、アテローム性動脈硬化症に対してはコレステロールおよび全身性エリテマトーデスの治療用にはDNA分子が含まれる。
【0086】
当該抗原がペプチドであることが、決定的な意味があるわけではない。そこで、例えば皮膚過敏症および接触皮膚炎のような炎症を生じるTH1介在アレルギー応答は、サイトカイン応答におけるTH1型からTH2型への移行を起こす本発明に従った刺激抗原および生物活性担体/アジュバントを含有するワクチンで治療することができる。そこで、当患者は当該抗原に対する抗体レベルを上昇し続ける一方で、皮膚刺激を起こす炎症T細胞応答は抑制されるであろう。
【0087】
従って、寛容原性の生物活性担体/本発明のアジュバントは、T細胞が攻撃する抗原につき免疫寛容を作り出すことが望まれる時、即ちワクチンがT細胞介在状態、特にT1細胞介在状態を抑制するのに使われる場合はいつも使用できる。移植片拒絶または移植片対宿主疾患における応答をいかなる抗原が活性化しているかが確認できれば、そのような抗原を本発明に従った担体と共に投与すれば、T細胞がそのような条件下で活性である抗原の数の複雑性全体を考慮することなく望ましくない炎症T1応答をより望ましいT2応答への移行を、容易にすることが期待される。
【0088】
本発明の好ましい1つの実施形態では、当該治療製剤はIL−2またはIFN−γT細胞サイトカイン応答の低下を起こし、IL−4またはIL−10T細胞サイトカイン応答を増加させる。
【0089】
ペプチドで活性化した後にT細胞のサイトカイン分泌を測定するには、患者末梢血液からのリンパ球を生体外活性化検定法で試験をする。ヘパリン添加血液から標準手順で抹消血液リンパ球を単離し、5〜50μg/mlの試験ペプチドと培養する。異なる時間点で当該培養T細胞からの上澄液を集め、ELISAまたはバイオアッセイで種々なサイトカインの活性を試験する。
【0090】
本発明による、長鎖アルコールと塩基性官能基を含有するカルボン酸との幾つかのエステル類がT細胞活性用のアジュバントとして効果的に使用できるという発見は全く予期されていない。同様に、これらの製剤が寛容原性の生物活性抗炎症免疫調整薬であるという発見も全く予想されていない。
【0091】
これまでに説明したように、抗原と式Iaの免疫調整薬を含んでいる本発明の治療製剤の利点は、誘導されるとそれ自身が活性的に当該疾病を抑制する防御的T2免疫応答−特異的T2免疫を誘導するのに必要な当該治療が比較的短期間の暴露で止めることができるという事実にある。抗原がなければ、免疫調整薬の投与は炎症を引き続いて抑制するのに長期に行わねばならず、一旦治療を停止すると当該疾病が再発するであろう。幾つかの疾病では、抗炎症剤のみの連続投与の長期効果は望ましくないであろう。そこで、本発明の免疫調整薬と特異な抗原の組合せにより炎症プロセスの活性で特異な制御を誘導するのは好都合である。
【0092】
本発明は更にT細胞介在の疾病、障害または状態を治療する方法に関し、それは必要とする個体に前記T細胞介在疾病、障害または状態の病因と関係がある炎症T細胞で認識される抗原および上記一般式Iaのアジュバントを含む治療製剤の効果量を投与することを含んでいる。
【0093】
本発明は以下の非制限的な実施例で具体的に示されるであろう。
【0094】
(実施例)
本明細書の実施例では、以下の化合物は以下のように太字のそれらの数で確認される:
1.N,N−ジメチルアミノ−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル;
2.ニコチン酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル;
3.酒石酸(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル;
4.酒石酸(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸オクタデシルエステル;
5.4−ジメチルアミノメチル−安息香酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル塩酸塩;
6a.よう化1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウム;
6b.塩化1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウム;
6c.1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウムトシラート;および
7.塩化4−メチル−4−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニルメチル−モルホリン−4−イウム;
8.臭化1−[(2−(1H−インドール−3−イル)−エチル)]−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジウム;
9.重酒石酸ピペラジン−1−イル−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル;
10.4−N,N−ジメチルアミノメチル−安息香酸オクタデカ−(E)−9−エニルエステル塩酸塩;
11.α−アミノ−α−フェニル−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル塩酸塩。
【実施例1】
【0095】
N,N−ジメチルアミノ−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル(化合物1)の合成
N,N−ジメチルグリシン(1.60g、15.4ミリモル)を乾燥したアルコールフリーのクロロホルム(20ml)の中に懸濁させ、PCl(3.80g、17.3ミリモル)を添加した。当該黄色懸濁液を55〜60℃で1時間攪拌し、30℃に冷却してオレイルアルコール(5.70ml、4.85g、18.0ミリモル)を加えた。当該黄色溶液を63〜65℃まで加熱し、この温度で3〜4時間攪拌した。当該溶液を室温まで冷却し、少量の非溶解物を濾別した。水を濾過液に加え、当該混合物のpHを8に調整した。当該有機相を分離し、5%のNaHCOおよび食塩水で洗浄して乾燥し、濃縮した。当該黄色油状残留物(5.07g)をエーテルで粉末とし、得られた懸濁液を濾過した。当該濾過液を濃縮して乾燥すると、粗組成物が3.18g生じ、それをカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサンの次に酢酸エチル)で精製すると本明細書では化合物1とした標記化合物が黄色液体として得られた(2.6g、7.36ミリモル、41%)。
計算値:C,74.73;H,12.26;N,3.96。測定値:C,67.88;H,11.69;N,3.13。
H−NMR(200MHz、CDCl)(ppm)δ:0.88(t,3H,Me)、1.27〜1.29(m,22H,11CH)、1.57〜1.67(m,2H,CH)、2.00(bd,4H,2CH)、2.37(s,6H,NMe)、3.18(s,2H,CH)、4.13(t,2H,COOCH)、5.31〜5.39(m,2H,CH=CH)。
IR:1755cm−1(CO)。
【実施例2】
【0096】
ニコチン酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル(化合物2)の合成
ニコチン酸クロライド塩酸塩(17.8g、0.1モル)およびオレイルアルコール(26.85g、0.1モル)をヘキサン(250ml)中に加える。ピリジン(15.8g、0.2モル)を当該攪拌している混合物に10分間かけて加え、当該反応混合物を室温で24時間攪拌した。ピリジン塩酸塩を濾過して除き、ヘキサンで洗浄した。合わせた濾過液を水で抽出し、MgSOで乾燥し、乾固するまで濃縮した。残留物をアセトニトリルで二回温浸し、粘着性残留物を乾燥すると透明で水様液体を与え、冷却すると石鹸様になった(21.1g、56.5ミリモル、56.5%)。
H−NMR(200MHz、CDCl)(ppm)δ:0.90(t,3H,Me)、1.30〜1.50(m,22H,11CH)、1.75〜1.85(m,2H,CH)、2.00(bd,4H,2CH)、4.35(t,2H,COOCH)、5.31〜5.39(m,2H,CH=CH),7.41(dd,1H)、8.30(dt,1H)、8.77(dd,1H)、9.25(d,1H)。
【実施例3】
【0097】
L−酒石酸(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル(化合物3)の合成
3a)クロロ酢酸オクタデカ−9−(Z)−エニルエステル
オレイルアルコール(147.9g、0.55モル)をn−ヘキサン(300ml)中に溶解し、塩化クロロアセチル(56.5g、0.50モル)を10分かけて滴下した。当該透明な反応混合物を室温で24時間攪拌した。窒素を混合物中にバブリングさせて微量なHClガスを反応混合物中から除去した。当該粗標記生成物のヘキサン溶液を更なる精製をせずに次の段階に使用した。
3b)4−メチル−ピペラジン−1−イル−酢酸オクタデカ−9−(Z)−エニルエステル(遊離塩基)
n−ヘキサンを上記実施例3aにて得られたヘキサン溶液に加え(最終容積を500mlに)、1−メチル−ピペラジン(103.6g、1.03モル)を加えた。当該反応混合物を室温で36時間攪拌した。1−メチル−ピペラジン塩酸塩を濾過で除去し、n−ヘキサンで洗浄した。当該併せた有機濾過液を水および食塩水で抽出し、乾燥して減圧で濃縮させると淡黄色油が得られた。後者は−20℃に冷やすと白色固体になった。
3c)4−メチル−ピペラジン−1−イル−酢酸オクタデカ−9−(Z)−エニルエステルL−酒石酸塩
上記実施例3bの遊離塩基をメタノール(150ml)に溶解し、(L)−(+)−酒石酸(75g、0.5モル)のメタノール溶液を加えた。室温で60分間攪拌し、当該溶液は20μフィルターを通して濾過し、濃縮して乾固した。粘着性の残留物をアセトニトリルで先ず温浸した後、アセトンで24時間処理した。当該溶媒をデカントで除き、当該固体をアセトンで2回処理した。当該得られた懸濁液を減圧下で乾燥させた(濾過は湿潤酒石酸塩の吸水性のために避けた)。当該乾燥生成物を均質化し、篩(500μ)にかけると黄色粉末(35ミリモル、64%)で融点69〜72℃の標記化合物が197.3g得られた。
計算値:C,62.34;H,9.74;N,5.01。測定値:C,60.33;H,9.71;N,4.91。
H−NMR(200MHz、DMSO−d)ppm δ:0.85(t,3H,Me)、1.18〜1.24(bs,22H,11CH)、1.54(bs,2H,CH)、1.96(bs,4H,2CH)、2.56(s,3H,N−Me)、2.69(s,4H,2CH)、2.90(s,4H,2CH)、3.26(s,2H,N−CHCOO)、4.0(t,2H,CHOCO)、4.18(s,1.5H,tartrateCH)、5.29(t,2H,CH=CH)。
IR(cm):1616、1739(C=O)。
【実施例4】
【0098】
L−酒石酸(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸オクタデシルエステル(化合物4)の合成
ステアリルアルコール(27.2g、100ミリモル)をベンゼン(150ml)中に溶解し、塩化クロロアセチル(8.0ml、100ミリモル)を10分間にて滴下で加えた。当該透明反応混合物を48時間室温で攪拌した。窒素ガスをバブリングして微量のHClを除去した。1−メチル−ピペラジン(28.0ml、250ミリモル)を加え、当該反応混合物を室温で36時間攪拌した。濾過で1−メチルピペラジン塩酸塩を除去し、n−ヘキサンで洗浄した。当該濾過液と洗浄液を併せ、水と食塩水で連続的に抽出し、乾燥し、乾固するまで濃縮すると遊離塩基(38.3g)が得られた。後者をエタノールに溶解し、(L)−(+)−酒石酸(14.18g)エタノール(150ml)溶液と併せ、60分間攪拌し、3日間室温で放置した。得られた個体を濾過して集め、乾燥すると融点88〜9℃の化合物4が白色固体として46.5g(83ミリモル、83%)得られた。
計算値:C,62.11;H,10.07;N,5.00。測定値:C,61.02;H,10.39;N,5.01。
H−NMR(200MHz、DMSO−d)ppm δ:0.85(t,3H,Me)、1.18〜1.30(bs,30H,15CH)、1.54(m,2H,CH)、1.96(bs,4H,2CH)、2.56(s,3H,N−Me)、2.69(s,4H,2CH)、2.90(s,4H,2CH)、3.26(s,2H,N−CHCOO)、4.02(t,2H,CHOCO)、4.18(s,1.5H,tartrate CH)。
IR:1742cm(C=O)。
【実施例5】
【0099】
4−ジメチルアミノメチル−安息香酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル塩酸塩(化合物5)の合成
5a)4−ジメチルアミノメチル−安息香酸塩酸塩
98%ギ酸(127ml、3.36モル)中に4−アミノメチル−安息香酸(92.5g、0.61モル)を入れた懸濁液を加熱攪拌して完全に溶解し、37%ホルムアルデヒド(114ml、1.53モル)を加えた。当該溶液を加熱し還流温度で10時間保持した。冷却後、20%HCl(130ml)を添加し、当該溶液は乾固するまで濃縮した。こうして得た白色粉末(131.5g、0.61モル、約100%)は更なる精製をせずに次の反応で使用した。
5b)4−ジメチルアミノメチル−安息香酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル塩酸塩
アセトニトリル(300ml)中に4−ジメチルアミノメチル−安息香酸塩酸塩(65.0g、0.モル)を入れて攪拌している懸濁液に塩化チオニル(28.6ml、0.39モル)を加え、1時間還流させて、乾固まで濃縮した。当該黄色固体残留物をアセトニトリル(300ml)中に懸濁し、オレイルアルコール(99.5ml、0.31モル)を加え、当該混合物を2時間還流させた。当該混合物を冷却させ、当該粗塩を濾過して集め、アセトニトリル(500ml)、ついでアセトン(300ml)で洗浄し、乾燥させると、僅かに黄色の固体であり融点191〜3℃の標記化合物5が105g(0.225モル、75%)得られた。
計算値:C,72.15;H,10.38;N,3.00。測定値:C,71.32;H,10.68;N,3.15。
H−NMR(200MHz、DMSO−d)ppm δ:0.88(t,3H,Me)、1.25〜1.33(bs,22H,11CH)、1.75(m,2H,CH)、2.01(m,4H,2CH)、2.83(s,6H,N−Me)、4.30(t,2H,CHOCO)、4.39(s,2H,PhCH)、5.32〜5.37(t,2H,CH=CH)、7.83(d,2H)、8.10(d,2H)。
【実施例6】
【0100】
化合物6a、6bおよび6cの合成
6a)よう化1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウム(化合物6a)の合成
実施例2で説明した手順で調製したニコチン酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル(3.74g、10ミリモル)およびヨードメタン(3.12g、22ミリモル)をニトロメタン(5ml)とメタノール(2.5ml)の混合物に溶解させた。当該反応混合物は3日間室温で放置し、真空で乾固するまで濃縮した。当該残留物をヘキサン(20ml)中に温浸し、ヘキサンをデカンテーションで移し、残留物を乾燥すると標記化合物が黄色−橙色の粘着性固体として得られた(4.95g、9.6ミリモル、96%)。
H−NMR(200MHz、DMSO−d)ppm δ:0.85(t,3H,Me)、1.20〜1.50(m,22H,11CH)、1.70〜1.80(m,2H,CH)、1.96(bd,4H,2CH)、4.36(t,2H,COOCH)、4.42(s,3H,N−Me)、5.27〜5.39(m,2H,CH=CH)、8.25(dd,H)、8.95(dt,1H)、9.20(dd,1H)、9.55(d,1H)。
6b)塩化1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウム(化合物6b)の合成
1−メチル−ピリジニウム−3−カルボキシラート塩酸塩(1.74g、10ミリモル)を塩化チオニル(7ml)に加えた。当該反応混合物を1.5時間68〜70℃で攪拌し、その後真空下で乾固するまで濃縮した。ヘキサン(25ml)およびオレイルアルコール(2.69g、10ミリモル)を当該残留物に加え、当該混合物は3日間43℃で攪拌し、減圧下で乾固するまで濃縮すると、粘着性のある固体4.1g(9.66ミリモル、96%)が得られた。
H−NMR(200MHz、DMSO−d)ppm δ:0.85(t,3H,Me)、1.20〜1.50(m,22H,11CH)、1.70〜1.80(m,2H,CH)、1.95(bd,4H,2CH)、4.38(t,2H,COOCH)、4.42(s,3H,N−Me)、5.27〜5.40(m,2H,CH=CH)、8.25(dd,H)、8.95(d,1H)、9.20(dd,1H)、9.55(d,1H)。
6c)1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウムトシラート(化合物6c)の合成
実施例2で説明した手順で調製したニコチン酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル(3.74g,10ミリモル)をニトロメタン(5ml)とメタノール(2.5ml)の混合物に溶解した。4−メチルベンゼンスルホン酸メチル(1.86g、10ミリモル)のニトロメタン(2ml)とメタノール(1ml)混合溶液を加え、当該反応混合物を4日間室温で攪拌した。当該透明な溶液を減圧下で乾固するまで濃縮すると、透明で粘着性の固体5.2g(9.3ミリモル、93%)を与えた。
H−NMR(200MHz、DMSO−d)ppm δ:0.85(t,3H,Me)、1.20〜1.50(m,22H,11CH)、1.70〜1.80(m,2H,CH)、1.96(bd,4H,2CH)、2.25(s,3H,トリルMe)、4.36(t,2H,COOCH)、4.42(s,3H,N−Me)、5.27〜5.39(m,2H,CH=CH)、7.10(d,2H,Ph)、7.45(d,2H,Ph),8.25(dd,H)、8.95(dt,1H)、9.20(dd,1H)、9.55(d,1H)。
【実施例7】
【0101】
塩化4−メチル−4−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニルメチル−モルホリン−4−イウム(化合物7)の合成
クロロ酢酸オクタデカ−9−(Z)−エニルエステル(17.2g,50ミリモル)およびN−メチルモルホリン(6.6ml、60ミリモル)をアセトニトリル(100ml)中で18時間還流した。当該反応混合物を室温まで冷却し、乾固するまで濃縮した。アセトンを加え、沈殿した粘着性ある残留物を濾過して集め、アセトンで洗浄してから乾燥すると、融点129〜131℃の標記化合物7が僅かに粘着度がある吸湿性の黄色固体として得られた。
計算値:C,67.31;H,10.84;N,3.14。測定値:C,65.58;H,11.35;N,3.48。
H−NMR(200MHz、CDCl)ppm δ:0.88(t,3H,Me)、1.15〜1.50(m,22H,11CH)、1.65〜1.80(m,2H,CH)、2.0(bd,4H,2CH)、3.78(s,3H,N−Me)、4.08〜4.36(m,10H,COOCH,4CH morpholin)、5.28(s,2H,COCHN)、5.27〜5.39(m,2H,CH=CH)。
【実施例8】
【0102】
臭化1−[(2−(1H−インドール−3−イル)−エチル)]−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジウム(化合物8)の合成
3−(2−ブロモエチル)インドール(1.12g、5ミリモル)のメタノール(10ml)溶液をニコチン酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル(1.87g、5ミリモル)のメタノール(5ml)溶液に加えた。当該反応混合物を24時間室温で攪拌し、減圧下で乾固するまで濃縮すると、標記化合物8を粘着性ある固体として与えた(2.7g,4.5ミリモル,90.3%)。
H−NMR(200MHz、DMSO−d)ppm δ:0.85(t,3H,Me)、1.20〜1.50(m,22H,11CH)、1.70〜1.80(m,2H,CH)、1.90〜2.05(bd,4H,2CH)、3.4(2H,CH)、4.31(t,2H,CHOCO)、4.95(t,2H,CH)、5.30〜5.39(m,2H,CH=CH)、6.30〜7.60(m,5H,indole aryl)、8.10〜9.50(4H,pyr)、11.0(br s,1H,NH)。
【実施例9】
【0103】
重酒石酸ピペラジン−1−イル−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル(化合物9)の合成
ピペラジン(10.77g、125ミリモル)のアセトニトリル(200ml)溶液に粗クロロ酢酸オレイル(25ミリモルの塩化クロロアセチルから調製)のアセトニトリル(30ml)溶液を添加した。当該混合物を1.5時間還流し、室温まで冷却し、乾固するまで濃縮した。当該残留物に水と酢酸エチルを加え、両相を分離させた。当該有機相を同量の水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、乾固するまで濃縮した。当該油状残留物を少量のメタノールに溶解し、MeOH中の酒石酸(7.50g、2当量)を加えた。当該粗塩の溶液を乾固するまで濃縮し、当該固体残留物をアセトニトリルで処理し、濾過し、アセトニトリルで洗浄し、その後アセトンで処理した。当該固体をMeOH(400ml)に溶解し、濾過し、乾固するまで濃縮した。当該残留物をEtOAcで処理し、濾過し、EtOAcで洗浄し、次にアセトンで洗浄し、そして乾燥すると標記化合物9が白色、非吸湿性粉末として得られ、融点は130〜132℃であった(10.45g、15ミリモル、60%)。
計算値:C,55.32;H,8.42;N,4.03。測定値:C,53.67;H,8.66;N,4.14。
H−NMR(200MHz、DMSO−d)ppm δ:0.85(t,3H,Me)、1.18〜1.34(bs,22H,11CH)、1.54(bs,2H,CH)、1.97(bd,4H,2CH)、2.73(s,4H,2CH)、3.06(s,4H,2CH)、3.30(s,2H,N−CHCOO)、4.03(t,2H,CHOCO)、4.22(s,1.5H,tartrate CH)、5.33(t,2H,CH=CH)。
【実施例10】
【0104】
4−ジメチルアミノメチル−安息香酸オクタデカ−(E)−9−エニルエステル塩酸塩(化合物10)
標記化合物10(1.0g、2.1ミリモル、46%)、融点194〜6℃を実施例5bで説明した手順で4−ジメチルアミノメチル−安息香酸塩酸塩(1.0g、4.6ミリモル)から調製したが、オレイルアルコールの代わりにエライジルアルコールを使用した。
計算値:C,72.14;H,10.37;N,3.00。測定値:C,71.36;H,11.01;N,3.19。
H−NMR(200MHz、CDCl)ppm δ:0.88(t,3H,Me)、1.25〜1.33(bs,22H,11CH)、1.75(m,2H,CH)、1.96(m,4H,2CH)、2.83(s,6H,NMe)、4.30(t,2H,CHOCO)、4.39(s,2H,PhCh)5.38(t,2H,CH=CH)、7.83(d,2H)、8.10(d,2H)。
【実施例11】
【0105】
アミノフェニル酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル塩酸塩(化合物11)の合成
N−Bocフェニルグリシン(2.51g、10ミリモル)のアセトニトリル(50ml)溶液に1,1’−カルボニルイミダゾール(3.24g,20ミリモル)を分割して加えた。当該溶液を1時間室温で攪拌し、オレイルアルコール(3.15ml、2.68g、10ミリモル)を加え、当該反応混合物を更に2時間室温で攪拌した。当該溶媒を蒸発させ、残留物を酢酸エチル(150ml)に溶解し、5%NaHCO、5%クエン酸および水で連続して洗浄し、MgSOで乾燥して乾固するまで濃縮した。当該残留物を1%HClの酢酸エチル(100ml)溶液に溶解し、当該溶液を室温で6時間放置し、乾固するまで濃縮した。こうして得た残留物をエーテル/n−ヘキサンで結晶化すると、1.6gのオフホワイトの固体(3.65ミリモル、36.5%)が得られ、融点が101〜103℃であった。
計算値:C,71.28;H,10.12;N,3.10。測定値:C,70.87;H,10.33;N,3.47。
H−NMR(200MHz、DMSO−d)ppm δ:0.85(t,3H,Me)、1.20〜1.50(m,22H,11CH)、1.70〜1.80(m,2H,CH)、1.96(bd,4H,2CH)、4.15(m,2H,COOCH)、5.25(s,1H,PhCHNH)5.27〜5.39(m,2H,CH=CH)、7.40〜7.60(m,5H、Ph)、9.20(br s,3H,N)。
【実施例12】
【0106】
ジメチルアミノ−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル(化合物1)のアジュバント関節炎(AA)に対する効果
8〜9週齢の近交系メスLewis系ラット(Harlan−Olac社から得た1群8匹のラット)に1mgの殺菌したMycobacterium tuberculosis(Difco)を含有する不完全フロインドアジュバント(IFA、乳化剤を含有する鉱物油;Sigma社)の0.1mlを尾の付け根で免疫性を与えてAAを誘導した。肢の関節炎は12〜14日後に発症が明確になり、記載(Holoshitz等、1983)の通り4肢各々の炎症の重症度等級0〜4を合計した0〜16の等級で評点をつけた。当該関節炎のピークは免役性付与後通常約26日目に見られる。
ラットの1群につき、免疫性を与える日に食塩水0.5ml中の40mgの化合物1を静脈内処置する(三角印);他の群はAAの開始後14日目に化合物1の同量で処置し(丸印)、そして第三群は食塩水で処置した(四角印)。AAを、各肢につき発赤と腫れの程度を0〜4の等級で、0〜16の等級の評点をつけた。図1で示した当該結果は平均+SEである。図1で示したように、化合物1はAAで起きた炎症からラットを防御することができた。
【実施例13】
【0107】
ジメチルアミノ−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル(化合物1)の抗炎症効果−EAEに対する防御
EAEは、完全フロインドアジュバント(CFA)(Lewis系ラットで)中のミエリン塩基性タンパク質(MBP)または不完全フロインドアジュバント(IFA)(DAラットで)中のラット脊髄のエマルションで免疫性を与えることによりラットの数種に誘導できる実験的自己免疫疾患である。当該動物実験疾患はヒト自己免疫疾患の多発性硬化症についてのモデルとして役に立つ。当該疾患は免疫性を与えた後約12日目に当該動物に発症し、中枢神経系の炎症による種々の程度の麻痺で特徴付けされる。Lewis系ラットのような幾つかの系では麻痺は最大6〜7日間継続でき、当該ラットは急性麻痺のピークで死亡しなければ通常回復する。DAラットのような他の系では、当該麻痺は慢性でありえて緩和ができる。
EAEの誘導および臨床評価に関しては、DAラットから得られる脊髄は冷凍し、解凍して免疫性を与える前にスパチュラで完全に細かく切る。ラットは、1:1のIFA(Difco,Detroit,MI,USA)と抗原(容量/重量、即ち100μl IFA/100mgの全脊髄)から調製した200μlのエマルションを尾の背底部に一回皮下注射(皮膚の直下)して免疫性を与えた。IFAは20mg/mlのMycobacterium tuberculosisの37RA株(Difco)(=完全フロインドアジュバント、CFA)で補足した。当該エマルションは気密ガラス注射器および1.2mm直径の針による摩碎で調製した。ラットは定期的に重量を量り、EAEの臨床徴候につき検査した。臨床重症度を評価するのに4段階の等級を用いた:0 麻痺無し;1 尾の衰弱(垂れ下がる);2 後肢麻痺;3 後肢および前肢麻痺;4 重度の全体麻痺(Lorentzen他、1995)。
8〜9週齢の5或いは7匹のDA系メスラット群の後足蹠に、足蹠当たり100mgの全均質化DA脊髄を含有するIFA0.1mlをラット当たり全200mgにて免疫性を与えた。免疫性を与える日に、当該ラットは0.5mlの食塩水中の化合物1を40mg、或いは食塩水(対照)を静脈内(IV)注射で処置した。当該ラットはEAEにつき上記の通りの重症度等級0〜4により評点を付けた。当該結果を図2で平均評点+SEとして示す。図2における当該結果は化合物1(丸印)は非処置対照(四角印)ラットと比べて有意な程度で麻痺を防御できた。
【実施例14】
【0108】
ジメチルアミノ−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル(化合物1)の皮膚同種移植生着に対する効果
植皮片移植を基本的に記述のように(Birk等、1999)実施した。そこでは、マウスを毛刈りし、皮膚の1cm区画を犠牲にした供与体の背部から切り取り、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で洗浄した。同種移植片の調製では麻酔をした受容体(Nembutal6mg/ml,0.25ml/マウス)から各1cmを背部皮膚の2箇所から切り取った。受容体当たり2つの供与体同種移植片を背部損傷個所に移植した。Histoacryl(B.Braun Melsungen AG,Melsungen,Germany)を当該移植片の周りに適用した。Nobecutan(ASTR,Astra Tech,Glos G15,UK)を当該移植片上に噴霧した。
当該実験では、8週齢の6匹のBALB/cメスマウスの群に、8週齢の6匹のC57BL/6メスマウスから1cmの全層皮膚移植片を移植した。移植の日に、受容体マウスの群には食塩水または化合物1の10mgを含有する100μl食塩水を静脈内に処置した。拒絶の日を評点とした。図3で示されるように、化合物1(丸印)で処理したマウスにおける当該移植した皮膚は非処理対照(四角印)マウスと比較して長く生着した。
【実施例15】
【0109】
EAEの治療におけるMBPペプチド用のアジュバントとしてのジメチルアミノ−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル(化合物1)の使用
化合物1は可能性のある抗炎症性免疫調整剤であることを示したので、自己免疫疾患のようなT細胞介在疾患の病因に関連する炎症T細胞により認識される抗原と共に、前記T細胞介在疾患の治療用のアジュバントとしての効果を試験するのは興味あることである。
EAEは、7〜9週齢のメスLewisラットの各足蹠にCFA(Sigma社)中のモルモットMBPの25μgを注射して誘導した。当該疾患は免疫性を与えて約12日目に発症し、それは中枢神経系の炎症による麻痺の種々な程度により特徴付けられる。当該ラットは麻痺につき上の実施例13にて説明したように0〜4の等級で評点化した。
EAEはMBP分子の規定された決定基を認識するT細胞により引き起こされる。Lewis系ラットにおける主MBP決定基はMBPの配列71〜90からなるペプチドで構成されている(これ以後はp71〜90ペプチドという)。
脳炎誘発性MBPp71〜90ペプチドとアジュバントとして化合物1の投与でEAEの発症抑制もできるかどうかを試験するために、5〜8匹1群のLewisラットに、MBP免疫性を与えた日(0日目)および5日後(5日目)或いはMBPによる免疫性を与える−14日目および−7日目に5mgの化合物1または食塩水の中に乳化したp71〜90ペプチドの皮下注射、或いは食塩水だけの中の化合物1(ペプチドなし)で処置した。p71〜90/化合物1による処置のEAEへの効果は当該疾患の発生率および重症度により評価される。対照処置と食塩水中のp71〜90ペプチドまたは化合物1とペプチド無しの食塩水と比較したときの麻痺の最大程度の低減は、化合物1を伴うエマルション中のp71〜90MBPペプチドのような関連ペプチドはラットにおいてEAEを調節することができることを示唆する。
【実施例16】
【0110】
AAの処置における組換えhsp60用のアジュバントとしてのジメチルアミノ−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル(化合物1)の使用
AAは上記実施例12で説明したように殺菌したMycobacteria tuberculosisの1mgを含有するIFAで7〜9週齢メスのLewis系ラットの尾の基部に免疫性を与えて誘導した。関節の炎症の程度で0〜16の等級で格付けした。
AAの処置については、7〜9週齢の5〜8匹のメスLewis系ラット群をAA誘導後、アジュバント関節炎におけるTリンパ球で認識されるマイコバクテリアのエピトープである組換えhsp60の100μgをPBS中または化合物1(5mg)に乳化したもの或いは食塩水のみに入れた化合物1を、AA誘導の日(0日目)および7日後(7日目)、または−14日目と−7日目に皮下注射で処置した。関節炎での処置の効果は実施例12で説明したように評価する。
【実施例17】
【0111】
酒石酸(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル(化合物3)はDTH皮膚反応を抑制
ある種のT細胞がある種の型の抗原に出会うとき分泌するサイトカインにより誘導される局所炎症反応である遅延型過敏症(DTH)は、皮膚炎症について確立した実験モデルである。
最初の工程として、DTH反応は8週齢メスBLAB/cマウスの皮膚に誘導された。当該マウスはアセトン/オリーブ油(4:1、容量/容量)中の2%オキサゾロン(4−エトキシメチレン−2−フェニル−2−オキサゾリン−5−オン;Sigma社、St.Louis,MO)の溶液200μlをマウスの剃毛した腹へ局所塗布すると感作される。感作の6日目、各マウスの1つの耳に0.5%オキサゾリン溶液20μlの局所塗布で誘発した。誘発後の30分に各マウス(対照:非処置の耳またはPBSで処置)の誘発した耳に種々の投与量(1,2および4mg)の化合物3の20μlを塗布して処置を行った。24時間後、炎症の程度をマウス耳の腫張試験を用いて測定し、化合物3による処置で誘導されたパーセント抑制を定量した。当該結果は図4に示す。化合物3の1mgおよび3mgによる処置はDTH反応(それぞれ12.5%および8%)を抑制した。
【実施例18】
【0112】
化合物5,9および11はDTH皮膚反応を抑制
マウスを実施例17におけるようにDTHを誘導した。誘発の30分後に化合物5,9および11につき0.5、1、2および4mgの投与量の40μlを塗布して処置をした。これに加えて、陽性対照のデキサメサゾン(2mg/40μl)を投与した。DTH誘導マウスの群に同様に(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸エチルエステル塩酸塩(陰性対照)で処置した。
試験化合物と共にデキサメサゾンの結果はDTHモデルにおいて炎症を低減する陽性結果を示した。陰性対照であるエチルエステルはいずれの陽性結果も示さなかった。当該結果を図5に示す。
【実施例19】
【0113】
化合物3のアジュバント関節炎(AA)に対する効果
AAを8週齢メスLewis系ラットに上記実施例12で説明したように誘導した。ラットの群に異なる量の化合物3(10,50,100または200mg)を当該疾患誘導前の−7日目にSCで処置した。図6に示すように化合物3はラットをAAから防いだ。
【実施例20】
【0114】
SCおよび経口投与した化合物3のEAEに対する効果
上記実施例15で説明したようにCFA中のモルモットMBPにてEAEを8週齢のメスラットに誘導した。
1つの実験では、ラット群(1群7匹の動物)に異なる量の化合物3(10,50,100または200mg)につき当該疾患誘導7日前に背部へSCで処置した。当該ラットはEAEにつき上で説明したように0〜4の重症度等級で評点をつけた。当該結果は図7に示す。
他の実験では、ラット群(1群7匹の動物)に異なる量の化合物3(0.2、1、2、10または20mg)につき経口でEAE誘導の日から開始して毎日処置した。当該ラットはEAEにつき上で説明したように0〜4の重症度等級で評点をつけた。当該結果は表1および図7に示す。
更なる実験では、EAE誘導の日から化合物3を1日おきに経口で投与し、同様な効果であることが見出された(図示せず)。
上記の実験の結果は、化合物3は皮下または経口で投与するとEAEに対してラットを保護できることを示す。
【0115】
【表1】

【実施例21】
【0116】
EAEに対する化合物9の経口投与の効果
上記実施例15にてCFA中のモルモットMBPにつき説明したように8週齢メスLewis系ラットにEAEを誘導した。
ラットには経口で化合物9(100mg/kg)を処置した。当該ラットはEAEにつき上で説明したように0〜4の重症度等級で評点をつけた。表2および図9の結果は、化合物9を経口で投与するとラットをEAEから保護できたことを示す。
【0117】
【表2】

【実施例22】
【0118】
化合物3は酢酸グラチラマー(GA)の免疫効果を促進
酢酸グラチラマー(GA)(COPAXONE(登録商標)、Teva Pharmaceuticals Ltd.,Israelの商標)は多発性硬化症の治療用の用いられる免疫調整剤である。GAは生体外および生体内で実証できる幾つかの明確な免疫効果を有している:GA特異なT細胞の生成およびEAEにおける臨床徴候の重症度の軽減。これらの効果はGAについて見られるが、ある種の添加物と共にそれを投与するとその効果を増大する。本実施例では、GAおよびアジュバントである化合物3による免疫の効果をEAEの転帰および特定の細胞性免疫応答につき試験をした。
材料:酢酸グラチラマー(GA)はTeva Pharmaceuticals Ltd.,Israelから提供された;ICRマウスからの凍結乾燥マウス脊髄ホモジネート(MSCH)はBiological Lab,Netanya,Israelが調製した;IFAのM.tuberculosisはDifco社から購入;CFA、百日咳毒素(RTX)、PBS、2−メルカプトエタノール、コンカバリンA(Con A)はSigma社から入手;Trypan BlueはBDH社から入手;DCCM1(Defined Cell Culture Media)およびRPMI 1640培地はBeit−Haemek社、Isralから入手;L−グルタミン2mM×100、MEM(Minimum Essential Media)−非必須アミノ酸×100およびピルビン酸ナトリウム1mM×100の全て滅菌物はBio−Lab社、Isrraelから入手した。
実験動物:EAEはCSJL/F1マウスで試験を行い、免疫応答はC57BL/J6マウスで試験をした。健常で、特定病原体未感染のメスCSJLF/1およびオスC57BL/J6マウスはHarlan Animal Center,Jerusalem,Israelから入手した。当該マウスは研究の始めにおいて9週齢で、重量は20g±15%であった。
A.EAE用の試験プロトコール
(i)マウスは下に示すように4試験群に分けた:
【0119】
【表3】


(ii)免疫付与:マウスはEAE誘導の11日前にIFA中のGAのエマルション(第1群)または化合物3の中のGA溶液(第2群)、PBS中の化合物3(第3群)またはPBSのみ(第4群)を横腹の皮下に100μl/マウスの容量投薬量を投与してPBS免疫性を与えた(右および左横腹で、50μL/横腹)。
(iii)IFA中のGAエマルションの調製:第1群の免疫付与は、PBS中のGA溶液(100mg/mL)をIFA中に1:2に希釈して、GA5.0mg/マウス(0.1ml)を注射するために最終濃度を50mg/mLとした。当該GA+IFA混合物をLuerの固定ロックを通して二番目の注射器に接続した注射器(2.5mL)中に移し、当該材料を1つの注射器から他の注射器に移しながら10分間当該材料がよく乳化するまでよく混合した。
(iv)化合物3を伴うGA溶液の調製:第2群の免疫付与では、PBS中のGA(100mg/mL)をPBS中の化合物3の溶液(10mg/mL)で希釈して、5.0mg/マウスの投与量用に最終濃度を50mg/mLとした。第3群の免疫付与では、化合物3(10mg/mL)とPBS(媒体)の同容量を混合した。化合物3+GA免疫付与第2群および化合物3免疫付与対照第3群における化合物3の最終濃度は5mg/mLである(0.5mg/マウスの投与量レベル、25mg/kg相当量)。
(v)EAE誘導:EAEは、MSCHおよび市販のMycobacterium tuberculosis H37Raを含有するCFAからなる脳炎誘発薬を当該動物の足蹠に注射し、百日咳毒素を静脈内注射して誘導された。
(vi)臨床的観察および評点化:免疫性付与後の毎日、当該マウスの異常な臨床徴候および挙動につき観察した。動物は免疫付与前および、その後研究の終了まで1週間に1回計量をした。EAE誘導の10日後、当該マウスにつきEAEの臨床徴候を調べ、評点化した。当該EAE臨床徴候は目で観察し、EAE誘導後9日目から実験の終了日まで以下の5段階等級に従って評点化して臨床重症度を評価した:0、正常な挙動;1、体重の減少;2、尾の衰弱;3、後肢の緊張低下および衰弱;4、後肢の麻痺;4、重度の全身麻痺;5、呼吸の障害および/または痙攣および/または完全麻痺または死亡。1以上の評点を有する全てのラットは病気とみなされる。
(vii)結果の解釈:
死亡率の計算:各群における罹病および死んだ動物の数を測定し、疾患発生率および死亡率を以下のように計算した:
【数1】


パーセント活動の計算:死亡率によるパーセント活動は以下のように計算した:
【数2】


疾患および疾患開始の平均期間の計算:日数で表した疾患および疾患開始の平均期間を計算した。
平均最大評点およびパーセント抑制率の計算:試験群10匹のマウスの各々の最大評点を合計した。
当該群の平均最大評点を以下のように計算した:
各マウスの最大評点の合計/群のマウス数。
パーセント抑制は以下のように計算した:
【数3】


平均群評点およびパーセント抑制の計算:試験群中10匹のマウス各々の評点を合計した。
群の平均群評点(GMS)は以下のように計算した:
各マウスの評点の合計/群のマウス数。
パーセント抑制は以下のように計算した:
【数4】


B.免疫的経過観察用のプロトコール
(イ)マウスを以下に示すように6試験群に分割した:
【0120】
【表4】


(ii)免疫付与:マウスは脾臓回収の10日前に免疫性を与えた。CFA中のGAのエマルションおよびPBSと化合物3を伴うGAの溶液を100μL/マウスの容量投与量で横腹に皮下投与した。
(iii)CFA中のGAエマルションの調製:PBS中のGA溶液(75μg/マウス用に、最終GA濃度は1.5mg/mL)をCFA中で希釈してGAが75μg/マウスとなるように最終濃度を0.75mg/mLとした。当該混合物(GA+CFA)をLuer固定ブリッジにより2個目の注射器と接続した注射器(2.5mL)に移し、10分間1つの注射器から他の注射器に移動させて材料がよく乳化するように充分に混合した。
(iv)化合物3を伴うGA溶液の調製:化合物3をPBSに溶解して500μg/マウス用に10mg/mlを作り、50μg/マウス用に1:10で希釈して1mg/mlとした。GA(20mgバイアル)をPBSに溶解して20mg/mL溶液を作り、その後に更にPBSにて希釈して投与量75μg/マウス用に最終GA濃度1.5mg/mLを作成した。同量の化合物3とGA,または対照群用にPBSと混合した。
(v)安全性評価:新処方の安全性を試験するために、免疫性を与えた後に毎日異常な臨床徴候および挙動につきマウスを観察する継続観察を実施した。当該マウスは以下のチャートに従って評点化した:0−正常な挙動;1−僅かに毒性徴候(立毛);2−中等度の毒性徴候(部分的な閉眼、背中を丸めた姿勢、自発運動の低下、無気力);3−重度の毒性徴候(運動失調、痙攣、喘ぎ呼吸、麻痺、意識不明);4−死亡。マウスは免疫付与前および実験の終了日に計量した。人道的見地から、全ての群で重度の疾患発生率が100%であるので5日間の観察後に実験は終了した。脾臓を計量し、脾臓/体重の比を計算した。
(vi)細胞培養:脾臓を回収し、各群ごとに滅菌RPMI培地に集めた。細胞を抽出し、濃縮したDCCM1倍地に懸濁して計数を行った。その後細胞を、ベースラインとして培地、活性剤として25μg/mlおよび5μg/mlの2濃度のGA、および陽性対照としてConAとともに37℃、5%COで培養した。上澄み液を回収し、サイトカイン分泌のレベルを検査した。
(vii)予備培養における脾臓からのサイトカイン分泌の検出はELISAを後いて実施した。細胞は生体外で活性化し、IL−2分泌レベルを供給業者の取扱説明書に従って市販キットを用いて検出した。
C.結果
(i)EAEの結果
死亡率、平均最大評点、群平均評点、疾患開始の平均および平均疾患期間を表3に示す。EAE徴候の抑制はGA(5mg/マウス)+化合物3で免疫性を与えた群で目に付いた。死亡率での60%抑制、MMSでの16%減少およびGMSでの23.7%低減が見出された。GA+化合物3で処置した群におけるこのEAE徴候の抑制は、GAなしの化合物3またはGA+IFA(他の添加剤)で処置した群で見られる抑制のいずれも上回っていた。
(ii)免疫的経過観察の結果
免疫性を与えたマウスの脾臓細胞からのIL−2分泌を表4および図10で示す。投与量50および500μg/マウスの化合物3(GAなし)で免疫性を与えた群では、脾臓細胞からのIL−2分泌はGAに応じては上昇しなかった。ConA(非特異的活性剤)は全ての群でIL−2レベルを上昇させた。非特異的ConA活性化に対して化合物3は効果がなかった。
GAの75μg/マウス+化合物3の50μg/マウス投与量よる免疫性付与は脾臓からGAに応じたIL−2分泌を生じた。IL−2レベルはGAのみで免疫性を与えたマウスから得た脾臓細胞で見出される量より高かった。
GAの75μg/マウス+化合物3の500μg/マウス投与量による免疫付与は脾臓からGAに応じたIL−2分泌を同様に生じた(GAのみにより免疫性を与えたマウスから得た脾臓細胞で見出したIL−2レベルより低程度であった)。
安全性の経過観察は異常な挙動または異常な臨床徴候を示さなかった。全ての評点は0であった。
化合物3およびGA75μg/マウス+化合物3は両方の投与量においてマウス体重に副作用を持たなかった。全てのマウスは10日間で約1.5g/マウスの同じようで正常な重量増加を示した。
マウスの全体重に対する脾臓重量の比率は全ての群で同じ程度であった。
D.結論
ここに示したデータはGAに化合物3を加えるとEAEモデルにおける、その有用な効果を増進し(特に生存において)、その免疫的効果を亢進する(GAに対する脾臓細胞の細胞応答)。
GAの有り無しにおける化合物3による処置は毒性による異常性の徴候は示さなかった。そこで、化合物3のSC注射は検出されるような急性炎症または毒性効果はない。加えて、GAの有り無しにおける化合物3は免疫抑制の徴候は示さなかった。
【0121】
【表5】

【0122】
【表6】

【0123】



【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、アジュバント関節炎(AA)に対するN,N−ジメチル−アミノ酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル(化合物1)の効果を示す。化合物1は、Lewis系ラットに免疫性を与える日(0日目、三角印)またはAA開始後14日目(14日目、丸印)に静脈内(IV)注射した。
【図2】図2は、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)に対する化合物1の効果を示す。化合物1は免疫性を与える日にDA系ラットにIVで投与した(0日目、丸印)。
【図3】図3は、皮膚同種移植片の生着についての化合物1の効果を示す。化合物1は免疫性を与える日(0日目、丸印)にマウスにIVで投与した。
【図4】図4は、異なる濃度(1,2または4mg)の酒石酸(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル(化合物3)で処置した後のBALB/c系マウスにおける遅延型過敏症(DTH)反応の抑制を示す。
【図5】図5は、異なる濃度(0.5、1,2または4mg)の化合物5、9および11のマウスにおけるDTHへの効果を示す。デキサメタゾン(2mg)を陽性対照とし、(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸エチルエステル塩酸塩(0.5、1,2または4mg)を陰性対照として用いた。
【図6】図6は、異なる濃度(10,50、100、200mg)の化合物3の皮下(SC)投与がラットにおけるAAへ与える効果を示す。オレイルアルコール(OA、100mg)を比較に使用した。
【図7】図7は、異なる濃度(10、50,100,200mg)の化合物3のSC投与がラットにおけるEAEへ与える効果を示す。オレイルアルコール(OA、100mg)を比較に使用した。
【図8】図8は、異なる濃度(0.2、1、2、10、20mg)の化合物3の経口投与がラットにおけるEAEへ与える効果を示す。オレイルアルコール(OA、10mg)を比較に使用した。
【図9】図9は、重酒石酸ピペラジン−1−イル−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル(化合物9、100mg/kg)の経口投与がラットにおけるEAEに与える効果を示す。
【図10】図10は、化合物3がEAE誘導ラットにおける酢酸グラチラマー(GA)の免疫効果を促進することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I、
【化1】


または製剤上許容されているその塩で、式中R1はC12〜C24アルキルまたはC10〜C24アルケニルで、Aは少なくとも1つの非環式または環式アミノ基および/または三級か四級の窒素原子を含む少なくとも1個の複素芳香環を含有する残基である化合物の、炎症治療用の医薬組成物を調製するための使用。
【請求項2】
R1がC12〜C20のアルキルまたはアルケニルである、請求項1記載の使用。
【請求項3】
R1がC16〜C18のアルキルまたはアルケニルである、請求項2記載の使用。
【請求項4】
R1がヘキサデシル、オクタデシル、ヘキサデセニル、オクタデセニル、シス−9−オクタデセニル、トランス−9−オクタデセニル、シス−9,12−オクタデカジエニル、シス−6,9,12−オクタデカトリエニルまたはシス−9,12,15−オクタデカトリエニルである、請求項3記載の使用。
【請求項5】
R1がシス−9−オクタデセニルである、請求項4記載の使用。
【請求項6】
一般式Iの前記化合物において、当該残基Aは:
(i)
【化2】


式中R2がH、C〜Cアルキル、アリールまたはアラルキルで、いずれのアリール部分も非置換でも、またはニトロ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、NR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されていてもよく;R3はH、電子対またはC〜Cアルキルで;R4およびR5はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキル、或いはR4とR5はそれらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルで置換された窒素原子が間に入っている5〜7員の飽和環を形成し;R6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである;
(ii)NR6R7またはCR8R8NR6R7により置換され、その中のR6,R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルであるフェニルである;そして
(iii)
【化3】


式中R9はH,C〜Cアルキルまたはインドリル(C〜C)アルキルでXは対イオン、或いはR9が電子対でXは不在、などからなる群より選ばれる、請求項1から5のいずれか1つに記載の使用。
【請求項7】
当該残基Aが以下の式で:
【化4】


式中R2はH;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、二級ブチル、ペンチルとヘキシルからなる群より選んだ直鎖または分岐C〜Cアルキル、フェニル、ベンジルまたはパラ−ヒドロキシベンジルで;R3はH,電子対またはC〜Cアルキルで;R4およびR5はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキル、或いはR4およびR5はそれらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルで置換された窒素原子が間に入っている5〜7員の飽和環を形成し、前記の環はピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジンおよび4−メチルピペラジンからなる群より選ばれる、請求項6記載の使用。
【請求項8】
R2がHまたはフェニルで、R3はH,メチルまたは電子対、R4およびR5は各々HまたはC〜Cアルキル、或いはR4およびR5は、それらが結合しているN原子と共に、場合により4位の窒素原子にメチルが置換したモルホリン環またはピペラジン環を形成する、請求項7記載の使用。
【請求項9】
前記化合物が、
N,N−ジメチルアミノ−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル;
酒石酸(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル;
酒石酸(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸オクタデシルエステル;
塩化4−メチル−4−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニルメチル−モルホリン−4−イウム;
α−アミノ−α−フェニル−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル塩酸塩;および
重酒石酸ピペラジン−1−イル−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステルからなる群より選ばれる、請求項8記載の使用。
【請求項10】
当該残基AがNR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されたフェニルで、式中のR6、R7およびR8はそれぞれが別々にHまたは1C〜Cアルキルである、請求項6記載の使用。
【請求項11】
AがCR8R8NR6R7で置換されたフェニルで、その中のR8はHでR6とH7は各々メチルである、請求項10記載の使用。
【請求項12】
前記化合物が4−ジメチルアミノメチル安息香酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル塩酸塩または4−ジメチルアミノメチル安息香酸オクタデカ−(E)−9−エニルエステル塩酸塩である、請求項11記載の使用。
【請求項13】
Aが下記の基で:
【化5】


式中R9はH、C〜Cアルキルまたはインドリル(C〜C)アルキルでXは対イオン、或いはR9が電子対でXは不在である、請求項6記載の使用。
【請求項14】
R9が電子対でXが不在であるか、或いはR9がメチルまたはインドリルエチルでXが塩素、臭素、ヨウ素およびトシラートからなる群より選ぶ対イオンである、請求項13記載の使用。
【請求項15】
前記化合物は、
ニコチン酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル;
よう化1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウム;
塩化1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウム;
1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウムトシラート;および
臭化1−[(2−(1H−インドール−3−イル))−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウムからなる群より選ばれる、請求項14記載の使用。
【請求項16】
前記医薬組成物が免疫介在の炎症の治療用である、請求項1から15の請求項のいずれか1つに記載の使用。
【請求項17】
前記医薬組成物が免疫介在の慢性または急性炎症性疾患、障害または状態の治療用である、請求項16記載の使用。
【請求項18】
前記医薬組成物が自己免疫疾患、重度なアレルギー、喘息、または移植片拒絶、アルツハイマー病のような慢性変性疾患、神経保護作用、器官再生、皮膚の慢性潰瘍または統合失調症から選ばれる疾患、障害または状態に関係する炎症の治療用である、請求項17記載の使用。
【請求項19】
前記自己免疫疾患が多発性硬化症またはヒト関節炎状態である、請求項18記載の使用。
【請求項20】
前記ヒト関節炎状態が関節リュウマチ、ライター症候群を伴う反応性関節炎、強直性脊椎炎または他の免疫系を介した関節の炎症である、請求項19記載の使用。
【請求項21】
前記免疫介在炎症疾患、障害または状態が、重症筋無力症、ギラン・バレー症候群または他の神経系の炎症性疾患;乾癬、尋常性天疱瘡または他の皮膚病;全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎または他の腎臓を冒す疾患;アテローム性動脈硬化症または他の血管の炎症;自己免疫性肝炎、炎症性大腸炎、膵炎または他の消化器官系の障害;I型真性糖尿病、自己免疫性甲状腺炎または他の内分泌系の疾患である、請求項17記載の使用。
【請求項22】
前記免疫介在する炎症性疾患または障害が乾癬である、請求項21記載の使用。
【請求項23】
前記医薬組成物が経口、局所、皮内または非経口投与用である、請求項1から22のいずれかに記載の使用。
【請求項24】
前記医薬組成物が皮下、静脈内または筋肉内投与用である、請求項23記載の使用。
【請求項25】
製剤上許容されている担体および一般式Iの化合物:
【化6】


または製剤上で許容されているその塩、式中R1はC12〜R24アルキルまたはC10〜R24アルケニルで、Aは少なくとも1種の非環式または環式アミノ基および/または三級または四級窒素原子を含有する少なくとも1個の複素芳香環を含有する残基であるものを含む、炎症治療用の医薬組成物。
【請求項26】
R1がC12〜R20のアルキルまたはアルケニルである、請求項25記載の医薬組成物。
【請求項27】
R1がC16〜R18のアルキルまたはアルケニルである、請求項26記載の医薬組成物。
【請求項28】
R1がヘキサデシル、オクタデシル、ヘキサデセニル、オクタデセニル、シス−9−オクタデセニル、トランス−9−オクタデセニル、シス−9,12−オクタデカジエニル、シス−6,9,12−オクタデカトリエニルまたはシス−9,12、15−オクタデカトリエニルである、請求項27記載の医薬組成物。
【請求項29】
R1がシス−9−オクタデセニルまたはトランス−9−オクタデセニルである、請求項28記載の医薬組成物。
【請求項30】
一般式Iの前記化合物において、当該残基Aは:
(i)
【化7】


式中R2はH、C〜Cアルキル、アリールまたはアラルキルで、いずれのアリール部分も非置換でも、またはニトロ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、NR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されていてもよく;R3はH、電子対またはC〜Cアルキルで;R4とR5はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキル、或いはR4およびR5はそれらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルが置換している窒素原子が間に入っている5〜7員飽和環を形成し;そしてR6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである;
(ii)NR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されたフェニルで、式中R6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである;および
(iii)
【化8】


式中R9はH、C〜Cアルキルまたはインドリル(C〜C)アルキルで、Xは対イオン、或いはR9が電子対でXが非存在、などから構成される群から選ばれる、請求項25から29のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項31】
式中当該残基Aは下式を有し:
【化9】


式中R2はHかメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、二級ブチル、ペンチルおよびヘキシルからなる群より選んだ直鎖または分岐C〜Cアルキル、フェニル、ベンジルまたはパラ−ヒドロキシベンジルで;R3は水素、電子対またはC〜Cアルキルで;R4およびR5はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキル、またはR4とR5はそれらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルが置換している窒素原子が間に入っている5〜7員飽和環を形成し、前記環はピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジンおよび4−メチルピペラジンからなる群より選択される、請求項30記載の医薬組成物。
【請求項32】
式中R2がHまたはフェニルで、R3はHまたは電子対、そしてR4とR5はそれぞれHまたはC〜Cアルキル或いはR4とR5はそれらが結合しているN原子と共に、場合により1位または4位窒素原子がメチルで置換されているモルホリン環またはピペリジン環を形成する、請求項31記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記化合物は:
N,N−ジメチルアミノ−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル;
酒石酸(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル;
酒石酸(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸オクタデシルエステル;
塩化4−メチル−4−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニルメチル−モルホリン−4−イウム;
α−アミノ−α−フェニル−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル塩酸塩;および
重酒石酸ピペラジン−1−イル−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステルからなる群より選ばれる、請求項32記載の医薬組成物。
【請求項34】
当該残基AがNR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されたフェニルで、R6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである、請求項30記載の医薬組成物。
【請求項35】
AがCR8R8NR6R7で置換されたフェニルで、R8はHでR6とR7はそれぞれメチルである、請求項34記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記化合物が4−ジメチルアミノメチル−安息香酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル塩酸塩または4−ジメチルアミノメチル−安息香酸オクタデカ−(E)−9−エニルエステル塩酸塩である、請求項35記載の医薬組成物。
【請求項37】
Aは以下の基で;
【化10】


式中でR9はH、C〜Cアルキルまたはインドリル(C〜C)アルキルでXは対イオン、或いはR9が電子対でXは不在である、請求項30記載の医薬組成物。
【請求項38】
R9が電子対でXが不在、或いはR9がメチルまたはインドリルエチルでXが塩素、臭素、ヨウ素およびトシラートからなる群より選ばれる対イオンである、請求項37記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記化合物は:
ニコチン酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル;
よう化1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウム;
塩化1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウム;
1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウムトシラート;および
臭化1−[(2−(1H−インドール−3−イル)−エチル)−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウムからなる群より選ばれる、請求項38記載の医薬組成物。
【請求項40】
免疫が介在する炎症治療用の、請求項25から39のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項41】
免疫が介在する慢性または急性炎症性の疾患、障害または状態の治療用の、請求項40記載の医薬組成物。
【請求項42】
自己免疫疾患、重度のアレルギー、喘息、または移植片拒絶、アルツハイマー病のような慢性変性疾患、神経保護作用、器官再生、皮膚の慢性潰瘍または統合失調症から選ばれる疾患、障害または状態に関係する炎症治療用の、請求項41記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記自己免疫疾患が多発性硬化症またはヒト関節炎状態である、請求項42記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記ヒト関節炎状態が関節リュウマチ、ライター症候群を伴う反応性関節炎、強直性脊椎炎または他の免疫系が介在する関節の炎症である、請求項43記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記免疫介在の炎症疾患、障害または状態が、重症筋無力症、ギラン・バレー症候群または他の神経系の炎症性疾患;乾癬、尋常性天疱瘡または他の皮膚病;全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎または他の腎臓を冒す疾患;アテローム性動脈硬化症または他の血管の炎症;自己免疫性肝炎、炎症性大腸炎、膵炎または他の消化器官系の障害;I型真性糖尿病、自己免疫性甲状腺炎または他の内分泌系の疾患である、請求項40記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記免疫介在の炎症性疾患または障害が乾癬である、請求項45記載の医薬組成物。
【請求項47】
経口、局所、皮内または非経口投与用である、請求項25から46のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項48】
皮下、静脈内または筋肉内投与用である、請求項47記載の医薬組成物。
【請求項49】
それを必要としている個体へ一般式Iの化合物:
【化11】


または製剤上許容されているその塩、式中R1はC12〜R24アルキルまたはC10〜R24アルケニル、およびAは少なくとも1種の非環式または環式アミノ基および/または三級または四級窒素原子を含有する少なくとも1個の複素芳香環を含有する残基であるものを効果量投与することを含む、炎症治療用の方法。
【請求項50】
R1がC12〜R20アルキルまたはアルケニルである、請求項49記載の方法。
【請求項51】
R1がC16〜R18アルキルまたはアルケニルである、請求項50記載の方法。
【請求項52】
R1がヘキサデシル、オクタデシル、ヘキサデセニル、オクタデセニル、シス−9−オクタデセニル、トランス−9−オクタデセニル、シス−9,12−オクタデカジエニル、シス−6,9,12−オクタデカトリエニルまたはシス−9,12、15−オクタデカトリエニルである、請求項51記載の方法。
【請求項53】
R1がシス−9−オクタデセニルまたはトランス−9−オクタデセニルである、請求項52記載の方法。
【請求項54】
式Iの前記化合物において、当該残基Aは:
(i)
【化12】


式中R2はH、C〜Cアルキル、アリールまたはアラルキルで、いずれのアリール部分も非置換であるか、またはニトロ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、NR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されていてもよく;R3はH、電子対またはC〜Cアルキルで;R4とR5はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキル、或いはR4およびR5はそれらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルが置換している窒素原子が間に入っている5〜7員飽和環を形成し;そしてR6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである;
(ii)NR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されたフェニルで、式中R6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである;および
(iii)
【化13】


式中R9はH、C〜Cアルキルまたはインドリル(C〜C)アルキルでXは対イオン、或いはR9は電子対でXが非存在などから構成される群から選ばれる、請求項49から53のいずれか1つに記載の方法。
【請求項55】
当該残基Aは下式で:
【化14】


式中R2はH;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、二級ブチル、ペンチルおよびヘキシルからなる群から選んだ直鎖または分岐C〜Cアルキル、フェニル、ベンジルまたはパラ−ヒドロキシベンジルで;R3はH、電子対またはC〜Cアルキルであり;R4およびR5はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルであるか、或いはR4とR5はそれらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルが置換している窒素原子が間に入っている5〜7員飽和環を形成し、前記環はピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジンおよび4−メチルピペラジンからなる群より選ばれる、請求項54記載の方法。
【請求項56】
R2はHまたはフェニルで、R3はHまたは電子対で、R4とR5はそれぞれHまたはC〜Cアルキル、或いはR4とR5はそれらが結合しているN原子と共に、場合により1位か4位の窒素原子がメチルで置換されたモルホリン環またはピペリジン環を形成する、請求項55記載の方法。
【請求項57】
前記化合物は:
N,N−ジメチルアミノ−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル;
酒石酸(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル;
酒石酸(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸オクタデシルエステル;
塩化4−メチル−4−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニルメチル−モルホリン−4−イウム;
α−アミノ−α−フェニル−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル塩酸塩;および
重酒石酸ピペラジン−1−イル−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステルからなる群より選ぶ、請求項56記載の方法。
【請求項58】
当該残基AがNR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されたフェニルで、R6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである、請求項54記載の方法。
【請求項59】
AがCR8R8NR6R7で置換されたフェニルで、R8はHでR6とR7はそれぞれメチルである、請求項58記載の医薬組成物。
【請求項60】
前記化合物は、塩酸4−ジメチルアミノメチル−安息香酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステルまたは塩酸4−ジメチルアミノメチル−安息香酸オクタデカ−(E)−9−エニルエステルである、請求項59記載の方法。
【請求項61】
Aは以下の官能基で;
【化15】


式中でR9はH、C〜Cアルキルまたはインドリル(C〜C)アルキルでXは対イオン、またはR9が電子対でXは不在である、請求項54記載の方法。
【請求項62】
R9が電子対でXが不在、またはR9がメチルまたはインドリルエチルでXが塩素、臭素、ヨウ素およびトシラートからなる群より選択する対イオンである、請求項61記載の方法。
【請求項63】
前記化合物は:
ニコチン酸オクダデカ−(Z)−9−エニルエステル;
よう化1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウム;
塩化1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウム;
1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウムトシラート;および
臭化1−[(2−(1H−インドール−3−イル)−エチル)−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウムからなる群より選ばれる、請求項62記載の方法。
【請求項64】
免疫が介在する炎症の治療のための、請求項49から63のいずれか1つに記載の方法。
【請求項65】
免疫が介在する慢性または急性炎症性の疾患、障害または状態の治療用の、請求項64記載の方法。
【請求項66】
自己免疫疾患、重度のアレルギー、喘息、または移植片拒絶、アルツハイマー病のような慢性変性疾患、神経保護作用、器官再生、皮膚の慢性潰瘍または統合失調症から選ばれる疾患、障害または状態に関係する炎症の治療用の、請求項65記載の方法。
【請求項67】
前記自己免疫疾患が多発性硬化症またはヒト関節炎状態である、請求項66記載の方法。
【請求項68】
前記ヒト関節炎状態が関節リュウマチ、ライター症候群を伴う反応性関節炎、強直性脊椎炎または他の免疫系が介在する関節の炎症である、請求項67記載の方法。
【請求項69】
前記免疫介在の炎症疾患、障害または状態が、重症筋無力症、ギラン・バレー症候群または他の神経系の炎症性疾患;乾癬、尋常性天疱瘡または他の皮膚病;全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎または他の腎臓を冒す疾患;アテローム性動脈硬化症または他の血管の炎症;自己免疫性肝炎、炎症性大腸炎、膵炎または他の消化器官系の障害;I型真性糖尿病、自己免疫性甲状腺炎または他の内分泌系の疾患である、請求項65記載の方法。
【請求項70】
前記免疫介在の炎症性疾患または障害が乾癬である、請求項69記載の方法。
【請求項71】
前記化合物が経口、局所、皮内または非経口で投与される、請求項49から70のいずれか1つに記載の方法。
【請求項72】
前記化合物が皮下、静脈内または筋肉内で投与される、請求項71記載の方法。
【請求項73】
一般式Ia、
【化16】


または製剤上許容されているその塩で、式中R1はC10〜C24アルキルまたはC10〜C24アルケニルで、Aは少なくとも1つの非環式または環式アミノ基および/または三級か四級窒素原子を含む少なくとも1個の複素芳香族の環を含有する残基であるが、R1がC18アルキルおよびAが少なくとも1つの非環状アミノ基または−CO−Aがプロリンの残基である化合物は除かれるアジュバントの、更に抗原を含んでいる治療製剤調製のための使用。
【請求項74】
R1がC12〜C20アルキルまたはアルケニルである、請求項73記載の使用。
【請求項75】
R1がC12〜C18アルキルまたはアルケニルである、請求項74記載の使用。
【請求項76】
式中R1がヘキサデシル、オクタデシル、ヘキサデセニル、オクタデセニル、シス−9−オクタデセニル、トランス−9−オクタデセニル、シス−9,12−オクタデカジエニル、シス−6,9,12−オクタデカトリエニルまたはシス−9,12,15−オクタデカトリエニルである、請求項75記載の使用。
【請求項77】
式中R1がシス−9−オクタデセニルまたはトランス−9−オクタデセニルである、請求項76記載の使用。
【請求項78】
一般式Iの前記化合物において、当該残基Aが:
(i)
【化17】


式中R2はH、C〜Cアルキル、アリールまたはアラルキルで、いずれのアリール部分も非置換でも、またはニトロ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、NR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されていてもよく;R3はH、電子対かC〜Cアルキルで;R4およびR5はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキル、或いはR1がオクタデシルのときにR4とR5がHまたはC〜Cアルキルでなければ、R4とR5はそれらが結合している窒素原子と共に5〜7員の飽和環を形成し、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルで置換された窒素原子が間に入っている5〜7員飽和環を形成し;R6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである;
(ii)NR6R7またはCR8R8NR6R7により置換されているフェニルで、R6,R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである;そして
(iii)
【化18】


式中R9はH,C〜Cアルキルまたはインドリル(C〜C)アルキルで、Xは対イオン、或いはR9が電子対でXは不在などの群から選ばれる、請求項73から77のいずれか1つに記載の使用。
【請求項79】
当該残基Aが以下の式で:
【化19】


式中R2はHかメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、二級ブチル、ペンチルとヘキシルからなる群より選ばれる直鎖または分岐C〜Cアルキル、フェニル、ベンジルまたはパラ−ヒドロキシベンジルで;R3はH,電子対またはC〜Cアルキル;R4およびR5はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキル、或いはR4およびR5は、それらが結合している窒素原子と共に場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルが置換している窒素原子が間に入っている5〜7員の飽和環を形成するが、前記の環はR1がオクタデシルでR4とR5がHまたはC〜Cアルキルでなければピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジンおよび4−メチルピペラジンからなる群より選ばれる、請求項78記載の使用。
【請求項80】
式中R2がHまたはフェニルで、R3はHまたは電子対で、R4およびR5は各々HまたはC〜Cアルキル、或いはR1がオクタデシルのときR4とR5がHまたはC〜Cアルキルでなければ、R4およびR5は、それらが結合しているN原子と共に、場合により1位か4位の窒素原子にメチルが置換したモルホリン環またはピペラジン環を形成する、請求項79記載の使用。
【請求項81】
前記化合物が、
N,N−ジメチルアミノ−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル;
酒石酸(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル;
酒石酸(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸オクタデシルエステル;
塩化4−メチル−4−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニルメチル−モルホリン−4−イウム;
α−アミノ−α−フェニル−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル塩酸塩;および
重酒石酸ピペラジン−1−イル−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステルからなる群より選ばれる、請求項80記載の使用。
【請求項82】
R1がC18アルキルおよびAが少なくとも1つの環状アミノ基および/または少なくとも三級か四級窒素原子を含む1つの複素芳香環を含有する残基であるが、−CO−Aがプロリンの残基である化合物を除く、請求項73記載の使用。
【請求項83】
当該残基Aは以下の式を有し:
(i)
【化20】


式中R2はH、C〜Cアルキル、アリールまたはアラルキルで、いずれのアリール部分も非置換でも、またはニトロ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、NR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されていていてもよく;R3はH、電子対またはC〜Cアルキルで;R4およびR5はそれらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または、場合によりC〜Cアルキルが置換している窒素原子が間に入った5〜7員飽和環を形成し;そしてR6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである、請求項82記載の使用。
【請求項84】
R2がHまたはフェニルで、R3はHまたは電子対そしてR4とR5はそれらが結合しているN原子と共に、場合により1位または4位の窒素原子がメチルで置換されているモルホリン環またはピペリジン環を形成する、請求項83記載の使用。
【請求項85】
前記化合物が酒石酸(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸オクタデシルエステルである、請求項84記載の使用。
【請求項86】
AはNR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されているフェニルで、R6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたは1C〜Cアルキルである、請求項78記載の使用。
【請求項87】
AはCR8R8NR6R7で置換されているフェニルで、R8はHそしてR6およびR7はそれぞれメチルである、請求項86記載の使用。
【請求項88】
前記化合物が4−ジメチルアミノメチル安息香酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル塩酸塩または4−ジメチルアミノメチル安息香酸オクタデカ−(E)−9−エニルエステル塩酸塩である、請求項87記載の使用。
【請求項89】
Aは下記の基で:
【化21】


R9がH、C〜Cアルキルまたはインドリル(C〜C)アルキルでXが対イオン、或いはR9が電子対でXが不在である、請求項78記載の使用。
【請求項90】
R9が電子対でXが不在、或いはR9がメチルかインドリルエチルでXが塩素、臭素、ヨウ素およびトシラートからなる群より選択される対イオンである、請求項89記載の使用。
【請求項91】
前記化合物は:
ニコチン酸オクダデカ−(Z)−9−エニルエステル;
よう化1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウム;
塩化1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウム;
1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウムトシラート;および
臭化1−[(2−(1H−インドール−3−イル)−エチル)−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウムからなる群より選ぶ、請求項90記載の使用。
【請求項92】
前記アジュバントは体液性応答を惹起する抗原と共に投与する、請求項73から91のいずれか1つに記載のアジュバントの使用。
【請求項93】
前記アジュバントは細胞性応答を惹起する抗原と共に投与する、請求項73から91のいずれか1つに記載のアジュバントの使用。
【請求項94】
前記抗原は、前記T細胞が介在する疾患、障害または状態の病因に関わりをもつ炎症性T細胞に認識される抗原である、T細胞が介在する疾患、障害または状態の治療のための請求項93記載の使用。
【請求項95】
前記治療製剤は個体のT細胞サイトカイン応答をT1からT2へ移行させる、請求項93記載の使用。
【請求項96】
前記治療製剤はIL−2またはIFN−γT細胞サイトカイン応答を減少させ、IL−4またはIL−10T細胞サイトカイン応答を増加させる、請求項95記載の使用。
【請求項97】
前記T細胞が介在する疾患、障害または状態は自己免疫疾患で、前記抗原はペプチドである、請求項94から96のいずれか1つに記載の使用。
【請求項98】
前記自己免疫疾患が器官特異的自己免疫疾患である、請求項97記載の使用。
【請求項99】
前記器官特異的自己免疫疾患がI型真性糖尿病、多発性硬化症、関節リュウマチまたは自己免疫性甲状腺炎である、請求項98記載の使用。
【請求項100】
前記抗原が、多発性硬化症の病因に関与するT細胞で認識されるミエリン塩基性タンパク質(MBP)の配列から由来するペプチドまたはその類似体である、多発性硬化症の治療のための請求項99記載の使用。
【請求項101】
前記抗原が、多発性硬化症の病因に関与するT細胞で認識されるコポリマーである、多発性硬化症の治療のための請求項99記載の使用。
【請求項102】
前記抗原が酢酸グラチラマーである、請求項101記載の使用。
【請求項103】
前記治療製剤は、自己免疫疾患、アルツハイマー病またはパーキンソン病のような神経変性疾患、メラノーマのような癌または細菌かウイルス感染のような感染病の治療に有用な前記アジュバントおよび抗原を含む、請求項73から91のいずれか1つに記載の使用。
【請求項104】
抗原および一般式Ia、
【化22】


または製剤上で許容されているその塩で、式中R1はC10〜C24アルキルまたはC10〜C24アルケニルで、Aは少なくとも1つの非環式または環式アミノ基および/または少なくとも三級か四級窒素原子を含む1個の複素芳香族の環を含有する残基であるが、R1がC18アルキルおよびAが少なくとも1つの非環状アミノ基または−CO−Aがプロリンの残基である化合物を除いたアジュバントを含む、治療製剤。
【請求項105】
R1がC12〜C20アルキルまたはアルケニルである、請求項104記載の治療製剤。
【請求項106】
R1がC16〜C18アルキルまたはアルケニルである、請求項105記載の治療製剤。
【請求項107】
R1がヘキサデシル、オクタデシル、ヘキサデセニル、オクタデセニル、シス−9−オクタデセニル、トランス−9−オクタデセニル、シス−9,12−オクタデカジエニル、シス−6,9,12−オクタデカトリエニルまたはシス−9,12,15−オクタデカトリエニルである、請求項106記載の治療製剤。
【請求項108】
R1がシス−9−オクタデセニルまたはトランス−9−オクタデセニルである、請求項107記載の治療製剤。
【請求項109】
一般式Iaの前記アジュバントにおいて、当該残基Aは:
(i)
【化23】


式中R2はH、C〜Cアルキル、アリールまたはアラルキルで、いずれのアリール部分も非置換でも、またはニトロ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、NR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されていてもよく;R3はH、電子対またはC〜Cアルキルで;R4およびR5はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキル、或いはR1がオクタデシルのときR4とR5がHまたはC〜Cアルキルではない場合、R4とR5はそれらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルで置換された窒素原子が間に入る5〜7員の飽和環を形成し;R6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである;
(ii)NR6R7またはCR8R8NR6R7により置換されたフェニルで、R6,R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである;そして
(iii)
【化24】


式中R9はH,C〜Cアルキルまたはインドリル(C〜C)アルキルでXは対イオン、或いはR9が電子対でXは不在という群から選ばれる、請求項104から108のいずれか1つに記載の治療製剤。
【請求項110】
当該残基Aが以下の式で:
【化25】


式中R2はHか、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、二級ブチル、ペンチルとヘキシルからなる群より選んだ直鎖または分岐C〜Cアルキル、フェニル、ベンジルまたはパラ−ヒドロキシベンジルで;R3はH,電子対またはC〜Cアルキルで;R4およびR5はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキル、或いはR4およびR5は、それらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルで置換された窒素原子が間に入っている5〜7員の飽和環を形成するが、前記の環はR1がオクタデシルでR4とR5がHまたはC〜Cアルキルでない場合はピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジンおよび4−メチルピペラジンからなる群より選ばれる、請求項109記載の治療製剤。
【請求項111】
R2がHまたはフェニルで、R3はHまたは電子対で、R4とR5はそれぞれHまたはC〜Cアルキル、或いはR1がオクタデシルでR4とR5がHまたはC〜Cアルキルではなければ、R4とR5はそれらが結合しているN原子と共に、場合により1位または4位の窒素原子にメチルが置換しているモルホリン環またはピペリジン環を形成する、請求項110記載の治療製剤。
【請求項112】
前記アジュバントは:
N,N−ジメチルアミノ−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル;
酒石酸(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル;
塩化4−メチル−4−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニルメチル−モルホリン−4−イウム;
α−アミノ−α−フェニル−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル塩酸塩;および
重酒石酸ピペラジン−1−イル−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステルからなる群より選ばれる、請求項111記載の治療製剤。
【請求項113】
R1がC18アルキルおよびAが少なくとも1つの環状アミノ基および/または三級か四級窒素原子を含有する少なくとも1つの複素芳香環を含む残基であるが、−CO−Aがプロリンの残基である化合物を除く、請求項104記載の治療製剤。
【請求項114】
当該残基Aは下式を有し:
(i)
【化26】


式中R2はH、C〜Cアルキル、アリールまたはアラルキルで、いずれの部分も非置換でも、或いはニトロ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、NR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されていてもよく;R3はH、電子対またはC〜Cアルキルで;R4およびR5はそれらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルにより置換された窒素原子が間に入っている5〜7員飽和環を形成し;そしてR6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである、請求項113記載の治療製剤。
【請求項115】
R2がHまたはフェニルで、R3がHまたは電子対およびR4およびR5はそれらが結合しているN原子と共に、場合により4位の窒素原子にメチルが置換したモルホリン環またはピペリジン環を形成する、請求項114記載の治療製剤。
【請求項116】
前記アジュバントが酒石酸(4−メチル−ピペリジン−1−イル)−酢酸オクタデシルエステルである、請求項115記載の治療製剤。
【請求項117】
AがNR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されたフェニルで、R6、R7およびR8はそれぞれ別々でHまたはC〜Cアルキルである、請求項109記載の治療製剤。
【請求項118】
AがCR8R8NR6R7で置換されたフェニルで、R8がHでR6とR7はそれぞれメチルである、請求項117記載の治療製剤。
【請求項119】
前記アジュバントが4−ジメチルアミノメチル安息香酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル塩酸塩または4−ジメチルアミノメチル安息香酸オクタデカ−(E)−9−エニルエステル塩酸塩である、請求項118記載の治療製剤。
【請求項120】
Aが下の基で:
【化27】


式中R9はH、C〜Cアルキルまたはインドリル(C〜C)アルキルで、Xは対イオン、或いはR9が電子対でXが不在である、請求項109記載の治療製剤。
【請求項121】
R9が電子対でXが不在、またはR9がメチルかインドリルエチルでXが塩素、臭素、ヨウ素およびトシラートからなる群より選択される対イオンである、請求項120記載の治療製剤。
【請求項122】
前記アジュバントは:
ニコチン酸オクダデカ−(Z)−9−エニルエステル;
よう化1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウム;
塩化1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウム;
1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウムトシラート;および
臭化1−[(2−(1H−インドール−3−イル)−エチル)−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウムからなる群より選ぶ、請求項121記載の治療製剤。
【請求項123】
前記アジュバントおよび体液性応答を惹起する抗原を含む、請求項104から122のいずれか1つに記載の治療製剤。
【請求項124】
前記アジュバントおよび細胞性応答を惹起する抗原を含む、請求項104から122のいずれか1つに記載の治療製剤。
【請求項125】
前記抗原は、前記T細胞が介在する疾患、障害または状態の病因に関わりをもつ炎症性T細胞により認識される抗原である、T細胞が介在する疾患、障害または状態の治療のための請求項124記載の治療製剤。
【請求項126】
前記治療製剤は個体のT細胞サイトカイン応答をT1からT2へ移行させる、請求項125記載の治療製剤。
【請求項127】
前記治療製剤はIL−2またはIFN−γT細胞サイトカイン応答を減少させ、IL−4またはIL−10T細胞サイトカイン応答を増加させる、請求項126記載の治療製剤。
【請求項128】
前記T細胞が介在する疾患、障害または状態は自己免疫疾患で、前記抗原はペプチドである、請求項125から127のいずれか1つに記載の治療製剤。
【請求項129】
前記自己免疫疾患が器官特異的自己免疫疾患である、請求項128記載の治療製剤。
【請求項130】
前記器官特異的自己免疫疾患がI型真性糖尿病、多発性硬化症、関節リュウマチまたは自己免疫性甲状腺炎である、請求項129記載の治療製剤。
【請求項131】
前記抗原が、多発性硬化症の病因に関与するT細胞で認識されるミエリン塩基性タンパク質(MBP)の配列から由来するペプチドまたはその類似体である、多発性硬化症の治療のための請求項130記載の治療製剤。
【請求項132】
前記抗原が、多発性硬化症の病因に関与するT細胞で認識されるコポリマーである、多発性硬化症の治療のための請求項130記載の治療製剤。
【請求項133】
前記抗原が酢酸グラチラマーである、請求項132記載の治療製剤。
【請求項134】
前記抗原が、自己免疫疾患、アルツハイマー病またはパーキンソン病のような神経変性病、メラノーマのような癌または細菌またはウイルス感染のような感染疾患の治療に有用である、請求項104から122のいずれか1つに記載の治療製剤。
【請求項135】
必要とする個体に、前記T細胞介在疾患、障害または状態の病因に関係する炎症性T細胞により認識される抗原、および一般式Ia:
【化28】


または製剤上で許容されているその塩で、式中R1はC10〜C24アルキルまたはC10〜C24アルケニルで、Aは少なくとも1つの非環状または環状アミノ基および/または少なくとも1つの三級か四級窒素原子を含有する複素芳香環を含有する残基であるが、R1がC18アルキルでAが少なくとも1つの非環状アミノ基または−CO−Aがプロリンの残基を含有する残基である化合物を除いたアジュバントを含む治療製剤の効果量を投与することを含んだ、T細胞介在の疾患、障害または状態の治療の方法。
【請求項136】
必要とする個体に前記T細胞介在疾病、障害または状態の病因に関係する炎症性T細胞により認識される抗原、および一般式Ia:
【化29】


または製剤上で許容されているその塩で、式中R1はC10〜C24アルキルまたはC10〜C24アルケニルで、Aは少なくとも1つの非環状または環状アミノ基および/または三級か四級窒素原子を含有する少なくとも1つの複素芳香環を含有する残基であるが、R1がC18アルキルでAが少なくとも1つの非環状アミノ基または−CO−Aがプロリンの残基を含有する残基である化合物を除いたアジュバントを含む治療製剤の効果量を、必要とする個体に投与することを含んだ、T細胞介在の疾患、障害または状態を患う個体におけるT1からT2へのT細胞サイトカイン応答の変更を生じさせる方法。
【請求項137】
前記治療製剤はIL−2またはIFN−γT細胞サイトカイン応答を減少させ、IL−4またはIL−10T細胞サイトカイン応答を増加させる、請求項136記載の方法。
【請求項138】
R1がC12〜C20アルキルまたはアルケニルである、請求項135または136記載の方法。
【請求項139】
R1がC16〜C18アルキルまたはアルケニルである、請求項138記載の方法。
【請求項140】
R1がヘキサデシル、オクタデシル、ヘキサデセニル、オクタデセニル、シス−9−オクタデセニル、トランス−9−オクタデセニル、シス−9,12−オクタデカジエニル、シス−6,9,12−オクタデカトリエニルまたはシス−9,12、15−オクタデカトリエニルである、請求項139記載の方法。
【請求項141】
R1がシス−9−オクタデセニルまたはトランス−9−オクタデセニルである、請求項140記載の方法。
【請求項142】
一般式Iaの前記化合物において、当該残基Aは:
(i)
【化30】


式中R2はH、C〜Cアルキル、アリールまたはアラルキルで、いずれのアリール部分も非置換でも、またはニトロ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、NR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されていてもよく;R3はH、電子対またはC〜Cアルキルで;R4およびR5はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキル、或いはR1がオクタデシルでR4とR5がHまたはC〜Cアルキルではない場合、R4とR5はそれらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルで置換された窒素原子が間に入る5〜7員の飽和環を形成し;R6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである;
(ii)NR6R7またはCR8R8NR6R7により置換されているフェニルで、R6,R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである;そして
【化31】


式中R9はH,C〜Cアルキルまたはインドリル(C〜C)アルキルで、Xは対イオン、或いはR9が電子対でXは不在という群から選ばれる、請求項135から141のいずれか1つに記載の方法。
【請求項143】
当該残基Aが以下の式で:
【化32】


式中R2はHか、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、二級ブチル、ペンチルとヘキシルからなる群より選んだ直鎖または分岐C〜Cアルキル、フェニル、ベンジルまたはパラ−ヒドロキシベンジルで;R3はH,電子対またはC〜Cアルキルで;R4およびR5はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキル、或いはR4およびR5は、それらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルで置換された窒素原子が間に入っている5〜7員の飽和環を形成するが、前記の環はR1がオクタデシルでR4とR5がHまたはC〜Cアルキルでない場合はピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジンおよび4−メチルピペラジンからなる群より選ばれる、請求項142記載の方法。
【請求項144】
R2がHまたはフェニルで、R3はHまたは電子対で、R4とR5はそれぞれHまたはC〜Cアルキル、或いはR1がオクタデシルのときR4とR5がHまたはC〜Cアルキルではない場合、R4とR5はそれらが結合しているN原子と共に、場合により1位または4位の窒素原子がメチルで置換されたモルホリノ環またはピペリジン環を形成する、請求項143記載の方法。
【請求項145】
前記アジュバントは:
N,N−ジメチルアミノ−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル;
酒石酸(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル;
塩化4−メチル−4−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニルメチル−モルホリン−4−イウム;
α−アミノ−α−フェニル−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル塩酸塩;および
重酒石酸ピペラジン−1−イル−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステルからなる群より選ばれる、請求項144記載の方法。
【請求項146】
R1がC18アルキルおよびAが少なくとも1つの環状アミノ基および/または三級か四級窒素原子を含有する少なくとも1つの複素芳香環を含む残基で、−CO−Aがプロリンの残基である化合物を除く、請求項135または136記載の方法。
【請求項147】
当該残基Aは下式を有し:
(i)
【化33】


式中R2はH、C〜Cアルキル、アリールまたはアラルキルで、いずれの部分も非置換でも、或いはニトロ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、NR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されていてもよく;R3はH、電子対またはC〜Cアルキルで;R4およびR5はそれらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルにより置換された窒素原子が間に入っている5〜7員飽和環を形成し;そしてR6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである、請求項146記載の方法。
【請求項148】
R2がHまたはフェニルで、R3がHまたは電子対、およびR4およびR5はそれらが結合しているN原子と共に、場合により4位の窒素原子にメチルが置換しているモルホリン環またはピペリジン環を形成する、請求項147記載の方法。
【請求項149】
前記アジュバントが酒石酸(4−メチル−ピペリジン−1−イル)−酢酸オクタデシルエステルである、請求項148記載の方法。
【請求項150】
AがNR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されたフェニルで、R6、R7およびR8はそれぞれ別々でHまたは1C〜Cアルキルである、請求項142記載の方法。
【請求項151】
AがCR8R8NR6R7で置換されたフェニルで、R8がHでR6とR7はそれぞれメチルである、請求項150記載の方法。
【請求項152】
前記アジュバントが4−ジメチルアミノメチル安息香酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル塩酸塩または4−ジメチルアミノメチル安息香酸オクタデカ−(E)−9−エニルエステル塩酸塩である、請求項151記載の方法。
【請求項153】
Aが下記の基で:
【化34】


式中R9はH、C〜Cアルキルまたはインドリル(C〜C)アルキルで、Xは対イオン、或いはR9が電子対でXが不在である、請求項142記載の方法。
【請求項154】
R9が電子対でXが不在、或いはR9がメチルかインドリルエチルでXが塩素、臭素、ヨウ素およびトシラートからなる群より選択される対イオンである、請求項153記載の方法。
【請求項155】
前記アジュバントは:
ニコチン酸オクダデカ−(Z)−9−エニルエステル;
よう化1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウム;
塩化1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウム;
1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウムトシラート;および
臭化1−[(2−(1H−インドール−3−イル)−エチル)−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウムからなる群より選ぶ、請求項154記載の方法。
【請求項156】
前記抗原は前記個体に体液性応答を惹起させる、請求項135から155のいずれか1つに記載の方法。
【請求項157】
前記抗原は前記個体に細胞性応答を惹起させる、請求項135から155のいずれか1つに記載の方法。
【請求項158】
前記T細胞が介在する疾患は自己免疫疾患で、前記抗原はペプチドである、請求項135から155のいずれか1つに記載の方法。
【請求項159】
前記自己免疫疾患が器官特異的自己免疫疾患である、請求項158記載の方法。
【請求項160】
前記器官特異的自己免疫疾患がI型真性糖尿病、多発性硬化症、関節リュウマチまたは自己免疫性甲状腺炎である、請求項159記載の方法。
【請求項161】
前記抗原が、多発性硬化症の病因に関与するT細胞で認識されるミエリン塩基性タンパク質(MBP)の配列から由来するペプチドまたはその類似体である、多発性硬化症の治療のための請求項160記載の方法。
【請求項162】
前記抗原が、多発性硬化症の病因に関与するT細胞で認識されるコポリマーである、多発性硬化症の治療のための請求項160記載の方法。
【請求項163】
前記抗原が酢酸グラチラマーである、請求項162記載の方法。
【請求項164】
前記治療製剤は、自己免疫疾患、アルツハイマー病またはパーキンソン病のような神経変性病、メラノーマのような癌または細菌またはウイルス感染のような感染病の治療に有用な前記アジュバントおよび前記抗原を含む、請求項135から136のいずれか1つに記載の方法。
【請求項165】
一般式がR1−O−CO−A、
式中(i)R1はC20〜C24アルキルまたはC10〜C24アルケニルで、Aは下式の残基:
【化35】


式中R2はH、C〜Cアルキル、アリールまたはアラルキルで、いずれのアリール部分も非置換でも、またはニトロ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、NR6R7またはCR8R8NR6R7で置換されていてもよく;R3はH、電子対またはC〜Cアルキルで;R4およびR5はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキル、或いはR4とR5はそれらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルで置換された窒素原子が間に入った5〜7員の飽和環を形成し;そしてR6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである;または
(ii)R1はC18アルキルおよびAは下式の残基で:
【化36】


式中R2がHで;R3は電子対で;R4およびR5はそれらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルで置換されている窒素原子が間に入った5〜7員飽和環を形成する;または
(iii)R1がC〜Cアルキルで、Aが下式の残基で;
【化37】


式中R2は非置換アリールまたは、アリールまたはアラルキルで、いずれのアリール部分もニトロ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、NR6R7またはCR8R8NR6R7で置換され;R3はH、電子対またはC〜Cアルキルで;R4およびR5はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキル、或いはR4とR5はそれらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルで置換された窒素原子が間に入っている5〜7員の飽和環を形成し;そしてR6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである;または
(iv)R1がC10アルキルおよびAが下式の残基で:
【化38】


式中R2はC〜Cアルキルで;R3はH、電子対またはC〜Cアルキルで;R4およびR5はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキル、或いはR4とR5はそれらが結合している窒素原子と共に、場合により酸素原子または場合によりC〜Cアルキルで置換された窒素原子が間に入った5〜7員の飽和環を形成し;そしてR6、R7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルである;または
(v)R1がC10〜C24アルキルまたはC10〜C24アルケニルで、AはNR6R7またはCR8R8NR6R7で置換され、R6、C7およびR8はそれぞれ別々にHまたはC〜Cアルキルであるが、R1がC10〜C24アルキルでAが−CH−NHで置換されたフェニルである化合物は除かれる;或いは
(vi)R1がC10〜C24アルキルまたはC10〜C24アルケニルで、Aは下式の基で:
【化39】


式中R9がC〜Cアルキルまたはインドリル(C〜C)アルキルでXが対イオンである化合物、および製剤上許容されているそれらの塩。
【請求項166】
R1がC12〜C18アルケニルである、請求項165(i)、(v)または(vi)記載の化合物。
【請求項167】
R1がC16〜C18アルケニルである、請求項166記載の化合物。
【請求項168】
R1がシス−9−オクタデセニルまたはトランス−9−オクタデセニルである、請求項167記載の化合物。
【請求項169】
R2がHまたはフェニルで、R3はHまたは電子対で、R4とR5はそれぞれメチル、またはR4とR5はメチルまたはそれらが結合しているN原子と共に、場合により4位の窒素原子がメチルで置換されたモルホリノ環またはピペリジン環を形成する、請求項168記載の化合物。
【請求項170】
N,N−ジメチルアミノ−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル;
酒石酸(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル;
塩化4−メチル−4−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニルメチル−モルホリン−4−イウム;
重酒石酸ピペラジン−1−イル−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステルからなる群より選ばれる、請求項169記載の化合物。
【請求項171】
R1がオクタデシル、およびR4とR5はそれらが結合しているN原子と共に、場合により4位の窒素原子がメチルで置換されているモルホリノまたはピペラジン環を形成する、請求項165(ii)記載の化合物。
【請求項172】
酒石酸(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−酢酸オクタデシルエステルである、請求項171記載の化合物。
【請求項173】
R1がC12〜C20アルキルまたはC12〜C20アルケニルで、AがCR8R8NR6R7で置換されたフェニルで、R8はHおよびR6とR7はそれぞれHまたはC〜Cアルキルである、請求項165(vi)記載の化合物。
【請求項174】
R1がC16〜C18アルケニルである、請求項173記載の化合物。
【請求項175】
R1がシス−9−オクタデセニルまたはトランス−9−オクタデセニルである、請求項174記載の化合物。
【請求項176】
4−ジメチルアミノメチル−安息香酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル塩酸塩または4−ジメチルアミノメチル−安息香酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル塩酸塩である、請求項175記載の化合物。
【請求項177】
R1がC12〜C20アルキルまたはC12〜C20アルケニルである、請求項165(vi)記載の化合物。
【請求項178】
R1がC16〜C18アルキルまたはアルケニルである、請求項177記載の化合物。
【請求項179】
R1がシス−9−オクタデセニルまたはトランス−9−オクタデセニルである、請求項178記載の化合物。
【請求項180】
よう化1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウム;
塩化1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウム;
1−メチル−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウムトシラート;および
臭化1−[(2−(1H−インドール−3−イル)−エチル)−3−オクタデカ−(Z)−9−エニルオキシカルボニル−ピリジニウムからなる群より選ぶ、請求項179記載の化合物。
【請求項181】
R1がシス−9−オクタデセニルで、R2がフェニル、R3が電子対およびR4とR5がそれぞれHである、請求項165(i)記載の化合物。
【請求項182】
α−アミノ−α−フェニル−酢酸オクタデカ−(Z)−9−エニルエステル塩酸塩である、請求項181記載の化合物。
【請求項183】
請求項165から182のいずれか1つに記載された化合物または製剤上で許容されているその塩および製剤上で許容されている担体を含む医薬組成物。
【請求項184】
炎症の治療用の請求項183記載の医薬組成物。
【請求項185】
抗原および請求項165から182のいずれか1つに記載のアジュバントを含む、医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−502213(P2006−502213A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542766(P2004−542766)
【出願日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【国際出願番号】PCT/IL2003/000820
【国際公開番号】WO2004/032824
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(500370311)イエダ リサーチ アンド デベロップメント カンパニー リミテッド (30)
【Fターム(参考)】