腫瘍の処置のための白金錯体
本発明は、抗腫瘍細胞/抗寄生虫活性を示す白金錯体に関する。本発明はまた、腫瘍障害および炎症障害を治療するために本発明の白金錯体を用いることにも関する。本発明の白金錯体はまた、インビボまたはインビトロでウイルス、細菌、または寄生生物による感染症を治療または予防するためにも用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、それぞれの開示の全内容物が参照により本明細書に組み入れられる、2003年8月13日に提出された米国特許仮出願第60/481,226号、2003年10月30日に提出された米国特許仮出願第60/515,580号、2003年11月25日に提出された米国特許仮出願第60/525,295号、2003年11月14日に提出された米国特許仮出願第60/519,943号の恩典を主張する。
【0002】
発明の背景
増殖因子およびサイトカインに対する細胞の反応は、細胞質転写因子のシグナル伝達転写活性化(STAT)ファミリーの活性化を特徴とする(Darnell, 1997;Darnellら、1994;Schindlerら、1995;Starkら、1998;Smithgallら、2000;Akira、2000;Hiranoら、2000;Brombergら、1996;Fukudaら、1996;Kotenkoら、2000)。STATは、増殖因子受容体、受容体関連ヤーヌスキナーゼ(Jaks)、またはSrcキナーゼファミリーのチロシンのタンパク質チロシンキナーゼリン酸化を伴う非常に初期段階において活性化される。次に、二量体形成においてこれは二つのSTAT単量体のあいだのホスホチロシン(pTyr)-SH2相互作用、核への移動、特異的DNA反応エレメントへの結合を誘導し、細胞増殖、分化、発達、および生存にとって必須の遺伝子の発現を調節する。
【0003】
正常なSTAT活性化は、厳密に制御されて短期間であり、外部刺激に対する反応を開始するという正常な細胞の必要条件と一致している。しかし、特異的STATタンパク質、特にStat3およびStat5の持続的な活性化は、いくつかの腫瘍において高頻度で起こり、乳癌、前立腺癌、および頭頚部扁平上皮癌細胞、リンパ腫、ならびに白血病細胞を含む、形質転換細胞および腫瘍細胞の増殖および生存を促進することによって、悪性の形質転換において原因的役割を有する(Brombergら、1999;Turksonら、1998;Brombergら、1998;Catlett-Falconeら、1999a;Garciaら、2001;Grandisら、2000;Grandisら、1998;Nielsenら、1997;Nielsenら、1999;Epling-Burnetteら、2001;Bowmanら、2000aにおける論評;Turksonら、2000;Songら、2000;Cofferら、2000;Linら、2000;Catlett-Falconeら、1999b;Garciaら、1998)。臨床的に重要であるのは、それらを含む悪性細胞および腫瘍全体における異常なStat3シグナル伝達を遮断すると、アポトーシスおよび腫瘍の退縮を誘導する点である。
【0004】
シスプラチンのプロトタイプである白金錯体(Cis-Pt)は、精巣癌、卵巣癌、膀胱癌、頭頚部癌、および肺の非小細胞癌を含む様々なヒト腫瘍において、活性な抗癌剤として広く用いられている(Ardizzoniら、1999;Nitiss、2002)。シスプラチンおよび他の白金含有化合物による治療の転帰は、DNAに及ぼすそのアルキル化作用に強く関連している。しかし、細胞のシグナル伝達に及ぼす白金錯体に基づく治療の影響の可能性、およびそのような相互作用の治療的重要性はまだ、研究されていない。シスプラチンが、薬剤誘発性のアポトーシスに影響を及ぼす可能性があるマイトゲン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路(Personsら、1999;Sanchez-Perezら、1998)のメンバーの活性化を誘導することを示す報告がある。
【発明の開示】
【0005】
発明の簡単な概要
本発明は、白金錯体およびその利用に関する。本発明の白金錯体は、腫瘍、ウイルス、細菌、および寄生虫疾患状態を治療するために用いることができる。
【0006】
発明の詳細な説明
本発明は、白金錯体およびその利用に関する。本発明の白金錯体は、アポトーシスを誘導および/または腫瘍細胞の増殖を阻害することができ、同様に癌を治療するために用いることができる。本発明の白金錯体はまた、抗ウイルス、抗菌、および抗寄生虫薬として用いることができる。白金(IV)化合物の細胞障害性は、細胞において白金(IV)化合物が白金(II)に還元された結果であると示唆されている。意外にも、本発明の白金(IV)錯体は、細胞障害性を有するために細胞においてこのタイプの還元を必要としない可能性がある。したがって、本発明の白金錯体は、既存の白金(II)化合物より有効である白金(IV)化合物としてのその正確な酸化的コンフォメーションを維持することによって、当技術分野における白金化合物とは異なる。さらに、本発明の白金錯体は、ラジカルとして細胞において酸化窒素を形成して、それによってオキシドラジカルの形成を通して細胞を殺すことができる。
【0007】
本発明の白金錯体には、以下の式Iに示される構造を有する白金錯体、またはその薬学的に許容される塩が含まれる:
式中、XおよびYは独立して任意のハロゲン、-NO2、-ONOもしくは以下の構造であるか、
またはXおよびYは共に以下の構造を形成する
R1は-NO2または-ONOである;
R2は任意のハロゲン、-OH、-ONO、-ONO2、-COR10、-OPO3R10R11、-OSO3H、-OSeOOH、-SeOOH、-AsO2、-OAsO2、-NR10R11、-NHR10R11、-OOCR15、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、-N-アルキル、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニル、またはその如何なるものも任意のハロゲン、-NH2、-COOH、-OH、アルコキシ、シクロアルコキシによって置換されうる以下の構造によって置換されうる
R3は、独立して-NH3または-NHR7である;
R7は、任意に-NO2またはCOOHによって置換されるH、C1-6アルキル、アルコキシ、またはアリールである;
R10およびR11は、独立して、H、-NH2、-OH、-NHR7、CONHR7、CON(R7)2、C1-6アルキル、アリール、またはヘテロアリールであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
R15はアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、-N-アルキル、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる。
【0008】
一つの態様において、XおよびYは独立して、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I)となりうる。例としての態様において、XはClであって、YはClである。
【0009】
一つの態様において、R1は-NO2、R2はCl、およびR3は-NH3である。
【0010】
本発明の白金錯体はまた、以下の式IIに示される構造、またはその薬学的に許容される塩も有しうる:
式中、XおよびYは独立して、任意のハロゲン、もしくは以下の構造を有するか
または、XおよびYは共に以下の構造を形成する
R4は-NO2または-ONOである;
R5は任意のハロゲン、-OH、-ONO、-ONO2、-COR10、-OPO3R10R11、-OSO3H、-OSeOOH、-SeOOH、-AsO2、-OAsO2、-NR10R11、-NHR10R11、-OOCR15、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、-N-アルキル、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニル、またはその如何なるものも、任意のハロゲン、-NH2、-COOH、-OHによって置換されうる以下の構造によって置換されうる
またはYおよびR5は以下の構造を形成する
またはX、Y、およびR5は共に以下の構造を形成する
R6は独立してNH2またはNHである;
R7は、任意に-NO2または-COOHによって置換されるH、C1-6アルキル、アルコキシ、アリールである;
R8およびR9は独立して、H、C1-6アルキル、または-OHであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
R10およびR11は、独立して、-H、-NH2、-OH、-NHR7、CONHR7、CON(R7)2、C1-6アルキル、アリール、またはヘテロアリールであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
R12およびR13は独立して、HもしくはC1-6アルキルであるか、またはR12およびR13は共に、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、もしくはヘテロアリールを形成し、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
R15はアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、-N-アルキル、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
nは0から6までの任意の整数である。
【0011】
一つの態様において、XおよびYは独立してフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I)となりうる。例としての態様において、XはClであってYはClである。
【0012】
一つの態様において、R4は-NO2、R5はCl、R6は-NH2、およびnは0である。
【0013】
本発明の白金錯体はまた、以下の式IIIもしくは式IVに示される構造、またはその薬学的に許容される塩を有しうる:
式中、XおよびYは独立して、任意のハロゲン、-NO2、-ONOであるか、またはXおよびYは共に以下の構造を形成する
R6は独立して、NO2、N、NH、またはNH2である;
R8およびR9は独立して、H、C1-6アルキル、または-OHであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
R12およびR13は、独立してHもしくはC1-6アルキルであるか、またはR12およびR13は共にアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロアリールを形成し、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
nは0〜6までの任意の整数である。
【0014】
一つの態様において、XおよびYは独立して、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I)となりうる。例としての態様において、XはClであってYはClである。
【0015】
式Iまたは式IIによって定義されないが、本明細書において示される表5において特に例示される白金錯体も同様に、本発明の範囲に含まれると企図される。本発明の白金錯体の例としての態様を表5に示す。白金錯体の化学構造を、その名称(例えばCPA-XX)と共に表に示す。錯体の別名(例えば、HKXXX)を括弧内に示す。
【0016】
本発明の白金錯体にはまた、式Vまたは式VIに示される構造を有する錯体、またはその薬学的に許容される塩が含まれる:
式中、XおよびYは独立して任意のハロゲン、-OH、H2O、または-SO(CH3)2である;ならびに
Aは以下の任意のものとなりうる
式中R1は独立してNH2またはNHである;
R2およびR3は独立して、H、-OH、C1-6アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルであって、その如何なるものも任意で、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルによって置換されうる;
R4およびR5は独立して、H、もしくはC1-6アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルであるか、またはR4およびR5は共に、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルを形成し、その如何なるものも任意で、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルによって置換されうる;
nは0〜6までの任意の整数である。
【0017】
一つの態様において、XおよびYは独立して、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I)となりうる。例としての態様において、XはClであってYはClである。
【0018】
本明細書において用いられるように、アルキルは、炭素原子1〜20個を有する直鎖または分岐鎖の、飽和または単もしくは多不飽和炭化水素基を意味し、C1-xアルキルは、炭素原子1〜X個までを含む直鎖または分岐鎖アルキル基を意味する。例えば、C1-6アルキルは、炭素原子1〜6個までを含む直鎖または分岐鎖アルキル基を意味する。アルコキシは、アルキル基が既に記述されている通りであるアルキル-O-基を意味する。シクロアルキルには、融合環およびスピロ環を含む、炭素原子約3〜約10個の単芳香環単環または多環系が含まれる。環状アルキルは任意で、部分的に不飽和であってもよい。シクロアルコキシは、シクロアルキルが本明細書において定義されたとおりであるシクロアルキル-O-基を意味する。アリールは炭素原子約6〜約14個を含む、融合環およびスピロ環を含む、芳香族単環または多環式炭素環系を意味する。アリールオキシは、アリール基が本明細書に記述されるとおりであるアリール-O-基を意味する。アルキルカルボニルは、Rが既に記述されたとおりのアルキル基であるRC(O)-基を意味する。アルコキシカルボニルは、Rが既に記述された通りのアルキル基であるROC(O)-基を意味する。シクロアルキルカルボニルは、Rが既に記述された通りのシクロアルキル基であるRC(O)-基を意味する。シクロアルコキシカルボニルは、Rが既に記述された通りのシクロアルキル基であるROC(O)-基を意味する。
【0019】
ヘテロアルキルは、炭素原子1〜20個と、窒素および硫黄原子が任意で酸化されてもよい、すなわちN-オキシド型またはS-オキシド型であってもよい、窒素、酸素、または硫黄から選択される一つまたはそれ以上のヘテロ原子とを有する直鎖または分岐鎖を意味する。ヘテロシクロアルキルは、元素約5個〜約10個の融合環およびスピロ環を含む、単環または多環系(飽和または部分的不飽和であってもよい)であって、環系における一つまたはそれ以上の元素が炭素以外の元素であって、窒素、酸素、ケイ素、または硫黄原子から選択される環系を意味する。ヘテロアリールは、環系における一つまたはそれ以上の元素が炭素以外の元素であって、窒素、酸素、ケイ素、または硫黄原子から選択され、N原子がN-オキシドの形であってもよい、融合環およびスピロ環を含む、5〜約14員環の芳香族単環または多環式炭化水素環系を意味する。アリールカルボニルは、アリール基が本明細書に記述されるとおりであるアリール-CO-基を意味する。ヘテロアリールカルボニルは、ヘテロアリール基が本明細書に記載される通りであるヘテロアリール-CO-基を意味し、ヘテロシクロアルキルカルボニルは、ヘテロシクロアルキル基が本明細書に記述されるとおりであるヘテロシクロアルキル-CO基を意味する。アリールオキシカルボニルは、Rが既に記述されたとおりのアリール基であるROC(O)-基を意味する。ヘテロアリールオキシカルボニルは、Rが既に記述されたとおりのヘテロアリール基であるROC(O)-基を意味する。ヘテロシクロアルコキシは、ヘテロシクロアルキル基が既に記述されたとおりであるヘテロシクロアルキル-O-基を意味する。ヘテロシクロアルコキシカルボニルは、Rが既に記述されたとおりのヘテロシクロアルキル基であるROC(O)-基を意味する。
【0020】
飽和アルキル基の例には、メチル、エチル、N-プロピル、イソプロピル、N-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、N-ペンチル、N-ヘキシル、N-ヘプチル、およびN-オクチルが含まれるがこれらに限定されない。不飽和アルキル基は一つまたはそれ以上の二重または三重結合を有する基である。不飽和アルキル基には、例えばエテニル、プロペニル、ブテニル、ヘキセニル、ビニル、2-プロピニル、2-イソペンテニル、2-ブタジエニル、エチニル、1-プロピニル、3-プロピニル、および3-ブチニルが含まれる。シクロアルキル基には、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、およびシクロヘプチルが含まれる。ヘテロシクロアルキル基には、例えば、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、3-モルフォリニル、4-モルフォリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニル、および1,4-ジアザビシクロオクタンが含まれる。アリール基には、例えばフェニル、インデニル、ビフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、アントラセニル、およびフェナントラセニルが含まれる。ヘテロアリール基には、例えば1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、フリル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾキノリニル、カルバゾリルおよびジアザフェナントレニルが含まれる。
【0021】
本明細書において用いられるように、ハロゲンはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、およびヨウ素(I)元素を意味する。
【0022】
薬学的に許容される塩という用語は、本明細書に記述の本発明の錯体に存在する特定の置換基に応じて、酸または塩基によって調製された本発明の白金錯体の塩を意味する。薬学的に許容される塩基付加塩の例には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、またはマグネシウム塩が含まれる。薬学的に許容される塩付加塩の例には、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、および酢酸、プロピオン酸、安息香酸、コハク酸、フマル酸、マンデル酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸等のような有機酸が含まれる。本発明の白金錯体の薬学的に許容される塩は、通常の技術を用いて調製することができる。
【0023】
本発明の特定の白金錯体は、立体異性体を生じうる一つまたはそれ以上の非対称に置換された炭素原子を含んでもよいことは当業者に認識されるであろう。エナンチオマーおよびジアステレオマー、およびそのラセミ混合物を含む混合物を含むそのような全ての立体異性体が本発明の範囲に企図される。
【0024】
本発明の白金錯体は、STAT活性の強力かつ選択的な破壊剤である。本明細書においてCPA-7、CPA-10、CPA-39(HK104)、CPA-43(HK106)、CPA-46(HK111)、CPA-51(HK110)、CPA-55(HK109)、CPA-30(HK112)、およびCPA-41と呼ばれる錯体は、Stat3活性を強く破壊して、そのコンセンサス結合配列に対するその結合能を妨害する。本発明の白金錯体は、持続的に活性なSTATを有する形質転換および腫瘍細胞において細胞増殖阻害およびアポトーシスを誘導することができる。異常なまたは構成的STATシグナル伝達を有する悪性細胞は本発明の白金錯体に対して非常に感受性が高い。正常細胞に対する本発明の白金錯体の全般的毒性は、最小であるかまたはない。さらに、持続的に活性なSTATシグナル伝達を有する悪性細胞において、本発明の白金化合物によって強いアポトーシスが誘導され、このことはこれらの細胞における異常なSTAT活性の抑制と相関する。
【0025】
本発明の白金錯体はまた、インビボで黒色腫および結腸腫瘍において抗腫瘍活性を示す。本発明の白金錯体によって処置した腫瘍における構成的に活性なSTATの消失は、インビトロおよび細胞全体の双方におけるSTAT活性に対するその影響と一致し、これらは共に、これらの化合物のSTATに基づく抗腫瘍効果を確立する。
【0026】
本発明の方法は、細胞内に取り込まれるかまたはそうでなければ細胞内で提供される本発明の白金錯体を、STATを発現する細胞に接触させることによって、STATの機能を阻害する段階を含む。本発明の白金錯体は、Stat3のDNA結合ドメインと物理的に相互作用して、それによってDNAに対するその結合能を破壊する。Src形質転換マウス線維芽細胞と共に、構成的Stat3活性を含む乳癌、前立腺癌のヒト腫瘍細胞、およびマウス黒色腫細胞において、CPA-1およびCPA-7はいずれも、Stat3シグナル伝達機能を消失させて、それによって細胞の増殖阻害およびアポトーシスを誘導する。
【0027】
本発明の方法はまた、Stat1またはStat3のようなSTATを異常または構成的に発現する細胞の機能および/または増殖、ならびに複製を阻害する段階を含む。一つの態様において、方法は本発明の白金錯体を細胞に接触させる段階を含む。一つの態様において、細胞は腫瘍細胞、癌細胞、または形質転換細胞である。細胞は、ヒト、サル、チンパンジー、類人猿、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、およびウマを含む哺乳類の細胞となりうる。
【0028】
本発明の白金錯体は、細胞との直接接触を通して、または担体手段によって細胞に送達することができる。組成物を細胞に送達する担体手段は当技術分野で公知であり、例えばリポソーム部分に組成物を封入することが含まれる。本発明の白金錯体を細胞に送達するもう一つの手段は、標的細胞への送達のためにターゲティングされるタンパク質または核酸に、白金錯体を結合させる段階を含む。公表された米国特許出願第20030032594号および第20020120100号は、もう一つの組成物に結合させることができ、組成物を生体膜を超えて転移させるアミノ酸配列を開示している。公表された米国特許出願第20020035243号はまた、細胞内送達のために細胞膜を超えて生物学的部分を輸送するための組成物を記述する。
【0029】
本発明はまた、患者における腫瘍または炎症障害を治療するための方法にも関する。一つの態様において、本発明の白金錯体の有効量が、腫瘍または炎症障害を有し、その治療を必要とする患者に投与される。本発明の方法には任意で、腫瘍または炎症障害の治療を必要とする、または必要とする可能性がある患者を同定する段階が含まれうる。患者は、腫瘍障害を有するヒトまたは霊長類(サル、チンパンジー、類人猿等)、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、もしくはウマのような他の哺乳動物、または他の動物となりうる。患者に投与するための白金錯体を投与および調製するための方法は、当技術分野で公知であり、その例を本明細書において記述する。腫瘍障害には、骨、乳腺、腎臓、口腔、咽頭、食道、胃、精巣、子宮頚部、頭部、頚部、結腸、卵巣、肺、膀胱、皮膚、肝臓、筋肉、膵臓、前立腺、血球(リンパ球を含む)、および脳の癌および/または腫瘍が含まれる。炎症障害には、関節炎、多発性硬化症、狼瘡、クローン病、ならびに関連する神経および炎症性結合組織疾患(例えば、シェーグレン症候群)が含まれる。
【0030】
腫瘍障害を治療するため、本発明の白金錯体を、他の抗腫瘍もしくは抗癌物質、放射線治療、または腫瘍を切除するための外科治療と併用して、治療を必要とする患者に投与することができる。これらの他の物質または放射線治療は、本発明の白金錯体と同時に、または異なる時期に投与してもよい。例えば、本発明の白金錯体は、タキソールまたはビンブラスチンのような分裂阻害剤、シクロホスアミド(cyclophosamide)またはイフォスファミドのようなアルキル化剤、5-フルオロウラシルもしくはヒドロキシウレアのような抗代謝剤、アドリアマイシンもしくはブレオマイシンのようなDNAインターカレート剤、エトポシドもしくはカンプトテシンのようなトポイソメラーゼ阻害剤、アンジオスタチンのような抗血管新生剤、タモキシフェンのような抗エストロゲン剤、および/または例えばそれぞれ、GLEEVEC(Novartis Pharmaceuticals Corporation)およびHERCEPTIN(Genentech, Inc.)のような他の抗癌剤または抗体と併用して用いることができる。
【0031】
多くの腫瘍および癌が、腫瘍または癌細胞に存在するウイルスゲノムを有する。例えば、エプスタイン-バーウイルス(EBV)は、哺乳動物の多数の悪性疾患に関連している。本発明の白金錯体は、細胞の形質転換を引き起こしうるウイルスに感染した患者を治療するために、および/または細胞におけるウイルスゲノムの存在に関連した腫瘍または癌を有する患者を治療するために、単独で、または抗癌剤もしくはガンシクロビル、アジドチミジン(AZT)、ラミブジン(3TC)等のような抗ウイルス剤と併用して用いることができる。本発明の白金錯体はまた、腫瘍形成疾患のウイルスに基づく治療と併用して用いることができる。例えば、本発明の白金錯体は、肺の非小細胞癌の治療において変異体単純ヘルペスウイルスと共に用いることができる(Toyoizumiら、1999)。
【0032】
本発明はまた、本発明の白金錯体を用いて患者の細菌およびウイルス感染症を治療するための方法にも関する。一つの態様において、本発明の白金錯体の有効量を、細菌またはウイルス感染症を有する患者に投与する。本発明の方法には任意で、細菌またはウイルス感染症の治療を必要とするまたは必要とする可能性がある患者を同定する段階が含まれうる。患者は、細菌もしくはウイルスに感染したヒトまたは霊長類(サル、チンパンジー、類人猿等)、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、もしくはウマのような他の哺乳動物、または他の動物となりうる。本発明に従って治療することができる細菌感染症には、ブドウ球菌(Staphylococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)、サルモネラ(Salmonella)、バチルス(Bacillus)、クロストリジウム(Clostridium)、シュードモナス(Pseudomonas)、ナイセリア(Neisseria)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、およびエルシニア(Yersinia)の感染症が含まれる。本発明に従って治療することができるウイルス感染症には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、乳頭腫ウイルス(例えば、ヒト乳頭腫ウイルス)、ポリオーマウイルス(例えば、SV40、BKウイルス、DARウイルス)、オルソポックスウイルス(例えば、大痘瘡ウイルス(小痘ウイルス))、EBV、単純ヘルペスウイルス(HSV)、肝炎ウイルス、ラブドウイルス(例えば、エボラウイルス)、およびサイトメガロウイルス(CMV)に関連した感染症が含まれるがこれらに限定されない。本発明の白金組成物はまた、光力学治療(Cunyら、1999)の存在下でウイルス疾患を治療するために用いることができる。光力学治療において用いることができる本発明の白金錯体には、CPA-30、CPA-32、CPA-38、CPA-39、CPA-41、CPA-42、CPA-43、CPA-45、CPA-46、CPA-51、CPA-53、CPA-54、CPA-55、およびJP5が含まれるがこれらに限定されない。これらの化合物は光によって活性化されて、その抗ウイルス、抗菌、抗腫瘍、抗寄生虫、または細胞作用を活性化すると企図される。
【0033】
本発明の白金錯体はまた、寄生生物に感染した患者を治療するために用いることができる。一つの態様において、本発明の白金錯体の治療的有効量を患者に投与する。本発明の方法には任意で、寄生虫感染症の治療を必要とするまたは必要とする可能性がある患者を同定する段階が含まれうる。患者は、寄生生物に感染したヒトまたは霊長類(サル、チンパンジー、類人猿等)、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、もしくはウマのような他の哺乳動物、または他の動物となりうる。本発明に従って治療することができる疾患状態には、リーシュマニア、トキソプラズマ症、住血吸虫症、トリパノソーマ症、ニューモシスティス、マラリア、および旋毛虫症が含まれるがこれらに限定されない。本発明に従って治療可能な疾患状態を引き起こしうる寄生虫には、リーシュマニア(Leishmania)、トキソプラズマ(Toxoplasma)、住血吸虫(Schistosoma)、プラスモジウム(Plasmodium)、およびトリパノソーマ(Trypanosoma)が含まれるがこれらに限定されない。本発明はまた、体内寄生アメーバ(Entamoeba)、ジアルジア(Giardia)、トリコモナス(Trichomonas)、ならびに回虫(Ascaris)、鞭虫(Trichuris)、蟯虫(Enterobius)、鉤虫(Necator)、十二指腸虫(Ancylostoma)、糞線虫(Strongyloides)、および旋毛虫(Trichinella)のような線虫、のような寄生生物によって引き起こされる消化管障害を治療するためにも用いることができる。もう一つの態様において、本発明の白金錯体は、非感染患者が、寄生虫疾患が流行しているまたは患者にリスクを与える地域に、旅行するまたは在住するであろう場合に、患者に予防的に投与することができる。したがって、患者は、寄生虫感染症が流行しているまたはリスクを与える地域での患者の曝露または在住の前に、および/または寄生生物感染症の前に、本発明の組成物によって治療することができる。
【0034】
本発明の白金錯体はまた、細菌または寄生生物上でウイルスに汚染された、または汚染が疑われる生体産物をインビトロで治療するためにも用いることができる。本発明の白金錯体によって処置することができる生体産物には、全血、分画血、血漿、血清、臓器全体または臓器の一部、および血球、筋細胞、皮膚細胞、および神経細胞を含む細胞、ならびに細胞に由来する産物が含まれるがこれらに限定されない。本発明の白金錯体によって治療することができる細胞に由来する産物には、インターフェロン、インターロイキン、第VIII因子、第IX因子、第X因子等のような血液凝固因子、インスリン、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、増殖因子、サイトカイン、ならびに他の産物が含まれるがこれらに限定されない。生体産物の処置は、本発明の白金錯体の有効量に、有効な時間、産物を接触させる段階を含む。必要であれば、生体産物をその後、リン酸緩衝生理食塩液のような適当な滅菌水溶液によって洗浄して、産物を治療するために用いた白金錯体を除去することができる。
【0035】
本発明の白金錯体およびそれらを含む組成物の治療的応用は、当業者に現在公知であるか、公知となる見通しである任意の適した治療法および技術によって行うことができる。本発明の白金錯体は、例えば経口、鼻腔内、直腸内、および非経口投与経路を含む、当技術分野における如何なる適した経路によっても投与することができる。本明細書において用いられるように、非経口という用語には、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、腹腔内、および注射によるような胸骨内投与が含まれる。本発明の白金錯体の投与は、当業者によって容易に決定されうるように、連続的または不連続な間隔となりうる。
【0036】
本発明の白金錯体は薬学的に有用な組成物を調製する公知の方法に従って調製することができる。製剤は、当業者に周知であって容易に入手できる多数の起源において詳細に記述されている。例えば、E.W. Martinによって記述される「Remington's Pharmaceutical Science」は、本発明に関連して用いることができる製剤について記述している。一般的に、本発明の組成物は、生物活性白金錯体の有効量が組成物の有効な投与を促進するために適した担体と組み合わせられるように調製されるであろう。本発明の方法において用いられる組成物はまた、多様な製剤となりうる。これらには、例えば錠剤、丸剤、粉剤、液体溶液または懸濁液、坐剤、注射剤および注入溶液、ならびに噴霧剤のような、固体、半固体、および液体投与剤形が含まれる。好ましい剤形は、意図される投与様式および治療応用に依存する。組成物にはまた、当業者に公知である通常の薬学的に許容される担体および希釈剤が含まれる。本発明の白金錯体と共に用いられる担体または希釈剤の例には、エタノール、ジメチルスルホキシド、グリセロール、アルミナ、デンプン、ならびに同等の担体および希釈剤が含まれる。本発明の望ましい治療的治療のためのそのような用量の投与を提供するために、本発明の薬学的組成物は、担体または希釈剤を含む総組成物の重量に基づいて、本発明の白金錯体の一つまたはそれ以上を全体の重量で、約0.1〜99%、特に1〜15%を含むことが都合がよいであろう。
【0037】
本発明の白金錯体はまた、リポソーム技術、徐放性カプセル、埋め込み型ポンプ、および生体分解性容器を利用して投与することができる。これらの送達法は、均一な用量を一定期間にわたって都合よく提供することができる。本発明の白金錯体はまた、当業者に公知のその塩誘導体型または結晶型で投与することができる。
【0038】
本発明はまた、薬学的に許容される用量で調製された本発明の少なくとも一つの白金化合物を一つまたはそれ以上の容器に含む包装された投与製剤にも関する。
【0039】
本明細書において言及したまたは引用した全ての特許、特許出願、仮出願、および刊行物は、全ての図面および表を含むその全内容物が、本明細書の明白な教示と矛盾しない程度に参照として本明細書に組み入れられる。
【0040】
材料および方法
ニトロ白金(IV)錯体の合成
二塩化シス-ジアミンネオプラチナ(II)(シスプラチン)は、Sigma-Aldrich(#P4394)から純度99.9%で購入することができる。シスプラチン0.300 g(0.00100モル、FW=300.1)を用いて、超脱イオン水150 mlおよびジクロロエタン50 mlを250 mlアーレンマイヤーフラスコに加える。しかし、ヘキサンおよび任意の有機溶媒を、本明細書において用いたジクロロエタンの代わりに用いることができる。六番目のリガンドの選択には、酸化Ptに対する結合のためにルイス塩基を提供する窒素、硫黄、または酸素原子が化学構造において利用できることが含まれる。金属、ハロゲン化物(HClのような)との、またはキレート化もしくはpi分子軌道との相互作用による他の結合が可能である。シスプラチン1モルあたり選択したリガンド1モルを量り取って、混合物に加えなければならない。ジクロロエタンのような有機溶媒は、疎水性特性の有機リガンドの溶解性を提供する。磁気攪拌子を混合物に入れて、フラスコを化学実験用換気フードの中で磁気攪拌プレート上に置く。四酸化窒素のレクチャーボトルを、レギュレータおよびテフロンホースに固定して、ホースの出口にガラスピペットを取り付ける。ピペットの先端を低いほうの溶媒(例えば、ジクロロエタン)に挿入して、レクチャーボトルを温水浴においてわずかに加温する。二酸化窒素ガスを、攪拌混合物に1秒間に気泡約1個の割合で放出する。ガスは黄色のシスプラチンが全て消費されるまで添加しなければならない;黄色の固体が消失して黄色い溶液となれば、利用可能なシスプラチンが消費されたことを示すであろう。ニトロシル中間体の形成を示すために、青色を観察する;この色の色調および持続の変化を観察する。次に、ガスの添加を終了して(レクチャーボトルへの真空吸引を防止するためにピペットを外す)、光の曝露を防止するためにフラスコをアルミニウムホイルで覆う。フラスコは、蓋を外して一晩攪拌しなければならない。
【0041】
翌日、さらなる二酸化窒素を、反応の完全性をチェックするために加えてもよい。青色は白金(II)の不完全な酸化を示すであろう。通常、この青色は10分以内に褪色する。無色のリガンドに関して、溶液は一晩で黄色になった。青色が残っている場合には、攪拌を継続する。混合物は、完全な酸化のために空気を必要とすることから、しっかりと蓋をしてはならない。空気による持続的な酸化は、アーレンマイヤーにおいてトラップを通して液体の上に空気を吹き込むことによって加速することができる。溶媒を約2日間かけて蒸発させると黄色の沈殿物が得られ、これが産物である。
【0042】
沈殿物は、メタノール、DMSO、または他の適した溶媒において再結晶によって精製することができる。または、産物はシリカカラムまたはHPLCを用いて精製することができる。
【0043】
MTTアッセイ
1.添加DMEM/F12増殖培地においてA549細胞2×105個/mlの浮遊液を調製する。
2.各ウェルに保存浮遊液100 μlを加えることによって96ウェル細胞培養プレートにおいて2×104個/ウェルを播種する。
3.各白金化合物(既に溶液中)に関して、容易に使用可能な保存液をDMEM/F12培地において調製する。
4.各化合物に関して、濃度0、10、20、30、40、50、60、および70μMを1試料あたり3個ずつ作製する。これは、最終容積200μlにおいて所望の濃度を得るために必要な無処置培地の容量と共に、適当な容量の保存溶液を各ウェルに加えることによってインサイチューで行われる。
5.プレートを軽く攪拌して内容物を混合する。37℃、7%CO2で45時間インキュベートする。
6.各ウェルに5 mg/ml MTT溶液(PBS)20μlを加える。
7.プレートを軽く攪拌して内容物を混合し、さらに3時間インキュベートして産物を生成させる。
8.インキュベーターからプレートを取り出して攪拌し、ホルマザン生成物を沈降させる。
9.針とシリンジを用いて各ウェルの液体内容物を吸引して捨てる。
10.各ウェルにDMSO 200 μlを添加してホルマザン生成物を溶解する。
11.ホルマザン生成物が溶液となって、ウェルの底面に紫色の結晶が認められなくなるまでプレートを攪拌する。
12.光ファイバープローブ付属器を備えたCary 50 UV-vis分光光度計のためのバリアンソフトウェアを用いて、各ウェルの475 nmでの吸光度を読み取る。
【0044】
XTTアッセイ
96ウェルプレートをアッセイに用いた。対数期の細胞約2.5×104個を各ウェルに加えた。本発明の白金錯体を各ウェルに分配して(20%DMSOおよび80%培地に溶解)、均一な容量にするために必要なさらなる培地を加える。対照ウェルには細胞と培地のみを含んだ。各濃度のアッセイを1試料あたり3個ずつ行った。プレートを37℃、7.5%CO2で48時間インキュベートした。次に、MD Bioscience, QuebecのXTTを、提供されたプロトコール濃度に従って加えて、3時間反応させた。プレートを5分間攪拌してから、光ファイバープローブを備えたVarian Cary 50分光光度計において475 nmでの吸光度を読み取った。対照ウェルと比較した%生存を白金錯体濃度に対してプロットした。
【0045】
核抽出物の調製とHK表示白金錯体のEMSAによる分析
核抽出物は、ヒト上皮細胞増殖因子(EGF)受容体を過剰発現するNIH3T3/hEGFR細胞から調製して、EGF(6 ng/ml)によって15分間刺激した。核抽出物を放射標識プローブと共にインキュベートする前に、化合物と共に室温で30分間プレインキュベートした。用いた32P-標識オリゴヌクレオチドプローブは、Stat1およびStat3の双方に結合するhSIE(高親和性sis誘導型エレメント、m67変種
である。
【0046】
以下は本発明を実践するための技法を説明する実施例である。これらの実施例は制限的に解釈してはならない。百分率は全て重量であり、特に明記していない限り、溶媒混合比は全て容積である。
【0047】
実施例1−白金錯体に関するMTTアッセイデータ
細胞の増殖および活性化の定量的決定のために、ならびにインビトロでの腫瘍細胞の抗癌化合物に対する感受性の定量のために、MTTアッセイを用いる。アッセイは、黄色のテトラゾリウム塩MTTが代謝的に活性な細胞によって紫色のホルマザンに切断されることに基づく。可溶化したホルマザン産物をELISAプレートリーダーを用いて分光光度法により定量することができる。生存細胞数が減少すれば、総代謝活性の減少が起こり、それによって色形成の減少が起こる。本発明の白金錯体をA549細胞を用いてMTTアッセイにおいて試験して抗癌細胞活性を決定した。結果を表1、2、3、および4ならびに図1、2、および4に示す。表1は、A549細胞の生存率(%)を示し、表2は表1におけるデータからのIC50値を示す。図1、2、および4は、生存率(%)対白金錯体濃度をグラフの形で示す。図6は、570 nmでの吸光度体本発明のいくつかの白金錯体(μm)の濃度のグラフを示す。
【0048】
(表1)MTTアッセイにおける白金錯体を用いたA549細胞の生存率(%)
【0049】
(表2)表1のMTTアッセイデータから計算したIC50
【0050】
(表3)MTTアッセイにおける白金錯体を用いたA549細胞の生存率(%)
【0051】
(表4)MTTアッセイにおける白金錯体を用いたA549細胞の生存率(%)
【0052】
(表5)
【0053】
実施例2−白金錯体に関するXTTデータ
XTTアッセイは、代謝的に活性な細胞による黄色のテトラゾリウム塩XTTのオレンジ色のホルマザン色素への変換に基づく。オレンジ色のホルマザン色素は可溶性であり、ELISAプレートリーダーを用いて分光光度法により測定することができる。生存細胞数が減少すれば総代謝活性の減少が起こり、それによって色の形成が減少する。本発明の白金錯体を、抗癌細胞活性を決定するためにA549細胞を用いてXTTアッセイにおいて試験した。細胞生存率(%)対白金錯体の濃度を図3および7においてグラフの形で示す。
【0054】
実施例3−グルタチオンによるCPA-7白金錯体の還元
図5A〜Cは、グルタチオン還元に対してCPA-7が不活性であることを示す。図において、20 μm CPA-7をPBS/20%DMSOにおいて10 mMグルタチオンと共に加えた。読み取りを夕方遅くに開始して、CPA-7に関するλmax、226 nmで10分毎にデータポイントを得た。データは遅い還元を示すが、これは夜間のあいだ事実上停止し、翌日再開した。このデータは光に対する感受性およびGSH還元に対する安定性を示している。データを、動態モードで光ファイバープローブを備えたVarian Cary 50において収集した。Cary 50は、読み取りのあいだに不連続に放射線を照射するパルスキセノンランプを用いる。低速での磁気攪拌子を備えた溶液に関して25 mlメスフラスコを用いた。
【0055】
実施例4−白金錯体のMTTアッセイデータ
MTTアッセイは、細胞増殖および活性化の定量的決定のため、ならびに抗癌化合物に対するインビトロ腫瘍細胞感受性の定量のために用いる。アッセイは、代謝的に活性な細胞による、黄色のテトラゾリウム塩MTTの紫色のホルマザンへの切断に基づく。可溶化ホルマザン産物をELISAプレートリーダーを用いて分光光度法によって定量することができる。生存細胞数が減少すると総代謝活性の減少が起こり、それによって色素形成の減少が起こる。本発明の白金錯体を、抗癌細胞活性を決定するためにA549細胞を用いてMTTアッセイにおいて試験した。結果を表6、7、8、および9、ならびに図8、9、および11に示す。表6は、A549細胞の生存率(%)を示し、表7は表6のデータからのIC50を示す。図8、9、および11は、生存率(%)対白金錯体の濃度をグラフの形で示す。
【0056】
(表6)MTTアッセイ:シスプラチン(Cis-Pt)または以下の式の白金錯体を用いたA549細胞の生存率(%)
* サフラニンによって置換した白金(IV)錯体の二つの異なる単離体(本明細書においてサフラニン1およびサフラニン2と呼ぶ)を単離して、アッセイにおいて試験した。
【0057】
(表7)表1のMTTアッセイデータから計算したIC50
* サフラニンによって置換した白金(IV)錯体の二つの異なる単離体(本明細書においてサフラニン1およびサフラニン2と呼ぶ)を単離して、アッセイにおいて試験した。
【0058】
(表8)MTTアッセイ:シスプラチン(Cis-Pt)または以下の式の白金錯体を用いたA549細胞の生存率(%)
* サフラニンによって置換した白金(IV)錯体の二つの異なる単離体(本明細書においてサフラニン1およびサフラニン2と呼ぶ)を単離して、アッセイにおいて試験した。
【0059】
(表9)MTTアッセイ:シスプラチン(Cis-Pt)または以下の式の白金錯体を用いたA549細胞の生存率(%)
【0060】
実施例5−白金錯体のXTTアッセイデータ
XTTアッセイは、代謝的に活性な細胞による、黄色のテトラゾリウム塩XTTのオレンジ色のホルマザン色素への変換に基づく。オレンジ色のホルマザンは可溶性であって、ELISAプレートリーダーによって分光測光法によって定量することができる。生存細胞数が減少すれば総代謝活性の減少が起こり、それによって色形成の減少が起こる。本発明の白金錯体を、抗癌細胞活性を決定するために、A549細胞を用いてXTTアッセイにおいて試験した。細胞生存率(%)対白金錯体濃度を図10においてグラフの形で示す。
【0061】
実施例6−HK表示白金錯体によるインビトロStat3 DNA結合活性の阻害
他の白金(IV)錯体をインビトロでのSTAT DNA結合活性に対する阻害活性に関して評価した。Stat1、Stat3、およびStat5を活性化するEGF刺激線維芽細胞から調製した核抽出物のEMSAによる分析から、白金錯体の異なる濃度を32P標識hSIEプローブとのインキュベーション前に(等量の総蛋白質の抽出物と)30分間プレインキュベートすると、Stat3およびStat1のDNA結合活性レベルの用量依存的な減少が起こることが示される(図12Aおよび12B)。
【0062】
本明細書に記述の実施例および態様は説明する目的に限られ、それに照らして様々な改変または変更が当業者に示唆されるであろうが、それらも本出願の趣旨および範囲、ならびに添付の特許請求の範囲に含まれると理解すべきである。
【0063】
参考文献
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】MTTアッセイの結果をグラフの形で示す。シスプラチンはまた「Cis-Pt」と称される。
【図2】MTTアッセイの結果をグラフの形で示す。シスプラチンはまた「Cis-Pt」と称される。
【図3】MTTアッセイの結果をグラフの形で示す。シスプラチンはまた「Cis-Pt」と称される。
【図4】MTTアッセイの結果をグラフの形で示す。シスプラチンはまた「Cis-Pt」と称される。
【図5】図5A〜5Cは、グルタチオンによる還元に対してCPA-7白金錯体が不活性であることを示す。10 mmグルタチオンと共に20 μm CPA-7のPBS/20%DMSO。図5Aに示すように、直線部分は夜間(暗所)に測定され、還元は昼間に起こった。CPA-7は、GSHによって認識できる程度に還元されないが、光によって還元される。図5B〜5Cに示されるように、2時間にわたって走査した動態はほとんど変化を示さない。還元は室内光に帰因する。
【図6】MTTアッセイの結果をグラフの形で示す。シスプラチンはまた「Cis-Pt」と称される。
【図7】MTTアッセイの結果をグラフの形で示す。シスプラチンはまた「Cis-Pt」と称される。
【図8】MTTアッセイの結果をグラフの形で示す。図の説明文は、本明細書において同定された「A」置換基によりPt(NO2)(NH3)2(Cl)2A白金錯体を特定する。シスプラチンはまた「Cis-Pt」と称される。サフラニンによって置換された白金(IV)錯体の異なる二つの単離体を単離して(本明細書においてサフラニン1およびサフラニン2と呼ぶ)、アッセイにおいて試験した。
【図9】MTTアッセイの結果をグラフの形で示す。図の説明文は、本明細書において同定された「A」置換基によりPt(NO2)(NH3)2(Cl)2A白金錯体を特定する。シスプラチンはまた「Cis-Pt」と称される。サフラニンによって置換された白金(IV)錯体の異なる二つの単離体を単離して(本明細書においてサフラニン1およびサフラニン2と呼ぶ)、アッセイにおいて試験した。
【図10】XTTアッセイの結果をグラフの形で示す。図の説明文は、本明細書において同定された「A」置換基によりPt(NO2)(NH3)2(Cl)2A白金錯体を特定する。
【図11】MTTアッセイの結果をグラフの形で示す。図の説明文は、本明細書において同定された「A」置換基によりPt(NO2)(NH3)2(Cl)2A白金錯体を特定する。シスプラチンはまた「Cis-Pt」と称される。
【図12】図12A〜12Bは、他の白金(IV)錯体(本明細書においてHK 104、HK 105、HK 106、HK 107、HK 108、HK 109、HK 110、HK 111、およびHK 112と称する)の表記の濃度によって室温で30分間処置した後、放射標識hSIEオリゴヌクレオチドプローブと共にインキュベートした活性化Stat1およびStat3を含む核抽出物を示す写真である。hSIEプローブに対するStat1およびStat3結合活性を示す。
【配列表フリーテキスト】
【0065】
配列の簡単な説明
(配列番号:1)オリゴヌクレオチドプローブのヌクレオチド配列である。
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、それぞれの開示の全内容物が参照により本明細書に組み入れられる、2003年8月13日に提出された米国特許仮出願第60/481,226号、2003年10月30日に提出された米国特許仮出願第60/515,580号、2003年11月25日に提出された米国特許仮出願第60/525,295号、2003年11月14日に提出された米国特許仮出願第60/519,943号の恩典を主張する。
【0002】
発明の背景
増殖因子およびサイトカインに対する細胞の反応は、細胞質転写因子のシグナル伝達転写活性化(STAT)ファミリーの活性化を特徴とする(Darnell, 1997;Darnellら、1994;Schindlerら、1995;Starkら、1998;Smithgallら、2000;Akira、2000;Hiranoら、2000;Brombergら、1996;Fukudaら、1996;Kotenkoら、2000)。STATは、増殖因子受容体、受容体関連ヤーヌスキナーゼ(Jaks)、またはSrcキナーゼファミリーのチロシンのタンパク質チロシンキナーゼリン酸化を伴う非常に初期段階において活性化される。次に、二量体形成においてこれは二つのSTAT単量体のあいだのホスホチロシン(pTyr)-SH2相互作用、核への移動、特異的DNA反応エレメントへの結合を誘導し、細胞増殖、分化、発達、および生存にとって必須の遺伝子の発現を調節する。
【0003】
正常なSTAT活性化は、厳密に制御されて短期間であり、外部刺激に対する反応を開始するという正常な細胞の必要条件と一致している。しかし、特異的STATタンパク質、特にStat3およびStat5の持続的な活性化は、いくつかの腫瘍において高頻度で起こり、乳癌、前立腺癌、および頭頚部扁平上皮癌細胞、リンパ腫、ならびに白血病細胞を含む、形質転換細胞および腫瘍細胞の増殖および生存を促進することによって、悪性の形質転換において原因的役割を有する(Brombergら、1999;Turksonら、1998;Brombergら、1998;Catlett-Falconeら、1999a;Garciaら、2001;Grandisら、2000;Grandisら、1998;Nielsenら、1997;Nielsenら、1999;Epling-Burnetteら、2001;Bowmanら、2000aにおける論評;Turksonら、2000;Songら、2000;Cofferら、2000;Linら、2000;Catlett-Falconeら、1999b;Garciaら、1998)。臨床的に重要であるのは、それらを含む悪性細胞および腫瘍全体における異常なStat3シグナル伝達を遮断すると、アポトーシスおよび腫瘍の退縮を誘導する点である。
【0004】
シスプラチンのプロトタイプである白金錯体(Cis-Pt)は、精巣癌、卵巣癌、膀胱癌、頭頚部癌、および肺の非小細胞癌を含む様々なヒト腫瘍において、活性な抗癌剤として広く用いられている(Ardizzoniら、1999;Nitiss、2002)。シスプラチンおよび他の白金含有化合物による治療の転帰は、DNAに及ぼすそのアルキル化作用に強く関連している。しかし、細胞のシグナル伝達に及ぼす白金錯体に基づく治療の影響の可能性、およびそのような相互作用の治療的重要性はまだ、研究されていない。シスプラチンが、薬剤誘発性のアポトーシスに影響を及ぼす可能性があるマイトゲン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路(Personsら、1999;Sanchez-Perezら、1998)のメンバーの活性化を誘導することを示す報告がある。
【発明の開示】
【0005】
発明の簡単な概要
本発明は、白金錯体およびその利用に関する。本発明の白金錯体は、腫瘍、ウイルス、細菌、および寄生虫疾患状態を治療するために用いることができる。
【0006】
発明の詳細な説明
本発明は、白金錯体およびその利用に関する。本発明の白金錯体は、アポトーシスを誘導および/または腫瘍細胞の増殖を阻害することができ、同様に癌を治療するために用いることができる。本発明の白金錯体はまた、抗ウイルス、抗菌、および抗寄生虫薬として用いることができる。白金(IV)化合物の細胞障害性は、細胞において白金(IV)化合物が白金(II)に還元された結果であると示唆されている。意外にも、本発明の白金(IV)錯体は、細胞障害性を有するために細胞においてこのタイプの還元を必要としない可能性がある。したがって、本発明の白金錯体は、既存の白金(II)化合物より有効である白金(IV)化合物としてのその正確な酸化的コンフォメーションを維持することによって、当技術分野における白金化合物とは異なる。さらに、本発明の白金錯体は、ラジカルとして細胞において酸化窒素を形成して、それによってオキシドラジカルの形成を通して細胞を殺すことができる。
【0007】
本発明の白金錯体には、以下の式Iに示される構造を有する白金錯体、またはその薬学的に許容される塩が含まれる:
式中、XおよびYは独立して任意のハロゲン、-NO2、-ONOもしくは以下の構造であるか、
またはXおよびYは共に以下の構造を形成する
R1は-NO2または-ONOである;
R2は任意のハロゲン、-OH、-ONO、-ONO2、-COR10、-OPO3R10R11、-OSO3H、-OSeOOH、-SeOOH、-AsO2、-OAsO2、-NR10R11、-NHR10R11、-OOCR15、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、-N-アルキル、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニル、またはその如何なるものも任意のハロゲン、-NH2、-COOH、-OH、アルコキシ、シクロアルコキシによって置換されうる以下の構造によって置換されうる
R3は、独立して-NH3または-NHR7である;
R7は、任意に-NO2またはCOOHによって置換されるH、C1-6アルキル、アルコキシ、またはアリールである;
R10およびR11は、独立して、H、-NH2、-OH、-NHR7、CONHR7、CON(R7)2、C1-6アルキル、アリール、またはヘテロアリールであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
R15はアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、-N-アルキル、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる。
【0008】
一つの態様において、XおよびYは独立して、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I)となりうる。例としての態様において、XはClであって、YはClである。
【0009】
一つの態様において、R1は-NO2、R2はCl、およびR3は-NH3である。
【0010】
本発明の白金錯体はまた、以下の式IIに示される構造、またはその薬学的に許容される塩も有しうる:
式中、XおよびYは独立して、任意のハロゲン、もしくは以下の構造を有するか
または、XおよびYは共に以下の構造を形成する
R4は-NO2または-ONOである;
R5は任意のハロゲン、-OH、-ONO、-ONO2、-COR10、-OPO3R10R11、-OSO3H、-OSeOOH、-SeOOH、-AsO2、-OAsO2、-NR10R11、-NHR10R11、-OOCR15、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、-N-アルキル、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニル、またはその如何なるものも、任意のハロゲン、-NH2、-COOH、-OHによって置換されうる以下の構造によって置換されうる
またはYおよびR5は以下の構造を形成する
またはX、Y、およびR5は共に以下の構造を形成する
R6は独立してNH2またはNHである;
R7は、任意に-NO2または-COOHによって置換されるH、C1-6アルキル、アルコキシ、アリールである;
R8およびR9は独立して、H、C1-6アルキル、または-OHであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
R10およびR11は、独立して、-H、-NH2、-OH、-NHR7、CONHR7、CON(R7)2、C1-6アルキル、アリール、またはヘテロアリールであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
R12およびR13は独立して、HもしくはC1-6アルキルであるか、またはR12およびR13は共に、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、もしくはヘテロアリールを形成し、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
R15はアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、-N-アルキル、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
nは0から6までの任意の整数である。
【0011】
一つの態様において、XおよびYは独立してフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I)となりうる。例としての態様において、XはClであってYはClである。
【0012】
一つの態様において、R4は-NO2、R5はCl、R6は-NH2、およびnは0である。
【0013】
本発明の白金錯体はまた、以下の式IIIもしくは式IVに示される構造、またはその薬学的に許容される塩を有しうる:
式中、XおよびYは独立して、任意のハロゲン、-NO2、-ONOであるか、またはXおよびYは共に以下の構造を形成する
R6は独立して、NO2、N、NH、またはNH2である;
R8およびR9は独立して、H、C1-6アルキル、または-OHであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
R12およびR13は、独立してHもしくはC1-6アルキルであるか、またはR12およびR13は共にアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロアリールを形成し、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
nは0〜6までの任意の整数である。
【0014】
一つの態様において、XおよびYは独立して、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I)となりうる。例としての態様において、XはClであってYはClである。
【0015】
式Iまたは式IIによって定義されないが、本明細書において示される表5において特に例示される白金錯体も同様に、本発明の範囲に含まれると企図される。本発明の白金錯体の例としての態様を表5に示す。白金錯体の化学構造を、その名称(例えばCPA-XX)と共に表に示す。錯体の別名(例えば、HKXXX)を括弧内に示す。
【0016】
本発明の白金錯体にはまた、式Vまたは式VIに示される構造を有する錯体、またはその薬学的に許容される塩が含まれる:
式中、XおよびYは独立して任意のハロゲン、-OH、H2O、または-SO(CH3)2である;ならびに
Aは以下の任意のものとなりうる
式中R1は独立してNH2またはNHである;
R2およびR3は独立して、H、-OH、C1-6アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルであって、その如何なるものも任意で、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルによって置換されうる;
R4およびR5は独立して、H、もしくはC1-6アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルであるか、またはR4およびR5は共に、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルを形成し、その如何なるものも任意で、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルによって置換されうる;
nは0〜6までの任意の整数である。
【0017】
一つの態様において、XおよびYは独立して、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I)となりうる。例としての態様において、XはClであってYはClである。
【0018】
本明細書において用いられるように、アルキルは、炭素原子1〜20個を有する直鎖または分岐鎖の、飽和または単もしくは多不飽和炭化水素基を意味し、C1-xアルキルは、炭素原子1〜X個までを含む直鎖または分岐鎖アルキル基を意味する。例えば、C1-6アルキルは、炭素原子1〜6個までを含む直鎖または分岐鎖アルキル基を意味する。アルコキシは、アルキル基が既に記述されている通りであるアルキル-O-基を意味する。シクロアルキルには、融合環およびスピロ環を含む、炭素原子約3〜約10個の単芳香環単環または多環系が含まれる。環状アルキルは任意で、部分的に不飽和であってもよい。シクロアルコキシは、シクロアルキルが本明細書において定義されたとおりであるシクロアルキル-O-基を意味する。アリールは炭素原子約6〜約14個を含む、融合環およびスピロ環を含む、芳香族単環または多環式炭素環系を意味する。アリールオキシは、アリール基が本明細書に記述されるとおりであるアリール-O-基を意味する。アルキルカルボニルは、Rが既に記述されたとおりのアルキル基であるRC(O)-基を意味する。アルコキシカルボニルは、Rが既に記述された通りのアルキル基であるROC(O)-基を意味する。シクロアルキルカルボニルは、Rが既に記述された通りのシクロアルキル基であるRC(O)-基を意味する。シクロアルコキシカルボニルは、Rが既に記述された通りのシクロアルキル基であるROC(O)-基を意味する。
【0019】
ヘテロアルキルは、炭素原子1〜20個と、窒素および硫黄原子が任意で酸化されてもよい、すなわちN-オキシド型またはS-オキシド型であってもよい、窒素、酸素、または硫黄から選択される一つまたはそれ以上のヘテロ原子とを有する直鎖または分岐鎖を意味する。ヘテロシクロアルキルは、元素約5個〜約10個の融合環およびスピロ環を含む、単環または多環系(飽和または部分的不飽和であってもよい)であって、環系における一つまたはそれ以上の元素が炭素以外の元素であって、窒素、酸素、ケイ素、または硫黄原子から選択される環系を意味する。ヘテロアリールは、環系における一つまたはそれ以上の元素が炭素以外の元素であって、窒素、酸素、ケイ素、または硫黄原子から選択され、N原子がN-オキシドの形であってもよい、融合環およびスピロ環を含む、5〜約14員環の芳香族単環または多環式炭化水素環系を意味する。アリールカルボニルは、アリール基が本明細書に記述されるとおりであるアリール-CO-基を意味する。ヘテロアリールカルボニルは、ヘテロアリール基が本明細書に記載される通りであるヘテロアリール-CO-基を意味し、ヘテロシクロアルキルカルボニルは、ヘテロシクロアルキル基が本明細書に記述されるとおりであるヘテロシクロアルキル-CO基を意味する。アリールオキシカルボニルは、Rが既に記述されたとおりのアリール基であるROC(O)-基を意味する。ヘテロアリールオキシカルボニルは、Rが既に記述されたとおりのヘテロアリール基であるROC(O)-基を意味する。ヘテロシクロアルコキシは、ヘテロシクロアルキル基が既に記述されたとおりであるヘテロシクロアルキル-O-基を意味する。ヘテロシクロアルコキシカルボニルは、Rが既に記述されたとおりのヘテロシクロアルキル基であるROC(O)-基を意味する。
【0020】
飽和アルキル基の例には、メチル、エチル、N-プロピル、イソプロピル、N-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、N-ペンチル、N-ヘキシル、N-ヘプチル、およびN-オクチルが含まれるがこれらに限定されない。不飽和アルキル基は一つまたはそれ以上の二重または三重結合を有する基である。不飽和アルキル基には、例えばエテニル、プロペニル、ブテニル、ヘキセニル、ビニル、2-プロピニル、2-イソペンテニル、2-ブタジエニル、エチニル、1-プロピニル、3-プロピニル、および3-ブチニルが含まれる。シクロアルキル基には、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、およびシクロヘプチルが含まれる。ヘテロシクロアルキル基には、例えば、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、3-モルフォリニル、4-モルフォリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニル、および1,4-ジアザビシクロオクタンが含まれる。アリール基には、例えばフェニル、インデニル、ビフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、アントラセニル、およびフェナントラセニルが含まれる。ヘテロアリール基には、例えば1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、フリル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾキノリニル、カルバゾリルおよびジアザフェナントレニルが含まれる。
【0021】
本明細書において用いられるように、ハロゲンはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、およびヨウ素(I)元素を意味する。
【0022】
薬学的に許容される塩という用語は、本明細書に記述の本発明の錯体に存在する特定の置換基に応じて、酸または塩基によって調製された本発明の白金錯体の塩を意味する。薬学的に許容される塩基付加塩の例には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、またはマグネシウム塩が含まれる。薬学的に許容される塩付加塩の例には、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、および酢酸、プロピオン酸、安息香酸、コハク酸、フマル酸、マンデル酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸等のような有機酸が含まれる。本発明の白金錯体の薬学的に許容される塩は、通常の技術を用いて調製することができる。
【0023】
本発明の特定の白金錯体は、立体異性体を生じうる一つまたはそれ以上の非対称に置換された炭素原子を含んでもよいことは当業者に認識されるであろう。エナンチオマーおよびジアステレオマー、およびそのラセミ混合物を含む混合物を含むそのような全ての立体異性体が本発明の範囲に企図される。
【0024】
本発明の白金錯体は、STAT活性の強力かつ選択的な破壊剤である。本明細書においてCPA-7、CPA-10、CPA-39(HK104)、CPA-43(HK106)、CPA-46(HK111)、CPA-51(HK110)、CPA-55(HK109)、CPA-30(HK112)、およびCPA-41と呼ばれる錯体は、Stat3活性を強く破壊して、そのコンセンサス結合配列に対するその結合能を妨害する。本発明の白金錯体は、持続的に活性なSTATを有する形質転換および腫瘍細胞において細胞増殖阻害およびアポトーシスを誘導することができる。異常なまたは構成的STATシグナル伝達を有する悪性細胞は本発明の白金錯体に対して非常に感受性が高い。正常細胞に対する本発明の白金錯体の全般的毒性は、最小であるかまたはない。さらに、持続的に活性なSTATシグナル伝達を有する悪性細胞において、本発明の白金化合物によって強いアポトーシスが誘導され、このことはこれらの細胞における異常なSTAT活性の抑制と相関する。
【0025】
本発明の白金錯体はまた、インビボで黒色腫および結腸腫瘍において抗腫瘍活性を示す。本発明の白金錯体によって処置した腫瘍における構成的に活性なSTATの消失は、インビトロおよび細胞全体の双方におけるSTAT活性に対するその影響と一致し、これらは共に、これらの化合物のSTATに基づく抗腫瘍効果を確立する。
【0026】
本発明の方法は、細胞内に取り込まれるかまたはそうでなければ細胞内で提供される本発明の白金錯体を、STATを発現する細胞に接触させることによって、STATの機能を阻害する段階を含む。本発明の白金錯体は、Stat3のDNA結合ドメインと物理的に相互作用して、それによってDNAに対するその結合能を破壊する。Src形質転換マウス線維芽細胞と共に、構成的Stat3活性を含む乳癌、前立腺癌のヒト腫瘍細胞、およびマウス黒色腫細胞において、CPA-1およびCPA-7はいずれも、Stat3シグナル伝達機能を消失させて、それによって細胞の増殖阻害およびアポトーシスを誘導する。
【0027】
本発明の方法はまた、Stat1またはStat3のようなSTATを異常または構成的に発現する細胞の機能および/または増殖、ならびに複製を阻害する段階を含む。一つの態様において、方法は本発明の白金錯体を細胞に接触させる段階を含む。一つの態様において、細胞は腫瘍細胞、癌細胞、または形質転換細胞である。細胞は、ヒト、サル、チンパンジー、類人猿、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、およびウマを含む哺乳類の細胞となりうる。
【0028】
本発明の白金錯体は、細胞との直接接触を通して、または担体手段によって細胞に送達することができる。組成物を細胞に送達する担体手段は当技術分野で公知であり、例えばリポソーム部分に組成物を封入することが含まれる。本発明の白金錯体を細胞に送達するもう一つの手段は、標的細胞への送達のためにターゲティングされるタンパク質または核酸に、白金錯体を結合させる段階を含む。公表された米国特許出願第20030032594号および第20020120100号は、もう一つの組成物に結合させることができ、組成物を生体膜を超えて転移させるアミノ酸配列を開示している。公表された米国特許出願第20020035243号はまた、細胞内送達のために細胞膜を超えて生物学的部分を輸送するための組成物を記述する。
【0029】
本発明はまた、患者における腫瘍または炎症障害を治療するための方法にも関する。一つの態様において、本発明の白金錯体の有効量が、腫瘍または炎症障害を有し、その治療を必要とする患者に投与される。本発明の方法には任意で、腫瘍または炎症障害の治療を必要とする、または必要とする可能性がある患者を同定する段階が含まれうる。患者は、腫瘍障害を有するヒトまたは霊長類(サル、チンパンジー、類人猿等)、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、もしくはウマのような他の哺乳動物、または他の動物となりうる。患者に投与するための白金錯体を投与および調製するための方法は、当技術分野で公知であり、その例を本明細書において記述する。腫瘍障害には、骨、乳腺、腎臓、口腔、咽頭、食道、胃、精巣、子宮頚部、頭部、頚部、結腸、卵巣、肺、膀胱、皮膚、肝臓、筋肉、膵臓、前立腺、血球(リンパ球を含む)、および脳の癌および/または腫瘍が含まれる。炎症障害には、関節炎、多発性硬化症、狼瘡、クローン病、ならびに関連する神経および炎症性結合組織疾患(例えば、シェーグレン症候群)が含まれる。
【0030】
腫瘍障害を治療するため、本発明の白金錯体を、他の抗腫瘍もしくは抗癌物質、放射線治療、または腫瘍を切除するための外科治療と併用して、治療を必要とする患者に投与することができる。これらの他の物質または放射線治療は、本発明の白金錯体と同時に、または異なる時期に投与してもよい。例えば、本発明の白金錯体は、タキソールまたはビンブラスチンのような分裂阻害剤、シクロホスアミド(cyclophosamide)またはイフォスファミドのようなアルキル化剤、5-フルオロウラシルもしくはヒドロキシウレアのような抗代謝剤、アドリアマイシンもしくはブレオマイシンのようなDNAインターカレート剤、エトポシドもしくはカンプトテシンのようなトポイソメラーゼ阻害剤、アンジオスタチンのような抗血管新生剤、タモキシフェンのような抗エストロゲン剤、および/または例えばそれぞれ、GLEEVEC(Novartis Pharmaceuticals Corporation)およびHERCEPTIN(Genentech, Inc.)のような他の抗癌剤または抗体と併用して用いることができる。
【0031】
多くの腫瘍および癌が、腫瘍または癌細胞に存在するウイルスゲノムを有する。例えば、エプスタイン-バーウイルス(EBV)は、哺乳動物の多数の悪性疾患に関連している。本発明の白金錯体は、細胞の形質転換を引き起こしうるウイルスに感染した患者を治療するために、および/または細胞におけるウイルスゲノムの存在に関連した腫瘍または癌を有する患者を治療するために、単独で、または抗癌剤もしくはガンシクロビル、アジドチミジン(AZT)、ラミブジン(3TC)等のような抗ウイルス剤と併用して用いることができる。本発明の白金錯体はまた、腫瘍形成疾患のウイルスに基づく治療と併用して用いることができる。例えば、本発明の白金錯体は、肺の非小細胞癌の治療において変異体単純ヘルペスウイルスと共に用いることができる(Toyoizumiら、1999)。
【0032】
本発明はまた、本発明の白金錯体を用いて患者の細菌およびウイルス感染症を治療するための方法にも関する。一つの態様において、本発明の白金錯体の有効量を、細菌またはウイルス感染症を有する患者に投与する。本発明の方法には任意で、細菌またはウイルス感染症の治療を必要とするまたは必要とする可能性がある患者を同定する段階が含まれうる。患者は、細菌もしくはウイルスに感染したヒトまたは霊長類(サル、チンパンジー、類人猿等)、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、もしくはウマのような他の哺乳動物、または他の動物となりうる。本発明に従って治療することができる細菌感染症には、ブドウ球菌(Staphylococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)、サルモネラ(Salmonella)、バチルス(Bacillus)、クロストリジウム(Clostridium)、シュードモナス(Pseudomonas)、ナイセリア(Neisseria)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、およびエルシニア(Yersinia)の感染症が含まれる。本発明に従って治療することができるウイルス感染症には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、乳頭腫ウイルス(例えば、ヒト乳頭腫ウイルス)、ポリオーマウイルス(例えば、SV40、BKウイルス、DARウイルス)、オルソポックスウイルス(例えば、大痘瘡ウイルス(小痘ウイルス))、EBV、単純ヘルペスウイルス(HSV)、肝炎ウイルス、ラブドウイルス(例えば、エボラウイルス)、およびサイトメガロウイルス(CMV)に関連した感染症が含まれるがこれらに限定されない。本発明の白金組成物はまた、光力学治療(Cunyら、1999)の存在下でウイルス疾患を治療するために用いることができる。光力学治療において用いることができる本発明の白金錯体には、CPA-30、CPA-32、CPA-38、CPA-39、CPA-41、CPA-42、CPA-43、CPA-45、CPA-46、CPA-51、CPA-53、CPA-54、CPA-55、およびJP5が含まれるがこれらに限定されない。これらの化合物は光によって活性化されて、その抗ウイルス、抗菌、抗腫瘍、抗寄生虫、または細胞作用を活性化すると企図される。
【0033】
本発明の白金錯体はまた、寄生生物に感染した患者を治療するために用いることができる。一つの態様において、本発明の白金錯体の治療的有効量を患者に投与する。本発明の方法には任意で、寄生虫感染症の治療を必要とするまたは必要とする可能性がある患者を同定する段階が含まれうる。患者は、寄生生物に感染したヒトまたは霊長類(サル、チンパンジー、類人猿等)、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、もしくはウマのような他の哺乳動物、または他の動物となりうる。本発明に従って治療することができる疾患状態には、リーシュマニア、トキソプラズマ症、住血吸虫症、トリパノソーマ症、ニューモシスティス、マラリア、および旋毛虫症が含まれるがこれらに限定されない。本発明に従って治療可能な疾患状態を引き起こしうる寄生虫には、リーシュマニア(Leishmania)、トキソプラズマ(Toxoplasma)、住血吸虫(Schistosoma)、プラスモジウム(Plasmodium)、およびトリパノソーマ(Trypanosoma)が含まれるがこれらに限定されない。本発明はまた、体内寄生アメーバ(Entamoeba)、ジアルジア(Giardia)、トリコモナス(Trichomonas)、ならびに回虫(Ascaris)、鞭虫(Trichuris)、蟯虫(Enterobius)、鉤虫(Necator)、十二指腸虫(Ancylostoma)、糞線虫(Strongyloides)、および旋毛虫(Trichinella)のような線虫、のような寄生生物によって引き起こされる消化管障害を治療するためにも用いることができる。もう一つの態様において、本発明の白金錯体は、非感染患者が、寄生虫疾患が流行しているまたは患者にリスクを与える地域に、旅行するまたは在住するであろう場合に、患者に予防的に投与することができる。したがって、患者は、寄生虫感染症が流行しているまたはリスクを与える地域での患者の曝露または在住の前に、および/または寄生生物感染症の前に、本発明の組成物によって治療することができる。
【0034】
本発明の白金錯体はまた、細菌または寄生生物上でウイルスに汚染された、または汚染が疑われる生体産物をインビトロで治療するためにも用いることができる。本発明の白金錯体によって処置することができる生体産物には、全血、分画血、血漿、血清、臓器全体または臓器の一部、および血球、筋細胞、皮膚細胞、および神経細胞を含む細胞、ならびに細胞に由来する産物が含まれるがこれらに限定されない。本発明の白金錯体によって治療することができる細胞に由来する産物には、インターフェロン、インターロイキン、第VIII因子、第IX因子、第X因子等のような血液凝固因子、インスリン、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、増殖因子、サイトカイン、ならびに他の産物が含まれるがこれらに限定されない。生体産物の処置は、本発明の白金錯体の有効量に、有効な時間、産物を接触させる段階を含む。必要であれば、生体産物をその後、リン酸緩衝生理食塩液のような適当な滅菌水溶液によって洗浄して、産物を治療するために用いた白金錯体を除去することができる。
【0035】
本発明の白金錯体およびそれらを含む組成物の治療的応用は、当業者に現在公知であるか、公知となる見通しである任意の適した治療法および技術によって行うことができる。本発明の白金錯体は、例えば経口、鼻腔内、直腸内、および非経口投与経路を含む、当技術分野における如何なる適した経路によっても投与することができる。本明細書において用いられるように、非経口という用語には、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、腹腔内、および注射によるような胸骨内投与が含まれる。本発明の白金錯体の投与は、当業者によって容易に決定されうるように、連続的または不連続な間隔となりうる。
【0036】
本発明の白金錯体は薬学的に有用な組成物を調製する公知の方法に従って調製することができる。製剤は、当業者に周知であって容易に入手できる多数の起源において詳細に記述されている。例えば、E.W. Martinによって記述される「Remington's Pharmaceutical Science」は、本発明に関連して用いることができる製剤について記述している。一般的に、本発明の組成物は、生物活性白金錯体の有効量が組成物の有効な投与を促進するために適した担体と組み合わせられるように調製されるであろう。本発明の方法において用いられる組成物はまた、多様な製剤となりうる。これらには、例えば錠剤、丸剤、粉剤、液体溶液または懸濁液、坐剤、注射剤および注入溶液、ならびに噴霧剤のような、固体、半固体、および液体投与剤形が含まれる。好ましい剤形は、意図される投与様式および治療応用に依存する。組成物にはまた、当業者に公知である通常の薬学的に許容される担体および希釈剤が含まれる。本発明の白金錯体と共に用いられる担体または希釈剤の例には、エタノール、ジメチルスルホキシド、グリセロール、アルミナ、デンプン、ならびに同等の担体および希釈剤が含まれる。本発明の望ましい治療的治療のためのそのような用量の投与を提供するために、本発明の薬学的組成物は、担体または希釈剤を含む総組成物の重量に基づいて、本発明の白金錯体の一つまたはそれ以上を全体の重量で、約0.1〜99%、特に1〜15%を含むことが都合がよいであろう。
【0037】
本発明の白金錯体はまた、リポソーム技術、徐放性カプセル、埋め込み型ポンプ、および生体分解性容器を利用して投与することができる。これらの送達法は、均一な用量を一定期間にわたって都合よく提供することができる。本発明の白金錯体はまた、当業者に公知のその塩誘導体型または結晶型で投与することができる。
【0038】
本発明はまた、薬学的に許容される用量で調製された本発明の少なくとも一つの白金化合物を一つまたはそれ以上の容器に含む包装された投与製剤にも関する。
【0039】
本明細書において言及したまたは引用した全ての特許、特許出願、仮出願、および刊行物は、全ての図面および表を含むその全内容物が、本明細書の明白な教示と矛盾しない程度に参照として本明細書に組み入れられる。
【0040】
材料および方法
ニトロ白金(IV)錯体の合成
二塩化シス-ジアミンネオプラチナ(II)(シスプラチン)は、Sigma-Aldrich(#P4394)から純度99.9%で購入することができる。シスプラチン0.300 g(0.00100モル、FW=300.1)を用いて、超脱イオン水150 mlおよびジクロロエタン50 mlを250 mlアーレンマイヤーフラスコに加える。しかし、ヘキサンおよび任意の有機溶媒を、本明細書において用いたジクロロエタンの代わりに用いることができる。六番目のリガンドの選択には、酸化Ptに対する結合のためにルイス塩基を提供する窒素、硫黄、または酸素原子が化学構造において利用できることが含まれる。金属、ハロゲン化物(HClのような)との、またはキレート化もしくはpi分子軌道との相互作用による他の結合が可能である。シスプラチン1モルあたり選択したリガンド1モルを量り取って、混合物に加えなければならない。ジクロロエタンのような有機溶媒は、疎水性特性の有機リガンドの溶解性を提供する。磁気攪拌子を混合物に入れて、フラスコを化学実験用換気フードの中で磁気攪拌プレート上に置く。四酸化窒素のレクチャーボトルを、レギュレータおよびテフロンホースに固定して、ホースの出口にガラスピペットを取り付ける。ピペットの先端を低いほうの溶媒(例えば、ジクロロエタン)に挿入して、レクチャーボトルを温水浴においてわずかに加温する。二酸化窒素ガスを、攪拌混合物に1秒間に気泡約1個の割合で放出する。ガスは黄色のシスプラチンが全て消費されるまで添加しなければならない;黄色の固体が消失して黄色い溶液となれば、利用可能なシスプラチンが消費されたことを示すであろう。ニトロシル中間体の形成を示すために、青色を観察する;この色の色調および持続の変化を観察する。次に、ガスの添加を終了して(レクチャーボトルへの真空吸引を防止するためにピペットを外す)、光の曝露を防止するためにフラスコをアルミニウムホイルで覆う。フラスコは、蓋を外して一晩攪拌しなければならない。
【0041】
翌日、さらなる二酸化窒素を、反応の完全性をチェックするために加えてもよい。青色は白金(II)の不完全な酸化を示すであろう。通常、この青色は10分以内に褪色する。無色のリガンドに関して、溶液は一晩で黄色になった。青色が残っている場合には、攪拌を継続する。混合物は、完全な酸化のために空気を必要とすることから、しっかりと蓋をしてはならない。空気による持続的な酸化は、アーレンマイヤーにおいてトラップを通して液体の上に空気を吹き込むことによって加速することができる。溶媒を約2日間かけて蒸発させると黄色の沈殿物が得られ、これが産物である。
【0042】
沈殿物は、メタノール、DMSO、または他の適した溶媒において再結晶によって精製することができる。または、産物はシリカカラムまたはHPLCを用いて精製することができる。
【0043】
MTTアッセイ
1.添加DMEM/F12増殖培地においてA549細胞2×105個/mlの浮遊液を調製する。
2.各ウェルに保存浮遊液100 μlを加えることによって96ウェル細胞培養プレートにおいて2×104個/ウェルを播種する。
3.各白金化合物(既に溶液中)に関して、容易に使用可能な保存液をDMEM/F12培地において調製する。
4.各化合物に関して、濃度0、10、20、30、40、50、60、および70μMを1試料あたり3個ずつ作製する。これは、最終容積200μlにおいて所望の濃度を得るために必要な無処置培地の容量と共に、適当な容量の保存溶液を各ウェルに加えることによってインサイチューで行われる。
5.プレートを軽く攪拌して内容物を混合する。37℃、7%CO2で45時間インキュベートする。
6.各ウェルに5 mg/ml MTT溶液(PBS)20μlを加える。
7.プレートを軽く攪拌して内容物を混合し、さらに3時間インキュベートして産物を生成させる。
8.インキュベーターからプレートを取り出して攪拌し、ホルマザン生成物を沈降させる。
9.針とシリンジを用いて各ウェルの液体内容物を吸引して捨てる。
10.各ウェルにDMSO 200 μlを添加してホルマザン生成物を溶解する。
11.ホルマザン生成物が溶液となって、ウェルの底面に紫色の結晶が認められなくなるまでプレートを攪拌する。
12.光ファイバープローブ付属器を備えたCary 50 UV-vis分光光度計のためのバリアンソフトウェアを用いて、各ウェルの475 nmでの吸光度を読み取る。
【0044】
XTTアッセイ
96ウェルプレートをアッセイに用いた。対数期の細胞約2.5×104個を各ウェルに加えた。本発明の白金錯体を各ウェルに分配して(20%DMSOおよび80%培地に溶解)、均一な容量にするために必要なさらなる培地を加える。対照ウェルには細胞と培地のみを含んだ。各濃度のアッセイを1試料あたり3個ずつ行った。プレートを37℃、7.5%CO2で48時間インキュベートした。次に、MD Bioscience, QuebecのXTTを、提供されたプロトコール濃度に従って加えて、3時間反応させた。プレートを5分間攪拌してから、光ファイバープローブを備えたVarian Cary 50分光光度計において475 nmでの吸光度を読み取った。対照ウェルと比較した%生存を白金錯体濃度に対してプロットした。
【0045】
核抽出物の調製とHK表示白金錯体のEMSAによる分析
核抽出物は、ヒト上皮細胞増殖因子(EGF)受容体を過剰発現するNIH3T3/hEGFR細胞から調製して、EGF(6 ng/ml)によって15分間刺激した。核抽出物を放射標識プローブと共にインキュベートする前に、化合物と共に室温で30分間プレインキュベートした。用いた32P-標識オリゴヌクレオチドプローブは、Stat1およびStat3の双方に結合するhSIE(高親和性sis誘導型エレメント、m67変種
である。
【0046】
以下は本発明を実践するための技法を説明する実施例である。これらの実施例は制限的に解釈してはならない。百分率は全て重量であり、特に明記していない限り、溶媒混合比は全て容積である。
【0047】
実施例1−白金錯体に関するMTTアッセイデータ
細胞の増殖および活性化の定量的決定のために、ならびにインビトロでの腫瘍細胞の抗癌化合物に対する感受性の定量のために、MTTアッセイを用いる。アッセイは、黄色のテトラゾリウム塩MTTが代謝的に活性な細胞によって紫色のホルマザンに切断されることに基づく。可溶化したホルマザン産物をELISAプレートリーダーを用いて分光光度法により定量することができる。生存細胞数が減少すれば、総代謝活性の減少が起こり、それによって色形成の減少が起こる。本発明の白金錯体をA549細胞を用いてMTTアッセイにおいて試験して抗癌細胞活性を決定した。結果を表1、2、3、および4ならびに図1、2、および4に示す。表1は、A549細胞の生存率(%)を示し、表2は表1におけるデータからのIC50値を示す。図1、2、および4は、生存率(%)対白金錯体濃度をグラフの形で示す。図6は、570 nmでの吸光度体本発明のいくつかの白金錯体(μm)の濃度のグラフを示す。
【0048】
(表1)MTTアッセイにおける白金錯体を用いたA549細胞の生存率(%)
【0049】
(表2)表1のMTTアッセイデータから計算したIC50
【0050】
(表3)MTTアッセイにおける白金錯体を用いたA549細胞の生存率(%)
【0051】
(表4)MTTアッセイにおける白金錯体を用いたA549細胞の生存率(%)
【0052】
(表5)
【0053】
実施例2−白金錯体に関するXTTデータ
XTTアッセイは、代謝的に活性な細胞による黄色のテトラゾリウム塩XTTのオレンジ色のホルマザン色素への変換に基づく。オレンジ色のホルマザン色素は可溶性であり、ELISAプレートリーダーを用いて分光光度法により測定することができる。生存細胞数が減少すれば総代謝活性の減少が起こり、それによって色の形成が減少する。本発明の白金錯体を、抗癌細胞活性を決定するためにA549細胞を用いてXTTアッセイにおいて試験した。細胞生存率(%)対白金錯体の濃度を図3および7においてグラフの形で示す。
【0054】
実施例3−グルタチオンによるCPA-7白金錯体の還元
図5A〜Cは、グルタチオン還元に対してCPA-7が不活性であることを示す。図において、20 μm CPA-7をPBS/20%DMSOにおいて10 mMグルタチオンと共に加えた。読み取りを夕方遅くに開始して、CPA-7に関するλmax、226 nmで10分毎にデータポイントを得た。データは遅い還元を示すが、これは夜間のあいだ事実上停止し、翌日再開した。このデータは光に対する感受性およびGSH還元に対する安定性を示している。データを、動態モードで光ファイバープローブを備えたVarian Cary 50において収集した。Cary 50は、読み取りのあいだに不連続に放射線を照射するパルスキセノンランプを用いる。低速での磁気攪拌子を備えた溶液に関して25 mlメスフラスコを用いた。
【0055】
実施例4−白金錯体のMTTアッセイデータ
MTTアッセイは、細胞増殖および活性化の定量的決定のため、ならびに抗癌化合物に対するインビトロ腫瘍細胞感受性の定量のために用いる。アッセイは、代謝的に活性な細胞による、黄色のテトラゾリウム塩MTTの紫色のホルマザンへの切断に基づく。可溶化ホルマザン産物をELISAプレートリーダーを用いて分光光度法によって定量することができる。生存細胞数が減少すると総代謝活性の減少が起こり、それによって色素形成の減少が起こる。本発明の白金錯体を、抗癌細胞活性を決定するためにA549細胞を用いてMTTアッセイにおいて試験した。結果を表6、7、8、および9、ならびに図8、9、および11に示す。表6は、A549細胞の生存率(%)を示し、表7は表6のデータからのIC50を示す。図8、9、および11は、生存率(%)対白金錯体の濃度をグラフの形で示す。
【0056】
(表6)MTTアッセイ:シスプラチン(Cis-Pt)または以下の式の白金錯体を用いたA549細胞の生存率(%)
* サフラニンによって置換した白金(IV)錯体の二つの異なる単離体(本明細書においてサフラニン1およびサフラニン2と呼ぶ)を単離して、アッセイにおいて試験した。
【0057】
(表7)表1のMTTアッセイデータから計算したIC50
* サフラニンによって置換した白金(IV)錯体の二つの異なる単離体(本明細書においてサフラニン1およびサフラニン2と呼ぶ)を単離して、アッセイにおいて試験した。
【0058】
(表8)MTTアッセイ:シスプラチン(Cis-Pt)または以下の式の白金錯体を用いたA549細胞の生存率(%)
* サフラニンによって置換した白金(IV)錯体の二つの異なる単離体(本明細書においてサフラニン1およびサフラニン2と呼ぶ)を単離して、アッセイにおいて試験した。
【0059】
(表9)MTTアッセイ:シスプラチン(Cis-Pt)または以下の式の白金錯体を用いたA549細胞の生存率(%)
【0060】
実施例5−白金錯体のXTTアッセイデータ
XTTアッセイは、代謝的に活性な細胞による、黄色のテトラゾリウム塩XTTのオレンジ色のホルマザン色素への変換に基づく。オレンジ色のホルマザンは可溶性であって、ELISAプレートリーダーによって分光測光法によって定量することができる。生存細胞数が減少すれば総代謝活性の減少が起こり、それによって色形成の減少が起こる。本発明の白金錯体を、抗癌細胞活性を決定するために、A549細胞を用いてXTTアッセイにおいて試験した。細胞生存率(%)対白金錯体濃度を図10においてグラフの形で示す。
【0061】
実施例6−HK表示白金錯体によるインビトロStat3 DNA結合活性の阻害
他の白金(IV)錯体をインビトロでのSTAT DNA結合活性に対する阻害活性に関して評価した。Stat1、Stat3、およびStat5を活性化するEGF刺激線維芽細胞から調製した核抽出物のEMSAによる分析から、白金錯体の異なる濃度を32P標識hSIEプローブとのインキュベーション前に(等量の総蛋白質の抽出物と)30分間プレインキュベートすると、Stat3およびStat1のDNA結合活性レベルの用量依存的な減少が起こることが示される(図12Aおよび12B)。
【0062】
本明細書に記述の実施例および態様は説明する目的に限られ、それに照らして様々な改変または変更が当業者に示唆されるであろうが、それらも本出願の趣旨および範囲、ならびに添付の特許請求の範囲に含まれると理解すべきである。
【0063】
参考文献
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】MTTアッセイの結果をグラフの形で示す。シスプラチンはまた「Cis-Pt」と称される。
【図2】MTTアッセイの結果をグラフの形で示す。シスプラチンはまた「Cis-Pt」と称される。
【図3】MTTアッセイの結果をグラフの形で示す。シスプラチンはまた「Cis-Pt」と称される。
【図4】MTTアッセイの結果をグラフの形で示す。シスプラチンはまた「Cis-Pt」と称される。
【図5】図5A〜5Cは、グルタチオンによる還元に対してCPA-7白金錯体が不活性であることを示す。10 mmグルタチオンと共に20 μm CPA-7のPBS/20%DMSO。図5Aに示すように、直線部分は夜間(暗所)に測定され、還元は昼間に起こった。CPA-7は、GSHによって認識できる程度に還元されないが、光によって還元される。図5B〜5Cに示されるように、2時間にわたって走査した動態はほとんど変化を示さない。還元は室内光に帰因する。
【図6】MTTアッセイの結果をグラフの形で示す。シスプラチンはまた「Cis-Pt」と称される。
【図7】MTTアッセイの結果をグラフの形で示す。シスプラチンはまた「Cis-Pt」と称される。
【図8】MTTアッセイの結果をグラフの形で示す。図の説明文は、本明細書において同定された「A」置換基によりPt(NO2)(NH3)2(Cl)2A白金錯体を特定する。シスプラチンはまた「Cis-Pt」と称される。サフラニンによって置換された白金(IV)錯体の異なる二つの単離体を単離して(本明細書においてサフラニン1およびサフラニン2と呼ぶ)、アッセイにおいて試験した。
【図9】MTTアッセイの結果をグラフの形で示す。図の説明文は、本明細書において同定された「A」置換基によりPt(NO2)(NH3)2(Cl)2A白金錯体を特定する。シスプラチンはまた「Cis-Pt」と称される。サフラニンによって置換された白金(IV)錯体の異なる二つの単離体を単離して(本明細書においてサフラニン1およびサフラニン2と呼ぶ)、アッセイにおいて試験した。
【図10】XTTアッセイの結果をグラフの形で示す。図の説明文は、本明細書において同定された「A」置換基によりPt(NO2)(NH3)2(Cl)2A白金錯体を特定する。
【図11】MTTアッセイの結果をグラフの形で示す。図の説明文は、本明細書において同定された「A」置換基によりPt(NO2)(NH3)2(Cl)2A白金錯体を特定する。シスプラチンはまた「Cis-Pt」と称される。
【図12】図12A〜12Bは、他の白金(IV)錯体(本明細書においてHK 104、HK 105、HK 106、HK 107、HK 108、HK 109、HK 110、HK 111、およびHK 112と称する)の表記の濃度によって室温で30分間処置した後、放射標識hSIEオリゴヌクレオチドプローブと共にインキュベートした活性化Stat1およびStat3を含む核抽出物を示す写真である。hSIEプローブに対するStat1およびStat3結合活性を示す。
【配列表フリーテキスト】
【0065】
配列の簡単な説明
(配列番号:1)オリゴヌクレオチドプローブのヌクレオチド配列である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式Iに示される構造を有する白金錯体、またはその薬学的に許容される塩:
式中、XおよびYは独立して任意のハロゲン、-NO2、-ONO、もしくは以下の構造であるか
またはXおよびYは共に以下の構造を形成する
R1は-NO2または-ONOである;
R2は任意のハロゲン、-OH、-ONO、-ONO2、-COR10、-OPO3R10R11、-OSO3H、-OSeOOH、-SeOOH、-AsO2、-OAsO2、-NR10R11、-NHR10R11、-OOCR15、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、-N-アルキル、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニル、またはその如何なるものも任意のハロゲン、-NH2、-COOH、-OH、アルコキシ、シクロアルコキシによって置換されうる以下の構造によって置換されうる
R3は、独立して-NH3または-NHR7である;
R7は、任意に-NO2またはCOOHによって置換されるH、C1-6アルキル、アルコキシ、またはアリールである;
R10およびR11は、独立して、H、-NH2、-OH、-NHR7、CONHR7、CON(R7)、C1-6アルキル、アリール、またはヘテロアリールであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
R15はアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、-N-アルキル、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる。
【請求項2】
XおよびYが独立して、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される、請求項1記載の白金錯体。
【請求項3】
XおよびYがいずれもClである、請求項1記載の白金錯体。
【請求項4】
R1が-NO2である、請求項1記載の白金錯体。
【請求項5】
R3が-NH3である、請求項1記載の白金錯体。
【請求項6】
以下の式IIで示される構造を有する白金錯体、またはその薬学的に許容される塩:
式中、XおよびYは独立して、任意のハロゲン、もしくは以下の構造を有するか
または、XおよびYは共に以下の構造を形成する
R4は-NO2または-ONOである;
R5は任意のハロゲン、-OH、-ONO、-ONO2、-COR10、-OPO3R10R11、-OSO3H、-OSeOOH、-SeOOH、-AsO2、-OAsO2、-NR10R11、-NHR10R11、-OOCR15、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、-N-アルキル、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニル、または以下の構造によって置換されうる
またはX、Y、およびR5は共に、その如何なるものも、任意のハロゲン、-NH2、-COOH、-OHによって置換されうる以下の構造を形成する
またはYおよびR5は以下の構造を形成する
R6は独立してNH2またはNHである;
R7は、任意に-NO2または-COOHによって置換されるH、C1-6アルキル、アルコキシ、もしくはアリールである;
R8およびR9は独立して、H、C1-6アルキル、もしくは-OHであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
R10およびR11は、独立して、-H、-NH2、-OH、-NHR7、CONHR7、CON(R7)、C1-6アルキル、アリール、もしくはヘテロアリールであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
R12およびR13は独立して、HもしくはC1-6アルキルであるか、またはR12およびR13は共に、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、もしくはヘテロアリールを形成し、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
R15はアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、-N-アルキル、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
nは0から6までの任意の整数である。
【請求項7】
XおよびYが独立して、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される、請求項6記載の白金錯体。
【請求項8】
XおよびYがいずれもClである、請求項6記載の白金錯体。
【請求項9】
R4が-NO2である、請求項6記載の白金錯体。
【請求項10】
R6が-NH2である、請求項6記載の白金錯体。
【請求項11】
以下の式IIIもしくは式IVで示される構造を有する白金錯体、またはその薬学的に許容される塩:
式中、XおよびYは独立して、任意のハロゲン、-NO2、-ONOであるか、またはXおよびYは共に以下の構造を形成する
R6は独立して、NO2、N、NH、またはNH2である;
R8およびR9は独立して、H、C1-6アルキル、または-OHであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
R12およびR13は、独立してHもしくはC1-6アルキルであるか、またはR12およびR13は共にアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、もしくはヘテロアリールを形成し、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
nは0〜6までの任意の整数である。
【請求項12】
と称される錯体からなる群より選択される錯体の構造を有する白金錯体。
【請求項13】
式Vまたは式VIに示す構造を有する白金錯体、またはその薬学的に許容される塩:
式中、XおよびYは、独立して任意のハロゲン、-OH、H2O、または-SO(CH3)2である;ならびに
Aは以下の任意のものとなりうる
式中R1は独立してNH2またはNHである;
R2およびR3は独立して、H、-OH、C1-6アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルであって、その如何なるものも任意で、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルによって置換されうる;
R4およびR5は独立して、H、もしくはC1-6アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルであるか、またはR4およびR5は共に、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルを形成し、その如何なるものも任意で、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルによって置換されうる;
nは0〜6までの任意の整数である。
【請求項14】
XおよびYが独立して、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される、請求項13記載の白金錯体。
【請求項15】
XおよびYがいずれもClである、請求項13記載の白金錯体。
【請求項16】
以下からなる群より選択される、請求項13記載の白金錯体:
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の白金錯体の有効量を患者に投与する段階を含む、患者における炎症障害を治療するための方法。
【請求項18】
患者が哺乳動物である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
患者がヒト、サル、チンパンジー、類人猿、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、またはブタである、請求項17記載の方法。
【請求項20】
白金錯体が、リポソーム部分に封入されている、または白金錯体が、白金錯体の細胞への送達を標的とするタンパク質もしくは核酸を含む、請求項17記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の白金錯体の有効量を患者に投与する段階を含む、患者におけるウイルス、細菌、または寄生虫感染症を治療または予防するための方法。
【請求項22】
患者が哺乳動物である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
患者がヒト、サル、チンパンジー、類人猿、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、またはブタである、請求項21記載の方法。
【請求項24】
寄生虫感染症が、リーシュマニア(Leishmania)、トキソプラズマ(Toxoplasma)、住血吸虫(Schistosoma)、プラスモジウム(Plasmodium)、トリパノソーマ(Trypanosoma)、体内寄生アメーバ(Entamoeba)、ジアルジア(Giardia)、トリコモナス(Trichomonas)、回虫(Ascaris)、鞭虫(Trichuris)、蟯虫(Enterobius)、鉤虫(Necator)、十二指腸虫(Ancylostoma)、糞線虫(Strongyloides)、および旋毛虫(Trichinella)からなる群より選択される生物によって引き起こされる、請求項21記載の方法。
【請求項25】
患者が、リーシュマニア、トキソプラズマ症、住血吸虫症、トリパノソーマ症、ニューモシスティス、マラリア、および旋毛虫症からなる群より選択される疾患状態を有する、請求項21記載の方法。
【請求項26】
細菌感染症が、ブドウ球菌(Staphylococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)、サルモネラ(Salmonella)、バチルス(Bacillus)、クロストリジウム(Clostridium)、シュードモナス(Pseudomonas)、ナイセリア(Neisseria)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、およびエルシニア(Yersinia)からなる群より選択される生物によって引き起こされる、請求項21記載の方法。
【請求項27】
ウイルス感染症が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、乳頭腫ウイルス(例えば、ヒト乳頭腫ウイルス)、ポリオーマウイルス(例えば、SV40、BKウイルス、DARウイルス)、オルソポックスウイルス(例えば、大痘瘡ウイルス(小痘ウイルス))、EBV、単純ヘルペスウイルス(HSV)、肝炎ウイルス、ラブドウイルス(例えば、エボラウイルス)、およびサイトメガロウイルス(CMV)からなる群より選択されるウイルスによって引き起こされる、請求項21記載の方法。
【請求項28】
以下の段階を含む、白金錯体の合成法:
a)水および有機溶媒においてシスプラチンを混合する段階;
b)段階(a)の混合物に、シスプラチンの白金に結合することができるリガンドを混合して、白金錯体産物を形成する段階;
c)段階(b)の混合物を二酸化窒素ガスに接触させる段階;ならびに
d)白金錯体産物を溶媒から分離する段階。
【請求項29】
有機溶媒がジクロロエタンまたはヘキサンである、請求項28記載の方法。
【請求項30】
白金錯体産物が溶媒の蒸発によって溶媒から分離される、請求項28記載の方法。
【請求項31】
段階(d)の後に、白金錯体産物がさらに精製される、請求項28記載の方法。
【請求項32】
白金錯体産物が溶媒における再結晶によってさらに精製される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
白金錯体産物がシリカカラムでの吸着によって、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってさらに精製される、請求項31記載の方法。
【請求項1】
以下の式Iに示される構造を有する白金錯体、またはその薬学的に許容される塩:
式中、XおよびYは独立して任意のハロゲン、-NO2、-ONO、もしくは以下の構造であるか
またはXおよびYは共に以下の構造を形成する
R1は-NO2または-ONOである;
R2は任意のハロゲン、-OH、-ONO、-ONO2、-COR10、-OPO3R10R11、-OSO3H、-OSeOOH、-SeOOH、-AsO2、-OAsO2、-NR10R11、-NHR10R11、-OOCR15、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、-N-アルキル、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニル、またはその如何なるものも任意のハロゲン、-NH2、-COOH、-OH、アルコキシ、シクロアルコキシによって置換されうる以下の構造によって置換されうる
R3は、独立して-NH3または-NHR7である;
R7は、任意に-NO2またはCOOHによって置換されるH、C1-6アルキル、アルコキシ、またはアリールである;
R10およびR11は、独立して、H、-NH2、-OH、-NHR7、CONHR7、CON(R7)、C1-6アルキル、アリール、またはヘテロアリールであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
R15はアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、-N-アルキル、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる。
【請求項2】
XおよびYが独立して、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される、請求項1記載の白金錯体。
【請求項3】
XおよびYがいずれもClである、請求項1記載の白金錯体。
【請求項4】
R1が-NO2である、請求項1記載の白金錯体。
【請求項5】
R3が-NH3である、請求項1記載の白金錯体。
【請求項6】
以下の式IIで示される構造を有する白金錯体、またはその薬学的に許容される塩:
式中、XおよびYは独立して、任意のハロゲン、もしくは以下の構造を有するか
または、XおよびYは共に以下の構造を形成する
R4は-NO2または-ONOである;
R5は任意のハロゲン、-OH、-ONO、-ONO2、-COR10、-OPO3R10R11、-OSO3H、-OSeOOH、-SeOOH、-AsO2、-OAsO2、-NR10R11、-NHR10R11、-OOCR15、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、-N-アルキル、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニル、または以下の構造によって置換されうる
またはX、Y、およびR5は共に、その如何なるものも、任意のハロゲン、-NH2、-COOH、-OHによって置換されうる以下の構造を形成する
またはYおよびR5は以下の構造を形成する
R6は独立してNH2またはNHである;
R7は、任意に-NO2または-COOHによって置換されるH、C1-6アルキル、アルコキシ、もしくはアリールである;
R8およびR9は独立して、H、C1-6アルキル、もしくは-OHであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
R10およびR11は、独立して、-H、-NH2、-OH、-NHR7、CONHR7、CON(R7)、C1-6アルキル、アリール、もしくはヘテロアリールであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
R12およびR13は独立して、HもしくはC1-6アルキルであるか、またはR12およびR13は共に、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、もしくはヘテロアリールを形成し、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
R15はアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、-N-アルキル、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
nは0から6までの任意の整数である。
【請求項7】
XおよびYが独立して、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される、請求項6記載の白金錯体。
【請求項8】
XおよびYがいずれもClである、請求項6記載の白金錯体。
【請求項9】
R4が-NO2である、請求項6記載の白金錯体。
【請求項10】
R6が-NH2である、請求項6記載の白金錯体。
【請求項11】
以下の式IIIもしくは式IVで示される構造を有する白金錯体、またはその薬学的に許容される塩:
式中、XおよびYは独立して、任意のハロゲン、-NO2、-ONOであるか、またはXおよびYは共に以下の構造を形成する
R6は独立して、NO2、N、NH、またはNH2である;
R8およびR9は独立して、H、C1-6アルキル、または-OHであって、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
R12およびR13は、独立してHもしくはC1-6アルキルであるか、またはR12およびR13は共にアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、もしくはヘテロアリールを形成し、その如何なるものも任意で、任意のハロゲン、-COOH、-OH、-NO2、-NH2、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、シクロアルキルカルボニル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルカルボニル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロシクロアルコキシ、またはヘテロシクロアルコキシカルボニルによって置換されうる;
nは0〜6までの任意の整数である。
【請求項12】
と称される錯体からなる群より選択される錯体の構造を有する白金錯体。
【請求項13】
式Vまたは式VIに示す構造を有する白金錯体、またはその薬学的に許容される塩:
式中、XおよびYは、独立して任意のハロゲン、-OH、H2O、または-SO(CH3)2である;ならびに
Aは以下の任意のものとなりうる
式中R1は独立してNH2またはNHである;
R2およびR3は独立して、H、-OH、C1-6アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルであって、その如何なるものも任意で、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルによって置換されうる;
R4およびR5は独立して、H、もしくはC1-6アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルであるか、またはR4およびR5は共に、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルを形成し、その如何なるものも任意で、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリールオキシ、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリールカルボニル、およびヘテロアリールカルボニルによって置換されうる;
nは0〜6までの任意の整数である。
【請求項14】
XおよびYが独立して、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される、請求項13記載の白金錯体。
【請求項15】
XおよびYがいずれもClである、請求項13記載の白金錯体。
【請求項16】
以下からなる群より選択される、請求項13記載の白金錯体:
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の白金錯体の有効量を患者に投与する段階を含む、患者における炎症障害を治療するための方法。
【請求項18】
患者が哺乳動物である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
患者がヒト、サル、チンパンジー、類人猿、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、またはブタである、請求項17記載の方法。
【請求項20】
白金錯体が、リポソーム部分に封入されている、または白金錯体が、白金錯体の細胞への送達を標的とするタンパク質もしくは核酸を含む、請求項17記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の白金錯体の有効量を患者に投与する段階を含む、患者におけるウイルス、細菌、または寄生虫感染症を治療または予防するための方法。
【請求項22】
患者が哺乳動物である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
患者がヒト、サル、チンパンジー、類人猿、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、またはブタである、請求項21記載の方法。
【請求項24】
寄生虫感染症が、リーシュマニア(Leishmania)、トキソプラズマ(Toxoplasma)、住血吸虫(Schistosoma)、プラスモジウム(Plasmodium)、トリパノソーマ(Trypanosoma)、体内寄生アメーバ(Entamoeba)、ジアルジア(Giardia)、トリコモナス(Trichomonas)、回虫(Ascaris)、鞭虫(Trichuris)、蟯虫(Enterobius)、鉤虫(Necator)、十二指腸虫(Ancylostoma)、糞線虫(Strongyloides)、および旋毛虫(Trichinella)からなる群より選択される生物によって引き起こされる、請求項21記載の方法。
【請求項25】
患者が、リーシュマニア、トキソプラズマ症、住血吸虫症、トリパノソーマ症、ニューモシスティス、マラリア、および旋毛虫症からなる群より選択される疾患状態を有する、請求項21記載の方法。
【請求項26】
細菌感染症が、ブドウ球菌(Staphylococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)、サルモネラ(Salmonella)、バチルス(Bacillus)、クロストリジウム(Clostridium)、シュードモナス(Pseudomonas)、ナイセリア(Neisseria)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、およびエルシニア(Yersinia)からなる群より選択される生物によって引き起こされる、請求項21記載の方法。
【請求項27】
ウイルス感染症が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、乳頭腫ウイルス(例えば、ヒト乳頭腫ウイルス)、ポリオーマウイルス(例えば、SV40、BKウイルス、DARウイルス)、オルソポックスウイルス(例えば、大痘瘡ウイルス(小痘ウイルス))、EBV、単純ヘルペスウイルス(HSV)、肝炎ウイルス、ラブドウイルス(例えば、エボラウイルス)、およびサイトメガロウイルス(CMV)からなる群より選択されるウイルスによって引き起こされる、請求項21記載の方法。
【請求項28】
以下の段階を含む、白金錯体の合成法:
a)水および有機溶媒においてシスプラチンを混合する段階;
b)段階(a)の混合物に、シスプラチンの白金に結合することができるリガンドを混合して、白金錯体産物を形成する段階;
c)段階(b)の混合物を二酸化窒素ガスに接触させる段階;ならびに
d)白金錯体産物を溶媒から分離する段階。
【請求項29】
有機溶媒がジクロロエタンまたはヘキサンである、請求項28記載の方法。
【請求項30】
白金錯体産物が溶媒の蒸発によって溶媒から分離される、請求項28記載の方法。
【請求項31】
段階(d)の後に、白金錯体産物がさらに精製される、請求項28記載の方法。
【請求項32】
白金錯体産物が溶媒における再結晶によってさらに精製される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
白金錯体産物がシリカカラムでの吸着によって、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってさらに精製される、請求項31記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【公表番号】特表2007−502777(P2007−502777A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523414(P2006−523414)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/026393
【国際公開番号】WO2005/016946
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(504332089)ユニバーシティー オブ サウス フロリダ (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/026393
【国際公開番号】WO2005/016946
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(504332089)ユニバーシティー オブ サウス フロリダ (11)
【Fターム(参考)】
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